204 Review Article IL-1βによるヒト好中球の活性化と p38 MAP キナーゼ 炎症・再生 Vol.23 No.1 2003 Review Article IL-1βによるヒト好中球の活性化と p38 MAP キナーゼ 鈴木賢一,北川誠一 大阪市立大学大学院医学研究科細胞情報学 Selective activation of p38 mitogen-activated protein kinase cascade in human neutrophils stimulated by IL-1β Interleukin-1 (IL-1) plays a central role in the immune and inflammatory responses, and activates various types of cells, including human neutrophils. IL-1β exerts its effects through IL-1 receptor type I, and activates NF-κB and mitogen-activated protein kinase (MAPK) cascades. In human neutrophils, it was found that the MKK3/6-p38 MAPK cascade was selectively activated by IL-1β , and p38 MAPK activation mediated IL-1β -induced superoxide (O2–) release and up-regulation of CD11b ( β2 integrin) and CD15 (a ligand for P-selectin). Our recent studies also show that stimulation of human neutrophils with various cytokines, including granulocyte colonystimulating factor, granulocyte-macrophage colony-stimulating factor, and tumor necrosis factor-α , results in cytokine-specific activation of distinct MAPK subtype cascades, and that extracellular signal-regulated kinase as well as p38 MAPK mediates cytokine-induced O2– release and adherence. In this review, we discuss the signaling pathways activated by IL-1β and the role of MAPK subtype cascades and JAK-STAT pathway in activation of human neutrophils by inflammatory cytokines. Rec.6/13/2003, pp204-210 Kenichi Suzuki, Seiichi Kitagawa Department of Physiology, Osaka City University Medical School Key w ords wo neutrophil, interleukin-1β, p38, mitogen-activated protein kinase, superoxide はじめに であり,細胞外領域には3個の免疫グロブリン様ドメイン IL-1βは主として単球/マクロファージから産生され, が存在する 1).IL-1RⅠおよび IL-1RAcP の細胞内領域には 炎症反応および初期免疫応答において中心的な役割を果 Toll/IL-1 receptor(TIR)ドメインが存在し,このドメイン たしている.IL-1βは極めて多くの細胞に作用して,多彩 は細胞内へのシグナル伝達に必須の領域である.IL-1RⅡ な作用を発揮する.IL-1 receptor(IL-1R)は Toll-like re- には TIR ドメインが欠損しており,IL-1RⅡに IL-1 が結合 ceptor(TLR)とともにファミリーを形成しており,この しても細胞内にシグナルが伝達されない(図 1).このた ファミリー分子は哺乳類ばかりでなく昆虫や植物にも存 め,IL-1RⅡは decoy(おとり)receptor と呼ばれる 3).IL- 在する.これらの分子は,いずれも感染に対する初期免 1RⅡは IL-1 ばかりでなく IL-1RAcP とも会合して,IL-1RⅠ 疫応答に深く関与している 1, 2) .本稿では,IL-1R の特徴, IL-1Rを介するシグナル伝達およびIL-1βによる好中球機 能制御を中心に概説する. を介するシグナル伝達を負に制御している.また,可溶性 の IL-1RⅠおよび IL-1RⅡは IL-1 と結合することによって, IL-1 の作用を負に制御している.同様に,IL-1 receptor antagonist(IL-1Ra)は IL-1RⅠへの結合を IL-1 と競合する IL-1Rファミリー ことにより,IL-1の作用を負に制御している.このように, IL-1R ファミリー分子に属するⅠ型 IL-1R(IL-1RⅠ) ,Ⅱ型 IL-1の作用は,その生理学的重要性から複数の機構により IL-1R(IL-1RⅡ)および補助レセプターの IL-1R accessory 負に制御されている.