PENの最新号 - 長野県テクノ財団

PEN
ISSN 2185 - 3231
Public Engagement with Nanobased Emerging Technologies
N E W S L E T T E R
April 2012
Volume 3, Number 1
PEN April 2012
1
Table of Contents
国際標準化 ISO/TC266 Biomimetics が発足… ……………………………… 3
連載 生物規範工学 第七回 「かたちの意味」 (機能) の解明を
生物学に期待しなければ工学との交流は進む?… …… 6
連載 生物規範工学 第八回 アリの 「敵 ・ 味方」 識別フェロモンセンサーに学ぶ… …………………… 12
連載 李相憲コラム③ 神経工学の発展が我々に課す問いと悩み… ………… 21
海外動向… ……………………………………………………………………… 24
寄稿 滋賀での実践 - 自然に学ぶものづくり ・ まちづくり……………………… 28
国内動向… ……………………………………………………………………… 31
寄稿 ナノ物質のリスク評価、 国内における展望… …………………………… 35
Cutting-Edge Technologies
プレスリリースより…………………………………………………………… 37
豊蔵レポートより… ………………………………………………………… 45
台湾 ITRI より… …………………………………………………………… 62
韓国 NNPC より… ………………………………………………………… 67
PE ヘッドラインより… ……………………………………………………… 69
カナダの研究開発動向… ………………………………………………… 73
イベント案内… …………………………………………………………………… 75
李精一氏を悼む…………………………………………………………………… 76
編集後記… ……………………………………………………………………… 78
Column 構造色をもつ鳥① オオルリ……………………………………………………………………………… 11
Column ふわふわの羽をもったティラノサウルスを発見 …………………………………………………………… 68
Cover:枝垂桜とメジロ
花の蜜に引き寄せられるのは、昆虫だけではありません。春にはメジロやヒヨドリなどが忙し
なく桜や梅の花から花へ飛び回るのを見ることができます。約 11 グラムと体が軽いメジロはヒ
ヨドリが止まることができない枝垂桜の花も器用についばみます。
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国際標準化 ISO/TC266 Biomimetics が発足
- 高分子学会 / バイオミメティクス研究会を国内審議団体への動き 産総研ナノシステム研究部門ナノテクノロジー戦略室 阿多誠文
設立の背景、手を挙げたのはドイツ
ISO/TC266 Biomimetics では何を標準化するのか
2011 年 5 月 16 日、ドイツ連邦の標準化機関であるドイ
で は こ の 10 月 か ら 活 動 を 開 始 す る 新 し い ISO/TC266
ツ規格協会
(DIN)
[1] は、
ジュネーブの国際標準化機構(ISO)
Biomimetics は、どのような体制で何を標準化しようとし
に対して、バイオミメティクスに関する新しい技術委員会
ているのだろか。現時点で決まっている事は、ISO/TC266
(TC)設立の提案を行った。このドイツ DIN の新 TC 設立
Biomimetics の事務局を DIN が行うことだけである。事務
の提案は、5 月 20 日には ISO の技術管理委員会(TMB)
局とは実質的な幹事国の事で、ISO/TC266 Biomimetics の
から ISO 加盟各国へ周知され、意見の聴取が行われてい
幹事国(Secretariat)はドイツということになる。現時点
る。すでに今年の 10 月にドイツのベルリンにある DIN で
で ISO/TC266 Biomimetics の議長(Chairperson)はまだ
第1回の本会議を迎えることが決まっている ISO の第 266
決まっていないが、10 月の第1回総会に向けてドイツは
番目の技術委員会 “ISO/TC266 Biomimetics” は、ドイツの
DIN から議長の候補を提案(Nominate)してくると思わ
DIN の提案により発足することになった。
れる。なお、この新 TC に積極的に参加することを表明し
ている Participating Countries、いわゆる P-Member とそ
DIN はこの新しい ISO/TC266 Biomimetics 設立の提案に
の国の国際標準化を担うナショナルボディは、今のところ
先立ち、2011 年 3 月にドイツ技術者協会(VDI)との共
ドイツ(DIN)のほかに、中国(SAC)、チェコ(UNMZ)
、
催により、事前イベント「ISO BIONIK」を開催している。
日本(JISC)、韓国(KATS)、オランダ(NEN)、および英
ドイツでは Bionik という言葉は Biomimetics と同義語と
国(BSI)の 7 カ国である。ただし、どの国でもまだ標準
して扱われている。VDI のライフサイエンスにかかわる技
化のナショナルボディと国内のバイオミメティクスの研究
術理事会には、医療技術、遺伝子工学、バイオテクノロジー、
開発機関との協議が十分に行われていない状況を考える
農業工学、そしてバイオニクスがある。このバイオニクス
と、今後参加国が増える可能性もある。
の理事会から ISO/TC266 Biomimetics の提案をリードし
たのが、BIOKON の Dr. Heike Beismann である。
DIN から ISO への新 TC 設立の提案書(TS/P)によると、
DIN は新 TC 提案の時点で 3 つのワーキンググループ
(WG)
の設立を想定している。具体的には WG1: Concept and
ISO/TC266 Biomimetics で標準化すべき課題とその WG への振り分け(DIN の提案)
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strategy、WG2: Structures and materials、WG3: Bionic
について説明が行われ、Dr. Heike Seitz よりドイツの現状
optimization and information processing である。標準化
について説明が行われた。それに引き続き、今後の ISO/
すべき課題と、その各 WG への振り分けは、上記の表のよ
TC266 Biomimetics の進め方等に関して基本的な認識の確
うに提案されている。
認を行いながら、将来展開について議論が行われた。
以上の事から、ISO/TC266 Biomimetics のなかで進められ
ドイツ国内では DIN、VDI、BIOKON が 2006 年からバイ
るワーキングは、以下のように想定される。
オミメティクスの標準化に関する議論を始め、2008 年頃
から本格的に国際標準化へ向けた動きを加速させてきた。
WG1 では、バイオミメティクスが従来の技術やプロセス、
すでに VDI は、バイオミメティクスに関するナショナルテ
製品とどのように差別できるのか、基本的なところからの
クニカルガイドライン(VDI-Lichtlinien)を作成している。
議論を積み重ねながら、バイオミメティクスの定義に焦点
Dr. Ljuba Woppowa は議論のなかで「バイオミメティクス
を置いた標準化の議論が進められると思われる。
に関するアンブレラの下で」という言葉を繰り返し用いた
WG2 では、バイオミメティクな構造、バイオミメティク
が、実際にドイツはバイオミメティクスの国際標準化の戦
な材料、さらにはバイオミメティクな手法とはどういった
略策定を VDI や BIOKON といった広いネットワークの下
もので、その表面構造や材料、手法からどのような新しい
で包括的に進めてきた。
機能が導き出されるのか、といった点に焦点を当てた標準
化の議論が展開すると思われる。
このようにバイオミメティクスに関する国際標準化に対し
WG3 では、バイオミメティク情報処理、生物に学ぶ新し
て十分な準備を行ってきたドイツであるが、国内でバイオ
い演算のプロセス、生物学的最適化といった課題が議論さ
ミメティクスに関する理解が進んでいるわけではない。実
れる。具体的には、生物の成長の原理の工学的構造への展
際にインターネットによる調査でも、市民の約 8 割の人が
開およびその最適化プロセスといったことが、標準化の課
バイオミメティクスを知らないと答えている。このような
題として議論されると思われる。
状況のなかで ISO/TC266 Biomimetics を設立することは、
「国際的な枠組みでの合意を基本にしなくてはならず、バ
DIN がこのような具体的作業の提案を行ってきた背景に
イオミメティクスのパブリックエンゲージメントの向上を
は、VDI のなかで周到な準備が進められてきた事実がある。
図るとともに、健全で責任のある研究開発と産業化の有益
バイオミメティクスに関する研究開発のみならず、様々な
な指標となると考えている。決して何か制限を設けること
プロジェクトも展開されてきた。この様な成果をベース
を目的とする動きではない」と Dr. Heike Seitz は強調して
に、すでにドイツはバイオミメティクスの基本概念や既存
いた。
の生物学的手法との違い、バイオミメティクな機能を持つ
表面構造、バイオミメティクロボット、バイオミメティク
この議論で交わされた「健全で責任あるバイオミメティク
な物質や構造、情報処理プロセス、建築や構造設計工学と
スの研究開発と産業化のための有益な指標」という考え方
いったことまでドラフトを準備している。これらバイオミ
は、下村教授の日本のバイオミメティクス研究開発と産業
メティクスに関して準備されている VDI- ガイドラインは、
化の現状説明でも述べられたことである。また、下村教授
ISO/TC266 Biomimetics における標準化の議論をリードす
からはバイオミメティクスの認証ともいえる「(仮称)グッ
るに十分な参照資料である。
ドデザイン制度」の導入といった提案も行なわれ、
こういっ
た産業促進の枠組みつくりは積極的に進めるべきだとのコ
ンセンサスも得られた。実際にバイオミメティクスの国際
日本はどう対応すべきか
標準化に関して日本とドイツが考えていることは、極めて
共通点が多いと感じた。
このようなバイオミメティクスに関する国際標準化の動き
4
に対して、日本はどう対応すべきか、日本国内における国
ただ、日本は ISO/TC266 Biomimetics の活動に対する国
内審議団体の設立が急務となってきた。日本の対応を考え
内体制作りを急ぐ必要がある。具体的にはバイオミメティ
るために、先月の 3 月 6 日、ドイツ Dusseldorf 国際空港
クスに関係する研究機関・学会や関係企業・工業会等の枠
に隣接する VDI のオフィスにて、東北大学下村政嗣教授
組みで、日本工業標準調査会(JISC)として ISO/TC266
と BIOKON の Dr. Heike Seitz、VDI の Dr. Ljuba Woppowa
Biomimetics に対応するためのミラーコミティーである国
との意見交換が行われ、筆者も同席させていただいた。下
内審議団体を組織する必要がある。現在、日本バイオマテ
村教授より日本の新バイオミメティクス研究と産業化動向
リアル学会などの国内関係団体との調整の結果、社団法人
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高分子学会のなかに「バイオミメティクス研究会」を発足
用語説明
させ、これを ISO/TC266 Biomimetics に対する国内審議
団体とする方向で関係者の調整が進められている。
国 際 標 準 化 機 構:International Organization for
Standardization(ISO)は、電気・電子・通信分野を除く
読者の皆様のなかには、
「まだまだ基礎的な研究の段階で
工業分野の国際的な標準である国際規格を策定するための
あり、産業化のための工業標準化など時期早尚ではないの
民間の非政府組織。スイスのジュネーブに本部を置く。な
か」
、「自分の首を絞めることになるかもしれない標準化を
お、電気・電子技術分野の国際標準化機関は IEC、電気通
なぜこの段階で考えなければならないのか」といった疑問
信・無線通信分野では ITU という国際標準化機関がある。
を持たれる方も多いのではないかと思う。ただ、誤解を恐
ナノテクノロジーの工業標準化では、ISO/TC229 と IEC/
れずに言えば、日本はそう言いながらこれまで国際標準化
TC113 が 部分的に Joint Working Group を形成して共同
で消極的な対応をとり、産業化と国際交易で後れをとって
作業を進めている。
きたのではないだろうか。少なくとも「バイオミメティク
ス」に P-member として参加し、各国の状況把握などが必
日 本 工 業 標 準 調 査 会:Japanese Industrial Standards
要ではないだろうか。
Committee(JISC)
、工業標準化法に基づいて経済産業省
に設置されている審議会で、1 国 1 機関の原則がある ISO
1995 年 1 月の世界貿易機関(WTO)の発足に伴い、貿
や IEC 等の国際標準化へわが国を代表して参画し、国際規
易の技術的障壁に関するいわゆる協定、いわゆる TBT が
格の開発を担っている。国内では日本工業規格、いわゆる
制定されている [2]。強制規格、任意規格や適合性評価手
JIS 規格の制定 、改正等に関する審議を行う。
続きの策定における透明性を確保すると共に、これらによ
る不必要な貿易障害の発生を防ぐために、国際標準を基礎
とする国内規格制定の原則が規定されている。つまり TBT
協定により、国内規格は国際規格を基礎としなければなら
なくなり、国際標準をとることが国際交易における極めて
重要な戦略課題となったのである。忘れてはならない点で
ある。
今年 10 月に予定されている ISO/TC266 Biomimetics の第
1回総会までにまだ参加国が増えることも考えられるが、
2005 年 に 発 足 し た ISO/TC229 Nanotechnologies に 30
の P-member 国が参加したことを考えると、バイオミメ
ティクスに関する国際標準化活動はコンパクトな枠組みで
進められることになりそうである。見方を変えれば機動的
で効率的な標準化の活動が可能な体制でもある。日本のバ
イオミメティクスの健全で責任ある研究開発と、その成果
によるイノベーションの加速のために、産学官一体の積極
的な取り組みが望まれる。
References:
[1] http://www.din.de/cmd?level=tpl-home&contextid=din
[2] http://www.jisc.go.jp/cooperation/wto-tbt-guide.html
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連載 生物規範工学 第七回
「かたちの意味」(機能)の解明を
生物学に期待しなければ工学との交流は進む?
琉球大学 広瀬裕一
1.「かたち」を見る研究は楽しい
『生まれてこのかた、まだそんなもんは見たことないわ。
人間、初物を見たら寿命が七十五日延びるそうや。ぜひ、
見せてもらおうやないか。』(落語「らくだ」より)
もしこれが本当なら、私はかなり長生きできそうだ。日々
の研究活動のなかで、これまで見たことのない初物の「か
たち」に遭遇する機会は多い。見たこともない「かたち」
を見つけたり、どこかで見たことのある「かたち」に似た
ものを思いがけない所で見つけるのが楽しくて、私は海に
棲む無脊椎動物の「かたち」を研究対象にしている [1]。
顕微鏡が大好きだ。高校に入るまでは虫眼鏡や理科の実験
で使う普通の光学顕微鏡を覗く程度だったが、高校の部活
動で位相差顕微鏡を使う機会がありレンズの向うの世界が
一変した。今まで見えなかったもの、気がつかなかったも
のがありありと見えるのだ。顕微鏡にはいろいろな種類が
あって、それぞれの特性でいろんなものが見えるようにな
ることもわかった。大学に入ってからは、電子顕微鏡(走
査型、透過型)を含む様々な顕微鏡を使えるようになった。
試料を薄切りにしたり、染色したりすることで、もっとい
ろいろなものが見えるようになった。
いろんな顕微鏡を使って様々な生き物の「かたち」を覗く
のは理屈抜きに楽しい(図 1 ~ 3)
。生物規範工学を生き
物のかたちを模倣することで新たな技術を模索する取組み
ホヤの仲間には皮(被嚢)のなかに炭酸カルシウムの粒や針を含ん
であると捉えれば、楽しい生物研究を通して得られた情報
でいるものがあり、「骨片」と呼ばれている。骨片の形状は種によっ
が人の暮らしに役に立つかも知れない。そうであれば、生
て多様で、同じ個体が二種以上の形状の骨片を持つ種もある。骨片
物研究者にとっては思いがけない喜びである。
「役立てる」
は捕食忌避や遮光、皮の硬さを高めるなどの機能を果たしていると
ことを前提として生物のかたちの機能を研究する(いわば
工学からの)取組みは重要であるが、
「役立てる」ことを
前提としない(いわば生物学からの)取組みがこれまで見
逃されていた有益な「かたち」を引き当てる可能性も無視
6
図 1 ホヤの骨片
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期待されるが、「かたち」を作り出す仕組みや「かたち」の機能的
な意味はわかっていない。図はミスジウスボヤ属の Trididemnum
miniatum の球形の骨片と、Trididemnum nubilum の金平糖形の骨片
を走査型電子顕微鏡で観察したもの。同じ属のホヤでも、骨片のか
たちは全く異なる。(写真:栃窪哲也氏)
できないだろう。しかし、多様な生物学の成果を工学に取
2. 数えきれない生物とその「かたち」
り込む効率的なワークフローは実現していないようだ。
地球上に多種多様な生物が存在することは周知のことであ
るが、実際に何種の生物がいるのかは誰も知らない [2]。
片っ端から既知の種数を数えても正解には程遠い。なぜ
なら、種名がついている生物よりも、まだ種名がついて
いない生物の方がはるかに多いからだ。たとえば、陸上
で 86%、海域で 91% の種にまだ名前がついていないとい
う推定がある [3]。このように様々な研究者が「予測」は
しているものの、それぞれ推定値の間には 10 倍以上の差
があるのが現実だ。一般に、それぞれの種はどこか異なっ
た「かたち」を持っているので区別することができる(注
1)。つまり、数えきれないほどの種の多さは、様々な「か
たち」の豊富さでもあり、私たちには無数の研究材料があ
ると言ってもよいだろう。では、それぞれの「かたち」に
は必ず機能的な意味があるのだろうか?
地球上の無数の生物種は自然選択を通して進化してきたと
考えられている。すなわち、それぞれの生息環境におい
て、生存競争を勝ち残るうえでよりよい性質を持ったもの
図 2 カイアシ類の胚を包む多層のシェル
だけが選抜されて種が成立したのである。それぞれの種を
甲殻類には受精後に複雑な構造のシェル(殻)を形成するものが知
特徴づける「かたち」の多くにも自然淘汰がかかっている
られている。図はカイアシ類の1種 Calanus sinicus の初期胚を包む
ので、多くの「かたち」の試行から選び抜かれたものであ
多層のシェル(両端矢印の領域)の透過型電子顕微鏡像。シェルは
丈夫なほうがいいのだろうが、なぜこんなに複雑な構造を作る必要
があるのだろう?
る。言うまでもなく、試行の原動力は遺伝子の突然変異で
あり、プロトタイプである祖先型から生じる限りない変異
のなかから少しでも優れたものが生き残る。次々に生まれ
るニューモデルのなかから勝ち残ってきたものが、その種
の「かたち」として定着するのだから、それぞれの「かた
ち」は優秀な機能を持っていることが期待される(注2)。
残念ながら、生物を研究する私たちはたくさんの「かたち」
を知ってはいるが、その「機能」についてはほとんど理解
できていない。かたちの持つ機能を理解するための知識や
方法を身につけていないので、どうやって調べたらいいの
かわからないのである。
3. 耳の痛い話
本連載の第1回に、日本のバイオミメティクスは周回遅れ
図 3 微小な種子の奇妙な形
だと述べられている [4]。これは技術立国日本としては由々
イリオモテラン ( ラン科 ) は世界でも最小クラスの種子を作る。走査
しき事態であり、技術系の人間でなくとも心配な話ではあ
型電子顕微鏡で見ると種子はスナック菓子のような形を持つが、そ
る。しかも、その原因に「物理や数学が苦手な生物学者」
の機能的な意味はよくわかっていないようだ。ラン科の種子は風に
よって散布されやすいように軽量化されており、胚乳や子葉を持た
ず、種皮も1層しかない。同じラン科のカヤランでは樹皮や岩に種
があげられている。これは痛いところを突かれた。そう、
私も物理や数学が苦手である。
子が付着したときに、種皮がほぐれて錨のようになり、種子の定着
を助けている例が知られている。(協力:琉球大学教授 横田昌嗣氏)
私個人のことを書かせていただくと、中学生の時に数学が
嫌いなことを書いた作文があるぐらい筋金入りの数学嫌い
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である。大学でも理科教員免許取得に最低必要な単位数し
されることはあまり期待できない。しかし、
「機能」がわ
か物理や数学の科目は履修していない。あえて書かないが、
かっていない「かたち」であれば、多種多様な情報がかな
成績もなかなかヒドいものだった。私が生物学を志したの
り蓄積されており、今後もどんどん提供できると考えられ
は生物が大好きだからに間違いないが、理科のなかで最も
る。地球上には文字どおり数えきれないほどたくさんの生
数学から逃げられそうな分野であるという側面も無視でき
物種が存在するのだから。加えて、生物研究者はその生物
ない(注3)
。何も私が生物研究者の代表例であるとは言
がどんな場所でどんな暮らしをしているといった情報を提
わないが、似たような生物研究者は多いのではないだろう
供できる可能性が高い。これは、かたちの持つ機能を解釈
か。もちろん数学に強い生物学者もたくさんおられるはず
するうえで有益なはずだ。
だが、私のような研究スタイル・分野で数学好きはなかな
かいないと思う。「物理や数学が苦手な生物学者」など不
要だという意見もあるだろう。しかし、それでは(私が)
5. 生物学に機能の解明まで期待しないという提案
困る。むしろ「生物学者の多くは物理や数学が苦手」とい
う前提で、うまくいく仕組みを考えられないだろうか?
2012 年 2 月につくばで開催された第 14 回バイオミメティ
クス研究会に誘っていただいて、私は自分の所属する学科
や学会ではまず聞くことのない分野の講演を楽しむことが
4. 周回遅れは挽回できるか
できた。分野外の研究者にも配慮して平易な言葉で講演し
ていただいたのが有り難かった。私にはとても新鮮な話題
遅れをとった日本が挽回をはかるにはどうしたら良いのだ
だったので、あつかましくも質問・コメントまでさせてい
ろう?「圧倒的な金と人で追いつき追い越す」というのは
ただいた。その後、
「ヤモリの指から不思議なテープ」(石
堅実な方法に違いない。中国なら可能かも知れないが、こ
田秀輝監修、アリス館刊)も買って読んでみた。思いのほ
のような直球勝負は今の日本には難しいのではないだろう
か「物理や数学が苦手な」私にも楽しい話だった。もちろ
か?そうなると、我々は変化球を投げることを考えなけれ
んすべてを理解できた訳ではないのだろうが。
ばならないだろう。たとえば、
『先頭集団が扱っていない
材料を扱う』とか『他所とは異なる研究のプロセスを立ち
いくつかの研究事例を聞いた第一印象は、研究のスタート
上げる』ことで差別化をはかるのである。たとえ今はスト
の時点で「生物の○○○の機能を利用できないか」という
ライクゾーンのギリギリでも、こっちで成果があがれば、
インスピレーションが必要であるということだ。ヨーロッ
これこそがど真ん中になると信じて。しかし、このへそ曲
パでもバイオミメティクス研究のスタート時には同様な
がりなアプローチにも問題がない訳ではない。
「提案」があったうえで、実現性・実用性のスクリ−ニン
グをしているらしい。しかし、これでは生物研究者が「か
遺伝子工学をはじめとする研究手法の革新は現代の生物学
たち」のデータをいくら持っていても、「機能」の端緒も
を大きく発展・拡大し、
研究分野の名称も「生物学」から「生
わかっていない状況での提案は難しい。生物学サイドとし
命科学」へと変化しつつある。しかし、変化の主因である
てはハードルが高いということだ。それでは、生物研究者
新しい研究方法は必ずしもどんな生き物にもうまく適用で
が「機能不明のかたち」を無制限に提供するプラットフォー
きるわけではない。したがって、多くの研究者は様々な研
ムを構築できないだろうか。提供された機能不明のかたち
究手法を駆使するのに都合の良い「モデル生物」を材料に
のなかから、数字に強い人・技術を持った人が「かたちの
するようになった。生物のかたちを扱う分野では、形成と
意味」
(機能)を調べることで、有用な「かたち」の提案
機能を扱う発生学や生理学でこれは顕著である。だからと
へと展開できないだろうか。
いって、バイオミメティクスでモデル生物だけを研究対象
にしていて、先頭集団に追いつき追い越せるのだろうか?
これは、それほど目新しいアプローチではない。天然物化
学の分野では、様々な生物から抽出した成分を、培養細胞
8
一方で、非モデル生物を扱う研究者は減少傾向にある。こ
に添加するなどの方法で、生理活性をアッセイし、この活
れは日本に限った話ではなく世界的な傾向である。非モデ
性をもとにターゲットとなる分子を精製、単離、構造決定
ル生物を扱う場合、様々な手法を使えるわけではないので、
へと進める一連のワークフローがある。当たり外れはある
おもしろい「かたち」が見つかっても、これが発生学的に
ものの、片っ端からこのワークフローに載せてゆくなかか
どのように作られ、生理学的にどんな働きを持つのかを調
ら、抗がん剤や難病の特効薬などが続々と発見されてい
べることは容易ではない。つまり、
生物学のサイドでは「か
る。先入観や根拠のない直感を排して、
「片っ端から」と
たちの持つ機能」が多種多様な非モデル生物で活発に研究
いうアプローチは思いがけない発見をしばしばもたらして
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いる。ここでは、無数の徒労に終わりがちな試行はランダ
ムに生じる遺伝子突然変異に任せてしまい、はじめのスク
リーニングも自然淘汰に委ねている。初期スクリーニング
が終っているので「片っ端から」でよいのだろう。このア
プローチで、製薬系企業をはじめ世界中の研究機関が実際
にしのぎを削っている。では、バイオミメティクスの分野
で、生物の「かたち」を対象として次のようなワークフロー
を構築できないないだろうか(図 4)
。
図 4 生物学に機能の解明を期待しないワークフロー
1)生物学は様々な生物の「かたち」を提供することがで
4)有用な特性を持つ「かたち」をピックアップして、そ
きる。ただし、その機能は未知である。その代わりに、そ
の利用を検討する。「かたち」の特性と生物の生き様につ
の生物がどんな場所をすみかとし、どのような暮らしをし
いての情報から、機能を推定することができれば、生物学
ているかといった、それぞれの種の生き様についての情報
においても意義は大きい。これは 1) へのフィードバック
を添付することはできる。
でもある。さらに、進化的に近縁な種の「かたち」を新た
に比較することで、自然淘汰によってスクリーニングされ
2)提供された「かたち」を参照して、
「かたちのコピー」
を適当な材料で作製する。もちろん、ここは生物学には手
の負えない部分であり、工学分野の研究者に担当していた
た「機能的なかたち」の変異を得られるだろう(注 4)。また、
「かたちのコピー」を材料として、生物学的な機能を実証
することができるかも知れない。
だく。最新の様々な技術は私の理解を遥かに越えており、
ナノ構造でさえ作り出せるようだ。生物屋の無責任な期待
これは私の無責任な思いつきに過ぎないので、まずは小さ
かも知れないが、バイオミメティクス研究会でいろいろな
な成功例を積み上げてゆくことが必要なのだろう。しかし
話を聞いていると、工学系の皆さんは必ずやこの期待(ど
ながら、生物学と工学の間に横たわるギャップはまだ大き
んな「かたち」だって作ってみせる!)に応えてくれそうだ。
く、活発な交流があるとは言い難い。相手の研究内容が自
分には難解だと予想されるだけに敷居が高いのだ。だから、
3)
「かたちのコピー」を材料として、その物理的性質を調
お互いに素人だと思い合って気楽に交流できるプラット
べる。親水(撥水)性、光(電磁波)の反射・吸収、剛性、
フォームがあれば交流は促進されると思う。一方で、こう
伝導性などの物性をテストし、
「かたち」の持つ特性をリ
いった交流が研究成果に直結するとは限らないので、これ
ストする。これは天然物化学におけるスクリーニングに相
を「研究活動」として受入れにくいのが現状かも知れない。
当する部分である。ひとつの研究室では計測項目によって
そうなると、双方が本腰を入れた交流はなかなか進まない
得意不得意もあるだろうから、一連の物性テストを流れ作
だろう。ならばいっそのこと、先にワークフローを立ち上
業的に行う試験機関があればいいかも知れない。
げてしまうというのも一案ではないか。
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9
(注 1)形態にほとんど(または全く)違いは認められな
いが、遺伝的に交流がない(生殖隔離が成立している)こ
とで区別される種もある。これらは隠蔽種と呼ばれる。
(注2)何億年も昔に「究極のかたち(?)
」に到達した生
物もある。このような種は化石に見られるものと形態がほ
とんど変わらないので「生きている化石」と呼ばれる。身
近な動物としてはゴキブリがこれに相当する。
(注3)生物学にもいろいろな分野があるので、
上手に(?)
分野を選べば物理や数学が苦手でもなんとかなるのは事実
である。しかし、
油断していると統計的手法で痛い目にあっ
たりもする。
(注4)
「モデル生物」が材料であれば、
「かたち」をつく
る仕組みを調べ、遺伝子を操作して「かたち」の変異を作
出できる可能性もある。
References:
[1] http://www.geocities.jp/the_tunicata/index.html
[2] R. M. May Scientific American 10:18–24 (1992)
[3] C. Mora, D. P. Tittensor, S. Adl, A. G. B. Simpson, and B.
