合成開口レーダによるリモートセンシングの商用化 に関する調査研究 報

システム技 術 開 発 調 査 研 究
17−R−6
合成開口レーダによるリモートセンシングの商用化
に関する調査研究
報 告 書
−要 旨 −
平 成 18 年 3 月
財 団 法 人
機
械
シ ス テ ム 振
興
協
会
委 託 先 財 団 法 人 資 源 探 査 用 観 測 システム研 究 開 発 機 構
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社
会的諸条件は急速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、
住宅、福祉、教育等、直面する問題の解決を図るためには、技術開発力の強化
に加えて、ますます多様化、高度化する社会的ニーズに適応する機械情報シス
テムの研究開発が必要であります。
このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人 機械シ
ステム振興協会では、日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、
機械システムの開発等に関する補助事業、新機械システム普及促進補助事業等
を実施しております。
特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外にお
ける先端技術、あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施
する必要がありますので、当協会に総合システム調査開発委員会(委員長 政策
研究院 リサーチフェロー 藤正 巖氏)を設置し、同委員会のご指導のもとにシ
ステム技術開発に関する調査研究事業を民間の調査機関等の協力を得て実施し
ております。
この「合成開口レーダによるリモートセンシングの商用化に関する調査研究
報告書」は、上記事業の一環として、当協会が財団法人 資源探査用観測システ
ム研究開発機構 に委託して実施した調査研究の成果であります。
今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえで、本調査研究の
成果が一つの礎石として役立てば幸いであります。
平成18年3月
財団法人 機械システム振興協会
はじめに
すでに商用化が行われている光学衛星センサと比べると、SAR は光に比べれ
ば波長がずっと長い電波を使うので、昼夜を問わず、天候のいかんにかかわら
ず観測可能なセンサであることは強調されている。しかしながら SAR 画像は光
学画像に比べて直感的に理解しにくい、画像を構成しているデータそのものが
何を意味しているか分かりにくい、空間分解能が光学センサに比べて劣る、SAR
特有の画像歪があるなどの理由により、そのデータ利用がビジネスとして成り
立つ規模まで普及していないのが現状である。
SAR の特徴は、昼夜天候の別なくデータが取れることだけではない。光学セ
ンサに比べ波長が長いため、電波が表面で反射するだけでなく、観測対象の内
部に入り込んでから反射すること、振幅情報のみならず位相情報を利用できる
こと、多偏波情報の取得が可能なこと、などにもある。電波情報と光学情報、
地図情報などをうまく組み合わせて活用すれば(データフュージョン)
、従来の
SAR 画像では不可能であったデータが得られるため、多くの新規応用事例が考え
られ、SAR データの商用化の可能性が拓けてくる。
また、初めに述べた問題点についても SAR 技術の進歩によりある程度解消され
つつある。例えば、「分かりにくさ」については、SAR の波長を従来に比べて短
くすると(X 帯あるいは Ku 帯の採用)、ターゲットからの散乱がごく表面からの
散乱に限定されるため、視認性が向上する。空間分解能については、衛星搭載
で 1m、航空機搭載で 10cm 以下が海外で実現されつつあり、光学センサと比較し
ても遜色ないレベルになってきている。SAR 特有の歪についても、補正手段が
ないわけではない。
SAR は従来、陸域、海域における環境観測、資源探査、大規模災害観測等、主
としてグローバルな自然を対象とした観測に利用されてきた。今後期待される
分野としては例えば、大型産業廃棄物の不法投棄の監視、地下水汲み上げや地
下鉄建設などに伴う地盤沈下や大規模構造物の歪の観測、水力・火力・原子力
発電所、石油基地、石油パイプラインなどエネルギー関連施設の立地調査、保
安・防災上の監視、地域多様化に伴う自然と調和した土地利用・開発管理のた
めの観測、建設工事管理、GIS 作成支援のための観測、鉄道・車両・船舶など移
動体の観測・監視、海上流出油の観測・監視など、特に人工物の観測、監視が
挙げられる。
本調査研究は、SAR 技術の動向調査、歪補正の検討、データの応用とニーズ
調査、およびそれらをもとにした商用化の検討を行った。
平成 18 年 3 月
財団法人 資源探査用観測システム研究開発機構
目次
序
はじめに
1.調査研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
2.調査研究の実施体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
