ドイツの図書館事情 -日本の図書館…-

ドイツにおける図書館事情
-日本との比較から-
国立情報学研究所 学術コンテンツ課
小林廉直
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ねらいと方法
• ドイツの図書館をめぐる状況・特徴を概観す
る
• その中で、今回の訪問先がどういった位置付
けになるかを理解する
• できるだけ日本の状況に引きつけて考える
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ドイツってどんな国?
• 日本と比べ、面積はほぼ同じで人口は2/3。
• 2011年は日独交流150周年(1861年日普修
人口順位 都市名
人口
好通商条約から)
1位
ベルリン
343万
• 輸出大国
2位
ハンブルク
177万
– 日本への輸入品
:乗用車(17.6%)
– 日本からの輸出品
:乗用車(9.5%)
3位
ミュンヘン
133万
4位
ケルン
100万
5位
フランクフルト
66万
:
ハノーバー
52万
ゲッティンゲン
12万
ドイツの主要都市(2008.12.31)
http://www.citypopulation.de/Deutschland-Cities.html 3
What’s new?(1)
• カレントアウェアネス-Rで検索してみた。
配信日付
見出し
2009-12-04 ドイツデジタル図書館はGoogleに対する分別ある回答―独文化相コメント
2009-09-10 IFLAミラノ大会のサッカートーナメントの動画が公開(ドイツチームが優勝)
2009-07-08 ドイツ国立図書館、シンポジウム「MARC21への移行」(Umstieg auf MARC 21)の資
料を公開
2009-07-08 今年も国家規模での図書館キャンペーン「ドイツは読む。集合場所は図書館」開催
2009-06-03 Springer社、1945年以前に刊行した学術書籍・雑誌等をベルリン中央・地域図書館
に寄贈
2009-04-24 IFLA、フランクフルト・ブックフェアとの協力を発表
2009-04-20 『図書館が良い21の理由』のパンフレットが出版される
2009-04-01 ザクセン州立図書館兼ドレスデン工科大学図書館、写真25万点をWikimedia
Commonsから提供
2009-01-19 ドイツ研究協会、ナショナルライセンスで国内の大学からアクセスできるデータベー
ス、電子ジャーナルの拡大を発表
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What’s new?(2)
• 図書館関係の雑誌の目次を比較
– BuBの2009年特集一覧
• 24時間図書館、外国からの衝撃、図書館情報職案内
、科学コミュニケーション、図書館員の日2009、公共図
書館の将来、学校図書館、ブックフェアでのメディアト
レンド、図書館建築、経済危機の図書館
– 『図書館雑誌』の2009年特集一覧
• トピックで追う図書館、学校図書館の現在、指定管理
者制度、図書館情報学教育の行方、地域の課題と向
き合う、ウェブ検索時代の目録、2010年「国民読書年」
に向けて、YAサービス新世紀、図書館大会への招待、
都道府県立図書館のこれから、大学図書館2009
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ドイツの図書館の特徴・状況
• 教育行政・文化行政を州が所管しており、中
央図書館もいくつかの機関で分担する分散
型システム
• 戦災後、東西分裂から再統一
• 図書館法が一部の州を除いて存在しない
• 図書館振興プロジェクト「Bibliothek 2012」を
展開中(ロビー活動も)
• ドイツ研究協会(DFG)の存在
• 移民問題
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図書館の種類
•
•
•
•
国家規模の学術図書館
中央専門図書館
大学図書館
公共図書館
• マックス・プランクデジタル図書館
• ドイツ学術協会(DFG)
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国家規模の学術図書館
機関名
ドイツ国
立図書
館(DNB)
広
義
の
国
立
図
書
館
国狭
立義
図の
書
館
創設年 所在地
メモ
1912年 ライプチヒ ・法定納本
・全国書誌
・標準化
1946年 フランクフ 2006年の法
ドイチェ・ビ
改定で「ドイ
ルト
ブリオテーク
ツ”国立”図
(DBF)
書館」と名称
1970年 ベルリン 変更
ドイツ音楽
資料館
ドイチェ・
ビュッヘライ
(DBL)
日本で言う
と…
書籍商
組合が
創設
NDL東京本
館
書籍流
通業界
が創設
NDL関西館
国際子ども
図書館
プロイセン文化財団ベ
ルリン国立図書館
1661年 ベルリン
バイエルン州立図書館
1558年 ミュンヘン インキュナブラで世界一 京都府立図
Library of the year 2008 書館
毎日8~24時まで開館
NDLの国際交換先
映画『ベルリン・天使の
詩』に登場
東京都立図
書館
帝国図書館
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ドイツ刊行物収集コンソーシアム
• フォルクスワーゲン財団の助成で開始
• 年代で区切って分担収集
• 目標は、ドイツ語圏の地域で出版された全ての印刷物の相互的なコレク
ション
分担年代
担当館
所在地
1450~1600年
バイエルン州立図書館
