の1例 - 第6回日本Acute Care Surgery学会学術集会

Japanese Journal of Acute Care Surgery (JJACS) Vol. 4 No.2
Japanese Journal of
Acute Care Surgery (JJACS)
Vol. 4 No.2, 2014
第6回
日本Acute Care Surgery学会 学術集会
プログラム・抄録
外科学の原点がここにある
2014
9/20 sat .21 sun
[
]
[
]
ホテル青森
青 森 市 堤 町1−1−2 3 T E L 017 ‒ 7 75 ‒ 4141
会 長 / 袴田
健一
弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座教授
第6回 日本Acute Care Surgery学会 学術集会
会 長
袴田 健一
弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座 教授
事務局
弘前大学大学院医学研究科 消化器外科学講座
〒036-8562 青森県弘前市在府町 5 番地
TEL: 0172-39-5079 FAX: 0172-39-5080
E-mail: [email protected]
第6回
日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
テ ー マ
外科学の原点がここにある
会 期
2014 年 9 月 20 日土 ~ 21 日日
(9 月 20 日 15 時 ~ 21 日 15 時)
会 場
ホテル青森
〒030-0812 青森県青森市堤町一丁目1-23
TEL:017-775-4141
会 長
袴田 健一
(弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座教授)
事 務 局
弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座 内
〒036-8562 青森県弘前市在府町 5 番地
TEL:0172-39-5079
FAX:0172-39-5080
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
092
第 6 回日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
ご挨拶
この度は、第 6 回日本 Acute Care Surgery 学会学術集会の開催を仰
せつかり、会員の皆様には心から御礼申し上げます。
本学術集会では、昨年の倍以上の 270 余もの演題を応募いただきまし
た。Acute Care Surgery の認知度の拡がりや、発展途上分野として課
題が多いことなどがその背景と感じています。また、今回は初めて地方
都市の青森で開催させていただきます。参加者の皆様には多少ご不便を
おかけしますが、首都圏・近畿圏とは異なる地方の医療環境を知ってい
第 6 回日本 Acute Care Surgery
学会学術集会 会長
弘前大学大学院医学研究科
消化器外科学講座 教授
袴田 健一
ただくことも、日本型 Acute Care Surgery のあり方を議論する上で有
益ではないかと期待しております。
さて、本学術集会では、3 つの点に心がけてプログラムを組ませてい
ただきました。
第一は、一般演題を大切にすること。Acute Care Surgery に関する
ご発表は、一例一例が治療密度の濃い症例を含む内容ばかりです。そこ
で、一般演題を学会日程の中心に据え、ポスターと PC 動画をまじえな
がら、十分にご議論いただけるだけの時間配分をとりました。faculty
member のお二人のご司会のもと、内容の濃い議論が展開されることを
期待しています。
第二は、若手の意見と視点を大切にすること。パネルディスカッショ
ン 1「若手から見た Acute Care Surgery 研修の現状、今求める研修とは」
では、若手の自由闊達な本音討論を期待します。また、若手の目標とな
る外傷手術手技と対応する基本手術手技について、エキスパートの先生
7 名の教育講演をお願いしました。外傷外科手術指南塾と合わせてご参
加ください。
第三は、学会の継続性を大切にすること。学会として継続的に取り組
むべき課題については、各委員会に企画立案をいただき、主要演題とし
て取り上げました。パネルディスカッション 2 では「Acute Care Surgeon
に求められる技術的到達度と養成カリキュラムの工夫」、ワークショッ
プでは「外傷性十二指腸穿孔の標準術式」について検討いただきます。
さらに、本学会の重要なテーマである敗血症治療戦略や、Up-to-date
なテーマとして、超高齢化社会の到来ともに急増している Oncologic
emergency をシンポジウムに取り上げました。また、企業共催セミナー
では、内視鏡外科手術の救急分野への導入、救急医療体制と医療連携、
サイトカインと臓器障害等のテーマについてご講演いただく予定です。
9 月後半の青森は秋を迎えています。関東以西との気温差が顕著で、
青森の過ごしやすさが最も感じられる季節です。また、何と言っても恵
みの秋です。日夜患者さんのために汗をかいて働いておられる Acute
Care Surgeon が、本学術集会での交流を通じて一層元気になっていた
だけるよう、教室員一同、精一杯の準備を進めて参りました。大間のマ
グロをはじめとする青森の豊な食文化もご堪能ください。明日の Acute
Care Surgery を切り開く大きなエネルギーとしていただければ幸いです。
093
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
参加者へのご案内
1 参加登録
参加費
参加費区分
当日受付
オンライン事前受付
医師(学会会員)
10,000 円
8,000 円
医師(学会会員以外)
12,000 円
10,000 円
初期研修医・医師以外の職種
5,000 円
3,000 円
無料
無料
医学生
受付場所;ホテル青森 3 F 総合受付
受付時間;9 月 20 日(土):9:30 ~ 19:30
9 月 21 日(日):7:00 ~ 14:00
2 参加者へのお願い
演者・共同演者ともに本学会会員に限ります。未入会の方は、日本 Acute Care Surgery 学会ホーム
ページ(http://www.jsacs.org/)から入会受付をお済ませください。
なお、学会期間中は 3 F に「新入会・年会費受付」を設置いたします。
3 クローク
場 所;3F
受付時間;20 日(土):9:30 〜 22:00
21 日(日):7:00 〜 15:00
4 インターネット
講演会場内およびロビーにて、無料 LAN をご利用いただけます。
5 ホスピタリティコーナー
会場 3 F 第 1 会場前に、ドリンクをご用意しております。
6 モーニングセミナーの参加について
参加登録をされますと参加証にモーニングセミナー抽選券がついております。モーニングセミナー
に参加された先生方から抽選で 5 名の先生方に「おはよう賞」としまして、記念品をお贈りします。
朝早くからのセミナーですが、ご参加のほどよろしくお願いします。
7 会期中は、原則として電話のお取り次ぎ、会場内でのお呼出放送は行いません。お呼出をご希望の
場合は受付付近に用意している掲示板をご利用下さい。また、会場内ではマナーモードに設定し、
携帯電話の呼び出し音を出さないようご注意願います。
8 会期中のお問い合わせ先
第 6 回日本 Acute Care Surgery 学会学術集会事務局
ホテル青森 3 F 電話番号:017-775-4141
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
094
発表者へのご案内
1 PC 受付
受付場所;ホテル青森 3 F 第 4 会場前
受付時間;9 月 20 日(土):9:30 ~ 19:30
9 月 21 日(日):7:00 ~ 14:00
2 発表用 PC
口演発表は、パワーポイント(Windows および Macintosh)を用いた PC による発表のみとします。
会場では Windows 版 PowerPoint 2003、2007、2010、2013 がインストールされた Windows PC を
準備します。
Macintosh はご用意しておりませんので、Macintosh をご利用の方は、必ずご自身の PC・AC アダ
プター・外部出力変換コネクターを忘れずにご持参ください。
3 発表形式
データ持ち込みの場合
データは CD-R または USB フラシュメモリに保存してお持ちください。
USB フラシュメモリは最新のウイルス駆除ソフトでウイルスチェックを済ませてください。
メディアには発表日時、会場、セッション名、演者氏名、所属を記載したラベルを添付することを
お勧めします。
データファイル名には演題番号、発表者の氏名を必ず付けてください。
フォント;Windows で標準装備されているフォントのみ使用可能です。
日本語;MS ゴシック、MSP ゴシック、MS 明朝、MSP 明朝
英 語;Times New Roman、Arial、Arial Black、Arial Narrow
Century、Century Gothic、Courier New、Georgia
上記以外のフォント使用の場合、トラブルが発生する可能性があります。
動 画;Windows Media Player 11(標準コーデック)で動作する形式をご用意ください。動画
ファイルは PowerPoint ファイルと同一の階層に保存してください。また、保存したデー
タはコピーに使用した PC とは別の PC で必ず動作確認を行ってください。
PC 持ち込みの場合
Windows、Macintosh のどちらも持ち込み可能です。受付時に PC 本体とアダプター(Macintosh
の場合は外部出力変換コネクター)を一緒に PC 受付までお持ちください。
外部出力の接続は、ミニ D-sub15 ピンに限ります。PC によっては変換コネクターが必要な機種が
ありますので、お持込の PC がミニ D-sub15 ピンに対応しているかご確認ください。
発表中にバッテリーが切れることがあるため、電源アダプターを必ずお持ちください。
発表中にスクリーンセイバーや省電力機能によって電源が切れないよう、予め設定を確認・変更を
お願いします。
発表終了後、PC は PC 受付でご返却します。
095
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
4 一般演題(P&PC)の発表形式について
ポスター形式で発表して頂き、動画のある方のみ自身のコンピューター
もしくはタブレット等を持参して頂きまして、動画の供覧をしていただ
きます(図のような形で行います)。
持参のコンピューターは、そのまま会場にお持ちいただき、自身の操作
で動画を供覧してください。設置は係りの者がいますので、お申し付け
ください。
発表イメージ
ポスターのサイズは幅 90 cm ×高さ 160 cm です。右記図を参照
してください。
*演題番号はパネル左上に 20cm × 20cm の表示を事務局で用意
します。
演題番号
演題名・所属・演者氏名
5 学会事務局からの連絡
優秀発表として選出された演題は、本学会誌への投稿推薦がされます。選出された先生方は本学会
誌への投稿をお願いします。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
096
発表について
1.発表時間を厳守してください。
2.発表時間:
セッション名
発表時間
質疑時間
その他
シンポジウム1
6分
4分
シンポジウム2
6分
4分
パネルディスカッション1
6分
なし
総合討論有
パネルディスカッション2
司会指定
司会指定
司会指定
ワークショップ
司会指定
司会指定
司会指定
シンポジウム2関連演題
6分
3分
パネル1関連演題
5分
3分
パネル2関連演題
5分
3分
ワークショップ関連演題1
6分
3分
ワークショップ関連演題2
6分
3分
一般演題(P & PC)
5分
4分
3.スムーズな進行のため、「発表者ツール」の使用はお控えください。発表原稿が必要な方は、
あらかじめプリントアウトした物をお持ちください。
4.発表時間開始 10 分前までに、会場前方左側の「次演者席」に着席してお待ちください。
座長について
1.口演発表
ご担当セッションの開始 10 分前までに、会場前方右側の「次座長席」に着席してお待ちくだ
さい。
2.
一般演題(P&PC)発表
セッション開始10分前までに、ポスター会場
(第3会場、第5会場)
座長受付にお越し下さい。
座長リボン、指示棒等をお渡しします。
開始の合図はありませんので、開始時刻になりましたら自動的に開始ください。
3.発表・質疑時間の厳守をお願いいたします。
4.セッション終了後に、学会本部提出用のスコア表を提出ください。
抄録集での記載について
ご所属やお名前、共著者、抄録本文などは登録いただいた内容をそのまま記載させていただいた都
合上、記載形式に不統一、不備があることをご了承ください。
097
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
会場アクセス案内
陸 奥 湾
フェリー埠頭
青森県観光物産館アスパム
ベイブリッジ
ガーラタウン
青森市
文化会館
国道7号線
国道4号線
NTT
東北新幹線
平和公園通り
観光通り
JR奥羽本線
青い森鉄道
新青森駅
青森市役所
至浅虫
至弘前
青森県庁
旧税務署通り
新町通り
柳町通り
青森駅
ホテル青森
ねぶたの家
ワラッセ
至青森中央I.C
至青森空港
至八戸
ホテル青森
〒030-0812 青森県青森市堤町1丁目1-23
Tel(017)775-4141 Fax(017)773-5201
【JR をご利用の場合】
◦青森駅下車、駅よりタクシーで約5分/徒歩で約25分
◦新青森駅下車、駅よりタクシーで約20分
【飛行機をご利用の場合】
青森空港より…
◦タクシーで約 30 分
◦バスにて青森駅まで約35分
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
098
会場案内(フロアマップ)
第3会場
あすなろ・はまなすの間
3F
学会本部
富士の間
総合受付
機器展示
ドリンクコーナー
PC 受付
第4会場
善知鳥の間
第2会場
第1会場
孔雀西の間
孔雀東南の間
4F
理事会会場
桃
第5会場
錦鶏の間
099
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
各種会合のご案内
外傷外科指南塾
日 時;2014 年 9 月20日
(土)10:00~14:00
会 場;ホテル青森3F 第2会場(孔雀西の間)
※本学術集会参加者へは受講費 2,000 円(会員・非会
員問わず)でご参加頂けます。
学術集会非参加者は、通常通り、会員 10,000 円・
非会員 15,000 円です。
理事会
日時;2014 年 9 月 20日
(土)11:30~13:00
会場;ホテル青森 4F 桃
評議員会
日時;2014 年 9 月 20日
(土)13:15~14:45
会場;ホテル青森 3F 第4会場(善知鳥の間)
情報交換会(全員懇親会)
日時;2014 年 9 月 20日
(土)20:00~22:00
会場;ホテル青森 3F 第1会場(孔雀東南の間)
参加費無料でございますので、是非ともご参加ください。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
100
日 程 表
第 1 日目(9 月 20 日(土))
第 1 会場
第 2 会場
第 3 会場
第 4 会場
(3F 孔雀東南の間) (3F 孔雀西の間)(3F あすなろ・はまなすの間)(3F 善知鳥の間)
第 5 会場
(4F 錦鶏の間)
3F 廊下
10:00
11:00
10:00~14:00
12:00
外傷外科指南塾
13:00
13:15~14:45
14:00
評議員会
ポスター貼付
15:00
ポスター貼付
開 会 式
15:05~ 16:30
パネルディスカッション 1
若手から見た Acute Care Surgery
研修の現状、今求める研修とは
16:00
司会:小池 薫・河野 元嗣
16:30~17:10
教育講演 1・2
Trauma Surgery と General Surgery
の相互技術交流:肝手術
17:00
司会:益子 邦洋・葛西 猛
17:10~17:50
教育講演 3・4
Trauma Surgery と General Surgery
の相互技術交流:胸部・大血管手術
司会:横田 順一朗・平 泰彦
17:50~18:30
教育講演 5・6
18:00
Trauma Surgery と General Surgery
の相互技術交流:膵手術
司会:坂本 照夫・村尾 佳則
18:30~20:00
パネルディスカッション 2
19:00
Acute Care Surgeon に求められる技術
的到達度と養成カリキュラムの工夫
司会:大友 康裕・山下 裕一
20:00
全員懇親会
22:00
101
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
ポスター展示
ポスター展示
機器
展示
日 程 表
第 2 日目(9 月 21 日(日))
第 1 会場
第 2 会場
第 3 会場
第 4 会場
(3F 孔雀東南の間) (3F 孔雀西の間)(3F あすなろ・はまなすの間)(3F 善知鳥の間)
第 5 会場
(4F 錦鶏の間)
3F 廊下
7:00
7:30~8:10
モーニングセミナー
内視鏡下外科手術を救急医療にどの
ように導入するか?したか?
8:00
司会:山下 裕一
8:15~9:45
9:00
10:00
9:55~10:25
教育講演 7
Trauma Surgery と General Surgery の 相互技術交流:Oncologic emergency
司会:坂井 義治
9:55~11:07
10:25~12:05
シンポジウム 2
Oncologic Emergency に対する
Acute Care Surgery の現状と課題
司会:真弓 俊彦・松原 久裕
(膵十二指腸損傷)
司会:栗栖 茂・平野 聡
司会:橋爪 誠・本竹 秀光
11:00~11:54
11:10~12:10
パネルディスカッション 1
関連演題
ワークショップ関連演題 2
司会:平川 昭彦・北川 喜己
司会:渡部 広明・七戸 俊明
12:00
12:15~13:15
ランチョンセミナー 1
14:00
ポスター展示
ポスター展示
12:15~13:15
ランチョンセミナー 2
高度急性期病院における
救急医療体制と医療連携
外科的侵襲による生体反応
~済生会横浜市東部病院の在
~サイトカインと臓器障害~
院日数厳格化への取り組み~
司会:望月 泉
司会:坂本 照夫
13:25~14:55
ワークショップ
13:25~14:55
シンポジウム 1
13:25~14:46
シンポジウム 2 関連演題
外傷性十二指腸穿孔の
標準術式
Acute Care Surgery における
敗血症治療戦略
司会:小谷 穣治・橋爪 正
(Oncology emergency)
司会:北野 光秀・久志本 成樹 司会:溝端 康光・石倉 宏恭
ポスター撤去
15:00
機器
展示
(膵十二指腸損傷)
(ACS 育成:若手医の視点)
13:00
一般演題(P&PC)
9:55~10:58
ワークショップ関連演題 1
パネルディスカッション 2
関連演題
(ACS 育成:指導医の視点)
11:00
8:15~9:45
一般演題(P&PC)
ポスター撤去
閉 会 式
16:00
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
102
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
プログラム
教育講演 ▶「Trauma Surgery と General Surgery の相互技術交流:肝手術」
第 2 会場:3F 孔雀西の間 EL-1
司 会
益子 邦洋(医療法人社団永生会 南多摩病院)
葛西 猛(亀田総合病院) 肝損傷における緊急手術手技および適応についての検討
佐賀大学 救急医学
EL-2
阪本 雄一郎
肝切除の基本手技 ― 肝門処理と肝切離 ―
北九州市立八幡病院 消化器・肝臓病センター 外科
岡本 好司
教育講演 ▶「Trauma Surgery と General Surgery の相互技術交流:胸部・大血管手術」
第 2 会場:3F 孔雀西の間 EL-3
司 会
横田 順一朗(市立堺病院) 平 泰彦(聖マリアンナ医科大学 救急医学)
Acute Care Surgeon が心得ておくべき胸部外傷手術
EL-4
加地 正人
心・大血管外傷治療の Innovation ― elective surgery からの応用 ―
沖縄県立八重山病院 外科
本竹 秀光
教育講演 ▶「Trauma Surgery と General Surgery の相互技術交流:膵手術」
第 2 会場:3F 孔雀西の間 司 会
EL-5
村尾 佳則(近畿大学医学部附属病院 救命救急センター)
外傷性膵損傷に対する治療戦略
済生会横浜市東部病院 救急科
EL-6
清水 正幸
膵臓の切除と再建の基本手技
北海道大学 大学院 医学研究科 消化器外科学分野Ⅱ
平野 聡
教育講演 ▶「Trauma Surgery と General Surgery の相互技術交流:Oncologic emergency」
第 1 会場:3F 孔雀東南の間 EL-7
103
9 月 20 日㈯ 17:50~18:30
坂本 照夫(久留米大学 救急医学講座) 9 月 20 日㈯ 17:10~17:50
東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター
9 月 20 日㈯ 16:30~17:10
司 会
坂井 義治(京都大学 消化管外科)
大腸がん関連 Oncological emergency に対する治療戦略
青森県立中央病院がん診療センター
森田 隆幸
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
9 月 21 日㈰ 9:55~10:25
パネルディスカッション 1 ▶「若手から見たAcute Care Surgery研修の現状、今求める研修とは」
第 2 会場:3F 孔雀西の間 司 会
PD-1-1
PD-1-2
PD-1-3
PD-1-4
PD-1-5
PD-1-6
PD-1-7
PD-1-8
PD-1-9
9 月 20 日㈯ 15:05~16:30
小池 薫(京都大学大学院医学研究科 初期診療・救急医学)
河野 元嗣(筑波メディカルセンター病院) Acute care surgeon を目指す若手としての将来像
市立堺病院 救急外科
天野 浩司
地方都市での Acute care surgery ~外傷医なき外傷診療~
社会医療法人近森会 近森病院
辻井 茂宏
2 次救急病院における Acute Care Surgeon の修練と問題点
岡山済生会総合病院 救急科
稲葉 基高
地方型 3 次救命救急センターにおける Acute care Surgeon 育成の現状と課題
筑波メディカルセンター病院 救急診療科
前田 道宏
独立型救急救命センターにおける外科修練医の診療実績から見る現状と問題点
兵庫県災害医療センター
岡田 剛
Acute Care Surgeon、外科から目指すか、救急から目指すか ?
日本医科大学 大学院医学研究科 救急医学分野
苛原 隆之
当院の外傷外科医(Acute Care Surgeon)養成コースの現状
東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター
小島 光暁
当院外科後期研修医の外傷手術研修の現状
亀田総合病院 消化器外科
藤井 渉
当院での若手外科医の Acute care surgery 研修の現状と今後の取り組み方
聖マリアンナ医科大学 消化器・一般外科
星野 博之
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
104
パネルディスカッション 2 ▶「Acute Care Surgeonに求められる技術的到達度と養成カリキュラムの工夫」
第 2 会場:3F 孔雀西の間 司 会
大友 康裕(東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター)
PD-2-1
PD-2-2
PD-2-3
PD-2-4
PD-2-5
PD-2-6
PD-2-7
105
9 月 20 日㈯ 18:30~20:00
山下 裕一(福岡大学医学部 消化器外科) 我が国の Acute Care Surgery とは
日本 ACS 学会カリキュラム開発委員会
溝端 康光
我が国における Acute Care Surgery 研修カリキュラム
~ 身につけるべき management 能力とは何か ~
日本 Acute Care Surgery 学会カリキュラム開発委員会
渡部 広明
Acute care surgeon 養成カリキュラムを構築するにあたって考慮すべきこと
深谷赤十字病院救命救急センター、埼玉医科大学救急人材育成講座
金子 直之
Acute Care Surgery のため、General Surgeon を目指した研修
市立堺病院 救急センター 救急外科
臼井 章浩
手術難易度から見た腹部緊急手術の指導体制
福岡大学病院 消化器外科
乗富 智明
地方中核病院一般外科で経験できる Acute Care Surgery の手術症例
兵庫県立淡路医療センター 外科
坂平 英樹
Acute Care Surgeon のあり方:米国での経験から
大船中央病院
北濱 昭夫
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
シンポジウム 1 ▶「Acute Care Surgery における敗血症治療戦略」
第 2 会場:3F 孔雀西の間 司 会
溝端 康光(大阪市立大学大学院医学研究科 救急医学)
SY-1-1
公立豊岡病院 但馬救命救急センター
SY-1-2
日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野
SY-1-3
小豆畑 丈夫
Acute care surgery における敗血症治療戦略
平塚市民病院 外科
SY-1-4
福西 琢真
重症敗血症患者に対する周術期管理の新戦略
金沢大学附属病院 肝胆膵移植再生外科
SY-1-5
宮下 知治
当科における腹腔内敗血症に対するダメージコントロール戦略
帝京大学医学部付属病院救命救急センター
SY-1-6
角山 泰一朗
血中エンドトキシン除去カラム(PMX)の有用性の検討
横浜市立大学 医学部 消化器・腫瘍外科
SY-1-7
諏訪 雄亮
大腸穿孔に伴う敗血症性ショックに対する surgical critical care ~ PMX-DHP 療法とトロンボモジュリン製剤の併用戦略 ~
済生会横浜市東部病院 救命救急センター
SY-1-8
折田 智彦
大腸穿孔症例における ATⅢ活性値の推移と抗凝固療法の意義
福岡大学病院 消化器外科
SY-1-9
小林 誠人
外科的敗血症性ショックに対する、新しい surgical resuscitation の提唱
石倉 宏恭(福岡大学医学部 救命救急医学講座) Acute Care Surgery における敗血症治療戦略の取り組み
9 月 21 日㈰ 13:25~14:55
小島 大望
Thromboelastometry(ROTEM)を用いた、急性期 DIC 診断基準により
診断された外傷性 DIC と敗血症性 DIC の検討
佐賀大学医学部附属病院 救命救急センター
小網 博之
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
106
シンポジウム 2 ▶「Oncologic Emergencyに対するAcute Care Surgeryの現状と課題」
第 1 会場:3F 孔雀東南の間 司 会
真弓 俊彦(産業医科大学 救急医学) SY-2-1
松原 久裕(千葉大学大学院医学研究院 先端応用外科)
Acute Care Surgery を要した下部消化管 Oncologic Emergency 30 例の検討
長崎大学大学院 移植・消化器外科
SY-2-2
井上 悠介
大腸がん穿孔症例に対する治療戦略
社会医療法人岡本病院(財団)第二岡本総合病院
SY-2-3
清水 義博
切除不能大腸癌に対するベバシツマブ併用化学療法中の消化管穿孔症例
熊本大学大学院 消化器外科学
SY-2-4
山下 晃平
大腸ステントを用いた大腸癌イレウスの治療方針
JCHO 神戸中央病院 外科
SY-2-5
曽我 耕次
閉塞性大腸癌に対する当院の治療についての検討
市立堺病院 救急センター
SY-2-6
加藤 文崇
当科における左側大腸癌イレウスに対する治療戦略
福島県立医科大学 臓器再生外科学講座
SY-2-7
多田 武志
直腸癌イレウスに対するストーマ造設と術前化学療法を用いた二期的治療
弘前大学 大学院 医学研究科 消化器外科学講座
SY-2-8
長谷部 達也
当院における oncologic emergency としての胃癌穿孔に対する治療方針
多根総合病院 急性腹症科・外科
SY-2-9
城田 哲哉
当科の oncologic emergency 症例の治療成績
帝京大学 医学部 救急医学講座
SY-2-10 当センターで手術を施行した Oncology Emergency 80 症例の検討:
地方救命センターにおける Acute Care Surgeon の充実化は急務である
和歌山県立医科大学 救急集中治療医学講座 高度救命救急センター 107
9 月 21 日㈰ 10:25~12:05
北村 真樹
上田 健太郎
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
ワークショップ ▶「外傷性十二指腸穿孔の標準術式」
第 1 会場:3F 孔雀東南の間 司 会
WS-1
村上 隆啓
外傷性十二指腸損傷の治療戦略
久留米大学 高度救命救急センター
WS-3
疋田 茂樹
外傷性十二指腸損傷における術式と治療成績
東京都済生会中央病院 救命救急センター
WS-4
関根 和彦
外傷性十二指腸損傷の術式をどう選択すべきか。
― 当施設での 16 例の経験から
独立行政法人国立病院機構災害医療センター救命救急センター
WS-5
岡田 一郎
十二指腸損傷に対する外科治療に標準化は可能か?
日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター
WS-6
久志本 成樹(東北大学病院 高度救命救急センター) 外傷性十二指腸損傷の手術に付加手術は不要である
WS-2
北野 光秀(済生会横浜市東部病院 救命救急センター)
沖縄県立中部病院 外科
9 月 21 日㈰ 13:25~14:55
益子 一樹
外傷性十二指腸損傷の術式選択(付加減圧術の必要性)
:
JSACS メンバーのアンケート調査から
済生会横浜市東部病院 救命救急センター
松本 松圭
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
108
パネルディスカッション 1 関連演題 ▶
第 2 会場:3F 孔雀西の間 渡部 広明(りんくう総合医療センター 大阪府泉州救命救急 センター AcuteCareSurgery センター) 七戸 俊明(北海道大学大学院医学研究科 消化器外科学分野Ⅱ)
MPD-1-1 若手外科医が考える Acute Care Surgery 研修 ~ Acute Care Surgeon 育成には
一般外科、救命救急センター研修の両者が必要である ~
りんくう総合医療センター 大阪府泉州救命救急センター Acute Care Surgery センター
MPD-1-2 当院における Acute Care Surgery 研修の現状と課題
久留米大学病院 高度救命救急センター
MPD-1-3 沖縄県立中部病院一般外科研修プログラムから、理想的な
Acute Care Surgery 研修を考える。
沖縄県立中部病院
MPD-1-4 当施設における Acute care surgery 研修の現状
日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター
MPD-1-5 若手から見た Acute Care Surgery のジレンマ ― 専門医制度の確立を ―
琉球大学大学院 医学研究科 救急医学講座
MPD-1-6 当院における Acute Care Surgery 研修の現状
北里大学 医学部 救命救急医学
MPD-1-7 救急患者であっても可能な限り侵襲の少ない治療を目指す当科の取り組み
多根総合病院 急性腹症科・外科
109
司 会
9 月 21 日㈰ 11:10~12:10
石井 健太
下条 芳秀
宮地 洋介
益子 一樹
近藤 豊
花島 資
山口 拓也
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
パネルディスカッション 2 関連演題 ▶
第 2 会場:3F 孔雀西の間 司 会
9 月 21 日㈰ 9:55~11:07
橋爪 誠(九州大学大学院医学研究科 災害救急医学)
本竹 秀光(沖縄県立八重山病院 外科) MPD-2-1 日本における Acute care surgery のモデルケースを目指して、当院での
これまでの取り組みと問題点
独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター
MPD-2-2 当院の Acute Care Surgeon 育成カリキュラムの評価
東海大学 医学部 付属病院 外科学系 救命救急医学
MPD-2-3 当院での外科系救急医(Acute Care Surgeon)の技術目標と研修の工夫
独立行政法人東京医療センター救急科
MPD-2-4 Acute Care Surgery における外傷手術 simulation トレーニング
自治医科大学 救急医学
MPD-2-5 Acute Care Surgery Training Course 今後の課題
東京医科歯科大学救命救急センター
岡田 一郎
大塚 洋幸
尾本 健一郎
伊澤 祥光
村田 希吉
MPD-2-6 当教室における若手外科医への Acute Care Surgery 教育の取り組み
北海道大学 消化器外科学Ⅱ
MPD-2-7 当センターでの Acute Care Surgeon 育成の現状と今後の展望
公立豊岡病院 但馬救命救急センター
MPD-2-8 若手 Acute Care Surgeon に伝えたい血行再建手技の基本と
外傷外科領域での応用
医療法人社団誠謦会 総泉病院
MPD-2-9 Acute care surgeon に求められる特殊外傷手術
済生会横浜市東部病院 救命救急センター
村上 壮一
岡 和幸
朽方 規喜
山崎 元靖
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
110
シンポジウム 2 関連演題 ▶
第 4 会場:3F 善知鳥の間 9 月 21 日㈰ 13:25~14:46
司 会
MSY-2-1 MSY-2-2 MSY-2-3 MSY-2-4 MSY-2-5 MSY-2-6 MSY-2-7 MSY-2-9 111
橋爪 正(むつ総合病院 外科) 救命センターにおける oncologic emergency 17 例の検討
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター
笠井 華子
大腸悪性腫瘍における緊急手術症例の検討
市立砺波総合病院 外科
家接 健一
地方中核病院における大腸癌 oncologic emergency 手術症例の検討
兵庫県立淡路医療センター 外科
川嶋 太郎
大腸癌穿孔の治療成績について 川崎医科大学 消化器外科
東田 正陽
閉塞性大腸癌に対する待機的手術の有用性:
臨床学的、腫瘍学的成績からみた検討
東邦大学医療センター大森病院 一般・消化器外科
鏡 哲
遠隔転移を有する局所進行大腸癌に対する治療方針の検証
広島大学 消化器・移植外科
新津 宏明
化学療法導入後の消化管穿孔症例
横浜市立大学大学院 がん総合医科学
徳久 元彦
MSY-2-8 胃癌穿孔に対する治療戦略
小谷 穣治(兵庫医科大学 救命救急センター)
伊勢赤十字病院 外科
田村 佳久
破裂肝細胞癌に対する治療方針
東京大学 医学部附属病院 肝胆膵外科
山本 訓史
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
ワークショップ関連演題 1 ▶
第 4 会場:3F 善知鳥の間 9 月 21 日㈰ 9:55~10:58
司 会
栗栖 茂(国立病院機構兵庫青野原病院 外科) 平野 聡(北海道大学大学院医学研究科 消化器外科学分野Ⅱ)
MWS-1-1 外傷性膵損傷に対しての術式選択にたいする検討
藤田保健衛生大学 総合膵臓外科
MWS-1-2 小児の主膵管断裂を伴う膵頭部十二指腸損傷に対する新たな手術戦略・戦術
りんくう総合医療センター 大阪府泉州救命救急センター Acute Care Surgery センター
MWS-1-3 外傷性膵頭部損傷に対する膵頭十二指腸切除後の短期・長期合併症の検討
香川大学消化器外科
MWS-1-4 腹腔内大量出血を伴い膵切除を要した外傷性膵損傷の 2 例
津山中央病院 外科
MWS-1-5 小児鈍的外傷による十二指腸壁内血腫を伴った膵損傷の 1 例
藤田保健衛生大学 医学部 災害外傷外科
MWS-1-6 胃切後外傷性膵損傷に対し緊急膵頭十二指腸切除術を施行した 1 例
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科
MWS-1-7 受傷 6 日目に来院した外傷性膵損傷の 1 死亡例
君津中央病院救急・集中治療科
伊東 昌広
成田 麻衣子
岡野 圭一
小畠 千晶
富野 敦稔
高田 智司
北村 伸哉
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
112
ワークショップ関連演題 2 ▶
第 4 会場:3F 善知鳥の間 9 月 21 日㈰ 11:00~11:54
司 会
北川 喜己(名古屋掖済会病院 救命救急センター)
MWS-2-1 早期外科的治療により奏功した外傷性膵損傷(Ⅲb)
独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 救命救急センター MWS-2-2 当院での外傷性膵損傷の治療経験 ~ 2 例のⅢb 型手術症例の検討 ~
財団法人田附興風会医学研究所北野病院
MWS-2-3 Ⅲb 型外傷性膵損傷に対して Letton-Wilson 手術を行った 1 例
熊本赤十字病院 外科
MWS-2-4 Ⅰb 型十二指腸損傷を伴うⅢb(Ph)型外傷性膵損傷に対して
緊急膵頭十二指腸切除術後、二期的に膵空腸吻合術を行った 1 例
県立広島病院 消化器・乳腺・移植外科
MWS-2-5 ドレナージにより軽快したⅢb 型膵損傷の 1 例
鳥取県立中央病院 外科
MWS-2-6 Ⅲa 型膵損傷と判断し保存的治療を選択した 1 例
熊本大学大学院消化器外科学
113
平川 昭彦(藤田保健衛生大学 災害・外傷外科)
家城 洋平
岩村 宣亜
日高 悠嗣
真島 宏聡
木原 恭一
武山 秀晶
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
一般演題(P&PC) P-01 ▶「DCS 関連」
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間
司 会
伊藤 重彦(北九州市立八幡病院 救命救急センター) 益子 一樹(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター)
P-01-1
一宮市立市民病院 救急科
P-01-2
阪本 太吾
Damage control surgery を施行し救命した多発肋骨骨折による
出血性ショックの 1 例
釧路赤十字病院 外科
P-01-4
桑原 尚太
出血性ショックを伴う腹部外傷症例に対する大動脈閉鎖バルーンの有効性に
ついての検討
兵庫医科大学 救急科
P-01-5
西村 健
Damage control 手術の適応とタイミングに苦慮し死亡したⅢa 型
肝損傷の一例
宮崎大学 医学部 循環呼吸・総合外科
P-01-6
池ノ上 実
高度膵断裂に対して EUS ガイド下経胃内瘻ステントが有効であった一例
鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科
P-01-7
飯野 聡
当センターでの骨盤骨折に対するガーゼパッキング 46 例の検討
兵庫県災害医療センター高度救急救命センター救急部
P-01-8
重症胸部外傷に対する Clamshell thoracotomy の成績
P-01-3
白井 邦博
日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター
Non-responder/transient-responder 症例の臨床的検討
松山 重成
Temporary Abdominal Closure(TAC)& Open Abdominal Management
(OAM)を施行した 39 症例の検討
和歌山県立医科大学 医学部 医学科 救急集中治療医学講座 川副 友
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
114
P-01-9
Open abdominal management 後に Planned ventral hernia となった
症例の検討
大阪市立大学医学部附属病院 救命救急センター
晋山 直樹
一般演題(P&PC) P-02 ▶「大血管・胸部」
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間 9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
司 会
本竹 秀光(沖縄県立八重山病院 外科)
P-02-1
P-02-2
自動釘打ち機による鋭的心外傷の一例
P-02-3
福士 龍之介
緊急手術を要した自然血気胸の 1 例
むつ総合病院 外科
P-02-4
吉田 達哉
特発性血気胸の 3 例
社会医療法人近森会 近森病院 外科
P-02-5
辻 やよい
緊急開胸術にて止血した、転移性肋骨に伴う大量血胸の 1 例
東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター
P-02-6
八木 雅幸
大動脈食道瘻に対する治療戦略
北海道大学 大学院 医学研究科 消化器外科学分野Ⅱ
P-02-7
本谷 康二
集学的治療により救命し得た腹部刺創による腹部大動脈損傷の 1 例
弘前大学 医学部 附属病院 高度救命救急センター
P-02-8
115
林 同輔
済生会横浜市東部病院
緊急開胸術を要した胸部外傷 26 例の検討
津山中央病院 外科
朽方 規喜(医療法人社団誠馨会 総泉病院)
矢口 慎也
外科的に修復を試みた腎下部下大静脈損傷の 1 例
東海大学 医学部 救命救急医学
佐藤 俊樹
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
P-02-9
総腸骨静脈、外腸骨静脈損傷に対し、経後腹膜的にアプローチした 2 例
国立病院機構 水戸医療センター 外科
P-02-10 生体腎移植後の静脈血栓除去後に広範囲被膜下血腫を生じ
緊急手術を要した 1 例
独立行政法人 国立病院機構 千葉東病院 外科
石上 耕司
青山 博道
一般演題(P&PC) P-03 ▶「胸部外傷」
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間 9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
司 会
庄古 知久(松戸市立病院 救命救急センター)
P-03-1
P-03-2
土井 健史
SternaLock を用いて安全かつ簡便に固定できた胸骨骨折の 2 例
山梨県立中央病院 救命救急センター
P-03-3
木下 大輔
外科的切除を要した肺内血腫を伴う両側肺挫傷の 1 例
手稲渓仁会病院 外科
P-03-4
田畑 佑希子
胸部刺創に対する肺葉切除術後に急性肺障害を合併した 1 救命例
藤田保健衛生大学 医学部 救命救急医学講座
P-03-5
安藤 雅規
外傷性横隔膜損傷の 2 例
弘前大学大学院医学研究科 消化器外科学講座
P-03-6
一戸 大地
鈍的外傷による右横隔膜損傷の 2 例
藤沢市民病院 外科
P-03-7
胸部外傷に伴う多発肋骨骨折に対する手術治療についての検討
神戸赤十字病院 呼吸器外科
関根 和彦(東京都済生会中央病院 救急診療科)
中堤 啓太
肝損傷Ⅲb を伴った右横隔膜損傷の一例
岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター
加藤 久晶
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
116
一般演題(P&PC) P-04 ▶「肝損傷」
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間
司 会
丸山 尚嗣(船橋市立医療センター 外科) P-04-1
P-04-2
地方大学病院における外傷外科診療の現状:肝・脾損傷への治療経験から
P-04-3
松井田 元
Primary survey にて non-responder であった鈍的腹部外傷の 1 手術例
三重大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科
P-04-4
藤永 和寿
肝嚢胞破裂を伴った肝損傷Ⅲa(HV)の一例
兵庫医科大学 救急・災害医学講座
P-04-5
坂田 寛之
開腹したまま TAE を行い救命した肝刺創の 1 例
八戸市立市民病院 救命救急センター
P-04-6
長谷川 将嗣
肝上部下大静脈刺傷に対して緊急修復術を行い救命した一例
福岡徳洲会病院 外科
P-04-7
田中 敬太
川崎病後遺症による冠動脈巨大瘤を有した外傷性肝損傷の一例
福島県立医科大学 医学部 臓器再生外科
P-04-8
清水 裕史
Non-operative management で軽快した巨大被膜下血腫を呈した
外傷性Ⅰb 型肝損傷の 1 例
聖マリアンナ医科大学 消化器・一般外科
P-04-9
117
杉本 優弥
福島県立医科大学 臓器再生外科
当科で経験した外傷性肝損傷手術症例の検討
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科
寺嶋 宏明(公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院 消化器外科)
井田 圭亮
肝内門脈末梢枝の裂傷に対して経皮経肝アプローチで門脈塞栓術を施行した1例
日本医科大学 放射線医学
嶺 貴彦
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
P-04-10 経皮的針肝生検後の肝損傷に対する止血に難渋した 1 例
自治医科大学 移植外科
岡田 憲樹
一般演題(P&PC) P-05 ▶「脾・腸管損傷」
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間
司 会
井上 潤一(山梨県立中央病院 救命救急センター) P-05-1
P-05-2
中野 志保
当科における外傷性脾損傷の検討
金沢医科大学 一般・消化器外科学
P-05-3
藤田 純
異なる経過をたどった外傷性脾損傷Ⅲb 型の 2 症例
多根総合病院 急性腹症科・外科
P-05-4
北野 翔一
腹腔内出血に対して大動脈遮断バルーンを使用し、根治的緊急止血術を
行った 2 例
大分大学医学部付属病院 高度救命救急センター
P-05-5
田邉 三思
小児の外傷性脾損傷に対して開腹止血術を施行した 1 例
沖縄県立八重山病院
P-05-6
島垣 智成
当院における外傷性腸管・腸間膜損傷に対する手術症例の検討
帯広厚生病院 外科
P-05-7
加藤 航平
鈍的外傷による腸管穿孔症例の検討
徳島県立中央病院 救急科
P-05-8
当センターにおける脾損傷に対する手術治療成績の検討
岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター
小豆畑 丈夫(日本大学医学部附属板橋病院 救命救急センター)
大村 健史
遅発性腸管損傷のピットフォール
山梨県立中央病院 救命救急センター
大嶽 康介
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
118
P-05-9
鈍的外傷による大腸損傷の 3 例
北九州市立八幡病院 救命救急センター 外科
P-05-10 バス事故による 2 点式シートベルト外傷にて多発性腸管損傷を来した 1 例
金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科
山吉 隆友
櫻井 健太郎
一般演題(P&PC) P-06 ▶「外傷全般」
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間 司 会
P-06-1
佐尾山 裕生
自殺目的で剪定鋏による頚部刺創につき、気管挿管下に洗浄ドレナージ術を行い、
良好な経過をたどった 1 例
岩手県立磐井病院救急医療科
P-06-3
志賀 光二郎
当院における頚部・胸部・腹部鋭的外傷の症例について
岩手県立宮古病院 外科
P-06-4
菅原 俊道
ネイルガン自傷による穿通性頭部・腹部外傷の 1 例
札幌東徳洲会病院外科
P-06-5
向井 信貴
鈍的腹部外傷による総胆管完全断裂の一例
独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院 救急科
P-06-6
松浦 裕司
外傷性十二指腸破裂術後の難治性瘻孔に対し、希釈トロンビン法による
フィブリン糊充填療法が奏効した 1 例
市立函館病院 消化器外科
P-06-7
119
疋田 茂樹(久留米大学 高度救命救急センター) 当院で経験した頸部貫通刺創の 1 例
P-06-2
小林 誠人(公立豊岡病院 但馬救命救急センター)
独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
常俊 雄介
エアーガン(圧搾空気)による大腸穿孔の 1 例
鹿児島徳洲会病院
中村 彰
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
P-06-8
直腸損傷に対する腹腔鏡手術の経験
市立堺病院救急外科
P-06-9
蛯原 健
Pseudo-renal failure を呈した外傷性膀胱破裂の 1 例
土浦協同病院 外科
P-06-10
漆畑 直
キックボクシングで受傷し深大腿動脈損傷を伴った
大腿コンパートメント症候群の一例
東京医科歯科大学附属病院 救命救急センター
園部 浩之
一般演題(P&PC) P-07 ▶「外傷システム・教育」
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間
司 会
長谷川 伸之(那須赤十字病院 救急科) P-07-1
P-07-2
池田 義之
緊急手術における手術安全チェックリストの導入
兵庫県災害医療センター 救急部
P-07-3
浜上 知宏
重症外傷治療におけるチームワーク構築について:
SSTT 座学 1 日コースの利用
宇治徳洲会病院外科
P-07-4
菱川 恭子
当院における小児の acute care surgeon 像について
熊本赤十字病院 小児外科
P-07-5
関 千寿花
外科医にとって、献体外傷手術臨床解剖学的研究会は有用か?
― 厚生労働省委託研修事業の分析結果による検討 ―
東京医科大学 救急・災害医学分野
P-07-6
過疎地域に立地する基幹病院における外傷手術の実態について
新潟県立新発田病院 外科
大槻 穣治(東京慈恵会医科大学附属第三病医院 救急部)
本間 宙
腹腔鏡下脾臓摘出術の latest modern technique と Acute are surgery への展望
九州大学 救命救急センター
赤星 朋比古
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
120
P-07-7
腹部外傷手術症例における当院での傾向
山形県立中央病院 外科
P-07-8
根本 大資
都市部大学病院における自傷行為による外傷症例の臨床的検討
慶應義塾大学 医学部 救急医学
渋沢 崇行
一般演題(P&PC) P-08 ▶「重症管理」
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間
司 会
山村 仁(大阪市立大学医学部附属病院 救命救急センター)
P-08-1
P-08-2
田村 利尚
外傷患者に対する当院での Massive Transfusion の試み
東京都済生会中央病院
P-08-4
山口 敬史
外傷患者における D ダイマーを用いた静脈血栓塞栓スクリーニングに
ついての検討
長崎大学病院 救命救急センター
P-08-5
猪熊 孝実
当科で経験した劇症型溶連菌感染の 2 症例
津軽保健生活協同組合 健生病院外科
P-08-6
佐藤 衆一
胆管癌術後の血液透析患者に発症した G 群β溶血性連鎖球菌による
toxic shock-like syndrome の 1 例
兵庫医科大学 外科
P-08-7
121
当科における遺伝子組み換えヒトトロンボモジュリン製剤使用経験
P-08-3
古屋 智規
産業医科大学 第一外科
Acute Care Surgery における新たなチーム医療の検討
秋田赤十字病院 総合診療科
増野 智彦(日本医科大学病院 高度救命救急センター) 鈴村 和大
緊急下肢離断術をはじめとした感染制御と集学的治療により救命した
劇症型連鎖球菌感染症の一例
東京都済生会中央病院 救命救急センター
高橋 未来
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
P-08-8
腹部大動脈塞栓をきたし緊急カテーテル治療にて救命しえた
乳児心臓腫瘍の 1 例
岡山大学病院 小児外科
P-08-9
野田 卓男
体外式膜型人工肺の使用により手術が可能となった腐食性食道炎の 1 例
大阪府済生会 千里病院 千里救命救急センター
P-08-10 重症外傷患者に対して直後より PTSD 予防のための介入した 1 例
― 適切な対象・時期・方法とは?
国立病院機構熊本医療センター 外科系総合コース
金原 太
山口 充
一般演題(P&PC) P-09 ▶「上部消化管穿孔」
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間 司 会
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
宮下 正夫(日本医科大学千葉北総病院 外科)
P-09-1
P-09-2
片岡 祐一
特発性食道破裂 11 例の検討
東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター
P-09-3
鈴木 啓介
特発性食道破裂 6 例から考える治療方針
弘前大学 医学部 消化器外科
P-09-4
赤坂 治枝
当院で経験した特発性食道破裂に対する診断、治療方針について
松山市民病院 外科
P-09-5
木村 裕司
胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する治療の変遷と今後の展望
川崎医科大学 総合外科
P-09-6
特発性食道破裂に対する治療法の検討
北里大学 医学部 救命救急医学
加瀬 建一(済生会宇都宮病院 救急診療科) 繁光 薫
当科における胃十二指腸潰瘍穿孔に対する手術加療症例の検討
弘前大学 消化器外科
室谷 隆裕
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
122
P-09-7
当院における整容性を考慮した上部消化管穿孔に対する治療戦略
半田市立半田病院 救命救急センター
P-09-8
太平 周作
亜全胃温存膵頭十二指腸切除後、胃空腸吻合部潰瘍穿孔の 1 例
手稲渓仁会病院 外科
P-09-9
寺村 紘一
十二指腸水平脚憩室穿通による後腹膜膿瘍が疑われた 1 例
福岡大学病院消化器外科
P-09-10 腹腔鏡手術で治療しえた十二指腸憩室後腹膜穿孔の 1 例
京都大学 消化管外科
石井 文規
田中 英治
一般演題(P&PC) P-10 ▶「膵・胆道」
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間 司 会
P-10-1
小島 和人
抗血栓療法患者の中等度急性胆嚢炎に対する PTGBD 後
待機的腹腔鏡下胆嚢摘出術の有効性
恵み野病院 外科
P-10-3
柴崎 晋
抗凝固・抗血小板療法中に施行した急性胆嚢炎手術症例の検討
東京医科歯科大学 医学部 肝胆膵・総合外科
P-10-4
赤星 径一
抗血栓薬内服症例での急性胆嚢炎への緊急胆嚢摘出術
福山市民病院 外科
P-10-5
吉本 匡志
胆嚢捻転症の一切除例
東京医科歯科大学 医学部附属病院 肝胆膵外
P-10-6
123
小泉 哲(聖マリアンナ医科大学 消化器・一般外科)
当院における超高齢者の急性胆嚢炎に対する比較・検討
P-10-2
岡本 友好(東京慈恵会医科大学附属第三病医院)
埼玉医科大学 医学部 消化器一般外科
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
千代延 記道
胆道癌による十二指腸狭窄に対しステント留置が有効であった 2 例
東京医科歯科大学医学部附属病院 肝胆膵・総合外科
上田 浩樹
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
P-10-7
膵頭十二指腸切除術後総肝動脈出血に対し肝動脈縫合止血と
門脈部分動脈化を施行し救命し得た 1 症例
明和病院
P-10-8
竹中 雄也
膵体尾部切除後腹腔内出血の 1 例
兵庫医科大学肝胆膵外科
P-10-9
近藤 祐一
膵頭十二指腸切除後の遅発性仮性膵嚢胞を伴う仮性動脈瘤破裂の一例
東京慈恵会医科大学付属第三病院 外科
P-10-10 各種胆道再建術の問題点
近畿大学医学部安全衛生管理センター
塚﨑 雄平
橋本 直樹
一般演題(P&PC) P-11 ▶「急性虫垂炎」
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間 9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
司 会
金子 直之(深谷赤十字病院 救急部)
P-11-1
P-11-2
貝羽 義浩
当院における腹腔鏡下虫垂切除術の検討
戸塚共立第 1 病院 外科
P-11-3
林 隆広
虫垂周囲膿瘍に対する治療戦略
耳原総合病院 外科
P-11-4
吉川 健治
急性虫垂炎における回盲部切除術の予測因子の検討
済生会横浜市東部病院 救命救急センター
P-11-5
齋田 文貴
急性虫垂炎の重症度判定についての考察
福岡大学 医学部 消化器外科学講座
P-11-6
当院の過去 5 年間における急性虫垂炎治療の検討
公立刈田綜合病院 外科
臼井 章浩(市立堺病院 救急外科) 山口 良介
急性虫垂炎手術症例における術後合併症の検討
箕面市立病院 外科
星 美奈子
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
124
P-11-7
当院における統合失調症患者の急性虫垂炎 16 例の検討
沖縄県立中部病院 外科
P-11-8
三本松 譲
当科における小児急性虫垂炎の治療方針
近畿大学医学部 外科学教室 小児外科部門
P-11-9
川口 晃平
妊婦虫垂炎の 3 例
那覇市立病院 外科
P-11-10 当科で経験した小児腫瘤形成性虫垂炎に対する Interval appendectomy 症例
の検討
近畿大学医学部 外科学教室 小児外科部門
高宮城 陽栄
前川 昌平
一般演題(P&PC) P-12 ▶「NOMI」
第 3 会場:3F あすなろ・はまなすの間 P-12-1
清水 義博(第二岡本総合病院 救急科) 松本 松圭
非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の診断・治療法の変化および
門脈ガス血症(PVG)との関連性についての考察
大津市民病院 外科
P-12-3
光吉 明
非閉塞性腸間膜虚血の治療戦略に関する考察:自験例 25 例を検討
沖縄県立中部病院 一般外科
P-12-4
加我 徹
非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)の多施設共同研究
九州大学大学院 消化器・総合外科
P-12-5
125
井上 卓也(小牧市民病院 救命救急センター)
急性腸間膜虚血症の診断における CT の有用性
P-12-2
司 会
済生会横浜市東部病院 救命救急センター
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
由茅 隆文
非閉塞性腸管虚血症症例の検討
八戸市立市民病院
野田頭 達也
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
P-12-6
当科における非閉塞性腸間膜虚血症 10 例の検討
日本医科大学高度救命救急センター
P-12-7
片桐 美和
NOMI の発症予防に対する当院の取り組み
自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科
P-12-8
桑原 明菜
非閉塞性腸間膜虚血症(NOMI)の 1 例
小牧市民病院 外科
P-12-9
平田 伸也
上行結腸癌に対し化学療法を施行後、非閉塞性腸管虚血症(NOMI)を
発症した 1 例
青森県立中央病院 外科
米内山 真之介
一般演題(P&PC) P-13 ▶「腸閉塞」
第 5 会場:4F 錦鶏の間 9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
司 会
家接 健一(市立砺波総合病院 外科)
P-13-1
P-13-2
金井 俊平
利用しやすい指標を用いた絞扼性腸閉塞の診断
中頭病院 外科
P-13-3
間山 泰晃
当科における閉鎖孔ヘルニア手術症例の検討
津軽保健生活協同組合 健生病院 外科
P-13-4
佐藤 衆一
妊娠中期に発症した消化器急性腹症 ― 癒着性イレウスに対する早期開腹例 ―
大阪市立大学医学部付属病院 救命救急センター
P-13-5
内田 健一郎
結腸前経路による胆道再建が誘因となった肝切除後腸閉塞の一例
兵庫医科大学 外科学 肝胆膵外科
P-13-6
小腸イレウスの絞扼診断における腸管内溶液 CT 値の有用性について
京都桂病院 消化器センター 外科
仲野 明(藤沢市民病院 外科) 末岡 英明
広範な小腸壊死を来たした成人原発性小腸軸捻転の 1 例
福岡大学 医学部 外科学講座 消化器外科
大宮 俊啓
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
126
P-13-7
ICG 蛍光法による腸管血流評価により腸管切除を回避できた
絞扼性イレウスの 1 例
鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科
P-13-8
貴島 孝
膵頭十二指腸切除術後早期の再手術が必要であった急性輸入脚症候群の 2 例
東京慈恵会医科大學附属第三病院 外科
P-13-9
安田 淳吾
緊急手術となった鼠径ヘルニア偽還納の 2 例
自治医科大学消化器・一般外科
P-13-10 大網小網裂孔網嚢ヘルニアの一例
弘前大学大学院医学研究科 消化器外科学講座
丸山 博行
二階 春香
一般演題(P&PC) P-14 ▶「大腸閉塞」
第 5 会場:4F 錦鶏の間 P-14-1
小山 基(弘前大学 消化器外科) 安藤 裕之
閉塞性大腸癌に対する術前減圧後の腹腔鏡下切除術の有用性
神戸大学大学院 医学研究科 外科学講座 食道胃腸外科学分野
P-14-3
金光 聖哲
大腸癌イレウスに対して外科的処置を行い、原発巣切除を施行した 19 例
福岡大学 医学部 消化器外科
P-14-4
松岡 泰祐
大腸癌イレウスに対する bridge to surgery としての金属ステント留置
県立広島病院 消化器乳腺移植外科
P-14-5
高倉 有二
左側大腸癌イレウスに対する SEMS を用いた Bridge to surgery の導入成績
福岡徳洲会病院 外科
P-14-6
127
乘富 智明(福岡大学病院 消化器外科)
大腸癌イレウス症例の検討
P-14-2
司 会
公立藤岡総合病院
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
岡本 辰哉
左側大腸癌イレウスにおける緊急 vs 腸管減圧後切除術の治療成績
横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学
樅山 将士
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
P-14-7
家族性大腸腺腫症による下行結腸癌イレウスに大腸ステント留置を行い、
緊急手術を回避し待機的に手術加療し得た一例
鹿児島大学 腫瘍学講座 消化器・乳腺甲状腺外科
P-14-8
鶴田 祐介
S 状結腸軸捻転術後に盲腸軸捻転を来した 1 例
半田市立半田病院 外科
P-14-9
高橋 遼
盲腸捻転に対して緊急手術を施行した 1 例
聖マリア病院 外科
吉富 宗宏
一般演題(P&PC) P-15 ▶「大腸穿孔」
第 5 会場:4F 錦鶏の間 司 会
藤田 尚(帝京大学医学部 救命救急センター) P-15-1
当科における大腸穿孔症例予後予測因子の検討
P-15-2
傍島 潤
原因疾患からみた下部消化管穿孔の検討
埼玉医科大学消化器一般外科
P-15-3
淺野 博
左側型穿孔性大腸憩室炎に対する治療戦略
杏林大学 医学部 外科学教室 消化器・一般外科
P-15-4
小嶋 幸一郎
大腸穿孔における乳酸測定の意義
済生会熊本病院 外科
P-15-5
岩槻 政晃
超高齢者における大腸穿孔症例の検討
藤沢市民病院 外科
P-15-6
中本 礼良
当科における大腸憩室穿孔 5 例と憩室炎による大腸膀胱瘻 4 例の検討
富山大学 消化器・腫瘍・総合外科
P-15-7
村田 希吉(東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター)
埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
祐川 健太
保存的治療により外科的加療を回避しえた魚骨による S 状結腸穿通の 1 例
独立行政法人 国立病院機構大阪医療センター 外科
朴 正勝
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
128
P-15-8
上行結腸狭窄が原因と考えられた大腸穿孔の 1 例
埼玉医科大学病院 消化器・一般外科
P-15-9
菅野 優貴
長期治療中の SLE 患者で 3 回の腸管穿孔をきたした 1 症例
福岡大学医学部外科学講座消化器外科
P-15-10 SLE 患者に発症した直腸潰瘍穿孔の一例
小牧市民病院 外科
平野 陽介
鈴木 雄之典
一般演題(P&PC) P-16 ▶「下部消化管穿孔」
第 5 会場:4F 錦鶏の間 9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
司 会
石原 諭(兵庫県災害医療センター)
P-16-1
P-16-2
当院における S 状結腸憩室炎に伴う結腸膀胱瘻の治療成績
P-16-3
鳴海 雄気
胃結腸瘻を来した横行結腸癌の 2 例
半田市立半田病院 外科
P-16-4
岸本 拓磨
大腸の魚骨穿通の二例
青森市民病院 外科
P-16-5
渡辺 伸和
潰瘍性大腸炎に中毒性巨大結腸症を合併し、緊急手術を施行した 1 例
東京医科歯科大学大学院 腫瘍外科学
P-16-6
染野 泰典
S 状結腸穿孔を契機に診断に至った血管型 Ehlers-Danlos 症候群の 1 例
阪奈中央病院 外科
P-16-7
129
上田 順彦
沖縄県立中部病院 消化器・一般外科
大腸穿孔による敗血症時の血液凝固異常の検討
金沢医科大学 一般・消化器外科
村上 隆啓(沖縄県立中部病院 外科)
倉田 秀明
非外傷性小腸穿孔 62 例 原因疾患別の特徴
埼玉医科大学病院消化器・一般外科
深野 敬之
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
P-16-8
小腸部分切除術を施行した放射線性腸炎の 1 例
福島県立医科大学 会津医療センター 外科
P-16-9
根本 鉄太郎
穿孔性虫垂炎による汎発性腹膜炎に対する腹腔鏡手術
― 腹腔内大量洗浄と reduced port surgery ―
常滑市民病院 外科
井上 昌也
一般演題(P&PC) P-17 ▶「腹部血管」
第 5 会場:4F 錦鶏の間 司 会
岡本 好司(北九州市立八幡病院 消化器・肝臓病センター 外科)
P-17-1
血管内治療を施行した腹腔動脈解離の一例
P-17-2
丸橋 孝昭
上腸間膜動脈解離による腸管虚血に対して、大動脈 - 回腸動脈 - 空腸動脈
バイパスを行った一例
船橋市立医療センター 外科
P-17-3
吉岡 隆文
膵頭十二指腸切除術中損傷に起因した術後上腸間膜動脈閉塞症による
大量小腸壊死の1例
名古屋大学附属病院腫瘍外科
P-17-4
山口 貴之
急性 SMA 閉塞症に対する血管内 stent 留置後に形成された
上腸間膜動脈 - 十二指腸瘻および脾動脈 - 十二指腸瘻をきたした一例
神鋼病院 外科
P-17-5
浅利 建吾
TIA と開腹手術を行った脾動脈瘤破裂の 1 例
協立総合病院
P-17-6
中澤 幸久
腹腔動脈、上下腸間膜動脈根部閉塞を伴った反復性の急性腸間膜虚血症、
穿孔性腹膜炎の救命例
東京大学医学部附属病院胃食道外科
P-17-7
佐々木 隆光(福岡大学医学部 消化器外科) 八戸市立市民病院 救命救急センター
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
西田 正人
上腸間膜動脈、両側下肢動脈への同時多発塞栓症の 1 救命例
慶應義塾大学 医学部 一般消化器外科
落合 剛二
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
130
P-17-8
骨盤放射線治療後に生じた外腸骨動脈直腸瘻の 1 例
公立豊岡病院但馬救命救急センター
P-17-9
佐々木 妙子
門脈・上腸間膜静脈血栓症の 6 例の検討
近畿大学医学部付属病院救命救急センター
P-17-10 門脈内血栓症に対し、IVR、抗凝固療法、手術を行った 3 例
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター
横山 恵一
吉野 雄大
一般演題(P&PC) P-18 ▶「救急外科全般 1」
第 5 会場:4F 錦鶏の間 司 会
加地 正人(東京医科歯科大学附属病院 救命救急センター)
P-18-1
坪佐 恭宏
義歯誤嚥に対し右開胸食道異物摘出術を施行した 1 例
福島県立医科大学 器官制御外科学講座
P-18-3
中島 隆宏
貧血のある胃癌手術症例における輸血回避と生存転帰の関連
静岡県立静岡がんセンター 胃外科
P-18-4
川村 泰一
緊急 TAE を施行した出血性十二指腸潰瘍の二例
千葉大学大学院医学研究院 先端応用外科学
P-18-5
藏田 能裕
心房細動に対し抗凝固療法、かつ直腸癌に対し放射線化学治療実施し
大量消化管出血を来した一例
公立八女総合病院 外科
P-18-6
131
食道癌術後の緊急手術の検討
P-18-2
石澤 義也(青森県立中央病院 救命救急センター) 静岡県立静岡がんセンター 食道外科
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
平城 守
破裂性 GIST の臨床病理学的特徴の検討
済生会熊本病院 外科センター
小川 克大
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
P-18-7
巨大肝細胞癌手術症例の治療成績
北海道大学大学院 医学研究科 消化器外科学分野Ⅰ
P-18-8
柿坂 達彦
肝細胞癌への肝動脈化学塞栓療法後肝膿瘍に対し切除し得た 1 例
飯塚病院 外科
P-18-9
廣瀬 皓介
腹腔内出血を伴った胆嚢仮性動脈瘤胆嚢内破裂の 1 例
福岡大学 医学部 外科学講座 消化器外科
P-18-10 脾臓破裂をきたしたびまん性大細胞型 B 細胞悪性リンパ腫の 1 例
岐阜赤十字病院 外科
島岡 秀樹
林 昌俊
一般演題(P&PC) P-19 ▶「救急外科全般 2」
第 5 会場:4F 錦鶏の間 P-19-1
牛窓 かおり
食道穿孔との鑑別を要した降下性壊死性縦隔炎の一例
小牧市民病院 外科
P-19-3
笹原 正寛
呼吸困難にて発症した食道脂肪肉腫の 1 例
神戸大学医学部附属病院 食道胃腸外科
P-19-4
瀧口 豪介
当科で経験した門脈ガス血症 4 例の検討
JA 尾道総合病院 外科・内視鏡外科
P-19-5
竹元 雄紀
壊死性膵炎、感染性膵嚢胞に対しネクロセクトミーを施行した 2 症例
昭和大学 藤が丘病院 消化器・一般外科
P-19-6
荻野 隆史(北関東循環器病院 救急総合外科) 皮膚穿破と大量出血により緊急手術を施行した巨大葉状腫瘍の 1 例
P-19-2
斎藤 拓朗(福島県立医科大学会津医療センター 外科学講座)
藤田保健衛生大学 医学部 乳腺外科
司 会
9 月 21 日㈰ 8:15~9:45
塩澤 敏光
死戦期帝王切開術後のダメージコントロール戦略にて母児共に
救命し得た一例
りんくう総合医療センター 産婦人科
後藤 摩耶子
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
132
P-19-7
Abdominal reapproximation anchor(ABRA)system を使用した
Open abdominal management
済生会横浜市東部病院 外科
P-19-8
萩原 一樹
90 歳以上超高齢者に対する腹部緊急手術例におけるリスク判定の検討
県立広島病院 消化器外科
P-19-9
今岡 祐輝
腹部救急領域における漢方治療の応用
福島県立医科大学会津医療センター 外科
P-19-10 新しい救急医である「救急総合外科医」とは?
北関東循環器病院 救急総合外科
斎藤 拓朗
荻野 隆史
モーニングセミナー
9 月 21 日㈰ 7:30~8:10
第 2 会場:3F 孔雀西の間 MS
司 会
山下 裕一(福岡大学医学部消化器外科 教授)
内視鏡下外科手術を救急医療にどのように導入するか?したか?
北海道大学大学院医学研究医学教育推進センター 教育助教
村上 壮一
共催;コヴィディエンジャパン(株)
ランチョンセミナー 1
9 月 21 日㈰ 12:15~13:15
第 1 会場:3F 孔雀東南の間 LS 1
司 会
望月 泉(岩手県立中央病院 院長)
高度急性期病院における救急医療体制と医療連携
~済生会横浜市東部病院の在院日数厳格化への取り組み~
済生会横浜市東部病院 副院長兼消化器センター兼消化器外科部長
長島 敦
共催;ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
ランチョンセミナー 2
第 2 会場:3F 孔雀西の間 LS 2
133
9 月 21 日㈰ 12:15~13:15
司 会
坂本 照夫(久留米大学医学部 救急医学講座 教授)
外科的侵襲による生体反応 ~ サイトカインと臓器障害 ~
東京都済生会中央病院 救急診療科医長・救命救急センター長
関根 和彦
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
共催;CSL ベーリング(株)
第6回
Acute Care Surgery 学会
学術集会
抄 録
CONTENTS
教育講演 135
パネルディスカッション 142
シンポジウム 158
ワークショップ 177
パネルディスカッション関連演題 183
シンポジウム関連演題 199
ワークショップ関連演題 208
一般演題 01 221
11 268
02 225
12 273
03 230
13 277
04 234
14 282
05 239
15 287
06 244
16 292
07 249
17 296
08 253
18 301
09 258
19 306
10 263
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
134
【第2会場】3 F 孔雀西の間
教育講演
EL-1
肝損傷における緊急手術手技および
適応についての検討
1)佐賀大学 救急医学
阪本 雄一郎 1)
19​8​1​年​に ​M​o​r​le​ ​y​ ​C​a​r​a​が​作​成​し​た​救​命​曲​線​に​よ​れ​ば​大​量​出​血​の​死​亡​率​は ​3​0​分​を​超​え​る​
と ​5​0​%​以​上​と​な​る​。​こ​の​救​命​曲​線​が​厳​密​な​も​の​で​は​な​く​目​安​で​あ​る​こ​と​は​い​う​ま​で​も​な​
い​が​、​外​傷​患​者​の​診​療​で​は​受​傷​か​ら​処​置​開​始​ま​で​の​時​間​経​過​が​極​め​て​重​要​で​あ​る​。​よ​っ​
て​、​重​症​外傷
​ ​症​例​の​診療
​ ​に​お​い​て​は​通​常​の​待​機​手​術​患​者​と​異​な​り​患​者​が​搬​送​さ​れ​て​き​た​初​
療​室​(​E​m​e​r​g​e​n​c​y​​D​e​p​a​r​t​m​e​n​t​:​​E​D​)​に​お​い​て​緊​急​手​術​を​要​す​る​こ​と​も​少​な​く​な​い​。​重​症​
肝​損​傷​の​よう
​ ​な​重​症​外​傷​診​療​に​お​い​て​初​療​室​に​お​い​て​行​わ​れ​る​緊​急​手​術​手​技​に​に​つ​い​て​そ​
の​適​応​と​概​略​を​示​す​。
135
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
教育講演
EL-2
肝切除の基本手技
─ 肝門処理と肝切離 ─ 教
育
1)北九州市立八幡病院 消化器・肝臓病センター 外科
講
岡本 好司 1)
演
パネルディスカッション
Acute Care Surgery で肝切除が必要となる時は、肝損傷や肝腫瘍破裂などに対する
シンポジウム
IVR による出血のコントロールが不良な時か、肝膿瘍や、肝壊死、ERBD などで制御不可
能な胆汁性腹膜炎等の合併例などである。緊急止血時は、ガーゼパッキングや Pringle 法、
肝縫合などがメインの手術手技になるが、肝切除が必要な時もある。従って、待機手術で
の肝切除手技に習熟しておくことも Acute Care Surgeon にとって大事なことであると思
ワークショップ
われる。
肝門処理は、肝切除術の要である。Pringle 法を先行後、肝門部の脈管処理を行う。待
機手術では、Glisson 鞘一括処理法と胆管、門脈、動脈の個別処理法がある。前者は、後
者と比較して手技が簡単で、血行処理時間が短く、出血量も少ないとされている。後者の
メリットは、肝離断前の不要な出血の軽減や胆管損傷なしでの阻血領域の確保、肝門部の
連
の裏返しで正確な解剖学的把握の必要性や時間がかかること胆管を維持することによる傍
演
題
胆管動脈叢を介した血流の不完全な阻止などがある。Acute Care Surgery では、前者が
必要性が高い可能性があるが、どちらにしても肝門部処理の手法として両者を理解するこ
シンポジウム
関 連 演 題
とは必要である。
パネルディスカッション
関
腫瘍の取り扱い時に腫瘍の不必要な露出などがないことがあげられる。デメリットは、そ
肝切離法としては、古くから Pean 等を用いて行うクラッシュ法と電気メスを備えた超
音波外科用吸引装置(ultrasonic surgical aspirator; 商品名 CUSA)を用いて、肝実質を砕
いていき、残った脈管を細いものは電気メスや超音波凝固切開装置、シーリングデバイス
などを用いて処理、太いものは結紮を併用して処理していく方法がある。近年では、超音
ワークショップ
関 連 演 題
波凝固切開装置とシーリングデバイスが 1 本で実現された夢のような機器も出現してきて
おり、肝切離は以前と比べて安全に行えるようになってきている。
以上の 2 点につき、
一般的な肝臓外科医が行っている手技を画像などとともに解説する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
136
【第2会場】3 F 孔雀西の間
教育講演
EL-3
Acute Care Surgeon が心得ておくべき
胸部外傷手術
1)東京医科歯科大学医学部附属病院救命救急センター
加地 正人 1)
本邦での外傷症例の予後は中等症では改善されているが、重症症例や外科的根本治療を
要す症例の改善は認めれていない。そこで、初療から外科的介入を要する胸部外傷や胸部
のダメージコントロールなどを中心として話をしたい。
137
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
教育講演
EL-4
心・大血管外傷治療の Innovation
─ elective surgery からの応用 ─
教
育
講
1)沖縄県立八重山病院 外科
2)沖縄県立中部病院 外科
演
本竹 秀光 1)、島垣 智成 1)、村上 隆啓 2)、宮地 洋介 2)、三本 松譲 2)、
鳴海 雄気 2)
パネルディスカッション
心・大血管外傷は診断の遅れ、治療の遅れは生命の危機に直結する。近年 CT などの画
シンポジウム
像診断の進歩は目覚ましく、短時間でより詳細なイメージを得ることができ、術前に治療
戦略を立てる上で非常に有用となってきた。また、PCPS などの補助循環手段の普及で特
に大動脈外傷術後の対麻痺の頻度が格段に低下した。大動脈外傷治療の Innovation とし
ては血管内治療(ステント)があげられる。一般的に大動脈外傷は若年者に多いが、若年
ワークショップ
者の大動脈の直径が 20 ミリ以下のことが多く、コマーシャルベースのステントが使用し
にくい欠点がある。また、血管内治療の長期成績が未だないことから、開胸による大動脈
修復の技術は習得すべき手技である。今回の公演では大動脈損傷の手術をアプローチから
血管吻合まで動画で供覧する。
次に心外傷である。心臓のどの部位の外傷であるかで難易度は異なる。外傷の頻度から
連
が得られる。心室損傷では右心室は前面にあり比較的止血は可能であるが、左室は後面に
演
題
あり展開が困難である。損傷部位を同定するために心尖部を不用意に脱転すると容易に心
停止となることがあるので注意を要する。最近の冠動脈バイパス手術は心拍動下に行われ
シンポジウム
関 連 演 題
ることが一般的になってきた。ハートポジションナーやスタビライザーを用いることで心
パネルディスカッション
関
すると心房の外傷が多く、心タンポナーデ解除後、血管鉗子などでクランプして縫合止血
臓を安全に脱転でき、左室後面の外傷も止血可能である。冠動脈外傷も同様である。冠動
脈外傷では教科書的には依然末梢側であれば結紮止血が標準とされている。しかし、心拍
動下冠動脈バイパス術(OPCAB)の技術を応用することで心拍動下のバイパスや止血が
可能である。ヘパリンを使用する体外循環法を回避できることは外傷手術には適している
ワークショップ
関 連 演 題
と言える。今講演では自然気胸解除術に合併した左回旋枝の損傷、心タンポナーデ症例に
対して OPCAB で止血できた症例を経験したので動画で供覧する。
また、心臓外科領域では急性心筋梗塞合併症の心臓破裂に対する一時的止血法として生
体のり等を用いて圧迫止血救命した例も報告されており、これらは心臓外科専門医が到着
一 般 演 題
するまで圧迫で止血して待つ手段として外傷治療現場では有用な手段と言える。我々外傷
外科医は伝統的な方法を繰り返すだけでなく、他科での innovation を積極的に知識として、
技術として取り入れる必要がある。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
138
【第2会場】3 F 孔雀西の間
教育講演
EL-5
外傷性膵損傷に対する治療戦略
1)済生会横浜市東部病院 救急科
清水 正幸 1)
【はじめに】外傷性膵損傷は、今日においても外傷外科医を悩ます損傷の一つである。そ
の理由として、外傷患者では、ショック例や多発外傷例が多く含まれ、重症度の異なる
個々の患者に沿った治療戦略が必要であること、また、特に膵頭部は腹部の解剖生理の中
で、最も複雑な部位であり、術式選択の失敗は患者の死に直結することなどが挙げられる。
また、膵損傷は穿通性腹部外傷の 5 ~ 7%、鈍的腹部外傷の 1 ~ 2%程度と比較的稀な外
傷であるため、一施設や一外科医が遭遇する機会は非常に少ない。このような現状より、
外傷性膵損傷に関しては、症例数が多く evidence level の高い研究報告は少ない。過去の
文献に基づき、外傷性膵損傷に対する治療戦略とその問題点を、手術療法を中心に解説す
る。【主膵管損傷を伴わない膵損傷】外傷性膵損傷の開腹適応は膵外傷による適応と他の
腹部外傷による適応に分けられる。一般的に膵外傷による開腹適応は主膵管損傷を認める
場合である。主膵管損傷を伴わない例は膵損傷分類 2008(日本外傷学会)において I 型、
II 型、IIIa 型に分類される。この場合、保存的治療(Non operative management: NOM)
を行うことは可能であるが、IIIa 型に対して NOM を行う場合は厳重な管理が必要である。
また、開腹所見で I 型、II 型、IIIa 型膵損傷を認めた場合は、必要に応じて閉鎖吸引式
ドレナージを行う。
【主膵管損傷を伴う膵損傷】主膵管損傷を伴う例は IIIb 型に分類され
る。III b 型膵体尾部損傷に対しては尾側膵切除術が最も推奨さる。脾臓摘出後重症感染
症(Overwhelming postsplenectomy infection: OPSI)のリスクを考慮し可能ならば脾臓
を温存する。脾臓を温存する場合は、支配血管である脾動静脈を温存する術式、短胃動静
脈のみ温存する Warshaw 手術のいずれかを選択する。IIIb 型膵頭部損傷の中でも膵頭部
に高度で広範囲な損傷を伴わない例に対しては、ドレナージのみ、Letton-Wilson 法、拡
大尾側膵切除術が考えられるがいずれの術式も問題点が残されており、現時点で単一の術
式を推奨できる状況にはない。文献的にはドレナージのみを行う方法が主流とされるが、
この術式の III b 型膵頭部損傷における正確な術後合併症率は不明である。Letton-Wilson
法においては膵液漏、縫合不全のリスクを伴う。また、拡大尾側膵切除術においては、術
後の膵内外分泌機能障害が危惧される。IIIb 型膵頭部損傷のうち広範囲で高度な損傷は膵
頭十二指腸切除(以下 PD)の適応である。一般的にその死亡率は 31 ~ 50%と高率であ
る。文献的に PD の適応となる膵十二指腸損傷の術中出血量は平均して 6600 ~ 6900ml と
報告されており出血性ショックや Deadly triad を合併する例も多い。PD の適応となる膵
十二指腸損傷に対してダメージコントロール手術(Damage control surgery: DCS)や二
期的に PD を行うことにより死亡率が 13%に減少たとの報告もある。よって一期的に再
建まで含めた PD を行うことに固執すべきではない。【おわりに】外傷性膵損傷の治療戦
略の根拠となる文献の研究内容の多くは、銃創などの鋭的外傷の多い地域からのものであ
り、鈍的外傷の多い日本の実情とは異なる。今後、本邦において外傷性膵損傷の治療成績
を向上させるには、多施設間による共同研究や日本外傷データバンク(JTDB)、Natonal
clinical database(NCD)などの大規模な集積データを活用した研究が必要である。ま
た、外傷性膵損傷に関する evidence level の高い臨床研究が少ない現時点では、expert opinion を主体とした外傷例膵損傷治療ガイドラインを早急に作成し、臨床の現場で膵外
傷に遭遇している日本の外科医の診療を補助する必要がある。
139
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
教育講演
EL-6
膵臓の切除と再建の基本手技
教
育
1)北海道大学 大学院 医学研究科 消化器外科学分野Ⅱ
講
平野 聡 1)
演
パネルディスカッション
ワークショップ
連
演
題
パネルディスカッション
関
シンポジウム
関 連 演 題
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
シンポジウム
【はじめに】
膵切除・再建術は通常型膵癌(膵管癌)に代表される多くの膵悪性腫瘍対して、古くから膵頭
十二指腸切除術と尾側膵(膵体尾部)切除術という二つの定型的な根治切除術式が適応されてき
たが、臓器特異性に起因する高率な合併症に大きな変化はなく、いざ oncological emergency と
いった場面で、いかに合併症のリスクを軽減し、安全な切除を行えるかが重要である。一方、近
年になり、いくつかの膵原発低悪性度腫瘍や良悪境界病変の疾患概念が明らかになっており、そ
れらに対し根治性や安全性を損なうことなく膵機能をどこまで温存できるかが重要な課題の一つ
となっている。Acute Care Surgery として行われる oncological emergency 以外の膵手術は救
命に次いで機能温存が考慮されるべきであり、さまざまな膵温存手術の知識と技術の有用性は高
いと考えられる。本講演では各切除術式と再建法、特有の合併症などについて供覧する。
【膵臓外科における定型的手術】
膵頭十二指腸切除術(PD)の切除手技はほぼ定型化されているが、対象疾患が腫瘍であれば
その進展状況に合わせていくつかの特別な手技が必要となる。たとえば門脈を合併切除する場合
には切除の範囲や部位によって適切な再建手法を身につけておく必要がある。残膵の再建法には
吻合臓器の選択、膵管吻合の適否やその方法、膵管ステントの使用、不使用など多くの選択肢が
存在し、それらは術後合併症としての膵液瘻に関連している。最近ではドレナージとそのマネジ
メントの進歩により、安全性は徐々に高まっているが、未だに最適な方法を見いだすには至って
いない。尾側膵切除は腫瘍学的有用性を求めて新たな拡大切除術式として腹腔動脈合併尾側膵切
除(Distal pancreatectomy with en bloc celiac axis resection: DP-CAR)が開発・研究されてい
る。本術式は膵周囲および上腹部臓器動脈血流の特徴を最大限活用した切除術式であり、外傷外
科的な応用も可能と考えられる。膵全摘術は大きな臓器欠損が問題であったが、近年の内外分泌
補充療法の進歩により術後も比較的良好な QOL を維持することができるようになった。しかし、
悪性腫瘍以外の膵切除術では、少量でも膵実質を温存することで膵内分泌能が比較的保たれる例
が多いことを認識し、適応を判断すべきである。
【膵臓外科における機能温存手術】
膵実質温存術式として部位にかかわらず核出術や部分切除術が可能であるが、いずれの場合
も主膵管との関係を十分把握し、術中損傷を予防すべきである。他にも膵区域切除として下膵頭
切除術、背側膵切除術、腹側膵切除術、膵鈎部切除術、膵中央区域切除(分節切除)が行われ
ている。部分切除や区域切除では多くの分枝膵管が切離面に露出すること、また、中央区域切除
においても頭側の膵断端と尾側膵-消化管吻合の両部位から膵液瘻が発生する可能性があり、術
後のドレーン管理に注意が必要である。膵周辺臓器である十二指腸からの分泌ホルモンとして
secretin や cholecystokinin(CCK)が膵の導管系や腺細胞に作用して外分泌能を亢進することや、
膵に対する栄養効果(trophic effect)が存在することが知られており、十二指腸を温存すること
は膵機能温存手術の意味を有する。十二指腸を温存する膵頭切除術が各種開発されており、教
室では十二指腸と胆管を全温存する十二指腸温存膵頭切除術(duodenum preserving pancreatic
head resection; DPPHR)を提唱している。他にも胆管を合併切除する十二指腸温存膵頭部全切除
(duodenum-preserving total resection of the head of the pancreas; DPTPHR)や、膵頭十二指
腸第 II 部切除術(pancreatic head resection with segmental duodenectomy: PHRSD)などを
状況に応じて選択可能である。近年、脾臓摘出後重症感染症(overwhelming postsplenectomy
infection; OPSI)の認識とともに尾側膵切除時に脾を温存する術式が重要視されるようになり、
腹腔鏡下に脾動静脈を温存する脾温存膵体尾部切除術が多くの施設で施行されている。
【まとめ】
膵切除・再建法は術後膵液瘻を代表とする未だに多くの未解決な課題を有している。手術に際
しては血管系をはじめとする正しい解剖学的知識はもちろん、内外分泌臓器としての特徴の十分
な理解の上で、安全性と機能温存のバランスがとれた術式選択とトレーニングされたチームによ
る術後管理が必須である。
140
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
教育講演
EL-7
大腸がん関連 Oncological emergency に
対する治療戦略
1)青森県立中央病院がん診療センター
森田 隆幸 1)
手術術式や抗がん剤治療の進歩のなかで大腸癌の治療も大きく変わりつつある。本邦で
も大腸がん治療ガイドラインも改訂を重ね実際の治療に応用されているが、エビデンスが
未だ明らかになっていない課題も少なくない。遠隔転移を有する Stage Ⅳの大腸癌で原発
巣を切除すべきか否かもその一つであるが、メタアナリシスで生命予後に大きく関わる肝
転移や腹膜播種などがなければ原発巣切除の意義は大きいことが示されているが、その最
も重要な理由は大腸癌の治療中に起こりうる緊急手術を回避できる事に他ならない。米国
大腸肛門病学会から出されている緊急手術の項目では、以下の指針が出されている。1.
