不動産投資に関するリスク管理ガイドラインの概要(393KB)

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不動産投資に関する
リスク管理ガイドラインの概要
業務企画部
俊野 雅司、森 祐司
【要約】
◇ 本稿では、大和総研が事務局となって取りまとめたリスク管理ガイドライン(オルタ
ナティブ投資編)の中で、不動産投資に関する部分の概要を解説する。
◇ 不動産投資に関するガイドラインは、不動産私募ファンド編とREITファンド編に
分かれている。不動産私募ファンド編は、計画段階8項目、実行段階7項目、モニタリ
ング段階2項目の計 17 項目、REITファンド編は、計画段階6項目、実行段階3項目、
モニタリング段階2項目の計 11 項目から構成されており、それぞれの投資対象に投資す
る場合の Plan-Do-See 全般にわたる投資プロセスの中で、検討すべきチェック項目を整
理している。
はじめに
大和総研が事務局となって取りまとめたリスク管理ガイドライン(オルタナティブ投資
編)では、オルタナティブ投資全般に関するガイドラインに加えて、ヘッジファンド投資
に関するガイドラインと不動産投資に関するガイドラインを提示している
1)。本稿では、
不動産関連のガイドラインの概要を解説する。
表1には、企業年金連合会が 2006 年6月~7月にかけて実施したアンケート調査結果に
おいて示されている国内の企業年金によるオルタナティブ投資の現状が示されている。オ
ルタナティブ投資を実施していると回答した年金基金のうち、約 95%(500 基金以上)が
何らかのヘッジファンド投資を実施しており、ヘッジファンドに対する関心の高まりが見
られる。
一方、不動産投資に関しても、140 基金以上がすでに実施していると回答しており、か
なり浸透が進んでいることが伺える。不動産投資の内訳を見ると、不動産私募ファンドと
REIT に対する投資が、ともに少なからず存在することから、それぞれの投資対象に関する
リスク管理のあり方を検討することが必要であると考えられる。リスク管理ガイドライン
1)
リスク管理フォーラム関連の業務は、大和ファンド・コンサルティングに引き継がれている。詳細は、
大和ファンド・コンサルティングのホームページ(http://www.daiwa-fc.co.jp/riskforum/index.html)を
参照。リスク管理ガイドライン(オルタナティブ投資編)の本文は、上記のホームページからダウンロー
ド可能である。また、リスク管理ガイドラインの本文に加えて、各商品の概要に関する基礎知識編を盛り
込んだリスク管理フォーラム(オルタナティブ投資セッション)最終報告書の申込書も上記ホームページ
からダウンロード可能。オルタナティブ投資全般に関するガイドラインの概要については、年金ニュース
レター 2006 年 9 月号「オルタナティブ投資全般に関するリスク管理ガイドラインの概要」、ヘッジファン
ド投資に関するガイドラインの概要については、年金ニュースレター 2006 年 11 月号「ヘッジファンド投
資に関するリスク管理ガイドラインの概要」を参照。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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(オルタナティブ投資編)の不動産投資部分では、以上のような状況を反映して、不動産
私募ファンド編と REIT ファンド編に分けて、チェック項目の整理が行われている。後者
は、年金基金による実際の REIT 投資は、REIT に直接投資するのではなく、運用会社が組
成している REIT ファンドを購入するケースが一般的であることを反映している。
以下、本稿では、不動産私募ファンド編と REIT ファンド編に分けて、リスク管理ガイ
ドラインの概要を整理する 2)。
表1
日本の年金スポンサーにおけるオルタナティブ投資の現状
オルタナティブ投資の種類
国内不動産私募ファンド
海外不動産私募ファンド
国内REIT
グローバルREIT
米国REIT
いずれかの不動産
いずれかのヘッジファンド
プライベート・エクイティ
コモディティ(商品)
その他のオルタナティブ商品
回答数合計
基金数
63
2
63
41
11
141
517
33
11
42
543
割 合
(%)
11.6
0.4
11.6
7.6
2.0
26.0
95.2
6.1
2.0
7.7
100.0
(出所)企業年金連合会「資産運用実態調査結果の解説(2005 年度)」
2006 年 8 月
Ⅰ.前文
不動産投資に関するセクションでは、各論に入る前に、以下のような前文が掲載されて
おり、不動産関連のガイドラインを2つのパートに分けた理由と両者の関係について、説
明が行われている。
「本章では、不動産投資の対象として、年金スポンサーの間でもっとも活用頻度の高
い不動産私募ファンドと REIT ファンドを取り上げる。
不動産は実物資産であり、一般的に不動産時価(ネット・アセットバリュー倍率=
1倍)での取引であるのに対して、REIT は証券であり、株価(ネット・アセットバ
リュー倍率≠1倍)での取引になる場合が多い。このような資産特性の違いを反映して、
不動産私募ファンドと REIT ファンドについて、それぞれ異なるガイドラインを策定
する。
2)
本稿では、リスク管理フォーラム(オルタナティブ投資セッション)最終報告書の中から、リスク管理
ガイドラインの本文の他に、第5章「不動産投資に関する基礎知識」からも一部記述を引用している。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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なお、年金スポンサーの規模から政策資産配分上の不動産の投資金額が小額となり、
複数の不動産私募ファンドへの投資が不可能な場合は、十分なリスク分散が図れない
リスクが存在する。そのような場合においては、REIT ファンド、もしくは投資対象
となる物件および不動産物件の購入売却時期が十分に分散された不動産私募ファンド
を選ぶことがリスク管理の面から重要である。
また、本ガイドラインでは、不動産私募ファンドのポートフォリオに REIT ファン
ドを一定程度含めることやその逆のケース(REIT ファンドに一部不動産私募ファン
ドを含めること)を排除していない。」
両パートとも、ガイドラインの構成に関しては、かなりの程度の類似性が見られるが、
両者の商品特性の違いを反映して、相違点も存在する。実質的に株式の購入と見なし得る
REIT 投資とは異なり、不動産私募ファンドの場合には、ファンド組成者(運用者)が自分
たちの関与している不動産物件をファンドの中に組入れる場合もあり得る。そのため、不
動産私募ファンドに関しては、利益相反的行為の排除やコンプライアンス・ガバナンス関
連の留意事項にまで言及する必要があり、不動産私募ファンド編のガイドラインの方が分
量的に多くなっている。
Ⅱ.不動産私募ファンド編
1.計画段階に関するガイドライン
計画段階においては、(1)不動産私募ファンドの導入目的の明確化、(2)不動産私募
ファンドの特徴とリスクの把握、(3)主たる投資対象の決定、(4)政策資産配分上の投
資枠の決定、という4段階のプロセスが想定されている。
(1)不動産私募ファンドの導入目的の明確化
【PG1】(基本)「不動産私募ファンドの導入目的の明確化」
不動産私募ファンドを新たな資産クラスとして加える場合には、この資産クラスに
何を期待するのか(導入目的)をあらかじめ明確にしておくことが必要である。
導入目的としては、以下のケースが想定される。
