原子力工事への取り組み

技術・製品の紹介
原子力工事への取り組み
②日立製作所は GE(ジェネラルエレクトリック)社を
1. はじめに
2006 年 7 月 1 日付にて,技術本部内に原子力部が設置
2007 年 7 月に原子力分野で再編・合併し,日立 GE
ニュークリア社を設立.
された.
設置された目的は,以下の通りである.
①今後の原子力発電所の改造・高経年化対策・増設・新
③三菱重工業はアレバ社と 2006 年 10 月の原子力分野で
の協調に合意.
設計画の情報をいち早く収集し,当社の得意商品であ
近年の化石燃料の需要逼迫の顕在化や地球温暖化対応
るステンレスライニング工事やタンク類の製作・建設
の高まりを背景として,欧米各国での原子力発電の見直し,
工事を早期に計画できる体制を整える.
リプレース建設の現実化,あるいは途上国での原子力発電
②お客様と社内間の調整を行い,お客様に安心・安全・
適正品質を提供し,屈強なるパートナーシップを構築
の新規導入といった動きが加速し,世界の原子力発電所の
建設需要は今後拡大の傾向にある.
わが国も,エネルギーセキュリティを前面に出し,
「新・
する.
表1に原子力部の主な業務を示す.
国家エネルギー戦略」を策定しその柱となる「原子力立国
計画」を 2006 年 8 月に取りまとめ,原子力を推進する確
2. 原子力を取り巻く環境
固たる政策と具体的プランが明示された.
2005 年 10 月,「原子力政策大綱」が閣議決定され原子
わが国では,2006 年時点において,55 基の原子力発電
力発電や原子燃料サイクルに関する主な方針が出された.
所が稼動している.そのうち,運転開始 30 年を迎えたプ
地球環境問題やロシアの資源ナショナリズムの高まり
ラントは 12 基あり,2009 年には 20 基となる.また,2015
から,世界中でエネルギーセキュリティが大変重要視され
年には 30 基を超えることとなる.
各電力会社はプラント運転開始 30 年を迎えるまでに原
るようになった.
こういう流れの中で,原子力がその中核を担わなければ
子 炉 施 設 の 経 年 化 事 象 に 着 目 し た 設 備 評 価 ( PLM :
ならないとの認識が,日本国内を含め世界的に高まってい
Products
る.
ル管理)を行い,今後の保全活動に追加すべき項目を抽出
また,原子力産業の国際的な再編も行われ,グローバル
な合従連衡が進められた.欧米各メーカーは長期にわたる
Lifecycle
Management:製品ライフサイク
し,それ以外の保全活動についても適正な維持・管理を行
っている.
需要低迷に伴い,総合産業である原子力産業として,必要
しかし,現状のプラントの高経年化対策を行うだけでな
な企業規模を維持していくために,メーカー間の国境を越
く,2030 年頃からリプレースや新規建設を実施しないと
えた再編,集約化が進行し,この結果,海外の原子力産業
現在のエネルギーの消費水準は維持できなくなることが
は寡占化された.
「原子力立国計画」にも述べられている.
①東芝は WH(ウエスティングハウス)社を 2006 年 10
3.
月に買収.
表1
グループ
主な業務
主な業務
原子力工事への取り組み
わが国での最初の商業用原子力発電所は 1966 年 7 月に
営業運転を開始した日本原子力発電㈱の東海発電所
(GCR:ガス冷却炉,16.6 万kW)である.
・原子力関連設備の技術企画・管理
・原子力関連工事の施工前段階の個別計画
・技術開発
企画グループ
・受注活動に関する技術的支援
・技術情報の収集・展開
・技術方針の企画,立案,推進
・積算業務
・お客様窓口
管理グループ
・原子力関連工事の施工段階での個別管理
・全社の原子力発電作業従事者の放射線管理手帳の統括管理
36・原子力工事への取り組み
当社は 1970 年に三菱重工業㈱神戸造船所殿より受注し
た関西電力㈱美浜発電所第 1 号機の燃料取替用水タンク
(溶接検査対象品,第 3 種容器,1,200m3)の建設工事が
最初の原子力工事への取り組みとなった.