3.調査研究成果の要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
3.1
SAR の特徴、機能、性能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
3.2
SAR 技術動向調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
3.2.1
高分解能化技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
3.2.2
高機能化技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
3.2.3
画像歪補正技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
3.2.4
データフュージョン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
3.2.5
観測周期の短縮 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
3.2.6
低コスト化・小型化技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
3.3
3.4
3.5
画像歪補正手法の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
SAR 応用・ニーズ調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
商用化のための開発課題抽出、対応策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
4.調査研究の今後の課題と展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
1.調査研究の目的
合成開口レーダ (SAR) によるリモートセンシングの商用化を実現していくた
めに、従来に比べて高分解能化、高機能化、画像歪補正等により、より判読し
やすくした SAR 画像についてニーズおよび応用に関し調査研究を実施し、潜在
的ニーズを的確に把握することにより SAR データの商用化に向けた技術開発課
題、対応策を明確にする。
1
2.調査研究の実施体制
(財)資源探査用観測システム研究開発機構内に「合成開口レーダによるリ
モートセンシング商用化に関する調査研究委員会」を設置し、その委員会に
おいて検討方針・内容等を確認しつつ実施した。なお、調査研究の内、
「画像
歪補正手法の検討」については三菱電機(株)に再委託した。
(財)機械システム振興協会
総合システム調査開発委員会
委託
(財)資源探査用観測システム
研究開発機構
合成開口レーダによるリモートセンシング
の商用化に関する調査研究委員会
再委託
三菱電機(株)
2
総合システム調査開発委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長
政策研究院
藤
正
巖
太
田
公
廣
志
村
洋
文
中
島
一
郎
廣
田
藤
岡
健
彦
大
和
裕
幸
リサーチフェロー
委
員
独立行政法人産業技術総合研究所
産学官連携部門
コーディネータ
委
員
独立行政法人産業技術総合研究所
産学官連携部門
コーディネータ
委
員
東北大学
未来科学技術共同研究センター
センター長
委
員
東京工業大学大学院
薫
総合理工学研究科
教授
委
員
東京大学大学院
工学系研究科
助教授
委
員
東京大学大学院
新領域創成科学研究科
教授
3
合成開口レーダによるリモートセンシングの商用化に関する調査研究委員会 委員名簿
(敬称略 アイウエオ順)
氏名
勤務先および所属・役職名
委員長
大林 成行
株式会社国土情報技術研究所 代表取締役社長
委員
葛岡 成樹
株式会社イメージワン 技師長
熊井
財団法人資源・環境観測解析センター
基
技術二部長
佐藤
功
独立行政法人産業技術総合研究所 地質情報研究部門
地質リモートセンシング研究グループ長
飛田 幹男
国土交通省 国土地理院 地理地殻活動研究センター
宇宙測地研究室 主任研究官
町田
聡
パシフィックコンサルタンツ株式会社
情報事業本部 情報技術部長
4
3.調査研究成果の要約
3.1 SAR の特徴、機能、性能
合成開口レーダ(以下 SAR という)はパルス圧縮と合成開口処理により高空
間分解能と高 S/N を実現している。SAR の進行方向をアジマス方向、進行方向
と直交方向をレンジ方向と言う。パルス圧縮はレンジ方向に対するもので、一
般のパルスドプラレーダにも広く使用されている。合成開口処理はアジマス方
向に対するもので、開口面を合成することによりアジマス方向の分解能を向上
させている。図 3.1‑1 に SAR の観測概念を示す。
図 3.1‑1
SAR の観測概念
(1)SAR 特有の画像歪
1)フォアショートニング
図 3.1‑2(a)は、真上から見れば、abc が等間隔に並ぶが、標高の高い b はレ
ーダに近いため、レーダ画面上の位置は b1になることを示す。レーダに面する
斜面(ab)はレーダ側に倒れ込み短く写る(a1b1)。この現象を「フォアショート
