冬季における成層圏 QBO の対流圏への影響

2007 年度修士論文
冬季における成層圏 QBO の対流圏への影響
北海道大学大学院 環境科学院
環境起学専攻 先駆コース
高橋 舞子
2
目次
第1章 はじめに
1.1 成層圏 QBO・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.2 QBO に伴う変動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1.3 様々な要因の影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
1.4 本研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第2章 解析方法とデータ
2.1 解析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
2.2 使用したデータ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
第3章 結果と考察
3.1 年平均場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
3.2 年変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
3.3 月平均場 -1 月-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
3.4 月平均場 -11 月- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
第4章 まとめ
4.1 結果のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63
4.2 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
4.3 今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
3
平成19年度 環境科学院 修士論文内容の要旨
冬季における成層圏QBOの対流圏への影響
北海道大学大学院 環境科学院
環境起学専攻 先駆コース
高橋 舞子
気候システムは、様々な要因が複雑に相互作用しあって作られている。その中でも特に、我々にとって
身近である対流圏におけるシステムが、どのような現象によって影響を受けているかを理解することは、
気候学的、環境学的、社会学的において、とても重要である。影響が示唆される要因の一つに、成層圏準 2
年周期振動(Quasi biennial oscillation; 以下 QBO)がある。これは、赤道上空の成層圏下部(約 16~30km)にお
いて見られる東西風振動であり、約 26 ヶ月周期で東風と西風が交互に下降する現象である。過去の研究で
は、北半球冬季において、50hPa で定義した QBO が東風時には西風時に比べ、中高緯度で地上気温が低下
するような偏差が生じることが挙げられている(Thompson et al., 2002)。これは北半球環状モード(Northern
Hemisphere annular mode; 以下 NAM)に関連した変動であり(Baldwin and Dunkerton, 2001)、これと QBO が東
風時に極渦が弱まる(Holton and Tan, 1980)ことと結びついて、気温偏差が生じていると考えられている。
しかし、これは北半球冬季における偏差であり、各月の変動は示していない。また、その他の要因 (ト
レンド、太陽活動、ENSO、火山活動など)の効果を含んでいる可能性が考えられる。そこで本研究では、
他の効果を考慮した上での北半球冬季、および各月の QBO の影響を、統計的手法を用いて探り、力学的な
プロセスを考察する。
解析方法として、線形重回帰式を用いた。影響が予想される上記の要因を説明変数として与え、地上気
温をはじめとする様々な目的変数に対し、月ごとに回帰係数を求めた。その際、QBOは位相がほぼ90度ず
れている50hPaと20hPa東西風(以下それぞれU50、U20)の2つで定義し、太陽活動はsolar 10.7-cm radio flux、
ENSOはNino3.4海域海面水温、火山活動は成層圏エアロゾル光学的厚さを説明変数として用いた。気象デ
ータは1957年9月~2002年8月(45年間)のECMWF再解析データを使用した。
1月について地上気温のU50回帰係数を調べたところ、先行研究の結果との整合性が認められた。しかし、
QBOに伴い対流圏でNAMに類似したパターンが見られる一方で、東西に非一様な大気場が作られている可
能性が示唆された。また、U50およびU20回帰係数のシグナルは、比較的似た分布を示した。
対流圏に着目して各月のシグナルを調べた結果、11月の東西平均場において、30~50N付近で気温のU20
回帰係数が正、つまり、U20が西風のときに高温となっていた。波活動と東西風の関係に注目すると、平均
場では上方~赤道方向に伝播している波が伝わりにくくなり、上記の緯度帯の対流圏上層で波が平均流を
減速させ、これによって子午面循環が変化して下降流が生じたため、気温偏差が現れた可能性が考えられ
る。このようなプロセスは、QBOに伴い対流圏赤道域に現われた東風の影響に関連していることが示唆さ
れた。また、水平分布に注目すると、日本付近に地上気温の同回帰係数において有意な高温域が現れた。
回帰係数の大きな一点(37.5N、132.5E)で観測値と予測値を比較してみると、両者の時系列の相関係数は0.696
と高く(有意水準99%で有意)、よい対応が認められた。また、地上気温と相関の高い300hPaジオポテンシャ
ルハイトを見ると、高温域は平均場のトラフに位置しており、U20回帰係数はこれらを弱めるようなシグナ
ルを示していた。同様に調査したU50回帰係数の結果は、1月と比較的類似したシグナルを示していた。
以上のことから、11月のU20回帰係数は、1月とは異なったQBOの変動に伴うパターン、プロセスによっ
て、日本をはじめとする北半球対流圏中高緯度への影響が生じている可能性が示唆された。
4
第1章
はじめに
我々にとって身近である対流圏の気候・気象は、様々な要因によって影響を受けてい
る。例えば、近年の地球温暖化によって世界の平均地上気温は、過去 100 年間(1906~
2005 年)で約 0.74 度上昇したことが IPCC 第 4 次報告書によって示されている。また、
太平洋赤道域中部、東部での海面水温が平年より高い状態が続くエルニーニョ現象が発
生した影響により、1998 年は世界各地で高温や熱波が観測され、健康被害をもたらし
た。火山噴火が起こると、対流圏で低温になる傾向があり、事実 1991 年のフィリピン・
ピナツボ火山の大噴火により、
続く 2 年間は全球平均地上気温が 0.3K 低かった[Labitzke,
1994]。これらの現象は、我々の社会、経済への影響が懸念されるだけでなく、地球環
境へも影響を与えることが予想される。そういった観点から、これらの関係性を理解す
る必要があると考えられる。特に近年、中長期予報の観点からも、その重要性は増して
きていると感じられる。
こうした影響が示唆される要因の 1 つに、成層圏準 2 年周期振動 (quasi-biennial
oscillation; QBO)と呼ばれる、赤道成層圏上空の東西風振動がある。QBO は赤道成層圏
の現象であるにもかかわらず、時期や場所は限られるが、対流圏の中高緯度とも関係性
があることが知られている。例えば Thompson et al.[2002]は北半球冬季において、50hPa
で定義した QBO が東風時には西風時に比べ、中高緯度で地上気温が低下するような偏
差が生じることを示した。QBO はどういった現象か、成層圏や対流圏に対してどのよ
うに影響を及ぼすかについて、以下に示していく。また、文頭で挙げたような影響が考
えられる QBO 以外の要因についても以下で紹介する。
1.1 成層圏 QBO(準 2 年周期振動)
成層圏 QBO とは、赤道上空、高度約 16~30km の成層圏下部において見られる、準 2
年の東西風振動のことである。QBO はほぼ東西に一様であり、周期は約 26 ヶ月である。
1
QBO が実際どのような構造をしているかを示したのが図 1.1 である。図から分かるよ
うに、時系列で見ると風の位相が上層から下層へと下降しており、約 1 年で東風と西風
が交代するような現象であることが分かる。このような構造は、対流圏から鉛直伝播す
る波による東西風加速が原因であると考えられている。以前は、QBO の西風加速には
東向きに伝播する長周期(10~20 日)ケルビン波が寄与し、東風加速には西向きに伝播す
る 4~5 日周期の混合ロスビー重力波が原因であると考えられていたが[Holton and
Lindzen, 1972]、これらに時間、空間スケールの小さい波である重力波が合わさって出来
るということが示唆され、更に近年では、小さなスケールの重力波が主要な起源となっ
ている可能性が高いことが、観測やモデル研究の発展により提唱されている[Sato and
Dunkerton, 1997; Kawatani et al., 2005]。
1.2 QBO に伴う変動
過去の研究によって示唆されている、QBO に伴った成層圏、対流圏の変動や、その
プロセスについて挙げていく。
QBO に伴った変動を示唆した先駆的な研究は、Holton and Tan[1980; 1982]である。彼
らは、16 年間のデータにより、50hPa 成層圏 QBO が東風フェーズであったとき、北半
球冬季極夜ジェットが弱まることを示した。また、QBO が西風フェーズのときから東
風フェーズのときを引いたコンポジットでは、高緯度に西風、中緯度に東風の偏差が現
れることを挙げた(Holton and Tan oscillation; HTO)。
更に、北半球冬季成層圏における大きな変動である、成層圏突然昇温(stratospheric
sudden warming; SSW) に影響を与えることについても注目された。SSW は、冬季の高
緯 度 地 域 で 成 層 圏 の 気 温 が 数 日 の う ち に 40 度 以 上 上 昇 す る 現 象 で あ る が 、
Labitzke[1982]では、50hPa 成層圏 QBO が東風フェーズのときは、西風フェーズに比べ
てこの現象が生じやすいことを示し、上記の Holton and Tan の結果とも温度風の関係を
通して一貫性が確認された。
このような中高緯度の偏差を生じさせる力学的メカニズムをについて、Dunkerton and
