アマチュア無線 いろはのい ~ポニョでもわかるアマチュア無線~ 講師 JR2HCH JF9NVE 1.アマチュア無線とは 以下のように電波法によって規定されています。 「金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的な無線技術の興味によって行う自 己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう」 つまり、アマチュアってこと。 2.無線従事者免許 電波を出すためには「無線従事者免許」を取得しなければなりません。 2.1.免許の種類 アマチュア無線技士としての無線従事者免許には以下の4つがあります。 資格名 出せる電波の強さ 第一級アマチュア無線技士(1アマ) 無制限 第二級アマチュア無線技士(2アマ) 200W 以下 第三級アマチュア無線技士(3アマ) 50W 以下 第四級アマチュア無線技士(4アマ) 20W 以下 それぞれの資格には、出せる電波の強さに違いがあります。出力が強いほど 電波は遠くまで届きます。目指せ無制限! 無線従事者免許を取得していないと電波が出せません。無免許運転と一緒です ね。アマチュア無線研究会に入会したら、まず無線従事者免許を取得してもらい ます。 1 2.2.免許を取得するには まず、皆さんに取得してもらうのは「第三級アマチュア無線技士(通称3アマ)」 の免許です。試験問題は超カンタン。「3アマが許されるのは小学生まで」だとか。 7 月にとれば夏休みから無線活動に参加できるようになるので、5 月中に受験申 請をしておくことをおすすめします。その気になったら先輩に聞いてみよう。 3.無線局とコールサイン 先に述べた「無線従事者免許」の他に、アマチュア無線の活動を行うためには もう一つ免許が必要になります。 3.1.無線局 電波を出すためには、それなりの設備をそろえた無線局を構える必要がありま すが、その無線局を運用するための免許というのも存在します。無線局の開設を 総務省に認可されて免許状が交付されることで、初めてアマチュア無線の活動が できるようになります。が、みなさんは「JA2YKA」に所属することになるので、そう 焦ることはないです。ただ、あると一つ大人になった気がする。 3.2.コールサイン 運用が認められた無線局には名前が割り当てられます。その名前のことを「コ ールサイン」といいます。無線通信の際に自分(相手)の名前を言うときにはコー ルサインで呼びます。世界には同じコールサインが2つ存在することはありませ ん。 名古屋大学アマチュア無線研究会は「JA2YKA」というコールサインをもってい ます。 これを例に尐しコールサインについて詳しく説明します。 ・"JA2"の部分を「プリフィックス」と言います。 プリフィックスの内、初めの2字はアマチュア無線局の国籍を示しています。日 本国のアマチュア無線局には、JA~JS、7J~7N、8J~8N、のいずれかが割り当 てられます。 数字の部分は「エリアナンバー」といい、地域を示しています。東海地方に設置 2 されているアマチュア無線局はエリアナンバーが"2"となっています。(その他のエ リアは下図参照) ・"YKA"の部分を「サフィックス」と言います。 プリフィックスの次には 2 文字または 3 文字のアルファベットが与えられます。 サフィックスにちなんで、アマチュア無線研究会のメンバーがこのサークルのこと を「YKA」と呼ぶのはこのためです。 "JA2YKA"はアマチュア無線研究会の社団局としてのコールサインですが、会 員のほとんどは個人でコールサインを持っています。同じように、コールサインを 持つ会員をサフィックスで呼ぶことがあります。例えば、細野君のことは「えぬぶい いー」って呼んでも怒らないよ。「んヴぇ」じゃないよ。 3 4.アマチュア無線の活動 アマチュア無線の活動には主に以下のものがあげられます。 ・コンテスト ・ラグチュー ・QSL カードの交換 ・(他にもたくさんあります) ・モービル ・電波伝搬実験 ・非常通信 YKA ではコンテストへの参加を主な活動にしています。 5.コンテスト コンテストとは、アマチュア無線の大会です。一定の時間内にいかにたくさんの 局(人)と交信できるかを競います。実際はこれを点数化したもので順位を決めま す。ま、やってみればわかる。 5.1.バンド バンドとは「周波数帯」のことを指します。電波には周波数がありますが、コンテ ストではあらかじめ決められた周波数帯内の電波を使って相手との交信をします。 ま、やってみればわかる。 5.2.交信とは 交信するというのは、お互いのコールサインとコンテストナンバーを交換するこ とを意味します。 自分のコンテストナンバーは、"相手の声の聞こえ具合"と、"自分の無線局の場 所"で決まります。ま、やってみればわかる。 5.3.ログ 交信したことを証明するために、その交信内容を記録します、記録したものを 「ログ」といいます。ログに書くのは、交信時間、相手のコールサイン、相手のコン テストナンバーです。紙媒体と電子媒体の両方に記録します。