社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE GMPLS による障害回復と予備帯域を用いた Extra LSP サービス 堀内栄一(1) 末村剛彦(2) 塩本公平(3) フォトニックインターネットラボ標準化戦略ワーキンググループ (1) 三菱電機株式会社 〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船 5-1-1 (2)日本電気株式会社 〒216-8555 神奈川県川崎市宮前区宮崎 4-1-1 (3) 日本電信電話株式会社 〒180-8585 東京都武蔵野市緑町 3-9-11 E-mail: (1) [email protected], (2) [email protected], (3) [email protected] URL: http://www.pilab.org/ あらまし 大容量,高信頼な通信ネットワークを低コストで実現するための技術革新が行われている.“GMPLS” (Generalized Multi-Protocol Label Switching)はそれを実現する手段として期待されており,そのための様々な研究, 標準化,相互接続試験が報告されている.その中で,ネットワークの高信頼化を実現する障害回復のための GMPLS プロトコル拡張が IETF(The Internet Engineering Task Force)を中心に検討されている.フォトニックインターネッ トラボ(PIL)において,フォトニックネットワークの障害回復を実現するため,IETF での検討をベースとし,実 装,相互接続可能なレベルへの仕様化を行い,有効な障害回復方式を検討した.本論文は,その検討内容を報告す る.また,障害回復の予備帯域を有効活用する Extra LSP サービスを提案し,その実現方法について検討する. キーワード 障害回復,プロテクション,リストレーション,GMPLS,シグナリング,ルーティング, RSVP-TE,OSPF-TE, フ ォトニックネットワーク GMPLS based Fault Recovery and Extra LSP Service utilizing protecting bandwidth Eiichi Horiuchi(1), Yoshihiko Suemura(2), Kohei Shiomoto(3) (1) Mitsubishi Electric Corporation, 5-1-1 Ofuna, Kamakura-shi, Kanagawa 247-8501 Japan (2)Networking Research Laboratories, NEC Corporation, 4-1-1 Miyazaki Miyamae-ku Kawasaki-shi, Kanagawa 216-8555 Japan (3) NTT Corporation, 9-11, Midori-Cho 3-Chome Musashino-Shi, Tokyo 180-8585 Japan E-mail: (1) [email protected], (2) [email protected], (3) [email protected] Abstract There have been various technical innovations to realize high capacity and reliable communications networks with economical cost. GMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)is expected to be one of those technologies and there are various researches, standardization, and inter-operability tests. The Internet Engineering Task Force (IETF) has been developing extension of GMPLS protocols for fault recovery to realize highly reliable networks. Based on the IETF works, Photonic Internet Lab (PIL) has developed a specification enabling implementation and inter-operability for fault recovery of photonic networks, and also studied effective fault recovery mechanism. This paper reports the study, proposes an Extra LSP service utilizing protecting bandwidth of recovery, and proposes how to realize the service. Keyword fault recovery, protection, restoration, GMPLS, signaling, routing, RSVP-TE, OSPF-TE, photonic network 社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE 1. は じ め に 相互接続可能なレベルへの仕様化を行い,有効な障害 1.1. フ ォ ト ニ ッ ク ネ ッ ト ワ ー ク の 障 害 回 復 回復方式を検討した.