Baldwin[1991]や Baldwin and Dunkerton[1991]は、NMC(National Meteorological Center)デ
ータによりプラネタリー波の伝わり方が東西風によって調節されることを通して示し
た。
また、Labitzke and van Loon[1988]や Kodera[1991]は、HTO と 11 年の太陽活動周期と
の関係性を述べた。ここで Labitzke and van Loon[1988]は、30hPa の北半球極域の気温が
2
QBO 西風(東風)フェーズ時に太陽黒点数と正(負)相関であることを示した。また、ENSO
がウォームイベント時に極渦が弱まりやすいという事実を通し、QBO と ENSO が示す
シ グ ナ ル が 類 似 し て い る こ と が Wallace and Chang[1982] に よ り 議 論 さ れ た が 、
Hamilton[1993]によるとその効果は QBO が示すものより小さなものであり、統計的にも
有意ではないことが述べられた。
成層圏での影響だけではなく近年では、観測された成層圏と対流圏の変動モードの関
係性について調べられている。Baldwin and O’Sullivan[1994]は主成分分析を用い、
Pacific/North American(PNA) 、 Western Pacific Oscillation(WPO) 、 Tropical/Northern
Hemisphere(TNH)パターンについて関係性を調査したところ、50hPa で波数 1 と 2 の成
分が変動したが極渦への影響は見られなかった。しかし、対流圏の循環に影響を与える
成層圏の循環については Haynes et al.[1991]らが議論しており、大規模な運動量強制は、
下方へ運動量輸送を行う間接的な平均子午面循環を引き起こすことが述べられた。これ
は、対流圏からのプラネタリー波の上方伝播を遮断し、成層圏から対流圏へと間接的な
影響を与えることを可能にする。また、Hartmann et al.[2000]でも議論されたように、成
層圏中高緯度域が大きな西風(東風)偏差場であったとき、対流圏上層~成層圏下層で波
が赤道方向へ伝播しやすくなる(しにくくなる)傾向にあることが述べられた。更に
Baldwin and Dunkerton[1999; 2001]は、統計的に有意な東西風偏差の下方伝播が中高緯度
において生じることや、成層圏極渦の強まりによって生じた対流圏の偏差が約 60 日間
存在する傾向を示した。また、北半球冬季の成層圏極渦が強まった(弱まった) 1~2 週
間後、対流圏で同様の兆候が現れることが述べられた[Baldwin and Dunkerton, 1999]。こ
のような成層圏の兆候は、成層圏の北半球環状モード(Northern Hemisphere annular mode;
NAM)として知られ、
~55N と 35N の東西流の強さのシーソーによって特徴付けられる、
プラネタリースケールの気候変動パターンを示す[Baldwin and Dunkerton, 1999](図 1.2)。
NAM は QBO と関係性を持っており、QBO が東風(西風)フェーズのとき成層圏極渦が
弱まる(強まる)ため、NAM インデックスが負(正)となる。
また、成層圏の NAM は対流圏の北極振動(Arctic Oscillation; AO)や対流圏 NAM とし
て知られている高緯度と中緯度の海面気圧(SLP)のパターン[Thompson and Wallace,
1998; 2000]を、成層圏に拡張させたものである。対流圏の NAM インデックスが正のと
きは極付近の海面気圧(SLP)が低くなり、~55N が大規模な西風場となる。
成層圏の下部まで成層圏 NAM が見られるとき、対流圏へ伝播することがしばしばあ
り、対流圏の NAM が形成される[Baldwin and Dunkerton, 1999]。Thompson et al. [2002]
はこのことに注目し、QBO も地上気温や寒冷日を予測する要因となりうることを示し
3
た。
これらのことから成層圏 QBO は成層圏のみならず対流圏においても影響が示唆され
ており、様々な現象との結びつきもあることが伺える。
1.3 様々な要因の影響
1.3.1 トレンド
様々な気象構成要素においてトレンドが現れることは一般的である。対流圏の気温に
関しては、温暖化により上昇トレンドを持つことが知られている。1 節に挙げた地上気
温だけでなく対流圏全域、海面水温においても上昇トレンドがある。一方、成層圏では
逆に冷却するトレンドを持っている。気温のほかにも、それに伴った対流圏における水
蒸気の増加などがあり、我々の生活や地球環境にとってとても関わりが深いことが伺え
る。
1.3.2 太陽活動
太陽活動が大気に与える影響は過去の研究で様々な議論がされてきた。太陽活動は
11 年のサイクルを持つことが知られており、成層圏上部で気温変化を引き起こすとし
て注目された。また、放射や力学過程を通じた地表への影響についても議論されており
[Kodera, 1995]、GCM(general circulation model)を用いた研究では、太陽活動が対流圏と
成層圏のカップリングによって対流圏の気候を変動させていることを示唆した
[Shindell et al., 1999]。更に、北大西洋振動(North Atlantic Oscillation; NAO)や南半球環状
モード(Southern Annular Mode; SAM)[Thompson and Wallace, 2000]などの様々な大気変動
モードと太陽活動の関係性が指摘されている[Ogi et al., 2003; Kuroda and Kodera, 2005]。
1.3.3 ENSO
エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、世界の様々な地域において気象や生態系など
に影響を及ぼすことが知られている。また、これらと太平洋赤道域の西部と東部の気圧
変動と結びつけ、エルニーニョ南方振動(ENSO)としても表される。
太平洋赤道域東部から中部において海水温が上昇してエルニーニョ現象が生じると、
ペルー沖でのアンチョビー漁獲量が減少する傾向がある。その影響は熱帯太平洋域にと
どまらず、全球規模で生じ、世界各地にて夏季には猛暑や熱波が観測され、冬季には地
域によっても異なるが低温、少雨の傾向が見られる。また、エルニーニョ現象に伴い干
4
ばつが起きることも知られており、アフリカやインドネシアでは深刻な問題となってい
る。干ばつによって引き起こされる森林や林野、草地の火災により、生態系への影響や
人的被害が多数報告され、自然環境、社会問題への影響が大いに懸念されている。また、
日本への影響も生じていることが報告されており、一般に暖冬、冷夏となる傾向や、台
風の発生数、上陸数の減少、梅雨明けの遅れなどが観測されている。
1.3.4 火山活動
火山活動が大気に対してインパクトを与える過程として、噴火により大気中に拡散す
るエアロゾルが重要となる。低緯度の火山噴火に伴って噴出される火山灰や二酸化硫黄
ガスは成層圏にまで到達し、エアロゾルとなって赤道を周回しながら中高緯度へと輸送
される。ピナツボ火山をはじめとする赤道域の火山噴火は、影響を与える時間・空間ス
ケールが大きい。特に大規模な噴火であればその影響は強く、長期に渡る傾向がある。
ピナツボ火山の噴火に伴い噴出された SO2 の量は約 2 千万トンと見積もられており
[Bluth et al., 1992]、噴火から 2 ヵ月以内に噴出物の破片が 40N に及ぶところまで観測さ
れた[Deshler et al., 1992]。成層圏エアロゾルの増加による放射バランスの変化によって、
成層圏は暖まり、対流圏は冷えることは一般的であり、噴火後の約 2 年間は世界的に平
均気温が成層圏で 2~3K 上がり、地上付近では 0.3K 下降していたことが述べられてい
る[Labitzeke, 1994]。熱帯でエアロゾルによる放射加熱が起こることで成層圏下部では子
午面温度勾配が大きくなるが、対流圏では逆に小さくなることにより北半球は冷夏、暖
冬になることが知られている。
1.4 本研究の目的
上記で示したとおり、QBO に伴った対流圏の変動が生じている可能性は十分に考え
られる。しかし、コンポジット解析や単回帰では他の要因の効果も含んでいる可能性が
ある。また、重回帰の場合でも Randel and Cobb[1994]や Crooks and Gray[2005]のように
季節変化は年周期、半年周期、4 ヶ月周期で与えられることが多く、各月の変動に関し
ては詳細に表されていない。そして多くは成層圏に関する議論であり、対流圏に関して
詳細に示したものは少ない。更に、対流圏の気候・気象に対してある程度周期的な現象
である QBO が影響を与えるとすると、中長期予報に役立てることが出来る可能性があ
る。
そこで本研究では、他の要因(トレンド、太陽活動、ENSO、火山活動)の効果を考慮
5
した上で、北半球を中心とした対流圏の各月における QBO の影響がどの程度あるか、
またどのようなプロセスが考えられるかを、線形重回帰式を用いることで示すことを目
的とする。
6
第2章
解析方法とデータ
2.1 解析方法
解析方法として、Randel and Cobb[1994]を参考にした以下の様な線形重回帰式を用い
た。
y = a0 + a1 × x1 + a2 × x2 + a3 × x3 + a4 × x4 + a5 × x5 + a6 × x6 + e
・・・(1)
各月ごとに(1)式より各回帰係数を求める。目的変数 y には例として、気温や東西風
を当てはめる。各説明変数は x1 から順に、赤道成層圏 50hPa 帯状平均東西風、赤道成層
圏 20hPa 帯状平均東西風、トレンド、solar 10.7-cm radio flux、Nino3.4 海域海面水温、
成層圏光学的厚さ[Sato et al., 1993; Crooks and Gray., 2005]であり、それぞれ QBO index
①、QBO index②、トレンド index、solar index、ENSO index、volcano index に対応する。
2.2 使用したデータ
説明変数の QBO index①、QBO index②のデータに関しては、1957 年 9 月~2002 年 8
月(45 年間)における ECMWF 再解析データの月平均、帯状平均した 50hPa 東西風、20hPa
東西風をそれぞれ使用した。50hPa の風は Holton and Tan[1980; 1982]や Thompson et al.
