糖尿病と上手につきあうために —糖尿病を正しく知る— Section 1 糖尿病とは? 監修:東京女子医科大学 糖尿病センター センター長 内潟 安子 INS-Z098(R0) 2012.12 Index ● ポイント ● 体内での糖代謝のしくみ ● 糖尿病とは? ● 日本における糖尿病の状況(1) ● 日本における糖尿病の状況(2) ● 日系人、日本人、米国白人の糖尿病有病率 ● 糖尿病の病型分類 ● 1型糖尿病と2型糖尿病の特徴 ● 遺伝因子と環境因子のかかわり(2型糖尿病) ● 糖尿病が起こるメカニズム(1) ● 糖尿病が起こるメカニズム(2) ● 糖尿病の主な合併症 ● 糖尿病の症状(1) ● 糖尿病の症状(2) . Lilly Diabetes 2 ポイント ● 糖尿病とは、ブドウ糖が血液の中に 増えすぎてしまう病気です。 インスリンが十分に作用しないために起こります。 ● 糖尿病の患者さんは増え続けています。 国内の糖尿病患者さんは約890万人※ ‘予備軍’を含めると約2,210万人※ 糖尿病は4つの病型に分けられます。 1型糖尿病、2型糖尿病、その他の特定の 機序・疾患による糖尿病、妊娠糖尿病。 ※厚生労働省/2007年国民健康栄養調査より 1-1-1 . Lilly Diabetes 3 ポイント ●2型糖尿病は代表的な生活習慣病です。 発症には遺伝要因と環境要因が関連し、 予防と治療には生活習慣の改善が重要です。 ●もっとも怖いのは合併症が起こることです。 放っておけば、網膜症、腎症、神経障害、 大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞など)をはじめとする さまざまな合併症が起こります。 1-1-2 . Lilly Diabetes 4 体内での糖代謝のしくみ 食事によって体内に取り込まれた糖質は、胃や腸で 分解されてブドウ糖となり、血液中に吸収されます。 膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが、 ブドウ糖の細胞への取り込みを助けます。 全身の細胞は、血液中からブドウ糖を取り込み、 エネルギー源として利用します。 あまったブドウ糖は、肝臓や筋肉で グリコーゲンという物質に変えられて蓄えられます。 ブドウ糖が不足した時は、 グリコーゲンが再びブドウ糖になって供給されます。 1-2. Lilly Diabetes 5 糖尿病とは? インスリンが十分に作用しない 血液中にブドウ糖がたまってしまう 血糖の濃度(血糖値)が高い状態が続く 1-3. Lilly Diabetes 6 日本における糖尿病の状況(1) 糖尿病患者数:約890万人 *予備軍(糖尿病の可能性を否定できない人)を含めると約2,210万人 糖尿病が強く疑われる人 糖尿病の可能性を否定できない人 0 年代別に見る糖尿病の割合 30歳代 0.9 0.5 1.9 40歳代 4.8 20歳代 50歳代 60歳代 70歳~ 0 20歳代 1.2 男性 30歳代 40歳代 2.2 9.2 13.1 50歳代 13.1 14.7 60歳代 14.4 21.2 10% 0.5 4.6 70歳~ 14.2 20% 30% 40% 0 女性 11 8.2 12.6 12.8 16.1 15.3 10% 19 20% 30% 40% 厚生労働省/2007年国民健康栄養調査より 1-4-1 . Lilly Diabetes 7 日本における糖尿病の状況(2) 年代別に見る糖尿病の割合(調査年別比較) 20歳代 20歳代 男性 女性 30歳代 30歳代 2007年 2007年 40歳代 40歳代 2002年 2002年 1997年 1997年 50歳代 50歳代 60歳代 60歳代 70歳~ 70歳~ 0% 10% 20% 30% 40% 0% 10% 20% 30% 40% 厚生労働省.1997/2002/2007年国民健康栄養調査より 1-4-2 . Lilly Diabetes 8 日系人、日本人、米国白人の糖尿病有病率 同じ遺伝因子をもっていても生活環境(環境因子)の 違いによって糖尿病の頻度が変わります。 