サークルベッドを使用する小児用の転倒・ 転落リスク

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資料
サークルベッドを使用する小児用の転倒・
転落リスクアセスメントツール:
CFRAT第2版および第3版の妥当性の検証
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藤田優一
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二星淳吾
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藤原千惠子
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キーワード: 安全管理,転倒・転落,小児,サークルベッド
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要 旨
FRAT 第2版
サークルベッドを使用する小児用の転倒・転落リスクアセスメントツール:Cおよび第3版の妥当性を明らかにすることを目的として,10病棟に入院したサークルベッドを
.歳)を対象に前向きコホート調査を行った.アセスメント回
使用する小児6
97名(平均年齢24
,
数は計13
15回であり,調査期間中に報告された転倒(の危険)は25件,転落(の危険)は26件
であった.転倒(の危険)の発生を有意に高めた危険因子は「スリッパまたはサンダルを履か
.
.)」「お子様が廊下や病室を走っている時に,注意できていないこ
4,OR=43
せている(p=00
.
.)」の2項目であり,転落(の危険)の発生を有意に高めた危険因
とがある(p=00
2,OR=28
.
.)」
子は,
「ベッドから離れる時に,ベッド柵を上げ忘れることがある(p<00
1,OR=97
「身体
.
.)」の2項目であった.アセスメントツール
症状が改善して活気が出てきた(p=00
4,OR=20
.
.
第2版の AUC(ROC曲線下面積)は08
1であり,カットオフポイントが13点で感度07
8,特
.
3を示した.第2版の調査結果をもとに危険因子の配点の異なる案1~3のアセスメン
異度07
受付日:2014年8月9日 受理日:2014年11月25日
1) 兵庫医療大学看護学部看護学科 Sc
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2) 兵庫県立こども病院 HyogoPr
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3) 大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 Cour
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*責任著者 Cor
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.18,No
.2,2014 125
日看管会誌 Vo
トツール第3版を作成し,第2版調査時のデータを用いて分析した.その結果,案1~3の
AUCは08
.
.
3~08
4であり,アセスメントツール第2版および第3版は中程度の予測精度を示し
た.
Ⅰ.緒言
因子34項目(藤田,藤原,2012a
)をデルファイ法
の調査によって明らかにし,その結果をもとにサー
入院患者の転倒・転落率はその施設の医療の質を
クルベッドを使用する小児用の転倒・転落リスクア
示す指標のひとつと言われており,転倒・転落を防
FRAT(シーフラット:Chi
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セスメントツール C-
止するために様々な対策が実施されている.それら
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)第1版を作成した.
の対策のひとつとして患者の転倒・転落の危険性を
そして,アセスメントツールを使用しサークルベッ
判定する転倒・転落リスクアセスメントツールがあ
.歳)を対象に前
ドを使用する小児90名(平均年齢33
る.
向きコホート調査を行った.その結果は,転倒や転
成人看護の領域では,国内のアセスメントツール
落の発生と有意に関連していた危険因子は計12項目
に関する研究論文は,2003年から2008年までの5年
であり(藤田ら,2012b),カットオフポイントを13
間で52件が報告されている(森田,飯島,2009).そ
.
.
5,特異度は04
7であった.さ
点とした時の感度は09
の一方で小児看護の領域では,アセスメントツール
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に関する論文は1983年から2012年の30年間で国内文
(以下,ROC曲線とする)を作成し,ROC曲線下面
献は7件,国外文献で7件の計14件と少ない現状が
eaundert
hec
ur
ve;以下,AUCとする)
積(Ar
).また,国内の小児用のア
みられる(藤田,2013a
.
6と報告されている(藤田,藤原,2013b).
は07
セスメントツールの研究では大規模な前向きコホー
本研究では,それらの調査結果をもとに改良した
ト調査はされておらず,統計学的な妥当性の検証は
FRAT 第2
サークルベッドを使用する小児用の C-
十分にされていない現状がみられた.国外の小児用
版および第3版について述べる.
のアセスメントツールの研究ではケースコントロー
ルスタディにより感度,特異度を算出し,アセスメ
ントツールの妥当性を検証した論文もみられる
Ⅱ.目的
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2009;Gr
2011).
(Hi
我が国の小児医療の特徴として,入院している小
本研究の目的は以下の2つである.