コンテストが終了し たら、ログを大会運営組織(みたいなもの)に提出します。ログに不正がないかチェ ック、そして点数が集計され、その結果で順位が発表されます。 4 5.4.点数計算 点数は基本的に交信した数で決まります。が、「マルチ」という概念が存在しま す。 わかりやすいように実際に例を挙げて得点を計算してみます。 交信例 交信局数 愛知県内の 5 局と交信 愛知、岐阜、三重、静岡、長野、各県内の 1 局ずつと交信 マルチ 得点 5 1 5×1=5 5 5 5×5=25 例からわかるように点数の計算式は(交信数)×(マルチ)で計算されます。この 例ではマルチは県の種類ですが、コンテストによっては市町村別だったり、世界規 模のコンテストでは国別になったりします。ここで重要なのは、同じ件数とるにして も「様々な地域の局と交信する方が点数が高い」ということです。コンテストで上位 を狙うには大切なポイントです。 5.5.フォネティックコード 交信時には必ずしも明瞭な声が互いに伝わっているとは限りません。大抵ノイ ズが入ったり声が小さく聞き取りにくかったりします。そんな状態でコールサインを 交換すると、"D"を間違って"B"と伝わってしまうなどの問題が生じる可能性があ ります。そんな聞き間違いの問題を解決するのが「フォネティックコード」です。 フォネティックコードはアルファベット 26 文字個々に、それを頭文字とする言葉が 割り当てられています。これによって正確に相手へ文字を伝えられます。フォネテ ィックコードは世界共通です。 相手のコールサインを正確に聞き取ることは効率よく交信を行うためにとても重 要なことなので、フォネティックコードが分かることはコンテストには必須のスキル となります。がんばって覚えてください。どうやって言えば相手により伝わりやすく なるか。それを考えるのも。楽しみの一つです。自分なりに腕を磨いていきましょ う。 5.6.YKA で参加するコンテスト YKA では毎年様々なコンテストに出ています。多くのコンテストでは移動運用を しています。電波が遠くまで届きやすい標高の高いところまで移動します。山の中 へ赴き 2,3 日生活することになるので、キャンプをしながらコンテストに参加するこ ともあります。 5 YKA がもっとも力を入れているコンテストが「6m&down コンテスト(通称6↓)」で す。波長が 6m 以下(周波数が 50MHz 以上)の電波で交信数を競います。毎年6↓ では山頂ヒュッテという標高 2300m のところまで移動運用しています(日本一高い パン屋があるよ)。周りに遮蔽物がないので電波の飛び具合がとても良好になり ます。 今年の 6↓は、7 月 3 日(土)21 時から 4 日(日)15 時までの 18 時間開催され、準 備のために 2 日(金)に大学を出発します。YKA 全員が一丸となって参加するコン テストです、7 月 2~4 日は予定をあけておいてください。 といっても、よくわからんと思います。とりあえず ALLJA コンテストがあります。こ のコンテストを見学して。雰囲気をつかんでください。次回のコンテストからはガッ ツリ参加してもらうので、よく見といてくださいね。 6.ここまでのまとめ ・無線従事者免許を 5 月に申請すると良い ・コールサインというものがある ・YKA は年に何度かコンテストに参加している ・コンテストでは交信数を競う ・フォネティックコードを覚える ・6↓には全員参加 7.アンテナ さあ、ここからは尐し実践的なお話です。電波を出すために必要なものと言え ば、まずアンテナですよね。そうですね。アマチュア無線ではきっと今まで見たこと の無いようなアンテナたちを使います。 7.1 八木アンテナ 初心者にとって最もアンテナらしいアンテナ、 見るとほっとする。がそれほど初心者向けでない にくいヤツ。チクチクと飛び出ている針の長さと 間隔が相まって電波を出す。もちろん電波にも 方向がある。このアンテナは割と鋭く電波を出す。 (電波の強度が方向によって異なることを指向性 6 があるという。)だからしっかり考えて方向を決めないと痛い目に遭う。狙った獲物 は逃さない。そんな肉食系なあなたにおすすめ。 7.2 グランドプレーン GP ともいう。ただの棒。見た目は悪いが中 身はイイヤツ。見た目から想像がつくとおもう が。こいつ指向性がない。だから方向を考え なくてもいい。素晴らしい。だが、いいことば かりじゃない。まんべんなく電波を出す代わり に、距離がでない。でもやっぱ可愛い。一度 は使ってみたい、そんなアンテナ。 7.3 ダイポールアンテナ DP ともいう。ただのひも。果たしてこれでアン テナと言えるのだろうか?実際見てみればわか るが、こいつ、でかい。ちなみに上の写真が逆 V 字、下のが V 字。YKA ではもっぱら逆 V を使い ます。張るのがめんどくさい上に、調整もめんど う。だけど、そんな頑張りには応えてくれるイイヤ ツ。指向性は一応ある。気持ちある。なんか三角 に張ってる導線と垂直方向に電波が飛ぶ。使う とたちまち僕らを混沌の世界へといざなう。 7.4 パラボラアンテナ なんだか有料テレビが見れそうな気がする。 