[2002]で用いられており、QBO を比較的良く表しているため index として使用する。ま
た、これら 2 つの QBO index は互いにほぼ相関がなく、位相が約 90 度ずれているため、
これらの東西風で QBO を表現できると考える。これは図 1.1、および、各説明変数の時
系列、図 2.1 からもうかがうことが出来る。また、solar index、ENSO index は、同期間
7
における月平均の NOAA の CPC データ solar 10.7-cm radio flux と Nino3.4 海域における
海面水温(http://www.cdc.noaa.gov/ClimateIndices/List/)、volcano index は Sato et al.[1993]
に よ る NASA の 月 平 均 、 全 球 平 均 し た 成 層 圏 エ ア ロ ゾ ル の 光 学 的 厚 さ
(http://data.giss.nasa.gov/modelforce/strataer/)を使用した。
これらの各説明変数を標準偏差で割り、標準化した値を用いて解析を行う。月ごとの
の標準偏差値については表 1.1 に示した。
目的変数として用いる気象データに関しては、月平均した次のようなデータを使用し
た。
ERA40
変数
:
気温、東西風、南北風、高度
水平スケール
:
2.5°×2.5°
鉛直層
:
23 層
期間
:
1957 年 9 月~2002 年 8 月
領域
:
全球
変数
:
地上気温、SLP
水平スケール
:
2.5°×2.5°
鉛直層
:
1層
期間
:
1957 年 9 月~2002 年 8 月
領域
:
全球
(1000~1hPa)
尚、本研究の結果は 10hPa までしか示さない。
8
図 1.1:1957 年 9 月~2002 年 8 月の赤道成層圏 70~7hPa における帯状平均東西風の時系列。カラー、
コンターは 10m/s 間隔。
図 1.2 :
1958 ~ 2002 年 (45 年 ) の 10 ~ 90N に お け る 1 月 の AO イ ン デ ッ ク ス
(http://www.noaa.gov/ClimateLndices/List/)正の時から負の時を引いた帯状平均東西風。カラー、コンタ
ーは 2m/s 間隔。
9
図 2.1:1957 年 9 月~2002 年 8 月における月平均の各説明変数の時系列。上から赤道成層圏 50hPa 帯状
平均東西風、赤道成層圏 20hPa 帯状平均東西風、トレンド、solar 10.7-cm radio flux、Nino3.4 海域海面
水温、成層圏エアロゾル光学的厚さである。
month
U50
U20
Trend
Solar
ENSO
Volcano
9 11.7580
18.9349
13.1339
542.013
0.820151
2.59419E-02
10 12.1782
18.4148
13.1339
535.654
0.989814
2.79097E-02
11 12.4329
17.7660
13.1339
541.547
1.13418
2.97519E-02
12 12.5575
17.6992
13.1339
589.743
1.23301
2.92066E-02
1 11.9233
18.2282
13.1339
584.850
1.18272
2.93988E-02
2 10.8778
18.1389
13.1339
538.757
0.960353
2.85750E-02
3 10.33257
18.6657
13.1339
526.228
0.736510
2.76376E-02
4 10.26483
19.7568
13.1339
494.104
0.607467
2.64529E-02
5 10.42108
20.1937
13.1339
462.738
0.623224
2.61524E-02
6 10.9603
19.9520
13.1339
482.582
0.680728
2.47651E-02
7 11.4336
19.2053
13.1339
464.673
0.708062
2.52433E-02
8 11.5607
19.2676
13.1339
515.679
0.802126
2.54457E-02
表 1.1:各月における各説明変数の標準偏差値。左から赤道成層圏 50hPa 帯状平均東西風、赤道成層圏
20hPa 帯状平均東西風、トレンド、solar 10.7-cm radio flux、Nino3.4 海域海面水温、成層圏エアロゾル
光学的厚さである。
10
第3章
結果と考察
結果の図はすべて、各説明変数が正のときについて示す。
3.1 年平均場
3.1.1 緯度-高度場 -各回帰係数はじめに、各回帰係数が概ね正しい値を示しているかの確認をするために、年平均場
に着目する。
QBO は第 1 章の図 1.1 で見たように、赤道域では西風と東風が鉛直方向に交互に現れ
る。図 3.1(左)と図 3.2(左)の東西風の QBO 回帰係数による成層圏のシグナルに注目する
と、赤道域だけではなく低緯度域一帯でそのような構造が現れていることが確認できる。
また高緯度域に注目すると、主に北半球で西風となっており冬季に見られる Holton and
Tan oscillation(HTO)が年平均でも現れている。これらは一般的な QBO の分布と一致し
ている。
風の場と温度場は温度風の関係が成り立つことが知られている。これは、高温域は西
風シア域(東風から西風に移行する領域)、低温域は東風シア域にそれぞれ対応するよう
な構造のことであるが、その関係を満たすように温度場が形成されていることが図
3.1(右)、3.2(右)から伺える。これらのことから、QBO に伴う風の場、温度場は期待さ
れる分布を示すことが分かった。
トレンドはそれぞれの目的変数が年に伴って増加、もしくは減少しているようなシグ
ナルを示す。例えば気温に関して考えると、二酸化炭素の増加や成層圏のオゾン層破壊
により、近年では対流圏の平均気温が上昇する傾向にあることが IPCC 第 4 次報告書等
で示されている。また、それは特に下部対流圏で顕著である。一方成層圏では、高度
11
20~30km では加熱にきくという特性を持つオゾンの減少や、温室効果ガス増加による
放射強制力のために、冷却することが知られている[Langemantz et al., 2003]。これらの
特徴を踏まえた上で図 3.3(右)に表した気温のトレンド回帰係数に注目すると、そのシ
グナルが現れていることが分かる。特に、南半球では強くシグナルが現れているが、成
層圏での加熱トレンドの領域は現実にはもう少し狭い。また、対流圏の高緯度域を除き、
先ほどと同様に温度風の関係を満たすように東西風の分布が見られる(図 3.3(左))。
次に、太陽活動に着目する。太陽活動の活発期は一般に、成層圏赤道域で気温が上昇
することが知られている。これは、太陽活動が活発になることで成層圏赤道域でのオゾ
ン生成が進み、オゾンの放射特性により大気が加熱されるためである。そこで、気温の
太陽活動回帰係数について調べると、成層圏のほぼ全域で高温域が見られ、上記と一致
した(図 3.4(右))。また、赤道成層圏の高温域に関しては Kodera and Kuroda [2002]によっ
て示されている。これは太陽活動が最大のときには冬極側の成層圏ジェットが強いまま
保持され、それに伴って赤道成層圏での上向きの流れが押さえられるためである。その
ような東西風のシグナルも図 3.4(右)に現れており、南半球側で明瞭であった。
ENSO は エ ル ニ ー ニ ョ 現 象 と 太 平 洋 上 に お け る 大 気 現 象 の 南 方 振 動 (Southern
Oscillation)のことを指し、これらは相互に関連している。エルニーニョ時にはハドレー
循環の強化や、貿易風(東風)の弱化が生じる。図 3.5(左)の東西風偏差の分布と比較して
みると、対流圏の赤道をはさんだ低緯度域で西風となっており、上記の結果と一致する
ことが分かる。また、エルニーニョ時には対流圏赤道域では高温偏差が生じ、中緯度で
は低温偏差となることが知られており[Wang and Weisberg, 1998]、その様子が図 3.5(右)
から確認できる。また、赤道成層圏下層での低温偏差は、上昇流が強まったために対流
圏界面が上昇して冷却されることと一貫性を持つ。年平均場でもはっきりとその特徴が
現れている様子が示された。
火山噴火に伴って放出されたエアロゾルが、ある一定時間成層圏に滞留するため、火
山活動によって成層圏や対流圏は影響を受ける。噴火によって地球全体に分布したエア
ロゾルは、プラネタリースケールのアルベドを増加させることによって対流圏を冷却し、
エアロゾル粒子による赤外線の吸収によって成層圏を加熱する作用がある。ただし緯度、
高度によって異なり、その特徴が現れるのは低緯度及び中緯度の 18hPa(27km)よりも下
層である。これは Labiztke and McCormick[1992]の 30、50hPa で行った観測結果によっ
12
ても示されている。また、その高度よりも上層では逆に冷却の効果を持つ。気温分布(図
3.6(右))の成層圏低緯度・中緯度に注目すると、それらの特徴が明瞭に現れており、一
貫性があった。
高緯度では逆に正味弱い冷却をもたらす[Shibata et al., 1996]。その様子は気温分布(図
3.6(右))の両半球極域の成層圏下層でも見られることから、整合的である。但し、その
特徴が現れているのは 20hPa 付近までである。
これらは一般的に知られる分布とほぼ一致している。以上から、各回帰係数の分布お
よび値は、それぞれの特徴を表していると判断する。そのため、これより QBO の影響
について議論していく上で、QBO 以外の上記の効果は取り除いて考えることができる
とする。
3.1.2 緯度-高度場 -QBO 回帰係数QBO に伴って大気場がどのように応答するかの概要を把握し、先行研究との整合性
を確認するために、上述と同様に年平均について更に詳しく見ていく。
a. U50 回帰係数
成層圏の東西風、気温の QBO シグナルは 3.1.1 で示した通りであるが、対流圏でも見
られるかを調べていく(図 3.1)。すると、北半球の対流圏上層でシグナルが見られるこ
とが分かった。東西風は NAM のような分布(図 1.2)をしているが、高緯度の西風域がや
や北よりであることと、東風域が明瞭ではないことが分かった。
次に、極渦の強弱は QBO に伴って現れることが知られているが、対流圏にもそのシ
グナルが現れるかを確かめるために、ジオポテンシャルハイトに関して注目する(図
3.7(左))。すると、両半球極域で成層圏から対流圏までひとつなぎとなるような低圧偏
差が生じていることが分かる。また、中高緯度でも偏差が見られ、北半球の高緯度で高
圧、中緯度で低圧偏差が生じ、南半球の中緯度でも高圧偏差が生じている。
これらの東西風、気温、高度場は一貫性を持つ分布をしていた。
NAM のようなシーソーパターンが東西風の分布から見ることが出来たが、西風域が
Thompson and Wallace[2000]の定義よりも極側に位置していた。このことから、NAM と
は異なるパターンであるか、もしくは、NAM は北半球冬季に卓越するパターンである
ので、年平均したために明瞭に見られなかったのかもしれない。
13
b. U20 回帰係数
次に、以上と同様に対流圏の U20 についても述べていく。
図 3.2 の東西風、気温の図に注目する。東西風においては低~中緯度の上層、気温は
低緯度の上層と極域の下層を中心に、シグナルが見られることが分かった。Thompson et
al. [2002]で挙げられているように、対流圏への応答は対流圏 NAM によって現れること
が示唆されている。NAM は北半球冬季の東西風によって特徴付けられているので、そ
れに注目すると、高緯度で西風域、中緯度で東風域となっており、これは NAM インデ
ックスが正の時に対応しているように見えることから、年平均を通じてもその効果が大
きく現れているようである。
高度場においてもその特徴が見られるかを調べてみる。図 3.7(右)のジオポテンシャ
ルハイトを見ると、北半球の極域で成層圏から対流圏までひとつなぎとなるような低圧
偏差が生じており、冬季の極渦が強まっている偏差に見えることから、先ほどと同様に