.%と大半に家族が付き添いをしてい
児のうちの731
サークルベッドを使用する小児用の転倒・転落リ
).また,入院
るという現状がある(藤田ら,2012a
FRAT 第2版の妥当性
スクアセスメントツール:C-
中の小児の転倒・転落事故のうち,家族がそばにい
として,危険因子と転倒・転落との関連,感度,特
.~834
.%(伊藤,
る状況で発生した事故の割合は714
異度,AUC(ROC曲線下面積)について明らかに
高橋,2007;前野ら,2012)と高いことが報告され
する.
ている.しかしながら,これまでに報告されている
上記の結果をもとに転倒・転落リスクアセスメン
国外のアセスメントツールは家族の状況については
FRAT 第3版を作成し,第2版調査時
トツール:C-
アセスメントの対象となっていなかったため,国外
のデータを用いて感度,特異度, AUCを明らかに
のアセスメントツールをそのまま我が国で使用する
する.
には若干の問題がみられた.そこで,我が国の小児
医療の特徴に合わせるために,家族の状況もアセス
メントの対象とし,家族とともにアセスメントを行
Ⅲ.方法
うツールの開発が必要と考えた.
)は,家族の状況も含めた小児
藤田,藤原(2
013a
1.用語の定義
のベッドからの転落の危険因子34項目と転倒の危険
転倒:立位や歩行時に高低差のない所で倒れること
.18,No.2,2014
126 日看管会誌 Vol
を示す.
お,研究者間で討議した上で,疾患,症状,治療に
転倒の危険:転倒するまでには至らないが,ふらつ
関する危険因子や性格に関する危険因子,家族の状
くなどして倒れる可能性があることを示す.
況などで重要と考えた危険因子については,アセス
転落:高低差のあるベッドなどから落ちることを示
メントツール第2版でも採用することとした.これ
す.
らの過程を経て,20項目の転倒・転落の危険因子と
転落の危険:転落するまでには至らないが,家族が
した.
ベッド柵を下げたまま小児のそばを離れるなどベッ
2)危険因子の配点およびカットオフポイントの
決定
ドから落ちる可能性があることを示す.
サークルベッド:ベッド柵および床面が高いベッド
危険因子の配点については,第1版と同様に1点
であり,ベッド柵を患者自身が上げ下げできない特
と2点の2段階のみとした.第1版の危険因子のう
徴を持つ.サークルベッドは,看護師が小児の年齢
ち,転倒・転落の発生を有意に高めた危険因子を2
や発達をもとに選択しており,おもに2~4歳の小
点,有意な関連はみられなかったものの研究者間で
児が使用している(渡部ら,2012).
検討し重要と考えた危険因子を1点と重み付けを
行った.
2.研究デザイン
カットオフポイント(ローリスクとハイリスクの
前向きコホート調査.
ボーダーラインとなる点数)は,第1版調査の結果
を参考にして13点以上をハイリスクとすることとし
3.調査対象
小児専門病院の6病棟および総合病院の小児病棟
た.
3)家族の回答欄
3病棟と小児と成人の混合病棟1病棟の計10病棟に
アセスメントツールには小児の性格に関する危険
入院したサークルベッドを使用する小児697名.
因子が含まれているが,入院したばかりの小児の性
格を看護師がアセスメントすること難しいため,入
4.調査期間
院時は家族に小児の性格や家族の状況について回答
2012年10月から2013年3月.
を求めた.その際に家族が記入する回答欄を設けた.
看護師はその結果をもとにアセスメントを行った.
5.アセスメントツール第2版の作成過程
1)危険因子の決定
また,「肉体的または精神的に疲れている」「付き添
い者または面会者の交代が多い」など家族自身の状
ア セ ス メ ン ト ツ ー ル 第 1 版 の 調 査(藤 田 ら,
況も転倒・転落の危険因子となるため家族に回答し
2012b)では転倒または転落と12項目の危険因子が有
てもらった.
意に関連しており,それらの相対危険度(RR)は,
さらに,入院日以降のアセスメントツールの評価
「2歳(階段をのぼれる)~3歳(片足で立てる)
日ごとに,家族が適切に転倒・転落防止対策を実施
.)」「男の子(RR=71
.)」「輸液スタンドを
(RR=85
できているかについて自己チェックできるよう
.)」
押して歩行(RR=218
「身体症状が改善して活気
「ベッドの上の整理整頓がされていないことがある」
.)」「親の言うことを聞かない
が出てきた(RR=68
「スリッパまたはサンダルを履かせている」について
.)」「危険に対する理解がまだできない
(RR=105
も家族に回答してもらい,家族の対策の実施状況も
.)」「行動が突発的で激しい(RR=63
.)」
(RR=75
転倒・転落の危険因子として調査した.
