経営環境の構造変化と中小企業の対応に関する調査 (2011

情報メモ No.24‑25
2012 年 6 月 14 日
商工中金 調査部
経営環境の構造変化と中小企業の対応に関する調査
(2011 年 11 月調査)に関するヒアリング事例集
○本情報メモは 2011 年 11 月に実施した「経営環境の構造変化と中小企業の対応に関する
調査」の回答先から、①今後5年程度の経営環境について構造変化の動きをどう認識し
ているか、②それを踏まえ、将来どのような対応を考えているかについてヒアリングを
行い、その結果を掲載したものです。
○実名の記載について先方の許可を得た8社及び匿名での掲載を希望する4社を掲載して
います(実名の8社は五十音順)。
○業務参考資料としてご利用ください。
○本稿は対外配布の制限はありません。
(ご照会先 調査部 江口 TEL
1
03‑3246‑9370)
経営環境の構造変化に挑む中小企業の事例
(目次)
事例
1
内容
企業名
所在地
ページ
事業のスクラップアンドビルドに
(株)アサヒ・ビル・サービス
福島県
3
(株)エナテクス
鳥取県
5
西陵(株)
富山県
7
広島県
8
(株)日電
東京都
11
(有)原田運送
神奈川
14
より企業内の新陳代謝を図る
2
Webを利用した上下水道監視シ
ステムの提案により需要を掘り起
こし
3
多品種・小ロット・短納期で地元
企業に密着
4
配 管 機 器販 売 を 着実 に 手掛 け つ 中国鉄管継手(株)
つ、産学協同の抗菌剤ビジネスを
展開
5
LED照明や太陽光発電施設など
省エネ対応の電気工事に注力
6
バイオディーゼル燃料関連事業を
軸に地域社会に貢献
7
8
県
ノウハウをフランチャイザーから
メガエフシーシステムズ
神奈川
16
取得し持続的な発展を図る
(株)
県
行き届いたサービスで拡大するリ
ローヤルエンジニアリンググループ
東京都
19
A社
東京都
22
ニューアル部門に注力
9
成長分野であるクラウドサービス
の提供を準備中
10
多様な部品ニーズへの対応を強化
B社
東京都
23
11
多品種・小ロット・高付加価値化
C社
静岡県
25
D社
愛知県
26
への取り組みで、環境の変化に対
応
12
国内需要の減少を海外進出と新事
業展開でカバー
2
事例1
(株)アサヒ・ビル・サービス
〜事業のスクラップアンドビルドにより企業内の新陳代謝を図る
1.企業概要
1967 年(創業 1967 年)
資本金
1,000 万円
従業員
280 名
所在地
福島県
業
サービス業
設
立
種
主要製品、サービス
ビルメンテナンス業を主軸に警備業等多岐にわたる事業を展開
2.企業の沿革、事業内容とその特色
当社は 1967 年(昭和 42 年)に郡山駅前ビルにおける清掃業務を手掛ける会社として設
立。その後、ビルの管理に派生する業務に順次参入し、事業を拡大。警備業、配送業、電
話交換業務など多岐にわたる。設立当初は官庁関係業務のアウトソーシングの進展に対応
し、官公庁向けの業務が主体であったが、次第に民間向けの需要を開拓するようになり、
現在では民間向けが過半を占めるようになった。ビルの管理者や入居者等から日常の業務
を通じて入手した情報に敏感に対応するよう心掛け、ニーズが見込まれ、事業化の目途が
立つものについて積極的に事業展開を図ってきた。
不動産賃貸業も合わせて行っているが、
昨年の東日本大震災で所有物件が大きな被害を受けた。当社は復旧が進んでいるものの、
当社営業所周辺では今もつめ跡が残っている。
3.今後の経営環境に関する認識
ビルメンテナンス業務については、これまで新規参入を図ろうとする他業者との競合が
みられたが、このところ落ち着いてきている。今後も事業の柱として概ね安定した収益源
になるものと見ている。そのためには、単に顧客からの要求に応えるだけではなく、自ら
顧客に対して提案を行うことで信頼を得ていくことが必要だ。例えば、東日本大震災後の
節電意識の高まりを受け、ビル電灯のLEDへの取り換えを提案し、その設置を請け負うと
いったケースもあった。
一方で震災後の福島第一原子力発電所事故の影響は依然として残っており、住民の流出
など復興を進めていくうえでの懸念は払拭されていない。
また、自社の課題としては中間管理職を中心とした人材の育成が必要だと考えている。
さらに、当社従業員の年齢構成は中高年層が多いことから、高齢化対策としての定年延長
については当社にも影響が大きく、議論の行方に注目をしている。
4.当社の今後の対応
ビルメンテナンス業務のほか付随する他業態への多角化を進めてきた結果、事業規模の
グループ会社が増え過ぎたため、管理面での問題も表われはじめた。
拡大が図られた一方、
3
そこで効率化を図る観点から、逆に事業部門の整理を進めてきた。事業部門を整理するこ
とで効率化が高まり収益力が強化された半面、規模が縮小すると企業としての活力が失わ
れてしまうと考えている。「スクラップ」したら新たな「ビルド」が必要で企業内の新陳
代謝を図っていくことが必要だと考えている。
そこで今後の新たな事業の柱として考えているのは、介護事業への進出である。以前か
ら検討を進めてきた事業であり、昨年の東日本大震災の影響により一旦凍結していたもの
だが、このところ再び検討を進め、参入に向けて本格的に始動している。
4
事例2
(株)エナテクス
〜Webを利用した上下水道監視システムの提案により需要を掘り起こし
1.企業概要
1989 年(創業 1989 年)
資本金
2,000 万円
従業員
23 名
所在地
鳥取県
業
電気工事業
設
立
種
主要製品、サービス
電気設備設置工事
2.企業の沿革、事業内容とその特色
当社は鳥取県において電気設備工事を営む業者として 1989 年に創業した。創業当時は
バブル景気のピーク時期に当たったが、間もなくバブル景気は終わりを迎えた。しかし、
その後もしばらくは公共工事の増加により、公共施設の電気設備工事を中心に業績は順調
に推移した。しかし、公共工事が減少に転じるとともに受注も減少、ビジネスモデルの見
直しを迫られるようになった。
電気工事業者としてエネルギー問題にも関心が高く、太陽光発電や風力発電といったク
リーンエネルギーへの関与を深めてきた。特に当社の立地もあって風力発電の研究におい
ては地元大学との産学連携に取り組むなど、従来型の電気工事業からの脱却を図ることを
経営方針としてきた。
3.今後の経営環境に関する認識
昨今の財政状況をみれば、今後公共工事が増加傾向に転じることは考えにくく、電気工
事の発注を待っている姿勢では、成長は見込めないと考えている。全体の工事量が減少す
る中では価格競争の激化により、収益の悪化は避けられない。収益を確保するためには元
請けとして受注しなければならず、
そのためには他社とは違う提案型の営業をすることで、
顧客のニーズを掘り起こすことが必須と考えている。
4.当社の今後の対応
従来からの電気工事だけでは自社のセールスポイントは限られてしまう。そこで時代の
先端を行くべく注目したのが、クラウドコンピューティングを利用した上下水道のWeb
監視システムの提案である。従来は上下水道の監視は自治体の庁舎内に設置された監視盤
