グランドフォークスでのオーロラ観測 - 航空操縦学専攻

2015 年度秋学期航空操縦学専攻卒業研究前刷
グランドフォークスでのオーロラ観測
指導教員 利根川豊 教授
研究者 2BEO1108 大関翔輝
1.目的
れる。また、グランドフォークスではなぜ
本研究の目的は大きく 3 つある。第一に
オーロラが 1 年を通して数回の頻度でしか
我々がアメリカグランドフォークスで実際
見る事が出来ないのか、オーロラがどのよ
に遭遇し撮影したオーロラが如何なる状況
うに発光し、そのエネルギーがどこから来
で発生したのかを理論的に考察する事であ
ているのか様々な事を疑問に感じ、本研究
る。その為にはオーロラに関する基本理論
を行うに至った。
を理解する必要がある。その為、オーロラ
に関する科学的基礎知識を学び、まとめる
3.研究方法
ことを第2の目的とする。第 3 の目的は、
先ず、オーロラ関係の参考書によりオーロ
一人でも多くの後輩がアメリカ留学中にオ
ラの科学的基礎知識の理解に務めた。次に、
ーロラを見逃すことなく観察できるよう、
自ら グランドフォークスで撮影したオー
本研究による知見を分かりやすくまとめ、
ロラがどのような宇宙環境下で発生したの
オーロラ観察の手引きとすることである。
かを考察するために、インターネット上に
公開されている各種観測データを調べた。
2.研究背景
具体的には、オーロラが観測された時間帯
我々は米国ノースダコタ州グランドフォー
の太陽風の状況を知るため、観測衛星 ACE
クスに約 1 年半飛行訓練のため滞在した。
による太陽風速度、密度、磁場の観測デー
その際、数回に渡りオーロラを観察する機
タを収集した。また、地上での磁場観測を
会があった。そしてオーロラの美しさや雄
基にした2つの指数、AE と Dst 変動との比
大さに感動した。そのオーロラをより多く
較を行った。AE はオーロラに伴うオーロラ
の留学中の本専攻学生に見てもらいたいと
ジェット電流強度を、Dst は磁気嵐に伴う
考え本研究に着手した。実際多くの学生が
赤道環電流強度を表す磁場変動量である。
オーロラを見た事がなく、オーロラを見る
それにより、グランドフォークスでオーロ
ことを留学中の一つの楽しみのとしている。
ラが観測された同時刻の、太陽風の状況お
しかし、学生はオーロラが出現しているに
よび地球磁気圏の状況を把握することがで
も関わらず、それに気が付かずにオーロラ
きる。
観察のチャンスを逃しているのが現状であ
る。それは、オーロラ出現を予測する方法
4.研究成果
や観測に適している場所を知らないが為に、
オーロラに関してオーロラの発生原理、種
数少ない貴重な機会を逃していると考えら
類、色の違い、発生場所、発光原理等々の
基礎的な知識についてまとめ知見を深めた。
この自然現象が宇宙空間や地球磁場などに
次に、グランドフォークスで撮影したオー
与える影響を研究目的で、多数の人工衛星
ロラの写真データの編集を行った。それを
や世界中の地上観測所で観測が続けられて
基にし、撮影したオーロラがどの様なオー
いる事が分かった。我々がグランドフォー
ロラであったのかを ACE 衛星や地磁気資料
クスで撮影したオーロラ写真と太陽風や地
センターなどからのデータを用い、グラン
上観測データとの関連を比較することによ
ドフォークスでのオーロラが観測されたと
り、オーロラが現地で観測出来る条件につ
きの太陽風や地磁気擾乱の特徴を考察した。
いて考察することができた。これまでは大
また、この作業の中でオーロラの観測に必
規模な磁気嵐が発生した時のみグランドフ
要とされるデータの読み方、利用の仕方、
ォークスでオーロラが見られると考えてい
それが意味する事に関して理解をする事が
たが、実際は大規模な磁気嵐でなくとも条
できた。これらの研究内容から本研究の目
件がそろえばグランドフォークスから
的であった、グランドフォークスでオーロ
200km ほど北のカナダ国境付近まで南下し
ラを観測するのに適した場所の紹介やオー
てきたオーロラを観測出来る事に気が付い
ロラを綺麗に写真撮影するための技術や装
た。このようなことを理解していれば、学
備に関しての手引きを作成した。さらに、
生は現地でオーロラを観測する機会を増や
オーロラの出現を知る為のデータ、関連サ
すことができる。
イトの紹介等々についてもまとめた。
オーロラにはまだまだ多くの不思議があり、
5.結論
我々人類をとりことする宇宙規模での素晴
オーロラに対する基礎的知識を学ぶ中でオ
らしい自然現象であり、時間をかけて学び、
ーロラは太陽と地球がお互いに関係し合い
写真で撮影するなど観測を続ける価値が大
多くの事柄が合わさった時に発生する宇宙
いにあると言う事を本研究を通して改めて
電磁現象の一つである事が分かった。また、
認識することができた。
6.参考文献
[1] ニールデイビス、オーロラ
地人書店出版
1996 年
[2] 國分勝也 オーロラ 東海大学出版 2012 年
[3] キャンディスサウィッジ
神秘のオーロラ
地人書店
[4] 上出洋介
オーロラ太陽からのメッセージ
山と渓谷社
[5] 上出洋介
オーロラの科学
2010 年
[6] 上出洋介
オーロラと磁気嵐
1998 年
[7] 篠原学
宇宙天気
誠文堂新光社
2001 年
東京大学出版会 1987 年
誠文堂新光社
2009 年
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