ニング」と呼ぶ。一方、後ろ向きの斜面(bc)は逆に長く写る(b1c1)。
2)レイオーバ
図 3.1‑2(b)は斜面の傾斜角がレーダの入射角よりも大きくなった場合であ
る。標高の高い地表点がさらにレーダに近くなるため、真上から見た場合の順
番 abc がレーダ画像では b1a1c1 となって b の位置に逆転が生じる。この現象を
「レイオーバ」と呼ぶ。
3)レーダシャドウ
図 3.1‑3 はレーダの反対側の斜面で傾斜が大きい場合である。この場合、b c
d の区間はアンテナビームが当たらず斜面の陰になって見えなくなる。これを
「レーダシャドウ」と呼ぶ。画像中の b1d1 の区間には地表(b c d)の後方散乱の
5
情報は一切含まれない。起伏のある地形では、入射角が大きくなるほど、フォ
アショートニング歪やレイオーバ歪は小さくなるが、逆にレーダシャドウの面
積は大きくなる。
(a)フォアショートニング
図 3.1‑2
図 3.1‑3
(b)レイオーバ
SAR 特有の画像歪
レーダシャドウ
(2)SAR の機能・性能を示す主なパラメータ
1)周波数について
衛星搭載レーダとして使用可能な周波数帯域は次の通りである。
L:1.215 〜1.3GHz 、S:3.1〜3.3GHz、C:5.25〜5.46GHz、X:9.5〜9.8GHz、
Ku:13.25〜13.75GHz、K:24.05〜24.25GHz、Ka:35.5〜36GHz、W:94〜94.1GHz
2)分解能
6
分解能は2つの近接した物体をどこまで分解して見えるかをあらわす者であ
る。レンジ分解能は、送信帯域幅 および地上入射角から決まる。アジマス分解
能は、ルック数、波長、合成開口角度から決まる。
3)信号対アンビギュイティ比
SAR はパルスレーダであるから、観測地点以外の場所の画像が写り込むアン
ビギュイティが存在する。アンビギュイティには、レンジ方向にパルス繰り返
しにより発生するレンジアンビギュイティ(Range ambiguity)とアジマス方向
にパルス繰り返し周波数の折り返しにより発生するアジマスアンビギュイティ
(Azimuth ambiguity)がある。
4)雑音等価散乱係数
SAR の感度を表す係数で、受信系の雑音と同じレベルになる観測対象の単位
面積当たりの散乱係数である。この値が小さいほど SAR の感度がいいというこ
とを表す。
(3)SAR と光学センサの比較
1)SAR が優れている点
・能動形(自ら電波を発射し反射波を受信)
・位相と偏波の利用がしやすい
(ポラリメトリ、インタフェロメトリ、移動体検出等の実現)
・昼夜・天候に拘わらず使用可能、雲も透過して地上を観測できる。
・透過性が高い。周波数が低いほど、植生、乾燥土、乾いた雪へも透過する。
2)SAR が劣っている点
・視認性が劣る。補正なしには人間の目で見たままには画像化されない。
・斜め照射のため「フォアショートニング」
、「レイオーバ」、「シャドウ」効果
がある。
3.2 SAR 技術動向調査
衛星搭載および航空機搭載 SAR について、学会誌、国際会議録、ウェブサイ
ト等を調査し、高分解能化、高機能化(インタフェロメトリ、フルポラリメト
リ等)、低コスト化・小型軽量化、画像歪補正、データフュージョン等に関する
高品質 SAR 画像を実現するための技術動向を明確にした。
SAR データの応用拡大には観測頻度の向上が極めて重要であることがインタ
ビュー、文献調査等で明らかになった。そのため複数衛星システム構成(コン
ステレーション)及びその実現のための衛星および SAR 機器の小型軽量化等の
調査を行った。観測周期としては5機の衛星により 20 時間以内に世界中どこで
もアクセスできる計画があり、衛星の質量は約1トン以下のものが7件計画さ
れていることが分かった。
7
3.2.1 高分解能化技術
分解能には、SAR の進行方向と同じ方向のアジマス分解能と、直交する方向
のレンジ分解能がある。高分解能化技術として、レンジ分解能向上には、チャ
ープ信号帯域幅の拡大がある。これは周波数を現在まで多く使われてきた L、C
バンドから X、Ku バンドへと高周波化することになる。またアジマス分解能向
上にはスポットライトモードがある。コスト低減、高周波化したときの構成の
し易さ等の理由により、フェイズドアレイアンテナを使用する方法からパラボ
ラアンテナ等の開口面アンテナと高精度衛星姿勢制御を組合せた方法へと移っ
ていくと考えられる。
3.2.2 高機能化技術
高度情報、高度変化情報の取得、偏波情報を利用した対象物の区別、偏波情
報を利用した対象物の構造等のデータ取得、変化の抽出、揺れているもの、移
動しているものの鮮明な画像取得、移動体検出、多周波化の技術動向を述べる。
(1)高度情報、高度変化情報の取得
高度情報を取得するクロストラック・インタフェロメトリ SAR(InSAR:
Interferometry SAR)は、同一地域の2つのまたはそれ以上の複素画像を干渉
させて生成される干渉縞から、地表高度や地殻変動による高度変化を計測する
技術であり、3次元地図や地表の変位を計測する手法として注目されている技
術である。
時間を隔てた観測データを干渉させる「リピートパス方式」と、アンテナを
離して2組搭載して1回のパスで観測データを干渉させる「シングルパス方式」