以来,37 年間にわたり PWR(加圧水型原子炉)を中心
にステンレスライニングやタンク・容器類などの一次系溶
接構造物の製作・建設工事に取り組んできた.
TAKADA TECHNICAL REPORT Vol.18 2008
また,核燃料サイクル事業の一環である日本原燃㈱殿六
・検査ピット
ヶ所再処理工場の建設工事においては,1992 年から配管
・キャスクピット
工事やドリップトレイ工事にも参画し現在に至っている.
・キャナルピット
当社の原子力工事の主要部門である北九州工場では,電
・サンプピット
気事業法/原子力および火力発電機器を対象に「溶接方法
・燃料取替用水ピット
の確認」また,原子炉等規制法/原子炉施設を対象に「溶
・復水ピット
接方法の認可」,再処理施設を対象に「溶接方法の認可」
・補助給水ピット
を取得しており,原子力工事への対応を行っている.
この間,種々の溶接施工法の認可(電気事業法関係で
等
2.タンク類(殆どの PWR でユーザー,メーカー経由)
(1)燃料取替用水タンク
177 件,原子炉等規制法関係は再処理施設で 69 件,原子
(2)補助タンク
炉施設で 135 件)を取得・維持しており,また,表2に
(3)復水タンク
示す原子力工事関連特許の取得も行っている.
(4)一次系純水タンク
(5)ほう酸タンク
今後は,
①過去 37 年間にわたり培ってきた原子力機器の製作技術
(6)モニタータンク
(7)ブローダウンタンク
の維持・向上を図る.
②技術・技能の直営化(本工主義)を継続する.
③電力会社殿やプラントメーカー殿へ技術提案を行う.
(8)その他,一次系タンク類
等
3.放射性廃棄物処理設備(メーカー経由)
(1)復水処理設備/脱塩塔製作
④保全工事への参画.等
製作・建設工事のみならず,保全工事へも参画し,当社
(2)雑固体焼却設備/機器製作
の原子力に対する取り組みの実績を評価して頂き,原子力
(3)セメント固化設備/機器製作
分野への更なる参入を目指していきたい.
(4)アスファルト固化設備/機器製作
(5)ドライクリーニング設備/機器製作
表2
原子力工事関連特許の取得状況
名 称
登録番号
(6)プラスティック固化設備/機器製作
等
4.配管工事(メーカー経由)
(1)雑固体焼却設備配管工事
角型槽のライニング構築方法
特許第1866199 号
ライニング槽の構築方法
特許第2128379 号
自動TIG多層盛り溶接方法及びその装置
特許第2620187 号
(4)非常用発電設備機器据付配管工事
バキュームリリーフ弁
特許第3821887 号
(5)クリプトン回収技術開発設備配管工事
(2)主給水系統クリーンアップ配管工事
(3)蒸発固化設備配管工事
等
5.補助ボイラー設備
<参考>
当社における原子力プラントの納入実績(主要工事を抜粋)
1.ステンレスライニング工事(ユーザー,メーカー経由)
(1)九州電力㈱玄海原子力発電所 1,2 号機
(1)電気ボイラー設備(蒸気発生器等)
6.非常用発電設備
(1)燃料油貯油槽製作
等
7.再処理設備(メーカー経由)
(2)九州電力㈱玄海原子力発電所 3,4 号機
(1)非常用DG設備
(3)九州電力㈱川内原子力発電所 1,2 号機
(2)ドリップトレイ・セルライニング工事
(4)関西電力㈱美浜発電所 3 号機
(3)アクティブギャラリー配管工事
(5)北海道電力泊発電所 3 号機(2007 年 12 月現在,
(4)ジルコニウム配管
建設中)
・使用済燃料ピット
地下重油タンク製作
(5)第一種圧力容器の開放点検
中村
等
民夫(技術本部
原子力部)
・原子炉キャビティーピット
TAKADA TECHNICAL REPORT Vol.18 2008
原子力工事への取り組み・37