Worm PLoS Biology 9(8): e1001127 (2011)
[4] 下村政嗣 PEN 2(6), 3–7 (2011)
10
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Column
構造色をもつ鳥① オオルリ
オオルリは 16 センチメートル程度のヒヨドリ大の鳥です。オスの羽は背から尾にかけて鉱石のラピス・
ラズリのように輝いています。この瑠璃色が名前の由来です。50 メートル四方のなわばりをもち、なわ
ばりを守るため樹上の高いところで特徴的な旋律の美しい声でさえずります。
日本には夏鳥として 4 月から 9 月ごろに、北海道から本州の低山~亜高山地帯へ渡ってきます。エサと
なる昆虫が豊富な牧草地に隣接した森林や湖沼の周辺などを主な生息地とします。渡りの時期には市街
地の公園などで見かけることもあります。
英語では Blue and white flycatcher と呼ばれているように、飛びながらエサとなるチョウ、ハエなど
を捕まえます。捕まえた獲物を逃さないよう嘴の付け根部分が広くなっていています。
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連載 生物規範工学 第八回
アリの「敵・味方」識別フェロモンセンサーに学ぶ
- “ 鼻 ” で省エネ危機管理 神戸大学大学院理学研究科生物学専攻 尾崎まみこ
1.はじめに
ことだが、種の違う雌雄が出会っても交尾は成立しない。
この例のように、フェロモンというのは同一種内での別個
身の周りにセンサーと呼ばれるものを探すと、エアコンや
体間の相互作用を誘起する化学物質と定義されている。相
風呂の温度センサー、肌の潤いセンサー、地震の揺れセン
互作用の中身はいろいろあるが、アリにおいては、社会性
サー、ガイガーカウンターで計る放射能センサーと、次々
を維持するために特徴的なフェロモンが多く使われてい
に思い浮かぶ。ガス漏れを知らせるセンサー、これは嗅覚
る。アリの体には多くの外分泌腺が存在し、多様な化学物
センサー、果物の糖度を測るセンサーは味覚センサーであ
質を体内で合成し体外に放出することから、しばしば「歩
る。嗅覚と味覚はずいぶん違う印象があるが、どちらも化
く外分泌腺」と形容される。アリが分泌するフェロモンの
学物質を検知する感覚である。私たちがこれらの化学感覚
多くは主に巣仲間どうしの個体間コミュニケーションに用
の恩恵にあずかるのは、主に食事を楽しむ時だが、花を訪
いられる [1, 2]。働きアリが危険を察知すると、周囲の仲
れて蜜を吸う昆虫たちにとっても花の香りと蜜の味はとて
間のアリが敵に向かって攻撃したりその場から逃げだした
も大事な自然の贈り物のサインとなる。
りする。これは、先んじて危険を感じた個体が巣仲間に危
険を知らせた結果とみることができる。仲間の警戒行動を
優れた化学センサーを持っていれば、食事の時に限らずい
促す化学物質がいろいろなアリ種で同定され、総じて警報
つでも周囲に漂っているあらゆるものの匂いを敏感に感じ
フェロモンと呼ばれている。大きな餌や恒常的に利用でき
とれるはずである。試しに鼻に神経を集中して、部屋の空
る餌資源を見つけた働きアリは、巣仲間を動員して餌場に
気に何種類の化学物質が混じっているか嗅ぎとってみてほ
向かわせる。また、新たな場所に巣を移動する際にも動員
しい。案外なにも感じとれないのでがっかりするかもしれ
が見られる。ふだん目にする、いわゆる「アリの行列」と
ない。これは化学構造式を見てたちどころにその名前がい
いわれる大規模な動員は道しるべフェロモンによって誘導
える化学者とて同じことである。では、もしも今、背後の
されている。さらに、卵や幼虫や蛹が働きアリに世話を促
ドアが開いてイヌが入ってきたらどうだろう。きっと誰で
すフェロモンや、病気蔓延のもとになるアリの死骸を働き
も部屋の中の匂いの変化を感じ取ることができるだろう。
アリに気づかせて巣外に捨てさせるために、死体が発する
かわりにクマが入ってきたなら匂いでそれと知って逃げ出
フェロモン、もしくは、死体に欠けているバイタルサイン
すかもしれない。実際問題、とりあえず現状で安全な環境
となるフェロモンなども想定されている。
になじんでいる時の匂い情報はいちいち感じとれなくても
よいのである。しかし、環境に何かが付加された時には、
即座にそれを察知し、的確な判断に従って行動ができると
3.アリという生き物
いうのが、生き物にとっての生存の秘訣なのだ。
アリは小さい。1 mm 以下からせいぜい数 cm の貧弱な体
格ながら(図 1)、数においては他を圧倒する勢いで、地表、
2.フェロモンについて
地下はもちろん、温帯、熱帯の森林では樹冠を借りて空中
にまで住んでいる。およそ人の住める環境にはどこにでも
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フェロモンという言葉は今では一般に耳慣れた言葉になっ
生息できる、身近な生き物の代表格である。そして、グロー
ている。よく知られているカイコガの性フェロモンは、種
バリゼーションが進む人間社会のダイナミックな人の移動
内の雌雄の仲を取り持つ化学信号である。いうまでもない
や物流に乗じて、今やアリもたやすく国境を越え、長距離
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を移動する。昨今、持続可能な社会を考えるうえで人口爆
多い。このように、アリと他の動植物との関わりはそれぞ
発と食物供給バランスが大きな問題となっているが、もう
れに理由があっておもしろい。
一つ、ゴミ処理問題もまた地球規模の大きな課題である。
地球のあらゆる場所で、働きアリたちは小動物の死骸や果
アリの顔を観察すると、頑強そうな大顎が目を引くが、顔
実や種子など様々な食物を小分けにちぎってせっせと巣に
の中心から生えている長い触角が何といってもよく目立
運び、大勢の仲間の空腹を満たすと、その食べかすをバク
つ(図 5A)。昆虫の触角は私たちの “ 鼻 ” に当たる嗅覚器
テリアなどの最終分解者に渡している。アリが地球上から
である。眼は概して小さい。この小さな体でこれだけの長
姿を消すと、おそらく自然界のゴミ処理が進まず大変なこ
さの触角をもっているということは、とりもなおさず多く
とになってしまうだろう。
の種類のアリが匂いを頼りに生活していることを物語って
いる。アリは巣を作って集団で暮らす社会性昆虫である。
基本的に巣を単位とするコロニーと呼ばれるアリ社会の中
では、繁殖を一手に引き受ける女王アリ、次世代の繁殖を
担う娘女王と雄アリ、そして、多くの働きアリが、およそ
の齢別に、卵、幼虫、蛹の世話や、巣の清掃、修理、防衛
や、餌の探索、採集などといった役割を分担し、統制のと
れた協力体制で社会を維持している。一方、巣外で働きア
リどうしが出会うと、同じ巣の仲間かそうでないかを触角
を使ってみきわめ、よそからやってきた敵をいち早く知っ
て、大顎で噛みついたり蟻酸の毒液を吹きかけたりして攻
撃する(図 2A)
。異種のアリその他の昆虫に対してもたい
てい同様に攻撃し(図 2B)、コロニーの防衛と維持に励ん
でいる。
図 1 大きいアリと小さいアリ
A 日本固有の在来種クロオオアリ(Camponotus japonicus )。単女王
制で独立巣を営む。巣間の働きアリどうしの行き来はなく互いに攻
撃しあう。B 南米原産のアルゼンチンアリ(Linepithema humile )。
多女王制でスーパーコロニーと呼ばれる融合巣を造る。スーパーコ
ロニー内では巣間の働きアリどうしの行き来は自由で互いを容認す
る。
数をたのんで一団となって行動するアリは敵に回すと獰猛
で恐ろしい存在であるが、味方にすると頼りになる。天敵
から守ってもらうために甘露を提供してアリを近くにひき
つけているアリマキなどの昆虫は親蟻性昆虫と呼ばれ、ア
リグモのように手っ取り早く自分の姿をアリに似せて擬態
している昆虫もいる。収穫アリと総称される種類は、秋口、
草の種子などを巣へ運んで食料として貯蔵する。かなりの
頻度で、途中でこぼれたり置き忘れられたりする種子もあ
り、アリは広範な撒種に一役買っている。カタクリの花は
実生が育って開花するまで長い年月を要するが、アリの助
けを借りて確実な種子散布を図るために、種子の一部にエ
ライオソームと呼ばれるアリが好む栄養体を付着させてい
る。アリはエライオソームに執着を示し、種子を丸ごと巣
図 2 攻撃しあうアリ
A:巣の異なる 2 頭のクロオオアリどうしの攻撃行動、B:複数のア
ルゼンチンアリによるクロオオアリ攻撃行動
の中に運び入れ養分を吸った後、巣外の決まった場所にゴ
ミとして捨てに来る。陽当たりの良い場所に広がる可憐な
花の群落は実はアリのゴミ捨て場から始まっていることが
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4.アリの巣仲間識別
単女王制の独立巣社会を形成する種の働きアリ
は、出会った相手が同じコロニーの仲間かどう
かにこだわる。巣が違うよそ者が侵入すれば喧
嘩が始まる。最初は触角で相手の体を触りあう。
次に大顎を広げて威嚇する。このとき大顎腺か
ら警報フェロモンが出ていると想定される。や
がて突進、噛みつきが見られ、とどめは腹曲げ
をして尾端を前に突き出し、毒腺から蟻酸を噴
射する。蟻酸の威力は相当なもので、観察中に
まともに浴びると目を傷めるし、相手がアリな
ら死んでしまう。それでは、アリはどのように
して巣仲間とそうでない者をみわけているのだ
ろうか。見た目ではなかなかわかりそうにない。
第一にアリは、サバクアリなど特別な種を除い
て、あまり目はよくないらしい。
図 3 体表炭化水素の親水環境への溶存を助ける CSP の効果
ごく古くから、昆虫の体の外骨格表面のクチク
ラが極性の低い脂質成分で覆われていることが
知られていた。それらの主たる成分は不揮発性
A:3 カ所の別々のコロニーに由来するクロオオアリの体表からヘキ
サンで抽出した炭化水素カクテルのガスクロマトグラム(コロニー
毎にそれぞれ異なるパターンを示す)、B:ヘキサン抽出した体表炭
化水素をバッファ中に分散させた後の溶存炭化水素のガスクロマト
の炭化水素である [3]。炭化水素で覆われてい
グラム(溶存炭化水素は見られない)、C:ヘキサン抽出した体表炭
る昆虫の体表面は細かい毛の存在も手伝って濡
化水素を CSP 添加バッファ中に分散させた後の溶存炭化水素のガス
れにくく、体内の水分の蒸発や外からの病原菌
クロマトグラム(溶存炭化水素のパターンにはもとのパターンが保
の侵入も効果的に防ぐことができる。アリの体
表を覆う炭化水素成分の分子種数とその組み合
わせは巣によって組成比が異なる(図 3A)
。さ
存されている)、D:ヘキサン抽出した体表炭化水素を BSA 添加バッ
ファ中に分散させた後の溶存炭化水素のガスクロマトグラム(溶存
炭化水素は見られない)
らに種によっては使われる成分自体が異なって
いる(図 4 右)。いいかえれば、働きアリたち
はそろって自分の巣特有の体表炭化水素のカク
テルを身にまとっているのである。しかも、
個々
の巣に帰属するアリ社会のアイデンティティの
象徴のような体表炭化水素のカクテルが日々
刻々変化するのである。巣ぐるみでそろってそ
れは変化する。巣を一カ所決めて、クロオオア
リを毎日捕えてきては体表の炭化水素を抽出し
保存しておく。1 カ月間これを続けて、ある日
その巣のアリに、現在から過去にさかのぼって
抽出保存していた炭化水素を順に提示していく
と、今日や昨日の炭化水素には、ほとんど注意
を払わなかったのが、2 週間前に抽出保存して
おいた炭化水素には、約半数のアリが攻撃をし
かけるようになり、1 カ月たてば、ほとんどの
の 1)
アリが攻撃をしかけた。この調子であれば、仮
A:アルゼンチンアリの体表炭化水素の刺激に対する応答、B:クロ
に働きアリが過去の自分に出会えたなら、きっ
オオアリ異巣体表炭化水素の刺激に対する応答、C:クロオオアリ同
と過去の自分を敵と認めて攻撃するに違いな
い。このようにアリの社会では、敵・味方の判
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図 4 クロオオアリ「敵・味方」識別センサーからの嗅神経活動記録(そ
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巣体表炭化水素の刺激に対する応答(神経活動は見られない)、D:
溶媒に対する応答(神経活動は見られない)
断基準になるのは遺伝的な要素ではなく、自他の体表炭化
神経突起の保護に不可欠であるが、疎水性の匂い分子の行
水素のカクテルの違いだということが分かる。では、何が
く手を遮る障壁にもなる。これらの分子は嗅神経の樹状突
この炭化水素のカクテルを巣の中でそろえ、同調的に変化
起にたどりつかなければ、匂いとして感じられることはな
させているのだろうか。私たちがエゾアカヤマアリという
い。このジレンマ解消のためのメカニズムは受容器周辺機
種で調べたところによると、やはり遺伝的な血縁度には無
構とよばれ、ドイツのマックスプランク行動生理学研究所
関係であるらしい。今はまだ想像の域を出ないが、共通の
の Kaissling のグループ [4] と米国の Vogt のグループ [5]
餌の影響が大きいように思われる。アリの餌源は日がたて
などが中心となって、1980 年代から詳しく研究されてき
ば変わっていく。日々の食事の変化によって社会が共有す
た。一方、2000 年代に入って、嗅覚受容体の遺伝子群の
る “ 体臭 ” すなわち “ コロニー臭 “ が変化するのはありそ
発見 [6] 以来、一受容神経一受容体遺伝子のルールや、匂
うな話である。
い分子と受容体の対応についての多対多(ある匂い分子は
多くの嗅覚受容体に結合しうる。また、ある受容体は多く
の匂い分子を結合しうる)のルールが明らかにされていっ
5.「敵・味方」 識別センサー
た [7]。嗅覚受容体にとっての構造機能相関は匂い物質の
“ 部分 ” 分子構造特異的に決まっていると考えると、一つ
それでは、いよいよ、アリが「敵・味方」の判断基準と
の匂い分子内に異なる受容体分子にアピールする部分的な
なるコロニー特有の炭化水素のカクテルを感じて、平た
構造がいくつか存在すれば、一つの匂い分子は異なる部分
く言ってしまえば、相手の体臭を感じて自分の体臭と比較
分子構造それぞれが対応する複数の受容体に結合でき、ま
し、その同異を判断する拠りどころとなっているセンサー
た、同一の部分分子構造を有する複数の匂い分子が単一の
の話をしよう。その様なセンサーの機能性を説くにはポイ
受容体に結合できる。
ントがある。まずこのセンサーが、十から数十通りの化学
構造的に異なる炭化水素混合物の成分比の違いをみわける
尾崎らの先駆的な実験 [8] によって特定されたクロオオア
ために発達してきたということである。この目的には、単
リの 「敵・味方」 識別センサーは、触角上にあって体表炭
一の化学物質を感度良く検出するようなガス漏れ検知器型
化水素の匂いを感受する長さ 10 μ m 直径 4 μ m 程度の
のセンサーでは話にならない。複数の匂い成分カクテルの
小さな鐘状感覚子であった(図 5C 矢印)
。この感覚子 1
混合パターンの違いがわかる優れモノでなければならない
本に 130 個の嗅神経から伸び出た樹状突起が格納されて
のである。アリのこの生体センサーは、進化を通して、超
いたのである。一受容神経一受容体遺伝子ルールに則って、
高感度を追求してきたのでは決してない。嗅覚器における
これら 130 個の嗅神経がそれぞれ匂い物質の部分分子構
パターン認識、さらにパターンの差分検出を試みて、つい
造に特異的に対応する特有の遺伝子を発現していると仮定
に実現したのである。前述したように、環境に何かが付加
すると、130 個の異なる嗅神経のオン・オフスイッチの組
された時に即座にそれを察知し的確に判断できるというの
み合わせを想定して、2130 通りの匂い物質の部分分子構造
が、生き物にとっての生存の秘訣なのだから、安心をもた
の組み合わせからなる膨大な種類の体表炭化水素カクテル
らす自分のコロニー臭を基準にして危険な異コロニー臭を
の匂いを識別できる勘定になる。確かに炭化水素といえど
素早く察知し、敵に先制攻撃をしかけることを可能にする
も、炭素鎖長や二重結合の有無や位置、メチル側鎖の有無
このセンサーは、まさに、生き物にとっての生存の秘訣を
や位置による構造的バリエーションに富み、それらの混合
具現化した装置なのである。
カクテルが醸し出す匂いとなればより一層の多様性が想定
されるのだから、これらのバリエーションを漏らさず把握
アリの触角の表面を走査型電子顕微鏡で観察してみると
するには、この程度の備えが必要なのであろうか。
(図 5B)、多くの毛が生えていることが分かる。昆虫の体
表面の毛状構造体には、ただの “ 毛 ” というべきもののほ
かに、感覚毛とよぶセンサーユニットがある。接触やたわ
みや振動を感知する機械感覚毛や匂いを感じる嗅覚感覚
毛、味を感じる味覚感覚毛などである。一見してわかる嗅
覚感覚毛の特徴はクチクラ側壁にあいた多数の小孔を有す
ることである。匂い物質の分子が通過して感覚毛の内部に
浸透するための小孔である。感覚毛内部はリンパ液に満た
され、軸索を脳へ伸ばしている双極性の嗅神経の樹状突起
が格納されているスペースである。感覚毛内のリンパ液は
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図 5 アリの触角を中心とした走査型電子顕微鏡観察
A アルゼンチンアリの顔、B アルゼンチンアリ触角の先端、C クロオ
オアリ触角上の 「敵・味方」 識別センサーとして働く炭化水素感受
性の鐘状感覚子(矢印)
6.匂い物質結合蛋白質
オアリの体表炭化水素 18 成分の相対比は、そのままの比
率で親水環境に保持されることがわかった(図 3C)。従っ
感覚子内に侵入した疎水性の炭化水素が、リンパ液の浸
て、この感覚子の内部では、個々の炭化水素分子は CSP
水環境を通過して嗅神経の樹状突起に自力で到達するこ
に結合してリンパの中を運ばれていき、嗅神経の樹状突起
とは難しい。これは嗅覚器一般における受容器周辺問題と
上の受容タンパク質へ渡され、化学情報から電気情報への
して取りあげられてきたことである。概して揮発性の高い
情報変換がおこると考えられた(図 6)。
匂い物質は疎水的でありリンパ液のような親水環境にはな
じまない。一方で、嗅神経の樹状突起は直接空気に曝され
ていては化学センサーとしての機能が損なわれてしまうの
で親水的な環境において保護する必要
がある。このジレンマを乗り越えるた
めに親油性物質の運搬役として登場し
てくるのが「匂い物質結合タンパク質
(OBP)」ないし「化学感覚タンパク質
(CSP)
」と呼ばれる水溶性低分子タンパ
ク質である [9, 10]。これらのタンパク
質は、昆虫の嗅覚器や味覚器内部のリ
ンパ液に高濃度に溶存し、疎水性の匂
い物質や味物質分子を結合して運搬す
る役割を果たすと考えられている。
クロオオアリの体表炭化水素を感知す
る 「敵・味方」 識別センサー感覚子の
リンパ液中に見出された CSP は体表炭
化水素を結合して親水環境へ導くことができる。難水溶性
の炭化水素も、CSP の溶けているリンパには容易に溶け込
んでいけるのである。しかも、コロニー毎に異なるクロオ
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図 6 アリ 「敵・味方」 識別センサーのモデル
上段:アリ触角の嗅覚感子モデル、下段:「敵・味方」 識別センサー
としての感覚子内の受容器周辺環境において炭化水素分子を運搬す
る CSP の働きのようす
化学情報から電気情報への情報変換機構のスイッチが入る
しては応答を示さなくなるのか、その理由と仕組みであろ
と、嗅神経の電気信号を電気生理学実験装置で検出するこ
う。アリの体表炭化水素カクテルは巣が違っても同じ成分
とができる。CSP の助けを借りれば、炭化水素を電解質の
から構成され、巣によって違うのは構成成分の相対比なの
水溶液に混ぜて実験的に取り扱うことも容易である。その
である。2005 年に尾崎らの研究 [8] が発表されるまでは、
ようにして記録した嗅神経の活動を図 7 に示す。A 中段に
アリは、巣仲間の体表炭化水素カクテルの匂いを「味方」
は、CSP を混ぜた電解質の水溶液で当該感覚子に触れたと
の匂いとして記憶していて、相手の体表炭化水素の匂いを
きの記録を示した。見るべき神経活動は現れない。B 中段
いちいち「味方」の匂いの記憶に照らして「敵・味方」を
と C 中段には、CSP を混ぜた電解質液にクロオオアリの体
脳で判断していると考えられていた [11]。しかし、この方
表から抽出した炭化水素を溶かして触れたときの記録を示
式だと、日々変化する巣仲間の体表炭化水素の組成比に合
した。B には神経活動の波が現れているが、C には現れて
わせて、昨日の味方の匂いの記憶を消し今日の味方の匂い
いない。実は B は、被験個体と異なるコロニーの働きアリ
の記憶と入れ替えなければならないし、第一、とっさの攻
に由来する体表炭化水素カクテルを、C は、同じコロニー
撃行動の発動に時間がかかる。命のやりとりをする局面で
の働きアリに由来する体表炭化水素カクテルを混ぜた溶液
相手に後れをとることは文字通り致命的である。片や、セ
で、被験個体の炭化水素感受性の鐘状感覚子に触れ実験を
ンサーが「敵・味方」を判断し攻撃行動のスイッチを司る
行っている。実験結果は、敵か味方かを判断して攻撃行動
方式だと迅速な初動が可能になる。この方式で最も大切な
をおこすかどうかの行動切り替えが、この感覚子の神経活
ことは、同巣仲間の体表炭化水素カクテルの匂い情報を
動の有無によって決まっていることを示唆していた。「敵」
カットして、異巣や異種の体表炭化水素カクテルの匂い情
の匂い情報だけを選んで通すといった、情報フィルター機
報を脳へ通過させるフィルター機能を備えた生体センサー
能を備えた生体センサーはかつて報告されたことがなかっ
の実現にある [12, 13]。
た。
8.省エネ危機管理を可能にするセンサー順応機構
7.脳で考えるよりすぐに働く危機管理センサー
このような生体センサーのフィルター機能を実現する機能
「敵・味方」 識別センサーの感覚子の働きにより、アリは
単位は感覚子内のひとつひとつの嗅神経である。感覚神経
わざわざ脳を使って「敵・味方」の神経信号を比べて相手
が示す普遍的な性質のひとつに順応現象がある。同一の刺
に対する態度を決める必要がない。相手に対する寛容性と
激を連続して与えていると神経の応答性は一定レベルで保
攻撃性のバランスは、この感覚子がもつ機能性のコントラ
持されず、次第に減衰して、やがてゼロレベルに落ちてし
ストによって決まるといってよい。単女王制のクロオオア
まうという現象である。ただしこの時、受容神経はすっか
リなどでは、0% の攻撃性(100% の寛容性)を誘導する
り応答できなくなってしまったのではなく、当初の応答を
体表炭化水素をもっているのは、自分と同巣アリである。
得るにはもっと強い刺激を必要とするようになったのであ
そして、同種の異巣アリと異種アリの体表炭化水素に対し
る。ここで、体表炭化水素に感受性を持つアリの感覚子が
ては 100% の攻撃性(0% の寛容性)が発揮される。しかし、
最も頻繁に接する持続性の高い刺激とは何かを考えてみよ
多女王制のエゾアカヤマアリなどではだいぶ様子が違う。
う。巣仲間の体表炭化水素の匂いというのは惜しい答であ
0 ~ 20% の攻撃性(80 ~ 100% の寛容性)を誘導する体
る。正解は、自分自身の体表炭化水素の匂いなのだが、こ
表炭化水素を持っているのは自分とスーパーコロニー内の
の答をすぐに思いつかなかったとしたら、そこには生物学
同巣、異巣のアリである。スーパーコロニー外の同種アリ
的な理由がある。人はみな自分の匂いには極めて鈍感なの
の体表炭化水素は、わずかに強い攻撃性を誘導する。そし
で無意識に自分の体臭は無いも同然と思ってしまっている
て、異種アリの体表炭化水素に対しては 100% の攻撃性(0%
のである。このことに気づいてアリも同じかもしれないと
の寛容性)が発揮される。従って、この感覚子の機能性の
考えることができれば、感覚順応を考慮した以下のいささ
コントラストが最も際立つ境目は、クロオオアリでは種内
か複雑な説明も合点してもらえるだろう。
の同巣のアリと異巣アリの間であり、エゾアカヤマアリで
は同種アリと異種アリの間に存在すると推測できる。
アリが自ら合成し体表面に分泌している炭化水素カクテル
成分の分子は、当然、自分自身の感覚子の中にも入ってく
ここまで話してきてなお不思議なのは、攻撃すべき「敵」
る。感覚子内部の嗅神経樹状突起の周辺は CSP を含むリン
の体表炭化水素に応答できるその同じ感覚子が、なぜどの
パ液に満たされた親水環境である。このサブミクロ環境内
ような仕組みで、寛容性に訴える相手の体表炭化水素に対
には CSP の助けを借りて、自分の炭化水素成分が常にそ
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の時の体表面のカクテル比率を保って溶け込んでいると
達していなかったなら、アルゼンチンアリは日本在来のク
考えられる。この状況においては、
感覚子内の嗅神経群は、
ロオオアリにとっては永遠にまだ見ぬ「敵」であったはず
全体としてある順応状態を維持することになる。
「全体と
であり、アルゼンチンアリの体表炭化水素組成は、クロオ
してある順応状態を維持する」といったのは、嗅神経群
オアリの感覚子にとって未知の「敵」の印であったはずで
の中には、ゼロレベルの順応を示しているものもあれば、
ある。ところが、はるばる太平洋を渡ってアルゼンチンア
まったく順応していないものもあり、その中間のいろい
リが日本までやってきて、岩国、神戸、横浜など、港を皮
ろなレベルの順応度の神経もあって、それらが一定の割
切りに生息域を拡大しつつ、クロオオアリに遭遇するチャ
合で混在しているはずだからである。この状態でセンサー
ンスが巡ってきた。クロオオアリの「敵・味方」識別センサー
は自分の炭化水素カクテルに接していながら神経活動を
がアルゼンチンアリの体表炭化水素を「敵」のカクテルと
停止している。これに自分の体表炭化水素カクテルに組
して認識し応答できるかどうかが、実際に試される時であ
成比が似ている巣仲間の体表炭化水素カクテルが触れた
る。私たちが実験的に確かめたところによると、アルゼン
としても、順応状態は変化しない。ところが、組成比が
チンアリの体表炭化水素のカクテルに触れた感覚子は、ク
違う異巣の働きアリの体表炭化水素カクテルが触れると、
ロオオアリの異巣働きアリ由来の体表炭化水素カクテルで
特異的な成分の部分分子構造の質と量に依存して順応状
刺激した時(図 4B)のように、はっきりとした神経活動
態が破れ、いずれかの神経が応答を始める。感覚子単位
を示したのである(図 4A)
。もちろんこの感覚子は、クロ
で記録される神経活動は、中に格納されている嗅神経の
オオアリの同巣働きアリ由来の体表炭化水素で刺激しても
うちのどれとどれがどの程度の頻度で応答をするかで見
神経活動を示すことはなかった(図 4C)
。アルゼンチンア
た目が違ってくるはずだが、残念ながらこれを明らかに
リの体表炭化水素の組成はクロオオアリの組成に比べて複
することは私たちの解析技術では複雑すぎて手に負えな
雑で、クロオオアリにない成分をいくつも含んでいる(図
い。私たちが理解するには複雑すぎるセンサーの順応の
4 右)
。正確な解析は困難だが、そのような成分に触れた
仕組みだが、この仕組みによって、自分やそれに似た体
時には、それまで滅多に活動せず順応もしていない嗅神経
表炭化水素カクテルに応答しない分だけエネルギーの節
が活動するのであろう。あらゆる異物の侵入を防ぐ免疫シ
約ができる。さらに、センサーレベルの 「敵・味方」 識
ステムのように、アリのこの感覚子は、自分と自分が属す
別方式をとることで、
「味方」の体表炭化水素情報につい
る社会を守るために、搭載する嗅神経の数を増やしてあら
ての記憶の形成や継続的な更新の必要がなく、また、脳
ゆる「敵」を識別できるだけの備えを発達させてきたよう
で「敵・味方」の判断をしなくてもよいので脳の負荷が
である。ただし、悲しいかな、クロオオアリがアルゼンチ
軽減され、結果的に、相当なエネルギー
の節約につながると考えられる。
9.未知の「敵」にも対応できる危機
管理センサー
クロオオアリが同巣と異巣の働きアリ
を識別しようとすると、その体表を
覆っている炭化水素の成分は 18 種類
しかないので、小さな感覚子の中に
130 個もの嗅神経を搭載するのは、い
かにも冗長な備えのように感じられ
る。しかし実際は、異種のアリ、また、
他の昆虫に遭遇した時にも素早く攻撃をしかけなければ
ならない。そこで、
「敵・味方」識別センサーとしてのこ
A:3 種類の溶媒に対する応答(神経活動は見られない)、B:クロオ
の感覚子の使い道を同種の働きアリの出身コロニーを識
オアリ異巣体表炭化水素の刺激に対する応答、C:クロオオアリ同巣
別するためだけに限るのではなく、できることなら、初
めて遭遇する「敵」にも、さらには、まだ見ぬ「敵」に
も対応できるように準備しておくに越したことはない。
そういった意味では、もしも、今日のような物流網が発
18
図 7 クロオオアリ 「敵・味方」 識別センサーからの嗅神経活動記録
(その 2)
PEN April 2012
体表炭化水素の刺激に対する応答(神経活動は見られない)、上段:
溶媒に蛋白質要素を加えずに実験(神経活動は見られない)、中段:
溶媒にクロオオアリ由来の CSP(化学感覚器蛋白質)を加えて実験、
下段:溶媒に BSA(仔牛の血清アルブミン)を加えて実験(神経活
動は見られない)
ンアリを「敵」と認識することができたとしても、一頭だ
最近、小林らは,日本在来のスーパーコロニー形成種であ
けでアルゼンチンアリの群の攻撃を受けたならとても勝ち
るエゾアカヤマアリを用いて、北海道石狩浜沿いの 10 キ
目はないようである(図 2B)
。
ロメートルを越えるスーパーコロニー内から 4 巣,外か
ら 2 巣を対象とし、計 6 巣に由来する働きアリの体表炭
化水素をガスクロマトグラフィーにより分析し組成比を調
10.融合巣をつくるアリの勢力拡大作戦
べるとともに、野外の行動実験で攻撃性を、また、電気生
理学実験で体表炭化水素感覚子の自他のコロニー由来の体
1 頭の女王を中心として単女王制の独立巣社会を営む種に
表炭化水素への反応を調べた。巣ごとの体表炭化水素混合
とって、同巣の仲間に対しては寛容に、異巣の個体には攻
パターンの相互判別分析の結果、スーパーコロニー内の巣
撃的に振る舞うことは理にかなった社会適応の基本であ
どうしの判別率がスーパーコロニー内外の巣を比べた時の
る。他方、最近話題となっている南米原産のアルゼンチン
判別率よりも明らかに低いことが分かった。実際に、エゾ
アリやヒアリなどの侵入性アリ種には、原産地においては
アカヤマアリにおいては、同巣の働きアリに対する攻撃性
単女王制で独立巣のコロニーを造るものと多女王制で巣を
がほとんど認められないばかりでなく、スーパーコロニー
融合しスーパーコロニーを形成するものがあって、多女王
内の巣の働きアリどうしの攻撃性も極めて低かった。スー
制の群が侵入先で定着すると生息域を拡大し数十、数百キ
パーコロニー外の働きアリに対する攻撃性はこれよりも多
ロメートルにも及ぶスーパーコロニーを形成する。このよ
少高かったが、異種のアリに対する攻撃性に比べればなお
うなスーパーコロニーを造る種においては、本来 1 頭の生
低く抑えられていた。この時、当該感覚子の神経応答を調
殖女王の下に統制されるべき働きアリたちのコロニー帰属
べると、同巣個体の炭化水素に対しても若干応答が認めら
性が、
かなりあいまいになっているようにみえる(図 1 右)。
れ、スーパーコロニー外の同種の働きアリの炭化水素に対
する応答は少し高くなっていたが、いずれも異種のアリの
図 8 アルゼンチンアリの侵入地
A:世界でアルゼンチンアリの侵入、定着が認められている国(赤丸)、
B:日本でアルゼンチンアリの侵入、定着が認められている都道府県
(赤色)、C:アルゼンチンアリが侵入、定着しているポートアイラン
ド地区(赤☆は、北公園の位置)を望む復興した神戸
PEN April 2012
19
炭化水素に対する応答性より低く抑えられていた。このよ
References:
うに、巣を融合してスーパーコロニーを作り勢力を拡大し
[1] 尾崎まみこ、北條賢「3. アリと化学生態学」社会性昆
ていく種においては種内の個体識別が種間の個体識別に比
虫の進化生態学 (2009)
べてかなりあいまいになっているようである。この性質が、
[2] 勝又綾子、尾崎まみこ「アリのケミカルコミュニケー
いくつもの巣を融合してできたスーパーコロニー内での働
ション」日本比較生理生化学会誌 24, 3-17 (2006)
きアリどうしの寛容性を保証していると考えられた。
[3] M. Ozaki, A. Wada-Katsumata Insect Hydrocarbons:
Biology, Biochemistry and Chemical Ecology (Eds. By G.
単女王制の種では、同種異巣のアリは異種のアリ同様、きっ
J. Bloomquist, A. G. Bagnères) pp.205-221, Cambridge
ぱりと拒絶、排除の対象となるが、多女王制の種では、異
University Press (2010)
種のアリに対する強い攻撃性を保持しながら種内異巣の
[4] K.-E. Kaissling Chem Senses. 26, 125-150 (2001)
アリに対しては寛容性が際立ち、受け容れてしまうこと
[5] R. G. Vogt, L. M. Riddiford Nature. 293, 161-163 (1981)
がある。世界各地に侵入し定着しているアルゼンチンアリ
[6] L. Buck, R. Axcel Cell. 65, 175-87 (1991)
などは、そうやって巣を融合、巨大化しつつ餌資源や居住
[7] L. B. Vosshall Chem. Senses. 26, 207-213 (2001)
空間を独占して勢力を拡大し、異種のアリ(この場合被害
[8] M. Ozaki et al. Science. 309, 311-314 (2005)
にあうのはほとんどが在来種のアリ)を駆逐してしまう。
[9] Y.-L. Xu et al. MBC Genomics. 10, 632-644 (2009)
1999 年にアルゼンチンアリの侵入が認められた神戸の
[10] 尾崎まみこ、勝又綾子「化学受容に関わる親油性刺激
ポートアイランド北公園ではアルゼンチンアリ以外のアリ
物質輸送タンパク質」 特集 疎水性物質を運ぶ昆虫のタ
に出会うことは稀になってしまった。種の多様性に富むア
ンパク質 ( 尾崎まみこ、尾崎浩一 監修 ) 蛋白質核酸酵素、
リ類はこのくらいの公園の広さなら、少し探せば数種が同
共立出版 53, 111-118 (2008)
時にみつかるのがあたりまえだが、ここでは既存の生態系
[11] B. Hölldobler, E. O. Wilson. The Ants. Cambridge:
がもうだいぶ変えられてしまっているようだ(図 8)。
Belkanap Press of Harvard University Press (1990)
[12] M. Ozaki, M. Kidokoro-Kobayashi, T. Hiraguchi Part
II. Chemical communication, IV. Olfaction, In Frontiers
11.おわりに
in Sensing Biology and Engineering (Eds. By Friedrich G.