がある。リピートパス方式では干渉性(コヒーレンシ)に対して地表の経時変化
が強く影響し、時間とともに干渉性が低下する。また周波数が高くなると共に
低下する。しかし、植生に覆われた地表面においても比較的低い周波数である
L バンドでは干渉性が高いことが多くの事例で実証されている。
ディファレンシャル・インタフェロメトリ SAR(DInSAR:Differetial InSAR)
は、地殻変動による地表高度の時間的変化や氷河の流れなどを計測する技術で
ある。ディファレンシャル・インタフェロメトリ SAR で得られた干渉縞の1サ
イクルは、電波の波長の半分の長さにあたる距離方向の高度変化に相当する。
1993 年 7 月 12 日に発生した北海道南西沖地震に伴う奥尻島の地殻変動を示す
JERS‑1 ディファレンシャル・インタフェロメトリ SAR で生成された例がある。
ディファレンシャル・インタフェロメトリ SAR の計測精度を大きく向上させ
る方法に「パーマネントスキャッタラ(以下 PS と略す)」技術がある。PS とは、
レーダ波に対して安定した反射特性を示す物体をいう。ビルディング、パイプ
8
ライン、アンテナ、ポール、むき出しの岩、設置したコーナリフレクタなどで
ある。短い周期で長期間にわたって観測したデータを用いて、PS からの反射位
相の変化を計測し、一定の変化を続けるか、あるいは季節、年度ごとに周期的
に変化するかなどの動きを予測することにより、大気の水蒸気量、あるいは電
離層における(地球磁界の影響による)偏波のファラデー回転などによる不確定
な位相遅延量の影響を補正する。
(2)目標認識(対象物の区別)
偏波の有効利用については、欧州を中心に世界中で航空機搭載 SAR で取得し
た画像をもとに研究が盛んに進められるようになってきた。また 2002 年に打ち
上げられた ENVISAT/ASAR が HH+VV、HH+HV、VV+VH の2偏波運用を行っており、
2005 年から 2006 年にかけては、ALOS/PALSAR、Radarsat‑2 などの多偏波、全偏
波観測機能をもった衛星が打ち上げられる予定で、これらの画像が取得される
ようになれば、さらに有効利用についての研究も進み、いくつかの利用分野で
実用化されるようになると考えられる。
(3)目標認識(対象物の構造等のデータ取得)
ポラリメトリック・インタフェロメトリ SAR(POLinSAR:Polarimetric
Interferometry SAR)は、ポラリメトリ SAR とインタフェロメトリ SAR を組み
合わせたもので、スラントレンジ方向の散乱点の分布が分解能より小さくても、
偏波に対する反射メカニズムの差を利用して高さ方向の散乱点を細かく計測で
きるものである。
この特徴を活かして、現在、世界中で応用研究が行われており、2005 年1月
にもイタリアで POLinSAR2005 世界会議(ヨーロッパが中心の会議)があり、
森林管理、農業管理、市街化地域の分類、災害監視、海面状況計測、氷・雪の
モニタへの応用が期待されている。
(4)目標認識(変化の抽出)
光学センサでは決して見ることのできない変化の抽出を SAR で行う方法に
CCD(Coherent Change Detection)がある。同じエリアを時間を変えて2回見た
ときに各画素に対応した電波の伝送パスでの位相の変化を検出するものである。
実施例としては Sandia National Laboratories で高分解能の Linx SAR を使っ
て計測されたものがある。
(5)揺れているもの、移動しているものの鮮明な画像
移動しているものの鮮明な画像を取得する SAR でしかできない方法として
9
ISAR がある。ISAR は、「逆合成開口レーダ(Inverse SAR)」のことで、観測対
象物の動きだけを利用してアジマス方向に開口を合成し、画像を生成する技術
である。SAR では、対象となる散乱体は静止していると仮定して圧縮処理を行
うため、動いている散乱体の鮮明な画像は得られない。ISAR では、船舶や車両
などの未知の動きをしている対象物からの受信信号の位相変化をプラットフォ
ームの動揺として「オートフォーカス処理」を行い、動的散乱体の鮮明な画像
を生成する。
(6)移動体検出
移動体を検出する方法としてアロングトラック・インタフェロメトリ(アロン
グトラック InSAR、ATI ともいう)がある。これはプラットフォーム進行方向(ア
ジマス方向)と直交するクロストラックのグランドレンジ方向の移動体の速度
を計測するために使用する。SAR の地表面と移動体からのレーダパルス反射波
におけるドプラ周波数差を計測して移動目標と固定目標を区別する。JPL
AIRSAR の L バンドで観測した例でイタリアのメッシナ海峡での海流の動きを計
測した例がある。
(7)多周波化
多周波の SAR センサを搭載した実績は、E‑SAR などの航空機 SAR、スペースシ
ャトル搭載の SRTM などがあるが、衛星搭載では計画段階も含めて現在までない。
しかし各周波数バンドで取得する画像に特徴を持っている。これらの周波数で
の特徴を活かし、同じ地域を2つの周波数の画像データをほぼ同時に取得する
SAR が、今後、衛星及び SAR の小型化に伴い実現されてくる可能性がある。形
態としては、
