CNF(カーボンナノファイバー不織布)を活用した、複合材料製品の開発

CNF(カーボンナノファイバー不織布)を活用した、複合材料製品の開発
№3-1
緒言
CFRPは金属材料に比べ、比強度、比剛性に優れ、疲労強度、耐腐食性にも優れる事から、主要な
航空機構造材料として位置づけられている。
一般的にCFRPの成形は、炭素繊維の積層、成形、樹脂含浸、オートクレーブによる硬化 の4工程から
成形される。
炭素繊維を接着する為に、樹脂を使用するが、その為に炭素繊維の層間剥離が問題視されている。
それを解決する手段として有効視されているカーボンナノファイバー不織布の研究を行った。
CNF(カーボンナノファイバー不織布)の製造方法
CNFの製造工程 工程1 エレクトロスピニング法による
アクリルナノファイバー不織布の製造例
工程2
耐炎化処理
工程3
炭化焼成処理(CNF化)
特徴
熱収縮大
熱収縮小
炭素化(不純物除去)
製造条件
常温
220℃
1100℃
※ 最大の性能を得る為には、上記3つの工程が必要である。
エレクトロスピニング法の説明
アクリル溶液を直流高圧電流でノズルから飛ばし、細分化する事で、直径がナノレベルの繊維から成る
アクリルナノファイバー不織布を製造する方法。
ドラムコレクター
ナノファイバー化した
繊維をドラムの表面に捕集する。
ノズル ここから原料溶液が
吐出される。
ノズル先端の様子
+電極 ノズルに+電荷をかける。
シリンジ ここに原料溶液が保持され
ノズルより吐出される。
工程1 アクリルナノファイバー不織布製造条件について検討を行った結果を以下に示す。
原料樹脂液濃度 低い
繊維の太さは細いが、液滴状の太い部分が発生する。
A
繊維径 50~150nm
液滴部 200nm以上
原料樹脂液濃度 最適 この条件でエレクトロスピニング実施
繊維の太さは比較的均一である。
B
繊維の重なり合い、密度も均一である。
繊維径 150~250nm
C
原料樹脂液濃度 高い
繊維の太さムラが大きい。
繊維の重なり合い、密度ムラが大きい。
繊維径 600~1000nm
№3-2
工程2、工程3 カーボンナノファイバー不織布製造条件の検討を行った結果を以下に示す。
不良条件
良条件(当社選定条件)
割れ
皺
耐炎化処理温度 200℃ 炭化焼成温度 1200℃ 耐炎化処理 220℃
炭化焼成処理 1100℃
2009年より研究を開始し、2010年には11cm×11cm(4.3in×4.3in)サイズのCNFが出来た。
2012年現在、35cm×12cm(13.8in×4.7in)サイズの厚み、密度を安定させたCNFを製造できている。
CFRPの層間剥離防止方法の検討
カーボンナノファイバー不織布の特徴は、炭素繊維クロスに比較して表面積が非常に広い事である。
(約800㎡/g)この特徴を生かし、我々が検討しているのは、炭素繊維の層間に発生する樹脂層を
なくす為、炭素繊維の層間にCNFを挿入して積層し成形する事で、樹脂層をなくし炭素繊維の
層と層の間の接着性を向上させる方法である。
通常CFRP断面
CNFを層間に挿入したCFRP断面拡大写真
炭素繊維層
(たて糸)
樹脂層
炭素繊維層
(よこ糸)
①積層性と成形性の評価
CNF層
CNFが層間に入る事で樹脂層は無くなる。
炭素繊維織物とCNFを交互に積層し積層性を確認した所、CNFと炭素繊維織物とのなじみ性は良かった。
この積層品を成形し、超音波探傷と表面観察を行ったが、成形性に問題がない事を確認した。
②衝撃後圧縮強度試験(Compression After Impact strength CAI TEST)
CNFを層間に挿入して作成したCFRP板を用いて、衝撃後圧縮強度試験を行った。
試験方法は SACMA(Suppliers of Advanced Composite Materials Association) SRM 2R-94法で
衝撃エネルギーは6.67J/mm(1500in‐lb/in)で行った。
試験結果
C CN
F
R 入F
Pり
C
F
R
P
試験前 超音波探傷画像
図1
落錘後のCFRP板
超音波探傷画像
図3
№3-3(完)
グラフ1 衝撃後圧縮強度グラフ
200
195.6
CNF無し
180
195
図2
図4
剥離部
)a190
PM
(ht
gn185
ert
SI180
AC
179.9
175
170
CNF有り CNF無し
剥離部
図1、図2の試験前超音波探傷画像より、CNFをCFRP層間に挿入しても成形性に問題は無かった。
図3、図4の落錘後の超音波探傷画像より、落錘後の剥離面積はCNFが入る事で約20%減少した。
グラフ1より衝撃後の圧縮強度は、CNF使用により通常CFRPに対して約10%高い値を示した。
③剥離試験
剥離試験条件
巾2.5cm(1in)×長さ25cm(10in)の炭素繊維織物を2枚用意し、長さ12.5cm(5in)の部分を
接着した。2枚の炭素繊維織物の層間、接着部分に対してCNFを入れた物と入れない物を作成した。
次に、接着部を剥離させて、剥離強度を調査した。
試験片
試験状況
剥離試験結果
剥離面の写真
CNF無し
図
図
CNF有り
グラフ2 剥離強度グラフ
800
750
f)g( 700
度650
強
離
剥
CNF有り
750
CNF無し
625
図5、図6の色の白い部分が接着に寄与している部分である。
図5と比べると、図6はほぼ全面で接着していると思われる。
炭素繊維織物の層間にCNFを挿入する事で接触面積が拡大し、
グラフ2より、剥離強度は約20%向上した。
(
度
強
離600
剥
550
500
CNF有り
750
まとめ
CNFの基本的な製造技術を獲得する事が出来た。
CFRPの層間にCNFを挿入する事で、CFRPの耐衝撃性、剥離強度が向上する効果が得られた。
今後、CNFの濡れ性を向上させる為、製造方法や、界面活性剤の使用を検討する。
以上