World Tourism Organization

報道発表資料
To Start off
UNWTO Regional Support Office for Asia and the Pacific
世界観光機関(UNWTO)アジア太平洋センター
国連世界観光機関(UNWTO)観光と技術に関する国際会議について
2016 年 6 月 2 日 於:奈良
1. 背景
過去 50 年にわたり、旅行・観光業はテクノロジーの革新に恩恵を受けてきた。陸路及び空
路ともにより多くの乗客をより迅速・安全にかつより低コストで運ぶため、また世界中の
人々が良心的な価格で且つ長期間の旅行が可能となるため、輸送部門において技術革新が続
けられてきた。
旅行部門は、コンピュータの活用によってビジネスの成長を大幅に向上させた最初の部門の
一つである。顕著な例としては、1960 年代、航空会社によって構築された横断的販売網
(GDS)がある。これによって旅行代理店は予約記録に容易にアクセスし、いくつもの旅程
を適切なスケジュールで予約できるようになった。GDS の他にも、主要なホテルやレンタカ
ーのグループを網羅する予約システムが開発された。広範なコンピュータ利用の黎明期にお
いて、これらのシステムは常に改善を重ね、旅行代理店やその顧客のニーズにより良く対応
してきた。
1980 年代、情報・予約システムの範囲は拡大し、様々な交通手段による旅行や宿泊施設も
含めて、顧客が直接に予約をすることも可能になり、多くのシステムが開発された。成功を
おさめたもの、そうでないものもあったが、情報通信技術が顧客サービス向上につながる好
機をもたらすという認識は高まっていった。
1990 年代半ば、広範な公共・ビジネス利用のためのツールとして、インターネットとワー
ルド・ワイド・ウェブ(WWW)が出現し、コンピュータによる情報・予約システムに無数の
変化が現れた。観光業の現場で、アプリケーションが早急に開発され、主要なオンライン旅
行予約サービス事業が新たに立ち上げられた。例えば、マイクロソフトの Expedia(エクス
ペディア)、セーバーGDS の Travelocity(トラベロシティ)など様々なものがある。この
時期、観光セクターは大規模な革新を遂げ、特にマーケティングや販売のビジネスプロセス
に大きな改革の可能性が開かれた。これを踏まえ、UNWTO は、重要な報告書の作成に取り組
み、「Marketing Tourism Destinations Online(マーケティング・ツーリズム・デスティ
ネーションズ・オンライン)」が 2000 年に発表された。これは、初期のオンライン技術、
その応用および普及の機会を、旅行・観光産業がどう利用すべきかということに焦点を当て
た最初の報告書であった。また、この報告書の発表後、約 3 年にわたり世界各地で会議やセ
ミナーが続々と開催され成功をおさめた。
2004 年・2005 年以来、デジタル世界は劇的に変化した。この変化はスマートモバイルアプ
リケーションとソーシャルメディアの出現によるもので、これらが相まって消費者の行動と
サービス提供のあり方を根本的に変えた。消費者が行動の主導権を握るようになったのであ
る。
現在、第 3 段階の変化が起きつつある―またもや、人々の行動の仕方を変えるような、既存
のものを破壊する新しい技術とアプリケーションの組み合わせである。Accenture(アクセ
ンチュア)傘下でデザインとイノベーションのコンサルタント業務を行う Fjord(フィヨル
ド)は、「今後 5 年間で、センサー、クラウド、スマートデバイスとの接続、リアルタイム
解析が統合され、新しい次元の結合知を生み出す。これにより、旅行者にとって興味深く、
またますます不可欠となるデジタルサービスを提供する各組織の能力が革命的に向上するだ
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ろう」と予測する。GPS や地図サービス(特にグーグル・マップやグーグル・アース)が広
範に利用可能となり、ポータブル機器やカーナビシステムで広く使われるサービスに応用さ
れて、路線計画、ルートナビ、空間検索といった、一連の主要な地理空間的なアプリケーシ
ョンが新たに開発されるに至った。
新しい技術はさらに、友人や家族、企業、また旅行先との連絡や対話など、私たちが働き遊
