式 辞 (前略) ただいま卒業証書を授与いたしました病弱教育部門高等部七名、高等養護部十九 名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。改めて心よりお祝い申し上げます。 3年間の学びを終え、学びの場から新たな活動の場に進まれるあなたたちに少しお 話をしたいと思います。 三年前、みなさんはこの学校で学ぶことを自分で決めて入学してきました。 あれから三年、自立と社会参加をめざした高等部の三年間は、多くの変化と挑戦の 連続だったことでしょう。辛いことや逃げたくなったこともあったことでしょう。でも、 あなたたちは、時々の場面場面で自分で決めながら進んできました。そして、語り合え る仲間を見つけ、一人一人が違っていることを認め、互いに支え合う関係を作りまし た。自分の未来の生活や仕事を思い描いて、自分の弱さや課題と向き合い、体験と実 習を重ねてきました。各行事や部活動など、一つ一つを友だちや先生と一緒にやり遂 げてきました。 秋の体育大会、学習発表会、みなさんの自信と満足があふれた笑顔に一人一人の 確かな成長を確信しました。高等養護部三年生の南中ソーランは勇壮で、多くの方々 に感動を伝え、いつも温かい拍手をもらいましたね。 さて、この三年間の間に、日本の社会でもあなたたちに関わる大きな変化が二つあ りました。 その一つは、「障害者差別解消法」や「奈良県障害のある人もない人もともに暮らし やすい社会づくり条例」がこの四月一日から始まることです。どう、変わるのでしょう。 例えば、みなさんが卒業後、新しい仕事をします。説明を聞きました。一生懸命聞きま したが、でも、やり方が分からないなと思うことがあったとします。それはその人の責 任なのでしょうか。法や条例では、そんな時、周りの人達が、もっと分かりやすく、やり やすくするための工夫をしなければならないと決められています。仕事の場面だけで はありません。学習のときも、地域で暮らすときも同じです。だから、大切なことは、 「分からない」ことをきちんと伝えることです。それは、とても大切なことです。なぜ -1- なら、あなたたちにとって暮らしやすい社会は、全ての人に分かりやすく暮らしやすい 優しい社会になるということだからです。 もう一つは、十八歳から選挙で投票することができるようになったことです。もう、 学ばれたと思いますが、投票権は、自分の生活に関係する多くのことに自分の意見を 表明する機会の一つで、大切な権利です。難しいと考えないで、積極的に国民の一人 としてその権利を使って欲しいと思います。 そして、いずれも大切なことは、自分で決めて伝える、行動することだと思います。 大丈夫です。この輝く三年間の中で、あなたたちはいくつもの決定、自分で決める を行ってきました。そして今のあなたたちがあり、それぞれが自分の場所、働く場所や 学ぶ場所を見つけたのです。卒業する今、自分の決定に自信と誇りを持ち、胸を張っ て堂々と進んでほしいと思います。 (中略) 卒業生の皆さん、あなたたちは本当によく頑張りました。胸を張って堂々と生きるあ なたたちの未来に多くの幸せが待っていること、そしてあなたたちのますますのご活 躍とご健康をお祈りいたしまして祝辞といたします。 平成二十八年三月一日 奈良県立奈良東養護学校長 木 下 理 恵 -2-
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