を見てチェックする必要があり、夜間や休日でも物理的に庁舎まで出向くことが求められ
た。しかし、クラウドコンピューティングを利用した監視システムを使えば、24 時間どこ
でもスマートフォンやパソコンさえあれば、監視が可能となる。東日本大震災後は防災意
識の高まりもあって、ライフラインに対するWeb監視システムの注目度も高まりつつあ
る。
このシステムを開発企業とともに提案することでシステム設置工事の受注につながり、
5
経営基盤の強化につながっている。
また、従来から地球温暖化防止の観点から、産学連携により開発に携わってきた太陽光
発電や風力発電などについても、震災後の原発事故を受け、期せずして注目度が増してき
ている。
こうした再生可能エネルギーの普及促進についても引き続き関与していくことで、
電気工事業として時代の先端を行く企業でありたいと考えている。
最後に、経営者としての使命は当社の従業員に誇りを持って働いてもらうことにあると
考えており、そのための従業員の教育、人材育成にも引き続き力を入れていきたい。
6
事例3
西陵(株)
〜多品種・小ロット・短納期で地元企業に密着
1.企業概要
1988 年
資本金
5,000 万円
従業員
40 名
所在地
富山県
業
金属製品加工
設
立
種
主要製品、サービス
レーザー加工、ベンディング(曲げ)加工
2.企業の沿革、事業内容とその特色
1988 年創業。レーザー加工機による金属加工メーカーとしてスタートし、90 年にベン
ディングを開始した。現在、売上の約 9 割がレーザー加工部門で、残りがベンディング加
工部門である。
取引先は 700 社以上あり主に地元(富山、石川両県)業者である。輸出は行っていない。
顧客先は、工作機械メーカー関連会社をはじめ、製造業全般にわたり機械部品を製造して
いる。また、鉄骨加工業者や設備工事業者からは曲げ加工の受注が主である。
当社は、製品を多品種・小ロット・短納期で納入することをセールスポイントとしてい
る。レーザー加工に関しては、1 個からの注文を受け、納期は 3 日間とし、それ以内でも
状況によっては対応している。
3.今後の経営環境に関する認識
東日本大震災に関しては、当社及びその得意先が北陸にあることもあり、マイナスの影
響は特になかった。自動車関連は自社工場やサプライチェーンに特段被害はなかった模様
である。当社は、復興関連で機械の需要が増えた恩恵を受けた。また、建築・土木や設備
工事業者からの受注が大幅に増加した。
円高の影響は現状では特段感じられない。
4.当社の今後の対応
多品種・小ロット・短納期の製品納入というセールスポイントは今後も維持していくと
ともに、レーザー加工品に板金加工・熔接等も行い、顧客サービスの向上を図る。更に、
レーザー加工技術の進歩に合わせ、現状の材料(鉄、ステンレス)以外の新素材を含む他
の金属の加工にも対応できる設備の導入を行い、レーザーセンターとしての責任を果たし
ていきたい。
7
事例4
中国鉄管継手(株)
〜配管機器販売を着実に手掛けつつ、産学協同の抗菌剤ビジネスを展開
1.企業概要
設 立
1953 年(創業 1946 年)
資本金
1,500 万円
従業員
20 名
所在地
広島県
業
配管資材卸・小売業
種
主要製品、サービス
配管・暖房・冷凍装置・衛生設備・同付属品卸・小売業
2.企業の沿革、事業内容とその特色
1946 年創業。ビル、工場、住宅、マンションなど建物に設置する配管機器(継手、バル
ブ、パイプ等)及び、工場や一般機械の設備用の配管機器の販売を幅広く取扱う。工事関
係では上・下水道、ガス、排水、蒸気、エアーなど多様なニーズに対応している。工場関
係はマツダ㈱の工場の設備に用いる配管材類が多い。幅広いニーズに対応するため、取扱
品目は 20,000〜30,000 品目にわたり、うち使用頻度の高い 5,000 品目は常時在庫を確保
し、即日納入が可能な体制を整えている。
主な販売先は、建物の配管関係の工事を専ら行う所謂サブコンや水道工事店、工務店、
及び工作機械メーカーなどである。営業エリアは広島市や呉市など、広島県西・北部が中
心。
当社は上記の本業以外に、大学の研究成果の事業化を図るベンチャー企業を手掛けてい
る。当社の高田社長は中学・高校の同窓で旧知の仲である広島大学大学院医歯薬学総合研
究科の二川浩樹教授と共同で 2009 年 4 月に(株)キャンパスメディコを設立し、その代
表取締役を勤めている。キャンパスメディコ社は二川教授が取得した特許につき独占的な
通常実施権を有し、当該特許を事業化する企業とライセンス契約を結びロイヤリティー収
入を得る。ロイヤリティー収入の一部は広島大学に還元している。現在キャンパスメディ
コ社が通常実施権を持つ特許は、①噴霧箇所の抗菌効果が持続(固定化)する抗菌剤、②
虫歯と歯周病(歯槽膿漏など)の予防に有効な 8020 ヨーグルト(8020 運動とは 80 歳で
20 本の自前の歯を持つことを目指すという日本歯科医師会の啓蒙運動)の 2 つ。
抗菌剤はEtak(イータック)という商品名で 2009 年 12 月からドラッグストア等で発
売を開始(製造・販売は別会社が行っている)。噴霧後の抗菌効果が持続しない従来品と異
なり、1 回スプレーするとその箇所で抗菌効果が長期間持続するという特長をもつ。現時
点ではマーケティングが十分でないこと、効果が長持ちするぶん、類似品に比べ価格が割
高なことから、購買層への浸透は今一つであるといわざるをえない。ただ、現在大手製薬
メーカーによる自社ブランドでのEtakの商品化が具体的に検討されている。テレビCMを
通じた商品イメージの明確化・定着化も検討中であり、今後本商品の製造・販売拡大が期
待される。倉敷紡績㈱はEtak加工した看護師用白衣の製造・販売を決定し、TBカワシマ
8
㈱は、自動車用シート生地へのEtak加工の採用を決定し、自動車、電車、航空機のシート
で今後1〜2 年以内に折り込まれるものと思われる。
ヨーグルトに関しては、虫歯や歯周病の予防に効くということが画期的な商品。現在四
国乳業(株)が製造を行い、西日本(スパー、百貨店)および関東(ウエルシア)にて販
売中である。なお、本商品はインターネット経由で全国から購入が可能。
(楽天、四国乳業
HP)
3.今後の経営環境に関する認識
東日本大震災の影響としては、サプライチェーンの混乱により一時仕入がストップした
ことが挙げられる。2011 年 4 月以降パイプ類の供給が滞り、当社の商品在庫も一時払底し
た。供給不足は 6 月まで続いたがその後は解消し、影響は一時的であったといえる。震災
の復興需要や代替需要はほとんどみられず、今後も西日本では、ほとんど期待できない。
電力不足に関しては、マツダが 7〜9 月に工場の休業日を土日から平日にシフトしたこ
とで、同社設備向けの配管納入にズレが生じ、一部職員は休日出勤を余儀なくされた。現
在ではこの状況は解消されているが、来夏にまた問題化する可能性は残されている。
わが国経済の見通しは厳しい。内需の停滞が見込まれ、経済成長率はゼロ近傍の推移が
続こう。また、円高が持続し輸出も厳しい。こうしたなか、当社が本業とする配管資材・