障害回復方式に関する新たな提 ブロードバンドアクセスの発展,それに伴う映像配 案 と し て 予 備 帯 域 を 有 効 活 用 す る Extra LSP サ ー ビ ス 信サービスの開始,モバイル通信の普及などにより通 を提案し,その実現方法を検討した. 信トラフィックの増大は衰えを知らない.大容量伝送 2. GMPLS に よ る メ ッ シ ュ 型 ネ ッ ト ワ ー ク 障 害 回 復 を 実 現 す る 技 術 の 1 つ と し て WDM ( Wavelength 2.1. メ ッ シ ュ 型 ネ ッ ト ワ ー ク Division Multiplexing) に 代 表 さ れ る フ ォ ト ニ ッ ク ネ SONET/SDH に 代 表 さ れ る よ う な 従 来 の 伝 送 ネ ッ ト ットワーク技術の研究,開発が進んでいる.一方,ネ ワ ー ク は ,主 に Point-to-Point あ る い は リ ン グ 型 を 前 提 ッ ト ワ ー ク の 大 容 量 化 の み な ら ず ,e-commerce な ど の としたネットワーク構成であり,それらの構成を前提 信頼性を要求する様々なアプリケーションが通信サー とした障害回復方式が用いられている.リング型の ビスを利用するようになり,サービス断の無い通信ネ SDH ットワークを提供することが強く要求されている.万 ( Unidirectional が一の障害発生時には,高速に待機系の伝送路への切 ( Bidirectional Line Switched Ring) と 呼 ば れ る プ ロ テ 替を行うことでサービス断時間を最小限に抑え,サー ク シ ョ ン 方 式 が 一 般 に 用 い ら れ て い る . end-end の パ ビスを継続することが必要である.また,高信頼化実 スレベルの高信頼化に関しては,いずれもトラフィッ 現のためには,装置や転送ルートを冗長化する手段が クを転送する現用のパスとは別に,逆回りに予備のパ 考えられるが,そのための設備コスト,運用コストな スをあらかじめ確保しておき,障害発生時にトラフィ どの追加コストが発生する.これらのコストを最小限 ックの転送先,受信側の選択を切り替えることにより に抑えることが強く求められている. 障 害 回 復 す る( 図 1). BLSR 方 式 に お い て は ,予 備 パ 1.2. GMPLS に よ る フ ォ ト ニ ッ ク ネ ッ ト ワ ー ク 制 御 ス に 割 り 当 て ら れ た SDH の タ イ ム ス ロ ッ ト は ,障 害 回 伝 送 ネ ッ ト ワ ー ク に お い て は , UPSR Path Switched Ring ) , BLSR 次世代のフォトニックネットワークを制御する技 復による切替が発生しなければ使用されない.これを 術 と し て , GMPLS ( Generalized Multi-Protocol Label 有効活用するために,高信頼性を必要としない低優先 Switching)の 適 用 が 検 討 さ れ て い る [1]-[4].GMPLS は のトラフィックの転送に割り当てることが出来る.こ MPLS の ネ ッ ト ワ ー ク 設 計 の 柔 軟 性 , 拡 張 性 を さ ら に れ を Extra traffic と 呼 ぶ . し か し , こ れ ら の 方 式 は , 一 般 化 し た プ ロ ト コ ル で あ り ,パ ケ ッ ト , TDM ( Time 本来の転送に必要な帯域と同じだけの予備帯域(待機 Division Multiplexing), 波 長 ( WDM), フ ァ イ バ 等 す 系の帯域)を必要とするというデメリットがある.ま べてのレイヤを統一的に扱うプロトコルである.この た,リング型のネットワークでは,トポロジーが限定 ように通信ネットワーク全体を共通のプロトコルで管 されること,非対称的なトラフィックに対しては非効 理,制御することが出来るため,負荷分散などのトラ 率であるというデメリットがある. フィックエンジニアリング,ネットワーク構成変更, 次世代のフォトニックネットワークにおいては,従 end-end の サ ー ビ ス プ ロ ビ ジ ョ ニ ン グ を 自 動 化 , 簡 略 来 の Point-to-Point や リ ン グ 型 だ け で な く ,そ れ ら を 連 化,高速化することが可能となり,ネットワークの設 結したネットワーク構成や,様々なトラフィック分布 備コスト,運用コストを大幅に削減することが期待で に対応したパス設定や障害回復が必要である.すなわ き る . GMPLS の プ ロ ト コ ル は , IETF, ITU-T, OIF な ち,メッシュ型のフォトニックネットワークの制御, どで標準化されており,シグナリング,ルーティング 障害回復が求められる. プ ロ ト コ ル の 基 本 的 な 仕 様 は 完 成 さ れ つ つ あ る .