Governor’s Monthly Letter Vol 12 2012.6 「ロータリーの未来」 1905 年にポール・ハリスらによって始まったロータリークラブは、新た な二世紀目に入っている。 ロータリー発生の地アメリカでは、2001 年 9 月 11 日のテロが発生、また、 2008 年にリーマン・ショックなどの金融危機にも見舞われ、その対応と処 理に追われ、その結果、ここ 10 年余り世界中は混乱の極みにあったといえる。 荷物を運ぶヤク（1） しかし、混乱の本家本元のアメリカは、混乱状況にあったにもかかわら ず、長期戦略により、二十世紀後半には中東からの石油に 6 割も依存して いたが、現在は北米、中米、メキシコなど、アメリカの勢力圏内の国々か ら 7 割をまかなうようになった。さらには、オイル・サンド、シュールオ イル、シュールガス（採算ベースの 100 ドルまでメジャーと一致協力して 戦略的に価格を引き上げてきた）さらに、採掘方法の改革などにより、ア メリカは 2 年後には石油製品の輸出国になるだろうといわれている。新し い油井、ガス井の発見などもあり、現在はアメリカ本土は石油と天然ガス の上に浮いている状態といわれている。 アメリカはエネルギー資源を含むすべての主要な天然資源、食料資源と も十二分にあり、この地球の上で唯一「自給自足」できる国といっていい。 また、先進国の悩みである少子高齢化の問題はなく順調に人口が増加し プリムラ・シッキメンシス（2） ている。国連の教育白書の中で世界の優秀大学 20 校の内、アメリカの大 学が 17 校ランクインしており、民間と大学との産学共同により未来の科 学・技術のあらゆる分野において、他国に対して圧倒的な力を持ち、科学・ 技術の革新的発明、発見などの成果を上げることが予想され、未来に対す 2011−2012 第 2610 地区テーマ INNOVATIONS FOR THE ROTARY CLUB ― ロータリーに新風を ― る備えも万全であるといえる。従来より軍事力は飛びぬけており、現在の アメリカは、この地球上で「もはや何にも恐くない、恐れるものがない」状 態である。アメリカは国是である「地球上のすべての国と地域に民主主義 を」を強力に実行に移すだろう。現在すでに「アラブの春」が始まっている が、アフリカ諸国、中東諸国、そして超大国中国にも 2030 年頃までに春 がやってくるものと思われる。 その結果、地球上のすべての国と地域にロータリークラブの存在が実現 し、世界平和が大きく大きく前進するだろう。 そしてこれからも、江戸時代の参勤交代のようにサンディエゴで、世界 中からガバナーエレクトを集めて、国際協議会（エレクト研修）が行われる だろう。日本が将来ダントツの世界一の経済大国（絶望的ではあるが、万 に一つ可能性があると思いたい）となり、日本ロータリーが世界のロータ リーの牽引力となり、東京で恒常的に国際協議会が開催されることを夢見 ている。 最後に、二十一世紀のロータリーの未来も世界の未来もアメリカの手の こころの中を見つめよう 博愛を広げるために Reach within to Embrace Humanity 内にあるといえる。 国際ロータリー第 2610 地区 2011-2012 年度ガバナー 炭 谷 亮 一 Rotary International District 2610 1 ラオス農業支援センター竣工式・国際大会報告 国際ロータリー第 2610 地区 2011-12 年度 地区幹事兼国際大会推進委員長 岩倉舟伊智（金沢百万石ロータリークラブ） 今月 5 月 8 日、関西空港から 10 名のロータリアンが、国際大会ならびにラオス農業支援センターの竣工式に 向け出発した。金沢香林坊 RC 梅村氏、小幡氏両名は山野金沢市長と共に台湾の八田興一墓前祭に参加した後、 バンコクで皆と合流し 5 月 9 日ビェンチャン入りした。強行スケジュールであったため、お二人の体調が心配で あった。 私（岩倉）と野々市 RC 中村啓二郎氏は、国際大会には出席せずビェンチャンに直行した。