VDB Loi_Client briefing Note_New banking law to shake up related

関連当事者への与信、リース会社および銀行
による利益分配を刷新する新銀行法
9つの外国銀行に対する免許の付与に続いて、銀行
関連当事者取引、株主に対する配当の支払い、広告
その他の金融機関の免許および経営に関する重要な
および銀行株式の取得又は譲渡に関する条項も改正
法律である1990年のミャンマー金融機関法(FIML
される。銀行の、アドミニストレーション、再生お
)の改正作業が始まった。パブリックコメントに付
よび破産に関する、ほぼ完全に新しい章が創設され
されたミャンマー銀行・金融機関法の草案(以下、
「法案」という。)から判断して、銀行の監督に関
た。このノートでは、我々が着目した法案の特徴に
ついて概要を示す。
する長大な条項は、より詳細に具体化され、多くの
場合で拡張される一方で、いくつかの全く新しいル
ールも導入される。法案は現在国会で審議中である
。
注目すべき新しい条項の一つは、その他の事業金融
会社、リース会社およびマネーサービス事業から成
る「ノンバンク金融機関(NBFI)」と呼ばれる新
しいカテゴリーの創設である。ノンバンク金融機関
に対する規制は、現時点の法案にはほとんど存在し
ない。しかし、以下で詳細に述べる通り、リース・
レンタル会社がミャンマー中央銀行の免許を受ける
ための新しい要件に注意するのが良いだろう。我々
は、既存の金融会社の免許は、ミャンマー中央銀行
によって有効性を確認されなければならないことに
もも着目した。これは、ミャンマー中央銀行が、免
許が発行される条件を変更する可能性をもたらす。
銀行の株主に対する与信はもはやできない
ミャンマー金融機関法は、比較的明確に、関連当事
者取引の枠組みを定めた。
銀行は、ミャンマー金融機関法で定義された関連当
事者と事業を行うことが認められる、しかし、取引
法案が実際に消費者の保護を改善することは明らか
は、まず、取締役会の承認を得なければならず、独
であるけれども、これで十分かどうかは疑問が残る
立当事者間取引でなければならず、ミャンマー中央
。一人の大株主によって支配される銀行は、容易に
銀行の課す制限を遵守しなければならない。主要な
3分の2の取締役会決議をまとめることができる。加
株主および彼らが支配する会社、役員およびその家
えて、担保の性質および量は定義されない。大株主
族だけでなく、彼らが少なくとも10%を出資する会
が、自らの銀行からリスクの高い不動産事業に対す
社も、すべてミャンマー金融機関法により「関連す
る与信を引き出し、プロジェクト会社の株式のみを
る」とみなされる。
担保として提供するシナリオが想定される。事業が
失敗した場合、株式はほとんど価値を失う。おそら
「十分な」または「相当な」持分に関して法案に混
く、ミャンマー中央銀行は、関連当事者への融資に
乱が存在するようであるが、法案は既存の概念を大
対し追加要件を課すことを検討するだろう。そして
いに言い換える。株主に関して、法案は新しい考え
それは、法案においても想定されている。
を導入する。取締役会による承認の如何にかかわら
ず、銀行は、自らの株主、少なくとも5%の銀行の
全てのリース・レンタル会社は、中央銀行の免許が
議決権株式を所有する株主に対し与信をしてはなら
必要だろうか?
ない。その点は、議決権を有する取締役その他の役
員についても同様である。ミャンマーの銀行が、大
急成長する器具リース事業は、法案が、リース・レ
規模コングロマリットの一部であることを前提にす
ンタル事業の経営に関するミャンマー中央銀行の承
れば、法案の残りの関連当事者条項にわたってしば
認を得るために完全に新しい要件を課すという、新
しば用いられる「直接または間接」という文言の詳
たな課題に直面する。これらの事業は、「ノンバン
細が、なぜ今回も追加されなかったのか不思議に思
ク金融機関を経営するために、発効日の6ヶ月以内
われる。
に、ミャンマー中央銀行から書面での承認を取得し
なければならない」。
銀行の株主である他の会社に対する与信については
どうだろうか?