大腸癌イレウス:右側大腸癌、横行結腸癌では適切な処置が出来るので結腸右半切除、拡
大結腸右半切除を行う、エビデンスレベル(Ⅱ― C)。左側結腸癌では適切なアプローチに
より個別化し治療法を検討する(Ⅱ― C)。2.大腸癌の穿孔:可能であれば先行部を切除
する(Ⅲ― C)
。3.大量出血:病変部を切除する(Ⅲ― C)。 大腸癌の穿孔、大腸癌イレ
ウスでは周術期の死亡率が高く、前者では約9%~ 17%、後者では約5%である。大腸
癌イレウスの治療選択 ①原発巣の口側に双孔式ストーマを造設し二期ないし三期分割手
術を行う、②ハルトマン手術、③一期的切除吻合±予防的ストーマ、④メタリックステント
や経肛門的減圧チューブで減圧し、待期手術へブリッジする。特に、メタリックステント
の導入効果に関するメタアナリシスされた報告をみると、ステント留置の成功率は 70%、
一期的腸管切除吻合率は 60%、であり緊急手術の 37%より有意に良好である。ストーマ
造設を要する例も 64%から 44%に減少しているが、30%が永久的ストーマになっており、
未だ改善の余地がある。また、大腸癌イレウスで口側腸管の高度の拡張と浮腫の存在のた
め、大腸亜全摘を行い一期的に切除・吻合する術式も RCT で検討されているが、術後合
併症、術後機能、ストーマ造設率が少なくないことから安易には勧められず、多発癌の症
例をのぞき行うべきではない。大腸癌の穿孔に対する治療選択穿孔を伴う大腸癌の進行
度は stage Ⅲ、Ⅳが 70%と病期の進んだ例が多く、穿孔部位は 70%が腫瘍部の穿孔、お
よそ 30%が腫瘍より口側腸管の穿孔(閉塞性大腸炎など)であるが、前者の平均年齢が
64.7 歳であるのに比べ、後者は 74.5 歳と高齢者が多い。周術期の死亡率は腫瘍部の穿孔
が9%であるのに比べ、口側腸管穿孔例は 31%と高率になる。 術後合併症は ASA スコ
アが3以上 Mannheim Peritonitis Index(MPI)が 26 以上で高率になる。術式として腫瘍
部穿孔で腹膜炎が限局化していれば切除吻合± diverting stoma が至適な術式として選択
されるが、びまん性腹膜炎の合併している場合にはハルトマン手術など切除とストーマ造
設が勧められる。特に、腫瘍部より口側腸管の穿孔を合併し、全身状態が重篤な例では
救命を優先とする damage control surgery として腸管前置術 exteriorization を行い救命
後に再手術を行う staged operation も選択肢として残りうる。ストーマ造設法 Colorectal
emergency での手術に際してはハルトマン手術や diverting stoma としてストーマ造設を
行う頻度が高い。緊急手術とはいえ、術前にストーマサイトマーキングを行い、原則的に
は一次開口するが、状態が重篤で手術時間の短縮を要するとき、腸管の浮腫や腹膜炎が高
度な例、腸間膜の血流障害が懸念される場合には二次開口ストーマを造設し、ストーマに
起因する合併症は極力避けることも重要である。術後成績 周術期の死亡率を避けるため
には集中管理が不可欠であるが、腫瘍部より口側腸管の穿孔例で長期生存は得られない。
術後短期の成績は ASA スコアと PMI で決まるが、長期生存に寄与するのは癌の進行度
(stage)である。
141
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
PD-1-1
Acute care surgeon を目指す
若手としての将来像
教
育
講
1)市立堺病院 救急外科
2)市立堺病院 外科
演
天野 浩司 1)、西 秀美 1)、蛯原 健 1)、加藤 文崇 1)、森田 正則 1)、
臼井 章浩 1)、木村 豊 2)、中田 康城 1)、大里 浩樹 2)、横田 順一朗 1)
パネルディスカッション
・Acute care surgery 研修についての考え
シンポジウム
Acute care surgeon として働くにあたっては特殊な外傷センターでない限り、重症外
傷のみでは手術件数が少ないのが実情である。救命センターを常時緊急手術可能な状態で
運営するためにはある程度の数の外科医の確保が必要であり、そのニーズを満たすために、
もしくは手術技能の維持のためにも急性腹症を日常的に扱うことは必須と考える。従って、
ワークショップ
一般外科での研修で腹部手術各領域での基本的手術をマスターする必要があると考えてい
る。
・当院の外科研修の現状
研修スケジュールとしては胃食道、肝胆膵、大腸肛門外科を 4 か月ずつローテーション
しながら , 呼吸器、乳腺、救急外科の症例については通年で経験していく。症例は豊富で
連
は急性腹症に対しても積極的な腹腔鏡の導入が試みられており、救急の分野でも腹腔鏡を
演
題
用いた手技は徐々に一般化していくと考えている。現在、当院には救命救急センターが無
く、重症外傷の経験を欠くことは短所である。
シンポジウム
関 連 演 題
・今後の研修に求めるもの
パネルディスカッション
関
主治医で受け持つ症例の殆どを術者として経験できる。多くは腹腔鏡手術であるが、近年
研修を始めた頃は , 数年で外科研修を終えて救急に戻るという考え方であった。しかし
外科が専門分化していく中で、Acute care surgeon に求められることは益々増えていく
と思われる。救急の現場で質の高い外科治療を提供し続けるためには Acute care surgery
を外科の一部門として確立し、また救命センターにおいても外科医としての立場を明確に
ワークショップ
関 連 演 題
したうえで、外科に特化した救急診療を行っていくことが Acute care surgeon としての
知識・技術を発展させていくうえで重要と考えている。
市立堺病院は来年度の救命救急センター設立が決まっており、救急外科はそのセンター
内で主に急性腹症と重症外傷を担当する。今後は一般外科で得られた手技や知識をさらに
一 般 演 題
救急外科で深めていきたい。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
142
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
PD-1-2
地方都市での Acute care surgery
~外傷医なき外傷診療~ 1)社会医療法人近森会 近森病院
辻井 茂宏 1)、井原 則之 1)、山本 彰 1)
当院は高知県 3 番目の救命救急センターで、北米型 ER 方式を採用し、軽症から重症ま
で多くの救急患者を受け入れている。平成 25 年度の救急患者数は 26890 名であり、そのう
ち外傷患者は 924 名、ISS15 以上の重症外傷患者は 163 名であった。緊急手術を要する急
性腹症や腹部外傷も多く、平成 25 年度の外科手術症例は 389 件で、そのうち 96 件が緊急
手術で、外科医 4 名で診療にあたっている。 急性腹症の手術に関しては、執刀医は基本
的に若手外科医であり、症例数も適度で十分な研修が行えていると考えられる。外傷に関
しては、非手術的治療の適応の拡大もあり、緊急手術を要する胸腹部外傷は年間 10 例程
度であるが、ここ数年で重症外傷の搬送数は明らかに増加しており、外傷手術数も増加傾
向にある。当院のような地方都市の救命救急センターの問題点としては、外傷手術症例そ
のものが多くはないこと、そして、外傷診療の豊富な経験のある専門医が不在であり、治
療は Oncologist である外科医が主に対応していることがあげられるだろう。医師もメディ
カルスタッフも外傷手術に不慣れな状況でありながら、重症外傷患者を受け入れざるをえ
ないのが大きな問題である。これを解決するには経験豊富な外傷専門医の確保や若手医、
メディカルスタッフの外傷センターでの研修が理想であるが、マンパワーの不足している
地方都市ではこれがなかなか実現困難である。当院では外傷手術に関しては、研修ではな
く実践となってしまっており、フィードバックも期待できない。当然ながらその成績は外
傷センターと比較して良好なわけがなく、preventable trauma death も多い。外傷セン
ターとはまったく違う、外傷医なき外傷診療の現状とともに当院での acute care surgery
研修の改善への取り組みについて報告する。
143
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
PD-1-3
2 次救急病院における
Acute Care Surgeon の修練と問題点
教
育
講
1)岡山済生会総合病院 救急科
2)岡山済生会総合病院 外科
3)大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター
演
パネルディスカッション
稲葉 基高 1)、野﨑 哲 1)、藤原 俊文 1)、三村 哲重 2)、伊藤 裕介 3)、林 靖之 3)、
甲斐 達朗 3)
【背景】演者は現在卒後 11 年目で 2 次救急病院の救急科に専従して ER 業務を行いながら、
シンポジウム
救急センターを受診した患者の緊急手術のみを担当する救急外科医として診療・修練を
行っている。現在の修練内容を、演者が以前所属していた独立型 3 次救命救急センターと
比較し、現状と問題点を考察した。
【結果】1 年間の緊急手術症例は当院 278 例、3 次救命センター(以下 3 次)150 例で、その
ワークショップ
うち演者が担当した手術は当院 95 例、3 次 78 例であった。その内訳は、外傷 7.4% vs
14.1%(当院 vs3 次)、消化管穿孔・壊死 10.5% vs 41.0%、虫垂炎 41.1% vs 20.5%、胆嚢炎
13.7% vs 5.1%、腸閉塞 8.4% vs 5.1%、腹部大動脈破裂 2.1% vs 0%、その他 10.8% vs 9.0%
であった。鏡視下手術は当院 29.5%、3 次 9.0% であった。
【考察】当院では経験できる手術症例数、鏡視下手術が多く外科医としてのスキル維持に
連
とされる特有のスピード感、外科的集中治療の修練という観点からは不十分である。また、
演
題
Acute Care Surgeon のみで自己完結する救命センターと違い、当院では現在専従 1 名の
ため、一般外科との良好なコミュニケーションが不可欠である。一方、外傷症例について
シンポジウム
関 連 演 題
は 3 次施設でより多いものの、一人あたりの経験症例数は十分と言えなかった。しかし、
パネルディスカッション
関
は有利と考えられるが、3 次救命センターに比べ重症症例が少なく、重症患者対応に必要
当院若手外科医に施行したアンケートでは Acute Care Surgeon に期待する内容として
「外傷手術」が大きな割合を占めており、研修の中で外傷症例の経験数が少ないことは問
題と思われる。今後は外傷手術の修練として、国内外の症例数の多い施設で一定期間の研
修を学会主導で斡旋するなどの対策が期待され、ここに提案したい。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
144
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
PD-1-4
地方型 3 次救命救急センターにおける
Acute care Surgeon 育成の現状と課題
1)筑波メディカルセンター病院 救急診療科
前田 道宏 1)、松岡 宜子 1)、山名 英俊 1)、栩木 愛登 1)、須田 千秋 1)、
新井 晶子 1)、上野 幸廣 1)、阿竹 茂 1)、河野 元嗣 1)
当院は地方型 3 次救命救急センターであり、当科はスタッフ 6 名、後期研修医 4 名の計
10 名で初期から 3 次までの全次型 ER 診療、Dr.Car 事業、Dr.Heli 受け入れ、Acute Care
surgery(以下 ACS)を担当している。
手術は主に、外傷手術、急性腹症の手術を担当し、整形外科疾患や胸部外傷に関しても
担当診療科とともに治療にあたる。2012 年度に当科で施行した手術は 189 例(外傷 58 例、
急性腹症 131 例)である。手術は外科指導医1名、外科専門医 3 名、後期研修医が主に執
刀しており術後管理も当科で行う。ACS 研修を行う後期研修医は救急一般・ACS を当科
で研修の後、各外科診療科をローテーションすることで外科専門医の取得、ACS に必要
な外科手技を取得することを基本としている。 当院は中規模病院であるため各診療科の垣根は低く、外科ローテーションは各外科で後
期研修医の希望と意図をくみとった調整ができる。しかし、一方で当科の人員は潤沢では
ないために、当科の人員配置の状況によっては後期研修医の希望に添えないこともあり問
題点となっている。
外科技術に関しては各外科をローテーションすることで、必要技術・知識を得やすい状
況にはなったが、研修終了後にその技能を維持する方法は現時点では乏しいことも問題点
である。 また、手術症例数を確保するためには広域からの患者を集約する必要がある。そのため
に Dr.Car の運用や Dr.Heli の受け入れを積極的に行うことや、周辺地域に当科の特色を発
信し病病連携を強化することが必要である。これらの問題点を解決する方法としては地域
における ACS 症例の集約化、後期研修終了後の定期的な外科修練のシステムを構築する
ことと、同じ志をもった医師の確保が重要になってくると考えられ、それらを今後解決す
べく当科のプログラムを再検討・改善する必要がある。
145
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
PD-1-5
独立型救急救命センターにおける
外科修練医の診療実績から見る現状と問題点
教
育
1)兵庫県災害医療センター
講
岡田 剛 1)、石原 諭 1)、濵上 知宏 1)、中山 晴輝 1)、黒川 剛史 1)、松山 重成 1)、
川瀬 鉄典 1)、中山 伸一 1)
演
パネルディスカッション
兵庫県災害医療センターは三次救急医療に特化した独立型高度救命救急センターであ
シンポジウム
り、初療対応から根本的治療までを救急医で担う診療体制をとっている。複雑な病態や救
急医のみでは対応が難しい重症外傷や内因性疾患に対しては、併設されている総合病院と
連携して診療に当たっている。
2011 年 4 月から 2014 年 3 月までに当センター所属の外科修練医が関わった担当症例と手
ワークショップ
術症例を対象に、救命センターにおける外科修練医の現状と問題点、隣接病院との連携に
ついて考察した。対象期間中には、卒後 10 年未満の外科専門医(もしくは外科専門医取得
予定者)が年平均 1.7 名在籍し、年間平均搬入症例数 890 例のうち平均 86 症例を主治医と
して担当していた。対象期間中の外科領域における全手術件数は 458 例で、外傷手術症例
が 181 例(39.5%)を占めていた。一方、体幹部外傷と内因性疾患以外の熱傷やデブリドマ
連
(25.3%)を占めていた。修練医の執刀症例は 212 例(46.3%)で、助手症例も含めると 1 人
演
題
当たり年平均 74.4 症例の手術経験であった。隣接病院所属医師との共同手術は 110 例あり、
消化器外科(41 例)、心臓血管外科(43 例)が多く見られたが、このうち修練医の執刀症例
シンポジウム
関 連 演 題
数は 8 例(7.3%)であった。目標経験数を年間主治医 100 例以上、週一例以上の手術執刀
パネルディスカッション
関
ン、血管吻合といった Acute Care Surgeon を目指すうえで修得すべき手術症例も 116 例
と同数以上の助手経験とすると、当センター単独では外科修練として技術を維持・向上す
るために十分な症例数が確保できているとは言えず、他病院専門診療科での研修や off the
job training で研鑽を積んでいる。その現状について報告する。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
146
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
PD-1-6
Acute Care Surgeon、
外科から目指すか、救急から目指すか ?
1)日本医科大学 大学院医学研究科 救急医学分野
2)京都大学 大学院医学研究科 初期診療・救急医学分野
3)京都第二赤十字病院 救命救急センター
苛原 隆之 1)、佐藤 格夫 2)、邑田 悟 2)、川嶋 秀治 2)、飯塚 亮二 3)、小池 薫 2)、
横田 裕行 1)
Acute Care Surgeon を目指す若手医師は多いが、その道のりは人それぞれであり、大
きく分けて外科から目指すか、救急から目指すかのどちらかであろう。つまり外科医とし
て研修を行った後に救急に入るやり方と、救急医として経験を積んだ後に外科修練を行う
やり方である。一般的に、前者では Oncology を中心に手術のみならず外科医として幅広
い経験を得られるが、その間に外傷手術や集中治療の経験が十分出来るとは限らない。一
方後者では、早期から内因性疾患も含めた救急全般の経験が出来るが、外科修練は多くは
2 ~ 3 年と期間が限られ手術手技の習得のみが目標となりがちである。現状では前者の道
のりと後者の道のりをとった者が混在しているが、2004 年に始まった初期臨床研修必修
化以降、後者が主流になってきている印象である。演者は 2003 年卒業の 12 年目で初期臨
床研修必修化以前の最後の世代であり、前者の道のりをとった一人である。初期研修から
市中病院にて一般外科中心の修練を 5 年間行い、その後自己完結型救命センターに入り外
傷や集中治療の経験を積んだ。7 年目には再度外科後期修練を行う機会を得た。11 年目よ
り大学院に進学しているが、Acute Care Surgeon としての自覚を維持するために ATOM
などの off the job training や近隣救命センターとの外傷症例検討会、国際学会への参加等
を意識的に行っている。大学における移植手術や海外施設を経験することも視野に入れて
いる。Acute Care Surgeon を外科から目指すか救急から目指すかは、各人の思いやきっ
かけもありどちらが良いともいえない。しかし定型的な Acute Care Surgery 研修という
ものが存在しない現状では、若手医師がそれぞれの道のりや経験の違いを持ち寄り、現状
に即した理想的な研修のあり方を議論する必要がある。
147
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
PD-1-7
当院の外傷外科医(Acute Care Surgeon)
養成コースの現状
教
育
1)東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター
講
小島 光暁 1)、村田 希吉 1)、加地 正人 1)、大友 康裕 1)
演
パネルディスカッション
【背景】近年、外科分野では臓器別に細分化が進んでいる。一方で、外傷を中心とした緊
シンポジウム
急手術では多数の臓器を同時に取り扱うとともに、Damage control surgery など特殊な
手術戦略の理解が必要である。このような手術に精通した外科医の育成が望まれるが、現
在までに確立されたプログラムはない。
【当教室の取り組み】2007 年開設当初より外傷外科医養成コースを設置している。本コー
ワークショップ
スの目的は、体幹部外傷、血管緊急及び急性腹症などの胸腹部緊急手術を完遂できる外科
医の養成である。プログラムの概要は、先ず当院救命救急センター(TMDU)で初期診療
から術後集中治療まで一貫した管理及び外傷、急性腹症の緊急手術を学ぶ。初期の研修で
は、執刀技術よりも手術適応及び Damage Control などの緊急疾患特有の治療戦略を学ぶ。
その後、関連施設で 2-3 年間の外科研修を行い基本手技の習得し、外科専門医を取得する。
連
として Acute Care Surgery を実践していく。血管、肝胆膵高難度手術に関しては、数年
演
題
単位で追加の外科研修が認められている。
【現状】2007 年以降 21 名が本プログラムに参加した(平均 3 名 / 年)。TMDU 及び外科関連
シンポジウム
関 連 演 題
施設(SA)の年間手術件数はそれぞれ約 250 件、700-1000 件であった。緊急手術のみに
パネルディスカッション
関
取得後は、救命救急センターで外傷を含めた胸腹部緊急手術を執刀医、集中治療の主治医
特化している TMDU では、20% 程度が外傷関連手術であった。SA では消化器外科手術が
80% を占めており、鏡視下手術が年々増加傾向であった。外傷手術は 3 次救急施設でも年
間数例程度であった。
【まとめ】救命救急センター単独では外科医の初期修練に十分な症例は確保できない。また、
ワークショップ
関 連 演 題
一般外科施設では外傷や、重症敗血症などの経験が限られる。そこで、双方の研修を組み
合わせ、不足要素を補完するプログラムが有用と考える。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
148
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
PD-1-8
当院外科後期研修医の
外傷手術研修の現状
1)亀田総合病院 消化器外科
2)亀田総合病院 救命救急科
藤井 渉 1)、草薙 洋 1)、太田 智之 1)、大橋 正樹 2)、葛西 猛 2)
【背景】二次医療圏が約 14 万人であるが当院の 2013 年度救急外来診療者総数は 29898 名、
うち救急搬送数 4274 名、ヘリ搬送 108 名であり、半数以上が二次医療圏以外からの受診・
搬送であった。当科では、救急外来からの緊急手術は基本的に後期研修医が術者として執
刀する。当院における外傷手術研修の現状を報告する。【方法】2001 年1月 1 日から 2013
年 12 月 31 日までの当院における胸腹部外傷症例に対する手術、IVR 下止血術についてカ
ルテによる後ろ向き調査をおこなった。また、術式を検証し、外傷手術研修を網羅できて
いるか確認した。【結果】胸部・腹部外傷手術例は 106 例あり、それぞれ 19 例、87 例であっ
た。受傷機転としては高エネルギー外傷が 82 例(交通事故 68 例、墜落事故 10 例、挟圧事
故 4 例)、刺創が 17 例、鈍的外傷が 4 例、銃創、杙創、切創がそれぞれ 1 例であった。死亡
例は 6 例であった。術式(重複含む)の多くは小腸・大腸の腸管・腸間膜修復術と試験開
腹術であり、それぞれ約 71 と約 15 件であった。損傷部位は、横隔膜が 6 例、肺が 6 例、肝
臓が 4 件、脾臓が 3 件、十二指腸が 2 件、膵臓が 2 件、腎臓が 2 件、胃が 1 件、膀胱が 1 件で
あった。後期研修期間(3-4 年間)で術者もしくは第一助手としての平均外傷症例経験数
は 3.9 例と少なく、2 例から 8 例と大きく幅があった。 経験術式に関しても大きく偏りが
認められた。尚、IVR 下止血症例は 43 例であり、肝臓が 15 件、腎臓が 7 件、脾臓が 13 件
であった。
【結語】千葉南部の基幹病院である当院であっても、外傷手術症例は少なく、
術式としてもかなり偏っていることがわかった。後期研修としての経験症例数も不足して
いる。全国レベルで外傷症例の集中するような基幹病院を設定し、集中的に研修ができる
ようなシステム構築が早急に望まれる。
149
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
PD-1-9
当院での若手外科医のAcute care surgery
研修の現状と今後の取り組み方
教
育
1)聖マリアンナ医科大学 消化器・一般外科
講
星野 博之 1)、小泉 哲 1)、井田 圭亮 1)、森 修三 1)、瀬上 航平 1)、片山 真史 1)、
小林 慎二郎 1)、大坪 毅人 1)
演
パネルディスカッション
【目的】当院での若手外科医の Acute care surgery 研修の現状を報告し今後の取り組み方
シンポジウム
について考察する。【方法】当院(関連病院を除外)の卒後 6 ~ 15 年目の外科医を若手外科
医と定義した。また Acute care surgery 手術をレベルⅠ~Ⅲに分類した。レベルⅠ:発
症から数時間~数日経過を追えるもの、レベルⅡ:発症から数時間以内に手術を要するも
の、レベルⅢ:発症から刻一刻と病態が変化するもの(循環動態が不安定なものなど)、
ワークショップ
の 3 段階に設定した。2013 年 4 月~ 2014 年 3 月までの 1 年間の Acute care surgery 手術症
例およびレベルⅠ~Ⅲの手術症例を全症例と若手外科医症例にわけて算出した。【結果】
当院では消化器外科医が 24 名でそのうち若手外科医が 7 名である。若手外科医の 1 年間の
手術症例(術者)の平均は 60.1 ± 17.7 例でそのうち Acute care surgery 手術は 19.3 ± 6.4 例
であった。レベル別では全症例数がレベルⅠ:167 例、レベルⅡ:105 例、レベルⅢ:5 例
連
1 例(20%)であった。
【考察】レベルⅠおよびレベルⅡにおいては、外傷、内因性に関わ
演
題
らず消化器外科医として習得しなければならない手術であり、いわゆる日常臨床での緊急
手術がこれに当たる。これに対しレベルⅢは、例えば外傷による大量出血などが当てはま
シンポジウム
関 連 演 題
るが、これは日常臨床での修練のみでは術者として initiative をとって手術を行うことは
パネルディスカッション
関
であり、若手の症例数はレベルⅠ:138 例(82.6%)、レベルⅡ:64 例(61.0%)、レベルⅢ:
難しい。その理由として第一に症例数が絶対的に少ないことが挙げられる。第二にレベル
Ⅲ症例では一般的に肝損傷の割合が多く、肝胆膵を専門とした消化器外科医でないと現実
的に手術は難しい。よって当院での研修でレベルⅢまでの到達を最終目標とするのであれ
ば、症例数の少なさをカバーするため off the training が必要であり JATEC や ATOM な
ワークショップ
関 連 演 題
どの外傷外科講習の受講はもちろん、肝胆膵高度技能専門医取得を目指す必要があると考
える。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
150
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
PD-2-1
我が国の Acute Care Surgery とは
1)日本 ACS 学会カリキュラム開発委員会
溝端 康光 1)
パネルディスカッション「Acute Care Surgeon に求められる技術的到達度と養成カリ
キュラムの工夫」の議論にあたっては、我が国における Acute Care Surgery の概念を明
確化し共有する必要がある。
Acute Care Surgery は、Trauma Surgery、Emergency General Surgery、Surgical
Critical Care を一体として取り扱う新たな外科領域として 2005 年に米国外傷外科学会に
より提唱された。その背景には外傷診療に対する若手外科医の熱意の薄れへの対応に加え、
外科的緊急事態における医師へのアクセスの改善という社会的ニーズがあった。一方、我
が国では、外傷初期診療の普及に伴って、外傷外科の危機的状況が再認識されるとともに
外傷外科医の育成の必要性が唱えられ、本学会が 2009 年に設立された。我が国の Acute
Care Surgery が、外傷外科、救急外科、外科集中治療を包括するものであることは認識
が概ね一致しているが、その具体的内容については、医師教育や救急医療体制といった背
景を考慮して我が国独自のものを構築しなければならない。全国に 250 を超える救命救急
センターが整備され、救急医療へのアクセスが良好な我が国において、Acute Care
Surgery の専門領域、診療領域とは何か、ACS 学会カリキュラム開発委員会の概念(図)
を提案し、「Acute Care Surgeon に求められる技術的到達度と養成カリキュラムの工夫」
の議論のたたき台としたい。
151
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
PD-2-2
我が国における Acute Care Surgery 研修カリキュラム
~身につけるべき management 能力とは何か~
教
育
1)日本 Acute Care Surgery 学会カリキュラム開発委員会
講
渡部 広明 1)
演
パネルディスカッション
外傷外科、救急外科、外科集中治療の3つを一体として取り扱う領域として誕生した
シンポジウム
Acute Care Surgery の研修を本邦でどのように進めていくべきか、その議論が必要とさ
れている。本学会カリキュラム開発委員会では、Acute Care Surgeon が身につけるべき
management 能力について議論を深めるため、Acute Care Surgery の専門性のうち患者
全身管理・治療方針決定能力を習得するためのカリキュラム案を作成したので提示する。
ワークショップ
習得すべき能力を外傷外科、救急外科、外科集中治療の3つに分けて検討した。外傷外科
において求められる診療能力は、1)戦略決定能力、2)蘇生に必要な戦術の遂行能力、
3)チームマネージメント能力、4)トータルマネージメント能力の4つをあげた。重症
外傷患者の治療戦略策定のためには、JATEC の理解に加え、蘇生戦略判断、手術療法の
判断、ダメージコントロール戦略の実践などの達成項目が必要と考えた。また、チームマ
連
外傷診療に必要な体制への理解が重要である。救急外科においては、体幹部救急疾患にお
演
題
ける救急対応と患者マネージメント能力、手術療法の判断能力、そして、内因性疾患に対
するダメージコントロール戦略が実践できる能力が必要と考えた。外科集中治療では、周
シンポジウム
関 連 演 題
術期における集中治療管理全般を理解しておくことが重要で、気道・呼吸・循環・血液凝
パネルディスカッション
関
ネージメントに求める能力には、重症多発外傷患者のチームリーダーシップ能力をはじめ、
固線溶系・感染症・腹圧・栄養・内分泌代謝・疼痛の管理のほか、敗血症や ARDS の管理、
血液浄化療法の実践などを用件としてあげた。またダメージコントロール戦略に関連した
集中治療管理の重要性を理解するため、外傷死の三徴の改善、腹部コンパートメント症候
群の治療、planned reoperation の立案などの能力を習得する必要がある。以上、我が国
ワークショップ
関 連 演 題
において Acute Care Surgeon が身につけるべき management 能力についてのたたき台
を提案した。これをもとにカリキュラム作成のための議論を本学会において深めたい。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
152
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
PD-2-3
Acute care surgeon 養成カリキュラムを
構築するにあたって考慮すべきこと
1)深谷赤十字病院救命救急センター、埼玉医科大学救急人材育成講座
金子 直之 1)
Acute care surgery(ACS)の修練カリキュラムは、その内容を検討するに当たり医療
や国民性の背景を勘案すべきで、本邦独自の問題があると考える。それは① ACS 学会設
立の背景、②患者を集約化できなかった背景、に要約されよう。①米国外科学会では癌と
外傷が重要課題で、各々専門委員会(ACSCOC/ACSCOT)が置かれ、データベース(NCDB/
NTDB)を構築している。また general surgery の概念が定着し、その目的は opposing
further fragmentation of surgery と明記されている。さらに外傷外科学会(AAST)は名
称通り surgery に重きを置いてきたが、その中で外傷手術教育に限界が生じ、外科学会と
合同で ACS を設立した。70 年以上続いた外傷学会誌は、外傷+ ACS 誌に継承された。一方、
日本外科学会では外傷は片隅でしか論じられてこなかった。一般外科という用語はあるが
その実は不明瞭で、外科専門医修練課程でも強くは意識されていない。外傷に関しては米
国と同様に外傷学会があり、英語名は JAST となっているが surgery を意識しているわけ
ではなく、外科学会の二階には乗らなかった。データベースについては外科学会が傷病を
問わず広い NCD を構築し、外傷については外傷学会が JTDB を構築している。このよう
な中で ACS を導入するに当たり、外傷学会と外科学会が共同して本学会が創立された。
学術誌は、外傷学会誌と別個に ACS 誌が発行されている。②米国では重症外傷・疾病とも、
症例が集約化されている。一方本邦では外傷学は救急医学の一端として扱われ、外科学で
は意識されていないが、症例は救命センターだけでなく外科系各科に分散され、疾病につ
いても同様である。カリキュラム作成ではこれらを十分に考慮し、真に ACS を実践でき
る医師を養成する意識が必要である。
153
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
PD-2-4
Acute Care Surgery のため、
General Surgeon を目指した研修
教
育
1)市立堺病院 救急センター 救急外科
講
臼井 章浩 1)、天野 浩司 1)、蛯原 健 1)、加藤 文崇 1)、森田 正則 1)、
中田 康城 1)、横田 順一朗 1)
演
パネルディスカッション
【背景】米国で“Acute Care Surgery(以下 ACS)”という概念が提示されると、本邦でも
シンポジウム
それが広がってきた。今考慮すべきは、医師の希望や他国で提唱されたスタイルではなく、
本邦でのニーズに応じた ACS のあり方ではないだろうか。【内容】当院ではまず外科専門
医取得が目標である。上部消化管・下部消化管・肝胆膵の各グループをローテートし、さ
らに呼吸器・乳腺内分泌・救急の疾患では、それぞれを専門とする指導医と共に手術や周
ワークショップ
術期管理に当たる。状態からは保存治療や待機的な調整が望ましい例もあり、画像診断や
非血管性 IVR を含めた手技や判断も学ぶ。また高齢者症例の増加に伴い、周術期管理が
困難となるものも少なくない。集中治療が要される場合も、指導医と共に主治医として学
んでいく。専門外科医の協力もあり、実際の救急現場では学びにくい開胸手技や腹腔鏡手
術についても、そのスキルを身につけてきている。外傷は、救命センター開設後(H27.7)
連
当院では外科疾患のみに特化し、general surgeon としての能力を維持していく。 また、
演
題
外科専門医取得後も、スキルの維持や知識のブラッシュアップが必須である。そのために
豊富な救急症例を「救急外科」という専門性を持った外科として対応していく。さらには
シンポジウム
関 連 演 題
短期の専門外科ローテートや日常からの協力体制を維持し、専門領域についてもより高度
パネルディスカッション
関
より症例を増やしていく予定である。一般に「救急医」は内科疾患も見ていく施設もあるが、
な手技を身につけていくことを目標としている。【結語】外傷症例の減少は避けられない
現実である。外傷のみにこだわらず、general surgeon として緊急性の高い外科疾患を日
常的・継続的に診療していくことで、up to date な知識や手技を維持し、外科専門医の上
部構造としての ACS という専門性を構築できるものと考える。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
154
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
PD-2-5
手術難易度から見た腹部緊急手術の
指導体制
1)福岡大学病院 消化器外科
乗富 智明 1)、小島 大望 1)、山口 良介 1)、石井 文規 1)、島岡 秀樹 1)、
佐々木 貴英 1)、山下 裕一 1)
【緒言】Acute Care Surgery を実践するに当たっては一般外科手術手技の修練は欠かせな
い。消化器外科専門医制度では各術式ごとに難易度を定めてあり、修練目標としてわかり
易い。そこで、我々が行った腹部緊急手術の消化器外科専門医制度における位置付けを明
らかにし手術難易度に応じた術者分担、術者教育のあり方を検討してみた。【方法】2011
年 1 月から 2013 年 12 月までに当院で経験した腹部緊急手術症例を検討した。各手術術式
は消化器外科専門医修練カリキュラム、新手術難易度区分に従って高難度、中難度、低難
度に分類した。
【結果】当該期間中の腹部緊急手術症例は 475 例で、男女比は男性 257 例、
女性 218 例で、年齢の中央値は 66 歳であった。この 475 例に対して 616 の手術術式が行わ
れた。疾患は、虫垂炎が 122 例と最も多く、胆嚢炎 108 例、消化管穿孔 72 例、腸閉塞 64 例、
と続いた。術式数は、虫垂切除術(低難度)120、胆嚢摘出術(低難度)107、急性汎発性腹
膜炎手術(中難度)78、人工肛門造設術(腸瘻造設術(腸管切除あり)、中難度)41、など
が多かった。難易度別では、高難度 3(0.5%)、中難度 202(32.8%)、低難度 384(62.3%)、
分類不能 27(4.4%)であった。【考察】腹部緊急手術の 95%が中、低難度手術であった。
消化器外科専門医修練カリキュラムでは、低難度手術に関してはすべての手術を術者とし
て適切に進行できる(到達度 1)、中難度手術に関しては到達度 1、もしくは指導者の指導
のもと術者として手術を適切に遂行できる(到達度 2)事、を要求している。従って、中
難度手術は主に外科専門医で消化器外科専門医修練中の者が執刀し、低難度手術で困難で
ない症例は(後期)研修医にも執刀機会を与える。そして、消化器外科専門医がそれらの
指導を行う体制を整える事が合理的といえる。
155
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
PD-2-6
地方中核病院一般外科で経験できる
Acute Care Surgery の手術症例
教
育
講
1)兵庫県立淡路医療センター 外科
2)兵庫県立淡路医療センター 心臓血管外科
演
坂平 英樹 1)、川嶋 太郎 1)、高橋 応典 1)、大石 達郎 1)、宮本 勝文 1)、
松岡 英仁 1)、森本 喜久 2)、杉本 貴樹 2)、小山 隆司 1)
パネルディスカッション
ここ数年、日本でも Acute care surgery(以下 ACS)が普及している。ACS は外傷外科・
シンポジウム
救急外科・外科的集中治療から成るが、その具体的な診療内容は各施設によってばらばら
であり、どういった研修がよいのかを考える必要がある。当院外科は消化器一般・呼吸器・
心臓血管の 3 つの外科が大外科の形態で一体運用されており、消化器一般外科は腫瘍外科
と救急外科が 2 本柱となっている。外傷に関しては全身管理の必要なものはすべて外科管
ワークショップ
理、手術は各専門診療科によって施行されている。また術後の循環補助や血液浄化等も、
積極的に外科で行われている。外科での総手術件数(NCD 登録数)は 2013 年度で 992 件、
そのうち ACS として扱う手術数は 199 件であった。ACS 手術の定義は以下の通りとした。
①外傷に関しては一般外科で扱うすべての手術(心大血管損傷を含むが、整形外科・脳神
経外科・形成外科分野は除外)、②内因性疾患に関しては外科受診した日、もしくは翌日
連
切開やカットダウン・小血管の止血術などの小手術は除く、⑤複数回に分けて行った手術
演
題
は 1 回としてカウントする。最も多かったのは急性虫垂炎で 66 件、消化管穿孔・虚血等の
消化管病変は 60 件、oncological emergency 手術は 17 件、血管外科分野が 15 件、呼吸器
シンポジウム
関 連 演 題
外科分野が 9 件であった。当院でも定期手術では鏡視下手術が増えており、緊急手術の鏡
パネルディスカッション
関
に手術を行ったもの、③心臓血管外科に関しては心疾患・胸部大動脈疾患は除く、④気管
視下手術は 33 件と以前より増加傾向であり、全体の 16.5% であった。外傷に関しては、
2013 年度の ISS ≧ 16 の重症外傷は 62 例、外科入院は 34 例、ACS 手術に含まれる外傷手術
は 19 件であった。ACS 手術をまんべんなく経験できる当施設は ACS 研修に適していると
思われるが、重症外傷の手術数は少ないため、その研修は他施設で行うべきであろう。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
156
【第2会場】3 F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
PD-2-7
Acute Care Surgeon のあり方:
米国での経験から
1)大船中央病院
北濱 昭夫 1)
38 年間米国で外科専門医として臨床にかつ臨床外科教授として教育にもかかわった。
Acute Care Surgery(ACS)は米国の専門医制度にはないが Critical Care surgery Fellow
はいる。外科の専門分化によりショックの患者に緊急で対応できる ACS が考えられた。
外傷や外科治療の合併症などに対し臓器の損害レベルを把握し限られた時間で damage
control をおこなう。本来その治療は専門医が行うのでなく標準の外科治療の一部と考え
られ外科レジデントの教育の中に組み込まれている。レジデントを終了し外科専門医試験
に合格すれば ACS の基礎は出来ている。米国の医師は病院の勤務医ではない。医療行為
への技術料が診療報酬になる。その医療行為に対する責任が発生し医療事故の際には医師
の個人責任になる。判断力の養成がレジデント訓練で大切である。各医師の知識、経験、
技術 , 及び倫理性と責任感を伴う性格で判断力に差が出てくる。Joint Commission が米国
の医療を維持し標準化させる。ナースやコメディカルの質、外科医の専門訓練、医療施設
の質に日本と差がある。日本の外科医は勤務医でサラリーマン。このような環境で ACS
の技術到達度や養成カリキュラムを作ることは困難である。基礎知識や経験の欠如による
判断は良い医療結果を導かない。ACS の基礎は技術ではなく判断力の養成で診断力であ
る。時間との戦いであるショックの理解と治療経験につきる。米国の外科医は専門医継続
の試験を 10 年ごとに受ける。その試験は外科領域全体に渡る。SESAP という問題集があ
る。ラスベガスの Trauma, Critical Care& Acute Care Surgery のコースに参加した。私
見を述べる。
157
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
シンポジウム 1
SY-1-1
Acute Care Surgery における
敗血症治療戦略の取り組み
教
育
1)公立豊岡病院 但馬救命救急センター
講
演
小林 誠人 1)、安田 唯人 1)、間 崇史 1)、藤原 大悟 1)、菊川 元博 1)、
山本 奈緒 1)、佐々木 妙子 1)、藤崎 修 1)、中嶋 麻里 1)、前山 博輝 1)、
パネルディスカッション
松井 大作 1)、番匠谷 友紀 1)、岡 和幸 1)、永嶋 太 1)
【目的】当センターにおける腹腔内感染症に対する敗血症治療戦略を検討した。
【対象と方
シンポジウム
法】腹腔内感染症に伴う severe sepsis、septic shock と診断、根治的治療を行った症例を
対象とし、周術期管理・治療、予後などについて検討した。【結果】severe sepsis 30 例、
septic shock 23 例。救命率は severe sepsis 100%、septic shock 91%であった。APACHE
II score から算出される標準化死亡比は severe sepsis 0、septic shock 0.15 であった。全
ワークショップ
例 Early goal direct therapy(EGDT)に 準 拠 し た 治 療 が 行 わ れ、septic shock 19 例 に
PMX-DHP を 施 行、17 例 が 救 命 さ れ、 予 後 と PMX-DHP 導 入 前 の catecholamine index
(CAI)、APACHEII score の ROC 解析では、CAI; cut off 値 14(AUC 0.85)、APACHE II
score;cut off 値 23(AUC0.87)であった。また shock 症例中 10 例に初回手術で原因除去の
みを、集中治療管理後に消化管再建などを行う planned re-operation を施行し 9 例が救命
連
EGDT 中に PMX-DHP を組み込みことは有用であることも示唆された。術式は原因の速や
演
題
かな除去、徹底した除染は基より、段階的な治療戦略でもある planned re-operation を積
極的かつ的確に適応することも重要と考えられた。Acute Care Surgery では EGDT に
シンポジウム
関 連 演 題
planned re-operation 、PMX-DHP などを含め、周術期の重症度、病態にあった集学的治
パネルディスカッション
関
された。
【考察】敗血症管理プロトコール化の重要性が示唆された。shock 例においては
療を提供することが救命率向上をもたらす。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
158
【第2会場】3 F 孔雀西の間
シンポジウム 1
SY-1-2
外科的敗血症性ショックに対する、
新しい surgical resuscitation の提唱
1)日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野
小豆畑 丈夫 1)、木下 浩作 1)、丹正 勝久 1)、河野 大輔 1)、小松 智英 1)、
杉田 篤紀 1)、櫻井 淳 1)
【初めに】敗血症診療ガイドラインは、ショック患者の感染巣コントロール手術の導入を
明 記 し て い な い。 我 々 は 敗 血 症 性 シ ョ ッ ク を 伴 う 消 化 管 穿 孔 に 対 し て、Early GoalDirected Therapy(EGDT)と早期手術の protocol を作成し、診療を行ってきた。その中で、
来院から手術開始までの時間が転帰に影響することを示し、来院から 6 時間以内に手術を
開始すべきであると考えている(Critical Care 2014)。今回、protocol 導入前後で治療・転
帰を比較し、protocol の治療的意義を検討した。【症例と結果】Protocol 導入後の septic
shock を合併した消化管穿孔 137 例 : Protocol group(2007-2012)と protocol 導入以前の
105 例 : Control group(2001-2006)を比較した。2 群間において年齢・性別・穿孔部位・
重症度・抗菌薬投与までの時間・手術時間・術後の支持療法に差はなかった。総輸液量は
来院から 6 時間以内は protocol group が多かったが、24 時間後には逆転していた。手術導
入までの時間は統計学的に有意差を持って Protocol group が短く(p<0.0001)、60 日転帰
が良好であった(survival ratio: 64.8% vs. 79.6%; p=0.0097)
。
【考察】我々の protocol は早期
手術導入を可能とし、かつ、24 時間総輸液量を抑えることができた。その結果、protocol
はショックを伴う消化管穿孔患者の転帰を改善したと考える。Protocol は組織酸素代謝を
意識した初期輸液と早期手術導入を目的とした外科的蘇生術に他ならず、これを novel
surgical resuscitation と提唱したい。
159
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
シンポジウム 1
SY-1-3
Acute care surgery における
敗血症治療戦略
教
育
講
1)平塚市民病院 外科
2)平塚市民病院 救急科
演
福西 琢真 1)、葉 季久雄 2)、真木 明日香 1)、益田 悠貴 1)、泉田 博彬 1)、
井上 崇道 1)、加藤 文彦 1)、大西 達也 1)、小島 正之、秋好 沢林 1)、
赤津 知孝 1)、永瀬 剛司 1)、山本 聖一郎 1)、金井 歳雄 1)、中川 基人 1)
パネルディスカッション
【はじめに】本邦および海外からの敗血症診療ガイドラインの普及により、敗血症診療は
シンポジウム
飛躍的に向上を遂げている。しかしながら Acute care surgery(以下 ACS)を要する敗血
症に対する治療戦略は確立されていない。【目的】単施設での治療経験から、ACS におけ
る敗血症治療戦略を探ることを目的とした。【対象と方法】2012 年 4 月から 2014 年 3 月ま
での 2 年間に経験した腹腔内臓器穿孔・穿通症例 40 例のうち、来院時に SIRS の診断基準
ワークショップ
を満たした 23 例を対象とし、転帰、年齢、APACHE スコア(以下 A)、予測死亡率(以下
Pd)、SOFA スコア(以下 S)、DIC スコア(以下 D)を検討した。さらに敗血症ならびに
DIC に対する治療内容(CHDF 施行(以下 C)、rTM 製剤投与(以下 T)、γグロブリン製
剤投与(以下 G)
)について検討した。【結果】対象となった 23 例のうち、予測外生存は 1
例であり、死亡は 3 例(13%)で、いずれも Pd>0.5 であった。死亡群では A(24 ± 2 vs 11
連
差を認めたが、年齢、D には有意差を認めなかった。治療内容に関しては、C は 5 例、T
演
題
は 4 例、G は 9 例に行われていた。死亡した 3 例のうち、2 例に C、T、G が行われていたが、
救命することはできなかった。これらの 3 例は初回手術において source control が十分出
シンポジウム
関 連 演 題
来ていない症例であった。【結語】外傷に対する damage control surgery と異なり、敗血
パネルディスカッション
関
± 6, p<0.01)、Pd(0.63 ± 0.05 vs 0.24 ± 0.16, p<0.01)、S(8 ± 2 vs 3 ± 3, p<0.05)に有意
症に対する緊急手術においては、初回手術で根治手術を行うことが肝要であることが示唆
された。C、T、G のみで救命することは困難であり、あくまで根治手術後における補助
治療手段であることが示唆された。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
160
【第2会場】3 F 孔雀西の間
シンポジウム 1
SY-1-4
重症敗血症患者に対する
周術期管理の新戦略
1)金沢大学附属病院 肝胆膵移植再生外科
宮下 知治 1)、中沼 伸一 1)、岡本 浩一 1)、酒井 清祥 1)、木下 淳 1)、牧野 勇 1)、
中村 慶史 1)、林 泰寛 1)、尾山 勝信 1)、中川原 寿俊 1)、田島 秀浩 1)、
高村 博之 1)、二宮 致 1)、北川 裕久 1)、伏田 幸夫 1)、太田 哲生 1)
【はじめに】敗血症時の凝固・線溶系の異常は DIC を惹起し、臓器障害へと進展する重要
な病態である。TGF-β、VEGF-A、PAI-1 などは免疫あるいは凝固・線溶活性を調節して
いるが、これらの因子を含有し放出する細胞は血小板である。我々は臓器障害に至る過程
を炎症性メディエータの観点から 3 段階と考えている。第一段階は好中球の死に起因する
neutrophil extracellular trap(NET)と血管内での血小板凝集それに続く血管内皮細胞の
障害、第二段階は血管内皮障害に基ずく血管外血小板凝集(EPA:extravasated platelet
aggregation)による線維化や血管収縮、第三段階として EPA や好中球 migration による
臓器障害である。我々は重症感染症による急性肺障害は SIRS-Associated Coagulopathy
と関連し、NET に続く EPA の状態であると考え、これらの対策が DIC の予防には重要で
あると考えている。今回、周術期からの NET および EPA 対策により重症化を予防できた
と考えられる症例を通して、急性期における NET と EPA 対策の必要性を紹介する。
【症例】
82 歳女性。強皮症および肺線維症にてシロスタゾール、ステロイドを内服中であった。2
日前発症の腹水を伴う絞扼性イレウスにて敗血症性ショック状態で搬送され、緊急手術を
施行した。開腹時より血性腹水を認め、空腸が一塊で壊死しており部分切除を施行した。
術中より EPA 対策として PGE1、好中球 migration 対策にエラスターゼ阻害剤を投与し、
術後には TAT と PIC をモニタリングしながら凝固亢進状態に対し低分子ヘパリン、ガベ
キサートメシル酸塩、リコモジュリンをまた線溶抑制状態に対し PDE3 阻害剤の投与を再
開した。さらに PMMA 膜による CHDF を施行した。術後は間質性肺炎の急性増悪や DIC
の所見も認めず、経過良好にて退院した。【まとめ】重症感染症による敗血症では白血球
や血栓対策に加えて血小板対策も講じることが重要である。
161
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
シンポジウム 1
SY-1-5
当科における腹腔内敗血症に対する
ダメージコントロール戦略
教
育
1)帝京大学医学部付属病院救命救急センター
講
角山 泰一朗 1)、藤田 尚 1)、北村 真樹 1)、内田 靖之 1)、石川 秀樹 1)、
坂本 哲也 1)
演
パネルディスカッション
【背景】敗血症性ショックに対する治療戦略として Surviving Sepsis Campaign Guideline
シンポジウム
(SSCG)が提唱されており、腹腔内敗血症に対しては SSCG とともにソースコントロール
として外科治療 Damage Control(DC)が必要となる。
【目的】当院において、腹腔内敗血症に対して DC 及び集中治療管理を行った症例を検討
した。
ワークショップ
【対象 / 方法】2009 年 4 月から 2014 年月の期間に、当院救命センターに搬送された腹腔内
敗血症に対して、DC 及び集中医療を行った 22 症例について、年齢、性別、APACHE-II
スコア、SOFA スコア、初回手術時間、ICU 日数、人工呼吸器装着期間(VENT)、エン
ドトキシン吸着(PMX)
、乳酸値及び塩基過剰の変位、持続的血液濾過透析(CHDF)、
Delayed Primary Fascial Closure Rate(DPFCR)、入院期間、転帰を調査し、統計学的な
連
【結果】22 例中、生存群 14 例、死亡群 8 例。平均年齢 73.6 歳、男性比 0.45、死亡退院率 0.36、
演
題
各平均値は LOS52.4 日、APACH-II21.6、SOFA8.5、手術時間 89.2 分、VENT24.7 日、ICU
27.5 日。PMX 施行例は 16 例、CHDF 施行例は 7 例。乳酸値 < 2.5、BE > 5.0 まで要した時
シンポジウム
関 連 演 題
間は各々 32.6 時間、8.8 時間。生存群と死亡群では、有意差は認めなかったが、60 分以内
パネルディスカッション
関
考察を行った。
に初回手術終了群と 60 分以上の群の比較において、DPFCR のみ有意差を認め(p=0.02)、
SOFA ≧ 11 群と SOFA < 10 群の比較においては、PMX 施行頻度のみ有意差を認めた
(p=0.02)。
【考察】腹腔内敗血症に対しての DC において、短時間手術は DPFCR を高くすると考えら
ワークショップ
関 連 演 題
れ、重症例における術後管理として PMX が有効になりうることが示唆された。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
162
【第2会場】3 F 孔雀西の間
シンポジウム 1
SY-1-6
血中エンドトキシン除去カラム(PMX)の
有用性の検討
1)横浜市立大学 医学部 消化器・腫瘍外科学
諏訪 雄亮 1)、松山 隆生 1)、有坂 早香 1)、門倉 俊明 1)、本間 祐樹 1)、
大田 洋平 1)、森 隆太郎 1)、熊本 宜文 1)、武田 和永 1)、遠藤 格 1)
【背景】PMX は敗血症治療において広く行われている一方で有効性に関するエビデンスや
開始基準、効果判定法等にはいまだ一定の見解はなく議論の余地がある。【目的】今回
PMX 施行例の臨床経過およびエンドトキシン値、Endotoxin Activity Assay(EAA)値
の経過を検討し有効性について検討する。【方法】2011 年 3 月から 2014 年 3 月までに当院
当科で Septic Shock に対して PMX を施行した 11 例を対象とし retrospective に検討した。
【結果】年齢中央値 75 歳、男性 8 例、女性 3 例。疾患は下部消化管穿孔 4 例、重症胆管炎 3 例、
肝膿瘍 1 例、特発性食道穿孔 1 例、SMA 塞栓症 1 例、腹水感染 1 例でうち緊急手術症例は
5 例であった。PMX を 1 回施行したのは 3 例、2 回施行は 8 例であった。血液培養は 6 / 11
例(54.5%)で陽性でそのうちグラム陰性桿菌が検出されたのは 3 / 11 例(27.2%)であった。
PMX 開始時は全例で急性期 DIC スコア 4 点以上でありその持続日数は平均 8.5 日、28 日生
存率は 72.7%(8 / 11)であった。平均収縮期血圧は 110.2 / 128.7mmHg(p=0.025)、平均ノ
ルアドレナリン投与量は 0.13 / 0.08γ(p=0.066)と有意に血圧上昇を認めた。呼吸機能を
反映する P / F 比は 270.5 / 259.9(p=0.66)と改善は認めなかった。PMX 施行前後の平均エ
ンドトキシン値は 23.3 / 9.96(p=0.068)、EAA 値は 0.51 / 0.46(p=0.86)であった。28 日生
存した 8 例に限ると EAA 値は 0.56 / 0.50(p=0.88)であった。【結語】PMX は血圧上昇の効
果は見いだせたもののその他に有意な結果は今回得ることができなかった。エンドトキシ
ン測定法ではエンドトキシン値と EAA 値では両者とも有意な結果を今回は見いだせな
かったものの、今後症例を積み重ねる意義はあると考える。
163
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
シンポジウム 1
SY-1-7
大腸穿孔に伴う敗血症性ショックに対するsurgical critical care
~ PMX-DHP療法とトロンボモジュリン製剤の併用戦略 ~ 教
育
1)済生会横浜市東部病院 救命救急センター
講
折田 智彦 1)、豊田 幸樹年 1)、山崎 元靖 1)、船曵 知弘 1)、清水 正幸 1)、
松本 松圭 1)、佐藤 智洋 1)、小林 陽介 1)、廣江 成欧 1)、風巻 拓 1)、中道 嘉 1)、
北野 光秀 1)
演
パネルディスカッション
【背景・目的】エンドトキシン吸着療法(PMX-DHP 療法(PMX))は下部消化管や胆道感
シンポジウム
染に伴う敗血症性ショックへの治療選択肢としても国内では比較的広く認識され、欧米で
も多施設研究が展開されている。一方、DIC 治療薬であるトロンボモジュリン製剤(rTM)
は敗血症性 DIC への有効性や生命予後改善効果が報告されているが、近年 DIC 改善効果
だけでなく LPS や HMGB-1 の吸着効果もあることが注目されつつある。LPS 吸着効果を
ワークショップ
持つ PMX と rTM の併用治療は、特にグラム陰性菌性敗血症ショックへの有効性が期待で
きると考えられるが、その併用効果の報告は少ない。我々は大腸穿孔に伴う敗血症性ショッ
ク症例の緊急手術後ショック遷延例に対して、surgical critical care の一戦略として積極
的に PMX を適応とし、その速やかな循環蘇生効果を報告してきたが、今回 PMX と rTM
の併用治療の有効性を検証した。
連
術後ショック離脱困難例を対象(n=38)。標準治療(EGDT)群、PMX 導入群、PMX+
演
題
rTM 併用群の 3 群で比較し、各群の SOFA score 推移(各臓器スコアも)、Catecholamine
Index(CAI)推移、28 日生存率等を検討した。
シンポジウム
関 連 演 題
【結果・結語】標準治療群に対し PMX 群、PMX+rTM 群の SOFA cardiovascular、CAI は
パネルディスカッション
関
【対象・方法】大腸穿孔による敗血症性ショック症例のうち緊急手術と EGDT 実施うえで、
術後有意に高かったが経時的に有意な改善を認め、さらに PMX+rTM 群は PMX 群と比し
ても循環スコア改善は有意だった。28 日生命予後に各群間差はなかった。大腸穿孔に伴
う術後敗血症性ショック遷延症例に対する PMX は速やかな循環蘇生効果があり、rTM の
併用は更に効果的で、surgical critical care の一戦略として有効な可能性がある。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
164
【第2会場】3 F 孔雀西の間
シンポジウム 1
SY-1-8
大腸穿孔症例における ATIII 活性値の
推移と抗凝固療法の意義
1)福岡大学病院 消化器外科
2)福岡大学病院 救命救急センター
小島 大望 1)、乗富 智明 1)、島岡 秀樹 1)、佐藤 啓介 1)、山口 良介 1)、
大宮 俊啓 1)、石井 文規 1)、石倉 宏泰 2)、山下 裕一 1)
外科的処置を要する敗血症性播種性血管内凝固症候群(DIC)に対する抗凝固療法の有
効性と安全性についての報告は限られている。アンチトロンビン(AT)は抗凝固作用の
みならず抗炎症作用を併せ持つことが知られ、筆者は HMGB1 により惹起される炎症反応
が AT により抑制されることを動物実験で示した(Transplantation 2012)。緊急手術を施
行した大腸穿孔 37 例(腸間膜穿通例、医原性を除く)を対象とし、周術期の AT 活性値に
注目し抗凝固療法の有効性について検討した。対象は 2009 年 12 月から 2014 年 5 月までに
当科で経験した大腸穿孔 37 例で平均年齢は 74.8 歳であった。その中で、大腸癌による穿
孔を 8 例、ステロイド長期投与例を 8 例に認めた。4 例に審査腹腔鏡検査が施行された。
30 例を救命し得たが、7 例を失った。死亡例中 4 例はステロイド長期投与例で、1 例は大
腸癌による穿孔であり、術後脳梗塞を 2 例、大腸再穿孔を 2 例に認め致死的であった。全
例で AT 活性値は術直後低下し、死亡例では平均 46%、生存例でも平均 36.8%の低下を認
めた。13 例に AT 製剤が投与され、10 例は術後 24 時間以内に投与を開始した。3 例にトロ
ンボモデュリン(TM)製剤を併用した。いずれも AT 活性値の速やかな改善を認めた。4
例に TM 単独投与を行ったが、AT 活性値の上昇は緩徐であった。いずれも出血性有害事
象は認めなかった。AT 活性値が低値遷延する症例、AT 補充療法後も AT 活性値が低下
する症例は感染性合併症を認める傾向にあり転帰不良であった。敗血症性 DIC の本態は
微小血栓形成による臓器障害であり、手術侵襲はそれを助長する。手術はできうる限り低
侵襲に努め、確実な洗浄ドレナージと止血を行う。臓器潅流を確保し、可及的早期に過剰
産生されたトロンビンを拮抗することが、全身炎症反応を軽減し周術期の回復を促進する
可能性がある。
165
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3 F 孔雀西の間
シンポジウム 1
SY-1-9
Thromboelastometry(ROTEM)を用いた、急性期DIC診断
基準により診断された外傷性DICと敗血症性DICの検討
教
育
1)佐賀大学医学部附属病院 救命救急センター
講
小網 博之 1)、阪本 雄一郎 1)、山田 クリス孝介 1)、太田 美穂 1)、後藤 明子 1)、
鳴海 翔悟 1)、今長谷 尚史 1)、八幡 真由子 1)、三池 徹 1)、岩村 高志 1)、
井上 聡 1)
演
パネルディスカッション
【目的】今回我々は、Thromboelastometry(ROTEM Ⓡ)を用いて外傷と敗血症による播種
シンポジウム
性血管内凝固(DIC)の病態の違いについて比較検討した。
【方法】対象は 2013 年 1 月から 2014 年 3 月まで、当センターに搬送され、救急外来にて
ROTEM(EXTEM/FIBTEM)を測定した 57 症例(外傷 30 例、敗血症 27 例)。急性期 DIC
診断基準を用いてそれぞれの病態を DIC 群(Traumatic DIC、TD: 9 例、Septic DIC、SD:
ワークショップ
10 例)と非 DIC 群(nTD: 21 例、nSD: 17 例)に分け、後ろ向きに統計学的解析を行った。
【結果】TD は SD に比べ、Fibrinogen が低く(p<0.001)、FDP(p=0.026)や D-dimer(p=0.025)
も高値だった。さらに SD は、血圧が低く、CRP が高かった。また、TD では、EXTEM の
血栓硬度(A5-30、MCF)と α 角が小さかったが、線溶指標は有意差がなかった(p=0.245)。
こ れ に 対 し、nTD も nSD に 比 べ、Fibrinogen は 低 く(p<0.001)、FDP(P=0.012)や
連
アが高く、ショックを呈した症例が多かった。また nTD では、EXTEM/FIBTEM の血栓
演
題
硬度と EXTEM の α 角、CFT で低値を示した。転帰は、nSD が nTD より悪い傾向が見ら
れた(p=0.098)。
シンポジウム
関 連 演 題
【結論】①外傷と敗血症は、DIC を起こす機序が異なり、Fibrinogen が重要な役割を果た
パネルディスカッション
関
D-dimer(P=0.003)も高値を示した。さらに nSD は、炎症反応(WBC/CRP)と SIRS スコ
していた。② ROTEM では両病態の線溶状態の特徴を評価できなかった。③ DIC でない
敗血症も予後不良だった。
【参考文献】Kushimoto S, et at. Thromb Haemost 2008;100:1099-105.
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
166
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-1
Acute Care Surgery を要した
下部消化管 Oncologic Emergency 30 例の検討
1)長崎大学大学院 移植・消化器外科
井上 悠介 1)、藤田 文彦 1)、虎島 泰洋 1)、米田 晃 1)、金高 賢悟 1)、
曽山 明彦 1)、足立 智彦 1)、北里 周 1)、日高 匡章 1)、高槻 光寿 1)、黒木 保 1)、
江口 晋 1)
【背景】下部消化管手術を要する救急疾患は悪性腫瘍を原因とすることも多い。【目的】当
科での下部消化管 oncologic emergency に対する acute care surgery の妥当性を検討す
る。【方法】2005 年 4 月~2014 年 3 月までの症例 30 例を後方視的に検討した。検討項目は
年齢、性別、腫瘍位置、種類、進行度、手術要因、発症から手術までの時間、術式、前治
療の有無、根治度、手術時間、出血量、術前ショックの有無、術後 ICU 管理、予後とした。
【結果】年齢中央値 74.5 歳(31~94 歳)、男 16:女 14、腫瘍位置は、小腸 3 例、盲腸 3 例、
上行~下行結腸 9 例、S 状結腸 14 例、直腸 4 例。原発 28 例、転移性 1 例、原発不明 1 例。
stageⅠ 1 例、Ⅱ 9 例、Ⅲa 6 例、Ⅲb 2 例、Ⅳ 11 例。要因は、穿孔 11 例、穿通 3 例、出血
2 例、腸閉塞 16 例、膿瘍形成 8 例。手術までの時間中央値は腸閉塞、穿孔症例ともに 48 時
間、術式は、一期的切除+再建 15 例、切除+人工肛門造設 12 例、人工肛門造設のみ 3 例。
根治度は、Cur A 14 例、B 2 例、C 14 例。手術時間中央値は 149 分(81~267)
。術前ショッ
ク症例は 8 例。術後は 9 例を ICU で管理。在院死は 3 例で内 2 例が癌死であった。Stage ご
との在院死亡率は、stageⅠ~ⅢB で 5.6%、stag Ⅳで 18.1% であった。【考察・結語】下部
消化管 oncologic emergency は発症から時間が経過しての手術になることも多いが、全身
状態が保たれている症例では適切な acute care surgery によって約半数の症例で根治性を
担保しつつ全身状態を改善させることができた。
167
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-2
大腸がん穿孔症例に対する治療戦略
教
育
1)社会医療法人岡本病院(財団)第二岡本総合病院
講
清水 義博 1)、箕輪 啓太 1)
演
パネルディスカッション
【目的】当院は 2 次救急病院であり、穿孔性腹膜炎を起こした大腸がんは、救急医でなく化
シンポジウム
学療法も行う消化器外科医が緊急手術を担う。この病態は生命の危機に対する治療のみな
らず、予後も不良であるがんに対する治療も考慮しなければならない。今回我々は、大腸
がん穿孔症例から治療戦略を検討した。【方法】2004 年 4 月から 2013 年 3 月までの 10 年間
に当院で手術をした大腸穿孔 49 例中、大腸がん穿孔は 14 例であった。Avastin が原因の
ワークショップ
回腸穿孔 1 例を除く、がんが穿孔部である 13 例を対象にした。【結果】男 4 女 9。平均年齢
は 74.2 歳。術前 CT で大腸がんと診断されたのは 11 例。周術期死亡は 1 例もなく、化学療
法期間中に穿孔し術後 38 日目にがん死した 1 例を含んで救命率は 100%であった。手術は
12 例で一期的切除 + 人工肛門を施行し、治癒切除は 4 例。StageIV は 9 例で、すべて原発
巣は切除であった。部位は右側結腸が 4 例で、術前 SIRS は 1 例もなく PMX-DHP の施行は
連
存率は 12.3%、MST は 20.7 か月。StageIV では 5 年生存は得られなかったが 4 例に化学療
演
題
法を施行し、MST は 16.9 か月であった。【考察】治癒切除可能で PS が良好な症例は、積極
的一期的切除及びリンパ節郭清が予後改善に寄与するとされているが、当院のように大腸
シンポジウム
関 連 演 題
がん穿孔症例は StageIV 症例が多い。30 ヶ月の長期予後が得られた症例も散見され、CT
パネルディスカッション
関
なかった。左側結腸は 9 例で、SIRS 状態が 6 例。PMX-DHP を 7 例に施行した。全 5 年生
で術前に診断をつけ、最近の化学療法による予後改善に期待し、早く化学療法を導入でき
る一期的切除 + 人工肛門が標準術式と考えられた。また救命には SIRS を伴う重症症例に
おいて、集学的治療として PMX-DHP が貢献し、左側結腸でのがんの穿孔では積極的導入
が良いと考えられた。根治手術の不可能な大腸がん症例においても診断、手術、周術期管
ワークショップ
関 連 演 題
理、化学療法含めて oncologist であり acute care surgeon である消化器外科医が上記戦略
を緊急手術時からマネージメントし、良好な治療成績に反映された。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
168
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-3
切除不能大腸癌に対するベバシツマブ併用
化学療法中の消化管穿孔症例
1)熊本大学大学院 消化器外科学
山下 晃平 1)、宮本 裕士 1)、坂本 快郎 1)、大内 繭子 1)、徳永 竜馬 1)、
日吉 幸春 1)、岩上 志朗 1)、馬場 祥史 1)、吉田 直矢 1)、馬場 秀夫 1)
【はじめに】切除不能大腸癌に対し、ベバシヅマブ(BV)併用化学療法が標準化学療法と
して行われている。ベバシズマブ特有の重篤な有害事象として、消化管穿孔がある。一旦
発症した場合は致命的となりうるため、早急な対応を必要とする。当科にて経験した BV
併用化学療法中に消化管穿孔を発症した症例の臨床的背景を明らかにし、その問題点を考
察する。【対象】2007 年 10 月から 2014 年 1 月の間に、三次治療までに BV 併用化学療法を
施行した切除不能大腸癌症例 127 例中、消化管穿孔を発症した 6 例(4.7%)を対象とした。
【結果】男性 4 例、女性 2 例で、年齢中央値は 63 歳(55-76)であった。原発巣は S 状結腸 4
例、上行結腸 1 例、回盲部 1 例で、原発巣切除なしで化学療法が施行されていたのは 5 例
であった。穿孔時の治療ラインは 1 次治療が 3 例、2 次治療が 2 例、3 次治療以降が 1 例で
あった。併用レジメンは mFOLFOX6 3 例、XELOX 1 例、FOLFIRI 2 例であった。穿孔
部位および原因は、化学療法が著効したことによる原発巣穿孔 3 例、原発巣通過障害によ
る口側腸管穿孔 2 例、十二指腸潰瘍穿孔 1 例であった。外科的手術は 4 例に行われ、4 例に
緊急開腹手術が、2 例には経皮的ドレナージが施行された。6 例中 4 例は、1 次治療開始 3 コー
ス以内に発症していた。穿孔後の早期死亡例を 3 例認めた。穿孔後に化学療法が再開でき
た症例は 2 例であった。
【まとめ】当科での経験より、1 )Bulky な原発巣や腹膜播種を伴
う症例、2 )治療が不応となり、原発巣によるイレウスを生じやすい時期、3 )消化管潰瘍
の既往が、BV 使用による消化管穿孔のリスクファクターと考えられた。原発巣が消化管
穿孔は治療関連死につながる重篤な有害事象であり、BV 併用化学療法中には消化管穿孔
を念頭に置いて厳重な経過観察を行っていく必要がある。
169
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-4
大腸ステントを用いた大腸癌イレウスの
治療方針
教
育
1)JCHO 神戸中央病院 外科
講
曽我 耕次 1)、西村 幸寿 1)、西尾 実 1)、高 利守 1)、小黒 厚 1)、中川 登 1)
演
パネルディスカッション
【目的】われわれは経肛門的イレウスチューブ挿入による減圧で一期的根治手術を行って
シンポジウム
きたが、2013 年 4 月から大腸癌イレウスに対しては金属ステントを留置し待期手術(BTS)
を行う方針とした。15 例に施行した短期成績を報告する。【対象と方法】2010 年 4 月より
2014 年 5 月までの大腸癌手術症例 310 例中 CROSS score 0 または 1 と判断された 58 症例を
対象とした。経肛門的イレウスチューブを挿入していた 2013 年 3 月までをチューブ群、大
ワークショップ
腸ステントを挿入した 2013 年 4 月以降をステント群として比較検討した。年齢:46 歳か
ら 90 歳(平均 70 歳)。性別:男女比は約 2:1。ステント挿入に際して、臨床的成功率は
92% で挿入に伴う合併症は見られなかった。【結果】年齢、男女比、病変部位、術式、ステー
ジ、手術までの平均日数に有意差は認められなかった。腹腔鏡施行率は 56% と 92% でス
テント群が有意に高く、術後在院日数(中央値)は 22 日と 9 日でステント群が有意に短かっ
連
は見られなかった。
【結語】術前大腸ステント留置によって人工肛門造設を回避できる可
演
題
能性があり QOL の改善に役立つと考えられた。
パネルディスカッション
関
た。ストーマ造設率は 18% と 0% でステント群が少ない傾向を認めたが統計学的な有意差
シンポジウム
関 連 演 題
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
170
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-5
閉塞性大腸癌に対する当院の治療に
ついての検討
1)市立堺病院 救急センター
2)市立堺病院 外科
加藤 文崇 1)、西 秀美 1)、蛯原 健 1)、天野 浩司 1)、森田 正則 1)、臼井 章浩 1)、
中田 康城 1)、木村 豊 2)、大里 浩樹 2)、横田 順一朗 1)
(背景)閉塞性大腸癌は腸閉塞状態、あるいは内視鏡が通過せず腸閉塞に準じた症状を呈
する大腸癌の状態である。穿孔する危険性もあり、緊急治療を要する。これまでは緊急手
術となり、1期的吻合ができない場合は人工肛門を造設し、二期的手術が施行されていた。
しかし、経肛門イレウス管、経肛門ステントを利用することで減圧、待機手術が可能となっ
た。(目的)閉塞性大腸癌に対する手術を行った症例を対象とし(初診時穿孔していた症
例は除外)
、当院での治療成績を検討・評価することを目的とした。(対象と方法)2012
年 4 月~ 2014 年 4 月に手術を行った左側閉塞性大腸癌 15 例を対象とし、治療の選択と経
過を後ろ向きに検討した。(結果)年齢の平均は 69 歳。男性 7 例、女性 8 例であった。狭
窄部位はDが 2 例、S~RS が 13 例。減圧処置を試みた症例は 14 例であり、処置成功率
92%、処置時合併症はなし。術後入院期間は 14 日(6-30 日)、14 症例中 1 例で減圧不良を
認めた。腹腔鏡下手術は 11 例で可能であった。(考察)大腸における閉塞性大腸癌の頻度
は 7~29% と報告されている。閉塞性大腸癌に対する緊急手術では開腹手術となり、術前
の栄養状態低下や術中の術野汚染などから術後合併症も起こりやすい。また、不慣れな術
者の場合、郭清が充分に行えるのかといった問題がでてくる。そのため、減圧処置により
腸閉塞を解除し、できるだけ緊急手術を避け、十分な術前精査と全身状態改善後に待機手
術を行う事が望ましい。また、減圧処置により腹腔鏡下での原発切除手術を安全かつ低侵
襲に行うことも可能である。当院では、症状、CT などで閉塞性大腸癌と診断がついた場合、
すみやかに減圧処置を施行している。 (まとめ)閉塞性大腸癌に対し、まずは減圧を試み、
緊急手術を避け、待機的に腹腔鏡手術を行うことが理想である。
171
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-6
当科における左側大腸癌イレウスに
対する治療戦略
教
育
1)福島県立医科大学 臓器再生外科学講座
講
多田 武志 1)、大須賀 文彦 1)、金田 晃尚 1)、松井田 元 1)、渡邊 淳一郎 1)、
遠藤 久仁 1)、佐瀬 善一郎 1)、後藤 満一 1)
演
パネルディスカッション
【はじめに】大腸癌イレウスは oncology emergency であり、手術のタイミングと術式選択、
シンポジウム
イレウス管やステントでの腸管減圧など、治療方法に難渋することもしばしばである。ま
た、大腸癌化学療法の進歩による再発率の低下や生命予後の延長は目覚ましく、周術期化
学療法を考慮した腫瘍学的戦略も重要と考えられる。【目的】当科における左側大腸癌イ
レウスに対するこれまでの治療方法について調査し、左側大腸癌イレウスに対する効果的
ワークショップ
治療戦略を検討する。【対象と方法】2010 年 1 月~2014 年 5 月までに当科で手術を施行した
大腸癌 80 例のうち、左側大腸癌イレウスとして手術を行った 29 例について前期と後期に
分け、治療・術式の選択、永久ストーマ率、術後合併症等について retrospective に検討
した。【結果】前期 16 例までは、術前腸管減圧症例においてもハルトマン手術(14 例)を
第一選択としていた。2 例で 2 期的手術を目指し、そのうち 1 例のみ術前化学療法施行後
連
なっている。一方、後期の 13 例では、術前に腸管の減圧が得られていた 6 症例に対して一
演
題
期的吻合術を施行し、残りの 7 例では 2 期的手術を目指した人工肛門造設術のみを施行し
た。そのうち 3 例では術前化学療法施行後に原発巣切除を施行し得た。術後合併症を 4 例
シンポジウム
関 連 演 題
(30%)に認め、全身状態不良などにより 3 例(23%)が永久ストーマとなっている。【考察】
パネルディスカッション
関
に原発巣切除を行った。術後合併症を 9 例(56%)に認め、15 例(93%)が永久ストーマと
前期では左側大腸癌イレウスに対する治療方法の第一選択はハルトマン手術であった。し
かし、腸管減圧成功例への一期的吻合の安全性と、化学療法によってもたらされる腫瘍縮
小効果により、その治療戦略は変わり、後期では術後合併症や永久ストーマの割合も減少
した。今後は、再発率や生命予後などの長期成績も含めた検討が必要である。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
172
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-7
直腸癌イレウスに対するストーマ造設と
術前化学療法を用いた二期的治療
1)弘前大学 大学院 医学研究科 消化器外科学講座
長谷部 達也 1)、小山 基 1)、諸橋 一 1)、坂本 義之 1)、村田 暁彦 1)、
袴田 健一 1)
【目的】直腸癌イレウスの症例では周囲臓器への直接浸潤を伴う T4 症例も多く、一期的根
治術を行う際に合併切除が必要になる場合も多い。我々は 2010 年以降、機能温存と局所
再発抑制を目的として、ストーマ造設ののち、術前化学療法(NAC)を行って根治手術を
行う二期的治療を導入しており、これらの治療の有用性、安全性について検討した。【対
象と方法】2000-2013 年の直腸癌 550 例のうち、イレウスのため絶食、TPN 管理が必要となっ
た 55 例(10%)を対象とした。2000 年-2009 年を前期群、2010 年-2013 年を後期群とし、
治療内容と術後成績を比較検討した。【結果】年齢および性別に有意差は認めなかった。
Rb 以下の腫瘍は前期群 16%、後期群 50%。腫瘍径は前期群 77 mm、後期群 58 mm。壁深
達度 T4b は前期群 32%、後期群 62%。Stage IV 症例は前期群 42%、後期群 29% であった。
ストーマ造設例は前期群 22%、後期群 63%で、NAC を前提としたストーマ造設の割合が
後期群で増加している。術前照射は前期群 6%、後期群 8% であり、NAC は前期群 3%、後
期群 63% と後期群で有意に多く、全例で L-OHP が平均 5.5 コース投与されていた(分子標
的薬併用は 93%)
。腹膜炎手術は前期群 6%、後期群 17% で、緊急手術は前期群 39%、後
期群 33% であった。下部直腸癌の肛門温存(LAR、ISR)は前期群 20%、後期群 50% と有
意に増加した。TPE は前期群 6%、後期群 0%と NAC によって TPE を回避できた症例が
増加した。術後合併症は前期群 48%、後期群 50% で、縫合不全は前期群 13%、後期群 16%
であった。再手術は前期群 19%、後期群 12% で、周術期死亡はなかった。
173
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-8
当院における oncologic emergency としての
胃癌穿孔に対する治療方針
教
育
1)多根総合病院 急性腹症科・外科
講
城田 哲哉 1)、山口 拓也 1)
演
パネルディスカッション
【はじめに】oncologic emergency の診療では担癌患者の病態を理解する必要がある。胃癌
シンポジウム
穿孔は胃穿孔症例の 10~30%程度を占めるとされ、特に高齢者の上部消化管穿孔の診療
においては念頭に置かねばならない。腹膜炎を有する胃癌穿孔に対する治療戦略に関して
一期的切除を行うか二期的切除を行うかは意見が分かれるところである。当院では術前に
胃癌の診断を得る困難さも踏まえ、腹腔鏡手術での穿孔部の処理を行い、二期的根治切除
ワークショップ
術を行うことを基本としている。今回、当院における胃癌穿孔症例に対する治療方針につ
き検討した。【対象と方法】2005 年 1 月から 2014 年 5 月までの間に当院にて経験した胃癌
穿孔症例は 12 例であった。術前診断、手術術式、胃癌の進行度、合併症、予後などにつ
き検討した。【結果】平均年齢 68.8 ± 13.8 歳(50~91 歳)、男:女 10:2 例であった。来
院時に SIRS やショックとなっていた症例は 1 例であった。術前に胃癌の診断を得た症例
連
施行、平均手術時間は 90.8 ± 21.6 分(60~128 分)、腹腔鏡下にて終了していた症例もあった。
演
題
二期的に胃癌の根治術を施行した症例は 6 例(胃全摘術 3 例、幽門側胃切除術 3 例)であっ
た。根治術症例における進行度は stageⅡA 1 例、stageⅡB 3 例、stageⅢC 2 例であった。
シンポジウム
関 連 演 題
全例において手術における致死的合併症、術死は認めなかった。予後に関して長期生存症
パネルディスカッション
関
は 2 例であった。全例において大網充填術や穿孔部閉鎖術、ドレナージ術など緊急手術を
例も存在した。
【まとめ】手術加療において致死的合併症、術死は認めず、当院の方針は
妥当と思われた。胃癌穿孔症例でも十分な予後が期待できる症例もあり、穿孔時は、術前
診断が困難な症例が多く、特に腹膜炎状態であることより、初回手術は穿孔部の処理のみ
でよいと思われる。全身状態が安定した後、胃癌の十分な評価を行い根治術を行うことが
ワークショップ
関 連 演 題
望ましい。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
174
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-9
当科の oncologic emergency 症例の
治療成績
1)帝京大学 医学部 救急医学講座
北村 真樹 1)、角山 泰一朗 1)、内田 靖之 1)、石川 秀樹 1)、藤田 尚 1)、
坂本 哲也 1)
【はじめに】3 次救急で取り扱う oncologic emergency 症例は生理学的に重篤で、癌の根治
よりも生命予後の改善が優先されることが多い。本研究の目的は、当科の oncologic
emergency 症例の治療成績を明らかにすることである。
【対象と方法】2011 年 1 月から 2014 年 5 月までに当科に搬送された oncologic emergency12
症例を対象に、病理学的分類、3 次搬送理由、APACHE-II, SOFA、ICU 滞在日数、当科
入院期間、転帰について遡及的に調査した。
【結果】大腸癌 6 例、胃癌 3 例、その他 3 例。3 次搬送理由は出血性ショック 6 例、消化性管
穿孔による汎発性腹膜炎 6 例。半数が他院からの転院であった。APACHE-II;
[平均(95%
信頼区間)]15.6(11.3-19.9)点、SOFA;平均 5.5(3.6-7.4)点、ICU 滞在日数;15.2 日(2
-69)
、救急科入院日数平均;38.5 日(2-113)。ICU 滞在死亡が 1 例、学内他科転科 7 例、
後療法を希望されない患者 4 例を他院に紹介した。
【結語】生命予後の危険を脱したのち、速やかな他科との連携が原疾患の予後を改善させ
る可能性がある。
175
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第1会場】3 F 孔雀東南の間
シンポジウム 2
SY-2-10
当センターで手術を施行したOncology Emergency 80症例の検討:
地方救命センターにおけるAcute Care Surgeonの充実化は急務である
教
育
1)和歌山県立医科大学 救急集中治療医学講座 高度救命救急センター
講
上田 健太郎 1)、岩﨑 安博 1)、山添 真志 1)、川副 友 1)、川嶋 秀治 1)、
國立 晃成 1)、酒谷 佳世 1)、加藤 正哉 1)
演
パネルディスカッション
【背景】
当施設は専従医による自己完結型救命センターであり、
Acute Care Surgeon(ACS)
シンポジウム
のスタッフ 4 名は平常 ER 勤務で体幹部外傷・Oncology Emergency(OE)を含めた急性
腹症の緊急手術全てを担い、待機システムの元でこのスタッフ 2 名と研修医で手術が行わ
れている。当センターの位置する和歌山県は近年人口減少が著しいにも関わらず、ACS
による手術件数は 2006 年 105 件から毎年増加し 2013 年 206 件と倍増している。これは和歌
ワークショップ
山県の 2 次病院で緊急手術を行う体制が崩壊し、症例が集約化されたためと考える。今回
2006 年から 2014 年 5 月までに手術を施行した OE 80 症例を検討する。【結果】搬送形態は、
直接搬送 17 例、常勤外科医がいる 2 次病院だが手術不可のための転院搬送 34 例、それ以
外の病院・医院からの搬送 29 例であった。ER 到着後、すぐに緊急手術を施行した症例は
66 例、イレウス管挿入し腸管減圧後の準緊急手術が 10 例、出血に対する内視鏡止血困難
連
2 次病院で治療されていると推察できる。OE の原因となった腫瘍の部位では、胃が 12 例
演
題
(出血 5 例、穿孔 7 例)で 11 例が緊急手術であった。大腸腫瘍が原因となった 68 症例で、1
例はバイパス手術が施行された。22 例は術前検査・術中所見で壊死・穿孔なしと診断さ
シンポジウム
関 連 演 題
れ人工肛門造設術のみ施行され、内 21 例は全身状態改善し他院での癌治療が可能であっ
パネルディスカッション
関
での準緊急手術が 4 例でほとんどが緊急性の高い症例であり、待機手術に耐えうる症例は
た。残り 45 例は閉塞・壊死・穿孔・出血に対して腫瘍を含む腸管切除が施行された。も
ちろん手術で根治が望める症例に対しては胃・大腸ともに標準リンパ節郭清を行っている。
ただ癌の標準手術件数は救命センターの特性上多くないため、外勤日をスキル維持のため
一般病院での手術研修としている。ACS は術後急性期を ICU・HCU で安定させ、患者本人・
ワークショップ
関 連 演 題
家族の希望に沿い地域連携室と協力し転院・通院先を決定しているが、多大な労力を必要
とする。転帰は術後 28 日生存率が 92.5%で、敗血症死 3 例、癌死 1 例、他病死 2 例であった。
癌末期で緩和目的の転院が 13 例、化学療法・根治手術での転院・外来紹介が 37 例、経過フォ
ロー目的での転院・外来紹介が 24 例であり、平均入院日数は 18.8 日であった。【結論】
一 般 演 題
ACS はオーバーワークであり OE を含めた医療レベルの低下が危惧される。ACS 育成に
よる救命センターの充実化と 2 次病院との連携強化による転院のスムーズ化が現実的な解
決策と考える。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
176
【第1会場】3 F 孔雀東南の間)
ワークショップ
WS-1
外傷性十二指腸損傷の手術に付加手術は
不要である
1)沖縄県立中部病院 外科
村上 隆啓 1)、宮地 洋介 1)、谷口 直樹 1)、加藤 崇 1)、本竹 秀光 1)
外傷性十二指腸損傷は比較的稀な病態であるが、救命のためには早期診断と治療が不可
欠である。今回、当施設での経験をもとに、その診断および手術術式に関し検討した。対
象は 1986 年から 2012 年に当施設で経験した十二指腸損傷 37 例中、Ⅰb 型損傷を除く 26 例。
平均年齢は 32 歳、平均 ISS は 19、62% が鈍的外傷であり、受傷機転は交通外傷が 54% を
占めた。手術適応は、出血が 31%、腹膜炎が 69% であり、損傷分類は 20 例がⅡ a 型、2 例
がⅡ b 型損傷であった。19 例に単純縫合閉鎖、6 例に十二指腸切除吻合、1 例に膵頭十二
指腸切除術を施行し、幽門閉鎖術等の付加手術は 1 例も施行していない。手術成績は、縫
合不全は 3 例のみであり、死亡例、膵頭十二指腸切除例を除いた縫合不全率は 8.7%、死亡
例は 2 例認めたが、いずれも出血死であり、十二指腸損傷に起因する死亡は認めなかった。
以上より、外傷性十二指腸損傷に対しては、付加手術を行わなくとも良好な成績が示され
た。
(本演題は、Japanese Journal of Acute Care Surgery vol.3 2013, 26–30 に掲載済である)
177
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第1会場】3 F 孔雀東南の間)
ワークショップ
WS-2
外傷性十二指腸損傷の治療戦略
教
育
1)久留米大学 高度救命救急センター、2)久留米大学 医学部 救急医学
講
疋田 茂樹 1, 2)、坂本 照夫 1, 2)、山下 典雄 1)、高須 修 1, 2)、新谷 悠介 1)、
高松 学文 1, 2)、森 真二郎 1)、宇津 秀晃 1, 2)、下条 芳秀 1, 2)、中村 篤雄 1, 2)、
森田 敏夫 1, 2)、吉山 直政 1)、平湯 恒久 2)、諸木 萬理子 1, 2)、金苗 幹典1, 2)
田代 恵太 1, 2)、越後 整 1)、永瀬 正樹 2)、冬田 修平 1)、金城 友美 2)、鍋田 雅和 2)
演
パネルディスカッション
外傷性十二指腸損傷は縫合不全を生じやすい。その要因として、1 形態的には、周囲臓
シンポジウム
器に固定され壁の進展性が乏しく吻合時の緊張が高い、腹膜が欠損する部位がある、隣接
組織(胆道、膵管)の再建を必要とする、2 機能的に、神経 ─ 消化管ホルモンネットワー
クの拠点で、消化液分泌が吸収より優位で術後吻合部の肛門側の浮腫と狭窄で内圧が増大
しやすい、3 臨床的に構造と機能のどちらか、あるいは一方を温存する術式から、全て切
ワークショップ
除してしまう術式まで多彩等がある。目的過去に経験した十二指腸損傷を検討し縫合不全
回避の術式確立の一助とする。方法Ⅱa 以上の十二指腸損傷 16 例(鈍的損傷 13 例、鋭的損
傷 3 例)で、術式は PD 1 例以外は、損傷部デブリドメント後、縫合で、胆道損傷は胆管空
腸吻合が施行、縫合不全は鈍的損傷の 5 例にあり。検討項目として縫合不全-例と縫合不
全+例での傷重症度(ISS、RTS、Ps)術前因子(Apache2, 発症~手術までの時間)、術中
連
での術後の経鼻胃または十二指腸チューブの排液量を検討した。結果:鈍的損傷で吻合部
演
題
の被覆なしと十二指腸内減圧なしが、縫合不全に危険因子。術後消化液の異常排出は鋭的
損傷で 0%、鈍的損傷では 100%発症。結語:十二指腸鈍的損傷の縫合不全を防止には吻
シンポジウム
関 連 演 題
合部被覆と十二指腸内減圧が重要で。また、胆管空腸吻合は、胆管のデブリドメントを施
パネルディスカッション
関
因子(吻合部被覆の有無と十二指腸内減圧の有無)、さらに鋭的損傷 3 例と鈍的損傷 13 例
行し、肝管での吻合が必要である。被覆組織として D1,D2 前壁は大網、D2 後壁は空腸、
D3 は To トライツ靭帯か大網、D4 は空腸の荷重を避けるための十二指腸固定術、胆管吻
合は肝管レベルで、膵管は空腸脚あるいは胃と吻合する術式が考慮される。PD は Vater
乳頭を含めた膵管、肝内胆管の同時損傷か膵頭十二指腸の消化管から完全離断あるいは阻
ワークショップ
関 連 演 題
血状態以外には不要であると考えられる。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
178
【第1会場】3 F 孔雀東南の間)
ワークショップ
WS-3
外傷性十二指腸損傷における術式と
治療成績
1)東京都済生会中央病院 救命救急センター、2)済生会横浜市東部病院 救命救急センター
3)済生会神奈川県病院 外科・交通救急センター、4)済生会宇都宮病院 救命救急センター
関根 和彦 1, 2, 3)、松本 松圭 2, 3)、清水 正幸 2, 3)、入野 志保 1, 2, 3)、武部 元次郎 1, 2)、
栗原 智宏 1, 3)、船曵 知弘 2)、山崎 元靖 2, 3)、加瀬 健一 4)、長島 敦 2, 3)、
吉井 宏 3)、北野 光秀 2, 3)
【背景と目的】外傷性十二指腸損傷に対して、かつては十二指腸憩室化術(diverticulization:
DV)が多用されたが、近年は術式の簡略化や臓器温存を目指した手術戦略に変化し、現
在も術式選択の議論が続いている。十二指腸損傷に対する現在の修復手術は、破裂部の縫
合閉鎖術(simple repair: SR)、十二指腸吻合術(duodenal anastomosis: DA)、一時的幽
門閉鎖術(pyloric exclusion: PE)、胃瘻造設術(gastrostomy: GS)、逆行性空腸瘻造設術
(jejunostomy: JS)等が単独あるいは組み合わせて実施される。腹腔内出血が制御できな
い場合は、初回手術でガーゼパッキング術(Pack: PK)とし、再手術時に修復手術が施行
される。本研究では十二指腸損傷手術における術式選択と手術成績の現状を明らかにする
ことを目的とした。【対象と方法】対象群を 2000 年以降の十二指腸損傷に対する全手術症
例(11 人 /13 回手術 /29 術式)とし、他方 1973 年から 12 年間の手術例(34 人 /36 回手術 /54
術式)を対照(historical control: HC)群とした。各症例の手術毎に以下を調査:年齢、性別、
受傷機転、十二指腸損傷形態(D1-D4; 単 / 複数)、他の腹腔内 / 腹腔外損傷、遅延手術(>24h)
か否か、術式、十二指腸関連術後合併症(duodenum-related complication: DRC)、非十二
指腸関連術後合併症(non-DRC)
、入院 28 日後生存転帰。ロジスティック回帰分析により
手術成績(術後合併症、生存転帰)に関わる要因を解析した。【結果】対象群 11 人(42 ± 19
(mean ± SD)歳 / 男性 7、実施術式 : PK 5, SR 11(仮縫合を含)、DA 2、PE 4、GS 4、JS 2、
ほ か 1)で は、DRC 率 9%、non-DRC 率 36%、 死 亡 率 27 %。HC 群 34 人(36±15 歳 / 男 性
30、 実 施 術 式 : DV 18、SR 7、serosal patch 10、DA 1、JS 6、 ほ か 12)で は、DRC 率
15%、non-DRC 率 21%、死亡率 15%。生存転帰に関与する因子は多発外傷(odds ratio
(OR)21.3,[95% confident interval(CI): 1.4-333.3],p=0.03)のみ。DRC に関与する因子
は D2 損傷(OR 18.6,[95% CI: 1.1-312.5],p=0.04)のみ。縫合不全に関与する因子は確定
できなかった。
【考察】十二指腸損傷の生命予後は主に腹腔外合併損傷の重症度と関連した。
十二指腸損傷に対する修復術式は縫合不全や DRC の発生に関与しなかった。SR と PE を
はじめとした現在の重症十二指腸損傷に対する手術戦略は妥当であると考えられた。
179
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第1会場】3 F 孔雀東南の間)
ワークショップ
WS-4
外傷性十二指腸損傷の術式をどう選択すべきか。
─当施設での 16 例の経験から
教
育
1)独立行政法人国立病院機構災害医療センター救命救急センター
講
岡田 一郎 1)、霧生 信明 1)、米山 久詞 1)、諸原 基貴 1)、加藤 宏 1)、
小井土 雄一 1)
演
パネルディスカッション
(目的)外傷性十二指腸損傷の術式をどう選択すべきか検討する。(対象と方法)当施設で
シンポジウム
開院から 18 年 6 ヶ月間(1995 年 7 月 1 日から 2013 年 12 月 31 日)に手術を行った鋭的及び鈍
的十二指腸損傷 16 例を対象とした。診療録を用いて後ろ向きに調査し、術式選択の妥当
性を検討した。
(結果)男性 11 例、女性 5 例。年齢中央値は 36(14-78)歳[中央値(最小
値-最大値)]。鈍的損傷 14 例、鋭的損傷 2 例であった。損傷形態はⅠa 型 2 例、Ⅰb 型 1 例、
ワークショップ
Ⅱa 型 9 例、Ⅱb 型 4 例であり、Injury Severity Score 中央値は 11(4 -34)であった。損傷
部位は D1 4 例、D2 4 例、D3 5 例、D4 3 例。Ⅰa 型 2 例には漿膜筋層縫合を行い、Ⅰb 型
1 例には血腫除去術を行った。Ⅱa 型では 5 例に単純縫合閉鎖を行い、付加手術として
pyloric exclusion を 2 例、diverticulization を 2 例に行った。付加手術を行ったのは受傷か
ら手術までに 24 時間以上が経過した症例、術後十二指腸狭窄が危惧された症例、Ⅲ型膵
連
した 3 例には damage control surgery(以下、DCS)を行った。そのうち上腸間膜動静脈
演
題
本幹損傷を合併した 2 例が術後早期に死亡した。DCS を行い生存した 1 例は球部が断裂し、
膵損傷を合併していたため、2 期的に diverticulization を行った。14 例が生存し、いずれ
シンポジウム
関 連 演 題
も独歩退院した。1 例に十二指腸瘻を認めたが、再手術を必要とせず自然閉鎖した。生存
パネルディスカッション
関
損傷合併例であった。Ⅱb 型 1 例には十二指腸 ─ 十二指腸吻合を行い、術前ショックを呈
した 14 例に慢性的な合併症は認めなかった。(結語)術式選択として、術前ショック症例
では damage control surgery を選択すべきである。膵損傷合併例、受傷から 24 時間以上
経過した症例、損傷部の術後狭窄が危惧される症例では付加手術が望ましい。腹部血管損
傷合併例での出血コントロールは難しく、依然課題である。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
180
【第1会場】3 F 孔雀東南の間)
ワークショップ
WS-5
十二指腸損傷に対する外科治療に
標準化は可能か?