ミュンヘン
1601~1700年
アウグスト大公図書館
ヴォルフェンビュッテル
1701~1800年
ゲッチンゲン大学図書館
ゲッチンゲン
1801~1870年
フランクフルト大学およびゼンケンベ
ルク図書館
フランクフルト
1871~1912年
ベルリン国立図書館
ベルリン
1913年~
ドイツ国立図書館
ライプチヒ、フランクフ
ルト、ベルリン
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利用料金
• ドイツ国立図書館(DNB)の場合
– 年間カード:38.00ユーロ(4,750円)
– 月間カード:15.00ユーロ(1,875円)
– 一日カード:5.00ユーロ(625円)
– 書誌調査・文献収集:10.00ユーロ(1,250円)
– セルフコピー:0.10ユーロ(12.5円)
– ガイドツアー 一人につき:2.00ユーロ(230円)
自己財源:2,914,000ユーロ(3億6千4百万円)
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中央専門図書館
• 戦後復興の重点領域として創設
• 国と州とで共同運営
• 特別収集領域(SSG)の分担はするが、DFGからの助成は受
けていない
• 3機関共同でGoPORTISを提供
創設年 所在地
メモ
日本で言うと…
技術情報図書館(TIB)
1959年 ハノーバー 国が30%
東工大図書館
ドイツ経済中央図書館
(ZBW)
1966年 キール
国が半分
一橋大図書館
ドイツ医学中央図書館
(ZB MED)
1969年 ケルン
国が30%
大阪大生命科
2001年に農学中央 学図書館
図書館を統合
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大学図書館
• 大学が基本的に州立であるため、州立図書
館を兼ねるケースも多い
• 特定収集領域(SSG)やドイツ刊行物収集コン
ソーシアムを担当する場合も
ゲッティンゲン大
学図書館
創設年
所在地
メモ
1734年
ゲッティンゲン
Library of the year 2002
ドイツの大学図書館では五指に
入る規模
館長はCOAR議長ノルベルト・ロッ
ソウ氏
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公共図書館
• 今回の訪問先には(市町村立という意味では)ナシ
• 州内での協力ネットワーク
• 教会図書館(特にカトリック系)多し
国名
調査年次
人口(千
人)
図書館数
10万人当
たり図書
館数
貸出数
(千点)
1人当たり
貸出数
ドイツ
1998
82,090
12,134
14.78
324,560
3.95
日本
2003
126,690
2,735
2.16
570,920
4.51
アメリカ
1995
276,200
15,946
5.77
1,693,420
6.13
イギリス
1998
58,740
4,630
7.88
573,390
9.76
フランス
1997
58,900
2,577
4.38
85,560
1.45
公共図書館の国際比較(文科省「諸外国の公共図書館に関する調査」(2005))より
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マックス・プランクデジタル図書館
• 図書館とあっても、いわゆる図書館にあらず
• 図書館つきの研究開発室とか研究開発セン
ターに近い
• 日本で言うと?
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ドイツ学術協会(DFG)
• 研究プロジェクトなどに対して助成
• 学術情報流通への助成テーマ
– a)電子ジャーナルのナショナルライセンスの確保
– b)ドイツ国内の文献提供
– c)アナログ文化財のデジタル化
– d)オープンアクセス
– e)第一次データ
• 日本で言うと、日本学術振興会(JSPS)
• プロジェクトの影にDFGあり
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訪問先図書館の規模一覧
機関名
常勤職
員数
図書館の種類
ドイツ国立図書館(DNB) 13.10(図書) 52.73
621.9
国立図書館
ゲッチンゲン大学図書館 6.03
26.03
213.16
大学図書館
州立図書館
技術情報図書館(TIB)
7.80
11.38
150
中央専門図書館
バイエルン州立図書館
9.39
66.38
456
国立図書館
州立図書館
マックス・プランクデジタ
ル図書館(MPDL)
*
*
*
研究開発室
国立国会図書館(NDL)
9.29(図書)
216
898
京都大学附属図書館
6.25(図書)
17.00(資料
購入費のみ)
118
東京都立図書館
2.47(図書)
10.00
162
英国図書館(BL)
13.73(図書) 203.87
蔵書数(百
万冊)
予算(億円)
1,977
各館HPの統計と
「日本の図書館」
(2008)より作成
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まとめ
• 日本と同じ点
– 学術情報流通への強い関心、試行錯誤
• 日本と違う点
– 大学のポジションが州に付いている
– 国立図書館機能が分担されている
– 機関連携が上手くいっている(ように見える)
– EUを中心に国際プロジェクトが多数
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