.)」
「付き添い者の交
「母への後追いをする(RR=32
4)転倒・転落(の危険)発生の集計
.)」
代が多い(祖父母が付き添う事がある)
(RR=70
nesetal
.
,
成人患者を対象とした先行研究(Hai
「家族が肉体的または精神的に疲れている(RR=
2009)では,患者の転倒・転落の同じエピソードを
.)」「お子様が走っていても家族は注意すること
159
みても看護師によって捉え方は異なることが明らか
.)」「活発(RR=算出不
を忘れる時がある(RR=54
となっており,全ての転倒・転落がインシデントレ
可)」であったと報告されている.これらの危険因子
ポートとして報告されているわけではないと考えた.
をアセスメントツール第2版の危険因子とした.な
特に小児患者においては,歩行が確立するまでの小
l
.18,No
.2,2014 127
日看管会誌 Vo
児の転倒は珍しいことではないため,小児が転倒し
し小児の転倒・転落防止について説明を行った.小
ても外傷がなければインシデントレポートとして報
児がローリスクであれば DVD,パンフレットに記
告されていないものが多数あると報告されている
載された対策(小児のそばを離れる時は必ず両側の
(藤田,藤原,2012b).そこで,インシデントレポー
ベッド柵を一番上まで上げる,ベッドの上は整理整
トの報告を捉えるのみでは不十分と考え,
「転倒の危
頓する,スリッパ・サンダルは使用しないなど)を
険」として小児がふらついて転倒の危険があった場
行った.ハイリスクであればローリスクの対策に加
面や「転落の危険」として家族がベッド柵を下げた
えて,
「①歩行時は看護師,または家族が必ず付き添
まま小児のそばを離れた場面などについても集計を
うようにする」
「②医療者間で誰がハイリスクか分か
することで,短期間でより正確な調査が実施できる
るようにカルテなどに目印をつけて情報共有し,注
と考えた.そのため,転倒または転落の危険の有無
意を払い見守る」
「③2回目以降のアセスメントでハ
とその日時,時間についてチェックができる集計
イリスクの場合には,再度 DVD の視聴とパンフ
シートを用いて集計を行なった.
レットによる説明を行う」を実施した.
6.アセスメントツール第3版の作成過程
8.調査内容
アセスメントツール第3版は,第2版の調査で転
アセスメントツールを用いて危険因子の有無と入
倒・転落の発生を有意に高めた危険因子のみを採用
院日,退院日,小児の年齢,家族の対策の実施状況
した.以下のように危険因子の配点が異なる案1か
について調査した.入院中の転倒および転倒の危険
ら3のバージョンを試作した.案1:危険因子の
の有無,転落および転落の危険の有無については,
オッズ比にかかわらず配点は全て1点とする,案
転倒または転落の危険の発生状況とその日時,時間
2:有意差のあるオッズ比の危険因子を2点,有意
についてチェックができる集計シートを用いて集計
差のない危険因子を1点とする,案3:配点はオッ
を行なった.
ズ比の値(2~10点)とする.
9.分析方法
7.調査手順
1)アセスメントの方法
危険因子のうち「身体症状が改善して活気が出て
きた」「輸液スタンドを押して歩行する」「(家族が)
アセスメントツールを用いて,転倒・転落のリス
肉体的または精神的に疲れている」などは入院中に
クを評価した(図1).まず,家族に小児の性格や家
変化するため,アセスメントから次のアセスメント
族の状況について回答を求めた.次に,看護師は家
までの期間を1つの分析単位として分析を行なった.
族の回答欄を参考にしてアセスメントを行い,ハイ
転倒(の危険)の有無と危険因子(家族の対策の実
リスクまたはローリスクであることを家族に伝えた.
施状況を含む)の有無との関連,転落(の危険)の
なお,2回目以降の評価日に家族が来院していない
有無と危険因子(家族の対策の実施状況を含む)の
場合には,
「家族の状況がわからないためアセスメン
有無との関連についてはフィッシャーの正確確率検
トはしない」としてしまうと,アセスメントをする
定を用いて分析した.
べきタイミングを逃すこととなる.そのため,研究
なお,転倒の危険(小児がふらついて転倒の危険
者間で協議の上,家族が不在であれば危険因子の有
があったなど)や転落の危険(ベッドから転落しそ
無は前回と同じ結果とすることとした.