建物の検査、竣工式 の準備、今後の覚書の締結、経費の支払、開業に向けての準備の打合せ等を行なった。ほか 6 名は国際大会の最 終日に参加した。 5 月 10 日夜、社会教育局ボーバン副局長と炭谷ガバナーが、このプロジェクトの教育省と 2610 地区との覚書に 調印しその後、前夜祭パーティーが行なわれ、ラオス側は、教育省社会教育局ボーバン副局長、同オッペン副局 長、ビェンチャン特別市教育委員会学校教育局次長と日本から 12 名のロータリアンが参加した。ガバナーが飛行 機の中で国際大会帰りの在アジア名誉総領事のガッペンバーガー氏（スイス人でロータリアンでもある）と知り合 いになり、本プロジェクトに大変興味を示され、その奉仕の姿を見たいということになり、ガバナーがお誘いし、 前夜祭から参加した。前夜祭では、国際的に平和について語り合い、大いに盛り上がった。 翌 11 日、IT センターにて金沢百万石 RC 有志の寄贈によるパソコン 10 台が IT センター長に引き渡された。同日 10：00 から 40℃を超える暑さの中、大沼住職による農業支援センター落慶法要が執り行われ、引き続き炭谷ガバ ナーからオッペン副局長に「建物の鍵」が引き渡された。 2610 地区会員各位、炭谷ガバナー、世界社会奉仕委員長下出宏氏、富山西 RC、金沢香林坊 RC、白山石川 RC、野々 市 RC、小松 RC、金沢百万石 RC が本事業に関する感謝状を所轄大臣からいただいた。中田氏が小松東 RC 創立 35 周年記念事業 「ラオス第 2 幼保園建設事業」の感謝状も併せていただいた。 地元の学生や村人から盛大な歓迎を受け、ランチパーティーを催していただき、竣工式は、暑さによる脱落者も ひとりもなく、無事終了した。その日の午後から、ラオス北部のグランプラバン （世界遺産） を観光し、帰路に着いた。 国際大会初日からの参加と、ラオス農業支援センター視察を絡めた旅行日程を進めていたが、大手旅行会社に 席を押さえられ、希望の日程どおりには組めなくなってしまうというアクシデントもあったが、大変有意義なも のとなった。国際大会には最終日しか参加できなかったが、盛大な大会であったと聞いた。来年はぜひ皆さんと 共に初日から参加したいと思う。 ラオスの人々は本当に温かくてやさしい。このラオスの事業に実際に参加し、現地の人々と土に触れ、文化に 触れ、この事業の意義を大いに納得してもらえたものと思う。 建物を建てただけではなく、本来の目的である農業教育に関してこれより後 2 年間を力強く支援しなければな らないと心に誓ったものである。なお、開業は 8 月を予定している。 【竣工式 ビェンチャン側参加者】 教育省社会教育局オッペン副局長、ビェンチャン特別市教育委員会学校教育局次長、 サイタン郡教育委員会学校教育課長、IT センター長、バンカム地区中・高等学校長、村長、夫人同盟、青年同盟、 学生、村人、その他 【ロータリアン参加者】 ガバナー 炭谷亮一 金沢香林坊 RC 会長 梅村光男、地区副幹事 小幡謙二 野々市 RC 地区副幹事 中村啓二郎、地区会員拡大増強委員会副委員長 柳生好春 白山石川 RC ガバナー補佐 福田 裕 金沢百万石 RC 幹事魏賢任、大沼俊昭、木村幸生、武藤清秀、小松東 RC 中田武太 地区幹事 岩倉舟伊智 2 Rotary International District 2610 Governor’s Monthly Letter 2012.6 vol.12 国際ロータリー 田中作次会長エレクト 国際大会会場 にて ラオス文化センター 国際ロータリー カルヤン・バネルジー会長 前夜祭パーティー調印式 ラオス IT センター ボーバン副局長と 落慶法要 大沼住職 贈呈式 オッペン副局長と 前夜祭パーテ ィー 中田武太会員と第二幼稚園スタッフ 竣工式 記念撮影 バンコク IMPACK 会場 竣工式挨拶 炭谷ガバナー 竣工式 花束贈呈 Rotary International District 2610 3 Ｇ.Ｓ.Ｅ. 