ま た , 障 害 回 復 を 実 現 す る た め ,GMPLS を 更 に 拡 張 す る 検 討 障害回復後のパス が , 主 に IETF に お い て 行 わ れ て い る . 1.3. PIL( Photonic Internet Lab) フ ォ ト ニ ッ ク イ ン タ ー ネ ッ ト ラ ボ ( PIL) は , 次 世 代フォトニックネットワークが新しいインターネット の時代を切り拓くことを目標とし,世界標準を目指し 障害発生前のパス たフォトニックネットワーク制御技術の研究開発を推 進 す る こ と を 目 的 と し て ,2002 年 9 月 に 創 設 さ れ ,現 在 国 内 7 社 が 参 加 し ,GMPLS を 主 と し た 次 世 代 フ ォ ト ニックネットワークの研究開発・標準化活動・技術検 証 を 行 っ て い る .今 回 ,PIL に て GMPLS に よ る 障 害 回 復 の 実 現 へ 向 け て ,IETF で の 検 討 を ベ ー ス と し ,実 装 , 図1 リ ン グ 型 障 害 回 復 の 例 ( BLSR) 2.2. GMPLS 障 害 回 復 方 式 の 分 類 メ ッ シ ュ 型 ネ ッ ト ワ ー ク の 障 害 回 復 を GMPLS の 枠 組 み で 実 現 す る 検 討 が IETF の CCAMP WG( Common 社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE Control and Measurement Plane-Working Group), P&R 高 速 な 切 替 が 可 能 で あ る . ま た , 予 備 パ ス 上 に Extra ( Protection and Restoration) デ ザ イ ン チ ー ム に お い て traffic を 適 用 し て 予 備 帯 域 を 有 効 活 用 す る こ と が 可 能 行 わ れ て い る [5]-[8].[5]は 障 害 回 復 の た め の RSVP-TE で あ る ( 図 3 ). シグナリングプロトコルを拡張している.ネットワー リストレーションは,障害発生後に切替のための予 クを利用するアプリケーションによって,要求する信 備パスのシグナリングを行い,障害回復時,パスの中 頼 度( availability),通 信 断 時 間 の 長 さ( 切 替 所 要 時 間 ) 継 ( transit) ノ ー ド に お い て ス イ ッ チ 設 定 や シ グ ナ リ は異なる.また,メッシュ型ネットワークの障害回復 ング処理などの処理が介在するものである.リストレ を実現する手段も様々な方式が考えられ,方式によっ ーションは,更に2つに分類される.1つは障害発生 て実現する信頼度,切替所要時間,帯域等のネットワ 前にあらかじめ予備パスのルートを決定し,リソース ーク資源の利用効率が異なる. を予約しておく事前予約型リストレーションであり, スパンレベルの障害復旧 Unidirectional 1+1 dedicated protection Bi-directional 1+1 dedicated protection Dedicated 1:1 protection with extra traffic Shared M:N protection パスレベルの障害復旧 プロテクション Unidirectional 1+1 protection Bi-directional 1+1 protection 1:1 protection with extra traffic リストレーション 事前予約型リストレーション 1:1 re-routing without extra traffic Shared mesh restoration ダイナミック型リストレーション (Full) LSP re-routing 図2 もう1つは障害発生後に予備パスのルートを決定し, 予備パスを設定する完全にダイナミックなリストレー ションである.事前予約型リストレーションは更に, 予 備 パ ス 毎 に 専 用 の 帯 域 を 割 り 当 て る 1:1 re-routing without extra traffic と , 予 備 パ ス 間 で 帯 域 を 共 有 す る Shared mesh restoration( 後 述 ) に 分 け ら れ る . 障害回復方式の分類 現用パス 予備パス 図2は障害回復方式を分類したものである.障害回 extra traffic(予備パスの帯域を利用) 復は,隣接する装置間のリンク(スパン)を保護する も の と , 複 数 の リ ン ク に 渡 る end-end の パ ス を 保 護 す 図3 1:1 protection with extra-traffic る も の に 分 け ら れ る .更 に ,パ ス の 障 害 回 復 の 方 式 は , 2.3. PIL に お け る 検 討 プロテクションとリストレーションに分けられる.プ PIL で は , [5]-[8]を ベ ー ス と し て , 実 装 可 能 な 障 害 ロテクションは,あらかじめ予備パスを設定し,障害 回復シグナリングおよびルーティングのプロトコル仕 発生時に,パスの両端でのみ切替制御を行うものであ 様 を 規 定 し ,そ れ を 元 に 各 社 が 実 際 に コ ー ド を 実 装 し , る . 