リバース・モーゲージ - 「老いじたく」はあんしんねっとへ

リバース・モーゲージ
∼概要とその課題∼
平成 22 年 5 月 30 日(日)
老いじたくあんしんねっと勉強会
ファイナンシャル・プランナー
CFP○R
0
仲井
孝
シニア世代の必要資金
–
生活費
–
急な病気やケガによる入院や治療費
–
住宅ローンの返済
–
住まいのリフォーム、修繕費
–
シルバー施設等への住み替えの場合の入居費用
–
不動産の購入費用
–
自動車や大型家電製品等の経年劣化による買い替え費用
–
子供の結婚費用
–
孫の学費の援助
–
旅行
–
etc.
居住用不動産の資産価値を現金化する方法
① 居住用不動産の売却
② 居住用不動産の賃貸
•
マイホームの賃貸を支援する制度
→ マイホーム借上げ制度(一般社団法人 移住・住み
かえ支援機構(JTI)
)
③ 居住用不動産を担保に融資を受ける
•
通常の「住宅ローン」や「不動産担保ローン」
–
–
•
•
返済額に見合った安定した収入があるかどうかの審査がある
•
最終返済時の年齢に制限がある
収入のない高齢者は融資を受けることができない
リバース・モーゲージ (reverse mortgage=逆抵当融資)
–
–
–
借入期間中に元利金を分割返済
契約終了時(高齢者死亡等)に一括返済
•
高齢者が元利金(元金)の返済をすることなく、自宅に住み続けることができる
•
通常の「ローン」のような厳しい審査基準がない
収入のない高齢者でも融資を受けることができる
リバース・モーゲージは高齢者が居住用不動産の資産価値を現金化するためのシステム
1
2
図3
公的プラン
図4
福祉資金貸付制度(武蔵野市)の基本スキーム
3
図5
資産活用サービス(世田谷区)の基本スキーム
図6
長期生活支援資金制度(要保護世帯向け長期生活支援資金制度)
表1
長期生活支援資金制度と要保護世帯向け長期生活支援資金制度の比較
長期生活支援資金貸付制度
要保護世帯向け長期生活支援資金制度
・一定の居住用不動産を有し、将来にわた
・一定の居住用不動産を有し、将来にわた
りその住居に住み続けることを希望する高
りその住居に住み続けることを希望する要
齢者世帯に対し、当該不動産を担保とし
保護の高齢者世帯に対し、居住用不動産
て生活資金の貸付を行い、その世帯の自立
を担保として生活資金を貸付け、自立を支
を支援する
援し、併せて生活保護の適正化を図る
開始制度
・平成 15 年 7 月(大阪の運用開始)
・平成 19 年 4 月
貸付対象
・原則として65歳以上の高齢者世帯で評価
・原則として65歳以上の高齢者世帯で評価
額が1500万円以上の居住用不動産を有する
額が500万円以上の居住用不動産を有し、本
趣旨
4
市町村府民税の非課税程度の低所得世帯で
資金を利用しなければ保護の受給を要する
あること
世帯と福祉事務所が認めた者
・単独(同居の配偶者と共有を含む)で所有
・評価額500万円以上の不動産(集合住宅を
している不動産に居住していること
含む)
・他の債権の担保になっていないこと
・他の債権の担保になっていないこと
貸付限度額
・居住地の評価額の 7 割
・評価額の 7 割(集合住宅は 5 割)
貸付月額
・1 ケ月 30 万円以内
・生活扶助基準額の 1.5 倍以内
資金交付
・3 ケ月毎に送金
・1 ケ月毎に送金
連帯保証人
・推定相続人から1名
・不要
利子
・年3%又は長期プライムレートのいずれか ・年3%又は長期プライムレートのいずれか
対象不動産
低い利率
償還期限
低い利率
・借受人が死亡(配偶者が承継の場合は、配 ・借受人が死亡(配偶者が承継の場合は、配
偶者の死亡)したとき
偶者の死亡)したとき
・貸付契約を解約したとき
・貸付契約を解約したとき
償還方法
・一定期限内に貸付元利金を一括して返済
・一定期限内に貸付元利金を一括して返済
その他
・実施主体:都道府県社協
・実施主体:都道府県社協
