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トマト果実品質の改善
正確な根域管理による果実の生理障害の低減
実用的な養液栽培と温室に関する6つの記事の5つ目として、グロダンの栽培コンサルタント
Andrew Leeが、トマトの周年栽培においていくつかの生理障害がなぜある期間に発生しや
すいのか、その理由と過程を述べます。
果実の品質が最も影響を受けるのはいつでしょうか?
トマトの果実は 24 時間温度が高い(23℃以上)場合や気候条件が日々、或いは日没後湿度が高くな
り変動する場合に様々な種類の品質上の障害を最も受けやすくなります。この時期に吸水量や受光量の
違い、温度、湿度、環境要因から作物や果実が受けるストレスは大きくなります。
これらの理由から、気候が作物の水分利用に、どのような影響を与えるかを理解しておくことが重要
となります(これについては Practical Hydroponics & Greenhouse Jul-Aug 2009 でも述べられていま
す)。このため、培地機能の基礎を理解することが重要であり、グロダン培地は気候に応じて EC と水分
率を安定させたり、入れ替えたり、変更させたりすることが出来るように設計されています。また、収
穫物の販売(大きさと品質)と生産目標(kg/m2)に合わせた計画を立てることも重要です。
4 本の基本の柱である計画、均一性、強さ、バランスに基づいて、植物は極端な温度でも十分対応で
き、日射量の少ない時期においても樹勢を保ち安定した生育を促進していくべきです。また、もう一つ
重要な事として、必要な管理情報を与える環境制御コンピューターや測定ツールのようなシステムを最
大限に利用することも重要です。
前回の記事(「水分管理と EC 管理」)では、気候条件の変化に関係する果実品質への影響や培地内
EC を安定させ、かつ操作する方法について触れながら、潅液の開始時間と停止時間の最適な設定の仕
方を述べました。
今回は、この知識によって得られる利益と、この知識を如何にして会社の収益改善のために利用でき
るかについて述べます。特に、トマトの最も一般的な果実の生理障害である尻腐れ(BER)と着色ムラ
1
(すじ腐れ)の 2 つに着目します。さらに、これらの問題の軽減に役立つ、培地管理と組み合わせた話
題も提供します。
知識は力
世界のさまざまな地域を旅行していると、栽培者から共通したフレーズを繰り返し聞きます。 ここ
は○○と違う、私達は○○とは同じではないからそれはできない、○○にあるものとは同じではない。
これは私には驚くべきことです。たいてい、次のように私は返答します。 我々はみな同じ光源、同じ
成分の水と肥料で栽培しており、どこであろうが植物は同じ方法で糖を同化・異化しているということ
は驚くべきことではありません。オランダ、メキシコ、オーストラリア、カナダ、フランス、ポーラン
ドのどこであっても、多くの場合は同じ種苗会社の同じ品種を使用しており、たいてい温室は同じ建設
会社により建設されています。そうすると、地域毎に違いはあるのでしょうか
栽培者ごとで植物生理の知識(たとえば、光合成、呼吸と蒸散)や、この知識を地場の気候条件(24
時間温度、暖房、換気、潅水方法)に合わせた栽培計画や、作物に適用する方法へ違いが出てきます。
このアプローチによって、栽培者は地場での生産を最適な状態にすることが出来るようになります。し
かしながら、もし生産物の大部分が廃棄となってしまったら、65‐70kg/m2 を生産する上でのポイント
は何になるでしょうか?経営に収益をもたらすのは、マーケットで販売できる品質の良い収穫果実です。
温室から生産された量ではなく、出荷場からの果実の出荷量に目を向けるべきです。房取りトマトを 65
‐70kg/m2 生産した場合の好ましい廃棄の量は 2‐5%までです。あなたの菜園ではこの値と比較してど
うなるでしょうか?