うな状況があったなど)については,結果的に転倒
2)アセスメントの評価のタイミング
や転落は発生しなかったが状況によっては発生して
小児の入院日,入院2または3日目,手術直後,
いた可能性もあるため,転倒および転落と同義とみ
点滴抜去時,入院1週間ごと,転倒・転落発生時に
なして分析した.フィッシャーの正確確率検定にて,
転倒・転落のリスク評価を実施した.
有意差がみられた危険因子については相対危険度
3)対策
(RR)を算出した.さらに,転倒(の危険)の有無,
入院時のアセスメントの後,小児用の転倒・転落
転落(の危険)の有無を従属変数とし,有意差がみ
防止 DVD を視聴してもらい,パンフレットを配布
られた危険因子を独立変数としたロジスティック回
.18,No.2,2014
128 日看管会誌 Vol
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ᵐ
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ᵔᵇἫἕἛԗ‫׊‬ỉૢྸૢ᪶ầẰủềẟễẟẮểầẝỦ
ᵕᵇ˄ẨชẟᎍဇỉἫἕἛỆấ‫܇‬ಮử‫ݏ‬ẦẶỦẮểầẝỦ
ᵖᵇ࣏ᙲầễẟ଺ờỽὊἘὅử᧍ỜềẟỦẮểầ‫ٶ‬ẟ
ᵗᵇἋἼἕἣộẺỊἇὅἒἽử‫ޗ‬ẦẶềẟỦ
図1 サークルベッド用転倒・転落リスクアセスメントツール第2版
l
.18,No
.2,2014 129
日看管会誌 Vo
帰分析(強制投入法)を行い,オッズ比を算出した.
Ⅳ.結果
転倒・転落(の危険)の有無別でのアセスメント
ツールの合計得点について,差異の有意性を独立標
1.アセスメントツール第2版
本の t検定で分析した.合計得点と転倒・転落(の
.%)の平均年齢
対象者6
97名(うち男児3
85名5
74
危険)の有無との関係より,感度,特異度を算出し
.(SD=19
.)歳,平均在院日数は67
.(SD=56
.)
は24
た.ROC曲線(縦軸が感度,横軸が1-特異度)の
,
日,アセスメント回数は合計13
15回であった.調査
ndex(感 度 + 特 異 度 - 1)
作 成 と, Youden i
期間中に報告された転倒は18件,転倒の危険は7件,
e
i
ne
r
,
Pf
e
i
f
f
e
r
,
& Smi
t
h,
2000)の算出により,
(Gr
転落は12件,転落の危険は1
4件の計51件であった.
AUC(ROC曲線下面積),カットオフポイントの妥
.%,転落者の割合は17
.%であっ
転倒者の割合は24
当性について検討した.リスク判定(ローリスク,
た.
ハイリスク)と転倒(の危険)の有無の関連につい
転倒(の危険)の発生日は入院2日目が最も多く
てカイ2乗検定で分析した.
.%),次いで入院日,4日目,5日目がと
10件(400
アセスメントツール第3版の分析については,第
.%)であった.転落(の危険)の発
もに3件(120
2版調査時に得られたデータを使用した.第2版の
生 日 に つ い て も 入 院 2 日 目 が 最 も 多 く10件
分析と同様にアセスメントから次のアセスメントま
.%),次いで入院日7件(269
.%),3日目4件
(4
00
での期間を1つの分析単位とし,試作した危険因子
.%)であった.
(154
の配点の異なる案1から3の各アセスメントツール
転倒(の危険)の発生を有意に高めた危険因子は,
に対して,危険因子ありの場合にはその配点を与え
「生後9か月(つかまり立ちができる)~1歳11か月
合計得点を算出した.合計得点と転倒・転落(の危
.
.)」
4, RR=22
(1人で歩くことができる)(p=00
険)の有無との関係より,感度,特異度, AUC,
.
1, RR=
「輸液スタンドを押して歩行する(p<00
Youdeni
ndexが最も高くなるカットオフポイント
.)」「身体症状が改善して活気が出てきた(p<
33
を算出した.
.
.)」「行動が突発的で激しい(p<00
.
00
1,RR=44
1,
RR=49
.)」「活発(p<00
.
.)」「親の言う
1,RR=133
10.倫理的配慮
.