・原資負担:国2/3、都道府県1/3
・原資負担:国3/4、都道府県・指定都市1/4
・事務費負担:国1/2、都道府県1/2
・事務費負担:国1/2、都道府県1/2
・鑑定、登記に係る費用は借受人負担
・鑑定、登記に係る費用は保護の実施機関
が負担
図7
高齢者向け返済特例制度(住宅金融支援機構)の基本スキーム
5
民間プラン
–
リバース・モーゲージ(中央三井信託銀行)
–
充実人生(東京スター銀行)
–
トヨタホーム
–
REMOVE(リムーブ)(旭化成ホームズ)
リバース・モーゲージのリスク
図8
リバース・モーゲージのリスク(概念図)
アメリカのリバース・モーゲージ制度
–
住宅都市開発省(HUD)の HECM(低額資産保有者)
–
連邦全国抵当協会(FNMA)の Home Keeper(中額資産保有者)
–
Financial Freedom 社の Cash Account Plan(高額資産保有者)
6
図9
アメリカのリバース・モーゲージ制度 HECM(Home Equity Conversion Mortgage)の基本スキー
ム
表2
HECM の概要
実施主体
住宅都市開発省(HUD)
取扱開始時
1989 年
対象年齢
62 歳以上
特徴
・家の資産価値に対して銀行が融資するリバース・モーゲージ
・リバース・モーゲージは必ず第一抵当となる
・借り手がその家に住んでいる限り返済の必要はない
利用条件
契約に先立って、政府指定(HUD 承認カウンセリング・エージェンシー)の
カウンセリングを受けること
対象不動産
・一戸建住宅
・2∼4 世帯が住む住宅
・コンドミニアム
融資方式
一括払い、年金方式(終身、有期)、極度額方式、または組み合わせ
融資基準
借り手の年齢と家の価値によって融資金額が決まる
融資限度額
625,500 ドル(2009 年 2 月 17 日∼2010 年 12 月 31 日)
毎月の返済
なし
金利
主に変動金利、短期国債に連動
7
資金用途
自由
担保割れに備えた保険
連邦住宅庁(FHA)による保険で保証
その他
連邦全国抵当協会(FNMA)が債権を買取り
わが国の課題
–
図10
リバース・モーゲージが普及しない
平均寿命の推移
8
図11
金利の推移
図12
地価の推移
9
–
–
リバース・モーゲージ商品を供給者サイド(金融機関等)から見た場合
•
担保割れリスクが大きい
•
長期間にわたる資金の固定化
必要とされる仕組み
•
リバース・モーゲージの担保割れリスクをカバーするための公的な保険制度
•
リバース・モーゲージを取り扱う金融機関の資金調達を安定化させるための 2 次市場
•
–
抵当債権の買い取りを行う公的な色彩の強い金融機関
–
リバース・モーゲージの証券化
合理的な制度設計
–
平均余命や不動産価格の変化、金利変動等を考慮して、合理的に設定された融資限度
額(図13参照)
図13
アメリカのリバース・モーゲージ(HECM)の借入可能額
•
アメリカ(HECM)の場合、融資限度額は借り手の年齢、家の価値、金利によって決まる
–
年齢が高ければ高いほど、借りられる金額は多くなる
–
極度額方式では、融資枠が年齢とともに増加
10
–
利用者を増やすには
•
制度に対する信頼感
•
利用者の範囲を拡大するための制度設計
•
–
–
制度の普及を妨げている様々な制限
–
制度の柔軟性
–
利用者に対するサポート体制
宣伝(広報)活動
制度に対する信頼感
•
•
•
貸手の倒産や融資金の不払い等(借入枠の凍結や減額)が不安
–
担保割れや不払い等のリスクをカバーするための公的な保険制度
–
金融機関の資金調達を安定化させるための 2 次市場
家の売却価格以上の借金を負いたくない
–
いったん定められた担保評価額は契約終了まで変更されない
–
固定金利もしくは上限付きの変動金利で融資
借り手死亡時の元利一括返済が望ましい
–
•
元本、利子ともに返済が繰り延べられる