成層圏の NAM インデックスが正となるような結果となった。一方南半球では、成層圏
下層~地表において高圧偏差が生じている。また、低緯度~中高緯度の上層にも高圧域
が現れることが分かった。
U20 についても東西風、気温、高度の対応性がよいことが認められた。
以上のことから、北半球において対流圏 NAM に類似した偏差が、年平均を通じても
現れることが分かった。また、低緯度・中緯度にもシグナルが比較的現れる傾向が認め
られた。
3.1.3 水平場 -QBO 回帰係数QBO はほぼ東西に一様であることは述べたが、そのシグナルも東西一様であるとは
限らず、経度方向に異なることも考えられる。そこで、緯度-経度方向について示した
水平場についても調べていく。その上で、どのような分布を持つかを大まかなに理解す
るために、水平場についても年平均の図を示していく。
A. 成層圏北半球
a. U50
はじめに、QBO を定義するのに使用した帯状平均東西風の高度におけるシグナルの
水平分布に注目していく。図 3.8(左)、3.9(左)は 50hPa における、東西風、ジオポテンシ
ャルハイトの U50 回帰係数を示している。東西風に注目すると、低緯度の西風域はほ
14
ぼ東西一様となっていることが分かる。しかし、高緯度の西風はユーラシア大陸と北ア
メリカ付近において大きな値、中緯度の東風はユーラシア大陸西部において小さい値を
持ち、経度方向にやや値の大小があり、一様ではない。
ジオポテンシャルハイトも同様に非一様性を示した。また、極付近での低圧偏差が大
きいことが分かった。
これらの東西風とジオポテンシャルハイトの偏差は帯状平均場を調べたときと同様、
地衡風の関係を満たし、冬季の極渦が強まるような偏差が高緯度で現れていることから
も、一貫性が見受けられた。
b. U20
図 3.8(右)、3.9(右)は 20hPa における東西風、ジオポテンシャルハイトの U20 回帰係
数である。U50 と同様に、低緯度域の東西一様、中高緯度で非一様な分布を示した。ま
た、対流圏の帯状平均場でも見られた NAM に類似したパターンが、成層圏の水平場で
も比較的見られた。
このことから、U20 は年平均を通して NAM が見られる傾向が強いようである。
B. 成層圏北半球
次に、成層圏で見られた東西一様性が対流圏でも見られるかを、地上付近および対流
圏上層における東西風、SLP の QBO 回帰係数を通して調べる(図 3.10~3.14)。
a. U50
まず地上付近における東西風のシグナルに注目していく。図 3.10(左)は、925hPa にお
ける東西風の U50 回帰係数である。中緯度では、北太平洋西部~中部にかけて西風、
その北側と北大西洋の高緯度域で東風となっており、東西に一様な分布は示していない。
次に対流圏の上層でも同様の傾向が現れるかを確認するために、300hPa における東
西風に関しても調べる。図 3.11(左)からも上述と同じく経度方向に値の強弱があり、ユ
ーラシア大陸中央部を除く中緯度と極で西風、高緯度で東風となるような構造を持つこ
とが分かった。また特に日本付近において、中緯度の西風と高緯度の東風のコントラス
トがはっきりと現れていることが興味深い。
帯状平均と同様に、風の場と高度場は対応した関係性を見せるはずなので、続いて高
度場に注目していく。まず、地表付近について見るために図 3.12(左)に SLP の U50 回帰
係数を示す。東西風の場合と同じく低緯度にはシグナルが見られず、中緯度の北太平洋
15
西部~中部と、ユーラシア大陸の北で低圧、北大西洋の北部で高圧となり、東西風との
一貫性が確認できる。また、中緯度では波数 1 程度の波が見られる。
前述と同様に、対流圏上部である 300hPa のジオポテンシャルハイトについても注目
すると、中高緯度において波数 1~2 程度の波が見られる(図 3.13(左))。また、300hPa
東西風でも現れた日本付近のシグナルがここでも見られ、高圧場が東西に広く分布して
いる。
これらの結果から、成層圏の赤道域ではほぼ一様な分布を示した U50 回帰係数は、
中高緯度ではその特徴が見られず、経度方向に値の強弱を持つことが確認された。また、
日本をはじめとする対流圏において、QBO に伴った波の影響がある可能性が示唆され
る。
b. U20
U20 回帰係数についても同様に見ていくと、東西風において非一様性が見られ、北太
平洋の赤道、高緯度付近と北大西洋の北部において西風、北太平洋の中央部と北大西洋
の中緯度付近における北アメリカ東岸およびスペインの西側で東風となっていた(図
3.10(右))。
図 3.11(右)に表した対流圏上層においても東西に値の強弱が見られ、中緯度ではユー
ラシア大陸西部と北アメリカ西岸で西風、他の同緯度帯では東風となっている。ここで
も日本付近において、中高緯度の風のコントラストが明瞭であるが、U50 とは逆の偏差
となって現れた。
次に図 3.12(右)の SLP について調べると、中緯度では日本の東とヨーロッパの西で高
圧域、高緯度~極で低圧域が分布している様子が認められた。
300hPa のジオポテンシャルハイトについても示していく。図 3.13(右)から、中高緯度
において波数 2~3 程度の波が見られる。これらの結果は上で述べた非一様性を表して
おり、U50 とやや分布が異なることも示した。また、ここでも日本付近にシグナルが見
られるが、U50 と逆のシグナルを示している。
以上のことから、U50 と同様に U20 のシグナルも赤道成層圏以外で非一様であった。
また、日本付近や他の中高緯度で波の効果も示唆された。
C. 南半球
南半球でも北半球と同様のシグナルが現れるか、同様に示した図 3.14~3.19 から調べ
16
てみる。
成層圏において、北半球と同じく赤道域で東西一様性を示したが、図 3.15 のジオポ
テンシャルハイトの図から、高緯度では波数 1 程度の波が見られた。
対流圏では U50 は波数 1、U20 は波数 2 程度の波が卓越する様子が、年平均の傾向と
して見られる。
これらのことから、北半球よりも値としては小さいが同様の傾向が南半球でも見られ、
U50 は成層圏~対流圏にかけてほぼ東西一様、U20 は対流圏では非一様となる様子を示
した。
緯度-高度断面および水平場の結果から、QBO シグナルは成層圏~対流圏で見られ、
赤道成層圏では一様な分布を示すが、成層圏中高緯度や対流圏では非一様になる傾向が
示された。
主に U20 で見られた成層圏・対流圏 NAM が正となるような偏差は、年間を通じて見
られるものなのか、冬季の偏差が大きいために現れているのかを確認するために、次に
年変化に着目していく。
17
18
図 3.1:帯状平均した年平均東西風(左)と気温(右)の U50 回帰係数。カラー、コンターはそれぞれ 0.2m/s、
0.1K 間隔。
図 3.2:帯状平均した年平均東西風(左)と気温(右)の U20 回帰係数。カラー、コンターはそれぞれ 0.2m/s、
0.1K 間隔。
19
図 3.3:帯状平均した年平均東西風(左)と気温(右)のトレンド回帰係数。
カラー、コンターはそれぞれ 0.2m/s、
0.1K 間隔。
図 3.4:帯状平均した年平均東西風(左)と気温(右)の太陽活動回帰係数。
カラー、コンターはそれぞれ 0.2m/s、
0.1K 間隔。
20
図 3.5:帯状平均した年平均東西風(左)と気温(右)の ENSO 回帰係数。
カラー、
コンターはそれぞれ 0.2m/s、
0.1K 間隔。
図 3.6:帯状平均した年平均東西風(左)と気温(右)の火山活動回帰係数。
カラー、コンターはそれぞれ 0.2m/s、
0.1K 間隔。
21
図 3.7:帯状平均した年平均ジオポテンシャルハイト U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラー、コ
ンターは 1m 間隔。
22
図 3.8:北半球における年平均 50hPa 東西風 U50 回帰係数(左)と 20hPa 東西風 U20 回帰係数(右)。カラ
ー、コンターは 0.4m/s 間隔。
図 3.9:北半球における年平均 50hPa ジオポテンシャルハイト U50 回帰係数(左)と 20hPa ジオポテンシ
ャルハイト U20 回帰係数(右)。カラー、コンターは 4m 間隔。
23
図 3.10:北半球における年平均 925hPa 東西風 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラー、コンター
は 0.1m/s 間隔。
図 3.11:北半球における年平均 300hPa 東西風 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラー、コンター
は 0.2m/s 間隔。
24
図 3.12:北半球における年平均 SLP U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラー、コンターは 0.2hPa
間隔。
図 3.13:北半球における年平均 300hPa ジオポテンシャルハイト U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。
カラー、コンターは 4m 間隔。
25
図 3.14:南半球における年平均 50hPa 東西風 U50 回帰係数(左)と 20hPa 東西風 U20 回帰係数(右)。カラ
ー、コンターは 0.4m/s 間隔。
図 3.15:南半球における年平均 50hPa ジオポテンシャルハイト U50 回帰係数(左)と 20hPa ジオポテンシ
ャルハイト U20 回帰係数(右)。カラー、コンターは 4m 間隔。
26
図 3.16:南半球における年平均 925hPa 東西風 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラー、コンター
は 0.1m/s 間隔。
図 3.17:南半球における年平均 300hPa 東西風 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラー、コンター
は 0.2m/s 間隔。
27
図 3.18:南半球における年平均 SLP U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラー、コンターは 0.2hPa
間隔。
図 3.19:南半球における年平均 300hPa ジオポテンシャルハイト U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。
カラー、コンターは 4m 間隔。
28
3.2 年変化
ここでは、前節では把握できなかった NAM のような構造の季節性の有無について調
べていく。
NAM インデックスの定義に従い、55~80N の緯度平均と 35N の東西風 U50 回帰係数
の年変化を(図 3.20(左)、3.21(左))に表す。年平均では成層圏や対流圏において NAM と
はやや異なったパターンを示したが、図から 1 月には明瞭に現れることが分かった。こ
れは過去の研究と一貫性を持つ[Holton and Tan, 1980; Baldwin and Dunkerton, 1999; 2001]。
一方、対流圏での西風偏差が大きいのは 11 月であることが興味深い。中緯度に関して、
東風偏差は成層圏~対流圏にかけて 1 月で明瞭であるが、
11 月はその他の月と異なり、
対流圏でも東風域となっている様子が見られる。
次に U20 に関して注目すると、高緯度では U50 と同様に明瞭な西風域が現れるのは
冬季に限定されるが、中緯度の偏差は 15hPa より上空を除く 40hPa より上層では年間を
通じて東風域であることが特徴的である(図 3.20(右)、3.21(右))。また、成層圏下層付近
では年変化が見られるが、東風偏差となるのは 8~12 月であり、冬季中で同一の偏差と
なっていないことが分かる。また、高緯度の成層圏は 2 月、対流圏は 1 月に西風偏差が
大きくなる傾向が見られる。中緯度に関しては上記に示した期間で成層圏~対流圏にお
いて東風域となっており、U50 のシグナルと異なった年変化を示しているように見える。
年平均場において極渦の強まりが示唆されたことから、60~90N および 60~90S のジ
オポテンシャルハイトの年変化についても同様に調べる。
U50(図 3.22)では特に北半球で強いシグナルが現れており、極渦が強化されているこ
