会 期:2014 年 7 月 26日(土)・27日(日) 会 場:神奈川歯科大学横浜

第
回
The 29th Annual Meeting Japanese Society of Psychosomatic Dentistry
第
回 日本歯科心身医学会総会・学術大会
29
メインテーマ:
会 期:2014
年 7 月 26日
(土)
・27日
(日)
会 場:神奈川歯科大学横浜クリニック
大 会 長:玉置 勝司
神奈川歯科大学大学院歯学研究科
顎咬合機能回復補綴医学講座 教授
実行委員長:宗像 源博
神奈川歯科大学附属病院
口腔インプラントセンター センター長
日本歯科心身医学会
The 29th Annual Meetiong
Japanese Society of
Psychosomatic Dentistry
第 29 回
日本歯科心身医学会
総会・学術大会
テーマ:心技一体の歯科医療を目指して
会 期
2014 年 7 月 26 日
・27 日
会 場
神奈川歯科大学横浜クリニック
大会長
玉置 勝司
神奈川歯科大学大学院歯学研究科
顎咬合機能回復補綴医学講座 教授
第 29 回日本歯科心身医学会総会・学術大会事務局
神奈川歯科大学大学院歯学研究科
顎咬合機能回復補綴医学講座
実行委員長 宗像 源博
〒 238-8580 神奈川県横須賀市稲岡町 82 番地
TEL :046-822-8810
E-mail:[email protected]
実 行 委 員
丸尾 勝一郎
清水 統太
堤 一輝
長崎 公壽
古閑 文裕
中村 宏介
満田 茂樹
片岡 加奈子
ご 挨 拶
第 29 回日本歯科心身医学会総会・学術大会の開催にあたって
大会長 玉
置 勝 司
神奈川歯科大学
顎咬合機能回復補綴医学講座
この度、第 29 回日本歯科心身医学会総会・学術大会の大会長を仰せつかり、平成 26 年 7 月
26 日(土)、27 日(日)に横浜で開催することになりました。皆様、宜しくお願いいたします。
昨年の第 28 回は福岡の地で楠川仁悟先生が「
『心』察力を高める」のメインテーマで大成功
を収められましたので、私は大きなプレッシャーを感じております。
第 29 回のメインテーマは「心技一体の歯科医療を目指して」です。心を診る目と体を診る
目の両方をうまく診れないと本当の歯科医療にならないという気持ちを込めたテーマにさせて
いただき、それに相応しい講師の先生方のご発表を企画いたしました。
第1日目は、教育講演として「歯科心身症患者への対応-法的問題とクレームに対する予防
策-」を宗像 雄 先生(関谷法律事務所)に、シンポジウム 1 として「歯学部・歯科大学にお
ける心身医学教育の現状と今後-卒前教育と卒後教育のあり方-」を和気 裕之 先生、小見山
道 先生、竹之下 美穂 先生、安彦 善裕 先生にお願いいたしました。
第2日目には、シンポジウム 2「臨床家の立場から歯科心身症を捉える-経験から学ぶべき
もの-」として、日頃は歯科心身医学とは縁遠いと思われる臨床家の山㟢 長郎 先生、加治 初
彦 先生、井澤 常泰 先生、皆川 仁 先生にご登壇いただき、貴重なお話をお聞きする場を設定
いたしました。
最後に、特別講演として、第 27 回の学術大会のシンポジウム「咬合違和感の実態に迫る」
の第 2 弾として、
「咬合違和感と脳生理との関連を考える-知識から学ぶべきもの-」として
藤澤 政紀 先生、小野 弓絵 先生、豊福 明 先生にお願いいたしました。
横浜研修センターは、横浜駅西口から徒歩 5 分程度のところにあり、横浜港に面した横浜み
なとみらい 21 までは目と鼻の先にあります。
また、横浜中華街や山下公園から東京湾クルーズまで観光も満載のロケーションですので、
多くの先生方をお誘いあわせの上、第 29 回日本歯科心身医学会学術大会をご堪能いただきた
いと思います。
-1-
日本歯科心身医学会担当校
回
開 催 日
開催地
大 会 長
所 属
第1回
昭和 61 年 7 月 12 日(土)
東 京
内田 安信
東京医科大学口腔外科学教室
第2回
昭和 62 年 7 月 10 日(金)
、
11 日(土) 東 京
久野 吉雄
日本歯科大学歯学部口腔外科学講座
第3回
昭和 63 年 7 月 1 日(金)
、2 日(土)
東 京
杉浦 正己
日本大学歯学部口腔診断科
第4回
平成元年 7 月 13 日(木)
、14 日(金) 横 浜
瀬戸 晥一
鶴見大学歯学部第 1 口腔外科学教室
第5回
平成 2 年 7 月 13 日(金)
、14 日(土) 福 岡
都 温彦
福岡大学歯学部歯科口腔学科学教室
第6回
平成 3 年 7 月 11 日(木)
、12 日(金) 東 京
久保田康耶
東京医科歯科大学歯学部歯科麻酔学教室
第7回
平成 4 年 7 月 11 日(土)
、12 日(日) 名古屋
黒須 一夫
愛知学院大学歯学部小児科学教室
第8回
平成 5 年 8 月 26 日(木)、27 日(金)、28 日(土) 盛 岡
石川富士郎
岩手医科大学歯学部歯科矯正学講座
第9回
平成 6 年 7 月 18 日(月)、19 日(火)、20 日(水) 東 京
小林 雅文
日本大学歯学部薬理学教室
第 10 回
平成 7 年 7 月 27 日(木)
、28 日(金) 名古屋
深谷 昌彦
愛知学院大学歯学部口腔外科学第 1 講座
第 11 回
平成 8 年 7 月 25 日(土)
、26 日(日) 東 京
藍 稔
東京医科歯科大学歯学部歯科補綴学第 1 講座
第 12 回
平成 9 年 7 月 25 日(木)
、26 日(金) 新 潟
下岡 正八
日本歯科大学新潟歯学部小児歯科学教室
第 13 回
平成 10 年 7 月 17 日(金)
、
18 日(土) 盛 岡
石橋 寛二
岩手医科歯科大学歯学部歯科補綴学第 2 講座
第 14 回
平成 11 年 7 月 17 日(土)
、
18 日(日) 大 阪
川本 達雄
大阪歯科大学歯学矯正学教室
第 15 回
平成 12 年 7 月 14 日(金)
、
15 日(土) 福 岡
亀岡 忠光
久留米大学医学部口腔外科学講座
第 16 回
平成 13 年 7 月 7 日(土)
、8 日(日)
東 京
工藤 逸郎
日本大学総合科学研究所
第 17 回
平成 14 年 7 月 17 日(金)
、
18 日(土) 東 京
扇内 秀樹
東京女子医科大学医学部歯科口腔外科学教室
第 18 回
平成 15 年 6 月 28 日(土)
、
29 日(日) 東 京
小林 義典
日本歯科大学歯科補綴学第 1 講座
第 19 回
平成 16 年 7 月 17 日(土)
、
18 日(日) 東 京
永井 哲夫
慶應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室
第 20 回
平成 17 年 7 月 16 日(土)
、
17 日(日) 名古屋
土屋 友幸
愛知学院大学歯学部小児歯科学講座
第 21 回
平成 18 年 7 月 15 日(土)
、
16 日(日) 北九州
横田 誠
九州歯科大学歯周病制御再建学分野
第 22 回
平成 19 年 3 月 17 日(土)
、
18 日(日) 東 京
田邉 晴康
東京慈恵会医科大学歯科学教室
第 23 回
平成 20 年 7 月 19 日(土)
、
20 日(日) 東 京
山根 源之
東京歯科大学歯学部
オーラルメディシン・口腔外科学講座
第 24 回
平成 21 年 6 月 6 日(土)
、7 日(日)
東 京
小池 一喜
日本大学歯学部口腔診断学講座
第 25 回
平成 22 年 7 月 17 日(土)
、
18 日(日) 広 島
香西 克行
第 26 回
平成 23 年 7 月 16 日(土)
、
17 日(日) 札 幌
安彦 善裕
第 27 回
平成 24 年 9 月 1 日(土)
、2 日(日)
川 越
藤澤 政紀
広島大学大学院医歯薬総合研究科
顎口腔頚部医科学講座小児歯科学
北海道医療大学歯学部生体機能・病態学系
高齢者・有病者歯科学分野
明海大学歯学部機能保存回復学講座
歯科補綴学分野
第 28 回
平成 25 年 7 月 13 日(土)
、
14 日(日) 福 岡
楠川 仁悟
久留米大学医学部歯科口腔医療センター
第 29 回
平成 26 年 7 月 26 日(土)
、
27 日(日) 横 浜
玉置 勝司
神奈川歯科大学大学院歯学研究科
顎咬合機能回復補綴医学講座
-2-
日本歯科心身医学会総会・学術大会
参加の皆様へ
1.参加者は学会会場 7 F当日受付にて、当日会費をお支払いの上、プログラム・抄録集と学術大会参加証
をお受け取り下さい。参加費を前納された方は、お送りしましたプログラム・抄録集と学会参加証を必ずご
持参下さい。
大 会 参 加 費:医師、歯科医師
(前納会費 10,000 円、当日会費 12,000 円)
医師、歯科医師以外(前納会費 3,000 円、当日会費 5,000 円)
大学院生、研修歯科医師、衛生士など(前納会費 3,000 円、当日会費 5,000 円)
学部学生 懇親会参加費:事前登録 8,000 円
無料
当日登録 10,000 円
(日本歯科心身医学会会員以外の方で、教育講演のみ参加の方は 1,000 円を納入し、教育講演参加証を
お受け取り下さい。)
2.プログラム・抄録集が別箇必要な方には、2,000 円で販売いたします。
3.学会参加証には氏名・所属を記入の上、会場内では首に下げて着用して下さい。
4.日本歯科心身医学会への新規入会は学会事務局で行っております。(入会金 1,000 円、年会費 10,000 円)
5.学会会場におけるビデオ・写真等は発表者の著作権保護のため禁止にさせていただきます。なお、特別
な理由がある場合には、大会長にお申し込み下さい。
一般口演に発表される先生方・座長の先生方へ
1.会 場:7F大会議室
2.演者、共同演者は日本歯科心身医学会会員に限ります。非会員の方はあらかじめ入会手続きをお願いい
たします。
3.事後抄録
発表終了後に、事後抄録を受付にご提出ください。演者は1枚目に演題番号・演題名・所属・演者名(発
表者に○、英字併記)を、2・3枚目に 20 字× 20 字、800 字以内で入力し B5 用紙に印刷したものを
および同内容を保存した CD-R(演題番号・演者名を記入)をご提出下さい。提出されない場合は事前
抄録を使わせていただきます。
-3-
4.発表について
1)会場にパソコンは準備してありますが、万が一を備え準備してきてください。また、CD もしくは
USB もご持参ください。
2)パソコン接続は Minid-Sub15 ピン3列(通常のモニター端子)となります。お持込みのパソコン
の外部モニター出力端子の形状を確認し、必要な場合は接続用の端子をご持参下さい。
3)画像の解像度は XGA(1024 × 768)です。画面設定は XGA に合わせて下さい。
4)OS は Windows(XP、7、8)、Microsoft Power Point(2007、2010、2013)のみとします。その
他 OS、ソフトの使用によるトラブルにつきましては、十分な対応ができない可能性がありますので、
ご了承下さい。
5)フォントは OS 標準のもののみ使用して下さい。
6)スライド受付は、7F受付にて行います。試写をお願いいたします。発表の 1 時間前までにお願い
いたします(時間厳守)。動画や音声をご使用になる場合は、お申し出下さい。
7)口演時間は、発表7分、質疑応答2分です。時間厳守をお願いいたします。
8)次演者は、発表の 10 分前までに次演者席までに次演者席にてお待ち下さい。
9)発表では液晶プロジェクター(1面映写)
のみを使用します。発表時の操作はご自身でお願いします。
10)一般口演では動画の使用は禁止です。
5.質疑・応答について
発言者は座長の許可を得てから、所定のマイクで所属・氏名を明らかにして発言して下さい。
6.座長の先生は、予定時刻の 15 分前までに次座長席にお越し下さい。
ポスター発表の方へ
1.ポスターパネルサイズ:
H160cm × W90cm
演題用スペース(上部): H20cm × W70cm
演題番号スペース:
H20cm × W20cm
2.演題用スペースに、演題名・ご所属・発表者名・共同著者名
・メールアドレスを表示し、発表者名の前に○印をつけてください。
3.ポスターには、研究目的・材料および方法・結果・考察
・結論・参考文献等の項目を記載してください。
4.ポスター掲示は 7 月 26 日 12 時 30 分~ 13 時 30 分に掲示してください
5.ポスター貼付用の画鋲は運営事務局にてご用意いたします。
-4-
6.ポスター発表について
・ポスター質疑応答時間は 27 日 12 時 30 分~ 13 時 00 分となります
・ポスター撤去は 27 日 15 時までにおこなってください
懇親会について
下記の要綱にて開催いたします。皆様のご出席をお待ちしております。
ご参加される方は総合受付(7Fホワイエ)にてお申し込み下さい。
懇親会会費を前納された方は、懇親会受付にて手続きを済ませ、領収書をお受取り下さい。
日 時:平成 26 年 7 月 26 日(土)18:30 ~
会 場:横浜スカイビル 27 階 クルーズクルーズ(P6 地図参照)
当日会費:10,000 円
委員会および総会・役員会について
各種委員会:平成 26 年 7 月 25 日(金)14:00 ~ 16:00
理 事 会:平成 26 年 7 月 25 日(金)16:00 ~ 17:00
会 場:6F第一会議室
評 議 員 会:平成 26 年 7 月 26 日(土)12:30 ~ 13:00
会 場:6F第一会議室
総 会:平成 26 年 7 月 27 日(日)12:00 ~ 13:00
会 場:7F大会議室
平成 25 年度日本歯科心身医学会認定医試験について
試 験 期 日:平成 26 年 7 月 25 日(金)13:00 ~ 14:00
(試験時間1時間:予定)
会 場:6F認定医試験場
-5-
会場アクセス図
神奈川歯科大学附属横浜クリニック
青木通
海
鶴屋町 3 丁目
東
福祉会館前
西口ランプ入口
道
旧東海道
かながわ県民
センターホール
日産レンタカー
首都高速
神奈川 2
丸十前
号三ツ沢
線
ポートサイド中央
りそな銀行
ヨドバシカメラ
金港 JCT
みずほ銀行
北幸交番前
横浜駅
内海橋
一の橋
首都高速神奈川 1 号横羽線
横浜駅西口
懇親会 会場
横浜スカイビル 27 階
クルーズクルーズ
神奈川歯科大学附属横浜クリニック
〒 221-0835
神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町 3 丁目 31 番 6 号
TEL:045-313-0007
・横浜駅北・西口から徒歩 5 分
・横浜駅西口ランプよりお車で 2 分
※ヨドバシカメラ前の左折が出来ませんのでロータリーをまわって頂きます。
その際、タクシー専用・バス専用レーンにご注意下さい、時間帯によっては大変混雑いたします。
懇親会会場:
横浜スカイビル 27 階 クルーズクルーズ
〒 220-0011
神奈川県横浜市西区高島二丁目 19 番 12 号
-6-
会場案内図
1F
休憩室
学会場入口
正面エントランス
EV ホール
EV
エントランスホール
EV ホール
WC
EV
WC
EV
※学会場への入口は建物裏手になります。
円滑な進行のため、看板およびスタッフの誘導に従って入場をお願いいたします。
-7-
6F
ポスター会場・
展示会場
認定医試験場
理事会・評議員会 会場
講演者控室
第 1 会議室
ラウンジ
第 2 会議室
EV
WC
ラウンジ
EV
WC
EV
7F
学会・総会会場
総合受付
入会・年会費受付
スライド受付
EV
ホワイエ
WC
EV
EV
-8-
WC
日 程 表
1日目
平成
26 年 7 月 25 日
金 神奈川歯科大学附属横浜クリニック
6 F 認定医試験場
6 F 第1・第2会議室
12:00
12:30
13:00
13:30
13:00 ~ 14:00
認定医試験
14:00
14:30
15:00
14:00 ~ 16:00
各種委員会
16:00 ~ 17:00
理事会
15:30
16:00
16:30
17:00
17:30
-9-
平成
26 年 7 月 26 日
2 日目
土 神奈川歯科大学附属横浜クリニック
7F 学会・総会会場
8:30
6 F 第1・第2会議室
開会式
8:50
9:00
一般講演
9:30
10:00
10:30
9:00 ~ 10:00 セッション 1 基礎・薬剤
座長 安彦 善裕 先生(北海道医療大学)
10:00 ~ 11:00 セッション 2 舌痛症
座長 宮地 英雄 先生(北里大学)
11:00
11:30
11:00 ~ 12:20 セッション3 臨床統計・その他
座長 依田 哲也 先生(埼玉医科大学)
12:00
12:30
12:30 ~ 13:00
評議委員会
13:00
13:30
14:00
14:30
教育講演
13:30 ~ 14:30
座長 豊福 明 先生(東京医科歯科大学)
「歯科心身症患者への対応
-法的問題とクレームに対する予防策-」
宗像 雄 先生(関谷法律事務所)
15:00
15:30
16:00
16:30
17:00
シンポジウム 1
15:00 ~ 17:30
座長 北川 善政 先生(北海道大学)
岡田 智雄 先生(日本歯科大学)
「歯学部・歯科大学における心身医学教育の現状と今後
-卒前教育と卒後教育のあり方-」
①神奈川歯科大学
②日本大学松戸歯学部
和気 裕之 先生
③東京医科歯科大学
小見山 道 先生
竹之下 美穂 先生
④北海道医療大学
安彦 善裕 先生
総合討論
17:30
18:00
18:30
18:30 ~
懇 親 会
- 10 -
平成
26 年 7 月 27 日
3 日目
7F 学会・総会会場
9:00
9:30
シンポジウム 2
9:30 ~ 11:50
10:00
10:30
11:00
11:30
12:00
12:30
日 神奈川歯科大学附属横浜クリニック
座長 宗像 源博 先生(神奈川歯科大学)
「臨床家の立場から歯科心身症を捉える
-経験から学ぶべきもの-」
皆川 仁 先生(皆川歯科クリニック:神奈川歯科大学客員教授 SJCD 理事)
井澤 常泰 先生(井澤歯科医院:東京医科歯科大学臨床教授)
加治 初彦 先生(加治矯正歯科クリニック:藤本研修会矯正コース講師)
山㟢 長郎 先生(原宿デンタルオフィス:SJCD インターナショナル会長)
総合討論
総 会
12:00 ~ 13:00
ポスター質疑応答
12:30 ~ 13:00
13:00
13:30
14:00
14:30
15:00
13:10 ~ 15:00
特別講演
座長 玉置 勝司 先生(神奈川歯科大学)
「咬合違和感と脳生理との関連を考える
-知識から学ぶべきもの-」
藤澤 政紀 先生(明海大学)
小野 弓絵 先生(明治大学 )
豊福 明 先生(東京医科歯科大学)
15:10
15:30
15:30 ~ 18:30
閉会式
PIPC 入門