① ポートフォリオのリターン向上
② 分散投資効果
③ インフレヘッジ
④ 高いインカムリターン
ここでは、年金スポンサーが想定する投資目的自体に優劣をつけるものではなく、
それぞれの目的においての留意点を記載する。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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<PG1-1>(基本)「ポートフォリオのリターン向上を導入目的とする場合の留意
点」
ポートフォリオのリターン向上を目的にする場合は、リスクの所在を認識すると
ともに、ポートフォリオ組み入れ時におけるリスク分散効果について把握すること
が必要である。
<PG1-2>(基本)「分散投資効果を導入目的とする場合の留意点」
分散投資効果を期待する場合は、平均分散法等による分析により、分散効果の妥
当性を確認することが必要である(ただし、分散投資効果の検証に際しては、投資
対象の収益の源泉がベータなのかアルファなのか、分別不能なのかを認識したうえ
で、分散すべきリターンおよびリスクの源泉の性格について把握することが望まし
い)。
<PG1-3>(努力)「インフレヘッジを導入目的とする場合の留意点」
インフレヘッジを目的とする場合は、制度上インフレリスクに対して対応する必
要があるのかを改めて確認することが望ましい。
<PG1-4>(基本)「高いインカムリターンを導入目的とする場合の留意点」
高いインカムリターンを導入目的とする場合は、財務レバレッジや投資手法等か
ら、トータルリターンの中に占めるインカムゲイン部分とキャピタルゲイン部分の
割合を認識することが望ましい。
最初の2つ(リターン向上と分散投資目的)については、ヘッジファンドのガイドライ
ンにおいても同様の導入目的が例示されていたが、不動産投資に関しては、これら2点に
加えて、インフレヘッジ効果の実現と高いインカムリターンの獲得を導入目的とする場合
もあると考えられる。そのため、<PG1-3>と<PG1-4>では、これら不動産投資に
特徴的な導入目的を掲げる場合の留意点を示している。
(2)不動産私募ファンドの特徴とリスクの把握
不動産私募ファンドに関しては、不動産固有の特徴とリスクに加えて、不動産私募ファ
ンドのストラクチャーの特徴とリスクについても把握する必要がある。
【PG2】(基本)「不動産固有の特徴とリスクの把握」
不動産は、債券や株式などの伝統的資産と比べて、資産特性や取引される市場の状
況が異なることから、不動産固有の特徴とリスクについて把握する必要がある。
<PG2-1>(基本)「流動性・個別性」
不動産は、債券や株式などの伝統的資産と比べると、流動性や個別性などの点に
おいて、情報の非対称性や不透明性が相対的に大きいことを認識する必要がある。
<PG2-2>(基本)「瑕疵・自然災害」
不動産には、物件または権利の瑕疵が存在することがあり、また、自然災害等に
より、その価値が大きく毀損する可能性もあることを認識する必要がある。
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<PG2-3>(基本)「時価評価」
不動産の時価評価結果は、第三者の鑑定評価によるものであっても、評価者の主
観によって差異が生じることが多い点を留意する必要がある。
【PG3】(基本)「ストラクチャーの特徴とリスクの把握」
不動産私募ファンドのストラクチャーは、ファンドごとに特性が異なることから、
その特徴とリスクを把握することが必要である。
<PG3-1>(基本)「財務レバレッジ」
財務レバレッジの活用に伴い、キャッシュフローに特異なパターンが生じたり、
金利リスクが発生したりする可能性があることを認識する必要がある。また、その
際、優先劣後構造が追加的なリスクを生み出す可能性がある点にも留意が必要であ
る。
<PG3-2>(努力)「投資期間」
投資期間が定められている場合には、売却価格や賃料収入、調達金利などを変化
させた感応度分析を行うことが望ましい。
<PG3-3>(努力)「法務リスク」
譲渡人等からの倒産隔離といった法務上のリスクについて適切な対処が行われて
いるかどうかを確認することが望ましい。
<PG3-4>(努力)「税務リスク」
二重課税の回避や導管性の確保といった税務上のリスクに対して適切な対処が行
われているかどうかを確認することが望ましい。
以上のように、不動産私募ファンドの投資対象である不動産そのものの特徴とリスク(流
動性・個別性、瑕疵・自然災害、時価評価)については【PG2】、不動産私募ファンド
を組成する際のストラクチャー上の特徴とリスク(財務レバレッジ、投資期間、法務リス
ク、税務リスク)については【PG3】において、具体的な留意点が指摘されている。
(3)主たる投資対象の決定
<PG2-1>で指摘したように、不動産は債券や株式のような有価証券と異なり、流動
性や個別性のリスクが相対的に大きい。そのため、一般的には、年金スポンサーがターゲ
ットとするコア不動産ポートフォリオ
3)を決めたうえで、一定の時間をかけてポートフォ
リオを組成することになる。その際、主たる投資対象(地域、用途、スタイルなど)を決
定したうえで、不動産ポートフォリオを組成するが、市場環境によっては、投資タイミン
グを主たる収益の源泉とするオポチュニスティック・ファンドのような案件が持ち込まれ
3)
ここでコア不動産ポートフォリオとは、年金スポンサーが主として投資を予定している不動産私募ファ
ンドの地域、用途、スタイル等の投資ユニバースのことである。なお、コア不動産私募ポートフォリオで
想定した投資ユニバースから外れる不動産私募ファンドへの投資はノンコア不動産ポートフォリオになる。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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ることがあり、事前に主たる投資対象から外れるノンコア投資の投資可能額を明確にして
おくことが望ましい 4)。
なお、コア不動産ポートフォリオは、他の伝統的資産と同様、国内と国外を分けて管理
する考え方と、グローバル投資の一環として、内外一体で管理する考え方がある。
【PG4】(基本)「コア不動産ポートフォリオの決定」
不動産私募ファンドの投資にあたっては、想定する不動産私募ファンド投資の資産
特性を定義するために、地域、用途、スタイルなどの観点から、主たる投資対象(コ
ア不動産ポートフォリオ)を決定することが必要である。
<PG4-1>(努力)「コア不動産ポートフォリオの分散」
コア不動産ポートフォリオを決定する際には、個別に投資することになる不動産
私募ファンドの分散の程度について事前に想定しておくことが望ましい。
【PG5】(努力)「ノンコア不動産ポートフォリオの決定」
コア不動産ポートフォリオに対するノンコア不動産ポートフォリオの位置づけや
ウェイトを定めたうえで、その投資対象を明らかにすることが望ましい。また、これ
らのノンコア不動産ポートフォリオについては、許容できる投資対象の範囲を定める
ことが望ましい。
(4)政策資産配分上の投資枠の決定
【PG6】(基本)「ベンチマークの設定」
【PG4】で定めたコア不動産ポートフォリオの資産特性を踏まえて、適切なベン
チマークを設定することが必要である。
<PG6-1>(基本)「不動産インデックスの活用」
地域、用途、スタイルなどの投資対象の面で多様な不動産物件への分散投資が予
定されている場合には、既存の不動産投資インデックスを活用することが可能であ
る。最近は、不動産投資インデックスの開発が進んできており、個別のビルごとの
収入および支出のキャッシュフロー・データを用いて計算された期間収益率に基づ