とがうかがえ、明瞭であるのは 1 月であることから過去の研究とも一致する[Holton and
Tan, 1980]。また、4 月の 15hPa より上空を除いた成層圏~対流圏上部全域において低圧
となっており、年間を通じてこの偏差が現れることが分かった。
U20(図 3.23)に関しては年変化がはっきり見られ、北半球では秋季~冬季、南半球は
冬季~春季にかけて極渦が強まる偏差を示し、一般的な分布をしていた[Holton and Tan,
1980]。また、北半球では 1 月、南半球では 10~11 月に強い低圧偏差となることが示さ
れている。
以上のことから、U50 と U20 は幾分異なった年変化を示していたが、年平均に現れ
たシグナルは主に冬季において示されることが分かった。更に、U50 では 1 月にその特
29
徴がはっきりと現れていたことから、QBO のシグナルを明瞭に表す冬季の代表値とし
て適切であることが考えられる。また、対流圏に注目すると 11 月にシグナルが現れて
いたことから、QBO に伴った変動が生じている可能性が考えられる。そこでこの月に
関しても詳しく調べ、1 月との比較を行っていく。
30
図 3.20:55~80N における帯状平均東西風の U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)の年変化。カラーは
0.2m/s 間隔。
図 3.21:35N における帯状平均東西風の U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)の年変化。カラーは 0.2m/s
間隔。
31
図 3.22:60~90N(左)と 60~90S(右)における帯状平均ジオポテンシャルハイトの U50 回帰係数の年変化。
カラーは 5m 間隔。
図 3.23:60~90N(左)と 60~90S(右)における帯状平均ジオポテンシャルハイトの U20 回帰係数の年変化。
カラーは 5m 間隔。
32
3.3 月平均場 -1 月3.3.1 緯度-高度場
これまでの QBO シグナルの特徴をおさえた上で、月平均場に注目していく。まず、
過去の研究で議論されている北半球冬季の影響が、本研究の結果でも見ることが出来る
かを調べていく。北半球冬季の代表値としては Thompson et al. [2002]にならい、1 月の
データを用いる。
a. U50
図 3.24(左)は、1 月における東西風の U50 回帰係数である。北半球高緯度において、
成層圏~対流圏までつながるような成層圏・対流圏 NAM が現れている。また、対流圏
に注目すると、60N の地上付近で有意なシグナルが現れた。
次に図 3.25(左)の気温について見てみると、成層圏~対流圏上層の北半球中高緯度で
シグナルが現れていた。これは東西風と一貫性を持つ構造であった。また、北半球高緯
度の地表に高温偏差が現れたが、有意ではなかった。
このことから、東西風については地上付近への影響が示唆される。また、過去の研究
と同様に NAM に伴ってシグナルが現れている可能性がある。
b. U20
東西風において、成層圏~対流圏にかけて北半球高緯度で西風シグナルが見られ、成
層圏・対流圏 NAM のような分布を示しているが、有意な結果とはならなかった(図
3.24(右))。高緯度を除いた緯度帯で有意なシグナルが見られる傾向は、Crooks and
Gray[2005]の結果に類似していた。しかし対流圏に注目すると、有意性を持ちながら 55N
の地表付近にシグナルが現れることが確認された。
次に気温について見てみると、対流圏上層~中層の赤道域~両半球中緯度でシグナル
が現れている(図 3.25(右))。また、60N、30S の地表付近で有意な高温域が現れていた。
この結果から、北半球の高緯度地表付近で、東西風及び気温に影響を与えていること
が示唆される。
ここで、両回帰係数で地表付近の高緯度において見られた高温域は、U50 西風(東風)
時に高温(低温)偏差となることを示した過去の研究の結果と一致した[Thompson et al.
2002]。しかし U 20 には有意性が認められたものの、U50 には有意性は見られなかった。
33
以上のように、北半球冬季においては QBO に伴った変動のシグナルは対流圏でも高
緯度を中心に見られ、U20 は更に低緯度でも現れていることが分かった。
このような偏差が生じている理由を調べるために、波活動および循環場に注目してい
く。QBO の影響が成層圏~対流圏の高緯度で現れたということは、Dunkerton and
Baldwin[1991]や Hartmann et al. [2000]で示されたように、赤道~高緯度域で成層圏へ波
が伝わりにくく、赤道方向へ伝播しやすくなるような偏差が生じているはずである。ま
た、上で示したような東西風の場と一貫性を示すのかを確かめる必要がある。
そこで、次のように定義した EP フラックスを示す。
F (φ ) ≡ ρ 0 a cos φ (u z v ′θ ′ / θ z − v ′u ′)
・・・(2)
{
}
F ( z ) ≡ ρ 0 a cos φ [ f − (a cos φ ) −1 (u cos φ ) φ ]v ′θ ′ / θ z − w′u ′
上式において、バーは東西平均、ダッシュは東西平均からのずれを表し、下付の文字
は微分、上付きのかっこ内はその成分を意味する。
a. U50
図 3.26(左)に示したのは、1 月における東西風および EP フラックスの U50 回帰係数
である。EP フラックスに注目すると、成層圏で 60N を除き全体的に下向き、対流圏で
赤道に向くベクトルが見られる。波は平均場では赤道や上向きに伝播することが知られ
ているため、このような偏差は波が上方へ伝播しにくくなり、赤道へ伝わりやすくなる
状態を示しており、前に記した過去の研究と整合的である。
次に、西風の加速や減速には EP フラックスの発散が関係することが知られているこ
と か ら 、 以 下 の よ う に 与 え ら れ る Andrews et al. [1987] に よ る TEM(transformed
Eulerian-mean)系運動方程式を示し、東西風との一貫性が認められるかを確認する。
u t + v * [a cos φ ) −1 (u cos φ ) φ − f ] + w *u z − X = D F
・・・(3)
ここで、 v * 、 w * 、および EP フラックスの発散( DF )については、次のように定義す
34
る。
v * ≡ v − ρ 0−1 ( ρ 0 v′θ ′ / θ z ) z
w * ≡ w + ( a cos φ ) −1 (cos φ v′θ ′ / θ z )φ
DF ≡
∇ • F ≡ ( a cos φ ) −1
∇•F
ρ 0 cos φ
∂
∂F ( z )
( F (φ ) cos φ ) +
∂φ
∂z
・・・(4a)
・・・(4b)
・・・(5)
・・・(5’)
図 3.27(左)における DF の北半球のシグナルは Dunkerton and Baldwin[1991]で見られる
分布とほぼ一致しており、成層圏の先ほど示した図 3.26(左)における西風領域が発散域
となっていることが分かる。
このように波が平均流に作用しているかを調べるために、 DF と(3)式の左辺第 3 項
( fv * )の足し合わせたものに注目する。図 3.28(左)で示した U50 回帰係数はそれぞれ北
半球極域では加速域となっており、上記との整合性が見られる。
これらのことから、対流圏の波が赤道方向へ伝播しやすくなったことにより、成層圏
での波の上方への伝わりが小さくなったことを受け、西風が加速されているため北半球
成層圏極域の広範囲な西風域をもたらす結果が図から得られ、これは先行研究と一貫性
を持つ[Holton and Tan, 1980; 1982]。しかし、同じく西風域である成層圏~対流圏の北半
球中高緯度では西風を減速させる偏差となっており、対応性がよくない。
以上のことと、(3)式の左辺第 1 項は東西風の加速を表す項であることを考慮に入れ
ると、時間変化についても注目する必要がある。そこで、1 月の説明変数で 12 月の DF
と fv * を目的変数とした U50 回帰係数を調べる。波が図 3.26(左)で表したような東西風
場を作っているとすれば、それに対応した場が示される可能性がある。図 3.29(左)に注
目すると、北半球の高緯度で成層圏から地表まで連続している正の値を見ることが出来、
これは図 3.26(左)の西風域と一致していることから、波の西風加速への作用が現れてい
る。
更に図 3.30(左)において、波の 12 月から 1 月にかけての変化が平均場に寄与してい
るのかを見ていく。すると先ほど示した 12 月よりも対応が悪いことがうかがえる。
35
以上のことから、1 月の U50 に伴った変動は 12 月における波の作用の効果が大きい
可能性がある。
b. U20
同様に U20 に関しても注目する。
図 3.26(右)、 3.27(右)、3.28(右)の EP フラックス、 D F 、 DF + fv * の結果から、西風
が加速をもたらしたプロセスは U50 と同様に考えられるが、成層圏での EP フラックス
の下向きベクトルはより明瞭であった。また、北半球極域での加速域は U50 より小さ
かった。
しかし、同様な領域で東西風と波の対応性がよくなかったことから、前述と同じく 1
月の説明変数で 12 月の DF と fv * を目的変数とした U20 回帰係数を調べる。図 3.29(右)
に注目すると、北半球高緯度の西風域では一致していないが、赤道成層圏を除く有意な
領域で対応性がよい(図 3.26(右))。
波の 12 月から 1 月にかけての変化に関しては、U20 は目立った変化は見られなかっ
た。
次に気温と、
残差子午面循環を示す(4a)、(4b)式で定義した v * 、w * に注目する(図 3.31)。
QBO の構造を上述の通りよく表現している赤道上部の成層圏に注目すると、高温域
で下降流、低温域で上昇流となっており、それを補うように南北流が生じている様子が
見られる。このような循環は、Plumb and Bell[1982]と一貫性を見せる。
更に対流圏について詳しく見てみると、地表付近で生じている高温域では大きな南風
偏差域と対応していることが分かる。有意なシグナルとなって現れている U20 に注目
すると、先ほど示した DF では高温偏差が生じている緯度の上層で水平方向に収束が起
こっている様子が分かる(図 3.27(右))。
このことから、温度偏差が生じたのは収束によって引き起こされた下降流に伴う移流
が生じたためである可能性が考えられる。
次に、QBO が西風時と東風時ではどのような大気場となるかを示していく。現実的
に西風、東風のそれぞれとりうる値(U50:西風;15m/s、東風;-25m/s、U20:西風;20m/s、
東風;-40m/s)から平均を引き、各回帰係数を乗じたものと気候値を足し合わせ(以下
QBO*W、QBO*E)、議論する。
図 3.32、3.33 に示したのは、それぞれ東西風と EP フラックスの QBO*W、QBO*E で
36
ある。
波がより赤道方向へ伝播しやすくなっている状態は図 3.26 の偏差では見られたが、
これらの図からは見られなかった。しかし対流圏赤道域が QBO*E では東風となってい
るが QBO*W で西風となっており、以上のような偏差が生じた理由と整合的である。
ここで波と循環場の対応性について調べる。図 3.34、3.35 に示したのは気温と v * 、w *
の QBO*である。気温偏差が現れた領域は実際に南風域であったが、この図では西風時
と東風時で明確な違いは分からなかった。
以上で示したことから、
1 月の QBO シグナルは成層圏を中心とする北半球側に現れ、
極域は風と波の場が対応しており、過去の研究とも整合的である。しかし対流圏で有意
なシグナルが現れている主に中高緯度域では、12 月における波が風の場を作り出した
ことが考えられる。また、波の作用により生じた対流圏下層の温度偏差は、下降流に伴
う移流によってもたらされた可能性がある。
37
38
図 3.24:帯状平均した 1 月の東西風 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは薄いオレンジは 90%、