例 え ば 1:1 プ ロ テ ク シ ョ ン ( 1:1 protection with 相互接続性を確認する試みを行っている.上記障害回 extra-traffic) の 場 合 に は , あ ら か じ め 現 用 パ ス と , こ 復の分類においては,パスレベルの障害回復のうち, れをバックアップする予備パスを設定しておく(本論 プ ロ テ ク シ ョ ン と Shared mesh restoration を 主 な 検 討 文では,通常の状態でトラフィックを転送するパスを の 対 象 と し た .プ ロ テ ク シ ョ ン は 1+1 に よ る 無 瞬 断 の 現用パス,現用パスに障害が発生した後にトラフィッ 切 替 や 50msec 以 下 等 の 高 速 切 替 を 実 現 し , 高 信 頼 か クを転送するために使われるパスを予備パスと定義す つ通信断時間が短時間に限定されるアプリケーション る ). ユ ー ザ ト ラ フ ィ ッ ク の 入 力 端 ノ ー ド ( ingress ノ に 適 用 で き る .Shared mesh restoration は プ ロ テ ク シ ョ ード)では,通常は現用パスにのみトラフィックを転 ンに比べて切替が低速だが,帯域の利用効率が良く, 送し,もう一方の端にあるユーザトラフィックの出力 事前に予備パスを確保しておくため障害発生時確実に 端 ノ ー ド ( egress ノ ー ド ) で は , 現 用 パ ス か ら ト ラ フ 切替を実施することが可能であることから,高信頼が ィックを受信するように受信先を選択する.障害発生 要求されるが通信断時間への要求が厳しくないアプリ 時 , ingress ノ ー ド と egress ノ ー ド の 間 で 同 期 を と り , ケ ー シ ョ ン に 適 し て い る . PIL で は , こ れ ら パ ス レ ベ ingress ノ ー ド で は ト ラ フ ィ ッ ク を 予 備 パ ス 上 に 転 送 ル の プ ロ テ ク シ ョ ン ,Shared mesh restoration に 関 す る し , egress ノ ー ド は 予 備 パ ス か ら 受 信 す る よ う に 切 り 実 装 レ ベ ル の プ ロ ト コ ル 仕 様 書 ( Implementation 替える.この方式では障害発生時にパスの中継ノード Agreement) を 作 成 し た . 現 用 パ ス /予 備 パ ス の 設 定 , での処理が介在しないためリストレーションに比べて 切替,切り戻し時等のシグナリングについて,交換さ 社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE れ る RSVP-TE メ ッ セ ー ジ の 順 序 , 設 定 さ れ る Object 以 上 が 最 初 の フ ェ ー ズ で あ る .次 に 障 害 が 発 生 す る と , の値,各ノードでの処理内容等を規定した.例えば, RSVP-TE に お け る Notify メ ッ セ ー ジ 等 の 手 段 を 用 い [5]で は , プ ロ テ ク シ ョ ン /リ ス ト レ ー シ ョ ン の シ グ ナ て , 障 害 発 生 が ingress ノ ー ド に 通 知 さ れ る . ingress リ ン グ に 使 用 す る Protection Object を 新 規 に 定 義 し , ノードは,事前に設定された予備パスに関して,トラ このオブジェクトの中で S ビット,P ビットのように フィックの転送を予備パスに切り替えるためのシグナ 現用,予備パスの切替状態を示すビットを使って障害 リングを開始する.これにより,予備パス上の各ノー 回 復 の た め の パ ス 設 定 ,切 替 を 制 御 し て い る .し か し , ドのスイッチ設定が行われ,これまで現用パス上に転 これらのビットの使用方法についての記述が曖昧なた 送されていたトラフィックを予備パスの波長上に転送 め解釈や使用方法に違いが生じたり,異なるベンダ装 することが可能となる. 置間で値の変更タイミングの違いが生じるなど,相互 A B 接続性に問題が生じる可能性がある.また,プロトコ ルレベルの動作規定の範囲内だけでは,装置毎の動作 の違いによって,全体として所望の動作が実現できな い可能性もある.このような問題を無くすため,シグ C D ナリングの際に設定するビットの値や動作シーケンス を具体的に規定した.また,基本的なシグナリングの 仕 様 の ほ か に , 現 状 [5]-[8]で は 規 定 さ れ て い な い ル ー ティングの検討や,マルチレイヤシグナリングへの適 E 用,障害通知の方式検討を行った. F 現用パス 3. Extra LSP の 提 案 予備パス 3.1. Shared mesh restoration 本 論 文 で 提 案 す る Extra LSP の 対 象 と な る Shared 図4 Shared mesh restoration の パ ス 設 定 例 3.2. Extra LSP mesh restoration に つ い て 説 明 す る . 