1)日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター
益子 一樹 1)、服部 陽 1)、阪本 太吾 1)、安松 比呂志 1)、中山 文彦 1)、
本村 友一 1)、林田 和之 1)、松本 尚 1)
【目的】十二指腸損傷に対する外科的治療の定型化は可能か、当センターにて緊急開腹手
術を施行した症例より検討した。【対象】1999 年 4 月~2014 年 6 月の外傷症例のうち、十二
指腸損傷に対して開腹手術を施行した 13 例を対象とし、後方視的に術式を検討した。平
均 41.2 歳(19 ~64 歳)、男性 7 例、女性 6 例、10 例が鈍的外傷、3 例が穿通性外傷であった。
【結果】損傷形態は日本外傷学会臓器損傷分類 IIa が 8 例、IIb が 5 例、十二指腸単独損傷で
入院後 2 日目の CT にて診断された 1 例を除き、開腹前に十二指腸損傷の確定診断が得ら
れた症例はなかった。ショックもしくは肝・膵・腎・IVC・SMV などの合併損傷のため
DCS を要したのは 7 例で、Planned reoperation を含み最終的に PD(2 例)、十二指腸縫合
(2 例)、Diverticulization(1 例)が行われていた(2 例の病院前 CPA は Planned reoperation
を行えず死亡)。初回 DCS を必要としなかった 5 例は合併損傷に対する高侵襲手術の必要
がなかった症例で、臓器修復 / 摘除と十二指腸修復 + 幽門閉鎖 + 胃空腸吻合(pyloric
exclusion、以下 PEx)が行われていた。十二指腸修復、PEx、Diverticulization に直接起
因する合併症は腸閉塞 1 例(保存的に軽快)のみであった。【考察・結論】十二指腸損傷例
では、①生理学的不安定の原因になり得る主要臓器に近接しており、腹腔内他臓器損傷に
よる初療室開腹や DCS を選択する症例が多い、②解剖学的特性から肝・膵・主要血管損
傷を合併し十二指腸単独損傷は少ない、③術前に「十二指腸損傷と診断」できていない症
例が多い、といった特徴がある。生理学的不安定(≒ダメージコントロール戦略)下の初
回手術では、出血制御が最優先であり、術中の十二指腸損傷の存在診断と、損傷部の単純
閉鎖による汚染防止にとどめる。生理学的安定下においては様々な手技のオプションから
損傷部位、形態に応じて選択するが、PEx は重症例において安全かつ確実な術式として推
奨される。
181
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第1会場】3 F 孔雀東南の間)
ワークショップ
WS-6
外傷性十二指腸損傷の術式選択(付加減圧術の必要性)
:
JSACSメンバーのアンケート調査から
教
育
1)済生会横浜市東部病院 救命救急センター
講
松本 松圭 1)、廣江 成欧 1)、小林 陽介 1)、清水 正幸 1)、山崎 元靖 1)、
北野 光秀 1)
演
パネルディスカッション
諸言)外傷性十二指腸損傷は稀な損傷であり、術式選択に関する質の高い研究がない。ま
シンポジウム
た、胆・膵・十二指腸の解剖学的複雑性から術式の多様化が生じる。全身状態が良好で単
純な十二指腸損傷では、単純縫合閉鎖術を行うことに異論がないと思われるが、重症複雑
性十二指腸損傷の術式選択は難しく、特に十二指腸減圧を目的とする付加手術の適応判断
が問題となる。目的)日本の外科医の十二指腸損傷に対する術式選択の現状を調査する。
ワークショップ
方法)JSACS のメンバー 1047 名にメールを送り、ウェブベースでのアンケート調査を実
施した。結果)12% の回答率であった。86% の外科医が十二指腸損傷の手術経験があった
が、経験症例数は少なく 1 ~ 3 件が最多(39%)であり、43%の外科医が付加減圧術を経験
したことがなかった。また、選択的に付加減圧を選択する意見が多数を占めたが、7% は
付加減圧術を全く考慮しないという意見もあった。付加減圧術の適応として、損傷形態
連
演
題
十二指腸損傷ケース別術式選択のアンケート
① 単純縫合閉鎖で狭窄する症例)26%:十二指腸損傷部と空腸吻合(Roux-en-Y)、25%:
シンポジウム
関 連 演 題
空腸漿膜パッチ、17%:幽門閉鎖術+ Billoth-Ⅱ
パネルディスカッション
関
(OIS Ⅳ / Ⅴ)、損傷部位(2nd/3rd)、膵損傷の有無の要素を考慮する意見が多かった。
② 膵損傷を伴う症例)25%:幽門閉鎖術 + 胃瘻 + 空腸瘻、15%:幽門閉鎖術+ Billoth-Ⅱ、
14%:単純閉鎖のみ
③ 診断遅延の敗血症ショックを伴う症例)29%:幽門閉鎖術 + 胃瘻 + 空腸瘻、26%:チュー
ブ十二指腸瘻、14%:その他
ワークショップ
関 連 演 題
考察)十二指腸損傷は稀な外傷であるが、外傷に携わる多くの外科医は少ないながらも経
験するようである。今のところ、付加減圧術に関する有用性を示す論文は少ないが、多く
の外科医が選択的に使用する考えであることが分かった。今後は、多施設前向き研究で付
一 般 演 題
加減圧術の有用性を研究する必要がある。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
182
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
関連演題
MPD-1-1
若手外科医が考えるAcute Care Surgery研修
~ Acute Care Surgeon育成には一般外科、救命救急センター研修の両者が必要である ~
1)りんくう総合医療センター 大阪府泉州救命救急センター Acute Care Surgery センター
石井 健太 1)、渡部 広明 1)、井戸口 孝二 1)、水島 靖明 1)、松岡 哲也 1)
筆者は初期研修終了後、市中病院外科で 3 年間の一般外科研修を行い、本年度より救命
救急センターで研修中の卒後 6 年目医師である。3 年間の一般外科研修では約 850 例の手
術を経験し、基本的外科技能、腫瘍学、および Emergency General Surgery について充
実した修練を受けることができた。一方、この間に Trauma Surgery、Surgical Critical
Care の重要性も実感したが、それらの領域に対して十分に修練することは困難と考え救
命救急センターでの研修を決意した。今回、当施設での研修を通じて若手外科医の視点か
ら Acute Care Surgery 研修のあり方を考えてみた。一般外科から救命救急センター研修
へと移るに当たり、施設として①外傷症例の集約化を行っている、② Trauma Surgery の
症例が比較的多い、③ 3 次救急症例の初期対応、根本治療、Critical Care を一体として経
験できる、の3つを重要視して現施設を選択した。当センターは本邦初の Acute Care
Surgery センターを設立しており、急性腹症の緊急症例と重症外傷手術の手術症例が豊富
であるため(年間手術件数約 300 件)、若手の手術執刀数も担保されていると感じた。若手
外科医が救命救急センターへ異動する際には、執刀機会の減少と、手術技能の低下が不安
材料となるが、本センターはその不安をカバーした上で Acute Care Surgery の 3 要素を
バランスよく研修できる環境である。ダメージコントロールをはじめとした重症外傷の初
期対応は一般外科にない治療戦略を含んでいるが、逆に planned re-operation では一般外
科研修で培った基本的外科技能・知識が重要となる局面もみられた。このため、Acute
Care Surgeon の育成に必要な要素として、一般外科研修による基本的外科技能の習得と
外傷外科の特殊性を学ぶ救命救急センター研修の両者が、重要であると考えている。若手
外科医として本学会に望むことは、この両者をスムーズに行うことのできる人事交流の促
進、研修終了後の Acute Care Surgeon の活躍の場を具現化していくことである。
183
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
関連演題
MPD-1-2
当院における
Acute Care Surgery 研修の現状と課題
教
育
1)久留米大学病院 高度救命救急センター
講
下条 芳秀1)、森 眞二郎1)、新谷 悠介1)、中村 篤雄1)、森田 敏夫1)、田代 恵太1)、
高須 修 1)、疋田 茂樹 1)、山下 典雄 1)、坂本 照夫 1)
演
パネルディスカッション
【背景】当救命救急センターは、福岡県南部に位置し、人口約 100 万人を対象とする大学病
シンポジウム
院併設型の三次救急医療施設であり、福岡県ドクターヘリの基地病院でもある。当施設で
は年間約 1000 名の患者を受け入れており、ISS:16 以上の重症多発外傷症例は過去 3 年間
で平均 68 例 / 年であった。また、消化器外科学会指導医 1 名、外科学会指導医 2 名、外科
専門医 2 名(演者を含む)、外科専門医修練医 2 名を中心とした Acute Care Surgery team
ワークショップ
(以下、ACS)体制をおいている。【目的】当院における Acute Care Surgeon 研修の現状
をまとめ、今後の課題について検討する。【方法】2013 年 4 月~ 2014 年 3 月の 12 カ月間に
演者が経験した外科手術件数を調査した。【結果】演者は Acute Care Surgeon を目指し、
2013 年 4 月より消化器外科医から当センター専従医となった。通常は集中治療管理・初療
室診療を中心とし、フライトドクターとして病院前救急診療に携わっているが、手術症例
連
急手術 101 例 / 待機手術 2 例)であった。その内容は消化管穿孔 26 例、外傷 24 例、心血管
演
題
19 例、ヘルニア 8 例、腸管虚血 7 例、腸閉塞 4 例、胆嚢炎 2 例、その他 11 例であった。そ
のうち演者は消化管穿孔 14 例、外傷 13 例、心血管 0 例、ヘルニア 3 例、腸管虚血 7 例、腸
シンポジウム
関 連 演 題
閉塞 3 例、胆嚢炎 2 例、その他 6 例の手術を経験した。【考察】演者の自己完結可能な消化
パネルディスカッション
関
が搬入された場合は、手術が最優先される。2013 年度の当施設の手術件数は計 103 例(緊
器外科領域の手術経験が多い傾向にあった。しかしながら、待機手術数が少ないため新た
な手術デバイスの使用経験や手技の獲得が難しい。また、胸部心臓血管外科、整形外科、
脳神経外科領域の手術を経験することができる体制を構築することで更なる ACS 研修の
充実が図れると思われた。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
184
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
関連演題
MPD-1-3
沖縄県立中部病院一般外科研修プログラムから、
理想的な Acute Care Surgery 研修を考える。
1)沖縄県立中部病院
宮地 洋介 1)、谷口 直樹 1)、村上 隆啓 1)
沖縄県立中部病院は 1967 年の卒後臨床研修開始以来、一貫してあらゆる救急疾患にも
対応しうるジェネラリストの育成を最優先課題としてきた。外科においても卒後 5 年目以
降、石垣島や宮古島などの島嶼圏での診療に従事することが研修プログラムに盛り込まれ
ており、悪性腫瘍や炎症性疾患に加え、救急や外傷など全身に渡る様々な疾患に対応する
診療能力の育成が必要とされている。そのため卒後 4 年目までの一般外科研修においては、
Elective surgery(以下ESと略記)に加え、Emergency surgery、Trauma surgery、Surgical
critical care を基礎とする Acute care surgery(以下 ACS と略記)が重要な位置を占めて
いる。研修医は日常の ES に従事しながらも、24 時間・365 日救急室からのコンサルトを
受ける形で ACS 診療にも携わることとなり、卒後 4 年目までに約 550 件(術者 350 件)程
度の手術を経験する。
当院の外科研修の特徴のひとつは、このように ES と ACS を“一般外科”というひとつ
のカテゴリーで捉え、別個にしないことにある。ACS の中でも特に外傷診療の分野にお
いて、手術を必要とする症例は確実に減少しつつあり、当院でも一人の研修医が経験する
外傷手術は年間 5 例程度である。しかしこのような外傷手術であっても、その内容は ES
で必要とされる手技の応用と組み合わせであり、当院での一般外科研修で充分カバーしう
るものである。また我々はこれを“ACS の不足を ES で補う”という消極的なものとは捉
えていない。むしろ研修医が ES の経験で ACS の知識・技術を進歩させ、ACS での経験を
ES に還元させることで更なる進歩を期待できると考えている。このような当院での外科
研修を概観し、今求められる ACS 研修について考察する。
185
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
関連演題
MPD-1-4
当施設における
Acute care surgery 研修の現状
教
育
講
1)日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター
2)日本医科大学大学院救急医学分野
演
益子 一樹1)、安松 比呂志1)、服部 陽1)、阪本 太吾1)、中山 文彦1)、本村 友一1)、
林田 和之 1)、松本 尚 1)、横田 裕行 2)
パネルディスカッション
【はじめに】
シンポジウム
Acute care surgery(以下 ACS)についての認識が市民権を得つつある中で、ACS 医の
育成については様々な見解があるのが現状である。今回、当救命センターでの若手 ACS
医の 3 年間で経験した手術症例を検討し、ACS 研修について考察した。
【対象】
ワークショップ
2011 年 4 月から 2014 年 3 月までの 3 年間で、若手 ACS 医が執刀・助手として経験した手
術(手術症例は外傷・内因性疾患ともに再手術、予定手術は除いた初回緊急手術(蘇生的
開胸術を含む))を対象とした。
【結果】
3 年間での当センターでの ACS 医が関わった初回緊急手術症例は 262 例であり、そのう
連
数は執刀 62 例(外傷 46 例 :74.2%)、助手は 57 例(外傷 46 例:80.7%)であった。1 年間の平
演
題
均手術経験数は 39.7 件 / 年、うち外傷は 30.6 件 / 年となった。 3 年間で胸腹部のみでなく
四肢骨盤外傷に対する手術手技に関しても、「外傷外科スタンダード」に掲載されている
シンポジウム
関 連 演 題
外傷手術手技の大部分が経験できていた。また、内因性疾患 29 例中 6 例に damage control
パネルディスカッション
関
ち、外傷は 207 例(79.0%)、内因性疾患は 55 例であった。7 年目 ACS 医の 3 年間での経験
surgery、open abdominal management を行っていた。
【考察】
当センターは他の救急医と同様、ACS 医も病院前から初療、手術、集中治療と一貫し
た診療を行っているが、ドクターヘリによる広域医療圏からの外傷症例の集約が、ACS
ワークショップ
関 連 演 題
の根幹である外傷手術を軸とした研修を可能としている。また、手術以外にも初療、集中
治療に携わることが、常に生理学的異常に対する蘇生を意識し、現場での蘇生的開胸術や
初療室での開胸開腹手術の決断、Damage control など戦略・戦術を立てるトレーニング
となっている。全体の手術件数としては決して多くはないが、外科専門医レベルを維持す
一 般 演 題
る症例は確保できているといえる。
【結語】
ACS 医の育成には一般的な外科手術の修練に加え、“trauma resuscitation”を意識した
初療、手術、集中治療のトレーニングが不可欠である。それを可能とするには外傷を集約
した high volume center での研修が望ましいと考える。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
186
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
関連演題
MPD-1-5
若手から見た Acute Care Surgery の
ジレンマ ─ 専門医制度の確立を ─
1)琉球大学大学院 医学研究科 救急医学講座
近藤 豊 1)
本邦での Acute Care Surgeon の医師像は未だ確立されたものとはいえず、救急科に所
属する外科医もしくは外科に所属する一般外科医が担うことが多いのが今日の現状であ
る。そのため Acute Care Surgeon を目指す多くの若手医師は救急科もしくは外科に所属
するが、救急科では多くの急性期疾患に遭遇するものの、手術を要する症例数は少なく
Surgical Mind が希薄になるという問題がある。一方で外科に所属した若手医師は十分な
手術症例数に恵まれるが、悪性腫瘍の予定手術とその後の化学療法、近年の Minimally
Invasive Surgery の潮流から Acute Care Surgery と疎遠になっていく。救急科と外科の
間でこのようなジレンマに若い Acute Care Surgeon は立たされる。また現時点では
Acute Care Surgery の研修カリキュラムが確立していないため、個人によりそのキャリ
アパスは様々であり、Acute Care Surgery のモデルとなる研修プログラムの構築が必要
不可欠である。
さらに Acute Care Surgery 専門医という専門医制度が存在しないため、若手医師にとっ
て自らを“Acute Care Surgeon”と名乗ることすら憂慮される。一般に自らを、“Acute
Care Surgeon”と名乗る医師の多くは、①救急科に所属し、救急科専門医と外科専門医の
ダブルライセンスを持つ医師、もしくは②外科に所属する一般外科医、が多くを占めると
思われる。そのため、①、②を外科のサブスぺシャリティとしての“Acute Care Surgery
専門医”として認定し、Acute Care Surgeon のアイデンティティの獲得が急務であると
考える。個人として受けた Acute Care Surgery 研修も踏まえて提言したい。
187
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
関連演題
MPD-1-6
当院における
Acute Care Surgery 研修の現状
教
育
1)北里大学 医学部 救命救急医学
講
花島 資 1)、片岡 祐一 1)、島田 謙 1)、浅利 靖 1)
演
パネルディスカッション
当院 Acute Care Surgery 部門では主に急性腹症と腹部外傷の診療を行っている。ス
シンポジウム
タッフは 3 人で初期診療、根本治療、集中治療まで一貫して行っている。急性腹症は消化
管穿孔、絞扼性イレウス、腸管虚血症(上腸間膜動脈血栓症、非閉塞性腸管虚血症)など
の比較的重症度の高い疾患を扱っている。腹部外傷は Damage control surgery を含めた
開腹手術を行っている。集中治療は人工呼吸管理、急性血液浄化療法(CHDF、PMX-
ワークショップ
DHP)を中心に行っている。2013 年 4 月~2014 年 3 月までの 1 年間の症例は急性腹症 73 例
で腹部外傷 35 例であった。開腹手術は急性腹症 60 件で腹部外傷 10 件であった。演者が執
刀したのは急性腹症 40 件、腹部外傷 9 件でスキル維持には十分な症例数と考えられた。
また、集中治療に関しても人工呼吸管理 53 件、CHDF 10 件、PMX-DHP 7 件と surgical
critical care についても十分な症例が経験できている。一方で当院 Acute Care Surgery 部
連
る開胸手術は胸部外科、骨盤外傷は整形外科、熱傷は形成外科が担当している。また、ス
演
題
タッフが 3 人と少ないため、急性腹症についても急性虫垂炎や急性胆嚢炎などの比較的軽
症疾患に関しては外科 2 次救急病院での手術を御願いしている。鏡視下手術は重症症例が
シンポジウム
関 連 演 題
多く適応症例がないため行っていない。
パネルディスカッション
関
門の問題点としては、体幹部外傷全てをカバーできていないことである。胸部外傷に対す
今後は、定時の鏡視下手術や他科(胸部外科、整形外科、形成外科)緊急手術への参加
も必要と考える。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
188
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 1
関連演題
MPD-1-7
救急患者であっても可能な限り
侵襲の少ない治療を目指す当科の取り組み
1)多根総合病院 急性腹症科・外科
山口 拓也 1)、城田 哲哉 1)
当院は病床数 304 床の 2 次救急病院であるが、民間病院では大阪で唯一の災害拠点病院
となっており、年間 5000 件以上の救急搬送を受け、地域の救急医療に貢献している。また、
癌拠点病院にも指定されており、消化器外科だけで、年間の全身麻酔手術は 1800 件以上
を数える。近隣には救急指定病院は数多く存在するものの、夜間に腹部緊急手術を行う体
制が常に整っている病院は少なく、夜間の腹部救急患者がたらい回しになっている現状を
改善すべく、3 年前に急性腹症科を立ち上げ、年間 300 件以上の緊急手術を行っている。
当科が目指す急性腹症の治療は、救急患者であっても可能な限り侵襲の少ない治療である。
最近では緊急手術においても鏡視下手術を施行した症例が数多く報告されており、外科医
の間でその有用性はすでに既知のものとなっているが、休日や夜間に緊急鏡視下手術を施
行するのは難しいとする施設が未だ多い。当院では休日夜間であっても、大きな侵襲とな
る開胸開腹手術を安易に選択するのではなく、全身状態が許す限り侵襲の少ない鏡視下手
術を選択することが多い。この事に関して最も重要なことは、当科の取り組みだけでなく、
受け皿となる手術部や麻酔科、ICU が当科の方針を十分に理解し、良好な関係を築けてい
ることである。手術は、膨大な数の手術経験を積んだ外科医が行い、術後管理や退院後の
診察はもちろん、再入院となった場合も執刀医が担当する。そのため執刀医は手術中も、
術後に最善の経過をたどることを考えて術式を選択するため、術後外来診療を行い長期経
過を把握している一部の救急医を除いて、外来診療を行わない救急医と比較すると、手術
の精度は非常に高く、ひとつの手術から得られる経験も非常に大きいと考える。我々は今
後も、緊急手術であっても不要な過大侵襲となることを避け、低侵襲かつ治療効果の高い
医療を提供し、地域の救急医療に貢献していく所存である。
189
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
関連演題
MPD-2-1
日本におけるAcute care surgeryのモデルケースを
目指して 、当院でのこれまでの取り組みと問題点
教
育
1)独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター
講
岡田 一郎 1)、霧生 信明 1)、米山 久詞 1)、諸原 基貴 1)、加藤 宏 1)、小井土 雄一 1)
演
パネルディスカッション
当院では開院以来、救命救急センター内の外科系救急医が外傷手術および急性腹症を中
シンポジウム
心とした内因性疾患の緊急手術を行ってきた。Acute care surgery(以下 ACS)の概念が
提唱されてからは日本のモデルケースを提示すべく、その取り組み、現状を報告してきた。
Trauma surgery のトレーニングには ATOM 等の off the job training や、胸部・血管外
科手術への参画が必要であるが、やはり肝要となるのは豊富な外傷手術の経験である。特
ワークショップ
に damage control 手術に習熟することが重要である。Emergency surgery の大部分は虫
垂炎、消化管穿孔、胆嚢炎等の急性腹症である。2 次救急患者の受け入れを積極的に行えば、
これらは数も多くトレーニングは比較的容易である。腹腔鏡の活用が今後の課題である。
また、稀な疾患では各専門領域外科との合同手術を行う必要がある。Surgical critical care
が重要となるのは重症外傷と NOMI、下部消化管穿孔等の重症腹部敗血症である。救命救
連
ニングを積むことができる。しかし、open abdomen は特殊な管理法であり、症例の経験
演
題
を積む必要がある。これら 3 本柱の業務を円滑に行っていくために、Acute care surgeon
には外来、手術、病棟管理を中心とした通常の外科診療以外に、チーム医療のリーダーと
シンポジウム
関 連 演 題
して、現場の混乱を制御し指揮していく危機管理能力が要求される。この危機管理能力は
パネルディスカッション
関
急センターの日常業務である集中治療室管理をとおして、これらの集中治療は日々トレー
特 に 重 症 外 傷 診 療 の 際 に 重 要 と な る。 当 院 で は 診 療 手 技 だ け で な く、 診 療 全 体 を
management できる能力を育成、向上させることに重点を置いてきた。現状で ACS が可
能な施設は救命救急センターを擁する総合病院であり、外科医または外科系救急医がその
担い手となる。ACS の一専門領域としての継続には、外傷症例を含む緊急手術症例の集
ワークショップ
関 連 演 題
約化、医師の集約化など地域の救急医療体制の整備、各専門領域外科、手術室との協力な
ど院内体制の整備が不可欠であると考える。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
190
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
関連演題
MPD-2-2
当院の Acute Care Surgeon 育成
カリキュラムの評価
1)東海大学 医学部 付属病院 外科学系 救命救急医学
大塚 洋幸 1)、山際 武志 1)、青木 弘道 1)、佐藤 俊樹 1)、澤本 徹 1)、吉井 久倫 1)、
吉崎 智恵美 1)、猪口 貞樹 1)
当院の救急搬送は年間約 8000 件で、そのうち我々救命救急科の外科領域では外傷の初
期診療、手術(約 35 件)
・血管内手術(約 70 件)、その他に熱傷やガス壊疽の手術(延 120
件)
、消化管穿孔や壊死・動脈瘤破裂・腹腔内出血など急性腹症の手術(約 25 件)および
それらの入院・外来管理を担っている。外科研修は、卒後 3 年目から 6 年目までの 4 年間
で救命救急科での研修とそれ以外に院内の一般外科( 6 ヶ月× 4)と放射線科( 3 ヶ月)を
ローテーションして、その後に一般外科(分院)で 1 年、胸部外科(心臓血管外科)で 6 ヶ
月研修するというカリキュラムを組んでいる。 今回、我々の外科研修カリキュラム評価
目的にアンケートを行った。〈対象〉研修終了前 7 名と終了後 3 名(卒後 4 から 17 年目)の
合計 10 名。平均年齢(歳)36 ± 4.0、男 9 女 1。〈評価項目〉手技は外傷関連で緊急穿頭術・
外科的気道確保・気道内出血の気管支ブロック・ERT・心嚢穿刺ドレナージ・剣状突起
下心膜開窓術・DPL・骨盤骨折創外固定、内視鏡関連で通常観察目的の GF・同様の CF・
消化管出血に対する止血目的の GF・ERCP・ENBD・ENPD、その他 PTGBD・PTCD の
16 項目。手術は外傷に対する緊急試験開胸・開腹術・頸部手術・IVR、熱傷・ガス壊疽に
対するデブリードマン・植皮・四肢切断術、急性腹症に対する試験開腹術の 6 項目。〈方法〉
手技は施行可能か否かで、手術はどの程度できるかの 4 段階(ABCD)で評価した。〈結果〉
手技は 7 年目以降で 50% 程度、9 年目以降で 90% 程度施行可能となっており、手術も 7 年
目以降で評価が上がっており、9 年目以降では全て B 評価以上となっていた。項目別にみ
て最終的に習得の悪かった手技は緊急穿頭術と骨盤骨折創外固定であり、手術は開胸が他
より低い評価となっていた。我々の Acute Care Surgeon 育成カリキュラムは比較的良い
成果が得られていたが、不十分な面もあり、現場のニーズを加味して研修の追加や変更も
必要と考えられた。
191
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
関連演題
MPD-2-3
当院での外科系救急医(Acute Care Surgeon)
の技術目標と研修の工夫
教
育
1)独立行政法人東京医療センター救急科
講
尾本 健一郎 1)
演
パネルディスカッション
都市部 3 次救命救急センターにおいても外傷をはじめとする手術症例は減少しており、
シンポジウム
外科系救急医の技術習得、維持は救命救急医としてのキャリアパスのみでは困難である。
また昨今の患者側の意識の変化から、緊急手術であっても質の担保が要求されてきており、
腹腔鏡手術など技術目標のハードルが以前より上がることが予想される。また技術の面だ
けではなく専門医制度改革から救急科専門医と外科専門医双方の維持が可能なのかなど純
ワークショップ
粋な手術技術以外の面からも今後の見通しは不透明である。当院は 3 人の救急専門医(う
ち 2 人が外科専門医、1 名が本年取得予定)が外科と collaboration しながら腫瘍を含む
elective な手術、当直、外来などを兼務しながら診療にあたっており、技術習得維持をは
かっている。我々の技術習得、維持のためのシステムについて紹介する。
連
演
題
パネルディスカッション
関
シンポジウム
関 連 演 題
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
192
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
関連演題
MPD-2-4
Acute Care Surgery における
外傷手術 simulation トレーニング
1)自治医科大学 救急医学
2)自治医科大学 医療技術トレーニング部門
3)自治医科大学 消化器外科
伊澤 祥光 1, 2)、菱川 修司 1, 2)、山下 圭輔 1)、松本 健司 3)、新庄 貴文 1)、
室野井 智博 1)、鈴川 正之 1)、Lefor Alan3)
出血性ショックを伴う胸腹部外傷手術は Acute Care Surgery で取り扱われる重要項目
であるが、交通外傷の減少や非手術療法の発達などにより症例数は減少しており、臨床の
み で は 十 分 な 経 験 が 得 ら れ な い 状 況 で あ る。 こ の た め 当 科 で は technical skill・nontechnical skill を身に着けるための補助的な修練として以下のような simulation トレーニ
ングを取り入れている。
Live tissue training(全身麻酔下のブタを使用した手術修練):技術的な修練以外にも
decision making 修 練 や 臨 床 で 経 験 し た 止 血 困 難 症 例 の 復 習 に も 使 用 し た。 初 療 室
simulation:救急隊からの連絡から初療室での処置・緊急手術、ICU までの一連の流れを
デモ形式の simulation として行った。
Simulation を定期的に受講している修練医・スタッフの参加した実際のダメージコント
ロール初回手術を検証すると、decision making や一時止血、初療室での準備は以前より
も改善された。経験症例の復習として行った simulation も有効であったという意見がみら
れた。
Simulation は technical skill・non-technical skill の向上に貢献したと思われた。一方で
Live tissue training などの simulation においては人手と時間・経済的負担がかかる。この
ため地域自治体や学会などのバックアップにより、胸腹部外傷症例が多く集まる施設・地
域を対象に Live Tissue コースを受講できるような工夫が必要である。
193
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
関連演題
MPD-2-5
Acute Care Surgery Training Course
今後の課題
教
育
1)東京医科歯科大学救命救急センター
講
村田 希吉 1)、加地 正人 1)、大友 康裕 1)
演
パネルディスカッション
【目的】当施設での Acute Care Surgery Training Program における現状をまとめ、今後
シンポジウム
の課題を考察する。
【方法】平成 19 年より始まった本プログラム医師は 24 名であり、この
うち外科専門医を取得した 6 名について、専門医取得前後の手術件数を検討した。また、
6 名の在籍施設(当科およびプログラム協力 7 施設)での各領域手術件数を調査した。
【結果】
6 名の手術件数は医師臨床研修制度開始前の外科認定医平均を上回っていた。一方、救命
ワークショップ
救急センターと外科研修施設の手術には大きな 4 つの相違点(手術件数、軟部組織手術件
数、外傷手術件数、鏡視下手術件数)を認めた。これらの施設をローテーションすること
は施設間の差を理解するために Training Program として妥当であると考えられた。一方、
外科専門医取得後は主に救命救急センター専従外科医として執刀しており、その手術件数
をみてみると、2 つの問題点が見えてきた。それは(1)重症外傷手術の経験にばらつきが
連
ラムの特徴は Acute Care Surgery に専従する外科医として、プログラム初期に十分な手
演
題
術症例数と重症外傷手術を経験できる点で機能的である。一方で、上記問題も確認できる
ようになった。今後は(1)重症外傷手術の際は多くの人員をコール/招集しその経験を
シンポジウム
関 連 演 題
共有することが重要である。また、(2)Acute Care Surgery に技術的に必要と考えられ
パネルディスカッション
関
あること(2)執刀した手術の一部が NCD 登録できないことである。【考察】当科プログ
る手術について、NCD に登録できないものがあれば早急に登録可能にする必要がある。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
194
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
関連演題
MPD-2-6
当教室における若手外科医への
Acute Care Surgery 教育の取り組み
1)北海道大学大学院医学研究科医学教育推進センター 消化器外科Ⅱ
2)北海道大学 医学教育推進センター
村上 壮一 1, 2)、平野 聡 1)、七戸 俊明 1)、岡村 圭祐 1)、土川 貴裕 1)、
田本 英司 1)、中村 透 1)、倉島 庸 1)、海老原 裕磨 1)、野路 武寛 1)、金井 基錫 1)、
宮崎 大 1)、パウデル サシーム 1)、本谷 康二 1)
Acute Care Surgery は Trauma Surgery の み な ら ず、Emergency General Surgery、
Surgical Critical Care を包括する新たな外科分野として注目を浴びている。かつてこれら
は全ての外科医が修得している技術であったが、交通事故の減少などによる Trauma
Surgery の減少、非手術的治療の発達による Emergency General Surgery の減少、そし
て診断機器、手術手技及び機器の発達による重篤な術中合併症の減少などにより、これら
を経験しない若手が増加している。Acute Care Surgery の経験不足をどのように補うの
かが、近年の外科研修における最も重要な課題の一つである。
当院は三次救急医療機関であるが救命救急センターの指定を受けていないため重症外傷
患者の搬入は少なく、当教室に紹介され手術となった ISS(Injury Severity Score)15 以
上の重傷外傷患者は過去 5 年で 7 例であった。しかし肝胆膵領域及び食道などの高度侵襲
手術を専門とするため、術中術後の合併症及び全身管理から Surgical Critical Care を修得
す る こ と が 可 能 で あ る。 関 連 病 院 に は 地 方 の 中 核 病 院 が 多 く、Emergency General
Surgery 及び Trauma Surgery を一手に引き受けている。若手教室員は大学及び地方病院
を効率よく回ることで、これらを修得することが可能である。しかし近年症例数は減少し
ており、これを補うための研修が課題である。そこで教室としては、外傷外科手術手技講
習会を開催するとともに、教室関連多施設の Acute Care Surgery 症例検討会を定期開催
し、症例の共有化を行っている。また生体ブタや献体を用いた手術手技研修会の開催も準
備が進んでいる。限られた症例の共有と手術手技研修を組み合わせることで、若手外科医
に外科医としての必修項目である Acute Care Surgery を修得させることが可能であると
考える。
195
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
関連演題
MPD-2-7
当センターでの Acute Care Surgeon
育成の現状と今後の展望
教
育
1)公立豊岡病院 但馬救命救急センター
講
岡 和幸 1)、安田 唯人 1)、藤原 大悟 1)、間 崇史 1)、菊川 元博 1)、佐々木 妙子 1)、
山本 奈緒1)、藤崎 修1)、中嶋 麻里1)、前山 博輝1)、松井 大作1)、番匠谷 友紀1)、
永嶋 太 1)、小林 誠人 1)
演
パネルディスカッション
【はじめに】The American Association for the Surgery of Trauma(以下 AAST)は 2005
シンポジウム
年に Acute Care Surgery(以下 ACS)fellowship program を開始した。それによると ACS
は外傷学、集中治療学、緊急手術を 3 つの幹として成り立つとされており、2011 年に
Lippincott 社が刊行した Acute Care Surgery によれば、外傷学には脳外科・整形外科領
域を含む幅広い領域の基本的な知識に加え、病院前救急診療の知識や経験が含まれてお
ワークショップ
り、集中治療学には血栓止血学に加え敗血症に対する知識技術や、急性血液浄化に関する
知識技術までもが要求されている。緊急手術には腹壁ヘルニアやイレウスのみならず、一
時止血や汚染制御といった Damage Control Surgery に代表される手技の他、軟部組織感
染症や簡単な血管手術手技も要求されている。【方法】2010-2012 年度の当センターの診
療実績について検討し、当センターでの研修が AAST の要求を満足し得るか検討した。
【結
連
応需率 100%と幅広い領域の患者を受け入れ、2013 年度の Dr.Heli / Dr.Car 出動数は 1,422
演
題
件 / 1,301 件と積極的な病院前診療を展開していた。手術件数は平均 140.7 ± 24.7 件 / 年で
内因性が 70.6%を占めていた。執刀医 1 人当たりの年間執刀症例数は 33-38 件 / 年で、う
シンポジウム
関 連 演 題
ち外傷症例は 10.5 ± 10.7 件 / 年であった。周術期に施行した急性血液浄化療法は CHDF が
パネルディスカッション
関
果】年間平均救急搬入患者数 5390.3 ± 499.2 人、うち AIS ≧ 3 の外傷症例は 434.7 件 / 年で、
35 件 / 年、PMX-DHP が 14 件 / 年で、重症敗血症/敗血症性ショックの標準化死亡比はそ
れぞれ 0.05/0.45 であった。【考察】当センターでは AAST が展開する ACS fellowship
program に近い研修内容が展開でき、良好な治療成績が得られていた。体制・制度の整備
により一層の症例集約化を図ることで skill up が望まれる。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
196
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
関連演題
MPD-2-8
若手 Acute Care Surgeon に伝えたい
血行再建手技の基本と外傷外科領域での応用
1)医療法人社団誠謦会 総泉病院
2)佐賀大学医学部附属病院 救命救急センター
3)日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター
4)医療法人社団永生会 南多摩病院
朽方 規喜 1)、阪本 雄一郎 2)、松本 尚 3)、益子 邦洋 4)
血管を扱う手技は、基本的な一般外科手技と知識に加えて、ある一定期間のトレーニン
グによって培われる。それはステントグラフトなど血管内治療が盛んな今日も変わりはな
い。演者は心臓血管外科専門医をとして、ドイツ臨床研修を経たのち、三次対応救命救急
センターに勤務した経緯を持った。 本邦においても心血管損傷を来たした様々な症例に遭遇したが、“血行再建術は、あく
まで全身状態を安定化させ、他臓器との優先順位を決定し、単純結紮も選択肢のひとつと
心得たうえで遂行すべき”ことに異論はない。しかしながら、いざそれを実行する状況下
においては、
“専門医にコンサルトする”か、あるいは“若手 Acute Care Surgeon 自から
の技術によって自己完結するか”のいずれかの選択を迫られる。あらためて基本手技の習
得が重要であることを本発表において伝えたい。 供覧するビデオは、非外傷慢性疾患を対象に収録しているが、以下のポイントを具体的
に説明する。また急性外傷例での応用について説明を加える。
①血流遮断と無血視野確保:血管テープによる血流遮断ならびに遮断鉗子を用いた血流
遮断
②血栓除去:バルーン付カテーテルによる新鮮血栓の除去・リングストリッパーによる
血栓除去
③血行再建方法:代用血管の選択とパッチ形成術・人工血管を用いたバイパス術・シャ
ントチューブを用いた血流維持
④術中造影:術前造影が未施行例および再建後の評価
⑤術後創処置:感染創やリンパ漏に対する VAC 療法
197
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第2会場】3F 孔雀西の間
パネルディスカッション 2
関連演題
MPD-2-9
Acute care surgeon に求められる
特殊外傷手術
教
育
講
1)済生会横浜市東部病院 救命救急センター
2)済生会横浜市東部病院 外科
演
山崎 元靖1)、廣江 成欧1)、小林 陽介1)、松本 松圭1)、清水 正幸1)、船曵 知弘1)、
長島 敦 2)、北野 光秀 1)
パネルディスカッション
【背景】Acute care surgeon には一般外科緊急手術の他に、体幹部外傷手術も求められる。
シンポジウム
一方、重症腹部外傷における緊急手術の多くは、消化器外科手術を応用した術式で対応で
きる。
【目的】一般的外科手術では対応困難な特殊な外傷手術手技の内容と頻度を明らか
にする。【対象と方法】2007 年 4 月から 2014 年 5 月までの 7 年 2 ヶ月間に、当院にて施行し
た体幹部外傷手術 236 件を対象とした。なお、手術室で施行した手術以外にも、緊急処置
ワークショップ
室(ER)での開胸・開腹なども含め、電子手術台帳と電子カルテから後ろ向きに調査を行っ
た。【結果】一般外科の応用で可能な手術は 102 件(43%)、特殊外傷手術は 134 件(57%)
であった。主な一般外科の応用で可能な手術は試験開腹術(診断的腹腔鏡検査含む)31 件、
消化管・腸間膜損傷 18 件、肝縫合術 3 件、脾摘術 5 件、脾縫合術 2 件。主な特殊外傷手術
はダメージコントロール手術 50 件、心・血管損傷 15 件、緊急室開胸(EDT)36 件、緊急
連
察】Acute Care Surgeon は、一般外科緊急手術の経験を積む以外に、ダメージコントロー
演
題
ル手術、緊急室開胸・開腹、Local Wound Exploration 等に習熟し、さらに常時対応できる
体制を構築する必要がある。外傷患者に対する非手術治療(Non Operative Management)
シンポジウム
関 連 演 題
の発達に伴い、外傷外科手術件数の減少が問題となっているが、手術例に限ると、ダメー
パネルディスカッション
関
室開腹 12 件、診断的腹腔洗浄(Diagnostic Peritoneal Lavage:DPL)1 件 であった。【考
ジコントロール手術などの外傷外科特有の技術や戦略がより一層重要になっているとも推
察される。そのための教育や診療体制が Acute Care Surgeon に求められていると考えら
れる。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
198
【第4会場】3F 善知鳥の間
シンポジウム 2
関連演題
MSY-2-1
救命センターにおける
oncologic emergency 17 例の検討
1)日本医科大学付属病院 高度救命救急センター
笠井 華子 1)、片桐 美和 1)、石井 浩統 1)、新井 正徳 1)、横田 裕行 1)
【背景】Oncologic emergency は、悪性新生物そのもの、またはその治療により引き起こ
される生命にかかわる状態で、電解質異常から腫瘍の直接浸潤や圧迫による物理的閉塞な
ど、病態は多岐にわたる。【方法】2012 年 1 月 1 日~2014 年 6 月 16 日に当センターに入院し
た oncologic emergency の症例を診療記録から後ろ向きに調査検討した。【結果】対象期間
に当院の救命センターに入院した oncologic emergency の患者は 17 例であった。年齢の中
央値は 68 歳(32-96 歳)
、男性 13 例(76.5%)であった。癌の種類としては大腸癌が最も
多く10 例、肝臓癌が 2 例、その他は胃癌、脳腫瘍、肺癌、前立腺癌、膀胱癌がそれぞれ 1 例
であった。救命センター入室の原因としては、イレウスが 6 例、消化管穿孔が 4 例、出血
性ショックが 4 例、その他は骨転移による脊髄損傷、大量胸水による呼吸不全が 1 例であっ
た。初回手術は一時的人工肛門造設術が 2 例、右半結腸切除、横行結腸切除術、左半結腸
切除術、S 状結腸切除術、高位前方切除術、ハルトマン手術、大網充填がそれぞれ 1 例で
行われていた。肝細胞癌は 2 例とも TAE が施行され、消化器以外では脳室ドレナージが 1
例、胸壁止血が 1 例で施行されていた。肝細胞癌と膀胱癌の 2 例を除き、15 例の症例が初
診時に癌の診断はされていなかった。敗血症性ショックの合併等で閉腹困難のため open
abdomen management を要した症例が 3 例、入院中死亡が 5 例であった。【考察】三次救
命センターに入室する oncologic emergency の症例の多くが敗血症性ショックや出血性
ショックを合併しており、予後不良であった。一方で、人工肛門造設術等の一時的手術の
後、他科との連携による化学療法や根治術を施行し、良好な生存期間が得られている症例
もあった。
199
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
シンポジウム 2
関連演題
MSY-2-2
大腸悪性腫瘍における
緊急手術症例の検討
教
育
1)市立砺波総合病院 外科
講
家接 健一1)、吉田 貢一1)、菅原 浩之1)、渡辺 和英1)、北川 桂子1)、浅海 吉傑1)、
田畑 敏 1)、金木 昌弘 1)、酒徳 光明 1)、清原 薫 1)
演
パネルディスカッション
【はじめに】大腸悪性腫瘍患者に対する緊急手術は高齢者で全身状態が不良な場合も多い。
シンポジウム
そのため手術適応や術式そしてがんに対する治療方針に迷うこともある。当院での過去
17 年間に経験した大腸緊急手術の現状を検討した。【対象】1996 年 1 月から 2013 年 3 月ま
での大腸悪性腫瘍における大腸緊急手術例 34 例を対象とした。手術適応は手術の必要が
あると判断され、手術承諾が得られた症例であった。大腸がん閉塞でも、まず食事制限や
ワークショップ
減圧チューブを使用することで減圧に成功し、待機的に安定した状態で予定手術を行い得
た症例は今回の検討から除外した。また再発や腫瘍播種による大腸閉塞、内視鏡治療中に
起った医原性の穿孔も除外した。【結果】原因疾患は大腸がんが 33 例、大腸悪性リンパ腫
が 1 例であった。男性 15 例、女性 19 例 平均年齢 71 歳であった。手術理由は、腫瘍によ
る内腔閉塞や腸重責での腸閉塞が 18 例、穿孔が 13 例、出血が 1 例、その他が 2 例であった。
連
腸 10 例 で あ っ た。 術 後 死 亡 退 院 は 3 例(9 %)で あ り、 全 例 穿 孔 例 で あ っ た。 術 式 は
演
題
Hartmann 手術 9 例、人工肛門造設 3 例、結腸直腸切除 22 例であった。根治度 C は 14 例
(41%)であった。穿孔例で術後死亡例が多かった。手術時に肝転移や腹膜播種が見つか
シンポジウム
関 連 演 題
る症例も多く根治性は低かった。【結語】緊急手術は患者の状態を考慮し、まず救命を第
パネルディスカッション
関
腫瘍占拠部位は盲腸 5 例、上行結腸 4 例、横行結腸 5 例、下行結腸 2 例、S 状結腸 8 例、直
一に考え、その上で悪性腫瘍に対する手術を同時にあるいは異時的に行う方針とすること
が肝要と考えた。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
200
【第4会場】3F 善知鳥の間
シンポジウム 2
関連演題
MSY-2-3
地方中核病院における大腸癌
oncologic emergency 手術症例の検討
1)兵庫県立淡路医療センター 外科
川嶋 太郎 1)、澤田 降一郎 1)、江里口 光太郎 1)、上村 亮介 1)、坂平 英樹 1)、
高橋 応典 1)、大石 達郎 1)、宮本 勝文 1)、小山 隆司 1)
当院は人口約 14 万人の淡路島にある地方中核病院である。当地域の高齢化率(65 歳以
上の割合)は 32.9%と高く、日本の約 15 年後の高齢化率とほぼ同様である。このような高
齢化の著しい地域における、大腸癌イレウス、穿孔といった大腸癌 oncologic emergeny
手術症例を中心に検討した。2011 年 4 月~2014 年 3 月までの 3 年間を対象期間とした。こ
の間の大腸癌手術症例は 306 例で、64 例(20.9%)が oncologic emergency 症例であった。
内訳は、イレウス 55 例(17.9%)、穿孔 9 例(2.9%)であった。大腸癌イレウス 55 例の内訳
は、盲腸 3 例、上行結腸 8 例、横行結腸 8 例、下行結腸 5 例、S 状結腸 17 例、直腸 5 例、腹
膜播種性狭窄 9 例であった。手術方針として、減圧後(LIT、経肛門イレウスチューブ)に
待機的手術を行った症例が 18 例、術前に減圧を行わずに術中減圧による 1 期的手術を行っ
た症例が 18 例、ハルトマン手術が 10 例、stoma 造設、バイパスが 10 例であった。このうち、
経肛門イレウスチューブを留置した 1 例で穿孔し緊急手術を行った。大腸癌穿孔 9 例では、
1 期的手術 4 例、ハルトマン手術 5 例であった。大腸癌 oncologic emergency では救命する
ことがまず第 1 であるが、根治性を損なわない努力が必要である。当院におけるこれらの
症例について、周術期合併症やリンパ節郭清範囲、病期などを検討し若干の文献的考察を
加え報告する。
201
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
シンポジウム 2
関連演題
大腸癌穿孔の治療成績について
MSY-2-4
教
育
1)川崎医科大学 消化器外科
講
東田 正陽 1)、安藤 陽平 1)、上野 太輔 1)、河合 昭昌 1)、遠迫 孝昭 1)、
窪田 寿子 1)、中島 洋 1)、岡 保夫 1)、奥村 英雄 1)、鶴田 淳 1)、松本 英男 1)、
平井 敏弘 1)、中村 雅史 1)
演
パネルディスカッション
〈はじめに〉下部消化管穿孔に伴う敗血症は現在でも予後不良である。大腸癌穿孔による
シンポジウム
腹膜炎を認める場合は全身状態が不良で術前診断が不十分であるにも関わらず予後を考慮
した手術を含めた早急な初期治療を必要とする。大腸癌穿孔の初期治療の成績や切除術後
の再発形式や時期、予後に関しては不明な点が多い。当科にて経験した大腸穿孔症例で、
大腸癌に伴う穿孔症例の特徴と予後などの治療成績について報告する。〈対象〉2003 年か
ワークショップ
ら 2013 年 12 月までの当科で大腸穿孔にて手術を行った 142 例中、大腸癌に伴う 30 例を対
象とした。〈結果〉非大腸癌穿孔症例 / 大腸癌穿孔症例の平均年齢は 72.5 歳 /72.1 歳であっ
た。大腸癌穿孔穿孔部位は各々 A-colon/T/D/S/R=10%/13%/10%/43%/20% と S 状結腸、
直腸多く認め、術式は Hartmann operation が 53% に施行されていた。大腸癌穿孔例の生
存期間は MST:42.8ヶ月で、非大腸癌穿孔症例の 76.8 ヶ月と有意差を認めた。1 年生存率
連
率は 22%(32/142)で、非大腸癌 / 大腸癌穿孔例の院内死亡率は 18%(21/112)/34%(11/30)
演
題
であった。SSI を含む術後合併症を 27%(38/142)に認めた。術後在院日数は 30 日。重症
度分類では PSS score 10 点以上にて有意差(p=0.001)を認めた。術前後の INR 延長、Hb
シンポジウム
関 連 演 題
10g/dl 以下、年齢 80 歳以上、術後 ALT 181IU/l 以上で有意差に死亡率が高かった。〈考察〉
パネルディスカッション
関
では非大腸癌穿孔 / 大腸癌穿孔例 75%/69% と差を認めなかった . 全大腸穿孔例の院内死亡
穿孔性腹膜炎を発症した大腸癌 30 例を非大腸癌穿孔例とを比較検討した。治療成績のさ
らなる向上として、貧血や凝固異常の初期周術期管理と術後の有効な化学療法が重要と考
える。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
202
【第4会場】3F 善知鳥の間
シンポジウム 2
関連演題
MSY-2-5
閉塞性大腸癌に対する待機的手術の有用性:
臨床学的、腫瘍学的成績からみた検討
1)東邦大学医療センター大森病院 一般・消化器外科
鏡 哲 1)、船橋 公彦 1)、小池 淳一 1)、甲田 貴丸 1)、長嶋 康雄 1)、鈴木 孝之 1)、
新井 賢一郎 1)、金子 奉暁 1)、牛込 充則 1)、塩川 洋之 1)、栗原 聰元 1)、
島田 英昭 1)、金子 弘真 1)
【目的】Oncologic Emergency である閉塞性大腸癌における待機的な原発切除手術の有用
性について検討した。
【対象と方法】2000 年 1 月から 20012 年 12 月までの原発切除を行っ
た閉塞性大腸癌症例 101 例を対象とし、待機的手術を行った 67 例(待機群)と、緊急手術
を行った 34 例(緊急群)を臨床学的および腫瘍学的観点から比較検討した。【結果】1 )患
者背景:初診時に減圧処置を試みた症例は 89 例で、減圧の手法は、経鼻・経肛門イレウ
ス管 79 例、人工肛門造設 10 例で、うち 22 例(25%)が減圧困難や減圧に伴う合併症など
の理由で緊急手術となった。また経肛門イレウス管による穿孔を挿入可能であった 44 例
のうち 4 例(9%)に認めた。待機群と緊急群の患者背景・組織学的背景に有意差はなかった。
2 )臨床学的に手術成績では、術中出血量(p=0.0004)、ストーマ造設率(p=0.0018)、術後
合併症発生率(p=0.0119)、術後入院期間(p=0.0066)で、緊急群に比べて待機群で成績が
有意に良好であった。3 )腫瘍学的には、観察期間中央値 34.0 か月(0.6-154 か月)で、全
Stage を対象とした 5 年生存率は 61.2% で、待機群 vs. 緊急群:68.4 vs. 45.8%(p=0.0102)と、
待機群で有意に高かった。pStageII+III 症例の無再発生存率は 47.1% で、待機群 vs. 緊急
群 :55.4 vs. 26.5% で有意差はなかった。再発形式では pStageII+III 症例 73 例中 30 例(41.1%)
に再発が認められ、初発再発の 70% が血行性転移であった。【結語】手術成績や 5 年生存
率からみて閉塞性大腸癌に対する待機手術の有用性が示唆された。また、腫瘍学的には、
再発形式として血行性再発が多い傾向にあり、血行性転移を念頭にいれた術後の治療戦略
が必要と考えられた。
203
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
シンポジウム 2
関連演題
MSY-2-6
遠隔転移を有する局所進行大腸癌に
対する治療方針の検証
教
育
1)広島大学 消化器・移植外科
講
新津 宏明 1)、惠木 浩之 1)、檜井 孝夫 1)、下村 学 1)、服部 稔 1)、安達 智洋 1)、
齊藤 保文 1)、三口 真司 1)、澤田 紘幸 1)、河内 雅年 1)、大段 秀樹 1)
演
パネルディスカッション
【背景】当科では、遠隔転移を有する局所進行大腸癌に対して、有症状の場合原発巣の切
シンポジウム
除を先行し、一方で急激な増大を示す転移巣に対しては化学療法を先行する治療方針を原
則としている。しかしその判断が困難な症例もしばしば経験する。
【対象と方法】2007 年 1 月から 2013 年 12 月までの Stage IV 大腸癌 48 例を対象とし、化学
療法を先行した 11 例(化療先行群)と原発巣切除を行った 37 例(切除先行群)の別に、臨
ワークショップ
床病理学的背景、生存期間および生存に寄与する因子の解析を行った。
【結果】切除先行群では、結腸癌が有意に多く(p=0.011)、女性(p=0.095)、KRAS 野生型
(p=0.089)が多い傾向を認めた。腫瘍マーカー、転移数および転移長径和については両群
に差を認めなかった。全生存期間の中央値は、それぞれ 22.7、28.6 ヶ月で、両群に有意な
差は認めなかった(p=0.192)。化療先行群では、8 例(72.7%)で化学療法のみでの原発巣
連
切除先行群では 45.9% に術後合併症を認め、同時期の Stage 0-III 大腸癌手術の 28.6% より
演
題
有意に高かった。
【結語】原発巣による症状や転移巣の病勢に応じた当科の治療方針は、一般的な大腸癌化
シンポジウム
関 連 演 題
学療法の成績と同等の成績であった。生存に対する先行治療の差はなかったが、化学療法
パネルディスカッション
関
制御が可能であったが、3 例で手術を要し、うち 1 例は穿孔による緊急手術であった。一方、
で原発巣制御が困難となるリスクと、原発切除の合併症を考慮し、慎重に治療方針を決定
する必要がある。また原発巣切除か転移に対する化学療法かを悩む症例では、KRAS
status に応じた対応も今後検討課題であると考えられる。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
204
【第4会場】3F 善知鳥の間
シンポジウム 2
関連演題
化学療法導入後の消化管穿孔症例
MSY-2-7
1)横浜市立大学大学院 がん総合医科学
2)横浜市立大学大学院 消化器・腫瘍外科学
徳久 元彦 1)、市川 靖史 1)、後藤 歩 1)、小林 規俊 1)、籾山 将士 2)、石部 敦士 2)、
小坂 隆司 2)、松山 隆生 2)、武田 和永 2)、秋山 浩利 2)、遠藤 格 2)
背景:進行消化器がんに対する化学療法中の消化管穿孔は重篤でありその治療選択に難渋
する場合がある。目的:化学療法導入後に消化管穿孔をきたした症例の臨床的特徴を検討
した。方法:2008 年 1 月から 2014 年 6 月までに当科で化学療法を行った症例のうち消化管
穿孔をきたした 17 名(化学療法施行中 14 例、間質性肺炎治療中 1 例、BSC 2 例)を対象
として原発臓器、原発巣の有無、転移臓器数、穿孔部位、治療レジメン数、治療開始後か
ら穿孔日までの日数、手術の有無、経口摂取再開の有無、化学療法再開の有無、穿孔後生
存日数を検討した。結果:原発臓器 食道 7 例 膵臓 3 例 大腸 7 例、原発巣 有 13 例 無 4
例、 転移臓器数 1 臓器 10 例 2 臓器以上 7 例、穿孔部位 食道 5 例 大腸 5 例 十二指腸 2 例 小腸 2 例 胃 1 例 不明 2 例、治療レジメン数 1 次治療 7 例 2 次以降 10 例、 穿孔後の経口摂
取再開 有 4 例 無 13 例。手術を施行したのは直腸癌原発巣穿孔に対する切開排膿術 2 例、
腹腔内穿孔(穿孔部位不明)に対する洗浄ドレナージ術 1 例、大腸憩室穿孔に対する腹腔
ドレナージ 人工肛門造設術 1 例であった。その他の 13 症例は保存的治療として、絶食・
抗生剤投与をおこなった。経口摂取再開の有無は手術の有無を含めた他の臨床的因子との
関連は認められなかった。化学療法開始から消化管穿孔までの期間は原発巣の穿孔症例で
有意に短期間であった(92 日 vs 636 日 p=0.036)。穿孔後の生存期間では 2 臓器以上の転
移を有する症例で有意に短期間であった(29 日 vs 131 日 p=0.003)。結語:化学療法導
入短期には原発巣穿孔、長期には原発巣以外に起因する消化管穿孔に対する注意が必要で
ある。また、2 臓器以上の転移を有する症例は穿孔後の生存期間が短いことを留意して治
療方針を決定することが必要であると考えられた。 205
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
シンポジウム 2
関連演題
胃癌穿孔に対する治療戦略
MSY-2-8
教
育
1)伊勢赤十字病院 外科
講
田村 佳久 1)、藤井 幸治 1)
演
パネルディスカッション
胃癌穿孔は比較的稀な病態であり、その発生頻度は胃癌の 0.08~3.6% と報告されている。
シンポジウム
当院で手術した胃癌穿孔症例を臨床病理学的に検討した。2006 年 4 月から 2014 年 3 月まで
に当院で手術した胃癌 724 例のうち穿孔症例は 10 例(約 1.4%)であった。男性 8 例、女性 2
例、平均年齢は 70 歳(36~82)であった。穿孔前に胃癌と診断されていたものは 3 例で、
全例化学療法中であった。術前に全例に対して上部消化管内視鏡検査が施行され、9 例で
ワークショップ
肉眼的に胃癌が疑われ、1 例で胃潰瘍の診断であった。緊急手術が 3 例に行われ、7 例で待
機手術(3~75 日後)が施行された。手術術式は胃全摘術 6 例、大網充填術 3 例、幽門側胃
切除術 1 例であった。穿孔領域は M8 例、L2 例で、肉眼型は Borrmann 3 型 6 例、4 型 3 例、
2 型 1 例で、組織型は低分化腺癌 5 例、中分化腺癌 3 例、高分化腺癌 1 例、印環細胞癌 1 例
であった。転帰は StageⅣ 7 例中 2 例が癌性腹膜炎による在院死となった。その他 3 例は
連
ある。その他 Stage Ⅲ B の 1 例が 18 ヶ月で癌死、Stage Ⅲ C の 1 例が 30 ヶ月癌死、1 例は
演
題
44 ヶ月肝転移生存中である。比較的長期の生存例は術前に胃癌と診断し、待機的な手術
で治癒切除を行っている症例であった。待機手術は全例で安全に手術施行することが可能
シンポジウム
関 連 演 題
であった。胃癌穿孔の治療においては、穿孔性腹膜炎からの救命と同時に、胃癌の診断お
パネルディスカッション
関
術後 6 ヶ月以内に癌死したが、1 例が 8 ヶ月肝転移生存中、1 例が 32 ヶ月肺肝転移生存中で
よび癌の根治性をもとめた手術が必要である。全身状態が比較的良好な症例では術前精査
の上に一期的な根治手術を施行することが必要であると考えられた。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
206
【第4会場】3F 善知鳥の間
シンポジウム 2
関連演題
破裂肝細胞癌に対する治療方針
MSY-2-9
1)東京大学 医学部附属病院 肝胆膵外科
山本 訓史 1)、長谷川 潔 1)、青木 琢 1)、赤松 延久 1)、金子 順一 1)、阪本 良弘 1)、
菅原 寧彦 1)、國土 典宏 1)
【はじめに】肝細胞癌(以下 HCC)破裂は遊離腹腔内への出血を来すことが多く迅速な止血
処理をしなければ致命的になる事がある。HCC 破裂は予後不良因子とされ原発性肝癌取
扱い規約第 5 版では腫瘍因子 T4 となる。【目的】当科における破裂 HCC の緊急対応とその
後の治療から破裂を来す HCC の特徴と治療後の予後を検討する。【方法】1994 年から 2011
年まで当科で肝切除を施行した 1526 例のうち術前に破裂を認めた 21 例について破裂時の
治療とその後の治療と予後を検討した。【結果】破裂を認めた HCC 患者 21 名のうち 11 例
は緊急で肝動脈塞栓術を施行し止血を要した。残り 10 例は保存的に止血を得た。破裂時
に緊急手術を行った症例は無かった。全身状態が落ち着いた後、全例手術を施行した。術
前検査で HCV:HBV:non-BnonC = 6:5:10、Child-Pugh 分類で A:B:C = 12:8:1、
ICG15 分 値:12.8 %( 中 央 値 )で あ っ た。 腫 瘍 マ ー カ ー は AFP:92 ng/ml( 中 央 値 )、
PIVKAⅡ:564 mAU/ml(中央値)と高値を示した。腫瘍分化度は高分化:中分化:低分
化= 3:12:6、背景肝は正常肝:慢性肝炎:肝硬変= 2:8:11 であった。破裂した stage
Ⅳ A 20 例の 5 年生存率は破裂していない stage Ⅲと stage ⅣA のいずれとも有意差はな
かった。この 20 例で「破裂した」という条件を除くと stageⅡ:Ⅲ:ⅣA = 11:5:4 であっ
た。 破 裂 し た stageⅡ と 破 裂 し て い な い stageⅡ の 5 年 生 存 曲 線 は そ れ ぞ れ 54.9 % vs.