Barth, Joseph A. C. Humphrey and Mandyam V. Srinivasan)
アリの触角に見出された炭化水素感受性の鐘状感覚子は、
「敵・味方」識別センサーの役割を全うするために、常に
[13] 尾崎まみこ、勝又綾子「化学感覚と行動切り替え」昆
存在する「味方」の匂いに反応することをやめて、常態か
虫ミメティックスハンドブック、
らの変化に対する応答性を追求した結果、あらゆる「敵」
双分社、東京 pp.356-362 (2008)
の匂いの検出に成功するに至ったのである。危機管理の基
本は、まず、常態からの変化に気づくことである。だから
といって、アリに比べて私たちの鼻はなぜこうも頼りない
のかと嘆く必要はない。仮にあらゆる匂いを感じることが
できたとして、その場合の煩わしさを想像すれば、常態の
環境化学情報をほとんど無視して平穏でいられることにま
ず感謝すべきであろう。ただ、昨年の東北大震災や 17 年
たっても忘れようもない阪神淡路の震災を思い返して、異
変が生じた時にはこれを見逃さない情報処理システムと危
機管理システムを構築・維持しておくことの重要性をアリ
に学ぶべきである。
20
pp.145-157 Springer, NewYork (2010)
PEN April 2012
連載 李相憲コラム ③(最終回)
神経工学の発展が我々に課す問いと悩み
東国大学招聘教授、知識融合研究所首席研究員 李相憲
李相憲(イ・サンホン)氏によるコラムの連載第 3 回目は、神経工学の発展が社会
にもたらす倫理的な影響について、韓国でどのような課題について議論がなされ、
関心が払われているのか、どのような取り組みが必要だと考えらているのか、その
現状を紹介するとともに、広く世界に視点をむけて議論します。
哲学博士の李相憲氏は、ナノテクノロジー立国をすすめる韓国で東国大学の招聘教
授ならびに知識融合研究所の首席研究員を務めています。
20 世紀後半、
体細胞クローン技術、
ヒトゲノム計画
(Human
ち込まれたのは 2002 年である。2002 年 5 月 13 ~ 14 日、
Genome Project)等の驚くべき成果は、生命工学に対する
米国サンフランシスコで「Neuroethics: mapping the field」
人々の関心を集め、生命工学の発展によってもたらされた
という国際的な学会が開催された。スタンフォード大学と
倫理的、社会的、法律的な課題に対する社会的関心を喚起
UC サンフランシスコの共同主催で、Dana Foundation か
した。これらの技術に比べると、神経科学や神経倫理には
ら後援を受けた。この学会には、神経科学、生命倫理学、
まだ大衆の関心が集まらなかった。しかしながら、実際に
哲学、法律、遺伝学、マスコミ等の様々な分野の専門家が
人間の生活や社会に及ぼす影響という側面から見ると、生
参加し、神経倫理のコアの争点について議論をおこなっ
命工学より神経科学のほうがより影響が大きいと思われ
た。
「脳科学と自我」
、
「脳科学と社会政策」
、
「倫理学と脳
る。遺伝子と人間の行動及び思考の間の関連性は間接的か
科学の実際」、
「脳科学と社会的議論」、
「神経倫理の未来図」
つ不明瞭であるが、脳と人間の行動及び思考の間の関係は
等、5 つの分科会に分かれて議論が展開された。日本では、
より一層直接的だからである。今日神経科学は技術的手段
2004 年に社会技術研究開発センター (RISTEX) に脳科学と
を動員し、人間の脳に直接介入する道を模索している。こ
倫理に関する「脳科学と社会」研究グループが発足し、神
のような介入は断続的であり、急速に増大するだろう。神
経科学に関する倫理的考察を主導していた。ヨーロッパで
経科学に対する倫理的省察を急がなければならない理由は
は、2002 年に英国 Royal Institution の後援を受けて、神
ここにある。
経科学の未来というテーマで学術大会が開催された。ここ
では、神経科学とその社会的な含意が議論された。2004
神経倫理(neuroethics)が本格的に学術的議論の場に持
年 に は 欧 州 委 員 会 に よ る「Meeting of Minds: European
PEN April 2012
21
Citizens’ Deliberation on Brain Science」プロジェクトが始
このように薬物を通じて我々の脳機能を向上させていいの
まった。
だろうか。またこのような方式の機能向上が人類に、社会
にもたらす問題はないのだろうか。
最近の神経倫理への関心は、改良された脳の画像(brain
imaging)技術から始まった。機能磁気共鳴画像(fMRI)
最初に思い浮かぶのが安全性の問題である。安全性につい
や構造磁気共鳴画像 (sMRI) 等は、既存の画像装置より脳
ては幾つかの観点に分けて考えてみる。まず、危険が現在
の情報をより正確に読み取り、より多くの情報が得られる
的なものか、将来のものかということである。現在的危険
ようになった。脳の画像技術に関する話になったので、こ
とは、既に事例が報告されている副作用を指す。将来の危
れと関連する倫理的問題の一つに触れておきたい。重要な
険とはまだ報告されていないが、長期的に発生すると予想
争点として浮上するプライバシー問題である。プライバ
される危険である。もう一つの観点は短期的な危険か、あ
シーの概念は遺伝的プライバシーに続き、神経情報にまで
るいは長期的な危険なのかということである。短期的危険
拡張されるわけで、神経情報は遺伝情報よりはるかにイン
とは、短時間に危険の発生の可否が確認できることである。
パクトが大きい。個人の遺伝的特性が直ちに個人の性格や
これに対して長期的危険とは、危険の発生の可否を確認す
行動の特性を説明するのは難しいが、脳の神経情報は極め
るために長い時間が必要な場合である。時によっては、数
て直接的かつ実際的である。ある人がどんな感情状態でい
十年から数世代にわたる時間が必要なこともある。現在的
るのかと、その大脳辺縁系がどのように活性化されている
危険や短期的な危険からは薬物の服用者を比較的容易に保
のか、その間の相関関係を容易に推測できるからである。
護できる。問題は将来的危険と長期的危険である。この種
例えば、ある人の脳神経構造に非正常的なところが存在す
の危険は今のところ理論上の危険である。既存の科学的な
ると明らかになると、その人は直ぐでもそれによりある特
知識をもとに考えてみると、まだ報告されてはいないが、
性が欠如されているとか、その構造に対応する反社会的特
その発生には十分考慮すべき危険である。
性を持っていると推測できるだろう。個人の神経情報の流
出は、どの方式にでも個人の最善の利益に対置される方向
神経認知的増強が普遍化された時を仮定すれば、人々の認
で使われる可能性が高い。
知能力の増強に対しある種の圧力を受ける可能性がある。
その圧力は社会全般にわたり存在するだろう。そのため、
最近神経科学で注目を集めているのは、既存の治療術か
誰かが薬物を利用した神経認知的増強を希望しなくても、
ら拡張され、現れ始めた増強(Enhancement)技術であ
自然状態で残るのは難しいと考えられる。そしてこのよ
る。これによって従来より使われていた神経外科術や神経
うな圧力は我々の予想よりはるかに大きくなるかも知れな
刺激術の発展も期待できる。また神経移植術や脳介機装
い。例えばあなたが雇用主と考えてみよう。より集中力が
置(Brain-Machine Interface: BMI)技術の将来への期待も
優れて、記憶力もよく、さらに従順的であればその職員を
大きい。ここでは現在最も研究が活発に進められ、可視的
厭う理由は見つからないだろう。このような職員による利
成果を上げている神経薬物のみについて触れる。ナノテク
得はあまりも明らかである。学校ではどうだろう。授業時
ノロジーを用いたドラックデリバリーシステムを改良した
間に居眠りしなくて授業への集中度が高く、理解能力も優
り、ナノ粒子を用いて薬物の吸収率を上げる等のナノテク
れた学生を好まない先生がいるだろうか。さらに暴力的か
ノロジーの応用が活発に進行されている。必要なところに、
つ反抗的であり、学校生活に慣れない学生を歓迎する先生
必要な量の薬物を正確に伝達できる能力は薬物の効率性を
はいないだろう。米国軍隊では、アンフェタミンのような
高めるのみならず、薬物を通じて人間の特定能力を増進さ
薬物を兵隊に服用させることが知られている。とりわけ飛
せる効果も期待できる。
行機操縦士には集中力の向上の効果があるので、推奨され
ている。薬物の服用を社会が暗黙的に強制するというのは、
治療薬物を常人に使用すると効果が全くないことは常識で
人間が効率性の手段に転落したとの意味である。
ある。しかしながら人間の脳と神経とのメカニズムについ
22
ての理解が従来より大きく進歩した今日開発されている薬
神経認知的増強が社会的不平等を増大させ、固定化させる
物は、常人にも効果があるケースが度々ある。そのような
との指摘もある。人間社会では、多くの財貨が公正に分配
薬物は治療以上の目的にも使用できる。つまり、脳機能の
されておらず、神経認知的増強も類似な方式で不平等に分
向上を目的で常人が使用できるのだ。このような薬物を使
配されるとの指摘である。認知能力の増強薬物に対する接
用し向上させる脳機能として、現在主に挙論されるのは大
近性において階層ごとの差が生じ、それによって階層間の
きく 3 点がある。すなわち、自律機能、情緒機能、認知機
格差が深化する可能性がある。経済的に余裕があり、神経
能である。
認知的増強の薬物が利用できる階層は、競争財の獲得にお
PEN April 2012
いて有利な席を占めるだろう。つまり、
学業(成績を含む)、
Japan", Neuroscience Research, Vol.57, 2007, pp.10-16.
雇用、収入、富、生活の質等を獲得するのに、他の集団よ
[11] Walter Glannon, Bioethics and the Brain, Oxford Univ.
り優位を占めることができる。こうなると、一方では社会
Press, 2007
経済的下位階層は教育や雇用等において、もう既に直面し
[12] Walter Glannon (ed.), Defining right and wrong in
ている不利益のさらなる深化に苦しむだろう。
brain science, Dana Press, 2007
脳の神経科学的増強が安全性、選択の自由、普遍的接近性
を損なわずに、つまり現在使用されている医薬品ほどの安
全性を担保し、個人の自由と社会的制約を区分しにくくす
る社会的環境を克服して、誰でも低費用で容易に獲得でき
るようになって普遍的接近性を確保したと仮定してみよ
う。そうなった場合に本当に問題は残らないだろうか。伝
統的に自己増強は適切な目標の範囲内で認められており、
自己増強のため、苦痛に耐えて難関を乗り越え、不屈の努
力で目標に近づいていた。そしてその過程で自分を発見し、
生きることの目的と意味が見つかっていた。ところが、薬
物一つで体と精神が増強できるとしたら、我々は一体何を
努力して追求すべきなのか。脳と神経に対する知識が蓄積
され、それを増強する操作技術がますます進歩するにつれ、
我々に課せられた問いであり悩みである。
References:
[1] Adina Roskies, "Neuroethics for the new millennium",
Neuron 35, 2002, pp21~23
[2] Eric Racine, Pragmatic Neuroethics, MIT, 2010
[3] Judy Illes & Stephanie. J. Bird, "Neuroethics: a
modern context for ethics in neuroscience", Trend in
Neurosciences, Vol. 29, No. 9, 2006, pp.511~517
[4] Judy Illes, Martha J. Farah, and Robert Cook-Deegan,
et. al., "Neurocognitive Enhancement: what can we do and
what should we do?", Nature Reviews Neuroscience, vol.5,
May 2004, pp.421~425
[5] Laurence R. Tancredi, Hardwired Behavior, Cambridge
University Press, 2005
[6] Martha Farah, "Neuroethics: the practical and the
philosophical", Trends in Cognitive Science, vol. 9, Jan.
2005, pp.34~40
[7] Matthew Liao, Julian Savulescu & David Wasserman,
"The Ethics of Enhancement", Journal of Applied
Philosophy, Vol. 25, No. 3, 2008, 159~161
[8] Neil Levy, Neuroethics, Cambridge University Press,
2007
[9] Steven J. Marcus (ed.), Neuroethics: Mapping the Field,
University of Chicago Press, 2002
[10] Tamami Fukushi, "E thical considerat ions of
neuroscience research: The perspectives on neuroethics in
PEN April 2012
23
【政策、レビュー】
イラン、2011 年のイランにおけるナ
ノテクノロジー研究開発の進捗をま
とめる(2012.4.5)
イランのナノテクノロジーイニシア
チブ理事会(INIC)は、新年度の開
始にあたって 2011 年 3 月 21 日から
2012 年 3 月 19 日までの 1 年間のイ
ラン国内における研究やナノテクノ
ロジー関連のイベントなどの成果を
まとめたレビュー報告を行った。昨
年度のイランのナノテクノロジー関
連の成果は充実しており、論文発表
数で世界の 12 番目につけ、約 3 万
海外動向
人の来場者を集めた Iran Nano の開
催や Asia Nano Forum のホスト国と
なるなど国際的なイベントも成功さ
せた。
http://en.nano.ir/index.php/news/show/2594
【R&D 政策、リスク管理策、EHS】
EC、ナノ安全クラスターの 2012 年
版抄録を公開(2012.4.4)
欧州委員会(EC)はナノ安全クラス
ターの第 3 版となる抄録を公開した。
ナノ材料毒性、曝露モニタリング、
包括的リスク管理、研究施設、連携
支援策などのプロジェクトの進捗状
況をまとめたもの。抄録はナノテク
ノロジーの健康・環境・安全(EHS)
に取り組む際のガイドラインとなる
ようなものではない、と EC は断っ
ている。抄録発行の目的は、研究者
同士のコミュニケーションを促進し、
研究に相乗効果を生み出すことであ
り、活性を維持するため内容の更新
が容易なウェブベースの公開となっ
ている。
http://ihcp.jrc.ec.europa.eu/our_activities/
nanotechnology/european-nanosafety-clustercompendium-2012 http://www.nanosafetycluster.eu/
24
PEN April 2012
【研究開発】
ヤモリの足の仕組みを解析し、テレビを支えることのでき
るデバイスを開発(2012.4.4)
【医療応用、がん治療】
がん細胞とナノ粒子の相互作用の視覚化に成功
(2012.3.26)
マサチューセッツ大学アムハースト校の研究チームが、ヤ
ノースウェスタン大学の研究チームが、薬を内包したナノ
モリの足が壁をつかむ方法を分析し、なめらかな壁で約
粒子ががん細胞の核にどのような影響を及ぼすのかを視覚
317 キロの重さを支えることのできる長辺が 40 センチ
化することに成功した。これにより、ナノ粒子はシャトル
メートル程度の大きさのデバイスを開発した。開発された
タンパク質を利用して細胞核内へ入り込み、ナノ粒子の周
デバイスは粘着性能を落とすことなく、繰り返しの使用に
辺の核膜にへこみを作ること、また核の表現型の変化は細
耐える。
胞の生物学的反応と強い相関関係を持つことが明らかにさ
http://www.nano.org.uk/news/1811/
れた。本研究成果は、がん細胞とナノ粒子の相互作用への
理解を深め、薬効の高い治療薬をデザインすることへ寄与
すると期待される。
【国際連携、政策】
cellhttp://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=24708.php
ベトナムとインド、多角的な協力で合意(2012.3.30)
ベトナムとインドは、農業へのバイオテクノロジー応用や
ナノテクノロジーと ICT 研究などでの協力を約束する複数
の覚書を交わした。覚書への調印はベトナムとインドの外
交関係樹立 40 周年と 2 国間協力の開始 5 周年を記念する
【EHS、有害性試験】
アカミミズの遺伝子にフラーレンによる影響を確認
(2012.3.23)
行事の一環として行われた。
フラーレンに曝露させたアカミミズ(Lumbricus rubellus)
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44832
で、細胞の損傷と遺伝子の表現形の変異が起こることが確
認された。アカミミズを用いた試験は、4 週間と寿命まで
という 2 種類の曝露期間を準備して行われた。4 週間曝露
【リスク管理、労働衛生、EHS】
台湾国立交通大学、個人用のナノ粒子捕集装置を開発
(2012.3.27)
させた個体の遺伝子の表現形に変異は見られなかったが、
寿命にいたるまで曝露させた個体には変異が観察された。
また、いずれの曝露期間の個体においても細胞の損傷が観
台湾の国立交通大学と労働安全衛生研究所(IOSH)、米国
察された。ただし、細胞の修復も観察された。
のラブレース呼吸器研究所の共同研究チームは、ナノ材料
http://www.merid.org/en/Content/News_Services/Nanotechnology_and_
を捕集できる小型の試料採収装置を開発した。大きさは
Development_News/Articles/2012/Mar/23/earthworms.aspx
10 センチメートル程度と小さく、身に着けて使用するこ
とが可能である。装置は 3 層構造で 100 ナノメートル以
注:ミミズの寿命は1年程度だが、アカミミズは 3 〜 4
年といわれている。
下の粒子は最下層のフィルタで捕集される。
http://cen.acs.org/articles/90/web/2012/03/Wearable-Sampler-CheckExposure-Nanoparticles.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_
campaign=Feed%3A+cen_nano+%28Chemical+And+Engineering+News+NanoFoc
us%29
【EHS】
スウェーデンの研究者、ナノ粒子が魚の代謝機能に影響を
及ぼすと指摘(2012.3.22)
スウェーデンのルンド大学の研究チームによって、ナノ粒
【医薬品応用、EHS】
EC、ナノ材料を用いた医療機器に関する専門家の意見募
集(2012.3.27)
欧州委員会(EC)の要請を受けて新興および新たに認め
られた健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)は、ナ
ノ材料を用いた医療機器のリスク評価実施することとなっ
た。リスク評価の対象は、健康な皮膚と接触する非侵襲性
の医療機器類と怪我の治療、移植、歯科治療、注射など
に用いる侵襲性の医療機器類となっている。意見募集は
2013 年 3 月まで行われる。
子が水系の生態ピラミッドの最上部にいる魚類に有害な影
響を及ぼす可能性が指摘された。ナノ粒子を含む水で栽培
した藻をプランクトンに与え、そのプランクトンを魚に食
べさせたところ、プランクトンを摂取した魚の行動が変化
した。魚はプランクトンを追いかけることを止めてしまっ
た、つまり食欲を失ったのだという。研究グループは脂肪
燃焼の低下を観察しており、ナノ粒子がある種のタンパク
質と結びついて正常な代謝を妨げるのではないかと分析し
ている。
http://sciencenordic.com/nanoparticles-impact-fish-through-food-chain
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24742.php
PEN April 2012
25
【リスク管理、EHS】
Nanochannels の枠組みのなかで実施され、生徒たちはナ
分散液に着目した安全なナノ材料の作製(2012.3.21)
ノテクノロジーのベネフィットとナノテクノロジーの医療
フロリダ大学の研究チームが廃棄物中の有害物質による環
応用の倫理的な課題について議論した。また、著名な研究
境破壊を低減するための手法を研究している。研究チーム
者数名によるパネルでは、ナノテクノロジー製品、医療応
が特に関心を持っているのはカーボンナノチューブを分散
用、倫理、バイオミメティクス、ライフサイクルなどの研
させるための水溶液で、さらに水溶液自体が有害である場
究開発の現状や課題について紹介がされた。ディベートの
合ではなく CNT が分散された状態で有害になる水溶液で
内容は生徒たちが作成しようとしている行動規範「Nano
ある。研究チームによると溶液と粒子数の比率をコント
Carta(マグナカルタのナノテクノロジー版)
」に反映され
ロールすることで毒性が低減できるという。
るという。
http://news.ufl.edu/2012/03/21/nano-toxic/
http://www.nano.org.uk/news/1802/
Nanochannels:プロジェクトウェブサイト
http://www.nanochannels.eu/
【EHS、労働衛生】
粉塵にナノスケールの粒子が含まれると容易に爆発する可
能性が指摘される(2012.3.20)
ナノスケールの粒子を含む塵や粉末は、マイクロスケール
の粒子を含む塵や粉末よりも低い点火エネルギーと温度で
激しく爆発することが分析により明らかにされた。ただし、
爆発の激しさは、ナノスケールの粒子の分散の抑制と高い
凝集率によって抑えることができるという。
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=24650.php
【EHS】
ナノ粒子に多剤耐性菌の出現を助ける可能性が指摘される
(2012.3.13)
中国の天津健康・環境医学研究所の研究チームが、ナノ粒
子が細菌間の遺伝子水平伝播を加速し、細菌が多剤耐性を
獲得するのを助ける可能性があると指摘した。アルミナナ
ノ粒子を用いた実験で、アルミナナノ粒子が細胞膜を透過
し、細菌の多剤耐性遺伝子の水平伝播を進ませることが明
らかにされた。
【政策】
http://www.abc.net.au/science/articles/2012/03/13/3451462.htm
各国の専門家、地球環境の保護のために抜本的なガバナン
スの改革の必要を指摘(2012.3.16)
社会科学の専門家を中心にした研究者ネットワークの
Earth System Governance Project に 参 加 す る 専 門 家 が、
Science 誌上で地球は気候や多様性といった環境の激変の
瀬戸際にあり、破壊的な変化を避けるために抜本的な環境
ガバナンスの改革が早急に必要だと呼びかけた。改革の一
環として国際連合の枠組みのなかに「持続的発展委員会」
を設けること、また現行の国連環境計画の国際機関化によ
る補強、さらにこれらの組織の実効性を高めるために市民
の声をとどける役割を担う組織や代表の権限の強化などを
提案している。
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/03/120316195338.htm?utm_
source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+sciencedaily+%2
8ScienceDaily%3A+Latest+Science+News%29
【パブリックエンゲージメント、ELSI】
英国の中学生、ナノテクノロジーの倫理について議論する
(2012.3.16)
英国の中学校で2回目となるディベートがブリストルで
開催された。この試みは第 7 次フレームワークプログラ
ム(FP7)のパブリックエンゲージメントのプロジェクト
26
PEN April 2012
【EHS、リスク管理】
EPA、BioMAP の提供開始(2012.3.12)
米国環境保護庁(EPA)と BioSeek, LLC は、ヒト初代細
胞分析システム BioMAP による様々なナノ材料や化学物
質の生物活性評価の結果を公開した。BioMAP は、EPA が
ハイスループット・スクリーニング手法の開発を進める
ToxCast Program の一環で開発されたシステムで、医薬
品、新規材料、その他の高生産量の複合物の重要な生物活
性と潜在的に有害な影響を確認することができる。開発者
の BioSeek は、BioMAP を臨床試験の実施の前に用いるこ
とでコスト削減も可能としている。
http://www.bioseekinc.com/technology/works.htm
http://www.businesswire.com/news/home/20120312006022/en/BioMAP®Profiling-Insights-Toxicity-Nanomaterials-Failed-Drugs
【C60】
天 文 学 者 ら、 宇 宙 で 固 体 の バ ッ キ ー ボ ー ル を 発 見
(2012.2.23)
米 国 航 空 宇 宙 局(NASA) の Spitzer Space Telescope の
データを解析した英国のキール大学の天文学者らが、宇
宙空間で固体のバッキーボールを世界で初めて確認し
た。このバッキーボールは 6500 光年離れたところにある
XXOphiuchi の周囲で木枠に収められたオレンジのような
状態で発見された。これまでにも Spitzer のデータの解析
によってバッキーボールは発見されているが、すべてガス
状で今回初めて固体の状態で発見された。
http://www.nano.org.uk/news/1794/
【研究開発】
ムール貝が岩にくっつく仕組みにヒントを得た自己修復す
る接着材の開発(2012.2.17)
ムール貝(ムラサキイガイ)はタンパク質でできた糸を繰
り出して水中の岩にしっかりと取りつく。ムール貝の接着
能力には糸のタンパク質に含まれる DOPA 分子が接着に強
く関係している。デンマークのオーフス大学の研究チーム
は DOPA を組み込んだスマートポリマーを作製した。この
DOPA 組込ポリマーはムール貝の糸と同様に自己修復機能
を備えている。
http://www.nano.org.uk/news/1788/
論文紹介:ナノ材料の安全な取扱いと企業のジレンマ
米国のカルフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の C. Engeman 氏、B.H. Harthorn 氏、P.A. Holden 氏らは、
アジア、欧州、米国の企業におけるナノ材料の安全な取扱いとリスク認識を分析し、「Governance implications of
nanomaterials companies’ inconsistent risk perceptions and safety practices」としてまとめた。UCSB の研究チー
ムが、米国ライス大学の International Council on Nanotechnology(ICON)と共に、日本のナノテクノロジービジ
ネス推進協議会(NBCI)等の協力を得て実施した各国のナノテクノロジー関連事業者への質問調査票やインタビュー
等で得られたデータを解析したものである。なお、本調査の中間報告が 2010 年 2 月に当時の産総研イノベーション推
進室ナノテクノロジー戦略担当が主催した「Workshop2010 “ナノテクノロジーの包括的な社会受容 -その課題と展
望-”」にて、C. Engeman 氏より行われている。論文は Journal of Nanoparticle Research に掲載された。
Journal of Nanoparticle Research
http://www.springerlink.com/content/xr82m108077nhm61/
講演資料
http://unit.aist.go.jp/nri/ci/nanotech_society/Si_portal_j/aist_nano_prj20100219.htm
PEN April 2012
27
滋賀での実践 —自然に学ぶものづくり・まちづくり
NPO 法人アスクネイチャー・ジャパン 研究員・コーディネーター 星野敬子
滋賀県は、琵琶湖水系が育む豊かな自然に恵まれている。
経済」研究会を設立し、生物多様性の専門家の足立直樹氏
琵琶湖の固有種をはじめとする動植物の種類が多いことで
をはじめ、京都大学教授(当時)の藤崎憲治氏らの指導の
も知られている。近畿地方の中核部に位置しながら、土地
もと研究を重ねた。同年 10 月には日本に Benyus 氏を迎
の約 8 割が森林・耕地・湖という、里山や自然の風景が今
え、TBI と連携協定を結んだ。その調印式には産官学民か
も色鮮やかに残る地域である。2010 年 10 月、この地を
ら 100 名以上が集い、
「自然に学ぶ」知識基盤の整備・運用、
舞台に NPO 法人アスクネイチャー・ジャパンを設立した。
ものづくりやまちづくり、人材育成という目標を掲げた(図
1)
。
地球上に生命が誕生したのが 38 億年前。現在に伝わる自
然・生きもののかたちやパターン、循環や生存の戦略は、
同じ地球上に生きる私たちに必要な知恵の源泉である。私
たちはこれまで自然を「資源の宝庫」と見なし、その資源
を取り出し消費することによって文明を築いてきた。しか
し、いつかは尽きてしまう資源の開発ではなく、自然を「知
恵の宝庫」として見直し、その知恵と応用により築かれる
社会が求められている。そして今「バイオミメティクス」
、
「バイオミミクリー」
、
「ネイチャー・テクノロジー」とい
う概念のもと、環境負荷の低い技術開発やライフスタイル
づくりが始まっている。当法人は滋賀を拠点に、自然の知
恵をものづくり・まちづくりにつなげていく推進団体であ
る。
図 1 アスクネイチャー・ジャパン連携協定調印式の集合写真
2011 年 10 月滋賀県近江八幡市にて開催。調印式にあわせて Benyus
当 法 人 の 名 前 に つ い て よ く 質 問 が あ る。
「アスクネイ
氏、足立直樹氏、理事長仁連孝昭の記念対談も行われた。
チャー」とはどういう意味か。
「アスクネイチャー」はそ
の名のとおり「自然に尋ねる」の意味である。これはアメ
活動は大きく4つある。まず第 1 の活動は、自然に学ん
リカの The Biomimicry Institute(TBI)が運営しているデー
だ事例の収集と、研究者と企業のネットワークだ。国内外
タベース「Ask Nature」に由来する [1]。mimic は「模倣」
の事例を調査研究し、人と情報が交わり新しいアイディ
だが、私たちは「尋ねる」という思いと姿勢を込めたいの
アや可能性が生まれ育つプラットホームをつくる。
「ネイ
だ。日本人が古来から持つ自然への目差しである。人が自
チャー・テクノロジー」の提唱者であり東北大学教授の石
然とともに生きてきた里山では、その厳しさと知恵比べを
田秀輝氏や、バイオミメティクス研究会を主宰する東北大
しながらもその恵みに感謝し、生きとし生けるものに畏怖
学教授の下村政嗣氏にもご指導いただきながら、ネット
の念を持っていた。私たちは今改めて、師に尋ねるように
ワークの構築を進めている。応用まで視野に入れた生物学
自然に尋ね、謙虚に学ばなければならない。
者や、課題解決の方法を生物学・生態学に求める工学者な
ど、専門性と同時に広い視野を持った研究者が今後ますま
構想は 2011 年春に始まった。
「アスクネイチャー」がこ
す増えることを期待している。
れからの社会に必要な枠組みだと確信した滋賀の経済界の
28
メンバーが、
「バイオミミクリー」の提唱者 Janine Benyus
第 2 の活動はものづくりである。研究者や専門家、企業や
氏が主宰する TBI を訪ねた。日本での団体立ち上げの構想
行政を交えて実際の製品開発に取り組み、滋賀の中小企業
を練り、同年 4 月に滋賀経済同友会において「自然に学ぶ
の活性化にもつなげていく。現在、立命館大学教授高倉秀
PEN April 2012
行氏監修のもと、ホウセンカの葉序を模倣した太陽光発電
装置を開発中である(図 2)
。葉序はフィボナッチ数列と
いう数学の法則にのっとり、上方の葉が下方の葉に重なら
ないよう角度が調節されている。これをモデルに集光型太
陽光パネルを配列し、効率的な発電を実現する。発電能力
39.6W の「Solar Plants」を開発したところだが、今後改
良を加え、一本で一家庭分の電力をまかなうことを目標に
している。「Solar Plants」が街に生えていたら景観も楽し
くなるだろう [2]。
図 2 太陽光発電装置「Solar Plants」
モデルにしたホウセンカは、葉が茎の周りをらせん状に 3 周したとき、
8 枚目の葉が 0 枚目の葉の裏に重なる 3/8 葉序である。植物にはこの
ほかにも 1/2、1/3、2/5 など様々な葉序がある。
第 3 の活動はこどもの教育事業である。こどもが自然に学
びものづくり・まちづくりを体験する 4 つのプログラムを
開発する。屋外で動植物を観察するフィールドワーク。自
然のしくみを体験する工作実験。新しい技術や暮らしの学
習。そして、ものづくりを考えるアイディアワークショッ
プである。
私たちは自然のつながりのなかにその一部として生きてい
る。たった一人のかけがえのない存在であると同時に支え
生かされている存在でもある。人のなかにもある「内なる
自然」に耳を傾ける感性を、
未来を担うこどもたちにも持っ
てほしい。自ら行動し地域社会でたくましく生きてほしい。
そのために、こどもが自然への理解を深め、大切にしたい
という思いと新しい暮らしのヒントをつかむプログラムの
実践を始めている(図 3)
。
図 3 自然に学ぼう!「いきもの探検隊」
2012 年 3 月、滋賀県近江八幡市の湖岸にて、大阪大学大学院生とワー
クショップを開催した。上から、「Solar Plants」の説明を聞く子ども
たち、屋外で葉序を観察、生きものの観察から人間のライフスタイ
ルを考えるワークに取り組む子どもたち
PEN April 2012
29
最後の 4 番目の活動は地域づくりである。自然に学ぶ技術
NPO 法人アスクネイチャー・ジャパン
の研究開発が発達し、より環境負荷の低いものをつくった
http://www.asknature.jp/
としても、これまで通り、またはそれ以上にものを製造廃
棄していては本末転倒である。自然生態系の完璧な循環シ
ステムに学び、人間の社会づくり・ライフスタイルづくり
に生かさなければならない。
2011 年 3 月 11 日に起きた東日本大震災を受け、時代は
大きく変わろうとしている。なによりも東北の復興が最優
先の課題であり、その復興の道筋は、地球環境と世界の動
向を見極めたうえで、日本の変革を目指すものでなければ
ならない。東北復興がほかの地域のモデルとなり、21 世
紀の持続可能な社会をつくる契機にしなければならない。
その観点から被災地の東北三県でシンポジウムを開催した
(図 4)。3 回のシンポジウムを通じて、山折哲雄氏、赤坂
憲雄氏、川勝平太氏、安田喜憲氏にご出演いただき、東北
の歴史的・文化的な背景をもとに、自然とともに生きる地
域づくりへの方途を探った。今後、ここで得られた知見と
成果を滋賀県につなげるシンポジウムを開催する予定であ
る。
図 4 第1回東北復興シンポジウム「海やまのあいだに生きる」
第1回 2011 年 12 月岩手県遠野市(共催:遠野市)、第 2 回 2012 年
1 月宮城県仙台市(後援:河北新報社)、第 3 回 2012 年 3 月福島県
会津若松市(共催:福島県立博物館)にて開催。
アスクネイチャー・ジャパンは活動をはじめたばかりであ
る。これからみなさまとともに、自然の知恵を産業や社会
に結びつけていきたいと考えている。研究すべき内容、開
発すべきターゲット、アイディアなど、広く議論を行って
ゆく。活動の趣旨をご理解いただき、活動へのご支援をい
ただければ誠に幸いである。
30
PEN April 2012
References:
[1] AskNature. 2008.