濃いオレンジは 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
図 3.25:帯状平均した 1 月の気温 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは薄いオレンジは 90%、
濃いオレンジは 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
39
図 3.26:帯状平均した 1 月の東西風(コンター)と EP フラックス(ベクトル)U50 回帰係数(左)と U20 回帰
係数(右)。カラーは薄いオレンジは 90%、濃いオレンジは 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
図 3.27:帯状平均した 1 月の DF U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは 5e-07m/s2 間隔。
40
図 3.28:帯状平均した 1 月の DF + fv U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは 5e-07m/s2 間隔。
*
図 3.29:帯状平均した 1 月の説明変数によって求めた 12 月の DF + fv U50 回帰係数(左)と U20 回帰係
*
数(右)。カラーは 5e-07m/s2 間隔。
41
図 3.30:帯状平均した 12~1 月にかけての DF + fv
*
U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは
5e-07m/s2 間隔。
図 3.31:帯状平均した 1 月の気温(コンター)と子午面残差循環(ベクトル)U50 回帰係数(左)と U20 回帰係
数(右)。カラーは薄いオレンジは 90%、濃いオレンジは 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
42
図 3.32:帯状平均した 1 月の東西風(カラー)と EP フラックス(ベクトル)U50*W(左)と U50*E(右)。カラー
は 5m/s 間隔。
図 3.33:帯状平均した 1 月の東西風(カラー)と EP フラックス(ベクトル)U20*W(左)と U20*E(右)。カラー
は 5m/s 間隔。
43
図 3.34:帯状平均した 1 月の気温(カラー)と子午面残差循環(ベクトル)U50*W(左)と U50*E(右)。カラーは
10K 間隔。
図 3.35:帯状平均した 1 月の気温(カラー)と子午面残差循環(ベクトル)U50*W(左)と U50*E(右)。カラーは
10K 間隔。
44
3.3.2 水平場
次に年平均場の結果から、対流圏で経度方向にも見ていく必要があることが挙げられ
たため、対流圏の水平場についても示していく。また、QBO が実際にどの程度の影響
を与えうるのかを表す。
地上気温に関して Thompson et al. [2002]で示されたように、特に U50 で対流圏 NAM
に伴い主に高緯度域にシグナルが現れ、ユーラシア大陸と北アメリカで高温、ヨーロッ
パで低温となるような偏差が生じることが予想される。そこで図 3.36 の QBO 回帰係数
を見てみると、大きなシグナルが現れているのは高緯度域が中心であり、両回帰係数は
類似したシグナルを示すことが分かった。ヨーロッパ付近は逆のシグナルを示したが、
Thompson et al. [2002]で用いたのは 50hPa の東西風であり、本研究でこの領域が有意な
値となったのは U20 であったので、正反対の結果とは言えない。また U50 と U20 は似
たパターンを示した一方で、有意な値が現れる領域は違っており、U50 はユーラシア大
陸北部、北アメリカ北西部において高温、アラスカ、北アメリカ北東部において低温と
なっている。U20 回帰係数は、ユーラシア大陸北東~日本海、北アメリカ中部~東部に
おいて高温、ベーリング海付近およびアイスランドで低温となっている。
東西平均場では、波により風の場が変わり気温偏差が生じていることの可能性が挙げ
られた。そこで、水平場でこの結果と一貫性があるかを調べていく。
図 3.37 に地上気温と相関の高い 300hPa ジオポテンシャルハイトを示す。すると高温
(低温)偏差が生じている地域で高圧(低圧)偏差が生じており、気温との対応性がよいこ
とが分かる。
このことから、東西平均場の結果とも整合性があることが分かった。
地上気温において、具体的にどのような地域にどの程度の影響があることが予想され
るかについて示す。
表 3.1 は QBO 回帰係数が大きかった地点及びその値である。U50 は図 3.36 からも見
られる通り、北アメリカに正負の大きな値を持つ。顕著な高温偏差となる地点はカナダ
の北西部、アムンゼン湾近くの内陸であり、50hPa 東西風が約 12m/s の西風(+1 標準偏
差)となる年には約 1.9 度気温が上昇することが結果として得られた。同じく低温偏差域
はカナダのラブラドル海西部であり、約 2 度気温が下降する結果となった。
続いて U20 に関しても調べてみると、ロシアの中部では 20hPa 東西風が約 18m/s の
西風となる年には約 2.2 度の気温上昇が生じる可能性が挙げられた。また、同様に低温
45
偏差域はロシアの西部であり、約 1.4 度の気温低下が見込まれた。
また、これらの観測値と予測値(6 つの説明変数を重回帰式に当てはめて得られた値)
を比較すると相関がよく、いずれの地点も有意水準 99%で有意性が示された。
これらのことから、1 月において QBO に伴った変動は対流圏でもシグナルとして現
われ、地表付近にも影響を及ぼすことが示唆される。これは過去の研究、東西平均場の
結果からも整合的な結果である。
46
図 3.36:1 月の地上気温 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは薄いオレンジが 90%、濃いオレ
ンジが 95%有意な領域、コンターは 0.4K 間隔。
図 3.37:1 月の 300hPa ジオポテンシャルハイト U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは薄いオ
レンジが 90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 10m 間隔。
観測値と予測値
index
標準偏差 回帰係数
緯度
経度
U50
11.9233
2.0771
67.5N
127.5W
0.523925
-1.92532
60N
62.5W
0.491536
U20
18.2282
2.23971
60N
102.5E
0.538038
-1.39571
65N
172.5E
0.462766
の重相関係数
表 3.1:地上気温において大きなシグナルが現れた 1 月の U50、U20 標準偏差及び緯度、経度、その地点
における観測値と予測値の重相関係数。
47
48
3.4 月平均場 -11 月3.4.1 緯度-高度場
前節では、QBO のシグナルが顕著に見られた 1 月に注目し、先行研究との比較を行
った。この節では 3.2 節を通して各月の大気場を調べた結果、本研究で注目している対
流圏においてシグナルの現れた 11 月についての結果を述べていく。どのような影響が
見られるかを調べ、そのプロセスを 1 月の結果と照らし合しながら考察する。
a. U50
図 3.38(左)は、11 月における東西風の U50 回帰係数である。北半球で明瞭に見られる
構造は冬季平均で表した Dunkerton and Baldwin[1991]や Niwano and Takahashi[1998]に類
似している。しかし 11 月の U50 でも見られることが分かった。また有意性を考慮する
と、上記の先行研究よりも明瞭に現れていることが示唆される。
次に気温について調べてみると、成層圏低緯度~中緯度では QBO に伴った温度構造
が現れている(図 3.39(左))。対流圏では 50~60N の中層~地表において有意な高温域が
分布しており、地表付近のみで有意な高温域が見られた 1 月と比べ、鉛直方向に広がっ
ている様子がうかがえる。
このような変動が生じている理由を 1 月と同様に調べていく。図 3.40(左)に示したの
は、帯状平均した東西風および EP フラックスの U50 回帰係数である。北半球高緯度成
層圏で明瞭な下向きのベクトルが見られる。11 月においても 1 月と同様に、波は平均
場では赤道~上向きに伝播するので、通常よりも波が上方に伝わりにくいことを示して
いる。これは DF について示した図 3.41(左)と一貫性を見せる。
また、より赤道方向に伝播するようになっている様子が、図 3.40(左)の北半球対流圏
中高緯度で見られる。これを図 3.42(左)の DF + fv * と照らし合わせると、北半球の対流
圏上層、地表付近では比較的一致している様子が見られた。しかし中層では一致しなか
ったため、1 月と同様に前の月(10 月)の DF + fv * に関する U50 回帰係数に注目すると、
この領域でも整合性が得られた(図 3.43(左))。これらの領域に関して 10~11 月にかけて
の変化を見てみると、あまり対応性がよくなかった(図 3.44(左))。
これらのことから、U50 は対流圏上層、地表付近では 11 月、中層では 10 月の波によ
る寄与が大きい可能性があることが分かった。
49
b. U20
U20 についても同様に調べていく。
東西風について示した図 3.38(右)を見ると、対流圏でのシグナルが低緯度~高緯度域
で現れており、特に対流圏赤道域の東風が顕著である。また 1 月のときと同様に、北半
球成層圏の西風域は U50 と違って有意ではないことが分かる。
気温について調べると、成層圏低緯度~南半球中緯度では QBO に伴った温度構造が
現れている(図 3.39(右))。対流圏では 35~50N の中層~地表、60~65N の地表におい
て有意な高温域が鉛直方向に広がって分布している。類似した高温偏差域は U50 でも
見られたが、それよりもやや低緯度よりに位置している。
次に東西平均した東西風および EP フラックスついて調べると、北半球高緯度成層圏
で見られる下向きのベクトルは U50 と同様であるが、北半球対流圏では逆のシグナル
を示し、高緯度へ向かうベクトルが見られる(図 3.40(右))。これは 1 月とも異なる偏差
である。しかし特にその構造が見られる対流圏上層における北半球中緯度付近では、東
西風との対応性があまりよくない(図 3.40(右)、3.41(右))。
しかし同月における DF + fv * に注目すると、対応性がよいことがうかがえる(図
3.42(右))。また、対流圏赤道域の中層及び 15N の地表付近においても一致している。
次に、前の月(10 月)の DF + fv * に関する U20 回帰係数に注目する(図 3.43(右))。する
と、赤道域の 100hPa より上層では不一致であるが、それより下層をはじめとする有意
な領域において比較的一貫性が見られる。
更に 10~11 月にかけての変化に注目していく(図 3.44(右))。対流圏低緯度域では先ほ
どの図 3.43(右)のほうがより大きな偏差が見られたが、対応はしていた。高緯度に関し
ては同様に対応がよいことが分かった。
このことから、U20 において対流圏の高緯度では 10 月・11 月の波による平均流への
作用が生じていることが示唆される。
結果、U50 は成層圏~対流圏へつながるような西風加速、減速域が見られ、1 月と類
似していたが、その構造は対流圏に関しても有意な値を持ちながらより明瞭な分布を示
した。また U20 において、成層圏北半球高緯度では現れなかった有意なシグナルが対
流圏中高緯度では示されたことの理由として、対流圏の波が関与している可能性は否定
できない。対流圏赤道域で明瞭な偏差が現れていることから、低緯度の偏差が寄与して
出来ていることが示唆される。
50
これらの波や東西風の変化により、気温と残差子午面循環も変化していることが予想
される。そこで気温、 v * 、 w * の QBO 回帰係数について注目する。まず図 3.45(右)を見
ると、対流圏では U20 の有意なシグナルが現れている北半球中緯度域でやや下降流偏