65.6%(P=0.43)であった。【結論】破裂 HCC は破裂時に動脈塞栓術などで止血を行い全身
状態が改善してから肝機能、腫瘍条件にあった適切な術式を検討すべきである。破裂症例
であっても破裂時とその後の適切な治療方針で良好な予後を得ることができる可能性があ
ると考えられた。
207
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 1
関連演題
MWS-1-1
外傷性膵損傷に対しての
術式選択にたいする検討
教
育
1)藤田保健衛生大学 総合膵臓外科
講
伊東 昌広 1)、石原 慎 1)、浅野 之夫 1)、津田 一樹 1)、志村 正博 1)、越智 隆之 1)、
清水 謙太郎 1)、林 千紘 1)、堀口 明彦 1)
演
パネルディスカッション
今回我々は、交通外傷後に IIIb 型外傷性膵損傷と診断し、Letton-Wilson 手術を施行し
シンポジウム
た症例と、IIIb 型外傷性膵損傷に対し、ERP 下での膵管ステントチューブ留置後膵管狭窄
をきたした症例に対して Letton-Wilson 手術を施行した症例の 2 例を経験した。【症例 1 】
40 歳、女性。交通事故で腹部打撲。腹部 CT で、肝 S1 に IIIa 型、S4 に IIIb 型の肝損傷と
膵損傷を認めた。ERP 施行し主膵管の断裂を認め IIIb 型と診断した。肝損傷に対しては
ワークショップ
血管塞栓術を施行し止血。膵損傷に関しては Letton-Wilson 手術を施行した。出血量 400g
で終了。術後 23 日で退院となった。【症例 2 】20 歳、女性。階段で転倒し腹部を強打。腹
部 CT で外傷性膵損傷を認めた。ERP で主膵管の損傷を確認し IIIb 型と診断。膵管ステン
トチューブを留置し開腹ドレナージ術を施行した。経過観察中に膵管狭窄を認めたため、
手術目的で当院紹介となった。Letton-Wilson 手術を施行。出血量 67 g で終了。術後 21 日
連
以上の両者を比較し、外傷性膵損傷に対しての術式選択に対する検討し 文献的考察を
演
題
加え報告する。
パネルディスカッション
関
で退院となった。
シンポジウム
関 連 演 題
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
208
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 1
関連演題
MWS-1-2
小児の主膵管断裂を伴う膵頭部十二指腸
損傷に対する新たな手術戦略・戦術
1)りんくう総合医療センター 大阪府泉州救命救急センター Acute Care Surgery センター
成田 麻衣子 1)、比良 英司 1)、渡部 広明 1)、水島 靖明 1)、松岡 哲也 1)
【はじめに】小児において主膵管損傷を伴う膵頭部十二指腸損傷の症例は稀であり、標準
的治療方針は確立されていない。今回我々は小児の主膵管断裂を伴う膵頭部十二指腸損傷
に対して膵頭十二指腸切除術(PD)を回避した新たな手術戦略・戦術にて救命し得た症例
を経験したので報告する【症例】7 歳(24 kg)男児。競技用自転車で転倒し、ハンドルで腹
部を強打。近医を受診し膵頭部損傷の疑いで当院へ転院搬送となった。来院時バイタルは
安定していたが、顔色不良で、Morison 窩及び Douglas 窩に echo free space を認め、心窩
部に打撲痕と著明な圧痛が見られた。前医 CT にて膵頭部周囲血腫内に造影剤の血管外漏
出像、周囲に free air を認めており、緊急手術となった。開腹すると、十二指腸破裂(d Ⅱa
(D1))および膵頭部損傷(Ⅲb(Ph))が見られたが、この時点では主膵管損傷の有無は確
認できなかった。初回手術では、十二指腸損傷部縫合と膵周囲ガーゼパッキングを行い、
vacuum packing closure による一時的閉腹で手術を終了した。翌日、ERCP にて主膵管損
傷を確認後、planned reoperation を施行した。膵頭部は背側の一部を残しほぼ断裂して
おり、再度術中 ERCP を行うも、カニュレーションできず挫滅膵内の主膵管断端を確認で
きなかった。膵機能の温存と確実な膵液ドレナージ目的に、挙上空腸(Roux-en Y)と膵
断裂部の縫合を行った(膵実質空腸吻合)。さらに、腸瘻を造設して根治的閉腹とした。
術後は経過良好で、34 日目に独歩退院となった。現在約半年間のフォローを行っている
が、大きな合併症なく経過している【結語】膵管処理ができない膵頭部挫滅症例に対して、
今回施行した膵実質空腸吻合術は PD を回避し、確実な膵液ドレナージを可能とする新た
な治療戦略・戦術と考えられる。
209
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 1
関連演題
MWS-1-3
外傷性膵頭部損傷に対する膵頭十二指腸
切除後の短期・長期合併症の検討
教
育
1)香川大学消化器外科
講
岡野 圭一 1)、大島 稔 1)、上村 淳 1)、山本 尚樹 1)、西浦 文平 1)、和田 侑希子 1)、
野毛 誠示 1)、前田 典克 1)、西村 充孝 1)、浅野 栄介 1)、高橋 英幸 1)、
赤本 伸太郎 1)、藤原 理朗 1)、臼杵 尚志 1)、鈴木 康之 1)
演
パネルディスカッション
外傷性膵頭部損傷に対する膵頭十二指腸切除術の頻度は比較的稀であり、その適応や短
シンポジウム
期・長期合併症に関するコンセンサスは未だ得られていない。我々は 2007 年より 2014 年
までに 5 例の外傷性膵頭部損傷に対して緊急膵頭十二指腸切除(一期再建)を施行したの
で、その治療戦略、短期・長期合併症に関して報告する。 症例は男性 4 例、女性 1 例、年
齢の中央値は 31 歳(16-76 歳)で受傷機転は 4 例が交通外傷、1 例がスポーツ外傷であっ
ワークショップ
た。来院時、多量の Free air を認めショックバイタルであった 1 例と CT 上で明らかな膵
断裂を認めた症例は直ちに手術を行い、他 3 例は緊急 ERP で主膵管(一次分枝を含む)断裂、
損傷を確定した後に手術を施行した。 手術は SSPPD を基本術式(一例は胃穿孔も伴い
PD)とし、一期的再建を行っている。合併切除は同時損傷のために脾臓摘出 1 例、右結腸
切除を 1 例に行った。再建は拡大鏡(X2.5)を用いて膵管空腸吻合(膵実質空腸漿膜筋層密
連
留置している。
演
題
術後経過は 5 例中 2 例に ISGPF Grade B の膵瘻を認めたものの全例保存的に軽快し、
Clavien-Dindo Grade3 以上の合併症はなく、術後 23、27、37、45、67 日目に独歩退院さ
シンポジウム
関 連 演 題
れた。長期的には新規糖尿病発症は認めないものの、若年患者の 1 例において、術後 10 か
パネルディスカッション
関
着吻合)を行い、ロストステントを留置している。術後合併症対策として腸瘻チューブを
月目に膵管空腸吻合部狭窄による残膵炎、仮性嚢胞形成を認め、経胃的ドレナージチュー
ブ留置を施行した。 外傷性膵頭部損傷に対する一期的膵頭十二指腸切除は膵瘻を合併す
る頻度は高いものの、安全に施行出来る手術である。若年者における膵管空腸吻合部狭窄
などの長期的な合併症に注意を要する。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
210
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 1
関連演題
MWS-1-4
腹腔内大量出血を伴い膵切除を要した
外傷性膵損傷の 2 例
1)津山中央病院 外科
小畠 千晶 1)、林 同輔 1)
外傷性膵損傷は腹部外傷の 2~16%と比較的まれな疾患である。
今回我々は腹腔内に大量出血を伴ったⅢ型の外傷性膵損傷の 2 症例を経験した。
1 例目は 65 歳男性。脱穀機で体幹部を挟まれ受傷。来院時ショックバイタルであり、造
影 CT で膵周囲、腸間膜からの extra が疑われ、緊急手術となった。開腹時、中結腸動脈、
門脈の分枝からの出血、錐体部の挫滅、不全断裂を認め、止血術、膵体尾部・脾合併切除
術を施行した。術後 6 日目までは経過良好であったが、7 日めに発熱を認め、腹腔内膿瘍
と診断。ドレナージを行ったものの、感染コントロールが不良となり、術後 37 日めに多
臓器不全で死亡した。
2 例目は 80 歳男性。自動車運転中の事故で受傷。来院時ショックバイタルであり、腹腔
内に freeair、大量の液体貯留、膵周囲の extra を認め、膵十二指腸損傷が疑われたため、
緊急手術を施行した。開腹時、十二指腸の完全断裂、膵頭部の挫滅、総胆管の完全断裂を
認め、膵頭十二指腸切除術を施行した。術後 8 日目にドレーン排液の混濁を認め、CT に
て正中創直下の膿瘍形成を認めたが、開創ドレナージを施行し感染コントロール可能で
あった。また術中に腸瘻造設を思考していたことから早期からの経管栄養が可能であった。
その後の経過は良好であり、術後 127 日で退院となった。
本疾患はシートベルト外傷などの鈍的外力による損傷が 90% を占める。また、その臓
器特性から、重篤化しやすい。膵損傷においては、損傷部位や程度によって治療法を決定
する。
外傷性膵損傷は①出血のコントロール②感染のコントロール③臓器の修復が重要である
と言われており、術後の腹腔内膿瘍、膵炎、仮性膵嚢胞などに対する対策も重要となる。
我々は腹腔内に大量出血を伴ったⅢ型の外傷性膵損傷の 2 症例を経験したので文献的考
察を加えて報告する。
211
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 1
関連演題
MWS-1-5
小児鈍的外傷による
十二指腸壁内血腫を伴った膵損傷の1例
教
育
講
1)藤田保健衛生大学 医学部 災害外傷外科、2)藤田保健衛生大学 医学部 救急医学科
3)藤田保健衛生大学 医学部 小児外科、4)藤田保健衛生大学 医学部 胆膵外科
演
富野 敦稔1)、平川 昭彦1)、後長 孝佳2)、安藤 雅規2)、波柴 尉充2)、宮部 浩道2)、
服部 友紀 2)、鈴木 達也 3)、堀口 明彦 4)、武山 直志 2)
パネルディスカッション
[はじめに]小児の鈍的腹部外傷による膵損傷に関して、明確な標準治療方針は確立され
シンポジウム
ていない。今回、十二指腸壁内血腫を伴う小児の膵損傷を経験したので報告する。 [ 症例]
10 歳女児。座っていた友達の膝で腹部を打ちつけ、嘔吐と腹痛が持続するため翌日に近
医を受診し、膵損傷の診断にて当院へ紹介となった。病院到着時、BP 120/80 mmHg、
HR 90/min、腹部全体に圧痛および筋性防御を認めた。腹部造影 CT 検査で総胆管・主膵
ワークショップ
管の拡張を伴った膵頭部損傷および十二指腸血腫を認めた。循環動態が安定していたため
主膵管損傷の有無を確認するため ERP 検査を行った結果、主膵管の断裂を認めないが下
頭枝が圧排され変位し、その分枝より造影剤漏出を認めた。下頭枝の分枝に膵管ステント
を留置し、開腹手術を行った。術中所見は、腹腔内に少量の血性腹水貯留があり、総胆管
の拡張および膵頭部実質内血腫を認めた。ただ膵被膜は保たれており、周囲の鹸化を認め
連
十二指腸壁内血腫を認めたが、穿孔所見はなかった。膵損傷 I 型および十二指腸損傷 Ib 型
演
題
と診断し、膵周囲ドレナージ、胆嚢摘出+胆道ドレナージおよび腸瘻造設術を施行した。
術後経過は良好で、ドレーンの排液より AMY の著明な高値を認めなかったため、第 14 病
シンポジウム
関 連 演 題
日に小児外科へ転科・転棟した。第 23 病日の消化管造影検査では十二指腸の通過障害を
パネルディスカッション
関
なかった。また、膵後面の後腹膜血腫および十二指腸 2nd portion からトライツ靭帯まで
認めなかったため、水分摂取を開始した。しかし膵実質内血腫はなかなか吸収されず、第
104 病日に膵管ステントを抜去した後 ERBD チューブを留置し、第 116 病日に退院となっ
た。[考察]当施設では膵損傷を疑った場合、可能な限り緊急 ERP を施行しており、小児
例でも遂行できた症例であった。ただ、保存的治療も考えられたため若干の文献的考察も
ワークショップ
関 連 演 題
含め報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
212
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 1
関連演題
MWS-1-6
胃切後外傷性膵損傷に対し
緊急膵頭十二指腸切除術を施行した 1 例
1)金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科
高田 智司 1)、林 泰寛 1)、廣瀬 淳史 1)、柄田 智也 1)、中沼 伸一 1)、岡本 浩一 1)、
酒井 清祥 1)、木下 淳 1)、牧野 勇 1)、中村 慶史 1)、尾山 勝信 1)、井口 雅史 1)、
中川原 寿俊1)、宮下 知治1)、田島 秀浩1)、楯川 幸弘1)、高村 博之1)、二宮 致1)、
北川 裕久 1)、藤村 隆 1)、伏田 幸夫 1)、太田 哲生 1)
【はじめに】外傷性膵損傷において手術加療を要する症例は稀である。今回我々は、過去
に胃潰瘍の治療として広範囲幽門側胃切除術を施行された患者の外傷性膵頭部損傷に対し
て緊急膵頭十二指腸切除術を要した症例を経験したので報告する。【症例】85 歳、男性。
既往に胃潰瘍にて広範囲幽門側胃切除(84 歳時)。自家用車運転中(シートベルト有、エ
アバッグ不明)にガードレールへ衝突し受傷した。他院へ救急搬送されたが、画像上、腹
腔内出血を伴う膵損傷と診断され、当院へ転院搬送となった。【経過】転院後のバイタル
サインは血圧 124/77 mmHg、脈拍 62 回 / 分。Sat 98%(room air)、体温 36.6 度、JCS-1、
顔面、両上肢、腹部に打撲痕を認める以外に明らかな外傷は認められなかった。腹部造影
CT にて膵頭部に血管外漏出像を伴う血腫を認め、経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を施
行したが、出血部位が複数あり、塞栓術のみでの止血は十二指腸の壊死を来すことが予想
された。そのため、受傷部位の摘出を前提として TAE を施行し、その後手術を施行する
方針とした。画像上、主膵管損傷は明らかではなかった。手術所見においては、膵頭部は
胃切除の際の Kocher の授動により正中側へ偏位しており、膵鉤部から十二指腸水平脚、
および小腸間膜根部に広範な挫傷と血腫の形成を認め、膵頭十二指腸切除術を施行した。
出血量は 1550 ml、輸血は RCC4 単位、FFP4 単位であった。術後第 1 病日に抜管、第 7 病
日に ICU 退室、合併症なく第 29 病日に独歩退院となった。
【考察】本症例は胃の手術歴が
あり、正面からの直達力が膵頭部へ加わり易い状況であった。胃切除術後の膵外傷に関し
ては、過去に同様の報告例はなく稀と考えられる。しかし、重要臓器の偏位に伴って、外
傷の重症度が上がる可能性があるため、注意が必要であると考えられた。
213
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 1
関連演題
MWS-1-7
受傷 6 日目に来院した外傷性膵損傷の
1 死亡例
教
育
1)君津中央病院救急・集中治療科
講
北村 伸哉 1)、富田 啓介 1)、島居 傑 1)
演
パネルディスカッション
73 歳男性。泥酔状態で軽トラック運転中、電柱に衝突。近医に搬送されたが、帰宅。
シンポジウム
翌日より腹痛と下痢が始まり、翌々日、同病院入院。CT にて膵損傷が疑われ、保存的治
療が行われたが、次第に腹痛増悪。受傷 6 日目に当院へ紹介された。CT では膵損傷(III 型)
の診断。膵頭部から右前後腎傍腔を経て、骨盤腔へ広がる炎症が認められた。腹水も貯留、
十二指腸損傷および膵胆管損傷を疑い、ERCP を施行したが、明らかな主膵管損傷は認め
ワークショップ
られず、微小な胆管漏出像が疑われたため、胆管ステントを留置した。腸管損傷も明らか
ではなく、重症急性膵炎(予後因子を算出するなら 7 点、CT grade2)に準じた保存的治
療を開始した。しかし、翌日には炎症が増悪し、尿量低下、ICU にて CHDF を開始した。
第 3 ICU 病日には呼吸不全合併、人工呼吸器を装着した。各種培養検査は陰性であったが、
MEPM を投与し、経過を観察した。その結果、尿量は増加、第 15 病日には CHDF、人工
連
検出された。このため、側腹部斜切開にて膿瘍腔に至り、大量の膿をドレナージ。後腎傍
演
題
腔よりウインスロー腔まで剥離、下方は恥骨結合まで可及的に necrosectomy を行った。
さらに恥骨結合上を縦切開し腹膜前腔から右側膿瘍腔まで開放した。術後は continuous
シンポジウム
関 連 演 題
closed lavage とした。その後、炎症は収束へ向かったが、再燃。腸管損傷を疑がったが、
パネルディスカッション
関
呼吸器から離脱した。しかし、第 16 病日に発熱、後腹膜の穿刺培養から S. maltophilia が
確証は得られず、第 35 病日に再度、necrosectomy を行い、腎周囲を完全に廓清、膵頭部、
仙骨前面も可及的にドレナージした。しかし、感染をコントロールする事ができず、第
63 病日に死亡した。重症急性膵炎に準じた治療を行ったが、手術タイミング、術式につ
いて、諸先生方のご意見を伺い、今後の糧としたい。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
214
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 2
関連演題
MWS-2-1
早期外科的治療により奏功した
外傷性膵損傷(Ⅲb)
1)独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 救命救急センター
2)独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 外科
家城 洋平 1)、西村 哲郎 1)、佐尾山 裕生 1)、田原 憲一 1)、若井 聡智 1)、
宮本 敦史 2)、中森 正二 2)、定光 大海 1)
近年の外傷患者については病院前救護から病院内での初期診療が連続性を持って確立さ
れてきており、外傷患者の円滑な医療が提供され、救急医療体制全体の恩恵をうけている
ところである。しかし、比較的稀な重症外傷の治療経験、治療成績については施設間格差
もあり治療経験や方法についても、ばらつきが生じることがあることも否めない。
今回我々は、診断方法や治療方針、手術方法などの Decision making に難渋すること
が多く非常に稀な膵損傷Ⅲb 型(外傷学会分類 2008、以下省略)を経験した。症例は 22 歳 女性で、自動二輪の後部座席に乗車中、乗用車と接触し転倒して受傷した。右側頭部、顔
面、頸部、右季肋部、上腹部、左下肢の痛みおよび鼻出血と左下肢からの出血を認めてい
た。意識やバイタルは安定していたが受傷機転より高エネルギー外傷であるため当院救命
救急センター搬送となった。来院時も意識やバイタルは安定し、精査にて肝損傷、膵損傷
を認めた。院内事情により MRCP、ERCP での膵管損傷の評価が困難であったが、全身状
態増悪したため同日緊急開腹術を施行し肝損傷Ⅱ型、膵損傷Ⅲ b 型を診断し脾温存膵体尾
部切除術を施行した。術後経過は良好で食事摂取可能となったが、術後 23 日目に腹腔内
膿瘍による発熱と腹痛を認め、膿瘍ドレナージを施行し、その後経過良好であった。膵損
傷では、診断として腹部造影 CT に加え、主膵管損傷の確認のために ERCP や MRCP が有
用である。しかし、それには緊急時の検査体制、あるいは十分な経験と技術を持ち合わせ
た術者が必要となる。さらに、治療に関しては、膵損傷Ⅰ型以外には手術を要するが、そ
の手術方法として様々であり術者の経験と技術が必要とされる。また、術後合併症につい
ても注意深い経過観察が必要である。これら様々な問題点につき現時点での当救命救急セ
ンターの対応と文献的考察も含めて報告する。
215
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 2
関連演題
MWS-2-2
当院での外傷性膵損傷の治療経験
~ 2 例のⅢb 型手術症例の検討~ 教
育
1)財団法人田附興風会医学研究所北野病院
講
岩村 宣亜 1)
演
パネルディスカッション
【緒言】外傷性膵損傷はガイドライン上重症度Ⅲ b 型が手術適応とされており、近年保存
シンポジウム
的加療が選択され良好な経過を得た報告も散見されるが、適応には慎重な検討が必要であ
る。当院におけるⅢb 型外傷性膵損傷の 2 手術例を提示する。
【症例提示】症例 1 は 10 代男性。
スポーツ中の接触事故による腹部鈍的外傷にて当院搬送となり、著明な腹痛と高アミラー
ゼ血症、CT 上膵体部に実質径 1/2 以上の断裂を認め、Ⅲ型と診断した。ERP は施行しな
ワークショップ
かったが IIIb 型の可能性が高く、受傷約 23 時間後に緊急手術(脾温存膵体尾部切除術)を
施行した。術後合併症を認めず第 11 病日に退院、糖尿病などの晩期合併症なく術後 29 ヶ
月の現在、元気に社会復帰している。症例 2 は 30 代男性。職務中の高所からの落下による
腹部鈍的外傷にて当院搬送となり、CT 上膵頚部でのほぼ完全な断裂、ERP での主膵管完
全断裂を認めてⅢ b 型と診断。尾側膵管の描出はなく内視鏡的治療は困難であり、受傷約
連
指腸の浮腫が強く膵の認識が困難であった。膵切除は行わず、腹腔内洗浄および膵断裂部
演
題
のドレナージを施行し、栄養管理のため腸瘻を造設した。術後膵断裂部に被包化された液
体貯留と同部位からの膵液瘻を認めたが、経胃的アプローチによるステント留置・嚢胞ド
シンポジウム
関 連 演 題
レナージを施行し、胃との内瘻化を行い腹腔内ドレーンを抜去し第 54 病日に退院となっ
パネルディスカッション
関
22 時間後に緊急手術を施行した。開腹所見では、著明な後腹膜血腫の貯留や、膵や十二
た。【考察】Ⅲb 型の膵損傷部位が膵体部から尾側であれば外科的切除も考慮されるが、頚
部から頭部にかけての損傷は十二指腸損傷の合併も多く、膵切除の適応には注意を要する。
症例 2 のように経胃的アプローチでの内視鏡下ステント留置・内瘻化により急性期を乗り
切ることが可能であった。【結語】Ⅲb 型の外傷性膵損傷に対する治療方針は、損傷部位や
ワークショップ
関 連 演 題
範囲に応じて慎重に選択すべきである。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
216
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 2
関連演題
MWS-2-3
Ⅲb 型外傷性膵損傷に対して
Letton-Wilson 手術を行った 1 例
1)熊本赤十字病院 外科、2)熊本赤十字病院 救急科、3)熊本赤十字病院 国際医療救援部
日高 悠嗣 1)、横溝 博 1)、大隅 祥暢 1)、金田 明大 1)、山田 竜也 2)、堀 耕太 3)、
杉本 卓哉、木原 康宏 1)、山永 成美 1)、永末 裕友 1)、山田 兼史 1)、
田中 栄治 1)、木村 有 1)、林 亨治 1)、平田 稔彦
【症例】16 歳男性【現病歴】サッカーの試合中に腹部を打撲し受傷。腹痛と嘔吐を認めて近
医を受診し、外傷性膵損傷の診断で保存的加療を開始した。自宅から遠方での入院であり、
循環動態安定していることから受傷 3 日目に加療継続目的で当院転院となった。来院時血
圧は安定していたが腹痛持続し筋性防御を伴っていた。【術前経過】来院後の CT で膵頭部
の造影効果不良と血腫形成を認めてⅢ型膵損傷が疑われた。ERP では主膵管の断裂像を
認め、Ⅲ b 型膵損傷の診断で緊急手術の方針となった。【手術所見】上腹部正中切開で開腹、
膵前面に血腫を認めたため除去し、膵臓が膵頚部で断裂していることを確認した。膵液に
よる炎症が強固で、周囲の剥離を行い orientation をつけることに難渋した。年齢を考慮
し膵温存手術である Letton-Wilson 手術の方針とした。膵頭側の断裂した主膵管を確認し
て縫合閉鎖を行った。尾側膵の主膵管は引き抜けており、再建のために膵実質を膵管が露
出するまで追加切除を行った。膵管チューブを挿入し、柿田式密着縫合で膵空腸吻合を行っ
た。腸瘻を造設し、JVAC ドレーンを 4 本留置して手術を終了した。【術後経過】術後経過
は良好で Grade B の膵液瘻を認めたが保存的加療で改善し、術後 30 日目に自宅退院となっ
た。
【考察】Letton-Wilson 手術は膵液瘻など合併症のリスクが問題となるため通常は選択
される術式ではないが、今回は若年者であり、術後膵機能低下を避けるために選択した。
患者が若年で循環動態が安定している場合には膵温存手術も術式選択の一つとし、救命だ
けでなく膵機能温存を考慮した術式を総合的に判断する必要がある。【結語】外傷性Ⅲ b
型膵損傷に対して Letton-Wilson 手術を施行し良好な経過を辿った 1 例を経験したので報
告する。手術画像も供覧する。
217
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 2
関連演題
MWS-2-4
Ib型十二指腸損傷を伴うIIIb(Ph)型外傷性膵損傷に対して緊急
膵頭十二指腸切除術後、二期的に膵空腸吻合術を行った1例
教
育
1)県立広島病院 消化器・乳腺・移植外科
講
真島 宏聡1)、眞次 康弘1)、中原 英樹1)、高倉 有二1)、大石 幸一1)、小橋 俊彦1)、
池田 聡 1)、漆原 貴 1)、板本 敏行 1)
演
パネルディスカッション
十二指腸損傷を伴うⅢb 型膵頭部損傷に対して二期的手術を選択し、重篤な術後合併症
シンポジウム
なく救命しえた 1 例を経験したので報告する。症例:60 代女性。自家用車乗車中の自損事
故で胸腹部を強打し前医に救急搬送。CT で多発肋骨骨折、血気胸、膵頭部周囲血腫、腹
腔内出血を認めた。ショックバイタルを認め気管内挿管、IABO 挿入後、当院転送となる。
CT 再検しⅢ b 型膵頭部損傷による腹腔内出血、後腹膜血腫と診断し緊急開腹術を施行。
ワークショップ
膵頭部に高度挫滅、膵頭十二指腸周囲血腫を認め、他臓器損傷が無いことを確認した後、
ガーゼパッキング止血を行い閉腹した。引き続き IVR で IPDA、ASPDA 分枝塞栓術を行っ
た。その後 ICU に収容し全身状態の改善を図り、初回手術から 8 時間後に再手術を施行し
た。膵頭部は高度挫滅、断裂しており主膵管損傷を伴っていた。胆道損傷は認めなかった。
十二指腸下行脚は壁内血腫、漿膜損傷を認めた(Ib)。膵頭十二指腸切除術(PD-II)を施行、
連
膵管チューブを留置し完全外瘻とした。術後膵液瘻(Grade B)を認めたが速やかに改善、
演
題
その他の合併症を認めず。術後 54 病日にリハビリテーション目的で転院した。術後 84 病
日に再入院、二期的膵空腸吻合術を行ない、術後 9 日目(受傷後 96 病日)に軽快退院した。
シンポジウム
関 連 演 題
現在再建手術後 6 ヵ月経過し、特に問題を認めていない。[考察]膵頭十二指腸切除術後の
パネルディスカッション
関
膵空腸吻合は二期的に行う方針とした。再建に備え膵後壁を空腸脚に縫合固定、主膵管に
合併症を低減する目的で、二期的膵空腸吻合術の有用性、安全性は以前より報告されてい
る。本症例は膵頭部の損傷が高度であり合併症のリスクが高く、また全身状態不良で膵液
瘻等の合併症は致命的な状況であったため、安全性を重視し二期的再建を選択し、良好な
経過を辿ることができた。[結語]Ⅲb 型膵頭部損傷に対し二期的膵空腸吻合術を選択し、
ワークショップ
関 連 演 題
安全に救命しえた 1 例を経験した。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
218
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 2
関連演題
MWS-2-5
ドレナージにより軽快した
IIIb 型膵損傷の 1 例
1)鳥取県立中央病院 外科
2)鳥取県立厚生病院 消化器外科
木原 恭一1)、三宅 孝典2)、網崎 正孝1)、遠藤 財範1)、鈴木 一則1)、中村 誠一1)、
澤田 隆 1)、清水 哲 1)
症例は 50 代の男性。軽自動車を時速 50km で運転していて電柱に衝突し、救急搬送され
た。GCS:E3V4M6、HR80 台、BP80 台、Morison 窩 に echo free space を 認 め た。 血 清
amylase は正常範囲内であった。CT 上、肝・脾周囲、膵前面から網嚢内、骨盤内に血液
が貯留し、膵体部は造影不良、小葉構造が不明瞭化し、dynamic study を行うと膵体部周
囲に造影剤が血管外漏出していた。いずれも II 型以上の肝・脾・膵損傷が疑われ、ダメー
ジコントロール手術となった。術中所見で肝損傷は I 型、明らかな脾損傷なし。膵周囲に
血液が溢れ、脾静脈と SMV 合流部付近からの出血を考えた。II ないし III 型膵損傷を疑っ
たが膵前面に肉眼的な断裂を認めなかった。門脈系損傷を拡大させるリスクを懸念して、
それ以上の検索は行わずにガーゼパッキングで止血を図り手術を終了した。翌日には血清
amylase 1,198IU/L と上昇し、術後 2 日目にガーゼの除去と膵損傷の評価のために second
look を行った。炎症性に肥厚した周囲組織と膵の境界は不明瞭であったことより膵切除を
断念しドレーンを留置して手術を終了した。ドレーン amylase は 12,792 IU/L と高値を示
し、ERP を予定して初回手術から 12 日後に 3 度目の手術を行ったが、損傷箇所は同定さ
れなかった。瘻孔化を待ってドレーンを造影したところ主膵管が描出され、IIIb 型の膵損
傷と診断したが、ドレナージ治療の継続により 5 カ月の経過で内瘻化された。
膵損傷分類 II 型ではドレナージを中心とした治療が一般的だが、それ以上の膵損傷では
他臓器合併損傷のために必ずしも選択術式が一致しない。われわれはダメージコントロー
ル手術を選択し、その後の経過で IIIb 型膵損傷と診断され、ドレナージで治癒した症例を
経験したので考察を加えて報告する。
219
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第4会場】3F 善知鳥の間
ワークショップ 2
関連演題
MWS-2-6
Ⅲa 型膵損傷と判断し保存的治療を
選択した 1 例
教
育
1)熊本大学大学院消化器外科学
講
武山 秀晶 1)、橋本 大輔 1)、黒木 秀幸 1)、林 洋光 1)、新田 英利 1)、近本 亮 1)、
別府 透 1)、馬場 秀夫 1)
演
パネルディスカッション
【背景】外傷性膵損傷は、致命的となり得る重症疾患であり治療方針を決定する上で的確
シンポジウム
な診断が必要となる。重症度は日本外傷学会 2008 年の分類を用いるが、主膵管損傷を認
めないⅢ a 型と、主膵管損傷のあるⅢb とでは治療方針が大きく異なる。Ⅲb 型での治療
方針は原則手術適応であるが、手術侵襲の大きさを考慮すると Over triage は許容され難
い。Ⅲa 型と診断し保存的加療を選択するためには、的確な診断根拠が必要とされる。【症
ワークショップ
例】症例は 26 歳、男性。生来健康。2 日前、父・兄に腹部と足を風数回強く蹴られた。以後、
痛みが増強してきたために、当院救急外来を独歩受診。来院時の Vital は体温 37.5℃、血
圧 121/50 mmHg、 脈 拍 100 bpm で あ っ た。 第 一 印 象 に 明 ら か な 異 常 は な く、Primary
survey では、脾腎境界に echo free space を認めた。Secondary survey において、体幹部
に 外 傷 は な か っ た が、 四 肢 に 新 旧 の 打 撲 痕 を 複 数 認 め た。 造 影 CT で は、 膵 頭 部 に
連
緊急内視鏡的逆行性膵管造影の結果、主膵管損傷の所見なく膵管ドレナージ(ENPD)を
演
題
行い絶食、厳重経過観察を行った。その後、膵管造影を繰り返すも主膵管損傷は確認され
ず、全身状態も改善。15 病日には、ENPD を抜去食事開始とし 26 病日には独歩退院となっ
シンポジウム
関 連 演 題
た。
【考察】本症例において治療方針を決定する上で最も重要な点は、主膵管損傷のない
パネルディスカッション
関
Extravasation を伴うⅢ型損傷、腸間膜血腫を認めた。血中アミラーゼの高値を認めた。
Ⅲ a 型であると判断したことにあると思われる。全主膵管の造影を行い、さらに 2 次性の
膵管狭窄も考慮し、損傷部位を渡るようにドレナージチューブを置く必要があると考えら
れる。
【結語】Ⅲ型膵臓損傷の治療方針決定には、内視鏡的膵管造影が有用であり、見落
としや過大侵襲を防ぐことができる。
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
220
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-01-1
Non-responder/transient-responder 症例の
臨床的検討
1)一宮市立市民病院 救急科、2)岐阜大学 医学部 高度救命救急センター、3)中京病院 皮膚科
4)順天堂大学 医学部 静岡病院 整形外科
白井 邦博1)、加藤 久晶2)、吉田 隆浩2)、中野 志保2)、土井 智章1)、田中 義人3)、三宅 喬人4)、
小倉 真治 1)
【緒言】Transient-responder(TR)/ Non-responder(NR)症例は救命困難である。今回、岐阜大学救命救急セン
ターへ来院した TR/NR の臨床検討を行った。【対象と方法】来院時 CPA を除く TR/NR=26/11 例を対象とした。
背景、バイタルサイン、pH、BE、乳酸値、初期治療、24 時間の総輸血量について検討した。生存例と死亡例を
比較した。【結果】平均年齢は 64.2 歳、男性が 56.8%、交通事故が 70.3%、搬送手段は直接搬送が 17 例(救急車 /
ヘリ =10/7 例)
、転院は 20 例(救急車 / ヘリ =13/7 例)だった。平均 ISS は 36.0 で 78.4% が多発外傷であった。受
傷部位は腹部:67.6%、骨盤:62.2%、四肢:56.8%、胸部:51.4%、脊椎:35.1%、頭部:27.0%、顔面:18.9% だった。
初療時検査では、収縮期血圧:72.0 mmHg、呼吸数:27.5 回、脈拍 108.2、GCS:10.3、pH:7.21、BE:-8.8、乳
酸値:7.2 mmol/L であった。治療は、手術と TAE 併用療法:64.9%、手術単独:21.6%、TAE 単独:13.5% だった。
このうち IABO:9 例と開胸(開腹)大動脈クランプ:5 例で、packing 術:26 例(extra-peritoneal pelvic:12 例、肝:
5 例、断端部:5 例、後腹膜:3 例、膵:2 例)で damage control surgery を行った。また、TAE:29 例、開胸術:
4 例、開腹術:22 例(小腸腸間膜:9 例、摘脾:4 例、膵切除:3 例、肝縫合:2 例、膀胱縫合 / 瘻:5 例、腎摘:1 例、
胆摘:1 例、門脈修復 / 脾動脈結紮:1 例)だった。輸血は RCC:27.4 単位、FFP:27.0 単位、PLT:26.7 単位であっ
た。死亡率は 40.5% で、86.7% は出血が原因だった。生存例と死亡例の比較では、Ps(0.58 v.s. 0.37)
、受傷から
止血までの時間、GCS などで差を認めた。【結語】半数以上が転院例で 80% が多発外傷であり、死亡率も高率だっ
た。よって止血のための決定的治療には、緊急度を早期に認識して、外傷チームを招集するシステムの構築と、
その主体を担う外傷医の育成が重要である。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-01-2
重症胸部外傷に対する
Clamshell thoracotomy の成績
1)日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター
阪本 太吾 1)、益子 一樹 1)、服部 陽 1)、安松 比呂志 1)、中山 文彦 1)、林田 和之 1)、松本 尚 1)
【はじめに】重症外傷の蘇生において蘇生的開胸術は重要な位置を占めているが、胸部外傷においては、蘇生的
開胸術に加えて、さらに多彩で広範囲の胸腔内操作が必要となる。当センターにおいては、胸骨横断両側開胸術
(Clamshell thoracotomy;以下 CT)を、比較的手技が簡便であること、必要な手術器具が胸骨横断用の鋏以外
ないこと、迅速に展開可能であること、広い範囲に良好な視野が得られること、などから積極的に行ってきた。
【目的】CT 施行例について、損傷部位、胸腔操作、開胸方法に加えて、Revised Trauma Score(RTS)
、Injury
Severity Score(ISS)、TRISS 法による予測生存率(Ps)を後方視的に検討した。
【対象】2007 年 2 月から 2013 年
10 月までの期間の外傷手術症例を対象とした。当院搬入時心肺停止状態(CPA)及び、
AIS=6 を除外した。
【結果】
217 例の手術症例のうち、蘇生的開胸術を施行したのは 45 例であった。うち 9 例に対して引き続き CT が施行さ
れていた。1 例は手術室で、8 例は初療室にて施行され、4 例が右開胸先行、5 例が左開胸先行であった。心、肺、
縦隔血管、気管支、胸壁などの損傷部位に対する手術、処置が可能であった。平均 RTS:4.58、平均 ISS:39.8、
平均 Ps:0.415 に対して、9 例中 5 例の生存(実生存率 55.6%)を得た。この中には PS 0.5 未満の症例が 2 例含まれ
ていた。
【考察】診療成績からみた胸部外傷に対する Clamshell Thoracotomy を含めた我々の方針は、おおむね
妥当であると考えられた。
221
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-01-3
Damage control surgery を施行し救命した
多発肋骨骨折による出血性ショックの 1 例
教
1)釧路赤十字病院 外科
育
桑原 尚太 1)、金古 裕之 1)、真木 健裕 1)、三栖 賢次郎 1)、猪俣 斉 1)、近江 亮 1)、二瓶 和喜 1)
講
演
症例は 82 歳男性。2013 年某日早朝、自家用車を運転中、一時停止していたところ右から直進車が衝突し受傷、
当院へ救急搬送となった。右ドアと右フロントは約 30cm のへこみがあり大破していた。右肩甲部痛の訴えがあ
り当院整形外科へ救急搬送となったが、診察中にショック状態となり当科へ紹介受診となった。頻呼吸、右肩
から前胸部にかけて皮下血腫あり、右前胸部にはフレイルチェストを認めた。皮膚冷感と湿潤を認め、診察中
に収縮期血圧が 50 mmHg まで低下。初期輸液には反応したが血行動態は不安定であった。FAST は陰性だった。
GCS は E3V3M6 だった。胸部レントゲンで多発肋骨骨折を認め、造影 CT では右肺尖部に浸潤影があり肺挫傷に
よる血気胸と考えられ、周囲軟部組織には皮下気腫を認めた。また第 1 肋骨骨片周囲に造影剤の血管外漏出像が
見られた。その他、腹腔内臓器損傷、頭部外傷、後腹膜出血はなかった。以上より右多発肋骨骨折、血気胸によ
る出血性ショックの診断で緊急開胸止血術を施行した。手術は仰臥位、分離肺換気にて開始し、胸骨縦切開によ
り開胸した。胸腔内は全面的に線維性癒着があり、軟部組織は著明に挫滅、肋骨の骨折端から持続的に出血を認
め止血を試みたがコントロール不能となり、Damage control surgery(以下 DCS)へと切り替え、ガーゼを右肺
尖部に充填しパッキング、ガーゼの先端を皮膚の外に露出させた状態で閉創して手術を終了した。術後は大量輸
血療法プロトコル、早期トラネキサム酸投与を行うことにより出血をコントロールできた。二期的手術は施行せ
ず、ガーゼは術後 2 日目に病棟にて抜去した。通常 DCS は腹部外科領域で施行されることが多いが、本症例では
胸部外科領域において施行し患者を救命することが出来た非常に特異的な症例であり若干の文献的考察を加えて
報告する。
パネルディスカッション
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-01-4
出血性ショックを伴う腹部外傷症例に対する
大動脈閉鎖バルーンの有効性についての検討
シンポジウム
関 連 演 題
1)兵庫医科大学 救急科
西村 健 1)、岡本 彩那 1)、坂田 寛之 1)、松田 健一 1)、榎本 雄介 1)、満保 直美 1)、吉江 範親 1)、
平井 康富 1)、藤崎 宣友 1)、山田 太平 1)、橋本 篤徳 1)、尾迫 貴章 1)、上田 敬博 1)、
寺嶋 真理子 1)、宮脇 淳志 1)、山田 勇 1)、久保山 一敏 1)、中尾 篤典 1)、小谷 穣治 1)
ワークショップ
関 連 演 題
症例は 30 歳男性。交際女性に刃渡り 16 cm の包丁で左下腹部を刺され受傷。来院時心拍数 110 回、血圧 40 台、
創部からは腸管の脱出が見られた。エコーで肝周囲に液貯留を認めたため腹腔内出血による出血性ショックと
判断し初療室にて大動脈遮断カテーテル(IABO)を挿入した。血圧の上昇を得てから手術室で緊急開腹術を施
行した。初療室から術中にかけて循環の安定を得るとともに IABO 内のカフ容量を徐々に減量し手術終了時には
IABO を抜去し得た。術後著明な臓器虚血は認めず第 35 病日に独歩で退院となった。 近年出血性ショックを呈
する腹部外傷に対して IABO を挿入し循環動態を安定させてから画像検査や緊急手術に至る有効性について報告
されている。腹腔内大量出血時には IABO により一時的な止血・昇圧効果が得られ、開腹時のタンポナーデ効果
損失による大量出血・心停止の危険性も回避できる。また開胸による直接大動脈遮断よりも侵襲が少ないなど利
点が多い。しかし適応となる症例は初療室で循環動態不安定な場合が多く透視下で大動脈胸腹移行部付近に確実
に留置することが困難なことが多い。位置の変位により遮断不十分になる可能性や腹部血管損傷時にガイドワイ
ヤーが血管外に迷入する可能性などがある。 大動脈血流遮断時には閉塞部位より遠位の臓器虚血は不可避であ
り可能な限り遮断時間の短縮が求められる。不完全遮断により合併症の発生を予防できるとの報告もあるが、未
だ明確な指標は存在しない。 本症例では IABO を挿入し、阻血後 20 分で減圧したが再度血圧の低下を認めなかっ
た。結果的に臓器虚血を最小限に留められ有効な方法であったと考えるが、盲目的操作であり IABO 挿入による
致死的合併症発生の可能性や、不完全遮断によって再度循環動態が不安定になり得る可能性など議論の余地は多
い。本症例を踏まえ腹部外傷に対する IABO の適正使用について検討する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
222
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-01-5
Damage control 手術の適応とタイミングに
苦慮し死亡したⅢa 型肝損傷の一例
1)宮崎大学 医学部 循環呼吸・総合外科
池ノ上 実 1)
【はじめに】腹部外傷患者に対しては、FAST 陽性で循環動態が破綻していれば Damage control 手術の適応とさ
れるが、ショックの原因が腹腔内出血によるものかどうかの判断に迷う場合がある。本症例は、搬送中の FAST
陰性であったが、来院後に時間経過とともに次第に血圧が低下し、FAST 陽性となったため、ガーゼパッキン
グを施行したが救命しえなった。Damage control 手術の適応について経験豊富な先生方からの意見を伺い今後
の治療に役立てるべく、死亡例ではあるが報告する。【症例】49 歳女性。軽自動車の自損単独事故で通行人に
発見された。救急隊現着時にショック状態、JCS: 300 でありドクターヘリを要請されるも搬送中に CPA となっ
た。急速輸液、アドレナリン投与にて心拍再開し当院救命救急センターに搬送され、出血性ショックが疑われる
も来院時の FAST は陰性であった。造影 CT にて外傷性くも膜下出血、多発肋骨骨折あり ISS: 19、RTS: 4.0, PS:
36.8% であったが脊髄の損傷は認めなかった。腹腔内では、肝表面に若干の extravasation を認めるも明らかな
実質損傷は同定できず血圧低下の原因とは考えられなかった。バイタルは比較的安定していたため、30 分毎の
FAST で経過観察としたが、再度ショック状態となりモリソン窩に FAST 陽性となったため Damage control 手
術を決定した。開腹すると腹腔内には大量の血性腹水および肝門部からの出血を認めた。肝臓は高度の肝硬変を
きたしており胆嚢左側にⅢa の肝損傷を認めた。ガーゼパッキングにて出血の Control が得られたものの、パッ
キング終了時に急激に血圧が低下し PEA となり胸骨圧迫を行いながら ICU に帰室するも蘇生に反応せず死亡を
確認した。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-01-6
高度膵断裂に対して EUS ガイド下経胃内瘻
ステントが有効であった一例
1)鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科
2)鹿児島大学救急集中治療学
3)鹿児島大学臨床腫瘍学
飯野 聡 1)、迫田 雅彦 1)、上野 真一 3)、貴島 孝 1)、南 幸次 1)、蔵原 弘 1)、又木 雄弘 1)、
前村 公成 1)、新地 洋之 1)、垣花 泰之 2)、夏越 祥次 1)
introduction 膵外傷の治療戦略は、その重要度に応じて大きく異なる。外科的介入は高度な膵損傷に適応さ
れる。我々は超音波内視鏡検査(EUS)ガイド下経胃内瘻ステントを使用た膵断裂に対する治療法を提示する。
case 交通事故による鈍的腹部外傷で 50 歳の男性が緊急搬送された。ショック所見を呈し、CT上近位膵臓の完
全離断と巨大血腫所見を認め、同日ダメージコントロール手術が行われた。術後 8 日目(POD 8)に離断した尾
側膵からの膵液貯留に EUS ガイド下経胃内瘻ステントを留置した。離断した尾側膵から分泌される膵液は、最
終的に内瘻ステントに沿って胃の中に流入した。患者は後遺症なく退院可能であった。 discussion EUS ガイド
下経胃内瘻ステント留置術は、現在膵臓仮性嚢胞の第一選択治療とされている。しかしこの処置は少なくとも形
成後 4 週間以上が推奨されている。高度の鈍膵臓外傷に対しては、一次のダメージコントロール手術で救命し、
二次の術後早期の EUS ガイド下経胃内瘻ステント留置術が尾側膵の摘出や再建をすることなく、根治を可能に
した。 conclusion 重度の膵損傷例では、早期 EUS ガイド下経胃内瘻ステントも治療選択肢として念頭に置いて
おく必要がある。
223
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-01-7
当センターでの骨盤骨折に対する
ガーゼパッキング 46 例の検討
教
1)兵庫県災害医療センター高度救急救命センター救急部
育
松山 重成 1)、濱上 知宏 1)、岡田 剛 1)、中山 晴輝 1)、黒川 剛史 1)、川瀬 鉄典 1)、石原 諭 1)、
中山 伸一 1)
講
演
パネルディスカッション
骨盤骨折は致死的な大量出血を起こしうる重症外傷であり、救命のために骨折に対する緊急固定や TAE
(transarterial embolization)、さらに骨盤ガーゼパッキングを組み合わせた止血戦略が必要となる。なかでも
Damage Control Surgery としての骨盤ガーゼパッキングはその侵襲度の高さもあり、最重症症例に対して行わ
れる。当センターにおいて 2003 年の開設から 2013 年までにガーゼパッキングを施行した 46 例について検討し、
症例背景、治療成績や合併症について報告する。
患者背景は年令:44.5(37-66)才、性別 男性 23 例:女性 23 例。患者接触時の vital sign は HR:111.5(100
-139)bpm、sBP:62.5(60-80)mmHg、合併損傷は頭部 18 例(39.1%)
、胸部 29 例(63.0%)
、腹部 12 例(26.1%)、
四肢・脊椎 24 例(52.2%)で骨盤単独は 1 例のみであった。ISS:44(35-50)
、RTS:5.40(4.12-6.38)
、Ps:0.36(0.17
-0.61)
。
()は四分位範囲。骨盤骨折に対する止血戦略はガーゼパッキング単独 9 例、ガーゼパッキング→ TAE
27 例、TAE →ガーゼパッキング 10 例、創外固定・C-clump の並施は 8 例に行われた。
転帰は死亡 24 例、生存 22 例で、死亡 24 例中、修正予測外死亡は 4 例(死亡例の 16.7%)
、予測外生存は 11 例(生
存例の 50%)であった。
主たる合併症はガーゼ除去後の感染であった。急性期失血死症例を除き、ガーゼ除去が出来た 24 例でのガー
ゼ留置期間は 2(2-3.25)日間で、感染の合併は留置期間 2 日間 2 例、4 日間 1 例、6 日間 1 例、7 日間 1 例の計 5 例
(20.8%)で認められ、1 例は敗血症を続発し死亡した。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-01-8
Temporary Abdominal Closure(TAC)& Open
Abdominal Management(OAM)を施行した39症例の検討
シンポジウム
関 連 演 題
1)和歌山県立医科大学 医学部 医学科 救急集中治療医学講座
川副 友 1)、山添 真志 1)、酒谷 佳世 1)、上田 健太郎 1)、岩崎 安博 1)、加藤 正哉 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【背景】Acute Care Surgeryの領域においてtemporary abdominal closure(TAC)とOpen Abdominal Management
(OAM)は特徴的手技だと言えるが、その適応と予後に関する見解や、開腹の管理方法、閉腹のタイミングなど
技術的知見が統一されているとは言い難い。【目的】当院における TAC&OAM の治療成績をまとめ、適応や治療
効果を確認する。【対象】明らかに他部位外傷にて死亡した症例は省き、当施設で 2011 年以降に TAC&OAM を
施行した 39 症例。【方法】OAM の適応を以下の 4 通りに分類し、その適応や年齢、trauma or not、ICU length
of stay、duration of ventilation、duration of OAM などが hospital mortality に影響を及ぼすかを検討。
(分類①
risk of the intra-abdominal hypertension、② contamination(繰り返す洗浄が必要と判断 and/or Septic shock に
対する DCS)
、③ second look for ischemic organ、④ second look for damage control for bleeding)
【結果】全患
者の平均年齢 70 歳、duration of OAM、LOS in ICU の中央値はそれぞれ 3 日間と 10 日間であった。外傷患者は
14 例、非外傷例は 25 例、hospital mortality は 30%(12 例/ 39 例)であった。hospital mortality には、trauma or
not や duration of OAM などは影響せず、OAM の適応分類の①と④が影響した。それぞれのオッズ比は 4.4 倍、
0.25
倍であった。 このうち①であること、すなわち intra-abdominal hypertension のリスクがどういった患者群で高
くなるかを検討し文献的考察を加えて、今後 TAC&OAM を実施するための知見の一つとして紹介する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
224
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-01-9
Open abdominal management 後に
Planned ventral hernia となった症例の検討
1)大阪市立大学医学部附属病院 救命救急センター
晋山 直樹 1)、内田 健一郎 1)、山村 仁 1)、溝端 康光 1)
Acute care surgery においては open abdominal management(以下、OAM)を多用するが、状態が安定して
も primary fascia closure が不能な場合が存在する。Planned ventral hernia とは、primary fascia closure が不
能な場合に皮膚のみ閉鎖あるいは植皮術を用いて臓器を被覆する治療戦略である。今回我々は、primary fascia
closure の方針で臨みながらも腹壁閉鎖に至らなかった症例の背景要因を考察した。症例 1:38 歳男性。重症急
性膵炎に対するネクロセクトミーに続く 70 日間の OAM 後、分層植皮術を施行。しかし腹壁横切開かつ創部への
排膿が続くため二期的再建は断念し、創部ドレーン留置のまま転院。症例 2:38 歳男性。重症急性膵炎および上
行結腸穿孔に対する右半結腸切除術 + 後腹膜ドレナージの術後 11 日目に創哆開を来し再開腹。緊満および間欠
洗浄等のため 174 日間の OAM 後、分層植皮術を施行。初回に消化管再建を行わず創縁近傍に回腸人工肛門が存
在し、また横行結腸断端縫合不全から創部への瘻孔形成を来したため、二期的再建は断念し転院。症例 3:59 歳
男性。鈍的腹部外傷に対するダメージコントロール術後、third look operation でも緊張強く閉腹不能。Vacuum
and mesh-mediated fascial traction で 46 日間の OAM を実施するも閉腹困難と判断し、分層植皮術を施行し転院。
症例 4:64 歳男性。鋭的腹部外傷に対するダメージコントロール術後、forth look operation でも緊張強く閉腹不
能で、Wittman-patch も無効。初回術後 20 日目に皮膚のみ縫合閉鎖し、その後自宅退院。結論:腹腔内感染持続、
長期の OAM、度重なる再開腹は primary fascia closure 不能の要因と思われた。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
緊急開胸術を要した胸部外傷 26 例の検討
P-02-1
1)津山中央病院 外科
林 同輔 1)、小畠 千晶 1)
2000 年 3 月から 2014 年 4 月までに当院で経験した、緊急開胸術を要した胸部外傷 26 例の臨床的検討を行った。
年令は 20 才から 80 才で男性 23 例、女性 3 例と男性に多かった。受傷原因は、交通事故が 12 例と最も多く、高所
よりの転落 8 例、転倒 3 例、銃創・刺創・牛による体当たりが各 1 例ずつであった。緊急手術の要因は、多量の
血胸が 18 例と最も多く、大量出血により術前や術中に心停止を来した症例が 6 例あった。肺裂傷による massive
な air leak が 4 例、大動脈損傷による縦隔血腫が 2 例、心タンポナーデが 1 例で、刺創による明らかな臓器損傷が
1 例であった。血胸の主な出血部位は、肺損傷部からのものが 10 例と多く、胸椎骨折部が 3 例、胸壁損傷部が 2 例、
横隔膜損傷部・奇静脈系の損傷部・肺尖部の索状血管断裂が各 1 例ずつであった。肺切除術は 11 例に行われ、片
肺全摘が 3 例、肺葉切除が 3 例、部分切除が 5 例であった。死亡例は 13 例(50%)で、術中死は無かったが、DIC
を併発し出血のコンロトールがつかず術後 3 日以内に死亡した症例が 10 例あった。また、気胸の術後に肺炎から
ARDS となり、術後 28 日目に死亡した症例を 1 例認めた。大動脈損傷の 3 例はいずれも救命することが出来た。
胸部外傷以外に四肢・骨盤骨折や頭部・腹部内臓損傷等を伴った症例は 16 例で、そのうち 10 例が死亡した。救
命例と死亡例との比較では、総出血量が救命例の平均 2708ml に対し、死亡例では 7363ml と有意に多く、injury
severity score(ISS)も救命例の平均 25.1 に対し死亡例では 36.4 と有意に高かった。多発外傷を伴う大量血胸症
例の手術成績は満足のいくものではなく、治療戦略や手術法に更なる改善が必要と考えられた。
225
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
自動釘打ち機による鋭的心外傷の一例
P-02-2
教
1)済生会横浜市東部病院
育
福士 龍之介 1)、伊藤 努 1)、林 祥子 1)、高橋 辰郎 1)、飯田 奏功 1)、三角 隆彦 1)
講
演
【はじめに】自動釘打ち機は建築用工具として本邦でも普及し、それに伴い穿通性外傷の報告も増加しつつある。
米国疾病対策予防センターによると、米国では毎年 42,000 人が自動釘打ち機で負傷している。その殆どが四肢外傷
であり、
心外傷の報告は少ない。今回我々は自動釘打ち機による鋭的心外傷の症例を経験したので報告する。
【症例】
24 歳男性【主訴】胸痛【既往歴】Ⅰ型糖尿病【現病歴】作業中に誤って自動釘打ち機により前胸部を刺傷し、独歩に
て近医を受診した。対応困難にて当院に救急搬送となった。
【入院時現症】意識清明で体温 36.9℃、脈拍 115 回 / 分、
血圧 161/79 mmHg、SpO2 94%(room air)
。視診上、胸骨上の体表面に釘の頭を認めた。
【検査所見】心電図検査;
正常洞調律で、Ⅱ誘導にて ST 上昇を認めた。血液生化学検査;WBC 9120μ/l、CRP 0.52 mg/dl、HbA1c 8.4%。
胸部 Xp 検査;心拡大および胸水貯留を認めなかった。造影 CT 検査;釘が前胸部から胸骨を貫通しており、明ら
かな心タンポナーデ、出血所見を認めなかった。
【手術所見】全身麻酔下に釘を確認しながら、胸骨正中切開した。
損傷は胸腺静脈および、一部心外膜まで達しており、釘を抜去後、損傷部位を縫合した。10 L の生理食塩水で洗
浄し、ドレーンを留置、手術終了とした。術後経過は良好で、現時点で明らかな感染兆候を認めていない。
【考察】
鋭的心損傷は刺創が多く、心タンポナーデ、ショック症状を来さなかった本症例のようなケースは少ない。また鋭
的心損傷はバイタルサインの異常を来していることが多いが、そのような場合は経胸壁心エコー検査が有効である
とされているが、本症例では胸骨貫通性の外傷であるため、心エコーは必ずしも有効ではないと考えられた。本症
例では術前 3DCT 検査を施行することができ、損傷程度の把握に有効であった。
【結語】本邦において非常に稀な
自動釘打ち機による鋭的心外傷を救命した症例を経験した。損傷部位、程度の把握に 3DCT 検査が有用であった。
パネルディスカッション
シンポジウム
ワークショップ
連
緊急手術を要した自然血気胸の 1 例
演
題
P-02-3
シンポジウム
関 連 演 題
1)むつ総合病院 外科
吉田 達哉 1)、長谷部 達也 1)、山田 恭吾 1)、松浦 修 1)、橋爪 正 1)
ワークショップ
関 連 演 題
自然血気胸は自然気胸に稀に合併する疾患ではあるが、発症すれば急激に進行し重篤になりうる疾患である。
今回、診断後早期に止血術を施行し、良好な経過を辿った 1 例を報告する。症例は 42 歳男性。前日より左胸部に
違和感あり、翌日の朝から左胸背部痛と呼吸苦あり、当院救急外来を受診した。胸部単純 X 線で左肺の虚脱と軽
度胸水貯留を認め、12Fr アスピレーションキットを挿入し、血性胸水が引けたため、肋間動脈損傷を疑い造影
CT を施行した。左胸膜頂付近に extravasation を認め、アスピレーションキットからは 1350 ml の血性排液を認
めた。また、血圧低下を認めたため、同日緊急で胸腔鏡下手術を施行した。肺尖部に bulla と胸膜頂に破綻した
露出血管を認め、明らかな air leak を認めないため bulla は切除せずに、凝固止血を施行した。出血量は 2554 ml
であった。術後経過は良好であったが、bulla に対する根治術を本人が希望したため、術後 9 日目に近医呼吸器外
科へ転院となった。出血量が多い自然血気胸に対しては、早期に外科的治療を介入することが望ましいと考えら
れた。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
226
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
特発性血気胸の 3 例
P-02-4
1)社会医療法人近森会 近森病院 外科、2)社会医療法人近森会 近森病院 ER 科
3)社会医療法人近森会 近森病院 臨床研修部
辻 やよい 3)、井原 則之 2)、山本 彰 1)
【目的】自然気胸は日常的に遭遇することの多い疾患である。しかし、特発性血気胸となるとその頻度は自然気胸の
1-4% 程度と報告されている。特発性血気胸の手術適応については現在の基準は VATS が導入される前に提唱され
たものであり、VATS が普及した現在は手術適応の拡大を検討する時期であると思われる。特発性血気胸に対し当
院で手術を行った 3 例につき、手術時期について検討し今後の治療方針に生かしたい。【方法】2013 年に受診した
血気胸のうち、手術適応となった 3 例を検討した。【結果】症例 1は 50 歳男性。主訴は右胸痛・呼吸困難。右肺の
虚脱と胸水貯留を認め、胸腔ドレナージを行った。血性排液は少量で持続しなかったため保存的治療にて入院とし
たが、翌日朝から170 ml/h の血性排液を認めショックバイタルとなったため緊急手術となった。症例 2は 51 歳男性。
主訴は胸痛。右肺の虚脱と大量胸水を認め、胸腔ドレナージを行い1500 ml の血性排液を認めた。その後排液量は
減少したため保存的治療としたが、翌日の胸部 CTにて大量凝血塊を認めため緊急手術となった。症例 3は 41 歳男
性。主訴は呼吸困難。画像検査にて左肺の虚脱と少量の胸水貯留を認め、胸腔ドレナージを施行した。血性排液は
80 mlと少量であったが本人の希望により発症から4日後に手術となった。【考察】いずれの症例も胸腔ドレーンより
血性排液を認めた為に血胸が疑われ、入院後に手術となった症例である。血胸の緊急手術の適応は① 100-150 ml/
h 以上の血性排液②胸腔の大量凝血塊③ショック状態とされているが、ドレーン位置によって出血量と排液量が相
関しないこともあり、開胸するタイミングに苦慮する症例もある。VATSによるアプローチは短時間で胸腔内に到
達でき、出血部位として最も多い肺尖部の観察に優れるため、診断早期での手術適応に問題はないと思われる。自
然気胸を診断した場合は必ず血胸の可能性を考慮し、
血性排液を認めた時点で早期手術が考慮されるべきと考える。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-02-5
緊急開胸術にて止血した、転移性肋骨に伴う
大量血胸の1例
1)東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター
八木 雅幸 1)、村田 希吉 1)、鈴木 啓介 1)、園部 浩之 1)、藤江 聡 1)、牛澤 洋人 1)、加地 正人 1)、
大友 康裕 1)
【症例】77 歳女性。突然の背部痛にて他院救急搬送。大量血胸の診断で当院転院搬送となった。当院来院時、
vital sings は安定、意識も清明であった。前医で撮影された CT では左の大量血胸と、第 7 肋骨の腫瘍が認めら
れた。左腎臓に巨大な腫瘍がみられたため、腎癌の肋骨転移と思われた。 大量血胸にて縦隔が右方に偏位して
おり、緊急で左胸腔にトロッカーを挿入。貯留していた血液の噴出がみられた。胸部レントゲン上改善がみられ、
また、持続的な排液もみられなかったため、保存的加療の方針とし、集中治療室入室となった。しかし、徐々に
血圧の低下認め、胸部レントゲンを再検したところ、縦隔の偏位を伴う大量血胸が認められた。ドレナージ不良、
出血が持続しているものと判断し、トロッカーをさらに 1 本追加、レントゲン上改善を確認した上で、血管造影
を施行した。肋間動脈の造影にて腫瘍の膿染と、同部位からの造影剤漏出像が認められたため、肋間動脈と内
胸動脈に対して TAE を行った。その後 vital sings は安定したが、胸腔ドレーンからの排液は少量にも関わらず
徐々に進行する貧血を認めた。同日再度レントゲンを撮影したところ、再び縦隔偏位を伴う大量血胸が認められ
た。非手術的治療は限界と判断し、同日緊急手術を施行。右側臥位にて第 6 肋間側方開胸の方針とした。肋骨ま
で達すると、腫瘍が明らかであり、前後 2 cm 程度の肋骨ごと切除した。腫瘍の胸腔側で壁側胸膜が穿破しており、
同部位が出血の原因と考えられた。胸腔内の多量の凝血塊を除去し、
他に出血がないことを確認、
手術終了とした。
その後は出血を認めず経過した。【考察】大量血胸の原因として肋骨腫瘍は比較的まれであり報告した。TAE で
も出血コントロールがつかず、緊急開胸術にて腫瘍を切除することで止血を得た。
227
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
大動脈食道瘻に対する治療戦略
P-02-6
教
1)北海道大学 大学院 医学研究科 消化器外科学分野Ⅱ
育
本谷 康二 1)、七戸 俊明 1)、サシーム パウデル 1)、宮崎 大 1)、那須 裕也 1)、市之川 正臣 1)、
福田 直也 1)、米森 敦也 1)、金井 基錫 1)、倉島 庸 1)、海老原 裕磨 1)、村上 壮一 1)、中村 透 1)、
田本 英司 1)、土川 貴裕 1)、岡村 圭祐 1)、平野 聡 1)
講
演
パネルディスカッション
大動脈食道瘻は致命的な疾患であるが、近年ステントグラフト内挿術(TEVAR)の発達により、救命に成功
する症例が増加してきている。しかし、グラフト感染が必発であり、引き続き根治的手術が必要となる。通常、
根治術として再建を伴わない食道切除と唾液瘻造設、大動脈グラフト置換術、大網被覆による感染予防を同時、
または二期的に行い、さらに消化管再建術を行うが、初回手術で大網を使用した場合には胃管再建が困難となる。
そこで当科では、内視鏡外科手術の低侵襲性を生かした新たな治療戦略として、全身状態が良好な症例に対して
準緊急的に胸腔鏡下食道切除術・後縦隔胃管再建と大動脈置換・人工血管大網被覆術を一期的に施行しているの
で、紹介する。 症例:74 歳男性。旭川市内の病院で膀胱癌術後の MRSA 腎盂腎炎で入院治療中に上腹部痛・吐
血が出現。胸部 CT にて嚢状の胸部大動脈瘤を認め、ヘリコプターで札幌市内の病院に搬送され緊急で TEVAR
が施行された。翌日、上部消化管内視鏡で大動脈瘤の食道穿孔の所見を認め、感染性大動脈瘤、大動脈食道瘻の
診断で当院へ転院となった。全身状態は安定しており、耐術能があると判断したため転院翌日に(診断後 X 日)
手術を行った。手術は当院循環器外科と合同で胸腔鏡下食道切除・後縦隔胃管再建、下行大動脈瘤切除・人工血
管置換術・人工血管大網被覆術を施行した。術後経過は良好であり、合併症や感染の再燃等なく術後 43 日目に
退院となった。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-02-7
集学的治療により救命し得た腹部刺創による
腹部大動脈損傷の 1 例
シンポジウム
関 連 演 題
1)弘前大学医学部附属病院高度救命救急センター
2)弘前大学 大学院 医学研究科 胸部心臓血管外科学講座
3)青森県立中央病院 消化器外科
4)弘前大学 大学院 医学研究科 消化器外科学講座
ワークショップ
関 連 演 題
矢口 慎也 1)、伊藤 勝博 1)、吉田 仁 1)、花田 裕之 1)、近藤 慎浩 2)、福田 幾夫 2)、中井 款 3)、
袴田 健一 4)
一 般 演 題
患者:50 代女性
既往歴:うつ病
経過:自殺企図によりアイスピックで上腹部および頚部・前腕を受傷。上腹部にアイスピックが刺入した状態で
近医を経て当院へ救急搬送された。CT で明らかな胸腹腔内臓器損傷は認めなかったが、腹部大動脈に血管外漏
出像を認め、胸部心臓血管外科・消化器外科・整形外科合同で緊急手術となった。術中急激な血圧低下を認めた
が、腹部大動脈の 2 か所の穿孔部位および頚部・前腕を修復し手術を終了した。術後経過は良好で、全身状態安
定後に精神科転科となった。
結語:上腹部刺創では心大血管・胸腹腔内臓器損傷の可能性があり、本症例では集学的治療が奏功した。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
228
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-02-8
外科的に修復を試みた
腎下部下大静脈損傷の 1 例
1)東海大学 医学部 救命救急医学
佐藤 俊樹 1)、青木 弘道 1)、井上 茂亮 1)、大塚 洋幸 1)、中川 儀英 1)、猪口 貞樹 1)
[はじめに]下大静脈損傷は、受傷形態に関わらず致死率の高い疾患である。その中で、腎下部下大静脈損傷は、腎
上部の損傷に比し比較的予後良好とされる。しかし、外科的処置は必ずしも容易でなく、保存的加療が選択され
る場合も多い。その反面、再出血や静脈血栓、肺塞栓などが後に問題となる。今回我々は、腎下部下大静脈損傷
に対し、下大静脈を直接縫合・修復し良好な成績を得たので、若干の文献的考察を加えて報告する。
[症例]17 歳、
男性[現病歴]原付自動車を運転中、乗用車と接触し受傷。他院搬送となるが、腹部造影 CTにて肝損傷、右腎損
傷、下大静脈損傷と診断され、処置困難にて当院救命センター搬送となった。
[来院時現症]意識 GCS 4-5-6 血圧
120/66 mmHg 心拍数 86回 / 分 呼吸 24 回 / 分 SPO2 100%
(室内気)
左側腹部に圧痛
(+)
[前医造影 CT]肝左葉に
低吸収域認めるが明らかなextravasation
(-)
右腎周囲に血腫(+)
腎下部下大静脈周囲に血腫
(+)
[来院後経過]肝
損傷(Ⅰb)と右腎損傷(Ⅱ, H1)に関しては保存的経過観察とした。下大静脈造影を施行したところ、腎下部下大静
脈の総腸骨静脈分岐部直上にて、腹側に突出する仮性瘤様の陰影を認めた。バイタルサインは安定していたが、再
出血や後の血栓形成のリスクを考慮し下大静脈損傷に対し手術療法を選択した。
[手術所見]十二指腸を右側へ脱転
したところ、下大静脈周囲と右腎周囲の後腹膜に血腫を認めていた。右腎静脈下の下大静脈、左右総腸骨静脈、右
総腸骨動脈を確保した後、損傷部にアプローチ。総腸骨静脈分岐部直上の腎下部下大静脈に約 3 cm の損傷を認めて
おり、腹側へ憩室を形成していた。損傷部をサイドクランプし、4-0 モノフィラメント吸収糸にて縫合・止血を行った。
[術後経過]術後経過良好で、第 13 病日に軽快退院となった。退院後の造影 CT では、下大静脈修復部の狭窄や血栓
形成などは認めていない。
[結語]腎下部下大静脈損傷に対し、下大静脈を直接縫合・修復した症例を経験した。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-02-9
総腸骨静脈、外腸骨静脈損傷に対し、
経後腹膜的にアプローチした2例
1)国立病院機構 水戸医療センター 外科
2)国立病院機構 水戸医療センター 救命救急センター
石上 耕司 1, 2)、堤 悠介 1, 2)、土谷 飛鳥 1, 2)、安田 貢 2)、湯沢 賢司 1)、小泉 雅典 1)、植木 浜一 1)
【はじめに】鈍的外傷による総腸骨静脈、外腸骨静脈損傷に対しては、多臓器損傷の検索もあるため、開腹し腹
腔より後腹膜腔へアプローチすることもある。今回、われわれは CT 所見より、腹腔内損傷は否定的であったた
め、腸骨静脈損傷に対し、腹膜前組織より後腹膜腔へアプローチした 2 例を経験した。【症例 1】62 歳男性。本
人軽乗用車運転 vs 4 t トラックの正面衝突で受傷。右外腸骨静脈損傷、脳挫傷、気脳症、頭蓋底骨折、顔面骨骨
折、肋骨骨折、肺挫傷、右大腿骨開放骨折、右足関節開放骨折の診断であった。来院時ショック状態であり、手
術の方針とした。右下腹部弓状切開で腹膜前組織より、後腹膜腔へアプローチし縫合止血した。【症例 2】74 歳
女性。歩行中にうしろから 40 km/h の乗用車に衝突され受傷。左総・内・外腸骨静脈損傷、骨盤骨折、びまん性
軸索損傷、外傷性くも膜下出血、腰椎黄突起骨折、左右脛骨骨折の診断であった。来院時ショックであり手術の
方針とし、左下腹部傍腹直筋切開で同様に後腹膜腔にアプローチし縫合止血した。【考察】開腹せずに後腹膜腔
にアプローチするメリットとしては、①腸管が視野の妨げとならない。②損傷血管の中枢側、末梢側を確保しや
すい。③修復困難の場合、パッキングに移行できる。などが挙げられる。 デメリットとしては、①腹腔内損傷
を確認できない。②迅速にアプローチするには慣れが必要。といったことを考える。【結論】
この 2 例ではショッ
クを伴う腸骨静脈損傷に対し、比較的速やかに出血のコントロールが可能であった。このアプローチのメリット、
デメリット を踏まえ報告する。
229
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-02-10
生体腎移植後の静脈血栓除去後に広範囲
被膜下血腫を生じ緊急手術を要した 1 例
教
1)独立行政法人 国立病院機構 千葉東病院 外科
2)独立行政法人 国立病院機構 千葉東病院 臨床研究センター
3)千葉大学 大学院医学研究院 先端応用外科学
育
講
青山 博道1)、西郷 健一1)、長谷川 正行1)、圷 尚武1)、丸山 通広1)、大月 和宣1)、松本 育子1)、
野口 洋文 2)、浅野 武秀 1, 2)、松原 久裕 3)
演
パネルディスカッション
シンポジウム
症例は 23 歳女性。原疾患、低形成腎。透析導入前腎移植希望され当院受診。2013 年 10 月母をドナーとする生
体腎移植術施行。身長 145.3 cm・体重 31.7 kg と体が小さく、母親からの移植腎臓 173 g を収めるスペースはかな
り限られていた。手術終了後から尿の流出は少なく、1POD の US では to and flow パターンとなり、静脈血栓
が疑われ緊急手術となった。移植腎静脈と右外腸骨静脈吻合部の血栓を除去。腎収容スペースをより頭側に作成
し直し、吻合部も頭側に変更し再吻合。術後尿量増加を認めたが US 上移植腎被膜下に広範囲な被膜下血腫を認
めた。経時的に尿量の低下と被膜下血腫の増大を認めたため、2 回目の手術帰室 6 時間目に再々緊急手術を施行。
広範囲に及ぶ被膜下血腫を、被膜と一緒に除去しタコシールで被膜欠損部を被覆し閉創した。その後術後経過は
大きな問題なく 1 か月後 Cre 値 2.4 mg/dL で退院した。
体腎移植後静脈血栓を生じ、血栓除去後にさらに広範囲被膜下血腫を生じ血腫除去術を行い移植腎の廃絶を回
避した 1 例を経験した。若干の文献的考察を加え報告する。
ワークショップ
連
演
題
P-03-1
胸部外傷に伴う多発肋骨骨折に対する
手術治療についての検討
シンポジウム
関 連 演 題
1)神戸赤十字病院 呼吸器外科、2)兵庫県立淡路医療センター 外科
土井 健史 1)、荒瀬 裕己 2)、江里口 光太郎 2)、川嶋 太郎 2)、坂平 英樹 2)、松岡 英仁 2)、
小山 隆司 2)
ワークショップ
関 連 演 題
【はじめに】多発肋骨骨折に対する手術は呼吸機能や疼痛の改善目的に行うが、その適応や手術方法については
多くの報告がある。今回多発肋骨骨折に対して手術を行った症例について検討したので報告する。
【対象と方
法】2011 年 4 月より 2014 年 3 月の期間で、兵庫県立淡路医療センターで多発肋骨骨折を伴った胸部外傷に対して
手術加療を行った 5 例を対象とした。手術は骨折部の転移が大きい部分をその前後で切断し、切断部前後の距
離が短い場合は断端を 1 号吸収糸(vicryl)±吸収性肋骨ピン;ハイドロキシアパタイト含有ポリ L 乳酸接合ピン
(Super-FIXSORB:Ethicon Inc.,Somerville, NJ)により接合した。距離が遠い場合には骨折部の切断のみとした。
血胸を伴っていた症例には、同時に胸腔内洗浄・血腫除去も施行した。
【結果】手術を行った 5 例すべてで術後に
骨折部の疼痛は軽減し、数か月後にはほぼ消失した。特に 5 例のうち 1 例は受傷直後から数か月骨折部分の疼痛
が持続していたが、手術により骨折部の重なりを解除して疼痛が消失した。
【考察】胸部外傷に伴う多発肋骨骨
折症例の多くは保存的治療で治癒が得られる。しかし肋骨骨折の転位・骨折部の胸腔内嵌入は骨折部の疼痛遷延
や胸腔内臓器損傷を起こす原因となる。自例では肋骨骨折の転位が大きく骨膜同士が重なり合う部分に強い疼痛
が見られた。肋骨骨折部前後の肋骨を切除して骨片の重なりをなくすことは簡便な疼痛緩和処置であるが、吸収
糸や吸収性肋骨ピンを用いた接合固定は疼痛だけでなく胸郭安定性も比較的容易に改善する手段である。胸部外
傷の中でも、骨片による胸腔内臓器損傷が疑われる場合や骨膜同士が重なり合うような転位を伴う肋骨骨折に対
しては、遅発性血気胸の予防や疼痛コントロール目的での早期手術は有用と思われる。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
230
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-03-2
SternaLock を用いて安全かつ簡便に
固定できた胸骨骨折の 2 例
1)山梨県立中央病院 救命救急センター
木下 大輔 1)、池田 督司 1)、加藤 頼子 1)、大嶽 康介 1)、松本 学 1)、宮崎 善史 1)、小林 辰輔 1)、
井上 潤一 1)、岩瀬 史明 1)
【はじめに】胸骨骨折における観血的整復固定術の適応として、高度の転位や騎乗、呼吸時の高度な動揺、強い
疼痛、著しい変形がある。今回当施設において、胸骨に特化した plating system である SternaLock® を用いて安
全かつ簡便に固定できた 2 例を経験したので報告する。
【症例】① 66 歳女性。自動車 2 台による正面衝突事故に
て受傷。腸間膜損傷、不安定型骨盤骨折による出血性ショックで Dr.Heli にて当院搬送、緊急動脈塞栓術、緊急
開腹手術となった。胸骨骨折部に動揺及び換気不良を認めたため、第 7 病日に SternaLock®(プレートラダー型
小 12 穴)使用し固定した。第 60 病日リハビリ病院転院。② 44 歳男性。自動車単独事故にて受傷。脾損傷に対し
て緊急動脈塞栓術施行。胸骨骨折部の騎乗と疼痛が強かったため第 6 病日に SternaLock®(プレート X 型 8 穴)使
用して固定した。第 21 病日自宅退院。【考察】SternaLock® は安全性、簡便さという点で有用と言える。胸骨骨
折の観血的整復固定では、胸骨後面に心臓や大血管があり刺入前のドリリングの際の合併損傷に注意を図る必要
があった。SternaLock® のロッキングスクリューはドリリングが不要であり、直接手動で固定できるため second
cortex を貫いての合併損傷が少ない。骨折面を露出させ形状にあったプレート、スクリューを選択して手動で固
定するという手技の簡便さも特長の 1 つである。しかし、
SternaLock® を用いた当施設での経験はまだ 2 例であり、
長期間における骨癒合度合や他合併症など不明な点が多く、さらなる症例の集積が必要である。胸骨骨折観血的
整復固定におけるデバイスの 1 つとして SternaLock® について文献的考察を交え報告する。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-03-3
外科的切除を要した肺内血腫を伴う
両側肺挫傷の 1 例
1)手稲渓仁会病院 外科
田畑 佑希子 1)、加藤 弘明 1)、成田 吉明 1)、水沼 謙一 1)、荒木 謙太郎 1)、青木 泰孝 1)、
寺村 紘一 1)、今村 清隆 1)、齊藤 博紀 1)、高田 実 1)、安保 義恭 1)、中村 文隆 1)、樫村 暢一 1)、
松波 己 1)
肺損傷は、肺挫傷のみであれば保存的治に対処されるが、肺出血や肺内血腫を伴う場合、程度によっては外科
的治療を要し、術式も肺縫縮術や肺部分切除、葉切除などが選択される。本症例では両側肺挫傷、肺内血腫の診
断で保存的治療を開始し、追加画像でも同様の所見であったにも関わらず、一側は肺葉切除、他側は温存と異な
る転帰を余儀なくされた。初回画像所見の相違が重要と思われたので、肺損傷の手術適応や術式の選択、判断の
時期など外科的治療について考察する。
症例は 28 歳女性。6 階から転落し、当院へ救急搬送。JCS3、BP 118/58、HR 96、SpO2 100%(O2 10L 投与)。
不穏のため鎮静し、気管挿管。造影 CT で両側肺挫傷、肺内血腫、左第 1 肋骨骨折、骨盤骨折、右股関節脱臼、
C7 椎体骨折の診断。肺挫傷は右上葉と左下葉に強く、左下葉では extravasation を伴う肺内血腫を認めた。
骨盤骨折にもextravasationを認め、TAEを開始後、BP40台に低下。気管支鏡で右上葉支と左下葉支から出血を認
めた。特に左からの出血が多いため右片肺挿管とし、輸血も行い、血圧は上昇。CT 再検し、肺挫傷や肺内血腫に明
らかな進行はなく、保存的治療の方針とした。左用ダブルルーメンチューブに入れ替え、分離肺換気を開始し安定した。
その後も両側気管支から泡沫状血性痰が吸引され、深夜より血圧、SpO2 が不安定となり、輸血の追加や
PEEP・PC を高値にし維持したが、翌朝に SpO2 80 後半に低下。手術の方針とした。
分離肺換気にて手術室に入室。気管支鏡で右気管支からの出血はなく、左肺下葉切除術のみ行い、右肺上葉は
温存した。術後血圧は安定し、分離肺換気のまま帰室。手術翌日、シングルルーメンチューブに入れ替え、人工
呼吸管理を継続。術後 9 日目に抜管。車いす移動まで ADL が改善し、術後 22 日目に転院した。
231
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-03-4
胸部刺創に対する肺葉切除術後に
急性肺障害を合併した1救命例
教
1)藤田保健衛生大学 医学部 救命救急医学講座、2)藤田保健衛生大学 医学部 災害・外傷外科
3)藤田保健衛生大学 医学部 呼吸器外科、4)藤田保健衛生大学 医学部 総合外科・膵臓外科
育
講
安藤 雅規 1)、後長 孝佳 1)、栃井 大輔 3)、波柴 尉充 1)、富野 敦稔 2)、宮部 浩道 1)、須田 隆 3)、
加納 秀記 1)、津田 雅庸 1)、服部 友紀 1)、植西 憲達 1)、堀口 明彦 4)、平川 昭彦 2)、武山 直志 1)
演
パネルディスカッション
【背景】肺葉切除術施行後の急性肺障害は予後不良の合併症である。今回胸部刺創に対する肺葉切除術後急性肺
障害にステロイドパルス療法、遺伝子組み換えトロンボモジュリン(rTM)を併用したところ良好な転帰が得ら
れたため若干の文献的考察を加え報告する。
【症例】76 歳、男性。1 年前より躁うつ病にて通院加療をしていた。
自傷行為による左胸部・頸部の果物ナイフによる刺創にて救急搬送となった。造影 CT 施行したところ、左血気
胸、皮下気腫、果物ナイフは柄の部分まで胸腔内に達しており左の前胸部第 3-4 肋間より刺入し、第 6-7 肋間
背面方向に肋間筋を穿通していたものの、心臓の直接的な損傷を認めなかった。同日、緊急に胸腔内異物除去術・
肺葉切除術・止血術施行し人工呼吸器管理継続し救命 ICU 入室となった。出血量は約 3000 ml、術中及び術後に
RCC24 単位、FFP34 単位、PC20 単位の輸血を要した。術後経過は良好で第 3 病日に人工呼吸器から離脱した。
しかしながら第 14 病日に P/F が 88、CT 上間質性肺炎像を呈したため、再度人工呼吸器管理となった。肺葉切除
術後の急性肺障害の診断にてステロイドパルス療法、PMX-HDF、rTM、シベルスタットナトリウムを併用し加
療したところ呼吸状態は劇的に改善し第 18 病日には人工呼吸器を離脱し以後良好な経過をたどった。肺葉切除
術後重症急性肺障害に対しステロイドパルス療法、PMX-HDF、rTM、シベルスタットナトリウム併用療法は有
効であると考えられた。
シンポジウム
ワークショップ
連
外傷性横隔膜損傷の 2 例
演
題
P-03-5
シンポジウム
関 連 演 題
1)弘前大学大学院医学研究科 消化器外科学講座、2)黒石市国民健康保険 黒石病院 外科
3)山形県立河北病院 外科
一戸 大地2)、和嶋 直紀1)、木村 昭利1)、赤坂 治枝1)、久保 寛仁1)、室谷 隆裕1)、山名 大輔3)、
須藤 亜希子 1)、袴田 健一 1)
ワークショップ
関 連 演 題
症例 1:72 歳男性、主訴:前胸部痛。平成 25 年 12 月 20 時頃、対向車と衝突し受傷、近医へ搬送となり、X 線
で左胸腔内に胃泡を認め、左横隔膜損傷が疑われ当院紹介。来院時は安定しており、CT で左横隔膜損傷以外は
認めず、
翌日 17 時(受傷後約 21 時間)からの準緊急的に手術を施行。左横隔膜はベンツ状に断裂し、
胃が大網を伴っ
て左胸腔内へ滑脱した状態であり(日本外傷学会分類 IIIb
(lR2)
St, Om)
、
結節縫合で縫縮した。術後経過は良好で、
術後 7 日目に退院した。 症例 2:62 歳女性、主訴:胸部痛。平成 23 年 11 月 6 時頃、軽自動車で電信柱に衝突受
傷し、近医へ搬送。CT で外傷性左横隔膜損傷、多発肋骨骨折を認め、当院へ転院搬送されたが、全身状態は安
定していた。12 時頃左血胸を認めたが、左胸腔ドレナージでの血液は 60 mL 程度であった。15 時
(受傷後約 8 時間)
より準緊急的に手術を施行。左横隔膜裂創を認め、肝外側区域と胃が左胸腔内へ滑脱しており(日本外傷学会分
類 IIIb(lR2)L, St)、腹腔内へ整復後、結節縫合閉鎖を行った。その他の腹腔内損傷は認めず、術後経過は良好で、
術後 8 日目に退院した。外傷性横隔膜損傷は一般的に鈍的外傷の 0.8~7% と報告されており、鈍的外傷の中でも
比較的稀で、左側が右側に比べて多い。横隔膜損傷により腹腔内臓器が胸腔内に脱出し、心臓や肺を圧排するこ
とで、呼吸・循環動態が不安定になるが、本症例は安定しており、TRISS(Trauma and Injury Severity Score)
での予測生存率も 90%以上で、準緊急手術により治療しえた。外傷性横隔膜損傷について若干の文献的考察を
加え、報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
232
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
鈍的外傷による右横隔膜損傷の 2 例
P-03-6
1)藤沢市民病院 外科
2)藤沢市民病院 救急科
中堤 啓太 1)、山岸 茂 1)、高橋 弘毅 1)、中本 礼良 1)、押 正憲 1)、高橋 智昭 1)、本庄 優衣 1)、
渡辺 顕 1)、泉澤 祐介 1)、上田 倫夫 1)、仲野 明 1)、阿南 英明 2)
【はじめに】腹部外傷の中で横隔膜損傷は比較的稀である。左側単独損傷が多いと言われているが、我々は 2 例の
右横隔膜損傷を経験したので報告する。
【症例①】
60 歳男性。10 m の高さから墜落し受傷。来院時 vital sign は安定。
CT を含む精査にて、脳挫傷、両側肺挫傷、椎体骨折、左脛腓骨開放粉砕骨折の診断で入院し、下腿骨折に対し
て緊急手術を行った。入院 2 日目、胸部単純 Xp にて横隔膜の挙上あり、CT で、肝臓の胸腔への突出を認めた。
呼吸状態の悪化、胸水の増加を認め緊急手術施行。開腹にて横隔膜裂傷部を縫合した。術後経過良好で整形外科
転科となった。【症例②】46 歳男性。登山で滑落。CT で、肋骨骨折、両側肺挫傷、右横隔膜損傷、肝臓の胸腔
への突出を認めた。来院時、vital、呼吸状態ともに安定しており、保存療法の方針となった。入院後、呼吸状態
の悪化や、
画像上ヘルニアの悪化を認めず退院。受傷後 3 ヶ月の外来で横隔膜の挙上なく経過観察中である。【考
察】横隔膜損傷に対して開腹手術を勧める報告は多いが、
手術適応は明確に定まっていない。Vital sign が安定し、
症状もなく、画像所見上も経時的変化がない症例では、保存療法にて対応が可能との意見もある。これは肝臓に
よる損傷部位のタンポナーデ効果が理由の一つとして考えられる。今回我々は緊急手術症例と、保存的に良好な
経過を示した症例を経験した。外傷による右横隔膜損傷の治療について文献的考察を加え報告する。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
肝損傷Ⅲb を伴った右横隔膜損傷の一例
P-03-7
1)岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター、2)一宮市立市民病院 救急科
3)中京病院 皮膚科、4)順天堂大学医学部附属静岡病院 整形外科
加藤 久晶 1)、吉田 隆浩 1)、福田 哲也 1)、安田 立 1)、北川 雄一郎 1)、舘 正仁 1)、山田 法顕 1)、
名知 祥 1)、神田 倫秀 1)、橋本 孝治 1)、中野 通代 1)、吉田 省造 1)、熊田 恵介 1)、豊田 泉 1)、
白井 邦博 1, 2)、土井 智章 1, 2)、田中 義人 1, 3)、三宅 喬人 1, 4)、小倉 真治 1)
【症例】54 歳、男性【現病歴】乗用車運転中に他車が側面より衝突した。近医へ搬送され右横隔膜損傷を含む多発
外傷に対し人工呼吸管理され、第 2 病日、手術加療目的に当センターへ転院となった。【来院時現症】経口挿管、
右胸腔ドレナージ施行状態。ショックバイタルなし。血小板の軽度低値を認めるが著明な凝固機能障害なし。来
院時診断は右横隔膜損傷、右多発肋骨骨折(第 4-7)
、右肺挫傷、肝損傷(日本外傷学会分類 Ⅲb)
、骨盤骨折(部
分不安定型、AO 分類 B2)
、右両下腿骨開放骨折(Gustilo Ⅱ)、ISS41 であった。基礎疾患に糖尿病(インスリン
治療中)を認めた。【手術】右横隔膜損傷および右両下腿骨開放骨折に対して転院当日に手術治療を行った。術
前画像検査で肝右葉損傷部の胸腔内露出を認めたため、左側臥位、右第 5 肋間での開胸手術とした。右横隔膜ドー
ムは内側起始部から外側にかけて損傷し、損傷肝が胸腔内に露出していたが、肝損傷部には凝血塊が多量に付着
し活動性出血を認めなかった。また横隔膜の全層裂創は内側で心嚢損傷と連続していた(日本外傷学会分類は横
隔膜損傷 Ⅲ b(RR3)L、心損傷 Ⅰc)。3-0 バイクリルで心嚢を修復し、横隔膜は 2 -0 絹糸の単結節縫合で修復
した。閉胸後に仰臥位とし、右脛骨骨折に対して髄内釘を実施した。【術後経過】術翌日に自己抜管されたが、
横隔膜の虚脱を認めず再挿管は不要であった。肝損傷部に関しては肝 S8 に AP シャント、肝 A3 に外傷性解離を
認めたが経時的増悪を認めず保存的加療とした。その他術後経過は良好であり、第 29 病日に前医転院となった。
【考察】右横隔膜損傷では肝損傷の合併が懸念される。本症例も肝損傷部の胸腔内露出を認めたが、凝血塊付着
により止血されていた。受傷後早期に挿管、陽圧換気されたことも一助となった可能性がある。文献考察を交え
て報告する。
233
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
当科で経験した外傷性肝損傷手術症例の検討
P-04-1
教
1)金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科
育
杉本 優弥 1)、林 泰寛 1)、中沼 伸一 1)、牧野 勇 1)、中川原 寿俊 1)、尾山 勝信 1)、宮下 知治 1)、
田島 秀浩 1)、高村 博之 1)、二宮 致 1)、北川 裕久 1)、藤村 隆 1)、伏田 幸夫 1)、太田 哲生 1)
講
演
パネルディスカッション
(はじめに)外傷性肝損傷は致命的となり得る病態であるが、
近年積極的に非手術治療の有用性も報告されている。
その一方で緊急手術を要する症例も経験される。 (対象と方法)05 年 4 月から 14 年 3 月までに当科で経験した外
傷性肝損傷手術症例 12 例を対象として後ろ向きに検討を行った。 (結果)平均年齢は 35.5 歳(19~59 歳)、性別
は男性 8 例、女性 4 例であった。他臓器の合併損傷を有した症例は 5 例であった。損傷部位では右葉左葉の差は
無く、日本外傷学会肝損傷分類についてはⅢb 型が最も多く 7 例、次いでⅡ型が 4 例、Ⅲa 型が 1 例であった。死
亡例は Non responder の 2 例であり、肝上部下大静脈、右心房損傷を伴ったⅡ型肝損傷の 1 例、中および右肝静
脈根部に損傷が及んだⅢb 型肝損傷に対し拡大右肝切除を施行した 1 例であった。Responder および Transient
Responder の 10 例に対しては全例合併臓器損傷を含め、一期的に肝損傷部位の系統的切除術を施行し、救命し
得た。 (考察)外傷性肝損傷に対する手術加療は術前の状態を踏まえ、治療方針を決定する必要があり、特に必
要に応じて damage control surgery を考慮する必要があると考えられた。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-04-2
地方大学病院における外傷外科診療の現状:
肝・脾損傷への治療経験から
シンポジウム
関 連 演 題
1)福島県立医科大学 臓器再生外科
松井田 元 1)、穴澤 貴行 1)、見城 明 1)、木村 隆 1)、佐藤 哲 1)、佐藤 直哉 1)、菊池 智宏 1)、
後藤 満一 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【目的】地方大学病院においては、外傷外科が専門化され外傷センターが整備されている場合は少なく、腹部外
傷診療は主に消化器外科医が担当することが多い。しかし、外傷症例の減少や非手術治療の進歩により、外傷外
科修練を積む機会は限定されている。肝・脾損傷への治療経験から、当院での外傷外科診療の現状を把握し、課
題を考察することを目的とした。【対象】2004 年 6 月から 2014 年 5 月までの 10 年間に、肝または脾に損傷を認め
当科で緊急手術を必要とした症例を対象とした。搬送から 48 時間以内に死亡した症例を非救命例とし、治療成
績を検討した。【結果】16 例の肝損傷、9 例の脾損傷に対して緊急開腹術が行われた。1 例を除く全例で手術室搬
送後に開腹手術を施行した。1 例は救急室開腹を必要としたが救命し得た。4 例(25%)の肝損傷例、1 例(11%)
の脾損傷例が非救命例であった。肝損傷非救命例は全例Ⅲb 型肝損傷で、うち 1 例は当初Ⅲa 型損傷かつ初期輸液
に対する responder と判断し動脈塞栓術が先行された症例であった。非救命例は全例で damage control surgery
(DCS)として肝周囲パッキング術(PHP)が選択されていた。一方、PHP 施行後再手術して救命しえた例は 1 例
のみであった。脾損傷の非救命例は脾門部血管損傷およびⅢ b 型腎損傷を伴う複合型の外傷症例で、脾単独の損
傷は全例脾摘術が施行され救命し得た。【結論】肝・脾損傷では、特にⅢb 型肝損傷において非手術的治療の適
応を慎重に判断すべきである。また DCS を治療成績向上に寄与させるには適応判断と手術技術に加え ICU での
全身管理技術を理解した総合的な治療戦略の実践が必要と思われる。高度な判断力と治療技術を年間数例の経験
から維持する必要があり、他科・他職種とのカンファランスや他施設への研修といった方法による経験の共有が
必要であると思われた。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
234
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-04-3
Primary survey にて non-responder であった
鈍的腹部外傷の 1 手術例
1)三重大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科、2)三重大学医学部附属病院 救命救急センター
藤永 和寿1)、村田 泰洋1)、飯澤 祐介1)、種村 彰洋1)、加藤 宏之1)、安積 良紀1)、栗山 直久1)、
岸和田 昌之 1)、水野 修吾 1)、臼井 正信 1)、櫻井 洋至 1)、今井 寛 2)、伊佐地 秀司 1)
今回われわれは、鈍的腹部外傷 non-responder に対して緊急開腹手術を行い、救命しえた 1 例を経験したた
め報告する。症例は 67 歳男性。トラクター運転中に側道に転落した際に、腹部を打撲し当院 ER へ搬送された。
Primary survey ではショックバイタルで、初期輸液療法に non-responder であった。FAST では Morrison 窩・
脾周囲に液体貯留を認めたため、輸血療法でもバイタルは安定せず、腹腔内出血・出血性ショックの診断で緊
急試験開腹術となった。腹腔内の検索では、肝外側区域(S3)・後区域(S6)の裂創、第 1・2 空腸動静脈の断裂、
中結腸動脈末梢の断裂を認めた。また膵頭部周囲に血腫を認めたが被膜外への出血はなく、脾損傷も認めなかっ
た。肝損傷に対しては断面の凝固止血・裂創の縫合閉鎖を、第 1・2 空腸動静脈、中結腸動脈の損傷に対しては
血流不全の認める空腸・横行結腸の部分切除・吻合を施行した。手術時間は 4 時間 29 分、
出血量は 2318 ml であった。
ICU 帰室後、Secondary survey として全身造影 CT を施行した。膵頭部背側から後腹膜に血腫・extravasation
が疑われたため緊急 AAG を施行したが、明らかな extravasation はなくバイタルも安定していたため保存的加
療とした。その後は後腹膜血腫の圧迫による十二指腸水平脚の通過障害を認めたが、血腫ドレナージ等により
改善し、術後 92 日目に退院となった。重症腹部外傷の出血性ショック症例に対する救命戦略は重要であり、本