16:00
16:30
17:00
17:30
■ファシリテーター
井出 広幸 先生(信愛クリニック)
宮崎 仁 先生(宮崎医院)
木村 勝智 先生(みよし市民病院・第二内科部長・健診科部長)
■スーパーバイザー
金光 芳郎 先生(福岡歯科大学心療内科 教授)
18:00
高向 和宜 先生(久留米大学 歯科口腔医療センター非常勤講師)
18:30
- 11 -
プログラム
平成 26 年 7 月 25 日金
認定医試験
13:00 ~ 14:00
各種委員会
14:00 ~ 16:00
理事会
16:00 ~ 17:00
平成 26 年 7 月 26 日土
開会式
8:50
一般講演(演題数により一部ポスター)
9:00 ~ 12:20
セッション 1 基礎・薬剤
セッション 2 舌痛症
セッション3 臨床統計・その他
9:00 ~ 10:00
10:00 ~ 11:00
11:00 ~ 12:20
座長:安彦 善裕 先生 北海道医療大学
座長:宮地 英雄 先生 北里大学
座長:依田 哲也 先生 埼玉医科大学
評議委員会
12:30 ~ 13:00
教育講演
13:30 ~ 14:30
座長:豊福 明 先生 東京医科歯科大学
「歯科心身症患者への対応 -法的問題とクレームに対する予防策-」
宗像 雄 先生 関谷法律事務所
シンポジウム 1
15:00 ~ 17:30
座長:北川 善政 先生 北海道大学
岡田 智雄 先生 日本歯科大学
「歯学部・歯科大学における心身医学教育の現状と今後
-卒前教育と卒後教育のあり方-」
1.和気 裕之 先生
神奈川歯科大学
2.小見山 道 先生
日本大学松戸歯学部
3.竹之下 美穂 先生 東京医科歯科大学
4.安彦 善裕 先生
北海道医療大学
総合討論
18:30 ~
懇親会
- 12 -
平成 26 年 7 月 27 日
日
シンポジウム 2
9:30 ~ 11:50
座長:宗像 源博 先生 神奈川歯科大学
「臨床家の立場から歯科心身症を捉える -経験から学ぶべきもの-」
皆川 仁 先生 皆川歯科クリニック:神奈川歯科大学客員教授 SJCD 理事
井澤 常泰 先生 井澤歯科医院:東京医科歯科大学臨床教授
加治 初彦 先生 加治矯正歯科クリニック:藤本研修会矯正コース講師
山㟢 長郎 先生 原宿デンタルオフィス:SJCD インターナショナル会長
総合討論
総会
12:00 ~ 13:00
ポスター発表質疑応答
12:30 ~ 13:00
特別講演 13:10 ~ 15:00
座長:玉置 勝司 先生 神奈川歯科大学
「咬合違和感と脳生理との関連を考える -知識から学ぶべきもの-」
藤澤 政紀 先生
明海大学
小野 弓絵 先生
明治大学
豊福 明 先生
東京医科歯科大学
閉会式
15:10
PIPC 入門
15:30 ~ 18:30
ファシリテーター
井出 広幸 先生
信愛クリニック
宮崎 仁 先生
宮崎医院
木村 勝智 先生
みよし市民病院・第二内科部長・健診科部長
スーパーバイザー
金光 芳郎 先生
福岡歯科大学心療内科 教授
高向 和宜 先生
久留米大学 歯科口腔医療センター非常勤講師
- 13 -
- 14 -
教 育 講 演
歯科心身症患者への対応
-法的問題とクレームに対する予防策-
宗像 雄
関谷法律事務所
教育講演
歯科心身症患者への対応
-法的問題とクレームに対する予防策-
宗像 雄
関谷法律事務所(東京弁護士会所属)
現在、「医療安全」すなわち医療をめぐるリスクマネジメントは、医療機関ないし医療従
事者が取り組まなければならない最優先事項です。そして、患者等によるクレームその他の
迷惑行為とこれに対する医療機関ないし医師、歯科医師その他の医療従事者の対応は、医療
をめぐるリスクマネジメントに事実上大きな関係を有しています。
とりわけ、歯科診療に関しては、比較的小規模な医療機関で行われていること、行われた
診療に対する評価が患者の(主観的な)満足度に大きく左右されることなどから、患者等に
よる迷惑行為が、医療機関ないし歯科医師その他の医療従事者にとって極めて重大な問題と
なっています。
ただ、我が国において、患者等を含めた顧客による事業者に対する迷惑行為をめぐる問
題が大きく取り上げられるようになったのは、わずかに数年前です。それゆえ、医療機関を
含めて事業者は、未だ、それに対して有効に対処する方法を確立しているとはいえません。
また、多くの医療機関では、未だ、患者等による迷惑行為に対して「組織」として対応する
という態勢がとられてはおらず、実際には、その対応は、迷惑行為を行う患者等に日々接す
る現場の医療従事者「任せ」になっています。このような現状は、更なる迷惑行為を生み出
す温床にもなっています。
本講演では、講師が、ホテル、製造メーカー、医療機関(大学病院及び小規模なクリニッ
ク)で経験した具体的な事例をもとに、医療機関における患者等の迷惑行為に対する有効な
対処方法として考え、かつ、実践している方法を紹介します。
- 16 -
略 歴
福島県出身
1986 年 福島県立磐城高等学校 卒業
同年 慶應義塾大学法学部法律学科 入学
1990 年 慶應義塾大学法学部法律学科 卒業
1994 年 司法試験合格
1995 年 司法研修所 入所
1997 年 司法研修所 卒業
同年 弁護士登録
< 論 文 >
患者の自己決定権と医療機関の説明義務(慶應医学第 82 巻 1 号・2005 年)
医師が異状死の届出義務を課せられる場合(慶應医学第 84 巻 4 号・2007 年)
法律からみた医療の将来 - 福島事件 -(産婦人科の実際第 56 巻 12 号・2007 年)
法律家から見た助産録の重要性とそれに記載すべき事項
(助産雑誌第 63 巻 11 号・2009 年)
医療機関における個人情報の保護のあり方(小児看護第 33 巻 4 号・2010 年)
生殖細胞の保存と利用をめぐる法律上の問題点(産婦人科の実際第 59 巻 13 号・2010 年)
< 著 書 >
市民社会における紛争解決と法(不磨書房・2001 年・共著)
事故事例で学ぶ医療リスクマネジメント(学研メディカル・2007 年・編著
< 備 考 >
2003 年より、東京都看護協会の委嘱を受け、ファーストレヴェル及び一般研修等の講
師を務めている。京都府看護協会、長野県看護協会、山口県看護協会等でも、ファース
トレヴェル等の講師を務めている。また、国際医療福祉大学のセカンドレヴェルの講師
も務めている。現在、東京都看護協会の顧問を務めるほか、医学学会等の顧問も務めて
いる。法政大学法科大学院(ロースクール)では、特任講師として講義(刑事訴訟法)
とゼミを担当し、慶應義塾大学大学院法務研究科(ロースクール)では、助教として実
務家ゼミを担当していた。現在は、ボランティアとして、司法試験を受験する学生の指
導を行っている。その他、経済産業大臣の委嘱を受けて「原子力発電に係るシンポジウ
ム等についての第三者調査委員会」の作業チーム委員を務めるとともに、資源エネルギー
庁長官の委嘱を受けて「原子力広聴・広報アドバイザリー・ボード」の委員を務める。なお、
実兄は福島県立会津総合病院に、実弟は神奈川歯科大学に、それぞれ勤務している。実
母は、准看護師(福島県)。
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- 18 -
シンポジウム 1
歯学部・歯科大学における心身医学教育の現状と今後
-卒前教育と卒後教育のあり方-
座長 北川 善政
北海道大学
岡田 智雄
日本歯科大学
1.和気 裕之
神奈川歯科大学
2.小見山 道
日本大学松戸歯学部 3.竹之下 美穂
東京医科歯科大学
4.安彦 善裕
北海道医療大学
シンポジウム1 歯学部・歯科大学における心身医学教育の現状と今後
S-1-1
-卒前教育と卒後教育のありかた-
神奈川歯科大学の卒前・卒後教育から
今後の心身医学教育を考える
和気 裕之
みどり小児歯科(横浜市)
私は 1992 年に東京医科歯科大学の口腔外科で精神科医(宮岡等北里大学医学部精神科教
授)とリエゾン診療を開始し、1999 年に日本大学松戸歯学部で心身医学の講義を依頼された。
その後、東京医科歯科大学、神奈川歯科大学、長崎大学、北海道大学、昭和大学で学生およ
び研修医等に講義を行ってきた。
今回、神歯大における心身医学教育を提示して、今後どのような教育が必要かを考えてみ
たい。まず、4 年生の講義は、精神疾患の疫学、心療歯科とリエゾン診療を概説した後、1.
ストレスと心身症、2.歯科心身症(舌痛症、顎関節症、口臭症、歯科治療恐怖症)、3.
心理テスト、4.心身医学診療、および、医療連携を解説している。上記は、ほぼコア・カ
リキュラムに準拠している。また、院内生と研修医には咬合リエゾン診療科の医療面接の見
学、多軸評定の実習および検討会を実施している。学生からは率直な疑問や患者や歯科医師
を自分自身に置き換えた時の意見等が出され、強い印象を受けたことがわかる。こうした体
験が将来臨床で役立つことを期待している。
さて、臨床では通法通りにいくら治療しても改善しない、あるいはかえって悪化する患者
が問題になっている。症状は歯痛、舌痛、顎の痛み、インプラント後の疼痛、咬合違和感、
口腔乾燥感等であり、いずれも心身医学的な要因が関係する。一方、講演会を行うと「心身
症の患者は対応に困る」、「出来ればみたくない」、「見分け方が分からない」「どこかへ依頼
したいが、送るとところがない」、等を聞く。これらの中に、心身医学教育の問題が隠れて
いると思われる。それは、患者や疾患への偏見、知識と技術の不足、高次医療機関の不足、
医療経済等であろう。歯科心身医療は、主に大学病院・総合病院の歯科心身医療科等で行わ
れているがその数は非常に少ない。他方、開業医は医療面接、鑑別診断、初期対応、医療連
携、そして、なにより医原性の患者を作らないことが求められるが十分とは言えない。心身
医学教育を通して社会に役立つ歯科医師をどう育てるか。今回、こうした観点から心身医学
の卒前・卒後教育を考えてみたい。
(心身医学教育・医療担当:玉置勝司・和気裕之・宮地英雄・島田淳・ 澁谷智明・三村将大・宮岡等)
- 20 -
略 歴
1978 年 日本大学松戸歯学部卒業、東京医科歯科大学歯学部口腔外科学専攻
1981 年 みどり小児歯科開設(横浜市)
1999 年 歯学博士(東京医科歯科大学・口腔外科学)
2014 年現在 みどり小児歯科院長
<所属・学会役職・資格>
日本大学客員教授、神奈川歯科大学臨床教授、長崎大学臨床教授、北海道大学客員臨床
教授、東京医科歯科大学非常勤講師、昭和大学兼任講師、日本顎関節学会(理事、指導医・
歯科顎関節症専門医)、日本口腔顔面痛学会(評議員、暫定指導医・専門医)
、日本心身
医学会(代議員)
<主な著書>
歯科医のための心身医学・精神医学(日本歯科評論社、1998 年)
サイコ・デンティストリー 歯科医のための心身医学・精神医学(砂書房、2009)
有病者歯科ポケットブック 全身疾患 vs 歯科治療(デンタルダイヤモド、2009)
新・顎関節症はこわくない(砂書房、2011)
口・あご・顔の痛みと違和感への対処法(ヒーロン・パブリッシャーズ、2013)
- 21 -
シンポジウム1 歯学部・歯科大学における心身医学教育の現状と今後
S-1-2
-卒前教育と卒後教育のありかた-
日本大学松戸歯学部の卒前・卒後教育について
小見山 道
日本大学松戸歯学部 顎口腔機能治療学講座
歯科臨床において、患者の訴える症状に見合う所見がない、あるいは数年にわたって患者
が歯科治療による体の不調を訴える症例は、心身医学的知識の有無で対応が大きく異なるこ
とは想像に難くない。すなわち、歯学教育でも心身医学教育は必須である。
平成 22 年度改訂版の歯学教育モデル・コア・カリキュラムから関連用語を狩猟すると、
E-4-5)心因性疾患の項目に「心身相関」「歯科心身症」「心因性の痛み」「心理テスト」など
があり、また平成 26 年版歯科医師国家試験出題基準では、
「認知症」「統合失調症」「うつ病」
「双極性障害」「心因性疼痛」「心身医学療法」「口腔領域に関連して現れる心因性病態」など
を認める。
当学部での心身医学に関する卒前教育は、4 年次生「総合医学」の学科目において、精神・
神経科学の授業項目 1 ~ 7 でそれぞれ、
「外因性、内因性、心因性精神障害」、
「心身症」、
「睡
眠障害」「内因性精神障害(統合失調症圏)」「小児・高齢者の精神的特性、精神障害」「人格
障害」「感情障害(躁うつ病圏)」の内容で、各 90 分間の講義を行い、さらに頭蓋顔面頭頸
部外科系疼痛学各論の一部講義や、「口腔顎顔面外科学」の学科目で「神経疾患、精神疾患」
「心因性疾患、心身症、心身医学」について各 90 分間の講義を行う。
また、臨床実習においては、各種外来において心身医学的対応が必要な患者の初診や再診
を見学し、必要に応じてレポートを提出し、また研修医と共にリエゾン診療の見学も可能で
ある。インプラント科では、術前検査で CMI を実施しており、心身医学的検討の必要性を
理解できる。さらに同窓会主催での、心身医学に関する卒後研修会も開催している。
今回、当学部における心身医学教育の現状について供覧する。心身医学的問題を抱える患
者への対応には、精神疾患を中心とした心身医学の知識および医療面接等における技術、迷
える患者に寄り添う献身的な態度を教育する必要があり、今後さらなる教育プログラムの充
実が望まれる。
- 22 -
略 歴
1989 年 日本大学松戸歯学部卒業
1990 年 日本大学松戸歯学部 総義歯補綴学講座 1998 年 日本大学 博士(歯学)
2003 年 日本大学松戸歯学部講師
2003 年~ 2005 年 ベルギー王国ルーベンカトリック大学歯学部 客員教授
2011 年~ 日本大学松戸歯学部准教授 顎口腔機能治療学講座
日本大学松戸歯学部付属病院 口・顔・頭の痛み外来 責任者
<代表的所属学会>
日本補綴歯科学会指導医 代議員、日本疼痛学会 理事 評議員
日本顎関節学会指導医 評議員、日本口腔顔面痛学会暫定指導医 評議員
日本顎口腔機能学会 評議員、日本歯科心身医学会 評議員
Asian Academy of Craniomandibular Disorders; Council
International Association of Dental Research; Secretary & Treasurer
International Association for the Study of Pain
International College of Prosthodontics
- 23 -
シンポジウム1 歯学部・歯科大学における心身医学教育の現状と今後
-卒前教育と卒後教育のありかた-
当科における心身医学教育への取り組み
S-1-3
竹之下 美穂
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科
全人的医療開発学講座 歯科心身医学分野
従来、歯科における心身医学の卒前・卒後教育の重要性が強調されてきた。しかし、全国
的にもわずかな座学のみの大学がほとんどで、とても十分とは言えないのが現状である。精
神医学や内科領域の心身医学の単なる抜粋ではなく、歯科特有の心身医学の体系が求められ
ている。
本大学歯科心身医学分野の教育においては、講義や本でかじった生半可な知識だけで
はなく、実体験を通じて本症を肌で感じ取ってもらうことに主眼を置いており、PDM
(Physical Dental Mental)3 つの面から診療できる歯科医師の育成を目指している。また、
practicality を重視し、臨床のお手本は患者さんであることを念頭に教育を行っている。
学部学生の教育においては、まず、4 年生時に行う早期体験実習で歯科心身医療外来にて
実際の診療場面の見学をしてもらい、いわゆる歯科心身症患者についての基礎知識を得て
もらう。5 年生時には歯科心身医学についての講義を行い、その後 6 年生時の包括臨床実習
では、学生が実際に外来新患の予診を担当し、教授診察の場でプレゼンテーションするこ
とを課している。生の患者を眼前にし、当人から直接話を聞くことで、歯科医師が担当す
べき歯科心身症患者が実在すること、治療可能な疾患であること、安易に「心因性」「治ら
ない」などと片付けることの弊害、患者や家族の深刻な苦痛などに理解を深めさせている。
また予診においては、効率よく重要事項を問診し、かつ精神科に紹介すべき疾患の鑑別も
できるように Psychiatry In Primary Care(PIPC)を導入し、MAPSO(Mood、Anxiety、
Psychosis、Substance、Organic/Other)システムを用いた実践的な指導を心掛けている。
卒後ローテートしてきた臨床研修歯科医師や大学院生には、予診だけでなく、さらに治療
過程まで含めもう一歩踏み込んだ指導を行っている。また、本学医学部精神科や近隣医科、
薬局とも勉強会を行い、他科医師やパラメディカルへの認知も高め、知識の研鑚にも努めて
いる。
今後、歯科心身症を専門的に診ることができる歯科医師の育成に加え、専門でなくとも歯
科心身医学の素養をもった歯科医師を増加させていく事が課題である。
- 24 -
略 歴
H15 年 3 月 九州歯科大学 歯学部歯学科 卒業
H17 年 3 月 東京医科歯科大学 歯学部附属病院 臨床研修医 修了
H22 年 3 月 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科
歯科心身医学分野 修了
H22 年 4 月 東京医科歯科大学 歯学部附属病院 歯科心身医療外来 医員
H25 年 4 月 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科
歯科心身医学分野 助教
現在に至る
<代表的所属学会> 日本歯科心身医学会 日本心身医学会
- 25 -
シンポジウム1 歯学部・歯科大学における心身医学教育の現状と今後
S-1-4
-卒前教育と卒後教育のありかた-
本学における歯科心身医療に関する教育の現状と課題
安彦 善裕
北海道医療大学歯学部
生体機能・病態学系 臨床口腔病理学分野
北海道医療大学では、歯科心身医療に関する卒前教育として座学の授業では、「歯科医療
行動科学」、
「歯科心身症、精神保健」
(口腔衛生学)、
「歯科恐怖症」
(小児歯科、障害者歯科)、
「歯
科心身症」(障害者歯科)、「歯科心身症」(口腔外科)、「医療面接」などがある。また、大学
病院の「口腔内科相談外来」での患者のほとんどが歯科心身症の患者であることから、臨床
研修では2ケース(1ケースは初診)を義務づけている。卒後教育では、希望する研修医に
は本外来での研修を行う機会を与え、「心療内科・医療心理室」とのカンファレンスへの参
加も促している。本学には心理科学部があることから、心理の専門家との風通しの良いこと
を活かした教育はなされているが、系統だった教育がなされているとは言い難く、この点が
今後の大きな課題である。
