2014年8-9月中国マクロ経済動向分析_Word

マクロ経済動向分析 8-9 月
慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
マクロ経済動向分析 8-9 月
経済減速を受け景気刺激拡充に期待、金融緩和拡大の可能性も
7-8 月の中国経済は、景気回復のペースが一旦足踏みし、不動産市場調整を背景とした生
産、固定資産投資、個人消費の伸び鈍化傾向が持続した。欧米や ASEAN 向け輸出が牽引
し、8 月の貿易黒字は過去最高を更新したが、輸入が予想外に減少し、内需が低迷している
ことが浮き彫りとなった。市場では内需の下振れを受け、景気刺激策の拡充期待が増し、
今後はインフラ投資の拡充、金融緩和策の強化などが想定される。
目次
1.
生産の伸びは大きく鈍化、
「新常態」への移行注視....................................................... 2
2.
不動産開発投資の増勢鈍化が景気のブレーキ要因 ........................................................ 4
3.
消費の伸び悩み続く、政策対応の必要性強まる ............................................................ 6
4.
新規貸出純増額は回復、M2 は予想に反して伸び鈍化 .................................................. 8
5.
銀行理財商品に対する販売規制強化の動き ................................................................... 9
6.
地方財政立て直しへ 膨らむ借金に歯止め ................................................................... 9
7.
貿易黒字額は過去最高、欧米向け輸出が牽引 .............................................................. 10
8.
李首相「外資たたき」否定、誘致に積極姿勢 .............................................................. 16
9.
英国が人民元建て債券発行へ、中国国外で初の起債 ................................................... 16
10. 中国、インドに 200 億ドル投資、経済関係強化を図る............................................... 17
11. 本土市場は続伸、香港市場は一進一退 ......................................................................... 17
参考 Web............................................................................................................................... 20
参考新聞・資料 .................................................................................................................... 20
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マクロ経済動向分析 8-9 月
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1. 生産の伸びは大きく鈍化、「新常態」への移行注視
2014 年 8 月の工業生産の伸びは前年同月比 6.9%増と、
7 月の同 9.0%増を大幅に下回り(国
家統計局 2014/09/13)、リーマンショック後の 2008 年 12 月に記録した 5.7%以来、5 年 8
ヵ月ぶりの低い水準となった(産経新聞 2014/09/14)。内訳を見ると、自動車生産が同 3.1%
増と前月の 10.5%増より 7.4 ポイント減速し、携帯電話生産も 2.3%減で前月の 10.1%増か
ら減少に転じるなど弱さが目立った。工業生産減速の背景には、自動車や携帯電話の生産
増が一巡したことのほか、不動産投資の伸び悩みによる粗鋼やセメントなど建設材料の生
産の停滞があるとみられる(読売新聞 2014/09/14)。また、企業活動の活発さを反映するとさ
れる発電量は 2.2%減とマイナスに転じており、生産全体が低迷していることも浮き彫りと
なった(毎日新聞 2014/9/14)。
8 月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は 51.1 と、7 月を 0.6 ポイント下回った(国家
統計局 2014/09/01)。
中国政府が打ち出しているインフラ投資などの景気下支え策の効果で、
7 月まで 5 ヵ月連続で上昇していたが、不動産市況の悪化で開発案件が減少し、素材産業を
中心に内需が低迷した(産経新聞 2014/09/02)。しかし、8 月は今年 2 番目の高いレベルで、
