前立腺がんの治療方針

初期治療プロトコール 前立腺癌(前立腺針生検、CT、MRI、骨シンチにて進行の程度を検査)
偶発・触知不能癌
限局癌
局所進行癌
周囲進展・転移癌
T1a T1b T1c T2a T2b T2c T3a T3b T4
手術療法①
△
放射線療法
組織内照射②
×
外照射③
△
内分泌療法④
△
待機療法⑤
○
T1a
T1b
T1c
T2a
T2b
T2c
T3a
T3b
T4
前
立
腺
生
検
に
て
病
期
確
定
N1又はM1
○
○
○
○
○
△
△
×
○
○
△
△
×
×
×
×
○
○
○
○
○
○
△
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
△
△
△
×
×
×
×
TUR-P(前立腺肥大症手術)での切除組織の5%以下に偶発的に癌を発見
TUR-P(前立腺肥大症手術)での切除組織の5%以上に偶発的に癌を発見
前立腺針生検にて癌が確認されたが,直腸診や画像にて病巣が確認できない
片葉の1/2以内の進展
片葉の1/2をこえ広がるが,両葉には及ばない
両葉への進展
被膜外へ進展する腫瘍
精嚢へ進展する腫瘍
隣接臓器に浸潤する腫瘍
N1
所属リンパ節転移あり
○
△
×
M1
適応
一部可能
適応外
遠隔転移あり
①
前立腺内にとどまっている癌に対しては、手術療法が最も根治を期待できます。骨盤内のリンパ節を
郭清した上で、前立腺を精嚢腺とともに摘出し、膀胱と尿道を吻合します。後年再発しても、放射線治療や
内分泌療法での追加治療が可能です。一般的には平均余命が10年以上ある方に行います。
Stephenson AJ et al. Prostate Cancer–Specific Mortality After Radical Prostatectomy for Patients Treated in the Prostate-Specific Antigen Era. J Clin Oncol 2009.
②
放射線を放出する物質を密封した小さな線源を、前立腺の中に永久的に埋め込み照射する方法です。
通常、治療は1週間以内の入院で行われます。早期癌の中でも、悪性度が低いもの(cT2a以下、
グリソンスコア6以下、PSA10以下)がいい適応であると考えられます。
Merrick GS et al. Permanent interstitial brachytherapy in younger patients with clinically organ-confined prostate cancer. Urology 2004.
③
転移のない前立腺癌に対して、体の外から高エネルギーのX線を前立腺に照射して治療する方法です。
月曜から金曜まで毎日約2ヶ月間X線照射を行います。通常は外来通院で治療を行います。悪性度が高いもの
(cT3a以上、グリソンスコア8以上、PSA20以上)に対しては、放射線治療前後に内分泌療法を併用します。
Kumar S et al. Neoadjuvant and adjuvant hormone therapy for localized and locally advanced prostate cancer. Cochrane Database Syst rev 2006.
④
内分泌治療は基本的には転移のある癌に対して行われ、転移した部位にも同様に効果が期待できます。
内服薬と1~3ヶ月に1回の注射を継続します。手術療法や放射線治療後の再発に対しても効果があります。
また早期癌の場合でも、手術や放射線治療を希望しない患者さんに行うこともあります。
Akaza H et al. Combined androgen blockade with bicalutamide for advanced prostate cancer: long-term follow-up of a phase 3, double-blind, randomized study for survival. Cancer 2009.
⑤
何も治療を行わず厳重に経過を観察していく方法です。病理結果が、悪性度の低い癌で少量しか
認められず、積極的に治療を行わなくても予後に影響しない可能性が高い場合に選択可能です。cT1c以下、
グリソンスコア6以下、針生検で3本以内、PSA10以下で高齢の方がいい適応だと考えられます。
Shappley WV 3rd et al. Prospective Study of Determinants and Outcomes of Deferred Treatment or Watchful Waiting Among Men WithProstate Cancer in a Nationwide Cohort.
J Clin Oncol 2009.