症例は外傷初期診療ガイドライン JATECTM で示されている対応を実践することで救命が可能であった。Nonresponder 症例のため、造影 CT など出血部位の評価ができないまま試験開腹となり、術後後腹膜血腫により在
院期間が長期化したが、Trauma Surgery としては評価できると考えられた。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
肝嚢胞破裂を伴った肝損傷Ⅲa(HV)の一例
P-04-4
1)兵庫医科大学 救急・災害医学講座
坂田 寛之 1)、西村 健 1)、山田 勇 1)、小谷 穣治 1)
【背景】肝嚢胞破裂を合併した肝損傷を検討した報告は見当たらないが術中に解剖学的な推察が困難と思われる。
今回、腹部外傷による肝嚢胞破裂を合併した肝損傷Ⅲa(HV)に対し、Damage Control Surgery(以下 DCS)と
してガーゼパッキングを、Definitive Surgery(以下 DS)として肝縫合止血術を行い救命した。
【症例】特に既往
のない 64 歳男性。軽自動車運転中に誤って電柱に激突・後続車に衝突され腹部をハンドルで打撲した。腹痛・
血圧低下があり救急搬送となった。来院時、血圧:80/50 mmHg だったが初期輸液療法に反応を示した。その他
バイタルサインの異常は無かったが、FAST 陽性(脾周囲・モリソン窩)であり造影 CT 検査で肝嚢胞破裂を認め、
肝嚢胞破裂合併の肝損傷Ⅲ(HV)と診断した。緊急開腹した所、右葉に裂創があり、破裂した肝嚢胞と肝損傷部
の区別が難しかったが、出血部位は嚢胞の後方で下大静脈前方の肝組織と思われた。プリングル法にて冠動脈と
門脈系血流を遮断しても尚出血が持続した為肝静脈系損傷がある判断し、嚢胞と思われる空洞・三角筋膜を切り
込んだ後に肝周囲に DCS としてガーゼパッキングを行った。輸血治療等で凝固系を立ち上げ、第 3 病日に DS と
して再開腹した所、破裂嚢胞のガーゼパッキングは有効でありその後方の右肝静脈の損傷部位が同定できた為、
これを縫合修復し、止血を完了し、肝縫合を加えて手術を終了した。術後は特に合併症を認めず、第 21 病日に
独歩退院となった。【考察】肝嚢胞破裂合併の肝損傷では前記の通り報告例が稀であり治療に難渋する。今回は
通常の外傷手術戦略に従い、DCS にて全身状態の改善を待ち DS にて根本治療を行い改善を得た事から、大きな
肝嚢胞破裂合併時の肝損傷Ⅲa(HV)に対しても、嚢胞内のパッキングを加える等の工夫は必要だが、通常の手
術戦略が有効と考えられた。
235
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-04-5
開腹したまま TAE を行い救命した
肝刺創の1例
教
1)八戸市立市民病院 救命救急センター
育
長谷川 将嗣1)、昆 祐理1)、野田頭 達也1)、今野 慎吾1)、千葉 大1)、濱館 香葉1)、河野 慶一1)、
木村 健介1)、軽米 寿之1)、吉村 有矢1)、丸橋 孝昭1)、近藤 英史1)、角田 洋平1)、山内 洋介1)、
和田 浩太郎 1)、貫和 亮太 1)、大野 彰子 1)、勝田 賢 1)、藤田 健亮 1)、村田 信也 1)、今 明秀 1)
講
演
パネルディスカッション
【症例】34 歳男性
【受傷機転】自宅で第三者に右季肋部、右上腕を刺されて受傷。
【来院時現症】BP134/82 mmHg、HR98 bpm、RR 24 回 / 分、SpO 299(10 L/min リザーバー付きマスク O2 投与)。
Primary Survey では ABCDE 問題なし。右季肋部に約 4cm の刺創あり、同部位から明らかな air leak や活動性出
血は無かった。
【来院後経過】来院時の造影 CT で、腹腔内遊離ガス像と肝損傷Ⅲa を認めたため、手術室で緊急開腹術を行っ
た。手術中、肝損傷部からの出血コントロールが困難となり、肝門部をサテンスキー鉗子で遮断し、開腹したま
ま血管撮影室に移動し TAE を行った。CT 所見から責任血管と考えられた中肝動脈を造影したところ造影剤の
漏出を認めたため、同部位を 4 倍希釈の NBCA で塞栓した。その後手術室に戻り直視下で止血を確認し、Open
abdominal management で管理した。手術翌日にも止血されていることを改めて確認し、閉腹した。明らかな合
併症無く、術後 15 日で自宅に独歩退院となった。
【考察】外傷出血に対する物理的止血方法として手術と IVR があげられるが、その二つは相補的なものでなけれ
ばならない。本症例では手術室に IVR 担当医が同行し、血管撮影室に外科医が同行することで、流動的な状況
下でも、議論しながら止血戦略を臨機応変に変更し、迅速な止血につなげることができた。
【まとめ】開腹したまま TAE を行い止血し得た肝刺創の一例を経験したため報告する。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-04-6
肝上部下大静脈刺傷に対して
緊急修復術を行い救命した一例
シンポジウム
関 連 演 題
1)福岡徳洲会病院 外科、2)福岡徳洲会病院 心臓血管外科、3)福岡徳洲会病院 集中治療部
田中 敬太 1)、川元 俊二 1)、梅本 覚司 1)、岡本 辰也 1)、前野 博 1)、村上 卓夫 1)、麓 英征 2)、
江田 陽一 3)
ワークショップ
関 連 演 題
症例は 23 歳男性。同僚と口論になり刃渡り約 20 cm の包丁で右前胸部を刺され当院救急搬送となった。来院時
意識は清明、血圧 116/94 mmHg 脈拍 81 回 / 分 SpO2 99%(酸素 10 L)呼吸数 24 回 / 分 体温 36.6 度 HgB
値 14.0 g/dl であった。右第 5-6 肋間鎖骨中線上を刺入部として右前胸部に包丁が刺さっていた。胸部 Xp、胸
腹部 CT 検査で右肺損傷、肝損傷、下大静脈損傷が疑われ当院搬入 1 時間後に手術室へ搬入し緊急手術を行った。
Right Diagonal approach で開胸開腹した。包丁は S8 肝実質のドーム部を切離し、肝上部下大静脈右壁を貫通
し、脊椎の右側面に刺さっていた。肝門部、肝下部下大静脈、心膜切開後胸部下大静脈をそれぞれテーピング
した後 Total vascular exclusion 下に包丁を抜去した。肝上部下大静脈壁に径 30㎜大の損傷を認めた。同部を 4-0
PROLENE にて over and over continuous suture にて縫合閉鎖した。また S8 の肝実質切傷部は右肝静脈の分枝
を 4-0 PROLENE で修復し、1-0 PDS にてマットレス縫合し縫宿した。肺は下葉に 2 箇所損傷部を認め縫合止血
した。脊椎損傷部は電気メスとアンビルオキセル綿で止血した。出血量は 7500 ml、術中 MAP6 単位、FFP6 単
位投与し血液回収濾過装置で 3520 ml 返血した。術後 2 日目に人工呼吸器を離脱し、術後 5 日目より食事を開始し
た。術後 40 日目に退院とし、術後 4 か月大きな合併症なく経過している。
本症例は異物として鋭器が大血管を貫通した症例で、完全な vascular control 下に鋭器を安全に抜去し、損傷
部を縫合修復し救命した一例である。本症例に関する画像、術中所見を供覧しながら若干の文献的考察を交えて
発表する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
236
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-04-7
川崎病後遺症による冠動脈巨大瘤を有した
外傷性肝損傷の一例
1)福島県立医科大学 医学部 臓器再生外科、2)福島県立医科大学 医学部 小児科
清水 裕史 1)、見城 明 1)、穴澤 貴行 1)、木村 隆 1)、石井 証 1)、山下 方俊 1)、伊勢 一哉 1)、
青柳 良倫 2)、桃井 伸緒 2)、細矢 光亮 2)、後藤 満一 1)
【はじめに】肝損傷の外傷機転は多岐にわたり、基礎疾患を有する場合は治療に難渋する。今回我々は、川崎病
後遺症による冠動脈巨大瘤を有する外傷性肝損傷の一例を経験したので報告する。【症例】9 歳、男児。5 歳時に
川崎病を発症し、発症 7 ヶ月後に冠動脈巨大瘤(LAD 径 8.9 mm)を発見され抗凝固療法を施行中だった。来院 2
日前に高所より転落し、更に来院当日腹部を打撲した後に腹痛が生じ、当院救急搬送された。血圧 70/36、心拍
数 162/ 分、右上腹部に圧痛と膨満を呈しヘモグロビン値 6.7 であった。造影 CT 検査では肝後区域のⅢa 型損傷
が疑われた。同部位に extravasation を認めたが、末梢域であったため選択的な肝動脈塞栓術は困難と判断され
た。来院時 PT INR は 3.16 で自然止血は期待出来ず、また小児科主治医より抗凝固療法長期中断による心筋梗塞
のリスクが示唆され、開腹止血術を選択した。ケイツー投与に加え、FFP を持続投与しながら手術を開始した。
上腹部正中切開にて開腹し肝損傷部を観察すると、後腹膜との付着部付近に被膜下血腫認め被膜損傷部から静脈
性出血を生じていた。損傷部を開大し血腫を除去すると、肝裂傷は認めずⅠ型損傷と判断した。同部位をソフト
凝固にて焼灼し、タコシールR貼付にて止血を得て手術終了した。術後経過は良好で出血は認めなかった。抗凝
固療法としては術後 58 時間(PT INR 1.0)にヘパリン投与が開始された。術後 6 日(同 0.8)に術前同様の抗凝固
薬内服を併用し、術後 10 日(同 1.3)に退院となった。
【考察】外傷性肝損傷Ⅰ型の多くは止血を見込み経過観察
されるが、抗凝固療法施行中の場合には例外である。抗凝固療法中断の可能期間や予想される合併症の重篤度は
症例に応じて様々であり、原疾患の担当科を含めたチームで病態の把握を共有し、時機を逸せず治療に臨むべき
である。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-04-8
Non-operative management で軽快した巨大
被膜下血腫を呈した外傷性Ⅰb 型肝損傷の 1 例
1)聖マリアンナ医科大学 消化器・一般外科、2)聖マリアンナ医科大学 救急医学
井田 圭亮 1)、小泉 哲 1)、葛西 亨 1)、森 修三 1)、瀬上 航平、星野 博之 1)、片山 真史 1)、
小林 慎二郎 1)、平 泰彦 2)、大坪 毅人 1)
緒言:本邦で汎用されている日本外傷学会臓器損傷分類におけるⅠ型肝損傷とは肝被膜の連続性が保たれており、基
本的に保存的治療が可能な損傷形態であるとされ、循環動態が脅かされるほどの巨大血腫を呈した報告は少ない。症
例:30 代、女性。夫と口論になり腹部を殴打され受傷。様子を見ていたが、翌日になり腹痛が増強したため前医受診。
CT 検査の結果、肝被膜下に血腫を認め、外傷性肝損傷Ⅰb 型と診断。循環動態が安定していたため保存的加療の方
針となっていた。しかし、
翌第 2 病日に貧血の進行を認め、
循環動態が不安定となり、
当院へ緊急搬送となった。来院時、
意識清明だが血圧は80 台で推移していた。CT 検査で、肝被膜下に巨大な血腫を認め、前医での画像よりも増大して
いた。緊急血管造影を施行。を明らかな造影剤のExtra vasationは認めなかったが、右下横隔膜動脈、後区域枝(A7)
に不整な濃染像を認めたため、同部位に血管損傷の可能性あり、同部の塞栓術を施行した。絶対安静のうえ集中治療
室へ入院となった。第 2 病日、第 4 病日にCT 検査を行うも血腫は増大傾向を示し、貧血も進行した。開腹止血も考慮
したが、血腫は巨大であるが皮膜下に限局しており、手術に伴う大量出血のリスクを考慮した上で被膜と肝実質によ
る圧迫止血効果を期待し保存的経過観察を継続とした。第 5 病日以降は貧血の進行なく、第11病日、第 21病日に施行
したCT 検査でも血腫は徐々に縮小。その後も経過良好で第 57 病日に軽快退院となった。考察:外傷性肝損傷は損傷
形態と初期輸液療法に対する反応から、治療方針を決定することが推奨されている。即ち、本症例の様に肝被膜が保
たれ、初期輸液に対する反応が Responderである場合には前述した損傷形態を問わず非手術的治療(Non-operative
management;NOM)は可能である。今回、我々はNon-operative management で軽快した巨大被膜化血腫を呈した
外傷性Ⅰb 型肝損傷の1例を経験したので、文献学的考察と、当院での肝損傷治療の治療指針を加え報告する。
237
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-04-9
肝内門脈末梢枝の裂傷に対して経皮経肝
アプローチで門脈塞栓術を施行した 1 例
教
1)日本医科大学 放射線医学、2)日本医科大学 救急医学、3)日本医科大学武蔵小杉病院 血管内・低侵襲治療センター
育
嶺 貴彦 1)、村田 智 1)、小野澤 志郎 1)、山口 英宣 1)、杉原 史恵 1)、安井 大祐 1)、池田 慎平 2)、
金 史恵 2)、新井 正徳 2)、横田 裕行 2)、汲田 伸一郎 1)、田島 廣之 3)
講
演
パネルディスカッション
【症例】66 歳女性、交通外傷。来院時 vital: GCS E3V5M6、BP 88/77 mmHg、HR 70 bpm。FAST 陽性。造影 CT
にて右下横隔動脈からの造影剤血管外漏出像と後腹膜血腫が認められた。また肝右葉後区域に軽度の裂傷と肝内
門脈後区域枝末梢から連続する造影剤血管外漏出像が認められ、腹腔内血腫を伴っていた。緊急 IVR を選択し、
まず右下横隔動脈造影にて認められた多量の出血に対して N-Butyl cyanoacrylate(NBCA)を用いた動脈塞栓術
を施行した。次いで経上腸間膜動脈的門脈造影にて右葉後区域枝の活動性出血像を確認の上、経皮経肝ルートで
門脈にアプローチし、3 本の損傷分枝を選択して NBCA を用いた塞栓術を行った。治療後、速やかな循環安定が
得られた。引き続き行った開腹血腫除去の際に肝裏面に僅かな裂傷が確認されたが、出血は制御されていた。そ
の他、肝部下大静脈損傷も認められたが、保存的に治癒し得た。経過は良好であり、第 32 病日に独歩退院となっ
た。現在外来経過観察中である。【考察】肝損傷に対する IVR は動脈性出血制御に役立つが、門脈性あるいは静
脈性出血に対しては、towel packing などの外科的止血術が通常第一選択とされる。本症例で軽微な肝裂傷にも
関わらず、多量の門脈性出血が見られていたが、複数箇所に限局した領域からの出血であることが CT にて確認
されていた。また、先行した下横隔膜動脈の塞栓により循環が比較的安定していた状態であった。以上の状況か
ら IVR による門脈アプローチが安全に施行可能であると判断された。良好な治療効果が得られ、治療オプショ
ンのひとつとなりえることが示唆された。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-04-10
経皮的針肝生検後の肝損傷に対する止血に
難渋した 1 例
シンポジウム
関 連 演 題
1)自治医科大学 移植外科、2)自治医科大学 消化器外科、3)自治医科大学 放射線科
岡田 憲樹 1)、浦橋 泰然 1)、井原 欣幸 1)、眞田 幸弘 1)、山田 直也 1)、平田 雄大 1)、河合 陽 3)、
中田 学 3)、仲澤 聖則 3)、安田 是和 2)、水田 耕一 1)
ワークショップ
関 連 演 題
背景:経皮的針肝生検は、種々の肝臓病変の診断に有用な検査であるが、一方で侵襲的な検査であるため、合併
症を生じるリスクがある。今回、我々は乳児に対する経皮的針肝生検を施行し、肝損傷を来し、その止血に難渋
した 1 例を経験したので報告する。症例:5 ヶ月、男児、体重 3.6 kg。重症複合型免疫不全症、母体由来 T 細胞に
よる GVHD のため胆管消失症候群となり、その評価目的に超音波ガイド下に太さ 16 G ストローク長 22 mm の生
検針を用い肝生検を行った。生検後 30 分間圧迫止血し、
止血を確認し、
ガーゼ圧迫とした。生検 3 時間後に頻呼吸、
血圧低下を認め、超音波検査にて腹腔内液体貯留を認め、
針肝生検による出血を疑い緊急開腹術を行った。開腹時、
生検針刺入部は止血されていたが、肝前区域に裂傷を認め、縫合止血し終了したが、その後も循環動態は安定せず、
出血コントロール不良と判断し、血管造影検査を施行した。肝動脈内側区域枝からの出血が疑われたため、左肝
動脈を塞栓したが、その後も貧血が進行し、また腹部コンパートメント症候群となり、2 回目の緊急開腹術を行っ
た。再開腹時、肝後区域に新たな裂傷を認め、縫合止血し、閉腹困難であったため、ゴアテックスシートを用い
て閉創した。しかし、その後も循環動態は不安定であり、腹腔ドレーンから血性腹水を認めたため、再度血管造
影検査を施行し、肝動脈右前上区域枝からの出血を認め、肝動脈前区域枝を塞栓し、血圧の安定を確認し終了し
た。その後は循環動態安定し、止血することができた。術後は 4 回の血漿交換を必要とし、術後 13 日目に腹部皮
膚閉鎖を行った。その後、重症複合型免疫不全症に対し臍帯血移植を行った。また、血腫部が膿瘍となったため、
術後 5 ヶ月時に超音波ガイド下肝内膿瘍穿刺術を行った。結語:経皮的針肝生検後の肝内出血は動脈性であるこ
とが多く、血管造影検査を施行し、出血部位を特定することが有用である。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
238
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-05-1
当センターにおける脾損傷に対する
手術治療成績の検討
1)岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター、2)一宮市立市民病院 救急科、3)中京病院 皮膚科
中野 志保1)、白井 邦博2)、福田 哲也1)、安田 立1)、北川 雄一郎1)、鈴木 浩大1)、田中 義人3)、
加藤 久晶 1)、吉田 隆浩 1)、豊田 泉 1)、小倉 真治 1)
【はじめに】脾損傷の止血には TAE(Transcatheter arterial embolization)が有用であり、
近年、
非手術療法(NOM:
Non-operative management)が選択されることが多く、手術を必要とする症例は少数である。当院の脾損傷に
対する治療方針は、循環動態が安定していれば NOM を行い、不安定であれば開腹手術を選択する。
【対象と方法】
2006 年 4 月から 2013 年 12 月に当院救命救急センターに入院した鈍的外傷による脾損傷症例 43 例のうち、脾摘術
を施行した 7 例(16.3%)を対象とし、retrospective に検討した。
【結果】年齢は 66 歳(30-76)で男性 4 例、
女性 3 例、
ISS48(33~57)、受傷機転は交通事故が 5 例(71.4%)
、転落が 2 例(28.6%)であった。全例他部位の臓器損傷を
合併しており、多発外傷は 6 例(85.7%)
、来院時ショック症例も 6 例(85.7%)であった。脾損傷分類は IIIb 型が
6 例(85.7%)で、うち 4 例で脾門部血管損傷を合併していた。1 例のみⅡ型であったが、脾動脈本幹の損傷を認
めた。緊急で開腹、脾摘術を行った 4 例のうち、2 例は術後他部位の損傷に対して TAE を施行した。3 例はまず
脾臓および他部位からの出血に対して TAE を施行し、循環動態不安定、ACS の合併、膵断裂合併を理由に手術
に移行した。死亡は 2 例で、死因は 1 例が頭部外傷、1 例は胸部外傷による出血であった。
【結語】循環動態が不
安定な症例では、CT や TAE に移動することなく、直ちに開腹手術を行う必要があるが、多発外傷例が多いため、
他臓器の合併損傷、止血の優先順位を総合的に考慮し、治療方針を決定する必要がある。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
当科における外傷性脾損傷の検討
P-05-2
1)金沢医科大学 一般・消化器外科学
藤田 純 1)、上田 順彦 1)、三浦 聖子 1)、森岡 絵美 1)、甲斐田 大資 1)、大野 由夏子 1)、
富田 泰斗 1)、大西 敏雄 1)、野口 美樹 1)、舟木 洋 1)、藤田 秀人 1)、木南 伸一 1)、中野 泰治 1)、
小坂 健夫 1)
【はじめに】外傷性脾損傷に対する治療は以前は緊急手術が第 1 選択であったが、近年急速輸液等で Vital が保た
れる場合は保存的加療も選択されるようになってきた。しかしながら緊急手術例も保存的加療例も種々の病態の
症例が含まれており治療法選択に難渋することが多い。【目的】当院で経験した外傷性脾損傷例を見直し治療上
の問題点を明らかにした。
【対象】2001 年 1 月~2013 年 12 月の間に当科で経験した外傷性脾損傷 21 例を対象とし
た。
【結果】①外傷機転:交通外傷 13 例、転倒・転落 6 例、打撲 2 例。②緊急手術例(11 例):貧血の進行または
Vital の低下を認めた症例であり、他臓器損傷を伴うものは 8 例であった。脾損傷分類Ⅲ以上は 9 例であり、Ⅱ以
下の 2 例は脾門部損傷を伴う 1 例と肝損傷を伴う 1 例であった。③保存的加療から開始した症例と遅発性に発症
した症例(10 例):経過観察のみ(肝損傷に対して TAE 施行例 2 例含む)は 5 例、手術へ移行した症例は 4 例、遅
発性脾破裂に対して TAE を行ったのは 1 例であった。手術移行例の内 2 例は、経過観察中(受傷後約 10 時間と約
2 日)に Vital 低下と貧血進行を認めた為手術がなされた。別の 2 例は受傷後約 6 日で遅発性に貧血進行を認めた
症例と、受傷後約 4 ヶ月半で脾内血腫と腹壁血腫による食欲低下・体重減少を認めた症例であった。TAE を行っ
た遅発性脾破裂(Ⅲb)の 1 例は、肝硬変の既往と血小板減少を認め手術施行困難であった為、計 4 回の TAE を
施行した。④予後:緊急手術施行した内 2 例は失ったが、その他保存的加療例も含み全例救命した。
【まとめ】緊
急手術例は、外傷性脾損傷分類Ⅲ以上であることが多く、Vital の低下、貧血の進行、他臓器損傷合併を伴った
症例が多くを占めた。保存的加療を試みた症例でも手術に移行する症例や遅発性脾破裂例もある為、短期的・中
期的に経過を観察することが必要である。
239
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-05-3
異なる経過をたどった
外傷性脾損傷Ⅲb 型の 2 症例
教
1)多根総合病院 急性腹症科・外科
育
北野 翔一 1)、城田 哲哉 1)、金森 浩平 1)、清水 将来 1)、奥野 潤 1)、山口 拓也 1)、廣岡 紀文 1)、
林原 紀明 1)、森 琢児 1)、小川 稔 1)、小川 淳宏 1)、門脇 隆敏 1)、渡瀬 誠 1)、刀山 五郎 1)、
丹羽 英記 1)
講
演
パネルディスカッション
【はじめに】近年、外傷性実質臓器損傷の中で循環動態の安定した症例に対する初期治療は非手術治療が標準的
治療となりつつあるが、施設の設備や体制の影響が大きい。また脾臓を温存することはリンパ組織としての免疫
機能や脾摘後重症感染症の予防に有用である。今回、当院において保存的加療を行った 2 例の外傷性脾損傷Ⅲ b
を検討し、外傷性脾損傷に対する治療戦略について考察したので報告する。
【症例 1】20 歳男性、ダンベルで左側
腹部を強打し救急搬送。バイタルサインは安定していたため造影 CT 検査を行ったところ脾損傷を認め日本外傷
学会脾損傷分類ではⅢb 型であった。血管外漏出や仮性動脈瘤を認めず全身状態が安定していたため、保存的加
療を行った。第 12 病日の造影 CT 検査にて増悪を認めなかったため食事を開始し、第 16 病日に退院となった。
【症例 2】44 歳男性、自転車のハンドルで左側腹部を強打し救急搬送。バイタルサインは安定していたため造影
CT 検査と腹部血管造影を行ったところ脾損傷を認めⅢb 型であった。血管外漏出や仮性動脈瘤を認めず、血行
動態が安定していたため保存的加療を行ったが、安静を守れず、さらに早期の経口摂取を希望したため第 4 病
日より食事開始となった。第 6 病日、歩行中に失神し血液検査と腹部 CT にて再出血を認め再度絶食安静管理を
要した。その後、経過良好であった。【考察】当院における治療方針として、①初期輸液療法に反応しない nonresponder 症例には緊急手術の適応としている。② transient responder 症例に対しては TAE または手術の適応
を考慮する。③血行動態が安定または responder 症例は造影 CT や腹部血管造影を行い血管外漏出や仮性動脈瘤
を評価し、TAE や保存的加療を考慮する。今回経験した 2 例から保存的加療を行う際は適切な絶食期間と厳重
な安静管理が重要である可能性が示唆された。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-05-4
腹腔内出血に対して大動脈遮断バルーンを
使用し、根治的緊急止血術を行った 2 例
シンポジウム
関 連 演 題
1)大分大学医学部付属病院 高度救命救急センター
2)大分大学医学部付属病院 消化器・小児外科
3)大分大学
田邉 三思 1)、柴田 智隆 1, 2)、野口 剛 2)、平塚 孝宏 1, 2)、赤木 智徳 1, 2)、岩下 幸雄 2)、
石井 圭亮 1)、猪俣 雅史 2)、北野 正剛 3)
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
外傷初療において積極的に大動脈遮断バルーンカテーテル(intra-aortic balloon occlusion:以下 IABO)を使
用した 2 例を経験したので報告する。症例 1 は、59 歳、男性。交通外傷で当院搬送となった。脾損傷により腹腔
内出血を認め、緊急開腹止血術を要するが、循環動態不安定であり、救急外来で手術施行とした。術前に IABO
を挿入し、術前から止血完了まで循環動態安定させることができた。症例 2 は、70 歳、女性。交通外傷で当院搬
送となった。腸管損傷に伴う腹腔内出血を認め緊急開腹止血手術を行う方針とした。IABO を予防的に挿入した
後に手術施行し、術中に持続する出血により循環動態不安定となったが、大動脈遮断により安定化させ手術を終
了できた。両症例とも IABO が循環動態安定化に有用であった。2 例の症例を踏まえて腹腔内出血例に対する早
期 IABO 使用の有効性について考察する。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
240
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-05-5
小児の外傷性脾損傷に対して開腹止血術を
施行した1例
1)沖縄県立八重山病院
島垣 智成 1)、田中 浩登 1)、田邊 太郎 1)、山本 孝夫 1)、尾崎 信弘 1)、本竹 秀光 1)
はじめに:脾臓は腹部鈍的外傷の中でも肝臓や腎臓とともに損傷頻度の高い臓器である。今回小児の外傷性脾損
傷の 1 例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。 症例:7 歳男児。ホテルの 3 階から転落し受傷。来院
時意識清明でバイタルサイン安定。身体所見上、左上腹部に圧痛と反跳痛、筋性防御を認めた。造影 CT でⅢa 型
外傷性脾損傷と診断。脾動脈造影で血管外漏出像は認めず、選択的 TAE は施行せず。その後も腹膜刺激徴候は
続き、腸管損傷、腸間膜損傷を疑い開腹手術を施行。脾臓に 3 ヶ所の被膜損傷及び出血を認め、止血剤を貼付け
止血を得た。他の腹腔内臓器損傷は認めず手術終了。術後 7 日目に造影 CT 撮影し、仮性動脈瘤や腹水貯留がな
いことを確認し退院となった。 考察:外傷性脾損傷は腹部外傷の 30%程度に認める頻度の高い疾患である。脾
損傷の治療は、従来脾臓摘出術が一般的であったが、摘出後に易感染性から敗血症となるリスクがあり、脾摘後
重症感染症が認識され、小児から成人においても出来るだけ温存する方向にある。治療方針の決定には全身状態、
腹部エコー、造影 CT により判断される。ショックバイタルで、腹部エコーで腹腔内出血を確認し手術適応を決
めるか、造影 CT での脾臓の損傷形態により、手術か TAE を選択する必要がある。自験例では、脾動脈造影で
も血管外漏出像は認めなかったが、腹膜刺激徴候が続き、腸管損傷、腸間膜損傷の可能性を疑い手術を選択した。
結語:小児の外傷性脾損傷の 1 例を経験した。身体所見、バイタルサイン、造影 CT、合併損傷などを総合的に
判断し、診断、治療を行う事が重要である。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-05-6
当院における外傷性腸管・腸間膜損傷に
対する手術症例の検討
1)帯広厚生病院 外科
加藤 航平 1)、大野 耕一 1)、梅本 一史 1)、鈴木 友啓 1)、武藤 潤 1)、やまむら 喜之 1)、
中西 喜嗣 1)、吉岡 達也 1)、村川 力彦 1)、大竹 節之 1)
【はじめに】外傷性腸管・腸間膜損傷では診断に難渋し、遅れて発見されることも少なくない。今回我々は当院
における腸管・腸間膜損傷の手術症例について検討した。【方法】2004 年 4 月から 2013 年 3 月までに腸管・腸間
膜損傷に対して手術を行った症例について、受傷同日に手術を行った群(E 群)と翌日以降に手術を行った群(D
群)に分けて、手術年齢、性別、受傷起点、損傷部位、ISS、術式、合併症、入院期間、転帰について調査した。
【結果】調査期間中に腸管・腸間膜損傷に対して手術を行った症例は 36 例で、E 群 26 例 D 群 10 例であった。平均
年齢 E 群 vs D 群: 51.2 ± 21.3 才 vs 28.9 ± 18.8 才 , p<0.01)と入院期間(20 ± 13 vs 51.3 ± 48.4, p=0.03)
、十二指
腸損傷の有無
(3 vs 4, p=0.05)に有意差を認めた。その他性別、
ISS、
合併症、
死亡率には有意差を認めなかった。
【結
論】来院からの腸管・腸間膜損傷の診断治療の遅延は若年と十二指腸損傷で多く見られ、入院期間が延長してい
た。DPL、内視鏡的アプローチを含めて腸管・腸間膜損傷の診断治療戦略を考察する。
241
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
鈍的外傷による腸管穿孔症例の検討
P-05-7
教
1)徳島県立中央病院 救急科
2)徳島県立中央病院 外科
育
講
大村 健史 1, 2)、三村 誠二 1)、森下 敦司 2)、森 勇人 2)、松下 健太 2)、河北 直也 2)、
川下 陽一郎 2)、宮谷 知彦 2)、井川 浩一 2)、広瀬 敏幸 2)、倉立 真志 2)、八木 淑之 2)
演
パネルディスカッション
対象・方法:2012 年 1 月から 2014 年 5 月までの 2 年 5 か月間に、当院を受診し鈍的外傷による腸管穿孔と診断さ
れた 12 例について検討を行った。結果:12 例の内わけは男性 7 例、女性 5 例となっており、平均年齢は 42(18-
73)歳、平均 BMI は 20.9 であった。腹部手術歴のあるものは 2 例であった。受傷原因としては四輪車乗車中の交
通事故によるものが 9 例と最も多く(75%)、全例が運転手で全例受傷時シートベルトを着用しており(エアバッ
グ作動は 8 例)
、うち 7 例に腹部シートベルト痕を認めた。11 例で他部位損傷を認め、腹部(腸管以外)8 例、四
肢 6 例の順であった。ISS 15 点以上の重傷症例が 8 例(平均 ISS は 18.4)であった。病院到着時ショックになって
いたものは 2 例(17%)で、ともに腸間膜損傷合併による腹腔内出血が原因であった。診断においては来院時腹
部所見がないか軽微で、その後腹膜炎症状を呈した、いわゆる遅発性穿孔と考えられたものが 3 例(25%)あった。
初診時 11 例に CT が撮影されていたが、4 例(36%)で free air を認めなかった(遅発性穿孔を除くと 9 例中 2 例)。
治療としては全例に開腹手術が行われた。単発の腸管穿孔は 4 例しかなく、残り 8 例は多発損傷であった。転帰
では死亡例はなく、全例軽快退院した。考察・まとめ:本研究では、腸管穿孔とシートベルトの強い関連が示唆
された。Free air が出現しない症例や時間が経ってから穿孔する症例もあり、診断にあたっては慎重な判断、対
応が必要である。腸管損傷は多発する傾向にあり、手術の際見落とさないよう注意すべきである。
シンポジウム
ワークショップ
連
遅発性腸管損傷のピットフォール
演
題
P-05-8
シンポジウム
関 連 演 題
1)山梨県立中央病院 救命救急センター
大嶽 康介 1)、木下 大輔 1)、池田 督司 1)、加藤 頼子 1)、松本 学 1)、宮崎 善史 1)、小林 辰輔 1)、
井上 潤一 1)、岩瀬 史明 1)
ワークショップ
関 連 演 題
(背景)遅発性腸管損傷は比較的まれではあるが、外傷診療におけるピットフォールとなりやすい。受傷機転・
腹部所見・画像検査などを含めた総合的判断が求められる。特に腹部単独外傷では帰宅の可否、外来フォローの
必要性も含め、慎重な判断が必要であり、救急医をはじめとした診察者側にもストレスがかかる場合も多い。当
施設で経験した発症時間の違う遅発性腸管損傷症例を通して診療上のピットフォールを考察する。
(症例)① 76 歳、女性、交通外傷。受傷時、前胸部痛と骨盤部痛を訴えていたが、CT 上、有意な所見なく、一
旦帰宅となった。3 日後に左下腹部の痛みを訴え来院。CT 上、後腹膜の free air を認め、緊急手術。下行結腸穿
孔の診断で切除・再建術を行った。30POD 退院。② 75 歳、女性、交通外傷。受傷時、腹部の圧痛は認めたが、
反跳痛は認めなかった。CT 上も有意な所見なく、一旦帰宅。受傷約 6 時間後に嘔吐症状あり。受傷約 9 時間後
に当センター再受診、消化管穿孔と診断され、小腸穿孔修復術を行った。39POD 退院。
(考察)当センターの症例においても初診時の身体所見や検査所見、画像診断では腸管損傷の所見が無くとも、
ある程度時間が経って消化管穿孔を認めるものがあった。また、多発外傷である場合は、画像上の所見がはっき
りしない場合に腸管損傷へのフォローが希薄になる場合もある。外傷機転、臨床的症状を十分考慮に入れて診断、
治療、外来でのフォローに当たらねばならない。特に腹部所見が出現しにくい高齢者腹部外傷には注意が必要で
ある。
(結語)腹部所見の取りにくい高齢者や多発外傷患者では、来院時の画像診断ではっきりとした所見が無くとも
腸管損傷が遅れて出現することもあるので、厳重なフォローが必要である。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
242
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
鈍的外傷による大腸損傷の 3 例
P-05-9
1)北九州市立八幡病院 救命救急センター 外科
山吉 隆友 1)、岡本 好司 1)、木戸川 秀生 1)、小山 正三朗 1)、桝屋 隆太 1)、田口 健蔵 1)、
野口 純也 1)、新山 新 1)、井上 征雄 1)、澤田 貴裕 1)、伊藤 重彦 1)
【目的】鈍的外傷による大腸損傷症例を検討した。
【対象】2003 年 1 月から 2014 年 3 月までに当院において施行し
た鈍的外傷による緊急開腹手術 27 例中、大腸損傷による 3 例を対象とした。【症例】症例 1:28 歳、男性。自動
車運転中歩道に乗り上げ横転し受傷。腹部 CT にて腹腔内遊離ガスを認め同日緊急手術施行。横行結腸中央部お
よびバウヒン弁より約 40 cm 口側の回腸に穿孔を認め、大腸はトリミングのうえ単純縫合閉鎖し回腸の穿孔部で
人工肛門を造設。術後は敗血症性ショックおよび急性腎不全に対し PMX、CHDF を施行、さらに一過性に腸閉
塞を発症したが保存的に改善し術後 35 日目に退院。 症例 2:40 歳、男性。作業中バックするトラックと壁の間
に挟まれ受傷しショックの状態で搬送。腹部 CT にて腹腔内出血の所見を認め同日緊急手術施行。S 状結腸間膜、
小腸間膜に損傷があり後腹膜血腫を来し、S 状結腸に著しい獎膜損傷と回腸に 2 ヵ所の穿孔を認めそれぞれ部分
切除を施行。術後経過は良好で術後 20 日目に退院。 症例 3:72 歳、男性。歩行中の転倒にて腹部を打撲、同日
の診察では異常を認めなかったが受傷 4 日後に腹痛の自覚と増悪を認め受診。CT にて腹腔内遊離ガスを認め緊
急手術を施行。直腸 S 状部に穿孔を認め周囲に小腸が癒着した状態で直腸高位前方切除を施行。術後経過は良好
で術後 16 日目に退院。【考察】鈍的腹部外傷による腸管損傷は小腸での報告が多く大腸の穿孔は比較的稀である。
腹部所見は出血と腹膜炎に起因した所見に分けられ通常早期に症状が出現し症例 1. 2 の如く来院直後に診断確定
し手術に至る場合も多いが、損傷の程度が軽微である場合症例 3 の如く時間の経過と共に糞便汚染による腹膜炎
を徐々に生じることもある。鈍的腹部外傷症例では、腹膜刺激症状と発熱、白血球増多、CRP などの増悪に十
分注意を払い経時的に経過観察を行うことが重要である。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-05-10
バス事故による 2 点式シートベルト外傷にて
多発性腸管損傷を来した 1 例
1)金沢大学 消化器・乳腺・移植再生外科
櫻井 健太郎 1)、木下 淳 1)、廣瀬 淳史 1)、渡邉 利史 1)、柄田 智也 1)、中沼 伸一 1)、
岡本 浩一 1)、酒井 清祥 1)、牧野 勇 1)、中村 慶史 1)、林 泰寛 1)、尾山 勝信 1)、
中川原 寿俊1)、宮下 知治1)、田島 秀浩1)、高村 博之1)、二宮 致1)、北川 裕久1)、伏田 幸男1)、
藤村 隆 1)、太田 哲夫 1)
症例は 32 歳男性。福島から福井への高速バスに乗客として搭乗中、パーキングエリア内に停車中のトラック
に衝突して受傷した。受傷時は、腹痛、腰痛にて歩行困難であり、トリアージにて赤タグとなり、当院に救急搬
送となった。搬送時プレショック状態であり、下腹部に 2 点式シートベルトによると思われる擦過傷をみとめた。
腹部所見では下腹部全体に著名な圧痛と筋性防御を認めた。CT 上、腸間膜損傷に伴う腹腔内出血と腰椎 L4 椎体
に骨折を認め止血目的に緊急手術となった。術中所見では腹直筋の断裂と、腹腔内は約 2 L の血性腹水および小
腸、小腸間膜、S 状結腸、結腸間膜がシートベルトに沿うような形態で損傷していた。腸管は穿孔を認めないも
のの、損傷部位の漿膜が全周性に欠損し、近傍の腸間膜は断裂、裂開し、同部位の損傷血管から活動性の出血を
伴っていた。間膜の血管の止血と修復を行い、小腸部分切除を 2 か所、S 状結腸部分切除を1か所施行した。術
後は腰椎骨折の加療のため、早期離床は不可能であったが、腰椎骨折に関しては保存的化療の方針となった。術
後 15 日目にコルセットが完成し、経過良好にて術後 23 日目に退院となった。シートベルト外傷において 3 点式
シートベルトでは胸郭損傷と頸椎損傷の報告が多い。一方で 2 点式では腹部臓器損傷が多く,腰椎損傷を合併す
る頻度が高いという報告があり,その理由として衝突の際,圧力が骨盤帯、体幹下部に集中するためといわれて
いる。今回の症例は 2 点式シートベルト外傷による典型的な病態を呈した症例と考えられた。
243
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
当院で経験した頸部貫通刺創の 1 例
P-06-1
教
1)独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター
育
佐尾山 裕生 1)、西村 哲郎 1)、家城 洋平 1)、田原 憲一 1)、定光 大海 1)
講
演
【症例】76 歳男性
【現病歴】2014 年第 1 病日昼頃、自殺目的に自宅で右頸部を錐で突き刺した。夕方に家人が帰宅し横たわってい
る本人を発見し救急要請、当院救命救急センターへ搬送となった。
【入院時現症】搬送時、意識、呼吸、循環は安定していたが外表上、心拍にあわせて錐の柄部分が拍動している
状態であった。FAST では心嚢液の貯留を認めた。
【入院後経過】全身麻酔下に経口挿管、人工呼吸管理とし画像精査を行った。頸部~体幹部造影 CT では頚部損傷
として ZONE Ⅰであり、大動脈弓周囲および縦隔心嚢に高吸収域の液体貯溜を認めた。また頸部全面に皮下気
種を認めた。当院心臓血管外科と協議し、大血管損傷の可能性も否定できないことから胸骨正中での開胸術を選
択した。術中所見では明らかな大血管損傷は認めなかったが、一部心膜損傷があり、それによる心嚢液貯留と考
えられた。錐の先端は左総頚動脈の直前まで到達していた。直視下に錐を緩徐に抜去したが、明らかな出血は認
めず左胸腔、心嚢縦隔内にドレーンを留置し閉胸した。術後経過は良好であり、第 17 病日に精神科的加療目的
に転院となった。
【考察】頚部損傷はその損傷部位(ZONE)により検査や外科的アプローチが異なる。本症例は ZONE Ⅰの損傷で
あり、胸部大血管領域に及んでいるため胸骨正中切開による開胸術を選択した。※術中 VIDEO 動画とともに症
例を呈示し、問題点を検討したい。
パネルディスカッション
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-06-2
自殺目的で剪定鋏による頚部刺創につき、気管挿管下に
洗浄ドレナージ術を行い、良好な経過をたどった1例
シンポジウム
関 連 演 題
1)岩手県立磐井病院救急医療科、2)岩手県立磐井病院形成外科、3)岩手県立磐井病院呼吸器科
志賀 光二郎 1)、木島 玲緒人 1)、山名 浩樹 1)、原 幸司 1)、新井 雪彦 2)、駒木 裕一 3)、
片山 貴晶 1)、中村 紳 1)、加藤 博孝 1)
ワークショップ
関 連 演 題
32 歳の男性。自殺目的に 6 m の高さの橋から増水している川に飛び降り後に自力歩行で農家の錆びた剪定鋏で
右頸部を刺し、目撃した通行人が救急要請。【Primary Survey】A:開通 B:RR 23/ 分、右頸部軽度腫脹。 C:
BP 144/86 mmHg、HR 87/ 分、創部から活動性出血なし。 D:JCS1。 E:右頸部に約 2 cm の刺創 2 カ所、約
1cm が 2 対。砂利付着。【Secndary Survey】頭頸部 CT にて咽頭後壁外側、
頚椎前面の軟部組織に達する air あり。
気道や食道の断裂なし。【治療戦略】ER で緊急で頚部の他臓器損傷の検索(Neck Exploration)を試み、手術室
で洗浄ドレナージ術の方針とした。創部から Neck Exploration を試みて間もなく、活動性の出血がみられ、3-
0 絹糸で結紮止血し、外来手術を終了。頚部の他臓器損傷の検索も含め、気管挿管の上、手術室に入室。皮切は
創を含む様に、縫縮を見込み、紡錘形に行った。展開していくと、右外頚静脈の上断端を確認、4-0 絹糸で結
紮した。ER にて 3-0 絹糸で結紮した血管が外頚静脈の下断端と判明、外傷性右外頚静脈損傷もありと判断。広
頚筋を鈍的に剥離し、電気メスで切離。径 7~8 mm 程度の穿孔部位が数カ所確認され、深さは最低 6~7 cm 程度
あり。また砂利が散在し、これを鑷子で丁寧に除去。創の最深点を含む様に、皮下・軟部組織を一塊にして摘出。
5 L の生食で洗浄。その際、気道損傷や食道損傷を疑うエアリークなし。他の血管損傷もみられず、止血を確認。
ペンローズドレーンを挿入し終了。再出血や今後の感染による腫脹を鑑み、気管挿管のまま帰室。【術後経過】
再出血、感染なきことを十分確認できた術後 6 日目に気管チューブを抜管、術後 7 日目にドレーン抜去。術後 11
日目にかかりつけの精神科病院へ独歩転院。その後も出血、感染なし。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
244
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-06-3
当院における頚部・胸部・腹部鋭的外傷の
症例について
1)岩手県立宮古病院 外科
菅原 俊道 1)、八重樫 瑞典 1)、石川 徹 1)、坂下 伸夫 1)
地域中核病院において、鈍的外傷に比べると重症の鋭的外傷症例を診療する機会は多くはない。今回は、我々
が経験した 8 例の全身麻酔下での一般外科的な治療を要した頚部・胸部・腹部鋭的外傷症例について報告する。
症例は 2005 年から 2013 年の 9 年間で 8 例。男 5 例、女 3 例、平均年齢 49.5 歳、自傷が 5 例でそのうち以前からの
精神疾患の合併が 3 例、不慮の事故が 3 例であった。受傷部位は頚部 2 例、胸部 1 例、腹部 5 例であった。頚部の
1症例は交通事故で受傷し、隣に乗っていた友人が出血部位を圧迫。救急隊、医師と手を変えて圧迫したまま手
術室に入室し麻酔導入して手術施行。内頸静脈を損傷しており結紮止血した。胸部の 1 症例は夫婦喧嘩の後、発
作的に包丁で左胸を刺して受傷。左血気胸を認めショック状態であったため創部に尿道バルーンを挿入して圧迫
止血しつつ緊急手術施行、左内胸動脈の損傷であった。腹部の症例は 5 例のうち 4 例が刃物で自分の腹を刺した
自殺企図で、腎損傷、肝損傷、小腸損傷などの症例があった。事故で腹部受傷した 1 症例は、学生で牧場実習の
際に牛の角で左鼠径部を刺されて受傷。CT にて腹腔内出血を認めたため緊急手術施行したところ左内腸骨静脈
の損傷であった。重症の鋭的外傷症例の重症度診断は精神疾患合併も多く、症状がはっきりせず難しい場合も多
いが、予想より創が深いことが多く躊躇せず外科的治療を進める必要があると思われる。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-06-4
ネイルガン自傷による
穿通性頭部・腹部外傷の 1 例
1)札幌東徳洲会病院外科
2)北海道大学病院先進急性期医療センター
向井 信貴 1)、前島 拓 1)、王 利明 1)、深堀 晋 1)、笠井 章次 1)、南 盛一 1)、吉川 大太郎 1)、
唐崎 秀則 1)、澤村 淳 2)、河野 透 1)、北川 真吾 1)、丸藤 哲 2)
ネイルガン(自動釘打ち機)による穿通性外傷は事故によるものが大半だが、自傷や他傷も報告されている。
今回、自殺目的にネイルガンで頭部と腹部に釘を打ち込んだ症例に対し、十分な解剖学的精査と神経学的評価を
行いながら摘出計画を立てることにより、救命し得ただけでなく大きな合併症なく経過した 1 例を経験。【症例】
40 歳代男性、意識障害・発語障害・腹痛で他院を緊急受診するも、頭蓋内に 3 本、腹腔内に 1 本の釘が埋入して
いることが判明し紹介受診。解剖学的・神経学的に十分な精査・評価や感染管理などを行いながら摘出計画を立
案。摘出術後は意思疎通可能で、重篤な神経学的後遺症・痙攣・感染症・出血などなく経過した。他の類似症例
報告を含め、文献的考察を加えて報告する。
245
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
鈍的腹部外傷による総胆管完全断裂の一例
P-06-5
教
1)独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院 救急科
育
松浦 裕司 1)、大須賀 章倫 1)、黒木 雄一 1)、中島 紳史 1)、宮尾 大樹 1)、大熊 正剛 1)、
大西 伸也 1)、上山 昌史 1)
講
演
パネルディスカッション
症例は 19 歳女性。軽自動車運転中に、正面からガードレールに衝突して受傷した。シートベルトの装着はなし。
エアバックは作動していた。搬入時、腹痛と嘔吐があり、血圧 110/71 mmHg、脈拍 66 回 / 分、SpO2 100%(O2
10 L リザーバーマスク)
、GCS は E4V5M6 であった。腹部造影 CT では、脊椎側弯症の手術歴があり金属ボルト
による artifact で評価は困難であったが、膵頭部を中心に造影不良域があり、膵損傷が疑われた。また、肝には
表在性損傷(Ⅱ型)があり、少量の腹腔内貯留液を認めたが、造影剤の血管外漏出像は指摘できなかった。MRI、
MRCP では主膵管、総胆管は描出されず、保存的加療の方針となった。第 2 病日の CT では、腹腔内貯留液が軽
度増加していたが、腹部の圧痛は軽度で、腹膜刺激症状はなく経過観察を続けた。その後、症状は改善傾向であっ
たため、第 7 病日より経口摂取を開始したところ、徐々に腹部膨満が増強し、第 10 病日の腹部 CT にて腹腔内貯
留液が著明に増量していた。腹水穿刺では胆汁様腹水であった。MRCP 、ERCP では主膵管の損傷がないこと
が確認されたが、下部胆管は描出されなかった。DIC-CT にて下部胆管損傷が確認され、第 14 病日に胆管の減圧
ドレナージ目的に手術を施行した。腹腔鏡下に胆嚢摘出後、術中胆道造影を行うと下部胆管から造影剤の漏出を
認め、漏出部より尾側の胆管は造影されなかった。色素の注入でも同様の所見であり、開腹に移行し詳細に確認
したところ、色素漏出部が総胆管断裂部の断端と診断した。尾側胆管は膵内にあり同定できなかった。胆管空腸
吻合、洗浄ドレナージを施行し、手術終了とした。術後経過は良好で第 26 病日に退院となった。
鈍的腹部外傷による総胆管損傷は全腹部外傷の 1 % 未満と稀であり、特異的な身体所見、画像所見に乏しく、
診断が遅れことがあるとされる。稀な疾患を経験したので報告する。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-06-6
外傷性十二指腸破裂術後の難治性瘻孔に対し、
希釈トロンビン法によるフィブリン糊充填療法が奏効した1例
シンポジウム
関 連 演 題
1)市立函館病院 消化器外科
常俊 雄介 1)、澤野 武行 1)、笠島 浩行 1)、原 豊 1)、砂原 正男 1)、倉内 宣明 1)、遠山 茂 1)、
木村 純 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【はじめに】外傷性十二指腸穿孔は腹部外傷の数%から 10%程度と報告される比較的稀な疾患である。本症に対
する治療、特に手術については損傷程度、部位を考慮した種々の術式が行われているが、術後合併症として縫合
不全、その後の難治性瘻孔の治療に難渋することがある。フィブリン糊による瘻孔閉鎖法は多数報告されている
が、特にトロンビンを希釈することで凝固時間を延長させ、より確実に薬剤を瘻孔に行き渡らせることができ
る。今回我々は、本法が奏効した 1 例を経験したので報告する。
【症例】82 歳男性。3 ヶ月前に下部直腸癌に対し、
腹腔鏡補助下内括約筋切除、予防的回腸人工肛門造設術を施行。pStage Ⅱにて経過観察中、また十二指腸潰瘍
の既往にて H2blocker 内服中であった。自室にて転倒し、その 4 時間後に急激な腹痛が出現し救急搬送。到着時
既にショック状態で腹部は板状硬であった。初期輸液に反応したため精査を行い、Hgb6.5 ならびに CT にて上腹
部中心に free air と液体貯留を認めたため、上部消化管穿孔の疑いで緊急手術を施行した。腹腔内に多量の血腫
を認め、十二指腸下行脚が潰瘍瘢痕化した後壁を残しほぼ離断した状態であった(dⅡa(D2)
)
。胃幽門部~口側
十二指腸断端を切除、肛門側断端は二層に縫合閉鎖、Roux-Y 法にて再建した。切除標本病理は潰瘍瘢痕の所見
のみであった。術後 4 日目のドレーン排液中アミラーゼ値が上昇し、6 日目より排液が胆汁色となり十二指腸縫
合閉鎖部の縫合不全と判断。ドレーンを十二指腸瘻化し、縫合不全の局所化には成功した。しかしドレーン排液
が 500-1000 ml/ 日と減少せず、自然瘻孔閉鎖は困難と判断。術後 35 日目にドレーンから 20 倍希釈したトロンビ
ンとフィブリノーゲンの混合液を注入し、瘻孔の完全閉鎖を認め治癒した。本法は確実に瘻孔を閉鎖させるのに
有効と考えられた。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
246
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-06-7
エアーガン(圧搾空気)による
大腸穿孔の 1 例
1)鹿児島徳洲会病院
中村 彰 1)、梯 昭彦 1)、飯田 信也 1)
エアーガン(圧搾空気)は、塗装や、洗車、洗車後の水滴を除去するのに使用されるが、今回われわれは、エアー
ガンによる大腸穿孔例を経験したので報告する。症例は 39 歳男性、仕事中同僚に作業着の上からエアーガンを
肛門に当てられ、空気を入れられた。その後、腹痛、腹部膨満が出現し、近医受診し、腹部 CT で多量の free air
を認めたため、消化管穿孔の疑いで当院に救急搬送された。強い腹痛、腹部の緊満を認め、腹部 CT では大量の
free air、S 状結腸に浮腫状の壁肥厚と一部に血腫を疑わせる高濃度領域、骨盤内に血性腹水を認めた。緊急手
術を行い、S状結腸に 5 cm 大の穿孔を認め、腸管は広範囲に奨膜筋層の断裂を認め、薄い紙状に挫滅していた。
瞬間的に大量の空気が腸管内に流入し、腸管破裂を起こしたものと考えられた。ハルトマン手術を施行した。術
後経過は順調で術後 24 日目に退院した。2 ヶ月後に人工肛門閉鎖術を施行した。圧搾空気使用者と医療従事者は、
圧搾空気の使用によって、重大な合併症が起こりうることを十分認識する必要がある。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
直腸損傷に対する腹腔鏡手術の経験
P-06-8
1)市立堺病院救急外科、2)市立堺病院外科
蛯原 健 1)、臼井 章浩 1)、西 秀美 1)、天野 浩司 1)、加藤 文崇 1)、中田 健 2)、森田 正則 1)、
中田 康城 1)、木村 豊 2)、大里 浩樹 2)、横田 順一朗 1)
直腸損傷では腹腔内臓器損傷の確認、修復、排便・排尿経路の変更が必要になることが多い。腹腔鏡を用いて
診断、人工肛門造設、ドレナージ術を施行した症例を 2 例経験したので文献的考察も含め報告する。【症例 1】80
歳男性。
「孫の手」の上に座り込み受傷した。腹部造影 CT 検査にて直腸から経前立腺的に膀胱内へ造影剤の血管
外漏出像を認めた。止血、診断、人工肛門造設目的で緊急手術を行った。砕石位にて直腸の損傷部を確認し、縫
合並びに圧迫止血を行った。続いて腹腔鏡で腹腔内を観察したところ腹膜の破綻や腹腔内臓器損傷は認めなかっ
た。後腹膜腔は血腫が透見できる状態であった。S 状結腸の剥離が困難であったため回腸ループ式人工肛門を造
設した。膀胱直腸瘻に対して尿道バルーン留置を行った。術後 111 日目に瘻孔閉鎖を確認し尿道バルーンを抜
去した。術後 128 日目に人工肛門閉鎖術を行った。【症例 2】79 歳男性。浣腸後の発熱、腹痛を主訴に来院した。
腹部造影 CT 検査にて後腹膜に遊離ガス像を認めた。診断、人工肛門造設目的に緊急手術を行った。腹腔鏡で腹
腔内を観察したところ腹膜の破綻は認めなかった。黄色混濁した腹水を認めるも明らかな便汁は認めなかった。
後腹膜腔は便汁色に変色していた。腹腔内を洗浄しダグラス窩にドレーンを留置したのちS状結腸ループ式人工
肛門を造設した。また直腸に損傷部を認めたため同部から後腹膜腔にドレナージチューブを留置した。術後 3 ヶ
月で人工肛門閉鎖術を行う予定である。 両症例とも vital が安定しており腹腔鏡手術を行うこととした。直腸損
傷に対する腹腔鏡の使用経験の報告は少ない。会陰部を介した直腸損傷では損傷経路が予測され、骨盤腔内中心
の検索となり腹腔鏡での観察は有用である。また人工肛門造設も腹腔鏡を用いることで低侵襲に行うことができ、
有用な手段と考えられる。
247
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-06-9
Pseudo-renal failure を呈した
外傷性膀胱破裂の 1 例
教
1)土浦協同病院 外科
育
漆畑 直 1)、春木 茂男 1)、赤須 雅文 1)、田嶋 哲也 1)、高山 渉 1)、松永 浩子 1)、田代 雅紀 1)、
有田 カイダ 1)、薄井 信介 1)、伊東 浩次 1)、松本 日洋 1)、滝口 典聡 1)
講
演
パネルディスカッション
症例は 57 歳男性で、某日深夜大量に飲酒し、朝方 4 時頃に田んぼで倒れている所を通行人に発見され救急搬
送となった。来院時 vital signs は安定していたが、酩酊状態であり頭部外傷として右眼窩内側壁骨折が疑われ経
過観察目的に脳神経外科入院となった。入院後より 1 日で 400 ml 程度と尿量低下あり、また酩酊状態から覚醒後
より腹痛、腹部膨満感を認めたとのことで外科紹介となった。腹部外傷の有無は不明であり、腹部診察では明
らかな腹膜刺激症状は認めず、vital signs も安定していた。血液検査所見では BUN、Cre がそれぞれ 33 mg/dl、
2.92 mg/dl と上昇を認めたが、炎症反応の上昇も認めなかった。CT 所見では大量の腹水を認め、一部腸間膜の
脂肪識濃度の上昇、少量の free air を認めた。また膀胱壁は不整であり、
周囲の脂肪識濃度の上昇も目立っていた。
消化管穿孔が否定できず、試験開腹とした。手術所見では腸管に損傷なく、膀胱頂部に約 4 cm の穿孔を認め膀
胱破裂と診断し、縫合閉鎖術とした。術後は泌尿器科に転科となり大過なく退院に至った。 外傷性膀胱破裂は
膀胱が充満した状態で下腹部に強い外力が加わった場合などに認められる比較的稀な外傷である。本症例では術
前検査で BUN、Cre の上昇を認めていたが、これは膀胱の腹腔内破裂、腹腔内尿漏に伴う psuedo-renal failure
で、本症に特徴的な所見と考えられた。術後腎機能は速やかに改善し、術後 2日目の採血結果では BUN 13 mg/dl、
Cre 0.93 mg/dl と正常化した。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-06-10
キックボクシングで受傷し深大腿動脈損傷を
伴った大腿コンパートメント症候群の一例
シンポジウム
関 連 演 題
1)東京医科歯科大学附属病院 救命救急センター
園部 浩之 1)、吉川 俊輔 1)、藤江 聡 1)、市野瀬 剛 1)、八木 雅幸 1)、牛澤 洋人 1)、安池 純士 1)、
中島 康 1)、白石 淳 1)、加地 正人 1)、村田 希吉 1)、大友 康裕 1)
ワークショップ
関 連 演 題
症例は 41 歳男性、キックボクシングのスパーリングにて右大腿を蹴られた後から右大腿痛が遷延したため近
医を受診した。大腿筋挫傷を疑われ鎮痛剤処方にて帰宅したが、疼痛改善せず近医を再受診した。造影 CT にて
大腿動脈仮性動脈瘤が疑われ当院転院搬送となった。来院時右大腿部に著明な腫脹と右下肢痺れを認めたが、両
側足背動脈の触知は良好で下肢の感覚障害や冷感は認めなかった。バイタルサインは安定しており、その他特記
すべき症状や明らかな外傷は認めなかった。右外側広筋の筋区画内圧測定を行ったところ 70 mmHg と異常高値
を認め、コンパートメント症候群と診断し筋膜切開術施行した。術中、血圧低下を伴った止血困難な大量出血認
め、仮性瘤破裂を疑い血管造影検査を施行したところ、深大腿動脈末梢からの造影剤血管外漏出像が確認され同
部位に対してコイル塞栓術を施行した。術後経過良好で筋腫脹改善を確認した後に筋膜縫合及び創閉鎖を行い退
院となった。
コンパートメント症候群の好発部位は前腕や下腿である。一方、大腿のコンパートメント症候群は頻度が低く、
比較的稀な疾患である。今回、我々は深大腿動脈損傷に伴った大腿コンパートメント症候群を経験したため文献
的考察を加えて報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
248
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-07-1
過疎地域に立地する基幹病院における
外傷手術の実態について
1)新潟県立新発田病院 外科、2)新潟県立新発田病院 救急科、3)新潟県立新発田病院 麻酔科
池田 義之 1)、畠山 悟 1)、塚原 明弘 1)、丸田 智章 1)、小山 俊太郎 1)、田中 典生 1)、下田 聡 1)、
木下 秀則 2)、熊谷 雄一 3)
当院は新潟県北部の下越地域にある人口 21 万人、医療圏 2100 km2(香川県 1 県を越える面積)をカバーする唯
一の救命救急センターを有する 474 床の基幹病院である。急激な人口減少による過疎地域に立地しており、周辺
地域の後方病院の相次ぐ縮小から、救急患者、しかも救急診療を要しない軽症患者が集中し、重症患者に注ぐべ
き診療パワーの分散が課題となっている。当院における 2013 年 4 月~2014 年 3 月の腹部外傷に対する手術例を対
象に、その実態を明らかにする。対象は 8 例。年齢中央値は 75 歳(65~81 歳)
。うち消化管損傷が 6 例(すべてⅡa
型を含む)で、膵十二指腸静脈損傷が 1 例であった。消化管損傷に対し全例部分切除ないし楔状切除が行われた。
手術時間は 132.5 分(100~ 185 分)、出血量は 654 ml(50~5285ml)
、術後合併症は 6 例で、うち呼吸不全、敗血症
性ショック各 1 例を認めたが、全例生存退院した。1 例は受傷後初回受診時に肋骨骨折と診断され保存的治療の
方針となり、腹部症状なく一旦帰宅したが、帰宅後に腹痛が出現し、消化管穿孔の診断で手術となったため、受
傷から入室まで 11 時間 25 分を要した。また 1 例は同乗者(妻)が救急搬送され、受診後帰宅したあとから腹痛が
出現し、受診となったため、受傷から入室まで 5 時間 40 分を要した。残る 6 例の搬送直線距離中央値は 14 km(2
~35km)
、受傷から当院受診まで要した時間は 57 分(26~100 分)
、受傷から入室まで要した時間は 198 分(165
~260 分)であった。手術室がフル稼働で、入室まで時間を要することがあるが、入室時間の短縮を目的とした
外傷システムを確立することも重要と考える。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-07-2
緊急手術における
手術安全チェックリストの導入
1)兵庫県災害医療センター 救急部
浜上 知宏 1)、岡田 剛 1)、中山 晴輝 1)、黒川 剛史 1)、松山 重成 1)、川瀬 鉄典 1)、石原 諭 1)、
中山 伸一 1)
当院は県内唯一の高度救命救急センターとして外傷症例をはじめ重症症例を受け入れており、外科的緊急止血
が必要な症例には手術室直入プロトコールも発動しているが、これまで予定手術を含めたすべての手術に対して、
統一したタイムアウトの方法や手術安全チェックリストの利用は行われていなかった。
平成 25 年 10 月より手術安全チェックリストを導入し、同時に麻酔導入前、皮膚切開前、閉創前の 3 回のチェッ
クリストによるタイムアウトを原則行うことにした。特に執刀直前のタイムアウトは手術室直入例を含む全ての
症例に徹底して行うこととした。6 か月間の試験運用後にアンケートを行った。医師 9 名、看護師 14 名から有効
回答を得た。タイムアウト中も手を止めないなど浸透不足、タイムアウトのタイミングや確認内容等の問題が指
摘されたが、チェックリストを導入してインシデントを未然に防ぐことができたこと、緊急症例を対象とする場
合でも実施は可能であったことから、チェックリストとその運用方法を一部改良し、平成 26 年 4 月から本運用を
開始した。
タイムアウトを徹底することで超緊急例でも確認事項をチェックして安全性が向上するだけでなく、スタッフ
間のコミュニケーションを促進しノンテクニカルスキルとしてのチーム力向上につながると考えられた。時間的
猶予が無い中で手術安全チェックリストを緊急時にも行うことで最終的に患者の有害事象減少や転帰の改善につ
ながるのか今後検討が必要である。
249
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-07-3
重症外傷治療におけるチームワーク構築に
ついて:SSTT 座学 1 日コースの利用
教
1)宇治徳洲会病院外科
2)宇治徳洲会病院看護部
育
講
菱川 恭子 1)、鉢嶺 愛美 2)、小林 真奈美 2)、小林 壽範 1)、日並 淳介 1)
演
パネルディスカッション
【背景】重症外傷診療は Acute care surgeon のみにより行われるのではなく、多職種の緊密な連携が不可欠であ
る。当院は 2013 年度 2252 例の外傷例の搬入があったが、手術を要した体幹部外傷例は 5 例、non or transient
responder に対する手術例は 2 例と少ない。外傷に特化した on the job training は不可能な中、手術室看護師
が SSTT 座学 1 日コースを受講した 3 日後に Damage control strategy(DCS)を選択し救命し得た症例を経験し
たので報告する。【症例】79 歳女性。普通乗用車助手席に乗車中、対向車との正面衝突で受傷。既往の関節リ
ウマチに対し、ロイコボリン、メトトレキサート、タクロリムスを内服中であった。搬入時 HR 90/min、BP
90/50 mmHg、RR20/min、GCS14(E3V5M6)、末梢冷感はあるが、初回 FAST は陰性。 造影 CT にて歯突起骨
折、腸間膜損傷を認めた。造影 CT 後に収縮期血圧が 76 mmHg まで低下し緊急手術となった。
[術中所見]搬入
から 95 分の執刀開始で既に腹壁からの oozing も止まらず、DCS を選択した。回腸の全層性損傷 3 か所と腸間膜
損傷があり同部を切除した。肝後区域に 5 cm 長の裂傷があり、肝縫合後、パッキングを行った。
[その後の経過]
ICU 帰室 6 時間で、ドレーン排液の増量を認め、血管造影を行い、右結腸動脈分枝からの出血に対し TAE を行っ
た。第 3 病日に小腸吻合、根本閉腹を施行し、第 4 病日にハローベスト装着を行った。第 102 病日に退院した。
【結
語】DCS を円滑に進めるためには、手術室看護師が外傷手術の特殊性を理解し、治療戦略を共有できることが必
須であるが、本症例以前の当院では DCS の概念は浸透していなかった。看護師が SSTT 座学 1 日コースを手術直
前に受講していたことが本症例の救命に大きく貢献したと考えられる。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-07-4
当院における小児の
acute care surgeon 像について
シンポジウム
関 連 演 題
1)熊本赤十字病院 小児外科
関 千寿花 1)、吉元 和彦 1)、寺倉 宏嗣 1)、小山 宏美 1)
ワークショップ
関 連 演 題
はじめに)小児外傷は少なく、十分なトレーニングを積むことは難しいため、成人における acute care surgeon
の役割を個人が担うことは困難である。当院で経験した複数傷病者に含まれた多発外傷の小児に対する実際の
経過を検証し、当院での小児外傷に対する acute care surgeon 像につい提示する。症例)軽自動車と普通乗用車
の交通事故。軽自動車に同乗していた 4 名(母、児 3 人)が受傷。内訳は 46 歳の母と児 3 名(12 歳、10 歳、6 歳)
。
救急隊よりの初回報告では、10 歳児は心肺停止とされていた。当院より迎え搬送を行い、現場に救急医 3 名と看
護師を派遣。接触時に心拍再開したことを確認したため、結果的に 4 名全員を当院で受けいれる方針となった。
来院前に小児科、小児外科に連絡し、さらに緊急コールで院内の外科系医師を招集した。初期診療には、蘇生後
の 10 歳児には小児科と救急科、腹部損傷を疑われた 6 歳児には小児科、救急科、外科、小児外科が対応した。軽
症の母親と 12 歳児は救急科で担当した。6 歳児に対しては初期評価で腹膜炎を疑い、外科と小児外科で緊急手術
を施行し、十二指腸穿孔と診断された。また顔面の多発骨折、口腔内損傷のため気管挿管管理されたが、口腔内
の出血が続くため、初回手術の数時間後に形成外科で軟口蓋の縫合止血のみ施行された。術後は PICU で小児科、
小児外科、外科が全身管理を行い、形成外科、歯科口腔外科が待機的に顔面損傷の修復術を、整形外科が上肢の
骨折に対する手術を行った。一般病棟へ転棟後は臨床心理士にも介入してもらい、小児科、小児外科が引き続き
退院まで治療を続行、受傷 8 週間後に自宅へ退院となった。考察)当院では小児外傷に対しては、救急科、小児科、
小児外科、各専門診療科、多職種の医療者が、救急初療室から PICU、手術室、外来まで一貫して密接に連携し、
チームとして acute care surgeon の役割を担っている。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
250
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-07-5
外科医にとって、献体外傷手術臨床解剖学的研究会は有用か?
─ 厚生労働省委託研修事業の分析結果による検討 ─ 1)東京医科大学 救急・災害医学分野、2)東京医科大学 八王子医療センター 救命救急センター
3)東京医科大学 人体構造学分野、4)京都大学 医学研究科 初期診療・救急医学分野
5)近畿大学 医学部 救急医学、6)日本医科大学 千葉北総病院 救命救急センター
7)日本大学 医学部 板橋病院 救急医学、8)新潟市民病院 整形外科、9)新潟大学 医学部 救急医学
本間 宙 1)、織田 順 1)、行岡 哲男 1)、佐野 秀史 2)、田中 洋輔 2)、長田 雄大 2)、鈴木 智哉 1)、
河井 健太郎 1)、佐藤 格夫 4)、田口 博一 5)、益子 一樹 6)、小豆畑 丈夫 7)、伊藤 雅之 8)、
普久原 朝海 9)、河田 晋一 3)、林 省吾 3)、伊藤 正裕 3)
【背景】本学は、厚生労働省「平成 24・25 年度実践的な手術手技向上研修事業」の委託事業者として、「献体による外
傷手術臨床解剖学的研究会」を開催した。【目的】外科医に対する、研究会の外傷手術教育への有用性を検討すること。
【方法】2013 年 1 月から 3 月に全 5 回、2013 年 12 月から 2014 年 3 月に全 8 回の研究会を開催した。研究会は 1 日間の日程
で、基本手技と胸部外傷・血管外傷・腹部骨盤外傷・四肢外傷に関する 21 手技を履修した。参加者には研究会の前後
で、手技に対する自己習熟度評価(10 段階で点数化)を行い、習熟度の変化を評価した。本検討では、普段救急医療専
任ではないが必要に応じて従事する外科系医師を「(非救急)外科医」と定義した【結果】参加者は計 50 名で、医学部卒
後 5 年未満:7 名、5 年以上 10 年未満:8 名、10 年以上 20 年未満:28 名、20 年以上:7 名だった(最小 4 年、最大 33 年)
。
専門医保有者は延べ 49 名(外科 34 名、救急 10 名、脳外 2 名、心外 2 名、整形 1 名)、非保有者は 12 名だった。全 21 手
技を通しての自己習熟度平均値は、受講前 4.77 ± 3.29、後 7.41 ± 2.29 であり、受講後に有意な平均値上昇が認められ
た(p<0.0001)
。手技の詳細として、基本手技・胸部外傷・血管外傷・腹部骨盤外傷・四肢外傷に大別して検討したが、
基本手技以外で受講後に有意な平均値上昇が認められた(p<0.01)。また、これらの受講前後ポイント差の平均値を比
較すると、胸部外傷のポイント差は、基本手技や四肢外傷と比較して有意な上昇を認めていた(p<0.05)。【考察・結果】
基本的外科手技技術を有する外科医に対する献体研究会は、基本手技レベルでは効果を示さないが、より高度な手技、
特に胸部外傷等においてその教育効果を発揮することが示唆された。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-07-6
腹腔鏡下脾臓摘出術の latest modern
technique と Acute are surgery への展望
1)九州大学 救命救急センター
2)九州大学 消化器総合外科
3)九州大学 災害救急医学
赤星 朋比古 1, 2, 3)、川中 博文 2)、安田 光宏 1)、橋爪 誠 3)、前原 喜彦 1, 2)
(はじめに)脾臓の救急領域における対象疾患としては、外傷性脾損傷や脾動脈瘤破裂が挙げられる。その多く
が近年 IVR にて対処可能となっているが、ショックを伴う症例や IVR 後の脾梗塞や脾膿瘍では外科的介入を要
する。 (目的)当科での最新の腹腔鏡下脾臓摘出術の手術手技と Acute care surgery における腹腔鏡下脾臓摘出
術の位置づけについて考察する。 (対象と方法)当科では、1994 年から脾臓摘出術に腹腔鏡手術を導入し、血液
良性疾患、門脈圧亢進症、脾動脈瘤、に対して 400 例以上の症例に積極的に腹腔鏡下脾臓摘出術を施行してきた。
Vessel Sealing system による胃脾間膜、短胃静脈の処理、自動縫合器による脾門部一括処理、Hand-assisted
laparoscopic surgery(HALS)により術中出血、開腹移行例は少なくなっており、脾腫(1000 g 以上)を伴う症
例にも安全に施行可能となった。脾膿瘍、脾動脈瘤、脾のう胞にも腹腔鏡下に施行可能である。 (結語)Acute
care surgery の対象として腹腔鏡下脾臓摘出術も取り入れてゆくことは Acute care surgeon 育成に有用である
と考える。
251
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
腹部外傷手術症例における当院での傾向
P-07-7
教
1)山形県立中央病院 外科
育
根本 大資 1)、盛 直生 1)、蓮沼 綾子 1)、飯澤 肇 1)
講
演
【目的】当院の腹部救急疾患の中で、腹部外傷による手術件数の割合は多くはない。しかし、緊急性が高い症例
も多く、来院から手術までの時間や手術時間などを検討した。【対象および方法】2008 年 1 月~2014 年 6 月に当
科で腹部緊急手術を施行した腹部救急患者 1108 例の内、外傷手術の 22 例(男性 16 例、女性 6 例、19 ~ 95 歳)
を対象に、来院から CT までの時間、CT から手術開始までの時間、手術時間、出血量、輸血量、ISS(Injury
Severity Score)、Trauma and Injury Severity Score の予測生存率(Ps)などを検討した。
【結果】平均年齢は
58.5 歳、救命例 19 例、死亡例 3 例だった。受傷機転は交通外傷が 14 例と最多で、転落、自殺企図などが続いた。
術式は小腸、腸間膜損傷による小腸部分切除が 14 例、脾臓摘出が 3 例だった。救命例と死亡例のそれぞれの中央
値は、来院から CT までの時間で、51.5 分と 58.0 分、CT から手術開始までの時間で、136 分と 135 分、Ps で 0.95
と 0.79 などと、有意差を認めなかった。また、両群に出血量、輸血量、手術時間に有意差を認めなかった。
【結論】
死亡例の 3 例のうち 1 例は、術後の退院間近に起こした肺炎が原因で死亡したが、他の 2 例に関しても、受診時
の Ps は低く無く Preventable Trauma Death と考えられた。また、来院から CT までの時間に差を認めず、CT
から手術までの時間も有意差は認めなかった。しかし、CT から手術までの時間は、2 時間近くかかる現状であっ
た。他施設の報告や文献的考察を加えて報告する。また、生存率を上昇させるために、死亡例に関して再度検討
する事や、今回の結果からでは、受診から手術までの時間に有意差がないものの、手術開始までの時間を少しで
も早く出来るような工夫が必要と考えられる。
パネルディスカッション
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-07-8
都市部大学病院における自傷行為による
外傷症例の臨床的検討
シンポジウム
関 連 演 題
1)慶應義塾大学 医学部 救急医学
渋沢 崇行 1)、佐々木 淳一 1)、清水 千華子 1)、佐藤 幸男 1)、田島 康介 1)、並木 淳 1)、堀 進悟 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【目的】当院は大都市に立地する全次型救急医療機関で、常に全科対応可能となっている。精神疾患を背景とし
た自傷行為による外傷症例の臨床的特徴を明らかにする。 【対象】2012 年 4 月から連続 26 ヶ月間に自傷行為によ
り当院へ入院し、精神科併診(リエゾン)を要した外傷症例。 【方法】電子診療録を用いた後方視的調査。対象
群において、年齢・性別・受傷機転・精神疾患既往の有無・Injury Severity Score(以下 ISS)・集中治療室入室
期間・手術や IVR の有無などにつき検討した。 【結果】対象症例は 13 例(平均年齢 43 歳、男性 5 例)で、受傷機
転は墜落 / 転落 7 例・刺創 4 例・その他 2 例であった。精神疾患の既往を持っていたものは 9 例であった。ISS の
中央値は 9(3-32)で、6 例に緊急手術 /IVR が行われていた。集中治療室入室期間の中央値は 9 日(3-28)であっ
た。 【考察】自傷行為による外傷症例は女性に多い傾向があり、精神疾患をそれまで指摘されていなくても発生
していた。当院では精神科病棟での継続的な入院加療が可能であるが、集中治療室入室期間は長くなる傾向があ
る。重症度をマッチさせた対照群との比較検討を行い追加報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
252
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-08-1
Acute Care Surgery における
新たなチーム医療の検討
1)秋田赤十字病院 総合診療科
2)秋田赤十字病院 消化器外科
古屋 智規 1)、小棚木 均 2)、大内 慎一郎 2)
【背景と目的】Acute care surgery(ACS)領域では、緊急発症で対応もしばしば困難なことから、多診療科およ
びメディカルスタッフ間の連携が有効と考えられる。しかし、現状では必ずしもその連携は有効に機能していな
い。筆頭演者は現在、肝胆膵高度技能指導医、総合診療医 / 集中治療医あるいは NST、RST(呼吸サポートチー
ム)リーダーとして診療支援を行っており、その診療結果から ACS における、
より理想的な診療形態を検討する。
【対象と方法】現状の把握:2013 年 4 月~ 14 年 3 月の、筆頭演者の手術スクラブ数、NST、RST 支援実績を集計
し、総合診療医 / 集中治療医としての診療支援内容と現状での問題点を見出し、今後の課題を抽出した。NST は
全科スクリーニング型でチーム規定通りに支援を開始し目標達成(消化管からの必要熱量確保等)まで、RST 支
援は臨床工学技士が連日院内人工呼吸器装着患者をチェックして支援を開始し離脱まで週 1 回の回診支援を継続
した。【結果】手術スクラブ数は 56 件で、うち外傷 7 件、急性腹症 / 術後合併症などの緊急手術 18 件だった。い
ずれも執刀医ではなく、助手ないし支援に徹した。更にスクラブの有無によらず ICU 入室例を中心に周術期診
療支援を行い(出来る限り直接指示は出さず間接的アドバイスに留めた)救命率 95.7%だった。NST は全支援数
76 例中、外傷、急性腹症等の ACS 症例(熱傷除く)が 26 例、目標達成率は 88.5%だった。RST は全支援患者 87
例中 ACS 症例 18 例、人工呼吸器離脱率 83.3%だった。【結語】ACS における本支援形態は成立し得る。今後は、
従来の主な外傷部位や病態から決定する単一診療科「主治医」主導型診療から、「総合的医療総括責任医」を中心
とした「チーム医療」型診療により治療成績向上と主治医の負担軽減が得られる可能性がある。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-08-2
当科における遺伝子組み換えヒトトロンボモ
ジュリン製剤使用経験
1)産業医科大学 第一外科
田村 利尚 1)、日暮 愛一郎 1)
【はじめに】外科診療の現場では腹部救急疾患や術後合併症、固形癌を基礎疾患とした播種性血管内凝固症候群
(disseminated intravascular coagulation:DIC)に遭遇することが多い。遺伝子組み換えヒトトトロンボモジュ
リン製剤(rTM;リコモジュリン ®)は従来の DIC 治療薬とは異なる抗 HMGB1 作用などによりその効果が期待
【対象】2012 年 4 月から 2013 年 3 月
されている。今回、当科におけるリコモジュリン ® の使用例の検討を行った。
【結果】原疾患への治療の内訳は緊急手術症例が 7 例、非手術
までに、当科でリコモジュリン ® を使用した 12 例。
症例が 5 例。急性期 DIC 診断基準にて DIC と診断されたものは 10 例、残り 2 例は DIC スコア 3 点の症例であった
がリコモジュリン ® が使用されていた。DIC 症例 10 例 6 中例が生存、4 例が死亡の転帰をたどった(DIC スコア 3
点の症例は全例生存)。急性期 DIC 診断基準における DIC スコアは生存例において死亡例よりも低い傾向にあっ
た。リコモジュリン ® 使用例 12 例中 1 例に出血傾向(PTCD 刺入部からの出血)を認めたが、その他 11 例で有害
事象は認めなかった。切除不能肝門部胆管癌、急性胆管炎を基礎疾患とした DIC に対するリコモジュリン ® 奏効
例を経験したので報告する。
【結語】リコモジュリン ® は外科領域での急性期 DIC の治療に有効である可能性が
高く、今後症例の集積と更なる検討が望まれる。
253
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-08-3
外傷患者に対する当院での
Massive Transfusion の試み
教
1)東京都済生会中央病院
育
山口 敬史 1)、栗原 智宏 1)、武部 元次郎 1)、入野 志保 1)、髙橋 未来 1)、上倉 英恵 1)、
笹尾 健一郎 1)、関根 和彦 1)
講
演
パネルディスカッション
【背景と目的】重症外傷患者における大量出血は重要な予後因子である。近年当院では、重症外傷による重度出
血性ショック患者に対して O 型 Rh+ 濃厚赤血球液 6 単位の即時投与と、患者血液型の全成分輸血製剤(各々 10-
30 単位)の準備を開始する「外傷ショックプロトコル」を定めた。本プロトコルは原則、救急医が診察後に輸血
検査科への指示
(発令)により最緊急で自動的に実施される。本研究では現在までのプロトコル施行症例を分析し、
改善点を検討した。
【対象と方法】プロトコル発令の全症例において、病着・発令・輸血開始の時刻を調査した。
【結果】現在まで 16 例のプロトコル発令があった。病着前に発令したプロトコル違反は 2 例で、救急隊情報にて
外出血著明でショック状態の症例と、大量輸血が必要と判断された転院症例だった。プロトコル順守の 14 例で、
病着−発令は 16 分(中央値)(範囲 10-60 分)、そのうち長時間を要した 2 例は、処置中に状態悪化した症例(状
態悪化−発令:16 分)と、来院時心肺停止で蘇生後に発令した症例(蘇生−発令:20 分)だった。発令−輸血開
始は 17 分(9-43 分)で、3 例で極めて長い時間を要した。このうち 2 例は結果的に緊急異型輸血が必要なく、1 例
はプロトコル違反症例で発令が早すぎたためである。全 16 症例で少なくとも 20 単位の製剤が未使用で返却となっ
た。
【考察】現在プロトコル発令まで約 16 分であり、やむを得ない遅延例はあるが救命率向上のためにさらなる
短縮を目指すべきである。発令から輸血開始の遅延例の多くは予想外に状態が安定したためと考えられた。判断
が拙速すぎるとプロトコル不適切例が生じえるが、病着から時間が経ってからの発令では、患者血液型がすでに
判明しており本プロトコルとの整合性が取れない場合がある。
【結語】重症外傷患者の救命には、現行プロトコ
ルをさらに迅速かつ効率的に洗練していく必要がある。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-08-4
外傷患者における D ダイマーを用いた
静脈血栓塞栓スクリーニングについての検討
シンポジウム
関 連 演 題
1)長崎大学病院 救命救急センター
猪熊 孝実1)、長谷 敦子1)、上木 智博1)、泉野 浩生1)、山野 修平1)、田島 吾郎1)、平尾 朋仁1)、
山下 和範 1)、田崎 修 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【背景】外傷症例は受傷早期に出血傾向を示すことがあるため止血が完成するまでは抗凝固薬を開始できず、血
栓症の予防は困難である。また、外傷では受傷直後から D ダイマーが高値で推移するので、外傷症例では血栓の
指標となる D ダイマーの基準値は確立していない。
【目的】救命救急センターに入院となった外傷症例において静脈血栓塞栓(VTE)に対する D ダイマーを用いたス
クリーニング基準の有用性を検討する。
【対象と方法】2011 年 10 月から 2014 年 3 月までに当院へ搬送され救命救急センターに入院となった外傷 395 例
を対象とした。VTE の予防として、創外固定などの装着不能肢を除き、全例に対して入院時より可能な限り間
欠的空気圧迫法を施行した。当センターの VTE スクリーニング基準は受傷後 5 日目以降において D ダイマーが
増加傾向、かつ、15μg/mL 以上と設定した。スクリーニング基準を満たした症例に対して造影 CT を施行し、
VTE の有無を評価した。
【結果】観察期間中、34 例がスクリーニング基準を満たし、そのうち造影 CT によって 18 例を VTE と診断した(陽
性適中率 52.9%)
。VTE 症例は男性 10 例、女性 8 例、平均年齢 64.4 歳。造影 CT を撮影した平均病日は第 11.0 病日
であった。診断時、全例で VTE による症候を認めなかった。治療は IVC フィルターを 1 例、ヘパリン、ワーファ
リン投与を 15 例に対して行った。大動脈損傷の 1 例と膝窩静脈の血栓がごく微小であった 2 例に対しては保存的
治療を行った。VTE 全例が生存退院した。一方、スクリーニング基準を満たさなかった 361 例に症候性の VTE
を認めなかった。
【結語】外傷患者における D ダイマーを用いた VTE スクリーニング基準の陽性適中率は 52.9% であった。D ダイ
マーを用いたスクリーニングは VTE を検出するための方法の 1 つとなりうる。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
254
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
当科で経験した劇症型溶連菌感染の 2 症例
P-08-5
1)津軽保健生活協同組合 健生病院 外科、2)斗南病院 外科
佐藤 衆一 1)、兼田 杏里 1)、鈴木 隆太 1)、伊藤 真弘 1)、村田 光幾 1)、境 剛志 2)
劇症型溶連菌感染症の 2 例を経験したので報告する。(症例 1)糖尿病治療中断歴のある 65 歳女性。前日から
の下腹部痛を主訴に 2011/3/6 当院救急外来受診。来院時、
汎発性腹膜炎状態であった。CT では腸管壁浮腫を認め、
穿孔性虫垂炎由来の腹膜炎などを疑い緊急開腹術を施行。開腹時所見は腹腔内全域に混濁腹水や腸管浮腫・発赤
所見を認めたが、消化管穿孔所見認めず。膀胱壁発赤も顕著であったが尿路穿孔所見も認めなかった。術中の腹
水グラム染色にてグラム陽性球菌を認め、特発性の腹膜炎として腹腔洗浄し終了。 術中よりショックバイタル
であり、術後も進行性のアシドーシスを認めたため持続的血液濾過透析導入。経過中左下腿の感染・壊死所見が
顕在化し、局所並びに血液培養より A 群β型溶連菌を認め、劇症型溶連菌感染症を診断した。集中治療と頻回
の感染巣デブリドマンを必要としたが、徐々に全身状態改善した。入院から半年後に自宅へ独歩退院となった。
(症例 2)肺癌定位放射線治療歴、大腸癌治療歴がある 85 歳男性。2011/6/4 より右大腿部痛あり、6/8 近医受診。
敗血症、DIC、意識障害として当院救急外来へ搬送。
即日入院となり、抗 DIC 療法など支持治療開始。その後右下腿感染所見出現。血液培養にて G 群溶連菌を認め、
劇症型溶連菌感染症と診断した。 本人・家族の希望もあり、集中治療に至らない範囲で可及的に治療を試みる
方針となる。感染巣は両下腿、仙骨~臀部、両膝、左肩へ拡大したが、各部デブリドマンやドレナージを頻回に
行い、抗菌薬投与・抗 DIC 療法・栄養療法など各種支持治療を継続することで徐々に全身状態は改善した。入
院後2ヶ月で食事自力摂取可能となり、車椅子で自宅退院となった。(結語)劇症型溶連菌感染症は急激な経過
をたどることが多く、適切な全身管理と積極的な感染巣コントロールが重要である。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-08-6
胆管癌術後の血液透析患者に発症した G 群β溶血性
連鎖球菌による toxic shock-like syndrome の 1 例
1)兵庫医科大学 外科
鈴村 和大1)、末岡 英明1)、飯室 勇二1)、平野 公通1)、岡田 敏弘1)、麻野 泰包1)、宇山 直樹1)、
中村 育夫 1)、近藤 祐一 1)、小坂 久 1)、裴 正寛 1)、矢田 章人 1)、大橋 浩一郎 1)、岡本 共弘 1)、
栗本 亜美 1)、藤元 治朗 1)
劇症型溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染症(Streptococcal toxic shock-like syndrome: TSLS)は急速にショック
から多臓器不全にいたる極めて予後不良な疾患である。TSLS は主として A 群溶連菌によって引き起こされるが、
それ以外の菌種による TSLS 様の報告例もみられる。今回われわれは G 群溶連菌による TSLS 様の症状を呈した
症例を経験したので報告する。 症例は 72 歳の女性で、平成 18 年に慢性糸球体腎炎からの腎不全にて血液透析を
導入。平成 25 年 9 月に中下部胆管癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行。その後外来経過観察中に
黒色便を認めたため当院入院。吻合部潰瘍の診断で PPI にて加療中、突然の意識レベル低下を認め、血液検査上
DIC および敗血症であると考えられた。ICU 入室にて抗生剤およびγ- グロブリン製剤の投与、さらに持続的血
液濾過透析およびエンドトキシン吸着を行うも急速に全身状態が悪化し、翌日に死亡した。後日、血液より G 群
溶連菌である Streptococcus dysgalactiae が検出された。
255
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-08-7
緊急下肢離断術をはじめとした感染制御と集学的
治療により救命した劇症型連鎖球菌感染症の一例
教
1)東京都済生会中央病院 救命救急センター
育
高橋 未来 1)、山口 敬史 1)、入野 志保 1)、武部 元次郎 1)、上倉 英恵 1)、菅原 洋子 1)、
栗原 智宏 1)、荒川 千晶 1)、笹尾 健一郎 1)、関根 和彦 1)
講
演
パネルディスカッション
【はじめに】劇症型連鎖球菌感染症は急激な経過で敗血症性ショックへと陥り、その死亡率は 30% 前後と報告さ
れている。今回われわれは、来院直後に心肺停止となるも、下肢離断術をはじめとした感染制御と集学的治療を
行った救命例を経験し報告する。
【症例】46 歳の女性。特記すべき既往なし。来院 5 日前から左大腿部に疼痛を
自覚し、徐々に痛みは増大して歩行困難となり当院に救急搬送となった。来院時 JCS1、呼吸数 24 回 / 分、脈拍
数 160 回 / 分、血圧、体温および SpO 2は測定不能であり、救急外来で心室細動となり除細動を行ない蘇生した。
左鼠径から大腿にかけ軽度の腫脹および紅班を認めていた。血液検査上の臓器障害を認め敗血症性ショックと診
断し、敗血症治療ガイドラインに基づいて治療を開始した。第 2 病日に左側胸部への紅斑拡大と紫班・血疱が出
現した。左下腿はコンパートメント症候群に陥り減張切開術施行し、同部位から提出した検体から連鎖球菌の検
出が報告され、劇症型連鎖球菌感染症と診断し、同日左下肢離断術および左側胸部デブリドマンを行った。培養
結果は A 群β溶連菌であった。血行動態は下肢離断直後から改善傾向となったが、術後に多臓器障害(肺・腎・肝・
循環・血液)となり、CHDF をはじめとした集中治療管理を施行した。感染巣に関しては、連日のデブリドマン
を繰り返したが、左股関節周囲から左側胸部にかけて広範な皮膚・皮下組織の欠損を残した。創処置の継続によ
り感染巣の拡大は収まり、第 84 病日より局所陰圧閉鎖療法を開始し、肉芽の増成を得て、第 106 病日に自家分層
植皮術を施行して創閉鎖した。術後も局所陰圧閉鎖療法を 124 病日まで継続し、ほぼ上皮化を完了した。第 134
病日に集中治療室退室となり、その後リハビリを継続し義足歩行可能になり、第 305 病日にリハビリ病院へ転院
となった。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-08-8
腹部大動脈塞栓をきたし緊急カテーテル治療
にて救命しえた乳児心臓腫瘍の 1 例
シンポジウム
関 連 演 題
1)岡山大学病院 小児外科、2)岡山大学病院 小児循環器科、3)岡山大学病院 心臓血管外科
4)岡山大学病院 放射線科
野田 卓男1)、尾山 貴徳1)、谷本 光隆1)、馬場 健児2)、大月 審一2)、笠原 慎吾3)、佐野 俊二3)、
佐藤 修平 4)、藤原 寛康 4)、金澤 右 4)
ワークショップ
関 連 演 題
乳児期に腹部大動脈塞栓をきたすことは極めて稀で、治療はもちろん診断も困難である。今回、心臓腫瘍が原
因で腹部大動脈塞栓をきたした乳児を素早い関係各科の連携により救命しえたので報告する。症例は 7 か月女児。
発症 3 日前に近医で心雑音を指摘されていた。夜間、突然の肉眼的血便、嘔吐が出現し近位救急受診、入院となっ
た。翌朝も症状の改善なく造影 CT が施行され、腹部大動脈の腹腔動脈起始部に造影不領域が認められた。また、
腸管、腎への血流障害も疑われ当院搬送となった。入院時、意識は混濁、心収縮期雑音(II/IV)
、腸音低下、下
肢冷感を認めた。上肢血圧は 104/58 であったが下肢では測定不能だった。心エコーで左室中隔壁に広く接する
15 mm 大の腫瘍を認めた。MRI でも同様の左室腫瘤を認めたが脳梗塞はなかった。前医および当院での画像検査
より、左室腫瘍が離断し腹部大動脈塞栓を生じたものと診断した。速やかに塞栓除去が必要であるが、腹部大動
脈の腫瘍塞栓は腹腔動脈内腔へも突出しており外科的アプローチは困難と判断、カテーテルで摘出あるいは腹部
大動脈尾側へ移動させて外科的に摘出することとした。いつでも開腹可能な態勢で右大腿動脈からのアプローチ
で、心筋生検鉗子などを使用して少しずつ腫瘍を除去することでほぼすべての腫瘍を摘出した。術後、長時間の
腎血流障害、虚血再灌流症候群による腎不全に対し持続的血液濾過透析(CHDF)が導入された。また、腫瘍塞
栓と長時間に渡る大腿動脈へのシース挿入による下肢の虚血に伴い、コンパートメント症候群をきたしたため減
張切開術を行った。入院 20 日目に左室腫瘍摘出術が施行され、その後腎機能も改善傾向となり 58 日目に退院と
なった。心臓腫瘍の一部が腹腔動脈起始部に塞栓し、腹腔内臓器、腎、下肢の血流障害をきたすという一刻を争
う状態で、複数診療科の速やかな連携のもと病態の変化に応じて時間的ロスなく対応でき救命できた症例である。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
256
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-08-9
体外式膜型人工肺の使用により
手術が可能となった腐食性食道炎の 1 例
1)大阪府済生会 千里病院 千里救命救急センター、2)岡山済生会総合病院 救急科
金原 太 1)、稲葉 基高 2)、小谷 聡司 1)、尾北 賢治 1)、五十嵐 佑子 1)、伊藤 裕介 1)、林 靖之、
甲斐 達朗 1)
腐食性食道炎に ARDS を合併した患者に対し体外式膜型人工肺(ECMO)を用い食道切除術を施行した症例
を経験したので報告する。【症例】31 歳男性【現病歴】統合失調症にて近医精神科通院加療中であった。台所用
洗剤等を 1000cc 服用。その後、吐血・意識障害、低酸素血症にて救急搬送。【現症】来院時意識レベル GCS:
E4V1M6、血圧 132/84 mmHg、HR100 回 / 分(洞調律)
、SpO2(10 L 酸素投与下)90%、呼吸回数 24 回 / 分、体
温 35.0℃ 口腔内より泡沫状血性排液を噴出状に認め、両側全肺野で湿性ラ音聴取、頸部に皮下気腫を触知した。
【検査所見】上部消化管内視鏡所見にて Grade 3b の所見、門歯より 33 cm の部位に裂創を認めた。胸腹部 CT で
頸胸部の皮下気腫、下部食道壁内に気腫ならびに両側肺野の浸潤陰影を認めた。【初回手術経過】腐食性食道炎、
食道穿孔の診断で緊急手術(食道切除術)の方針とした。手術体位は左側臥位とし、分離肺換気を行い第4肋間
前側方開胸とした。開胸後 ARDS による酸素化能の低下から手術続行困難となったが ECMO の導入により酸素
化を改善し手術を行うことが可能となった。 術前に内視鏡で確認した部位は直視下には外膜一層が保たれてい
る状態で肉眼的には穿孔を認めなかった。しかし、遅発性の穿孔が高率に生じると判断し食道切除を行った。【入
院経過】第2病日には酸素化能の改善を認め ECMO から離脱し人工呼吸器のみでの管理が可能となった。第 6 病
日開腹下での胃瘻増設、第 8 病日に食道皮膚瘻・気管切開術を施行。その後、呼吸器から離脱し独歩も可能とな
り第 50 病日精神科病院での加療目的に転院となった。【考察】呼吸不全を呈し手術継続が困難な症例にたいする
ECMO の導入は有効な手段となり得る。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-08-10
重症外傷患者に対して直後より PTSD 予防のため
の介入した 1 例-適切な対象・時期・方法とは?