設備機器販売業務については、本来的にニーズが消滅するようなものではないが、市場が
縮小均衡となることは避けられない。中長期的な当社の今後の売上に関しては、現状維持
が現実的な目標と考える。
他方、キャンパスメディコ社で手掛ける持続性抗菌関連製品は冬季のインフルエンザの
世界的な流行や夏季の病原性大腸菌の繁殖の常態化もあり、ニーズは今後一層強まってい
くものと予想される。ヨーグルトについても、高齢化の進行と健康志向の高まりは市場拡
大の追い風となると思われ、更に今後は砂糖不使用品や乳酸菌飲料なども順次発売を予定
していて売上を伸ばすと思われる。
4.当社の今後の対応
前述のとおり、配管資材・設備機器販売業務については業務としての存続は今後も可能
と考えるが、構造的に市場が縮小するなかで当社が生き残るためにはニーズを着実に取り
込んでいく努力がこれまで以上に重要となろう。
サブコンや工務店といった当社の顧客にとっては、工期の短縮化とコストの節減は常に
至上課題である。従って、必要な機器を速やかに納入するために在庫の品揃えを豊富に持
つ方針を堅持したいと考えている。また、当社の顧客は長いつきあいのある地場の業者で
あり、長期的な観点で取引を行うなかで、顧客の低コスト化への要望に応えていきたい。
そのため、各営業担当者が顧客のニーズを地道に掬い取っていくこと、顧客サービスの絶
えざる改善努力を行うことの重要さの徹底を図っている。
9
キャンパスメディコ社関連のうち、抗菌材関係については、当社にて高濃度、大容量の
業務用抗菌材の開発を構想中である。当社の営業エリアにある公共施設(学校・病院)や
防衛庁(自衛隊)では、災害救助等に関連して大規模な抗菌ニーズが存在すること、官庁
関係も衛生に関する一定のニーズがあることから、
市場性が十分あると考えている。また、
当社顧客のサブコンの一部からは、Etakを内装材・空調設備に応用したいとの申し出を受
けており、今後の展開に期待したい。
抗菌剤関係と配管機器業務を直接つなげるようなビジネスについては、現状の顧客のニ
ーズから判断してイメージできる状況になく、将来の抗菌剤市場の展開を待ちたい。ただ、
上記の業務用抗菌剤取引の拡大により、当社の配管商品取扱いが増えるという相乗効果に
期待している。
10
事例5
(株)日電
〜LED 照明や太陽光発電施設など省エネ対応の電気工事に注力
1.企業概要
設 立
1978 年(創業 1978 年)
資本金
7,215 万円
従業員
49 名
所在地
東京都
業 種
電気工事業
主要製品、サービス
電気・消防施設・情報通信工事
2.企業の沿革、事業内容とその特色
当社は 1978 年に創業し、81 年に茨城支店、東北支店を開設し業容を拡大。現在は東京都や
荒川区などの官公庁に加え、鉄道会社や大手メーカーなど民間会社からも幅広く受注を獲得し
ている。
当社は公共施設や学校、病院などの大型施設の電気工事を得意とし、変電設備や電灯・コン
セントの設置を設計から施工まで一貫して行っている。特に鉄道関連の受注が多く、駅ビルの改
修・改築、車輌センターや駅事務所の工事を手掛ける。大型施設は 5 年に 1 回程度の改修が必
要で、それらの改修工事で定期的な収入が得られる。官公庁からの信頼も厚く、小学校の改築
工事などを受注。近年では「あらかわエコセンター」という環境保護活動推進のための展示・学習
施設において、電気工事だけでなく太陽光発電設備の設置工事も行い、省エネ・環境配慮型施
設に向けた工事も実績を示した。電気工事以外にも、火災報知器や非常放送機器など建物の
機能に対応した消防設備工事や、LAN 通信や光通信のためのケーブル通線といった情報通信
工事も請け負う。
3.今後の経営環境に関する認識
当社を取り巻く状況は、東日本大震災によって変化した。震災後は経済環境の先行きに不安
を抱いた企業により大型プロジェクトの延期が相次いだことで、受注件数が減少しており経営環
境は悪化している。また、震災直後は原材料や資材が不足したことで、電線やケーブルの価格
が一部の企業で上昇するといった現象も生じ、仕入を止めた取引先もあった。一方で東京都は
建設関連業者の売上減少や資金繰り悪化を防ぐために、工事案件を前倒しするような動きもみ
られた。最近になって徐々に震災影響も薄れてきて、再開される工事も出ているが、発注される
工事は改修が主で新築工事は引き続き少なく、受注金額は低水準にとどまっている。
民間工事の減少は官公庁からの受注獲得で対応している。古くから取引を行い、当社の営業
拠点となっている荒川区は、現在も人口が増加していることから、今後も公共施設が必要とされ
るため、安定的に工事を受注できると見込む。
11
加えて、東北被災地では復旧・復興にむけて建物の建設も活発化することが期待できる。現在
はまだ復興工事は本格化しておらず、建物の設計をしている段階で、建設業者や工事業者への
発注も少ない。4 月以降には本格的に建設が始まり、補正予算の執行も進むはずである。当社
は盛岡市の東北支店にて、震災直後から復旧や修繕の工事に取り組んできた。東北地方は震
災以前から建築関連の技術者が少なく、優先的に受注する地元業者だけでは工事案件を網羅
することはできないはずであり、支店を配して人員も確保している当社は有利な立場にある。
4.当社の今後の対応
東日本大震災がもたらした大きな変化の一つに電力エネルギーに対する意識がある。原子力
発電所の事故による計画停電など電力供給が制約され、省エネが強く意識された。これらの変
化に伴って、当社ではLED照明の工事や太陽光発電施設の設置工事が増加している。LED照
明は従来の白熱灯器具と比較して消費電力が約 1/5 と大幅に少なく、製品寿命も約 10 年間取り
換えずに使用できるなど、エネルギーの節約に寄与する。
夏場はLED照明や省エネ照明器具への取り換え工事を多数行った。オフィスビルや工場など
の事業所だけでなく、小売店舗や学校などからも依頼を受けた。具体的には、イオンのチェーン
店で工事の実績を挙げたことで、同業者のスーパーマーケットやホームセンター、レストランから
の受注につながっている。もちろん小売店以外にも導入を検討している事業者は多く、今後も関
連工事は増えていくだろう。
現在、国内の原発のほとんどが稼働を停止し、世論も再稼働には否定的なため、来夏は電力
供給がより厳しくなるとみられる。LED照明をこれから導入する企業も多く、今後春から夏にか
けては省エネ関連工事の比率は上がっていくだろう。これら省エネ関連の工事は、経験の少ない
技術者でも対応可能な部分が多く、若手社員が経験を蓄積する機会としても効果が大きい。
工事に使用する照明器具や太陽光発電パネルは、メーカーから購入した製品を使用している。
そのため表面的な受注金額の内、工事費の占める割合が低い案件が多く、本業の電気工事と
比較すると利益率が悪化している。今後 2〜3 年の間に、省エネ関連工事で採算性を確保できる
かや市場規模が拡大していくかなどを見極めて、経営資源を注力していくべきかを判断する必要
がある。
これから国内経済が悪化し、市場が縮小するようであれば将来的に海外進出する可能性もあ