果実品質を向上させれば、経営の他の部分の生産性も改善されるでしょう。経営における大きなコス
トは労務費であり、少なくとも収穫や包装にかかるコストではありません。指針としては、温室内で房
取りトマトの収穫と選果を行い 5kg の市場箱に詰める作業を、350‐450kg/hr の速さとなるようにすべ
きです。もし果実の品質が悪ければ、この作業速度は 30‐40%悪化します(表 1)。同じように、出荷
場でこれらの箱の重量を計量する場合、自動機械を用いて 1800‐2000kg/hr の速さを目指すべきです。
品質上に問題があると、この速度は 50%かそれ以上に悪化します。
表 1. オランダの高品質な房取り大玉トマトにおける収穫、選果、包装の速度
※
計量と積み重ね
350‐450 kg/hr
1800‐2000 kg/hr
温室内での収穫と選果
※
オランダの温室での速度であり、図 1 に示した 1 週間の生産量/m2 によって変わります。この値は 1 週間の
収穫量がおおよそ 2.0kg/m2 と仮定しています。
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図 1.
週数
[kg/m 2 ]
1 週間の収赫量
積算収穫量[kg/m 2 ]
積算収穫量[kg/m2]
一週間の収穫量
1 週間および積算の収穫量変化(接木・ピンチ苗トマト Emprador、2009 オランダ)
リスクが増加する時間
果実品質の問題がどのように、いつ、なぜ生じるのかを説明するためにグロダン 6 フェーズモデルを
用いました(前々号「グロダン 6 フェーズモデルによる根域環境の操作」)。
尻腐れ(BER)
BER はおそらく果実の生理障害の中で最も一般的です。果実の先端が黒色化するのが症状の特徴で
す(写真 1)。BER は突然、広範囲で生じ、しばしば収益に大きな影響を与えます。この症状は果実組
織の局所的な Ca2+欠乏により引き起こされ、植物細胞壁の構造が壊れます。開花後 10∼15 日の果実肥
大期が最も危険な状態にあります。温室での作物生産が大きく進歩したにも関わらず、いまだ BER は
世界中のトマト生産者にとって厄介な品質問題のままです。
BER が発生している状況の 99.9%では、潅液中の Ca2+量は植物や果実の生育の適正値以上であり、
調整され混合された養液が正確に与えられています。したがって、給液中の Ca2+の不足が BER の主原
因ではなさそうです。しかしながら、吸水量を減らすような不十分な環境制御や、根の病気を引き起こ
すような根域の不十分な通気または不適な温度、高い EC を生じさせる不十分な培地管理、これらは全
て Ca2+の取り込みを減らします。これは蒸散の過程で、木部導管を通して水と共に Ca2+が主として葉
へ輸送されるためです。果実には気孔が無く木部導管の数が僅かなので、Ca2+の取り込みや輸送が制限
されます。BER の発生を最小限に抑えるためには、温室環境、地上部と根域を制御し、果実の Ca2+の
要求と根域からの供給とを確実に合致させることで、果実の生長速度と植物の生長バランスをとること
が重要です。また、定植の計画や生長段階と関連させて BER のリスクを理解しておかなくてはなりま
せん。
トピック 1:作物のバランスの維持
作物を正しいバランスで維持することが重要です。BER に侵された果実は早い段階で熟すため、着
果負担が減少して作物は栄養生長へと傾きます。このことで次の果房の BER のリスクがさらに増加
します。見苦しいかもしれませんが、生殖生長のバランスを維持するために、赤くなるまで果実を残
しておいた方が良いかもしれません。
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写真 1. 尻腐れ症状の特徴
写真 2. 細胞分裂の発生が最大となる開花後に
果実は周囲の影響を受けやすくなる。
フェーズ 1:定植と初期発根
このフェーズでは当然、着果負担がありませんので BER の視覚的サインはありません。しかし、も
し培地中への発根が遅れたら、特に高温期では、BER 発生の基礎を築くこととなります。若い植物が
高日射・高温度条件下の温室で栽培されると、根域の温度は高くなり過ぎてしまいます。高い根域温度
(26℃以上)はピシウムのような根の病気のリスクを高め、これが起きると、根の機能が低下すること
で Ca2+の取り込みも減少してしまいます。
このリスクを最小限に抑えるために、若い苗が温室に届く前の晩にスラブの初期飽水をすべきです。
これは培地温が高くなりすぎることを防ぎます。培地の初期飽水は、翌朝すぐに定植できるように温室
内全てにおいて迅速かつ均一に行うべきです。その後、培地内へ早く、出来れば 24 時間以内で根を張
らせるべきです。早い活着は生長を促進し、葉面積の素早い発達を促進することで、結果的にスラブの
日除けになります。一度スラブへ根が入ると、育苗ブロック中の水分や肥料を当てにせず、スラブ温度
が最も高くなる日射ピーク時の潅液を避けるように潅液計画を調節することが出来るようになります。
潅液は午前中に、必要であれば夕方にもう一度、培地内養液を入れ替えるために行われるべきです。
フェーズ 2:更なる発根と生長
このような気候条件下では、植物は培地中への根の伸長と着果を行いながら、初期の果房と果実の生
長はとても早くなります。このため培地内 pH が増加し(6.2 以上)、P-PO42-の有効性が低くなってし
まいます。理想的には、培地中の P-PO42-量は 40‐45ppm であるべきです。P-PO42-の有効性が低いと
Ca2+は果実の先端へ効率的に分配されなくなり、これらの状況下では初期の果房(1∼3 段)で BER を
発生させる可能性があります。そのため全体計画の一部として、養液が自由に利用でき、有機物による
緩衝が無く、最小の潅液量で培地内の養液の入れ替えやバランスを取ることが容易となる培地の選択が
重要となります(表 2)。このフェーズでは少量の NH4+を(スラブ内測定で 3‐5ppm)加えることでも
pH を下げて P-PO42-の有効性を増やすことができます。
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表 2.