各規模のリース事業をミャンマー中央銀行による規
制・監督に服させることが立法者の意図であるかど
法案によれば、銀行は、その株主または社長が直接
うかは、明らかではない。我々は、ミャンマー中央
または間接的に所有している会社に対する与信を継
銀行のリソースが過剰に利用されすぎるため、おそ
続することができる。しかし、法案は、ミャンマー
らく、いくつかの基準を定めることがふさわしいと
金融機関法に存在しない二つの重要な条件を追加す
確信する。
る。(1) 関連する取締役会の承認は、ミャンマー金
融機関法に既に存在するが、単純な過半数ではなく
さらに、なぜ器具の「リース」が、明白にミャンマ
、3分の2の過半数によって賛成されなければならな
ー中央銀行からの免許を必要とする活動の範囲内に
い、 (2) 全ての与信が担保を有していなければなら
有るかを検討することは困難である。ファイナンス
ない。もちろん、国内政策に関する一般の要件およ
・リースは、多くの金融機関にとって中核事業の一
び大口エクスポージャーに関する制限も同様に適用
部であるが、レンタルはそうではない。しかし、少
され続ける。たとえば、一人またはグループに対す
なくとも現在の法案に基づけば、器具のレンタルを
るエクスポージャーは、銀行の中核的資本の20%に
金融法制の射程内に含めることが立法者の意図であ
制限される。
ることに疑問の余地はない。 法案において、リー
ス事業は「リースが資産の購入オプション付きか否
それは、2013年、ミャンマー中央銀行が、ミャンマ
かにかかわらず、動産を賃貸でリースまたはサブリ
ーの完全に所有する金融会社のいくつかに免許を与
ースする事業」と定義される。
えそうであるとの噂が広まった時に変化した。どれ
ほどの会社が実際に待望の免許を得たか明らかでは
ミャンマー中央銀行がリース会社についてどのよう
なかった。いずれにせよ、少なくとも市場で期待さ
な規則を考えているかは明らかではない。法案は、
れた新しい金融会社の波は実現しなかったが、いく
すべてのノンバンク金融機関について、「ミャンマ
つかの免許はそこで実際に付与された。
ー中央銀行は、適切と考える条件を課すことができ
る」、そして、「必要な規則および指針を発出する
法案に戻る。現在、「ノンバンク金融機関」に含ま
ことができる」と述べるのみである。リース会社に
れる金融活動は、立法者から注目されている。法案
関する詳細な条件は定められていない。
は、ノンバンク金融機関が以下の活動を(一つまた
は複数)経営する事ができると想定する。
全種類のリース・レンタルを、主として銀行に対す
1.
金融会社
る法律の射程に含めることは、最善の方法ではない
2.
リース
。我々が述べたとおり、多くの会社がこの分野で既
3.
ファクタリング
に活動しており、更に多くの会社の設立が始められ
4.
クレジットトークン
ている。車両および器具の製造業者および販売業者
5.
マネーサービス
を含む、さまざまなサプライヤーは、この市場に参
6.
中央銀行が定めるその他のクレジット
加することに関心を持っている。取引段階での保護
サービス
を除く新しい免許要件は、完全に未定義のまま残さ
れたため、将来の経営者および契約に対して相当な
法案は、その問題に関する、金融会社またはその他
不明確性をもたらすだろう。
ノンバンク金融機関の規制枠組みについてほとんど
明らかにしない。既存の金融会社は、新法に基づき
既存の金融会社免許は再申請が必要である
、発効日から6ヶ月以内に免許を再申請しなければ
ならないことは明らかである。銀行の場合と異なり
法案は、外国銀行および地方銀行に対して興味深い
、法案は、ノンバンク金融機関の申請に必要な書類
問題を提起するだけではない。1990年のミャンマー
を定めない。金融会社に免許を与えることに対する
金融機関法は、ミャンマーにおける金融事業の可能
ミャンマー中央銀行の過去の躊躇と合わせて考える
性を生み出した、しかし、認められた免許はごく僅
と、新しい金融会社の免許は、ミャンマー中央銀行
かであった。同法6条によれば、1990年のミャンマ
にとって最優先のものではないと考えられる。
ー金融機関法に基づく金融会社の活動範囲は、「主
として、物または役務の購入に対する融資」であっ
銀行株式の譲渡に関するミャンマー中央銀行の承認
た。金融会社に特有の点は、彼らが、預金を受け入
基準が下がる
れることで活動の資金調達を行うことは認められず
、実際にも行わないということである。それに加え
法案は、より詳細に、相当な持分の譲渡の構成を定
て、1990年のミャンマー金融機関法は、金融事業に
める。法案において、相当な持分は「直接又は間接
ついて詳細に規定しなかった。ミャンマー中央銀行
の10%以上の金融機関の資本又は議決権の所有、も
がこの活動に免許を与えることに躊躇するとすれば
しくは、中央銀行が定める直接又は間接の金融機関
、問題全体がほとんど注意を引かない。
の経営陣に対する支配権の行使」を意味する。それ
と比べて、ミャンマー金融機関法は「資本の15%を
表章する株式」の譲渡のみが、ミャンマー中央銀行
の承認を必要とすると定める。
預金の受け入れは、広く定義されすぎているだろう
か?