1)国立病院機構熊本医療センター 外科系総合コース
2)国立病院機構熊本医療センター 救命救急部・精神科
山口 充 1)、橋本 聡 2)
【背景・目的】重症外傷患者は身体のみならず精神的にも多大なストレスにさらされており、いわゆる PTSD(Post
Traumatic Stress Syndrome)を含むストレス関連障害を発症することが懸念される。発症後の治療方法につい
て述べた文献は数多いが、その予防については比較的少なく、特に適切な対象・時期・方法について臨床的に簡
便な指標は少ない。演者の経験した 1 例を通し、若干の考察を試みる。【症例】60 代女性。家族で遠方より法事
に来ていたところ、乗っていた自家用車の衝突事故により受傷。患者自身も ISS25 と重度の多発外傷を負ってい
たのに加え、同乗者である肉親が事故にて死亡しており、強度の精神的ストレス(トラウマ)を負ったと考えら
れた。受傷直後より精神科医・外傷外科医等からなるサポートチームによる、PTSD 予防のための介入を行った。
【考察】本症例を通じて、重症外傷患者に対する PTSD 予防につき、適切な対象・時期・方法等につき、若干の
文献的考察を加えることで、臨床的に簡便な指標につき検討する。援助者の支援や災害時との関連等周辺事項に
ついても、外傷外科医として必要とされ得る範囲において考察を加える。
257
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
特発性食道破裂に対する治療法の検討
P-09-1
教
1)北里大学 医学部 救命救急医学
育
片岡 祐一 1)、花島 資 1)、島田 謙 1)、浅利 靖 1)
講
演
特発性食道破裂は、急性期は呼吸・循環動態が悪化しやすく、救命のためには急性期の適切な治療が必要とな
る。しかし治療法に関してまだ確立したものはない。
【目的】
特発性食道破裂に対する治療法について検討。
【方法】
2000 年~ 2013 年の期間当院で診療した特発性食道破裂 21 例中、来院時心肺停止 2 例を除く 19 例を後ろ向きに調
査した。当院では 2004 年以前は開胸アプローチ、2004 年以降は胸部下部食道の破裂に対して開腹アプローチの
みで手術を行い、必要に応じてCTガイド下ドレナージを追加。また発症から時間が経っているが状態が安定し
ている場合は保存治療を選択することもありとした。
【結果】19 例の入院直後の SOFA 平均 6.2、PaO2/FiO2(P/F)
平均 232、ショック 68% と重症度は高かった。開胸アプローチ 7 例(開胸群)、開腹アプローチ 7 例、保存治療 5
例(合わせて非開胸群)
。CT ガイド下ドレナージ施行 8 例、胸腔鏡使用 1 例。開胸群と非開胸群の間で、入院後
P/F 214 ± 83 vs. 278 ± 143(p=0.12)、入院後ショック 86% vs. 58%(p=0.33)
、肺炎合併 14% vs. 50%(p=0.33)、
人工呼吸期間 2.7±2.9 日 vs. 13.9±20 日(p=0.04)
、ICU 期間 12.6±7.3 日 vs. 26.4±19.4 日(p=0.02)
。保存治療患者
を除く開胸群と開腹群の間で、手術時間 310±119 分 vs. 243±89 分(p=0.13)
、術中出血量 402±141mL vs. 264±
223mL(p=0.11)。転帰は開胸群のみ 1 例死亡。【まとめ】非開胸治療は開胸治療より、P/F は良く、手術時間、
出血量は少ない傾向にあり、死亡例も無かったが、肺炎合併が多く、人工呼吸期間、ICU 期間が長くなった。急
性期は呼吸・循環動態が悪化しやすく、患者の状態に合わせた治療法の選択が必要である。
パネルディスカッション
シンポジウム
ワークショップ
連
特発性食道破裂 11 例の検討
演
題
P-09-2
シンポジウム
関 連 演 題
1)東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター
鈴木 啓介 1)、小島 光暁 1)、加地 正人 1)、大友 康裕 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【背景】特発性食道破裂は、発症から治療開始までの時間に転帰が左右される。特に、発症 24 時間以上経過した
症例は予後が悪いとされており、適切な治療選択が重要である。
【方法】当センターに入院した症例を後ろ向きに検討した。また、術式の工夫により良好な転帰を得た症例を提
示する。
【結果】2006 年 4 月から 2013 年 4 月までの 7 年間で 11 例(平均年齢 59 歳、男性 10 例、女性 1 例)を経験した。右側
壁の破裂は 1 例のみであった。治療開始まで平均 20 時間、24 時間以上要した症例は 2 例(42、63 時間)であった。
全ての症例に手術を施行し、全例生存退院した。平均在院日数は 17 日、1 例で縫合不全を認めた。
【考察】縫合不全を認めたのは破裂部の炎症が高度であったにも関わらず、破裂部を直接縫合し胃で被覆した症
例であった。一方、遅延手術でも、食道壁の直接縫合は施行せず破裂部に胃底部を充填した 1 例は縫合不全なく
転帰良好であった。
【結語】発症から長時間経過した症例に対しては、脆弱な組織を無理に縫合閉鎖せず、胃底部を用いて充填する
術式が有用であると考えられた。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
258
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
特発性食道破裂 6 例から考える治療方針
P-09-3
1)弘前大学 医学部 消化器外科
赤坂 治枝1)、和嶋 直紀1)、木村 昭利1)、櫻庭 伸悟1)、久保 寛仁1)、室谷 隆裕1)、岡野 健介1)、
須藤 亜希子 1)、袴田 健一 1)
2006 年 3 月から 2012 年 12 月に当科で経験した特発性食道破裂 6 例について、臨床的検討を行った。年齢は 41
~ 53 歳、全て男性であり、全例で嘔吐を契機として発症していた。飲酒に伴う嘔吐は 3 例であり、2 例は食後の
嘔吐、1 例は出血性胃潰瘍に伴う吐血であった。全例が初診時に特発性食道破裂と診断あるいは疑診され、当院
へ搬送となった。発症から手術までに要した時間は平均 9 時間(4 ~ 15 時間)で、比較的速やかに治療が開始さ
れていた。5 例に対し、左開胸開腹アプローチによる穿孔部位の層々縫合閉鎖及び大網被覆、残る 1 例は、術前
の画像所見で縦隔穿破の所見を認めず、穿孔部位が胃食道接合部より約 2cm 口側右壁であると判断し、上腹部
正中切開でアプローチし噴門側胃切除術を施行した。全例に術後栄養管理目的に胃瘻や腸瘻を造設した。術後合
併症では Clavien-Dindo 分類 Grade IIIb 以上の合併症は認めなかったが、Grade IIIa の皮下膿瘍と腸閉塞をそれ
ぞれ 1 例、Grade I の無気肺を 1 例に認めた。経口摂取開始までの平均期間は 8 日(6 ~ 14 日)で、平均在院日数
は 19 日(14 ~ 35 日)であり、在院死亡は認めなかった。特発性食道破裂は早期診断、早期治療がなされない場合、
死亡率が 18 ~ 30%と高率となることが報告されてきた。近年疾患に対する認識が周知され早期診断がなされる
ようになったこと、保存的治療や手術術式の工夫さらに周術期管理の進歩によって、予後の改善が認められてき
ている。当科で経験した症例においても、比較的早期に治療を開始でき、術式として基本的に左開胸開腹による
穿孔部位の層々縫合閉鎖と大網被覆により、縫合不全やその他の重篤な合併症がなく、転帰は良好であった。手
術画像を供覧し報告する。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-09-4
当院で経験した特発性食道破裂に対する
診断、治療方針について
1)松山市民病院 外科
木村 裕司1)、梅岡 達生1)、木村 真士1)、波多野 浩明1)、上平 裕樹1)、加賀城 安1)、柚木 茂1)、
河田 直海 1)、渡邊 良平 1)
特発性食道破裂は嘔気や嘔吐を誘因に食道に突発的に破裂・穿孔が生じる病態で、比較的まれであるが、診断
と治療が遅れると膿胸や縦隔膿瘍といった合併症により重篤な経過を辿る、予後不良な疾患である。今回、当院
で経験した特発性食道破裂症例 3 例を振り返り、診断、治療方針について検討したので報告する。症例 1 は 53 歳
の男性で、重度のアルコール性肝障害、急性膵炎の既往があった。飲酒後の嘔吐、背部痛を主訴に当院救急外来
を受診、画像検査で多量左胸水、縦隔気腫等を認め、shock vital に陥った。緊急手術を施行したものの、出血コ
ントロールに難渋し、術後 5 時間で死亡した。症例 2 は 55 歳の男性で、突然の激しい背部痛を主訴に当院救急外
来を受診、呼吸不全を呈していた。画像検査で両側胸水、縦隔気腫を認め、緊急手術を施行した。穿孔部位が特
定できなかったため、右開胸を選択したが、穿孔部は下部食道左壁であった。穿孔部を 1 層縫合し、有茎肋間筋
弁で被覆したが、不十分なアプローチや全身状態不良のため、術後は縫合不全を併発し、治療に難渋した。症例
3 は 60 歳の男性で、吐血を主訴に当院救急外来を受診し、胸部 CT で縦隔気腫、上部消化管内視鏡検査で下部食
道穿孔を指摘された。画像上、汚染が縦隔内に限局していたため、食道内腔に持続吸引チューブを留置するとと
もに抗菌薬投与等による保存的加療を行い、軽快した。特発性食道破裂は、胸腔内穿破型と縦隔内限局型に分類
される穿孔形式により、外科的手術が絶対適応か、保存的治療が可能かといった指針が決定されるため、早期の
診断と鑑別を要す。それに加え、患者の基礎疾患や全身状態に配慮した治療方針を考慮すること、また手術に際
しても穿孔部位の同定や適切な手術部位へのアプローチを計画することも重要であり、個々の症例に応じた適切
な判断が求められると思われた。
259
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-09-5
胃・十二指腸潰瘍穿孔に対する治療の変遷と
今後の展望
教
1)川崎医科大学 総合外科
育
繁光 薫 1)
講
演
過去 21 年間に当院で診療した胃・十二指腸潰瘍穿孔症例 151 例に対する治療の変遷を検証し、今後の方針を考
察した。第 1 期(1993 年~ 1997 年)では 28 例全例に手術(胃切除術 27 例・大網充填 1 例)が行われ、抗潰瘍薬が
普及した第 2 期(1998 年~ 2002 年)では、46 例中 13 例に保存的治療が行われ、手術例 33 例中においても胃切除
16 例・大網充填 17 例と胃温存が行われるようになった。第 3 期(2003 年~ 2007 年)では保存的治療の適応をさ
らに拡大し、34 例中 13 例に手術(胃切除 4 例・大網充填 9 例)、21 例に保存的治療が行われていた。しかしなが
ら高齢者や合併症のため保存的治療困難症例の増加、鏡視下手術の普及に伴い低侵襲で大網充填が行えるように
なったことなどから、第 4 期(2008 年~ 2013 年)では再度手術例が増加し、43 例に対し 30 例に手術(胃切除 1 例・
開腹大網充填 22 例・鏡視下大網充填 5 例・ドレナージ 2 例)が行われていた。これらの変遷を経て、現在では鎮
痛剤無効症例・大量腹水貯留例・高齢あるいは基礎疾患による全身状態不良例に対し、原則腹腔鏡下大網充填術
を施行し、腹膜炎によるショック症例には気腹による循環動態への影響を考慮し、開腹大網充填術を行っている。
術後在院日数は鏡視下大網充填術が有意に短く、今後さらに本術式が増加するものと思われる。
パネルディスカッション
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-09-6
当科における胃十二指腸潰瘍穿孔に対する
手術加療症例の検討
シンポジウム
関 連 演 題
1)弘前大学 消化器外科
室谷 隆裕1)、木村 昭利1)、和嶋 直紀1)、赤坂 治枝1)、久保 寛仁1)、須藤 亜希子1)、袴田 健一1)
ワークショップ
関 連 演 題
【はじめに】近年、胃十二指腸潰瘍治療の進歩に伴い、胃十二指腸潰瘍穿孔症例に対して保存的治療を選択する
機会が増えつつあるが、その一方で患者の高齢化に伴い、多数の併存疾患を有する症例が増え、手術適応となら
ざるを得ない症例も存在する。そこで当科における胃十二指腸潰瘍穿孔に対する手術症例に関しての検討を行っ
た。
【対象と方法】2006 年 2 月から 2014 年 4 月までの間に胃十二指腸潰瘍穿孔にて入院となった 20 症例のうち手
術加療が選択された 15 症例を対象とした。5 例に関しては全身状態が安定し、腹膜刺激症状が上腹部に限局し、
CT 上腹水が少量であることから保存的治療が選択された。手術症例 15 例について、背景因子、重症度診断
(E-PASS scoring system, POSSUM score)、術式、術後合併症を中心に retrospective に検討を行った。
【結果】
対象症例の平均年齢は 60.3 歳、男性 10 例、女性 5 例、胃潰瘍穿孔が 6 例、十二指腸潰瘍穿孔 9 例、腹腔鏡下手術
が 2 例、開腹手術が 13 例であった。術式としては胃切除術 3 例(胃全摘 1 例、幽門側胃切除術 2 例)、大網充填術
8 例、洗浄ドレナージ術 4 例であった。平均手術時間は 96 分、出血量は 157ml であった。創感染、腹腔内膿瘍等
の術後合併症を 9 例(60%)に認め、周術期死亡例は 3 例(20%)であった。Clavien-Dindo 分類における Grade
IIIa 以上の合併症は 7 例に認め、C-D I・II 群と C-D IIIa-V 群で比較検討を行ったところ、在院日数(p=0.036)、
PNI(p=0.007)
、E-PASS scoring system における PRS(p=0.030)
、CRS(p=0.015)
、POSSUM score における PS
(p=0.016)
、OS(p=0.021)、POSSUM morbidity(p=0.003)
、POSSUM mortality(p=0.009)で有意差を認めた。
【ま
とめ】当科での手術症例の特徴としては①発症から受診までの時間が長い、②複数の併存疾患を有している、③
低栄養状態であることが挙げられる。上記の要因のため、手術適応となり術後管理に難渋する症例は今後も増加
してくるものと考えられる。このような重症症例に対しては全身状態、病態、併存疾患を把握し、適切な治療方
針を決定することが重要となる。そのうえで E-PASS scoring system や POSSUM score 等のリスク評価法を用
いることは有用であると考える。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
260
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-09-7
当院における整容性を考慮した
上部消化管穿孔に対する治療戦略
1)半田市立半田病院 救命救急センター
2)半田市立半田病院 外科
太平 周作 1)、岡田 禎人 2)、林 英司 2)、永田 純一 2)、前田 隆雄 2)、堀尾 建太 2)、岸本 拓磨 2)、
石田 陽祐 2)、高橋 遼、蟹江 恭和、寺尾 尚哉、則竹 統、久保田 仁
上部消化管穿孔に対する治療は保存的治療および大網充填による手術療法など施設によってその適応ならびに
方法、手術手技はさまざまである。特に十二指腸潰瘍穿孔は若年者に発生することが多いため、手術療法を選択
した場合には整容性も考慮して行うべきであると考える。当院では消化器系手術に対して幅広く腹腔鏡下手術を
行っており、最近では単孔式手術をはじめとする reduce port surgery も積極的に行っている。上部消化管穿孔
症例に対しても 2 孔 3 ポートで行っているため、その手術手技および成績について報告する。保存的治療の適応
は 50 歳未満で腹部症状が上腹部に限局しており、腹部 CT で腹水が上腹部に限局している症例を適応としている。
それ以外の症例に対しては手術療法を行っている。2005 年から現在まで 124 例の上部消化管穿孔症例を経験した
(出血を伴う症例は除く)
。49 例に対して保存的療法を行い、35 例に対して開腹大網充填術を施行した。2009 年
以降は全例に腹腔鏡下手術を行っている。現在までに 40 例に対して腹腔鏡下に行った。開腹移行した症例は 4 例
であった。現在の手術手技を紹介する。臍切開を行い、ラッププロテクターをかけ、12 mm ポートと 5 mm ポー
トを装着した EZ アクセスを装着する。右側腹部のドレーン挿入予定部位より術者左手鉗子として 5 mm ポート
を挿入する。穿孔部位を同定したら、穿孔部位をまたぐように全層に大き目に 1 針糸をかけ大網を被覆して縫合
し縫着する。大網が逸脱する不安がある場合には縫着した大網を周囲の組織と 1 針縫合固定しておく。洗浄はわ
れわれが行っている腹腔鏡下大量洗浄法で 8000ml の洗浄を行う。ドレーンは穿孔部位に 1 本挿入して手術を終
了する。reduce port となったのはごく最近であるが、工夫をしながら現在の簡便で整容性にすぐれた方法となっ
た。術後合併症はなくよい方法と考えている。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-09-8
亜全胃温存膵頭十二指腸切除後、胃空腸吻合
部潰瘍穿孔の 1 例
1)手稲渓仁会病院 外科
寺村 紘一 1)、中村 文隆 1)、水沼 謙一 1)、青木 泰孝 1)、荒木 謙太郎 1)、今村 清隆 1)、
齋藤 博紀1)、田畑 佑希子1)、高田 実1)、加藤 弘明1)、安保 義恭1)、成田 吉明1)、樫村 暢一1)、
松波 己 1)
症例は 60 歳、男性。40 年前に十二指腸潰瘍、13 年前に胃潰瘍の既往がある患者であった。2012 年に中部胆管
癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した。術後 S-1 による補助化学療法を半年間施行したところで通院
を自己中断していた。術後 1 年 7 カ月目、3 日前より腹痛を自覚していたが増悪したため当院に救急搬送された。
バイタルサインは安定していた。左上腹部に限局した圧痛と筋性防御を認めた。CT では上腹部に free air を認
めたが腹水は認めなかった。上部消化管穿孔と診断し、腹痛は限局していたが保存的治療では治療期間が長期化
することを懸念し開腹手術の方針とした。術前に上部消化管内視鏡検査を行い胃空腸吻合部潰瘍と診断した。吻
合部狭窄はなく、また悪性腫瘍は認めなかった。開腹時、腹壁と大網の癒着が高度でありこれを剥離した。腹腔
内に汚染はなく腹水はごく少量であった。胃空腸吻合部の小腸側前壁に 2cm 大の穿孔を認めた。穿孔部が比較
的大きかったため大網充填は行わず穿孔部を縫合閉鎖し大網で被覆した。術後 5 日目より固形物の摂取を開始し、
合併症なく 8 日目に退院した。胃潰瘍穿孔や吻合部潰瘍穿孔に対しては外科的治療が選択されることが多いが症
例によっては保存的治療も行われる。本症例に関して文献的考察を加え報告する。
261
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-09-9
十二指腸水平脚憩室穿通による
後腹膜膿瘍が疑われた 1 例
教
1)福岡大学病院消化器外科
2)福岡大学医学部病理学講座
3)福西会病院
育
講
石井 文規 1)、乗富 智明 1)、武野 慎祐 1)、島岡 秀樹 1)、佐々木 貴英 1)、松本 芳子 1)、
小島 大望 1)、佐藤 啓介 2)、二村 聡 2)、野田 尚孝 3)、山下 裕一 1)
演
パネルディスカッション
シンポジウム
(はじめに)十二指腸憩室穿孔は稀な病態とされている。なかでも水平脚や上行脚の穿通は極めて稀で本邦での
報告例は少ない。今回、我々は十二指腸水平脚憩室穿通による後腹膜膿瘍が疑われた 1 例を経験したので若干の
文献的考察を含めて報告する。
(症例)症例は 60 歳代の女性。前日の夕食後より腹痛が出現し、
翌日近医を受診し、
C T で十二指腸水平脚の憩室を指摘され、近傍に遊離ガス像と右後腹膜への炎症波及を認めた。十二指腸憩室穿
孔、後腹膜膿瘍の診断で当科に紹介となった。心窩部、右季肋部に限局性腹膜炎の所見あり、同日緊急手術となっ
た。手術所見では肝下面、十二指腸右側に混濁した腹水を認め、十二指腸壁は浮腫を伴っていた。術前の画像所
見で穿孔部位は正中右側にあると判断し、Kochel 授動を行い検索したが穿孔部位は同定できなかった。Treitz
靱帯よりアプローチすると、同部位より 4.5 cm の部位に 5 cm 大の黒色調で菲薄化した憩室を認めた。明らかな
穿孔部位は確認できなかったが、穿通していると判断し、全周性に露出させ、GIA で切離した。漿膜筋層縫合を
付加し、さらに大網被覆を加えた。術後の経過は良好で第 18 病日に退院となった。(結語)原因不明の後腹膜膿
瘍においては本疾患も対象にあげる必要があると思われた。
ワークショップ
連
演
題
P-09-10
腹腔鏡手術で治療しえた
十二指腸憩室後腹膜穿孔の 1 例
シンポジウム
関 連 演 題
1)京都大学 消化管外科
田中 英治 1)、肥田 侯矢 1)、西川 泰代 1)、川田 洋憲 1)、岡部 寛 1)、坂井 義治 1)
ワークショップ
関 連 演 題
背景:十二指腸憩室は消化管憩室の中で結腸についで頻度が高いが、その穿孔は比較的まれである。今回我々は
十二指腸憩室の後腹膜穿孔に対して、緊急の腹腔鏡手術で治療しえた 1 例を経験したので、実際の手術手技を供
覧し、若干の文献的考察を加えて報告する。症例:47 歳の女性。急激な腹痛が出現したため当院救急外来を受
診した。腹部造影 CT で、十二指腸背側に後腹膜膿瘍を認め、膿瘍内には気腫と石灰化結節を伴っていた。結石
を伴う十二指腸憩室の後腹膜穿孔と診断し、緊急手術を施行した。手術手技と術中所見:open method で臍にポー
トを挿入して気腹、腹腔内を観察したところ、右側腹部を中心に中等量の混濁した腹水を認め、後腹膜の肥厚も
著明であった。腹腔鏡で手術可能と判断し、5 ポートで手術を施行した。Kocher 授動を進めると、十二指腸背側
の後腹膜腔から膿汁の流出を認め、さらに十二指腸の脱転をすすめ観察を行ったところ、破綻した十二指腸憩室
と結石を確認した。結石を除去し、破綻した憩室壁をトリミングして、縫合閉鎖し、さらに、縫合部周囲に大網
の被覆を行った。胆嚢摘出を施行し、胆道造影を施行して乳頭の開存を確認した後、胆管減圧のため C チューブ
を留置して手術終了した。術後経過:術後 6 日目に上部消化管透視と C チューブ造影を行い、縫合不全がないこ
とを確認後、飲水を開始。術後 9 日目に食事を開始した。術後経過は良好で、術後 20 日目に軽快退院となった。
結語:十二指腸憩室穿孔の多くは緊急手術を要する重篤な病態であり、早期に診断し、適切な治療がなされる必
要がある。本邦においては開腹手術の報告のみで腹腔鏡手術の報告は認めていない。今回われわれは十二指腸憩
室の後腹膜穿孔に対し、腹腔鏡手術で治療しえた 1 例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
262
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-10-1
当院における超高齢者の急性胆嚢炎に対する
比較・検討
1)埼玉医科大学 医学部 消化器一般外科
小島 和人1)、宇治 亮佑1)、髙山 哲嘉1)、森岡 真吾1)、菅野 優貴1)、荻野 直己1)、深野 敬之1)、
大原 泰宏 1)、淺野 博 1)、篠塚 望 1)
高齢者の急性胆嚢炎を診察する機会は増えている中で、超高齢者の急性胆嚢炎に対する治療方法において比較
検討した報告はまだ少ない。今回、2009 年 1 月から 2013 年 12 月までに当科で診断した超高齢者の急性胆嚢炎(19
例)のうち、手術に至った 17 例について retrospective に比較検討を行った。腹腔鏡下胆嚢摘出術群は 10 例(開
腹へ移行した 1 例を含む:以下 A 群)、開腹胆嚢摘出術群は 7 例(以下 B 群)であり、両群で死亡例は 1 例であった。
両群間で以下の項目について比較検討した(項目名:A 群 /B 群)。①平均手術時間:105.6 分 /67.7 分、②症状出
現から当科入院までにかかった日数(平均):2.9 日 /4.7 日、③入院から手術までにかかった日数(平均)
:0.3 日
/2.9 日、④在院日数(平均)
:10.7 日 /21.2 日を比較検討した。また、同時期における前期高齢者(65 歳から 74 歳)、
後期高齢者(75 歳から 84 歳)、その他の年齢群(64 歳以下)についても同様に比較検討することで高齢者および
超高齢者における治療戦略について検討し、若干の文献的考察も加え報告する。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-10-2
抗血栓療法患者の中等度急性胆嚢炎に対する
PTGBD 後待機的腹腔鏡下胆嚢摘出術の有効性
1)恵み野病院 外科
2)北海道大学 消化器外科Ⅰ
柴崎 晋 1, 2)、吉田 雅 2)、本間 重紀 2)、川村 秀樹 2)、高橋 典彦 2)、武冨 紹信 2)
【背景】中等度急性胆嚢炎に対しては患者や施設の状況等に合わせて緊急の開腹もしくは腹腔鏡下手術、あるい
は速やかなドレナージ術が推奨されている。一方で近年では抗血小板・抗凝固剤を内服している患者に遭遇する
機会は増加してきており、その対応には苦慮することが多い。当院では抗血栓療法施行の有無に関わらず、急性
中等度急性胆嚢炎に対しては経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)施行後の待機的 LC を施行している。今回、こ
の治療法の安全性ならびに有効性を検討した。
【方法】2006 年 1 月から 2013 年 3 月までに上記治療を施行した 75
例を対象とした。患者は抗血栓療法の有無に関わらず、中等度胆嚢炎と診断されてから速やかに PTGBD が施行
され、炎症が消退してから待機的に腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行された。抗血栓治療中止後は必要に応じてヘパリ
ン置換を行った。抗血栓治療群(Group-A;n=23)と非治療群(Group-B;n=52)の 2 群間での術後短期成績につ
き retrospective に検討した。【結果】PTGBD 刺入時合併症は 3 例(4%)に認められたがいずれも軽症であり、全
例保存的治療で軽快した。抗血栓療法の有無に関わらず出血性イベントは起こらなかった。開腹移行率は 4% で
あり、両群間に有意差を認めなかった。術後合併症は 10 例(13.3%)に認められ、両群に有意差を認めなかった。
Clavien-Dindo 分類Ⅲ度以上の合併症は 3 例(4%)に認められ、後出血を 1 例、PTGBD 刺入部からの胆汁漏を 2
例に認めた。PTGBD 起因性合併症は 6 例(8%)に認められた。手術時間、術中出血量、術後在院日数において、
両群間で有意差は認められなかった。【結論】抗血小板 / 抗凝固療法施行中の中等度急性胆嚢炎患者に対して、
PTGBD 後の待機的 LC は安全かつ有効な治療法となりうる。
263
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-10-3
抗凝固・抗血小板療法中に施行した
急性胆嚢炎手術症例の検討
教
1)東京医科歯科大学 医学部 肝胆膵・総合外科
育
赤星 径一 1)、落合 高徳 1)、伊藤 浩光 1)、中尾 圭介 1)、古山 貴基 1)、勝田 絵里子 1)、
大庭 篤志 1)、大畠 慶映 1)、上田 浩樹 1)、佐藤 拓 1)、劉 博 1)、千代延 記道 1)、水野 裕貴 1)、
松村 聡 1)、伴 大輔 1)、入江 工 1)、工藤 篤 1)、田中 真二 1)、田邉 稔 1)
講
演
パネルディスカッション
【背景】高齢化社会を背景として心血管疾患に対する抗凝固・抗血小板療法を行っている患者が増えており、緊
急手術に際して十分な休薬が出来ない症例に遭遇することがある。
【対象】過去 6 年間に当院で急性胆嚢炎の診断にて胆嚢摘出術を行った 85 症例を対象とし、抗凝固・抗血小板療
法施行中に行う手術の特徴について検討を行った。
【結果】85 例中 18 例は抗凝固・抗血小板療法中の発症であった。18 例中 7 例は十分な休薬ができないまま手術に
望んだ。使用薬剤の内訳は、ワーファリンと抗血小板薬併用が 2 例、抗血小板薬単独が 5 例であった。基礎疾患は、
冠血管疾患 4 例、心房細動 2 例、頚動脈狭窄症 1 例であった。術前にヘパリン化ないしは休薬を行って手術に臨
んだ 11 例の平均出血量は 289ml、十分に休薬できなかった 7 例は平均出血量 528ml であった。3 例において胆嚢
床から胆嚢を 剥離する際の止血に難渋し、1400ml 前後の術中出血を認め、Tachocomb 等の止血剤や TissueLink
Dissecting Sealer などの止血デバイスを用いた。術中出血は多くなる傾向を認めたが、抗凝固・抗血小板療法の
継続に関連した術後合併症の増加は認めなかった。休薬できなかった理由には、胆嚢炎の緊急度が高く、時間的
猶予が無かったことや、冠動脈ステント留置直後の発症であったこと等が挙げられた。
【結語】急性胆嚢炎手術症例の検討を行った。抗凝固・抗血小板療法継続下に胆嚢摘出術を行わざるを得ない症
例があった。 術中の止血に難渋した際には肝切除の際の止血テクニックの活用が有効であった。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-10-4
抗血栓薬内服症例での急性胆嚢炎への
緊急胆嚢摘出術
シンポジウム
関 連 演 題
1)福山市民病院 外科
吉本 匡志 1)、日置 勝義 1)、門田 一晃 1)、大川 広 1)、伊藤 雅典 1)、黒瀬 洋平 1)、石井 龍宏 1)、
中野 敢友 1)、淺海 信也 1)、貞森 裕、大野 聡、金 仁洙 1)、高倉 範尚 1)
ワークショップ
関 連 演 題
〈背景〉高齢者の増加に伴い、抗血栓薬を内服している緊急手術症例が増加している。急性胆管炎・胆嚢炎診療
ガイドライン 2013 では「急性胆嚢炎の第一選択の治療は早期または緊急胆嚢摘出術で、できるだけ腹腔鏡下胆嚢
摘出術が望ましい」としている。〈目的〉この度我々は急性胆嚢炎で緊急胆嚢摘出術を施行した症例を、抗血栓薬
内服群と非内服群に分け、周術期因子を比較し、抗血栓薬内服症例に対する急性胆嚢炎時の緊急胆嚢摘出術の妥
当性を検討する。〈対象〉2007 年~ 2013 年に急性胆嚢炎で緊急胆嚢摘出術を施行した 221 例。〈結果〉背景因子は
抗血栓薬内服群:非内服群 58:163 例、年齢 76(47–92)
:68(27–95)歳、男女比 41/17:90/73、周術期因子は手
術時間 110(42–208):103(37–201)分、出血量 50(0–1420)
:30(0–4880)ml、在院日数 7(3–41)
:6(1–82)日、
輸血率 12:8%、開腹 / 腹腔鏡下手術 8/50:17/146 例、腹腔鏡下手術における開腹移行率 18:11% であった。
〈考
察〉抗血栓薬内服群は有意に年齢が高かったが、周術期因子においては手術時間、出血量、在院日数や輸血率に
は有意差を認めなかった。また開腹手術群、腹腔鏡下手術群にわけ、それぞれ抗血栓薬内服の有無で手術時間・
出血量・在院日数を比較したが、どちらの群も抗血栓薬の内服の有無でこれらに有意差を認めなかった。抗血栓
薬内服の有無にかかわらず、開腹手術群、腹腔鏡下手術群で比較を行うと、開腹群で手術時間・出血量・在院日
数は有意に高かった。抗血栓薬を内服している症例に対しても、ガイドラインに則り緊急胆嚢摘出術を施行する
ことは妥当であると考えられる。また抗血栓薬内服の有無に関わらず、腹腔鏡下手術で完遂したほうが、手術時
間・出血量・在院日数は短縮できるのかもしれない。
〈結語〉抗血栓薬内服症例に対しても、急性胆管炎・胆嚢
炎診療ガイドライン 2013 に則り、急性胆嚢炎時には緊急胆嚢摘出術が推奨される。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
264
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
胆嚢捻転症の一切除例
P-10-5
1)東京医科歯科大学 医学部附属病院 肝胆膵外科
千代延 記道 1)、落合 高徳 1)、劉 博 1)、水野 裕貴 1)、大庭 篤志 1)、佐藤 拓 1)、大畠 慶映 1)、
上田 浩樹1)、赤星 径一1)、中尾 圭介1)、伊藤 浩光1)、古山 貴基1)、勝田 絵里子1)、松村 聡1)、
藍原 有弘 1)、伴 大輔 1)、入江 工 1)、工藤 篤 1)、田中 真二 1)、田邉 稔 1)
症例は 68 歳女性。Goodpasture 症候群に伴う慢性腎不全にて透析導入中、右側腹部痛・嘔気・微熱を主訴に、
当院心臓内科外来を受診された。来院時、39 度の発熱、炎症反応の上昇(WBC : 20700/µl、CRP : 37.67mg/dl)
を認め、また既往歴に陳旧性心筋梗塞と腰椎圧迫骨折があることから、同日緊急入院、抗生剤投与(VCM+CTRX)
が開始された。腹部エコーでは、腹腔内に被包化された腫瘤を右側腹部に指摘されたが、圧痛・反跳痛・筋性防
御といった明らかな腹膜炎兆候は認めていなかった。入院 4 日後に意識レベル低下を認めたため腹部造影 CT を
施行したところ、胆嚢頸部から胆嚢管が回転した形状で描出され、胆嚢捻転に伴う急性胆嚢炎・腹腔内膿瘍と診
断、緊急手術(開腹胆嚢摘出術・洗浄ドレナージ・術中胆道造影)をおこなった。術中所見では、胆嚢を覆いか
ぶさるように大網が癒着、胆嚢との間に膿瘍を形成していた。また、胆嚢は頸部でのみ肝臓に固定された遊走胆
嚢で、GrossB 型の所見を呈していた。術後は全身状態を考慮し呼吸器管理とし、術後 2 日目に抜管、術後 6 日目
には偽膜性腸炎を併発、内服加療を行った。加療継続のため術後 7 日目で腎臓内科に転科となった。病理組織学
的には、上皮から固有筋層、漿膜下層にかけて広範に壊死像を認め、また漿膜下層では出血・血栓・膿瘍を認め
た。胆嚢捻転症は、通常肝床部に固定される胆嚢が固定不十分な状態で胆嚢頸部や胆嚢菅で捻転を起こすことで
血流障害を来す疾患であり、捻転度 180 度以下で自然寛解も見られる不完全型と、捻転度 180 以上で胆嚢壊死に
至る完全型に分類されており、
本症例は完全型であった。比較的まれな症例につき、
文献的考察を加えて報告する。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-10-6
胆道癌による十二指腸狭窄に対し
ステント留置が有効であった 2 例
1)東京医科歯科大学医学部附属病院 肝胆膵・総合外科
上田 浩樹 1)、落合 高徳 1)、劉 博 1)、千代延 記道 1)、水野 裕貴 1)、大庭 篤志 1)、大畠 慶映 1)、
佐藤 拓 1)、赤星 径一 1)、中尾 圭介 1)、伊藤 浩光 1)、古山 貴基 1)、勝田 絵里子 1)、松村 聡 1)、
藍原 有弘 1)、伴 大輔 1)、入江 工 1)、工藤 篤 1)、田中 真二 1)、田邉 稔 1)
【背景】癌による幽門、十二指腸の狭窄は、食事摂取不能や胃液嘔吐により著しく ADL が低下する重篤な病態で
あり、Oncologic emergency の一つである。全身状態不良例が多く、バイパス手術を選択しにくい場合も多い。
2010 年 4 月より内視鏡的十二指腸ステント留置が保険収載され有用性を示す報告が散見されるが、胆道癌での報
告は比較的少ない。当科で胆道癌による十二指腸狭窄に対しステント留置が有効であった 2 例を経験したので、
若干の文献的考察を加え報告する。【症例 1】83 歳女性。慢性 C 型肝炎にて通院中、全身倦怠感が出現し肝門部胆
管癌による閉塞性黄疸の診断となった。減黄後手術を行うも開腹所見にて十二指腸浸潤を認め、肝切除合併膵頭
十二指腸切除の適応であったが、背景肝、全身状態を考慮し根治術を断念した。術後 1 年で十二指腸狭窄となり
Wallflex 十二指腸用ステント(Boston Scientific, 22mm*9cm)を留置した。3 日後より食事再開し、合併症なく経
過した。処置後 116 日で原病死したが、終末期まで経口摂取可能であった。【症例 2】44 歳男性。皮膚黄染が出現
し胆嚢癌肝門浸潤による閉塞性黄疸の診断となった。減黄後手術を行うも開腹所見にて腹膜播種を認め、根治術
を断念した。胆管ステントを留置し化学療法を開始するも、術後 1 年 9 ヶ月で十二指腸狭窄となり Niti-S 胃十二
指腸用ステント(Century Medical, 22mm*6cm)を留置した。ステント口側に通過障害の残存を認めたため、口
側に Overlap させるよう同じステントを追加留置した。3 日後より食事再開し、合併症なく経過した。処置後 96
日で原病死したが、終末期まで経口摂取可能であった。
【結語】重篤な合併症なく一定の経口摂取可能期間を得
られる十二指腸ステントは、paliative care の 1 つとして有用であると考えられた。
265
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-10-7
膵頭十二指腸切除術後総肝動脈出血に対し肝動脈縫合
止血と門脈部分動脈化を施行し救命し得た 1 症例
教
1)明和病院
育
竹中 雄也1)、友松 宗史1)、後野 礼1)、一瀬 規子1)、中島 隆善1)、小野 朋二郎1)、北濱 誠一1)、
吉江 秀範 1)、生田 真一 1)、張 宇浩 1)、木村 文彦 1)、相原 司 1)、柳 秀憲 1)、山中 若樹 1)
講
演
パネルディスカッション
【はじめに】膵頭十二指腸切除術後の重篤な合併症の一つに仮性動脈瘤破裂による腹腔内出血があり、ひとたび
発生すれば緊急な対応が必要となる。今回我々は肝動脈仮性瘤の破裂による腹腔内出血に対して肝動脈の縫合止
血と門脈部分動脈化(以下 APS:Arterioportal Shunting)を行い救命しえた 1 例を経験したので報告する。
【症例】
70 歳代、男性。中部胆管腫瘍の診断にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が施行された。術後、腹腔内感染と膵
液漏を認めドレナージを継続し全身状態も安定していた。術後 16 病日に腹腔内出血を認め、shock 状態であった
ため止血を目的に緊急手術を行った。出血源は近位総肝動脈腹側に認め縫合止血を行ったが周囲組織は脆弱化し
ており肝動脈血流を温存した止血は不能であった。術中エコーにて肝動脈血流は途絶しており肝不全が危惧され
たため APS を目的に回結腸動静脈吻合を行った。吻合後、門脈に拍動性の血流を確認し手術を終了した。止血
術後、全身状態は安定していたが AST/ALT が徐々に上昇。門脈圧亢進症による肝機能障害を疑い吻合部塞栓
を目的に血管造影を行ったが回結腸動静脈吻合部はすでに閉塞していた。その後、肝機能は改善し重篤な合併症
を認めず経過した。
【考察】膵頭十二指腸切除術後の仮性動脈瘤破裂は主に膵液漏と感染に伴う慢性炎症により
動脈組織が浸食され発生するとされ、発生すれば死亡率は高く重篤な合併症のひとつである。治療法として開腹
止血術と経カテーテル的血管塞栓術が選択されるが、止血可能であっても肝動脈血流が温存できなければ肝不全
など重篤な状態となる。本症例では出血性 shock となっており開腹止血術を選択したが、肝動脈を温存できず術
後肝不全が危惧されたため APS を行った。術後一過性に AST/ALT の上昇を認めたが門脈圧亢進に伴う肝機能
障害と考えられ重篤な肝不全は認めなかった。本症例のように肝動脈血流が途絶した場合に APS は有用な手技
であると考えられた。
シンポジウム
ワークショップ
連
膵体尾部切除後腹腔内出血の 1 例
演
題
P-10-8
シンポジウム
関 連 演 題
1)兵庫医科大学
近藤 祐一1)、飯室 勇二1)、平野 公通1)、岡田 敏弘1)、麻野 泰包1)、鈴村 和大1)、宇山 直樹1)、
中村 育夫 1)、裵 正寛 1)、末岡 英明 1)、藤元 治朗 1)
ワークショップ
関 連 演 題
〈症例〉53 才、男性。
〈現病歴〉約 30 年前よりアルコール多飲歴あり、約 2 年前より禁酒していた。平成 22 年より
慢性膵炎加療開始。同年脾仮性動脈瘤に対しコイル塞栓による IVR 加療施行した。平成 24 年、慢性膵炎増悪時
当院肝胆膵内科紹介受診、以降同科にて膵管ステント留置による慢性膵炎加療を行った。平成 26 年 3 月慢性膵炎
急性増悪、膵管ステント交換時の ERCP 造影にて膵体部主膵管狭窄を認め、同部位の擦過細胞診では classIV,
adenocarcinoma 疑いとの結果であった。CT/MRI/PET では同一部位に明らかな腫瘍性病変の存在は同定困難で
あったが MRI 拡散強調像では膵体部に強信号を認めた。〈手術〉膵体部癌の術前診断にて膵体尾部脾合併切除施
行。膵切離断端迅速診断陽性であり、SMV 前面が露出されるレベルまで膵実質の追加切除を行い、切離面近傍
に GDA の走行を認めた。
〈術後経過〉術後膵液漏を認めドレナージ加療を継続、腹水 AMY ピーク値は 165500U/l
であった。第 20 病日ドレーン排液が突然血性を呈し腹腔内出血の診断にて緊急血管造影を施行。GDA 分枝から
の出血を認め、コイル塞栓にて止血が得られた。第 24 病日、再出血し再度緊急血管造影施行。前回塞栓部に仮
性動脈瘤の形成を認め、同部位からの出血と考えられた。SMA からの造影にて GDA 末梢枝との交通枝を確認し
GDA をコイル塞栓した。以降再出血は認めていないが、膵液漏に対しドレナージ加療を継続中である。〈考察〉
初回出血時のコイル塞栓は、責任血管と考えられた GDA 分枝に対しマイクロカテーテルを用いて施行し、末梢
血管のみの塞栓であったが止血が得られたこと、膵頭部領域の虚血も危惧されたことから同部位の塞栓で終了し
た。しかしながら再出血を来したことから、膵液瘻の存在からすると仮性動脈瘤のハイリスク状態であり、膵頭
部アーケードの存在が確認できれば初回塞栓時より GDA を含めた広範囲の塞栓を行うべきであったと考えら
れ、反省深い症例であった。以上若干の考察を加え報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
266
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-10-9
膵頭十二指腸切除後の遅発性仮性膵嚢胞を
伴う仮性動脈瘤破裂の一例
1)東京慈恵会医科大学付属第三病院 外科、2)同外科学講座 消化器外科分野
塚﨑 雄平 1)、安田 淳吾 1)、恩田 真二 1)、船水 尚武 1)、伊藤 隆介 1)、藤岡 秀一 1)、
岡本 友好 1)、矢永 勝彦 2)
【はじめに】仮性動脈瘤破裂は膵頭十二指腸切除術後の合併症の中でも比較的早期に生じる重篤なものである。
今回、われわれは遅発性に発生し、巨大仮性膵嚢胞を伴う仮性動脈瘤破裂を経験したので報告する。
【症例】72 歳男性。2013 年 4 月に中部胆管癌に対して膵頭十二指腸切除術施行(T3N1M0fStage Ⅲ)。その後、外
来にて塩酸ゲムシタビンによる術後補助化学療法を施行した。化学療法終了後、明らかな再発なく全身状態安定
していたが、画像上軽度の膵管拡張を認めていた。2014 年 2 月下旬に軽度貧血を認め、外来にて精査を行ってい
たところ上腹部痛と食欲不振を認め緊急入院となった。腹部造影 CT にて左上腹部を占める巨大仮性膵嚢胞を認
めた。また左右肝動脈分岐部レベルの仮性動脈瘤を疑われた為、緊急腹部血管造影を行ったところ、同部に仮性
動脈瘤を認めたが破裂所見はなく血圧など全身状態は安定していたため動脈塞栓は行わなかった。巨大な仮性膵
嚢胞に対して経皮的にドレナージを行ったところ暗血性の排液を認め、Amy 値も高値であり仮性膵嚢胞内出血
と考えられた。その後、新たな嚢胞内出血はなくドレナージにて保存的加療を行っていたところ、入院第 8 病日
にドレーンより多量の新鮮血流出、血圧低下を認め再度緊急腹部血管造影を行った。血管造影では前回認めた、
左右肝動脈分岐部の仮性動脈瘤の破裂を認め、肝動脈塞栓術を施行した。その後の経過は良好で肝不全などの合
併症なく、仮性膵嚢胞も保存的に軽快して第 35 病日に退院となった。
【まとめ】本症例の仮性膵嚢胞の原因及び動脈瘤との関係は不明であるが、膵管空腸吻合部狭窄が関与している
と考えられた。膵頭十二指腸切除術後の遅発性の仮性動脈瘤破裂は稀であり、さらに本症例は出血性の巨大仮性
膵嚢胞を伴っており、示唆に富む症例と思われたので報告した。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
各種胆道再建術の問題点
P-10-10
1)近畿大学医学部安全衛生管理センター
橋本 直樹 1)
(目的)胆管空腸 R-Y(以下 R-Y)の空腸脚と十二指腸の第2部との側々吻合を行う術式 Roux-Y Duodenojejunal
anastomosis(以下 RY-DJ)を考案した。そこで、胆管空腸 R-Y と RY-DJ, 胆管十二指腸吻合(以下 C-D)症例を対
象に胆道シンチグラフィ(以下胆道シンチ)を用いて胆汁の流出動態、
術後の胆道感染の程度について検討した。
(対象および方法)R-Y: 良性胆管狭窄6例、先天性胆道拡張症8例、 RY-DJ: 先天性胆道拡張症6例、胆管十二
指腸吻合:総胆管結石を合併した傍乳頭憩室7例 健常群5例を対照とした。胆道シンチの方法は、術後1-3
年の空腹時に横河メディカル Starcam 3000 を使用し、胆道排泄性の放射性医薬品(以下ラジオ・アイソトープ:
(結果)1.上
RI)である 99m Tc-PMT を静注後、仰臥位にて1フレーム1分で約1時間 dynamic scan を行った。
位小腸への到達時間 R-Y は、65 ± 5 分、RY-DJ は 45 ± 5 分、C-D は、40 ± 5 分、対照は 40 ± 5 分で、R-Y は、対
照に比し、有意に遅延した。2.胆道シンチ:R-Y は挙上空腸脚に Tc の著明な鬱滞を認め、60 分で少し上位小腸
への Tc の流れが確認できた。一方、RY-DJ は、挙上空腸脚の Tc は、大部分が空腸十二指腸側々吻合を介して
十二指腸へ流れ、一部は RY の脚より上位小腸へ流れ、Tc の鬱滞もなくスムーズな胆汁の流れであった。CD で
は Tc の鬱滞もなくスムーズに十二指腸への流出が認められた(図 2, 3, 4)
。3.術後胆道感染:R-Y は、2例(14%)
に認められたが、RY-DJ, C-D では胆道感染はなかった。
(結語)1.胆道シンチは非侵襲的かつ適確に生理的な胆
汁の排泄動態を評価しえた。2.RY-DJ, C-D は胆汁の鬱滞もなく、生理的な胆汁の排出動態であった、一方 RY
は挙上脚に胆汁の鬱滞を認めた。
267
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-11-1
当院の過去5年間における
急性虫垂炎治療の検討
教
1)公立刈田綜合病院 外科
2)仙台市立病院 外科
育
講
貝羽 義浩 1, 2)、大橋 洋一 1)、佐藤 馨 1)、高田 秀司 1)、阿部 立也 1)
演
パネルディスカッション
【はじめに】我々は 2006 年より急性虫垂炎に対して腹腔鏡下虫垂切除術(LA)を導入し、2009 年以降は全急性虫
垂炎の 90%以上の症例に LA を行っている。我々の行っている急性虫垂炎に対する外科治療を検討したので報告
する。
【対象と方法】2009 年 1 月から 2014 年 5 月までに当院で施行された急性虫垂炎手術例、136 例を対象とし、
これらの手術時年齢、診断方法、手術時間、虫垂炎の程度、術後在院日数、術後合併症を retrospective に検討
した。
【結果】136 例の内訳は、男性 72 例、女性 64 例。診断は、小児例は被爆を考慮し腹部エコーのみが多かっ
た(10 歳未満はエコーのみが 70%)が、成人は 90%に CT を施行し、他疾患との鑑別、炎症の程度、膿瘍の有無
など詳細な画像診断を行った。手術時年齢は 4 ~ 96 歳、平均 36 歳、手術時間は平均 68 分、平均術後入院日数 5.9
日で、虫垂炎の程度は、カタル性 6 例、蜂窩織炎性 74 例、壊疽性 40 例、穿孔性 16 例であった。手術法は、術者
の判断で決められ、開腹手術は 9 例(6.6%)
、LA は 127 例(93.4%)に施行した。術後合併症は、創感染 10 例、肺
炎 1 例で、死亡例はなかった。LA 症例 127 例を検討すると、手術時間は平均 68 分、平均術後入院日数 5.4 日で、
術後合併症は創感染 9 例(6.6%)であった。LA のうち開腹移行は 2 例で、開腹理由は高度癒着 1 例、腸管拡張と
高度炎症が 1 例であった。開腹手術 9 例では、手術時間は平均 88 分、平均術後入院日数 12 日であった。4 例に膿
瘍を伴っており、このうち 3 例は回盲部切除が行われた。術後合併症は、創感染 1 例(11.1%)であった。【結語】
当科では術者によって手術法を選択しているが、2009 年以降その 90%以上に LA が施行されていた。LA は、安
全性に優れる有用な方法で、当科では急性虫垂炎治療の第1選択となっている。
シンポジウム
ワークショップ
連
当院における腹腔鏡下虫垂切除術の検討
演
題
P-11-2
シンポジウム
関 連 演 題
1)戸塚共立第 1 病院 外科、2)昭和大学江東豊洲病院 一般救急外科、3)昭和大学病院 消化器・一般外科
林 隆広 1)、村井 紀元 1)、榎澤 哲司 1)、吉澤 太人 1)、鈴木 恵史 1)、山下 皓正 2)、中村 明央 2)、
福島 元彦 1)、横川 秀男 1)、斉藤 祥 3)、村上 雅彦 3)
ワークショップ
関 連 演 題
【はじめに】急性虫垂炎に対する虫垂切除術は、救急で最も多く経験する手術である。腹腔鏡下虫垂切除は、虫
垂炎に対する標準術式となっており、近年、単孔式腹腔鏡下虫垂切除術(SILA)も普及してきている。当院では
急性虫垂炎に対し、2011 年 5 月より SILA を導入し、2014 年 3 月までに 87 例施行している。
【方法】今回、我々は
2009 年 4 月~ 2014 年 3 月の 5 年間に急性虫垂炎の診断で、腹腔鏡下虫垂切除術を施行した 150 例を対象に、SILA
群 87 例と 3 ポートで行う従来の腹腔鏡下虫垂切除術(LA)群 63 例に分け、術前患者背景因子、手術因子、術後
因子などについて比較検討した。
【結果】患者背景因子では、男女比(SILA:LA =男 43 人 女 35 人:男 39 人 女 24 人)
、年齢(40.4 歳:43.8 歳)、BMI(21.9:22.4)
、穿孔性虫垂炎の比率(17.2%:17.4%)
、術前 WBC(13187/
µl:14149/µl)
、CRP(5.2:6.4)で有意差はみられなかった。手術因子では、SILA の方が、手術時間は長く(87.5
分:80.3 分)
、出血量は少なく(1.3ml:4.0ml)、完遂率は高い(89.7%:87.3%)傾向があったもののそれぞれ有
意差はなかった。また、開腹移行例(0 例:4 例、p = 0.017)
、ドレーン挿入例(22 例:30 例、p = 0.004)は LA の
方が多く有意差を認めた。術後因子では、SILA の方が、術後在院日数は短く(6.71 日:7.7 日)
、合併症率は低い
(6.9%:9.5%)傾向であったが、いずれも有意差はみられなかった。単孔式手術は、医療材料費が高価であると
されてきたが、当院では、ポート等の手術時の医療材料費は、SILA の方が安価で、経済的であった。
【考察】
SILA は、LA と比べ、鉗子と腹腔鏡との干渉があり手術難度は高いが、当院では、手術成績は、LA と同等であり、
低侵襲で、有用な治療手段と考えられた。内視鏡外科の習熟に伴い開腹移行例は年々減少しており、単孔式手術、
reduced port surgery の教育的観点からも今後も積極的に SILA を行っていく必要があると考えられた。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
268
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
虫垂周囲膿瘍に対する治療戦略
P-11-3
1)耳原総合病院 外科
吉川 健治1)、石田 ゆみ1)、今井 稔1)、富岡 百合子1)、外山 和隆1)、大浦 康宏1)、戸口 景介1)、
山口 拓也 1)、硲野 孝治 1)
虫垂炎に起因した虫垂周囲膿瘍は径が 3cm 未満の場合は抗生剤単独治療でも良好な成績が期待できる。膿瘍
径が 3 cm を超える場合は穿刺ドレナージ等の観血的治療を追加されることも多い。しかし、常に安全な穿刺経
路が確保できるとは限らない。そのような場合我々は虫垂周囲膿瘍に対してエコーガイド下に 23 G細径針によ
る単回穿刺膿瘍吸引を行い可及的に膿瘍を吸引することでドレナージチューブを留置することなく良好な経過を
得た症例を少なからず経験するようになった。今回虫垂周囲膿瘍の治療方針について単回穿刺吸引の有用性を含
めて自検例の経験を基に考察した。方法:虫垂炎に起因した虫垂周囲膿瘍 15 例を膿瘍径 30 mm 以下の症例(A群)
とそれ以上の 2 群(B群)に分け治療法 再発の有無 治療に起因した合併症 使用抗生剤の状況を比較した。
症例の内訳はA群 8 例中 7 例が初回虫垂炎に起因した膿瘍であり 1 例は虫垂炎術後の遺残膿瘍であった。B群は
初回虫垂炎に起因した虫垂周囲膿瘍 4 例 虫垂炎術後遺残膿瘍 3 例であった。膿瘍径の平均はA群 24.4mm B
群 42.7mm であった。治療法はA群は 8 例全例抗生剤単独 B群は抗生剤単独治療が 3 例 抗生剤治療に加えて
単回穿刺膿瘍吸引を施行した症例 4 例であった。ドレナージチューブを留置および開腹手術にてドレナージを要
した症例はなかった。使用抗生剤はA群の 7 例中 5 例は 2 世代セフェム系単独 2 例に 3 世代広域抗生剤が使用さ
れた。一方B群は 5 例に 3 世代広域抗生剤を 2 例に 2 世代セフェム系抗生剤が使用された。平均在院日数はA群 9 日 B群 15 日であった。両群とも膿瘍の再発 合併症の発生はなかった。結語:膿瘍径 3cm 未満では保存的治
療可能である。膿瘍径が比較的大きな場合でもドレナージチューブの留置を行わない単回穿刺吸引のみでも良好
な治療成績が期待できる可能性がある。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-11-4
急性虫垂炎における回盲部切除術の
予測因子の検討
1)済生会横浜市東部病院 救命救急センター
齋田 文貴 1)、松本 松圭 1)、北野 光秀 1)
【目的】急性虫垂炎の治療は手術が基本であるが、わが国では腰椎麻酔で施行する事も多い。しかし、その中に
は腰椎麻酔では、手術困難な回盲部切除(IR: ileosecal resection)が必要な症例もあり、術前評価は慎重に行わ
れるべきである。さらに膿瘍形成を伴う場合には IR となる可能性が高いとされ、近年、非手術療法の選択が推
奨されている。急性虫垂炎に対する IR 施行の頻度は 1.6% とされているが、術前に予測をする検討の報告はなく、
膿瘍形成との因果関係も明らかではない。本研究の目的は、IR 施行の予測モデルを開発することである。
【方法】
本研究は、急性虫垂炎と診断され手術を施行した症例を対象とした単施設後ろ向き観察研究(2007 年 – 2014 年)
である。データセットはすべてカルテから抽出し、CT 所見は放射線科医の読影結果に基づいて抽出した。除外
基準は、術前 CT 未施行例とした。IR の有無を転帰とし、記述統計、ロジスティック回帰分析を用い検討した。【結
果】対象は 1008 例中の 927 例であった。年齢の中央値は 33 歳で男性は 58.2%であった。IR 施行症例は 4.3%(37 例)
であった。症状から受診までの日数の中央値は 1 日であった。単変量解析では年齢、症状から受診までの日数、
CT における糞石、膿瘍形成、腹水、遊離ガス、同定不可能、壁肥厚の所見の 8 項目に有意差(P<0.05)を認めた。
これらを説明変数として多変量解析をした結果、有意な予測因子は膿瘍形成(OR32 P<0.01)
、年齢(OR1.02
P<0.05)
、
症状から受診までの日数(OR1.08 P<0.01)の 3 つが残り、
膿瘍形成が最も強い予測因子であった。
【考察】
IR の必要性が術前に予測できれば治療法も変わってくる。手術療法であれば麻酔法のみならず、皮膚切開の選
択も異なり、また非手術療法としての経皮的膿瘍ドレナージも選択肢の 1 つとなる。
269
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
急性虫垂炎の重症度判定についての考察
P-11-5
教
1)福岡大学 医学部 消化器外科学講座
育
山口 良介 1)、佐藤 啓介 1)、大宮 俊啓 1)、小島 大望 1)、島岡 秀樹 1)、佐々木 貴英 1)、
佐々木 隆光 1)、乗富 智明 1)、山下 裕一 1)
講
演
パネルディスカッション
急性虫垂炎の重症度診断について検討した。2011 年 1 月~ 2014 年 3 月まで当科で急性虫垂炎に対する手術を
行った 110 例を対象として、臨床所見、血液検査所見、腹部 CT 所見、術中所見と虫垂炎の重症度の関連ついて
検討した。重症度診断は病理検査または術中所見の記載によりカタル性、蜂窩織炎性、壊疽性虫垂炎の 3 つに分
けた。それぞれ 8 例、52 例、47 例であった。臨床所見では発熱(38℃以上)
、腹膜刺激症状の有無について、血
液生化学検査では白血球数、CRP 値について調査を行った。腹部 CT は 107 例に術前検査として行われており、
虫垂の腫大、糞石、腹水の有無の 3 項目、術中所見では腹水、虫垂の腫脹の有無を調査した。結果として、年齢、
CRP 値が高い群で有意に壊疽性虫垂炎の発生が多かった。若干の文献的考察を加えて発表する。
シンポジウム
ワークショップ
連
急性虫垂炎手術症例における術後合併症の検討
演
題
P-11-6
シンポジウム
関 連 演 題
1)箕面市立病院 外科
星 美奈子1)、東口 公哉1)、小林 照之1)、小堀 優子1)、小山 太一1)、土井 貴司1)、間狩 洋一1)、
青木 太郎 1)、村上 雅一 1)、池田 公正 1)、黒川 英司 1)
ワークショップ
関 連 演 題
急性虫垂炎は腹部救急領域で手術を要する代表的な疾患である。虫垂切除後に認められる合併症として、手術
部位乾癬(SSI)
、遺残膿瘍、イレウスなどがあげられる。H20 年 4 月から H26 年 3 月の 6 年間で当院にて虫垂炎と
診断して手術を施行した症例 453 例を検討したところ、SSI は 8.1%、遺残膿瘍は 2.2%、イレウスは 1.9%に認めた。
ドレーン留置は、81 例(17.8%)でドレーン留置症例での SSI 発生率は 14.8%に対し、ドレーン非留置症例での
SSI 発生率は 6.7%だった。ドレーン留置症例を検討し、術後合併症の予防効果はないと判断し、H25 年度よりド
レーンは留置しない方針とし、H25 年度の虫垂炎手術症例 98 例において、SSI は 11%、遺残膿瘍は 1%だった。
今後も症例を検討し、術後合併症の減少に対する取り組みが必要である。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
270
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-11-7
当院における統合失調症患者の急性虫垂炎
16 例の検討
1)沖縄県立中部病院 外科
三本松 譲 1)、伊江 将史 1)、宮地 洋介 1)、村上 隆啓 1)、上田 真 1)、砂川 一哉 1)、福里 吉充 1)、
松本 廣嗣 1)
【はじめに】統合失調症患者の急性腹症は重症化しやすく、周術期管理が重要である。当院で経験した統合失調
症患者の急性虫垂炎(以下、本症)16 例について文献的考察を加えて報告する。
【対象と方法】過去 20 年間(1993 ~ 2013)に経験した本症 16 例について後方視的に検討した。
【結果】平均年齢は 38 歳(29 歳~ 79 歳)
、女性が 10 例、男性が 6 例であった。8 例は精神病院入院中の患者であっ
た。発症から来院まで 1 日以上かかったものが 8 例あり、そのうち 5 例は発症から 2 日以上たっていた。15 例で
腹痛を認めた。 9 例を全身麻酔下に、7 例を腰椎麻酔下で虫垂切除術を施行した。8 例で虫垂は穿孔していた。
平均手術時間は 100 ± 15 分であった。11 例を開放創とした。8 例で病理結果が gangrenous であった。30%で腹水
培養が陽性であった。術後の問題行動は 9 例で認めた。術後合併症は 4 例で認めた。平均在院日数は 13 日であった。
【考察】統合失調症の有病率は約 1% 程度といわれ、一定数存在する。これら統合失調症患者も健常者と同様外科
疾患に罹患し、手術を受ける。したがって、我々外科医も統合失調症患者の管理に習熟する必要があるといえる。
本性が重症化しやすい原因として、以下の 2 つの要因が挙げられる。一つ目に統合失調症患者は喫煙、肥満、糖
尿病、性感染症、肝炎などの基礎疾患の合併が多い事である。二つ目に統合失調症患者は痛みの表出が健常者に
比べて困難であり、それが来院の遅れ、診断の遅れにつながる事である。 統合失調症患者においては、以上の
事を念頭におき、病歴、身体所見だけでなく、超音波、等画像検査を積極的に利用する事が重要であるといえる。
【結語】当院で経験した本症 16 例について報告した。本症は、重症化しやすく、診断、術後管理に注意が必要で
ある。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
当科における小児急性虫垂炎の治療方針
P-11-8
1)近畿大学医学部 外科学教室 小児外科部門
川口 晃平 1)、前川 昌平 1)、澤井 利夫 1)、吉田 英樹 1)、八木 誠 1)
当科では患児の虫垂炎の病態にあわせて手術療法あるいは保存的療法の治療方針を決定している。すなわち①
虫垂腫脹のみの症例は保存的に治療、②膿瘍や腫瘤を形成している症例は保存的治療ののちに待機的虫垂切除術
を施行、③穿孔性虫垂炎や汎発性腹膜炎をきたしている症例および糞石を有する症例に対しては緊急手術を施行
するのが基本方針としている。われわれは 2008 年 1 月から 2014 年 6 月までに 93 例の急性虫垂炎症例を経験した。
93 例のうち腫瘤形成性虫垂炎を除く 80 例では保存的治療を施行したのは 29 例、緊急手術を施行したのは 50 例で
あった。保存的治療を施行した 29 例のうち完全に保存的治療にて治癒を得た症例は 15 例であり、9 例が数日~ 1
か月以内の短期のうちに再燃をきたして緊急手術を要した。残りの 5 例が慢性虫垂炎としてご家族から手術希望
があれば虫垂切除術を施行した。腫瘤形成性虫垂炎は 13 例認めており 9 例が保存的治療、4 例が緊急手術を施行
した。保存的治療を行った 9 例のうち糞石を有していた 3 例に再燃を認めており再燃時の緊急にて虫垂切除術を
施行した。残りの 6 例は interval appendectomy として保存的治療を施行した 2 ~ 3 か月後に虫垂切除術を施行
した。術式として当科は基本的に単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行しているが術前に穿孔性虫垂炎、汎発性腹膜
炎と診断した 3 例のみ開腹で虫垂切除術を施行し、腫瘤形成性虫垂炎の保存的治療後の虫垂切除の際に強度な癒
着のために開腹創部を追加した 2 例以外は全例、単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。諸家の報告から糞石を
有する虫垂炎は高確率の再燃が報告されているが、当科の経験では糞石を有しない虫垂腫大のみを呈する虫垂炎
も保存的治療ののちに 9 例中 8 例が再燃をきたしていることから手術療法を念頭に慎重に保存的治療を施行する
ことが肝要であることが示された。
271
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
妊婦虫垂炎の 3 例
P-11-9
教
1)那覇市立病院 外科
育
高宮城 陽栄 1)
講
演
【はじめに】虫垂炎は妊娠中に産科救急以外で緊急手術が必要となる合併症の中で最も多い疾患である。重篤化
すると胎児や母体に深刻な影響を及ぼす可能性があり、早期診断および治療が重要である。今回、2013 年に当
院で妊婦急性虫垂炎の 3 例を経験したので報告する。
【症例 1】26 歳女性、妊娠 19 週。受診日当日からの下腹部痛・
嘔吐を主訴に当院受診し、腹部 CT で盲腸全面を走行する 10㎜大に腫脹した虫垂及び糞石認め虫垂炎の診断とな
り同日緊急手術を行った。経過は良好で 4 日目に退院となった。病理診断は蜂窩織炎性虫垂炎であった。
【症例 2】
28 歳女性、妊娠 14 週。受診日前日からの下腹部痛を主訴に当院受診し、腹部エコーで 8㎜大に腫脹した虫垂を認
め虫垂炎の診断で同日緊急手術を行った。経過は良好で 4 日目に退院となった。病理診断は蜂窩織炎性虫垂炎で
あった。
【症例 3】24 歳女性、妊娠 25 週。4 日前からの腹痛、嘔吐を認め近医にて虫垂炎疑いの診断にて当科紹介。
前医での腹部エコーにて虫垂の描出できなかったため、腹部 CT を撮影し穿孔性虫垂炎・腹腔内膿瘍を認め同日
緊急手術を行った。術後切迫早産を認めたがその後軽快し術後 19 日目に退院となった。病理診断は壊疽性虫垂
炎であった。
【まとめ】妊婦急性虫垂炎症例は発症からの経過が長い症例において妊娠関連合併症を発症していた。
妊娠虫垂炎においては早期診断及び治療が重要である。
パネルディスカッション
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-11-10
当科で経験した小児腫瘤形成性虫垂炎に対する
Interval appendectomy 症例の検討
シンポジウム
関 連 演 題
1)近畿大学医学部 外科学教室 小児外科部門
前川 昌平 1)、澤井 利夫 1)、吉田 英樹 1)、川口 晃平 1)、八木 誠 1)
ワークショップ
関 連 演 題
初診時にすでに穿孔をきたしているが限局性の膿瘍による腫瘤形成の状態となっている腫瘤形成性虫垂炎は強
力な抗菌薬による保存的療法を先行させることにより、緊急手術と比較すると虫垂切除術が容易になり手術後合
併症や拡大手術を軽減することができるなどの報告が多く散見されている。われわれは 2006 年 1 月から 2014 年 6
月までに 20 例の腫瘤形成性虫垂炎を経験した。20 例のうち緊急虫垂切除術(Emergency appendectomy:以下
EA)を施行したのは 11 例、Interval appendectomy(以下 IA)を施行したのは 9 例であった。初診時の CRP およ
び WBC は EA では 10.4 / 16636 および IA では 11.3 / 13478 であり両群ともに特に差を認めなかった。虫垂切除後
在院日数は EA 23.9 日、IA 4.56 日であり優位に EA で手術後在院日数が長かった。合併症は EA で 63.6%に認め
ておりそのほとんどが SSI や遺残膿瘍、腸閉塞であるのに対し IA では 33.3%に認めたがいずれも待機期間中の再
燃(Drop out:以下 DO)であった。IA において虫垂切除術後合併症に限ると全例認めなかった。手術時間は
EA では 143 分、IA では 90 分であり IA で短かったが、IA から DO を省いた 7 例での手術時間は 78.3 分と完全に
IA を施行し得た場合は優位に手術時間の短縮を認めた。EA では腹腔鏡で手術を開始したものの開腹に移行した
症例が 33.3%であるのに対し IA では DO を含む全例で開腹移行は認めず、EA は優位に開腹移行率が高かった。
以上当科の検討から腫瘤形成性虫垂炎のように腹腔内に限局した強い炎症がある場合は保存的療法を先行させる
ことにより手術時間の短縮化、開腹移行症例の減少、術後合併症の軽減および術後在院日数の短縮が可能であっ
た。しかし保存的治療を先行しても糞石を有する症例では DO 症例が多く、今後同様の症例を認めた場合は緊急
手術を考慮するべきであると考えられた。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
272
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
急性腸間膜虚血症の診断におけるCTの有用性
P-12-1
1)済生会横浜市東部病院 救命救急センター
松本 松圭 1)、船曳 知弘 1)、廣江 成欧 1)、小林 陽介 1)、清水 正幸 1)、山崎 元靖 1)、北野 光秀 1)
はじめに)急性腸間膜虚血症(AMI : acute mesenteric ischemia)は不明瞭な腹部所見を呈することが多く、診
断に難渋する。近年、急性腹症診断の中心的役割となっている CT が AMI に対しても有用とされている。腸間
膜血管の評価は造影剤の使用が不可欠であるが、AMI の患者では脱水・腎障害を伴っていることが多く、使用
できないこともある。当院に AMI における CT の診断能および造影剤使用について検討する。対象)2009. 4. 1 〜
2013. 12. 31 当院救急外来受診した患者の内、AMI 疑いの 81 名を対象とした。AMI 疑い:入院を要する腹痛ま
たは腹部理学所見に異常を認める患者。AMI 以外の明らかな急性腹症の原因(虫垂炎・胆嚢炎・腸閉塞・消化
管穿孔・腫瘍 etc)が同定できる患者は除外した。方法)64 列造影 MDCT を施行。可能な限り造影剤を使用し
た。腹部 CT 所見として①腸管拡張②壁肥厚③造影効果欠如④造影効果増強⑤脂肪織濃度上昇⑥門脈ガス⑦腸管
気腫⑧腸間膜動脈閉塞⑨腸間膜静脈閉塞⑩腹水⑪ smaller SMV sign を読影し、診断能について検討した。また、
造影剤の使用の有無に関する診断能・腎障害についても検討した。結果)来院時、38 % に腎障害(eGFR<35mL
min)を認め、造影剤使用率は 86 % であった。AMI 患者は 35 名であり、その造影剤腎症の発症率は 56 % と高率
であった。特異度は所見⑧⑨が最も高く、100 % であったが、感度は 38.7 %, 9.7 % と低かった。感度に関しては
所見③が 74.2 % と最も高く、特異度は 74.4 % であった。結語)64 列造影 MDCT を施行しても、AMI の診断は難
しく。高率に腎障害が発生する。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-12-2
非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の診断・治療法の変化および
門脈ガス血症(PVG)との関連性についての考察
1)大津市民病院 外科
光吉 明 1)、青山 紘希 1)、近藤 祐平 1)、井ノ口 健太 1)、横山 大受 1)、矢内 勢司 1)、橘 強 1)、
中右 雅之 1)、洲崎 聡 1)、柳橋 健 1)
【はじめに】非閉塞性腸間膜虚血症(以下 NOMI)は近年予後良好例が多く報告されてきている。診断・治療法の
工夫および門脈ガス血症(以下 PVG)との関連について述べる。【背景】Boley、Siegelman らによる血管造影で
の特徴的所見が実際に NOMI の早期診断に役立ったという報告は少なく、また Heer らの診断基準は開腹の結果、
あるいは切除標本で得られる所見であり、救命率の改善につながる早期診断は困難である。さらに腸管気腫症や
PVG をともなう NOMI はすでに重症化していると考えられがちであるが、その発症機序には不明な部分が多い。
【われわれの診断・治療手順】患者背景から NOMI を疑い、MDCT による早期診断とプロスタグランディン E1 の
持続静脈内大量投与による治療法が有用であることを 2005 年に発表し、以来この方法での救命例が報告されつ
つある。また腸管気腫症、PVG の発症機序をミクロ写真において検証し、治療方針へ繋がる病型分類を試みた。
【現状・問題点】腸管気腫症、PVG の原因は①感染、②粘膜破綻+内圧上昇③混合タイプに分類することができる。
PVG をともなう NOMI であっても保存的に治療できるものもあり、従来 50–70 % 程度とされる高い死亡率も少し
ずつ改善している感がある。一方、主幹動脈に器質的閉塞性病変を認めないにもかかわらず腸管レベルで広い範
囲で虚血性変化が起こっていることを術前の画像診断や開腹所見で明確に示していない報告や、切除標本におい
て病理組織検査による裏付けを行っていない報告、壊死型の虚血性小腸炎や虚血性大腸炎と混同している報告が
多くみられるようになってきている。
【結語】MDCT などの画像診断法の発達により近年 NOMI の救命率は改善
しつつあるが、診断根拠があいまいな報告も多い。診断・治療法の変遷、虚血性腸疾患の中での位置づけと、診
断上の問題点、今後の課題について述べる。
273
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-12-3
非閉塞性腸間膜虚血の治療戦略に関する考察:
自験例 25 例を検討
教
1)沖縄県立中部病院 一般外科
育
加我 徹 1)、伊江 将史 1)、村上 隆啓 1)、上田 真 1)、砂川 一哉 1)、福里 吉充 1)、松本 廣嗣 1)、
宮地 洋介 1)
講
演
パネルディスカッション
はじめに 非閉塞性腸間膜虚血症(以下本症)は血管の閉塞を来すことなく、消化管の梗塞や虚血性の炎症を来
す比較的稀な疾患である。治療方法としては積極的な輸液、血管作動薬の使用、手術などがあり、全層性の腸管
壊死が疑われる場合は速やかに手術を行う必要がある。今回当院の自験例 25 例を後方視的に検討し、治療戦略
に関し文献的考察を加え報告する。症例 本症の診断に関しては腹痛、嘔吐などの腹部症状と画像所見から判断し
た。院内 25 例の平均年齢は 71.84 歳であった。内科的合併症による死亡も含めると、院内死亡は 17 例であった。
手術を行った例は 12 例であり、術後生存退院は 5 例であった。手術症例 8 例に全層性の腸管壊死を認め、全例に
血中アシドーシス、乳酸の上昇を認め、術前の経過中改善がなかったが、バイタルサインは安定している症例も
認めた。血中アシドーシス、乳酸の上昇なく、バイタルサインも安定していた 3 例中 2 例では術中壊死所見なく、
腸切除は行わず、1 例では壊死は粘膜面までに止まっていた。考察 本症の治療は十分な循環、呼吸の蘇生を行い、
全層性の腸管壊死が疑わしい際には速やかに手術を行う判断が必要となる。ただ的確に腸管の壊死やその程度の
予測は難しく、CT 所見、身体所見、血液検査の結果は腸管壊死の予測因子として、有意ではないとする文献も
ある。また、注意深く腸管壊死の兆候がないか観察し、保存的治療で状態が改善し、明らかな壊死の兆候がなけ
れば保存的に治療できる可能性が考えられた。結語 本症の当院における自験例 25 例を後方視的に検討し、治療
戦略を考察した。本症は治療方法が確立されておらず、適切な手術時期の判断が難しい疾患である。保存的治療
の明確な適応は現時点ではないが、初期治療によるバイタルサインの改善や、アシドーシスの進行がない場合、
全層性の腸管壊死には至らず、保存的治療で経過を診る判断の一助となる可能性が考えられた。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-12-4
非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)の
多施設共同研究
シンポジウム
関 連 演 題
1)九州大学大学院 消化器・総合外科
由茅 隆文 1)、佐伯 浩司 1)、堤 智崇 1)、笠木 勇太 1)、財津 瑛子 1)、津田 康雄 1)、安藤 幸滋 1)、
中島 雄一郎 1)、今村 裕 1)、大垣 吉平 1)、沖 英次 1)、調 憲 1)、前原 喜彦 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【背景】非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)はまれで予後不良な急性腸管虚血症であるが、診断・治療については依然
として施設により様々である。
【目的】NOMI の発生頻度と臨床的特徴、診断検査の現状、治療と予後について
明らかにする。
【対象】協力医療機関 22 施設における 10 年間の NOMI 手術症例を検討した。NOMI の診断基準は
手術所見(1. SMA 本幹の拍動を触知、2. 腸間膜末梢動脈の拍動不良、3. 虚血又は壊死腸管の分節状、斑状に非連
続性な分布)と病理所見とし、非手術症例は除外した。【方法】NOMI 症例の 1. 患者背景 2. 術前状態 3. 手術所見
4. 術後治療を検討した。生存群と死亡群で比較検討し、術前の全身状態と手術侵襲で計算する POSSUM Score
も検討した(Copeland GP.et al : Br J Surg 1991)
。
【結果】緊急手術 12271 例(総手術数 114224 例)のうち NOMI
は 51 例(0.4 %)であった。28 例(55 %)が生存し、死亡は 23 例(45 %:術死 20 例、在院死 3 例)であった。生存
群と死亡群に分けて比較検討すると、POSSUM Score 死亡予測率は生存群 54.5 ± 3.6、死亡群 85.2 ± 4.1 であっ
た(p< 0.001)
。血管拡張剤や抗凝固療法などの追加的治療は 23 例(死亡群 6/23, 生存群 17/28)に行われていた。
POSSUM Score 死亡予測率高値(>70 %)の症例で追加的治療が行われた症例は、生存群の 89 %、死亡群の 26 %
であった(p = 0.01)。【まとめ】NOMI は緊急手術の 0.4 % に認められ、救命率は 55 % であった。POSSUM Score
死亡予測率高値(≧ 76.1 %)は NOMI の有意な予後不良因子であった。術後の追加的治療は NOMI に有用な可能
性がある。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
274
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
非閉塞性腸管虚血症症例の検討
P-12-5
1)八戸市立市民病院
野田頭 達也 1)、今 明秀 1)、丸橋 孝昭 1)、吉村 有矢 1)、近藤 英史 1)
【はじめに】非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia,以下 NOMI)は、様々な病態により発症し、
広範囲に腸管の虚血、壊死を来し、予後不良である。迅速な診断と集中治療が必要とされるが、当科での経験し
た症例を検討した。
【対象と方法】2009 年 6 月から 2014 年 5 月までの 5 年間に当センターに入院し、手術を施行し
NOMI と診断された 15 例を対象とし、術前合併症、術前診断、手術経過について検討を行った。
【結果】15 例中、
救命例は 2 例(13 %)で予後は非常に不良であった。背景は心肺停止蘇生後の症例が 4 例と多く、敗血症、心不全、
イレウスなどの疾患がみられた。手術術式では、壊死腸管切除、second look operation、2 期的腸管吻合を基本
としているが、全身状態不良のため、腸管吻合ができない症例もあった。死亡例では、second look operation の際、
腸管壊死が広範囲に拡大しており、追加切除によっても救命は困難と考えられた。
【結語】NOMI の診断と治療は、
未だに困難であり、基礎疾患の治療、迅速な診断、手術としっかりとした戦略を持つことが救命につながると考
える。
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-12-6
当科における非閉塞性腸間膜虚血症
10 例の検討
1)日本医科大学高度救命救急センター
片桐 美和 1)、石井 浩統 1)、萩原 純 1)、吉田 良太郎 1)、松居 亮平 1)、賀 亮 1)、新井 正徳 1)、
金 史英 1)、横田 裕行 1)、笠井 華子 1)、池田 慎平 1)、吉野 雄大 1)
【目的】非閉塞性腸間膜虚血症(Non occlusive mesenteric ischemia:以下 NOMI)は、高率に心血管系の併存疾
患を有し、さらに低血圧、術後周術期、敗血症などによる循環動態の変化がトリガーとなって引き起こされてい
る報告が多い。臨床所見、画像検査、手術所見、病理学的所見を検討した。【方法】2012 年 1 月から 2014 年 6 月
までに腹部造影 CT 検査、腹部血管造影検査から NOMI と術前診断し、手術所見、病理学的所見のいずれかで確
定診断が得られた 10 例を対象とした。
【結果】平均年齢は 73 歳、男女比は 7:3 であった。術後 14 日以上の生存
は 2 例、生存退院し得たのは 1 例のみであった。全例基礎疾患を有しており、50 % に循環器疾患、うち 80 % は心
大血管術後であった。また、なんらかの術後 14 日以内に発症したものは 40 %、糖尿病併存または血液透析率は
それぞれ 40 % と高率であった。初発症状として、80 % がショックを呈しており、初療時 DIC 状態であったもの
は半数を占め、肝、腎などの臓器障害をきたしていたものは 80 % に上った。術式として 8 例に腸管切除が行われ
たが、手術所見と画像検査による腸管虚血範囲は合致せず、開腹時に想定以上の腸管切除を余儀なくされた症例
も存在した。パパベリン動注療法、PGE1 投与などが近年報告されているが、今回経験した 10 例中 8 例において
は血管内治療を行うだけの全身状態が維持できず、施行していない。
【考察】10 例中 9 例死亡という高い死亡率で
あった。当院では他疾患集中治療中や他院、他科からの転送が多く、発症からの時間経過は長く、APACHE2、
POSSUM score 共に高い値を占めた。しかし発症から急速に進行する NOMI もまた、死亡しており、病脳期間
と予後の関連性については症例を重ね、検討する必要がある。術後進行する腸管虚血の存在は、腸管切除のみで
の治療の限界を示唆するとともに、切除範囲の正確な決定方法の確立が急務である。
275
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
NOMI の発症予防に対する当院の取り組み
P-12-7
教
1)自治医科大学附属さいたま医療センター 一般・消化器外科
2)自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部
育
講
桑原 明菜 1)、辻仲 眞康 1)、佐藤 瑞樹 2)、讃井 將満 2)、力山 敏樹 1)
演
パネルディスカッション
【背景】非閉塞性腸管虚血(NOMI)は、開心術後 0.2–2 % に発症すると報告されている。当院の心臓血管外科では、
虚血性心疾患と弁膜疾患に対して、毎年約 300 例の手術が施行されているが、2009 年から 2012 年までの NOMI
の発症数は 2 名だったのに対し、2013 年 1 月から 9 月までに 7 名が発症した。発症率の上昇をうけて、NOMI の
発症を予防するため、NOMI bundles という予防策と治療指針を発案し、有用性を検討した。【対象】70 歳以上、
大動脈弁置換術後、慢性腎臓病ステージ 3 以上(GFR<60)とした。2013 年 10 月以降の 21 症例を NOMI bundles
群、2013 年 1 月から 9 月までの 36 症例をコントロール群として比較した。【方法】NOMI bundles では、組織還
流圧の保持を目的としたコントロール目標を以下のように設定した。① Cardiac index > 2.5 L/min/m2、② mean
arterial pressure > 65mmHg、③ Hb > 8.0 g/dL 、④(SVO2) > 65 % 、⑤ Lactate < 4mmol/L。また、手術開始時
から術後 24 時間まで PGE1(0.01 µg/kg/min)の持続静注を行った。全例に連続心拍出量付スワンガンツカテー
テルを挿入した。【結果】患者背景は eGFR が NOMI bundles 群で高く、乳酸の最高値が低い傾向にあったが、手
術時間、出血量、輸液量、尿量に差を認めなかった。NOMI 発症率は、NOMI bundles 群 1 例(4.8 %)に対して、
コントロール群 4 例(11 %)であった(p=0.642)。【考察】統計学的に有意でなかったが、ハイリスク群における
NOMI 発生頻度の低減がみられた。プロトコールを継続し、経時的な再評価が必要と考えられた。
シンポジウム
ワークショップ
連
非閉塞性腸間膜虚血症(NOMI)の 1 例
演
題
P-12-8
シンポジウム
関 連 演 題
1)小牧市民病院 外科
平田 伸也 1)、神崎 章之 1)、笹原 正寛 1)、鈴木 雄之典 1)、村上 弘城 1)、横山 裕之 1)、
望月 能成 1)、谷口 健次 1)
ワークショップ
関 連 演 題
症例は 64 歳男性。既往歴に大動脈弁形成術後、冠動脈バイパス術後、閉塞性動脈硬化症があり、糖尿病性
腎症にて維持透析中。右下腹部痛と血便を主訴に当院救急外来を受診した。来院時現症は血圧 131/92、脈拍数
113/ 分、体温 39 度、腹部は平坦で軟、右下腹部に圧痛はあったが腹膜刺激症状は認めなかった。腹部造影 CT
にて門脈内ガス像、右側結腸に腸管の拡張、壁内ガス像と壁の菲薄化を認め腸管壊死の疑いで緊急手術を施行し
た。開腹すると褐色の腹水を認め、回腸末端から上行結腸肝湾曲部近くまで黒色に壊死していた。結腸右半切除
を行い、回腸人工肛門造設、横行結腸粘液廔を造設して終了した。術後集中治療管理を要したが術後 14 日目に
退院した。退院後 3 日目に術後イレウスにて再入院、その後イレウス管挿入にてイレウスが改善したが回腸人工
肛門より多量の排液があり水分管理に難渋している。NOMI は予後不良な比較的稀な疾患である。その救命例の
報告はあるがその後の経過についての報告は少ない。今回救命し得た NOMI の症例を経験したがその後の経過
は決して良好ではない。若干の文献的考察を加えて報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
276
【第3会場】3F あすなろ・はまなすの間
一般演題
P-12-9
上行結腸癌に対し化学療法を施行後、
非閉塞性腸管虚血症(NOMI)を発症した 1 例
1)青森県立中央病院 外科
米内山 真之介 1)、西川 晋右 1)、十倉 知久 1)、鈴木 大和 1)、赤石 隆信 1)、森田 隆幸 1)
【症例】症例は、平成 23 年に肺癌に対し右下葉切除の既往がある 59 歳の男性。平成 26 年 3 月下旬、右側腹部痛が
出現し当院消化器内科入院となった。下部内視鏡検査で上行結腸に 2 型腫瘍を認め、生検にて adenocarcinoma
の診断が得られた。本人が手術に積極的でなく、4 月下旬より SOX 療法が開始されたが皮膚障害のため 1 コース
目途中で治療中止となった。発熱、下痢が持続しており、5 月上旬、CT にて小腸壊死、門脈ガス血症の所見を
認めたため、当科紹介となった。
【手術】開腹するとトライツ靱帯から 200 ~ 300 cm の空腸において分節状に腸
管粘膜の虚血所見を認めた。結腸にはうっ血、壊死の所見を認めなかった。小腸間膜を処理し血流があることを
確認し、上記約 100 cm の空腸を摘出した。左右下腹部の体外へ小腸断端を誘導した。断端の開放は行なわなかっ
た。腹腔内を洗浄し、ダグラス窩へドレーンを留置し閉創した。
【経過】術後は ICU へ入室し、敗血症性ショッ
クとして治療を開始した。また腸管の血流確保目的にヘパリンの持続投与を開始。4POD 体外へ誘導した両腸管