る。既往取引先から海外情報を紹介されたり、ベトナム現地企業に工場の電気工事を依頼され
るような話もあるが、当社としては今の段階で海外取引を開始する必要性は高まっていない。
社員の高齢化によって技術力が低下するのを防ぐため、人材の確保・育成を重視して毎年 5〜
6 名の新規採用を続けている。中小企業には人が集まってこないという話を聞くが、そのような企
業はハローワークなど募集窓口を限定してしまっているのではないだろうか。最近は中小企業を
12
応募先として考える学生も増えており、学生との接点をきちんと設定して事業内容を説明してい
けば就職後の姿も想像しやすい。当社では合同会社説明会なども積極的に活用することで、毎
年多数の応募があり、むしろ選ぶ方で苦労している。
震災は、BCP の策定についても考えるきっかけとなった。すぐにできることとして非常用物資の
備蓄を行い、災害が生じた場合に帰宅できない社員が会社に泊まれる体制を整えた。BCP の講
習にも参加してみると、防災マニュアルを設定していない中小企業が多く、また関心も高まってい
ることが窺え、今後当社でも BCP 策定を進めていきたい。
13
事例6
(有)原田運送
〜バイオディーゼル燃料関連事業を軸に地域社会に貢献
1.企業概要
昭和 1958 年(創業 1958 年)
資本金
600 万円
従業員
40 名
所在地
神奈川県
業
運送業
設
立
種
主要製品、サービス
自動車部品、ビール・清涼飲料水、生鮮野菜等運送、海上コンテ
ナ運送
2.企業の沿革、事業内容とその特色
地元三浦半島の農産物(大根、キャベツ等)の運送を行う会社として 1958 年に横須賀
に設立。高度成長期に横須賀近辺の自動車部品(マフラー等)の運送に進出、自動車産業
の拡大に伴って売上を伸ばした。
1980 年代以降、円高進行をうけ国内生産工場の海外移転が進んだうえ、1990 年代の運
送業の規制緩和推進により過当競争が激化したことから業務環境が厳しくなった。これに
対し当社は御殿場に配送センターを設置し、神奈川〜東海地方の運送をカバーする体制を
整え、トヨタ自動車グループの部品配送の取り扱いを増やしていった。同時に、国内部品
工場による横浜港経由の海外工場への輸出の取り扱いを拡大することにより、産業空洞化
への対応も進めた。
トヨタ関連の運送取り扱いが増加したことについては、当社がトラックの荷積に航空機
貨物の固縛方法を応用し、従来方法より安全・確実な運送を実現したことでトヨタのグル
ープ企業である関東自動車の信頼をかちとったことが大きい。結果として関東自動車から
の注文が増え、同時にグループ関連企業への紹介案件も増えたことが寄与した。
この他法人関連では、ビール・清涼飲料水などの運送も手掛けている。それ以外では、
引越し業務、近隣の海岸へのボート・ヨット運送を手掛けている。引越し業務は地元地公
体の斡旋による生活保護世帯の引越しや、学校のクラブ活動における楽器配送が主である。
また、当社の遊休不動産を活用したレンタルボックス、レンタルスペース事業も行ってい
る。
これ以外に、当社はバイオディーゼル燃料の生産を 3 年前から行っている。これは揚げ
物を揚げるのに使った植物性廃油を回収・精製しディーゼルエンジンの燃料とするもので
ある。バイオディーゼル燃料を使用するメリットは、再生型エネルギーであること、都市
部に原料となる廃油が豊富にあること、バイオディーゼル燃料使用によるエンジン改造が
不要であること、石油関連の税法適用外でコストがその分割安になることである。デメリ
ットとしては、自家製燃料を使用する場合、エンジン故障が発生したときにメーカーの保
証がつかないという点があり、現状では償却済みのエンジンを使わざるをえない。
14
3.今後の経営環境に関する認識
日本のマクロ的な経済環境は少子高齢化の進展による成長力の低下や円高進行による輸
出停滞や空洞化の進行により厳しい状況が予想される。財政状態の悪化による社会保障給
付減や増税が消費の悪化をもたらす。こうしたマクロ経済環境の低迷により輸送需要の伸
びは見込みにくい。加えて、一時期より淘汰が進んだとはいえ輸送業者はなお過剰であり、
過当競争によるパイの奪い合いも続こう。
また、地元横須賀の衰退を懸念している。横須賀地区は東海道からやや外れた位置にあ
ること、横須賀と横浜を結ぶいわゆる「横横道路」の通行料が割高なことから、首都圏に
ありながら産業が他地域に移転し(日産自動車の追浜工場閉鎖や関東自動車の工場機能移
転など)
、それに伴って人口も微減している。地域経済低迷で雇用状況が厳しく雇用者の所
得は伸びないことから消費が低調に推移し、地域産業の更なる停滞をもたらす悪循環に陥
っている。
地域活性化のためには「自分の町で、自分で生活できる」環境づくりが不可欠と考える。
そのためには子育て・介護・雇用を一体化した福祉の体制を整えることが必要であろう。
産業界が貢献できるのは雇用創出の部分であるが、そのためには「エネルギーの地産地消」
がカギになると考えている。バイオディーゼル燃料はその核になるものである。
4.当社の今後の対応
本業の運送業に関しては、上記の通り運送需要の停滞と業界の過当競争が続くと予想さ
れ、燃料価格の下落も見込みにくいなかで、「運賃を下げないこと」と「運送コストを削
減すること」の両面を追求していく。前者に関してはこれまでと同様、経済構造の変化に
応じニーズを取り込んでいくことと、前述の固縛方法の改善のような運送の付加価値を高
めるための不断の努力が必要である。後者の運送コスト削減については運転効率の改善を
中心に取り組む。具体的には、トラックメーカーの講習を通じた省エネ運転教育の強化、
タコグラフのデジタル化・GPS化、ドライブレコーダーの設置(当社所有 50 台中 10 台に
先行設置)などによる。
バイオディーゼル燃料については、原油高の状況下では新規設備を投入すれば実用化の
目処が立つ段階まできている。前述のエンジンのメーカー保証の問題等、クリアすべき課
題はなお多いが、本業の状況を勘案しつつ設備の更新を図り、バイオディーゼル燃料の利
用拡大を推進し、地域社会におけるエネルギーの地産地消を進めていきたい。
今後は、
地域で育った企業として地域活性化についても注力していきたい。具体的にはバ
イオディーゼル燃料の生産を地元の雇用に結び付けていきたい。NPO法人(設立済み)で
バイオディーゼル燃料を用いたエネルギーを使用してハナビラタケ(キノコの一種。最近
人工栽培が可能になった。免疫機能を強化するといわれる)を生産し、そこに地元の生活
保護世帯の人や働く意欲のある高齢者を雇用していくことを構想している。
15
事例7
メガエフシーシステムズ(株)
〜ノウハウをフランチャイザーから取得し持続的な成長を図る
1.企業概要
1968 年(創業 1968 年)
資本金
1 億円
従業員
36 名
所在地
神奈川県
業
日本料理店、デイサービス
設
立
種
主要製品、サービス
日本料理店、デイサービス業務をフランチャイジーとして展開
2.企業の沿革、事業内容とその特色
1968 年に先代社長が海鮮料理を提供する飲食店を神奈川県小田原市に設立(前身は魚卸
売業)
。1973 年に吉野家の FC チェーン契約を締結し、吉野家の FC 第 1 号店を小田原に