.)」
1,RR=45
「男の子(p=
ことを聞かない(p<00
本研究は兵庫医療大学倫理審査委員会の承認を受
.
.)」
00
2,RR=26
「付き添い者の交代が多い(祖父母
けて実施した.アセスメントツール第1版の著作者
.
.)」
が付き添う事がある)
(p=00
2,RR=27
「お子様
らより,改訂版の作成および研究実施についての了
が走っていても家族が注意できていないことがある
承を得た.小児の家族へ調査依頼書を用いて,研究
.
.)」「スリッパまたはサンダルを
1, RR=175
(p<00
の目的,方法,プライバシー保護等の倫理的配慮と
.
.)」の10項目であっ
履かせている(p<00
1,RR=63
対策,研究への協力は任意であること,研究に協力
た(表1).
しなくても不利益を被ることはないこと,研究結果
一方,転落(の危険)の発生を有意に高めた危険
は学会等で発表する可能性があることを説明した.
.
因子は,
「輸液スタンドを押して歩行する(p=00
1,
小児へはイラスト入りの小児用のパンフレットを用
RR=26
.)」「身体症状が改善して活気が出てきた
いて,研究の協力依頼と転倒・転落防止について説
.
.)」「行 動 が 突 発 的 で 激 し い
(p<00
1, RR=39
明した.入院日に家族がアセスメントツールの家族
.
.)」
(p<00
1,RR=34
「危険に対する理解がまだでき
の回答欄を記入することで,その後のアセスメント
.
.)」「親への後追いをする
ない(p=00
3, RR=59
も含めて調査に同意したと判断した.また,一度同
.
.)」「活発(p=00
.
.)」
(p<00
1, RR=49
2, RR=31
意した後であっても随時同意の撤回ができることを
.
.)」
「親の言うことを聞かない(p<00
1,RR=37
「男
説明した.
.
.)」「家族が肉体的または精
4, RR=22
の子(p=00
.
.)」「ベッドか
神的に疲れている(p=00
4, RR=24
ら離れる時に,ベッド柵を上げ忘れることがある
.
.)」
(p<00
1,RR=74
「ベッドの上の整理整頓がされ
.
.)」の計11項
ていないことがある(p=00
4,RR=30
.18,No.2,2014
130 日看管会誌 Vol
表1 サークルベッド用 CFRAT第2版の危険因子と転倒および転落との関連
危険因子
転倒(の危険)
転落(の危険)
なし
なし
あり
【小児】生後9か月(つかまり立ちができる)~1 はい
歳1
1か月(1人で歩くことができる)
いいえ
510(97.
1)15 (2.
9)
【小児】輸液スタンドを押して歩行する
153(95.
0) 8 (5.
0)
はい
あり
【小児】行動が突発的で激しい
【小児】危険に対する理解がまだできない
【小児】親への後追いをする
【小児】活発
【小児】親の言うことを聞かない
【小児】男の子
【家族】肉体的または精神的に疲れている
p値
761(98.
7)10 (1.
3)
154(95.
7) 7 (4.
3)
3.
3 1.
5 ~ 7.
5 **
2.
6 1.
1 ~ 6.
1 *
はい
358(95.
7)16 (4.
3)
358(95.
7)16 (4.
3)
4.
4 2.
0 ~ 9.
8 **
いいえ
913(99.
0) 9 (1.
0)
912(98.
9)10 (1.
1)
3.
9 1.
8 ~ 8.
6 **
はい
559(96.
5)20 (3.
5)
560(96.
7)19 (3.
3)
4.
9 1.
9 ~ 13.
0 **
いいえ
711(99.
3) 5 (0.
7)
709(99.
0) 7 (1.
0)
3.
4 1.
4 ~ 7.
9 **
はい
1,
022(97.
6)25 (2.
4)
いいえ
248(99.
6) 1 (0.
4)
はい
769(97.
1)23 (2.
9)
いいえ
499(99.
4) 3 (0.
6)
5.
9 0.
8 ~ 43.
7 *
4.
9 1.
5 ~ 16.
1 **
はい
809(97.
1)24 (2.
9)
811(97.
4)22 (2.
6) 13.
3 1.
8 ~ 98.
3 **
いいえ
462(99.
8) 1 (0.
2)
459(99.
1) 4 (0.
9)
3.
1 1.
1 ~ 8.
8 *
はい
592(96.
7)20 (3.
3)
592(96.
7)20 (3.
3)
4.
5 1.
7 ~ 11.
7 **
いいえ
676(99.