製造業が全体的に上昇傾向を保っている(中国通信 2014/09/03)。内訳をみると、生産、雇用、
新規受注、入荷遅延、原材料在庫の指数が軒並み低下し、中でも雇用の低迷が顕著だった。
雇用指数は 48.2 と 3 ヵ月ぶりの低水準で、拡大・縮小の目安となる 50 を下回った(ロイタ
ー2014/09/01)。また、香港上海銀行(HSBC)は 9 月 1 日、独自集計している中国製造業の
PMI で 8 月の確定値を 50.2 と発表した。8 月 21 日に公表した速報値の 50.3 を下方修正し
た。7 月の確定値 51.7 から 1.5 ポイントも低下しており、景況の落ち込みを印象づけた(産
経新聞 2014/09/02)。
国家統計局高級統計師の江源氏は 8 月の工業生産伸び率が縮小したことについて、新興
国を中心とする世界的な需要の低迷が要因だとし、不動産部門の不振が鉄鋼やセメント、
自動車の需要を損なっていると指摘した。一方で、同局統計師の郭同欣氏は、①世界経済
の回復が予想に及ばず、外需の増加が緩やかになっている、②自動車、電子製品の急な伸
び率が正常な範囲内に戻っている、③不動産市場調整の累積効果は更に顕現化し、関連領
域の生産、投資、消費への影響が強まっている、④気温低下が電力および関連企業の生産
に影響を与えている、⑤昨年の高過ぎる基数が 2014 年の前年同期比成長率に影響を与えて
いると指摘した(国家統計局 2014/09/13)。
また、習近平国家主席は中国経済の現状を 5 月に「新常態(ニューノーマル)」と名付け、
指導部に慌てずに対応するよう指示している。7%台の成長を保ちつつ、構造調整を進める
路線だ。かつては海外投資家を中心に李首相の名を元に「リコノミクス」とも呼ばれた。
習氏が経済分野を含めて権力を掌握するにつれ、リコノミクスは色あせたが、内外の関心
は習氏が本気で市場を重視した構造改革に踏み出せるかどうかに集まっている(日本経済新
聞 2014/09/14)。
2
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マクロ経済動向分析 8-9 月
図表 1 製造業購買担当者景気指数(PMI)
52
51.7
51.4
51.5
51.4
51.0
51
51.0
51
51.1
51.1
50.5
50.5
50
50.2
50.2
51.0
50.5
50.3
49.5
49
(出所)国家統計局より作成
図表 2 工業付加価値生産伸び率(単位:%)
11
10.4
10.5
10
9.7
10.3
10.2
10
9.7
9.2
9.5
9
8.6
8.6
8.8
8.5
8.7
9.0
8.8
8
7.5
7
6.9
6.5
6
(出所)国家統計局より作成
3
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2. 不動産開発投資の増勢鈍化が景気のブレーキ要因
2014 年 1-8 月の固定資産投資は前年同期比 16.5%増えたが、伸び率は 1-7 月に比べ 0.5
ポイント鈍った(国家統計局 2014/09/13)。業種別に見ると、全体の 34.0%(2013 年)を占め
る製造業が 7 月の前年同月比 13.7%増から 8 月は 2.4 ポイント低下したことが目立つ。鉄
鋼業で前年割れが続いているほか、食品加工業も昨年後半以降の減速傾向に歯止めが掛か
らず、年初から持ち直し傾向にあった一般機械や電気機械などが息切れしている(伊藤忠経
済研究所 2014/09/16)。全体の 2 割強を占めるインフラ投資は同 21.7%増と伸び率は高水準
とはいえ、3 ヵ月連続で鈍化している。インフラ投資の中では、景気下支え策の目玉であ
る鉄道向け固定資産投資は、1-5 月の同 8.3%増をボトムに加速し、1-8 月は同 20.6%増と
なった。ただし、鉄道向け投資はインフラ投資の 5.2%、固定資産投資全体の 1.1%を占める
にすぎず、全体の下支え役としては力不足である(大和総研 2014/09/18)。
さらに、全体の 2 割を占める不動産開発投資は 1-7 月の同 13.7 %増から 1-8 月は同
13.2%増へと一段と減速した。国家統計局は「不動産市場調整の累積効果は更に顕著に現れ、
関連領域の生産、投資、消費への影響が強まっている」と説明している(国家統計局
2014/09/13)。また、8 月の全国 70 大中都市のうち、68 都市の新築分譲住宅(保障性住宅を
除く)の価格が前月比で低下した。横ばいは 1 都市、上昇は 1 都市。70 都市の新築住宅価格
は、平均で 1.2%低下した(国家統計局 2014/09/18)。上海易居不動産研究院の統計データに
よると、これは過去 10 年間で最大の下げ幅だという(新華社 2014/09/20)。住宅価格が下落
している背景には、これまで過剰に住宅開発が進んで在庫が膨らんでいるほか、銀行が投
機的な売買を防ぐ目的で住宅ローンの貸し出し条件を厳しくしたことがある (読売新聞
2014/09/19)。しかし、今春から始まった不動産市場の変調に対して、各地方政府はこぞっ
て過去に実施した購入制限策を解除している。投資目的で住宅を購入する際の条件を緩和
し、市況の回復をねらったが、それでも下落に歯止めがかかっていない (朝日新聞
2014/09/09)。不動産市場の伝統的な販売の最盛期である 9-10 月が訪れ、北京市・上海市・
杭州市・深圳市を含む 1、2、3 線都市で住宅供給量が増加しており、不動産企業は販促を