多くの細胞は IL-1RⅠを主として発 protein(IL-1RAcP)は,いずれも細胞膜貫通タンパク質 現しているが,好中球にはIL-1RⅠとIL-1RⅡがともに発現 Inflammation and Regeneration Vol.23 No.4 JULY 2003 205 図 1 IL-1R を介するシグナル伝達 IL-1のシグナルはIL-1RIとIL-1RAcPヘテロ2量体を介して伝達される. IL-1RIIにはTIRドメインが存在しないので, シグナルが伝達されない. しており,IL-1RⅡの発現量が多い 3). activated kinase)が会合する.TRAF6 には E3 ユビキチン リガーゼ活性があり,自身のポリユビキチン化を促進す IL-1Rを介するシグナル伝達 る.ポリユビキチン化された TRAF6 はTAK1 を活性化し, 1) IL-1R を介するシグナル伝達経路を図 1 に示した .IL- TAK1 は IKKβ(IκB-kinaseβ)および MKK6(mitogen- 1RⅠには IL-1α,IL-1βおよび IL-1Ra が結合する.IL-1 が activated protein kinase kinase 6)を活性化する.その結果, 結合した IL-1RⅠはIL-1RAcP と会合してヘテロ2 量体を形 それぞれの経路を介して N F -κB および p 3 8 M A P K 成する.シグナル伝達にはIL-1RⅠとIL-1RAcP分子の存在 (mitogen-activated protein kinase)が活性化される(図 1) . が必要であり,また,これらの分子の細胞質ドメインに存 一方,MAPK には ERK(extracellular signal-regulated 在する TIR ドメインが必須である 1, 4).IL-1RⅠと IL-1RAcP kinase),p38 MAPK,JNK(c-Jun N-terminal kinase)など のヘテロ 2 量体が形成されると,これら 2 つの分子の TIR のサブタイプが存在する.これらの MAPK サブタイプカ ドメインが互いに近接することによってその立体構造が変 スケードの活性化は,リガンドおよび細胞により異なり, 化し,これらの TIR ドメインに MyD88 が会合する.さら それぞれの細胞において特異的な機能に関与している 5). に,MyD88 に IRAK-1(IL-1R-associated kinase 1)が互い IL-1βも細胞種特異的にこれらのサブタイプを活性化す の death domain を介して会合する.無刺激の細胞では る.例えば,ヒト血管内皮細胞やヒト線維芽細胞では IRAK-1 と Tollip が複合体を形成しており,Tollip が IRAK-1 ERK,p38 MAPK およびJNK が活性化され,ヒト表皮癌細 の活性化を抑制している.Tollip / IRAK-1 複合体が,活 胞では p38 MAPK および JNK が活性化される.また,ウ 性化されたIL-1Rに会合するとTollipが解離し,IRAK-1は サギ肝細胞では JNK のみが活性化される 6, 7).MAPK サブ 2量体を形成して自己リン酸化または互いに相手の分子を タイプ活性化の細胞種による相違の機序については十分に リン酸化して活性化される.活性化された I R A K - 1 は は明らかになっていない.図 1 から明らかなように,IL- ProST 領域(death domain と kinase domain の間にあり,プ 1R を介するシグナル伝達において中心的役割を果たして ロリン,セリンおよびスレオニン残基を多く含む領域)に いる分子はIRAK-1である.IRAK-1はTRAF6のオリゴマー 存在する多数のセリンまたはスレオニン残基を自己リン酸 形成における足場を提供するとともに T R A F 6 による 化する.このようにして自己リン酸化されたIRAK-1はIL- TAK-1 の活性化を促進する.リン酸化された IRAK-1 が蛋 1R から解離し,細胞質内に遊離してくる.IRAK-1 に 白分解を受けることにより, 活性化されたこれらのシグナ TRAF6(TNF receptor-associated factor 6)およびTAB2(TAK1 ル伝達系は不活化される. のアダプター分子)が会合し,TAB2 に TAK1(TGFβ - 206 Review Article IL-1βによるヒト好中球の活性化と p38 MAP キナーゼ 炎症・再生 Vol.23 No.1 2003 図 3 サイトカイン刺激により誘導されるヒト好中球のスーパーオキ シド産生は p38 MAPK 阻害剤により抑制される 好中球をp38 MAPK阻害剤 (SB203580) で前処理 (37℃, 20分間) すると, IL-1β (300 U/ml) , GM-CSF (5 ng/ml) またはTNF(100 U/ml) 刺激により誘導される 図 2 IL-1βは FMLP 刺激により誘導され るヒト好中球のスーパーオキシド産 生を増強する スーパーオキシド産生が抑制された. 好中球をI L - 1βで前処理すると,F M L P(N formyl-methionyl-leucyl-phenylalanine) 刺激によ り誘導されるスーパーオキシド産生の増強が認 められた. (上) IL-1β (300 U/ml) 存在下に各時間 孵置後, FMLP (10-7 M) で刺激した. (下) 各濃度 のIL-1β存在下に10分間孵置後, FMLP (10-7 M) で刺激した. 