いて作成されたインデックスを活用することも可能な状況になっている。
<PG6-2>(上位)「カスタム・インデックスの構築」
導入予定の不動産私募ファンドの投資形態がかなり特定化されている場合に
は、カスタム・インデックスを構築することも考えられる。
4)
アメリカでは、不動産投資戦略は、そのリスク要因やリターンの源泉などにより、①中核型(コア)、②
付加価値型(バリューアディッド)
、③好機捕捉型(オポチュニスティック)の3つに分類される。リスク・
リターンの2軸でこれらの戦略の相対的な位置づけを表現すると、中核型、付加価値型、および好機捕捉
型に移るに従い、リスクとリターンが高まっていく。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
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<PG6-3>(基本)「その他のベンチマークの設定」
既存のインデックスを活用することがむずかしい場合には、何らかの便宜的なベ
ンチマークを設定することも想定される。期待リターンとして、特定のリターンの
水準や短期金利に一定のプレミアムを上乗せした値を用いたり、他の資産との相関
係数を一律ゼロと置いたりするケースが含まれる。
年金スポンサーの不動産投資のベンチマークとして採用することがふさわしいインデッ
クスは、「個別のビルごとの収入および支出のキャッシュフロー・データを用いて計算さ
れた期間収益率に基づくもの」である。現在日本で利用可能なこのタイプの不動産投資イ
ンデックスとして J-NPI、J-IPD、J-GSA の3種類がある。ただし、これら3つの不動産
投資インデックスのサービス提供は日が浅く、時系列データとしてはまだまだ不十分であ
る。そのため、これらのインデックスを、例えば、年金のアセットアロケーションにおけ
る効率的フロンティアの計算などに利用するのは困難である。
そのため、不動産投資インデックスの長期時系列データを利用する場合、当面は、代替
的な不動産投資インデックスを利用せざるを得ない状況にある。代替的なインデックスと
して、オフィス不動産投資では、MTB-IKOMA インデックス(提供元:東京三菱 UFJ 信
託銀行と生駒データサービス株式会社)および STIX(提供元:住信基礎研究所株式会社)
が利用可能である。住宅投資の代替的なインデックスとして、RRPI(提供元:リクルート
株式会社と株式会社 IPD ジャパン)および KRRIX(提供元:ケンコーポレーション株式
会社、アットホーム株式会社、財団法人日本不動産研究所)などがある。
これらの代替的な不動産投資インデックスは、個別ビルのキャッシュフロー・データを
用いて計算されたものではない点には留意する必要がある。実際の不動産の賃料や価格な
どのデータを用いて、仮想のビル(あるいはサブマーケット)の賃料収入や価格などを統
計的な方法で推定したものであるという限界がある 5)。
【PG7】(基本)「不動産私募ファンドの位置づけの明確化」
【PG4】で定めたコア不動産ポートフォリオの資産特性を踏まえて、政策資産配
分上の不動産私募ファンドの位置づけを明確にすることが必要である。
* 不動産私募ファンドの位置づけとしては、以下の3つのケースが想定される。
① 独立した資産クラスとして、伝統的資産とともに最適化等を行い、政策資産配分
を決定する。
② タイプ①と同様、独立した資産クラスとして認識するが、すでに策定している伝
統的資産から構成される政策資産配分は動かさず、不動産私募ファンドの組入比
率を外枠で決定する。不動産私募ファンドの組入比率分だけ、伝統的資産の政策
資産配分を比例配分して減少させることになる。
5)
不動産投資インデックス関連の記述は、リスク管理フォーラム最終報告書の第5章第2節1「不動産イ
ンデックス」から、かなりの部分を引用した。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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③ 不動産私募ファンドをひとつの独立した資産クラスとは認識せずに、特定の伝統
的資産の内枠として考える。伝統的資産からなる政策資産配分は動かさず、その
資産クラス内で一定割合を配分する。
* 不動産私募ファンドにおいては、コア不動産ポートフォリオの範囲を確定するこ
とによって、不動産の期待リターン、リスクおよび他資産との相関を推計すること
が、一定程度可能になることから、定量的なアプローチも可能である。
【PG8】(基本)「投資枠の決定」
【PG7】で定めた政策資産配分上の位置づけに応じて、不動産私募ファンドの投
資枠を決定することが必要である。
<PG8-1>(基本)「期待リターン、リスク、相関係数の推計」
【PG6】で定めたベンチマークに基づいて、不動産私募ファンドの期待リター
ン、リスク(標準偏差)および他の資産との間の相関係数(①と②の場合は、他の
すべての資産、③の場合は、内枠とする資産との間の相関係数)を推計することが
必要である(ただし、上記パラメーターに関しては、保守的な推計、すなわち過去
データに基づく推計値よりも、リターンは低く、リスクは高く、相関係数は高く調
整することが望ましい)。
<PG8-1-1>(基本)「期待リターンの推計」
期待リターンの推計にあたっては、将来の希望的な観測に基づくものではな
く、コア不動産ポートフォリオの実績等を十分に踏まえたものとする必要がある。
<PG8-1-2>(努力)「リスクの推計」
リスクの推計にあたっては、鑑定評価の結果もたらされる不動産のリターンに
おける平準化バイアスの問題を考慮することが望ましい。
①「独立した資産と見なして、伝統的資産とともに政策資産配分を決定」の場合
<PG8-2①>(基本)「最適化計算と政策資産配分の決定」
<PG8-1>で推計した前提条件と他の伝統的資産に関する前提条件に基づい
て最適化計算を行った結果等を踏まえて、政策資産配分を決定することが必要であ
る。
②「独立した資産と見なして、伝統的資産間の政策資産配分の外枠で決定」の場合
<PG8-2②-1>(基本)「伝統的資産の政策資産配分の決定」
不動産私募ファンド以外の伝統的資産に関する政策資産配分は、あらかじめ決定
しておくことが必要である。
<PG8-2②-2>(基本)「外枠での組入比率の変化と全資産の特性の分析」
不動産私募ファンドの組入比率を伝統的資産クラスの外枠で変化させることによ
って、全資産のリスク・リターン特性の変化を分析することが必要である。
<PG8-2②-3>(基本)「投資枠の保守的な決定」
定性的な判断も加味して、不動産私募ファンドの投資枠を決定することが必要で
ある。ただし、保守的な設定が望ましい。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
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③「独立した資産とは見なさず、特定の伝統的資産の内枠で一定比率を配分」の場合
<PG8-2③-1>(基本)「内枠とする資産の決定」
どの資産の内枠とするかを検討のうえ、内枠とする資産を決定することが必要で
ある。
<PG8-2③-2>(基本)「資産特性の相違点の認識」
内枠とする伝統的資産と不動産私募ファンドの資産特性上の相違点を認識するこ
とが必要である。
<PG8-2③-3>(努力)「組入比率とトラッキングエラーのシミュレーション」
不動産私募ファンドの組入比率に応じて、その資産のベンチマークに対するトラ
ッキングエラーの変化をシミュレーションすることが望ましい。
<PG8-2③-4>(基本・努力)「投資枠の決定」