受入を終えて 国際ロータリー第 2610 地区 R 財団委員会奨学金・学友・GSE 小委員長 中村 哲郎 3 月 24 日、カナダトロント北部の 7010 地区からＧ . Ｓ . Ｅ .（研究グルー プ交換）チーム 5 名が到着してから、あっという間 1 か月が経ちプログラ ム終了の時を迎えました。 Ｇ . Ｓ . Ｅ . はロータリー財団の教育プログラムの 1 つです。異なる国の 2 つのロータリー地区が、ロータリアン 1 名をチームリーダーとして、40 歳以下のロータリアンでない 4 人のチームメンバーからなる専門職業の 研究グループをお互いに派遣し受入れ合います。地元社会のニーズや国 際化の進む職場のニーズに対応できるように若い成人の専門的職能や指 導力を磨くことを目的として、職業訪問、文化体験、親睦の機会などの 活動に参加します。 昨年 9 月に中川パーストガバナーを 小松空港到着 リーダーとして当地区よりチームを派遣し、充実した研修の機会をいただきま した。この度、 お迎えしたリーダーのリチャードさんはじめ素晴らしいメンバー の方ばかりでした。日本語でのプレゼンテーションなど精力的な活動はもちろ んのこと、訪れる先々でたくさんの方々との強い絆ができました。送別会では お別れが名残惜しいという声をたくさん耳にしました。自分自身も間違いなく、 彼らから多くの感動をいただいた 1 人でした。皆様のご協力でこのプログラム 中川 PDG 宅ホームパーティー 金沢市山野市長表敬訪問 が成功裏に終了し、ロータリーの友情がより一層深まったことを心より感謝申 し上げます。有難うございました。 富山 RC 米田会長宅にて 富山松川の桜とホストファミリー 立山雪の大谷 4 Rotary International District 2610 送別会 （ホテル日航金沢） Governor’s Monthly Letter 2012.6 vol.12 2610 地区例会出席報告（5 月分） 分 区 富 山 第 １ 分 区 富 山 第 ２ 分 区 クラブ名 朝 日 88.00 25 80.12 47 24 25 黒 部 67.74 63 66.51 66 19 18 − 1 黒部中央 67.86 62 70.52 64 20 21 1 滑 川 75.00 54 77.40 50 8 8 0 入 善 92.19 15 87.54 27 18 16 − 2 宇 奈 月 61.11 66 67.14 65 19 18 − 1 魚 津 85.14 30 86.69 28 33 35 魚 津 西 69.84 60 72.60 61 27 26 − 1 2 8RC 75.86 9 76.06 9 168 167 − 1 100.00 1 100.00 1 25 24 − 1 分 区 石 川 第 １ 分 区 A 石 川 第 １ 分 区 B クラブ名 河 通算 出席率 当月 通算 会員数（人） 出席率 （％） 順位 順位 期初 月末 増減 （％） 北 76.56 53 85.82 30 17 16 − 1 河 北 南 82.50 38 80.67 44 17 20 3 金 沢 90.05 22 90.21 19 103 113 10 金 沢 東 90.60 21 90.24 18 88 93 5 金沢香林坊 76.81 50 76.30 53 83 90 7 8 94.67 8 60 59 − 1 金 沢 南 97.64 6RC 85.69 4 86.32 白 山 100.00 1 91.46 15 39 39 0 白山石川 80.84 45 86.48 29 36 37 1 金沢百万石 63.89 65 74.36 59 38 36 − 2 金 沢 北 78.06 48 74.76 57 49 49 0 金沢みなと 87.33 27 89.97 21 46 50 4 金 沢 西 91.43 17 93.12 11 43 51 8 野 々 市 93.44 13 93.04 12 32 33 1 4 283 295 12 3 368 391 23 