差となっている。また、その緯度の中層では収束するような流れが生じており、これは
図 3.41(右)の DF と対応している。また、その北に位置する 60~65N 付近の対流圏下層
の低温偏差は、南向きの流れに伴って生じていたことが分かった。
U50 の 50~60N の地表付近における高温域でもやや下降流が生じており、その上層
で収束している様子が図 3.45(左)、図 3.41(左)の DF からも分かるが、U20 より弱い偏差
となっている。
これらのことから 11 月は、波が西風を減速させたことにより生じた下降流偏差によ
って、対流圏中層~下層にかけての高温域が現れる可能性が考えられる。
次に、前節にならって上記で述べたようなプロセスと整合的であるかを調べるために
QBO の西風時、東風時のシグナルについて見ていく。
図 3.46、3.47 は東西風と EP フラックスの QBO*W および QBO*E である。EP フラッ
クスにおいては 1 月と同様に明瞭な違いは見られなかったが、風に関しては赤道域で異
なる構造を示した。U50*は 1 月と同様の分布を示すが、U20*は 1 月や U50*とは逆の風
の場になっており、U20*W(E)は赤道域で東風(西風)域が分布している。これは U50 で
は赤道方向へ伝わりやすく、U20 は伝わりにくい構造を示していた EP フラックスの偏
差と対応性がよい(図 3.40)。
このような風の分布の違いが生じたために、U50 と U20 が異なるシグナルを示した
可能性が考えられる。また、上記の考察と一致した結果となっていることが挙げられる。
次に、気温と残差子午面循環についても同様に調べていく。
図 3.48、3.49 は気温と v * 、
w * の QBO*W、QBO*E を表している。1 月と同様に両者に差はほぼ見られないが、前
述の北向きの流れが生じていた領域は実際も南風域であることが分かる。また、U20 の
60~65N の地表付近で生じていた低温偏差は北風域であった。
以上のことから、U50 は 1 月と類似した分布を示すが、赤道域を除く北半球のほぼ全
域において成層圏~対流圏までつながるようなシグナルが明瞭であり、QBO に伴った
風のパターンが顕著に現れることが示唆される。気温に関しては、波が西風を減速させ
たことによって中緯度対流圏上層で収束が起き、下降流が生じることで鉛直方向に広が
りをもつ高温域が現れたことが推察される。
51
U20 においては注目したいのは、対流圏を中心に偏差が現れたことである。また、極
域のシグナルが不明瞭であることと、低緯度が東風域となっているために北半球対流圏
を中心に波が赤道・上方へ伝播しにくくなる偏差が 1 月や U50 では見られなかったこ
とから、1 月や U50 とはプロセスが異なる可能性がある。気温に関しては U50 と同じ
く下降流が生じたことにより、対流圏中層~下層で高温域となるシグナルが現れたこと
が考えられる。
52
図 3.38:帯状平均した 11 月の東西風 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは薄いオレンジは 90%、
濃いオレンジは 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
図 3.39:帯状平均した 11 月の気温 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは薄いオレンジは 90%、
濃いオレンジは 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
53
図 3.40:帯状平均した 11 月の東西風(コンター)と EP フラックス(ベクトル)U50 回帰係数(左)と U20 回帰
係数(右)。カラーは薄いオレンジは 90%、濃いオレンジは 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
図 3.41:帯状平均した 11 月の DF U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは 5e-07m/s2 間隔。
54
図 3.42:帯状平均した 11 月の DF + fv U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは 5e-07m/s2 間隔。
*
図 3.43:帯状平均した 11 月の説明変数によって求めた 10 月の DF + fv U50 回帰係数(左)と U20 回帰係
*
数(右)。カラーは 5e-07m/s2 間隔。
55
図 3.44:帯状平均した 10~11 月にかけての DF + fv U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは
*
5e-07m/s2 間隔。
図 3.45:帯状平均した 11 月の気温(コンター)と子午面残差循環(ベクトル)U50 回帰係数(左)と U20 回帰係
数(右)。カラーは薄いオレンジは 90%、濃いオレンジは 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
56
図 3.46:帯状平均した 11 月の東西風(カラー)と EP フラックス(ベクトル)U50*W(左)と U50*E(右)。カラ
ーは 5m/s 間隔。
図 3.47:帯状平均した 11 月の東西風(カラー)と EP フラックス(ベクトル)U20*W(左)と U20*E(右)。カラ
ーは 5m/s 間隔。
57
図 3.48:帯状平均した 11 月の気温(カラー)と子午面残差循環(ベクトル)U50*W(左)と U50*E(右)。カラー
は 10K 間隔。
図 3.49:帯状平均した 11 月の気温(カラー)と子午面残差循環(ベクトル)U50*W(左)と U50*E(右)。カラー
は 10K 間隔。
58
3.4.2 水平場
1 月と同様に 11 月についても対流圏の水平分布について示していく。
図 3.50 は地上気温の QBO 回帰係数である。U50 は高緯度に有意なシグナルが現れ、
ユーラシア大陸に高温域、北アメリカ~大西洋に低温域が分布している。一方 U20 は
中緯度のユーラシア大陸中央~日本の東、北アメリカ東岸において有意な高温域が分布
している。ここで注目したい箇所は、日本付近に有意なシグナルが現れていることであ
る。このことから、日本付近は 20hPa が西風のときに暖かく、東風のときに冷たくなる
傾向があるようである。
これらを東西平均場と対応させて考える。気温についての東西平均場では、対流圏中
層~下層において U50 は 55~60N 付近、U20 は 35~50N 付近で高温となる分布を示し
ていた。このような U50 が高緯度側、U20 が中緯度側に主に高温偏差が現れる様子は、
水平分布からも見られることが分かった。
次に、1 月と同様に 300hPa ジオポテンシャルハイトに関して調べてみる(図 3.51)。U50
の北アメリカ西岸や大西洋北部以外で、両回帰係数において高圧域に高温偏差、低圧域
に低温偏差が分布しており、ほぼ全域で気温と気圧の対応性がよいことが分かった。ま
た、U50 では極域で低圧、高緯度で高圧となるような波数 1~2 程度の分布を示した。
U20 においては中高緯度に波数 2~3 程度の波列が見られる。
このような波の影響の可能性は東西平均場でも示されたことから、一致した分布をし
ていることが分かった。
1 月と同様に、地上気温のシグナルが現れる地域について注目する。
表 3.2 は QBO 回帰係数の大きかった地点及びその値である。U50 ではロシアの北部、
プトラナ山地付近が高温偏差域にあたり、50hPa 東西風が約 12m/s の西風(+1 標準偏差)
となる年には約 1.9 度気温が上昇することが結果として得られた。また、グリーンラン
ド海西部が低温偏差域になっており、同様の年には約 1.3 度低下する結果となった。
同じく U20 では日本周辺が高温偏差域になっていることは上述の通りであるが、値
の大きい日本海付近では 20hPa 東西風が約 18m/s の西風になると、約 0.6 度気温が上昇
する結果となった。また、カナダの北西部、アラスカの東では約 1.4 度気温が下降する
結果が得られた。
確認のために、日本付近における地上気温の観測値と 6 つの説明変数を用いて求めた
予測値を時系列で比較してみる(図 3.52)。この二つの時系列の重相関係数は 0.696 と高
59
く、有意水準 99%で有意であった。この事実からも、日本付近への影響は示唆されうる。
他の地点においても表 3.2 からうかがえるように相関が高く、同じく有意水準 98%以上
で有意であることから、影響が生じていることが考えられる。
これらのことから、1 月だけでなく、11 月においても QBO に伴った変動は対流圏で
もシグナルとして現われ、地表付近にも影響を及ぼすことが示唆される。また日本付近
において、QBO が地上気温の変動要因の 1 つとして挙げられる可能性を示した。
60
図 3.50: 11 月の地上気温 U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは薄いオレンジが 90%、濃いオ
レンジが 95%有意な領域、コンターは 0.4K 間隔。
図 3.51: 11 月の 300hPa ジオポテンシャルハイト U50 回帰係数(左)と U20 回帰係数(右)。カラーは薄い
オレンジが 90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 10m 間隔。
観測値と予測値
index
標準偏差 回帰係数
緯度
経度
U50
12.4329
1.87463
65N
95E
0.442984
-1.27085
72.5N
15W
0.577721
U20
17.766
0.591217
37.5N
132.5E
0.696323
-1.35836
67.5N
137.5W
0.39435
の重相関係数
表 3.2:地上気温において大きなシグナルが現れた 11 月の U50、U20 標準偏差及び緯度、経度、その地点
における観測値と予測値の重相関係数。
61
図 3.52:1957~2001 年(45 年間)の 11 月における日本付近(37.5N、132.5E)の地上気温観測値(黒)と予測
値(青)の時系列図。
62
第4章
まとめ
4.1 結果のまとめ
成層圏 QBO が対流圏の風や気温などの各気象要素に対してどの程度、どのようなプ
ロセスで影響を与えるかを調べるために、線形重回帰式を用いて研究を行った。その結
果は以下の通りである。
重回帰式の整合性を確かめるために求めた帯状平均した各気象要素の各目的変数の
年平均は、一般的な分布を示していた。但し、20hPa より上空では一致しない傾向が、
火山活動回帰係数で見られた。これは本研究で 1979 年の衛星観測が始まる以前からの
ERA40 の気象データを用いたためである可能性がある。
上記の QBO 回帰係数は主に成層圏高緯度にシグナルが現れており、QBO 西風時に高
緯度で西風、中緯度で東風となるようなパターンを示した。
東西に一様な分布を示す QBO は、各気象要素に対するシグナルも成層圏や対流圏で
一様であるかを調べたところ、成層圏・対流圏中高緯度では非一様になる傾向を示した。
これは、QBO に伴う波の作用によって現れていることを示していることから、波によ
る対流圏中高緯度への影響が期待されることを表した。
年平均で現れた中緯度と高緯度の東西風のシーソーは北半球環状モード(NAM)に類
似していたことから、東西風の QBO 回帰係数の年変化に注目すると北半球冬季に強い
シグナルがあり、QBO 西風(東風)時に高緯度で西風(東風)偏差、中緯度で東風(西風)偏
差が生じた。特に成層圏~対流圏では 1 月、対流圏では 11 月に値が大きかったことか
ら、これらの月に対流圏への影響があることが示唆された。
月平均した 1 月、11 月の帯状平均場の結果について、次に示す。
63
1 月 -U5050hPa 東西風で定義した QBO(U50)が西風のとき、大規模な西風、低温偏差が北半球
高緯度の成層圏~対流圏にかけて見られ、過去の研究と一致した分布を示した。対流圏
の下層、55~60N 付近には U50 西風時に高温偏差になると共に、北向きの流れが生じ