出店、以後 FC での出店を重ねた。1980 年に吉野家が会社更生法を申請し、新規出店が凍
結となったことから、成長戦略の維持とリスク分散のためモスバーガーと FC 契約を結び
マルチ FC 化に移行した。更に、現社長の代になり、サンマルクとの FC 契約でメガ FC
化(年商 20 億円以上かつ店舗数 30 店以上)に踏み出した。
成長可能性のある業態への進出を図る一方、投資回収が遅く多店舗化が進まない FC 契
約は随時整理を行い、現在吉野家のほか牛角、玄品ふぐと FC 契約を締結している。玄品
ふぐは魚料理への原点回帰を図り肉料理への偏りを是正する意味合いを持つ。わが国外食
産業は全体として成長性が乏しいと考えられることから、高齢者の増加による介護福祉市
場の拡大を予想し、2007 年にデイサービスの茶話本舗と FC 契約を締結し、介護事業に進
出した。
前身の魚卸売業から海鮮料理屋に進出したきっかけは、
「勘定合って銭足らず」の売掛商
売から現金商売への転換を図るためであった。1 店舗目は成功したが、職人の個人的経営
能力に依存していたことから、海鮮料理屋の多店舗化と他飲食分野への展開はうまくいか
なかった。
飲食店に関する経営資源とノウハウ不足に直面し、新たな方向性を模索するなか、当時
先駆的だったマニュアルによる店舗運営を行い、繁盛していた吉野家の店舗経営に魅力を
感じた。先代社長は海鮮食材の仕入のため築地市場に出入りしていた関係で、築地発祥の
吉野家の関係者と知り合いであった。当社は、FC契約のロイヤリティーと引き換えに店舗
運営ノウハウを「買う」という発想で吉野家のフランチャイジーになった。FCビジネスは
経営ノウハウのみならず、物資、情報、新商品などの提供も本部から受けるので、当社は
売上を増やすことに専念でき、
将来のビジョン達成のための経営資源の蓄積が可能となる。
現在、当社は新規出店をフランチャイジーで行う方針を堅持するとともに、成長マーケッ
トを見極め、
それに則した業態にフランチャイジーの形で進出していくという段階にある。
デイサービスについては、現在業界では午前 9 時から午後 5 時(2012 年 4 月現在)ま
16
での介護保険適用時間内での営業が主であるが、茶話本舗は宿泊も含め介護保険適用外の
時間帯の滞在も可としており(利用者による実費負担有)、介護家族の負担を軽減するサー
ビスを提供している。事業所は使われなくなった民家を賃借しており、初期投資コストは
小さい。なお要介護者の運動能力低下を防ぐためバリアフリー対応はあえて行わず、その
代わりに介護スタッフの人数を 1 事業所あたり 7〜8 名配置することで人的サポートを手
厚くしている。1 事業所あたりの 1 日の最大受入人数は 10 名で小人数介護を打ち出してい
る。社長にとって馴染みがあり、かつ比較的デイサービス業者間の競争が少ない小田原に
集中的に事業所を開所し、地域で高シェア獲得を目指している。
現在、FC店舗は吉野家 12 店舗、牛角 7 店舗、玄品ふぐ 1 店舗で、他に直営の「あみも
と大吉」
(創業時からの直営店舗。海鮮料理)1 店舗を有する。デイサービスの茶話本舗は
5 箇所。現在売上高の 7 割を吉野家が占め、2 割が牛角、その他が 1 割。
3.今後の経営環境に関する認識
震災の影響についてみると、吉野家では震災直後、
「食材の供給が滞って牛丼が食べられ
なくなるのではないか」という思惑から来店客が増え、3〜4 月にかけ一時的に売上が増加
した。一方、牛角は自粛ムードの高まりから震災後、売上が減少した。その後も生ユッケ
の食中毒事件が尾を引き、売上は低迷している。茶話本舗に関しては震災の影響は特にみ
られなかった。
円高の影響についてみると、吉野家、牛角などフランチャイザーにとって外国産牛肉の
調達価格に大きな変動はなかった模様。中国などの牛肉需要増で牛肉の国際市況が強含み
で、円高メリットが相殺されたことによる。
外食業界を巡る状況は厳しいと認識している。わが国外食産業のピークは 10 年前の
2000 年前後と考えられる。以後は消費のパイが増えないうえ、コンビニやスーパーで販売
する総菜のようないわゆる中食の台頭が業界を圧迫している。こうした事情もあって、特
に牛丼業界は大手同士の激しい値下げ競争に晒されており、当社の吉野家店舗でも客単価
は低下傾向を辿っている。ただ一方で、女性の社会進出により、外食の潜在顧客層の裾野
が広がる兆しもあり、店舗立地と顧客ターゲットの戦略が適切であれば生き残りは可能と
考える。
介護福祉業界は高齢化の進展により拡大が見込まれる。高齢者の数に比して家族介護者
の数が相対的に少なくなってくるため、デイサービスの需要は一層強まろう。特養老人ホ
ームの不足、病院における入院期間の短縮化などで、高齢者宿泊が受け皿としての機能を
果たすことへの期待が高まっていることも追い風である。ただ、都市部では適当な事業所
の確保が困難なうえ、業者同士の競争が厳しくなってきている。神奈川県内では横浜、川
崎といった大都市でのデイサービス業務参入は容易でなくなりつつある。介護福祉の問題
点は人材の確保である。応募者の年齢階層は多岐にわたるが意欲のある人材は限られてい
る。介護現場におけるさまざまなストレスもあって、より労働条件の良い求人が見つかる
17
と辞める人も多く、
定着率は悪い。
それでも今年夏までは採用面で買い手市場であったが、
最近応募が減っているのが気になる。
4.当社の今後の対応
外食、デイサービスともフランチャイジーによる出店方針に変更はない。
外食に関しては、所得が中間以下の層を顧客ターゲットとする。立地に関しては、サラ
リーマンをターゲットとする駅近の物件と、家族連れ及び営業関係者をターゲットとする
ロードサイド物件に出店していく。全体のパイが縮小するなかでの店舗運営となるため、
スクラップアンドビルドは不可欠である。新たな試みとして、ドミノピザのフランチャイ
ズ店 1 ヵ店を 2012 年 5 月に出店し、ピザの宅配業務へ進出した。悪天候とイベント開催
時(サッカーの国際試合等)に外食は来客数が減るが、宅配は逆に需要が増えるので、補
完効果が期待できる。
デイサービスに関しては市場の持続的な拡大が見込まれるものの、前述の通り大都市部
で競争が激化していることから、神奈川県西部(横浜・川崎以外)での郊外地域での事業
拡大を目指す。応募者の勤労意欲がさほど高くない現在の状況の改善は期待しにくいが、
最近の若い人のなかには親切で優しく、高齢者の扱いが巧みな人も多いので、うまく育て
れば戦力化するのではないかと考えている。関連する成長市場としては託児ビジネスがあ
るが、これまで日本ではフランチャイズで託児ビジネスを軌道に乗せた企業は存在せず、
フランチャイジーとしての事業展開を目指す当社が進出対象とするには時期尚早と考えて
いる。
18
事例8
ローヤルエンジニアリンググループ
(
(株)ローヤルエンジニアリング及び(株)DAIEI リペア)
〜行き届いたサービスで拡大するリニューアル部門に注力
1.企業概要
設
立
①ローヤルエンジニアリング
②DAIEI リペア
①25 名、②26 名
業