http://www.asknature.org/
[2] NPO 法人アスクネイチャー・ジャパン . 2011.
http://www.asknature.jp/history/2011/10/
堅調な業績推移、ナノ素材企業
4 月 10 日前後、企業各社は一斉
に 3 月連結決算を公表した。エ
レクトロニクス系の企業が過去最
大の純損益の赤字や従業員削減計
画を公表し苦戦するなか、ナノ素
材企業の東レは 2 期連続で連結
営業利益を更新した。4 月 11 日
付日経新聞は、販売単価の高い航
空機用の炭素繊維の拡販が営業利
益に貢献しはじめたと報じた。
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/
data/tdnr2/tdnetg3/20120207/7b5
4o1/140120120206078337.pdf
ポスドクのキャリア開発支援
4 月 5 日、内閣府総合科学技術会
議において科学技術政策担当大臣
等政務三役と総合科学技術会議有
識者議員との会合が開催され、若
国内動向
手の博士研究員のキャリアパス、
予算の重点化の 2 点が議論され
た。その際に、昨年 12 月 20 に
文部科学省、科学技術・学術審議
会 人材委員会が作成した「文部
科学省の公的研究費により雇用さ
PEN April 2012
31
れる若手の博士研究員の多様なキャリアパスの支援に関す
総合科学技術会議大臣有識者議員懇談会において「政策形
る基本方針 ~雇用する公的研究機関や研究代表者に求め
成における科学と政府の役割及び責任に係る原則の確立に
られること~」が参考資料として公開された。昨年 8 月
向けて」を説明
に施行された第 4 期科学技術基本計画ではこれからの科
科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)
学技術を担う人材として、博士課程への進学支援策やキャ
は、政策形成における科学的知見のあり方に関して、海外
リアパス支援プログラムが盛り込まれている。博士課程の
における検討状況の調査も含め、幅広い角度から検討して
学生が研究に打ち込めるような経済的支援や、企業を含め
きた。3 月 22 日、戦略提言のとりまとめにあたって、総
たキャリアパス支援プログラムのさらなる充実が求められ
合科学技術会議大臣有識者議員懇談会において「政策形成
る。
における科学と政府の役割及び責任に係る原則の確立に向
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu10/toushin/__icsFiles/
けて」の報告を行った。
afieldfile/2012/03/08/1317945_1.pdf
http://crds.jst.go.jp/news/201203220200
http://crds.jst.go.jp/singh/wp-content/uploads/data20120322.pdf
科学技術に対する国民意識の変化
文部科学省科学技術政策研究所は、科学技術と国民・社会
科学技術コミュニケーション推進事業「リスクに関する科
との接点となる出来事や科学技術に関する関心などを探る
学技術コミュニケーションのネットワーク形成支援」プロ
意識調査を進めてきたが、その結果を公表した。その一項
グラム公募
目に「社会的に影響力の大きい科学技術に関する情報が十
JST は、平成 23 年 8 月 19 日閣議決定された第4期科学
分に提供されていると思うか」という質問がある。2012
技術基本計画に基づき、国民の科学技術リテラシーを高め
年 3 月の調査結果だけ紹介すると、十分に提供されてい
るとともに、国民の科学技術に対する理解、信頼と支持
る;1.8%、どちらかというと提供されている;15.4%、
を得ることができるように、多様な科学技術コミュニケー
どちらともいえない;31.8%、あまり提供されていない;
ション活動を推進する事業を行う。 この事業の一つとし
38.4%、全く提供されていない;6.4%、わからない;6.2%
て実施する「リスクに関する科学技術コミュニケーション
である。大事な科学技術の情報の提供に満足している国民
のネットワーク形成支援」プログラムは、日本全国の大学
は、17%という結果である。
や科学館等の活動主体がネットワークを形成し、連携しな
http://www.nistep.go.jp/nistep/about09.html
がら、リスクに関する科学技術コミュニケーション活動の
普及・展開や、効果的な活動手法の開発・共有を図り、個々
の活動の質を高め、新たな活動を創出することを狙いとし
東日本大震災復興支援委員会からの提言
た取組を支援するもの。
日本学術会議は、昨年年 3 月 11 日の東日本大震災発生後、
http://sciencecommunication.jst.go.jp/risk-n/koubo/
東日本大震災への対応として東日本大震災対策委員会を設
置し、審議、検討を行ってきた。4 月 9 日、東日本大震災
復興支援委員会及び同委員会の分科会が、5 つの提言を公
JST 復興促進センター 事務所の開所および「復興促進プロ
表した。
グラム」の実施
http://www.scj.go.jp/
4 月 4 日、JST は、東日本大震災からの復興を支援するため、
宮城、岩手、福島3県に、新たに JST 復興促進センターを
設置し、被災地企業の研究開発を支援する「復興促進プロ
30 年後の化学の夢ロードマップ
グラム」を開始した。同センターの事務所は、仙台市・盛
公益社団法人日本化学会の戦略企画委員会、学術研究活性
岡市・郡山市の 3 カ所に開所し、それぞれの事務所に、
「マッ
化委員会、
「化学の夢ロードマップ」作成 WG は、化学が
チングプランナー」と呼ばれる技術の目利き人材を 3 カ所
抱える今後の課題として我々がどのようなものを考えてい
に合計 18 名程度配置する。マッチングプランナーは、東
るか、それに対して化学がどのような解決策を提示できる
北経済連合会など被災地の産業団体や自治体と連携して、
と考えているかを示すことにより、政策担当者や国民の皆
被災地企業の現場のニーズや課題を発掘し、これを解決で
様、他分野の専門家の方々が今後の科学・技術の方向を考
きる全国の大学などとの産学共同研究につなげる。さらに、
える際に、貴重な題材となることを想定し、
「30 年後の化
このような共同研究などについて研究費を支援し、全国の
学の夢ロードマップ」をまとめ、公表した。
大学などの革新的技術シーズを被災地企業において実用化
http://kanto.chemistry.or.jp/menu/roadmap/111018/Roadmap.html
32
PEN April 2012
し、被災地復興に貢献することを目指す。
http://www.jst.go.jp/pr/info/info873/index.html
「次世代ナノ・次世代生命体統合シミュレーションソフト
ウェアの 研究開発」合同公開シンポジウム
3 月 14 日、内閣府総合科学技術会議は、3 月 5 日に行わ
れた「次世代ナノ・次世代生命体統合シミュレーションソ
EURICA プロジェクト始動
フトウェアの 研究開発」合同公開シンポジウムにおける、
理化学研究所は、仁科加速器研究センターが推進してい
総合科学技術会議の奥村議員が挨拶をの要旨を公開した。
る重イオン加速器施設「RI ビームファクトリー(RIBF)」
http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/cstp/20120305super.html
と、欧州ガンマ線検出器委員会が管理する大球形ゲルマニ
ウム半導体検出器を組み合わせた核分光研究プロジェクト
「EURICA(ユーリカ)
」の試験運転を 3 月 28 日に開始した。
サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)平
EURICA は、原子核の核構造(魔法数、原子核の変形)の
成 24 年度採択機関の決定
検証や超新星爆発での重元素合成の研究などを目的に、理
3 月 26 日、JST は、平成 18 年度より実施している「サイ
研仁科加速器研究センター RIBF 研究部門と国内外の大学・
エンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)」の平
研究機関が共同で取り組む国際共同研究プロジェクトで、
成 24 年度募集において 959 件の応募の中から 540 件を
2011 年 7 月に開始し、検出器の設置など準備作業を進め
採択した。SPP は、児童生徒の科学技術、理科、数学に関
てきた。2012 年 2 月には RIBF に設置完了し、3 月 28 日
する興味・関心と知的探求心などを育成するとともに、進
に試験運転を、6 月には本格的な実験開始の予定。
路意識の醸成および分厚い科学技術関連人材層の形成を目
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2012/120326_4/index.html
的として、小学校、中学校、高等学校などと大学・科学館
などが連携することにより、科学技術、理科、数学に関す
る観察、実験、実習等の体験的・問題解決的な学習活動を
高エネルギー加速器研究機構がつくばイノベーションア
実施する際の経費支援などを行っている。本事業には 2 つ
リーナへ参画
のプランがあり、プラン初Aは「SPP に採択されたことの
TIA-nano の中核機関である産業技術総合研究所、物質・
ない機関による講座で、1 企画あたりの支援上限額 20 万
材料研究機構、筑波大学に加え、新たに大学共同利用機関
円」
、プラン A は「体験的・問題解決的な学習活動を中心
法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)が中核機関とし
とする講座で、1 企画あたりの支援上限額 50 万円」を実
て参加することになった。KEK は大規模な放射光施設や大
施する。
強度陽子加速器施設(J-PARC)など多くの最先端インフ
http://www.jst.go.jp/pr/info/info870/index.html
ラを有しており、今後はこれらを基盤に放射光施設のトラ
イアルユース、高性能検出器を利用した新たな研究分野の
開拓、豊富な研究者受け入れ実績に基づく新たな連携の拡
厚生労働省、ナノマテリアル安全対策調査事業報告書を公
充が期待される。
開(2012.3.31)
http://www.kek.jp/ja/NewsRoom/Release/20120328153000/
厚生労働省は平成 22 年度に実施した「ナノマテリアル安
全対策調査事業」の報告書を公開した。ナノマテリアル含
有製品の暴露推計とリスク評価手法検討のための予備調
「ナノテクノロジー・材料共通基盤技術検討ワーキンググ
査、実用化もしくは実用化が近いナノマテリアルの安全性
ループ設置案
等に関する文献調査、主要国におけるナノマテリアルの管
3 月 22 日、総合科学技術会議は、3 月 21 日に開催され
理の動向調査についてまとめられている。
た 第1回科学技術イノベーション政策推進専門調査会の
報告書
配付資料を公開した。このうち資料 2-3 には「ICT 共通基
http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/nano/nanopdf/H22houkoku/honbun/all.pdf
盤技術検討ワーキンググループ」
「ナノテクノロジー・材
化学物質安全対策室のナノマテリアル関係のページ
料共通基盤技術検討ワーキンググループ」の設置について
http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/nano/nanoindex.html
(案)として、第 4 期科学技術基本計画の課題の達成のた
めの、
横断的「共通基盤技術」の推進体制が提案されている。
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/innovation/1kai/index.html
鳥インフルエンザ関連論文 2 報、掲載へ(2012.3.30)
米国のバイオテロに関する連邦政府委員会は、テロへの悪
用の恐れがあるとして論文掲載を止めていた日本とオラン
ダの両研究グループの 2 報の論文について、実験の詳細を
PEN April 2012
33
公開しても直ちにテロへの悪用がされるものではないとの
結論にいたった。
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/03/breaking-news-nsabbreverses-pos.html
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【AIST-TOKYO ナノテク情報】
(PEN の前身)は、産総研ナノシステム研究部門ホームページにて公開しています。
http://unit.aist.go.jp/nri/nano-plan/index.html
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[email protected] までお寄せ下さい。
*いただいた個人情報は産総研 個人情報保護方針(プライバシーポリシー)に基づき大切に管理し、情報誌
PEN の運営と私達のイベントのご案内のみに使用させていただきます。
34
PEN April 2012
寄稿
ナノ物質のリスク評価の国内における展望
外部編集委員 山根秀信
「ナノ材料の健康被害の懸念」という内容の記事が 2 月 6
の 「化学物質リスク研究」 として、複数の 「ナノ物質の毒
日付朝日新聞夕刊に掲載された。
性研究」 が進められてきた。
” ナノ材料 国が安全性調査 ”、動物実験では発がん性も
また、経済産業省と文部科学省が主導し、産総研、物質・
来年度以降厚生労働省が、二酸化チタンやカーボンナノ
材料研究機構(NIMS)
、筑波大学が中核となり、つくばイ
チューブなど 5 種類について、ナノ材料自体やナノ材料を
ノベーションアリーナ(TIA)が発足した。
使った製品を作る作業員の現場で浴びる量を調べる。
(朝日新聞より抜粋、引用)
国内において化学物質を管理している法律は化学物質の審
査及び製造等の規制に関する法律(化審法)である。前回
3 年あまり前、経済産業省では当時の産総研安全科学研究
の改正で、ハザード評価からリスク評価へと舵を切った。
部門長中西準子氏(現産総研フェロー)を座長に 「ナノマ
そして、現在進められている厚生労働省・経済産業省のナ
テリアル製造事業者等における安全対策のあり方研究会」
ノ材料に関係する検討会・審議会は、前回の改正で継続検
が開催され、主にナノマテリアルの取り扱いに関して、指
討事項とされた “ ナノ材料 ” に関する内容を化審法にどの
針が示された。同時期には、厚生労働省や環境省でもそれ
ように反映させるのかということに照準を絞ったと思われ
ぞれが所管する作業環境や大気環境について、検討が進め
る。
られた。
ただしここで一つ気がかりな点がある。元々化審法には、
日本における “ ナノ材料のリスク評価 ” の研究は、国立
経済産業省、厚生労働省、環境省の 3 省が合同で関わって
医薬品食品衛生研究所などがカーボンナノチューブを
きた。2009 年 9 月に PM2.5 の基準を設定して以降、“ ナ
腹腔内に投与した結果、アスベストと同様の強い毒性
ノ材料 ” に関する 3 者合同の取り組みが中断している。厚
が認められたという論文を発表したことにより本格化し
生労働省と環境省は TIA へも参画していない。
たように思われる。その後、2010 年に二酸化チタンが
「IARCMonographs」において、ヒトに対して発がんの疑
いがある 2B にランクされた。
諸外国では、ナノ材料の開発やその利用は、官が主導し、
産学官の連携で進められている。またその特性やリスク評
価についても、産官学の連携のもとで包括的に進められて
前述の 3 省における検討会・委員会は、一旦は終了してい
いる。
たが、
昨夏より厚生労働省「化学物質のリスク評価検討会」、
経済産業省 「化学物質審議会」 で、“ ナノ材料 ” が議題に
さて、このような状況下で、我が国がどのように進んでい
上るようになり、昨年 12 月には経済産業省の 「ナノ物質
けばよいのか。産学官の連携が必須であることは言わずも
の管理に関する検討会」 内に、リスク評価と計測技術の 2
がなである。しかしながら、“ 官 ” が指摘される縦割りの
つのワーキンググループが設けられた。
弊害がここでも懸念される。
この間に 5 年間に及ぶ NEDO プロジェクト 「ナノ粒子の
“ 産 ” は、製品の原料から始まり製品に至るサプライチェー
特性評価手法の開発」 や、厚生労働省の科学研究補助事業
ンで、異業種が存在する。業種ごとに業界団体や工業会が
PEN April 2012
35
あり、これらの連携が必要である。各団体に加盟する企業
の足並みが揃い、ベクトルを合わせなければ前に進まない。
業種の垣根を越え、同じようにベクトルを合わせることが
必要である。
“ 官 ” は、化審法に関係する 3 省に文部科学省の参画が必
須である。
最後の “ 学 ” は、研究開発の理工学部、リスク評価を分野
ごとで行う医学部、薬学部、毒性の専門家である病理学者
がそれぞれを理解し合い、垣根を越えねばならない。それ
ぞれに垣根が越えられるかどうか、大変難しい課題である。
“ 産 ” のまとまり
“ 学 ” のまとまり オールジャパン
“ 官 ” のまとまり
それぞれのまとまりが成立することで、産学官をまとめれ
ば、『オールジャパン』で取り組むための土台となる。
“ ナノ材料のリスク評価 ” は、オールジャパンでなければ、
乗り越えることの出来ないハードルと捉えて進めなければ
ならない。したがって、現在進んでいる産学官それぞれを
取りまとめる司令塔、もしくはコーディネーターというべ
き存在が是非とも必要となる。それが、人なのか組織なの
かはっきりしない。しかし、
そうしなければ、
体制(枠組み)
というものを作ることはできず、“ ナノ材料のリスク評価 ”
とは、このような体制で臨まなければ解決出来ない、乗り
越えられない大きな課題だといえる。これは、前述の内容
と重複するが、欧米のみならず、中国・韓国や東南アジア
における例が如実に物語っている。
産学官が連携し、“ オールジャパン ” の体制が 1 日も早く
できあがり、一定の “ リスク評価 ” が完了した安全なナノ
物質を提供できるようになることを望む。
お断り:本内容はあくまで個人の見解であり、所属する企
業・業界団体の見解と一致するものではありません。
36
PEN April 2012
【レアアースフリー磁石】
レアアースを用いない産業用 11kW
高効率永久磁石同期モーターを開発
(2012.4.11)
(株)日立製作所、
(株)日立産機シ
ステム
両社はモーターの心臓部である鉄心
に鉄基アモルファス金属を採用する
CUTTING-EDGE
TECHNOLOGIES
ことで、ネオジウム、ディスプロシ
ウムといったレアアースを含んだ磁
石を用いない、11kW 高効率永久磁
石同期モーターを開発した。本技術
開発の一部は(独)新エネルギー・
産業技術総合開発機構の「希少金属
プレスリリースより
PEN 編集室がまとめた最新技術動向をお届けします。
代替・削減技術実用化開発助成事業」
支援を受けている。
http://www.hitachi.co.jp/
【EV コンセプトカー】
国際プラスチック見本市「チャイナ
プラス 2012」に出展(2012.4.11)
帝人化成(株)
、(株)フィアロコー
ポレーション
同社は帝人グループの炭素繊維等の
素材を使用してフィアロコーポレー
ションが製作した環境配慮型 EV コン
セプトカー「CONCH」をチャイナプ
ラス 2012 展示する。鉄の代わりに、
ボディには帝人の炭素繊維「テナッ
クス」が用いられている。
http://www.teijin.co.jp/news/2012/jbd120411_1.
html
PEN April 2012
37
【病原体による宿主の行動制御】
【タンパク分子の運動の動画化】
病原体はいかにして宿主の行動を操るのか 昆虫のウイル
水中のタンパク質分子のねじれ運動を動画として観測する
スを用いたアプローチ(2012.4.10)
ことに成功 タンパク質の分子機能解析を生体に極めて近
東京大学
い環境で実現する新技術(2012.4.10)
病原体の中には、自己の利益のために、宿主の行動を変化
高エネルギー加速器研究機構、東京工業大学、科学技術振
させるものが存在し、このような「病原体による行動操作」
興機構、韓国科学技術院(KAIST)
は昆虫においても良く知られている。最も古くから知られ
KAIST の研究グループは、高エネルギー加速器研究機構、
ている例として「Wipfelkrankheit(梢頭病)
」と呼ばれる
東京工業大学、米国シカゴ大学の研究グループとの共同研
現象があげられ、この原因となる病原体はバキュロウイル
究により、X 線を用いて、水中のタンパク質分子のねじれ
スという昆虫ウイルスである。このウイルスは感染の末期
運動を 100 億分の 1 秒の時間精度で動画観測することに
に宿主幼虫を寄主植物の上方に移動させ、そこで致死させ
初めて成功した。血液中で酸素分子を運搬するタンパク質
ることにより、自身の伝播範囲を広げている。東大の研究
であるヘモグロビン分子に短時間のレーザー光を照射し、
グループは、理化学研究所、およびカリフォルニア大学デー
照射後に進行するタンパク質の分子構造変化を、時間分解
ビス校との共同研究により、カイコとバキュロウイルスを
X 線溶液散乱法によって追跡した。この手法は、生体環境
用いて、バキュロウイルスが、進化の過程で宿主から獲得
に極めて近い室温の水溶液中で、様々なタンパク質が実際
したと考えられる遺伝子の機能を改変して、宿主の行動を
に働く自然な姿を動画として捉えることを可能とする画期
巧みに操作していることを明らかにした。本研究を足がか
的な手法であり、生命活動にとって重要なタンパク質の分
りにして、病原体による宿主の行動制御に関する研究が進
子機能を解析するための新技術として大いに期待される。
展することが期待される。
http://www.titech.ac.jp/file/press_20120410_1.pdf
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2012/20120410-6.html
【画像診断サポートシステム】
【1 人乗り EV】
医師の画像診断をサポートする「類似症例検索システム」
1人乗り EV、この7月にも販売(2012.4.10)
の開発(2012.4.10)
トヨタ車体(株)
富士フイルム(株)、静岡県立静岡がんセンター
同社は、1人乗り小型電気自動車「コムス」を早ければ 7
両者は、人工知能の技術を用いて医師の画像診断をサポー
月にも発売する。従来 10 時間以上かかっていた充電時間
トする世界で初めての「類似症例検索システム」の開発に
を短縮するなどの改良を行い、5 時間の充電で約 50km の
成功した。富士フイルムは、本システムを本年秋に発売す
走行が可能、価格は 60 万円程度を想定している。
る予定で、まずは肺がんを対象とし、類似 CT 画像検索機
http://www.toyota-body.co.jp/products/life/ev/coms/index.html
能を提供する。本システムは、4 月 13 日からパシフィコ
横浜にて開催される「国際医用画像総合展(ITEM2012)
」
で技術展示される。
【遺伝資源管理】
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0626.html
長期保存したフリーズドライ(真空凍結乾燥)精子からラッ
ト・マウスの作出に成功(2012.4.10)
京都大学
【セリン新規酵素による生合成】
京都大学の研究者らは、液体窒素を使用せずに長期保存可
アミノ酸新規生合成酵素の発見(2012.4.6)
能な精子保存法を開発し、冷蔵庫で長期保存、常温で国際
東京大学
輸送したフリーズドライ精子から産子の作出に成功した。
東 大 の 研 究 グ ル ー プ は、 独 立 栄 養 性 水 素 細 菌
このことにより、低コスト・簡易な遺伝資源管理が可能だ
Hydrogenobacter thermophilus において、生命にとって
けでなく、災害や事故から貴重な遺伝資源を守ることが可
必須なアミノ酸の 1 種であるセリンが新規な酵素によって
能となった。フリーズドライは、インスタントコーヒーや
生合成されていることを発見した。また、この新規な酵素
宇宙食などの食品あるいは医薬品の長期保存に汎用されて
の遺伝子は本細菌以外の生物にも存在することから、これ
いる技術である。
ら生物でもこの酵素の働きによってセリンが生合成されて
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/120410_1.htm
いる可能性が示された。
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_240406_j.html
38
PEN April 2012
【免疫細胞】
グおよび用途開発を担う拠点として、昨年 12 月、米国に
自己免疫疾患の原因となる免疫細胞が増える新たな仕組み
「Teijin Advanced Composites America Inc.」を設立し、そ
を発見-副作用の少ない治療法の開発に期待(2012.3.30)
の中で自動車構造材などを中心に本格的な用途開発を推進
慶應義塾大学、科学技術振興機構(JST)
する組織として、
「Teijin Composites Application Center(帝
JST 課題達成型基礎研究の一環として、慶應義塾大学は自
人複合材料用途開発センター)」を開設した。
己免疫疾患の原因となる免疫細胞が増える、新たな免疫調
http://www.teijin.co.jp/news/2012/jbd120321_2.html
節の仕組みを発見した。脂質リン酸化酵素の一種である
「P13K」が Th17 細胞を増やす仕組みを明らかにし、さら
にその仕組みを阻害する薬剤を自己免疫性腸炎のモデルマ
【燃料電池、水素燃料】
ウスに投与して、症状を改善することに成功したもの。
室温で光による液化-固化を繰り返す材料(2012.4.6)
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2011/kr7a43000009o1v3.html
産総研
産総研は、米国のブルックヘブン国立研究所と共同で、常
温常圧の水中で水素ガスを二酸化炭素と反応させてギ酸を
【ナノ温度計】
生成するとともに、ギ酸を分解して固体高分子形燃料電池
細胞内を歩くナノ温度計を開発 ミクロンサイズの細胞内
などに適した一酸化炭素を含まない高圧水素を供給できる
小器官内部の温度変化を世界で初めて測定 (2012.3.30)
高効率二酸化炭素 / ギ酸の相互変換触媒を開発した。今回
早稲田大学
開発した技術は、日米クリーン・エネルギー技術協力に基
同校は、動植物の細胞内の局所的でわずかな温度変化の測
づく産総研とブルックヘブン国立研究所の共同研究によ
定を可能にする「細胞内を歩くナノ温度計」を開発した。
る、触媒と水素分子を活性化する新たな配位子の設計指針
細胞内で分子モーターによって輸送される「歩くナノ温度
を見出して実現したものである。今回開発した技術は、二
計」で、これにより粒子の蛍光強度が温度によって変化し、
酸化炭素とギ酸の相互変換反応のエネルギー効率を大幅に
pH やイオン強度といった他の環境要因に影響されず、環
向上できる触媒技術であり、将来の二酸化炭素を利用した
境が時々刻々と変化する細胞内の局所的な温度を、正確に
大規模な水素貯蔵システムの開発が期待できる。
素早く測定することが可能となった。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20120406/pr20120406.html
http://www.waseda.jp/jp/news11/120315_nanothermo.html
【スピントロニクス】
【帯電微粒子水】
半導体 - 金属界面で巨大なラシュバ効果を発見 次世代の省
ハーバード大学と共同で帯電微粒子水による細菌抑制メカ
エネルギーデバイス開発に向けて大きな進展(2012.4.6)
ニズムの可視化を実現(2012.3.29)
東北大学、大阪大学
パナソニック(株)
両者は、次世代のスピントロニクスデバイスの動作メカニ
同社は、ハーバード大学 公衆衛生大学院環境衛生ナノサ
ズムとして注目されている「ラシュバ効果」が、半導体と
イエンス研究所と共同で、水に高電圧を加えることで生成
金属の界面(接合面)で起きていることを突き止めた。観
されるナノサイズの帯電微粒子水「ナノイー」の曝露によ
測は、世界最高の分解能を持つ超高分解能スピン分解光電
る細菌抑制のメカニズムの可視化を実現し、エアロゾル研
子分光装置を用い、ビスマス薄膜の電子スピン状態を詳し
究にて発表した。
く調べることで行われた。今回の発見は、半導体電子デバ
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn120329-7/jn120329-7.
イスと同様に、物質の接合面を利用した次世代のスピント
html
ロニクスデバイスの開発に大きく道を開くもの。ラシュバ
効果とは、表面や半導体接合面などの 2 次元系に出現する
【炭素繊維】
熱可塑性 CFRP 製品の用途開発を加速 米国「複合材料用途
開発センター」の開設(2012.3.21)
帝人(株)
同社は、熱可塑性樹脂を使用した炭素繊維複合材料による
コンポジット製品の事業化を加速するため、マーケティン
現象で、この効果の影響を受けた電子は、運動方向に対し
て 2 次元面で垂直なスピンの向きを持つようになる。通常
のラシュバ効果では、上向きと下向きのスピンが同じ数だ
け存在するため、物質全体のスピンの総和はゼロだが、電
場をかけることである特定の方向を向いたスピンの電子数
が大きくなるため、スピン流が流れる。このようなスピン
の振る舞いを解明しスピンを制御することができれば、新
しい量子現象やスピントロニクス素子開発への可能性が広
PEN April 2012
39
がるとして、国内外で精力的な研究が行われている。
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20120406.