図 4 は , 波 長 レ イ Shared mesh restoration の 適 用 に よ り ,予 備 帯 域 を 共 ヤ に お け る Shared mesh restoration の 現 用 パ ス ,予 備 パ 有することによる経済効果が期待できるが,予備帯域 スの設定例である.2つの現用パス,予備パスのペア は,障害が発生していない間は使用されていない.こ と し て ,合 計 4 本 の LSP( Label Switched Path)が 設 定 れら予備帯域を更に活用することができれば,より一 さ れ て い る .一 方 の ペ ア で は ,ノ ー ド A と B 間 で ト ラ 層 の 経 済 効 果 が 期 待 で き る .こ の た め に ,先 述 し た 1:1 フ ィ ッ ク を 転 送 す る た め , A-B の ル ー ト で 現 用 パ ス を プ ロ テ ク シ ョ ン や ,SDH に お け る BLSR の よ う に ,予 設 定 し , A-C-D-B で 予 備 パ ス を 設 定 し て い る . ま た , 備 帯 域 を 活 用 し て ,Extra traffic の よ う な 低 優 先 の ト ラ も う 一 方 の ペ ア で は ,ノ ー ド E と F の 間 で ト ラ フ ィ ッ フ ィ ッ ク を 転 送 す る こ と が 考 え ら れ る . し か し , [5] ク を 転 送 す る た め , E-F の 現 用 パ ス , E-C-D-F の 予 備 に お け る 検 討 で は ,Shared mesh restoration に つ い て は , パ ス を 設 定 し て い る . 2 本 の 予 備 パ ス は , C-D 間 の 共 こ の よ う な Extra traffic は 考 慮 さ れ て い な い . ま た , 通 の リ ン ク を 通 っ て 設 定 さ れ て い る が , Shared mesh メッシュ型のネットワークにおいては,同一の2地点 restoration に お い て は , こ の 共 通 の リ ン ク を 通 る 複 数 間で転送されるトラフィックに関して,保護され転送 の予備パス間で,障害発生時に使用する波長を共有す される高優先のトラフィック量と,低優先のトラフィ る こ と が 出 来 る .た だ し ,現 用 パ ス A-B の 障 害 と 現 用 ック量は必ずしも同程度の量とはならないと考えられ, パ ス E-F の 障 害 が 同 時 に 発 生 す る リ ス ク が 無 い か 極 め プ ロ テ ク シ ョ ン に お け る Extra traffic の よ う に , 予 備 て低くなければならない.このように,複数の予備パ パスと同じルートに低優先度のトラフィックを転送す スが同一のリンクの帯域を共有することで,予備パス るという方式は必ずしも最適ではない. のために必要な帯域を抑えることが出来る. 本論文で提案する方式は,これらの課題を解決する Shared mesh restoration の シ グ ナ リ ン グ は ,2 つ の フ も の で あ る .Shared mesh restoration に お い て ,優 先 度 ェーズに分けられる.最初に現用パスと予備パスの設 の 低 い ト ラ フ ィ ッ ク を 転 送 す る パ ス を Extra LSP と 定 定 を 行 う .現 用 パ ス の 設 定 に お い て は ,ingress,transit, 義する.図4において,先述したように2つのペアの egress ノ ー ド の そ れ ぞ れ に お い て ス イ ッ チ ( 例 え ば 光 現 用 /予 備 パ ス が 設 定 さ れ て い る 状 態 に お い て , 更 に スイッチ)が設定され,トラフィックを転送できる状 A-C-D-F と い う ル ー ト の 低 優 先 の パ ス( Extra LSP)を 態となる.予備パスの設定においては,波長などのリ 設 定 す る こ と を 考 え る .Extra LSP は ,A-C,C-D,D-F ソースの予約は行うが,スイッチの設定は行わず,実 と い う 3 つ の リ ン ク を 使 用 す る . こ の 際 , A-C 間 リ ン 際に予約された波長上にトラフィックは転送されない. ク で は ,現 用 パ ス A-B の 予 備 パ ス で あ る A-C-D-B に 割 社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE り 当 て た 波 長 を 使 用 し , C-D 間 リ ン ク で は , 予 備 パ ス A A-C-D-B, E-C-D-F に 共 有 さ れ て 割 り 当 て た 波 長 を , 障害 B D-F 間 リ ン ク で は 予 備 パ ス E-C-D-F に 割 り 当 て た 波 長 を 使 用 す る .こ の よ う に ,Extra LSP で は ,予 備 帯 域 の 使 用 に 関 し て , プ ロ テ ク シ ョ ン に お け る Extra traffic C のように特定の予備パスと同一のルート,帯域を使用 D スイッチの切替 によって extra traffic が別ユーザに 誤転送される するという制限を設けない.