(シミュレーション結果を踏まえて、)投資枠を決定することが必要である。
<PG8-2③-5>(努力)「上限まで組み入れた場合の全資産のリスク量の確認」
投資枠の上限までヘッジファンドを組み入れた場合でも、全資産のリスクが運用
基本方針のリスク許容範囲内に収まることを確認することが望ましい。
<PG8-2③-6>(基本)「代替的役割の終了」
どのような条件のもとで、代替的な役割を終わらせるかをあらかじめ決定してお
くことが必要である。
<PG8-3>(基本)「過大な投資枠設定の回避」
<PG8-2①>~<PG8-2③>のどのケースにおいても、不動産のリスク特性
を十分に考慮したうえで、過大な投資枠を設定しないことが必要である。
<PG8-4>(努力)「最悪シナリオの想定」
不動産私募ファンドの投資枠は、過去の実績等から想定される最悪のケースに耐
え得るものになっていることが望ましい。
【PG6】において不動産私募ファンドに関するベンチマークを設定した後の投資枠設
定プロセスは、基本的にヘッジファンドの場合と変わりはない。【PG7】における①~
③の位置づけを決定したうえで、【PG8】のような手順で投資枠(政策資産配分上の組
入比率の上限)を決定していくプロセスが示されている。
2.実行段階に関するガイドライン
次に、実行段階(ファンドの選定段階)においては、(1)ファンド選定(①マネージャ
ー選定と②不動産私募ファンドのガバナンスの2段階)、(2)利益相反的行為の排除、(3)
投資金額の決定、(4)運用ガイドラインの策定、という4段階のプロセスのもとでガイド
ラインが示されている。このように、不動産私募ファンド編においては、ファンドのガバ
ナンスと利益相反的行為の排除に関する項目が追加されている点に特徴が見られる。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
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(1)ファンド選定
1)マネージャー選定 6)
不動産私募ファンドへの投資にあたっては、信託銀行あるいは投資顧問会社がゲートキ
ーパーとなるケースが一般的である。また不動産私募ファンドの選定については、ゲート
キーパーが主体的に選定を行う場合と、年金スポンサーが選定に一定程度関与する場合が
ある。
年金スポンサーがゲートキーパーに運用者の選定をほぼ一任する場合には、年金スポン
サーにとってはゲートキーパーの選定が重要な意思決定となる。その際には、【PG10】
に示されているようなガイドラインにしたがって適切にゲートキーパーの選定を行うこと
が重要となる。一方、年金スポンサーが運用者の選定に際してある程度主体的な関与を行
う場合には、【PG11】に示されているような運用者の選定に関するチェック項目にも留
意する必要がある。
【PG9】(基本)「不動産私募ファンドのマネージャー選定」
不動産私募ファンドの選定にあたっては、まずマネージャーの選定を行う必要があ
るが、その際、不動産私募ファンドに投資を行うゲートキーパーと、不動産私募ファ
ンドの運用者をそれぞれ選定する必要がある。
<PG9-1>(基本)「ゲートキーパーの役割の明確化」
ゲートキーパーには、不動産私募ファンドの運用状況をチェックする役割が求め
られており、事前にゲートキーパーの役割と責任を明確にする必要がある。
【PG10】(基本)「ゲートキーパーの選定」
ゲートキーパーの選定にあたっては、ゲートキーパーに求める役割と責任の遂行が
可能なだけの専門性および実行力を有しているかを確認する必要がある。
<PG10-1>(基本)「不動産に関する専門性」
ゲートキーパーが不動産の市場動向、立地、地盤、建築・設計、権利関係等に関
する専門的知識をどの程度有しているかチェックする必要がある。不動産私募ファ
ンド運用者がこれら不動産のリスクを見落としたり、実際より小さく見積もったり
する可能性があるからである。取得物件の価格チェックに関する見識は、特に重要
である。
<PG10-2>(基本)「ストラクチャリングに関する専門性」
ストラクチャー上のリスクを排除するために、ゲートキーパーがファンド組成に
おける法律・税務等に関する専門知識をどの程度有しているかチェックをする必要
がある。
6)
ここで、マネージャーとは、不動産私募ファンドの運用者および不動産私募ファンドの選定者すなわち
ゲートキーパーの両方を包含する概念として使っている。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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<PG10-3>(基本)「定量評価」
ゲートキーパーの過去のトラックレコードから、ゲートキーパーとしてのファン
ド選定能力をチェックする必要がある。
<PG10-4>(基本)「組織・体制」
ゲートキーパーに期待される役割と責任を果たすために必要と考えられる組
織・体制が整備されているかどうか、また当該ファンドへの投資にあたって、ゲー
トキーパーの立場からどの程度の主体的な調査・判断を行っているのかについてチ
ェックする必要がある。
<PG10-5>(基本)「コンプライアンス体制」
不動産私募ファンド投資家の利益とゲートキーパーないし不動産私募ファンド
運用者の利益が対立する可能性について、ゲートキーパーが的確なコンプライアン
ス上の管理体制を備えているかどうかをチェックする必要がある。
【PG11】(基本)「不動産私募ファンド運用者の選定」
年金スポンサー自らが不動産私募ファンドの選定に関与する場合には、事前に定め
たチェック項目に従って選定を行うことが必要である。
<PG11-1>(基本)「不動産に関する専門性」
不動産のリスクを適切に把握し、将来のキャッシュフローを確実なものにするた
めに、不動産私募ファンド運用者が、不動産の市場動向、立地、地盤、建築・設計、
権利関係等に関する専門的知識をどの程度有しているかをチェックする必要があ
る。
<PG11-2>(基本)「物件調達力」
優良な不動産物件を効率的に取得することは不動産私募ファンドのパフォーマ
ンスに直結することから、不動産私募ファンド運用者が、不動産物件の調達につい
て、独自のネットワークあるいは強みをどの程度有しているかをチェックする必要
がある。
<PG11-3>(基本)「ストラクチャリング力」
ストラクチャー上のリスクを排除するために、不動産私募ファンドの運用者がフ
ァンド組成に関する法律や税務上の問題等に関する専門知識をどの程度有している
かをチェックする必要がある。
<PG11-4>(基本)「運用哲学」
不動産私募ファンド運用者の運用能力を明らかにするために、超過収益の源泉を
明確にし、それが運用者の運用哲学と一貫しているかをチェックする必要がある。
<PG11-5>(基本)「定量評価」
不動産私募ファンド運用者の過去のトラックレコードから、運用者の運用能力を
チェックする必要がある。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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<PG11-6>(基本)「プロパティマネジメント力」
不動産のキャッシュフローを安定化あるいは向上させる能力があるかどうかを
確認するために、不動産私募ファンド運用者のプロパティマネジメント力(適正賃
料で高稼働率を維持する能力、建物・設備を効率的に維持管理する能力等)の有無
をチェックする必要がある。
<PG11-7>(基本)「組織・体制」
不動産私募ファンドの運用スタイルの維持あるいは超過収益の源泉を確保する