したがって、法案は、二つの主要な点で異なる。
(1) 法案は、15%から10%以上に基準を下げる。(2)
予期される通り、預金の受け入れは、銀行法におけ
法案は、
ミャンマー中央銀行の承認が必要となる
る重要な問題の一つであり、法案も例外ではない。
権利の独立のカテゴリーとして、議決権の譲渡を追
法案において、預金は「現金または現金同等物の対
加する。
価とともに、全体または一部が払い戻される、また
は払い戻すことができる条件で支払われる現金の総
その変更は重要である。優先株の議決権の変更また
額」を意味し、「当該払い戻しは、要求、満期到来
は、優先株の譲渡は、それ自体ミャンマー中央銀行
、支払いをする者とそれを受け入れる者による約定
の承認の引き金となる。もちろん、銀行の定款変更
のいずれかで行われる」。
は、ミャンマー中央銀行による承認が必要である。
そしてそれは、種類株式が創設される場合、ミャン
この文言が多少の問題をはらんでいる。預金の目的
マー中央銀行の関与が必要となることを意味する。
または預金を受け入れる者の事業について触れてい
ない。預金の定義および「何人も預金を受け入れて
銀行は、保険業および証券仲介業の子会社を設立す
はならない」(銀行免許を得た場合を除く)と定め
ることができる
る条項は、
純粋な客観的基準に基づいている。す
なわち、法律で定義される預金を受け入れる者は、
ミャンマー金融機関法は、銀行および保険が別々に
営利会社であっても、原則としてその範囲内にある
規制される活動であるとの基本原理に基づき起草さ
。
れたが、この法案は銀行と保険の明確なつながりを
創設する。法案は、多かれ少なかれ、明文で保険業
法案の範疇にある預金とみなされるためには、支払
が独立の免許を必要とすると定めなくとも(その意
われる現金の総額が、対価とともに、満期時、条件
図はあったかもしれないが)、銀行が保険業に従事
に従って払い戻されると合意されれば、本質的に十
することを認められることを想定する。法案は、以
分である。
下の通り定める。
しかし、多くの事業が、その定義通りの預金を受け
独立に設立された子会社を通じて、銀行は以下の事
業に従事できる。
入れている。他者との取引に従事する者は、一方が
他方に預金を支払い、その預金は利子付きで払い戻
保険業
されると合意することがある。恐らく、預金の範囲
(b) 証券仲介業
をより厳格に定義するのが良いだろう。例えば、預
(a)
(c)
中央銀行によって承認される銀行事業
けられた現金に基づく金銭的リターンを生み出すこ
と関連するその他の活動
とを主な目的とする取引を参照することで、預金の
範囲を定義する。
法案は、「当該子会社は、銀行と同じ程度で、この
法律による監督に服するものとし、中央銀行は、当
恐らく、預金の範囲をより厳格に定義するのが良い
該銀行およびその子会社に関する情報を、各企業で
だろう。例えば、預けられた現金に基づく金銭的リ
独立しておよび連結基準で報告することを別途求め
ターンを生み出すことを主な目的とする取引を参照
ることができる」と定め続ける。
することで、預金の範囲を定義する。
利益の分配と留保に対する変更
「血液銀行」や「映画銀行」など、金融以外の文脈
での「銀行」という文言の使用に対して、一般的例
法案は、強制留保に対するルールをわずかしか改正
外は存在しない。そのような組織は、ケースバイケ
しないが、より適切な詳細な規則が定められること
ースで例外が適用され得ると法案は述べる。投資顧
が期待される。資本の100%に相当する強制留保は
問会社は、免許を受けた銀行でない限り、「投資銀
、ミャンマー金融機関法により税引後純利益の25%
行業」の文言を用いる余地は存在しないようである
を留保することで積み立てられるが、税引後純利益
。余談ながら、これは、現行法によるミャンマー中
の50%が払込資本の50%まで留保されるように命じ
央銀行の立場と一致する。
ることで、わずかに改正される(改正前の場合、25
%を資本の100%まで留保する)。