3) 5 (0.
7)
675(99.
1) 6 (0.
9)
3.
7 1.
5 ~ 9.
2 **
はい
691(97.
3)19 (2.
7)
691(97.
3)19 (2.
7)
2.
6 1.
1 ~ 6.
5 *
いいえ
579(99.
0) 6 (1.
0)
578(98.
8) 7 (1.
2)
2.
2 0.
9 ~ 5.
3 *
はい
328(96.
5)12 (3.
5)
いいえ
938(98.
5)14 (1.
5)
【家族】お子様が廊下や病室を走っている時に, はい
注意できていないことがある
いいえ
2.
4 1.
1 ~ 5.
1 *
2.
7 1.
2 ~ 5.
9 *
【家族】付き添い者の交代が多い(祖父母が付き はい
217(96.
0) 9 (4.
0)
添う事がある)
いいえ 1,
053(98.
5)16 (1.
5)
17.
5 6.
9 ~ 44.
6 **
15(71.
4) 6(28.
6)
542(98.
4) 9 (1.
6)
【家族】ベッドから離れる時に,ベッド柵を上げ はい
忘れることがある
いいえ
33(86.
8) 5(13.
2)
384(98.
2) 7 (1.
8)
【家族】ベッドの上の整理整頓がされていないこ はい
とがある
いいえ
【家族】スリッパまたはサンダルを履かせている
95%
信頼区間
2.
2 1.
0 ~ 4.
9 *
いいえ 1,
115(98.
5)17 (1.
5) 1,
113(98.
3)19 (1.
7)
【小児】身体症状が改善して活気が出てきた
相対
危険度
7.
4 2.
5 ~ 22.
4 **
101(94.
4) 6 (5.
6)
316(98.
1) 6 (1.
9)
はい
53(89.
8) 6(10.
2)
いいえ
364(98.
4) 6 (1.
6)
3.
0 1.
0 ~ 9.
1 *
6.
3 2.
1 ~ 18.
8 **
*
フィッシャーの正確確率検定 *
p<0.
05 *
p<0.
01 括弧内は% 相対危険度,95%信頼区間,p値については上段が転倒,下段が転落
を示す
目であった.
Youdeni
ndexはカットオフポイントが13点で最高
ロジスティック回帰分析では,転倒(の危険)は
.
.
.
値05
1を示し,その時の感度は07
8,特異度は07
3で
.
「スリッパまたはサンダルを履かせている(p=00
4,
あった.
OR=43
.)」
「お子様が廊下や病室を走っている時に,
転倒・転落(の危険)があった小児のアセスメン
.
.)」
2,OR=28
注意できていないことがある(p=00
.(SD=41
.)点,転倒・
トツールの合計点は平均149
に 有 意 差 が み ら れ た(表2).転 落(の 危 険)は
.(SD=
転落(の危険)がなかった小児の平均は97
「ベッドから離れる時に,ベッド柵を上げ忘れること
.)点で有意差がみられた(p<00
.
.
1, t
=82
2).
44
.
.)」「身体症状が改善して
がある(p<00
1,OR=97
カットオフポイントを1
3点とした時のリスク判定
.
.)」に有意差がみ
活気が出てきた(p=00
4,OR=20
(ローリスク,ハイリスク)と転倒・転落(の危険)
られた.
.
の 有 無 は 有 意 な 関 連 が み ら れ た(p<00
1,
ROC曲線を作成した結果,アセスメントツールの
.
.).
χ2=597
4,RR=91
AUC(ROC 曲 線 下 面 積)は08
.
1で あ っ た.
l
.18,No
.2,2014 131
日看管会誌 Vo
表2 サークルベッド用 CFRAT第2版のロジスティック回帰分析によるオッズ比
危険因子
95%
信頼区間
オッズ比
p値
転倒(の危険)
【家族】スリッパまたはサンダルを履かせている
4.
3
1.
0 ~ 18.
7 *
【家族】お子様が廊下や病室を走っている時に,注意できていないことがある
2.
8
1.
2 ~ 6.
6 *
【小児】活発
1.
7
0.
6 ~ 5.
2
【家族】付き添い者の交代が多い(祖父母が付き添う事がある)
1.
6
0.
8 ~ 3.
1
【小児】男の子
1.
6
0.
7 ~ 3.
3
【小児】生後9か月(つかまり立ちができる)~1歳11か月(1人で歩くことができる)
1.
5
0.