上 市 83.33 34 76.37 52 27 27 0 立 山 70.83 59 77.40 49 24 24 0 富 山 76.58 52 79.09 48 97 96 − 1 富山シティー 67.19 64 73.27 60 77 80 3 富 山 南 74.52 56 72.01 62 57 60 3 富山みらい 80.98 44 81.37 39 74 78 4 加 賀 83.89 32 89.26 24 49 45 − 4 富 山 中 82.30 40 83.71 33 51 54 3 加賀中央 91.92 16 89.03 25 33 34 1 富 山 西 87.83 26 91.54 14 59 54 − 5 82.61 36 84.08 32 32 32 0 富山大手町 71.68 58 74.57 58 37 40 3 81.94 41 82.14 38 61 63 2 8 528 537 9 石 加賀白山 川 小 松 第 小 松 東 ２ 分 小松シティ 区 能 美 87.22 28 88.66 26 40 40 0 85.00 31 80.29 46 37 35 − 2 93.08 14 90.15 20 59 61 2 山 81.82 42 80.92 42 22 22 0 射 79.52 8 80.93 水 96.19 11 93.94 10 30 29 − 1 井波庄川 81.05 43 83.02 35 18 20 新 湊 90.88 19 90.86 17 49 46 − 3 新湊中央 82.50 38 81.12 40 19 20 1 高 岡 99.62 5 99.96 3 66 69 3 高岡万葉 98.70 7 99.61 4 73 77 4 砺 90.83 20 83.29 34 54 53 − 1 波 7RC 氷 富 山 第 ４ 分 区 1 越中八尾 10RC 富 山 第 ３ 分 区 通算 出席率 当月 通算 会員数（人） 出席率 （％） 順位 順位 期初 月末 増減 （％） 2012 年 5 月末日現在 91.40 2 2 90.26 2 309 314 5 見 96.51 9 95.04 7 43 43 0 氷見中央 90.00 23 75.75 55 15 15 0 南 砺 91.34 18 92.82 13 53 51 − 2 小 矢 部 85.25 29 91.03 16 32 33 1 小矢部中 99.34 6 96.10 6 38 38 0 高 岡 北 96.34 10 96.25 5 43 45 2 高 岡 西 100.00 1 100.00 1 54 54 0 7RC 94.11 1 92.43 1 278 279 1 66RC 合計 84.56 84.62 2,609 2,659 50 7RC 85.00 中 8RC 羽 石 川 第 ３ 分 区 85.94 3 85.57 82.62 35 89.45 23 40 40 中能登まほろば 83.75 33 82.78 36 21 20 − 1 中 島 78.33 47 80.48 45 18 17 − 1 七 尾 79.37 46 76.75 51 58 59 七尾みなと 76.88 49 81.01 41 44 42 − 2 志 賀 82.61 36 82.33 37 20 23 富 来 76.66 51 80.72 43 15 15 0 6 216 216 0 80.03 穴 水 門 能 7 81.93 13 回目 米山功労者 マルチプル 田村 進 24年4月6日（富山みらいRC） 7 回目 新会員・退会者 新しい会員方々 益 田 貴 司 24年４月３日（富山RC） 小 澤 敏 夫 24年４月24日（富山RC） 高 道 一 栄 24年４月６日（富山南RC） 長 原 裕 治 24年４月13日（富山南RC） 横 田 雅 俊 24年４月20日（富山南RC） 布 目 大 24年４月３日（富山みらいRC） 津 幡 清 志 24年４月17日（富山みらいRC） 阿 部 修 24年４月12日（高岡RC） 山 田 