見れない。そんなアンテナ。「マイクロはやっ ぱりパラボラ!」と、いわれるだけのことはあ るのかもしれない。簡単に言うとマニアック。 みんなが MHz(メガヘルツ)な電波を出すなか、 GHz(ギガヘルツ)な電波を出す。一風変わっ た世界が見たい。ギガヘルツァーなあなたに おすすめ。 8.バンド 7 さっきもこの話をしたが、もう尐し詳しく。陸上競技に 100m だ 400m だのあるよう に、アマチュア無線にも周波数に制限がある。あ、そういえば、電波は光の速さで 飛ぶから、周波数が決まれば波長も決まるよ。わかるよね。さあ、YKA で出してい る主なバンドは以下の通り。(単位は MHz) 3.5 7 14 21 28 50 144 430 1200 2400 これ以外のバンドはなんで出さないかって?大変だから。大変ってことはみん なやらない。相手がいなくちゃ交信できない。ってわけ。「むむ?ってことは人が多 い方が楽しいんじゃなかろうか?」まあ、そのとおり(別なところで楽しむ人もいる けど・・・)じゃあ、どこが人が多いのか。ざっくり言うとだいたい上の並び順で、左 に行くほど多いって感じ。だから右の方が初心者向け。ではない。あ~ややこしい。 ま、とりあえず一通りやってみてはいかがでしょう? 9.アンテナ以外に必要なものたち アンテナさえあればいいってもんじゃない。テレビはいらない。ラジオもいらない。 電車もいらない。それでも必要なものたちの紹介です。 9.1 リグ アンテナ並に重要。無線機のこと。声を電波に変える力を持っている。この上な く複雑。なかなかなつかない。すべての機能を使いこなすことができるようになる と尊敬されると思う。優秀な先輩か説明書に聞いて尐しずつ覚えよう。しかもこれ がかなり高い。うっかり壊してしまうと・・・。気をつけよう。 9.2 電源 絶対必要なのは言うまでもない。リグにコンセントはついていない。なんか、 13.8V でないといけないらしい。しかも直流でないといけないらしい。だからこれを 使う。たくさん種類があるけど、どれでもいいわけじゃない。これも先輩にきいて 徐々に覚えていこう。 9.3 同軸 導線が二回進化したらきっとこんな感じになる。そうに違いない。コネクタには 8 主に M と N がある。シンプルなのが M でカッコいいのが N(だと僕は思っている)。 また太さもいろいろあり、それぞれいいとこ悪いとこがある。周囲の専門家に訪ね よう。 9.4 SWR 計(定在波比計測器) SWR が計れる。すごい。SWR って何かって?それは 1 に近いほどいい(ちなみ に範囲は 1~∞)という不思議なもの。1~1.5 だとイイカンジ。∞だと何か根本的に 間違えている。その間になると何か中途ハンパに間違えている。そんな感じ。数 字がでかいとリグに 512 ダメージ与えられるため。とても危険。壊れる。だからコン テストの前に必ず SWR を計る。悪かったらしっかり原因究明して意地でも良くす る。 10.運用 いよいよ最終章。「終わりの始まり」です。なんか最初のころとだいぶ口調が変 わってるって?それは、疲れたから。みんなももう疲れたでしょ?そうでしょ?だか らサクッと運用までの流れを説明します。一度しか言わないのでよく聞くように。 アンテナに同軸をセット。そしてもう片方を SWR 計に。そして SWR 計から同軸を リグに。そしてリグから電源コードを電源に。そして電源をプラグイン!そして電源 をスイッチオン!そしてリグをスイッチオン! わかったかな?わかったよね?あとは SWR を計って、良かったらいよいよコン テストに参加出来ます。じゃあ、実際にどう運用するか。それを説明していきます。 10.1. 交信相手を声を出して探す 交信相手を探す方法は大きく分けて2つあります。そのうちよく使う、というか、 よく使わなければならないのがこの方法。 ①「CQ(コンテスト)×3」 ②「(こちら)自分のコールサイン×1~3」 ③「コンテスト、どうぞ」 これを永遠と繰り返す。もちろん適当な間隔をとりながら。ひどいときは1、2時 間繰り返す。しゃべるから、おやつは食べられない。バナナも食べられない。漫画 は読めるかも。暇なときだけだよ。そうこうしているうちに誰か声をかけてくる。そ 9 の人のコールサインを言ってくる。そうしたらコンテストナンバーを言い合って交換 する。これでようやく1件。そしてまた独り言。 10.2.交信相手を指を動かして探す ひとことで言うと、さっきの逆。指をくるりと回して周波数を変えながら。CQCQ 言 ってる人を探す。見つかったら。自分のコールサインを叫ぶ。そしたらあとはもう一 緒。受身なのであまり件数は稼げない。心が折れそうになったときにやろう。 さあ、これであなたも立派なアマチュア無線家の仲間入り!? 次回のコンテストは ALL 岐阜コンテストです、 6月12,13日です。岐阜県の中津川の合宿施設に泊まります。 2年生は6↓の下見でいなくなってしまいますが、3,4年生と一緒に頑張って ください。 10
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