3 ~ 7.
7
【小児】親の言うことを聞かない
1.
1
0.
5 ~ 2.
5
【小児】身体症状が改善して活気が出てきた
1.
1
0.
6 ~ 2.
3
【小児】輸液スタンドを押して歩行する
1.
0
0.
3 ~ 3.
2
【小児】行動が突発的で激しい
1.
0
0.
4 ~ 2.
1
【家族】ベッドから離れる時に,ベッド柵を上げ忘れることがある
9.
7
2.
6 ~ 36.
9 **
【小児】活発
2.
1
0.
7 ~ 6.
4
【小児】身体症状が改善して活気が出てきた
2.
0
1.
0 ~ 3.
7 *
【小児】男の子
1.
6
0.
8 ~ 3.
2
【小児】親の言うことを聞かない
1.
5
0.
7 ~ 3.
2
【小児】行動が突発的で激しい
1.
4
0.
6 ~ 3.
1
【小児】親への後追いをする
1.
2
0.
6 ~ 2.
4
【家族】肉体的または精神的に疲れている
1.
0
0.
5 ~ 1.
7
【家族】ベッドの上の整理整頓がされていないことがある
0.
8
0.
2 ~ 3.
2
【小児】輸液スタンドを押して歩行する
0.
7
0.
2 ~ 2.
1
【小児】危険に対する理解がまだできない
0.
7
0.
3 ~ 1.
8
転落(の危険)
*p<0.
05 **p<0.
01
表3 サークルベッド用アセスメントツール第3版 案1から3の妥当性
バージョン
危険因子の配点
得点範囲
(点)
ハイリスクとローリスク
のカットオフポイント
(点)
感度
特異度
AUC
案1
オッズ比にかかわらず全て1点
0~15
7
0.
78
0.
76
0.
83
案2
有意差のあるオッズ比の危険因子を2点,
0~19
有意差のない危険因子を1点
8
0.
88
0.
74
0.
84
案3
オッズ比の値(1~10点)
14
0.
78
0.
87
0.
84
0~33
2.アセスメントツール第3版
その配点を与え合計得点を算出した.その結果,案
第2版の調査で,転倒および転落の発生を有意に
.
.
1の AUCは08
3,案2,案3の AUCは08
4であっ
高めた小児の危険因子9項目と家族の危険因子3項
た(表3).
目および家族の対策の実施状況3項目の計15項目を
アセスメントツール第3版の危険因子とした.危険
因子の配点の異なる案1(危険因子のオッズ比にか
Ⅴ.考察
かわらず配点は全て1点),案2(有意差のあるオッ
ズ比の危険因子を2点,有意差のない危険因子を1
点),案3(配点はオッズ比の値:1~10点)のアセ
1.症状,治療に関する危険因子と性格に関する危
険因子
スメントツールそれぞれに対して第2版調査時の
症 状,治 療 に 関 す る 危 険 因 子 の う ち,ロ ジ ス
,
15件のデータを使用し,危険因子ありの場合には
13
ティック回帰分析で有意差がみられた危険因子は
.18,No.2,2014
132 日看管会誌 Vol
「身体症状が改善して活気が出てきた」のみであっ
(2007)の調査でも,転落が有意に発生しやすいこと
た.成人用のアセスメントツールでは,転倒と有意
が報告されている.家族がベッド柵を上げ忘れるこ
に関連がみられたリスク要因として,「麻薬」「浣腸
とは,転落発生の重要な危険因子であることが示さ
緩下剤」
「不穏」
(森田ら,2010),
「歩行障害」
「歩行
れた.
補助具の使用」
「症状(めまい,立ちくらみ)
」
(鈴木
ら,2006)など疾病による症状や治療に関する危険
3.アセスメントツールの予測精度
因子が転倒・転落の誘引となっていることが指摘さ
ude
ni
nde
xが最
アセスメントツール第2版の Yo
れている.しかしながら,サークルベッドを使用す
も高くなるカットオフポイントは13点であり,感度
る小児においては病気で入院しているにもかかわら
.
.
.
8,特異度は07
3,AUCは08
1であった.また,
は07
ず,症状や治療の状況は転倒・転落発生の誘引には
リスク判定と転倒・転落の有無は有意な関連があり,
なりにくいという結果が得られた.これらの結果よ
転倒・転落ハイリスクの小児はローリスクの小児と
り,サークルベッドを使用する年少の小児では,病
.倍転倒・転落しやすい傾向がみられた.