予備帯域を任意の2地点 間の低優先トラフィック転送に活用することが出来る た め ,現 状 の Shared mesh restoration 方 式 に 比 べ ,予 備 E 帯域の有効活用をより一層図ることが出来る.なお, F 障 害 が 発 生 し た 際 は ,Extra LSP が 使 用 し て い る 予 備 帯 現用パス 域は,事前に割り当てられた予備パスに使用されるこ 予備パス と に な る た め ,Extra LSP 上 に 転 送 さ れ た ト ラ フ ィ ッ ク Extra LSP の転送を継続することは不可能となる.これは先述し た Extra traffic と 同 様 の 振 る 舞 い で あ る . 4. Extra LSP の 実 現 方 法 4.1. 要 求 機 能 図5 障 害 回 復 時 の Extra LSP の 切 断 と 誤 接 続 4.2. Diffserv-Aware MPLS-TE( DSTE) の 適 用 以 上 の よ う に , Extra LSP の 実 現 に は ル ー テ ィ ン グ , シグナリングプロトコルの拡張が必要である.拡張の 提 案 す る Extra LSP は ,IETF で は 考 慮 さ れ て い な い 際は,極力,仕様化済または実装されているプロトコ こ と か ら ,そ の 実 現 方 法 を 検 討 し ,IETF に 対 し て 提 案 ル仕様を適用することにより,プロトコルや管理ソフ 中 で あ る [9]. Extra LSP の 実 現 に 必 要 な 機 能 は , 以 下 トウエアの開発コスト,運用コストを最小限に抑える の4点である. こ と を 図 る 必 要 が あ る .現 在 IETF で は TE-WG( Traffic ① Extra LSP に 割 り 当 て 可 能 な 帯 域 を 広 告 す る 必 要 が Engineering Working Group ) に て Diffserv-Aware の ある.このためにルーティングの拡張が必要である. MPLS-TE( DSTE) に お け る 要 求 条 件 , プ ロ ト コ ル , ② 設 定 さ れ る パ ス が Extra LSP で あ る こ と を 示 す 必 要 帯 域 制 約 モ デ ル を 議 論 し て お り [10]-[14], こ の 適 用 が が あ る .こ の た め に シ グ ナ リ ン グ の 拡 張 が 必 要 で あ る . 考 え ら れ る . DSTE は , Diffserv の 種 々 の PHB( EF ク ③ 障 害 発 生 時 , Extra LSP が 使 用 し て い る 帯 域 を 予 備 ラ ス や AF ク ラ ス ) を MPLS で 実 現 す る こ と を 目 的 と パ ス が 使 用 す る こ と に な る た め ,Extra LSP を 切 断 す る しており,同じアプリケーションを運ぶトラフィック 必要がある.このためのシグナリング手順が必要であ な ど , 同 じ 性 質 の 帯 域 制 約 ( bandwidth constraints) を る. 持 つ ト ラ フ ィ ッ ク の 集 合 を Class-Type( CT) と 定 義 づ ④ 障 害 発 生 時 ,波 長 パ ス の よ う な 回 線 交 換 の パ ス で は , け る .更 に ,CT と ト ラ フ ィ ッ ク の 優 先 度( preemption 予備パス上のノードでスイッチの設定内容を変更する priority)の 組 み 合 わ せ を TE-Class と 定 義 づ け る .優 先 こ と に な る .こ の 際 ,Extra LSP と 予 備 パ ス の 間 の 一 時 度 の 関 係 は , 異 な る CT 間 に お い て も 有 効 と す る . 現 的な誤接続が発生しないように考慮する必要がある. 状 の OSPF-TE で は , 現 状 8 つ の priority の 帯 域 を 広 告 図 5 は,④の誤接続の例である.図 4 において先述 す る こ と が で き る が ,こ れ を TE-Class に 対 応 づ け て 使 し た の と 同 様 に , 2 本 の 現 用 /予 備 パ ス の ペ ア と , 用 す る . ま た , RSVP-TE に つ い て は CT を 示 す オ ブ ジ A-C-D-F の Extra LSP の パ ス が 設 定 さ れ て い る . A-B ェクトを追加定義して使用する. 間 の リ ン ク に 障 害 が 発 生 し , A-C-D-B の 予 備 パ ス に 切 先 述 の よ う に Extra LSP の 実 現 の た め に は , 現 用 /予 り 替 え る 場 合 ,最 初 に B ノ ー ド の ス イ ッ チ 設 定 を 変 更 備 パ ス に 割 り 当 て 可 能 な 帯 域 の ほ か に , Extra LSP に し,A からの受信を,D からの受信とするように切り 割り当て可能な帯域を広告する必要があること,障害 替 え ,次 に D ノ ー ド の ス イ ッ チ 設 定 を 変 更 し ,C か ら 発 生 時 に 予 備 パ ス が Extra LSP よ り 優 先 的 に 帯 域 を 使 F に転送していた設定を,C から B に転送するように 用する(割り込む)必要がある.