歯科心身症患者への対応で特に注意すべきこととして教育していることは、1.歯科心身
症患者に遭遇する頻度は高い。2.歯科心身症は過剰な診療によって症状の悪化することが
多い。3.歯科心身症の多くは歯科的疾患であり、精神科的疾患は少ない。ことなどである。
精神科的疾患を判断するための具体的な問診例は、「医療面接」の中で紹介し、臨床研修の
ゼミで、簡単な心理検査と合わせてロールプレイを行っている
本シンポジウムでは、このような本学の教育の現状を紹介し、今後の課題について議論い
たしたい。
- 26 -
略 歴
北海道医療大学 歯学部 生体機能・病態学系 臨床口腔病理学分野 教授
北海道医療大学病院「口腔内科相談外来」
1960 年 福島県生まれ
1986 年 東北歯科大学(現:奥羽大学歯学部)卒業
1990 年 東京歯科大学大学院歯学研究科病理学専攻修了(歯学博士)
1990 〜 92 年 ブリティッシュコロンビア大学歯学部博士特別研究員
1992 年〜 1999 年北海道医療大学歯学部講師(口腔病理学)
2002 年〜 東京歯科大学非常勤講師(臨床検査学)
2005 年 ロンドン大学イーストマン歯科研究所客員教員(口腔内科)
2005 年〜 2011 年北海道医療大学個体差医療科学センター教授(歯学部門 • 口腔内科)
2006 年〜北海道医療大学大学院歯学研究科教授兼任(臨床口腔病理学)
)
2011 年 武蔵野大学人間関係学部人間関係学科通信教育部卒業(学士(人間学)
2011 年 北海道医療大学歯学部教授(高齢者・有病者歯科学)
2011 年〜北海道医療大学歯学部教授(臨床口腔病理学)
資格
日本病理学会認定口腔病理専門医・研修指導医、日本心理学会認定心理士、死体解剖資
格認定、日本歯科心身医学会認定医、日本口腔検査学会認定医、
学会活動
日本歯科心身医学会理事(第 26 回大会長)
、日本臨床口腔病理学会理事、
日本口腔検査学会理事(第3回大会長)
、日本歯科人間ドック学会理事(第 17 回大会長)
国際歯科研究会議日本部会評議員、日本病理学会評議員、日本臨床分子形態学会評議員、
日本抗加齢医学会評議員、日本口腔内科学会評議員、ドライマウス研究会世話人
受賞
1998 年 歯科基礎医学会賞、1999 年 東日本学園理事長賞
2003 年 東日本学園理事長賞、2006 年 日本臨床分子形態学会奨励賞
2008 年 Oral Diseases Award“The Best Reviewer 2008”
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シンポジウム 2
臨床家の立場から歯科心身症を捉える
-経験から学ぶべきもの-
座長 宗像 源博
神奈川歯科大学
皆川 仁
皆川歯科クリニック:神奈川歯科大学客員教授 SJCD 理事
井澤 常泰
井澤歯科医院:東京医科歯科大学臨床教授
加治 初彦
加治矯正歯科クリニック:藤本研修会矯正コース講師
山㟢 長郎
原宿デンタルオフィス:SJCD インターナショナル会
シンポジウム2 臨床家の立場から歯科心身症を捉える
S-2-1
-経験から学ぶべきもの-
歯科心身症とインプラント治療
皆川 仁
神奈川歯科大学 顎咬合機能回復補綴医学講座
臨床現場で実際に心身症患者と向き合うことは非常に根気を要する。特にインプラント治
療を希望される患者においては困難なことが多い。インプラント治療は外科侵襲治療であり
欠損咬合回復を伴う機能治療でもある。治療期間も長くエビデンスベースの診断と確固たる
外科技術、非自己であるがゆえの困難な補綴設計と咬合回復治療、さらには長期的維持をす
るべくメインテナンスが伴い初めて成功裏に達する。
当然患者とのインフォームドコンセントが最も重要であり、患者と歯科医師の共通の認識
が必要である。私はインプラント治療そのものが適応かを考える時、ベースとなるものが4
つあるものと考える。
一つ目は EBM、2つ目は診査 / 診断、3つ目は治療計画、4つ目は患者選択、つまり患
者理解である。今回の講演ではその中で歯科心身症を伴う患者のケースに焦点を当ててみた
い。結論として言えることは、患者の要望があり臨床条件に何ら問題が無い場合でも、心身
症に対するインプラント治療は慎重に考えなければいけないということである。
今回3人の心身症患者ケースを提示する。1人目は治療途中でありブラキサー患者で2年
間試行錯誤しているケース、2ケース目はパニック障害の患者でありインプラント埋入を終
えたが途中で治療を中断し半年以上も通院されていないケース、3ケース目は歯科恐怖症患
者であったが本人と家族の協力で見事克服し最終補綴に至ったケースである。
それぞれ治療対応について挫折と苦悩、反省の繰り返しであった。これら3ケースを中心
に臨床の立場から歯科心身症とインプラント治療の適否を考えてみたい。
- 30 -
略 歴
1991 年 明海大学歯学部卒業
医療法人仁晶会 皆川総合歯科クリニック開業
<代表所属学会・役職>
神奈川歯科大学客員教授
東京 SJCD 理事
SJCD レギュラーコースインストラクター
日本口腔インプラント学会
EAO 会員
皆川インプラントアカデミー 12+1 コース主宰
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シンポジウム2 臨床家の立場から歯科心身症を捉える
-経験から学ぶべきもの-
臨床家の立場から歯科心身症を捉える。
根管治療の立場から
S-2-2
井澤 常泰
東京都渋谷区開業
根管治療と痛みとには密接な関係があり、痛みを取り除くことで患者に感謝されることは
職業人としての喜びである。ところが痛みを取り除くために抜髄処置をしたにもかかわらず、
痛みが持続する症例に遭遇すると、歯科医としての自信を失うばかりか患者の信頼をも失
うことになりかねない。抜髄後の痛みの原因としては、残髄、over instrumentation、over
medication、根管の見逃し等があり、根管治療で解決できるものがほとんどである。ところ
が最近、いくら根管治療を繰り返しても痛みが消退しないとの理由で紹介される症例が増え
てきている。それらについて問診してみると、訴えている痛みは抜髄前から存在しており、
抜髄により痛みが憎悪したというよりも、抜髄前の痛みが継続しているということなのであ
る。 つまり抜髄の適応症ではないにもかかわらず、患者の訴える痛みの診断が付かないま
ま疑わしい歯を抜髄してみたものの問題の解決にならず、長期間にわたり根管治療を続けて
しまうという症例である。目の前に歯が痛いという患者がいれば何とかしてあげたいのが歯
科医の人情ではあるが、原因ではない歯の抜髄は全く意味が無く、患者からの信頼を失う
ことにもなる。本講演では抜髄後の痛みが取れないということで紹介を受けた患者の中で、
元々その歯が痛みの原因ではなかったと思われ心因性の痛みが疑われた症例をご紹介する。
また歯科恐怖症という患者が少なからず存在する昨今、患者の協力が得られないのであれば
根管治療は不可能であり、基本的には大学病院の麻酔科へ紹介することにしているが、歯科
恐怖症患者の慢性根尖性歯周炎の治療を静脈鎮静下で逆根管治療により対応した症例を報告
する。
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略 歴
1957 年 東京都生まれ
1982 年 東京歯科大学卒業
1987 年 東京医科歯科大学大学院修了
1989 ~ 1991 年 コロンビア大学留学
1994 年 ペンシルバニア大学 マイクロサージェリーコース修了
1996 年 東京都渋谷区開業
1999 年 東京医科歯科大学歯学部臨床教授
2002 年 新潟大学歯学部非常勤講師
Carl Zeiss 公認インストラクター
<所属学会>
American Association of Endodontists
日本歯科保存学会
日本歯内療法学会
- 33 -
シンポジウム2 臨床家の立場から歯科心身症を捉える
-経験から学ぶべきもの-
矯正臨床での心身症様患者の経験
S-2-3
加冶 初彦
加治矯正歯科
矯正臨床は歯科の他分野に比べると①治療期間が長い②侵襲性非可逆性が高い③自費治療
であるという特徴がある。加えて、術前後で生じる歯列や顔貌の変化等、審美的な要素も大
きい。以上の様な矯正治療の特徴が心身症の発現と直接的、間接的に関わる可能性がある。
歯牙移動は非常に時間がかかることが多く、必ずしも患者の思い通りに治療が進むわけで
はない。この様な状況は場合によっては様々な葛藤を患者に引き起こす原因となるかもしれ
ない。
今回は矯正治療を始めたにもかかわらず、自身の治療に対する思い込みから転医を繰り返
したケースや長期間の矯正治療により心身に症状をきたし転院してきたケースなどの経験を
通し、矯正臨床での精神心理的側面を考えてみたい。
- 34 -
略 歴
1983 年 3 月 九州歯科大学卒業
1986 年 12 月 ウェストバージニア大学 大学院卒業 Master of Science
1989 年 東京歯科大学 矯正科
1992 年 東京歯科大学非常勤講師
千代田区にて加治歯科矯正医院開業
1998 年 渋谷区にて同分院開業
1997 年より藤本研修会矯正コース講師
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シンポジウム2 臨床家の立場から歯科心身症を捉える
S-2-4
-経験から学ぶべきもの-
複雑な補綴を成功に導く臨床的基準
Clinical Guidelines for Managing Complex Restorative Patient
山㟢 長郎
原宿デンタルオフィス S.J.C.D. インターナショナル会長
現代の歯科修復治療には、マテリアルの革新・開発により大きな変化がもたらされている。
しかも、その発展と進歩の速度は、我々歯科医、歯科技工士の予想を遥に超えるものとなっ
ている。また、患者サイドにおいても、様々な媒体・分野からの情報・知識により、従来の
修復治療に、より更に高いレベルの審美性を望む声が高まっている。しかしそれは一方、あ
る種の危険性を孕んでいる。つまり審美性を追求するあまり、治療の本質を歪めかねない、
と言う事である。審美修復治療と言えども、機能・構造力学・生物学等考察を合わせ持つ物
でなければ真の修復治療とは言い難い事は自明の理である。それ故、これを踏まえた審美修
復治療の臨床的基準を確立する必要があり、同時に、症例が複雑で困難になる程、修復治療
の前、中、後、それぞれのステップにおける、各分野(矯正・歯周・インプラント等)との
連携が肝要となる。より洗練された審美修復治療達成の鍵を握るのは、各専門医との綿密・
詳細な診断治療計画の練り合わせなのである。今回は、Esthetic の Classification を私なり
に再達成し、症例の区分・分類法を新たに加え、併せて、最新のマテリアルをその使用方法
と共に解説しようと思う。
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略 歴
1945 年 長野県生れ
主な講演先
1970 年 東京歯科大学卒業
日本歯周病学会・日本顎咬合学会・日本インプラント学会
1974 年 原宿デンタルオフィス開院
日本歯科審美学会・日本矯正学会・国際歯科審美学会
東京 S.J.C.D. 最高顧問
日本補綴学会・顎顔面インプラント学会
S.J.C.D. インターナショナル会長
50th Anniversary Quintessence International Symposium
(Berlin,05February 1999)
著 書
Annual Meeting of Pacific Coast of Prosthodontist
(San Diego、25June 1999)
臨床歯周補綴⑴ (第一歯科出版 1990 年)
臨床歯周補綴⑵マニュアル&クリニック(第一歯科出版 1992 年)
20th Anniversary International Symposium on Ceramics
(San Diego,21June 2002)
臨床歯周補綴⑶ (S.J.C.D. 出版 1995 年)
2003 Nobel Biocare World Conference (Las Vegas ,03 April 2003)
審美修復治療ー複雑な補綴のマネージメント
(クインテッセンス出版 1999 年 11 月)
7th International Congress on Esthetic Dentistry
(Istanbul , 13September 2003)
臨床を変える支台歯形成 1. 生物学的形成の理論と実際(共著)
(医歯薬出版 2000 年 5 月)
The 8th International Symposium on Periodontics & Restorative Dentistry
(Boston , 11Jun 2004)
臨床を変える支台歯形成 2. 形成・形態ガイド (共著)
(医歯薬出版 2001 年 1 月)
30th Annual USC Periodontal & Implant Symposium
(Los Angeles , 22Jan2005)
コンベンショナルレストレ−ション(監修) (医歯薬出版 2004 年 3 月)
ボンディッドレストレーション(監修) (医歯薬出版 2004 年 4 月)
2005 Nobel Biocare World Conference(Las Vegas ,08-09 Jun 2005)
Ultimate Guide IMPLANTS(監修) (医歯薬出版 2004 年 10 年)
The Esthetic Arena(Verona , 23-24Sep2005)
エステティッククラシフィケーション
31st Annual USC Periodontal & Implant Symposium
(クインテッセンス出版 2009 年 2 月)
成功に導く治療計画と臨床基準(監修)
(Los Angeles , 28Jan2006)
20Year CEREC Anniversary Symposium(Berlin,17-18March 2006)
(クインテッセンス出版 2011 年 7 月)
15th Annual International Symposium on IMPLANTOLOGY
(Boston , 8-13May 2006)
インプラントレストレーション(監修) (医歯薬出版 2013 年 10 月
The 9th International Symposium on Periodontics & Restorative Dentistry
論 文
(Boston , 8Jun 2007)
歯周と補綴 (歯界展望 1986 年)
60 Years of Quintessence
歯周・咬合・補綴治療の成否を判断する臨床的パラメーター
(Berlin , 21-26January 2009)
Academy of Osseointegration Annual Meeting
(歯界展望 1987 年)
(San Diego , 26-28February 2009)
歯周・咬合・補綴治療を成功させるための臨床的基準 (補綴臨床 1989 年)
EAED Annual Meeting(Turkey, 24-26May 2012)
歯周疾患を伴う欠損歯列の補綴 (補綴臨床 1989 年)
Esthetic Restoration and Hy-technology Dentistry Symposium
(China, 22August 2012)
エステティックの手法 (ザ・クインテッセンス 1989 年)
歯周補綴のデザイン (補綴臨床 1994 年)
The 5th Continuing Education Course of IQDAC
(Saudi Arabia 11-12October 2012)
デンタル・エステティック (ザ・クインテッセンス 1994 年)
生物学的審美的支台歯形成のために(補綴臨床 1997 年)
Taiwan & ajpan SJCD Dental Summit(Taiwan,6-7April 2013)
その他多数
Universitat Internacional de Catulunya(Barcelona, 30April 2013)
International Symposium OSTEOLOGY(Monaco 2-4May 2013)
The International Federation of Esthetic Dentistry
(Munich 18-21,Sep 2013)
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特 別 講 演
咬合違和感と脳生理との関連を考える
-知識から学ぶべきもの-
座長 玉置 勝司
神奈川歯科大学
藤澤 政紀
明海大学
小野 弓絵
明治大学
豊福 明
東京医科歯科大学
特別講演 咬合違和感と脳生理との関連を考える -知識から学ぶべきもの-
咬合違和感 高次中枢関与を臨床的に診断する
藤澤 政紀
明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野
日常の歯科臨床の場において、咬み合わせの違和感や異常感といった訴えに対する対処で
苦慮することがあります。もちろん、本当に咬合に起因して種々の不調を訴えるケースもあ
ります。主観的な患者の訴えと咬合検査による客観的な所見が一致していれば、咬合調整す
るといった歯科的対応も有効といえます。一方で客観的所見が確定できず、訴えに見合うよ
うな咬合所見が見つからない場合の対応は一筋縄ではいきません。そのような場合、患者の
要求を鵜呑みにし、咬合調整、補綴装置除去、さらには全顎的な処置へと進むにつれ、解決
の糸口がみつからず、迷路をさまよってしまうことも十分あり得ます。
最近の見解では、このような症状発現に関与する因子の一つに、中枢での感覚閾値低下な
いしは認知過程の不具合が考えられています。そして、その修飾因子としてストレスを含む
心因的な要素の関与も指摘されています。これまでの「良くわからないけど大変な症状」と
いう概念のベールが徐々に剥がされつつあります。
咬合違和感と中枢の関与を臨床の場で診断することは容易ではありませんが、咬合そのも
のが関与しているか否かを診断し、局所的な因子を除外診断することは可能です。可逆的補
綴治療を通し、咬合そのものの関与の有無をまず診断することにより、中枢の関与の可能性
を考えることが重要と考えます。
咬合違和感と脳生理の研究は緒に就いたところであり、様々なアプローチが試み始められ
ています。我々が行っている筋電図を指標とした日中のクレンチング(覚醒時ブラキシズム)
の研究からは、パラファンクション抑制のための学習効果が夜間のブラキシズム(睡眠時ブ