(a)L バンド SAR 衛星と Ku バンド SAR 衛星の運用、
(b)1つの
衛星に L バンド/Ku バンド SAR を混載運用が考えられる。
(a)は、後述する衛星のコンステレーション運用が考えられ、観測頻度の
向上、2機にリスクを分散することによる信頼性向上が期待される。実現の可
能性が高く、既に複数衛星によるコンステレーション運用は世界的にみれば計
画段階にある。(b)は、L バンド/Ku バンド SAR の混載により単純には容積、
重量、消費電力が2つの SAR の合計となるデメリットが大きく構成品の共用化、
コンポーネントの小型化等の実現のための課題も多い。
3.2.3 画像歪補正技術
近年の SAR の分解能が向上し、数 10 センチオーダーの分解能で画像が得ら
れるようになったことから、SAR 画像をもとにした人工構造物の復元に関する
研究が行われるようになっている。しかしながら、地面に垂直な人工構造物に
10
おいては、レイオーバを避けることはできないため、複雑な形状の復元は困難
であり、簡単な形状であることを仮定したうえで復元を実施している。画像歪
補正技術を調査した結果、以下の実施例があった。
・高分解能 SAR 画像から人工物の再現
・高分解能 SAR 画像を元にしたビル抽出の可能性
・インタフェロメトリによる都市の3次元描写
・航空機 SAR 画像のステレオ視による直方体ビルの抽出
・インタフェロメトリ SAR データからのビルの抽出の可能性と限界
3.2.4 データフュージョン
実利用の観点から、図 3.2‑1 に示されているように、
異なるプラットフォーム、
異なるセンサ、異なる解像度、異なる計測日、異なる空間情報のデータを組み
合わせてモデル化し、地物抽出、変化抽出、地表分類等が可能であることを示
した。
SAR、光学センサ等の
様々なデータ
・反射強度
・偏波データ
・反射スペクトル
・放射温度
・GPSデータ
・地図等種々のGISデータ 等
図 3.2‑1
モデル化,データフュージョン
・地物抽出/分類
・地表分類
・変化情報抽出
・地物構造/標高 等
種々のデータのモデル化/データフュージョンによる情報抽出
商用化の観点からは、多様なリソースを駆使し、1つのセンサにこだわるの
ではなく、地表面情報を迅速・的確に把握・伝達する仕組みを世界規模で作り
出すことが重要である。データフュージョンの一例を画像で示す。SAR データ
と光学画像をフュージョンした地盤沈下評価結果の例でニュージーランドのタ
ウポ湖付近のワイラケイ地熱地帯とタウハラ地熱地帯における地盤沈下モニタ
について、ERS‑2 によるデータを用いてディファレンシャルインタフェロメト
リ処理を行った結果を LANDSAT7/ETM+の RGB カラー画像にフュージョンしたも
のを図 3.2‑2 に示す。
11
図 3.2‑2
ERS‑2 データによる地盤沈下評価結果を LANDSAT7/ETM+画像にフュー
ジョンした画像
(出典:http://www.gmat.unsw.edu.au/currentstudents/ssds/pdfs/chang05‑06‑23.pdf)
3.2.5 観測周期の短縮
計画されている周回衛星によるコンステレーションのいくつかを紹介する[
表 3.2‑1]。この中で代表的な例として SAR‑Lupe を紹介する。
SAR−Lupe はドイツにとってはじめての軍事偵察衛星である。同一仕様の小
型衛星5機からなるコンステレーションで、観測周期を短くすることに加え、
コマンドから画像取得までの時間短縮も目標としている。軌道面が3つあり、
衛星は第1軌道面に2機、第2軌道面に1機。第3軌道面に2機配置され[図
3.2‑3]、全地球面を隈なく観測できる。に時間経過とともに拡大する、観測で
きる範囲を示す。分解能は1m、周波数は X バンド。
12
50 分後
20 時間後
5時間後
図 3.2‑3
SAR‑Lupe の軌道とカバー範囲
(出典:http://europa.eu.int/comm/space/doc̲pdf/merkle.pdf)
13
表 3.2‑1
コンステレーション
SAR-Lupe
コンステレーションの例
国 打上げ年 周波数最高分解能衛星質量 機数
最大観測頻度
m
kg
独 2006〜
X
1
770 5 20Hで100%
2008
目的
その他
偵察
環境保全、資源開発、災害管理
地理データなどにも使用 等
1700 4 右視24Hで100%
防衛安全(監視、情報、地図)
フランス光学衛星
左右視12Hで100% 危機管理(洪水、旱魃、地すべり)と共同
その他(環境、農林、地図)
1100 3 カナダ領内を1日1回 海上監視(船舶、油、海氷)
4日間隔画像で
又は
地表面変化と環境
InSAR
6
災害管理(洪水、ハリケーン)
?
2 ヨーロッパ海水域は
都市開発と環境影響マッピング センチネルシリーズ
1日1回
地表面変動リスクモニター
は、5種類の
ヨーロッパの海上監視 等
衛星からなる
690
4 12H毎
環境と災害モニタ
光学衛星4機と
共同
COSMO-SkyMed 伊 2006〜
2008
X
1
RADARSAT-C
C
5
ESA 2010〜
C
4*5
EDMC
中 2006〜
(環境災害モニタ)
S
20
Surveyor
中 2007〜
2009
C
10
?