を開放した。また、同日抜管となったが翌日に無気肺を認め、6POD 気管切開術を施行した。12POD より経腸
栄養を開始。現在は肺炎の治療を継続中であり、改善後に腸管再建、上行結腸癌の根治術を予定している。【結
語】非閉塞性腸管虚血症は死亡率が高い予後不良な疾患であり、治療法についても血管内治療、手術を含め報告
例は増加しているが確立していないのが現状である。今回、我々は上行結腸癌に対し化学療法を導入後、門脈ガ
ス血症を伴う非閉塞性腸管虚血症に対し緊急手術を施行した 1 例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告
する。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-13-1
小腸イレウスの絞扼診断における
腸管内溶液 CT 値の有用性について
1)京都桂病院 消化器センター 外科
金井 俊平 1)、工藤 亮 1)、光岡 英世 1)、神頭 聡 1)、吉野 健史 1)、濱洲 晋哉 1)、小西 小百合 1)、
西躰 隆太 1)、間中 大 1)
はじめに:絞扼性イレウスにおいて、造影 CT は診断能が高く、有用な検査であるが、時に基礎疾患、イレウス
に伴う脱水のため腎機能低下を有する症例には施行困難であり、腸管虚血の診断に苦慮する場合がある。このよ
うな背景のもと、単純 CT における CT 値に着目し、腸管壊死に伴う出血性変化を腸管内溶液の CT 値を計測する
ことで評価可能であるか retrospective に検証した。対象と方法:2012 年 1 月 ~ 2014 年 4 月の期間で小腸イレウ
スと診断し、初診時の腹部単純 CT にて拡張腸管内貯留液の CT 値が測定可能であった 33 例を対象とした。絞扼
の有無に関しては手術所見、切除腸管の組織学的所見から分類した。腸管内貯留液の CT 値は異なる 3 点で計測
し、その平均値を算出した。結果:絞扼群 10 例、非絞扼群 23 例であった。両群間で年齢、性別、腹部手術既往
に関しては有意差を認めなかった。血液検査所見では WBC、CPK では両群間に有意差を認めなかったが、LDH
は絞扼群が 254.0 ± 80.9 IU/l、非絞扼群が 217.1 ± 9.9 IU/l であり絞扼郡で有意に高値であった(P=0.025)
。腸管内
貯留液の CT 値(平均値±標準偏差)に関しては絞扼群が 20.4 ± 6.6 HU、非絞扼群が 11.2 ± 3.8HU であり絞扼郡で
有意に高値であった(P < 0.001)。また、ROC 曲線から cut off 値を検討すると、CT 値= 14.42 HU にて specificity
= 0.783、sensitivity = 1.00 であった。結語:腸管内貯液の CT 値測定は絞扼性イレウスの質的診断に有用である
可能性が示唆された。
277
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-13-2
利用しやすい指標を用いた
絞扼性腸閉塞の診断
教
1)中頭病院 外科
育
間山 泰晃1)、砂川 宏樹1)、林 圭吾1)、木村 祐介1)、後藤 倫子1)、小倉 加奈子1)、宮城 良浩1)、
馬場 徳朗 1)、卸川 智文 1)、嘉数 修 1)、當山 鉄男 1)、大城 直人 1)
講
演
パネルディスカッション
【はじめに】絞扼性腸閉塞は比較的頻度の高い疾患であり、かつ緊急の対応が必要である。そのため経験の浅い
医師でも絞扼性腸閉塞の診断を容易にする指標を作成することを目的とした。
【対象と方法】
(1)2004 年 1 月から 2013 年 12 月までの CT から 24 時間以内に手術を施行した 106 症例を対象と
して後方視的に検討した。術中虚血の有無で 2 群間に分けて絞扼性腸閉塞の診断に有用な指標を作成した。CT
での判断しやすい項目のみを用いるため造影不良は今回の指標には含めなかった。解析にはχ2 検定あるいは
Wilcoxon 検定を用い、多変量解析にはロジスティク回帰分析を使用した。
(2)2014 年 1 月から 2014 年 6 月まで腸
閉塞による入院患者 24 症例に対して指標を割り当て、感度と特異度を用いて有用性を検討した。
【結果】
(1)106 症例中絞扼群 68 例、非絞扼群 38 例であった。単変量解析では年齢、手術歴、嘔吐、収縮期血圧、
腸管拡張、腸管壁肥厚、腸間膜変化、腹水などで有意差を認めた。多変量解析ではそのうち嘔吐、壁肥厚、腸間
膜変化で有意差を認めた。
(2)多変量解析の結果から嘔吐、壁肥厚、腸間膜変化のいずれか 2 項目陽性をもって
絞扼の指標とした場合、感度は 100%、特異度は 95%であった。3 項目すべてが陽性であった場合の感度と特異
度はいずれも 100%であった。
【考察】嘔吐、壁肥厚、腸間膜変化は絞扼性腸閉塞に対して有用な因子であった。今回の検討では虚血症例全例
で 3 項目すべてを満たしたため上記結果となったが、症例数の増加によりカットオフ値は変わる可能性が高い。
症例数をさらに蓄積し検討が必要と考えた。
シンポジウム
ワークショップ
連
当科における閉鎖孔ヘルニア手術症例の検討
演
題
P-13-3
シンポジウム
関 連 演 題
1)津軽保健生活協同組合 健生病院 外科
2)斗南病院 外科
佐藤 衆一 1)、兼田 杏里 1)、鈴木 隆太 1)、伊藤 真弘 1)、村田 光幾 1)、境 剛志 2)
ワークショップ
関 連 演 題
(対象)2002 年 1 月から 2014 年 5 月までに当科で経験した閉鎖孔ヘルニア 27 症例に関して、臨床的特徴について
検討した。
(治療法)当科では原則手術治療を選択している。基本的に下腹部正中切開による腹膜前アプローチ
を先行し、メッシュによるヘルニア門閉鎖を施行。術野汚染が高度な際は基本的にメッシュは使用せず、腸管切除・
吻合は嵌頓解除時の腸管性状や全身状態に応じて判断した。(結果)全例女性、平均年齢 84.2 歳、平均 BMI 18.47
であり高齢痩せ形体型が主体であった。在院死亡は 5 例おり、いずれも術前ショック例、慢性透析例、脳血管疾
患既往例等重度の併存疾患を有していた。生存例 22 例中 19 例にメッシュによるヘルニア門閉鎖を施行。腸管切
除は 10 例に施行されており、内 9 例がメッシュ留置例であった。これら 9 例において、術後局所感染等の合併症
は認めなかった。発症より 2 日以内に手術が施行された群(A 群 12 例)及び 2 日以降の群(B 群 15 例)を比較すると、
合併症発症率は A 群 41.7 %(5 例)
、B 群 93.3%(14 例)と B 群において有意に高率であり、特に術後腸管麻痺、肺
合併症が高率であった。在院死亡率は A 群 16.7 %(2 例)、B 群 20 %(3 例)と差を認めなかった。A 群生存例は全
例術後 5 日以内に経口摂取が安定したが、B 群生存例で同期間内に経口摂取が安定した症例は 5 例(41.7%)であり、
早期手術例で有意に良好であった(p < 0.01)。両群生存例の術後平均在院期間は 12.9 日及び 40.5 日であり、B 群
で長期化の傾向を認めた(P=0.05)。(結語)メッシュ使用によるヘルニア門閉鎖は安全に施行できると考えられ、
局所関連の合併症も認めなかった。一方、併存疾患を有している症例や発症数日以降の症例では術後合併症の頻
度が高く、吻合への留意や術後気道管理、腸管ケアや栄養管理・早期リハビリ介入の必要性が示唆された。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
278
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-13-4
妊娠中期に発症した消化器急性腹症
─癒着性イレウスに対する早期開腹例─
1)大阪市立大学医学部付属病院 救命救急センター
内田 健一郎 1)
【患者】
39 歳女性。
【既往歴】左側卵管妊娠に対し開腹歴があった。
【現病歴】
妊娠 26 週 0 日、
臍周囲の鈍痛を自覚し、
嘔吐と下痢も伴ったため救急を要請した。産科病院へ搬送されたが、産科的緊急症は認めなかった。2 日間経過
観察したが、賞状の改善なく、急性腹症疑いで 2 次病院へ搬送された。腹部 MRI にて左側小腸に狭窄部を有する
機械性イレウスと診断、当院救命救急センターへ転院された。外科的イレウス解除術の適応を妊娠継続の観点か
ら産科と協議したが、妊娠 26 週での盤出よりも妊娠継続が望まれること、保存的加療の結果として穿孔を来た
した場合に妊娠継続が困難であることから、全身麻酔下でのイレウス解除を施行することとした。腹部正中切開
にて開腹すると、Treiz 靭帯から約 330 cm、回腸末端より約 60 cm 部の回腸が子宮左側壁に癒着し、一部の小腸
が内ヘルニア状態となっていた。癒着を剥離して内ヘルニアを解除した後、Treiz 靭帯を超えるまでイレウス管
を挿入して閉腹した。術後 3 日目に排便を認め、術後 5 日目から食事を開始した。母体の経過は良好であったが、
術後 5 日目に施行した胎児超音波検査にて、脳出血によると思われる脳室拡大を認めた。他院に転院のうえ、術
後 16 日目に帝王切開にて胎児を晩出した。体重 1117g、
アプガースコア 4 点のため、
NICU にて人工呼吸管理となっ
たが日齢 5 日に抜管しえた。妊娠中の急性腹症の頻度は、胆嚢炎や虫垂炎で 1000 例 ~ 数千例に 1 例、イレウスは
1500 ~ 6600 例に 1 例と、極めて稀な疾患である。絞扼性や穿孔例の場合には開腹せざるを得ないが、絞扼を疑
われていない場合には、治療方針について統一された見解はない。胎児への影響と母体救命の観点から、妊婦の
急性腹症に対する急性期外科について文献的考察を加えて報告する。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-13-5
結腸前経路による胆道再建が誘因となった
肝切除後腸閉塞の一例
1)兵庫医科大学 外科学 肝胆膵外科
末岡 英明1)、鈴村 和大1)、平野 公通1)、麻野 泰包1)、飯室 勇二1)、岡田 敏弘1)、中村 育夫1)、
宇山 直樹 1)、近藤 祐一 1)、小坂 久 1)、裴 正寛 1)、大橋 浩一郎 1)、矢田 章人 1)、岡本 共弘 1)、
栗本 亜美 1)、藤元 治朗 1)
症例は 65 歳女性で、関節リウマチに対し当院膠原病内科で加療中に肝機能障害を認め精査。上部胆管癌によ
る閉塞性黄疸の診断で ENBD チューブを留置、減黄後切除目的で当科入院となる。CT 上右肝動脈が腫瘍に接し
て走行し直接浸潤も否定できず、右葉切除を検討するも、残肝重量不足による術後肝不全が危惧されたため、術
前門脈塞栓術を追加し、肝右葉切除術、肝外胆管切除術、胆道再建術を施行した。術後特変なく経過するも術後
第 8 病日より腰痛および腹部膨満感を自覚。症状は増強傾向にあり X-P 上、著明に拡張した結腸ガス像を認めた。
術後第 9 病日に撮影した腹部造影 CT 検査においては内ヘルニアを疑う腸管像および骨盤底に腹水貯留を認め、
血液検査上も WBC の上昇傾向を認めた為、術後内ヘルニアまたは捻転による腸閉塞の診断で緊急手術を施行し
た。開腹所見では結腸および小腸の虚血性変化は認めず、拡張をきたした上行結腸 ~ 横行結腸にかけて硬便の
貯留を著明に認めた。また切除後 9 日目であるにもかかわらず残肝は急速な再生肥大を認めており拳上空腸は右
側へ著明に牽引される形で存在していた。初回手術において空腸は結腸前経路で拳上されており、脚吻合部近傍
の拳上空腸間膜が肝の再生肥大に伴い右側上方へ牽引されたことにより索状となった腸間膜が横行結腸を圧排し
狭窄をきたし、硬便の通過障害および腸閉塞をきたしたと推測された。手術は横行結腸に付着した大網を結腸付
着部において切離し、圧排された部位の狭窄を解除することで硬便および腸管ガスの排泄が可能であった。術後
経口摂取再開後も症状の再出現はなく経過した。術後癒着による腸閉塞および絞扼による緊急手術はしばしば経
験するところである。しかし肝切除術後早期にその再生肥大が原因と考えられる拳上空腸ならびに腸間膜の右側
上方への牽引が消化管通過障害をきたすことは稀であり、若干の文献的考察を加えて報告した。
279
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-13-6
広範な小腸壊死を来たした
成人原発性小腸軸捻転の 1 例
教
1)福岡大学 医学部 外科学講座 消化器外科
2)福岡大学病院 病理部
育
講
大宮 俊啓1)、石井 文規1)、大石 純1)、甲斐田 大貴1)、池田 裕一1)、山本 希治1)、小島 大望1)、
乗富 智明 1)、山田 梢 2)、二村 聡 2)、山下 裕一
演
パネルディスカッション
【はじめに】癒着や腸回転異常などに起因しない原発性小腸軸捻転は稀な疾患である。急激に致命的な経過を辿
る事もあるため早期診断と早期治療が求められる。今回、我々はショックバイタルを来たしていた原発性小腸軸
捻転の 1 例を救命し得たので若干の文献的考察を含めて報告する。
【症例】77 歳の女性。夕方より突然の心窩部
痛を自覚し、当院紹介となった。CT で小腸軸捻転と広範な小腸壊死の診断で同日に緊急手術となった。手術所
見では漿液性の腹水を多量に認め、小腸は広範囲に暗赤色調へと変色していた。腹腔内を検索すると、小腸間膜
が上腸間膜動脈を中心として反時計回りに 360 度回転していた。明らかな癒着や腸回転異常の所見は認めず、原
発性小腸軸捻転と診断した。捻転を解除するも、Treitz 靱帯より 100 cm から 480 cm の部位まで、約 380 cm にわ
たり血流障害・壊死を来した小腸を認めた。 壊死腸管を切除し、functional end to end anastomosis で吻合した。
吻合部口側 20cm の部位に人工肛門を造設した。術後経過良好で第 44 病日にリハビリ目的に転院された。
【結語】広範な小腸壊死を来たした成人原発性小腸軸捻転の 1 例を救命しえたので報告する。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-13-7
ICG 蛍光法による腸管血流評価により
腸管切除を回避できた絞扼性イレウスの 1 例
シンポジウム
関 連 演 題
1)鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科
貴島 孝 1)、馬場 研二 1)、南曲 康多 1)、南 幸次 1)、飯野 聡 1)、喜多 芳昭 1)、柳 政行 1)、
盛 真一郎 1)、夏越 祥次 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【はじめに】絞扼性イレウスに対する腸管切除の明確な基準はない。今回我々は絞扼性イレウスに対し、ICG 蛍
光法による腸管血流評価により腸管切除を回避できた 1 例を経験したため報告する。
【症例】79 歳女性。既往歴は約 40 年前胃潰瘍に対し幽門側胃切除、B -Ⅰ再建術後。1 か月前に腹痛出現、前医に
て癒着イレウスの診断で入院。イレウス管による保存的加療で一旦改善するも、急激な腹痛と共に血性腹水を
認めたため当院紹介受診となった。腹部造影 CT にて closed loop を形成した絞扼性イレウスの診断となり、同日
緊急手術を施行した。上行結腸の腹膜垂と腸間膜との癒着にて約 2 cm のヘルニアバンドを形成し、Ileum end よ
り 10 cm の部位から約 155 cm の部位までの小腸がはまりこみ絞扼していた。ヘルニアバンドを切除し絞扼を解除
した。絞扼腸管は全体的に血流障害を呈していたが、絞扼解除後は徐々に血流改善。最も血流障害の強い場所は
Ileum end から 100 cm の部位であった。腸管切離をするかどうかはしばらく時間をおいてから再度観察したのち
に決定する方針となった。Treitz 靭帯から約 50 cm の部位に新たな空腸と腸間膜の癒着あり、空腸の狭窄を認め
たため癒着剥離術施行。絞扼解除後の腸管に対する血流評価として ICG を 2 ml 静注後に赤外線カメラにて血流評
価を行った。静注後数分で腸管壁全体に ICG の蛍光を認めたため腸管血流は回復したと判断し、腸管切除は行わ
ず手術終了とした。術後に腸管虚血を示唆する所見は認めず排便問題なく経管栄養も可能であったが、ARDS に
より長期加療を要した。
【結語】ICG 蛍光法による腸管血流評価を行うことは、絞扼性イレウスに対する腸管温存の可否を判断するうえ
で有用な方法であると思われる。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
280
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-13-8
膵頭十二指腸切除術後早期の再手術が
必要であった急性輸入脚症候群の 2 例
1)東京慈恵会医科大學附属第三病院 外科
2)東京慈恵会医科大學 外科学講座
安田 淳吾 1)、兼平 卓 1)、鈴木 文武 1)、恩田 真二 1)、伊藤 隆介 1)、船水 尚武 1)、藤岡 秀一 1)、
岡本 友好 1)、矢永 勝彦 2)
【目的】膵頭十二指腸切除術(PD)時の胃空腸吻合や幽門側胃切除術時の Billorth Ⅱ法再建での合併症の 1 つに輸
入脚症候群があり、胃切除を施行した症例の 1%に発症する。今回 PD 術後早期に再手術が必要であった 2 症例を
経験したので文献的考察を加え発表する。
【症例】症例 1 は 73 歳、女性で下部胆管癌にて亜全胃温存 PD が施行さ
れた。当院では胃切除を伴わない場合は原則として Braun 吻合は行っていない。術翌日より、腹痛、黄疸増強
を認め、第 2 病日に腹膜炎症状出現、炎症反応高値認め緊急開腹手術を施行した。挙上空腸が結腸間膜通過部で
絞扼され、血流障害を認めていた。また腸液の挙上空腸盲端や膵空腸吻合部からの漏出を認めた。絞扼部を解除
するとともに、Braun 吻合を行い、挙上空腸に減圧チューブを置いた。再手術後軽快し、第 74 病日に退院した。
症例 2 は 51 歳、女性で膵頭部癌にて亜全胃温存 PD が施行された。経過良好であったが、第 9 病日目に膵空腸吻
合部ドレーンから腸液の流出、発熱、炎症反応の上昇あり CT を施行したところ、輸入脚の拡張と膵管チューブ
の逸脱あり輸入脚症候群の診断にて緊急開腹手術を施行した。症例 1 同様、輸入脚の横行結腸間膜通過部で狭窄
を認め、膵空腸吻合部より腸液の漏出を認めた。Braun 吻合と挙上空腸内に減圧チューブを置いたが、膵管空腸
吻合部は同定できなかった。術後膵液漏となったが保存的に軽快し 第 35 病日に退院した。【結語】輸入脚症候
群は完全閉塞に至らず十二指腸液が過度な停滞を繰り返す慢性輸入脚症候群(狭義の輸入脚症候群)と、急性に
輸入脚の完全閉塞が起こる急性輸入脚症候群に大別される。後者、とくに PD などの高侵襲度手術後では穿孔や
敗血症をきたし致命的となりうる可能性があるため早期の再手術を考慮すべきである。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
緊急手術となった鼠径ヘルニア偽還納の 2 例
P-13-9
1)自治医科大学消化器・一般外科
2)独立行政法人地域医療機能推進機構うつのみや病院外科
丸山 博行 1, 2)、小泉 大 1, 2)、高橋 大二郎 1, 2)、太白 健一 1, 2)、田中 裕美子 1)、村橋 賢 1)、
清水 徹一郎 1)、遠藤 和洋 1)、藤原 岳人 1)、佐田 尚宏 1)、安田 是和 1)
症例 1 は 76 歳、男性。肝硬変、肝細胞癌で消化器内科に通院中。午前 0 時、突然の下腹部痛、嘔気で発症し、
午前 4 時、救急搬送となった。初診時身体所見では右下腹部に有痛性腫瘤を触知し、右陰嚢腫大を認めた。腹部
CT で右陰嚢水腫と右下腹部に腸管壁の造影やや不良な拡張した小腸を認め、右陰嚢水腫、絞扼性イレウスの診
断で緊急手術を施行した。下腹部正中切開で開腹し、盲腸内側尾側の腹膜外に暗赤色に緊満したヘルニア嚢を認
め、小腸が内鼠径輪をヘルニア門として絞扼されていた。ヘルニア門を切開したところ暗赤色の腹水が多量に流
出し、嵌頓していた小腸を腹腔内に引き出すことができた。ヘルニア門は内鼠径輪であるがヘルニア嚢は内鼠径
輪から外側の腹膜前腔に存在しており、右鼠径ヘルニア偽還納と診断した。ヘルニア嚢を可及的に切除した後に
内鼠径輪を縫縮し、壊死した小腸は部分切除した。
症例 2 は 60 歳、男性。10 年前より両鼠径部膨隆を自覚し、自己還納を繰り返していた。朝から腹痛、嘔吐が
あり右鼠径部膨隆を自己還納したが症状増悪し、救急搬送となった。初診時身体所見では左鼠径部に膨隆を認め
たが右鼠径部には認めなかった。腹部 CT で右内鼠径輪付近の腹膜前腔に小腸ループを認め右鼠径ヘルニア偽還
納によるイレウスと診断し、緊急手術を施行した。下腹部正中切開で開腹すると右内鼠径輪付近で小腸が絞扼さ
れておりヘルニア嚢は腹膜前腔に存在し、右鼠径ヘルニア偽還納と診断した。嵌頓していた小腸は容易に腹腔内
に引き出すことができたため腸管切除を行わず、メッシュを使用して両側鼠径ヘルニアを修復し、手術を終了した。
鼠径ヘルニア偽還納は、腸管が嵌頓した状態のままヘルニア嚢と一緒に腹膜前腔に戻る稀な病態である。自己
還納を行っている鼠径ヘルニア症例で鼠径部腫瘤や圧痛などの嵌頓に特徴的な症状のないイレウス症例では、鼠
径ヘルニア偽還納は術前診断として考慮する必要がある。
281
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
大網小網裂孔網嚢ヘルニアの一例
P-13-10
教
1)弘前大学大学院医学研究科 消化器外科学講座
2)青森県立中央病院 救命救急センター
3)青森県立中央病院 がん診療センター外科
育
講
二階 春香 1, 2)、石澤 義也 2)、高橋 礼 3)、中井 款 3)、森田 隆幸 3)、袴田 健一 1)
演
パネルディスカッション
症例は開腹歴のない 36 歳の男性。受診の約 24 時間前から持続する上腹部痛・嘔吐のため、当院救命救急センター
に搬送された。初診時、腹部は軽度膨満していたが、軟で圧痛は軽度であった。腹部 CT 検査では、小腸拡張像
と少量の腹水を認めた。また胃と十二指腸水平脚の間に小腸の狭窄部を認め、内ヘルニア嵌頓が疑われ、同日緊
急手術を施行した。開腹したところ、Treitz 靭帯より肛門側 210 cm ~ 220 cm の小腸が、大網のほぼ中央の異常
裂孔を通り網嚢内に嵌入し、胃後面と膵の間を通り、小網の幽門側にある異常裂孔より腹腔へ脱出していた。小
網の裂孔がヘルニア門となっており、約 3 cm 径であった。徒手整復したところ、小腸には軽度うっ血の所見を
認めたが、壊死には陥っていなかったことから、小腸切除は行わなかった。小網・大網の裂孔を縫縮し閉鎖した。
術後経過は良好であり、術後 5 日目に退院となった。本症例では、術前 CT で大網小網裂孔ヘルニアとまでは診
断困難であったが、内ヘルニア嵌頓を疑い早期に緊急手術を施行できたため、壊死には陥っておらず腸切除を免
れた。大網小網裂孔網嚢ヘルニアは内ヘルニアのなかでも稀ではあるが、開腹歴のないイレウスの病態の原因と
して念頭に入れ、早期の外科的治療の必要があると思われた。
シンポジウム
ワークショップ
連
大腸癌イレウス症例の検討
演
題
P-14-1
シンポジウム
関 連 演 題
1)公立藤岡総合病院
安藤 裕之1)、設楽 芳範1)、森永 暢浩1)、田嶋 公平1)、田中 成岳1)、松本 明香1)、塚越 律子1)、
萩原 慶 1)、石崎 政利 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【背景】大腸癌イレウスの予後は、5 年生存率 25–50%と予後不良であるとされている。大腸癌イレウスは十分な減
圧ができれば一期的手術が可能であり、適正な郭清を行えば予後も変わらないとする意見も多い。
【方法】2007
年 4 月から 2009 年 12 月に当院にて経験した大腸癌イレウスにおいて減圧処置もしくは緊急手術を要した 21 例に
ついて臨床病理学的検討、5 年生存率に関して検討を加えた。
【結果】大腸癌イレウス 21 例の性別、平均年齢は、
男性 14 例、女性 7 例、65.6(± 14.46)歳であった。病変の占拠部位としては、直腸 S 状部(Rs)、S 状結腸(それ
ぞれ 4 例、19.05 %)が最多で、次いで、上部直腸(Ra)(3 例、14.28 %)の順に多く、下行結腸を含めた左側大腸
に多かった
(66.67 %)。組織学的進行度は StageⅡ 5 例
(23.80 %)
、StageⅢa 6 例
(28.57 %)
、StageⅢb 2 例
(9.53 %)、
Stage Ⅳ 8 例(38.10 %)であり、一期的手術は 18 例で 80 % 以上を占めた。しかし、大腸癌イレウスの 5 年生存率
は 36.7%であり、低率なものであった。減圧処置の一つとして、2012 年 1 月より本邦で保険適用となっている大
腸ステント症例 1 例もあわせて提示する。【まとめ】当院で経験した大腸癌イレウス症例の特徴について臨床病理
学的検討を加え報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
282
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-14-2
閉塞性大腸癌に対する術前減圧後の
腹腔鏡下切除術の有用性
1)神戸大学大学院 医学研究科 外科学講座 食道胃腸外科学分野
金光 聖哲 1)、角 泰雄 1)、山下 公大 1)、山本 将士 1)、金治 新悟 1)、森川 剛 1)、今西 達也 1)、
中村 哲 1)、鈴木 知志 1)、田中 賢一 1)、掛地 吉弘 1)
【背景】閉塞性大腸癌は、緊急減圧を要する病態であると同時に進行癌症例であり、腫瘍学的な予後改善も見据
えた治療戦略が求められる。
【目的】閉塞性大腸癌に対する術前減圧後の腹腔鏡下切除術の有用性を明らかとする。
【対象】経鼻的、経肛門的にイレウスチューブ挿入の後に切除術が施行された閉塞性大腸癌 53 例について検討し
た。
【結果】経鼻的減圧例が 26 例、経肛門的減圧例が 28 例であった。平均チューブ留置期間は 11.2 日で、チュー
ブによる腸管穿通例を 2 例(4 %)に認めた。全例が深逹度 ss、a 以深で、26 例(48 %)がリンパ節転移陽性であった。
36 例で開腹手術が、18 例で腹腔鏡下手術が施行された。平均手術時間は腹腔鏡下手術例で 290 分、開腹手術例で
231 分、平均リンパ節廓清個数は腹腔鏡下手術例で 22 個、開腹手術例で 17 個であった。腹腔鏡下手術例では開
腹手術例と比べて、有意に創感染が少なく(5.5 %:22 %)
、排ガス開始が早く(2.3 日:3.4 日)
、食事摂取開始ま
でが短く(4.6 日:5.7 日)
、術後在院日数が短かった(16 日:24.1 日)。【考察】閉塞性大腸癌は進行癌症例であり、
充分な局所制御とともに術後早期の後治療への移行が求められる。開腹手術と比べて同等のリンパ節廓清個数が
得られ、術後在院日数の短い腹腔鏡下切除術は、閉塞性大腸癌に対する第一選択となりうると考えられた。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-14-3
大腸癌イレウスに対して外科的処置を行い、
原発巣切除を施行した 19 例
1)福岡大学医学部外科学講座消化器外科
松岡 泰祐1)、小島 大望1)、乗富 智明1)、平野 陽介1)、愛洲 尚哉1)、吉田 陽一郎1)、谷村 修1)、
星野 誠一郎 1)、山下 裕一 1)
大腸癌イレウスの治療戦略は施設により様々であるが、緊急手術は癌の治療成績が悪いことが報告されている。
それ故、閉塞解除と癌の治療成績向上を視野に入れる必要がある。今回、我々は腸管減圧後に病巣切除を行った
症例を検討した。
【対象】2009 年 8 月から 2014 年 5 月までに当科で経験した腸管減圧処置を要した大腸癌イレウ
ス 19 例を減圧方法により分類し、病巣切除までに要した時間、入院日数、栄養状態について後ろ向きに検討した。
【結果】病巣部位は直腸:4 例、S 状結腸:6 例、下行結腸:3 例、横行結腸:5 例、上行結腸:1 例であった。癌
の進行度は stage Ⅱ:7 例、stage Ⅲ a:6 例、stage Ⅲ b:3 例、stage Ⅳ:3 例であった。腸管減圧の方法は、人工
肛門造設術が 10 例、大腸ステント挿入が 5 例、経口イレウス管が 3 例、経肛門的イレウス管が 1 例であった。人
工肛門造設群 8 例の原発巣切除までの平均値は 39 日、中央値は 28.5 日であった。のべ在院日数は平均 55.5 日、中
央値は 49.5 日であった。手術までの期間で栄養状態の改善は prognostic nutritional index(以下 PNI)を用いた。
42.6 から 46.2 に改善していた。大腸ステント群は根治術までの期間の平均値は 9.8 日、中央値は 10 日であり、の
べ在院日数の平均値は 25 日、中央値は 26 日であった。PNI は 45.7 から 40.3 と改善は見られなかった。大腸ステ
ント挿入を試みた症例は 6 例で、5 例は完遂可能で減圧良好であった。また、挿入不能であった 1 例は人工肛門
を造設した。
【考察】人工肛門造設は早急かつ確実な減圧が行え、早期の食事開始が可能であり、高度狭窄症例
において重要な治療である。しかし、比較的状態が安定している狭窄症例に対してステント治療は人工肛門と比
較し管理の簡便さ、患者の QOL、手術までの期間、在院日数の点で優位と考えられる。
283
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-14-4
大腸癌イレウスに対する bridge to surgery
としての金属ステント留置
教
1)県立広島病院 消化器乳腺移植外科
育
高倉 有二 1)、池田 聡 1)、末岡 智志 1)、松原 啓壮 1)、井出 隆太 1)、築山 尚史 1)、今岡 祐輝 1)、
山下 正博 1)、野間 翠 1)、鈴木 崇久 1)、松浦 一生 1)、大石 幸一 1)、札場 保宏 1)、眞次 康弘 1)、
石本 達郎 1)、中原 英樹 1)、漆原 貴 1)、板本 敏行 1)
講
演
パネルディスカッション
【はじめに】日常よく遭遇する oncologic emergency として大腸癌イレウスがある。当科では現在大腸癌イレウ
スに対して bridge to surgery として積極的に自己拡張型金属ステント(SEMS)を用いておりその短期成績を
検討する。
【対象】2012 年から 2014 年に大腸癌イレウスとして来院した症例のうち、22 例に SEMS 留置を試み、
SEMS 留置成功後に原発巣切除を行った 19 例を検討対象とした。【結果】SEMS 留置成功率は 86.3 %(19/22)で
あった。不成功であったものは、1)ガイドワイヤ非通過症例(緊急で人工肛門造設術施行)、2)ガイドワイヤ穿
孔症例(緊急ハルトマン手術施行)
、3)ステント非通過例(ブジーで減圧されイレウス解除)であった。SEMS 留
置例では全例減圧、経口摂取再開が可能であった。SEMS 留置例のうち、14 例(73.7 %)で一時退院が可能であっ
た。SEMS 留置から手術までの待機期間は中央値で 17 日(10–30)であった。待機期間中の合併症は 3 例認め、
SEMS 自然脱落 2 例、穿通による発熱 1 例であった。SEMS 留置後の待機手術で 10 例(52.6 %)に腹腔鏡手術が可
能であった。SEMS 留置例での永久ストーマ造設は 1 例(5.3 %)、一時的ストーマ造設は 2 例(10.5 %)であった。
術後合併症は 5 例(26.3 %)に認め、主なものは、遅発性縫合不全 1 例、創部感染 1 例であった。【結論】SEMS は
適切な症例選択を行えば、安全に施行可能で、人工肛門造設率の減少、合併症の軽減、患者 QOL の維持に有用
な治療戦略と思われた。今後、腫瘍学的長期成績の評価が必要である。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-14-5
左側大腸癌イレウスに対する SEMS を用いた
Bridge to surgery の導入成績
シンポジウム
関 連 演 題
1)福岡徳洲会病院 外科
岡本 辰哉 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【はじめに】左側大腸癌によるイレウスに対し我々は経肛門的減圧管を留置し術前減圧治療を行う事を標準化して
いたが、2013 年 10 月より Self-Expandable Metallic Stent(SEMS)を用いたイレウス解除を第一選択としている。
現在までに 6 例の SEMS 留置後の大腸癌根治術を経験した。当院における SEMS を用いた Bridge to surgery の
導入早期の成績について報告する。
【対象】2013 年 10 月より 2014 年 5 月までに左側大腸癌によるイレウス 6 例を
経験し、全例 SEMS を留置した。主病変部は RS1 例、下行結腸 1 例、S 状結腸 2 例、Ra 直腸 1 例、横行結腸 1 例
であった。
【結果】全例合併症なく SEMS 留置は可能であった。全例留置後速やかに腸管は減圧され平均経口摂
取再開は留置後 2.8 ± 1.8 日であった。手術までの平均待機期間は 16.0 ± 5.5 日であった。全例術前に大腸内視鏡
検査を行い多発癌の有無を検索した。6 例中 2 例主病変の口側に進行大腸癌を指摘した。全例根治術可能であり 1
例 covering ileostomy を造設した。6 例中 2 例に腹腔鏡下手術が可能であった。術後合併症は認めなかった。
【考
察】全例 SEMS 留置後に早期より経口摂取が再開され、口側併存病変の有無を術前に大腸内視鏡検査で検索する
ことが可能であった。大腸ステント留置後は速やかに腸管減圧を得ることができ、患者の QOL が向上する有効
な治療法であった。減圧効果も高く、経肛門的減圧管のように留置後に洗浄を繰り返す必要もなく管理が容易で
医療サイドのメリットも大きいと考えられた。処置に関する合併症や術後合併症もなく左側大腸癌イレウスに対
する SEMS を用いた Bridge to surgery は有効な治療法と考える。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
284
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-14-6
左側大腸癌イレウスにおける緊急
vs 腸管減圧後切除術の治療成績
1)横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学、2)横浜市立大学市民総合医療センター 消化器病センター
3)横須賀共済病院 外科、4)横浜市立市民病院 外科、5)横浜市立大学 がん総合医科学
樅山 将士 1)、石部 敦士 1)、大田 貢由 2)、諏訪 雄亮 1)、鈴木 紳佑 1)、諏訪 宏和 2)、渡邉 純 3)、
舛井 秀宣 3)、望月 康久 4)、市川 靖史 5)、遠藤 格 1)
【背景】大腸癌イレウスは、oncologic emergency であり緊急手術を要することも少なくない。【目的】左側大腸
癌イレウス手術症例における緊急一期的切除と腸管減圧後切除の治療成績を検討する。【方法】多施設共同後ろ
向き研究(YCOG1108)に登録された、2002 年 1 月から 2011 年 12 月までの 10 年間に参加施設において治療を行っ
た大腸癌イレウス症例 362 例中、左側症例のうち原発巣切除を施行した 213 例を対象とした。術前腸管減圧の有
無別で短期成績、長期成績を検討した。【結果】男:女= 138:75、平均年齢 69.8 歳。左側大腸癌の内訳は、横
行結腸 13 例、下行結腸 40 例、S 状結腸 118 例、直腸 42 例であった。Stage Ⅰ:1 例、Stage Ⅱ:80 例、Stage Ⅲ:
81 例、Stage Ⅳ:48 例であった。緊急で原発巣切除を施行したのは 52 例(緊急群)、減圧後に待機的切除した症
例は 161 例(減圧群:人工肛門造設 62 例、経肛門イレウス管 99 例)であった。減圧から待機的切除までの期間は
14 日( 2 ~ 103 日)であった。手術時間(min)は緊急群:減圧群= 174:231 と減圧群で長く(p = 0.006)
、
出血量(ml)
も 206:437 と減圧群で多かった(p = 0.013)。一方、D2 以上の郭清率(緊急群:減圧群= 56%:89%、p < 0.001)
や吻合率(64.4 %:90.5 %、p < 0.001)は減圧群で高かったが、合併症発生率、術後在院日数には差は認めなかった。
永久人工肛門率は 55.8%:23.5%と緊急群に多かった(p < 0.001)。全体の 5 年生存率は緊急群:減圧群= 57.5%:
65.8%で差は認めなかった(p = 0.419)が、Stage Ⅲでは減圧群で良い傾向にあった(50.9%:89.8%、p = 0.075)
。
{む
さいはつ せいぞん りつ}【結語】左側大腸癌イレウス症例では緊急では術前減圧を行うことにより出血量は多く
なるものの、永久人工肛門を回避し得る確率が高まる。長期成績は Stage Ⅲ症例では良い傾向であった。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-14-7
家族性大腸腺腫症による下行結腸癌イレウスに大腸ステント
留置を行い、緊急手術を回避し待機的に手術加療し得た一例
1)鹿児島大学 腫瘍学講座 消化器・乳腺甲状腺外科
鶴田 祐介1)、盛 真一郎1)、柳田 茂寛1)、田上 聖徳1)、野元 優貴1)、馬場 研二1)、前村 公成1)、
奥村 浩 1)、石神 純也 1)、夏越 祥次 1)
【はじめに】近年、大腸腫瘍狭窄に伴うイレウスに対する緩和治療目的や大腸癌イレウスによる緊急手術回避目
的(BTS:Bridge to surgery)で、大腸ステント(SEMS:self-expandable metallic stent)の導入が進んでいる。
今回われわれは家族性大腸腺腫症(FAP:familial adenomatous polyposis)による下行結腸癌に伴うイレウスに
対して SEMS 留置を行うことで緊急手術を回避し、待機的に腹腔鏡補助下大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術を施
行した症例を経験したので報告する。【症例】症例は 26 歳男性。2013 年 4 月上旬に腹痛、嘔吐を主訴に近医受
診。CT にて下行結腸脾弯曲部に壁肥厚を認め、同部位を機転としたイレウスを指摘された。CF にて下行結腸
に全周性の 2 型腫瘍および無数のポリーポーシスを認め FAP が疑われた。経鼻的イレウスチューブを挿入され、
精査・加療目的に当院紹介入院となった。腹痛・嘔気などのイレウス症状の改善なく、翌日に経肛門的イレウ
スチューブを挿入した。その後、症状改善し、4 月中旬の CT 上でも腸管拡張は軽快しており、経鼻的イレウス
チューブ抜去し、飲水およびエレンタールによる経口摂取を開始した。4 月下旬に注腸施行したところ、経肛門
的イレウスチューブが横行結腸の壁を圧排する所見を認め、腸管穿孔の発症が危惧され、イレウスチューブ抜去
し、SEMS を留置した。その後に食事摂取が可能となり、待機的手術が可能となった。5 月上旬上記手術を施行
した。
【まとめ】FAP 背景の若年発症による大腸癌イレウスに対して、SEMS を留置することで待機的に腹腔鏡
下手術を施行した症例を経験した。SEMS を留置することで腸内減圧と経口摂取による全身および栄養状態の改
善が可能となり、より安全な待機手術、また術前の QOL 改善に有用であると考えられた。
285
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
S状結腸軸捻転術後に盲腸軸捻転を来した1例
P-14-8
教
1)半田市立半田病院 外科
育
高橋 遼 1)
講
演
症例は 71 歳、女性。68 歳のときに、S 状結腸軸捻転で S 状結腸切除術を施行した。併存症として、脳出血後遺
症、症候性てんかん、慢性便秘症、特発性血小板減少症、気管支喘息があり、治療中であった。
腹痛を自覚し、当院救急外来を受診した。腹部造影 CT で右側結腸の虚血性変化と whirl sign を認め、絞扼性
イレウスと判断し、緊急開腹手術を施行した。開腹すると、血性腹水を認め、360 度回盲部が捻転しており、捻
転した腸管は壊死していた。回盲部の周囲との癒着はほとんど認めなかった。盲腸軸捻転の診断で、右半結腸切
除術を施行し、腸間は機能的端々吻合をおこなった。
本邦において大腸の軸捻転の発生頻度は、全イレウスの 5 ~ 7 % と報告されている。その 75 % 以上は S 状結腸
軸捻転であり、盲腸軸捻転は 6 ~ 15 % とされている。盲腸軸捻転の発症に男女差はなく、70 歳以上の高齢者が
半数近くを占めており、若年発症には先天異常や脳性麻痺、精神発達障害などの基礎疾患を有する症例が多いと
報告されている。後腹膜への盲腸固定不全、総腸間膜症、腸回転異常、胃腸下垂、腸間膜異常過長、腸間膜付
着部の狭小などの 1 次要因に加え、腸管内容の停滞や充満、術後癒着、妊娠などの 2 次要因が加わることで発症
すると考えられている。本症例のように、S 状結腸軸捻転と盲腸軸捻転を異時性に発症した報告は極めてまれで
あった。文献的考察を含め、報告する。
パネルディスカッション
シンポジウム
ワークショップ
連
盲腸捻転に対して緊急手術を施行した 1 例
演
題
P-14-9
シンポジウム
関 連 演 題
1)聖マリア病院 外科
2)聖マリア病院 救命救急センター集中治療科
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
吉富 宗宏 1)、爲廣 一仁 2)
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
ワークショップ
関 連 演 題
症例は 83 歳女性。主訴:上腹部痛 既往歴:糖尿病、虚血性心臓病 病歴:2014 年 3 月、施設にて嘔吐およ
び上腹部痛あり、急性腹症を疑い当院紹介搬送となる。来院時著明な腹部膨満を認めるも、腹膜刺激症状は認
めなかった。腹部 CT 検査では、回腸末端および上行結腸は著明に拡張し肛門側の結腸は虚脱していた。同部位
の捻転を認めた。また腹水の貯留認めた。腹水の性状は漿液性であった。同日、盲腸捻転と診断し緊急手術施行
した。 手術所見:正中切開で開腹、移動盲腸にて右結腸は後腹膜に固定されておらず、腸管固定異常であった。
時計回転し捻転解除時に色調悪く、右結腸切除を行った。全身状態悪く吻合は行わず、回腸および結腸それぞれ
の断端を人工肛門とした。また術中、捻転解除時にショック状態となった。静脈還流再開によるものと考えられ
た。以後、集中治療行い術後 8 日目に ICU より一般病棟管理となった。以後、経過良好にて術後 24 日目に前医
関連施設へリハビリ目的で転院となった。考察:S 状結腸捻転の治療に内視鏡による整復があるが、盲腸捻転に
対する内視鏡整復の報告も成功率は低いもののみられる。今回われわれは、内視鏡による整復も検討したが経験
なく見送った。手術では腸管は壊死していたため切除した。本症例は 13 時に当院搬入し、診断、治療方針決定、
家族説明その後の手術室搬入までさまざまな要因で約 4 時間を要している。術前に盲腸捻転を診断し得た症例で
あるが迅速な治療開始がのぞまれる。
286
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
当科における大腸穿孔症例予後予測因子の検討
P-15-1
1)埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科
傍島 潤 1)、幡野 哲 1)、松澤 岳晃 1)、熊谷 洋一 1)、石橋 敬一郎 1)、持木 彫人 1)、石田 秀行 1)
【背景・目的】大腸穿孔は腹膜炎、それに伴う重症敗血症を発症するため予後不良の疾患である。このため、早
急な手術と十分なドレナージ、術後の全身管理など集学的治療が必要である。当科では、Hinchey stage、穿孔
部位、原疾患に応じて術式、再建法を決定している。今回、大腸穿孔に対して緊急手術を施行した症例における
予後予測因子について検討したので報告する。【対象・方法】対象は当科において 2005 年 4 月から大腸穿孔に対
して緊急手術を施行した連続 117 例。臨床病理学的因子、30 日以内の死亡との相関性を、ロジスティック回帰モ
デルによる単変量解析および多変量解析を用いて検討。
【結果】年齢:中央値 67(18–94)歳、男性:女性= 70:9、
癌 40 例(34.2 %)、左側:右側= 94:23、hinchey 分類は I:II:III:IV = 26:19:32:39、手術時間 164(50–517)
分、出血量:310(10–12745)ml、PMX 施行 35 例(29.9 %)
、CHDF 施行 31 例(26.5 %)
、30 日以内死亡 11 例(9.4 %)。
年齢、性別、発症からの時間、癌、穿孔部位、hinchey 分類、手術時間、出血量、術前体温、術前心拍数、術前
血圧、白血球数、術前 DIC 等、18 因子を共変量とし、30 日以内死亡に影響を与える因子について、危険因子を
単変量解析したところ、術前 DIC、白血球 3000 未満、血圧 80 未満、発症からの時間(中央値以上)が危険因子と
して抽出され、更に多変量解析したところ術前 DIC、白血球 3000 未満が抽出された。【結語】予後規定因子を有
する症例の場合、重症感染症のコントロールが重要と考えられた。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
原因疾患からみた下部消化管穿孔の検討
P-15-2
1)埼玉医科大学消化器一般外科
淺野 博 1)、宇治 亮佑 1)、高山 哲嘉 1)、森岡 真吾 1)、矢島 沙織 1)、菅野 優貴 1)、小島 和人 1)、
荻野 直己 1)、深野 敬之 1)、大原 泰宏 1)、篠塚 望 1)
下部消化管穿孔は糞便性の腹膜炎から容易に敗血症に移行するため予後不良の疾患である。またその原因は
様々であり、治療方針を立てるうえでもそれぞれの特徴を知る必要がある。今回われわれは当科で施行した下部
消化管の原因別の特徴と予後について検討を行った。2007 年 4 月より 2014 年 3 月まで当科で施行した汎発性腹膜
炎を伴う下部消化管穿孔を対象とした。対象期間の症例は 162 例であり原因疾患としては腫瘍性 49 例、特発性
48 例、憩室 44 例の順で多かった。全体の死亡例は 24 例で 14.8%であったが原因別でみると腫瘍性は 22.4%と他
の原因と比較して高率であった。また年齢では腫瘍性 73.8 歳、特発性 76.5 歳、憩室 71.2 歳と特発性が高齢者に多
かった。生存例と死亡例の比較では腫瘍性と憩室の死亡例は APACHE Ⅱスコアが有意に高値であったのに対し
て特発性では有意差は得られなかった。下部消化管穿孔は各症例において病状は異なっている。治療方針を立て
るうえでは個々の症例に応じた重症度評価が必要であるが原因疾患も考慮する必要があると考えられた。
287
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
左側型穿孔性大腸憩室炎に対する治療戦略
P-15-3
教
1)杏林大学 医学部 外科学教室 消化器・一般外科
育
小嶋 幸一郎1)、正木 忠彦1)、高安 甲平1)、吉敷 智和1)、鈴木 裕1)、松岡 弘芳1)、阿部 展次1)、
森 俊幸 1)、杉山 政則 1)
講
演
パネルディスカッション
【背景】左側型穿孔性大腸憩室炎に対する治療としては、縫合不全を懸念して、Hartmann 手術が行われることが
多いが、Hartmann reversal(再建術)は技術的に困難なことが多く、術後合併症発生率も高いと報告されている。
近年欧米では、vital sign が安定している左側型穿孔性憩室炎に対し一期的吻合を行い、必要に応じて予防的人
工肛門造設を行う傾向にある。
【目的】左側型穿孔性大腸憩室炎に対する一期的吻合の有効性を検討することを
目的とした。
【方法】2012 年 9 月より腹膜炎症状を伴う左側型穿孔性大腸憩室炎に対し一期的吻合を行い、必要
に応じ予防的人工肛門造設を行う方針とした。【結果】現在まで 4 例加療を行い、いずれの症例も再発なく経過さ
れている。
(平均年齢:53 歳、平均在院日数:35 日、術後合併症発生率:25%)
【考察】食事の欧米化で今後さら
なる増加が予想される左側穿孔性大腸憩室炎における治療指針の作成が急務であると考えられた。
シンポジウム
ワークショップ
連
大腸穿孔における乳酸測定の意義
演
題
P-15-4
シンポジウム
関 連 演 題
1)済生会熊本病院 外科
岩槻 政晃1)、清水 健次1)、小川 克大1)、山村 謙介1)、尾崎 宣之1)、田中 秀幸1)、杉山 眞一1)、
緒方 健一 1)、土居 浩一 1)、髙森 啓史 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【背景と目的】大腸穿孔は発症早期に、敗血症性ショックや播種性血管内凝固症候群(DIC)から多臓器不全へ
陥り、死亡率が高い。救命のためには、早期診断と外科的治療のみならず、重症感染症や敗血症に対する集学
的な治療が必要である。本研究では大腸穿孔手術症例において乳酸(LA)に着目して、その予後因子としての
測定意義を検討する。【対象と方法】2009 年 1 月から 2014 年 5 月までに手術を行った大腸穿孔(虫垂穿孔、外傷
性、医原性穿孔は除外)53 例を対象とした。LA 絶対値(術前、術後)や LA クリアランス(術後 / 術前 = relative
clearance、術前 - 術後 = absolute clearance)と APACHE II、SOFA、POSSUM によるリスクスコアと在院死亡
との相関を比較検討した。【結果】術後合併症(Clavien-Lindo 分類 grade III 以上)は 28 例(52.8 %)
、死亡例は 13
例(24.5 %)であった。術前 LA 平均値は 3.0 nmol/L(0.6 〜 10.8)
、術後 LA 平均値は 2.9 nmol/L(0.6 〜 16.3)
、LA
relative clearance 平均値は 1.1(0.16 〜 3.47)、LA absolute clearance 平均値は 0.13(-11.6 〜 6.7)であった。ROC
曲線解析では術後 LA 値が最も高い予測能を示した(AUC:0.84)
。また、スコアリングシステムの比較では
POSSUM が最も高い予測能を示した(AUC:0.73)。多変量解析では術後の高 LA 血症(≧ 4 nmol/L)が有意な予
後因子であった。【考察】LA は周術期に簡便かつ迅速に繰り返し測定可能である。大腸穿孔手術症例において、
術後 LA は腹膜炎や敗血症などの大腸穿孔の病態および手術や出血等の侵襲の程度を反映すると考えられ、有意
な在院死亡予測因子である。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
288
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
超高齢者における大腸穿孔症例の検討
P-15-5
1)藤沢市民病院 外科
中本 礼良 1)、山岸 茂 1)、高橋 弘毅 1)、中堤 啓太 1)、押 正徳 1)、高橋 智昭 1)、本庄 優衣 1)、
泉澤 祐介 1)、渡部 顕 1)、上田 倫夫 1)、仲野 明 1)
【目的】当院における超高齢者の大腸穿孔症例の短期成績を検討した。
【対象と方法】2008 年 4 月から 2013 年 12 月
まで大腸穿孔に対して手術を施行した 60 例を対象とし、80 歳以上の超高齢者群(A 群:25 例)と 79 歳以下の非
超高齢者群(B 群:35 例)の 2 群に分け患者背景因子、術式、短期成績について retrospective に検討した。
【結
果】平均年齢は A 群 86.1 ± 5.18 歳、B 群 66.0 ± 9.2 歳。背景因子は女性比率が A 群で 60 %、B 群で 34 %(p=0.048)。
穿孔部位は両群ともに左側結腸が多く A 群で 88 %、B 群で 94 %。(p=0.385)。術前並存疾患として透析患者が A
群 8.0 %、B 群 8.5 %(p=0.937)。糖尿病患者が A 群 8 %、B 群 17 %(p=0.304)
。ステロイド内服患者が A 群 0%、B
群 5.7%(p=0.224)。術式は A 群でハルトマン手術 72 %、切除吻合術 12 %、穿孔部閉鎖術 8 %。B 群でハルトマ
ン手術 60 %、切除吻合術 17 %、穿孔部閉鎖術 3 %(p=0.431)
。手術時間は A 群 2:38 ± 0:29、B 群 3:21 ± 1:
25(p=0.009)と A 群で短かった。APACHE II スコアは A 群 20.7 ± 10.3、B 群 18.1 ± 8.9(p=0. 384)
。ICU 滞在日
数は A 群 7.8 ± 8.1 日、B 群 4.3 ± 3.4 日(p=0.043)
。死亡率は A 群 25 例中 1 例(4%)が在院死亡、B 群 35 例中 1 例
(2.8%)が在院死亡(p=0.663)
。
【結語】超高齢者の大腸穿孔症例は、手術時間の短縮、術後集中管理により非高
齢者と同等の短期成績が期待できる。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-15-6
当科における大腸憩室穿孔 5 例と憩室炎による
大腸膀胱瘻 4 例の検討
1)富山大学 消化器・腫瘍・総合外科
祐川 健太 1)、関根 慎一 1)、北條 荘三 1)、福田 卓真 1)、平野 勝久 1)、渡辺 徹 1)、小島 博文 1)、
森山 亮仁1)、渋谷 和人1)、橋本 伊佐也1)、堀 亮太1)、吉岡 伊作1)、松井 恒志1)、奥村 知之1)、
長田 拓哉 1)、塚田 一博 1)
大腸憩室症のうち症状を有するのは約 20 % と言われ、初期の段階では発熱や疼痛が主たる症状であるが、さ
らに症状が進行すると出血、穿孔、狭窄、膿瘍や瘻孔形成などを引き起こす。その治療は急性の疾患であるが背
景は良性疾患であるため第一に救命を行うことが大切と考える。そのうえで穿孔や膿瘍、瘻孔形成を引き起こし
ている症例があるため長期的な展望を見据えた術式選択が必要である。今回、我々は当院で 2009 年以降に経験
した、大腸憩室穿孔 5 例と大腸憩室炎による大腸膀胱瘻 4 例について検討する。経験した 9 例は男性 4 例、女性 5
例で、平均年齢は 61.8 歳(42–78 歳)であった。大腸憩室穿孔の 5 例はいずれも緊急手術が施行され、S 状結腸切
除術、左半結腸切除術がそれぞれ 1 例と一期的に吻合が行われたのが 2 例で、ハルトマン手術により人工肛門が
増設されたのが 3 例であった。大腸膀胱瘻の 4 例はすべての症例で横行結腸に双孔式人工肛門が増設された。人
工肛門が増設された症例では高度の炎症、糖尿病や呼吸器疾患など合併症の問題、長期のステロイド内服歴など
によって人工肛門増設が選択された。また、人工肛門が増設された 7 例のうち 2 例で二期的、三期的手術で人工
肛門が閉鎖され、2 例で今後人工肛門閉鎖予定である。術後合併症としては、SSI と腸間膜炎がそれぞれ 1 例に認
められたが、在院死はなく 9 例すべてが生存中である。術式の選択や術後合併症について若干の文献的考察を加
えて報告する。
289
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-15-7
保存的治療により外科的加療を回避しえた
魚骨による S 状結腸穿通の 1 例
教
1)独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 外科
育
朴 正勝 1)、三宅 正和 1)、前田 栄 1)、原口 直紹 1)、山本 和義 1)、西川 和宏 1)、大宮 英泰 1)、
宮本 敦史 1)、宮崎 道彦 1)、平尾 素宏 1)、池田 正孝 1)、高見 康二 1)、中森 正二 1)、関本 貢嗣 1)
講
演
パネルディスカッション
症例は 79 歳の男性。左下腹部痛を主訴に近医を受診した。左下腹部に圧痛を認めるも、腹膜刺激症状を認め
なかった。腹部 CT 検査で S 状結腸近傍の腸管外に約 2 cm の線状陰影を認め、魚骨による消化管穿孔と診断され、
当院を紹介となった。症状が軽度であり、御本人の自己判断にて 8 日後に当院を受診され、精査目的にて入院となっ
た。当院で施行した腹部 CT 検査で腸管外に魚骨の残存を認め、下部消化管内視鏡検査では S 状結腸に瘢痕を認
めるのみであり、翌日には退院となった。その 1 ヶ月後に腹部 CT 検査を施行したところ、魚骨の残存を認める
も膿瘍形成は無く、今後も外来で経過観察の方針となった。消化管異物による消化管穿孔では多くの場合外科的
治療が選択されるが、魚骨による S 状結腸穿通には無治療で手術を回避し得た症例も存在し、その診断や経時的
な経過観察において CT が非常に有用であった。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-15-8
上行結腸狭窄が原因と考えられた
大腸穿孔の 1 例
シンポジウム
関 連 演 題
1)埼玉医科大学病院 消化器・一般外科
2)埼玉医科大学病院 中央病理診断部
菅野 優貴 1)、淺野 博 1)、宇治 亮佑 1)、髙山 哲嘉 1)、森岡 真吾 1)、小島 和人 1)、荻野 直己 1)、
深野 敬之 1)、大原 泰宏 1)、篠塚 望 1)、正岡 亜希子 2)、安田 政実 2)
ワークショップ
関 連 演 題
症例は 72 歳、男性。2 日前からの腹痛を主訴に当院へ救急搬送となった。
来院時、腹部は板状硬であり、右下腹部を中心に強い圧痛を認めていた。腹部レントゲン検査および腹部造影
CT 検査では、糞便の貯留によって上行結腸が著明に拡張していた。また肝表面に遊離ガスを認めていたことか
ら上行結腸穿孔と診断し緊急手術とした。
術中所見で上行結腸は手拳大に拡張し、前壁には直径 2 cm 大の楕円形の穿孔部があり、糞便が露出していた。
また腹腔内には混濁した腹水が中等量貯留していた。上行結腸には閉塞起点となるような腫瘍や捻転は確認でき
なかった。上行結腸穿孔、汎発性腹膜炎と診断し、右結腸切除術および腹腔内洗浄誘導を施行した。
摘出した標本を確認すると上行結腸に瘢痕状のひきつれがあり、狭窄していた。完全閉塞には至っていなかっ
たものの糞便の通過障害の原因となり、穿孔をきたしたと判断した。
術後経過は良好であり、縫合不全や創部感染などの合併症なく術後 11 日目に退院となった。
上行結腸狭窄の原因としてクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患、腫瘍、腸結核などが考えられる。
病理学的所見および文献的考察をふくめ報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
290
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-15-9
長期治療中の SLE 患者で 3 回の腸管穿孔を
きたした 1 症例
1)福岡大学医学部外科学講座消化器外科
2)福岡大学医学部病理部
平野 陽介1)、小島 大望1)、大宮 俊啓1)、島岡 秀樹1)、山口 良介1)、佐藤 啓介1)、乗富 智明1)、
二村 聡 2)、山下 裕一 1)
SLE では多彩な消化器病変の合併を認めるが、中でも直腸潰瘍はまれではあるが約半数で穿孔を認め、予後
不良である。
【症例】29 歳男性。
【主訴】腹痛 下痢 嘔吐【患者背景】15 歳時に SLE と診断され、以後ステロイ
ドの内服を続けている。半年前からループス腎炎で高度腎機能障害を認めている。
【現病歴】腹痛、嘔吐、発熱
を認め、限局性腹膜炎の診断で近医より紹介となった。CT で回腸末端から横行結腸まで著明な大腸壁の肥厚と
周囲の脂肪織の上昇を認めた。遊離ガスは認めず、ループス腹膜炎の診断でステロイド静注療法を開始したとこ
ろ、速やかに症状改善した。
【経過】ステロイドを漸減しつつ経過をみていたが、入院 19 日目に排便時に突然の
下腹部痛を認め、CT で遊離ガスを認めた。下部消化管穿孔の診断で緊急で腹腔鏡下腹腔内洗浄ドレナージ、S
状結腸人工肛門造設術を施行した。術後の経過は良好で、術後 11 日目に原疾患による透析導入目的に腎臓内科
に転科となった。転科約 2 か月後、早朝に下腹部痛を認め CT で骨盤内に遊離ガスを認めた。下部消化管の再穿
孔の診断で緊急手術を施行した。本人が永久人工肛門を強く拒否したため、術式は腹腔洗浄ドレナージ、直腸
穿孔部大網充填術とした。術中より血圧安定せず、敗血症の状態であった。抗生剤治療、PMX 導入を施行した。
その後全身状態は安定し、術後 22 日目に直腸病変の確認のため、下部消化管内視鏡検査を施行、直腸に高度狭
窄を認めた。検査中送気で腹痛が出現し、CT で遊離ガスを認めた。再々穿孔の診断で、緊急で腹腔洗浄ドレ
ナージ、ハルトマン手術を施行した。術後は安定しており術後9日目にSLEの治療目的に腎臓内科に転科となった。
【結語】非常にまれな長期 SLE 罹患患者に発症した直腸穿孔の 1 例を経験した。SLE の直腸穿孔は再穿孔のリス
クが高く、タイミングを逸することなく病変を切除することが必要と考えられる。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
SLE 患者に発症した直腸潰瘍穿孔の一例
P-15-10
1)小牧市民病院 外科
鈴木 雄之典 1)、横山 裕之 1)、大津 智尚 1)、田中 健士郎 1)、坪内 秀樹 1)、上嶋 三千年 1)、
笹原 正寛 1)、平田 伸也 1)、中西 香企 1)、森 憲彦 1)、田中 恵理 1)、間下 優子 1)、佐藤 雄介 1)、
井戸田 愛 1)、村上 弘城 1)、神崎 章之 1)、望月 能成 1)、谷口 健次 1)、末永 裕之 1)
症例は 50 歳女性。6 年前より SLE にて当院腎臓内科に通院中で、ステロイド剤を長期内服されていた。数日前
からの肛門部痛と下血を主訴に当科を受診した。直腸診にて明らかな異常は認めなかったが、CT にて高位筋間
痔瘻による直腸周囲膿瘍と考えられた。外来での抗生剤治療を開始し、他院での待機的根治術の為に紹介となっ
た。同院で施行された直腸内視鏡検査で、直腸に多発する潰瘍を認めたため、直腸潰瘍の穿通による膿瘍形成の
診断で、再度当院受診し緊急入院となった。SLE に関連する直腸潰瘍と考えられ、保存治療を継続し消化管精査
の後に、待機的に手術を行う予定とした。しかし下血による出血性ショックをきたし、CT にて腹腔内に遊離ガ
スを認め、汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。直腸 S 状部の左側に 15 mm 大の穿孔部位を認め、元々存
在した直腸右側の膿瘍腔には明らかな穿孔部位は認めなかった。穿孔部位を含めたハルトマン手術を施行した。
病理組織学的検査では多発する潰瘍を認め、粘膜固有筋層に出血や浮腫を認め、漿膜下脂肪組織の動脈には動脈
硬化による内腔の狭小化や潰瘍底部や再疎通像など、循環障害性変化を認めた。しかし、明らかな血管炎の所見
は認めず、SLE に伴う血管炎による直腸潰瘍の診断には至らなかった。術後は直腸断端の縫合不全による難治性
瘻孔の治療を要したが、現在は外来にて経過観察中である。SLE 患者に発症した直腸潰瘍穿孔の一例を経験した
ので文献的考察を含め報告する。
291
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-16-1
大腸穿孔による敗血症時の
血液凝固異常の検討
教
1)金沢医科大学 一般・消化器外科
育
上田 順彦1)、三浦 聖子1)、藤田 純1)、森岡 絵美1)、甲斐田 大資1)、富田 泰斗1)、大西 敏雄1)、
大野 由夏子 1)、野口 美樹 1)、舟木 洋 1)、藤田 秀人 1)、木南 伸一 1)、中野 泰治 1)、小坂 健夫 1)
講
演
パネルディスカッション
【目的】大腸穿孔による敗血症時の血液凝固異常の病態を明らかにすること。
【対象と方法】過去 6 年間に当科で
経験した大腸穿孔例のうち、医原性、交通事故を除いた 31 例を対象とした。31 例を DIC 発症群(DIC 群)16 例と
非発症群(non-DIC 群)15 例に分けて臨床所見を検討した。さらに DIC 群については生存例と死亡例についても
検討した。なお DIC の判定は急性期 DIC 診断基準でおこない、予後の判定は術後 28 日時点の生死をもって判定
した。
【成績】
(1)DIC 発症の有無と予後:31 例中 non-DIC 群は全例生存した。一方、DIC 群 16 例のうち 9 例(56 %)
は生存、7 例(44 %)は死亡した。(2)背景因子:年齢は DIC 群 77.4±10.0 歳、non-DIC では 68.7±10.3 と有意に
DIC 群は高齢であった。腹腔内の汚染の程度、穿孔部位、
穿孔原因に関しては両群で差はなかった。
(3)所要時間:
発症から診断:T1、診断から手術:T2、手術開始から終了:T3、T2+T3 のいずれの時間も両群で有意差はなかっ
た。
(4)SOFA score:診断時、手術終了時、2 回目 PMX 終了時のいずれも DIC 群が有意に高値であった。
(5)
DIC 群における急性期 DIC 診断基準の解析:DIC スコアの合計点では生存群 4.9 点、死亡群 6.1 点と生存群で有意
に高値であった。また生存群、死亡群における SIRS、血小板、PT 比、FDP の各診断項目の比較では血小板の項
目のみ有意差を認めた。【結語】(1)大腸穿孔による敗血症時に DIC を発症した群のうち 44%が死亡した。(2)
一般的な背景因子では年齢のみが DIC 群では高値であった。(3)全身状態を示す SOFA score は DIC 群では nonDIC 群と比較して受診時から有意に高値であり、DIC 発症を推測させる指標となりえた。(4)DIC 群のうち血小
板の高度低下例で死亡が多かった。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-16-2
当院における S 状結腸憩室炎に伴う
結腸膀胱瘻の治療成績
シンポジウム
関 連 演 題
1)沖縄県立中部病院 消化器・一般外科
鳴海 雄気 1)、村上 隆啓 1)、宮地 洋介 1)、伊江 将史 1)、砂川 一哉 1)、上田 真 1)、福里 吉充 1)、
松本 廣嗣 1)
ワークショップ
関 連 演 題
(はじめに)今回、我々は過去 6 年間に S 状結腸憩室炎に伴う結腸膀胱瘻(以下、本症)9 例を経験したので文献的
考察を加えて報告する。 (対象および方法)2008 年 3 月~ 2014 年 2 月の 6 年間に経験した本症 9 例を対象に、年
齢・性別・主訴・治療経過について後方視的に検討した。 (結果)年齢は平均 69.6 歳(45 ~ 89 歳)、性別は男性
5 例、女性 4 例。主訴は糞尿が 5 例、発熱が 2 例、気尿が 1 例、下血が 1 例。全例入院時には腹膜炎の所見がなく、
Hinchey 分類 stage Ⅱの症例。いずれの症例でも術前は十分な期間絶食とし抗生剤投与を行った。4 例では中心
静脈栄養を行った。9 例中 8 例に一期的手術を計画し、このうち 7 例は S 状結腸切除 + 膀胱部分切除(うち瘻孔閉
鎖術 2 例)を施行して一期的に腸管を吻合した。残りの 1 例は 88 歳と高齢かつ強皮症のためステロイドを内服中
であり、S 状結腸切除と Hartmann 法による人工肛門造設を行った。二期的に手術を行った 1 例は初めに感染コ
ントロール目的で横行結腸による loop colostomy を造設し、38 日後に S 状結腸切除術、80 日後に人工肛門閉鎖術
を行った。しかし術後 10 日目に縫合不全を生じ再度人工肛門を造設した。術後は平均 5.8 日目で食事を開始し、
術後平均 25.8 日(最短 8 日、最長 71 日)で全例生存退院した。 (考察)本症は自然治癒が見込めず外科治療が必
要である。術前管理として絶飲食と抗生剤治療は必須であり、栄養状態が不良の場合には中心静脈栄養も行うべ
きである。人工肛門を再造設した症例では憩室炎に伴う炎症により吻合部の肛門側が狭窄しており、これによっ
て縫合不全が起きたと推測される。術前管理を徹底し一期的な切除吻合が理想ではあるが、ハイリスクな症例で
は Hartmann 法のようなより安全な術式を考慮しても良いと思われる。 (結語)外科的治療介入を行った本症 9
例について報告した。年齢や全身状態、合併症および術中所見を考慮して慎重に治療方針を選択することが肝要
である。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
292
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
胃結腸瘻を来した横行結腸癌の 2 例
P-16-3
1)半田市立半田病院 外科
岸本 拓磨 1)、岡田 禎人 1)、林 英司 1)、永田 純一 1)、太平 周作 1)、前田 隆雄 1)、堀尾 建太 1)、
石田 陽祐 1)、高橋 遼 1)、蟹江 恭和 1)、寺尾 尚哉 1)、則竹 統 1)、久保田 仁 1)
症例 1 は 74 歳、男性。数日前からの食思不振あり、急性発症の腹痛を自覚したために当院救命救急センター受
診した。腹部造影 CT にて横行結腸脾彎曲側に腫瘤を認め、胃への直接浸潤を認めた。下部内視鏡検査にて横行
結腸に全周性腫瘍を認め、上部内視鏡検査では胃体中部に壁外性腫瘍の浸潤所見を認めた。結腸生検より低分化
腺癌を認め、横行結腸癌および横行結腸癌による胃結腸瘻と診断した。結腸左半切除術、D3 郭清、胃部分切除
術を行った。胃の蠕動低下を認めたが術後 18 日目に退院された。切除標本の病理組織学的所見は、低分化腺癌、
pSI、med、INFb、ly3、v3、pN3(14/22)、M1(傍大動脈周囲リンパ節)
、Stage Ⅳであった。術後は進行再発
結腸癌に準じて化学療法を施行しており、術後 18 カ月生存中である。症例 2 は 87 歳、男性。2 週間前からの食思
不振と右上腹部痛あり近医受診し、腹腔内腫瘤疑いにて当院紹介となった。腹部造影 CT にて横行結腸肝彎曲側
に腫瘤を認め、上部内視鏡検査では胃前庭部に壁外性腫瘍の浸潤所見を認めた。結腸生検にて低分化腺癌を認
め、横行結腸癌および横行結腸癌による胃結腸瘻と診断した。結腸右半切除術、D3 郭清、胃部分切除術を行った。
術後経過良好にて術後 13 日目に退院となった。切除標本の病理組織学的所見は、神経内分泌への分化を伴う低
分化腺癌、pSI、sci、INFb、ly1、v0、pN0(0/8)
、M0、Stage Ⅱであった。超高齢であるために術後補助化学
療法は施行しておらず、術後 6 ヵ月無生存生存中である。今回我々は胃結腸瘻を来した横行結腸の 2 例を経験し
たので、若干の文献的考察を加えて報告する。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
大腸の魚骨穿通の二例
P-16-4
1)青森市民病院 外科、2)青森県立中央病院 救命救急センター 救急部、3)渡辺病院 外科、4)青森厚生病院 外科
渡辺 伸和1)、遠藤 正章1)、川崎 仁司1)、川嶋 啓明1)、青木 計績1)、矢越 雄太1)、冨浦 誠子1)、
石澤 義也 2)、吉川 徹 3)、中山 義人 4)
【はじめに】魚骨による大腸穿通の二例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。【症例 1】70 歳代
男性、魚料理をいつ摂取したか不明。平成 25 年 10 月腹痛あり。前医の CT では S 状結腸周辺の後腹膜膿瘍とその
中に魚骨を認めた。排便、排ガスもあり、炎症反応も軽度のため、待機的手術が可能と判断。11 月 26 日開腹手
術を施行。手術所見では、S 状結腸を授動し膿瘍腔に到達、魚骨を回収し膿瘍腔の洗浄ドレナージを施行した。
S 状結腸の漿膜面は炎症を伴っているが、腸管内との交通はないために腸切除は施行しなかった。術後経過良好
で、17 病日に退院。【症例 2】80 歳代女性。平成 26 年 5 月上旬に魚料理を摂取。その後、腹痛が出現。5 月 16 日紹
介医を受診。臍周囲に 6 センチの圧痛を伴う隆起を認めた。CT では腹壁から腹腔内に向かって、約 8 センチの
腫瘤を認め、その中に魚骨を確認した。精査加療のため当院に紹介となった。なお、CT では遊離ガス像もなく、
排ガス、排便もあり、紹介医受診前は経口摂取していた。消化管内視鏡では、穿孔部位は明かでなかった。6 月
4 日開腹手術を施行。手術所見では、膿瘍部分は腹壁、大網、横行結腸が一塊になっていた。横行結腸と膿瘍壁
の癒着は強かったが剥離は可能であり、膿瘍を形成した腫瘤を切除した。結腸剥離面に瘻孔の形成は認めなかっ
た。術後経過は良好で、第 14 病日に退院。
【考察】魚骨穿孔や穿通による急性腹症は、臨時手術になる場合と待
期手術になる場合がある。どちらの場合も CT による診断が有用である。特に MDCT の普及により、横断面の
他に冠状断や矢状断の方向から観察が可能で、診断の一助になる。今回の二例は経過や身体所見と CT などの画
像所見を参考にした後に待期手術を選択した。緊急手術を回避して、待期手術に持ち込むことで、消化管の精査
や、ドレナージを行うなど、治療のオプションも選択できると考えられた。
293
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-16-5
潰瘍性大腸炎に中毒性巨大結腸症を合併し、
緊急手術を施行した 1 例
教
1)東京医科歯科大学大学院 腫瘍外科学
2)東京医科歯科大学大学院 応用腫瘍学
3)東京医科歯科大学大学院 低侵襲医学研究センター
育
講
染野 泰典 1)、菊池 章史 1)、岩田 乃理子 1)、高橋 英徳 1)、岡崎 聡 1)、石黒 めぐみ 2)、
石川 敏昭 2)、小林 宏寿 3)、飯田 聡 1)、植竹 宏之 2)
演
パネルディスカッション
シンポジウム
症例は 66 歳、女性。1 日に 10 回以上の水様便と、1 か月で 7 kg の体重減少を主訴に発症した潰瘍性大腸炎(全
大腸炎型)
に対して、他院でサラゾスルファピリジンによる治療を開始した。1 週間の治療で症状の改善を認めず、
38℃台の発熱が持続したため、当院消化器内科に転院し、プレソニゾロンによる治療を開始した。中毒性巨大結
腸症を来たし、ステロイドによる明らかな改善を認めないため、タクロリムスによる治療を開始した。しかし、
結腸ガスの貯留が増悪したため当科コンサルトとなり、緊急手術を施行した。上中下腹部正中切開で開腹すると、
結腸、特に横行結腸が著明に拡張していた。腸管内容を吸引して減圧し、結腸亜全摘、回腸人工肛門造設、S 状
結腸粘液瘻造設術を行った。病理検査の結果、大腸全域にわたって炎症を認め、肛門側ほど粘膜の脱落・びらん・
潰瘍化が強く、UL-IV 相当までの深い潰瘍形成が認められた。術後は良好に経過し、術後 15 日目に軽快退院した。
退院後、感染による創離開を認めたが、保存的治療で術後 2 か月目には軽快した。術後 2 か月の現在、5-ASA 注
腸を継続して炎症の再燃を認めない。術後 3 か月に二期目の手術として大腸全摘、回腸嚢肛門管吻合術を予定し
ている(三期手術)。今回、我々は潰瘍性大腸炎に中毒性巨大結腸症を合併し、緊急手術を施行した 1 例を経験し
たので報告する。
ワークショップ
連
演
題
P-16-6
S 状結腸穿孔を契機に診断に至った血管型
Ehlers-Danlos 症候群の 1 例
シンポジウム
関 連 演 題
1)阪奈中央病院 外科
2)東京大学医学部附属病院 救急部集中治療部
倉田 秀明 1)、井口 竜太 2)、熊本 新一 1)、堀家 一哉 1)、遠藤 清 1)、中島 勧 2)、矢作 直樹 2)
ワークショップ
関 連 演 題
症例は生来健康な 24 歳男性。腹痛、便秘を主訴に当院救急外来を受診した。腹部全体に筋性防御を認め、腹
部骨盤単純 CT で多発大腸憩室、腹部全体に free air を認め大腸穿孔と診断し緊急手術を施行した。S 状結腸に穿
孔部、その周囲に膿瘍形成を認め、膿瘍洗浄ドレナージ、下行結腸による単孔式人工肛門を造設した。術中所
見で血管壁の脆弱性、易出血性、血管透過像を著明に認めた。母親が以前、血管型 Ehlers-Danlos 症候群(以下
EDS)の疑いがあると言われていたことから本症例も血管型 EDS を疑い、皮膚生検による遺伝子検査で確定診断
に至った。EDS とはコラーゲン代謝異常により結合組織の脆弱性を示す遺伝疾患でその多くは常染色体優性遺
伝による。現在 6 つの病型に分類されるが、最も重症な EDS4 型(血管型)は皮膚透過性、
易出血性、
特徴的な顔貌、
動脈、腸管の脆弱性を特徴とし、動脈性出血や消化管穿孔を起こすことで知られている。本症例のように、若年
者が大腸穿孔を来した場合、術中所見や EDS の家族歴から本疾患を念頭におく必要があると考えられる。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
294
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-16-7
非外傷性小腸穿孔 62 例
原因疾患別の特徴
1)埼玉医科大学病院消化器・一般外科
深野 敬之1)、宇治 亮佑1)、高山 哲嘉1)、森岡 真吾1)、菅野 優輝1)、小島 和人1)、荻野 直己1)、
大原 泰宏 1)、淺野 博 1)、篠塚 望 1)
小腸穿孔は消化管穿孔のなかでも比較的経験することが少ない疾患である。外傷性小腸損傷を除くと原因は多
岐にわたり、症状が非特異的で、画像診断においても術前に確定診断を得ることが難しいため、診断に時間を要
し治療のタイミングを逸する危険性がある。当科で 2009 年 4 月から 2014 年 3 月までに経験した非外傷性小腸穿孔
62 例を検討した。術前 CT にて遊離ガスを指摘し得たのは 37 例(59.7%)、小腸穿孔と診断し得たのは 3 例にとど
まり、ほぼすべての症例で消化管穿孔、もしくは汎発性腹膜炎の診断で手術を施行されていた。全体の在院死亡
例は 6 例(9.7%)で、慢性腎不全や肝硬変の合併例、もしくは腫瘍性の穿孔例であった。原因疾患はヘルニア嵌
頓に関連したものが 15 例(24%)、腫瘍性が 9 例(15%)、癒着性イレウスに起因したものが 9 例(15%)、クロー
ン病が 8 例(13%)であり、医原性 4 例(6%)、特発性 4 例(6%)、小腸潰瘍穿孔 3 例(5%)と続いた。ヘルニア嵌
頓に関連した穿孔は高齢者に多い傾向(平均年齢 83.1 歳)があり、症状出現から手術までの時間が長い傾向にあっ
た(平均 56.5 時間)。対してクローン病、小腸潰瘍に起因した穿孔は発症年齢が低く、それぞれ 35.3 歳、33.7 歳で
死亡例はなかった。腫瘍性の穿孔は 9 例で、腸症型 T 細胞性悪性リンパ腫、肺癌小腸転移、GIST 等が原因となっ
ていたが、在院死亡 2 例、術後 3 か月以内の死亡を含めると 4 例であり、予後不良であった。小腸穿孔の原因は
多岐にわたるが、術前正診は非常に困難である。術前正診にこだわることなく、期を逸せず手術治療に踏み切る
べきであるが、予後は年齢や全身状態、合併症、病理学的検索から総合的に判断されるべきものと考えられる。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-16-8
小腸部分切除術を施行した
放射線性腸炎の 1 例
1)福島県立医科大学 会津医療センター 外科
2)福島県立医科大学 会津医療センター 小腸大腸肛門科
根本 鉄太郎 1)、齋藤 拓朗 1)、添田 暢俊 1)、高間 朗 1)、武藤 亮 1)、竹重 俊幸 1)、浅野 宏 1)、
遠藤 俊吾 2)、冨樫 かずとも 2)、五十畑 則之 2)、渡部 晶之 2)
放射線照射による消化管晩期障害として、放射線性腸炎によるイレウスがある。今回、術前にダブルバルーン
内視鏡にて放射線性腸炎による多発する小腸狭窄を同定し、手術にて治癒しえた 1 例を経験したので、若干の文
献的考察を加え報告する。症例は 49 歳女性。2004 年 右鼠径部リンパ節腫大を認めはじめた。2006 年 生検にて
濾胞性悪性リンパ腫の診断となり、R-CHOP 療法 8 クール施行。2009 年 再発を認め、腹部大動脈 ~ 両鼠径部に
かけて逆 Y 字放射線照射(Total 40Gy)を施行。2010 年 放射線性腸炎によるS状結腸狭窄を認め、横行結腸にて
双孔式人工肛門造設術施行。2013 年 12 月 他医にて放射線性腸炎によるイレウスの診断にて開腹癒着剥離術を施行。
しかし、術後 1 か月後には再度イレウスの悪化を認め、当院救急外来受診となった。CT にて小腸の著明な拡張
と複数の狭小化を認め、放射線性腸炎による多発する小腸狭窄が疑われた。ダブルバルーン内視鏡ではトライツ
靭帯より約 65 cm、68 cm 口側の空腸、回腸末端に多発する小腸狭窄部を認めた。内視鏡的バルーン拡張術を 3 度
施行したが、改善傾向せず、腹痛が悪化したため、手術を施行した。手術ではダブルバルーン内視鏡所見にほぼ
一致した箇所に小腸狭窄を認め、小腸切除、回盲部切除を施行した。術後、縫合不全を認めたが、保存的治療に
て改善し、術後 2 ヶ月で退院となった。
295
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-16-9
穿孔性虫垂炎による汎発性腹膜炎に対する腹腔鏡手術
─腹腔内大量洗浄とreduced port surgery─
教
1)常滑市民病院 外科、2)半田市立半田病院 外科
育
井上 昌也 1)、太平 周作 2)、岡田 禎人 2)、林 英司 2)、竹之内 靖 1)、前田 隆雄 2)、岡田 明子 1)、
堀尾 建太 2)、岸本 拓磨 2)、石田 陽輔 2)、久保田 仁 2)
講
演
パネルディスカッション
【はじめに】急性虫垂炎に対する腹腔鏡手術は全国的に普及しているが、穿孔性虫垂炎により汎発性腹膜炎となっ
た症例に対しては、議論の分かれるところである。当院では、虫垂炎に対しては臍部創より行う単孔式腹腔鏡
下虫垂切除術を基本術式とし、また穿孔性虫垂炎による汎発性腹膜炎に対しては、3 点ポートによる腹腔鏡下手
術と腹腔内大量洗浄法を行っていることを以前に報告した。さらに、最近は汎発性腹膜炎に対して臍部創と下腹
部に 1 ポートを追加した reduced port surgery を行っているのでその方法及び初期成績を供覧する。【手技】臍
輪内を 1.5 cm 程度縦切開し開腹、Lap プロテクター、EZ アクセスを装着し、EZ トロッカーを 3 本挿入し気腹す
る。腹腔内を観察しつつ汚染腹水を適宜吸引し、穿孔した虫垂を同定、虫垂切除を行う。下腹部のドレーン挿入
部として利用できる位置に 12 mm ポートを追加する。日影式吸引嘴管の外筒に糸をしばっておき、12 mm ポー
トからダグラス窩へ挿入しておく。気腹を中止し頭低位で温生食 1000 ml を注入する。体幹ゆらし腹腔内の温生
食を撹拌し、頭高位として吸引嘴管のなかに吸引を挿入して吸引を行う。この操作を計 7 回、7000 ml 施行する。
腹腔内の生食が完全に吸引されていることを確認し、12 mm ポート部位よりドレーンを挿入し手術を終了する。
【成績】2013 年 1 月より本方法を導入し現在までに 6 例を経験した。術後合併症は、遺残膿瘍を 2 例(33%)に認
めたが、その他の合併症は認めなかった。3 点ポートによる従来法における合併症の頻度は 20%であり、現段階
としては満足できる結果ではなかった。しかし、まだ症例数が少なく、ポート位置を含めた手術手技をさらに洗
練させることで従来法と同様に行い得ると考えている。
【結語】今後は更に症例を蓄積し従来法と比較して、遜
色ない成績であることを確認することが肝要である。
シンポジウム
ワークショップ
連
血管内治療を施行した腹腔動脈解離の一例
演
題
P-17-1
シンポジウム
関 連 演 題
1)八戸市立市民病院 救命救急センター
丸橋 孝昭 1)、今 明秀 1)、野田頭 達也 1)、昆 祐理 1)、吉村 有矢 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【目的】今回我々は、増大傾向の動脈瘤を合併した孤立性腹腔動脈解離に対して血管内治療を施行し軽快した一
例を経験した。保存的治療を選択した腹腔動脈解離自験例一例および文献的考察を加えてこれを報告する。
【症例】39 歳女性、突然の左季肋部痛あり ER 受診、腹部造影 CT で脾臓上極全体、下極に楔状の造影欠損を認め
脾梗塞と診断。腹腔動脈は起始部より高度狭窄があり、血管造影検査を追加し腹腔動脈解離による脾梗塞として
入院した。
経過中に偽腔拡大と解離した脾動脈に動脈瘤の形成、増大傾向を認めたため、血管内治療の方針とした。上腸間
膜動脈からの側副路を介して逆行性にアプローチし動脈瘤および腹腔動脈本幹起始部にコイル塞栓術を行った。
血管造影で口径不同な狭窄が多発しており、基礎疾患に segmental arterial mediolysis(分節性動脈中膜融解:
SAM)が疑われた。術後フォロー CT で動脈瘤は消失、臓器血流は側副路により維持されており、肝酵素上昇も
なく経過良好で退院した。
【考察】大動脈解離を伴わない孤立性腹腔動脈解離は、本邦でこれまで約 20 例程度の報告と極めて稀な疾患であ
り、原因、病態、治療法は確立していない。
当院では、本症例以外に、腹痛で発症した 65 歳女性の腹腔動脈解離の症例を経験している。早期より真腔の狭
小化と側副路発達による臓器血流を認め、保存的加療を選択、フォロー CT で腹腔動脈は起始部より閉塞したが、
特に問題なく経過した。このように多くは保存的加療で軽快するとされているが、臓器虚血の進行、急性期の動
脈瘤合併、切迫破裂、慢性期の拡大傾向では手術適応となる。
血管内治療の場合、腹腔動脈に解離が及んでいるため治療戦略に苦慮するが、本症例では側副路が十分に発達し
ており、逆行性アプローチで安全に治療が可能であった。
【結語】孤立性腹腔動脈解離の異なる経過、治療方針をとった二症例を経験した。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
296
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-17-2
上腸間膜動脈解離による腸管虚血に対して、
大動脈-回腸動脈-空腸動脈バイパスを行った一例
1)船橋市立医療センター 外科
2)船橋市立医療センター 心臓血管外科
吉岡 隆文1)、丸山 尚嗣1)、田中 元1)、夏目 俊之1)、宮崎 彰成1)、佐藤 やよい1)、山本 悠司1)、
大塚 亮太 1)、柳原 章寿 1)、横山 将也 1)、小林 拓史 1)、茂木 健司 2)
はじめに:上腸間膜動脈解離はまれな疾患で、無症状から腸管壊死によるショック状態まで様々な症状を呈す
る。その治療方針も確立したものはない。症例:65 歳、男性 現病歴:麻雀中に上腹部痛を自覚し、トイレに行っ
たところ、腹痛が増強し、その場でうずくまっているところを友人が発見し、救急要請。当院救命センターへ
搬送となった。既往歴・内服薬:なし 生活歴:40 本 / 日の喫煙歴あったが、現在は禁煙している。来院時現症:
HR:70 回 /min、sinus、BP:120/70、RR:36 回 /min 冷汗あり 腹部:心窩部 〜 臍部にかけて圧痛あり。腹膜
刺激症状あり。発症から 1 時間で造影 CT を施行したところ、上腸間膜動脈解離があり、空腸動脈を分岐した末
梢は閉塞していた。上腸間膜動脈解離による腸管虚血の診断で手術の方針となった。手術所見:腹部正中切開で
開腹したところ、腸管壊死の所見はなかった。しかし、小腸の色調は不良で蠕動もほとんどない状態であった。
術中エコーで第 3 空腸動脈・回腸動脈の血流がないことを確認し、浅伏在動脈グラフトを用いて、大動脈 - 回腸
動脈 - 空腸動脈バイパスを行なった。バイパス後は flow は良好で、腸管の色調も改善し蠕動も良好となったため、