設備工事業
主要製品、サービス
資本金
1989 年(創業 1972 年)
従業員
種
1982 年
所在地
①
5,000 万円
②
3,000 万円
① ②東京都
①商業ビル、マンション等の衛生工事・空調工事
②衛生・空調設備等のリニューアル工事
2.企業の沿革、事業内容とその特色
1982 年に建物の空調、水回り関係設備の工事を行う会社として設立。1989 年に(株)
エルイービービルサービスを設立し、空調、水回り関係設備のリニューアル事業に進出。
エルイービービルサービスは 2003 年に大栄空調(株)と合併し社名を(株)DAIEI リペ
アに改称、現在に至る。
ローヤルエンジニアリングは新設工事、DAIEIリペアはリニューアル工事と業務を分担
しているが、DAIEIリペアは独自の得意先を有しており、現在のところは必ずしもローヤ
ルエンジニアリングの工事物件をDAIEIリペアでリニューアルするという関係にはない。
むしろDAIEIリペアは拡大する既存物件のリニューアル需要への対応に力を入れている。
売上高はグループで約 20 億円。うちローヤルエンジニアリングが 55%(約 11 億円)、
DAIEI リペアが 45%
(
約 9 億円)
。
ローヤルエンジニアリングの売上高は衛生工事が 65%、
空調工事が 30%。DAIEI リペアの売上高は衛生工事が 40%、空調工事が 60%。両社とも
東京都内が主な営業エリアで集合住宅、商業ビル、学校関係などの工事が多い。
受注開拓は新築物件についてはゼネコンへの営業が、リニューアル物件はデベロッパー、
不動産会社、マンション管理会社や管理組合への営業が中心である。法人経由の需要は大
半が同一会社からのリピート需要である。
当社の業務は性格上商品をサンプルとして顧客に示すことができないことから、工事実
績と評判がセールスポイントとなる。実績に関しては、ゼネコン、デベロッパー等のリピ
ート需要につながる。評判に関しては、マンションリニューアルの場合、意思決定主体で
ある管理組合はメンバーが1年交代で実務経験が乏しいので、業者選定にあたり評判・口
コミを重視する傾向がある。
3.今後の経営環境に関する認識
わが国の建設市場は縮小している。社会基盤の整備は既にひととおりの目処が立ったと
19
考えられること、人口が減少していくこと、財政の逼迫が深刻なこともあり、今後も建設
需要の拡大は期待できない。もっとも、高齢化進展により老人介護施設の建設や、戸建て
からの住み替え需要発生による集合住宅建設需要の押上げは期待できる。老朽した集合住
宅の一部で建て替え需要も期待できる。
リニューアル市場については拡大の余地が大きい。高度成長期以降建てられた住居施設
は老朽化が進んでいるが、建て替えの手続きに手間がかかる集合住宅の場合、適切なリニ
ューアルを施せば居住可能なものが多い。また、少子化の進展に伴い、私立学校は学生獲
得のために施設をリニューアルする必要に迫られているものも多い。耐震偽装問題を受け
た 2006 年の建設基準法改正以降、リニューアルへの関心が高まっていることも追い風と
なっている。2011 年 3 月の東日本大震災以降、リニューアル需要が一層高まったという認
識はないが、2011 年 4 月に東京都が一部幹線道路沿いの建築物について耐震診断を義務付
けたことでリニューアルへの関心が一段と高まっていることは確かである。
リニューアル・建て替え市場の問題点は集合住宅における資金不足にある。築 30〜40
年の物件には長期修繕積立金の積立が不足しているものが少なからずあり、リニューアル
したくてもできない物件が相当数ある模様で、近い将来深刻な社会問題となる恐れがある。
また、集合住宅の建て替えに際しても、追加資金の負担にたえられない居住者の存在がネ
ックになる。
4.当社の今後の対応
上記認識により、今後は新設市場よりもリニューアル市場が伸びると考えている。従っ
て今後はDAIEIリペアのリニューアル部門が事業の中心になってこよう。現在、売上高は
ローヤルエンジニアリングがDAIEIリペアを上回っているが、数年のうちに逆転するとみ
ている。
リニューアル市場・新設市場に共通して、当社の提供する工事の質の向上(リピート需
要と評判の向上につながる)と効率化による競争力向上が必要である。前者については、
「おもてなしの心」でいきとどいたサービスを提供することに尽きる。単に顧客のニーズ
を 100%満たすにとどまらず、
顧客の手となり足となりブレーンとなって 120%の回答を出
すことが求められると考えている。効率化に関しては、材料費に節減余地は乏しいものの、
設備工事に性格上手作りの色彩が強いだけに、人的な面で効率化の余地はある。具体的に
は多能工の強化が挙げられる。当社は既に多能工の育成を行っているが、これを強化する
ことで工期の短縮と延べ作業人数の削減が可能となり、競合他社との競争力が強化される。
また、今後は地域の別分野の工事業者との連携を深めていきたい。空調、水廻り等工事
を行う際それ単独ということは少なく、他の工事も併せて行うのが普通である。従って、
他分野の業者が受注した新設・リニューアル工事について空調、
水廻り部分を当社が行う、
もしくは当社の空調・水廻り工事に関連し他分野の工事を他業者に紹介するといった相乗
効果を狙っている。
20
国内新設需要の拡大余地が乏しいため、今後は海外への展開も視野に入れている。当社
の規模では海外の設備工事を請け負うのは難しく、現地業者の技術サポートの形での進出
ができないか検討している。ターゲットとする市場は東南アジア、特にベトナム、ミャン
マー、ラオスなどが有望であると考えている。
21
事例9
A社
〜成長分野であるクラウドサービスの提供を準備中
1.企業概要
1974 年
資本金
2 億 4,100 万円
従業員
約 240 名
所在地
東京都
業
受託開発ソフトウェア業
設
立
種
主要製品、サービス
ソフトウェア受託開発、パッケージ開発
2.企業の沿革、事業内容とその特色
当社は大手メーカーからの受託開発を主力とするソフトウェア会社。コールセンター用
システムウェアなど自社で開発したパッケージ製品も有している。自社製品が開発できる
高い技術力が評価され安定した営業基盤を有している。
3.今後の経営環境に関する認識
国内のソフトウェア業界はすでに飽和状態にある。下流工程を中心にオフショアへと流
れていることもあり案件数は減少している。リーマンショック以降、受注単価も全体的に
低下している。ただし足下の受注は安定してきており、下げ止まりを感じる。当社の受託
元および販売先は主に国内であり、円高の悪影響は特段感じていない。東日本大震災の影
響もなかった。
4.当社の今後の対応
のびしろのある自社製品およびシステムやソフトウェアを介して提供するサービスの育
成を図っている。その一環として、関係会社を設立し、複数のクラウドサービスの提供を
準備している。クラウドサービスの提供に不可欠なデータセンターは既存の提携先が提供
する。今後も、引き続き成長分野のサービスに取り組む方針である。
(調査部注)クラウドサービスとは、インターネットを通じて、サーバーやアプリケーシ