また,障害発生以外 切 り 替 え た と 仮 定 す る .こ の 場 合 ,A か ら F 宛 て に Extra の 通 常 時 は Extra LSP は 現 用 パ ス や 予 備 パ ス の 設 定 に LSP 上 転 送 さ れ て い た デ ー タ が B に 転 送 さ れ て し ま う . 割り込まれずに維持したい運用ケースも想定され,こ このように一方のユーザのデータが他方のユーザに誤 の よ う な パ ス 間 の 優 先 度 を 示 す 必 要 が あ る . DSTE は って転送されないように考慮してスイッチ設定を変更 こ れ ら の 要 求 を 満 た す .例 と し て ,現 用 パ ス /予 備 パ ス する必要がある.このためのシグナリング手順を定め /Extra LSP の パ ス を 3 つ の TE-Class の ク ラ ス に 対 応 付 る必要がある. けることが出来る. 社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS ・ 現 用 パ ス の TE-Class[0] : CT=CT1, setup priority = 0, holding priority = 0 ・ 予 備 パ ス の TE-Class[1] : CT=CT0, setup priority = 0, holding priority = 0 ・ Extra LSP の パ ス の TE-Class[2]: CT=CT0, setup priority = 0, holding priority = 1 す な わ ち , 予 備 パ ス と Extra LSP は 帯 域 を 共 有 す る 関係にあり,現用パスの帯域とは排他的であるため, 現 用 パ ス と は 異 な る Classy-Type と す る . 現 用 パ ス と 予備パスの間に優先度の違いは無いため,同じ setup/holding priority と す る . 予 備 パ ス と Extra LSP の 優 先 度 の 関 係 に 関 し て は ,Extra LSP の パ ス 設 定 に お い て は 予 備 パ ス と Extra LSP は 帯 域 を 共 有 す る こ と に な る た め ,Extra LSP の setup priority は 予 備 パ ス の holding priority よ り 高 く て は な ら な い が ,障 害 発 生 時 に 予 備 パ ス が Extra LSP に 使 用 さ れ て い る 帯 域 を 横 取 り し て 使 用 す る こ と に な る た め , 予 備 パ ス の setup priority を , Extra LSP の パ ス よ り 高 く 設 定 す る . な お , こ の 場 合 priority は ,予 備 パ ス の 最 初 の フ ェ ー ズ で の シ グ ナ リ ン グ (Provisioning)で は な く , 障 害 発 生 後 の 切 替 時 の シ グ ナ リ ン グ ( Activation) に 適 用 す る こ と と な る . ま た 帯 域 制 約 に 関 す る CT 間 の 関 係 の モ デ ル が 幾 つ か 検 討 さ れ て お り MAM( Maximum allocation bandwidth constraints model)[12],RDM( Russian dolls bandwidth constraints model ) [13] , MAR ( Max allocation with reservation bandwidth constraint model) [14]な ど が 提 案 さ れ て い る . 提 案 す る 障 害 回 復 に は MAM が 適 用 可 能 で あ る .MAM モ デ ル に お い て は CT 毎 に 帯 域 制 約 を 独 立に定義することが可能である. 5. ま と め フ ォ ト ニ ッ ク イ ン タ ー ネ ッ ト ラ ボ ( PIL ) に て , GMPLS に よ る 障 害 回 復 の 実 現 へ 向 け て , IETF で の 検 討をベースとし,相互接続可能なレベルの仕様化を行 い,有効な障害回復方式を検討した.障害回復方式に 関 す る 新 た な 提 案 と し て Shared mesh restoration に お い て 予 備 帯 域 を 有 効 活 用 す る Extra LSP サ ー ビ ス を 提 案し,その実現のための要求条件を検討した.またシ グナリング,ルーティングプロトコルの拡張として, Diffserv-Aware の MPLS-TE( DSTE)の 適 用 を 検 討 し た . 今後は,これらの検討を踏まえた実装と,ベンダ間の 相互接続による技術的な検証を行っていきたい. 6. 謝 辞 本論文をまとめるにあたって有益な議論をしてい た だ い た フ ォ ト ニ ッ ク イ ン タ ー ネ ッ ト ラ ボ( PIL)の 関 係 者 各 位 に 感 謝 い た し ま す . PIL は , 総 務 省 戦 略 的 情 報通信研究開発制度の国際技術獲得型研究プログラム のサポートを受けて運営されています. 