ラキシズム)にも影響することが示され、そのフィードバックループに中枢の関与が考えら
れています。咬合違和感にアプローチする上でのヒントという観点から、咬むことに対する
中枢の関与にも触れてみたいと思います。
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略 歴
1984 年 岩手医科大学歯学部卒業
1988 年 岩手医科大学大学院歯学研究科修了、歯学博士
1988 年 岩手医科大学 助手(歯科補綴学第二講座)
1990 年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員研究員
1997 年 岩手医科大学 講師(歯科補綴学第二講座)
2007 年 明海大学 教授(歯科補綴学分野)
日本歯科心身医学会認定医・指導医
日本補綴歯科学会専門医・指導医
日本顎関節学会専門医・指導医
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特別講演 咬合違和感と脳生理との関連を考える -知識から学ぶべきもの-
咬合違和感の脳神経科学:
高次脳機能計測による診断・治療の可能性
小野 弓絵
明治大学理工学部電気電子生命学科 准教授
末梢感覚器から送られた身体感覚を統合・認知するのは脳の働きである。スポーツ選手が
試合中に負ったケガの痛みを試合終了まで気が付かないように、体性感覚の認知における注
意や意識の効果は古くから知られているところであるが、身体感覚の認知に関する研究は痛
覚に関するものが殆どであり、身体感覚の「違和感」についての検討は未だ十分ではない。
特に口腔領域における“咬合違和感”の発症については様々な要因が考えられているものの、
そのメカニズムに関する研究はほとんどなされていないのが現状である。
そこで、本講演ではまず、痛覚認知の分野において提唱された心理学的モデルである「フィ
ルターモデル」
、ならびにフィルターモデルを担う脳部位を検討した脳機能イメージングの
先行研究を紹介する。体性感覚は視床を介して一次体性感覚野(S1)へ投射されることで
意識にのぼるが、S1 に伝達された後も、受容された身体感覚は複数の脳部位で修飾を受け、
これらが統合されて最終的な知覚を形成する。演者らは身体感覚への注意や感覚の強さの調
節を行う前頭前野に着目し、咬合違和感と前頭前野活動の関連性について、健常者ならびに
咬合違和感患者への脳機能イメージング実験を行っている。講演では、我々の研究で得られ
た知見とフィルターモデルとのかかわりについて考察しながら、口腔からの末梢感覚信号
が、どのように咬合違和感症患者の高次脳において表現されているのかについて検討する。
さらに近年小型化が進む非侵襲脳機能計測装置を用いた、チェアサイドでの咬合違和感診断
への取り組みについても紹介する。加えて将来の展望として、強迫性障害など咬合違和感症
に関連の深い神経症状に対して改善効果が報告されている、ニューロフィードバックを用い
た認知療法について先行研究を紹介し、咬合違和感症患者への応用の可能性について、臨床
の先生方と討議させていただきたい。
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略 歴
平成 12 年 早稲田大学理工学部卒業
平成 16 年 早稲田大学大学院理工学研究科 修了 博士(工学)
日本学術振興会特別研究員、早稲田大学総合研究機構先端バイオ研究所講師、神奈川歯
科大学生体機能学講座講師・准教授等を経て、平成 23 年から現職。専門は脳神経科学、
生理学、脳機能画像工学の医用応用
<代表的所属学会・役職等>
日本神経科学学会
日本自律神経学会(評議員)
北米神経科学学会 など
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特別講演 咬合違和感と脳生理との関連を考える -知識から学ぶべきもの-
Phantom Bite と“脳内地図”
豊福 明
東京医科歯科大学(TMDU)大学院医歯学総合研究科 歯科心身医学分野
口腔領域の不定愁訴(MUOS)の中で、咬合が絡んだ愁訴は歯科特有なものである。従来、
咬合の修正を求め歯科を転々とする患者は、Phantom bite(Marbach、1976)と呼ばれ、
“精
神病的な妄想”や“パーソナリティの障害”などといった解釈がなされてきた。確かにその
ようなケースも散見されるが、実は本症と精神疾患の合併率は巷に言われている程高くはな
い。
「精神科に行け」と敬遠しても、肝心の精神科から「歯の問題だから歯科へ」と突き返
されることがしばしばある。といって Phantom bite における咬合の問題を、やっきになっ
て口腔内のみで解決しようとしても上手くいかない。
「先生のしたところが悪くなった!」
「こ
の歯を高くしてくれたら治るんです!」などと言った訴えに散々巻き込まれ、早晩治療は行
き詰る。それは、歯科医師の技術的な問題ではなく、中枢を巻き込んだ“咬合の感覚”、す
なわち“somatotopic map における咬合”の歪みこそが問題だから、と我々は考えている。
Phantom bite 患者の訴える咬合の異常感を、“脳内地図”の更新や反応プログラムの更新の
不調と捉えてみると、本症患者の妙にリアルな訴えや必死な治療要求というものが、あなが
ち「気のせい」とか「大げさ」とは言えない。真の治療のターゲットは口腔内ではなく脳
内にある。歯の接触関係ではなく脳内の表象 representation としての咬合こそ治療の首座、
ということになる。とすると、高次中枢性病態を見据えた新たな歯科治療戦略が必要とな
る。我々の目指す新しい歯科心身医療とは、中枢を巻き込んだ歯科的症状、いわば“歯とこ
ころ”が複雑に絡み合った病態に対応する総合的治療を行い得る歯科医療を意味している。
今回は自験例の提示とともに高次中枢性病態の可視化の一環として Single photon emission
computed tomography(SPECT)を用いた Phantom Bite の脳機能画像研究についても報
告したい。
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略 歴
平成 2 年 3 月
九州大学歯学部卒業
平成 2 年 4 月
福岡大学医学部歯科口腔外科学教室入局
福岡大学病院助手(歯科口腔外科)
平成 4 年 10 月
平成 12 年 10 月 博士(医学)取得(福岡大学)
「いわゆる口腔心身症の入院治療についての臨床的研究
―治療技法の検討と病態仮説の構築について―」
平成 13 年 4 月
福岡大学病院講師(歯科口腔外科)
平成 19 年 3 月
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科
頭頸部心身医学分野 教授
同歯科心身医学分野 教授(分野名変更)
平成 21 年 4 月
現在に至る
<所属学会>
2009 年 1 月
2007 年 4 月
2008 年 4 月
2009 年 6 月
日本歯科心身医学会理事長
口腔病学会理事
日本有病者歯科医療学会評議員
日本心身医学会特別委員
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一 般 口 演
セッション 1 基礎・薬剤
座長 安彦 善裕
北海道医療大学
セッション 2 舌痛症
座長 宮地 英雄
北里大学
セッション3 臨床統計・その他
座長 依田 哲也
埼玉医科大学
基礎・薬剤
01
舌神経損傷モデルラットの三叉神経節における
CGRP 陽性細胞およびリン酸化 ERK 陽性衛星細胞の機能連関
Interaction of CGRP positive trigeminal neuron and phosphorylated
ERK positive satellite glial cell in lingual nerve crush model rats.
○片桐 綾乃 1)、2)、豊福 明 2)
1)
日本大学歯学部生理学講座
2)
東 京医科歯科大学医歯学総合研究科歯科心身医学分野
○Katagiri A 1),2), Toyofuku A 2)
1)Department of Physiology, Nihon University School of Dentistry
2)
Department of Psychosomatic Dentistry, Tokyo Medical and Dental University Graduate School
舌は体性感覚のみならず、味覚、咀嚼、発音にも関与し、舌の持続的な痛みは QOL を著しく低下させる。
舌の痛みには炎症性疼痛・癌性疼痛・舌痛症等あるが、臨床の現場では殊に医原性の神経損傷による神経障
害性疼痛が大きな問題となる。これまでに我々は、舌神経圧迫モデルラットを開発し、舌神経損傷により舌
に痛覚過敏が発症し、三叉神経節細胞を取り囲むグリア細胞(衛星細胞)が活性化することを確認した。し
かし、舌神経圧迫による神経節細胞と衛星細胞の機能連関については不明な部分が多い。そこで今回、舌神
経圧迫モデルラットを用い、行動薬理学的手法および免疫組織化学的手法を用い、神経細胞体から放出され
る神経ペプチド CGRP、衛星細胞における ERK のリン酸化、および両者の機能連関について検討した。舌
神経損傷により、CGRP 陽性神経細胞、リン酸化 ERK 陽性衛星細胞が増加した。CGRP 受容体は神経節細
胞体および衛星細胞に存在し、三叉神経節に CGRP 受容体拮抗薬または MEK 阻害剤を投与すると、痛覚
過敏発症抑制、CGRP 陽性神経細胞、リン酸化 ERK 陽性衛星細胞の増加抑制が確認された。これらの結果
より、舌神経圧迫により、CGRP を放出する三叉神経節細胞が増加、三叉神経節細胞から放出される CGRP
が神経細胞体・衛星細胞を活性化し、さらに衛星細胞の活性化の過程に ERK のリン酸化が重要な役割を果
たしている可能性が示唆された。
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基礎・薬剤
02
舌における stress response system を構成する
CRH 経路の存在
歯科心身症の分子基盤の解明に向けて
Evidence for the stress response system constituted of CRH pathway
in tongue
The analysis of dental psychosomatic disorders using molecular basis technique
○福島 洋介、佐藤 毅、北村 智久、林 直樹、大久保 正彦、中岡 千恵里、
佐野 良恵、榎木 祐一郎、依田 哲也
埼玉医科大学医学部口腔外科学教室
○Fukushima Y, Sato T, Kitamura T, Hayashi N, Okubo M, Nakaoka C, Sano Y,
Enoki Y, Yoda T
Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Faculty of Medicine, Saitama Medical University
Ⅰ.舌痛症や味覚障害および口腔乾燥症などにおいては、心因性によるものと考えられる、いわゆる歯科
心身症症例がある。しかしながらこれらの病態について分子レベルでの解析は行われておらず、有効な治
療は未だ確立されていない。近年、個々の器官において局所のストレス抵抗性機構である stress response
system が存在することが提唱されている。これは器官を構成する細胞が Corticotropin-Releasing Hormone
(CRH)pathway を有しストレスに抵抗しており、その機構の破綻により病態が引き起こされるという考え
方である。今回われわれは、歯科心身症において症状が出現しやすい舌に stress response system が存在し、
その破綻が歯科心身症に関連するとの仮説を立てた。本研究では舌に CRH pathway が存在するかどうかを
検討し、ストレスホルモン関連遺伝子欠損マウスとの比較を行った。
Ⅱ.Adrenocorticotropic hormone(ACTH)受容体欠損マウス(MC2R KO mice)とその野生型同腹子
の舌組織の RNA 採取を行い、CRH pathway 関連遺伝子の発現をリアルタイム PCR で検討し、タンパク質
の局在については免疫染色を行った。Ⅲ.舌において stress response system を構成する CRH pathway が
存在する可能性が示唆された。Ⅳ.Slominski AT, et.al, J Invest Dermatol. 131:613-622, 2011.
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基礎・薬剤
03
口腔セネストパチーにおける局所脳血流(rCBF):
うつ病既往との関連
Comparison of Cerebral Blood Flow in Oral Cenesthopathy with and
without Depression history
○渡邉 素子 1)、梅崎 陽二朗 1)、鈴木 スピカ 1)、三浦 杏奈 1)、篠原 優貴子 1)、吉川 達也 2)、
佐久間 朋美 2)、舌野 知佐 2)、片桐 綾乃 1)、竹之下 美穂 1)、豊福 明 1)
1)
東 京医科歯科大学大学院 歯科心身医学分野
2)
東 京医科歯科大学歯学部附属病院 歯科心身医療外来
○Watanabe M 1), Umezaki Y 1), Suzuki S 1), Miura A 1), Shinohara Y 1), Yoshikawa T 2),
Sakuma T 2), Shitano C 2), Katagiri A 1) , Takenoshita M 1), Toyofuku A 1)
1)Department of Psychosomatic Dentistry, Graduate School of Medical and Dental Sciences,
Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan
2)
Psychosomatic Dentistry Clinic, Tokyo Medical and Dental University Dental Hospital,
Tokyo, Japan
Ⅰ.目的:目的口腔セネストパチーは、口腔領域に奇異で理解し難い症状を訴えるものの相応する所見が
認められない病態であり、単一症候性の場合や精神科的疾患の部分症状として生じる場合がある。今回我々
は口腔セネストパチー患者の rCBF をうつ病既往の有無別に検討した。
Ⅱ.
方法:対象は当科を初診した口腔セネストパチー患者 27 名。①うつ病既往のない口腔セネストパチー
群(pure 群)と②うつ病寛解期に発症した口腔セネストパチー群(depression 群)とに分類した。脳血流
SPECT 検査を施行し、3DSRT を用いて左右脳半球各 12 領域(計 24 領域)における rCBF 値を算出した。
Ⅲ.結果と考察:①群は 17 名(男性 2 名、女性 15 名、65.65 ± 10.33 歳)。②群は 10 名(男性 3 名、女性
7 名、67.60 ± 6.59 歳)。①群では側頭葉、後頭葉、小脳で右優位な血流左右差が認められ、②群でも側頭葉、
後頭葉での右優位な左右差が認められたが、中心では左優位の血流左右差が認めらた。更に rCBF 値の左右
比を比較した結果、中心では①群で右優位、②群で左優位であり両群間に有意差が認められた。
側頭葉、後頭葉では両群に共通した血流左右差が、中心では脳血流パターンの逆転が認められた。共通の
脳活動の不均衡が口腔セネストパチーに関与している可能性がある一方、うつ病既往の有無で異なった脳内
機序も存在することが示唆された。
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基礎・薬剤
04
ミルタザピンが無効の非定型歯痛にプレガバリンが奏効した1例
Effectiveness of pregabalin for treating atypical odontalgia: a case report
○加藤 雄一 1)、2)、石井 隆資 2)、岡田 智雄 2)、苅部 洋行 1)
1)
日本歯科大学生命歯学部 小児歯科学講座
2)
日本歯科大学附属病院 心療歯科診療センター
○Kato Y 1),2), Ishii T 2), Okada T 2), Karibe H 1)
1)Department of Pediatric Dentistry, The Nippon Dental University
2)
Clinical center of Psychosomatic Dentistry, The Nippon Dental University Hospital
【緒言】非定型歯痛は他覚的異常所見に乏しく、精神的な異常も認められないにもかかわらず、痛みや異常
感を訴える疾患である。抗うつ薬などで改善することが知られているが、反応性に乏しいケースでは、二次
選択薬に他の向精神薬等を用いることもある。ミルタザピンが無効であった非定型歯痛に対してプレガバリ
ンが奏効した症例を体験したので報告する。
【症例】48 歳、女性。上顎左側臼歯部の疼痛を主訴に当院総合診療科受診。
「根っこの治療をしても歯が痛い」、
「痛みの場所が移動している」との訴えがあり、マイクロ下で根管内精査、CT 検査等するも訴えに相応す
る器質的異常所見が認められず、当センター受診となった。現病歴、NSAIDs 抵抗性、痛みの性状等から非
定型歯痛と診断した。不眠症で心療内科に通院中であり、ミルタザピン、ゾルピデム服用中のため、当科で
併診可能か対診し了解が得られたためプレガバリンを処方したところ疼痛に改善が認められた。さらに心療
内科での処方がゾルピデム単剤となってからも疼痛の改善は継続した。
【考察】
本症例では抗うつ薬の反応性に乏しい非定型歯痛に対して、プレガバリンを処方することで効果が認めら
れた。また、ミルタザピンの服用が無くなった後も改善が続いたため、プレガバリン単剤でも効果があった
と考えられた。
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基礎・薬剤
05
特発性ならびに心因性味覚障害患者に対する
ロフラゼブ酸エチルの効果
味覚障害患者に対するロフラゼブ酸エチルの効果
Efficacy of ethyl loflazepate in patients with idiopathic and
psychogenic taste disorder.