ぶ方法をも変化させていくだろう。このような新技術には、ウェアラブル技術、ビッグデー
タ、旅行者のための「MaaS(Mobility-as-a-service、サービスとしてのモビリティ)」ア
プリケーション、無人自動車、ロボティックデバイス、3D印刷、新しいモバイル決済アプ
リケーション、光無線通信技術( Li-Fi)、「Internet of Me(個のインターネット体
験)」、ジェスチャー技術、音声認識、即時的かつ効率的モバイル翻訳などがある。
これらの技術の応用展開は、従来の方法を打ち壊すことで大きな課題を生み出す一方、イノ
ベーションに前向きに挑み、それを成し遂げようとする人々にわくわくする機会を与える。
消費者行動に根本的な変化をもたらしているイノベーションの一つの例は、「共有経済(シ
ェアリング・エコノミー)」である。このコンセプトはすでにしっかりと確立されており、
将来的には、共有を前提とするモノやサービス利用という点で、社会の機能の仕方にさらに
幅広い影響を与える可能性がある。
デジタル技術の革命と並行して、工学技術や材料科学において大きな進展が継続していた。
このため、陸上および航空輸送システムが高度化した。また、選択肢が大きく広がった旅行
先への移動・アクセスについても、スピード、経済性、快適性がさらに改善された。
技術的な変化に関するこのような二つの面は、互いに補強しあい、これまでの 30 年間にみ
られるような観光産業の飛躍的成長をもたらした。観光と技術に関する国際会議は、各国代
表者が、この期間に起こったイノベーションから教訓を得て、さらに今後に期待されるイノ
ベーションについて、またそれが旅行・観光産業に及ぼす国内および国際的な影響について
理解を深めることを意図している。
2. 目的
今回の会議は、観光地の組織および企業が、それらにとって最も重要な、現在の技術と新技
術に関する理解を深める一助となることを目的としている。特に、以下の点を検討する。
・新しい市場の誘致、顧客関係管理(ソーシャルメディアの役割も含む)など、マーケティ
ングにおける新技術の効果的な利用。コンテンツの獲得と配信。
・新しいビジネスモデル、知識やスキルの利用拡大、ビジネス関連のネットワークやパート
ナーシップの構築、持続可能性の強化、ロボット工学も含めた新しい応用展開を進め、産
業界の業績向上を図るテクノロジー。
・輸送の効率化、自動処理、また仮想現実や拡張現実などの技術の活用を通して、旅行中お
よび目的地での観光客の体験を豊かにし、旅行の機会を増やす取り組み。
また会議では、経済の他の分野において、観光産業の多様な分野に新技術を応用するニーズ
や機会についての意識を高めることを目指している。
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3. 会議概要
会議冒頭で開会式を行う。国土交通省、UNWTO 事務局長、奈良県、日本の産業界より歓迎の
辞、開会の辞をいただく。
次に、基調セッションを行い、旅行先の選択や旅先での活動のタイプの点から、(あらゆる
種類の)新技術が、旅行・観光産業にどのように影響し、また市場の大きな変化をどのよう
に促してきたかについて概観する。
3 つのセッションで、旅行・観光産業の様々なセクターに対して新技術が及ぼす影響につい
て検討していく。第一セッションでは、新技術および、新技術が航空・鉄道旅行、旅行業、
ホテル・行楽地、テーマパークに与える影響に焦点を当てる。第二セッションでは、観光目
的地の各組織に対する新技術の影響をテーマとする。第三セッションでは、業界の様々な分
野および消費者の旅行先や旅先での活動の選択に多大な影響を与えることとなった新機軸や
新しいビジネスモデルを導入した企業を取り上げる。各セッションの最後に、議長が重要な
課題を総括し結論をまとめる。
4. 参加者対象者
1) 海外からは、主にアジア太平洋地域各国の政府観光省・庁および観光団体
2) 国内では、日本政府、地方自治体、観光産業、旅行代理店、輸送サービス機関、大学、
マスコミ関係等。
3) 観光業の重要性に関する意識啓発を目的に、製造分野および情報通信技術分野の代表者
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