銀行の広告に対する規律
加えて、法案は配当の分配に対する新しい制限導入
銀行は、自らが望む通りの広告をすることができな
する。「銀行の免許を受けた機関は、以下の場合に
い。法案によれば、ミャンマー中央銀行の目から見
、配当の決議または支払いをしてはならず、株主に
て「誤った、欺瞞的またはミスリーディングな」広
対し、いかなる形式の分配もしてはならない。
告は、修正または撤回されなければならない。広告
(1) 創立費およびその他の有形資産によって表章さ
れない支出項目を含む、全ての資産化された費用が
、完全に償却されるまで。
(2) その結果、資産の帳価合計額が、負債および減
損されていない資本金の簿価合計額を下回る場合。
は、事実上消費者保護法によっても規律される。そ
して同法は、消費者による追加の救済を定める。消
費者は、中央消費者保護委員会(CCPC)によって
調停のために設立された法定機関である、消費者紛
争調停委員会(CDSC)に、銀行との紛争を持ち込
むことが認められる。銀行の広告がミスリーディン
(3) 銀行の免許を受けた機関が、この法律の条項に
グとみなされる場合、 いずれの規制当局が優先権
より課される要件に違反する限り。
を有するかは特に示されていない。おそらく、ミャ
ンマー中央銀行および中央消費者保護委員会の両方
「投資銀行」の文言は、免許を受けた銀行のみ用い
が、固有の権限を有するのだろう。ミャンマー中央
ることができる
銀行は広告を停止させる事ができる一方で、消費者
紛争調停委員会は、消費者の苦情に対する調査に着
ミャンマー金融機関法はすでに、一般的な文言で、
手し、警告等の行政的措置を行い、消費者に対する
「預金を受け取る機関は、銀行とみなされるものと
倍賞を命令し、他の省庁と連携することで免許を取
する。当該機関のみが、『銀行』の名称を使用する
り消すことができる。消費者保護法は、さらに、誤
権利を有する。他の機関は、商号に『銀行』の名称
った情報を提供することで顧客を勧誘した場合の銀
を使用することを禁じられるものとする」と定めた
行に対する刑事罰を定める。
。
これらのルールは、現在より詳細となっている。法
案は、「銀行家」および「銀行業」も、免許を受け
ご質問がございましたらメールにて
た銀行以外の者による使用が禁じられると定める。
Edwin
また、文言を他の言語に翻訳したものも、使用して
はならない。法案には、 銀行協会および国際組織
に対するいくつかの例外が定められている。
Vanderbruggen
を ご 連 絡 く だ さ い
過去 Loyens & Loeff に勤務、DFDL
のパートナーを勤めました。5 年間
のミャンマー税法と投資実務経験を
含め、21 年の実績を持つ弁護士、
学者、そして、政府顧問です。ミャ
ンマーにおける銀行及び金融機構に
許可、規制問題、 戦略的提携及び
ファイナンス取引に対するアドバイ
スを提供します。商業銀行、開発銀
行、企業借用者及び国有企業にアド
バイスを提供します。
は中国弁護士資格を有し、
北京大学学士号及び会社・金融法修
士号を取得しています。日本の大き
な法律事務所の一つである森・濱
田・松本法律事務所で 3 年間の勤務
経験があり、流暢な日本語と中国語
を話します。Xi はタイとミャンマ
ーでの実務経験もあり、税法、企業
買収及び投資構築へのアドバイスを
専門としています。
東南アジアのプライスウォータ
ーハウスクーパーズ(PwC)での
様々な分野の会計監査業務 3 年
間の経験を含み、総務・管理、
会計、会計監査畑で 22 年以上の
経験があります。横浜国立大学
経営学部卒業、当事務所の日系
企業担当として、カンボジアと
ヤンゴンを行き来します。
VDB Loi 東京連絡事務所を担当
します。過去、日本のプライス
ウォーターハウスクーパーズ
(PwC)のパートナーとして、25
年以上の経験があります。ミャ
ンマー及び日本駐在。日系の投
資家とミャンマー政府機関との
やり取りを調整します。