ために必要と考えられるだけの組織・体制が整備されているかどうか、また、当該
ファンドの運用を実際に担当しているかどうかをチェックする必要がある。
<PG11-8>(基本)「コンプライアンス体制」
不動産私募ファンド投資家の利益と不動産私募ファンド運用者の利益が対立す
ることを極力回避するために、不動産私募ファンド運用者の内部におけるコンプラ
イアンス体制の整備状況をチェックする必要がある。
2)不動産私募ファンドのガバナンス
不動産私募ファンドは、採用しているビークルによって、投資家の意向が反映できる度
合いが異なる。匿名組合出資形態において、匿名組合出資者が不動産物件の売買等につい
て何らかの意思決定を行った場合には、その出資者は営業者と見なされ兼ねず、導管性を
否認されるリスクもある。そこで、【PG12】において、不動産私募ファンドのガバナン
スに関するガイドラインを設けている。
【PG12】(基本)「不動産私募ファンドのガバナンス」
不動産私募ファンドはファンドによって、投資家の意向を反映できる度合いが異な
ることから、年金スポンサーの運用基本方針や運用ガイドラインを踏まえて、ファン
ドのリーガル・ストラクチャーを十分に確認する必要がある。
(2)利益相反的行為の排除
不動産私募ファンドにおいては、ゲートキーパーもしくはファンド運用者が、投資家で
ある年金スポンサーと利益相反的な立場に置かれている場合があり得る。ゲートキーパー
もしくはファンド運用者がローンレンダー、仲介業者、不動産物件の前所有者、不動産管
理処分信託受託者を兼任しているようなケースでは、それぞれの立場としての利害のため
に、投資家である年金スポンサーの利益だけを考慮して行動できない可能性が出てくる。
そのため、【PG13】において、ゲートキーパーもしくはファンド運用者が実際に以上
のような利害相反的な立場に置かれているかどうかをチェックしたうえで、いずれかのケ
ースに該当する場合には、<PG13-1>~<PG13-4>に提示されているガイドラインを
踏襲するよう求めている。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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【PG13】(基本)「利益相反的行為の排除」
ゲートキーパーおよび不動産私募ファンド運用者が、ファンドの利益と相反する立
場に身を置いていないかを確認する必要がある。また、このような恐れがある場合に
は、利益相反的行為の回避策を含めた報告を求める必要がある。
<PG13-1>(基本)「ローンレンダーの兼任」
ゲートキーパーまたはその実質的な支配会社が、不動産私募ファンドのローンレ
ンダーを兼任する場合は、ローン条件およびローンレンダーによるテール期間(フ
ァイナンス延長期間)での不動産売却の意思決定がファンドの利益と対立する可能
性がないことを確認する必要がある。
<PG13-2>(基本)「仲介業者の兼任」
ゲートキーパー、不動産私募ファンドの運用者、または彼らの実質的な支配会社
が、不動産私募ファンドの運用において、不動産または不動産信託受益権の取得・
売却の仲介業者、ないし不動産物件の賃貸借を行う際の仲介業者を兼任する場合に
は、当該取引に伴って発生する仲介手数料の水準の妥当性とともに、売買ないし賃
貸条件について不動産私募ファンドの取引の相手方の意向が一方的に反映されてい
ないことを確認する必要がある。
<PG13-3>(基本)「前所有者の兼任」
ゲートキーパーや不動産私募ファンド運用者、または彼らが実質的に支配する会
社か実質的に運用するファンドが、取引の対象となる不動産物件の前所有者となる
場合には、取得物件の適格性の判断および取得価格の設定がファンドの利益と対立
する可能性がないことを確認する必要がある。
<PG13-4>(基本)「不動産管理処分信託受託者の兼任」
ゲートキーパーとなる信託銀行が、不動産私募ファンドで取得する不動産管理処
分信託受託者を兼任する場合には、不動産管理処分信託受託者として有する契約上
の権限および信託報酬の設定がファンドの利益と対立する可能性がないことを確認
する必要がある。
(3)投資金額の決定
【PG14】(基本)「投資金額の決定」
不動産私募ファンドへの投資金額の決定にあたっては、コア不動産ポートフォリオ
およびノンコア不動産ポートフォリオへの資産配分額と分散状況を踏まえたうえ
で、適切な投資額を決定する必要がある。なお、不動産私募ファンドの最低投資可能
額に照らして、複数の不動産私募ファンドへ適正に分散することがむずかしい場合
は、実際に投資を行う不動産私募ファンドにおいてコア不動産ポートフォリオで想定
した投資対象ユニバースを極力カバーできるようなファンド選定を行う必要がある。
ゲートキーパーないしファンド運用者を決定した後は、【PG4】ないし【PG5】に
おいて決定したコア不動産ポートフォリオおよびノンコア不動産ポートフォリオに関する
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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基本方針とできるだけ整合的な形で各ファンドに対する投資金額を決定することが必要と
なる。その際のガイドラインを【PG14】に示した。
(4)運用ガイドラインの策定
ヘッジファンドの場合には、運用者が年金スポンサーに限らず、投資家の意向を踏まえ
て投資方針を修正することは、事実上、それほど期待できないという認識のもとで、ヘッ
ジファンドの運用者から既存の運用方針を入手したうえで、必要に応じて修正の要請を行
うという手順が示されていた。
これに対して、不動産私募ファンドの場合には、年金スポンサーがゲートキーパーと協
議のうえ、ある程度主体的な形でファンド運用者に運用ガイドラインを提示するよう求め
ている。ガイドラインに盛り込むべき具体的な項目についても、<PG15-1>~<PG15
-7>に示されている。
【PG15】(基本)「運用ガイドラインの策定」
不動産私募ファンドの特徴を把握したうえで、ゲートキーパー等と十分な協議を行
って運用ガイドラインを策定し、これを不動産私募ファンド運用者に提示する必要が
ある。
<PG15-1>(基本・努力)「投資スタイルごとの収益の源泉の明確化」
収益の源泉を明らかにし、投資スタイル(コア、バリューアディッド、オポチュ
ニスティック等)を指定する必要がある(基本)。また、それぞれの投資スタイルに
おいては、トータルリターンに占めるインカムゲイン部分とキャピタルゲイン部分
の割合を合理的な水準とすることが望ましい(努力)。
<PG15-2>(基本)「投資対象ユニバース(地域・用途・築年等)」
投資対象ユニバース(地域・用途・築年等)について、指定することが必要であ
る。
<PG15-3>(基本)「ベンチマーク」
投資スタイルや投資対象ユニバースを考慮して、ベンチマークを設定することが
必要である。ただし、ベンチマークが十分に整備されていない場合には、事業計画
書等に表示されるキャッシュフロー計画をベンチマークとして代替することは差し
支えない。
<PG15-4>(基本)「投資スキーム」
法務・税務面の検証を行ったうえで、投資スキームを指定する必要がある。
<PG15-5>(基本)「レバレッジ戦略」
投資スタイルに合致したレバレッジ戦略であることを確認する必要がある。
<PG15-6>(基本)「ディスクローズ」
運用報告の内容およびその頻度について、事前に明確にする必要がある。
<PG15-7>(基本)「時価評価」
投資期間中の時価評価の有無およびその方法について、明確にする必要がある。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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3.モニタリング段階に関するガイドライン