比較して91
気による症状や活動性の低下の影響が転倒・転落発
アセスメントツール第3版の作成過程として,ア
生の誘引となっているのではなく,症状が改善して
,
セスメントツール第2版の13
15件の調査データを用
活気が出てきたことが転倒・転落発生の誘引となっ
いて,危険因子の配点の異なる案1から3にあては
ていることが示された.佐藤ら(2
009)の研究では,
めた.その結果,危険因子の配点が全て1点の案1
入院2,3日目に転倒・転落が発生しやすく,その
.
3とわずかに低いものの3者間の AUC
の AUCは08
理由として入院2,3日目になると病状が改善して
に大差はなかった.森田ら(2010)が作成した成人
活動性が高まるためと報告されている.本研究でも
患者用の転倒アセスメントスコアシート(改定後
転倒(の危険)
,転落(の危険)ともに入院2日目に
.
.
シート)は,感度が07
45,特異度が07
96,AUCが
最も多くみられており,同様の結果であったと言え
.
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08
22で あ っ た と 報 告 さ れ て い る.ま た, Hi
る.
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(2009)が作成した小児用のアセス
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メントツールである Humpt
2.家族に関する危険因子
.
.
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は感度08
5,特異度02
4と報告されている. Gr
家族に関する危険因子のうち,ロジスティック回
F
(2011)の小児用アセスメントツール GRAF‐PI
帰分析で転倒や転落の発生を有意に高めていた危険
.
.
は感度07
6,特異度08
4と報告されていることから
因子は,「スリッパまたはサンダルを履かせている」
も,アセスメントツール第2版,第3版は既存のア
「お子様が廊下や病室を走っている時に,注意できて
セスメントツールと比較して遜色ない予測精度で
いないことがある」
「ベッドから離れる時に,ベッド
.以上で Hi
gh accuあったといえる. AUC は09
柵を上げ忘れることがある」といった家族の対策の
r
acy,07
.~09
.未満で Moder
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.~
.%に家
実施状況であった.入院している小児の731
.未満で Low accur
acyと言われていることから
07
族が付き添いをしており(藤田ら,2012a
),半数以
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,
(Swe
1988),アセスメントツール第2版および第
上の小児の転倒・転落は家族がそばにいる状況で発
der
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eac
c
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yであり中程度の予測精
3版は Mo
生していることからも(伊藤,高橋,2007;前野ら,
度を示した.アセスメントツール第3版は案1から
2012),家族にも転倒・転落防止に協力を求めること
案3まで予測精度に大きな違いはみられなかったた
は必要不可欠であろう.
め,配点を全て1点とした案1が簡便であり臨床に
また,スリッパの使用は成人患者を対象とした研
おいて実用的と考える.
究(津野ら,2012)においても,転倒・転落発生の
要因であると報告されている.特に年少の小児では
4.研究の限界と今後の課題
歩行が確立しておらず不安定であることに加えて,
今回の調査ではハイリスクと判定された小児には
足のサイズも大きくなる時期であるため,スリッパ
転倒・転落の防止対策を追加して実施していること
やサンダルの使用により転倒しやすくなると考える.
から結果に何らかの影響を与えた可能性があり,こ
サークルベッドの柵が下がった状態は,加藤ら
の点は本研究の限界と考える.今後は,アセスメン
l
.18,No
.2,2014 133
日看管会誌 Vo
トツール第3版に関する信頼性の検証として,アセ
スメントの結果が看護師間でどの程度一致するかに
ついても調査を行っていく.
Ⅵ.結論
転倒(の危険)の発生を有意に高めた危険因子は
「スリッパまたはサンダルを履かせている」「お子様
が廊下や病室を走っている時に,注意できていない
ことがある」の2項目であった.転落(の危険)の
発生を有意に高めた危険因子は,
「ベッドから離れる
時にベッド柵を上げ忘れることがある」
「身体症状が
改善して活気が出てきた」の2項目であった.アセ
.
1であり,カッ
スメントツール第2版の AUCは08
.
.
トオフポイントが1
3点で感度07
8,特異度07
3を示し
た.アセスメントツール第2版の結果をもとに作成
したアセスメントツール第3版は案1から案3の予
測精度に大差はなく,アセスメントツール第2版お
よび第3版は中程度の予測精度を示した.
謝 辞:本 研 究 は,科 学 研 究 費 補 助 金(課 題 番 号
24792526)を用いて実施した.
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