pdf
【高尿酸血症】
生 活 習 慣 病 の ひ と つ、 高 尿 酸 血 症 の 定 説 を 覆 す 発 見
(2012.4.4)
東京大学、東京薬科大学
【福島第一原発事故】
福 島 第 一 原 発 沖、 広 範 囲 の 海 水・ 動 物 プ ラ ン ク ト ン・
小型魚類などから原発由来の低濃度放射性物質を検出
(2012.4.4)
東京大学
東大は、ウッズホール海洋研究所などの研究グループと
共同で、福島第一原子力発電所の事故 3 カ月後の 2011
年 6 月に福島第一原発沖 30 ~ 600km の海域での総合調
査を行い、当海域一帯の海水、動物プランクトン、オキ
アミ類、クラゲ類、小型魚類から原発由来の放射性核種
134Cs、137Cs、110mAg を検出した。結果は、4 月 2 日付け
「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National
Academy of Sciences of the United States of America)」オ
ンライン版に掲載された。
共同研究グループは、尿酸トランスポーター(輸送体)の
分子機能に基づく大規模な遺伝子解析と遺伝子改変動物を
用いた解析から、これまでの高尿酸血症の概念を大きく変
える発見に至った。すなわち、トランスポーター ABCG2
の尿酸排泄機能の低下により、腎臓よりむしろ腸管からの
尿酸排泄機能が低下することが、高尿酸血症の主要な原因
のひとつであることを発見した。今回の研究により、腸管
からの尿酸の排泄低下をきたす ABCG2 遺伝子の変異が高
尿酸血症患者全体の約 8 割に認められることがわかった。
本研究は、高尿酸血症を引き起こすメカニズムとして、今
まで無視されていた腸管からの尿酸排泄の重要性を示すも
のであり、現代医学の定説を覆す発見。この新たなメカニ
ズムの発見により、新たな視点からの予防法や治療薬の開
発につながることが大いに期待される。
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/press_archives/20120404.html
http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2012/20120404.html
【蓄電池解析用ビームライン】
世界最大級の蓄電池専用解析施設「RISING ビームライン」
が完成 オールジャパン体制の蓄電池研究国家プロジェク
ト本格化へ(2012.4.4)
新エネルギー・産業技術総合開発機構、京都大学
革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING 事業)では、
大型放射光施設(SPring-8)に RISING 専用の蓄電池専用
解析施設を完成し、4 月 4 日現地にて完成披露式典を行っ
た。
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100115.html
【世界最薄・最軽量太陽電池】
世界最薄かつ最軽量の有機太陽電池の実現に成功
(2012.4.4)
東京大学、ヨハネスケプラー大学
東大大学院工学系研究科とヨハネスケプラー大学の共同研
究チームは、有機溶剤に p 型半導体とn型半導体をブレン
ドして溶解したインクを用いて、厚さ 1.4 マイクロメート
ルという極薄の高分子フィルムに、有機半導体薄膜を均一
に形成するプロセス技術を開発し、世界で最薄かつ最軽量
の有機太陽電池を高分子フィルム上に作製することに成功
した。この有機太陽電池 1g あたりの発電量は 10W に相
当し、この値はあらゆる太陽電池と比較しても最軽量、最
【喫煙リスク】
喫煙によって慢性閉塞性肺気腫の発症が早まるメカニズム
を解明 コアフコース糖鎖の減少による肺胞破壊をマウス
を用いて確認(2012.4.4)
理化学研究所
理研は、喫煙によりコアフコース糖鎖の修飾が阻害される
薄、最柔軟な太陽電池となる。また、曲げ半径 35 ミクロ
ンに折り曲げても、エネルギー変換効率 4.2% を維持しつ
つ、機械的にも壊れない。さらに、この薄型有機太陽電池
を応用して、300% 伸縮させても電気的・機械的な特性が
劣化しない伸縮自在な太陽電池を実現した。
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/release/2012/120404.html
ことで肺胞壁が破壊され、慢性閉塞性肺気腫(COPD)の
発症が早まることを明らかにした。これは、理研基幹研究
所、阪大産研-理研アライアンスラボ、群馬大学医学部附
属病院との共同研究による成果。
http://www.riken.jp/r-world/research/results/2012/120404/index.html
【太陽電池】
米ニュージャージー州において薄膜系太陽電池最大のメガ
ソーラーにパネル供給(2012.4.3)
ソーラーフロンティア(株)
同社は、パブリックサービス・エレクトリック・アンド・
ガス社(PSE&G)の太陽光発電設備「ミルクリーク・ソー
40
PEN April 2012
ラーファーム」に 3.8 メガワット分(29,400 枚)の CIS
することに成功した。研究グループは今回、大型放射光施
薄膜太陽電池を供給した。PSE&G はニュージャージー州
設 SPring-8 の軟X線が非常に高輝度で偏光の制御も可能
で最も長い歴史と最大の規模をもつ公益ガス・電力会社で、
であり、22 ナノメートル(nm)の高い空間分解能の光電
「ソーラー 4 オール計画の一貫としてニュージャージー州
子顕微鏡装置を利用することにより、この物質で存在しう
バーリントン郡でミルクリーク・ソーラーファームを運営
るすべての磁壁の直接観察に世界で初めて成功し、さらに
する。なお、ミルクリーク・ソーラーファームは、ユービー
その内部のスピン方向や幅の決定を行った。通常の磁性体
ソーラー社(JSI)が開発・設計・建設したもの。ミルクリー
ではある限られた空間内でスピンが揃う領域(磁区)が形
ク・ソーラーファームは、米ニュージャージー州において
成される。2つの異なる磁区は、それぞれ違う磁化方向を
最大の薄膜系太陽電池プロジェクトで、米国の標準家庭お
持つためにそのままではエネルギー的に不安定で、間に磁
よそ 575 戸分に相当する電力を供給する見込み。本プロ
壁と呼ばれる領域が存在してその中ではスピンがゆっくり
ジェクトは、PSE&G の太陽光発電事業へのコミットメン
回転し、隣り合った磁区同士のスピンを滑らかにつなぐ役
トと、世界市場で CIS 技術の重要性が高まっていることを
割を果たしているはず。今回、その磁壁中のスピンの回転
示すものである。
の様子を直接観察することに成功し、また磁壁の幅も観測
http://www.solar-frontier.com/jp/newsrelease/pdf/20120403.pdf
した。今回の成果は、スピン同士に働く相互作用など、反
強磁性体の微小領域磁性に関する理解を大きく進展させる
もので、基礎的な物性物理の分野でも大きな成果である。
【アクシオン場が強い電場の下で示す新たな相転移】
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120402/index.html
アクシオン場を持つ磁性体における新現象の予言 素粒
子アクシオン検出手法の研究が物性分野の研究に貢献
(2012.4.2)
東京大学
東大柏キャンパスには、国際高等研究所カブリ数物連携
宇宙研究機構と物性研究所という、一見全く別の研究を
している研究所が隣接している。今回、両研究所の研究者
が、未発見の素粒子アクシオンの予想される振る舞いと最
近物性の分野で注目されているトポロジカル絶縁体の類似
性に着目した共同研究を行い、アクシオン場が強い電場の
下で示す新たな相転移を予言した。素粒子としてのアクシ
オンは未発見であり、今回の理論を素粒子実験によって検
証できるかについての展望は必ずしも明らかではない。し
かし、今回の研究では、物性実験においては試料の調整に
よってこの新しい効果が観測できることが予言された。カ
ブリ数物連携宇宙研究機構と物性研究所の研究者による共
同論文は今回が初めて。この研究成果は、Physical Review
Letters に "Editor's Suggestion" として掲載される。
http://www.ipmu.jp/ja/node/1270
【風力発電】
富士重工業の風力発電システム事業を日立に事業譲渡
(2012.3.30)
(株)日立製作所、富士重工業(株)
日立と富士重工業は、2003 年に 2,000kW 級ダウンウィ
ンド型風力発電システムを共同開発し、2005 年 12 月に、
茨城県神栖市波崎に試験機を設置して以降、国内の 6 箇所
で累計 25 基の風力発電システムを納入している。ダウン
ウィンド型風車は、ローターをタワーの風下に配置した風
車で、丘陵や洋上において、効率的に風を受けて発電する
ことができる。日立は発電機や電力制御部分の設計・製造、
および風力システムの販売と据付を担当し、富士重工業は
風車本体のナセル、ブレード、タワーの設計・製造を担当
することで、これまで緊密に協業関係を構築し、事業展開
してきた。今回両社は、富士重工業のエコテクノロジーカ
ンパニーが展開する風力発電システム事業を日立に事業譲
渡することで基本合意した。今後、2012 年 7 月 1 日の譲
渡完了に向けて、両社で協議を進めていく。
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2012/03/0330a.html
【磁壁のスピン構造】
酸化ニッケルの磁壁内のスピン構造決定に世界で初めて成
功 反強磁性体の微小領域磁性の理解が進展、磁気ナノデ
バイス開発の加速に期待(2012.4.2)
高輝度光科学研究センター、東京大学、広島大学、東北大
学、理化学研究所、科学技術振興機構(JST)
共同研究グループは、典型的な反強磁性体の1つである酸
化ニッケルのスピンが揃った微小領域 JST(磁区)間を隔
てる磁壁の観察を行い、その幅や内部のスピン方向を決定
【グラフェン層数制御】
グラフェンの精密層数制御と高均質化に成功 次世代スピ
ントロニクス・エレクトロニクスデバイス開発に向けて大
きな進展(2012.3.30)
日本原子力研究開発機構
原研は、超高真空中に導入したグラフェンの原料分子(ベ
ンゼン)が触媒金属の表面で化学反応してグラフェンが成
PEN April 2012
41
長する過程を逐次的にモニターすることに成功した。この
( 光速 )=(Vc/c) の 2 乗程度ではなく ( アルフベン速度 )/( 光
方法によりグラフェンの成長条件を明らかにし、グラフェ
速 )=(Va/c) の 1 乗に比例する量となり、
「速い加速」にな
ンに含まれる炭素原子層数の精密制御を初めて実現した。
ることを明らかにした。
さらに、成長したグラフェンをシリコンなどの基板上に大
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2012/15.html
面積のシートとして転写して構造を調べたところ、層数を
精密に制御したグラフェンでは、これまで問題であった電
子状態の不均一性が解消され、シート全体に渡って均質な
【有機薄膜電荷分離寿命】
材料が得られることを明らかにした。本研究成果によって、
有機薄膜表面電子の光励起寿命をリアルタイムで計測 高
グラフェンの電気的性質の精密な制御が可能になり、高度
効率な太陽電池などの創出に道開く(2012.3.27)
な電子・スピン機能性を有するグラフェンデバイスの創製
慶応義塾大学、科学技術振興機構(JST)
につながるものと期待される。
JST 課題達成型基礎研究の一環として、慶應義塾大学の研
http://www.jaea.go.jp/02/press2011/p12033001/index.html
究グループは、有機薄膜を塗布した金電極に、光を照射し
た時に起こる「光誘起電荷分離現象」を、リアルタイムに
高精度で観測することに成功した。研究グループは、ま
【原子核の歪】
ず、金単結晶基板の前処理や合成条件の最適化によって秩
原子核の歪つな変形の謎を解明(2012.3.30)
序構造を精密に制御した SAM 膜を作成、次に 2 光子光電
東京大学
子(2PPE)分光法という方法で、SAM 膜の励起電子の寿
原子核の表面の変形は多数の陽子や中性子が関与する集団
命を計測した。実験の結果、光照射によって発生し SAM
運動によって起こる。それは原子核物理学における最も基
膜表面に移動した励起電子は、100 ピコ秒以上の寿命を持
本的な課題の一つであり、また物の形は量子物理学全般に
つことが明らかになり、過去に報告された類似の構造より
共通の重要な学術的意味を持つ。原子核の変形には、端
も、100~1000 倍長く、デバイスとしての光学的、電磁気
正な変形と歪な変形がある。原子核の「歪な」変形には、
的などのさまざまな機能を高効率化する可能性を示してい
50 年ほど前に提案された二つの模型があるが、どちらも
る。また、励起電子の寿命はアルカンチオールの分子鎖の
実験データを説明できず、その姿は数十年来の謎であった。
長さを変えることによって、精密に制御できることを明ら
事情は「相互作用するボソン模型」も同じで、説明できな
かにしたが、これは有機合成的手法でデバイスの機能をコ
いデータが多々あった。本研究では、歪な変形が起こるミ
ントロールできる可能性を示すもの。
クロなメカニズムを明らかにし、それによる「相互作用す
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120327/index.html
るボソン模型」の修正を示し、得られた理論結果の実験的
検証を示した。本研究成果はフィジカルレビューレターズ
誌に掲載される。
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2012/16.html
【水素ステーション】
埼玉県庁敷地内に、ソーラー水素ステーションを設置
(2012.3.27)
本田技研工業(株)
【加速器】
同社は、埼玉県と共同で取り組んでいる実証実験の一環と
宇宙線の起源に迫る新理論(2012.3.28)
して、日本初の高圧水電解システムを適用した「ソーラー
東京大学
水素ステーション」を埼玉県庁敷地内に設置した。また、
東大は、フェルミの考えた磁気雲の代わりに、磁気リコ
一般家庭のおよそ 6 日分の使用電力を供給できる、最大
ネクションを考えることで、宇宙線が選択的にプラズマ・
出力 9kW の外部給電機能を装備した燃料電池電気自動車
ジェットと正面衝突してエネルギーを得ることを世界で初
めて見出した。粒子はリコネクションに向かって流入する
「FCX クラリティ」を新たに開発し、埼玉県に納車した。
http://www.honda.co.jp/news/2012/4120327.html
領域で反射されると追突になるのでエネルギーを失うが、
沢山の磁気島(磁場によって閉じ込められたプラズマの塊、
フェルミの考えた磁気雲もこの一種)によるリコネクショ
ン過程を考えると、宇宙線はプラズマ・ジェットの流出領
域で相互作用する確率が、流入領域との確率よりも圧倒的
42
【相反する遺伝子発現制御】
二 つ の 相 反 す る 制 御 機 能 を 担 う 機 能 性 RNA を 発 見
(2012.3.27)
に高いことを、プラズマ粒子シミュレーションを用いて示
産総研
した。その結果、粒子加速の効率は、従来の ( 乱流速度 )/
産総研は、
ヒト細胞核中の U7 核内低分子 RNA
(U7 RNA)
が、
PEN April 2012
細胞内の状態に応じて、二つの相反する遺伝子発現制御を
る基礎的な知見を与えるとともに、ゲルマニウムを用いた
行うことを発見した。U7 RNA は、DNA と共に染色体を構
小分子の活性化、新たな酸・塩基反応を含む多様な化学反
成するヒストンというタンパク質の遺伝子発現制御にかか
応・触媒反応、機能性物質のデザインなど、幅広い分野に
わっている。ヒストンは、細胞核内で新しい染色体が形成
貢献すると期待できる。
される DNA 複製期(S 期)にだけ合成される。これまで
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120326/index.html
U7 RNA は、S 期にヒストンの遺伝子発現を促進する「正」
の制御を行うことが知られていた。今回、S 期以外の DNA
複製が起こっていない細胞の U7 RNA の機能を解析し、ヒ
ストン遺伝子の発現が起こらないように「負」の制御を行っ
ていることを見いだした。これによって、特定の時期に細
胞内で必要となるタンパク質を、その時期にだけ合成する
ために、同一の RNA が遺伝子発現の促進と抑制の両面を
使い分ける巧妙なシステムが存在することが分かった。さ
らにこの発見は、RNA の機能を利用した遺伝子機能の制
御技術など、創薬開発に貢献することも期待される。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20120327/pr20120327.html
【2 経路干渉計】
集積可能な電子の 2 経路干渉計を世界で初めて実現 量子
情報の長距離伝送や高速制御へ(2012.3.19)
東京大学
半導体基板上で電気的に制御できる集積可能な2経路干渉
計を世界で初めて実現した。また、空間的に移動している
電子がどちらの経路に存在するかを量子ビットとして扱
い、その “ 飛行量子ビット ” の状態を電気的に制御した。
この飛行量子ビットを用いた新しいアーキテクチャー(設
計思想)は、量子計算において最も本質的とされる量子も
つれ状態の制御に適していると考えられ、半導体を用いた
【FC 用高分子電解質膜】
高効率な直接メタノール形燃料電池を実現する高分子電解
質膜を開発(2012.3.26)
量子計算機の実現に向けて大きな進展をもたらすことが期
待される。
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/pdf/2012/120319_YTFFb.pdf
(株)日立製作所
同社は直接メタノール形燃料電池(DMFC)向けに、水素
イオンの伝導性を低下させることなく、メタノールの透過
性を約 1/2(当社比)に低減した高分子電解質膜を開発し
た。開発した高分子電解質膜を DMFC に適用することで、
発電効率を約 5%( 当社比 ) 向上する見通しを得た。今後、
同社はポータブル機器用途など小型電源への適用をめざ
す。
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2012/03/0326a.html
【ゲルマノン】
ヘビー級ケトン「ゲルマノン」の合成・単離に初めて成功
電荷が分かれた構造は分子の結合論・反応論の総合的理解
に貢献(2012.3.26)
理化学研究所、科学技術振興機構(JST)
理化学研究所研究の研究グループは、
「Eind(イーインド)」
と名付けた立体的に大きな保護基を独自に開発し、ゲルマ
ニウムと酸素との二重結合を覆った結果、ゲルマノンを合
成・単離することに初めて成功した。ゲルマニウムと酸素
の二重結合は、炭素と酸素の二重結合より電荷が分離して
おり、ゲルマニウムがプラス、酸素原子がマイナスの性質
が強いこと、その結果、通常ケトンとは反応しない二酸化
炭素が、ゲルマノンとは室温、1気圧で速やかに反応して、
環状化合物を生成することを発見した。大きく電荷分離し
たゲルマノンが示す特性は、分子の結合論、反応論に関す
【高温超電導ナノワイヤー】
強靭な高温超電導ナノワイヤー 鉄系超電導体のウィス
カー結晶の製造に成功(2012.3.19)
物質・材料研究機構(NIMS)
NIMS、NIMS 連携大学院の研究者らは、東京工業大学フ
ロンティア研究機構と共同で、強靭な高温超電導ナノワイ
ヤーの開発に成功した。
http://www.nims.go.jp/news/press/2012/03/p201203190.html
【光記録メディア】
アンチモンが DVD の記録情報の書換えを加速する 光
ディスク材料開発において元素選択に新たな指針を開拓
(2012.3.19)
高輝度光科学研究センター、科学技術振興機構、理化学研
究所、パナソニック(株)
本研究グループは、DVD、BD の記録材料を構成する母
体材料に使われている「ゲルマニウム・アンチモン・テ
ル ル 化 合 物(Ge2Sb2Te5)
」を構成するゲルマニウム
(Ge)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)の各元素の役割
を、Spring-8 の高輝度X線を用いてアンチモンとその周辺
に注目した測定を行った。次いで、得られたデータをフィ
ンランドのタンペレ工科大学の研究グループが行ったコン
ピュータシミュレーション結果と対比して、3 次元構造を
PEN April 2012
43
可視化することに成功した。その結果、ゲルマニウムとテ
細胞の一種であるヒト単球細胞に似た機能を持つ細胞を 2
ルルの作るネットワーク構造が記録情報の長期保存を可能
週間~ 1 カ月程度で作製することに成功した。
にしていることが分かり、さらに、ゲルマニウムとテルル
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2012/120314/detail.html
だけで構成される化合物「GeTe」よりもアンチモンを加
えた「Ge2Sb2Te5」の方が、より高速に書換えることが可
能な原因がアンチモンとテルルの作るネットワーク構造に
【餌種の共存】
あることを世界で初めて明らかにした。
賢い天敵が多様な生物種の共存をもたらす(2012.3.14)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120319-2/index.html
東京大学
東大は、天敵 1 種(寄生蜂)とその宿主(餌種)2 種から
なる昆虫 3 種の「食う-食われる」の実験により、学習す
【量子ドット太陽電池】
量子ドット太陽電池の開発(2012.3.14)
こで用いた寄生蜂ゾウムシコガネコバチは、宿主であるマ
東京大学
メゾウムシ 2 種の匂いを学習で識別し分けることができ
エネルギー資源の枯渇懸念や電力需給の緊迫など、電力不
る。3 者の実験は、複雑な自然生態系を理解するとき、そ
足問題および地球環境問題から再生可能エネルギーへの関
れを模倣する最もコンパクトな手法である。1970 年代以
心が高まっており、太陽光発電はその有力な再生可能エネ
来の理論で、数の多い餌種を学習して集中的に食べ、数の
ルギーとして注目されている。その中で、ナノ粒子による
少ない種が見逃されてその増加を助けることになる「ス
量子効果を発現する量子ドットを用いた量子ドット太陽電
イッチング捕食」は、餌種の共存を強化することが予測さ
池は、理論的に超高効率の光電変換が期待されているが、
れてきたが、これを明確に支持する実験結果はまだ発表さ
量子ドット太陽電池の研究はまだ初期の段階で、効率が期
れていなかった。今回の実験結果は、学習によって採餌行
待ほど高まっていない。今回、東大ナノ量子情報エレクト
動を変化できるスイッチング捕食者の天敵が、餌となる複
ロニクス研究機構は、量子ドットを挿入することによる電
数種の共存を促進することを実験により検証した、世界初
圧が低下し、効率が高まらないという課題を克服する技術
の成果である。この結果は、自然の生態系でも、天敵の学
を開発し、これまでの最高効率を達成した。さらに太陽電
習行動が餌となる多様な種の共存に重要な役割を果たす可
池は、変換効率向上と面積当たりコストの低減の両立が普
能性を示している。最近、重視されている生物多様性の保
及の鍵を握っており、ガリウムヒ素基板の高価かつ重いと
全を考えるうえでの多種共存のメカニズムの理解に大きく
いう現状の課題を克服する技術として、ウェハ融着技術に
つながる。また、天敵を利用した害虫防除にも役立つ。
よる量子ドット太陽電池の軽量化・薄膜・フレキシブル化
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_240313_j.html
にも初めて成功した。
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_240314_j.html
【iPS を経由しない目的細胞作製】
iPS 細 胞 を 経 由 せ ず に 特 定 の 機 能 を 持 つ 細 胞 作 製 に 成
功 転写制御ネットワークを再構築することで分化転換
(2012.3.14)
理化学研究所
多様な細胞へ分化できる万能性を持つ人工多能性幹細胞
(iPS 細胞)は、再生医療や創薬開発などへの応用が期待さ
れているが、iPS 細胞作製の効率が低いこと、目的細胞を
得るために 1 カ月程度かかること、iPS 細胞から作製した
目的細胞にがん化の危険性があることなどの問題が指摘さ
れており、医療応用を実現するためには解決すべき課題が
多くある。理研の研究グループは、iPS 細胞を経由せずに
特定の転写因子を導入するだけで、目当ての細胞(目的細
胞)の機能を持つ細胞を作製する実験手法を開発した。実
際に、入手が容易な皮膚由来のヒト線維芽細胞から、免疫
44
る天敵が餌種の共存を長く持続させることを実証した。こ
PEN April 2012
ナノリスク:ナノ材料(酸化アルミ
ニウム、二酸化ケイ素など)、細胞膜
を損傷、多剤耐性菌増加、プラスミド、
大腸菌
Nanoalumina promotes the
horizontal transfer of multiresistance
genes mediated by plasmids across
genera
http://www.pnas.org/content/
early/2012/03/06/1107254109.abstract
米 国 の 太 陽 光 発 電 設 置:2011 年 は
1.85 ギ ガ ワ ッ ト( 前 年 比 109%)
、
豊蔵レポートより
豊蔵信夫氏が収集・配信されている最新技術情報をお
届けします。
2012 年予測値(2.8 ギガワット)
、
太 陽 エ ネ ル ギ ー 工 業 会 (SEIA) と
GTM Research の最新レポート「U.S.
Solar Market Insight Report」
New Report Finds U.S. Solar Energy
Installations Soared by 109% in
2011 to 1,855 Megawatts
http://www.prweb.com/releases/2012/3/
prweb9280185.htm
GIGS 薄膜太陽電池:開口率 13.4%、
SoloPower 社(20MW パイロット生
産工場)
、フレキシブル基板ベース技
術、NREL 認定
SoloPower sets 13.4% flex CIGS
aperture efficiency record backed by
NREL
http://www.pv-tech.org/news/solopower_sets_13.4_
flex_cigs_aperture_efficiency_record_backed_by_nrel
ソーラーグレードシリコン:JACO 社
(中国)、低コスト化(15 ドル /kg)
、
短期的目標(10 ドル /kg)
JACO claims US$15/kg cost of solar
grade silicon
http://www.pv-tech.org/news/jaco_claims_us15_kg_
cost_of_solar_grade_silicon
PEN April 2012
45
パートナーシップ:米 Crocus Technology 社(MRAM の
スピンペルチェ効果:スピントロニクス、電荷輸送チャネ
開発・製造企業)、Kintech 研究所(ロシア)
、共同研究開
ル(スピンアップ、スピンダウン)
、スピン流、熱流の磁
発契約締結、マルチスケールソフトウェア・ツールの開発、
気制御
シミュレーション、モデリングプラットフォーム、TAS
Direct observation of the spin-dependent Peltier effect
MLU 磁気メモリセル向け
http://www.nature.com/nnano/journal/v7/n3/full/nnano.2012.2.html
C r o c u s a n d K i n t e c h S i g n Ag r e e m e n t t o Pe r f o r m
Nanotechnology R&D in Russia
http://www.sacbee.com/2012/03/13/4332788/crocus-and-kintech-signagreement.html
ナノ医療:ナノ粒子、バイオ検出器、糖尿病診断、がん細
胞、無侵襲腫瘍破壊、スイス連邦工科大学教授 Sotiris E.
Pratsinis 氏
水素と天然ガス製造技術:ナノ粒子、人工光合成プロセス、
Nanoparticles against Cancer
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44701
排水から水素製造、天然ガス製造(水素と二酸化炭素を反
応)
、HyperSolar 社、カリフォルニア大学サンタバーバラ
校
HyperSolar Announces Plans for Nanotech-Based
Production Process for Hydrogen and Natural Gas
http://www.azonano.com/news.aspx?newsID=24456
国 際 会 議 ICNS-4:The 4th International Conference on
Nanostructures(3月開催)、イランシャリフ工科大学
4th Int'l Conference on Nanostructures Kicks Off Work in
Iran
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44692
学会・展示会報告:DATE 12、基調講演(独 Robert Bosch
GmbH、Klaus Meder 氏)
、ドイツの半導体市場(最大シェ
極薄シリコンウエハ:陽子誘起剥離(PIE)技術、太陽電
ア、自動車 37.6%)
、パワー・エレクトロニクス
池材料コストを削減(85 セント /W → 10 セント /W)、ツ
「ドイツでは最も半導体を使うのは自動車産業」
、Bosch が
インクリークス • テクノロジーズ
基調講演
Twin Creeks emerges from the shadows with new solar
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120314/208812/
approach http://www.eetimes.com/electronics-news/4237961/Twin-Creeks-emerges-fromthe-shadows-with-new-solar-approach
軟磁性材料:FeCoNi ナノ膜、メッキ技術利用、添加剤(ジ
メチルアミンボラン及びドデシル硫酸ナトリウム)、材料
形態の変化(粒状→柱状)
、
高透磁率と低保磁力、
シンガポー
ル科学技術研究庁(A*STAR )
、データストレージ研究所
A simple and inexpensive approach to making soft
magnetic films for microwave applications
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24577.php
EU ヘルスケア・プロジェクト:オンデマンドシステム信
頼性プロジェクト(DESYRE)、フォールトトレランスデバ
イス、高信頼性・小型・長寿命・低消費電力、システムオ
ンチップ設計、コンソーシアム(ギリシャ、イタリア、オ
ランダ、スイス、英国の専門家)
Innovative medical devices with less cost, less energy
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R
CN=34396
グラフェン:電気的性能低下の原因、表面荷電不純物、電
荷散乱メカニズム、電子移動度、バンダービルト大学
Barrier to faster graphene devices identified and
suppressed
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24575.php
クリーンエネルギー市場 (2001 年、米国)
:調査レポート
(Clean Edge 社)、総売上高 (2461 億ドル、前年比 31%増 )、
風力や太陽光市場で二桁成長、太陽光発電(916 億ドル、
前年比 29% 増)、PV インストール(26GW、前年比 67% 増)
New report finds global PV market reached over US$91
billion in 2011, installations up 69%
http://www.pv-tech.org/news/new_report_finds_global_pv_market_reached_over_
us91_billion_in_2011_install
46
PEN April 2012
PV 効率を競う各社: CdTe(First Solar 、Abound)、CIGS
アモルファスカルコゲナイドガラス:カルコゲナイドガラ
(MiaSolé)、CIS(Solar Frontier)、GaAs(Alta Devices)、
スマトリックス、鉛カルコゲナイドナノ結晶、コア / シェ
triple-junction CPV cells(Solar Junction 、Semprius)、
ルナノ結晶、液相法、低温統合、全無機薄膜(無機官能
crystalline silicon(SunPower 、Suntech)、SoloPower
PbS-CdS ナノコロイド)、シカゴ大学、グローニンゲン大
が参入(CIGS)
学
SoloPower Joins Solar Firms Setting Records in PV
All-inorganic nanocrystals boost infrared emission
Efficiency
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24585.php
http://www.greentechmedia.com/articles/read/Update-SoloPower-Joins-Solar-FirmsSetting-Records-in-PV-Efficiency/
ブラジルの太陽エネルギー利用促進策:大規模太陽光発電
エネルギー効率向上の効果:コスト削減
(2035 年までに 1.1
兆ドル)、エネルギー効率向上(電気器具・電球・その他
の機器)
、米国エネルギー効率経済協議会(ACEEE)レポー
ト
プロジェクト、80%減税と公益事業、ナショナル電気エネ
ルギー機関(IEA)
Brazil pushes for solar power with new regulations
http://www.pv-tech.org/news/brazil_pushes_for_solar_power_with_new_
regulations
$1.1 Trillion in Energy Savings Possible by 2035, Study
Claims
http://junkscience.com/2012/03/08/1-1-trillion-in-energy-savings-possible-by2035-study-claims/
米国の太陽電池市場(2011 年レビュー):米国の太陽電池
にとって歴史的な年、統計情報トップ 10、① 109%( PV
のインストール成長率)、② 7.0%(世界の太陽光発電イン
米国の競争力:米国は 2020 年までにヘルスケアで世界を
リード、科学大国としての長期的思考が欠如、国会議員へ
の警告(ハイリスク・ハイリターンの基礎研究への資金を
削減してアメリカの競争力を弱めないように)
、世論調査
(Analytics 社)
ストールの米国市場シェア)
、③ 29%(国内インストール
のカリフォルニア州シェア)
、GTM Research 、太陽エネ
ルギー産業協会(SEIA)
Top Ten US Solar Stats From 2011
http://www.greentechmedia.com/articles/read/top-ten-us-solar-stats-from-2011/
Many U.S. Voters Have Gloomy View of America's Science
Future
http://www.researchamerica.org/uploads/0312nationalpollwithJZA.pdf
EU プ ロ ジ ェ ク ト「Boom」 終 了: 緊 急 課 題( イ ン タ ー
ネットのトラフィック増大への対処)
、プロジェクト目標
(CMOS のシリコン LSI に光回路を集積、低コスト、小型、
電子構造設計:電子の基本特性を調整、分子グラフェン、
銅表面上に個々の一酸化炭素分子を配置、走査型トンネル
顕微鏡、一酸化炭素分子が銅表面の自由電子と反発(電子
がハチの巣状のパターンに整列し、グラフェン上の電子の
ように振舞う)、電子の特異な性質を引き出す(60 テスラ
の巨大磁場を擬似的にかけることも可能)
、スタンフォー
低消費電力化、Tbps やスケーラブルなルーター実現)、シ
リコン • オン • インシュレータ(SOI)フォトニック集積
化技術、コーディネート(アテネ国立技術大学)
EU-funded BOOM project on SOI photonic integration
technology successfully concluded
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44721
ド大学、SLAC 国立加速器研究所
Molecular graphene heralds new era of 'designer
electrons'
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24590.php
国際連携:国際中性子線研究施設(グルノーブル)
、初の
非欧州国家のインドが参加、ビームタイム約 50 日、施設
利用登録者数(現在 70 名)
India Joins European Neutron Facility in Grenoble
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/03/india-joins-european-neutron.