5
2機で14日以内に全
地球をカバー
食料収穫に影響する、洪水など 純粋商業
の効果を計測する
TanDEM-X
独 2006〜
X
1
1023
2
4.5日で100%
DEM(位置精度2m、高度精度2mTerraSARに
を作成するのが目的
1機追加して
観測頻度向上は目的ではない 合計2機
Sentinel-1
加 2011〜
2013
14
3.2.6 低コスト化・小型化技術
前項で述べたとおり SAR を実用として運用に供するためには、今後は複数衛
星によるコンステレーションが必須となる。複数衛星でシステムを組むために
は衛星を低コストで製作する必要がある。大型で低コストという解があるかも
しれないが、質量、容積を小さくして、打ち上げ能力の低い従ってコストの低
いロケットによる打ち上げをし、衛星自身も電力消費をおさえた小型化によっ
て低コストを達成することが一般である。
また、コンステレーションのほかに、もうひとつの傾向として,SAR 観測分野
専門化の方向がある。この場合、機能を絞って小型化する。
(1)小型化衛星システム
質量 500kg 以下を小型衛星といい、500〜1000kg を中型衛星、1000kg 以上を
大型という定義がある。ここではほぼ 1000kg 以下の SAR 衛星を選び、その軽量
化のポイントを調べた。衛星のリストを表 3.2‑2 に示す。
表 3.2‑2
衛星
衛星質量
国
小型 SAR 衛星
発生電力
最高
軌道高度
回帰日数
周波数
(SAR 質量) (消費電力)
km
打上げ年
SAR‑Lupe
独
kg
770
モード
分解能
日
(注)
W
m
550
500
11
X
1
SM,SL
600
12
C
5
SS,SM
L
3
(250)
2006
加
RADARSAT‑C
1100
2011
MAPSAT
ブラジル
(270)
TECSAT
EDMC
620
37
SM
(750)
2008
イスラエル
300
2006
(100)
中国
690
2006
(220)
ESA
860
750
550
X
very high
SS,SM,SL
(1600)
967
500
Snowsat
36
4
S
20
SM
Ku
50
SS,SM
S
3
SL
(BOL)
648
18
(490)
(130)
High reso
ロシア
250
(850)
SAR
(注)モードは
650
(100)
SM:Strip Map,
SL:Spot Light,
SS:Scan Sar
この中で代表的な例として SAR‑Lupe を紹介する。SAR‑Lupe は小型化するため
15
次のような考慮をしている。
・アンテナはフェイズドアレイを使わず、固定パラボラである。スポットライ
トモードの場合、アンテナを含む衛星全体を回転することにより、同一地点の
照射時間を長くする。アンテナは観測とデータ伝送に共用する。データ伝送時
はアンテナを地上局の方向に向けるので、リアルタイム観測はできずデータは
一旦必ずデータレコーダに格納する。アンテナは軽量のものを開発した。衛星
で展開部分は一次放射器の引き起こしのみであるが、これは信頼性の向上にも
貢献している。
・太陽電池パネルの発電能力を最大に発揮するには、パネルを回転させて、常
にパネル面に直角に太陽光線が当たるようにするが、SAR‑Lupe ではパネルは回
転させず固定である。発電能力は下がるが、それで機能できるような低電力設
計としている
・衛星制御のためのコマンドはすべて地上局から伝送する。これにより搭載装
置に対する負荷を軽減している。
・5機の衛星はすべて同一仕様である。これらは低コストとともに信頼性に貢
献する。
3.3 画像歪補正手法の検討
SAR 画像再生時にフォアショートニング、レイオーバなど SAR 画像特有の歪が
生ずるが、それら歪の原因を整理し、観測条件(俯角、観測方向、スクイント
角等)をパラメータとして船のフェリーをモデルとしてシミュレーションを行
い、SAR シミュレーション画像を作成した。観測条件に対する歪の出方、大きさ
を確認した。図 3.3‑1 にシミュレーション画像の一例を示す。
16
Case1, 5
30度
Case2
Case4
•
ピクセルスペーシング
(グランド)=50cm
図 3.3‑1
Case3
シミュレーション画像例
文献等により歪補正手法を調査し、フォアショートニング補正、ステレオ視の
フローに従って歪が見られる船のシミュレーション画像について画像歪補正処
理を行った。図 3.3‑2 にシミュレーション画像についての画像歪補正処理結果
を示す。
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反対側から見た像の復元
- 向きは反転
光学画像の倒れこみを模擬して
歪補正画像を作成
レイオーバーの欠損については、
周辺のテクスチャで穴埋め