パプリカにおけるロックウール(RW)とココヤシ(Coco)スラブの初期飽水に用いる
潅液の分析とスラブ内および排液の分析結果
トピック 2:最適な果実品質のための根域における正確な肥料バランスの維持
ロックウールスラブにおける分析結果を見てください(表 2)。供給したものとほぼ同じ値です。それから、
ココスラブにおける分析結果と比較してください。ココスラブは特に K+量が多く、K+/ Ca2+比が高いこと
が分かります。理想的には K+/ Ca2+比を 1/1 とすべきであり、ロックウールではそのようになっています。
成分バランスが重要であり、間違うと BER を引き起こしてしまいます。この理由は単に Ca2+が 2 価のイ
オンであるのに対して K+が 1 価のイオンであるからです。本質的に K+が植物にとってより利用され易い
ということを意味します。このため K+が多いと競合が起こり、Ca2+の取り込みを制限します。この点は
Ca2+のもう 1 つの競合相手である Na+についても留意すべきです。勿論このアンバランスは潅液の再設計
により時間とともに修正することが可能ですが、短期的には生理障害のリスクを増加させ、初期排液のリ
サイクルを困難にさせます。この場合、ロックウールの排液は簡単に再利用できるのに対して、ココスラ
ブでは EC 1.0mS 以上の溶液の再利用は望ましくありません。
フェーズ 4:収穫とバランス
生長初期のフェーズでは冬に定植されることもあり、発達速度が遅く、蒸散量が少なく、根の活性が
低いため BER のリスクは大きくありません。しかしながら収穫が始まると、じきにリスクとなって 14
‐21 日後に障害が現れます。これは、最初の収穫後に着果負担が減り、作物が著しく生長しようとする
ためです。開花果房の着果速度も増加し、結果として同じサイズの小さな果実が多くなるため、Ca2+の
必要量が増加します。この現象は通常、蒸散速度を突発的に増加させるような日射量、外気温の変化量、
温室の換気必要量・速度の増加と時期が一致します。このため、フェーズ 3 で作物のバランスをとる必
要があり、フェーズ 4 で再生長をコントロールする必要があります。この段階であまりにも葉が多く栄
養生長が強いと、BER を生じさせてしまいます。
トピック 3:次の果房での BER の軽減
蒸散速度が速いと、蒸散の流れで移動する Ca2+は果実ではなく葉に濃縮されるでしょう。もし次の果房に
影響を与えるようであれば、葉かきの作業時に下から 2‐3 枚の葉を余計に取ることで、Ca2+の果実への
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分配の操作が可能です。前夜温の設定によっても(外気温に拠りますが)、根圧を生じさせ果実へ Ca2+を送
ることができます。
フェーズ 5:収穫最盛期
高い培地内 EC が夏に BER を引き起こす最大の要因です。これは EC が高いと、果実内の木部導管
が Ca2+の固定をより制限するようになるためです。前回の記事では、この生長フェーズにおける培地内
EC 管理の仕方、日々の EC を安定的に保つ方法の基礎的な考えを述べました(図 2)。理想的な培地内
EC は、もちろん栽培する品種によりいくつかの観点から影響を受けます。例えば、チェリータイプは
最低限の糖度に達するように、通常より高い EC で生育させます。ほとんどの房取りタイプでは、気候
によって 24 時間でスラブ内 EC が 0.5‐0.8mS 変動しますが、このフェーズでのスラブ内 EC は 3.5‐
4.5mS に安定させるべきです。
しかしながら、EC を安定させ、日射量がピークを迎える時間帯は EC を一日の中で最低にすること
が重要となります。これは、作物の最大の蒸散量を維持して温室内を出来るだけ涼しくする必要がある
ためです。
もし EC が高すぎると思われるなら、出来るだけ早く下げるべきです。しかし、水のみの潅液は、Ca2+
が供給されず BER が発生する確率が高まるため、行うべきではありません。そこで、日射量(W/m2)