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE 文 献 [1] E. Mannie, Generalized Multi-Protocol Label Switching ( GMPLS ) Architecture, draft-ietf-ccamp-gmpls-architecture-07.txt, IETF, May 2003. [2] L. Berger, "Generalized Multi-Protocol Label Switching ( GMPLS ) Signaling Functional Description, RFC 3471, IETF, January 2003. [3] L. Berger, Generalized Multi-Protocol Label Switching ( GMPLS ) Signaling Resource ReserVation Protocol-Traffic Engineering ( RSVP-TE) Extensions, RFC 3473, IETF, January 2003. [4] K. Kompella and Y. Rekhter, OSPF Extensions in Support of Generalized MPLS, draft-ietf-ccamp-ospf-gmpls-extensions-12.txt, IETF, October 2003. [5] J.P. Lang et al, RSVP-TE Extensions in support of End-to-End GMPLS-based Recovery, draft-lang-ccamp-gmpls-recovery-e2e-signaling-02.t xt, IETF, September 2003. [6] J.P. Lang et al, Generalized MPLS Recovery Functional Specification, draft-ietf-ccamp-gmpls-recovery-functional-01.txt, IETF, September 2003. [7] E. Mannie, Recovery ( Protection and Restoration) Terminology for GMPLS, draft-ietf-ccamp-gmpls-recovery-terminology-02.txt, IETF, May 2003. [8] D. Papadimitriou et al, Analysis of Generalized MPLS-based Recovery Mechanisms ( including Protection and Restoration ) , draft-ietf-ccamp-gmpls-recovery-analysis-02.txt, IETF,September 2003. [9] Katsuhiro Shimano et al, Extra class LSP service using protecting resources in GMPLS networks, draft-pil-ccamp-extra-LSP-01.txt, IETF, October 2003. [10] F. Le Faucheur and W. Lai, Requirements for Support of Differentiated Services-aware MPLS Traffic Engineering, RFC 3564, IETF, July 2003. [11] Francois Le Faucheur, Protocol extensions for support of Diff-Serv-aware MPLS Traffic Engineering, draft-ietf-tewg-diff-te-proto-05.txt, IETF, September 2003. [12] F. Le Faucheur and W. Lai, Maximum Allocation Bandwidth Constraints Model for Diff-Serv-aware MPLS Traffic Engineering, draft-ietf-tewg-diff-te-mam-01.txt, IETF, September 2003. [13] Francois Le Faucheur, Russian Dolls Bandwidth Constraints Model for Diff-Serv-aware MPLS Traffic Engineering, draft-ietf-tewg-diff-te-russian-04.txt, IETF, September 2003. [14] Jerry Ash, Max Allocation with Reservation Bandwidth Constraint Model for MPLS/DiffServ TE & Performance Comparisons, draft-ietf-tewg-diff-te-mar-02.txt, IETF, October 2003.
© Copyright 2024 Paperzz