博 勝 24年４月27日（砺波RC） 上 田 正 宙 24年４月11日（高岡北RC） 東 信 24年４月18日（高岡西RC） 沖 昌 幸 24年４月18日（高岡西RC） 平 野 利 康 24年４月２日（金沢東RC） 向 井 健 夫 24年４月２日（金沢東RC） 澤 田 勝 宏 24年４月13日（七尾RC） 退会された方々 宮 川 治 樹 24年４月30日（富山西RC）転勤 和 田 格 24年4月１日（新湊RC） 紙 子 昭 佐 久 24年３月31日（能都RC） ご冥福をお祈り致します 13 31 14 1 前 69.45 61 71.49 63 9 都 100.00 1 94.67 9 30 29 − 1 9 0 珠 洲 72.21 57 75.51 56 25 25 0 内 浦 75.00 54 75.86 54 11 14 3 輪 島 95.27 12 89.52 22 38 37 − 1 7 126 128 清水 誠三（金沢南RC） （名誉会員） 24年4月16日（89歳） ㈱ジェスクホリウチ元会長 昭和39年金沢東RC入会 昭和44年金沢南RC チャーターメンバー 1989-90年度 第261地区ガバナー 昭和62年 金沢香林坊RC特別代表 3 84.34 6 81.90 米山功労者 メジャードナー 桝田敬次郎 24年４月24日（富山RC） 1 24 83.54 ポール・ハリス・フェロー 横田 格 24年４月11日（富山中RC） 0 89.28 6RC メジャードナー 桝田敬次郎 24年４月24日（富山RC） 5 333 332 − 1 咋 7RC 石 川 第 ４ 分 区 5 86.17 R 財団・米山寄付者 四十万谷郁男（金沢南RC） 24年4月22日（78歳） ㈱四十万谷本舗 代表取締役会長 昭和57年11月入会 1988－89年度 幹事 田辺 俊雄（羽咋RC） 24年4月18日（92歳） ㈱田辺食品代表取締役 チャーターメンバー 2 6 月の行事予定 地区国際青少年交換学生派遣・ 受入合同オリエンテーション 5 日（火） 富山みらいＲＣ 15 周年 10 日（日） 中島ＲＣ 40 周年 14 日（木） 富山西ＲＣ 40 周年 2 日〜 3 日 東日本大震災義援金報告 リファーレ 富山第一ホテル 和倉温泉加賀屋 オークスカナルパークホテル富山 16 日 （土） 地区財務監査合同委員会 17 日 （日） 小松東ＲＣ 35 周年 17 日 （日） 第 34 回ローターアクト年次大会 地区国際青少年交換委員会 17 日 （日） 短期交換留学オリエンテーション ホテル金沢 ホテルサンルート小松 ラポルトすず 金沢市内 皆様からのご支援に感謝いたします。ご協力ありがとうございました。 １．4 月 25 日 小松東ロータリークラブ 78,240 円 第17回石川2分区8RC親睦ゴルフ大会兼東日本大震災チャリティーコンペ ※潮津ガバナー補佐主催のもと、小松東 RC ホストにて開催され集め られた義援金です。 １．5 月 13 日 河北ロータリークラブ 291,710 円 チャリティー茶会にて １．地区協議会にてご報告いたしましたとおり、地区大会余剰金のうち、 83,722 円を義援金とさせていただきました。 TOTAL 32 件 3,044,561 円 【支援内訳】 １,600,000 円 2520 地区 （岩手・宮城県） へ送金済 500,000 円 2530 地区 （福島県） へ送金済 ※前月号にて報告いたしております。 現在、追加のご支援を含めた残金は 943,369 円 です。支援の最終報告は月信 8 月号にてご報告 申し上げます。 Rotary International District 2610 5 トルコ石の女神 チョー・オュー（8,201m） 世界第 6 位 撮影地 ゴーキョ（4,750m）（3） ガバナーからの手紙 「二人の写楽」 炭谷 亮一 フランスの文人アンドレ・マルローは「写楽」を評して［まさに写楽の世界は風刺であり、排判で ある。それだけではなく人間の瞬間的な人格をも表現し、ある種の威厳さえ備えている。