に合わせて潅液 EC を下げていきます。すなわち 500‐900W/m2 の範囲の時に、潅液 EC を 3.0mS か
ら 0.5mS 下げて、スラブ内 EC と潅液 EC との差を 1.0‐1.5mS に保つようにします。午前の最初の排
液時間を確認し、排液は大体 400J/cm2 もしくは 600W/m2 の時に開始すべきです。日中は 3.0ml/J(吸
水が 2.0ml、排液が 1.0ml)を目安として、日射量に合わせて潅液を与えているか確認します。最小停
止時間の設定が供給するべき水の量を制限していないか、環境制御コンピューターで確認します。午後
は排液率を確認し、もし高すぎるなら、植物が利用できる水が多くなるように潅液をより少量多頻度(比
率は 3.0ml/J のまま)にし、もし低すぎるなら潅液量(比率 3.0ml/J)を見直してください。
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日/月/年
平均
最小
最大
水分率
スラブ内 EC
日射量
図 2. 潅液開始・停止時間と潅液量を最適にすることで、気候の変動が大きくても、安定した根域 EC を
維持することができる。
トピック 4:極端な気候条件下における作物の吸水維持
理想的には、フェーズ 1 から 4 までを通して計画を立てて管理することで、作物はフェーズ 5 の生長フェ
ーズにおいて健康的な根を持つ強いものになっているはずです。そして、吸水(潅液‐排液)量の最小限
度は 2.0‐2.2ml/J とすべきです。遮光や細霧のようなツールが気候条件によって必要となっても、この
値を下回らないようにします。これらのツールは植物の高い蒸散速度を維持するように使用されるべきで
あり、BER を伴う水分ストレスによって気孔が閉じてしまうことを防がなくてはなりません。
成熟ムラ(すじ腐れ)
この症状は熟した果実の表面にオレンジ色の斑模様ができるのが特徴です(写真 3)。果実は高温又は
気温が変わりやすい、日射量が少なくなっていくような気候条件において、このリスクが最も高まりま
す。
成熟ムラが見られる圃場であっても、そのほとんどは果実が自然に着色するのに十分な量の K+を潅
液により与えています。1990 年代に実施された試験の結果から、この障害を引き起こすためには培地
内の K+濃度を 160ppm 以下にしなければならないことが示唆されました。このため、根域や潅液中の
K+の不足が成熟ムラを引き起こす主要因ではないと思われます。これと関連して、下位の果房における
成熟ムラを軽減するための早急な解決策として潅液中の K+を増やしてしまうと、K+/Ca2+が高くなり
BER に繋がることを覚えておいてください。
成熟ムラは果実の高温(30℃以上)のような他のいくつかの要因により引き起こされます。これは果
実の赤い色素であるリコピンが 15‐32℃の間で合成され、オレンジ色素であるβ-カロテンが 30℃以上
で合成されるためです。果実自身を冷却することに意味はなく、直達光を防ぐことが必要です。このた
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めに通常、適正な葉面積指数(LAI)を維持し、夏には中央通路の上に遮光カーテンを設置したり、側
壁を白く塗装したりします。
最もよくある失敗は、潅液開始と停止時間の調整が不十分なため、あるいは EC を安定させようと潅
液量を多くして急に EC を変えようとしたために、蒸散量が少ないにも関わらず曇天・雨天日に作物に
水を与えすぎてしまうことです。このことで根圧が非常に高くなり(蒸散が始まってから潅液を始める
ことを思い出してください)、表皮の細胞構造にダメージを与え、成熟過程において果実がちゃんと色
付かなくなります。このほかに根域管理を失敗した反応として、葉に拡がる斑点や、強い栄養成長によ
る淡い色の作物の生長が見られるかもしれません(写真 4)。同様の原因で生じる成熟ムラや裂果を最小
限にするために、気候の変化に合わせた根域環境の管理の仕方や、各生長フェーズに関わるリスクを理
解することが重要です。
写真 3.