html?ref=hp
PEN April 2012
47
3M 社のアクティビティ:リチウムイオン電池用電極、米
グリッドパリティ:ノースカロライナ州持続可能エネル
国特許(8071238)
、
Si 系合金アノード材料、
Si 系負極材料、
ギー協会(NC SEA)
、太陽光発電の平準コスト、小売ユー
電解液添加剤
ティリティレート依存、再生可能エネルギーポートフォリ
3M investing in development and manufacturing of silicon
オ基準(REPS)、投資税額控、損益分岐点、発電コスト=
anode technology for higher-capacity Li-ion batteries
既存の系統電力の価格
http://www.greencarcongress.com/2012/03/3m-20120315.html
Grid Parity for Solar in North Carolina
http://www.greentechmedia.com/articles/read/grid-parity-for-solar-in-northcarolina-study/
薄膜トランジスタ:有機 p 型薄膜トランジスタ(ペンタセ
ン)、n 型金属酸化物 TFT(インジウム系酸化物)
、低温熱
処理(250℃)
、IMEC、ホルストセンター
IMEC and Holst Centre develop low-temperature organicinorganic complementary thin-film technology
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24608.php
ワークショップ:4th ICPC Nanonet Annual Workshop(イ
ンドゴア市、4 月開催)、水・エネルギー・環境のための
ナノテクノロジー、無料ライブウェブキャスト
Join the 4th ICPC Nanonet Annual Workshop – Goa, India
http://www.nanoforum.org/nf06~modul~showmore~folder~99999~scc~news~sc
id~4279~.html?action=longview&
シリコン太陽電池:ナノインプリントリソグラフィ、ガラ
ス基板 (2 次元周期的フォトニックナノ構造 ) 上に 1 μ m
の薄膜結晶シリコン、極薄結晶シリコン技術、IMEC
Nano-imprinted photonic structures improve efficiency of
silicon solar cells
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24607.php
光電極材料:太陽光による水の光分解、InGaN ナノワイヤ、
Si / InGaN 構造(n 型 Si 細線を n 型 InGaN ナノワイヤで
被覆)、高温アニーリング、細線アレイ、光電流密度 5 倍
増加、予備的な研究結果、ローレンスバークレー国立研究
所、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)
InGaN nanowires make good photoanodes
クモの糸の魅力:自己組織化生体高分子、強度と靭性の理
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/48956
解、ナノ構造の原子モデル、非常に周期的な構造、非常に
高い熱伝導率(416 W/m•K、銅は 401 W/m•K)
、20%の延
伸で導電性 20%向上
New secrets of spider silk - its high thermal conductivity
beats most materials
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=24599.php
圧電グラフェン:ドーピング(グラフェンの片側にリチウ
ム、ナトリウム、水素などを結合)
、ピエゾ圧電効果、圧
電レベル(伝統的な三次元材料に匹敵)、計算機シミュレー
ション、スタンフォード大学
Engineers Create Piezoelectric Graphene
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/03/120316094535.htm
スーパーキャパシタ:グラフェン電極、レーザースクライ
ブグラフェン(LSG)電極、
全固体 LSG-EC、
性能(エネルギー
密度とパワー密度)
、UCLA
ナノ粒子のサイズ効果:金ナノ粒子癌治療薬の有効性評価
(制御合成、再現性、薬物負荷の整合性、安定性)、粒度分
Graphene Supercapacitor Holds Promise for Portable
布制御、粒子直径(25、55、90 nm)、シスプラチン、
シドニー
Electronics
大学
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/03/120315152524.htm
Tightly Control Gold Nanoparticle Size
http://cen.acs.org/articles/90/web/2012/03/Researchers-Tightly-ControlGold-Nanoparticle.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_
campaign=Feed%3A+cen_nano+%28Chemical+And+Engineering+News+NanoFoc
us%29
48
PEN April 2012
20nm 対 応 SoC 設 計: 米 Cadence Design Systems、 ソ
キトサン含有ナノ粒子:トリポリリン酸ナトリウム、イオ
リューション、RTL-to-GDSII フロー、世界最先端の高性能・
ンゲル化プロセス、抗菌活性、創傷保護治癒材料、細菌抑
低消費電力 SoC 設計向け、20nm 機能提供
制メカニズム、皮膚再生特性、フェアリーディキンソン大
Cadence Accelerates High-Performance, Giga-scale, 20nm
学
Design with Next-generation Encounter RTL-to-GDSII Flow
Shrimp Shell Nanotech For Wound Healing And Anti-Aging
h t t p : / / w w w. c a d e n c e . c o m / c a d e n c e / n e w s r o o m / p r e s s _ r e l e a s e s / P a g e s /
Face Cream
pr.aspx?xml=030512_digital&CMP=home
http://www.silobreaker.com/shrimp-shell-nanotech-for-wound-healing-andantiaging-face-cream-5_2265566268348170380
量子ドット型太陽電池:中間バンド方式、集光システム
(マドリード工科大学)
、セル変換効率(100 倍集光時に
20.3%、1000 倍集光時に 21.2%)
量子ドット型太陽電池、100 倍集光でセル変換効率 20%
超を達成
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120319/209490/
プラズマ CVD 装置:シリコン酸化膜、インジウムガリウ
ム亜鉛酸化物、高性能・高解像度ディスプレイ、アプライ
ドマテリアルズ社
Applied tips advanced CVD films for displays
http://www.eetimes.com/electronics-news/4238302/Applied-tips-advanced-CVDfilms-for-displays-
熱電材料積層型デバイス:p 型半導体(MnSi 材料)、n 型
半導体(Mn1-xFexSiy 材料)
、仮焼原材料粉砕、シート状
成形(ドクターブレード法)
、スクリーン印刷、n 型と p
型を交互に積層
東北大、マンガン・ケイ素製の多層型熱電デバイスの試作
品を展示
粉塵爆発の危険性:ナノサイズ粒子粉末、着火と爆発、塵
雲の最小着火エネルギー、最小爆発濃度、比表面積の増加、
粒子の凝集と凝固、ハイブリッド爆発
Explosibility of nanoparticles
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=24650.php
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120316/209290/
欧州の PV 政策:欧州太陽光発電工業協会(EPIA)、競争
力のある政策を要求、長期的政策、投資専用サポート、技
術革新、資金調達、標準化、スキルや能力開発
EPIA demands stronger solar policy from EU
http://www.pv-tech.org/news/epia_demands_stronger_solar_policy_from_eu
薄層シリコンウエハ:Twin Creeks 社(120 万 eV 陽子注入、
加熱による水素イオンのラインアップ)
、薄層シリコンウ
エ ハ 関 連 企 業(SiGen、Ampulse、AstroWatt、Bandgap
Engineering、Crystal Solar、1366 Technologies)
SiGen Targets Thin Silicon Wafers With Ion Implant
プログラム公募:国立標準技術研究所、産業界誘導のパー
トナーシップ、CMOS 技術の物理的限界(10 ~ 15 年以内)
、
革新的技術の開発
NIST announces $2.6 million in funding for novel
semiconductor research
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24661.php
相変化材料:相変化メモリ、Ti10Sb60Te30、結晶化温度
(211 °C)、6 ns 電気パルス、データ保持特性(137℃で 10 年)
Ti10Sb60Te30 for phase change memory with hightemperature data retention and rapid crystallization speed
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v100/i12/p122101_s1
Technology for Solar PV
http://www.greentechmedia.com/articles/read/SiGen-Targets-Thin-Silicon-Waferswith-Ion-Implant-Technology-for-Solar-PV/
トランジスタ:エピタキシャルグラフェン、シリコンカー
バイド(SiC)基板、半導体チャネル(SiC)、電極(グラフェ
ン)
、イオン性液体ゲート、電荷注入、オン / オフ比(室
温で 44000)、エアランゲン • ニュルンベルク大学
A switch for epitaxial graphene electronics: Utilizing the
silicon carbide substrate as transistor channel
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v100/i12/p122102_s1
PEN April 2012
49
米エネルギー戦略:政府レポート、米国のエネルギーの生
次世代ヘリコプター:DARPA 契約(3400 万ドル)
、BAE
産と消費に関する戦略、エネルギー自立
システムズ社(英国)
、次世代多機能無線周波数(MFRF)
US government publishes report on US energy strategy
先進回転翼多機能センサー(ARMS)システム、開発要素
http://www.pv-tech.org/news/us_government_publishes_report_on_us_energy_
10,000 以上
strategy
BAE Systems wins $34M DARPA contract
http://www.eetimes.com/electronics-news/4304021/BAE-Systems-wins--34Mcontract-with-DARPA
小 さ い ナ ノ 粒 子 の プ ラ ズ マ 振 動: 金 属 ナ ノ 粒 子( 規
則 的 に 配 列 )、 プ ラ ズ モ ン 誘 起 、10nm 以 下 の ナ ノ 粒
子、 銀 ナ ノ 粒 子(10 ~ 20nm) の プ ラ ズ マ 振 動 を 測
早期診断:食道癌診断テスト、バレット食道、細胞変化を
定、environmental scanning transmission electron
早期検出、リバプール大学、赤外自由電子レーザー、国際
microscope(E-STEM)
、スタンフォード大学
共同実験プロジェクト「ALICE」
Quantum Plasmons Demonstrated in Atomic-Scale
New diagnostic test for oesophageal cancer
Nanoparticles http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/03/120321143017.htm
CN=34425
イベント報告:第 11 回国際ナノテクノロジー総合展 • 技
オバマ大統領のスピーチ:ネバダ州カッパーマウンテン(3
術会議
(2 月開催)
、
22 カ国からの出展
(ベラルーシ、
チェコ、
月 21 日)、持続的に使用可能なすべてのエネルギーソー
ルクセンブルグは初)
、力量を示した日本の主要研究機関、
スを開発、アメリカは世界の石油の 20%を使用し、我々
アジア太平洋諸国からの出展
は世界の石油埋蔵量の 2%を保有、外国依存の代替案、太
Show report: nano tech 2012, Tokyo
陽光発電、中国の負公正な競争、雇用創出、石油と天然ガ
http://nanotechweb.org/cws/article/indepth/48983
スの生産奨励、税額控除
Obama Visits Largest Solar Plant in US and Talks Energy
http://www.greentechmedia.com/articles/read/obama-visits-largest-solar-plant-in-u.
米エネルギー安全保障強化策:パイプラインなどのインフ
s.-and-talks-energy/
ラ開発、クリーンエネルギー・イノベーションと雇用への
投資、小型・安全、クリーン・安価な次世代原子炉開発、
スマートグリッド開発、高度なバイオ燃料ブレークスルー、
高強度・軽量素材開発
Obama Administration Commitment to American Made
Energy
リチウムイオン電池:コスト予測、2017 年までに 33% 減、
製造効率の向上、リチウム供給改善、リチウムイオン電
池市場(2011 年 20 億ドル→ 2017 年 146 億ドル)
、Pike
Research 調査
http://energy.gov/articles/fact-sheet-obama-administration-commitment-american-
Prices for Lithium Ion Batteries Will Fall by More Than
made-energy
One-Third by 2017, Helping to Drive EV Adoption
http://www.pikeresearch.com/newsroom/prices-for-lithium-ion-batteries-will-fallby-more-than-one-third-by-2017-helping-to-drive-ev-adoption-2
海洋環境汚染:マリンボード ESF 政策方針書、化学物質汚
染、海洋生態系への影響、科学的証拠、統合された環境リ
スク評価、欧州研究枠組み計画(FP7)CLAMER プロジェ
クト
Chemical Pollution in Europe's Seas: The Monitoring Must
Catch Up With the Science, Experts Say
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/03/120321105336.htm
ナノコンポジット:ゾル - ゲル法、自己組織化プロセス、
高電気伝導度、シリカ / 金属 / 炭素複合ナノ材料、シリカ
前駆体、アミノ酸、ヒドロキシ酸又はペプチド、シリコン
アルコキシド、金属酢酸塩、スイスローザンヌ連邦工科大
学、米国コーネル大学、カナダダルハウジー大学
Sol-gel makes nanostructured metallic
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/49089
50
PEN April 2012
軽量化材料:オバマ大統領、燃費改善、高強度軽量材料(高
太陽光利用計画:化石燃料依存の軽減、中東と北アフリカ
強度鋼、マグネシウム、アルミニウム、ポリマー複合材料
(MENA)地域、エミレーツソーラー産業協会(ESIA)、太
など)
、エネルギー省(DoE)
、支援規模(1420 万ドル)
陽光発電の経済性、共同研究開発(シーメンスとマスダー
Obama Administration Announces $14.2 Million in New
ル研究所)、DESERTEC 計画(チュニジア、2GW、イタリ
Funding to Develop Lightweight Materials for Advanced
アへの低損失伝送ライン)
、オマーンの太陽光発電所計画
Vehicles
http://energy.gov/articles/obama-administration-announces-142-million-newfunding-develop-lightweight-materials
(400 MW 、20 億ドル)
Solar Power in the Desert: MENA Update
http://www.renewableenergyworld.com/rea/news/article/2012/03/solar-power-inthe-desert-mena-update
スーパーコンピュータ:国立科学財団(NSF)
、ペタスケー
ル、Blue Waters、
6 つの研究チーム(気候変動、
宇宙の進化、
高温プラズマ、HIV 感染など)
NSF's Most Powerful Computing Resource Has Opened Its
Doors to Six Science Teams
http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=123590&org=NSF&from=news
乳がん:密度・腫瘍の特徴・予後の相関、乳房密度に注目、
高密度乳房組織、年齢とともに乳腺密度が縮小、スウェー
デンカロリンスカ研究所
Study finds dense tissue and age link behind recurring
breast cancer
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R
CN=34432
グラフェン:ホウ素ドーピング、電子輸送材料、有機太陽
電池材料、ホウ素含有炭素材料合成法、京都大学
Development of a new method for the boron-doping of
メガソーラー計画:( 株 ) ユーラスエナジーホールディン
two dimensional carbon materials
グ、発電規模(30,000 ~ 40,000kW)、予定地(淡路市佐
http://www.physorg.com/news/2012-03-method-boron-doping-dimensional-
野・生穂地区)、発電量(約 10,000 ~ 13,000 世帯の使用
carbon-materials.html
電力量に相当)、総事業費(150 億円)、操業開始時期(2013
年度中)
ナノテクノロジーマップ:ナノテクノロジー企業と関連組
兵庫県淡路市でのメガソーラー事業計画
http://www.eurus-energy.com/press/index.php?id=134
織、活動
Map illustrates scale of nanotechnology development
across the U.S.
http://wraltechwire.com/business/tech_wire/medcity/story/10890953/
電子線トモグラフィー:平等に傾斜した断層撮影法(EST)
を開発、原子スケール 3D 画像、金ナノ粒子、三次元分解
能(2.4 オングストローム)、カリフォルニア大学ロサンゼ
グラフェン:特性(機械的、電気的、光学的、化学的)の
動的制御、ナノ圧電材料、nanopiezotronics、ドーピング、
ルス校、ローレンス • バークレー国立研究所
Tomography technique breaks new record
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/49097
非圧電性を圧電性に設計
Dynamically controlling graphene's properties with
engineered piezoelectricity
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=24679.php
Si 版グラフェン:Silicene(シリセン)、シリコン原子のハ
ニカム状配置、エピタキシャル 2 次元シート、Ag(111)上、
ベルリン工科大学、2D-NANOLATTICES(FP-7 プロジェク
熱電変換材料 : セレン原子 ( 固体フレームワーク )、銅原子
( 液体のような振舞い )、銅イオン液体で濡れたスポンジ、
結晶質と非晶質特性の混在、熱伝導率を減少、カリフォル
ト)
Compelling evidence for silicene - the silicon analogue to
grapheme
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=24693.php
ニア工科大学
Liquid-like materials may pave way for new thermoelectric
devices
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24684.php
PEN April 2012
51
2011 年欧州特許出願ランキング:1 位シーメンス AG、2
グラフェンシート:大量生産、低コスト、簡単な方法、ボー
位フィリップス、3 位サムスン、4 位 BASF
ルミラー、グラファイト、ドライアイス、カルボン酸によ
Siemens extends lead in European patent ranking
る化学的相互作用、ケースウエスタンリザーブ大学、蔚山
http://www.eetimes.com/electronics-news/4369671/Siemens-extends-lead-in-
国立科学技術研究所
European-patent-ranking
Simple, cheap way to mass-produce graphene nanosheets
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24721.php
太陽光発電用ポリシリコンとウエハの価格:現在 30 ドル
/kg、過剰供給と過当競争、2012 年に再び急落の見込み、
ポリシリコン製造に一筋の光(cast-mono 技術)
、従来型
多結晶 DS(一方向凝固)鋳造炉での単結晶・多結晶ハイ
ブリッドインゴット生成が、従来の CZ 法による単結晶イ
ンゴットより低コストになる
Pricing Squeeze Pushes Silicon Suppliers To New
スーパーコンピューティング:高度コンピューティング・
パートナーシップ(PRACE:非営利団体として 2010 年 5
月に設立)
、ピア • レビュー、PRACE-1IP プロジェクト、
PRACE 上級トレーニングセンター(PATCs)、EC、FP7
Partnering for pan-European supercomputing
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44786
Production Process
http://www.renewableenergyworld.com/rea/news/article/2012/03/pricingsqueeze-pushes-silicon-suppliers-to-new-production-process
* Cast-mono wafers とは
原 子 層 堆 積 装 置: 革 新 的 ALD、 プ ラ ズ マ ALD 技 術、
http://btimaging.com/wp-content/uploads/2012/02/Solar-Industry-article-Cast-
A*STAR、マイクロエレクトロニクス研究所(IME)
、IME-
Mono-Wafers-Revisited.pdf
Picosun パートナーシップ
A STAR Institute of Microelectronics and Picosun Oy to
partner on new ALD technique development
世界の平均気温:2050 年までに 1.4°C ~ 3°C 増加、推定
値より大幅に高い、新しい気候モデルを利用、最近の気候
http://www.pv-tech.org/news/a_star_institute_of_microelectronics_and_picosun_
oy_to_partner_on_new_ald_t
パターンにマッチしたシミュレーション、IPCC のシナリ
オ以上の温暖化、オックスフォード大学
Earth Warming Faster Than Expected
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2012/03/earth-warming-faster-thanexpected.html?ref=hp
脱原発への動き:札幌市、エネルギー転換調査、泊原発代
替案、省エネ(消費電力量の 17%分)、再生可能エネルギー
(同 24%分、現在 2%)、分散電源(消費電力量の 5%分)
札幌市「脱原発は可能」 エネ転換調査最終報告 http://mainichi.jp/hokkaido/seikei/news/20120327ddlk01010300000c.html
ナノテクノロジー市場予測:RNCOS 調査レポート「2014
年までのナノテクノロジー市場予測」
、2014 年末までに
260 億米ドルに到達、電子機器、化粧品、ヘルスケア、エ
ネルギー、運輸、農業など
Nanotechnology Spurring Growth of Electronics Industry
Globally
http://www.mynewsdesk.com/in/view/pressrelease/nanotechnology-spurringgrowth-of-electronics-industry-g lobally-745241?utm_source=rss&utm_
medium=rss&utm_campaign=Alert&utm_content=pressrelease
悪性腫瘍の細胞破壊:ナノ粒子、磁界、マウスの頭頸部癌
の腫瘍細胞、磁性酸化鉄ナノ粒子誘起温熱(体温)療法、
生分解性ナノ粒子材料への道、ジョージア大学、フランク
リン大学
Nanoparticles and Magnetic Current Used to Damage
Cancerous Cells in Mice
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/03/120327152855.htm
ナノリスク:欧州委員会(EC)
、ナノ安全クラスタ概要(第
三版)
、人の健康とナノテクノロジーの環境安全管理のた
めのガイダンス、共通目標のコラボレーション
European Commission releases 2012 edition of the
Compendium of Projects in the European NanoSafety
Cluster
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24710.php
52
PEN April 2012
原発、あるエコノミストの視点:事例(太陽電池パネルメー
国 際 シ ン ポ ジ ウ ム:International Symposium on
カー保証に反対、原発建設のための融資保証に成功、核燃
Assessing the Economic Impact of Nanotechnology、(3
料サイクルへの補助金、老朽化原発 23 基の稼動延長)、ア
月開催)、ライフサイクルアセスメント、エネルギー、環境、
メリカ人の 44%が原発推進を支持、マサチューセッツ州
飲料水、グリーンナノテクノロジーの ELSI
立大学アムハースト校 Nancy Folbre 氏
Study helps assess nanotechnology's impact on sustainable
The Nurture of Nuclear Power
growth
http://economix.blogs.nytimes.com/2012/03/26/the-nurture-of-nuclear-
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24752.php
power/?ref=energy-environment
グラフェン:エネルギーギャップ、電気抵抗、ホール効果、
ホッピング伝導、分子ビームエピタキシャル成長、X 線光
電子分光法(XPS)測定
Effect of in-situ oxygen on the electronic properties of
graphene grown by carbon molecular beam epitaxy grown
量子プラズマ物理:サイズ効果、プラズマ温度、プラズマ
密度、負帯電ポテンシャル、正荷電粒子やイオンの統合、
電気伝導(高速、高効率)、ルール大学ボーフム校
Quantum Plasma Study Opens New Perspectives for
Nanotechnology
http://www.azonano.com/news.aspx?newsID=24557
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v100/i13/p133107_s1?isAuthorized=no
トライボロジー:ナノスケールでの摩擦現象、古い典理論
とのギャップ、摩擦抵抗、表面粗さ、新しい接着理論、ア
スペリティの変形や傾き、ルーヴェン・カトリック大学
New nano-measurements add spark to centuries-old
コスト計算:先進的技術(半導体、太陽光発電、ナノ材料
など)
、製造コスト、環境コスト、ライフサイクル分析、
エネルギーブースト、エネルギー集約型材料
Calculating the Cost of Advanced Manufacturing
http://www.pcbdesign007.com/pages/zone.cgi?a=83084
theory of friction
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44803
多結晶 Si 製造企業の解散:共同事業会社 NS ソーラーマテ
科学者への注文:AAAS CEO の Alan I. Leshner 氏、基本
的な見直しが必要、研究資金:科学者はより少ないリソー
スでより多くを行うことを学ぶこと、不確実性:ピア • レ
ビュープロセスの本質的な保守主義を克服すること、研究
時間:助成金獲得のための応募とレビュープロセスを変更
リアル社(新日鉄マテリアルズ、シャープ)
、2012 年 9 月
末に製造中止、2014 年 3 月末に解散予定、市況の急落が
原因
NS ソーラーマテリアル、太陽電池向け多結晶 Si 原料の生
産を中止へ
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120328/210338/
し、研究者の雑用を減すこと
AAAS CEO Alan I. Leshner: R&D Funding and Public
Engagement Must Adapt to Meet New Realities
http://www.aaas.org/news/releases/2012/0327leshner_dod.shtml
透明 / フレキシブルメモリ : シリコン酸化膜、構造(酸化
シリコンを上下の電極となる 2 枚の半導体の多結晶シリコ
ンのシートで挟む )、電圧印加でナノ - サイズのシリコン
ドイツの太陽光発電産業の現状:補助金削減、Solarhybrid
社破産申請、補助金制度の効果、発電プロジェクトの収益
率、補助金依存型市場
補助金削減でドイツ太陽光発電の前途に暗雲
結晶のチャンネル形成(酸化シリコンから酸素原子が剥ぎ
取られる)、不揮発性メモリ、ライス大学(2010 年成果の
発展)
Transparent memory chips are coming
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24754.php
http://www.nikkei.com/biz/world/article/g=96958A9C93819584E0EAE2E2E18DE
0EAE2E1E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;p=9694E3E7E2E0E0E2E3E2E6E1E0E2
PEN April 2012
53
量子相転移:2 次元量子スピン系ストロンチウム銅ホウ酸、
励起子の物理:スピン偏極パターン、自発的コヒーレンス、
SrCu2(BO3)2、ダイヤモンドアンビルセルで加圧、高分解
スピンテクスチャ、位相特異点、オプトエレクトロニクス、
能 X 線測定、非常に強いスピン-格子カップリング、連続
カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)
および不連続量子相転移、アルゴンヌ国立研究所
Physicists Find Patterns in New State of Matter
Copper-based materials show strange spin states
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/03/120329141535.htm
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24745.php
相変化の挙動:加熱速度、超高速加熱(毎秒 10,000℃ / 秒)
、
トンネル電界効果トランジスタ:エネルギー効率、低消費
半導体相変化メモリ材料の挙動、MEMs センサー、サウサ
電力集積回路、ノートルダム大学、ペンシルベニア州立大
ンプトン大学、ケンブリッジ大学
学
New Understanding of How Materials Change When
More Energy Efficient Transistors Through Quantum
Rapidly Heated
Tunneling
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/03/120329112113.htm
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/03/120326160956.htm
熱クローキング:熱拡散制御、変換光学系物理、熱透明マ
ント試作中、フランスエクス・マルセイユ大学
'Thermal cloak' to dissipate heat in electronics
http://www.eetimes.com/electronics-news/4370046/-Thermal-cloak--to-dissipateheat-in-electronics
市場動向調査:PV 製造装置 • 材料市場、セル・モジュール、
高価なハイテク機器、付加価値製品(低価格、高効率化)
、
差別化、Yole Développement 社
Report: Manufacturing equipment sector to top 35GWp
by 2017
http://www.pv-tech.org/news/report_manufacturing_equipment_sector_to_
top_35gwp_by_2017
リスク軽減策:米国政府の新方針、潜在的リスク、系統的
なレビュー、懸念のデュアルユース研究、15 の病原体や
毒素の強い因果関係(鳥インフルエンザウイルス含む)
U.S. Requires New Dual-Use Biological Research Reviews
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/03/us-requires-new-dual-usebiologi.html?ref=hp
高温超伝導体物理:フォノンをめぐる議論に終止符か、クー
パー対、BSCCO 材料、フェムト秒レーザ光パルス照射実験、
異なる波長で反射率を測定、超高速の電子 - 電子プロセス
の時間トレース観察
A Final Answer on How High-Temperature
Superconductors Don't Work?
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2012/03/a-final-answer-on-how-hightempe.html?ref=hp
第 三 世 代 Maxeon セ ル: 結 晶 Si 型 太 陽 電 池 セ ル( セ ル
変換効率~ 24%)
、量産開始(研究段階から量産段階に
移行)、大きさ(160mm 角)
、バック・コンタクト、米
SunPower 社
SunPower starts commercial production of 24%-efficient
Maxeon Gen 3 cell
http://www.pv-tech.org/news/sunpower_starts_commercial_production_of_24_
ヘテロエピタキシー:シリコンと他の半導体の組合せ、基
板シリコン、シリコンピラー、ゲルマニウム成長、房状カー
ペット、スイス連邦工科大学チューリッヒ校
Breakthrough in semiconductor structuring
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24764.php
efficient_maxeon_gen_3_cell
材料コスト:PV セル・モジュール構成材料、太陽電池製
造のための生産プロセスとサプライ • チェーン、材料コス
ト、AEI 市場レポート
Solar PV Materials Demand Doubling in Five Years
http://www.renewableenergyworld.com/rea/news/article/2012/03/solar-pvmaterials-demand-doubling-in-five-years
ナノ構造体の最終形態決定因子:GaN(ナノチップ、ナノ
粒子)、CVD 法、自己触媒成長、3 つの重要なパラメータ(イ
ンキュベーション時間、拡散の異方性、マイグレーション
速度律速因子)、表面の極性および非極性
Role of Surface Polarity in Self-Catalyzed Nucleation and
Evolution of GaN Nanostructures
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/cg300037q
54
PEN April 2012
有機薄膜トランジスタ:ペンタセン TFT、ペンタセン /
ビル • ゲイツ氏の提言:米国のエネルギー研究資金不足、
SiO2 基 板、 薄 い(2nm) 金 属 フ タ ロ シ ア ニ ン 挿 入(Au
クリーンエネルギー技術開発、安価なエネルギー源(最貧
ソース・ドレイン電極とペンタセンの間)
、低閾値電圧(<
20 億人の生活を改善するための鍵)、DOE 会合
-7.6 V・高移動度(1.5 倍増)
)
、特性改良(キャリア注入
Bill Gates on Insanity and Energy R&D
障壁の低減)
、南京大学
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2012/02/bill-gates-on-insanity-and-
A simple and effective approach to improve device
energy.html?ref=hp
performance of pentacene thin film transistors
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24766.php
評価技術:有機単分子の電荷分布、画像化、原子間力顕微
鏡(AFM)
、トンネル顕微鏡(STM)
、ケルビンプローブ顕
シリコンフォトニクス:光通信の革命、HELIOS プロジェト、
Photonics electronics functional integration on CMOS,
FP7、シリコン上にチューナブルレーザ光源を集積、CEALeti、ベルギーゲント大学、IMEC、英国サリー大学
HELIOS makes silicon breakthrough
微鏡(KSPM)、ナフタロシアニン単一有機分子、IBM チュー
リッヒ研究所
Observing charge distribution in molecules
http://www.rsc.org/chemistryworld/News/2012/February/observing-chargedistribution-naphthalocyanine-ibm.asp
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24769.php
グラフェン研究の提案公募:英国工学・物理科学研究会議
蜂群崩壊症候群:ネオニコチノイド系殺虫剤、マルハナバ
チ、ミツバチ、コロニーの健康を脅かす、実験室と自然界
の隔たり、野生種に非常に大きな影響を及ぼす可能性
Common Crop Pesticide Harms Bumblebee and Honeybee
(EPSRC)、商業化、研究コミュニティの意識の高まり、資
金規模(2 千万ポンド)
EPSRC issues Graphene Engineering call
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24417.php
Species
http://www.aaas.org/news/releases/2012/0329sp_bees.shtml
ナノリスク:報告書「研究の 10 年:リスク評価およびナ
ノ材料の人と環境への毒性」
、化学工学と生物工学会、ド
中国の再生可能エネルギー戦略:シンクタンク設立、中国
国家再生可能エネルギーセンター(CNREC)
、デンマーク
からの資金・技術支援、国家発展改革委員会からの支援、
工業規格の起草と国際協力プログラムの実施
China inaugurates first national renewable energy think
tank
イツ化学産業協会、欧州委員会、Nanoderm プロジェク
ト、NanoCare プロジェクト、NanoNature プロジェクト、
DaNa プロジェクト
10 years of nanotechnology risk research - a European
status update
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=24413.php
http://www.pv-tech.org/news/china_inaugurates_first_national_renewable_energy_
think_tank
量子コンピュータ:3 のブレークスルー、デコヒーレンス
時間の延長(最長 100 マイクロ秒まで)、計算エラー削減、
ナノ粒子の動態観察:小角 X 線散乱(SAXS)
、モニタリン
グと測定技術、グリーンケミストリーの適用、前駆体の低
濃度使用、オレゴン大学
New Measuring Techniques Can Improve Efficiency, Safety
of Nanoparticles
デコヒーレンス時間(=量子重ねあいの状態維持時間)、
3 次元超電導量子ビット、制御 NOT 演算の成功率 95%、
IBM
IBM reports breakthroughs in quantum computing quest
http://www.eetimes.com/electronics-news/4237101/IBM-reports-progress-onquantum-computing
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/02/120228102005.htm
PEN April 2012
55
研究インフラ:欧州の構造生物学研究機関 15 が協力、ネッ
Apple 社の特許事情:所有特許件数(約 15500 件、うち
トワーク形成、様々な分野・技術の専門家を結集、オンラ
国内特許 8.500 件)、特許譲受人の 84%が Apple、Steve
インコミュニティ(25 カ国、500 以上の科学者)
、FP7
Jobs 氏はトップ 25 入り、UBM TechInsights レポート
New EU-funded research infrastructure for biology gets
Report details Apple's patent holdings
going
http://www.eetimes.com/electronics-news/4237274/Report-details-Apple-s-patent-
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R
holdings
CN=34345
アメリカの製造業:エネルギー効率の高い技術、材料とプ
SunShot イニシアチブ:調査レポート(SunShot Vision
ロセス、生態系、エンジニア、移民政策、政府の支援、政
Study)
、DOE、価格の削減目標(2010 年比で 2020 年に
策の安定性、米国製造業の欠点・利点
75%減)
、太陽熱・太陽光発電割合(2030 年までに米国内
ARPA-E: Can Greentech Be Made in America?
発電の 14%、2050 年までに 27%)
、鍵はコスト競争力(普
http://www.greentechmedia.com/articles/read/can-greentech-be-made-in-america/
及率)
DOE SunShot study examines potential for solar over the
next several decades
サミット概要:2012 ARPA-E エネルギー • イノベーション
http://www.pv-tech.org/news/doe_sunshot_study_examines_potential_for_solar_
• サミット、12 のプログラム領域、クリーン技術革新の加
over_the_next_several_decade
速、バイオ燃料、蓄熱、グリッドコントロール、太陽光発
電
ナノリスク低減:グリーンケミストリー使用、ナノ粒子の
ダイナミクス、ナノ銀の移行、小角 X 線散乱、高精度顕微
Factsheel: Third Annual ARPA-E Energy Innovation
Summit
http://energy.gov/articles/factsheet-third-annual-arpa-e-energy-innovation-summit
鏡技術、オレゴン大学
Study Findings Help Advance Safe Implementation of
Nanotechnology
http://www.azonano.com/news.aspx?newsID=24376
ナノ構造ファイバー:作成法、αヘリックスコイルドコイ
ルタンパク質、アミノ酸添加、金属(亜鉛、ニッケルなど)
添加で形状変化、自己組織化、ニューヨーク科学技術大学
コンファレンス報告:ナノ銀に関する会議(2012 年 2 月
開催)
、潜在的な有害性、リスク研究とリスク評価、経皮
Nanotechnology fiber breakthrough holds promise for
medicine and microprocessors
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24430.php
暴露、経口暴露
Conference on the state of knowledge about the health
risks of nanosilver
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24431.php
レポート紹介:「Global Nanotechnology Industry」
、業界
鳥瞰図、主要な技術動向、エンドユーズ産業における商用
アプリケーション、最近の合併・買収、企業の戦略的な発
太陽熱利用システム:太陽熱利用設備の経済性、産業用熱
需要(約 30%は 100°C 以下)
、障壁(バリューチェーン
展、研究成果、主要な地域市場
Global Nanotechnology Industry
http://www.stockmarketsreview.com/news/284527/
全体で情報不足、システムインテグレーションが未経験、
標準化されたソリューションやコミュニケーション欠如)
Kick-starting Solar Process Heat in Europe
http://www.renewableenergyworld.com/rea/news/article/2012/02/kick-startingsolar-process-heat-in-europe
GE の太陽光発電への投資:GE エナジー • ファイナンシャ
ル • サービス社、1GW ポートフォリオ、世界中の魅力的
なプロジェクトに投資(14 億ドル)
GE Energy Financial ups solar power investments during
last year to almost US$5 billion in projects
http://www.pv-tech.org/news/ge_energy_financial_ups_solar_power_investments_
during_last_year_to_almost
56
PEN April 2012
リスク物質 90:コミュニティ • ローリング • アクション
色素増感型太陽電池:18 の合成色素分子を開発、コスト
プラン(CoRAP)
、ヒトの健康や環境へのリスク物質 90、
ダウン、インド工科大学
CoRAP リスト、欧州化学物質庁(ECHA)
City researchers develop 18 dye molecules for solar cells
Substance evaluation starts under REACH: The first list of
http://technews.tmcnet.com/news/2012/03/04/6163014.htm
substances published
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24446.php
シリコンフォトニクス:波長可変トランスミッタ、波長可
変レーザ光源、InP、シリコン導波路、III-V 半導体とシリ
圧電エネルギーハーベスター:最大電力出力に新モデル、
コン技術を統合、アルカテル - ルーセントベル研 (Alcatel-
カンチレバー、圧電のエリアカバレッジを減少、最適なカ
Lucent Bell Labs)、タレス(Thales)、CEA-Leti、III-V Lab
バレッジは 2/3、英国立物理研究所
CEA-Leti and III-V Lab demonstrate a fully integrated
Charge redistribution in piezoelectric energy harvesters
silicon photonics transmitter
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v100/i7/p073901_s1?isAuthorized=no
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24471.php
230MW(AC) 太陽光発電プラント : Antelope Valley Solar
スーパーキャパシタ:ナノポーラスカーボン電極、電極内
Ranch One (AVSR1)、約 75,000 の平均家庭の年間エネル
部に吸着されるイオン液体の構造体、細孔のサイズとジオ
ギー需要に相当、ファーストソーラー社、エクセロン社、
メトリー、低コスト、軽量、ドレクセル大学
過酷な砂漠地形
New research advances understanding of energy storage
Antelope Valley Solar Ranch One: The Solar Power Plant
mechanisms
That Could http://www.nanowerk.com/news/newsid=24476.php
http://www.greentechmedia.com/articles/read/Antelope-Valley-Solar-Ranch-Onethe-Solar-Power-Plant-That-Could/
中国第 12 次5カ年計画:R & D 資金増加、技術革新、効率、
ポリマー太陽電池:約 9%の高効率(NREL で確認)、タン
デムポリマー太陽電池、広い太陽スペクトル、UCLA
Performing plastics: New marks for polymer solar cells
インフラ、新エネルギー、スマートグリッド、環境技術
The Chinese 12th Five Year Plan on Strategic Emerging
Industries Webinar
https://portal.luxresearchinc.com/webinars/22
http://www.electroiq.com/articles/pvw/2012/february/performing-plastics-newmarks-for-polymer-solar-cells.html
ナノ関連企業市況:ユーロ債務危機、マイクロ • ナノテク
ナノテクノロジープレーヤー:中国、インド、論文、刊行
ノロジー業界、経済データ、資金調達が問題、IVAM マイ
物、特許、規格、プロセス・製品、ナノテクノロジーのよ
クロテクノロジーネットワーク
うな高度に学際的な分野は基礎研究と産業界との強いリン
Euro debt crisis 2011 leaves European micro- and
クが必要
nanotechnology industry unfazed
China 'soaring ahead' in nanotechnology research
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24487.php
http://www.scidev.net/en/new-technologies/nanotechnology/news/china-soaringahead-in-nanotechnology-research.html?