図 4 IL-1β刺激を受けたヒト好中球における MKK3/6-p38 MAPK 系の活性化 (A) 好中球をIL-1β (25または300 U/ml) , G-CSF (50 ng/ ml) , GM-CSF (5 ng/ml) またはTNF (100 U/ml) で10分 間刺激した. (B) (上)好中球を各濃度のIL-1βまたは TNF(100 U/ml) で10分間刺激した. (下) 好中球をIL1β (300 U/ml) で各時間刺激した. (C) 好中球をIL-1β (300 U/ml) , GM-CSF (5 ng/ml) またはTNF (100 U/ml) で10分間刺激した後, ATF-2を基質としてp38 MAPK のキナーゼアッセイを行った. (D) 好中球をIL-1β (300 U/ml) またはTNF (100 U/ml) で10分間刺激した. (E) デ ンシトメトリーの結果 (Bのデータ) を示した. Inflammation and Regeneration Vol.23 No.4 JULY 2003 207 図 5 IL-1βまたは TNF 刺激により誘導される CD11b および CD15 の膜上への発現増強は p38 MAPK 阻害剤により抑制 される ヒト好中球をp38 MAPK阻害剤 (SB203580) で前処理 (37℃, 20分間) する と, IL-1β (300 U/ml) またはTNF (100 U/ml) 刺激により誘導されるCD11b およびCD15の膜上への発現増強が抑制された. MHC class Iの発現はサイ トカインの影響を受けなかった. CD11bおよびCD15の発現はサイトカイ ン刺激30分後に測定した. IL-1βによる好中球機能制御 されている 17).したがって,好中球では p38 MAPKの上流 IL-1βは好中球に作用して,スーパーオキシド産生,遊 のキナーゼはMKK3と考えられる.一方,ERKおよびJNK 走および脱顆粒を促進し(プライミング作用),またスー の活性化は認められなかった.したがって,好中球におい パーオキシド産生を直接刺激する(トリガリング作用) ては IL-1β刺激により,IL-1RⅠを介して MKK3/6-p38 (図 2, 3)6, 8-12).さらに,好中球の伸展を刺激し 11),その 13) MAPK 系が特異的に活性化されると考えられる. 生存も延長する .好中球機能に対するIL-1βのこれらの IL-1βは好中球のスーパーオキシド産生を直接刺激す 作用はIL-1RⅠを介して行われる.最近,IL-1β刺激を受け る.この作用は p38 MAPK 阻害剤(SB203580)で阻害さ た好中球では p38 MAPK が特異的に活性化され,p38 れた.また,IL-1βは好中球に作用して,接着に関与する MAPKの活性化がIL-1β刺激により誘導されるスーパーオ 分子である CD11b および CD15 の発現を特異的に増強し, キシド産生と,CD11b(β2インテグリン)およびCD15(P これらの作用はいずれもp38 MAPK阻害剤によって阻害さ セレクチンに対するリガンド)の膜上への発現増強に関与 れた(図 5).これらの事実は,p38 MAPK の活性化が IL- 6) することをわれわれは明らかにした . 1β刺激による好中球のスーパーオキシド産生と特定の膜 IL-1β刺激によるp38 MAPKの活性化は刺激後1分です 抗原の発現増強に関与していることを示している.p38 でに認められ,10 分で最大となった(図 4).p38 MAPKの MAPK は,スーパーオキシド産生酵素(NADPH oxidase) 有意なリン酸化は 25 U/ml で認められ,至適濃度は 300 U/ の構成要素である p47-phox のリン酸化を介してスーパー ml であった.ヒト血管内皮細胞の活性化には低濃度の IL- オキシド産生を制御している可能性がある 18).また,血管 1β(10-25 U/ml)刺激で十分である 14, 15).したがって,好 内皮細胞やマクロファージにおいて,p38 MAPKがアクチ 中球の活性化には比較的高濃度のIL-1βが必要である.血 ンの再構築に関与していると報告されており19, 20),われわ 管内皮細胞には IL-1RⅠのみが発現しており,好中球には れも好中球において,p38 MAPKがアクチンの再構築に関 主としてIL-1RⅡが発現していることと関連があると考え 与していることを認めている. プライミング作用における られる 3, 16).p38 MAPK のリン酸化と併行して,その上流 p38 MAPK の関与は明らかではない 6). のキナーゼであるMKK3/6のリン酸化も認められた.好中 球には MKK3 が発現し,MKK6 は発現していないと報告 208 Review Article IL-1βによるヒト好中球の活性化と p38 MAP キナーゼ 炎症・再生 Vol.23 No.1 2003 ロニー刺激因子),GM-CSF(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor;顆粒球・マクロファージコロニー 刺激因子)および TNF(tumor necrosis factor-α;腫瘍壊死 因子)が含まれる 21, 22).これらのサイトカインによる好中 球機能の活性化は, 微生物感染に対する生体防御機構を増 強するとともに特定の病態においては組織傷害を増強す る.IL-1βを含め,これらのサイトカインは,好中球に作 用して特定の MAPK サブタイプカスケードをサイトカイ ン特異的に活性化することをわれわれは明らかにした6, 23). すなわち,G-CSF は MEK-ERK 系を特異的に活性化し, GM-CSF は MEK-ERK 系を強く,MKK3/6-p38 MAPK 系を 弱く活性化する.一方,TNFは MKK3/6-p38 MAPK 系を強 図 6 ヒト好中球におけるサイトカイン特異的な MAPK サブタイプカスケードの活性化 G-CSFはMEK-ERK系を特異的に活性化し, GM-CSFはMEKERK系を強く, MKK3/6-p38 MAPK系を弱く活性化する. 一方, TNFはMKK3/6-p38 MAPK系を強く, MEK-ERK系を弱く活性 化する. また, IL-1βはMKK3/6-p38 MAPK系を特異的に活性化 する. これらの経路はともに好中球機能の活性化において中 く,MEK-ERK系を弱く活性化する.