0 5 15 10 20% 日系人 18.9% (ハワイ) 日系人 13.7% (ロサンゼルス) 日本人 9.1% (40歳以上) 米国白人 6.6% (24-74歳) (厚生省:「糖尿病調査研究」) 1-5. Lilly Diabetes 9 糖尿病の病型分類 糖尿病は、その成因によって 大きく4つの病型に分けられます。 病型分類 成 因 1型糖尿病 インスリンを合成・分泌する膵島のβ細胞の破壊により、 インスリンがほとんど分泌されない。 2型糖尿病 インスリンの分泌量が不足していたり、分泌のタイミングが 遅れたりする。また、インスリンが効きにくい(インスリン 抵抗性)ためインスリン作用が低下する。 その他の特定の 機序、疾患に よるもの 遺伝子として遺伝子異常が確認されたもの、膵臓病(膵炎、膵臓 がんなど)、内分泌疾患(ホルモンの病気)、肝臓病(肝炎など)、 薬剤や化学物質によるもの、感染症などが 原因で起こる糖尿病。 妊娠糖尿病 妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病に至っていない 糖代謝異常 1-6. Lilly Diabetes 10 1型糖尿病と2型糖尿病の特徴 1型糖尿病 2型糖尿病 患者さんの割合 5%以下 90%以上 主な発症年齢 若年(25歳以下)が多い 中年以降が多い 主な誘因 不明 過食、肥満、運動不足、 ストレスなど 症 状 のどの渇き、多飲・多尿など 無症状のことが多い 体 型 やせ型が多い 肥満型が多い インスリン注射が不可欠 食事療法と運動療法が基本。 飲み薬(経口薬)や インスリン注射を併用する 場合も多い。 治療方法 1-7. Lilly Diabetes 11 2型糖尿病の遺伝因子と環境因子のかかわり 遺伝因子 2型糖尿病発症 近親者に糖尿病の人がいる 環境因子 加齢 過食 ストレス 肥満 運動不足 1-8. Lilly Diabetes 12 糖尿病が起こるメカニズム(1) インスリンって何? ● インスリンは、血糖値を下げる働きをもつ 唯一のホルモンです。 ● インスリンは、膵臓の中のランゲルハンス島※を 構成するβ細胞で合成・分泌されます。 ※膵島の中の島状に内分泌細胞のあつまっているところを指す ● 血糖値が上がったことをランゲルハンス島の β細胞が感知すると、血糖値に見合った量の インスリンをすみやかに分泌します。 1-9. Lilly Diabetes 13 糖尿病が起こるメカニズム(2) インスリンの作用不足が起きる原因は? 1型糖尿病 1. インスリンがほとんど分泌されない ランゲルハンス島のβ細胞が何らかの原因で破壊され、 インスリンがほとんど分泌されないため、高血糖になります。 血糖 1-10 . Lilly Diabetes 14 糖尿病が起こるメカニズム(2) インスリンの作用不足が起きる原因は? 2型糖尿病 2. インスリンの量が足りない、 3. インスリンは分泌されるが、 または分泌されるタイミングが悪い 働きが悪い(インスリン抵抗性) インスリンが十分に分泌されなかったり、 分泌のタイミングが遅れるため高血糖に なります。 (血糖値:mg/dL) (インスリン:μU/mL) インスリンの作用が障害されるため 高血糖になります。 (血糖値:mg/dL) (インスリン:μU/mL) 血糖 200 200 血糖 100 100 インスリン インスリン 0 0 時間 時間 食事 食事 1-11 . Lilly Diabetes 15 糖尿病の主な合併症 ● 糖尿病神経障害 ● 糖尿病網膜症 ● 糖尿病腎症 ● 大血管障害 (心筋梗塞、脳梗塞、 閉塞性動脈硬化症) 1-12 . Lilly Diabetes 16 糖尿病の症状(1) 典型的な自覚症状は? 初期にはほとんど自覚症状がありません。 血糖値が高い状態が持続するうちに、 次のような症状が現れます。 ●尿の量が多くなる(多尿) ●のどが渇く(口渇) ●水をよく飲む(多飲) ●疲れやすい、だるい ●よく食べるわりに体重が減る 1-13 . Lilly Diabetes 17 糖尿病の症状(2) 合併症による症状は? 糖尿病が進むと、合併症による症状が現れます。 ●目がかすむ、視力が低下する ●足がむくむ ●足がしびれる、痛い ●立ちくらみがする ●傷が治りにくい、化膿しやすい 1-14 . Lilly Diabetes 18
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