だから「近 代」の肖像画たりえている。そこが「写楽」の素晴らしさである。］とべた褒めである。 又、日本では、梅原猛は「写楽」問題は単に美術史だけの問題ではなく、邪馬台国がどこかという 問題に匹敵するくらい、日本史、日本文化史上の大きな謎でありロマンであると。 この「写楽」問題を昨年 5 月にＮＨＫのＢＳで 2 回にわたって放映した。幸いにも私は 2 回の放映を観ることが出来 た。番組では「写楽」の正体は阿波の能役者、斉藤十郞兵衛との説が近年有力とされているとの内容であった。実は その根拠が 2007 年にギリシャのコルフ島で「写楽」の署名の入った肉筆画が発見され、専門家はこれを真蹟と鑑定 した。しかし、私には映像で見る限り稚拙な表現力で、とてもとても「写楽」作品と思えなかった。放映の中で「写楽」 作品の制作順に並べた約 80 枚を比較して見ると前半、後半で作風にずいぶん違いがあることに驚かされた。前半は ユニークな構図とデフォルメされた表現力を持つ傑作が多かったように思う。後半は、印象に残るような作品はほ とんど無く、ごく普通の浮世絵であった。その時、私は前半と後半で作者が違うのではとの感想を持った。後半の 「写楽は阿波の能役者、斉藤十郞兵衛で間違いないだろう。しかし前半の「写楽」については、作品の持つ独特の構図、 力強さ、デフォルメされた表現を発想し描ける浮世絵師は「あの男」を置いてほかにいないと考えるようになった。 「あの男」名は当時の画号は「勝川春朗」、のちの「葛飾北斎」である。「春朗」は「写楽」が活躍した寛政 6 年は完全に休 筆しており、かわりに「写楽」の画号で作品を発表していたのではと考えられる。ではなぜ、「写楽＝北斎」は前半で やめてしまったか考察してみた。「写楽＝北斎」の斬新でユニークな作風は当時、粋で新しい物好きの江戸っ子達を 大いに驚かせ、人気を博したことは想像できる。しかし、「女形」の絵を美しく描こうとせず、いかにも男がふんし ているように真正直に描いた為、「女形」の役者からも江戸っ子達からも不評で、版元から「センセイ」もう少し美し く描いていただけませんかとの要請に「シャラクセイ !!」「アホクセイ !!」とばかり筆を投げ出し、そのあとのピンチ ヒッターが斉藤十郎兵衛だったのだろう。「しゃらくさい・（写楽）セイ」と「おほくさい・ア（北斎）」というシャレと ユーモアの「捨てゼリフ」を画号にした二人の天才浮世絵師「写楽」と「北斎」。 浮世絵師で未だかつて、こんなフザケタ画号はほかにいない。作風から見てもこの二人は同一人物に違いない !! シャレは絶妙、強烈である。「江戸のスーパースター」葛飾北斎は並外れた個性の持ち主で現代で言えば「ギネス ブック」ものである。 その一端を紹介してみよう。江戸時代で 6 尺の大男、90 歳まで長生きした「波瀾万丈の生涯」、根無し草同然の 90 数回の転居癖、30 数回変えた画号。時には、弟子に貸したりもした。気位高く、ケンカ早く、強情、尊大、アマノ ジャク、シャレ心旺盛、諧謔精神旺盛で、世間をアッと言わせて人を食い、超売れっ子なれど長屋暮らしの借金渡世、 破天荒な奇人、超スーパースター「北斎」の人となりである。 「写楽とはいったい、何者ぞ」巷間の声も何のその、正体探しは野暮の骨頂。 「写楽セイ」と捨てゼリフを吐いて闇に消えた当代随一のシャレ男の正体は ????? 国際ロータリー第 2610 地区 ガバナー事務所 2011-2012 Governor 炭谷亮一 〒 920-0022 金沢市北安江 4 丁目 1 番 27 号 イワクラビル 2F TEL 076-255-2007 FAX 076-255-2008 E-mail [email protected] URL http://www.rotary2610.jp/ 6 Rotary International District 2610 撮影：写真家 吉田淑子氏（写真 1、2、3）
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