すでに述べたように, IL-1βは MKK3/6-p38 MAPK 系を特異的に活性化する(図 6).MEK-ERK系を活性化する強さはGM-CSF>G-CSF> TNF であり,MKK3/6-p38 MAPK 系を活性化する強さは TNF > GM-CSF > IL-1βである 6, 23). GM-CSF または TNF 刺激により誘導される好中球の スーパーオキシド産生と接着の亢進は , M E K 阻害剤 (PD98059)および p38 MAPK 阻害剤で抑制され,これら 心的な役割を果たしている. の阻害剤を併用するとほぼ完全に抑制される 23-25).した 好中球に発現しているIL-1RIIの生理学的 意義 がって, これらのサイトカインにより誘導されるスーパー IL-1βは炎症部位でほぼ普遍的に産生される.炎症部位 活性化がともに関与していると考えられる. で産生された低濃度の IL-1βは IL-1RⅠのみを発現してい G-CSF は ERK を,IL-1βは p38 MAPK をそれぞれ特異 る血管内皮細胞に作用して,その膜表面に I C A M - 1 的に活性化する.そこで,G-CSF と IL-1βを用いてその併 (intercellular adhesion molecule 1) をはじめとする接着分子 用効果を検討すると,G-CSF 刺激による ERK の活性化は 14, 15) オキシド産生と接着の亢進には ERK および p38 MAPK の .これらの接着分子を介して好中球 IL-1βの影響を受けず,また IL-1β刺激による p38 MAPK は炎症部位に動員される.好中球には IL-1RⅡが主として の活性化もG-CSFの影響を受けなかった.また,スーパー 発現しており,炎症部位で産生されたIL-1βは動員された オキシド産生に対するプライミング作用およびトリガリン 好中球膜上の IL-1RⅡに主として結合すると考えられる. グ作用も相加的であった.これらの事実は,MEK-ERK 系 このことは,好中球はごくわずかの活性化を受けるのみ とMKK3/6-p38 MAPK系がそれぞれ独立して好中球機能を で,炎症部位のIL-1β濃度を低下させることができること 制御していることを示唆している 6).また,IL-1βばかり を意味している.好中球は IL-1RⅡを介して炎症部位にお でなく,TNF や GM-CSF 刺激により誘導される CD11b の けるIL-1β濃度を低下させることにより,炎症を鎮静化さ 発現増強にも p38 MAPK が関与していることが明らかに せる方向で作用しており,IL-1βが多量に産生されると, なった(図 5). の発現を誘導する 6) 好中球も活性化されると考えられる .いずれにしても, サイトカインは好中球機能を制御するばかりでなく, 好中球にはシグナルを伝達する IL-1RⅠとシグナルを伝達 その生存も制御している.すなわち,G-CSFとGM-CSFは できない IL-1RⅡが発現しており,IL-1RⅡの発現が優位で 好中球の生存を延長し(抗アポトーシス作用),TNF は好 ある事実は興味深い. 中球のアポトーシスを促進する24, 26).好中球の生存には構 成的なタンパク質の合成が必要であり, 自然に起こる好中 サイトカインによる好中球機能制御 球のアポトーシスはシクロヘキシミドで促進される.好中 IL-1βばかりでなく,様々な炎症性サイトカインによっ 球に対する G-CSF および GM-CSF の抗アポトーシス作用 て好中球機能は制御されている.これらのサイトカインに は,転写レベルで制御されており,特定の抗アポトーシス は G-CSF(granulocyte colony-stimulating factor;顆粒球コ 分子の合成を介していると考えられる. その候補分子とし Inflammation and Regeneration Vol.23 No.4 JULY 2003 て,GM-CSF においては Mcl-1 の可能性が示され,Mcl-1 は STAT3(signal transducer and activator of transcription 3) と phosphatidylinositol 3-kinase を介して誘導されると報告 27) されている .最近,われわれは好中球に対するG-CSFの 抗アポトーシス作用に cIAP2(cellular inhibitor of apoptosis 2)が関与していることを明らかにした 28).G-CSF は好中 209 Blood, 87: 2095-2147, 1996. 3) Colotta F, Re F, Muzio M, Bertini R, Polentarutti N, Sironi M, Giri JG, Dower SK, Sims JE, Mantovani A: Interleukin1 typeⅡ receptor: a decoy target for IL-1 that is regulated by IL-4. Science, 261: 472-475, 1993. 4) Sims JE, Gayle MA, Slack JL, Alderson MR, Bird TA, Giri 球に作用してJAK2(Janus kinase 2)-STAT3系を活性化し, JG, Colotta F, Re F, Mantovani A, Shanebeck K, Grabstein この経路を介してcIAP2を特異的に誘導した.細胞によっ KH, Dower SK: Interleukin 1 signaling occurs exclusively ては,ERK が抗アポトーシス作用に関与していると報告 via the typeⅠ receptor. Proc Natl Acad Sci USA, 90: 6155- されているが,好中球に対する G-CSF および GM-CSF の 6159, 1993. 抗アポトーシス作用には ERK は関与していなかった.