EV 用電池:リチウムイオンポーチセル、シリコン負極材料、
EC 多 国 籍 プ ロ ジ ェ ク ト:V-SMMART Nano(Volumetric
Scanning Microwave Microscopy Analytical and Research
適切な電解質、Si-C アノード材料、高エネルギー密度と低
コスト、400 Wh / kg、ビアシステムズ社
Envia Systems announcement may herald the first wave
Tool for Nanotechnology)
、FP7 NMP プ ロ グ ラ ム、 体 積
of DOE-supported commercial high energy density Li-ion
走査型電子顕微鏡(VSMM)
、非破壊三次元ナノスケール
cells with Si-C anodes
構造解析、Bio Nano Consulting (BNC)
http://www.greencarcongress.com/2012/03/envia-20120306.html?cid=6a00d834
Bio Nano Consulting Leads EC Funded Consortium
1c4fbe53ef016763808320970b
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44633
PEN April 2012
57
ナノ物質作成法:ナノ粒子、ナノ薄膜、金ナノ粒子、連続
PV モジュール認定:ビューローベリタス LCIE 中国(適合
熱処理、ボトムアップアプローチ、溶液から粒子堆積、アー
性評価研究所)の認定、Upsolar 社、塩水とアンモニア耐性、
カンソー大学
沿岸や農業地域の顧客確保
A new method of making nanoparticles and nanofilms
Upsolar’s modules receive salt and ammonia certification
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24483.php
from BV LCIE China
http://www.pv-tech.org/news/upsolars_modules_receive_salt_and_ammonia_
certification_from_bv_lcie_china
限界への挑戦:シリコンプロセスとの互換性、化合物半導
体トランジスタ、ナノワイヤ、グラフェン、窒化ガリウム
Transistors promise more powerful logic, more logical
power
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24500.php
JinkoSolar 社の事業報告:垂直統合の効果、太陽電池モ
ジュール出荷台数(前年比 183.2%、760.8 MW)
、2011
年 の 通 期 売 上(12 億 ド ル )
、 通 年 売 上 総 利 益( 前 年 比
15.3%減、1.827 億ドル)
JinkoSolar passes US$1 billion revenue milestone as
アモルファス半導体:電子トラップ、トラップ準位密度 、
In–Ga–Zn–O 薄膜、Mo/SiO2/a-IGZO 構造、金属 - 酸化物 -
margins vanish
http://www.pv-tech.org/news/jinkosolar_passes_us1_billion_revenue_milestone_as_
margins_vanish
半導体ダイオード、過渡容量分光法(DLTS 法)
Electron traps in amorphous In–Ga–Zn–O thin films
studied by isothermal capacitance transient spectroscopy
イタリアの太陽光発電:9,000 MW インストール(2011
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v100/i10/p102106_s1?isAuthorized=no
年実績)、2012 年は減少(3,000 ~ 4,000 MW 程度に)
、エ
ネル・グリーン・パワー社の予測、益の少ない規制
Report: Italy to add up to 4,000MW of solar power
PDK (process development kit):14 nm ノ ー ド 対 応、 プ
capacity this year
ロセス開発キット、FinFET デバイス、EUV リソグラフィ、
http://www.pv-tech.org/news/report_italy_to_add_up_to_4000mw_of_solar_
IMEC
power_capacity_this_year
IMEC offers 14-nm dev kit, test chip to follow 2H12
http://www.eetimes.com/electronics-news/4237573/IMEC-14nm-PDK-test-chip
PV パネルの低コスト化:NREL、オークリッジ国立研究
所、Ampulse、金属箔基板、シリコン成長、CVD プロセス、
グラフェントランジスタ:トンネル障壁、窒化ホウ素、二
硫化モリブデン、グラフェンシートで挟む、電界効果型ト
ランジスタ、室温でのオン・オフ・スイッチング比(50
および 10,000)
、マンチェスター大学
Graphene and a new dimension
Ampulse プロセス(シラン分解でシリコン薄層堆積)
、
ホッ
トワイヤー CVD、熱フィラメント
New approach aims to slash cost of solar cells
http://www.electroiq.com/articles/pvw/2012/march/new-approach-aims-to-slashcost-of-solar-cells.html
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R
CN=34371
ワークショップ報告書:EC、新たな政策課題への潜在的関
連性、責任ある研究とイノベーション、新たな政策課題へ
マイクロレンズアレイ:自己組織化、バイオミネラリゼー
ション・アプローチ、簡単な製造プロセス、外部エネルギー
不要、簡単な製造プロセス、飽和炭酸カルシウム溶液、有
機界面活性剤、コンスタンツ大学他
Self-assembly of amorphous calcium carbonate microlens
arrays http://www.nature.com/ncomms/journal/v3/n3/full/ncomms1720.html
58
PEN April 2012
の潜在的関連性、ObservatoryNano
ObservatoryNano discussed Responsible Research and
Innovation
http://www.nanoforum.org/nf06~modul~showmore~folder~99999~scc~news~sc
id~4277~.html?action=longview&
新型バッテリー:グラフェン、溶液中イオンの熱エネルギー
水素燃料:3D ナノワイヤ、nanotree 構造体、シリコンと
を電気に変換、銅の塩化物イオン溶液、電圧出力(イオン
酸化亜鉛、水分解光電化学プロセス、光合成、UCSD
溶液の加熱で増加)
、香港理工大学
Nanotrees Harvest Sun's Energy, Turn Water Into...
Graphene in new battery breakthrough?
http://www.silobreaker.com/nanotrees-harvest-suns-energy-turn-water-
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/48881
バイオセンサー:CNT、高速診断、アプリケーション(医
学、毒性学、環境モニタリング、新薬開発など)
、オレゴ
ン州立大学
Carbon nanotubes increase the speed of biological
nanotechnology sensors
into-5_2265540086227534058
タ ッ チ・ セ ン サ 内 蔵 液 晶 パ ネ ル: 英 Sony Mobile
Communications 社、Xperia NXT シ リ ー ズ、「Xperia P」
と「同 U」を投入
液晶業界の悲願の製品を、ソニーが 40 万枚 / 月で量産開
始
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120309/208258/
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24544.php
電気自動車プログラム:オバマ大統領、エネルギー省、
EV-Everywhere「クリーンエネルギーグランドチャレン
ジ」第 2 弾、
劇的な技術をターゲット(電池のコスト改善、
電気モータ、パワーエレクトロニクス、軽量構造、高速充
電技術)
、米国経済刺激策
ナノ材料エージング:酸化、炭化、焼結、表面リガンド変
位、ナノ材料の物理化学的性質への影響、自然環境下での
エージング、大きさや形態依存
Environmental implications of nanoparticle aging
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=24520.php
President Obama Launches EV-Everywhere Challenge
as Part of Energy Department’s Clean Energy Grand
Challenges
http://energy.gov/articles/president-obama-launches-ev-everywhere-challenge-partenergy-department-s-clean-energy
国
際
会
議
予
告:Responsible Development of
Nanotechnology: Challenges and Perspectives(カナダ、
2012 年 11 月 1 ~ 2 日)、Ne3LS ネットワーク、ナノテク
ノロジーの責任ある開発、社会・環境・経済的懸念
The Responsible Development of Nanotechnology :
ナノリスク:ナノ粒子、ポリスチレンナノ粒子、経口暴露、
腸細胞、鉄の取り込みと輸送への影響、ビンガムトン大学
Challenges and Perspectives
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24547.php
とコーネル大学
Researchers show influence of nanoparticles on nutrient
absorption
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24535.php
プロジェクト公募:SIINN イニシアチブ、工業ナノ材料の
潜在的なリスク、評価と影響、ERA-NET、EC
The "Safe Implementation of Innovative Nanoscience and
Nanotechnology" project's first call for proposals
人体有機物質の応用:タンパク質利用トランジスタ、粘液
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24545.php
タンパク質、血液、乳、自己組織化、半導電膜、
「ボトムアッ
プ」アプローチ、テルアビブ大学
Using Self-Assembling Human Blood, Milk, And Mucus
Proteins To Build Next Generation Technology
高効率光吸収:メタマテリアル、新素材作成(多層鋸歯構
造)
、テーパー尾根(金属と絶縁材料層が交互に積層)、広
http://www.silobreaker.com/using-selfassembling-human-blood-milk-and-mucus-
波長範囲吸収、太陽電池や光センサーへの応用、MIT
proteins-to-build-next-generation-technology-5_2265542170360414395
Metamaterials could be far more efficient at capturing
sunlight than existing solar cells
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24538.php
PEN April 2012
59
ナノテクノロジービジネス:投資家の理解、ビジネス障
燃料電池触媒:金属ナノ粒子(FePtAu)、ギ酸燃料電池、
壁、メリット評価不足、市場検証、EC イニシアティブ、
アノード、耐久性と活性、ブラウン大学
ProNano
Touch of gold improves nanoparticle fuel-cell reactions
How to lower the barriers to nanotechnology transfer
http://www.physorg.com/news/2012-03-gold-nanoparticle-fuel-cell-reactions.html
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44675
米国ナノテクノロジー予算:2013 年大統領予算、予算要
並列光トランシーバ:チップ • スケール • トランシーバ、
求補足資料、イノベーション戦略、NNI、NNI 戦略計画
アクセス(24 レシーバ、24 トランスミッタ • チャネル)
、
NNI Supplement to the President’s 2013 Budget
光ビア、90-nm CMOS チップ背面に 48 穴、消費電力(5W
http://www.nano.gov/node/748
未 満 )、 通 信 対 象(150m の 短 距 離、 高 デ ー タ レ ー ト )、
IBM
Holey optochip breaks the 1-Tbit/s barrier
ファクト・シート:ナノテクノロジーの最新動向、10 の
http://www.eetimes.com/electronics-news/4237745/Holey-optochip-breaks-terbit-
技術分野(航空宇宙・自動車・交通機関、農業食品、化学
per-second-barrier
• 材料、建設、エネルギー、環境、健康・医薬 • ナノバイ
オ技術、情報通信、セキュリティ、繊維製品)
米 R & D 予算:2013 年大統領予算要求、AAAS 分析、イ
ンフレ率考慮、防衛 R & D 投資削減、
ObservatoryNANO publishes annual factsheets
http://www.nanoforum.org/nf06~modul~showmore~folder~99999~scc~news~sc
id~4278~.html?action=longview&
優先分野(エネルギー技術革新、製造、科学教育)
、重視
(国家ナノテクノロジー戦略(NNI)
、米国地球変動研究プ
ログラム)
Science Funding Edges Up in President’s FY 2013 R&D
Budget Proposal, Says AAAS Analysis http://www.aaas.org/news/releases/2012/0309rd_budget.shtml
リチウム空気電池:多孔質炭素ベース空気極、電解質の特
性(イオン伝導度、O2 の溶解度、粘度との接触角など)
、
セパレータ、カソード反応のメカニズム、非プロトン性液
体電解質、中国科学院長春研究所
China team outlines 5 key areas of future research to
realize Li-air batteries
未来の自動車:自動車と電気通信産業間の緊密な協力、学
http://www.greencarcongress.com/2012/03/liair-20120312.html
際的なシステム開発、センサーや電子制御、クラウド・ナ
ビゲーションシステム、統合されたモビリティネットワー
ク、 オ ー ト パ イ ロ ッ ト モ ー ド、Mobile World Congress
2012 でのフォード会長の基調講演
Ford sketches future mobility at Mobile World
小規模・零細企業向け支援:英国技術戦略委員会、技術革
新刺激、グラント・プログラム分野(先端材料とナノ技術、
生命科学、エレクトロニクス、フォトニクス、電気システ
http://www.eetimes.com/electronics-news/4237842/Ford-sketches-future-mobility-
ム、情報通信技術)
at-Mobile-World
UK Technology Strategy Board launches new grant
program for technology-inspired innovation
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24556.php
PV 設置予測:需要の沈静化は見られない、2011 年の実績
値→ 2012 年の予測値、ドイツ(7.5 → 8GW)
、中国(2 → 4
~8GW)
、米国(1.8 → 3GW)
、他(イタリア、日本等)、
デュポン社の参画:スタンフォード大学、Global Climate
GTM Research(Greentech Media company)
and Energy Project(GCEP)、企業スポンサー(エクソンモー
Germany, China, US Could Install Record Amount of PV in
ビル、GE、シュルンベルジェ、トヨタ)、主要な研究分野(太
2012
陽電池、バイオエネルギー、燃焼効率、炭素隔離、電気グ
http://www.greentechmedia.com/articles/read/Germany-China-U.S.-Could-Install-
リッド)、2002 年以降の企業投資総額(1 億 1,300 万ドル)
Record-Amount-of-PV-in-2012/
DuPont joins Stanford's Global Climate and Energy Project
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24562.php
60
PEN April 2012
ワークショップ案内:RSL2012(2012 年 5 月 1 ~ 2 日、
オレゴン州ポートランド)
、NNI、地域・州・地方のナノ
テクイノロジーニシアティブ
Registration Now Open for NNI's Regional, State, and
Local Initiatives in Nanotechnology (RSL 2012)
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44684
グラフェン:SiC 上にエピタキシャル生成、高温昇華プロ
セス、Graphensic AB 社(リンショーピン大学からスピン
オフ)
Swedish spin-off offers graphene-on-SiC
http://www.eetimes.com/electronics-news/4237882/Swedish-spin-off-offersgraphene-on-SiC
科学外交:オンライン出版物、国際的な科学技術協力-
対外関係-公共政策の交わり、21 世紀の国政アジェンダ、
国家安全保障、AAAS 科学外交センター
U.S. Policy and Research Leaders Headline First Issue of
AAAS’s New Publication Science & Diplomacy http://www.aaas.org/news/releases/2012/0312science_diplomacy.shtml
PEN April 2012
61
台湾ナノテクノロジー研究開発動向
経済部「石油化学産業高付加価値化
推進オフィス」開設 石油化学大手
メーカーが同盟を結び、提携意向書
を締結
経済部は 2011 年 12 月、台北科技ビ
ルで「石油化学産業高付加価値化推
進オフィス」開設セレモニーを行っ
た。経済部部長施顔祥氏自らが指揮
をとり、産学研各界の関係者が顔を
揃えて盛大に開催された。会場では
台湾 ITRI より
台湾工業技術院(ITRI)のナノテクノロジー研究セン
ター(NTRC)が配信する台湾のナノテクノロジー研
究開発動向と最新技術レポートをお届けします。台湾
の研究開発動向は日本語で PEN 編集室に届けられて
います。
多くの石油化学産業関連企業の代表
者が戦略連盟提携覚書ならびに提携
意向書を締結し、政府の事業者を支
援して石油化学産業高付加価値化を
推進するという決意の場に立ち会い、
政府の石油化学産業の高付加価値化
への努力を肯定、支持した。
新しいオフィスの主な任務には、産
業準備グループ研究開発センターの
推進、産業戦略研究開発連盟の産業
情報プラットフォームの構築、国際
連携の促進、技術と石油化学テクノ
ロジー人材の導入、研究予定案件へ
の研究開発奨励措置の提供などが含
まれる。健全な研究開発及び経営環
境の構築により、石油化学産業の川
上、川中、川下および関連産業がよ
り密接に提携、統合し、台湾の石油
化学産業がより高い次元で革新を実
現し、発展できるようにする。
地球上の資源が徐々に枯渇する中、
各国は環境保護を非常に重視してお
り、台湾における石油化学産業の川
上原料工場の新設、拡大は容易では
ない。よって、現有の石油化学原料
の経済効果を最大限に発揮させ、エ
ネルギー節約、低二酸化炭素、エコ
フレンドリー、回収・利用可能といっ
62
PEN April 2012
た製造工程および製品を開発するしか道はない。このため、
「経済部石油化学産業高付加価値化推進オフィス」の設立
れる必要はなく、弾性に優れた設計で、製造コストも下が
る。特許は関連特許も含めて取得済みであり、台湾メーカー
は、石油化学産業の高付加価値化元年であり、将来、石油
の製品競争力の向上に大きく寄与する。
化学産業の事業者および政府の共同努力の下、台湾石油化
http://www.itri.org.tw/chi/focus/focus_detail.asp?RootNodeId=010&NodeId=010&F
学産業の構造を大幅に調整し、高付加価値化の目標に向
ocusNewsNBR=93
かって邁進し、台湾の石油化学産業を国内の支柱、支援型
産業とし、国内経済成長の主要な原動力として持続させる
ことが期待される。
https://itriweb.itri.org.tw/spotlight/101/1010105_home_01.asp
工業技術研究院、3D 拡張現実エンジンの研究開発でビジ
ネスチャンスをもたらす
拡張現実(AR)は画像機能を通じて、撮影された実際の
工業技術研究院、世界初の 330°大発光角度を備える完全
プラスチック LED 電球を発表
工業技術研究院 IEK(ITRI IEK)は、白熱電球が徐々に淘
汰されており、また 311 東日本大震災後、日本の室内照
明再建で大量需要がもたらされ、日本の LED 電球の市場
占有率は大幅に向上し、7,000 ~ 8,000 万個の市場規模
に拡大したことから、2012 年は超節約型電球が最大の市
場占有率となると予測している。LED は点光源で直接照
明に適し、従来の白熱灯の大角度照明効果への到達は難
しいとされてきた。そのため、LED 照明角度の向上は各
国の照明メーカーが目標としている課題である。ITRI の
Light&Light LED 電球は LED 照明の限界を乗り越え、LED
照明に全く新しい時代をもたらした。研究開発の創意によ
り LED バックライト光源に類似した小さな結晶粒子で軟
性多晶光源モジュールを開発し、330 度大発光角度を備え
る 9.8W の LED 電球は従来の照明效果と同一で、60W の
白熱灯に代えることが可能である。また同時にプラスチッ
クボディを採用し、100 年来の「電球はガラス」という概
念を打破し、製作コストを抑えることが可能となった。
ITRI Light&Light LED 電球は、従来の LED 電球の集中的
高効率光源を LED バックライトの配列方式に類似させて
改良したものである。光学設計に基づき、ヒトデ型の LED
光線を電球のカーブに沿って貼り合わせ、均一の発光効果
を達成する。また大角度の直接発光であるため、光学効率
は 95% に達し、従来の二次光学による大角度発光の犠牲
光学効率 80%以下という苦境から脱却することができた。
熱拡散は LED 電球で最も重要な課題である。Light&Light
LED 電球は、電球表面に熱拡散プラスチックを採用し、従
来の金属熱拡散に代わり、特殊設計で熱拡散面積を拡大し、
熱拡散問題を解決して電球の寿命を延長し、現在の LED
電球より優れた性能を発揮させることに成功した。同時に、
物体や空間をバーチャルの 2D や 3D の物体と接合し、バー
チャル情報を現実の表示と結合して、コンピューター、携
帯電話、プロジェクターなどの方法で出現させる。AR の
発展からすでに 10 年近い年月が経っている。AR が今ま
でのバーチャルリアリティ (VR) でコンピューターシステ
ムにより創造される仮想の世界と異なるのは、AR は現実
環境と結合することに重点が置かれているため、現実環境
の情報の表示や五感の経験が増強される点である。電子製
品の演算能力の向上とクラウドサービスにより、AR の応
用はすでに不動産、娯楽、旅行、ガイド、展示、教育など
の関連領域に拡大されている。
近年、映像識別技術が発展し、すでにフレームや既定形式
のアイコンに制限されなくなっており、自由に各種設計画
像を識別することが可能である。ITRI は国内初のアイコン
式 AR エンジン技術を開発し、数十種以上の図案識別を支
援し、演算速度は毎秒 30 画像に達し、回転 40 度以内又
は図案遮断 30% 以内で正確に位置を識別することができ
る。現在、すでに国内 3D エンジン代理業者と提携しており、
徐々に Shiva 3D、Quest 3D といった主要 3D 表示ソフト
ウェア技術とのブリッジ統合を進め、従来の VR 開発ソフ
トウェアにも AR 開発環境をもたせ、国内の各種モバイル
デバイスでの創意的な応用を可能にする。
ITRI は将来的にこの AR エンジン技術を動態画像識別と結
合させ、GPS とクラウド演算サービスで関連情報を実際の
位置・物体と結合させ、ユビキタスサービスを提供する。
こういった結合映像識別、AR 技術とモバイルデバイス技
術が未来の IT インタラクティブアプリケーションを創造
し、台湾のデジタルコンテンツ産業が国際的なインタラク
ティブ技術のトレンドの先を行くチャンスを掴むことがで
きるよう支援する。
http://www.itri.org.tw/chi/news/detail.asp?RootNodeId=060&NodeId=061&News
ID=602
完全プラスチック熱拡散器を採用するため、重量は軽くな
り、電球重量を大幅に削減して 100 グラム以下にできた。
これは一般的な LED 電球重量の 1/2 の軽さで、落下も恐
PEN April 2012
63
公告 6 機関の実験室の登録申請案、テスト製品名称とテ
いて、システムや部品のサイズがナノスケールに近くなっ
ストプロジェクトが採択される
たとき、ミクロ材料の物理的・機械的性質の測定と分析
が重要となる。バイオサンプルは非導体が多いため、金属
2011 年 12 月に経済部ナノマーク実行審議会の審議案の
コーティング後、サンプルにたやすくゆがみが出てしまう。
決議:
しかし、前述の「スキャニング電子顕微測定システム」で
「財団法人工業技術研究院ナノ共通実験室」
、
「財団法人靴
あれば、直接観察し、研究することができる。例えば、ハ
と運動レジャーテクノロジー研究開発センター検査認証実
エの複眼や数千個の昆虫の感光細胞組織の観測などがこの
験室」
、
「台米検査テクノロジー有限会社」
、
「国立成功大学
システムによりはっきりと観察できる。そのほか、ナノ製
ナノテクノロジー研究センターナノテクノロジー製品テス
品の審査の際の測定と分析の標準も提供でき、衣料成分の
ト実験室」
、
「台湾区塗料工業同業組合研究発展検査室」と
検査とミクロ分析など民生関連の応用も可能である。例え
「財団法人紡織産業綜合研究所検査と検証部」の 6 機関の
ば、ナノ織物、ナノ消臭、抗菌、汚れ抵抗など製品の組織
検査実験室の申請案を採択。
成分の検査と測定分析によりナノ製品の品質と消費者のベ
詳しくはナノマークサイト「実験室情報」ユニットをご参
ネフィットが確実となった。
考ください。
http://proj3.moeaidb.gov.tw/nanomark/News/news-more.asp?NewsID=126
国家の度量衡標準の研究室が完成させた「スキャニング電
子顕微測定システム」は、標準のトレーサビリティを提供
するだけではなく、そのシステムが備えるナノ粒子の直径
公告 5 項目のナノ製品の基準が新しく認可される
と長さを測定する技術は、ナノ材料の測定と分析を提供や、
環境中の多くの天然・人工の浮遊状態の微粒子の探測と研
2011 年 12 月に経済部工業局ナノマーク実行審議会は審
究も可能である。
議の結果、
「ナノ金属酸化物透明断熱膜検証規範」
、
「ナノ
http://www.bsmi.gov.tw/wSite/ct?xItem=39941&ctNode=1510&mp=1
銀抗菌衛生陶磁器検証規範」
、
「ナノ銀抗菌プラスチック便
座カバーの検証規範」
、
「ナノ金属酸化物保温服装用織物検
証規範」および「ナノ銀抗菌便器用水槽プラスチック部品
ITRI が注目する最新の技術動向(ITRI レポートより)
検証規範」の 5 項目のナノ製品検証規範を認可した。
http://proj3.moeaidb.gov.tw/nanomark/News/news-more.asp?NewsID=125
ナノ材料
1. 英国バーミンガム大学、パラジウムと金の原子を精密コ
経済部標準検査局が「スキャニング電子顕微測定システム」
ントロールで世界最小のハートを作製(2012.2.14)
の校正サービスを開始、ナノ産業の付加価値向上をめざす
http://www.physorg.com/news/2012-02-world-smallest-atomic-valentine.html
経済部標準検査局が主導する「国家度量衡標準実験室」が、
このほど「スキャニング電子顕微策定システム」を完成さ
2. ピッツバーク大学の研究チーム、天然ガス中の有毒成分
せた。専門家による検査後、正式に校正サービスの提供を
を検出するための金ナノワイヤを作製(2012.2.21)
開始する。標準のトレーサビリティを提供するだけではな
http://www.physorg.com/news/2012-02-coax-gold-nanowires.html
く、従来のスキャニング電子顕微鏡モードを突破した。半
導体産業、化学工業、冶金工業、ナノ材料他の特殊な測定
に応用可能な有力なツールを提供する。特に低真空で観
3. 韓国の電気電子試験研究院、成均館大学、蔚山科学技術
察でき、以前の金属コーティングの手法を変更した。バイ
大学、高麗大学の共同研究チーム、スケーラブルなグラフェ
オサンプルの分析と測定が直接観察でき、すでにバイオテ
ン作製手法を開発(2012.2.23)
クノロジーの分析と測定の精度向上の重要なツールになっ
http://www.physorg.com/news/2012-02-motorized-roller-mass-produce-graphene-
た。
based-devices.html
半導体とマイクロコンピューター産業が成功したいま、バ
イオテクノロジーとナノテクノロジーに関した製品の開発
は台湾の次のトップ産業になると標準検査局は述べてい
る。しかし、様々なナノ材料の開発と応用のプロセスにお
64
PEN April 2012
4. フィンランドと米国の共同研究チーム、グラフェンナノ
リボンを捻って CNT を作製(2012.2.28)
http://www.azonano.com/news.aspx?newsID=24360
5. ジョージア工科大学の研究チーム、金属基板にアルミナ
ナノエレクトロニクス
薄膜を塗布して熱伝導率を従来の 2 倍にすることに成功
(2012.2.15)
http://www.physorg.com/news/2012-02-breakthrough-nano-coating.html
1. ノースダコタ州立大学と国立標準技術研究所(NIST)の
共同研究チーム、CNT 薄膜・コーティングの柔軟性および
耐久性が電子特性に依存することを明らかに(2012.2.13)
http://www.physorg.com/news/2012-02-ndsu-nano-impact-flexible-electronic.html
6. マサチューセッツ工科大学の研究チーム、ナノワイヤ成
長の精密コントロールに成功(2012.2.22)
http://www.physorg.com/news/2012-02-nanowires.html
2. オーストラリア、オランダ、スペインの共同研究グ
ループ、ナノ構造体の電子移現象を原子レベルで解析
(2012.1.26)
ナノバイオ・アグリ
http://www.sciencealert.com.au/news/20122501-23044.html
1. ハーバード大学ワイス研究所の研究グループ、DNA か
らターゲット医療用ロボットを作製(2012.2.16)
3. 研究者紹介:CNT とグラフェンを研究するスェーデン
http://www.physorg.com/news/2012-02-dna-nanorobot-triggers-therapeutic-
ヨーテボリ大学 Niklas Lindahl 氏(2012.2.14)
responses.html
http://www.physorg.com/news/2012-02-nanotechnology-energy-efficientelectronics.html
2. ケンブリッジ大学の研究グループ、効率的なマイクロカ
プセル作製技術を開発(2012.2.13)
4. オランダのトェンテ大学の研究グループ、磁気素子を非
http://www.physorg.com/news/2012-02-smart-microcapsules.html
磁性材料に組み込む新手法を開発(2012.2.14)
http://www.physorg.com/news/2012-02-magnetic-non-magnetic-materials.html
3. ニューヨーク市立大学の研究グループ、センダイウイル
スを使って治療用の量子ドットを脳腫瘍細胞に送り込むこ
5. オークリッジ国立研究所、意図的な欠損をコントロール
とに成功(2012.2.17)
することで導電性ナノワイヤの絶縁化に成功(2012.2.13)
http://www.physorg.com/news/2012-02-nano-technology-virus-coats-cancer-cells.
http://www.physorg.com/news/2012-02-ornl-microscopy-explores-nanowires-
html
weakest.html
4. ラトガース大学とニュージャージー州立大学の共同研究
エネルギー・環境
チーム、吸入により効果的に肺に抗がん剤を送り込むこと
ができる多孔性ナノシリカを作製(2011.11.21)
http://www.physorg.com/news/2011-11-inhaled-nanoparticles-potent-anticancercocktail.html
1. アルゴンヌ国立研究所とシカゴ大学の共同研究チー
ム、ナトリウムイオン蓄電池向けの高効率蓄電池を開発
(2012.2.13)
http://www.physorg.com/news/2012-02-nanostructured-electrodes-rechargeablesodium-ion-batteries.html
5. ウェイン州立大学、ジョンズホプキンズ大学医学部、メ
イヨークリニックの共同研究チーム、デンドリマーで効率
的に網膜へ薬剤を送り込むことに成功(2011.12.13)
http://www.physorg.com/news/2011-12-nanoparticles-steroids-retina.html
2. 英国、カザフスタン、フランス、日本の共同研究グルー
プ、銀をナノ粒子化することで効果的に水銀を吸着するこ
とに成功(2012.2.16)
http://www.physorg.com/news/2012-02-silver-nanoparticles-mercury.html
PEN April 2012
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3. オーストラリアのスウィンバーン工科大学と Suntech
Power Holdings、世界最高効率の広帯域ナノプラズモン
太陽電池を作製(2012.2.14)
http://www.physorg.com/news/2012-02-world-efficient-nanoplasmonic-solar-cells.