閉腹し手術を終了とした。経過:フォローの CT では解離は残存するものの、偽腔が狭小化しており、バイパス
からの血流は良好であった。術後麻痺性イレウスになったものの、その他は順調に経過している。結語:上腸間
膜動脈解離に対して、浅伏在動脈グラフトを用いて大動脈 - 回腸動脈 - 空腸動脈バイパスを行い、腸管壊死を回
避した一例を経験した。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-17-3
膵頭十二指腸切除術中損傷に起因した術後上
腸間膜動脈閉塞症による大量小腸壊死の 1 例
1)名古屋大学附属病院腫瘍外科
山口 貴之 1)、水野 隆史 1)、江畑 智希 1)、國料 俊男 1)、横山 幸浩 1)、角田 伸行 1)、菅原 元 1)、
伊神 剛 1)、深谷 昌秀 1)、上原 圭介 1)、山口 淳平 1)、梛野 正人 1)
症例は 70 代女性。他院で下部胆管癌の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行。術中に上腸間膜動脈
(SMA)本幹を損傷し、同動脈が完全離断され SMA の端端吻合再建が行われたが、術後第 7 病日の CT で上腸間
膜動脈閉塞症による小腸壊死、小腸穿孔を疑い、再開腹術を施行した。開腹すると拳上空腸から右側結腸にかけ
て広範な壊死を認め、小腸全切除術、右半結腸切除術、膵管外瘻術、総肝管閉鎖および RTBD チューブによる
胆管外瘻術、胃瘻造設術を施行し、当院転院となった。当院にて人工呼吸器管理、腹腔内膿瘍、胆汁漏、膵液瘻
に対する治療を開始した。術後第 11 病日に右肝管断端の破綻を疑い PTBD を追加挿入した。術後第 13 病日にド
レーン刺入部の下腹壁動脈からの出血に対して経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)を施行し、術後第 14 病日には
胃瘻腹壁固定部の脱落による腹腔内膿瘍に対して緊急開腹ドレナージ術、胃瘻再造設術を施行した。術後第 15
病日に下腹壁動脈からの再出血のため再開腹止血術を施行した。術後第 25 病日に人工呼吸器を離脱した。完全
中心静脈栄養とドレナージにより腹腔内膿瘍、胆汁漏、膵液瘻は徐々に改善し、術後第 84 病日に転院となった。
総ビリルビン値は最高 20.0 mg/dl まで上昇したがその後 9.8 mg/dl まで低下した。膵管・胆管完全外瘻および胃
瘻造設状態で前医へ転院した。膵頭十二指腸切除術後の急性上腸間膜動脈閉塞症では、大量小腸壊死により、胃
瘻、胆管、膵管外瘻の造設とその後の膵瘻、胆汁漏の治療や完全中心静脈栄養やリハビリテーションなどの集学
的治療が必要となる。
297
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-17-4
急性SMA閉塞症に対する血管内stent留置後に形成された
上腸間膜動脈−十二指腸瘻および脾動脈−十二指腸瘻をきたした一例
教
1)神鋼病院 外科
育
浅利 建吾 1)、藤本 康二 1)、長谷川 寛 1)、小松原 隆司 1)、秋山 泰樹 1)、錦織 英知 1)、
古角 祐司郎 1)、小泉 直樹 1)、上原 徹也 1)、石井 正之 1)、東山 洋 1)、山本 正之 1)
講
演
パネルディスカッション
【はじめに】今回我々は膵頭部癌に対する放射線治療歴開腹歴のある患者の急性上腸間膜動脈(SMA)急性 SMA
閉塞症に対して血管内ステント留置を施行し、その、5 ヶ月か月後および 17 ヶ月後に、SMA と脾動脈に異時性
に同部に仮性動脈瘤の形成形成を認め、仮性動脈瘤の十二指腸への破裂により大量出血をきたしたが救命し得
た症が、救命し得た一例を経験した。医学中央雑誌で検索する限りでは、SMA 上腸間膜動脈-十二指腸瘻の報
告は 1 一例のみであり、その後の脾動脈からの十二指腸への出血の病態も含めて非常に貴重な症例を経験したの
で報告する。
【症例】59 歳、女性。10 年前に門脈腫瘍塞栓を伴う局所進行膵頭部癌に対して、術中照射及び総胆
管十二指腸吻合術、さらに術後化学放射線療法を施行し、無再発経過観察中であった。当年 10 月、急性 SMA 閉
塞症を発症し緊急血管内ステント留置および結腸右半切除、回腸部分切除を施行した。翌年 3 月より下血を繰り
返し、原因精査のため血管造影検査を行ったところ SMA ステント留置部に仮性動脈瘤を認めた。血管造影検査
中に十二指腸への仮性動脈瘤破裂による大量出血を認めショック状態に陥ったが、SMA 閉塞部に留置していた
uncovered stents の内側にさらに covered stents を留置し止血に成功した。その一年後に再度下血をし、精査し
たところ脾動脈と十二指腸潰瘍底に交通を認め、同部の出血によるものと判断し、脾動脈塞栓術を施行した。
【考察】仮性動脈瘤形成の原因としては、膵頭部癌に対する放射線治療に伴い SMA に血管炎をきたし動脈壁が脆
弱化していた部位に、uncovered stents 留置による動脈壁への機械的圧迫が加わり形成されたものと考えられた。
また膵頭癌への術中照射の長期的な影響による十二指腸潰瘍の進行により上腸間膜動脈-十二指腸瘻および脾動
脈−十二指腸瘻をきたしたものと考えられる。
シンポジウム
ワークショップ
連
TIA と開腹手術を行った脾動脈瘤破裂の 1 例
演
題
P-17-5
シンポジウム
関 連 演 題
1)協立総合病院
中澤 幸久 1)
ワークショップ
関 連 演 題
脾動脈瘤(以下 SPA)破裂に対して、SPA 塞栓術を行った後、脾臓摘出術を行った症例を経験したので報告す
る。症例は 41 歳男性。【現病歴】2013 年 8 月、4 日前からの発熱と意識レベル低下のために当院に緊急入院となっ
た。入院時検査;WBC 12400 Hb 14.9g/dl Plt 18.1 万 AST 52 ALT 134 LDH 542 CRP 6.2 mg/dl。CT(単純)
にて肺炎像あり入院となった。
【既往歴】知的障害あり。口唇口蓋裂、眼球摘出、胆石症手術。
【入院後経過】入
院後 6 日目にレベル低下、血圧低下あり。血液検査上での著変認めず、補液で改善した。8 日目の未明にショッ
クバイタルとなった。
(バイタル)血圧 70 mmHg 以下、脈 140/ 分、酸素飽和度 98%。
(血液生化)WBC 17600 Hb
5.7g/dl Plt 21.9 万 BUN 27 mg/dl Cr 1.1 mg/dl CRP 3.9 mg/dl。出血性ショックと診断し、造影 CT 検査を施行し
た。SPA 根部近くに動脈瘤(2.5 cm 大)が存在し、後腹膜腔と腹腔内に多量の血腫、腹水を認めた。【動脈造影】
消化器内科医にて SPA 塞栓術を施行した。動脈瘤(3.3 × 2.9 cm)の部位は近位であった。また SMA から右肝動
脈が分岐していた。動脈瘤と近位 SPA を塞栓したが、遠位 SPA は塞栓できず、そのため、開腹手術により、動
脈瘤を切除するか、SPA を塞栓する方針とした。
【手術】SPA 塞栓術、脾臓摘出術を施行した。開腹すると、多
量の出血と血腫を認めた。膵・脾を授動し、SPA をカットダウンし塞栓物質を注入、透視にて確認した。脾臓
を摘出術した。手術時間 2 時間 50 分、出血量 4591cc、術中輸血;RCC 6 単位、FFP6 単位。【病理】SPA の病理
像にて、segmental arterial mediolysis と考えられた。
【経過】周術期での輸血は 22 単位。膵液瘻を認め保存的に
軽快した。術後 60 日目に腹腔内膿瘍を認め、ドレナージを行った。造影にて小腸との交通が認められたが、保
存的に軽快した。基礎疾患等の問題もあり、退院まで時間を要し、術後 114 日目に退院となった。
【考察】脾動脈
瘤の治療として、経カテーテル的動脈塞栓と外科治療があげられる。患者の状態と施設の条件により適切な治療
が施行されるべきである。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
298
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-17-6
腹腔動脈、上下腸間膜動脈根部閉塞を伴った
反復性の急性腸間膜虚血症、穿孔性腹膜炎の救命例
1)東京大学医学部附属病院胃食道外科
2)東京大学医学部付属病院アレルギー、リウマチ内科
西田 正人 1)、八木 浩一 1)、愛甲 丞 1)、山形 幸徳 1)、山下 裕玄 1)、森 和彦 1)、野村 幸世 1)、
土田 優美 2)、山本 一彦 2)、瀬戸 泰之 1)
我々は、全身多発動脈血栓症に腹腔動脈(CA)、上下腸間膜動脈(SMA, IMA)根部閉塞を伴った急性腸間膜
虚血症、穿孔性腹膜炎に対し、繰り返し小腸切除を行い救命できた一例を経験したので、若干の文献的考察と
共に報告する。症例は 50 歳女性で、46 歳時に脳梗塞を発症し、原因として血管炎を疑われステロイドパルス療
法で血管狭窄改善した既往がある。夏頃からの間欠的腹痛が増悪し、9 月に前医入院し、CT で消化管穿孔の診
断で小腸切除施行した。術後 7 日目に縫合不全、腸管壊死に対し、小腸切除、小腸人工肛門造設となった。この
際の CT で CA, SMA, IMA 根部のほぼ完全閉塞と側副血行路の発達を認め、血管炎を疑いステロイド大量投与
を行った。術後経過中の十二指腸穿孔や腹痛再燃は保存的に加療し、全身状態が改善した翌年 6 月に血管炎精査
目的に当院アレルギー内科に搬送転院となった。その 3 週後に急性腹症を呈し、CT で小腸穿孔、膿瘍形成の診
断で小腸部分切除、人工肛門再造設した。これまでの切除小腸標本の病理所見で、標本中の血管に明らかな血
管炎所見はなく、血栓形成、再疎通像を認め、動静脈血栓症と診断されたため、ステロイドを漸減し抗血小板、
抗凝固剤投与を開始した。以降、ストマケアにやや難渋するも腸管虚血の症状を認めず、11 月に人工肛門閉鎖
術を施行し退院可能となった。残存小腸長は 1.5 m 程度だが短腸症候群を認めず、新たな虚血症状もなく約 2 年
が経過している。血栓症についてはループス抗凝固因子(LAC)陰性、各種抗体陰性、プロテイン C, S 欠乏なく
seronegative antiphospholipid syndrome の可能性が考えられるが、3 動脈閉塞の原因は不明である。急性腸間膜
虚血症の予後は不良であるが、本症例では側副血行による血流下にあり、術中所見に基づいた虚血腸管の切除に
より救命が可能となった。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-17-7
上腸間膜動脈、両側下肢動脈への
同時多発塞栓症の 1 救命例
1)慶應義塾大学 医学部 一般消化器外科
落合 剛二 1)、尾原 秀明 1)、松原 健太郎 1)、下河原 達也 1)、北川 雄光 1)
【背景】血管疾患の治療の進歩にも関わらず、上腸間膜塞栓症は未だに致命的な経過を辿る危険を持った疾患で
あり、死亡率が高い。今回われわれは、上腸間膜動脈と両側下肢動脈に同時多発的に塞栓症を生じ救命し得た 1
例を経験したので報告する。【症例】73 歳、男性。既往に心房細動を有しダビガトラン内服中であった。他院に
入院中に、両側下肢の疼痛と、しびれ、さらに腹痛と下血を認め、発症翌日に当院救急外来搬送となった。造
影 CT 検査で上腸間膜動脈閉塞と、右内腸骨動脈閉塞、両側大腿深動脈閉塞、両側膝窩動脈以下の広範な閉塞を
認め、上腸間膜動脈、両側下肢動脈への同時多発塞栓症の診断で、緊急手術を施行した。開腹先行で手術を開
始し、Fogarty カテーテル用いて上腸間膜動脈本幹の血栓除去を行い、壊死に陥った小腸を、約 100 cm を切除し
た。その後両側膝上膝窩動脈を露出し Fogarty カテーテル用いて末梢の血栓除去を行った。再灌流後に右下腿の
緊満が出現し、コンパートメント症候群と判断して、右下腿の筋膜切開を施行した。翌日 2nd look operation を
施行し、壊死腸管の追加切除(小腸・回盲部切除)を施行した。トライツ靱帯から 90 cm までの小腸を温存した。
術後 myonephropathic metabolic syndrome(MNMS)による、急性腎機能障害、代謝性アシドーシスを認めた
が、利尿と尿アルカリ化にて改善を認めた。両側下腿は神経障害なくリハビリを開始し、また経口摂取を再開し
て経過良好である。
【結語】本症例は同時多発塞栓症に対して各臓器への迅速かつ的確な治療を行うことで救命
し得た。若干の文献的考察を含めて報告する。
299
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-17-8
骨盤放射線治療後に生じた
外腸骨動脈直腸瘻の 1 例
教
1)公立豊岡病院但馬救命救急センター
育
佐々木 妙子1)、小林 誠人1)、永嶋 太1)、岡 和幸1)、番匠谷 友紀1)、松井 大作1)、前山 博輝1)、
中嶋 麻里 1)、藤崎 修 1)、山本 奈緒 1)、菊川 元博 1)、間 崇史 1)、藤原 大悟 1)、安田 唯人 1)
講
演
パネルディスカッション
【症例】68 歳、女性。約 20 年前に子宮頸癌に対して抗癌剤動注療法と放射線照射療法を施行した既往があり、放
射線腎障害により右腎瘻が造設されている。数ヶ月前に少量の下血を認め、CT 検査のみで経過観察となってい
たが、誘因なく突然の下血から出血性ショックとなりドクターカーにて当センターへ搬入された。初療搬入後、
初期輸液および輸血を施行するも反応なく、気管挿管、IABO を挿入し一時止血が可能となった状態で造影 CT
検査を施行した。結果、右外腸骨動脈直腸瘻の診断に至った。出血制御目的に IABO 支持下に右外腸骨動脈ステ
ント留置術を施行、循環動態の安定化が得られたことを確認し、横行結腸人工肛門造設術および右外腸骨動脈
直腸瘻周囲の除染・感染制御目的に腹膜外アプローチによる小骨盤内ドレナージ術を施行した。連日瘻孔周囲
を含む小骨盤内の洗浄と抗生剤投与にて感染を制御し、第 63 病日に退院となった。【考察】動脈腸管瘻には動脈
瘤、放射線治療などに起因する 1 次性のものと、人工血管置換術後に生じる 2 次性のものがあり、2 次性の頻度
は 0.4 % – 4.0 % であるが、1 次性のものは腹部大動瘤の 0.9 % 以外は報告が散見する程度で稀である。早期診断に
難渋し出血性ショックとなった段階で診断に至ることが多く、死亡率が高い。早期に出血制御を行うことが重要
であり、本症例では放射線治療歴があり腹腔内の高度癒着が予想されたことから動脈側に IABO による一時止血
(血流制御)とステント留置術を、腸管側に双孔式人工肛門造設と短時間かつ低侵襲の治療法を選択した。腸管
側の瘻孔未閉鎖と留置ステントへの感染波及が課題となるが、2 期的手術あるいは本症例のような徹底した洗浄・
ドレナージ術で対応可能と考える。【結語】動脈腸管瘻による出血性ショック症例では、早期の出血制御と除染・
感染制御を行う治療法の選択が重要である。
シンポジウム
ワークショップ
連
門脈・上腸間膜静脈血栓症の 6 例の検討
演
題
P-17-9
シンポジウム
関 連 演 題
1)近畿大学医学部付属病院救命救急センター
横山 恵一 1)、村尾 佳則 1)
ワークショップ
関 連 演 題
門脈・上腸間膜静脈血栓症は比較的まれな疾患であり、発症早期の腹部所見は軽度で特異的な所見が認められ
ない。しかし手術時期を誤った場合、腸管壊死から敗血症を引き起こし致命的な状態になりうる。当院におい
て 1999 年 ~ 2013 年までに門脈・上腸間膜静脈血栓症を 6 例経験したので報告する。平均年齢 55 歳、性別は全員
男性、平均在院日数 23 日であった。抗血栓療法は全例に行った。手術適応としては、画像診断に加えて、血液
検査、腹膜刺激症状、経過を総合判断した。保存的治療は 6 例中 3 例に行った。開腹手術を行った症例は 6 例中
3 例であり、手術症例全例に腸管壊死が認められたため、腸管切除を行っている。手術症例中 1 例に second-look
operation を行った。全例、救命し得た。門脈・上腸間膜静脈血栓症は腸管壊死をきたした場合開腹手術を行い、
腸管切除を行う必要がある。開腹手術時の問題点として腸管壊死の範囲の同定が困難な事があげられる。術中の
所見では壊死に陥っていない腸管が時間の経過とともに壊死に陥り、再手術を要した症例も実際に報告されてい
る。また術中に腸管が壊死しているか壊死していないか判断が難しい状態の腸管もある。そのために門脈・上腸
間膜静脈血栓症に対する手術では明らかに壊死に陥った腸管の切除をまず行う。second-look operation を行うこ
とにより、新たな腸管壊死の出現と壊死を免れた腸管を確認する手術方針が有効と考えられる。門脈・上腸間膜
静脈血栓症に対する術式は腸管切除範囲を最小限にとどめるため、second-look operation が有効であると考えら
れる。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
300
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-17-10
門脈内血栓症に対し、IVR、抗凝固療法、
手術を行った 3 例
1)日本医科大学付属病院 高度救命救急センター
吉野 雄大 1)
【はじめに】門脈内血栓症は肝の鬱血や壊死が進行し、肝不全を来す。さらに血栓が上腸間膜静脈に達すると腸
管壊死を来し、緊急手術や血管内治療を要することがある。その反面、進行が緩徐で、症状が多岐に及ぶため診
断が遅れることがある。今回は IVR、抗凝固療法、手術、などの治療を行った門脈内血栓症の 3 例を経験したの
で報告し、その治療法について考察する。
【症例 1】71 歳・男性。1 週間前からの呼吸困難を主訴に他院から転院
搬送。CT で門脈本幹に血栓を認め、IVR で血栓吸引・溶解療法を施行。その後肝機能障害が進行し、CHDF・
血漿交換療法施行するも第 2 病日に死亡。病理結果から腫瘍塞栓であることがわかった。原発巣は画像検査から
大腸癌が疑われた。【症例 2】74 歳・男性。前日からの腹痛で前医受診し胆嚢炎・門脈内血栓症・敗血性ショック
と診断、当院搬送。IVR で閉塞を認めた門脈左枝に PTA・血栓吸引施行。PMX、CHDF、抗菌薬治療を行い循
環動態安定、第 12 病日に消化器内科に転科となった。【症例 3】73 歳・男性。5 日前からの腹痛あり、前医受診。
CT で S 状結腸周囲の脂肪織濃度上昇・アシドーシスの進行を認め当院に救急搬送。CT で門脈・上腸間膜静脈に
血栓を認め、回腸壊死が疑われた。IVR で完全閉塞した門脈・上腸間膜静脈に対し血栓溶解療法を行った。IVR
後に開腹し、50 cm の壊死した小腸を部分切除した。第 2 病日の IVR では門脈本幹の血栓吸引・持続的血栓溶解
療法を施行した。その後経過良好で、第 24 病日に自宅退院した。
【まとめ】
門脈内血栓症は症状進行が緩徐であり、
診断に遅れることがある。上腸間膜静脈に血栓形成が及んだ場合、腸管壊死をきたすことがある。血管内治療・
手術を併用する適切なハイブリット手術が有用である可能性を示唆する症例を経験したので報告する。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
食道癌術後の緊急手術の検討
P-18-1
1)静岡県立静岡がんセンター 食道外科
坪佐 恭宏 1)、新原 正大 1)、川守田 啓介 1)、竹林 克士 1)、松田 諭 1)
【はじめに】食道癌術後合併症は頻度が高く、緊急手術を必要とする症例もある。食道癌手術そのものが高度の
侵襲を伴うため、救急疾患の鑑別が困難になるリスクがあると考えられ、十分な注意が必要。
【目的】食道癌術
後の緊急手術例を検討し、その対策となる新たな知見を得ること。
【対象と方法】食道癌術後に緊急手術を施行
した 12 例を retrospective に検討。
【結果】胃切除後の再建例において、十二指腸断端のリーク 1 例、横行結腸間
膜の損傷による血流不全に起因する横行結腸穿孔 1 例。頚部食道癌手術後の入院中の大腸癌イレウス 1 例、根治
的化学放射線療法後(CRT)後の食道バイパス術における減圧用チューブによる胃穿孔 1 例、胃管壊死 2 例、気
管穿孔 1 例、左主気管支壊死 1 例、内視鏡下吻合部拡張術による穿孔 1 例、空腸瘻が原因のイレウス 3 例。十二指
腸断端のリーク例では、開腹ドレナージ・十二指腸減圧チューブ挿入術を施行。横行結腸穿孔例は穿孔部を切除
し上行結腸とS状結腸を吻合。大腸癌イレウス例は結腸右半切除を施行。胃穿孔例は、開腹ドレナージ・大網充
填術を施行、胃管壊死は壊死部分の切除とドレナージを施行、気管穿孔例はドレナージのみ施行、左主気管支壊
死は後背筋皮弁充填術を施行、拡張術後穿孔例は吻合部切除遊離空腸再建を施行した。
【結論】胃切除の既往の
ある再建術では、癒着剥離による臓器損傷の回避が重要。しばしば大腸の重複癌を認めるため、その可能性を念
頭におくべき。CRT 後は、胃壁が脆弱となっている可能性にも留意すべき。 CRT 後は気管気管支の血流不全は
常に念頭に置いておくべき。食道癌手術においても一定の頻度で緊急手術が必要で、その原因部位は様々で頸部
胸部腹部のいずれの部位でも起こり得る。食道癌術後の病態の理解と術後合併症の早期診断が重要である。
301
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-18-2
義歯誤嚥に対し右開胸食道異物摘出術を
施行した 1 例
教
1)福島県立医科大学 器官制御外科学講座、2)大原綜合病院 二本松病院、3)二本松病院
育
中島 隆宏 1)、村上 祐子 1)、矢澤 貴 1)、藤田 正太郎 1)、門馬 智之 2)、高和 正 1)、鈴木 聡 3)、
隈元 謙介 1)、中村 泉 1)、大木 進司 1)、大竹 徹 1)、竹之下 誠一 1)
講
演
パネルディスカッション
症例は 73 歳の女性。精神発達遅滞の既往があり、在宅療養中であった。2012 年 4 月 30 日昼食後にヘルパーが
義歯のないことに気づいていた。午後になり発熱を認め、市販薬を内服させたが解熱せず、5 月 1 日に嘔吐を認
めたため近医を受診した。胸部レントゲン検査にて食道内の義歯を認め、上部消化管内視鏡検査を施行するが、
義歯の摘出は不能と判断し当院紹介となった。当院でも内視鏡検査施行するも義歯のブリッジが確認できず、副
損傷の可能性が高いと判断し外科的切除の方針となった。同日、緊急で右開胸食道異物摘出術を施行した。中部
下部食道に義歯を確認し食道を小切開し義歯を摘出し、食道壁を縫合閉鎖した。もともと寝たきり状態であった
ことと、精神発達遅滞があり安静が保てないことから、胃瘻造設術を併施した。仰臥位にて上腹部正中切開し胃
瘻を造設、さらに胃体上部前壁に Witzel 法で逆行性に食道に向けサンプチューブを減圧用として留置した。術
後 7 日目、胃瘻から経管栄養を開始したが、発熱・白血球の上昇を認め、CT 検査にて誤嚥性肺炎の診断となった。
減圧チューブの影響もあり食道への逆流があるものと考えられた。肺炎は抗生剤投与にて軽快し、術後 20 日目、
食道造影検査し食道縫合閉鎖部の異常のないことを確認し減圧チューブを抜去した。術後 28 日目に軽快退院と
なった。一般的に食道異物は穿孔などの併発がなく、
早期に異物を摘出できれば予後良好と言われている。しかし、
穿孔に対する開胸術後の縫合不全で死亡した症例や粘膜損傷のみであったが、遅発性に食道穿孔を来した症例な
ども報告されている。食道異物は致死的な合併症を引き起こす可能性のある病態であり、厳重な術後管理が重要で
ある。今回、義歯による食道異物に対し観血的に摘出をした 1 例を経験した。若干の文献的考察を加え報告する。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-18-3
貧血のある胃癌手術症例における輸血回避と
生存転帰の関連
シンポジウム
関 連 演 題
1)静岡県立静岡がんセンター 胃外科
川村 泰一 1)、徳永 正則 1)、谷澤 豊 1)、坂東 悦郎 1)、幕内 梨恵 1)、三木 友一朗 1)、寺島 雅典 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【背景】胃癌手術症例の予後因子として周術期輸血の有無は重要とされており、輸血を回避する努力がなされ
ている。周術期輸血についての過去の報告は、輸血が不可避な症例あるいは輸血の見込みが低い症例を含んで
検討されており、貧血のある胃癌手術症例に対して周術期輸血回避したことの生存転帰への意義は明らかでな
い。
【目的】中等度の貧血がある胃癌症例に対する輸血回避が、生存転帰に寄与するかについて検討する。【対
象・方法】2002. 10 月~ 2011. 9 年間の間に経験した胃癌手術患者のうち、初診 ~ 手術直前における血液検査で
Hb 最低値(g/dl)が 7 以上 10 未満であった 316 例を対象に、輸血の有無と手術程度、化学療法(以下化療)施行
状況、RFS、OS との関連について Stage 別に検討する。80 歳以上、重複癌合併、残胃癌、術前化学療法施行症
例は除外した。
【結果】輸血施行頻度は有り 221 例(70%)、無し 95 例(30%)であった。D2 以上郭清の施行率は
Stage II(P < 0.01)Stage III(P = 0.12)で、Stage II の輸血有り群で郭清度が低かった。化療導入率は Stage II
(P = 0.34)Stage III(P = 0.24)Stage IV(P = 0.15)で差はなかったが、補助化療完遂率は Stage II(P = 0.36)Stage
III(P < 0.001)で、Stage III の中止例は輸血有り群 100%、無し群で 52%と有意差を認めた。RFS は Stage II
(P = 0.48)Stage III(P = 0.02)で、Stage III の 5 年 RFS は輸血有り群 45%、無し群 76 % と有意差を認めた。OS
は Stage I(P = 0.03)Stage II(P = 0.18)Stage III(P = 0.09)Stage IV(P = 0.96)で、Stage I のみ有意差を認めた。
【結語】貧血を伴う胃癌手術患者において周術期輸血は、Stage III 症例における化療の継続性、再発の有無と関
連がみられた。胃癌手術症例において、可能であれば輸血を回避する努力は必要であると考えられた。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
302
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-18-4
緊急 TAE を施行した
出血性十二指腸潰瘍の二例
1)千葉大学大学院医学研究院 先端応用外科学
藏田 能裕 1)、当間 雄之 1)、藤城 健 1)、河野 世章 1)、大平 学 1)、郡司 久 1)、青柳 智義 1)、
成島 一夫 1)、太田 拓実 1)、花岡 俊晴 1)、石井 清香 1)、磯崎 哲朗 1)、松原 久裕 1)
【症例 1】80 歳男性。下咽頭癌術後化学療法で当院通院中。吐下血のため当院へ救急搬送された。緊急内視鏡では
十二指腸球部の潰瘍から活動性出血を認めたが、視野確保困難のため内視鏡止血不可能であった。ショックが遷
延するため当科紹介。造影 CT で潰瘍底を通過する胃十二指腸動脈から十二指腸への造影剤漏出を認めた。手術
よりも血管内アプローチの方が迅速と考え緊急血管造影検査を行った。胃十二指腸動脈の仮性動脈瘤と消化管へ
の造影剤漏出を確認し、直ちにカテーテルを進めマイクロコイルで塞栓術を行い循環の安定を得た。術後は再出
血や腸管虚血を認めず軽快退院した。【症例 2】57 歳女性。呼吸器外科で前縦隔腫瘍に対して腫瘍切除・上大静脈
合併切除およびグラフト再建術施行。退院翌日に自宅で吐下血を来たし当院に救急搬送された。緊急内視鏡で
上十二指腸角対側に潰瘍を認めたが活動性出血はなくソフト凝固で処置を行った。第 7 病日に再度吐下血を来た
し、内視鏡を再検したところ潰瘍底に露出血管を認めクリッピング止血を行った。第 14 病日にも再出血を認め、
露出血管に対して HSE 局注とクリッピングを追加した。第 18 病日吐下血と共にショック状態となり内視鏡止血
の限界と判断され当科へ紹介。手術も考慮されたが、グラフト評価目的で撮影されていた CT で胃十二指腸動脈
が潰瘍底を走行しており、TAE の良い適応と判断した。緊急血管造影検査で胃十二指腸動脈の仮性動脈瘤を確
認しコイル塞栓術を行った。循環は安定し再出血もなく経過しリハビリテーション目的に転院となった。
【考察】
上部消化管出血に対する第一選択は内視鏡的止血術であるが、困難例では外科手術や TAE が考慮される。自
験例の如く比較的容易に到達可能な血管に対しては TAE の方が手術よりも迅速性や確実性に優る場合がある。
TAE は acute care surgeon が修得すべき非侵襲的止血法であると考えた。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-18-5
心房細動に対し抗凝固療法、かつ直腸癌に対し
放射線化学治療実施し大量消化管出血を来した一例
1)公立八女総合病院 外科
平城 守 1)、君付 優子 1)、岡本 祐介 1)、野北 英史 1)、永野 剛志 1)、丸山 寛 1)、小野 博典 1)、
石橋 生哉 1)
日本は高齢化により癌の治療も多くの合併疾患を有する患者が治療対象となる。合併疾患のなかでも心疾患、
脳血管疾患は多く、癌の治療に際し服用中の薬剤確認が欠かせない。不整脈に対し抗凝固治療中の癌患者に抗癌
剤治療を行い、大量の消化管出血を来し、緊急輸血、緊急止血術を要した症例を経験した。症例は 60 歳代男性
で昨年 6 月より排便後出血を認めていた。今年 2 月に症状悪化し近医受診。直腸癌の診断を受け当院紹介となった。
直腸前壁右側よりに 2 型の直腸癌を認めた。画像診断にて肝転移、リンパ節転移を認め Rb, 2 型 , T3, N1, M1 の診
断で術前放射線化学療法を行うこととした。難治性心房細動を有し、心血管内科クリニックよりワーファリン 5
から 6.5 mg、パイアスピリン 100 mg の投与を受けていた。受診時の INR2.03 とコントロール範囲にあり、3 月 5
日より XELOX 療法、翌日より放射線療法を開始した。身体状態に注意しつつ治療を継続したが 4 月半ばより倦
怠感を強く訴えていた。治療の副作用と判断していたが、のちに確認すると、このころより鼻出血、下血が持続
していたとのことであった。5 月 9 日、治療効果の評価を行うため注腸造影を行った。検査中より強い肛門痛を
訴え、実施後血圧低下、ショック状態となった。肛門内を観察すると大量の凝血塊と肛門直腸の裂創、および動
脈性の出血を数か所より認めた。用手圧迫のまま直ちに手術室搬入し、縫合止血を行った。同時に輸血とメナテ
トレノンの投与を行った。手術翌日の INR は 2.52 で、出血時はかなりの出血傾向にあったと思われた。 抗凝固
薬とがんに対する治療薬、放射線治療をそれぞれ確認していくとフルオロウラシルとワーファリンに相乗効果が
確認された。今回の自験例を反省し 1)抗がん剤治療時の抗凝固療法は自院で実施する、2)使用薬剤の相乗作用
に注意する、ことが重要と思われた。
303
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
破裂性 GIST の臨床病理学的特徴の検討
P-18-6
教
1)済生会熊本病院 外科センター
育
小川 克大1)、清水 健次1)、山村 謙介1)、尾崎 宣之1)、岩槻 正晃1)、田中 秀幸1)、杉山 眞一1)、
緒方 健一 1)、土居 浩一 1)、高森 啓史 1)
講
演
パネルディスカッション
【背景と目的】GIST 破裂は急性腹症を呈する oncologic emergency である。腫瘍破裂を伴う GIST は腹腔内播種
のリスクが高い。今回、GIST 破裂症例の臨床病理学的特徴と予後について検討した。【対象と方法】2005 年から
2014 年までに手術を施行した 66 例を対象とした。破裂群は 5 例(8 %)であった。破裂群と非破裂群で性別、年
齢、局在、発育形態、腫瘍径、核分裂像数、リスク分類を比較した。又、同時性腹膜播種と肝転移について比較
した。OS、PFS、RFS についても検討した。【結果】両群間で性別、年齢、発育形態に有意差はなかった。局在
は破裂群が全て小腸であるのに対し、非破裂群は胃 42 例、十二指腸 9 例、小腸 9 例、大腸 1 例と有意差を認めた
(P < 0.01)
。平均腫瘍径は破裂群が 90 mm, 非破裂群が 44 mm と有意に破裂群で大きかった(P < 0.01)
。核分裂像
数≧ 5 個 /50HPF の症例は、破裂群で 4 例(80 %)
、非破裂群で 16 例(26 %)と有意に破裂群が多かった(P = 0.01)。
Fletcher 分類、Miettinen 分類の高リスクは破裂群では 4 例(80 %)
、非破裂群では 12 例(20 %)と有意に破裂群が
多かった(P = 0.018)。同時性腹膜播種は破裂群で 3 例(60 %)
、
非破裂群で 3 例(5 %)と破裂群で有意に多かった(P
< 0.01)
。同時性肝転移に有意差はなかった。破裂群・非破裂群ともに 28 日以内の死亡は認めず、OS にも有意差
を認めなかった。PFS は破裂群で有意差に短縮した(P < 0.01)
。R0 手術を施行した破裂群(2 例)と非破裂群(58
例)で比較すると RFS は破裂群で有意に短縮した(P < 0.01)
。
【まとめ】小腸原発、大きな腫瘍、核分裂像≧ 5 個、
高リスクは破裂しやすい。腫瘍破裂は同時性腹膜播種を生じやすく、PFS、RFS を有意に短縮させる。
シンポジウム
ワークショップ
連
巨大肝細胞癌手術症例の治療成績
演
題
P-18-7
シンポジウム
関 連 演 題
1)北海道大学大学院 医学研究科 消化器外科学分野Ⅰ
柿坂 達彦1)、神山 俊哉1)、横尾 英樹1)、折茂 達也1)、若山 顕治1)、敦賀 陽介1)、蒲池 浩文1)、
武冨 紹信 1)
ワークショップ
関 連 演 題
【背景】近年、ウイルス性肝炎の follow up により肝細胞癌(HCC)を早期に発見することが可能となってきたが、
現在でも巨大 HCC 症例が散見される。巨大 HCC は横隔膜の拳上、他臓器・主要脈管の圧排を呈するため、腹
痛・圧迫感・摂食障害など発症することもあり、早期の手術が必要で、また手術が唯一の根治治療である。今
回、15 cm 以上の巨大 HCC 手術症例に関して臨床病理学的因子を検討した。【方法】2001 年 1 月 ~ 2011 年 12 月の
間に当科で初回手術を施行した HCC 症例 500 例のうち、15 cm 以上の HCC 症例は 25 例(5.0 %)であった。男性:
女性 = 23:2 で平均年齢 62.8 歳。腫瘍径は平均 17.2 cm。15 cm 未満の 475 例と比較し、HCVAb(+)症例が少なく、
PIVKA Ⅱ高値の症例が多かった。また、albumin 低値の症例が多く、Child-Pugh 分類では A:B=20:5 であった。
手術時間中央値は 354 分(253–660 分)で有意に長く、出血量の中央値 1270ml(290–20190ml)で有意に多かった。
手術時の工夫として、横隔膜面に広汎に接している場合は横隔膜側から供血されていることが多く、Ligasure
Impact を用い、横隔膜を切離している。それにより肝の可動性が改善し、肝静脈処理も安全に行うことができ
る。病理学的因子としては多発例が 21 例、vp(+)
15 例、vv
(+)
12 例と脈管侵襲陽性例が多く、stageIVA+IVB
症例が 17 例と有意に多かった。肝硬変の症例は 2 例のみと少なかった。5 年生存率 30 %、生存期間中央値(MST)
11.9ヶ月と有意に予後不良であったが、単発症例は全生存期間が良好な傾向にあった。StageIVB を除いた 21 例
のうち 18 例が再発し、無再発生存期間の MST は 7.1ヶ月と 15 cm 未満の症例と比較し有意に予後不良であった。
初回再発部位に遠隔転移を含む症例が 15 例で巨大 HCC に特徴的であった。【結語】巨大 HCC 症例は予後不良な
病態だが、症状緩和のためにも早期の積極的な手術治療を行うべきである。また遠隔転移再発を来しやすく、術
後補助全身化学療法や、再発時の集学的治療が必要と考えられた。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
304
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-18-8
肝細胞癌への肝動脈化学塞栓療法後肝膿瘍に
対し切除し得た 1 例
1)飯塚病院 外科
廣瀬 皓介 1)、梶山 潔 1)、皆川 亮介 1)、井口 詔一 1)、河野 淳 1)、赤峰 翔 1)、影山 優美子 1)、
平山 佳愛 1)、吉屋 匠平 1)、武谷 憲二 1)、中ノ子 智徳 1)、吉田 倫太郎 1)、古賀 聡 1)、
甲斐 正徳 1)
今回我々は、肝細胞癌への肝動脈化学塞栓療法(以後 TACE)後肝膿瘍に対し、切除加療し得た 1 例を経験し
たので報告する。症例は 76 歳男性。内科にて関節痛の精査時の造影 CT で、肝右葉後区域に 4 cm 大の早期濃染
される腫瘤を認めた。肝細胞癌が疑われたが、ICG 20.5 % と肝予備能に乏しく、腫瘤は右グリソン根部に接して
おり、根治手術には拡大後区域切除術が必要と思われた。患者は TACE を希望され、内科で TACE を施行した。
TACE 後 4 日目より発熱を認め、CT にて TACE 後肝膿瘍を認めた。抗生剤投与後も改善を認めず、また画像上
液状化がなくドレナージ困難と思われたため、TACE 後 6 日目に肝部分切除術を行った。腫瘍内部にも膿瘍形成
を認めたため、腫瘍部及び膿瘍部を含めた肝部分切除術を行い、術後 17 日目に自宅退院となった。難治性肝膿
瘍に対しては、肝機能を考慮した適切な術式の選択が重要と思われた。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-18-9
腹腔内出血を伴った
胆嚢仮性動脈瘤胆嚢内破裂の 1 例
1)福岡大学 医学部 外科学講座 消化器外科
2)福岡歯科大学医科歯科総合病院 総合医学講座 外科学分野
島岡 秀樹 1)、小島 大望 1)、乗富 智明 1)、山本 希治 2)、山下 裕一 1)
【緒言】胆嚢仮性動脈瘤胆嚢内破裂による胆道出血は非常に稀な疾患であるが、時に致死的な経過をたどること
があり注意が必要である。胆嚢仮性動脈瘤胆嚢内破裂を起こし、腹腔内出血に至った症例を経験したため報告す
る。
【症例】84 歳、男性。右季肋部痛を主訴に来院された。腹部造影 CT で胆嚢壁肥厚、頸部陥頓結石と胆管の
圧排像を認めた。血液検査、肝胆道系酵素異常と炎症反応の高値を認め、胆嚢炎および Mirizzi 症候群による胆
管炎と診断し、保存的治療を開始した。第 2 病日より下血および貧血の増悪を認め、上部消化管内視鏡検査では
十二指腸を含め出血源は同定できず、下部消化管内視鏡検査で S 状結腸に血餅の付着した 2 型進行癌を認めた。
当初、S 状結腸癌による消化管出血と考え、胆嚢胆管炎改善後の手術方針としていた。第 9 病日に心窩部痛の増
悪および再度下血が出現し、腹部エコーで肝床部にドップラーで動脈波形を伴う径 2 cm 低エコー腫瘤を認め、
腹部造影 CT で右肝動脈から分枝する仮性動脈瘤を認めた。胆嚢仮性動脈瘤破裂と判断し、緊急血管造影検査を
準備していたが、急激なショック状態、腹部膨満が出現し、心肺停止状態となった。心肺蘇生後、血管造影検査
で胆嚢動脈瘤が胆嚢内破裂し、さらに胆嚢穿孔から腹腔内へ出血していた。右肝動脈を塞栓し、止血した。腹部
CT で大量腹腔内血腫、血圧低下、乏尿を認め、膀胱内圧 50 mmHg と高値であり、腹部コンパートメント症候群
と診断し、緊急開腹術を行った。肝床部より出血が持続しており、止血剤と圧迫による止血を行い、右肝動脈の
結紮を追加した。術後 DIC、循環不全となり、術後 6 時間で死亡した。【考察と結語】胆嚢動脈瘤の診断は腹部造
影 CT や腹部エコーが有用とされるが、瘤径が小さい場合は診断が困難である。また、仮性動脈瘤は急激な増大
や再破裂がみられ、急激に全身状態が増悪するため厳重な注意が必要と考えられた。
305
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-18-10
脾臓破裂をきたしたびまん性大細胞型 B 細胞
悪性リンパ腫の 1 例
教
1)岐阜赤十字病院 外科
育
林 昌俊 1)、高橋 啓 1)、小久保 健太郎 1)、栃井 航也 1)
講
演
病的状態による非外傷性の脾臓破裂は pathologic rupture と呼ばれ血液疾患によるものが多い。今回我々はス
テロイド投与後に脾臓破裂をきたしたびまん性大細胞型 B 細胞悪性リンパ腫を経験したので報告する。症例は
78 歳、男性。主訴は食欲低下 全身倦怠感。既往歴に特記事項なし。現病歴は平成 26 年 3 月、食欲低下 全身
倦怠感で近医より精査のため当院内科に紹介された。理学所見上肝、脾は触知せず。また体表リンパ節の腫脹も
認めなかった。血液検査では肝、胆道系酵素の上昇を認めた。LDH 2183 IU/l、可溶性 IL-2 4070u/ml と上昇を認
めた。CT では肝脾腫、胆嚢の浮腫を認めた。胸腔、腹腔内のリンパ節腫大は認めなかった。骨髄生検で約 10 %
の集塊を形成する比較的大型の幼弱細胞を認めた。びまん性大細胞型 B 細胞悪性リンパ腫と診断し、プレドニゾ
ロン 30 mg/day の投与を開始した。投与開始 3 日目に上腹部痛出現とともに血圧低下をきたしショックとなった。
CT 上脾と胃体部大彎の間、胃体部腹側に広がる CT 値 63HU 前後の液体貯留を認めた。dynamic study 後期動脈
相でこの領域内に extravasation を認めた。脾臓破裂、または短胃動脈系からの出血を疑い緊急手術を施行した。
開腹し脾臓周囲の大量の凝血塊を除去すると、脾臓上極に約 20 mm 大の破裂部を認め、脾臓摘出術を施行した。
出血量 3700 ml であった。術後合併症なく術後 14 病日に血液内科に転科、17 病日に R-CHOP 療法で化学療法を開
始した。悪性リンパ腫経過中は、脾臓破裂を Oncology Emergency として念頭に置き治療する必要があると考え
られた。
パネルディスカッション
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-19-1
皮膚穿破と大量出血により緊急手術を施行した
巨大葉状腫瘍の1例
シンポジウム
関 連 演 題
1)藤田保健衛生大学 医学部 乳腺外科
2)病理部
牛窓 かおり 1)、小林 尚美 1)、引地 理浩 1)、浦野 誠 2)、黒田 誠 2)、内海 俊明 1)
ワークショップ
関 連 演 題
患者は 56 歳、女性。2 年 9 か月前より右乳房腫瘤を自覚していたが放置しており、1 週間前から腫瘤からの出
血を主訴に当院を受診した。腫瘤は 20 cm 大と大きく、DB 領域で皮膚穿破し露出していた。乳腺超音波検査で
は右腋窩に径 17 mm の腫大リンパ節を認めたが、悪性所見は認めなかった。右乳癌(T4bN0M0)の疑いで、乳
腺組織診を施行したが、病理結果は、乳管上皮の異型増殖がなく、葉状腫瘍の部分像の可能性が示唆された。
初診から 3 日後の CT 検査中に、腫瘤より大量出血を来たした。出血源である露出血管を同定し、結紮止血でき
たが、その後冷汗・意識状態の低下があり同日緊急入院とした。もともと初診時に Hb 10.6 g/dl と貧血を認めて
いたが、入院時には Hb 8.0 g/dl と更に貧血の進行を認めた。入院時より鉄剤内服加療を開始し、Hb 12.0 g/dl ま
で貧血の改善が認められた。また単純 CT 検査では、右乳房全体を占拠する 17 × 15 × 13 cm の腫瘤を認め、胸筋
への浸潤が疑われた。両側鎖上および腋窩に転移を疑うリンパ節を認めず、肺や肝臓にも異常所見は認めなかっ
た。腫瘤は日毎に増大し、入院後も出血が持続するため、第 35 病日に右乳房切除術を施行した。腫瘤は CT 検査
で指摘された通り胸筋に浸潤しており、胸筋を一部合併切除する必要があった。また、皮膚欠損部が大きく腹部
からの皮膚移植を行った。術後経過は概ね良好で、第 56 病日に退院となった。永久標本の病理診断は Phyllodes
tumor, borderline であった。以後外来にて経過観察しているが、術後 4 年 6 か月現在再発なく経過している。今回、
我々は皮膚穿破と大量出血により緊急手術を施行した巨大葉状腫瘍の 1 例を経験したので、若干の文献的考察を
加え報告する。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
306
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-19-2
食道穿孔との鑑別を要した
降下性壊死性縦隔炎の一例
1)小牧市民病院 外科、2)小牧市民病院 呼吸器外科
笹原 正寛 1)、横山 裕之 1)、大津 智尚 1)、田中 健士郎 1)、坪内 秀樹 1, 2)、上嶋 三千年 1)、
鈴木 雄之典1)、平田 伸也1)、中西 香企1)、森 憲彦1)、佐藤 雄介1)、田中 恵理1)、間下 優子1)、
井戸田 愛 1)、村上 弘城 1)、神崎 章之 1)、望月 能成 1)、内山 美佳 2)、谷口 健次 1)
症例は 51 歳男性。糖尿病と高血圧の既往あり。数日前からの咽頭痛で近医にて加療を受けるも改善なく、当
院耳鼻科を受診した。炎症反応の高値および、喉頭鏡検査で咽頭の発赤を認め、急性咽頭炎と診断し抗生剤によ
る治療を開始した。4 日後の再来院時には、咽頭発赤と左反回神経麻痺の所見を認め、CT 検査で頸部から下縦
隔にまで拡がる縦隔気腫と膿瘍を認めた。食道穿孔による急性縦隔炎を疑われ当科紹介となり、緊急入院となっ
た。食道造影を施行するも明らかな造影剤の漏出は認めなかった。入院翌日、頸部および縦隔膿瘍に対して、胸
腔鏡下縦隔ドレナージおよび頸部ドレナージを施行し、術後はドレーンから持続洗浄を行った。状態が安定した
後に上部内視鏡検査を施行したが、食道粘膜に異常を認めなかった。初発症状が咽頭炎症状であることと、深
頸部から縦隔に広がる膿瘍の存在から降下性壊死性縦隔炎と診断した。術後経過は良好で第 37 病日に退院した。
降下性壊死性縦隔炎は口腔頸部領域の感染による膿瘍が、解剖学的に疎な間隙を介して、急速に縦隔に波及する
重症感染症であり、診断が遅れると全身状態の悪化から致命的となりうる。治療は外科的ドレナージが必須であ
る。縦隔炎の原因として、特発性食道破裂に代表される食道穿孔によるものが比較的多く、本疾患と画像所見な
どが類似することがあるため、鑑別を要するケースが文献でも散見される。縦隔炎に至るまでの病歴の詳細な聴
取と、CT での頸部および縦隔の炎症範囲などを考慮し、両疾患を鑑別して早期に適切な治療を行うことが重要
と考える。今回は咽頭炎の所見が軽度の割に、縦隔炎の所見が高度であったために食道穿孔との鑑別を要した。
本疾患について、文献的考察を加えて報告する。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
呼吸困難にて発症した食道脂肪肉腫の 1 例
P-19-3
1)神戸大学医学部附属病院 食道胃腸外科
瀧口 豪介 1)、中村 哲 1)、掛地 吉弘 1)
【はじめに】食道に発生する脂肪肉腫は稀であるが、今回、呼吸困難にて発症した 1 例を経験したので、文献的考
察を加えて報告する。【症例】73 歳男性。夕食数時間後に呼吸困難となり近医に救急搬送された。酸素投与、気
管支拡張薬では呼吸状態の改善は認められず。上気道閉塞を疑い胸部CT検査を施行したところ、頚部から胸部
にかけて食道管腔内に低吸収領域の長大な腫瘍を認めた。また、腫瘍による気管膜様部の圧排がありこれが呼吸
困難の原因と考えられた。気道確保として気管切開術を施行し、外科治療目的に当院転院となった。上部消化管
内視鏡検査では、咽頭〜食道入口部に茎をもち胸部食道に達する長大な腫瘍を認めた。表面は正常食道粘膜に
覆われ、有茎性粘膜下腫瘍の形態であった。CT 所見と併せて、食道 Lipoma / Liposarcoma と診断した。切除
は内視鏡にて茎部が確認できたため ESD を施行。腫瘍は経口回収不能であったため、左頚部斜切開をおき頚部
食道露出、食道壁を切開して摘出した。病理検査にて食道 Liposarcoma と診断した。術後経過は良好で、嗄声や
嚥下障害なく食事摂取も良好であった。術後 3 ヶ月時点で再発は認めていない。【考察】PubMed で Esophagus・
Liposarcoma で検索すると 32 例の症例報告のみであり、自験例 2 例を合わせた 34 例について検討した。腫瘍径
は平均 12.2 cm(4 ~ 23 cm)であり本例が最大であった。症状は嚥下困難が約 9 割と最多であるが、本症例では腫
瘍による気道閉塞により致死的な呼吸困難となり、腫瘍摘出まで気道管理が必要であった。治療は、術後の嚥下、
喉頭機能を考慮し、咽喉頭への侵襲が少ない内視鏡的な手技が最良と考える。ESD では粘膜下層から腫瘍を切
除でき、根治性が高いと考える。本例では発声、嚥下機能の障害無く経過良好であった。予後・再発に関しては、
これまで術後 78 ヶ月・300 ヶ月で再発した 2 例の報告があり、今後も長期的な経過観察が必要と考える。
307
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
当科で経験した門脈ガス血症 4 例の検討
P-19-4
教
1)JA 尾道総合病院 外科・内視鏡外科
育
竹元 雄紀1)、天野 尋暢1)、浜岡 道則1)、竹井 大祐1)、河島 茉澄1)、齊藤 竜助1)、山口 恵美1)、
寿美 裕介 1)、佐々田 達成 1)、吉田 誠 1)、山木 実 1)、福田 敏勝 1)、中原 雅浩 1)、則行 敏生 1)
講
演
パネルディスカッション
門脈ガス血症は腸間膜静脈から肝内門脈に至る血管系内にガスを認める病態であり、治療方針の決定に難渋す
ることもある。当科でも治療方針の異なる門脈ガス血症 4 例を経験したので報告する。症例は腹痛を主訴に来院
し CT にて門脈ガス血症を認めた 77 歳男性、77 歳女性、51 歳女性、84 歳女性の 4 症例。第 1、第 2 症例は初診時
に腹膜刺激症状を認めず、保存的加療が可能と判断したが、経過観察中に腹膜刺激症状が出現、炎症反応の上昇
も認めたため開腹手術を行い、虚血性腸炎に伴う腸管壊死を認めた。第 3 症例は初診時に腹膜刺激症状が顕著で
あり緊急開腹手術を行ったが腸管壊死を認めず、術後は症状の改善とともに再燃することなく軽快した。第 4 症
例は腹部所見は軽度で、炎症反応も著明な上昇を認めず保存的に加療し軽快した。門脈ガス血症に対し、従来腸
管壊死の兆候とされ開腹手術の適応とされていたが、近年保存的加療が可能な症例も報告されている。しかしな
がら初療の段階で緊急開腹手術を行うか保存的加療を行うかの判断は容易ではない。腸管気腫の原因となる様々
な要因を除外し、腸管壊死が疑われれば速やかに内視鏡的観察を含めた外科的加療を決断するべきである。一方
で保存的加療の際は、臨床的、血液学的変化を見落とさない厳重な観察が重要である。
シンポジウム
ワークショップ
連
演
題
P-19-5
壊死性膵炎、感染性膵嚢胞に対し
ネクロセクトミーを施行した 2 症例
シンポジウム
関 連 演 題
1)昭和大学 藤が丘病院 消化器・一般外科
塩澤 敏光 1)、田中 淳一 1)、水上 博喜 1)
ワークショップ
関 連 演 題
[はじめに]近年、重症急性膵炎に対する集中治療の発達、保存的治療の普及により外科手術が治療の第一選択
となることは稀となった。今回、我々は壊死性膵炎に対しネクロセクトミーを施行した 2 症例を経験したため報
告する。
[症例]① 45 歳 女性アルコール性膵炎の急性増悪を繰り返していた。2013 年 3 月に下痢、腹痛、そして
嘔吐を自覚し当院 ER を受診した。慢性膵炎の急性増悪、及び仮性膵嚢胞の増大を疑われ緊急入院となった。保
存的加療していたが、仮性膵嚢胞と上行結腸が穿通し、膿瘍形成を認めた。膿瘍に対し経皮的ドレナージ施行し
たが症状改善なく、入院後 32 病日にネクロセクトミーを施行した。術後 23 病日に経口摂取が可能となり、術後
41 病日に全てのドレーンを抜去し、第 48 病日に退院となった。② 68 歳 男性 アルコール依存症であり、慢性膵
炎の急性増悪を既往歴に持つ。大量飲酒後に腹部膨満感、腹痛を自覚した。他院受診し急性膵炎の再燃と診断さ
れ当院へ搬送された。造影 CT 検査にて多量の腹水、脾門部に仮性膵嚢胞と脾動脈の腹腔内への穿破を認め、経
動脈的脾動脈塞栓術施行した。また、麻痺性イレウスと腸管穿孔を疑い、同日緊急人工肛門造設術を施行した。
入院後 17 病日の腹部造影 CT 検査にて、広範な腹腔内膿瘍と診断し、ネクロセクトミーを施行した。術後、膵膿
瘍との腸管瘻がみられたものの全身状態は安定し、ネクロセクトミー術後約 80 日で、経口摂取が可能となった。
[考察・結語]壊死性膵炎、感染性膵嚢胞に対する治療は経皮的・内視鏡的ドレナージ治療の有用性の報告が見
られるようになった。しかし、腹腔内の広範な膿瘍形成や消化管穿孔を発症するなど、開腹手術の選択が余儀な
くされる症例が依然存在するものと考えられた。
一 般 演 題
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
308
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-19-6
死戦期帝王切開術後のダメージコントロール
戦略にて母児共に救命し得た一例
1)りんくう総合医療センター 産婦人科
2)大阪府泉州救命救急センター Acute Care Surgery センター
後藤 摩耶子 1)、渡部 広明 2)、荻田 和秀 1)、松岡 哲也 2)
死戦期帝王切開術は心肺停止妊婦を蘇生する手段の一つである。胎児を娩出させることで循環血流量を増加
させ母体蘇生率を上昇させる一助となると言われている。我々は死戦期帝王切開術後、著明な出血傾向をきた
した症例に対しダメージコントロール戦略を施行し、母児共に救命し得た症例を報告する。症例は 29 歳の女
性。妊娠 36 週 5 日で切迫早産にて他院入院中に、突然の痙攣様発作から心肺停止状態となり当院救命救急セン
ターに搬送となった。搬入時の心波形は心静止、心停止から 30 分以上経過していたが超音波にて胎児心拍が認
められたため、死戦期帝王切開術を決定した。PCPS 導入後に初療室にて帝王切開術を施行し、2000 g の男児を
Apgar 1/4 にて娩出した。児娩出後、子宮からの出血が制御出来ず子宮摘出術を施行したが、その後も著明な出
血傾向にて止血困難であったため、腹腔内にガーゼパッキングを行い、Vaccum packing closure による一時閉
腹として ICU 管理とした。ICU 入室後も出血傾向から再開腹、再ガーゼパッキングを要し、補充療法を行った。
第 3 病日に IABP を導入し、第 5 病日に根治的閉腹を行い、第 9 病日に PCPS 離脱可能となった。脳神経系への後
遺症は残るものの呼吸器を離脱し現在リハビリ施行中である。児に関しても呼吸器離脱し経口哺乳にて経過は良
好となっている。死戦期帝王切開術は 2012 年の AHA ガイドラインにて推奨されているが、日本での施行例は数
少なく明確なコンセンサスも存在しない。心停止原因にもよるが、帝王切開術後一時的に循環動態が改善するも
のの、その後の出血がコントロール出来なければ救命は出来ない。産科領域においてもダメージコントロール戦
略の視点を持つことで、産科 DIC から生じる激烈な出血傾向を克服し救命し得ることが示唆された。
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-19-7
Abdominal reapproximation anchor(ABRA)
system を使用した Open abdominal management
1)済生会横浜市東部病院 外科
2)済生会横浜市東部病院 救命救急センター
萩原 一樹 1)、松本 松圭 2)、小林 陽介 2)、廣江 成欧 2)、清水 正幸 2)、山崎 元靖 2)、長島 敦 1)、
北野 光秀 2)
【はじめに】ABRA®(Canica Design Inc, Almonte, Ontario, Canada)は、腹腔内をシリコンシートで被覆した後、
腹腔内から数本の Elastomer と呼ばれる伸縮性の素材を腹壁に貫通させ、Anchor と呼ばれる器具に固定し、さ
らに閉鎖吸引療法を併用することで腹壁の退縮を予防し閉腹に至る方法である。
【症例】30 代男性。院外心肺停止で当院へ救急搬送され、経皮的心肺補助装置(A-V ECMO)を装着しつつ、緊
急経皮的冠動脈形成術施行後、低体温療法を施行し第 13 病日には A-V ECMO から離脱し、神経学的予後は
Good recovery であった。低体温療法終了後より原因不明の急性膵炎を認めており、内科的治療を施行していた
が、感染性膵壊死に伴う下行結腸穿孔をきたし、第 41 病日に左半結腸切除術・盲腸人工肛門造設術を施行。術
後、横行結腸断端漏や出血等の合併症をきたし、腹腔内圧は 20 mmHg 以上となり Open abdominal management
(OAM)となった。第 53 病日、閉腹に向けて Witmann patch を装着するも、腹壁創縁の壊死を認め中止とした。
腹膜の浮腫や腹壁の退縮が著明のため、ABRA + V.A.C. ®(KCI)を用いた閉腹を施行した。ABRA 装着時、閉
腹創は 25 × 22.5 cm であったが、連日にわたる ICU での閉腹創狭小化を行うことで装着後 20 日に根治的閉腹術後
を施行した。合併症はなく、第 233 病日リハビリ転院となった。
【考察】ABRA に関する諸外国での報告ではその装着期間は 4 日 ~ 16 日、閉腹成功率は 60 ~ 80 %、腹壁瘢痕ヘル
ニア合併率は 10 ~ 15 % と報告されている。ABRA 使用による OAM の報告例は本邦初であり、その装着方法や
装着後の管理についてビデオを供覧し報告する。
309
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
P-19-8
90 歳以上超高齢者に対する腹部緊急手術例
におけるリスク判定の検討
教
1)県立広島病院 消化器外科
育
今岡 祐輝 1)、高倉 有二 1)、池田 聡 1)、松原 啓壮 1)、末岡 智志 1)、築山 尚史 1)、井出 隆太 1)、
鈴木 崇久 1)、大石 幸一 1)、眞次 康弘 1)、中原 英樹 1)、漆原 貴 1)、板本 敏行 1)
講
演
パネルディスカッション
【緒言】高齢化に伴い高齢者に対しする外科手術は今後増加する事が予想される。一方で、高齢者の加齢に伴う
臓器機能低下や併存疾患により適切な全身状態の評価や、手術適応の決定、リスクマネージメントが必要とな
る。今回我々は、90 歳以上の超高齢者に対する腹部手術症例について検討した。
【対象および方法】2012 年 4 月
~ 2014 年 3 月までの 3 年間に当科で 90 歳以上の超高齢者に対し腹部手術を行った 27 例について検討した。男性 3
例、女性 24 例で平均年齢は 93.1 歳(90 歳 ~ 104 歳)だった。在院死亡例は、3 例(11%)であった。術後合併症例
は 15 例(55%)であった。術後合併症群(15 例)と術後非合併症群(12 例)の 2 群に分けて比較検討した。方法は
術前の 16 因子と手術時の 3 因子および H-POSSUM を 2 群で比較した。
【結果】術前因子では Glasgow Coma Scale
と頻脈で有意差を認めた。手術時因子では、手術時間で有意差を認めた。H-POSSUM の physiological score,
operative score,予測死亡率では有意差を認めなかったが、予測合併症率(p=0.016)で術後合併症群が非合併症
群に比較し有意に高かった。【結論】H-POSSUM は超高齢者手術のリスク判定に有用である。
シンポジウム
ワークショップ
連
腹部救急領域における漢方治療の応用
演
題
P-19-9
シンポジウム
関 連 演 題
1)福島県立医科大学会津医療センター 外科
2)福島県立医科大学会津医療センター 小腸大腸肛門科
3)福島県立医科大学会津医療センター 漢方科
斎藤 拓朗 1)、添田 暢俊 1)、浅野 宏 1)、竹重 俊幸 1)、高間 朗 1)、遠藤 俊吾 2)、五十畑 則之 2)、
渡部 晶之 2)、三潴 忠道 3)
ワークショップ
関 連 演 題
一 般 演 題
【目的】腹部救急領域における漢方診療の応用と工夫について報告する。
【方法】腹膜炎に伴う急性肺障害(症例 1、
2)
、腹腔内膿瘍(症例 3)
、難治性小腸皮膚瘻(症例 4)、肝硬変に伴う難治性胸水(症例 5)に対する漢方治療の併
用を試みた。
【結果】症例 1:85 歳女性。S状結腸穿孔による敗血症性ショックに対し穿孔部縫合閉鎖および人工
肛門造設術を施行。術後に急性循環不全・呼吸不全となり全身浮腫と急性肺障害を認め治療抵抗性であった。五
苓散を経鼻胃管から煎薬として投与し、全身浮腫と呼吸状態は速やかに改善した。症例 2:82 歳女性。上部消化
管穿孔による敗血症性ショックに対し腹腔ドレナージ術を施行。術後に急性循環不全・呼吸不全となり全身浮腫
と急性肺障害を認め、治療抵抗性であった。五苓散を座薬として投与し、全身浮腫と呼吸状態は速やかに改善し
た。症例 3:75 歳女性。直腸癌に対し人工肛門造設後に化学療法を施行。18 回施行後に直腸盲端炎に伴う腹腔内
膿瘍を来した。抗生剤とともに大黄牡丹皮湯を煎薬として使用し人工肛門から多量の水様便の排出を認め炎症反
応も速やかに改善した。症例 4:81 歳女性。S 状結腸穿孔による腹膜炎術後に小腸皮膚瘻を併発。メッシュによ
る腹壁補強を施行され小康を得たが、10 年後にメッシュ感染を来たし 12 年目に当施設へ来院。メッシュ除去と
乙字湯および柴胡加竜骨牡蠣湯合桂枝茯苓丸加黄耆などの併用により全身状態の改善とともに瘻孔からの腸液流
出量の著明な減少を認めた。症例 5:75 歳女性。肝硬変による胸水貯留と尿路感染に起因する敗血症で入院。敗
血症治癒後も遷延する胸水貯留に対しV 2 受容体拮抗薬に加え真武湯を併用し速やかに胸水の減少を認めた。
【結
論】消化器外科領域における様々な病態に対して漢方治療は有効な治療選択肢の一つとなる可能性がある。
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
パネルディスカッション
一般演題
関
【第5会場】4F 錦鶏の間
310
【第5会場】4F 錦鶏の間
一般演題
新しい救急医である「救急総合外科医」とは?
P-19-10
1)北関東循環器病院 救急総合外科
2)北関東循環器病院 心臓血管外科
荻野 隆史 1)、小平 明弘 1)、重田 哲哉 1)、山田 拓郎 1)、藤崎 正之 2)、中島 邦喜 2)、南 和友 2)
はじめに:現在の日本の医療では、病院におけるプライマリ・ケアを行う医師は総合診療医と救急医がいる。救
急医療における救急医は様々な形があるが、内科も総合診療医があるのと同様に、外科も救急総合外科が救急
医の形として必要と考えた。今回、われわれは群馬県渋川市の北関東循環器病院で 2014 年 4 月より救急医、外
科医、整形外科医の 3 名で「救急総合外科」を標榜した。救急総合外科とは:救急総合外科が目指す救急医像は、
救命の有無を左右するのは救急医の力量であるとする救急医の原点回帰が根底にある。救急医、外科医、整形外
科医の技量を併せ持った、救急医により外科的または整形外科的スキルを併せ持つ新しい救急医像を目標として
いる。救急総合外科開設後:救急車搬送台数、救急患者数は 3 倍以上増加した。また 4 月、5 月の当科の手術症
例は 11 例(消化管穿孔、イレウス、大腿骨頚部骨折、下腿壊死など)であり、手術症例は全て救命し得た。救急
医療において心臓血管外科との綿密な連携は、質の維持には必要で協力体制を構築している。考察およびまと
め:1、Acute Care Surgery(外傷医)、2、整形外科医、3、救急の Specialist としての「救急総合外科医」として
の活動報告を行い、救急医療における有用性を述べたいと思う。
311
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
回日本 Acute Care Surgery学会学術集会
第第66回日本
Acute Care Surgery 学会学術集会
ランチョンセミナー
ランチョンセミナー
高度急性期病院における
高度急性期病院における
救急医療体制と医療連携
救急医療体制と医療連携
~済生会横浜市東部病院の在院日数厳格化への取り組み~
~済生会横浜市東部病院の在院日数厳格化への取り組み~
:15
2014.9.21[Sun]
[Sun] 12
12: :15−13
15−13:15
2014.9.21
第一会場
(ホテル青森 3F
孔雀東南の間)
3F 孔雀東南の間)
第一会場
(ホテル青森
座 長
座 長
望月 泉
泉 先先生生
望月
岩手県立中央病院院長
院長
岩手県立中央病院
演 者
演 者
長島 敦
敦 先先生生
長島
済生会横浜市東部病院副院長
副院長
済生会横浜市東部病院
消化器センター長 兼消化器
消化器外科部長
外科部長
兼兼消化器センター長 兼
共催:日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
共催:日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
©J&JKK 2014 ETHH0030-01-201408
©J&JKK 2014 ETHH0030-01-201408
第 6第回日本
Acute
ランチョンセミナー
6 回日本
AcuteCare
CareSurgery
Surgery 学会学術集会
学会学術集会 ランチョンセミナー
2 2
外科的侵襲による生体反応
外科的侵襲による生体反応
~サイトカインと臓器障害~
~サイトカインと臓器障害~
座長
座長
演者
演者
日時
坂本 照夫
坂本 照夫
先生
久留米大学医学部 救急医学講座 教授
関根 和彦
先生
久留米大学医学部 救急医学講座 教授
先生
関根 和彦 先生
東京都済生会中央病院 救急診療科医長・救命救急センター長
21
東京都済生会中央病院 救急診療科医長・救命救急センター長
第 2 会場
2014 年 9 月
日(日)
会場
▶12:15-13:15
21
ホテル青森 3F「孔雀西の間」
第 2 会場
2014
9 月Acute Care
日(日)
第 6年
回日本
Surgery 学会学術集会
会場
日時 共催
CSL ベーリング株式会社
▶12:15-13:15
共催
ホテル青森 3F「孔雀西の間」
第 6 回日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
CSL ベーリング株式会社
司会 者 索 引
あ た 小豆畑丈夫………………………… P-05
平 泰彦………………… EL-3・EL-4 い て 家接 健一………………………… P-13 寺嶋 宏明………………………… P-04 石倉 宏恭………………………… SY-1 な 石澤 義也………………………… P-18 仲野 明………………………… P-13 石原 諭………………………… P-16 の 伊藤 重彦………………………… P-01 乘富 智明………………………… P-14 井上 潤一………………………… P-05 は 井上 卓也………………………… P-12 橋爪 正…………………………MSY-2 う 橋爪 誠……………………… MPD-2 臼井 章浩………………………… P-11 長谷川伸之………………………… P-07 お ひ 大槻 穣治………………………… P-07 疋田 茂樹………………………… P-06 大友 康裕………………………… PD-2 平川 昭彦……………………… MWS-2 岡本 好司………………………… P-17 平野 聡……………………… MWS-1 岡本 友好………………………… P-10 ふ 荻野 隆史………………………… P-19 藤田 尚………………………… P-15 か ま 葛西 猛………………… EL-1・EL-2 益子 一樹………………………… P-01 加地 正人………………………… P-18 益子 邦洋………………… EL-1・EL-2 加瀬 建一………………………… P-09 増野 智彦………………………… P-08 金子 直之………………………… P-11 松原 久裕………………………… SY-2 き 真弓 俊彦………………………… SY-2 北川 喜己……………………… MWS-2 丸山 尚嗣………………………… P-04 北野 光秀…………………………… WS み く 溝端 康光………………………… SY-1 久志本成樹…………………………… WS 宮下 正夫………………………… P-09 朽方 規喜………………………… P-02 む 栗栖 茂……………………… MWS-1 村尾 佳則………………… EL-5・EL-6 こ 村上 隆啓………………………… P-16 小池 薫… ……………………… PD-1 村田 希吉………………………… P-15 小泉 哲………………………… P-10 も 河野 元嗣………………………… PD-1 望月 泉…………………………… LS1 小谷 穣治…………………………MSY-2 本竹 秀光……………… P-02・MPD-2
小林 誠人………………………… P-06 や 小山 基………………………… P-14 山下 裕一…………………… PD-2・MS
さ 山村 仁………………………… P-08 斎藤 拓朗………………………… P-19 よ 坂井 義治………………………… EL-7 横田順一朗………………… EL-3・EL-4 坂本 照夫…………… EL-5・EL-6・LS2
わ 佐々木隆光………………………… P-17 渡部 広明……………………… MPD-1 し 七戸 俊明……………………… MPD-1 清水 義博………………………… P-12 庄古 知久………………………… P-03 せ 関根 和彦………………………… P-03 315
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
筆頭演者索引
あ 岡 和幸……………………… MPD-2 桑原 尚太………………………… P-01 青山 博道………………………… P-02 岡田 一郎………………… WS・MPD-2
こ 赤坂 治枝………………………… P-09 岡田 剛………………………… PD-1 小網 博之………………………… SY-1 赤星 径一………………………… P-10 岡田 憲樹………………………… P-04 小島 和人………………………… P-10 赤星朋比古………………………… P-07 岡野 圭一……………………… MWS-1 小嶋幸一郎………………………… P-15 淺野 博………………………… P-15 岡本 好司………………………… EL-2 小島 大望………………………… SY-1 浅利 建吾………………………… P-17 岡本 辰哉………………………… P-14 小島 光暁………………………… PD-1 小豆畑丈夫………………………… SY-1 小川 克大………………………… P-18 後藤摩耶子………………………… P-19 天野 浩司………………………… PD-1 荻野 隆史………………………… P-19 小畠 千晶……………………… MWS-1 安藤 裕之………………………… P-14 落合 剛二………………………… P-17 小林 誠人………………………… SY-1 安藤 雅規………………………… P-03 尾本健一郎……………………… MPD-2 近藤 祐一………………………… P-10 い 折田 智彦………………………… SY-1 近藤 豊……………………… MPD-1 飯野 聡………………………… P-01 か さ 家城 洋平……………………… MWS-2 貝羽 義浩………………………… P-11 齋田 文貴………………………… P-11 家接 健一…………………………MSY-2 加我 徹………………………… P-12 斎藤 拓朗………………………… P-19 池田 義之………………………… P-07 鏡 哲…………………………MSY-2 佐尾山 裕生……………………… P-06 池ノ上 実………………………… P-01 柿坂 達彦………………………… P-18 坂田 寛之………………………… P-04 伊澤 祥光……………………… MPD-2 笠井 華子…………………………MSY-2 坂平 英樹………………………… PD-2 石井 健太……………………… MPD-1 加地 正人………………………… EL-3 阪本 太吾………………………… P-01 石井 文規………………………… P-09 片岡 祐一………………………… P-09 阪本雄一郎………………………… EL-1 石上 耕司………………………… P-02 片桐 美和………………………… P-12 櫻井健太郎………………………… P-05 井田 圭亮………………………… P-04 加藤 航平………………………… P-05 佐々木妙子………………………… P-17 一戸 大地………………………… P-03 加藤 久晶………………………… P-03 笹原 正寛………………………… P-19 伊東 昌広……………………… MWS-1 加藤 文崇………………………… SY-2 佐藤 衆一………………… P-08・P-13
稲葉 基高………………………… PD-1 金井 俊平………………………… P-13 佐藤 俊樹………………………… P-02 井上 昌也………………………… P-16 金子 直之………………………… PD-2 三本松 譲………………………… P-11 井上 悠介………………………… SY-2 金光 聖哲………………………… P-14 し 猪熊 孝実………………………… P-08 川口 晃平………………………… P-11 塩澤 敏光………………………… P-19 今岡 祐輝………………………… P-19 川嶋 太郎…………………………MSY-2 志賀光二郎………………………… P-06 苛原 隆之………………………… PD-1 川副 友………………………… P-01 繁光 薫………………………… P-09 岩槻 政晃………………………… P-15 川村 泰一………………………… P-18 柴崎 晋………………………… P-10 岩村 宣亜……………………… MWS-2 菅野 優貴………………………… P-15 渋沢 崇行………………………… P-07 う き 島岡 秀樹………………………… P-18 上田健太郎………………………… SY-2 貴島 孝………………………… P-13 島垣 智成………………………… P-05 上田 順彦………………………… P-16 岸本 拓磨………………………… P-16 清水 裕史………………………… P-04 上田 浩樹………………………… P-10 北野 翔一………………………… P-05 清水 正幸………………………… EL-5 牛窓かおり………………………… P-19 北濱 昭夫………………………… PD-2 清水 義博………………………… SY-2 臼井 章浩………………………… PD-2 北村 伸哉……………………… MWS-1 下条 芳秀……………………… MPD-1 内田健一郎………………………… P-13 北村 真樹………………………… SY-2 白井 邦博………………………… P-01 漆畑 直………………………… P-06 木下 大輔………………………… P-03 城田 哲哉………………………… SY-2 え 木原 恭一……………………… MWS-2 晋山 直樹………………………… P-01 蛯原 健………………………… P-06 木村 裕司………………………… P-09 す お 金原 太………………………… P-08 末岡 英明………………………… P-13 大嶽 康介………………………… P-05 く 菅原 俊道………………………… P-06 大塚 洋幸……………………… MPD-2 朽方 規喜……………………… MPD-2 杉本 優弥………………………… P-04 太平 周作………………………… P-09 倉田 秀明………………………… P-16 祐川 健太………………………… P-15 大宮 俊啓………………………… P-13 藏田 能裕………………………… P-18 鈴木 啓介………………………… P-09 大村 健史………………………… P-05 桑原 明菜………………………… P-12 鈴木雄之典………………………… P-15 The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
316
鈴村 和大………………………… P-08 鳴海 雄気………………………… P-16 松井田 元………………………… P-04 諏訪 雄亮………………………… SY-1 に せ 松浦 裕司………………………… P-06 新津 宏明…………………………MSY-2 松岡 泰祐………………………… P-14 関 千寿花………………………… P-07 二階 春香………………………… P-13 松本 松圭…………………… WS・P-12
関根 和彦………………………WS・LS2
西田 正人………………………… P-17 松山 重成………………………… P-01 そ 西村 健………………………… P-01 間山 泰晃………………………… P-13 曽我 耕次………………………… SY-2 ね 丸橋 孝昭………………………… P-17 園部 浩之………………………… P-06 根本 大資………………………… P-07 丸山 博行………………………… P-13 傍島 潤………………………… P-15 根本鉄太郎………………………… P-16 み 染野 泰典………………………… P-16 の た 溝端 康光………………………… PD-2 野田 卓男………………………… P-08 光吉 明………………………… P-12 高倉 有二………………………… P-14 野田頭達也………………………… P-12 嶺 貴彦………………………… P-04 高田 智司……………………… MWS-1 乘富 智明………………………… PD-2 宮下 知治………………………… SY-1 高橋 未来………………………… P-08 は 宮地 洋介……………………… MPD-1 高橋 遼………………………… P-14 萩原 一樹………………………… P-19 む 高宮城陽栄………………………… P-11 朴 正勝………………………… P-15 向井 信貴………………………… P-06 瀧口 豪介………………………… P-19 橋本 直樹………………………… P-10 村上 壮一………………… MPD-2・MS
竹中 雄也………………………… P-10 長谷川将嗣………………………… P-04 村上 隆啓…………………………… WS
竹元 雄紀………………………… P-19 長谷部達也………………………… SY-2 村田 希吉……………………… MPD-2 武山 秀晶……………………… MWS-2 花島 資……………………… MPD-1 室谷 隆裕………………………… P-09 多田 武志………………………… SY-2 浜上 知宏………………………… P-07 も 田中 英治………………………… P-09 林 隆広………………………… P-11 本竹 秀光………………………… EL-4 田中 敬太………………………… P-04 林 同輔………………………… P-02 樅山 将士………………………… P-14 田邉 三思………………………… P-05 林 昌俊………………………… P-18 森田 隆幸………………………… EL-7 田畑佑希子………………………… P-03 ひ や 田村 利尚………………………… P-08 東田 正陽…………………………MSY-2 八木 雅幸………………………… P-02 田村 佳久…………………………MSY-2 疋田 茂樹…………………………… WS 矢口 慎也………………………… P-02 ち 菱川 恭子………………………… P-07 安田 淳吾………………………… P-13 千代延記道………………………… P-10 日高 悠嗣……………………… MWS-2 山口 敬史………………………… P-08 つ 平城 守………………………… P-18 山口 貴之………………………… P-17 塚崎 雄平………………………… P-10 平田 伸也………………………… P-12 山口 拓也……………………… MPD-1 辻 やよい………………………… P-02 平野 聡………………………… EL-6 山口 充………………………… P-08 辻井 茂宏………………………… PD-1 平野 陽介………………………… P-15 山口 良介………………………… P-11 常俊 雄介………………………… P-06 廣瀬 皓介………………………… P-18 山崎 元靖……………………… MPD-2 角山泰一朗………………………… SY-1 ふ 山下 晃平………………………… SY-2 坪佐 恭宏………………………… P-18 深野 敬之………………………… P-16 山本 訓史…………………………MSY-2 鶴田 祐介………………………… P-14 福士龍之介………………………… P-02 山吉 隆友………………………… P-05 て 福西 琢真………………………… SY-1 ゆ 寺村 紘一………………………… P-09 藤井 渉………………………… PD-1 由茅 隆文………………………… P-12 と 藤田 純………………………… P-05 よ 土井 健史………………………… P-03 藤永 和寿………………………… P-04 横山 恵一………………………… P-17 徳久 元彦…………………………MSY-2 古屋 智規………………………… P-08 吉岡 隆文………………………… P-17 富野 敦稔……………………… MWS-1 ほ な 吉川 健治………………………… P-11 星 美奈子………………………… P-11 吉田 達哉………………………… P-02 中澤 幸久………………………… P-17 星野 博之………………………… PD-1 吉富 宗宏………………………… P-14 中島 隆宏………………………… P-18 本谷 康二………………………… P-02 吉野 雄大………………………… P-17 長島 敦…………………………… LS1 本間 宙………………………… P-07 吉本 匡志………………………… P-10 中堤 啓太………………………… P-03 ま 米内山真之介……………………… P-12 中野 志保………………………… P-05 前川 昌平………………………… P-11 わ 中村 彰………………………… P-06 前田 道宏………………………… PD-1 渡辺 伸和………………………… P-16 中本 礼良………………………… P-15 益子 一樹………………… WS・MPD-1
成田麻衣子……………………… MWS-1 真島 宏聡……………………… MWS-2 317
第 6 回 日本 Acute Care Surgery 学会学術集会
渡部 広明………………………… PD-2 協賛企業
CSLベーリング株式会社
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
コヴィディエンジャパン株式会社
旭化成ファーマ株式会社
アステラス製薬株式会社
エーザイ株式会社
小野薬品工業株式会社
コセキ株式会社
株式会社シバタ医理科
株式会社白石医療器
新生メディカル株式会社
第一三共株式会社 アストラゼネカ株式会社
大鵬薬品工業株式会社
武田薬品工業株式会社
東北化学薬品株式会
日本イーライリリー株式会社
日本化薬株式会社
日本製薬株式会社
ファイザー株式会社
ミヤリサン製薬株式会社
株式会社ヤクルト本社
ヤンセンファーマ株式会社
The 6th Japanese Society for the Acute Care Surgery
318
A4 1/2 4c 120×180mm
発売
準備中
持続性癌
痛治療剤
劇薬 麻薬 処方せん医薬品*
タペンタドール塩酸塩徐放錠
*注意-医師等の処方せんにより使用すること
薬価基準未収載
効能・効果、
用法・用量、
警告、
禁忌を含む使用上の
注意等については、製品添付文書をご参照くだ
さい。
©Janssen Pharmaceutical K.K. 2014
2014年3月作成
医療機器適正販売認定事業所
医療用器械、器具、消耗器材
病院用設備器材、老人施設用設備器材
施設用介護器材、在宅用介護器材、介護用品、ストーマ用装具
医療を通して社会に奉仕する
株式
会社
介護用品の店
白 石 医 療 器
ハートフル
ステーション
本
し ら い し
社 弘前市大字神田5丁目8-5
TEL. 34-3500㈹ FAX. 32-2758
青森(営) 青森市大野前田68-12
TEL. 729-1151㈹ FAX. 729-1150
ハートフルステーション し ら い し 弘前市本町125
TEL.35-5670
FAX.35-5944
0305広告180‐125‐2.5g 10/03/06 16:03 ページ 1
静注用人免疫グロブリン製剤
薬価基準収載
特定生物由来製品・処方せん医薬品
注)
生物学的製剤基準〈乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン〉
注)注意-医師等の処方せんにより使用すること
■ 効能・効果、用法・用量、
使用上の注意(禁忌)等
については、添付文書を
ご参照ください。
製造販売元〔資料請求先〕
販売
〒101-0031 東京都千代田区東神田一丁目9 番 8号
〒540 -8645 大阪市中央区道修町四丁目1番1号
2010 年 3 月作成(K)
新生メディカル株式会社
本社
青森営業所
〒031-0071
青森県八戸市沼館二丁目1-21
TEL 0178-32-0255
FAX 0178-32-0256
E-mail:[email protected]
〒030-0821
青森県青森市勝田一丁目17-2 コーポユキ1F
TEL 017-763-5780
FAX 017-763-5781
E-mail:[email protected]
2013年7月作成 Ad-GA-B61C-201307
消化器領域の製品ラインナップ
*
*
*
*
日本化薬医薬品情報センター
日本化薬医薬品情報
0120-505-282(フリーダイヤル) http://mink.nipponkayaku.co.jp
*注意 - 医師等の処方せんにより使用すること
※警告、
禁忌、
効能・効果、
用法・用量、
使用上の注意などは、
製品添付文書を
ご参照ください。
薬価基準収載
’
13.7 作成
Japanese Journal of Acute Care Surgery (JJACS) Vol. 4 No.2
Japanese Journal of
Acute Care Surgery (JJACS)
Vol. 4 No.2, 2014
第6回
日本Acute Care Surgery学会 学術集会
プログラム・抄録
外科学の原点がここにある
2014
9/20 sat .21 sun
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ホテル青森
青 森 市 堤 町1−1−2 3 T E L 017 ‒ 7 75 ‒ 4141
会 長 / 袴田
健一
弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座教授
第6回 日本Acute Care Surgery学会 学術集会
会 長
袴田 健一
弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座 教授
事務局
弘前大学大学院医学研究科 消化器外科学講座
〒036-8562 青森県弘前市在府町 5 番地
TEL: 0172-39-5079 FAX: 0172-39-5080
E-mail: [email protected]