ま た,われわれの検討では,IL-1βは好中球に対して抗アポ トーシス作用を示さなかった. 5) Chang L, Karin M: Mammalian MAP kinase signaling cascades. Nature, 410: 37-40, 2001. 6) Suzuki K, Hino M, Kutsuna H, Hato F, Sakamoto C, Takahashi T, Tatsumi N, Kitagawa S: Selective activation IL-1β刺激を受けた血管内皮細胞による 好中球の活性化 ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞を比較的低濃度の IL- of p38 mitogen-activated protein kinase cascade in human neutrophils stimulated by IL-1β. J Immunol, 167: 59405947, 2001. 1βで刺激すると,その細胞膜上に ICAM-1 などの接着分 7) Ridley SH, Sarsfield SJ, Lee JC, Bigg HF, Cawston TE, 子を発現するとともに多量のGM-CSFを産生する 14, 15).好 Taylor DJ, DeWitt DL, Saklatvala J: Actions of IL-1 are 中球はこれらの血管内皮細胞に強く接着し, 血管内皮細胞 selectively controlled by p38 mitogen-activated protein ki- から産生された GM-CSF の作用を受けて多量のスーパー nase. Regulation of prostaglandin H synthase-2, オキシドを産生した 15).したがって,IL-1βによる好中球 metalloproteinases, and IL-6 at different levels. J Immunol, の活性化は,IL-1βによる直接活性化よりも,血管内皮細 158: 3165-3173, 1997. 胞を介した活性化がはるかに強く,後者が病態生理学的に より重要と考えられる. 8) Yagisawa M, Yuo A, Kitagawa S, Yazaki Y, Togawa A, Takaku F: Stimulation and priming of human neutrophils by IL-1α and IL-1β: complete inhibition by IL-1 receptor おわりに antagonist and no interaction with other cytokines. Exp 最近の研究から, サイトカインによる好中球機能の活性 Hematol, 23: 603-608, 1995. 化においては,MAPK サブタイプカスケードが中心的な 9) Brandolini L, Bertini R, Bizzarri C, Sergi R, Caselli G, Zhou 役割を果たしていることが明らかになった.また,MAPK D, Locati M, Sozzani S: IL-1β primes IL-8-activated hu- およびJAK-STAT系は未熟な造血前駆細胞ばかりでなく, man neutrophils for elastase release, phospholipase D ac- 終末分化を遂げた好中球においてもサイトカイン刺激によ tivity, and calcium flux. J Leukoc Biol, 59: 427-434, 1996. り活性化され, それぞれ特異的な機能に関与していること 10) Ferrante A, Nandoskar M, Walz A, Goh DHB, Kowanko が明らかになった.これらの事実は,同一のシグナル伝達 IC: Effects of tumor necrosis factor alpha and interleukin-1 系が細胞の分化段階特異的に特定の機能を制御しているこ alpha and beta on human neutrophil migration, respiratory とを示している.サイトカイン特異的な MAPK サブタイ burst and degranulation. Int Arch Allergy Appl Immun, 86: プカスケード活性化機構, これらの下流で機能している分 子, さらにこれらの分子による好中球機能制御機構の解明 82-91, 1988. 11) Sullivan GW, Carper HT, Sullivan JA, Murata T, Mandell GL: Both recombinant interleukin-1 (beta) and purified hu- が今後の課題である. man monocyte interleukin-1 prime human neutrophils for 文 献 1) Martin MU, Wesche H: Summary and comparison of the signaling mechanisms of the Toll/interleukin-1 receptor family. Biochim Biophys Acta, 1592: 265-280, 2002. 2) Dinarello CA: Biologic basis for interleukin-1 in disease. increased oxidative activity and promote neutrophil spreading. J Leukoc Biol, 45: 389-395, 1989. 