ていた。これはその上層で波が収束し、西風を減速させることで生じた下降流によるも
のではないかと示唆される。
1 月 -U20各気象要素において、20hPa 東西風で定義した QBO(U20)回帰係数も、北半球のほぼ
全域で U50 と同様の分布を示したが、
有意性が見られたのは対流圏下層だけであった。
11 月 -U50東西風において、北半球では成層圏~対流圏にかけて 1 月よりも顕著にシグナルが現
れており、高緯度で西風、中緯度で東風、低緯度で西風となる三極子構造を示していた。
これは冬季平均により求められた過去の研究と一致しているが、11 月においても現れ、
かつ、より明瞭に見られることが分かった。気温に関しては、55~60N 付近の高温域が
1 月よりも鉛直方向に広く、対流圏中層に至るまで分布しており、下降流による偏差だ
と考えられる。
11 月 -U20対流圏に注目すると、東西風において低緯度の東風域が顕著な違いとして現れた。そ
のため波が上方だけでなく赤道方向にも伝わりにくくなったことが示唆される。これは
上で示した結果と逆の傾向を示している。北半球成層圏の西風域には有意性が認められ
なかったことから、この東風域が対流圏のシグナルをもたらしたのではないかを推察さ
れる。気温に関しては 35~50N 付近の対流圏下層~中層に高温域が現れ、下降流によ
り生じた可能性がある。
水平場に関しては下記の通りである。
地上気温の QBO シグナルを水平方向に調べた結果、日本周辺への影響が示唆された。
具体的には本研究の結果によると、U20 が約 18m/s の西風であると日本海付近で約 0.6
度気温が上昇することを示した。これは IPCC2007 による過去 100 年間の気温上昇率(約
0.75 度)に匹敵する程度である。他の地点ではカナダの北西部やロシアの中部で大きな
値を示す傾向が見られた。
また、地上気温の分布は高度場と一貫性を示していた。
64
4.2 結論
本研究の結論は以下の通りである。
・線形重回帰式によりトレンド、太陽活動、ENSO、火山活動の効果を取り除いても、
QBO のシグナルは対流圏に現れる。
・ 主に北半球の成層圏~対流圏において、1 月だけでなく、11 月にも QBO のシグナ
ルが顕著に現れる。
・ 1 月の 20hPa 東西風、11 月の 50・20hPa 東西風で定義した QBO のシグナルは、北
半球の地表付近でも現れる。
・日本付近は 11 月、20hPa の東西風が西風だと高温、東風だと低温になりやすい。
4.3 今後の課題
成層圏の現象である QBO が、地上気温をはじめとする対流圏へ影響を与える可能性
について示したが、そのメカニズムは明確にはならなかった。11 月の U20 において、
東風域が対流圏赤道域に現れたのと同時に、南半球の成層圏に有意な西風域が見られた
ことから、南半球の影響も否定できない。しかし詳細については不明であり、更なる解
析を進めることが望ましい。研究の発展によって、中長期予報や現象の理解に貢献する
ことが出来ると期待している。
65
謝辞
本研究を進めるにあたり、指導教官及び主査である山崎孝治教授には、データの解析
方法から結果の考察、気象や物理の知識に至るまで、様々なご助言をいただき、熱心に
指導してくださいましたことを心より感謝いたします。また、副指導教官と副査をして
下さいました長谷部文雄教授には、解析結果や考察に関して多面的なご意見をいただき
ました。藤原正智准教授には急な申し出だったのにもかかわらず副査を受けてくださり、
研究に関する的確なアドバイスをいただきました。深く御礼申し上げます。気象研究所
の柴田清孝さんには解析結果に関するコメントをいただいただけでなく、ご自身のモデ
ル結果について教えて下さいました。また、沢山のアドバイスをいただいた大島和裕先
輩をはじめ、山崎研究室の吉田康平君、澁谷剛君、竹村勇一郎君、岡田靖子先輩、宇田
川佑介先輩、嶋田宇大君、石川泰君、田口裕貴君、Prevsuren さん、他研究室の内藤智
志君、阿部義子さん、同院生部屋の平池友梨先輩、稲飯洋一先輩、そして本学院所属及
び理学部の先輩方、同期や後輩の皆さんには大変お世話になりました。最後に、2 年間
の研究生活を支えてくださいました家族、友人、知人に深く感謝いたします。
66
付録
以下のような月ごとの各回帰係数および決定係数を示す。
帯状平均東西風・気温・ジオポテンシャルハイト
北半球地上気温
重回帰決定係数
QBO 決定係数
67
図 1: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均東西風の U50 回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
68
図 2: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均東西風の U20 回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
69
図 3: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均東西風のトレンド回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
70
図 4: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均東西風の太陽活動回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
71
図 5: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均東西風の ENSO 回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
72
図 6: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均東西風の火山活動回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.6m/s 間隔。
73
図 7: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均気温の U50 回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、濃
いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
74
図 8: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均気温の U20 回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、濃
いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
75
図 9: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均気温のトレンド回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
76
図 10: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均気温の太陽活動回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
77
図 11: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均気温の ENSO 回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
78
図 12: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均気温の火山活動回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.2K 間隔。
79
図 13: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均ジオポテンシャルハイトの U50 回帰係数。カラーは薄い
オレンジが 90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 5m 間隔。
80
図 16: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均ジオポテンシャルハイトの U20 回帰係数。カラーは薄い
オレンジが 90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 5m 間隔。
81
図 17: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均ジオポテンシャルハイトのトレンド回帰係数。カラーは
薄いオレンジが 90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 5m 間隔。
82
図 18: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均ジオポテンシャルハイトの太陽活動回帰係数。カラーは
薄いオレンジが 90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 5m 間隔。
83
図 19: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均ジオポテンシャルハイトの ENSO 回帰係数。カラーは薄
いオレンジが 90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 5m 間隔。
84
図 20: 9 月(左上)~8 月(右下)における帯状平均ジオポテンシャルハイトの火山活動回帰係数。カラーは
薄いオレンジが 90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 5m 間隔。
85
図 21: 9 月(左上)~8 月(右下)における北半球の地上気温の U50 回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.4K 間隔。
86
図 22: 9 月(左上)~8 月(右下)における北半球の地上気温の U20 回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.4K 間隔。
87
図 23: 9 月(左上)~8 月(右下)における北半球の地上気温のトレンド回帰係数。カラーは薄いオレンジが
90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.4K 間隔。
88
図 24: 9 月(左上)~8 月(右下)における北半球の地上気温の太陽活動回帰係数。カラーは薄いオレンジが
90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.4K 間隔。
89
図 25: 9 月(左上)~8 月(右下)における北半球の地上気温の ENSO 回帰係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.4K 間隔。
90
図 26: 9 月(左上)~8 月(右下)における北半球の地上気温の火山活動回帰係数。カラーは薄いオレンジが
90%、濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.4K 間隔。
91
図 27:9 月(左上)~8 月(右下)における北半球の地上気温の重回帰決定係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.4 間隔。
92
図 28:9 月(左上)~8 月(右下)における北半球の地上気温の QBO 決定係数。カラーは薄いオレンジが 90%、
濃いオレンジが 95%有意な領域、コンターは 0.1 間隔。
93
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