楽器博物館 講座 2010 シルクロード民族音楽紀行 講師:江波戸 昭 ( 明治大学名誉教授 ) 有史以来、 世界最大の帝国をユーラシア大陸に築きあげて きた遊牧の民チュルク・モンゴル。 広大な草原をかけめぐって、 古代から近世にかけて大活躍し、 経済 ・ 文化を展開 ・ 伝 播してきたモンゴロイドの仲間たちが、 なによりの生命線とし て駆使してきたのがシルクロードと呼びならわされてきたユーラ シア大陸を網状に結ぶ交易路でした。 その地で育まれた多 彩な音の綾を紡いでみようと思います。 第1回 4/24 ( 土 ) 「モンゴルとその周辺」 第2回 5/8 ( 土 ) 「ウイグル , キルギス , チベット」 中世の頃、 パクス・モンゴリカ といわれる大帝国をユーラシアの地 今では国境がしかれ、交流が不自由になってしまっていますが、本来、 に展開したモンゴルの人々は、今もその多くが家畜を追っての遊牧的な生 この草原から高原への一帯は自由な遊牧民の世界でした。現在、中国の 活を続ける中で、自然との共棲から生み出された豊かな音の世界を作りあ 一画にくみこまれているウイグル族とチベット族も、キルギスタンの地 げてきました。オルティン・ドー(長い歌)とホーミー唱法(倍音を使う に住むキルギス族も、かつてそれぞれの王国を持ち、民族文化を築き上 のど歌)がその典型といえます。現在はロシアにくみこまれているトゥー げてきました。ウイグルのマカーム、キルギスのキユ、チベットの声明 バやアルタイの地にも足を延ばしてみましょう。 などを聞いてみましょう。 第3回 5/23 ( 日 ) 「ウズベキスタン , カザフスタン , トルクメニスタン」 第4回 6/5 ( 土 ) 「アフガニスタン」 中央アジアの諸民族はみな、それぞれの民族を代表する弦楽器を手 に歌い演じてきました。ウズベク族の撥弦のルバーブやタール、擦弦 のギジャク、カザフ族のドンブラやコブィズ、トルクメニスタンのドゥ タールなどがそれで、いずれも周辺の民族と共通した奏法や歌い方を もっています。 アフガニスタンは西のペルシア文化と東のインド文化との、まさに橋 渡しのはざまの地です。音楽のうえでも西部はペルシア音楽、東部はイ ンド音楽との結びつきが強くみられます。共通するのは撥弦のルバーブ を手にしたアシュークとよばれる吟遊の歌手が活躍していることで、と くにヘラートは東西文化を結ぶ一大中心地でした。同じペルシア系民族 の地タジキスタンにも足を踏み入れてみましょう。 第5回 6/27 ( 日 ) 「イラン」 第6回 7/10 ( 土 ) 「イラク」 古代からの数千年にも及ぶ文明の地ペルシア。中世の頃は世界最高の水 準を行く音楽理論・演奏を確立したといわれるところだけに、声楽・器楽と もに豊富な蓄積をもっています。とくに 詩の国 といわれただけに 10 世 紀の頃から優れた詩人が輩出し、それを吟唱するタハリール唱法が発達し てきました。この地で展開し世界の東西に伝えられていったウード、 タール、 サントゥールなどの音色を堪能してみましょう。 古代メソポタミアの文明の地イラクは、現在でこそ戦乱の巷と化して いますが、中世以来のイスラム世界の文化・学術の要として、今も優れ た音楽家を輩出し続けています。とくに都市で展開したイラキ・マカー ムはアラブ音楽の粋といえます。 真のアラブ ベドウィンの素朴な音も 聞き逃せません。 第7回 9/25 ( 土 ) 「レバノン , シリア , ヨルダン」 第8回 10/9 ( 土 ) 「トルコ」 第 1 次世界大戦まではオスマン・トルコの支配下にあったこの一帯 古代ギリシヤの頃、 アジア とよばれたアナトリア半島にイスラムの チュルクの一族が流れ込んだのは 13 世紀末。ウィーンにまで攻めこみ 地中海一帯を支配下においていた彼らは、西方のヨーロッパ世界に大き な刺激をもたらしたものでした。その トルコ風 の元祖、栄光の響き を古典音楽、軍楽、吟遊詩人の歌などを通して聞いてみましょう。 は、いうまでもなくイスラムの地ですが、同時にそれ以前からのキリ スト教文化も根付いています。共通して聞こえてくるアザーンと張り 合うかのように、巷ではダブケのリズムが溢れています。いわゆるベ リー・ダンスの祖でもあります。 時 間:13:30~16:30 会 場:アクトシティ研修交流センター 受講料:各 回 1,000円 通し券 5,000円 対 象:高校生以上 ( 要申込) 申込み受付中 電話で楽器博物館へどうぞ ℡ 053-451-1128 江波戸 昭 (えばとあきら) 明治大学名誉教授。1932 年東京生まれ。55 年東京大学理学部 地理学科卒業。50 年同大学院博士課程修了理学博士。65 年明治 大学商学部専任講師を経て助教授、教授。02 年名誉教授。専門の 経済地理学に加えて、民族音楽の研究を続けている。楽器を描い た世界の切手のコレクターとしても有名。1970 年から 2000 年ま で NHK・FM「世界の民族音楽」を担当。民族音楽関連の著書に 「世界の音・民族の音」 (青土社) 、 「民族音楽 CD200‐世界の音を聴く」 (立風書房) 、 「世界の 民族音楽‐切手にみる楽器のすべて‐」 (生活情報センター)など、地理学関連の著書に「東 京の地域研究」 (正・続) 」 (文明堂) 、 「郷土史田園調布」 (中央公論事業出版)などがある。
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