○坂田 健一郎 1)、山崎 裕 2)、北川 善政 1)
北海道大学大学院歯学研究科 1)口腔診断内科学教室 2)高齢者歯科学教室
○Sakata K 1), Yamazaki Y 2), Kitagawa Y 1)
1)Oral Diagnosis and Medicine, Graduate School of Dental Medicine, Hokkaido University
2)
Gerodontology, Graduate School of Dental Medicine, Hokkaido University
ベンゾジアゼピン系抗不安薬のロフラゼブ酸エチル(ethyl loflazepate 以下 EL)は、覚中枢を活性化す
る作用を併せ持つことが報告されている 1)。当科では味覚障害の原因が明らかでない特発性や心因性が疑わ
れる場合には第一選択薬として EL を用いている。
【目的】そこで今回、味覚障害患者に対する EL の有効性と安全性について検討した。
【対象および方法】
2008 年~ 2014 年の間に当科を受診した心因性と特発性味覚障害患者のなかで EL1mg(就寝時)を 2 週間
以上投与し、その有効性と安全性の評価が可能であった 42 例(男性 14 例、女性 28 例)を対象とし、EL 投
与による味覚障害の改善率を評価した。同様に、血清亜鉛値、味覚検査、味覚の自覚症状、病悩期間、年齢
の各々における改善率を比較検討した。改善は治療前後で味覚異常の自覚の VAS が 50%以上減少した場合
とした。
【結果と考察】42 例全体の改善率は 55%(23/42)であった。原因別の改善率では心因性は 60%(15/25)、
特発性は 47%(8/17)であった。改善例では EL の投与から、2 週間以内に 74%(17/23)に改善が認められた。
EL による副作用の発現は 43%、18 例(眠気 15 例、ふらつき 2 例、蕁麻疹 1 例)に認められ、副作用によ
り投与を中止した症例 11%、5 例であった。それ以外の症例は、投与量を 0.5mg に減量することで投与継続
可能であった。EL は治療効果の見極めが早くできるため、心因性のみならず特発性の味覚障害患者に対し
ても、第一選択薬として考慮される薬剤であると思われる。
【文献】
1)山本隆:おいしさのメカニズム。総合臨床、53:2719-2725、2004.
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基礎・薬剤
06
非定型歯痛患者へのアミトリプチリンの反応性について
Reactivity of Amitriptyline to Atypical Odontologia
○三浦 杏奈 1)、渡邉 素子 1)、篠原 優貴子 1)、鈴木 スピカ 1)、吉川 達也 2)、佐久間 朋美 2)、
2)
1)
1)
1)
1)
舌野 知佐 、梅崎 陽二朗 、片桐 綾乃 、竹之下 美穂 、豊福 明
1)
東 京医科歯科大学大学院 歯科心身医学分野
2)
東 京医科歯科大学歯学部附属病院 歯科心身医療外来
○Miura A 1), Watanabe M 1), Shinohara Y 1), Suzuki S 1), Yoshikawa T 2), Sakuma T 2),
Shitano C 2), Umezaki Y 1), Katagiri A 1), Takenoshita M 1), Toyofuku A 1)
1)Department of Psychosomatic Dentistry, Graduate School of Medical and Dental Sciences,
Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan
2)
Psychosomatic Dentistry Clinic, Tokyo Medical and Dental University Dental Hospital,
Tokyo, Japan
目的:非定型歯痛は、臨床的にも X 線上でも異常が認められない歯や、抜歯した部位に生じる慢性疼痛と
定義されている。本症には三環系抗うつ薬が有効とされているが、例外もしばしば経験される。そこで、当
科を受診した非定型歯痛患者へのアミトリプチリンの反応性について検討したので報告する。
対象:2013 年 1 月~ 2013 年 12 月の当科初診患者のうち非定型歯痛と診断された 94 名。
方法:診療録をもとに性別、年齢、初診時処方、服薬中の PGIC(Patient’
s Global Impression of Change)
の変化、アミトリプチリンの奏効率および脱落率等について検討した。
結果と考察:性別は男性 18 名、女性 76 名、年齢は 18 歳から 83 歳で平均 53.53 ± 14.6 歳であった。
既往歴や合併症を勘案した上で、初診時にアミトリプチリンを処方した 29 名(55.8%)のうち、服薬時の
副作用の出現等で治療継続できず脱落した者は 5 名(9.6%)であった。アミトリプチリン単剤で治療を継
続した者は 11 名であり、その中で明らかな症状改善がみられた者が 9 名(31.0%)であった。処方変更や
他剤併用した者は 13 名であり、その中で明らかな症状改善がみられた者は 7 名(24.1%)であった。本症
に対してアミトリプチリンが有効であるとされているが、単剤での奏功率は 31.0%、脱落率 9.6%と案外低
かった。潜在する Soft Bipolarity も勘案すると、アリピプラゾールの併用等、治療上の工夫が必要であるこ
とが示唆された。
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舌痛症
07
東京医大病院における舌痛を主訴に受診した患者への対応
Correspondence to the patients who have the chief complaint of the
pain in tongue, in the Tokyo Medical University Hospital.
○岡本 彩子 1)、安田 卓史 1)、山川 樹 1)、榎本 愛 1)、松尾 朗 1)、桝屋 二郎 2)、近津 大地 1)
1)東京医科大学医学部口腔外科学分野
2)東京医科大学医学部精神医学分野
○Okamoto A 1), Yasuda T 1), Yamakawa D 1), Enomoto A 1), Matsuo A 1), Masuya J 2),
Chikazu D 1)
1)Department of Oral and Maxillofacial Surgery, School of Medicine, Tokyo Medical
University
2)
Department of Psychiatry, School of Medicine, Tokyo Medical University
東京医科大学病院歯科口腔外科外来では、舌痛を主訴に受診した患者に対して、細分化された特色をもつ
専門外来で対応し、また必要がある症例に関してはメンタルヘルス科と連携して診療を行っている。今回は
舌痛を訴える患者に対して、当科での診断および治療に至るまでの流れを提示する。
①【初診時】
《専門外来への振り分け》器質的原因なしの疑い→慢性疼痛外来、器質的原因ありの疑い→
口腔粘膜疾患外来(粘膜外来)
②【慢性疼痛外来における精査】痛みの問診表、血液検査、口腔保湿度検査、唾液流出検査、心理検査、
必要に応じて細菌検査
③【診断および再評価】
《専門外来の再振り分け》精神科医による精神医学的対応が必要と判断した症例、
向精神薬投与の検討が必要と判断した症例→メンタルヘルス科口腔心身症外来
おおまかな流れは上記の通りとなる。
炎症や粘膜症状を認める患者は粘膜外来での加療を、明らかな所見がない、もしくは所見と患者の訴える
症状が一致しない患者は慢性疼痛外来で加療を行う体系をとっている。精神医学的な対応、向精神薬投与の
検討が必要と判断した症例に対しては、当科とメンタルヘルス科共同で 2011 年 6 月に新設した口腔心身症
外来で診療を行っている。この診療を構築、改変を行い三年経過した現在、当システムの有用性を実感して
いる。今後も引き続き専門外来が連携を取りながら、舌痛に対応していきたいと考える。
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舌痛症
08
精神科リエゾンコンサルテーション歯科外来にて診察した
舌痛症の検討
Study of Glossodynia on Consultation Psychiatry in Dental Clinic
○中久木 康一 1)、和気 裕之 1)、宮地 英雄 2)、小杉 真智子 1)、仲井 太心 1)、六島 聡一 1)、
原田 清 1)、宮岡 等 2)
1)
東 京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面外科学分野
2)
北里大学医学部精神科
○Nakakuki K 1), Wake H 1), Miyachi H 2), Nakai T 1), Rokushima S 1), Harada K 1),
Miyaoka H 2)
1)Maxillofacial Surgery, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Tokyo Medical
and Dental University
2)
Department of Psychiatry, Kitasato University School of Medicine
Ⅰ.目的
当科では、精神医学的な要因を考慮する必要がある場合、精神科コンサルテーション外来にて口腔外科医
と精神科医が共同で診察を行っている。この外来を受診する舌痛症の特徴を把握し、対応を検討した。
Ⅱ.対象および方法
対象は 2008 年 1 月から 2012 年 12 月の 5 年間に当科を受診し、精神科リエゾンコンサルテーション外来
で診察した 34 症例とした。臨床記録から、症状、経過、精神医学的所見等についてレトロスペクティブに
検討した。
Ⅲ.結果と考察
男性は 6 名、女性 28 名と女性が多く、平均 63 才(28 ~ 80 才)であった。21 人(62%)は歯科からの紹
介であったが、9 名(27%)は医科からの紹介であった。症状出現契機や随伴症状が認められたのは 30 名
であり、口腔外科処置 6 名、義歯作製 2 名、歯科処置 2 名、矯正治療 1 名と、11 名が口腔内の不可逆的処
置を受けており、自費診療が比較的多かった。症状出現後初診までの間に受けたのは、投薬 15 名、診察の
み 11 名、可逆的処置 3 名だったが、2 名は口腔外科処置、3 名は歯科処置を受けていた。精神科通院の既往
は 21 名に認められ、診察時の診断は、心気症 13 名、疼痛性障害 6 名、身体表現性鑑別不能型障害 5 名、う
つ病 3 名、などだった。25 名は、歯科・医科診療機関の併診とした。転帰は、症状改善/固定にて診察終
了したものが 19 名、診察継続が 10 名で、5 名は自己判断による中断であった。
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舌痛症
09
舌痛症の抗うつ薬治療における口腔乾燥感と唾液分泌量の
経時的変化
Changes of salivation and xerostomia through the treatments with
antidepressants for burning mouth syndrome.
○鈴木 スピカ 1)、渡邉 素子 1)、三浦 杏奈 1)、篠原 優貴子 1)、吉川 達也 1)、佐久間 朋美 1)、
舌野 知佐 1)、片桐 綾乃 1)、梅崎 陽二朗 1)、佐藤 佑介 2)、竹之下 美穂 1)、豊福 明 1)
1)
東 京医科歯科大学大学院歯科心身医学分野
2)
東 京医科歯科大学大学院高齢者歯科学分野
○Suzuki S 1), Watanabe M 1), Miura A 1), Shinohara Y 1), YoshikawaT 1), Sakuma T 1),
Shitano C 1), Katagiri A 1) ,Umezaki Y 1) ,Sato Y 2) ,Takenoshita M 1), Toyofuku A 1)
1)Psychosomatic Dentistry, Graduate School of Tokyo Medical and Dental University, Tokyo,
Japan
2)
Gerodontology and Oral Rehabilitation, Graduate School of Tokyo Medical and Dental
University Dental Hospital, Tokyo, Japan
目的:舌痛症患者の約 60% は口腔乾燥感を訴えるとされ、また本症の治療に頻用される抗うつ薬では副作
用として唾液分泌低下が発現する場合がしばしばある。そこで今回、薬物療法下の舌痛症患者における主観
的な口腔乾燥感と客観的な唾液分泌量を経時的に測定することで、服薬による影響の有無を検討した。
対象・方法:対象は 2013 年 10 月 31 日から 2014 年 4 月 16 当科初診患者のうち舌痛症患者 58 名。口腔乾燥
感は VAS により数値化し、唾液分泌量は、安静時唾液量(ワッテ法)と刺激時唾液量(サクソンテスト)
を測定した。当科での薬物治療開始 1 ~ 2 週間後、約 1 ヶ月後、約 2 ヶ月後、約 3 ヶ月後における口腔乾燥
感及び唾液分泌量の経時的変化を検討した。
結果・考察:対象患者 58 名のうち男性 5 名、女性 53 名、平均年齢は 62.24 ± 5.66 歳、初診時口腔乾燥感の
平均は 50.34 ± 2.82 であった。初診時に安静時唾液の分泌不全を認めた者は 20/58 人(34.4%)、刺激時唾液
の分泌不全を認めた者は 15/58 人(25.9%)であった。薬物治療開始前後で口腔乾燥感、安静時唾液量、刺
激時唾液量に有意差は認められなかった。
一般的に向精神薬は口腔乾燥の原因になりうるとされているが、本研究では服薬による口腔乾燥感や唾液
分泌量の経時的変化は認められなかった。今後、患者の訴える「口腔乾燥感」が何に由来するのか慎重に検
討する必要があると考える。
- 56 -
舌痛症
10
日本大学松戸歯学部付属病院「口・顔・頭の痛み外来」
における舌痛症患者治療について
Treatment for Glossodynia Patients in Orofacial Pain Clinic at Nihon
University Hospital at Matsudo
○小見山 道、和氣 裕之、西村 均、齊藤 孝親
日本大学松戸歯学部付属病院 口・顔・頭の痛み外来
○Komiyama O, Wake H, Nishimura H, Saito T,
1)Orofacial and Head Pain Clinic, Nihon University Hospital at Matsudo
目的:歯科領域における慢性疼痛疾患の一つであり、舌に痛みを訴えるが明確な器質的原因を認めない、舌
痛症に関して1、慢性疼痛疾患の管理に有効とされるグループによる認知行動療法を含めて、当外来での治
療方針を報告する。
対象と方法:当外来における舌痛症の診断は、舌を中心に灼熱感の症状が持続するが、悪性疾患を含め肉眼
的異常がなく、舌口腔粘膜擦過標本の採取、採血を行い、貧血、糖尿病といった系統疾患や、口腔カンジダ
症等を除外することで行う。治療は神経障害性疼痛に準じた薬物療法を中心として行い、さらに慢性化して
いる場合は、精神科医師とのリエゾン療法や、年に 1 - 2 回開催しているグループによる認知行動療法(舌
痛症友の会)に希望者を募り参加いただく。本研究は当学部倫理委員会にて承認されており(EC07-003)、
利益相反はない。
結果と考察:開院初年度の 1 年間で当院全体の初診・再初診数は 17,266 名、当外来を受診した患者数は 1,139
名であり、そのうち舌痛症は 136 名(11.9%)であった。翌年から3回行った舌痛症友の会の参加人数は計
36 名(男性 6 名、女性 30 名)であり、参加前後で、疼痛評価は 4.9 ± 2.1 から 4.3 ± 2.0 と有意に改善傾向
を認めた(P < 0.01)。終了後の感想としては、「この痛みが自分だけではないと分かって安心した。」等の
意見が多く認められ、舌痛症患者の疼痛管理において有効な手段の一つであることが示唆された。
文献
1. Merskey H、Bogduk N: Classification of Chronic Pain: Descriptions of Chronic Pain Syndromes and
Definitions of Pain Terms. Second ed.、1994、IASP Press、Seattle、USA.