反対側面
前方
甲板面
前方デッキ
入射方位 方位角 80度
図 3.3‑2
シミュレーション画像についての画像歪補正処理結果
SAR で観測したビルの実画像について歪補正を行い、人間の視覚で理解しやすい
画像になることを確認した。図 3.3‑3 に実画像についての画像歪補正処理結果
を示す。
屋上から外にでるスロープ
隣接する集合住宅
シャドー
フォアショートニング
欠損部に周辺のテクスチャを
貼り付ける。
図 3.3‑3
実画像についての画像歪補正処理結果
18
しかし補正を実施する場合、立方体に近い単純な形状の対象物であっても、
レイオーバ等で情報が重なりあった部分について歪の方向、大きさ、反射波形
等からどこの部分の画像か人間の判断で分離しながら情報を書き込んだり削除
したりする必要があることが分かった。
3.4 SAR 応用・ニーズ調査
文献、ウェブサイト等により応用事例調査を実施した。さらに、その応用分
野の大分類の中から商用化に有望な分野として、防災、環境、建設、地図・地
理を選定した。
上記4分野を中心に、商用化の具体的ニーズを発掘すべく、直接ユーザへの
インタビューを実施した。インタビューには国の機関(1件)、国の研究所(2
件)、航測会社(1件)、建設コンサルタント(1件)、データ販売(1件)、PPP
(Public Private Partnerships)でできた会社(1件)に伺い、その分野の状
況、SAR の利用の可能性等を聴取した。
ビジネスモデルを展開中の RADARSAT(C バンド)
、TerraSAR−X(X バンド)の
各プロジェクトについて調査を行った。RADARSAT のケースは カナダの MDA/GSS
社が地球観測データと情報プロダクツ、商用のレーダと光学センサデータのサ
ービスを提供しており、カナダの衛星 RADARSAT‑1(運用中)と RADARSAT‑2(最
初の商用 SAR、2006 年打上げ予定) の独占的データ販売権を有し、RADARSAT‑2
の運用を行う。TerraSAR‑X のケースは、DLR(ドイツ航空宇宙研究所)と EADS
Astrium 社による初の PPP(Public Private Partnership)で初期コスト 130 百万
ユーロのうち、DLR が 102 百万ユーロ、EADS Astrium 社が 28 百万ユーロをそれ
ぞれ負担。 EADS Astrium 社は上記コストのほか、地球観測装置の開発および
商品化にかかる費用を拠出。DLR は学術的な利用、EADS Astrium 社の 100%子
会社である Infoterra 社が商業目的で独占的な利用。全世界に密度の高いデー
タ配布網を構築している。
航空機 SAR 事業を展開中の Intermap 社の SAR の応用例を調査した。Intermap
社は 1996 年に、USA DOD DARPA の予算により ERIM と JPL が開発した航空機イン
タフェロメトリック SAR( IFSAR 、X バンド、Learjet36 に搭載)を譲り受け
設立。主要な事業は航空機搭載シングルパス・インタフェロメトリック SAR に
よるデータ取得。それを基に高精度 DSM、DEM、オルソ幾何補正地図(ORI)の作
成・販売、洪水原マッピング、3次元視覚化、地表・流域解析、農業、森林の
精密な管理、安全に関わる国防等へ応用。これまで 85 カ国以上で撮像プロジェ
クトを実施。地図事業として「新ビジネスモデル」を作成。個別の契約サービ
スビジネスを展開する一方、 NEXTMap@ という国レベルの迅速な地理データ
収集を通して、価値の高い地形データセットを提供する事業へと方針転換。2001
19
年末、市場要求である「より高分解能・より高精度・より低コストな標高プロダ
クツ」を実現すべく多大な投資によるアップグレード化。センサ技術と処理ツー
ルに改良を重ね、データの高品質化や高精度化を実現し、低コストで高性能な
プロダクツの提供を実現。新プラットフォーム「STAR‑4」、
「TopoSAR(P バンド、
ただし X バンドも可能)」導入。3機体制で実施している。
「インタビュー等による商用化ニーズ調査」、
「SAR ビジネスモデル調査」、お
よび「文献等による商用化ニーズ調査」の結果から、商用化が期待される分野
は、安全保障や危機管理(自然災害を除く)を除き、主なものは、やはり防災、
環境、建設、地図・地理関係であると言える。そのうち、とくに、防災は、わ
が国の地理的、気象的特殊性から、大規模な自然災害に対する「備え」はきわ
めて重要であり、防災・減災対策のための観測ツールとしての SAR の役割は大
きいと言える。
ところで、防災は相手が自然であり、またそのための観測は個人の利益や便
利さなどに直接結び付きにくいため、個人として観測データを購入することは