最後に、モニタリング段階においては、(1)モニタリングと(2)今後の運用方針に関
する運用機関との協議、という2段階のガイドラインが示されている。ヘッジファンドの
場合には、運用成果についてモニタリングを行った結果、運用体制に不備があるなどの理
由で、運用契約を解約するケースが十分に想定される。そのため、ヘッジファンドに関す
るガイドラインでは、モニタリングの後に、リバランスという項目を設定した。
しかしながら、不動産私募ファンドの場合には、運用契約を途中で解除することは事実
上困難であり、強行しようとするとコスト的にも負担が大きくなり兼ねない。そのため、
モニタリングの後には、今後の運用方針について協議を行い、必要に応じて運用内容の是
正を要請するなどの構成になっている。
(1)モニタリング
【PG16】(基本)「モニタリングの実施」
不動産私募ファンドの投資プロセスにおける計画段階および実行段階で設定した
不動産私募ファンドの目標数値と実際の数値を比較することが必要である。また、運
用状況に基づいて、実際の運用が運用ガイドライン通りに行われているかどうかを確
認する必要がある。
<PG16-1>(基本)「定量的モニタリング」
不動産私募ファンドのパフォーマンスの要因分析は、ストラクチャーによる財務
収益と不動産収益に分解して行う必要がある。
<PG16-1-1>(基本)「財務収益」
財務レバレッジ付きの不動産私募ファンドについては、レバレッジに関わる財
務収益を把握するとともに、金利変動に伴うリスクについても認識する必要があ
る。
<PG16-1-2>(基本)「不動産収益」
不動産収益については、市場要因と個別要因の分析をしたうえで、運用者の能
力を評価する必要がある。
<PG16-1-3>(努力)「時価評価」
運用期間中の時価評価が恣意的に行われていないかどうかを確認することが
望ましい。
(2)今後の運用方針に関する運用機関との協議
【PG17】(基本)「今後の運用方針に関する運用機関との協議」
モニタリング結果を踏まえて、実際の数値の目標数値との乖離やガイドラインから
の逸脱がある場合には、是正に向けた対応策を運用機関からヒアリングする必要があ
る。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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Ⅲ.REITファンド編
1.計画段階に関するガイドライン
REIT ファンドに関しても、計画段階においては、(1)REIT ファンドの導入目的の明
確化、(2)REIT ファンドの特徴とリスクの把握、(3)主たる投資対象の決定、(4)政
策資産配分上の投資枠の決定、という4段階のプロセスが想定されている。
(1)REITファンドの導入目的の明確化
【RG1】(基本)「REITファンドの導入目的の明確化」
REIT ファンドを新たな資産クラスとして加える場合には、この資産クラスに何を
期待するのか(導入目的)をあらかじめ明確にしておくことが必要である。
導入目的としては、以下のケースが想定される。
① ポートフォリオのリターン向上
② 分散投資効果
ここでは、年金スポンサーが想定する投資目的自体に優劣をつけるものではなく、
それぞれの目的においての留意点を記載する。
<RG1-1>(基本)「ポートフォリオのリターン向上を導入目的とする場合の留意
点」
ポートフォリオのリターン向上を目的にする場合は、リスクの所在を認識すると
ともに、ポートフォリオ組み入れ時におけるリスク分散効果について把握すること
が必要である。
<RG1-2>(基本)「分散投資効果を導入目的とする場合の留意点」
分散投資効果を期待する場合は、平均分散法等による分析により、分散効果の有
無を確認することが必要である。
このセクションでは、不動産私募ファンドにおける導入目的の①と②が、REIT ファンド
へ投資する場合にも適用可能な論点として掲載されている。
(2)REITファンドの特徴とリスクの把握
【RG2】(基本)「REITファンドの特徴とリスクの把握」
REIT ファンドへの投資にあたっては、REIT の商品性とともに REIT が投資して
いる不動産の特徴とリスクについても認識する必要がある。
<RG2-1>(基本)「価格変動リスク」
REIT は日々市場で取引されるため、市場参加者の思惑から、将来の不動産価格
やキャッシュフローの見通しから合理的に推測される範囲を超えて、価格が変動す
る可能性があることを認識する必要がある。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
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<RG2-2>(基本)「不動産固有のリスク」
REIT が保有する不動産には、物件または権利の瑕疵が存在することがあり、ま
た自然災害によりその価値が大きく毀損する可能性もあることから、REIT ファン
ドへの投資にあたっては不動産固有のリスクについても十分に認識する必要があ
る。
<RG2-3>(基本)「財務リスク」
REIT では負債による資金調達を行っていることから、それぞれの REIT が財務
戦略において異なる金利リスクを伴っていることを認識する必要がある。
<RG2-4>(基本)「法制度・税制変更等によるリスク」
REIT および不動産に関する法制度ならび税制の変更が、REIT の価格に影響を
及ぼす可能性があること、また投資法人の倒産や上場廃止等により投資額の回収が
困難になる可能性があることを認識する必要がある。
<RG2-5>(基本)「各国のREIT市場の状況認識」
海外においては REIT 市場が存在しない国や REIT 市場が創成期にある国もある
など、銘柄分散や流動性などにおいて限界がある点について十分に認識することが
必要である。
図1
J-REITのスキーム図
資産運用
業務の委託
投資信託委託業者
投資信託委託業者
(アセットマネジメント会社)
J-REIT
ローン供与
金融機関
金融機関
(投資法人)
(アセットマネジメント会社)
借入金
資産運用
指図
一般事務・資産保管
業務の委託
不動産管理会社
不動産管理会社
(プロパティマネジメント会社)
(プロパティマネジメント会社)
賃料
投資法人債
投資法人債
の投資家
の投資家
出資
投資家
投資家
(投資主)
(投資主)
投資証券
配当(分配金)
証券市場
)
不動産の
不動産の
売主・買主
売主・買主
不動産売買
出資金 投(資口
テナント
テナント
投資法人債
不動産管理
業務の委託
保有不動産
一般事務受託者
一般事務受託者
資産保管会社
資産保管会社
投資法人債
購入
他の投資家
他の投資家
(出所)『図解不動産証券化のすべて』三菱 UFJ 信託銀行不動産コンサルティング部
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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図1には、J-REIT を例にとって、REIT の仕組みが簡略化されて示されている。
投資家が REIT に投資して投資証券を受取り、そこから配当(分配金)を受取ったり、
REIT 市場(証券市場)を通じて投資証券の売買を行ったりする仕組みになっている。これ
が REIT を株式に例えることができる所以である。その結果、REIT 価格の変動に応じて、
価格変動リスクが生じる点が<RG2-1>に示されている。