- 57 -
舌痛症
11
初診時に舌痛症を疑った症例の検討
Study of the cases suspected glossodynia at the time of the first
medical examination
○青木 将虎 1)、大家 知子 1)、菅 亜里沙 1)、中山 敬介 1)、米田 雅裕 2)、金光 芳郎 3)、
古賀 千尋 1)
1)
福岡歯科大学 口腔医療センター
2)
福岡歯科大学 総合歯科学講座 総合歯科学分野
3)
福岡歯科大学 診療内科学講座
○Aoki M 1), 0ie T 1), Suga A 1), Nakayama K 1), Yoneda M 2), Kanemitu M 3) , Koga C 1)
1)Oral Medical Center, Fukuoka Dental College
2)
Section of Genral Dentistry, Department of General Dentistry, Fukuoka Dental College
3)
Department of Psychosomatic Medicine, Fukuoka Dental Collage
【目的】外来診療において、舌に痛みを訴えて来院した患者で、口腔内に特に問題を認めない場合、舌痛症
を念頭に置きながら治療を行う場合がしばしばある。当科では全例サクソンテスト、カンジダ菌の培養検査
を行ったうえで口腔清掃指導、唾液腺マッサージ指導を行い治療に当たっている。今回このような症例につ
いて検討を行ったので報告する。
【対象】2013 年 4 月〜 2014 年 3 月までに舌の痛みを主訴に当センターを受診し舌痛症を疑った資料のそろっ
た 84 例を対象とした。
【検討項目】1)年齢、2)性別、3)サクソンテスト、4)カンジダ培養の判定結果、5)治療内容、6)
治療転機について検討した。
【結果】1)70 歳代の女性が多かった。2)M:F = 24:60 3)31 例に乾燥傾向を認めた。4)59 例が
カンジダ陽性であった。5)35 例が口腔衛生、唾液腺マッサージの指導のみ、49 例が指導後に抗真菌薬あ
るいは他の薬剤の投与を行っていた。6)57 例が改善。14 例が中断、13 例が経過観察中であった。
【考察】舌痛を主訴に受診する患者は、諸家の報告のように女性に多かった。サクソンテストで 2g 以下は
36%、またカンジダ陽性群は 71%であり、これらの結果が直接除外診断と結びつくわけではないが、当セ
ンターでの一連の検査・指導は患者の理解を得ながら舌痛症の治療をすすめていくのに有用であると考えら
れた。
- 58 -
舌痛症
12
痛み外来を継続的に受診している患者の VAS の検討
Study of VAS in patients visited continuously outpatient pain
○小倉 京子、和気 裕之、西村 均、小見山 道、齊藤 孝親
日本大学松戸歯学部付属病院 口・顔・頭の痛み外来
○Ogura K , Wake H , Nishimura H , Komiyama O , Saito T
Orofacial and Head Pain Clinic, Nihon University Hospital at Matsudo
Ⅰ目的:VAS(Visual Analog Scale)は臨床で広く用いられており、定期的にまたは継続的に測定する
ことで、変化や治療効果を知ることができ、大変有用である。今回痛み外来を継続的に受診している患者の
VAS を検討したところ、興味ある知見を得たので報告する。Ⅱ対象と方法:対象は 2010 年から 2013 年の
間に当外来の「心療歯科診療」を継続的に受診した 17 例である。方法は初診時と毎回の診察前に実施して
いる質問表から、日常生活の支障度 VAS と口腔顔面領域の自覚症状 VAS、および前回受診時と症状の比
較を行う 5 択の自己評価(かなり良くなった、少し良くなった、変わらない、少し悪くなった、かなり悪く
なった)を分析、考察した。Ⅲ結果と考察:結果①初診時は 82%が中等度からそれ以上の痛みなどの自覚
症状を訴えた。②自己評価の 5 択は、
「変わらない」と答えた者が 53%で一番多く、次に多かったのは「少
し良くなった」で、27%だった。③ VAS と自己評価の関係は「かなり良くなった」は 78%、
「かなり悪くなっ
た」は全てで VAS の増減と一致していた。今回痛み外来を継続して受診した患者の VAS を検討した結果、
著しい改善・悪化の訴えは、患者の症状を把握するのに役立つと考えられた。Ⅳ文献:痛みの評価スケール:
平川奈緒美、Anesthesia 21 Century. - Vol.13 No.2-40、4-10. 2011
- 59 -
臨床統計・その他
13
歯科心身医療外来における自由診療導入に伴う受診患者動
態に関する検討
The behavior of outpatient after introduction of the newly medical
services not covered by health insurance in Psychosomatic Dentistry
Clinic, Tokyo Medical and Dental University
○吉川 達也 1)、渡邉 素子 1)、佐久間 朋美 1)、舌野 知佐 1)、三浦 杏奈 1)、片桐 綾乃 1)、
1)
1)
1)
2)
1)
鈴木 スピカ 、篠原 優貴子 、竹之下 美穂 、佐藤 佑介 、豊福 明
1)
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯科心身医学分野
2)
東 京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野
○Tatsuya YOSHIKAWA 1), Motoko WATANABE 1), Tomomi SAKUMA 1),
Chisa SHITANO 1), Anna MIURA 1), Ayano KATAGIRI 1), Supika SUZUKI 1),
Yukiko SHINOHARA 1), Miho TAKENOSHITA 1), Yusuke SATO 2), Akira TOYOFUKU 1)
1)
Division of Psychosomatic Dentistry, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan
2)
Division of Gerodontology, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan
Ⅰ目的
当外来では平成 24 年 9 月から自由診療を導入した。導入前後の受診患者の動向を調査し臨床的検討を行っ
たので報告する。
Ⅱ対象および方法
平成 23 年 4 月から平成 25 年 3 月までの 3 年間の当科受診患者を対象とし、年齢、性別、当科診断名、受
診患者数、稼働額の推移などについて外来診療録から検討した。
Ⅲ結果と考察
平均年齢は 58.92 才、初診患者の男女比は 276 対 1,196、診断名は舌痛症 779 名、口腔異常感症 394 名、
非定型歯痛 272 名、咬合異常感 117 名、顎関節症 65 名、その他 99 名で、各年度で患者プロフィールに大
きな変化はなかった。3 年間の総のべ患者数は 25,317 名(H23 年 10,051 名、H24 年 7,513 名、H25 年 7,753
名)
、総初診患者数は 1,472 名(H23 年 426 名、H24 年 417 名、H25 年 629 名)、また、稼動額は H23 年
39,750,190 円(保険診療 96.7%、自由診療 3.3%)、H24 年 29,999,010 円(77.4%、22.6%)、H25 年 44,585,149
円(52.2%、47.8%)であった。
導入後の診療単価上昇が寄与し導入前を上回る稼動額となったが、同時に患者満足度も向上した。保険診
療上の制約を鑑みれば、歯科心身症に対する自由診療導入は適正かつ効率的な医療提供に十分有益であると
考えられた。
Ⅳ文献
渡邉 素子他。日歯心身 27(1-2)、37-43、2012
- 60 -
臨床統計・その他
14
口臭患者が持つ不安への対応
Coping with anxiety which patients of oral malodor syndrome bear
○〇樋口 均也 1)、本田 俊一 2)
1)
医療法人慶生会ひぐち歯科クリニック 2)医療法人ほんだ歯科
○Higuchi K 1), Honda S 2)
1)
Medical Corporation Higuchi Dental Clinic 2)Medical Corporation Honda Dental
目的 歯科を受診する患者にはしばしば客観的な口臭が認められ、その多くに歯周病などの病的な原因が観
察される。このような臭気への対策が必要な一方で、口臭に悩む「口臭症」の患者自体を治療対象とする必
要もある。というのも、口臭症患者の多くは口臭の臭気レベルが低くて客観的評価が困難な上、器質的な原
因が見出せない生理的口臭症である場合が多いため、臭気を軽減させる治療法のみでは対応が難しいからで
ある。口腔清掃状態が比較的良好な生理的口臭症の患者では、口臭に対する不安の原因は口臭そのものでは
なく、付随する不快症状や会話相手の反応に関する認知の歪みであるケースが多い 1)、2)。こういった不安は
いわば主観的な口臭と捉えることができる。生理的口臭症に対しては、口臭不安という情動、口腔内感覚の
異常や他人の仕草に対する自動思考、他人と会話する際の回避行動といった問題点への対応が必要となる。
本研究では口臭症に対する認知行動療法的手法の有効性を検討した。
対象および方法 2005 年 10 月より 2014 年 4 月までの期間中、口臭を主訴としてひぐち歯科クリニックに
来院した 428 名のうち、3 回に渡る口臭関連検査を実施した 261 名を調査対象とした。口臭に関する検査と
して、官能検査や簡易ガス測定器による検査、嫌気性菌の生理活性の検査、唾液の生理的検査を実施した。
併せて生活調査票や visual analogue scale for anxiety(VAS-A)の記入をさせた上で、病態説明に次いで
マウスウォッシュなどを用いた臭気対策を指導した。口腔内感覚の異常や他人の仕草への不安に対する認知
の修正や行動療法も併せて実施した。
結果と考察 口臭に関する不安を覚える理由を尋ねてみると、口が乾く、口の中がネバネバするといった口
腔内感覚の異常を訴えたり、鼻をこするといった他人の仕草が気になったりする患者が多くみられた。3 回
の口臭治療により主観的な口臭の強度(VAS-A)が有意に低下した(p<0.051)。また官能検査にて客観的
な口臭の程度も有意に低下した(p<0.01)。生理的口臭を客観的に評価することや治療することは従来、困
難であるとされてきた。我々は生理的口臭症に対してその評価方法を確立し、臭気を軽減させ、口腔生理機
能を整える治療法を実践してきた 3)。その結果、主観的にも客観的にも口臭の改善を認めた。口臭症の治療
に際しては臭気の軽減だけではなく、口臭患者が持つ不安への対応が重要であると考えられた。
文献
1.E li I., Baht R. et al.: The Complaint of Oral Malodor: Possible Psychopathological Aspects.
Psychosom Med 58 : 156-159 , 1996.
2.Hirsch A.R. :You are as you smell: the effect of odor and breath odor on social acceptance. J. Breath
Res 2 : 2008.
3.本田俊一 小西正一:歯科口臭治療のクリニカル・アプローチ 日本歯科新聞社 , 2004 東京
- 61 -
臨床統計・その他
15
適応の無い受診行動やクレームを繰り返す患者への対応
Approaches to the Difficult Patients
○佐久間 朋美1)、2)、竹之下 美穂 1)、吉川 達也 1)、舌野 知佐 1)、渡邉 素子 1)、三浦 杏奈 1)、
篠原 優貴子 1)、豊福 明 1)
1)
東京医科歯科大学医歯学総合研究科歯科心身医学分野
2)
東京医科歯科大学医歯学総合研究科顎顔面外科学分野
○Sakuma T 1),2), Takenoshita M 1), Yosikawa T 1), Shitano C 1), Watanabe M 1),
Miura A 1), Shinohara Y 1), Toyofuku A 1)
1)
Psychosomatic Dentistry Clinic, Dental Hospital, Tokyo Medical and Dental University,Tokyo
Japan
2)
Division of Maxillofacial Surgery, Graduate School, Tokyo Medical and Dental University,Tokyo
Japan
今日、患者・医療者の関係が変遷し、より複雑かつ敏感になっている。医療者が自らの医療行為に専念す
る為に、求められる対応や困難からの回避について、実際の現場で得られたいくつかの知見を交えて報告す
る。
1,抜歯を受ける決意がつかない患者 2,担当医変更を繰りかえす患者 3,口腔内に明らかな器質的が
ないにも関わらず「私は癌に違いない」と執拗に受診をしてくる患者 4,数十年前に受けた顎変形症の手
術により「顔が変形して」毎日が苦痛だと電話で繰り返し訴え、時に脅迫的言動も交える患者。 5,「治療
してくれないから、就職できない」と電話してくる患者 6,医師の対応を曲げて捉え、態度・言葉づかい
一つ一つに苦情を訴え攻撃的に話す患者 7,術後合併症について「説明がなかった」と訴える患者 - 抜歯後、
オトガイ神経麻痺を合併した例 - 症例 1,7:医療者が説明を尽くしていても、その理解度まで確認出来る
ことは少ない。症例 3,5:明らかに適応の無い受診であり、適切な診療科への受診を丁寧に勧める必要が
ある。症例 4:インプラントや顎変形症手術などで「治療のゴール」が患者と医療者とで一致していなかっ
た例に多い。時に精神科的疾患が背後に潜在している可能性を念頭に置く必要もあるだろう。
【参考文献】
滝本禎之、阿部篤子、赤林朗:ケースブック患者相談、医学書院、2010。
- 62 -
臨床統計・その他
16
当センター過去 2 年間における受診患者の臨床的検討
Clinical consideration on patients in our clinic in past 2 years
○石川 結子、大津 光寛、岡田 智雄、石井 隆資、小川 智久、永島 未来、羽村 章
日本歯科大学附属病院心療歯科診療センター
○Ishikawa Y, Otsu M, Okada T, Ishii T, Ogawa T, Nagashima M, Hamura A
Clinical Center of Psychosomatic Dentistry, Nippon Dental University Hospital
【目的】本研究では、今後の歯科心身医学の在り方を考察する為に、当センター過去 2 年間における受診患
者の臨床的検討を行ったので報告する。
【対象および方法】2012 年 4 月 1 日〜 2014 年 3 月 31 日に、日本歯科大学附属病院心療歯科診療センターを
受診した 301 名の、性別、年齢、受診理由、受診経緯、受診時の精神動態について集計を行った。
【結果と考察】301 名中、男性 59 名、女性 242 名、平均年齢は 48.4 歳であった。受診理由は、「精神的関与
が疑われる口腔内症状」が最も多く 212 名、次いで「精神疾患による対応の苦慮」が 68 名、精神疾患を伴
わない歯科治療恐怖症」が 21 名であった。「精神的関与が疑われる口腔内症状」で受診した患者のうち 46
名は、病態説明のみで改善を示した。口腔心身症は不定愁訴を伴うことが多く、主訴と客観的症状が一致し
ないことも多い。したがって、我々歯科医師が器質的疾患の除外診断を確実に行い、病態を丁寧に説明する
ことが重要である。また、受診時の精神動態で多く認められたのは、抑うつ、不安傾向であった。こういっ
た精神動態への理解を深めることで、多くの歯科医師が、他の併発疾患を有する患者と同様に診察すること
が可能になると考える。また、受診経緯は、一般歯科からの病院外紹介受診が約 40%を占めた。対して病
院内紹介は 26.6%で、当センター開設当初(H.10 〜 12 年)の 72%を大きく下回った。
- 63 -
臨床統計・その他
17
歯科医師のうつ病知識に関する調査
The investigation of the dentist’s knowledge about the depression.
○松岡 紘史 1)、森谷 満 2)、坂野 雄二 3)、千葉 逸朗 1)、豊福 明 4)、斎藤 一郎 5)、
6)
安彦 善裕
1)
北海道医療大学歯学部保健衛生学分野
2)
北海道医療大学個体差医療科学センター
3)
北海道医療大学心理科学部
4)
東 京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯科心身医学分野
5)
鶴見大学歯学部病理学講座、ドライマウス研究会
6)
北海道医療大学歯学部臨床口腔病理学分野
○Matsuoka H 1), Moriya M 2), Sakano Y 3), Chiba I 1), Toyofuku A 4), Saito I 5), Abiko Y 6)
1)
Department of Oral Growth & Development, Division of Disease Control & Molecular
Epidemiology, School of Dentistry, Health Sciences University of Hokkaido
2)
Institute of Personalized Medical Science, Health Sciences University of Hokkaido
3)
School of Psychological Science, Health Sciences University of Hokkaido
4)
Division of Psychosomatic Dentistry, Graduate School of Medical and Dental Sciences,
Tokyo Medical and Dental University
5)
Department of Pathology, Tsurumi University School of Dental Medicine, Dry mouth
society in Japan
6)
Division of Oral Medicine and Pathology, School of Dentistry, Health Sciences University
of Hokkaido
目 的
本邦の自殺率は世界的にも高い状態が続いており、国全体での対応が必要となっている。対策の一環とし
て、かかりつけ医師等のうつ病の診断・治療技術を向上させる取組が行われており、歯科医の地域医療を担
う人材としての役割を求められている。しかしながら、歯科医学における教育カリキュラムでは、精神医療
について学ぶ機会は乏しく、効率的にうつ病のスクリーニングを実施するためにもどのような知識が必要で
あるかについて調査を行う必要があると考えられる。
対象および方法
ドライマウス研究会の協力のもと、本調査の目的を説明し同意の得られた歯科医師 208 名に対して調査研
究を行った。調査内容は、PHQ-9 および GAD-7 の各項目について、うつ病の診断に重要で
あるかどうか、0(全く重要でない)~ 4(非常に重要である)の 5 件法で回答を求めるものであった。
結果と考察
PHQ-9 および GAD-7 の各項目への回答を比較した結果、PHQ-9 での得点が高く、うつ病の診断に対して
は、うつ症状の重要性を不安症状よりも高く評定できていることが明らかになった。しかしながら、GAD-7
の各項目についても、やや重要である、非常に重要であると回答する割合が非常に多く、うつ症状と不安症
状の鑑別については正確な知識を得るための何らかの手段が必要であることが示唆された。
- 64 -
臨床統計・その他
18
呼吸法の研究
高齢者の歯科治療を安全に遂行するために
Study of the breathing method for the safety dental treatment of the
elderly
○廣瀬 俊司 1)、2)、建林 学 2)、齊藤 久美 2)、吉川 悟 3)
1)
龍谷大学大学院 文学研究科臨床心理学専攻、
2)
医療法人社団良寿会 廣瀬歯科医院
3)
龍谷大学 文学部
○Hirose S 1),2), Tatebayashi M 2), Saito K 2), Yoshikawa S 3)
1)
Graduate School in Clinical Psychology, Ryukoku University
2)
Medical Corporation Ryojyukai Hirose Dental Clinic
3)
Faculty of Clinical Psychology, Ryukoku University