ョンソフトなどを利用することができるサービスのこと。これにより、利用者は自前のサ
ーバーやソフトウェアを用意することなくデータの処理が可能となる。
22
事例 10
B社
〜多様な部品ニーズへの対応を強化
1.企業概要
1949 年(創業 1920 年)
資本金
2,000 万円
従業員
92 名
所在地
東京都
業
金属製品製造
設
立
種
主要製品、サービス
エンジン用歯車・建設機械用歯車・車輌用歯車
2.企業の沿革、事業内容とその特色
当社は 1920 年の創業以来、一貫して歯車の製造を行ってきた。現在の売上は三菱重工
向けが約 30%ともっとも多いが、日立建機など建機メーカー向けが合わせて約 65%を占
め、品目としては建機関連が最も多い。主力取引先のなかでは三菱重工と日立建機の協力
会に加入している。三菱重工向けについては、主としてディーゼルエンジン、自家発電機、
特車などの回転部分に使う歯車を製造している。なお、当社製の歯車を搭載した機器は上
記メーカーを通じ大部分が輸出されている。
当社の工場は千葉県茂原、大網の 2 ヵ所にあり、海外での生産は行っていない。歯車製
造に必要とされる熱処理加工は他社に委託している。
当社の歯車は、乗用車やトラック向け歯車のような量産品とは異なり、多品種少量生産
であることが特徴で、発注者の多様なニーズに対応出来る守備範囲の広さが当社のセール
スポイントであると自負している。取引先からは試作品の依頼も多い。
3.今後の経営環境に関する認識
東日本大震災に関しては、
震災直後一部部品の供給不足から建機等の組み立てができず、
当社の歯車についても納入に制限が課せられたが 4〜6 月期にはおおむね解消し、サプラ
イチェーンの寸断は乗用車の場合より軽微であった。その後はむしろ被災地向けの自家発
電システムの受注増が増え、さらに今後復興事業の本格化に伴い建設重機の需要増を見込
んでいる。2012 年 1 月期の売上は前期比 2 割以上増える見通し。
電力供給不足については、震災直後は停電の影響が出たがその後は当社の主力工場のあ
る千葉県茂原市が液状化した被災地に近いことから優先的に電力を融通してもらえたため、
影響は小さかった。
わが国経済に関しては、
今後も内需の停滞が続くと思われるが、
当社が得意とする重機、
建機分野は海外需要が旺盛で、重機、建機の国内生産が行えればという前提つきではある
が、事業の継続は可能と考えている。
円高の影響は深刻である。前述の通り当社の歯車は大部分が輸出向け製品に組み込まれ
るため、重機、建機メーカーの納入価格引下げ要請が厳しく、当社の採算に悪影響を及ぼ
23
している。当社は過去に重機、建機メーカーから中国など海外への進出の打診を受けたこ
とがある。製造に必要な熱処理工程を任せられる企業が現地にないこと、当社の加工プロ
セスにも精度の高い技術が必要で、現時点では技術移転が難しいことから結果として進出
は見合わせた。ただ、このまま円高が何年も続くようであれば、重機、建機メーカーの国
内拠点の海外移転が相次ぐ事態も想定され、当社が改めて海外進出を検討しなければなら
なくなることもあり得る。
4.当社の今後の対応
国内での重機、建機メーカーの事業継続を前提とした議論になるが、設備の稼働率向上
と、必要最小限の設備投資が目標となる。
設備稼働率向上は、当社の得意とする多品種少量生産ニーズへの対応能力を高めるため
である。現在、当社は工場で2交代制を敷いているが、夜間の稼働状況は、機械の自動化
が十分でないこと、人手が手薄であることから昼間に比べ稼働率が落ちるため、納期対応
面で今一つ十分ではない。そこで、今後はロボットの新規投入を計画するとともに、夜間
の新規スタッフ採用増を進めている。
技術の伝承も重要である。当社は 60 歳定年制を敷いているが、希望者については 65 歳
までの定年延長に応じ、会社が必要と認めた人材には 65 歳以降も勤務が可能であるよう
にしており、新規に雇用した夜間勤務スタッフへの技術の伝承がスムーズに進むよう配慮
している。更に、採用においては、夜間勤務可能な人材を集めて、夜間稼働対応能力の強
化を図っているところである。
当社の製品は量産品でないため自動車部品メーカーほどの高稼働率は難しいが、最低平
均 70%程度を確保したい。
設備投資の推進はコストの低減と、海外でできない生産技術の確保と精度の向上を目指
すものである。コスト削減については、省力化機械の導入を行う計画である。生産技術の
向上に関しては、既存設備の新鋭設備への入れ替えが主となる。国内で生き残るためには
設備の更新は避けて通れないが、資金繰りや償却負担の問題と、最新機能が早期に陳腐化
するリスクを避けるため、生産ラインを少しずつ入れ替えていく計画である。なお、費用
の観点から、リースも積極的に活用していく。
24
事例 11
C社
〜多品種・小ロット・高付加価値化への取り組みで、環境の変化に対応
1.企業概要
設 立
1952 年(創業 1950 年)
資本金
6,000 万円
従業員
約 120 名
所在地
静岡県
業
一般機械器具製造業
種
主要製品、サービス
業務用プリンターユニット、音響機器関連機器製造
2.企業の沿革、事業内容とその特色
現在当社では音響機器部品や、業務用カラープリンターのインク供給ユニットなどを主
に製造している。遡ると、海苔を吸い取る装置を自社で発明し、大ヒットとなったことで
業容を拡大した経緯があり、高付加価値な製品の製造を志向するようになった。海苔吸引
装置の需要期が冬場に集中することから通年でできる仕事を模索した際にも、二輪・四輪
自動車用の部品といった、大量生産でないと効率の悪い受注よりも、多品種・少量・高付
加価値の受注獲得を図った。結果、音響機器やコピー機の部品製造が主力となった。現在
は製造していない電話交換機の部品が売上全体の 6 割を占めた時期があるなど、近隣の取
引先動向により製品の大幅な変更を経て現在に至っている。
3.今後の経営環境に関する認識
今般の円高の影響は感じていない。そもそもライフサイクルの短い業界であり、取引先
の海外移転など大きな環境の変化は何度も経験してきた。当社としては、開発・設計から
一貫して対応できる体制を早くから構築してきた。加えてメーカーとの通信環境や、その
セキュリティー面を強化するなど、非価格面で優位に立てるように努めてきた。主要な納
入先である近隣メーカーが量産品から順に海外生産に移管した結果、売上は減少したもの
の、単価は上昇している。ただし、リーマンショック以降、メーカーからのコストダウン
要請が高まり続けていることを気にしている。競合他社から著しく安い見積もりが出され
るようになった。また、数年前まではメーカーから非常に厳しい環境品質などを満たすこ
とを求められたが、最近は化学物質の使用などについて以前ほど言われなくなった。特に
海外向けが多いメーカーにおいてこの傾向が顕著で、コストダウンが最優先となっている。
4.当社の今後の対応
多品種少量の生産方針を継続する。国内でより一層の高付加価値化を目指しており、海
外進出は検討していない。県が新産業クラスターとして先進健康・医療機器産業を推進し