html
ナノ計測
1. 大阪大学、名古屋大学、理研の共同研究チーム、厚みの
ある材料に内包されたナノ構造の二次元イメージングに成
功(2012.2.10)
http://www.physorg.com/news/2012-02-lies-beneath-hidden-nanostructures.html
2. 英国ケンブリッジ大学の研究グループ、プリンテッド
エレクトロニクス用のグラフェンインク作製手法を開発
(2011.11.25)
http://www.physorg.com/news/2011-11-graphene-ink-ink-jet-electroniccomponents.html
3. ヨーク大学の研究グループ、電子渦ビームの生成に成功
(2012.2.16)
http://www.materialstoday.com/view/23962/researchers-create-tornados-insideelectron-microscopes/
国際動向
1. Mapper Lithography BV、新型のマスクレスリソグラ
フィシステムを台湾の TSMC 社に納入(2012.2.17)
http://cdn.eetimes.com/electronics-news/4236492/TSMC-set-to-receive-Matrix-13000-e-beam-litho-machine
2. 企業フォーラム E-beam Initiative、最新のリソグラフィ
ロードマップ公開(2012.2.13)
http://www.eetimes.com/electronics-news/4236238/E-beam-Initiative-ready-withupdated-roadmap
66
PEN April 2012
SSCP、グラフェンを商用化
電子材料専門会社 SSCP は、4 月 22
日にグラフェンを用いた熱拡散材料
の様々なアプリケーション等の新製
品発表会を開く。SSCP は昨年末、グ
ラフェン合成およびナノ分散技術を
開発した。以降熱拡散材料と OLED
関連素材、ガラスエポキシ基板等の
新製品のラインアップにも成功し、
商用化を目前にしている。
http://www.newspim.com/view.
jsp?newsId=20120319000257
韓国 NNPC より
韓国提案のナノ物質安全指針が国際
標準の TR として登録
韓国 National Nanotechnology Policy Center(NNPC)
が発行する Nano Weekly と各国動向レポート Global
韓国により 2009 年 1 月提案された
Nano Trends より、韓国の最新動向を中心に関連情報
「ナノ物質安全資料作成指針(Safety
をお届けします。
Data Sheet(SDS)preparation for
m a n u f a c t u r e d n a n o m a t e r i a l s )」
が、3 月 15 日 に 国 際 標 準 化 機 構
(ISO)のテクニカルレポート「ISO/
TR13329」として承認された。SDS は、
原材料としてのナノ材料の生産者と、
ナノ材料を加工して商品を生産する
ユーザーの間の取引を円滑にし、原
料物質の製造および流通のすべての
プロセスに関わる者の安全を確保す
るために必要な情報を作成するため
の標準指針を指す。韓国技術標準院
によると、同指針の国際標準化によ
り、ナノ材料の特性に関する毒性資
PEN April 2012
67
料等を含む正確な情報の提供が可能となり、ナノ材料の貿
木を用いた車部品素材を開発
易を円滑にさせ、ナノ産業の活性化にも貢献できるという。
http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=101&oid=003&a
id=0004398728
蔚山テクノパークは、木の主成分を用いて、優れた引張強
度で、軽量の自動車用の先端内蔵部品素材の開発に乗り出
す。蔚山テクノパークは MoorimP&P、自動車部品研究院、
KETI、アレルギー診断用ナノ構造体プラットフォームを開
発
韓国電子部品研究院(KETI)は、盆唐ソウル大学病院とメ
ディカル IT 融合分野の協力を通じて少量の血液でアレル
ギー 10 種を高速で検出・診断が可能であるナノ構造体プ
成均館大学、檀国大学と共同で、木の主成分であるナノセ
ルロースとリグニン素材を活用し、物性の優れた自動車用
の先端内蔵部品素材の開発を進めている。同研究は韓国知
識経済部の素材源泉技術開発事業に選ばれ、20 億ウォン
が支援される。
http://www.hankyung.com/news/app/newsview.php?aid=2012030192371
ラットフォームを開発した。既存光学蛍光方式を電気式診
断方式に変え、最小 2 時間 45 分から最大 24 時間までか
かる従来アレルギー診断器の試料当たりの検査時間を 15
分に短縮させた。また少量の血液でも検査が可能になった。
http://www.dt.co.kr/contents.html?article_no=2012031502019932713006
韓国、EU とナノテクノロジー産業化で協力へ
韓国知識経済部は欧州連合(EU)とのナノテクノロジー
産業化の促進のため、EU の研究イノベーション総局と協
力方案を議論したと明らかにした。韓国と EU はナノ融合
産業こそ今後急激に市場拡大が予想される有望産業であ
り、成長勢が鈍化しつつある両国の主力産業の競争力の向
上及び高付加価値化に大きく貢献することに対して共感を
示した。また、両国政府はナノ製品の安全性、標準化等ナ
ノテクノロジーの産業化に直接影響を与える主要課題につ
いても共同対応及び協力を拡大することにした。
ふわふわの羽をもったティラノサウルス発見
中国遼寧省で全身を覆う羽をもった恐竜が発見された。保存状態の良い計 3 体の骨格には産毛のような羽毛の痕跡が
くっきりと残っている。先月のコラムで輝く羽をもつ小型の恐竜を紹介したように、少なくない数の羽毛をもつ恐竜が
すでに発掘されている。しかし、これまで全身が羽毛に覆われると体が熱くなりすぎるので、大型の恐竜で全身に羽毛
をもっていた種類はいなかったと考えられていた。今回発掘された羽毛を持もつ恐竜は白亜紀に栄えた大型の肉食恐竜
ティラノサウルスの一種で、大型種としては初めての発見となる。
68
PEN April 2012
PE ヘッドライン No.41(4 月 9 日)
シ ン ガ ポ ー ル 国 立 大 学 の Hong
Minghui ら、THz に 同 調 可 能 な
3D メタマテリアルチューブを開発
(2012.3.22)
シ ン ガ ポ ー ル、 国 立 大 学 の Hong
Minghui ら は、PEN 基 板 上 へ 2D の
メタマテリアル材料を形成し、その
材料を巻きとることで 3D 構造のメ
タマテリアルチューブを開発した。
チューブの直径を変化させることで、
共振周波数を調整でき、THz にも同
調可能である。
PE ヘッドラインより
プリンテッド・エレクトロニクス研究会が独自の視点
で集めたニュースをお届けします。
http://onlinelibrary.w iley.com/doi/10.1002/
adma.201104575/abstract
アイントホーフェン工科大学の René
A. J. Janssen ら、溶液プロセスで作
製した高分子タンデム型太陽電池を
開発(2012.3.21)
オランダのアイントホーフェン工科
大学の René A. J. Janssen らは、広く
て小さなバンドギャップ吸収層を組
み合わせた溶液プロセス高分子タン
デム型太陽電池を開発した。この太
陽電池は、直列配置で 7% の光変換
効率を示した。
http://onlinelibrary.w iley.com/doi/10.1002/
adma.201104939/abstract
KAUST の H. N. Alshareef ら、紙幣の
上に不揮発性ポリマー強誘電体メモ
リを印刷(2012.3.21)
サウジアラビアのアブドラ王立
科 学 技 術 大 学(KAUST) の H. N.
Alshareef らは、ポリフッ化ビニリデ
ントリフルオロエチレンを使って、
紙幣の上に不揮発性ポリマー強誘電
PEN April 2012
69
体メモリを印刷した。このデバイスは、低動作電圧、低リー
Novalia 社、導電性インクで印刷した紙のポスターから音
ク、高移動度、長時間駆動可能など優れた性能を示した。
楽が流れる(2012.3.12)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201200626/abstract
英国の Novalia 社は、導電性インクで印刷した回路から音
楽が流れる紙製ポスターを作製した。ポスターのサムネイ
タンペレ工科大学 の Vesa Pynttäri ら、厚みのある印刷配
線で、アンテナ効率を向上(2012.3.19)
フィンランドのタンペレ工科大学の Vesa Pynttäri らは、
ルを押すとバンドの音楽が流れ、さらにチケットをポス
ターから予約することができる。
http://www.bbc.co.uk/news/technology-17339512
RF 応用分野における、フレキシブル基板上の印刷配線の
適切な厚みを調査した。 細いワイヤー型のアンテナでは、
868 MHz から 2.4 GHz において、厚みを増したアンテナ
が高効率を示した。
http://ieeexplore.ieee.org/xpls/abs_all.jsp?isnumber=6170612&arnumber=614825
2&tag=1
中国科学院の Zhanao Tan ら、チタニウムキレートを塗布
した逆型有機太陽電池を作製(2012.3.12)
中国科学院の Zhanao Tan らは、チタニウムキレートを
ITO 電極に塗布した高効率なの逆型有機太陽電池(変換効
率 7.4%)を作製した。この変換効率は、従来の有機太陽
電池の変換効率(6.4%)と比較して 16% 高く、逆型有機
DOWA エレクトロニクス社、銀ナノインクを本格事業化
(2012.3.16)
太陽電池の中では最高値である。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201104863/abstract
DOWA エレクトロニクス社は、プリンタブルエレクトロ
ニクス材料として、120℃以下の低温で焼成できる「銀ナ
ノインク」の本格事業化に乗り出す。2 秒程度で低温焼成
できるため、紙や PET など耐熱性の低い基材にも直接印
刷可能である。2014 年度をめどに銀ナノインクと印刷品
の合計で年間売り上げ 10 億円規模の事業に育成し、中国
での生産も視野に入れている。
http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2012/03/16-5857.html
ETRI、透 過 率 の 調 節 が で き る 透 明 デ ィ ス プ レ イ を 開 発
(2012.3.6)
韓国電子通信研究院(ETRI)は、周囲の環境に応じて透過
度調節が可能で、コントラスト比を 170 倍に向上させた
高画質透明ディスプレイを開発した。ディスプレイの裏面
に ETRI が開発したフレキシブル LCD を用いることで透過
率 0.02% まで調節できる。
http://www.etri.re.kr/etri/not/not_0101010000.etri?type=view&b_idx=13147
中 国 科 学 院 の Lixiang Wang ら、 溶 液 プ ロ セ ス で 白 色
OLED を作製(2012.3.13)
中国科学院の Lixiang Wang らは、デンドリマー型ホスト
材料とイリジウム錯体を用い、溶液プロセスで白色 OLED
を 作 製 し た。 こ の OLED の 発 光 効 率 は、100 cd m-2 で
70.6 cd A − 1、26.0% 及び 47.6 lm W − 1 である。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201104758/abstract
Catalan Institute of Nanotechnology の Vincent Reboud
ら、両面印刷配線を用いて ITO フリー OLED の光抽出力を
向上(2012.3.6)
スペインの Catalan Institute of Nanotechnology の Vincent
Reboud らは、ナノインプリント・リソグラフィ技術で表
と裏面にパターンがある金属電極を形成し、OLED を開発
した。この OLED は ITO 電極使用時と比べ、同程度の電流
タツモ、ロール・ツー・ロール方式の太陽電池モジュール
密度で 2 倍の光抽出能力を持つ。
を試作(2012.3.12)
http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2012/nr/c2nr12068b
タツモは、量産効率が高いロール・ツー・ロール方式を採
用した球状シリコン太陽電池モジュールの試作を行った。
バックシートに積層した電池セルを受光面シートで挟み込
IDTechEX、プリンテッドエレクトロニクス市場は、2021
んでラミネートする一貫製造ラインも開発し、モジュール
年までに 450 億ドルに達すると予測(2012.2)
の性能評価後、電極処理などの完成度を高めていく予定で
IDTechEX は、プリンテッドエレクトロニクスの動向に
ある。
ついて解説した報告書 Inorganic and Composite Printed
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0120120312baak.html
Electronics 2011-2021 を発行し、プリンテッドエレクト
ロニクス市場は 2021 年までに 450 億ドルに達すると予
70
PEN April 2012
測している。
カンザス大学の Guowei Xu ら、通常のグラフェンよりも
http://www.idtechex.com/research/reports/inorganic-and-composite-printed-
高導電なプラズモニックグラフェンを作製(2012.3.6)
electronics-2011-2021-000278.asp
米国カンザス大学 の Guowei Xu らは、グラフェン上に銀
ナノ粒子の熱による自己組織化現象を利用して、プラズモ
ペーター・グリューンベルク研究所の Mayer ら、高集積
クロスジャンクションの印刷技術を開発(2012.1.10)
ドイツのペーター・グリューンベルク研究所の Mayer ら
は、ナノインプリント・リソグラフィ法とソフトリソグラ
ニックグラフェンを作製した。プラズモニックグラフェン
は、通常のグラフェンに比べて 2 ~ 4 倍高い電気伝導率
を示すことから、透明導電膜への応用が期待される。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201104846/abstract
フィ法を組み合わせることでフォトリソグラフィより電極
のサイズが 10 ~ 100 倍小さく、解像度が 4 桁も高い金
属電極を作製した。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.201101925/abstract
東京大学の染谷隆夫ら、滅菌できる有機トランジスタを作
製(2012.3.6)
東京大学の染谷隆夫らは、高耐熱性を有する有機トランジ
スタを作製した。この高耐熱性は自己組織化単分子膜と封
PE ヘッドライン No.40(3 月 15 日)
東北大学の林大和ら、日立電線と共同で銅ナノ粒子の新製
法を開発(2012.3.8)
東北大学の林大和らは、日立電線と共同で銅ナノ粒子の高
効率製造プロセスを開発した。還元剤であるヒドラジンを
止膜の作製技術により実現された。プラスチックフィルム
上の有機トランジスタは 150℃の耐熱性を有し、かつ 2V
の駆動電圧を有した。さらに、滅菌プロセス (150℃の加
熱処理)で電気性能が劣化しないため医療用デバイスへの
応用が期待される。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120307/
http://www.nature.com/ncomms/journal/v3/n3/full/ncomms1721.html
加えたプロパノール中で原料の酸化銅をマイクロ波加熱す
るもので、酢酸を分散保護剤とすることで 50nm 程度の
粒子合成を実現した。既存のプロセスに対して 10 倍以上
の高濃度合成と、合成時間の大幅な短縮により 10 分の 1
の低コスト化が可能である。
http://www.kagakukogyonippo.com/headline/2012/03/08-5742.html
NEC、IC カードに内蔵可能な超薄型有機ラジカル電池を開
発(2012.3.5)
NEC は、薄くて曲げられるなどの特長を有する二次電池
「有
機ラジカル電池」において、IC カード(規格厚 0.76mm)
に内蔵可能な厚さ 0.3mm の超薄型電池を開発した。印刷
技術を用いて回路基板と電池を一体化することで、従来比
産総研の長谷川雅考ら、タッチパネル電極代替に向けた炭
1/2 以下となる厚さ 0.3mm を実現した。
素シート材の大量生産技術を開発(2012.3.8)
http://www.nec.co.jp/press/ja/1203/0504.html
産総研の長谷川雅考らは、ナノメートルレベルの厚さの
シート状炭素材料グラフェンをロール・ツー・ロール法で
大量生産する技術を確立した。今後、開発した手法でつく
るグラフェンの導電性をさらに高めるなどして 2、3 年以
内の供給を目指している。
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720120308aaar.html
筑波大学の丸本一弘ら、電子スピン共鳴法により有機薄膜
太陽電池の劣化機構を分子レベルで解明(2012.3.1)
筑波大学の丸本一弘らは、有機薄膜太陽電池の劣化機構を
分子レベルで解明した。電子スピン共鳴法を用いて、太陽
電池内部の構造欠陥が起こる部位を測定できる解析手法を
開発した。この手法は、太陽電池の変換効率や耐久性の向
Solvay 社、発光効率 30lm/W のフレキシブル有機 EL 照明
上に寄与することが期待される。
パネルを開発(2012.3.6)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120301-2/
ベルギーの化学メーカー Solvay 社は、オランダの研究機
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/aenm.201100774/abstract
関ホルストセンターと共同で、輝度 1000cd/m2、発光効
率 30lm/W のフレキシブル照明用有機 EL パネルを実現し
たと発表した。有機 EL パネルの面積は 69cm2 である。
http://www.holstcentre.com/en/NewsPress/PressList/Solvay_OLED_Eng.aspx
富士フイルム、
「第 1 回プリンタブルエレクトロニクス大
賞」を受賞(2012.2.29)
富士フイルムの産業用インクジェットプリンター(DMP-
PEN April 2012
71
2831) が、 プ リ ン タ ブ ル エ レ ク ト ロ ニ ク ス 2012 に て
「第 1 回プリンタブルエレクトロニクス大賞」を受賞し
な引き剥がし法で単層グラフェンの転写に成功した。
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/nl204123h
た。 同 賞 は、 国 際 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 総 合 展・ 技 術 会 議
nanotech2012 の出展者を対象として、斬新かつ先駆的で
最優秀な技術を表彰するものである。
新リスボン大学の César A. T. Laia ら、酸化タングステン
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0616.html
水和物ナノ粒子のインクジェット印刷(2010.2.9)
ポルトガルの新リスボン大学の César A. T. Laia らは、金
属タングステンを前駆体とし、ソル・ゲル法でタングステ
漢陽大学の Jong-Man Kim ら、紙基板上にインクジェッ
ン酸化物のナノ粒子を作製した。このナノ粒子をフレキシ
ト印刷できるマイクロエマルジョンシステムを開発
ブル電極上にインクジェット印刷し、固体エレクトロクロ
(2012.2.28)
韓国漢陽大学の Jong-Man Kim らは、紙基板上にインク
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/am201606m?prevSearch=printed%2Belectro
ジェット印刷できる光重合型ジアセチレンのマイクロエマ
nics&searchHistoryKey
ルションを開発した。紫外線重合により紙基板上にサーモ
クロミズムを示すポリジアセチレン超分子が形成される。
http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2012/jm/c2jm30301a
ホルストセンターら、低温薄膜技術による世界初の RFID
回路を作製(2012.2.22)
第 7 次 欧 州 研 究 枠 組 み 計 画(FP7) の プ ロ ジ ェ ク ト
ORICLA に参画しているオランダのホルストセンターとベ
ルギーの IMEC ならびに関係研究機関は、低温薄膜技術を
用いた世界初の RFID 回路を作製した。この RFID 回路は、
reader-talks-first communication が可能である。
http://www.holstcentre.com/en/NewsPress/NewsList/BidirectionalOrganicRFID.
aspx
香港科技大学の Zhiyong Fan ら、半導体ナノワイヤに関
する総説を発表(2012.2.17)
香港科技大学の Zhiyong Fan らは、半導体ナノワイヤやそ
の材料を応用した大面積フレキシブルデバイスに関する総
説を発表した。特に、集積回路や高周波デバイスに関して
記述している。半導体ナノワイヤは、高い移動度を有し、
形状や電気特性の安定した制御が可能で、合成コストが経
済的な材料である。
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/nn204848r
KAIST の Taek-Soo Kim ら、 新 規 転 写 法 に む け、 銅 基 板
上で成長させた単層グラフェンの付着エネルギーを測定
(2012.2.15)
韓国の KAIST の Taek-Soo Kim らは、銅基板とその基板上
に成長させた単層グラフェンの付着エネルギーを二重片持
ちはり試験で測定した。試験より付着エネルギーが 0.72
± 0.07 J m-2 と判明し、エッチングプロセスのない機械的
72
ミック素子を作製した。
PEN April 2012
カナダの研究開発動向
Charles-Anica Endo 氏がピックアップするカナダの最
新の研究開発動向に関するトピックをお届けします。
カナダの研究者が率いる国際共同研
究チーム、反水素原子の観測に成功
(2012.3.7)
カナダのブリティッシュコロンビ
ア 大 学(UBC)、UBC 内 に あ る カ ナ
ダ国立素粒子原子核物理学研究所
(TRIUMF)
、サイモンフレーザー大学
(SFU)の 3 大学の研究者が率いる国
際共同研究チームが、高周波を用い
て反水素原子を操作し、計測するこ
とに成功した。計測手法は、まず反
水素原子を磁気トラップの中で安定
的に捕捉し、注意深く周波数を調整
したうえで高周波を磁気トラップに
閉じ込められている原子に照射する
というものである。これにより反物
質原子の内部構造の理解が進むと期
待されている。本研究成果は Nature
誌に掲載された。
http://science.ubc.ca/news/603
PEN April 2012
73
ウォータールー大学、研究機関としてのカナダでの地位を
固める(2012.3.23)
ウォータールー大学は、連邦政府のファンディング機関
Canada Research Chair よ り 総 額 750 万 ド ル に な る プ ロ
ジェクトファンド受けることが決まり、カナダの大学にお
ける研究機関としての地位を強固なものとした。また、同
大はファンディングエージェンシーの Canada Research
Chairs より、
上位 5 つの研究大学の一つに認められている。
6 名の研究者が Canada Research Chair の対象者に選ば
れており、同大へのファンドは代替エネルギー貯蔵の研究
からインタラクティブ音響機器の開発まで多岐にわたる分
野が対象となっている。
Canada Research Chairs は、カナダ連邦政府による研究開
発分野における国際競争力を維持・向上するための戦略プ
ログラムの一部である。毎年 3 億カナダドルの研究資金を
提供している。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=24691.php?utm_source=feedburner
カナダの科学技術政策の切り札
Canada Research Chairs は、カナダ政府が 2000 年に始めたプログラムで、カナダ国内で研究開発の中核となる人材
2000 人を Research Chair して手厚い支援をするもの。毎年の予算は 3 億カナダドル。研究者(Chair)は、自然科学、
人文学、保健、社会科学の各分野から選ばれる。Chair は、カナダの競争力の強化に貢献すること、次世代の優秀な人
材を育成することが期待されている。本プログラムを導入し、大学、附属研究機関、附属病院などの優秀な研究者を給
与や待遇の面で厚遇することで、国内の研究者の海外流出を防ぐとともに、海外から優秀な人材をカナダに呼び寄せる
ことも可能となった。事務局は、人文・社会科学研究審議会(SSHRC)内に設けられている。
http://www.chairs-chaires.gc.ca/home-accueil-eng.aspx
74
PEN April 2012
イベント案内
イベント案内への掲載を希望される方は [email protected] までご連絡ください。
東京国立博物館 140 周年「東京国立博物館のミイラ」
” 未来へのバイオ技術 ” 勉強会 月例会
「化粧品およびヨーロッパにおける現行規制の枠組
日時:2012 年 4 月 14 日(土)13:30 ~ 15:00
み」および
動物試験禁止への対応-代替え法の開発動向
場所:平成館 - 大講堂
日時:2012 年 5 月 17 日(木)13:30 ~ 17:00
主催:東京国立博物館
場所:一般財団法人バイオインダストリー協会 会議室
概要:特任研究員の後藤健氏が講師として、古代エジプト
主催:一般財団法人バイオインダストリー協会
の死についてお話します。定員は 380 名、聴講料は無料
概要:欧州では、2009 年 3 月以降動物実験により得られ
です。ただし、当日の入館料は必要です。
たデータを用いてドシエを作成してはならないと定めてい
http://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=1&id=5983
る。このほど欧州の規制策の専門家を招き、欧州の化粧品
規制の枠組み動向について講演いただきます。また、日本
の動物試験代替法の実際例について紹介します。参加費は
JST 復興促進センター事業説明会の開催(郡山会場)
3000 円です。
日時:2012 年 4 月 16 日(月)14:30 ~ 16:00
http://www.jba.or.jp/top/2012/0517_miraibio_EUregulation.html
場所:福島県ハイテクプラザ多目的ホール(福島県郡山市
待池台 1 丁目 12 番地
概要:(独)科学技術振興機構(JST)は、東日本大震災
からの復興を目的に盛岡市、仙台市、郡山市で事務所を開
設し「復興促進プログラム」を実施します。事業開始にあ
たり事業説明会を開催します。参加費は無料です。下記ま
で電子メールにて、参加者氏名・所属機関名・役職名を
2012 年 4 月 13 日(金)正午まで事前にお申込みください。
今後盛岡会場での開催も予定しています。
http://www.jst.go.jp/fukkou/news/e_120327_01.html
PEN April 2012
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李精一氏を悼む
産総研ナノシステム研究部門ナノテクノロジー戦略室 阿多誠文
韓国科学技術研究院(KIST)の研究者として韓国のナノテ
その対応のために、氏は 2009 年からナノテクノロジー
クノロジー研究開発をけん引しながら、経済協力開発機構
の倫理的・法的・社会的(ELSI)課題に対する国際会議
(OECD)をはじめとする国際的な枠組みでも活躍してこら
International Nanomaterials Ethics Workshop(iNEW)
れた李精一(JungIl Lee)氏が、3 月 24 日、パリで客死さ
を韓国で開催してきた。iNEW は、韓国教育科学技術部
れた。享年 59 歳、思いもしない訃報だった。
の 21 世紀フロンティア研究開発事業の一環である。第
1 回の会議では当時台湾の工業技術院(ITRI)のナノテ
4 月 5 日早朝 8 時半より高麗大学の礼拝堂で葬儀がとり行
クセンター長だった TT Su 氏、当時米国のライス大学で
われた。氏が属していた聖歌隊の歌が会場に響いた。会場
GoodNanoGuide を展開していた K. Kulinowski 氏らと共に、
を KIST に移してお別れ会が行われた後、多くの職員に見
筆者も講演をさせていただいた。この iNEW は毎年開催さ
守られながら、KIST のバス 2 台を含む長い車列が野辺の
れ、翌年は大阪大学の伊藤正氏に大阪大学ナノサイエンス
送りに向かった。車で東へ約 1 時間、静かな林のなかの家
デザイン教育研究センター「ナノ高度学際教育研究訓練プ
族霊園で永い眠りにつかれた。
ログラム」の話を、昨年は東京大学の横山広美氏にサイエ
ンスコミュニケーションの話をしていただいた。
氏には、昨年より PEN の外部編集委員に就任していただ
いた。韓国は科学技術の情報配信を産業戦略上の重要な課
今年は 3 月はじめに「The 4th International Nanomaterials
題として位置づけており、
韓国科学技術情報研究院(KISTI)
Ethics Workshop(iNEW2012)- Education(Ethics,
という研究機関に 100 名もの人的リソースを投入し、政
public and researchers)」というタイトルで行われた。ナ
府の政策立案や民間企業の経営、様々な研究機関における
ノ素材技術開発事業団(CNMT)が主催する今回のワーク
研究開発活動等に資する包括的な情報の配信を行ってい
ショップのテーマは倫理と教育であり、倫理教育と実施方
る。KISTI は KIST のなかの独立した研究所であり、道を隔
法、ナノテクノロジーの社会的影響に対する市民教育とコ
ててすぐ近くに位置する。氏には、我々産総研ナノシステ
ミュニケーションについて、アメリカ、フランス、ドイツ、
ム研究部門のナノテクノロジー戦略室が展開している PEN
中 国 等 の 講 演 者 に よ る 発 表 が 行 わ れ た。iNEW2012 で
と、韓国で情報配信を行っている KISTI との包括的な情報
は、当ナノテクノロジー戦略室の安順花が「Towards the
の共有の枠組みつくりをアレンジしていただいた。以降韓
Construction of an Information Sharing Network Aimed at
国の研究開発や政策に関する情報が戦略室に届けられ、そ
Facilitating Public Engagement in Nanotechnology」と題
れを編集室の安順花が日本語に訳して PEN に掲載してき
する講演を行った。基調講演後のパネル討論には PEN 編
た。PEN にとって氏はまさに「余人を以て代えがたい存在」
集長の関谷瑞木が参加し、我々産総研ナノテクノロジー戦
だった。
略室も参画して大阪大学で進めている「ナノテクノロジー
社会受容講座」の紹介などを行った。この会議の最後に
氏とはじめてお会いしたのは、2004 年ソウル市内新羅ホ
李精一氏が「Review of the last three years of the project」
テルで行われた韓日科学技術フォーラムの時だったと記憶
と題するまとめの講演を行っている。
している。以来今日まで、氏は韓国における特にナノテク
76
ノロジーの社会受容に関する最も重要なパートナーだっ
この iNEW2012 に先立ち、昨年末 12 月 19 ~ 21 日に、
た。韓国は OECD のナノテクノロジー作業部会(WPN)
氏はつくばを訪問された。私どものオフィスで iNEW2012
に対する政府の方針が明確に示されており、国際的な枠組
に関する打ち合わせを行い、二日目の午後に、氏を霞ケ浦
みのなかで積極的な役割を担おうとしていた。テラヘルツ
へご案内した。霞ヶ浦周辺でミサゴやオオヒシクイといっ
デバイス等の研究開発を行いながら、韓国の OECD/WPN
た鳥に出会うたびに、聞き取ったことを丹念にメモしてお
の対応を一手に引き受けてきたのが李精一氏だった。
られた姿を思い出す。稀にみるメモ魔だった。夕方、焼き
PEN April 2012
iNEW2012 に参加できなかったことである。急にドイツ
に行かなければならなくなったことを説明し、韓国に行け
ないことを礼を尽くして詫びた。氏から返ってきた温かい
言葉がありがたかった。
李精一氏の逝去に伴い、KISTI の National Nanotechnology
Policy Center(NNPC) の 李 佾 炯( イ イ ル ヒ ョ ン ) 氏 に
PEN 編集委員に就任していただくことをご快諾いただ
いた。李佾炯氏は 2004 年からナノテクノロジー情報誌
Nano Weekly を配信してこられた方で、今後 PEN 編集室
と NNPC は共同で、よりグローバルな情報の共有にむけて
取り組む。そのためにこの夏に釜山でミニワークショップ
を開催することで合意した。また、長年にわたって故李精
一氏と共に OECD の活動や iNEW の活動を進めてこられた
鄭允璇(ジョンユンソン)氏とも密接に連携を図っていく。
故李精一氏の意志を引き継ぐ李佾炯氏や鄭允璇氏と協力し
ながら、PEN 編集室は李精一氏のこれまでの貢献に応えて
いく。
2012 年 3 月 6 日に開催された iNEW 2012 でプロジェクトの成果を
紹介する李精一氏
鳥を楽しんだ後、所内の宿泊施設で甘露を酌み交わしなが
ら、夜が更けるのも忘れて語り合った。亡くなる 3 カ月前
のことで、筆者にとってはこれが李精一氏との最後の酒宴
の席となった。
韓国 ソ ウ ル 市 の 北 部、地下鉄 6 号線上月谷に位置 す る
KIST の周りには、緑が多く残されている。カササギが営
巣し、コガラやカケスなどもよく見かける豊かな松林があ
る。一度健康を害されたことのある氏は、この松林の散歩
を日課にしておられた。KIST で食事をすると、良くここ
を歩いた。ゆっくりと林のなかを歩きながらの会話は、何
ものにも代えがたい貴重な時間だった。
氏との関わりのなかで、いくつかの心残りがある。一番大
きな心残りは、氏に煙草を止めさせることができなかった
ことである。氏から酒を取り上げることは酷なことだし、
適量なら酒は「百薬の長」でもある。ただ、煙草に関して
は健康上の適量はない。筆者もかつてヘビースモーカー
だったが、病を得て禁煙した。煙草が 59 歳という早逝の
要因の一つだったのではないか、もっと強く禁煙を勧めて
おくべきだった。悔やまれてならない。
も う 一 つ は、 出 席 す る と 約 束 し て い た 先 月 は じ め の
2011 年 12 月 20 日、霞ヶ浦で地元の方から聞いたオオヒシクイの話
をメモする李精一氏
PEN April 2012
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PEN 編集室
編集長 関谷瑞木
編集委員 安順花
発行責任者 阿多誠文
連絡先:
(独)産業技術総合研究所
ナノシステム研究部門
ナノテクノロジー戦略室
〒 305-8565 つくば市東 1-1-1 産総研つくばセンター中央第 5 編集後記
1 号館 3106 室
Email:[email protected]
Tel:029-860-5108
http://unit.aist.go.jp/nri/nano-plan/index.html
新年度、3 年目に入った PEN 編集室は新たに山根秀信氏と李佾炯氏
を外部編集委員として迎えた。社会との双方向コミュニケーション
のツールとして、より包括的でグローバルな情報の共有を目指し、
PEN の編集と配信を行うことで、李精一氏のこれまでの貢献にも応
えていきたいと考えている。
PEN 編集室 一同
2012 年 4 月 12 日
外部編集委員 安宅龍明
伊藤正
李佾炯
Endo, Charles-Anica
亀井信一
Krivtsov, Andrey
下村政嗣 宋清潭
豊蔵信夫
山根秀信
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PEN April 2012