また、REIT は不動産投資することが主要業務である法人であると位置づけることができ
る。そのため、REIT に投資した場合には、間接的に不動産市場へ投資したことになり、物
件または権利の瑕疵や自然災害による価値の毀損等、不動産固有のリスク要因が発生する。
この点が<RG2-2>に示されている。
一方、REIT では、投資家からの出資金ばかりでなく、金融機関からのローン供与や投資
法人債の発行などの資金調達を通じて、レバレッジをかけて運営することが一般的である。
そのため、資金調達方法によって異なる財務リスク(金利リスク)を負っていることが<R
G2-3>に示されている。
さらに、<RG2-4>では、法制度や税制の変更が将来起こった場合には、REIT 価格に
何らかの影響が生じ得ること、<RG2-5>では、株式と比べると、REIT 市場の各国への
広がりは限定的なため、国際分散投資などの点で一定の限界があることが REIT へ投資す
る場合の留意事項として指摘されている。
(3)主たる投資対象の決定
REIT の実態は不動産投資会社であり、リスク・リターンの水準は株式に類似している一
方、インカム利回りの高さなどから債券的な特徴も有している。一般に、伝統的資産運用
にあたっては、為替リスクを考慮し、国内資産と外国資産を異なる資産クラスで管理して
おり、REIT ファンド投資においても同様の手法が考えられる。ただし、国内における市場
規模が現時点では必ずしも大きくないことから、グローバル REIT として一体の資産クラ
スで管理することを否定するものではない。
このような観点から見ると、REIT ファンドへの投資に当たっては、投資対象地域を決定
することが最も重要な意思決定事項となる。
【RG3】(基本)「REITファンドの投資対象の決定」
REIT ファンドの政策資産配分を決定するために、REIT ファンドの投資対象を決
定する必要がある。
<RG3-1>(基本)「投資対象地域」
REIT ファンドの投資対象地域を決定する必要がある。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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(4)政策資産配分上の投資枠の決定
REIT ファンドに関する投資枠の決定プロセスにおいても、基本的には、ヘッジファンド
や不動産私募ファンドと同様の手順が示されている。
【RG4】(基本)「ベンチマークの設定」
REIT ファンドの資産特性や投資対象を踏まえて、適切なベンチマークを設定する
ことが必要である。
<RG4-1>(基本)「ベンチマーク・インデックス」
投資対象地域に見合ったベンチマーク・インデックスを設定する必要がある。
<RG4-2>(基本)「投資対象地域」
グローバル REIT インデックスの中には、REIT のみならず不動産会社株式を含
めるものもあることを認識することが必要である。
REIT ファンドの場合には、REIT 市場の存在する地域ごとに REIT インデックスが作成
されていることが大半のため、既存の REIT インデックスをベンチマークとして採用する
ことが一般的である。しかしながら、海外の REIT インデックスには、REIT ばかりでなく、
不動産会社の株式もインデックスの算出対象に含まれるケースがあるので注意する必要が
あると<RG4-2>において指摘されている。
【RG5】(基本)「REITファンドの位置づけの明確化」
【RG3】で定めた REIT ファンドの主たる投資対象の資産特性を踏まえて、政策
資産配分上の REIT ファンドの位置づけを明確にすることが必要である。
* REIT ファンドの位置づけとしては、以下の2つのケースが想定される。
① 独立した資産クラスとして、伝統的資産とともに最適化等を行い、政策資産配分
を決定する。
② REIT ファンドをひとつの独立した資産クラスとは認識せずに、特定の伝統的資産
の内枠として考える。伝統的資産からなる政策資産配分は動かさず、その資産ク
ラス内で一定割合を配分する。
ヘッジファンドや不動産私募ファンドの場合には、独立した資産クラスと見なした場合
に、外枠方式という選択肢が含まれていた。これは、ヘッジファンドや不動産私募ファン
ドの場合には適切なベンチマーク・インデックスを見つけることがむずかしいことが少な
くないため、平均分散法等に基づく最適化プロセスの実施が必ずしも容易でないことを反
映している。しかしながら、REIT ファンドの場合には、REIT インデックスをベンチマー
クとして設定することが容易であるため、外枠方式を採用する必要性は乏しいと考えられ
る。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
ます。当社の事前の承諾なく複製または転送することを禁じます。
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【RG6】(基本)「投資枠の決定」
【RG5】で定めた政策資産配分上の位置づけに応じて、REIT ファンドの投資枠
を決定することが必要である。
<RG6-1>(基本)「期待リターン、リスク、相関係数の推計」
【RG4】で定めたベンチマークに基づいて、REIT ファンドの期待リターン、
リスク(標準偏差)および他の資産との間の相関係数(①の場合は、他のすべての
資産、②の場合は、内枠とする資産との間の相関係数)を推計することが必要であ
る。
①「独立した資産と見なして、伝統的資産とともに政策資産配分を決定」の場合
<RG6-2①>(基本)「最適化計算と政策資産配分の決定」
<RG6-1>で推計した前提条件と他の伝統的資産に関する前提条件に基づい
て最適化計算を行った結果等を踏まえて、政策資産配分を決定することが必要であ
る。ただし、インデックスの期間が十分でない場合は、定量的なアプローチからの
みの最適化の信頼度が低下することから、定性的な要因も加味して投資枠を決定す
る必要がある。
②「独立した資産とは見なさず、特定の伝統的資産の内枠で一定比率を配分」の場合
<RG6-2②-1>(基本)「内枠とする資産の決定」
どの資産の内枠とするかを検討のうえ、内枠とする資産を決定することが必要で
ある。
<RG6-2②-2>(基本)「資産特性の相違点の認識」
内枠とする伝統的資産と REIT ファンドの資産特性上の相違点を認識することが
必要である。
<RG6-2②-3>(努力)「組入比率とトラッキングエラーのシミュレーション」
REIT ファンドの組入比率に応じて、その資産のベンチマークに対するトラッキ
ングエラーの変化をシミュレーションすることが望ましい。
<RG6-2②-4>(基本・努力)「投資枠の決定」
(シミュレーション結果を踏まえて、)投資枠を決定することが必要である。
<RG6-2②-5>(努力)「上限まで組み入れた場合の全資産のリスク量の確認」
投資枠の上限まで REIT ファンドを組み入れた場合でも、全資産のリスクが運用
基本方針のリスク許容範囲内に収まることを確認することが望ましい。
<RG6-2②-6>(基本)「代替的役割の終了」
どのような条件のもとで、代替的な役割を終わらせるかをあらかじめ決定してお
くことが必要である。
投資枠の決定プロセスそのものは、外枠方式が外れている以外は、ヘッジファンドや不
動産私募ファンドの場合とほぼ同様である。
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2.実行段階に関するガイドライン
次に、実行段階では、(1)マネージャー選定、(2)投資金額の決定、(3)運用ガイド
ラインの策定、という3段階のプロセスのもとでガイドラインが示されている。REIT の場