殆どあり得ず、従来の形のビジネスとしては成り立たないのは当然である。し
かし、一たび災害が発生した場合、その人的、経済的損失は計り知れずまた復
興までにかかるコストも膨大なものとなるため、防災・減災への備えは経済的
にプラスになることは明白であり、
「転ばぬ先の杖」のための投資と実践が大切
であると考える。
また、防災・減災対策は建設、環境、地図・地理などと密接に関連するため、
全国家的に取り組むべきであり、そのためのセンサの開発は国が責任を持ち、
各省庁や地方自治体などが最大のユーザとなりデータを購入すべきであると考
える。
これまでの調査結果から、分野によってもちろん比重は異なるが、商用化の
観点から SAR の性能・機能として、現時点では「高分解能化」と、実用化の域
にある「インタフェロメトリ」に対する期待が高く、また、SAR データを有効に
活用するためには、
「平常時からの観測とデータの蓄積」、
「確実に欲しい時に欲
しいところが撮れること」、「高い観測頻度」、「データの継続性」、「データフュ
ージョン」、「ユーザに分かる形での情報の提供」、「低コスト化」などが求めら
れている。
「衛星 SAR と航空機 SAR の連携」も含め、これらをクリヤーするため
の仕組みや体制ができれば、現時点で、防災、環境、建設、地図・地理分野で
のビジネスが最も期待できると考えられる。
また、これまで商用化の観点から、SAR の大きな利用分野である農林業、海洋、
エネルギー・資源探査などについては触れなかったが将来的にその可能性は充
分あり、これからもフォローして行く必要がある。
新規応用例として、必ずしも商用化のレベルではないが、すでに述べた防災、
20
環境、建設、地図・地理、情報産業分野での具体的な応用例を列記する。
・ 洪水の起きやすい平野のマッピングやモデリング
・ 地形起伏マッピング
・ 水理モデリング
・ 地盤沈下の観測
・ 地滑りの観測
・ 森林バイオマスの計測
・ 都市景観のための3次元画像
・ 産業廃棄物の不法投棄の発見・監視
・ ダムの変形のモニタリング
・ 公共測量への応用
・ 地図作成と更新への支援
・ トンネル工事での地盤変化モニタリング
・ 環境管理と通信網プランニング
・ 公共インフラの整備計画支援とセキュリティ
・ 自動車や航空機のナビゲーション
・ 航空操縦シミュレーションと3次元可視化
・インターネット応用として:バーチャルツアー、コンピュータゲーム等
3.5 商用化のための開発課題抽出、対応策
商用化に必要な次世代 SAR 衛星について機能・性能・運用形態について検討
を行い、技術開発課題、技術とコストの対応策を検討した。今回の調査結果か
ら、観測頻度の向上、データの継続性、観測データの高精度化(複数周波観測、
高分解能化)が特に重要であることが分かった。これを受けてシステム構想は、
単機能の SAR 衛星を複数機運用させ、データの継続性からその中に JERS‑1、
ALOS/PALSAR で使用してきた L バンドの SAR 衛星と高分解能等の画像の高品質化
が図れる X 又は Ku バンドの SAR 衛星から構成されるシステム案を考えた。
4.調査研究の今後の課題と展開
本年には、わが国の PALSAR(L バンド)をはじめ、ドイツの TerraSAR‑X(X
バンド) 、カナダの RADARSAT‑2(C バンド)の打上げにより L、C、X バンド
の合成開口レーダ(SAR)のデータが出揃うことになり、科学的利用だけでなく
SAR によるリモートセンシングの本格的な商用化が期待されるようになった。
平成 18 年度は、わが国および世界における商用化への取り組み、高品質画像
取得手法の調査、国内・海外の関連機関への訪問、論文誌などを通じ関連情報
収集を平成 17 年度に引き続き実施する。 また、高分解能化等の有効性を検証
21
するため、航空機搭載 SAR で、光学センサ等では不可能なインタフェロメトリ
ック画像用データの取得、人工構造物等のより正確な認識のための矩形ループ
飛行観測データの取得等を行う。
平成 17 年度、18 年度の本調査研究の成果と、別途 18 年度に実施予定の航空
機 SAR 概念検討の成果をもとに次期の衛星搭載 SAR の開発に結びつけていきた
いと考えている。この開発には、19 年度から実施したいと考えている航空機 SAR
開発の成果も盛り込んで行く予定である。
22
−禁 無 断 転 載 −
システム技術開発調査研究
17−R−6
合成開口レーダによるリモートセンシングの商用化に関する調査研究
(要旨)
平成18年3月
作成
財団法人
機械システム振興協会
東 京 都 港 区 三 田 一 丁 目 4 番 28 号
TEL
委託先
財団法人
03‑3454‑1311
資源探査用観測システム研究開発機構
東 京 都 中 央 区 八 丁 堀 二 丁 目 20 番 1 号
TEL
03‑5543‑1061