ていることから、介護用リクライニングベットや浴槽に関連した部品・設備の製造を行う
べく取り組みを開始した。引き続き、自社の技術が応用できる新しい製品開発に取り組む
方針である。
25
事例 12
D社
〜国内需要の減少を海外進出と新事業展開でカバー
1.企業概要
設 立
1972 年(創業 1963 年)
資本金
2,500 万円
従業員
38 名
所在地
愛知県
業 種
輸送用機械
主要製品、サービス
自動車部品全般のプレス・鍛造・メッキ加工
2.企業の沿革、事業内容とその特色
当社は 1963 年に個人創業し、66 年からプレス・冷間鍛造・金型部門を新設し自動車部品の製
造を中心に成長してきた。現在は県内 5 工場で製造を行い、売上構成は自動車部品が 80%、そ
の他部品が 20%(建設機械・事務機・フォークリフト・油圧機械などの部品)である。
当社は自動車部品全般の製造・販売を行う下請メーカー。金型の製造から、プレス・冷間鍛造、
カチオン電着塗装やメッキの技術を背景にエンジン部品、駆動・伝動装置(ギア、クラッチ、トラン
スミッションなど)、ブレーキなどの制動装置、車体部品(シート、ボディーなど)といった製品を完
成車メーカーの国内工場に納入している。納入先からの当社製品に対する信頼は厚い。
3.今後の経営環境に関する認識
リーマンショック以降、自動車業界が置かれた環境は厳しい状況が続いている。需要サイドで
は国内自動車販売が低迷している。このため当社の納入先については、海外向け生産の比率
を高め、現在海外比率が約 60%を占めるまでになっている。海外市場の中でも需要が増加して
いるのは ASEAN を中心とした東アジア地域である。一方、米国やヨーロッパ向けは停滞してお
り、その販売量は頭打ちである。
供給サイドに関しては、東日本大震災によるサプライチェーンの寸断で完成車メーカーは大き
な被害を受けた。これに関連して当社は、納入先から十数品目について代替生産が可能かとの
問い合わせを受けた。ただ、ルネサスエレクトロニクス社のマイコンの供給がストップしたことが
自動車生産のボトルネックとなり、受注には至らなかった。タイの洪水影響は大きくなく、震災影
響一巡後の増産による生産能力の逼迫が緩和する状態につながっている。
原発事故に端を発するエネルギー供給制約に対しては、当社も夏季に土日曜日の工場稼働・
木金曜日への休日シフトを行ったが、生活リズムの変化により従業員の体調不良が多発し、生
産効率が下がるという問題が生じた。中部地区の電力供給は相応に確保されていることもあり、
今後の節電対応の必要性は薄くなると期待している。
現在、最も危惧しているのは円高によって完成車メーカーが海外生産比率・海外調達比率を上
昇させることである。これまで経営努力を重ねることで国内生産を維持してきた完成車メーカーも、
26
現在の為替水準では海外の比率を上昇させざるを得ず、特に東南アジアでは実際に生産を強
化している。一度海外で生産を開始すると、以後国内へ生産が回帰する可能性は非常に低くな
ることを意味し、国内産業の空洞化・国内雇用の大幅な減少につながる。
海外生産・海外調達が増加する傾向は将来的にも継続していくだろう。国内需要はエコカー補
助金などの政策で短期的には喚起できても構造的な問題の解決には至らず、引き続き低迷が
見込まれる。自動車販売は海外、特にアジアが主戦場となる。また、現在の為替水準が継続す
るようであれば、完成車メーカーや 1 次下請会社といった比較的大きな企業だけでなく、2 次・3
次下請会社も海外に生産拠点を持つ必要に迫られてくる。当社の知る範囲では国内工場の自
動車生産はほぼ 100%部品を国内調達しているが、今後海外生産された部品が占める割合は 3
年後に 5%、10 年後には 10%程度まで上昇するだろう。そうなると、ますます国内の雇用が失わ
れるだけでなく、日本国内で海外製品との競争が激しくなり、国内部品メーカーの経営環境はよ
り厳しさが増すだろう。
現在、TPP への参加が議論されているが、仮に参加しても製造業への影響はほとんど生じな
いだろう。日本は輸入工業品に対する関税は元々低いからだ。輸出についても、「TPP に参加す
れば良くなる」といった論調には共感できない。規制緩和の議論も必要だが、一番の政策課題と
して取り組んでもらいたいのは、やはり円高対策である。
4.当社の今後の対応
厳しさが予想される経営環境の中で、当社が考える対応策は①海外進出、②新事業参入の 2
つがある。リーマンショックの前までは M&A によって規模を拡大することも考えていたが、売上
が増加しても利益率が上昇しないと判断し、現在はこの方針は劣後としている。
海外進出については、元来個人的に乗り気ではなかったが、大幅に円高が進行し完成車メー
カーによる海外生産比率が高められる中では、検討する必要性が強まっている。近いうちに若
手経営者が集まって、インドネシアを視察する計画があり、現地を見たうえで判断することになる。
経営者が陣頭指揮を執るためには現地の気候・風土が体に合うことが重要なので、自らの目で
見ることに重点を置いている。
新事業参入については、国内での雇用を維持するため、以前から情報収集を行ってきた。4〜
5 年前は農業と連携し、人工光で成長する植物工場の建設を構想していた。これは植物工場の
設備の管理・保全に当社のメッキラインのノウハウが使えるからである。完全無農薬での栽培が
可能で、付加価値の高い高級野菜をデパートやレストラン、ホテルなどに販売する計画であった。
農商工連携の補助金申請のため大学へも相談へ行ったが、新規参入を阻害する条件・規制が
多く、補助金申請に至らなかった。農業施設は小規模なものでも 2 億円を要し、投資コストが嵩
む一方、補助金の申請までには 2 年かかることから新規参入は断念となった。
27
最近は、社長の友人から医療用機器の製造依頼があったことをきっかけに、医療業界への参
入を志向している。医療機器は今後の少子高齢化・医療の高度化に伴って需要拡大が期待でき
る市場であるが、現在の日本では輸入品のシェアが大きく、新規参入の余地が残されている分
野である。参入の絶対条件と考える製造工程の滅菌化(滅菌消毒済み素材を用いて滅菌した状
態で製品を完成する)は、これまで蓄積してきた当社の製造技術によりクリアすることが可能であ
る。しかし、ここでも新規参入に対する障壁がネックとなっている。医療機器業界は、製造も販売
も厚生労働省の許認可制であり、かつ分野毎に実務経験 5 年以上を経過した管理責任者を配
置することが求められている。大企業に比べて資金や人材の少ない中小企業にとって、このよう
に既得権を保護するような参入障壁をクリアすることは非常に難しく、より一層の規制緩和が必
要だと考えている。
変化の激しい時代の中で、現在の事業以外の情報も、経営者同士の会合やシンポジウム、セ
ミナーなどに積極的に参加することで幅広く収集し、少しでも機敏に経営対応が出来るように心
掛けている。
本資料は情報の提供を目的としており、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の
決定につきましては、お客様ご自身の判断でなされますようにお願いいたします。
28