12) Dularay B, Elson CJ, Clements-Jewery S, Damais C, Lando D: Recombinant human interleukin-1 beta primes human polymorphonuclear leukocytes for stimulus-induced 210 Review Article IL-1βによるヒト好中球の活性化と p38 MAP キナーゼ 炎症・再生 Vol.23 No.1 2003 myeloperoxidase release. J Leukoc Biol, 47: 158-163, 1990. colony-stimulating factor: qualitative and quantitative dif- 13) Colotta F, Re F, Polentarutti N, Sozzani S, Mantovani A: ferences. Biochem Biophys Res Commun, 171: 491-497, Modulation of granulocyte survival and programmed cell death by cytokines and bacterial products. Blood, 80: 2012- 1990. 22) Yuo A, Kitagawa S, Suzuki I, Urabe A, Okabe T, Saito M, Takaku F: Tumor necrosis factor as an activator of human 2020, 1992. 14) Takahashi M, Kitagawa S, Masuyama J, Ikeda U, Kasahara granulocytes: potentiation of the metabolisms triggered by T, Takahashi Y, Furukawa Y, Kano S, Shimada K: Human the Ca2+-mobilizing agonists. J Immunol, 142: 1678-1684, monocyte-endothelial cell interaction induces synthesis of 1989. granulocyte-macrophage colony-stimulating factor. 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Blood, 93: 341-349, 1999. 16) Boraschi D, Rambaldi A, Sica A, Ghiara P, Colotta F, Wang 24) Suzuki K, Hasegawa T, Sakamoto C, Zhou Y, Hato F, Hino JM, de Rossi M, Zoia C, Remuzzi G, Bussolino F, Scapigliati M, Tatsumi N, Kitagawa S: Cleavage of mitogen-activated G, Stoppacciaro A, Ruco L, Tagliabue A, Mantovani A: En- protein kinases in human neutrophils undergoing apoptosis: dothelial cells express the interleukin-1 receptor typeⅠ. role in decreased responsiveness to inflammatory cytokines. Blood, 78: 1262-1267, 1991. J Immunol, 166: 1185-1192, 2001. 17) Nick JA, Avdi NJ, Young SK, Lehman LA, McDonald PP, 25) Zhou Y, Kutsuna H, Suzuki K, Hato F, Kitagawa S: Serine Frasch SC, Billstrom MA, Henson PM, Johnson GL, protease inhibitors inhibit superoxide release and adherence Worthen GS: Selective activation and functional significance in human neutrophils stimulated by granulocyte-macroph- of p38α mitogen-activated protein kinase in lipopolysac- age colony-stimulating factor and tumor necrosis factor-α. charide-stimulated neutrophils. J Clin Invest, 103: 851-858, Int J Hematol, 77: 253-258, 2003. 26) Sakamoto C, Suzuki K, Hato F, Akahori M, Hasegawa T, 1999. 18) Benna JE, Han J, Park J-W, Schmid E, Ulevitch RJ, Babior Hino M, Kitagawa S: Anti-apoptotic effect of granulocyte BM: Activation of p38 in stimulated human neutrophils: colony-stimulating factor, granulocyte-macrophage colony- phox by p38 stimulating factor and cyclic AMP on human neutrophils: and ERK but not by JNK. 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