Ⅰ目的 歯科受診者は、恐怖心や不安感から血管迷走神経反射や過換気発作を誘発したり、重要臓器の予備
能力の低下した高齢者では、循環器系疾患や脳血管障害の誘因となる。日常の歯科治療では、このようなス
トレス状態を回避する方法として、笑気吸入鎮静法や静脈内鎮静法を用いている。しかしながら、薬物を用
いた方法は、効果が安定する反面、副作用の問題も生じる。そこで、副作用のない呼吸法を用いて診療を行
い、呼吸法の効果を明らかにすることを目的とした。
Ⅱ対象および方法 検診と歯石除去の目的で来院した 65 歳以上の患者の中で、文書にて同意の得られた 65
名(男性 27 名、女性 38 名、平均年齢±標準偏差 72.1 ± 7.2 歳 )を対象とした。
研究1:呼吸法実施前後に、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、心拍数(HR)、SPO2、唾液αアミラー
ゼ活性(sAA)を測定した。5分間の安静の前後データを安静条件として、対応のあるt検定を行い差の
確認をした。
研究2:呼吸法実施時のデータと、笑気吸入鎮静法及び静脈内鎮静法を用いた治療時のデータを一元配置分
散分析を行い、比較検討した。
Ⅲ 結果と考察 : SBP の安静条件前後と呼吸法実施前後の変動量の差に有意差を認め(p < .001)、かつ、
HR においても同様に有意差を認めた(p < .05)。
本結果から、呼吸法を実施することで、交感神経の亢進状態から副交感神経の亢進状態に移行したことがわ
かり、呼吸法は高齢者の歯科治療を安全に実施するのに有効であることが示唆された。
- 65 -
臨床統計・その他
19
歯科金属アレルギー患者の心身医学的背景
Evaluation of psychosomatic background in patients with dental metal allergy
○神野 成治 1)、鈴木 スピカ 2)、豊福 明 2)、深山 治久 1)
1)
東 京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 麻酔 • 生体管理学分野
2)
東 京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 歯科心身医学分野
○Jinno S, Suzuki S, Toyohuku A, Fukayama H
1)
Section of Anesthesiology and Clinical Physiology, Graduate School of Medical and
Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan
2)
Divisionf Psychosomatic Dentistry, Graduate School of Medical and Dental Sciences,
Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan
【緒言】
アレルギーと心理、精神との関連についての報告は多い。また、歯科金属アレルギーに関しては、心理的
側面が症状の重症度に関与しているといわれている。本研究は、歯科金属アレルギー患者の心身医学的背景
について、心理・精神的要因およびストレス度に関して調査をした。なお、本研究は、東京医科歯科大学歯
学部倫理委員会の承認を得て行われた。
【対象】
パッチテストを行い、ニッケル、パラジウムなどの金属が陽性を示した金属アレルギー患者 9 名を対象と
した。また、いずれの金属にも陰性の患者 10 名を対照とした。
【研究方法】
自記式調査用紙を用い、心理傾向を modified CMI(Cornell Medical Index)である TMI(Toho Medical
Index)で、ストレス度をストレス調査表(日本大学医学部心療内科版)を使用して、解析した。
【結果】
金属アレルギー群は、対照群と比較して TMI 値(自律神経失調症状および神経症症状)が高く、タイプ
では自律神経失調型が多かった。ストレスのタイプとしては初期ストレスの自覚症状は、両群間に有意差は
なかったが、慢性ストレスの自覚症状は、金属アレルギー群で多い傾向が示された。
【結語】
歯科金属アレルギー患者の心理的背景としては、自律神経失調症傾向が強く、慢性ストレスの状況下にい
ることが推察され、ストレスへの適応がうまく出来ない傾向が示唆された。
- 66 -
臨床統計・その他
20
2013 年度当科初診患者の臨床統計的検討
高齢者の歯科治療を安全に遂行するために
Clinico-stastical study on out patients in Psychosomatic Dentistry
Clinic in 2013
○篠原 優貴子、鈴木 スピカ、三浦 杏奈、渡邊 素子、舌野 知佐、佐久間 朋美、
吉川 達也、竹之下 美穂、豊福 明
東京医科歯科大学大学院 歯科心身医学分野
○Shinohara Y, Suzuki S, Miura A, Watanabe M, Shitano C, Sakuma T, Yoshikawa T,
Takenoshita M, Toyofuku A
Division of Psychosomatic Dentistry, Graduate School, Tokyo Medical and Dental
University,Tokyo, Japan
緒言:昨今の歯科心身症患者の動向を臨床統計的に調査し、今後の診療の参考とすることを目的とした。
対象:2013 年度に当科を初診受診された 628 名(男性:124 名、女性:504 名)。
方法:年齢、性別、病脳期間、精神科既往の有無、発症契機、頭痛の有無、病名、処方、転帰の項目で診療
録を元に調査した。
結果:年齢平均は全体:58.4 ± 1.14 歳、男:53.6 ± 2.86 歳、女:59.5 ± 1.21 歳、性別は 80.3% が女性であっ
た。病悩期間平均は 50.87 ± 7.64(月)であった。精神科既往は 204 名(32.5%)で見られた。発症契機は
不明 271 名(42.8%)、歯科治療 194 名(30.6%)、ストレス 50 名(7.9%)であった。
頭痛は全体の 42.0% に認められた。病名は舌痛症 331 名(44.5%)、口腔異常感症 160 名(21.5%)、非定型歯
痛 103 名
(13.8%)
が続いた。治療では 61.1% で薬物療法が行われており、アミトリプチリンが 139 名(21.9%)、
アリピプラゾールが 91 名(14.3%)に処方されていた。当科での治療対象とならず、精神科紹介となった患
者は 65 名(10.3%)見られた。
結語:本症では、明確な精神疾患が見られることは少なく約 9 割で歯科での対応が求められていると考えら
れた。一方、頭痛の既往が全体の 42.0% に認められ、本症と脳の脆弱性との関連も検討の余地があると考え
られた。
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ポスター発表
ポスター発表
01
甘麦大棗湯が有効であった口腔異常感症の一症例
Kampo Therapy of Kambakutaisoto for Oral dysesthesia case
○小澤 夏生1)、2)、藤田 康平2)、佐藤 英和2)、角田 和之2)、加藤 伸2)角田 博之2)、
2)
2)
中川 種昭 永井 哲夫
1)
小澤歯科醫院
2)
慶應義塾大学医学部歯科 • 口腔外科学教室
○Natsuo Ozawa 1),2), Kohei Fujita 2), Hidekazu Sato 2), Shin Kato2)
Kazuyuki Tsunoda 2), Hiroyuki Tsunoda 2), Taneaki Nakagawa 2), Tetsuo Nagai 2)
1)
Ozawa Dental Clinic
2)
Department of Dentistry and OralSurgery,Schoolof Medicine Keio University
【緒言】上顎右側第二大臼歯および顎関節周囲の違和感の訴えに対し、「悲しくて涙が出ることがよくある。」
という症状をもとに、甘麦大棗湯を処方したところ有効であったので報告する。
【症例】62 歳 女性 主婦。149.2cm 49.8kg 152/83mmHg 83/min。主訴は右側顎関節周囲の違和感と咬合
時痛。1 ヶ月前より右側顎関節に違和感があり、最近一週間、右の頬までその症状が広がり来院。初診、開
口障害を訴えたが、三横指開口可能。クリック音、自発痛は無く、咬合痛を認めた。加えて上顎右側第二大
臼歯周辺の違和感も訴えていた。既往歴は、突発性難聴(4 年前)。全身症状は、睡眠障害、多夢、両肩が重い、
悲しくて涙が出る、目眩、頭痛などがあった。漢方所見は脈候;沈、緊。舌候:薄白苔。腹候:腹力弱であった。
【経過】X 年 2 月 28 日(初診)西洋医学的には顎関節周囲の違和感を中心とした口腔異常感症、東洋医学的
には陰虚鬱証ととらえ甘麦大棗湯 9.0g/day を処方。顎関節の違和感 VAS100。3 月 19 日違和感の低下、気
分が良い。3 月 30 日全体的に調子が良い。頭痛が無くなった。VAS19。4 月 23 日心身ともに安定。5 月よ
り廃薬。
【考察】甘麦大棗湯は『金匱要略』からの出典であり「婦人蔵躁、喜悲傷欲哭、象如神霊所作、数欠伸、甘
麦大棗湯主之」とある。大塚敬節はその著書『金匱要略講話』の中で、「蔵躁はヒステリーだと考えればい
いと思います。」と述べている。甘草、小麦、大棗からなる単純な処方であるがその方意は深長である。
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ポスター発表
02
直立動態と心身症状
人の立つしくみに内在する病因の発見と臨床応用
Analysis of psychosomatic symptoms from gravitational physiology
○臼井 五郎
顎口腔臨床センター
○Usui G
Stomatognathic Clinical Center
ヒトは重力場(生理重力線)を絶対基準として揺れながらバランスし(動的平衡)生存している。その際、
傾いた頭を鉛直に戻せなければヒトは立ち続けることは出来ない。頭から吊るされ体に繋がっている下顎骨
の位置(顎位)が身体の正中方向に揺れると頭が起き、体が起きる。つまり下顎骨はヒト種が地球上で存続
するために欠かせない役目を果している。
既存の歯科医学は局部医学として、ヒト全体における顎口腔系の重要な役割を理解していなかった。演者
は「咬合起源の心身症状の仕組み」を理解すべく臨床研究を重ねてきたが、それらの理解に欠かせないのが
「ヒトの直立機構・直立動態の演繹解析と実践検証」であった。
「上部頭蓋(上顎歯)と下顎骨(下顎歯)」の各人で異なる個別の動き(スウィング現象)を把握すること
で、各人の直立バランスを阻害しない(改善する)咬合修正が可能となった(スウィング医療)。
その結果、各種身体症状の軽減消失のみならず、「うつ、パニック障害」等、精神症状の軽減消失も確認
されている。加えて、直立スウィングにおける咬合干渉(スウィング干渉)が歯牙・歯周組織破壊の主原因
であることも判明した。
今回は時間の都合上、スウィング現象・スウィング医療の概略を紹介する。
参考書籍:直立動態と心身症状~人の立つしくみに内在する病因の発見と臨床応用~
産学社エンタプライズ出版社
学術団体:動的平衡・顎口腔医学研究会
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ポスター発表
03
自律訓練法で効果を奏した口腔内異常感の1例
One case of a feeling of intraoral abnormality that autogenic training
played an effect
○河野 晴奈、篠崎 貴弘、原 和彦、見崎 徹、小池 一喜
日本大学歯学部口腔診断学講座
○Kono H, Shinozaki T, Hara K, Misaki T, Koike K
Nihon University of Oral diagnostics Sciences lecture
心理社会的要因の関与が強いと考えられる口腔領域の疾患の中で口腔内異常感症は治療が困難である場合
が多い。今回、我々は自律訓練法によって症状が緩和した口腔内異常感の一例を経験したので報告する。
症例:52 歳 女性
主訴:左の奥がぶよぶよする。
現病歴:X − 2 年 3 月に某大学歯科病院にて右側上下智歯を同時に抜歯。その 2 ヶ月後もざらざらした感じ
がある状態が続いた。さらに左側咽頭部の違和感・狭窄感が出現したため耳鼻咽喉科に受診、異常なしと言
われた。X-1 年、同歯科病院を受診した際、口腔内の異常感に関して相談したが、取り合ってもらえなかっ
ため不満が残った。再度耳鼻科に受診し漢方薬を投与された。症状の改善は見受けられなかった。X 年 2 月
に同部がぶよぶよした感じになった。このためかかりつけの歯科医院より当院紹介受診となった
心理テスト:CMI 健康調査票では領域Ⅰ、POMS、SDS では総合的に軽度の躁うつ状態が認められる。ま
た TEG Ⅱは自我のエネルギーが低いが、AC のみ高い傾向が認められた。
経過:以上から、心理的要因による口腔内異常感の可能性が高いと判断し、自律訓練法を指導した。指導中
は症状が軽減する傾向にあった。3 週間後に経過を聞くが著明な変化は見られなかった。
考察:自律訓練法を施行することによって心理的負担による過緊張が軽減され違和感も軽減したものと考え
られる。短期間での効果はおおむね良好だが、経過観察していく必要性を感じた。
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ポスター発表
04
口腔心身症の 2 症例
Two cases of oral psychosomatic disorder
○鬼ヶ原 史彦 1)、井上 留里子 2)、楠川 仁悟 1)、高向 和宜 3)
1)
久留米大学歯科口腔医療センター
2)
井上秀歯科医院
3)
たかむきメンタルクリニック
○Onigahara T 1), Inoue R 2),Kusukawa J 1),Takamuki K 3)
1)
Dental and Oral Medical Center, Kurume University School of Medicine
2)
Inoue Hide Dental clinic
3)
Takamuki Mental Clinic
【諸言】口腔心身症には舌痛症、味覚異常、口腔異常感症、口臭症、非定型歯痛などが含まれ、その発症
や経過には心理的、環境的要因が密接に関与している。しかし、外科的治療が主体となる歯科診療において
は、現症のみを聴取し器質的異常のない所見から口腔心身症と診断してしまうことがある。今回当科を受診
となり、口腔心身症との診断にて精神科面談となった症例を報告する。【症例 1】51 歳女性、近医歯科や口
腔外科にて歯痛の訴えにて抜歯、再掻爬等の処置後も慢性疼痛が持続、舌痛を訴えるも器質的異常所見ない
ため当科受診。口腔心身症との診断にて精神科紹介。生活史の再聴取を行った。元来真面目で几帳面な性格。
ルーズな年下の夫との離婚歴がある。現在単身生活で、将来の生活に対する不安感や心理的に依存する人が
いないことによる不安感が明らかになった。
【症例 2】38 歳女性、X-5 年より近医歯科、口腔外科にて顎関節症との診断下に通院加療を受けるが右耳
介周囲の疼痛や慢性頭痛の症状が持続し、当科を受診。口腔心身症との診断にて精神科紹介。生活史の再聴
取を行った。かかりつけ眼科主治医に対する不信感があり、緑内障の進行による失明への強い不安が明らか
になった。【結語】症例の生活史、病歴、治療歴を報告することにより、歯科医として口腔心身症診断・面
接に臨む上での重要性について言及する。
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ポスター発表
05
ある種の咬合干渉が咬合違和感の原因と考えられる症例
咬合紙によらない咬合診査に関する考察
A case report of occlusal unfit feeling caused by certain bite
interferences
Consideration about bite examination without occlusal registration paper
○吉田 和生
動的平衡・顎口腔医学研究会
○Yoshida K
Japanese Society of Gravitational Physiology
Ⅰ目的:咬合違和感を訴える患者に対して、咬合診査において患者の訴えを裏付ける異常が見当たらない
場合、一般開業医では不定愁訴として取り扱うことが多いと思われる。専門医療機関では、口腔内固有感覚
の認知障害が疑われることから薬物療法が行われ、思考や記憶などに関する高次脳機能の異常に対して認知
行動療法が施されるようである。
そもそも咬合紙の印記を読み取るという咬合診査に限界があるのではないだろうか。直立動態における下
顎のふるまいを考えると、限界運動時の接触以外にも歯牙接触は起きていると考えるのが自然である。ただ
し、この歯牙接触は患者にも術者にも誘導出来るものではないため、従来の咬合紙による診査では検出でき
ない。患者固有の下顎振動経路においてのみ発見されるものである。
今回は、この方法によって検出されたある種の咬合干渉(スウィング干渉)の解消によって症状の消失に
至った症例について報告する。
Ⅱ対象および方法:症例の報告による。
Ⅲ結果と考察:顎位診断により患者固有のスウィング軌道を推測することで、咬合紙を使うこと無くス
ウィング干渉を検出し、その干渉部位をリシェイピング(咬合形態再付与)することで、咬合違和感は
解消され、知覚過敏、首・肩のこり等不快症状も解消した。プライマリーケアで適切に処置することで、
phantom bite syndrome への難症例化を回避出来る症例もあると考えられる。
Ⅳ文献:
1)臼井五郎:図説 直立動態と心身症状
2)日本歯科心身医学会編:歯科心身医学 3)藍稔:顎機能異常と咬合 - 74 -
ポスター発表
06
非定型的経過をたどった三叉神経痛の 1 例
A case of trigeminal neuralgia with atypical symptom
○近藤 美弥子、岡田 和隆、松下 貴惠、中澤 誠多朗、山崎 裕
北海道大学大学院歯学研究科高齢者歯科学教室
○Miyako Kondoh, Kazutaka Okada, Takae Matsushita, Seitaro Nakazawa,
Yutaka Yamazaki
Gerodontology, Graduate School of Dental Medicine, Hokkaido University
【緒言】三叉神経痛は神経支配領域に一致して発作性の電撃痛が発生し、トリガーゾーンが存在する疾患
であるが、発症初期にはこのような典型的な症状を呈さない場合がある。今回、受診当初のヒリヒリした舌
痛に対し、パロキセチンとロフラゼプ酸エチルの併用で、一旦は著効を呈した後に三叉神経痛様の激痛に変
わり、カルバマゼピンが奏効した症例を経験したので報告する。
【症例】73 歳女性、1 月前から右舌縁のヒリヒリした痛みを自覚した。痛みは硬固物の摂食時に増大する
ため左側で食べるようにしていた。その後、会話時にも同部が痛くなり話しづらくなってきたため、近医の
耳鼻科からの紹介で当科受診した。受診時、右舌の圧痛や知覚、運動障害、その他の口内にも異常所見は認
めなかった。この頃、家族の件でかなりのストレスがあったことや、当科受診日には痛みが軽快することか
ら心因性の関与を疑い、パロキセチンとロフラゼプ酸エチルの投与を開始した。服用 3 日目から効果を自覚、
2 週後の VAS は 79 から 12 と減少し、その後も継続投与し 5 か月後に舌痛はほぼ消退した。しかし、その後、
すぐに舌運動時に同部の発作性の電撃痛が出現し、触診でも痛みが誘発されるようになった。脳外科的に
異常がないことを確認後、プレガバリンの投与を開始したが効果なく、カルバマゼピンに変更した。200mg
で明らかな効果を自覚、桂枝加朮附湯を併用し、300mg で痛みは消失した。現在、減量中である。
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ポスター発表
07
治療が困難であった舌痛症の 1 例
A case of Glossodynia with difficult to treat
○古賀 千尋 1)、2)、青木 将虎 1)、2)、大家 知子 1)、菅 亜里沙 1)、中山 敬介 1)、2)、
米田 雅裕 3)、金光 芳郎 4)、中村 芳明 5)、池邉 哲郎 2)、高向 和宜 6)
1)
福岡歯科大学口腔医療センター
2)
福岡歯科大学口腔・顎顔面外科学講座
3)
福岡歯科大学総合歯科学講座
4)
福岡歯科大学心療内科学講座
5)
日田済生会病院歯科口腔外科
6)
たかむきメンタルクリニック
○Chihiro Koga 1),2), Masatota Aoki 1),2), Tomoko Oie 1), Arisa Suga 1),
Keisuke Nakayama 1), 2),Masahiro Yoneda 3), Yoshirou Kanemitsu 4),
Yoshiaki Nakamura 5),Tetsurou Ikebe 2), Kazuyoshi Takamuki 6)
1)
Center for Oral Diseases, Fukuoka Dental Collage