合には、不動産私募ファンドと比べて、利益相反的行為の発生する可能性が小さいことか
ら、不動産私募ファンド編に含まれていたいくつかの条項が省略されている。
(1)マネージャー選定
【RG7】(基本)「マネージャー選定」
伝統的資産と同様、定性・定量の両面からマネージャーの評価を行い、運用機関を
選定することが必要である。
<RG7-1>(基本)「運用哲学・プロセス」
REIT の資産特性や市場の状況に即した運用哲学・プロセスを採用しているかを
確認する必要がある。
<RG7-2>(基本)「運用実績・ファンド規模」
REIT ファンドの運用実績やファンド規模について確認することが必要である。
運用実績に関しては、アクティブファンドであれば、超過収益の源泉が運用哲学に
基づくものであるか、ファンド規模に関しては、運用額の増額があっても、引き続
き運用コンセプトを維持することが可能であるかについて確認する必要がある。
<RG7-3>(基本)「運用体制」
REIT に関するリサーチ体制およびファンドマネージャーの経験について確認す
る必要がある。特にリサーチ体制については、REIT 専任のアナリストを採用して
いるか、不動産セクターのアナリストが兼務する体制かを確認する必要がある。ま
た、海外の REIT を運用対象とする場合は、グローバルなリサーチ体制についても
確認する必要がある。
<RG7-4>(基本)「リスク管理」
REIT ファンドのリスク管理手法について確認する必要がある。伝統的資産と同
様にトラッキングエラー等の管理が可能かどうかについて、確認する必要がある。
REIT ファンドの場合には、投資対象が不動産そのものではなく、REIT という株式類似
商品のため、マネージャー選定においては、伝統的な運用機関の採用プロセスと類似した
チェック項目が設けられている。また、REIT ファンドでは、ファンドの組成者が自分の関
与している不動産物件をポートフォリオに組入れることなどから生じる利益相反的行為の
可能性を考慮する必要性が少ないため、不動産私募ファンド編のガイドラインよりも、実
行段階のプロセスが簡略化されている。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
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(2)投資金額の決定
【RG8】(基本)「投資金額の決定」
REIT ファンド全体への資産配分額と分散可能性を踏まえたうえで、各ファンドへ
の適切な投資金額を決定することが必要である。
(3)運用ガイドラインの策定
【RG9】(基本)「運用ガイドラインの策定」
REIT ファンドの資産特性を把握したうえで運用ガイドラインを策定し、これを運
用者に提示する必要がある。
<RG9-1>(基本)「投資対象ユニバース」
REIT ファンドの投資対象を決定する必要がある。国内の REIT のみを投資対象
にするのか、海外の REIT を含めるのか決定したうえで、海外 REIT にも投資を行
う場合には、投資対象国を確認する必要がある。
<RG9-1-1>(基本)「不動産会社株式」
特に海外 REIT ファンドへ投資する場合には、投資対象とする REIT 市場なら
びに不動産会社株式の組み込みの是非について決定する必要がある。
<RG9-1-2>(努力)「流動性」
投資対象とする REIT 市場の決定に際しては、その市場の規模や流動性などを
勘案することが望ましい。
<RG9-2>(基本)「ベンチマーク」
投資対象ユニバースを考慮し、ベンチマークを設定することが必要である。
<RG9-3>(基本)「投資スタイル」
REIT ファンドのベンチマークに対する期待超過リターン(ただし、アクティブ
運用の場合)およびリスクを指定する必要がある。
<RG9-4>(基本)「ディスクローズ」
REIT ファンドの運用報告について、その頻度や運用評価基準、リスク管理指標
などを事前に確認する必要がある。
<RG9-5>(基本)「運用報酬」
REIT ファンドの運用報酬については、固定報酬か成功報酬かの別、およびその
体系を確認する必要がある。また、料率の設定方法が運用スタイルに照らして妥当
かどうかについて事前に検討する必要がある。
REIT ファンドに関しても、採用することに決定した運用機関に対して運用ガイドライン
を策定して、これを提示することを求めており、その中に盛り込むべき項目を<RG9-1
>以下で整理している。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
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3.モニタリング段階に関するガイドライン
最後に、モニタリング段階においては、不動産私募ファンドの場合と同様、(1)モニタ
リングと(2)今後の運用方針に関する運用機関との協議、という2段階のガイドラインが
示されている。
(1)モニタリング
【RG10】(基本)「モニタリングの実施」
REIT ファンドの投資プロセスにおける計画段階および実行段階で設定した REIT
ファンドの目標数値と実際の数値を比較することが必要である。また、運用状況に基
づき、実際の運用が運用ガイドライン通りに行われているかを確認する必要がある。
(2)今後の運用方針に関する運用機関との協議
【RG11】(基本)「今後の運用方針に関する運用機関との協議」
モニタリング結果を踏まえて、実際の数値の目標数値との乖離やガイドラインから
の逸脱がある場合には、是正に向けた対応策を運用機関からヒアリングする必要があ
る。
当レポートに記載された内容は作成時点のものであり、正確性や完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあり
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【重要な留意事項】
本資料に記載した情報に基づき当社とお取引いただく場合は、次の事項に十分ご注意く
ださい。
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産または投資顧問契約におけるご提供するサービス内容、投資顧問契
約に基づき当社が分析する運用機関の会社数、分析対象の運用資産の
種類等によりお客様と個別に協議させていただいた上、決定いたしま
す。
また、お客様のご依頼により遠隔地に出張する場合、出張旅費等の実
費を投資一任契約または投資顧問契約に基づきご請求させていただく
ことがあります。この場合、その他費用等の総額を事前に明示するこ
とはできません。
● 投資一任契約または投資顧問契約により運用または助言する有価証券
等についてのリスクは、次のとおりです。
・ 金利水準、為替相場、株式相場、不動産相場、商品相場、その他
の指標等の変動、有価証券等の発行者の経営・財務状況の変化等に
伴い、当該有価証券等の市場価格が変動し、また、その支払いを
受けられなくなることがあるため、投資元本を割り込んだり、そ
の全額を失うことがあります。
・ さらに、信用取引や有価証券関連デリバティブ取引を用いる場合
においては、委託した証拠金を担保として、証拠金を上回る多額
の取引を行うことがありますので、上記の要因により生じた損失
の額が証拠金の額を上回る(元本超過額が生じる)ことがありま
す。
当社とのお取引に際しては、必ず契約締結前書面等をよくお読みになり、
お客様のご判断と責任に基づいてご契約ください。
商号等
株式会社 大和ファンド・コンサルティング
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 843 号
加入協会
社団法人日本証券投資顧問業協会