トマト果実の成熟ムラ
写真 4. 暗く湿度の高い日に水を与えすぎる
ことによって生じる斑点。
トピック 5:根圧が高くなる状況を避ける
日々の潅液の開始と停止時間を最適化させます。特に一日の終わりの時点で培地内 EC が低くなっていな
いようにし、一定の着果負担を維持させ、高い根域温度は避けます。
フェーズ 3:生長とバランス
冬に定植した植物にとって、春のこの生長フェーズは蒸散量が大きく変化しやすい時期です。そのた
め、状況に合わせて根域を管理することが重要となります。前号「水分管理と EC 管理」を参考にする
と、その中に潅液の開始と停止時間の最適化を含む考え方が記載されています。日射の少ない、温和な
日に水を与え過ぎていないかどうか分かることでしょう。晴天日に比べると排液率が増加し、培地内
EC は減少します。培地の選択基準である
培地内肥料の入れ替えの効率
と、グロダンロックウール
中の肥料液がいかに入れ替え易いものであるかを思い出してください。グロダンロックウールを使用す
れば、開始時間を遅らせて停止時間を早めることで曇天・雨天日でも根域の EC 操作が可能となり、潅
液量を最小限に抑えて果実品質を維持できます(図 3)。実際、このような日に培地内 EC が 0.2‐0.3mS
の範囲で増加しても、作物は害を受けないでしょう。
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1 回当たりの潅液量を増やし、かつ潅液開始時間を遅らせて停止時間を早めることにより、1 日の積
算日射量が 538J/cm2 と 348J/cm2 のように日射量の少ない 2 日間においても、培地内養液を入れ替えて
EC を安定的に保ち、果実品質を維持することが出来ます。
日/月/年
平均
最小
最大
水分率
スラブ内 EC
日射量
図 3.
日射量の少ない日に最少の潅液量を与えて培地内 EC を安定化させることで、
果実品質の維持に繋がる。
トピック 6:時間当たりの潅液回数の最適化
一般的な経験則として、時間当たりの潅液回数は日射量によります(すなわち、200W/m2 = 1 回/時間、
600W/m2 = 4 回/時間、800W/m2 = 6 回/時間、1000W/m2 = 7∼8 回/時間)。この指標を用いれば最大停止
時間の調整ができ、これによって曇天・雨天日の潅液量も左右します。
フェーズ 6:収穫終了期
最終的に、作物が栽培の終了時期に摘芯されると、水分の要求量は劇的に減少します。もし潅液計画
を適切に調整しなければ、この時期に成熟ムラが生じます。
グロダンからの今後の記事
根域環境は作物のエンジンルームと言えます。良質な根系が作物に蒸散を行わせ、果実へ Ca2+を供給
し、BER を回避します。しかしながら、日中の蒸散開始時間と蒸散速度は、地上部環境との相互作用
によって左右されます。植物の最適なバランス、果実の生産量や品質を維持するために、根域の環境を
管理する必要があります。さらに、培地固有の、肥料の管理と肥料を有効的に利用出来るという特性は、
長期的に見て、極端な条件下でも果実生理障害のリスクを最小限に抑えるために大いに役立ちます。
また、高品質な果実の安定生産を維持することは、収穫や等級だけではなく、経営やその他の費用に
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も大きな影響を与えることを留意すべきです。次回は、正確な根域管理による水と肥料の節約と、それ
が与える利益についてお届けします。
著者について
Andrew Lee は、グロダンの北アメリカおよび輸出市場のためのビジネス支援マネージャーです。彼
は英国ロンドン大学で博士号を取得し、また世界中の顧客にコンサルティングと技術サポートを供給し
ながら過去 9 年にわたってグロダンで働いています。
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