日本の場合
–
担保割れリスクや融資金の不払い等のリスクは借り手が負担
•
融資機関(貸し手)が破たんしても、契約が履行されるという保証がない
•
変動金利
•
毎月の利息返済
•
担保評価の定期的な見直し
•
–
年に 1 回見直し
–
3 年毎に再評価
–
3 年毎に契約更新
評価額が減った場合、融資極度額を減らす→融資極度額に到達したとき、融資打
ち切り
•
借入残高が極度額を上回った場合、1年以内に(一括または分割で)超えた金額
を返済
•
融資打ち切り後
–
元本・金利を凍結、居住者はそのまま居住
–
所有権を区に移転、貸し上げ福祉住宅として居住者に賃貸、家賃を徴収
–
利息返済を毎月に変更
11
–
利用者の範囲を拡大するための制度設計
•
リバース・モーゲージの商品化(制度設計)と供給(融資実行)は民間に任せる
•
リバース・モーゲージの商品価値を高めるためのバックアップと管理は国(公的機関)が
行う
–
必要とされる仕組み
•
•
•
貸し手の倒産や融資金の不払い等のリスクをカバーする仕組み
–
担保割れや不払い等のリスクをカバーするための公的な保険制度
–
金融機関の資金調達を安定化させるための 2 次市場
借入枠の減額や融資金の不払い等を監視し、それらを防止するための仕組み
制度の利用を妨げている様々な制限
–
担保評価額の下限設定を低く
–
所得制限、収入の下限設定の撤廃
•
所得制限は不要
•
収入の下限設定
–
元利一括返済ならば(毎月の利息返済を求めなければ)、収入の下限設定は不
要
•
–
使用目的の制限を緩和
–
推定相続人等の合理的な扱い=推定相続人の同意
制度の柔軟性
–
•
利用者に対するサポート体制
–
–
受け取り方法 (融資方法)の選択
高齢者に適切な商品を提供するための仕組み
•
商品の基本的な骨組みについては、規格の統一または標準化が必要
•
公平で中立的なカウンセリングシステム
•
融資申し込み作業の代行業者(代行組織)
宣伝(広報)活動
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【参考】
–
財団法人武蔵野市福祉公社 福祉資金貸付サービス
•
–
中野区 資産活用福祉資金
•
–
http://www.gunmabank.co.jp/kojin/kariru/reverse/
高齢者くらしの充実資金貸付事業(リバースモーゲージ) 神戸市
•
–
http://www.a-t.jp/reverse_mortgage/index.html
リバースモーゲージ「夢のつづき」 群馬銀行
•
–
http://www.tokyostarbank.co.jp/products/jyujitsu/about.php
株式会社 朝日信託
•
–
http://www.chuomitsui.co.jp/person/p_03/p_03_rem.html
新型リバースモーゲージ 「充実人生」 東京スター銀行
•
–
http://www.jhf.go.jp/customer/yushi/shinchiku/koreisya/older.html
中央三井信託銀行
•
–
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/010/d12400008.html
高齢者向け返済特例制度 住宅金融支援機構
•
–
http://www.fukushikosha.jp/service/fukusi.html
http://www.with-kobe.or.jp/support/kurasinojuujitu.htm
TOYOTA.CO.JP∼ニュースリリース∼
•
http://www.toyota.co.jp/jp/news/04/Apr/nt04_012.html
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