2)
Department of Oral & Maxillofacial Surgery, Fukuoka Dental College
3)
Department of General Dentistry, Fukuoka Dental College
4)
Department of Psychosomatic Medicine, Fukuoka Dental Collage
5)
Dental and Oral surgery, Hita Saiseikai Hospital
6)
Takamuki Mental Clinic
緒言:舌痛症とは、舌に器質的な変化が認められないにもかかわらず、慢性的な痛みが生じる疾患であ
り、ストレスなどの心理的背景が原因である場合が多い。今回、ストレスの背景が明らかであるにもかかわ
らず治療が困難であった舌痛症を経験したので報告する。症例:70 歳代女性。主訴:舌のヒリヒリした痛み。
現病歴:約 3-4 年前より口腔乾燥感および舌の痛みを感じ、歯科にてステロイド軟膏を処方されたが改善し
ないため当科を受診した。既往歴:約 4 年前に夫と死別したあとうつ病の診断にて抗うつ薬を内服。現症:
舌には白苔が多く、舌尖部には発赤を認め舌乳頭の萎縮を認めた。カンジダ培養検査にて陽性。サクソンテ
ストは 3.7g で口腔乾燥は著明ではなかった。経過:カンジダ検査により抗真菌薬を処方した。症状は一旦
軽快したが、しばらくすると再び舌の痛みを訴え、波はあるものの痛みがなくなることはなかった。その後
日常生活のストレスについて二人の息子が定職に就かず将来に不安を感じていることを語るようになった。
われわれは初期治療として口腔乾燥やカンジダ症の治療を行いながら心理的なアプローチを行うことが多い
が、この症例のように容易に解決しない不安が続く場合、舌痛も消失することは難しいと思われる。歯科医
療の場合、症状が軽快しないと患者も治療者も行き詰まることが多い。この症例を通じてこのように症状が
変わらない患者に対する対応を考察する予定である。
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ポスター発表
08
顎関節症を併発している咬合異常感の治療
The treatment of the phantom bite syndrome with temporomandibular disorder
○高岡 美智子
東京医科歯科大学歯学部附属病院顎関節治療部
○Takaoka M
Temporomandibular Joint Clinic, Tokyo Medical and Dental University Hospital Faculty of Dentistry
【目的】歯科治療後に顎関節症、噛み合わせの異常感や身体症状を訴える患者への対応は困難と考えられ、
歯科治療も進まない事が多い。今回 9 年前の歯科治療後から開口できない、義歯装着時吐き気と呼吸困難、
眉間が左へずれ顔面が変形、顎も体も左へねじれるなどの訴えで来院された患者に認知行動療法と身体感覚
緩和トレーニングなどを行う事により、異常感は改善し、その後歯科治療も終了した。症例を提示し歯科治
療の可能性を考えていきたい。【対象と方法】患者 : 女性、50 歳代、主婦。TCH 是正トレーニング、開口ト
レーニング、身体緩和トレーニングなどの認知行動療法を行った。身体感覚トレーニングは、演者が外来で
用いている身体感覚に焦点を当てていくトレーニングである。
【結果と考察】12 回で身体症状を含めた異常
感は改善したため歯科治療を開始し 13-20 回で終了した。現在は半年から 1 年に一度受診されるが通常の生
活と歯科治療を行っている。心理教育による思い込みの改善と身体感覚を扱う事で自己コントロールができ
るようになり、異常感が出てもあわてないで現実対応ができるようになったと考える。このように身体感覚
を適切に扱っていくことで、進みにくかった歯科治療の可能性を示唆していると考える。
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ポスター発表
09
認知行動療法による口臭症の治療
The treatment of the oral dysodia using cognitive behavior therapy
○高岡 美智子
東京医科歯科大学歯学部附属病院顎関節治療部
○Takaoka M
Temporomandibular Joint Clinic, Tokyo Medical and Dental University Hospital Faculty of Dentistry
【目的】口臭症のため電車やエレベータに乗れない、人とのコミュニケーションができない、また、頻繁
な手洗いなどの強迫行為など日常生活に支障をきたしていた患者に対し認知行動療法を行い症状や日常生活
が改善した症例を提示し、歯科外来での認知行動療法による治療の可能性を考えていきたい。【対象と方法】
患者 : 女性、40 歳代、会社勤務、姑・夫・長男・次男と同居。方法 : セルフモニタリング、エクスクスポー
ジャー、認知再構成などの認知行動療法を行った。【結果と考察】6 か月間 11 回で不安 100 → 40 へ自信の
なさ 100 → 30 へと減少し、口臭測定器の結果が良くても器械が壊れているのではないかと考えてしまい、
自分が臭うという思いは全く解消されなかったのが、器械の数値を信じられるようになった。また、電車に
乗れないため自転車で通勤していたが、電車通勤ができるようになり、人の間の席に座れるようになった。
このように日常生活が改善された。認知行動療法を行うことで、不安を無くすのではなく、不安を不安とし
て受け止めていくことへの理解がなされ、それにより口臭への恐怖をコントロールできるようになったと考
えられる。さらに回避していた自分自身や現実と直面できたと考える。認知行動療法を適切に用いることで
治療が困難と考えられがちな口臭症であるが、外来での対応の可能性を示唆していると考える。
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ポスター発表
10
歯科矯正治療を切望した思春期の精神疾患患者の 2 症例
Two adolescent patients with mental disorder eagerly requested for orthodontic
treatment
○舌野 知佐 1)、2)、竹之下 美穂 1)、鈴木 スピカ 1)、三浦 杏奈 1)、篠原 優貴子 1)、
渡邉 素子 1)、佐久間 朋美 1)、吉川 達也 1)、豊福 明 1)
1)
東 京医科歯科大学大学院 歯科心身医学分野
2)
東 京医科歯科大学大学院 咬合機能矯正学分野
○Shitano C 1),2), Takenoshita M 1), Suzuki S 1), Miura A 1), Shinohara Y 1),
Watanabe M 1), Sakuma T 1), Yoshikawa T 1), Toyofuku A 1)
1)
Division of Psychosomatic Dentistry, Graduate School, Tokyo Medical and Dental
University, Tokyo, Japan
2)
Orthodontic Science, Department of Orofacial Development and Function, Division of Oral
Health Science, Graduate School, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan
症例1:15 歳、女性。高校 1 年生。主訴:受け口。歯並びが気になる。現病歴:小学生高学年頃より受け
口が気になっており、人にも指摘された。X-2 年 5 月頃から抑うつ気分、不安、身体愁訴が出現し、不登校
になり、X-2 年 7 月「うつ病」の診断で某大学病院精神科にて入院治療を行い、現在投薬治療にて安定して
いる。当院矯正科より紹介され当科初診。Angle Class Ⅲ、叢生成長期症例。現在は、精神疾患の治療経過
をみながら TBI を続け、矯正治療の適否を検討している。
症例 2:14 歳、男性、中学 3 年生。主訴:口元の突出感。顔貌全体が嫌。現病歴:小学 6 年生の時からい
じめにあい、体調不良となりその後不登校、中学 2 年生で転校するも 9 月に「心的外傷後ストレス障害」に
て某都立病院精神科入院。その後、精神科受診は本人が拒否し、現在母親のみ通院中。外出時は必ずマスク、
帽子を着用している。当院矯正科より紹介され当科初診。前歯部空隙を伴う Angle Class Ⅲ subdivision 上
下顎前突症例であり、矯正治療を執拗に求めるが、患者と十分な意思疎通が図れず醜形恐怖が強く疑われた
ため今回は矯正治療に着手しないこととした。
これらの様に思春期で矯正治療を性急に希望する患者の中には、歯科心身症というよりは重篤な精神疾患
が基盤に潜在する場合が散見される。一般歯科矯正学的には治療の対象でも精神疾患の重症度や経過も考慮
して、矯正治療の適否および治療の開始時期を慎重に検討していく必要があると考える。
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ポスター発表
11
「いわゆる舌痛症」の咬合治療(2症例)と診査法
Glossodynia: It's diagnosis and two case studies of occlusal adjustment
○峰村 久憲
動的平衡・顎口腔医学研究会
○Minemura H
Japanese Society of Gravitational Physiology
Ⅰ目的:
「いわゆる舌痛症」の咬合治療とその診査法について報告する。
Ⅱ対象および方法:演者は、10 年ほど前から「いわゆる舌痛症」と思われる舌がピリピリ・ヒリヒリする
症状を訴える 10 人を超える患者を、臼井が提唱する動的平衡咬合医療に基づいて治療して良好な結果を得
ている。昨年来院した舌の痛みを訴える 2 名の患者の症例を報告して、診査法と鑑別診断と治療にあたって
の考え方を述べたい。
Ⅲ結果と考察:1 名は、歯を抜歯した後に反対側の舌縁にヒリヒリする舌の痛みが発症して、義歯装着によっ
て症状が治まった。もう 1 名は、濃い味(甘くても辛くても、どんな味でも)の食品で舌が痛くなるという
訴えであった。義歯の再製と DS 装置によるスプリント治療を行い、残存歯と義歯のスウィング調整(SW-RS)
を行って症状が治まった。
舌の触診によって“歯科的に治る舌の痛み”を鑑別診断する。方法は、舌を触診し、痛い部位とその他の
部位の硬さを比較する。痛い側はわずかに張ったように硬い。首と肩の触診も併用する。肩こりが取れると
舌の痛みも治まる。姿勢の写真と重心計測器(フットビュー)も診査に有効である。重心が両足の真ん中に
乗ることが望ましい。そのようなことから“歯科的に治る舌の痛み”の原因は、咬合不良による頭位不良に
よって引き起こされた重心偏位が舌筋の過緊張(舌こり)を引き起こし、粘膜に知覚過敏のようなことが起
きたものと推察される。
Ⅳ参考書籍:直立動態と心身症状~人の立つしくみに内在する病因の発見と臨床応用~
産学社エンタプライズ出版社
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ポスター発表
12
舌痛症を伴ったシェーグレン症候群患者の一治療経験例
A case report of glossodynia associated with Sjögren's syndrome
○吉田 光希 1)、2)、宇津宮 雅史 1)、2)、原田 文也 1)、中條 貴俊 1)、高井 理衣 1)、
佐藤 惇 1)、2)、松岡 紘史 3)、4)、西村 学子 1)、千葉 逸朗 3) 、安彦 善裕 1)、2)
1)
北海道医療大学歯学部 生体機能・病態学系臨床口腔病理学分野
2)
北海道医療大学病院 口腔内科相談外来
3)
北海道医療大学歯学部 口腔構造・機能発育学系保健衛生学分野
4)
北海道医療大学病院 医療心理室
○Yoshida K 1),2), Utsunomiya M 1),2), Harada F 1), Chujo T 1), Takai R 1), Sato J 1),2),
Matsuoka H 3),4), Nishimura M 1), Chiba I 3), Abiko Y 1),2)
1)
Division of Oral Medicine and Pathology, School of Dentistry, Health Sciences University
of Hokkaido
2)
Oral Medicine Consultation Clinic, Health Sciences University of Hokkaido Hospital
3)
Division of Disease Control & Molecular Epidemiology, Department of Oral Growth &
Development, School of Dentistry, Health Sciences University of Hokkaido
4)
Division of Medical Psychology, Health Sciences University of Hokkaido Hospital
緒言
シェーグレン症候群は、口腔と眼の乾燥を主症状とする疾患であるが、うつ病や不安障害を高頻度に伴う
ことから、心身医学的アプローチの必要な事が多い。今回われわれは、舌痛症を伴ったシェーグレン症候群
の一例を経験し、治療により症状の緩解を認めたので報告する。
症例
患者は 66 歳女性で「舌がピリピリ痛い」を主訴に X 年 10 月本大学病院口腔内科相談外来を受診した。
現病歴は、10 年前より口腔乾燥を自覚し、2 年前から X 年 5 月まで補綴治療を受けた後から症状が出現した。
既往歴は、睡眠障害でトリアゾラム、喘息でテオフィリン及びブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和
物吸入剤を服用している。
安静時唾液、刺激時唾液ともに基準値を下回った為、血液検査及び口唇生検を行った結果、シェーグレン
症候群との診断に至った。問診の結果、患者は自責感が強く、比較的強い不安傾向にあった。
治療経過
喘息があった為、内科と対診のうえセビメリン塩酸塩を低用量から処方し、シェーグレン症候群の症状の
緩和を試み、同時に舌痛の緩和に抗不安薬単剤投与で経過観察を行った。舌痛の症状が緩解しない為、X+1
年 2 月よりミルナシプランとオキサゾラムの併用療法を開始した。その結果、X+1 年 5 月に舌痛はほとんど
気にならない程度に緩解した。喘息発作もほとんどみられなくなった為 , セビメリン塩酸塩を継続処方した
ところ、口腔乾燥の症状も緩解傾向がみられた。
- 81 -
ポスター発表
13
歯科医師が、精神科医との連携を考える時機について
○宮地 英雄 1)、3)、和気 裕之 1)、島田 淳 1)、2)、澁谷 智明 1)2)、三村 将文 1)、宗像 源博 2)、
丸尾 勝一郎 2)、片岡 加奈子 2)、満田 茂樹 2)、宮岡 等 3)、玉置 勝司 1)、2)
1)
神奈川歯科大学附属病院特殊義歯・咬合リエゾン診療科
2)
神奈川歯科大学顎咬合機能回復補綴医学講座
3)
北里大学医学部精神科学
抄録:身体科医療の現場において、精神症状に関連、あるいは影響している身体症状を呈している症例や、
身体疾患に精神疾患が合併している症例がしばしばみられる。これらのケースでは、身体症状のみに対応し
ていては、症状が改善しないどころか、悪化する、あるいは悪化するように見えてしまうものが多い。この
ようなケースの対応としては、①身体科医が精神症状を早く見極めて、精神科医と連携をとる、②精神科医
が身体科医に啓発したり、身体科医の連携依頼をできるだけ速やかに受け対応する、という点が重要である
と考える。
神奈川歯科大学の特殊義歯・咬合リエゾン診療科では、精神科医が介入し、歯科医と精神科医のリエゾン
診療を行っている。歯科医療の現場においても、精神症状・精神疾患が関連しているケースがみられるが、
当外来では、学内の他歯科診療科、他の歯科大学、そして地域の歯科開業医から、精神科リエゾンの診療依
頼があり、連携診療を行っている。そのようなケースでの歯科医師の対応、患者の反応などはさまざまであ
り、その後の歯科、精神科双方の治療経過への影響も大きい。例えば、歯科医師が、患者の訴える症状と所
見の解離に気づかずに、あるいは重要視せずに治療を進めてしまい、症状が改善せずに経過したのちに、診
療の依頼がある、あるいは、患者が、症状が改善しないことで、自らセカンドオピニオンを受けて精神科リ
エゾンの存在を知り、受診する、などの例がある。今回、上記の①について一考を進めるため、歯科医師が、
精神科医との連携を考える時機について、精神科医の立場での現状を調査し、いくつかのケースについて報
告する。
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PIPC セミナー
Psychiatry in Primary Care
日 時:平成 26 年 7 月 27 日 15:30 ~ 18:30
会 場:神奈川歯科大学附属横浜クリニック
第 29 回日本歯科心身医学会総会
開催地:神奈川歯科大学附属横浜クリニック
◆ファシリテーター
井出 広幸 先生(信愛クリニック)
宮崎 仁 先生(宮崎医院)
木村 勝智 先生(みよし市民病院・第二内科部長・健診科部長)
◆スーパーバイザー
金光芳郎(福岡歯科大学心療内科 教授)
高向 和宜(久留米大学 歯科口腔医療センター非常勤講師)
◆セミナーの内容
PIPC(Psychiatry In Primary Care)は、米国内科学会(ACP)
における教育セッションのために創始されたもので、内科医な
どの精神科を専門としない医師が自らの専門領域において適切
な精神科的対応ができるようになるための知識やスキルを提供
する学習プログラムです。
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協賛企業一覧(50 音順)
Ivoclar Vivadent 株式会社
京セラメディカル株式会社
株式会社ジーシー
株式会社シエン社
株式会社松風
ストローマン・ジャパン株式会社
田辺三菱製薬株式会社
株式会社トクヤマデンタル
ノーベル・バイオケア・ジャパン株式会社
白水貿易株式会社
Meiji Seika ファルマ株式会社
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©Nobel Biocare Japan, K.K. All rights reserved. ノーベルバイオケア、ノーベルバイオケアのロゴ、およびその他のすべての商標は、
別途記載されていない限り、また文脈から明白である場合を除き、ノーベルバイオケアの商標です。iPad は Apple Inc. の商標です。
製品の種類や在庫の有無については、ノーベルバイオケアまでお問い合わせください。
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診療用途に合わせた 2タイプ
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便利な LED ライト照明(オプション)
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イズ…[ 天地 132mm× 左右発182mm]
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大 阪本 社: 大 阪 府吹 田市垂 水町3 - 33 -18 〒56 4 - 8 650 TEL 0 6 - 6 38 0 -2525 東 京本 社: 東 京 都台東区 上 野 2-11-15 〒110 - 8513 TEL 03 - 38 3 4 - 6161
製 造 販 売・製 造
本 社 工場: 京 都府 京 都 市伏 見区 東 浜南町6 8 0 〒612- 85 33 TEL 075 - 611-2141 久御山工場: 京 都府 久世 郡久御山町 市田 新 珠 城19 0 〒613 - 0 022 TEL 0774 - 4 3 -759 4
販売名: ポータキューブ 標準価格: タイプT 600,000円~、タイプH 400,000円~(消費税別途) 2013年4月21日現在 一般的名称: 可搬式歯科用ユニット 機器の分類: 管理医療機器(クラスⅡ) 特定保守管理医療機器 医療機器認証番号: 224ACBZX00043000
Morita Global Site: www.morita.com
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第
回
The 29th Annual Meeting Japanese Society of Psychosomatic Dentistry
第
回 日本歯科心身医学会総会・学術大会
29
メインテーマ:
会 期:2014
年 7 月 26日
(土)
・27日
(日)
会 場:神奈川歯科大学横浜クリニック
大 会 長:玉置 勝司
神奈川歯科大学大学院歯学研究科
顎咬合機能回復補綴医学講座 教授
実行委員長:宗像 源博
神奈川歯科大学附属病院
口腔インプラントセンター センター長
日本歯科心身医学会