強化して在庫を消化しようとしているが、楽観視できない状況だ(新華社 2014/09/05)。
4
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図表 3 固定資産投資伸び率(単位:%)
20.5
19.6
19.5
18.5
17.5
17.9
17.9
17.6
17.3
17.2
17.3
17.0
16.5
15.5
(出所)国家統計局より作成
5
16.5
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3. 消費の伸び悩み続く、政策対応の必要性強まる
2014 年 8 月の社会消費品小売総額は、前年同月比 11.9%増と、7 月(12.2%増)の伸びを下
回った(国家統計局 2014/09/13)。習近平政権が展開する「節約励行と浪費反対」の動きは引
き続き飲食や贈答関連消費の減速に繋がっており、外食の伸びは 1-8 月に 9.8%増、このう
ち大型店では 2.4%増と 1-7 月の 2.9%増から鈍化した(みずほ総合研究所 2014/09/15)。乗用
車販売も伸び悩んでいる。8 月の乗用車販売台数は前年同月比 8.5%増となり 7 月の 9.7%増
から伸びが鈍化した(伊藤忠経済研究所 2014/09/16)。オンラインショッピングは引き続き好
調で、8 月の大手企業のネット売上高は同 53%増となった。主要小売企業 5000 社を対象に
した調査でも、8 月のネット販売は同 31.9%増えた。専門店、百貨店、スーパーの売上高は
それぞれ同 3.6%、同 4.4%、同 7%増だった(XINHUA.JP 2014/09/17)。
8 月の中国の消費者物価指数(CPI)は前年同月と比べて 2%の上昇となったが、上昇幅は前
月を 0.3 ポイント下回った(国家統計局 2014/09/11)。市場予想の 2.2%も下回り、景気失速
があらためて裏付けられた(ロイター2014/09/11)。主要な食材である豚肉や野菜の値下がり
の影響が大きく、豚肉が 3.1%減少し、CPI を 0.10 ポイント引き下げ、生鮮野菜は 6.9%減
少し、CPI を 0.22 ポイント引き下げた(中国通信 2014/09/12)。また、酒類も価格が下落し
ており、政府が汚職防止のために過剰な接待や宴会を戒めていることも影響したとみられ
る(毎日新聞 2014/09/12)。CPI の前年比上昇率は、当局が上限とする 3.5%を大きく下回り、
中銀や政府にとって追加の景気刺激策を発動する余地が拡大した形となった。しかし、デ
フレリスクが懸念されるため、政府の追加刺激策導入が経済にプラスかマイナスかどうか
については、見方が分かれている。オーストラリア・アンド・ニュージーランド銀行(ANZ)
のエコノミストのハオ・チョウ氏は、「インフレは鈍化し続けており、デフレリスクが高ま
っている。一段の金融緩和策が必要だ。PPI の低下は、景気低迷下で企業にとって実質金利
の上昇を示しており、今後利益率が圧迫される可能性がある」と述べた。その一方で、PNC
のビル・アダムズ氏は、「失業率が低いことを踏まえると、政府が対応する必要性は低い」
と指摘し、当面は様子見を続けるとみた(ロイター2014/09/11)。
6
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図表 4 社会消費品小売総額伸び率(単位:%)
15
14.5
14
13.5
13.4 13.3 13.3
13.7 13.6
13
12.5
12.2
11.8
12
12.2
11.9 12.5 12.4
11.9
11.8
11.5
11
(出所)国家統計局より作成
図表 5 消費者物価指数(CPI) (単位:%)
3.5
3.1
3.2
3.0
3
2.6
2.5
2
2.5
2.4
2.5
1.8
2.0
1.5
1
(出所)国家統計局より作成
7
2.3
2.3
2.0
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4. 新規貸出純増額は回復、M2 は予想に反して伸び鈍化
8 月の新規人民元建て融資は 7025 億元(1146 億ドル)となり、前月の 3852 億元から大幅
に増加し、市場予想の 7000 億元とほぼ一致した(中国人民銀行 2014/09/12)。前月から改善
したものの、上半期の平均である 1 兆 7500 億元や前年同月の 1 兆 5700 億元は大きく下回
っている(ロイター2014/09/12)。経済の流動性を示す指標である中国社会融資総量は、8 月
に 9574 億元となった。前月は約 6 年ぶりの低水準となる 2731 億元だった(中国人民銀行
2014/09/12)。8 月の社会融資規模統計の特徴について、人民銀行調査統計司の盛松長司長
は、①人民元貸出が前月比で増加、②外貨貸付は 2 ヵ月連続で減少、③企業債券による信
金調達が活発化、④バランスシート外の資金調達(委託貸付、信託貸付、銀行引受手形)が引
き続き低迷したことを挙げている(国家統計局 2014/09/11)。
8 月の通貨供給量(マネーサプライ、M2)伸び率は前年同期比 12.8%増の 119 兆 7499 億元
となり、伸び幅は前月(同 13.5%増)から鈍化している(中国人民銀行 2014/09/13)。不動産市
場の低迷が景気の重しとなる中で、資金環境が圧迫されていることが示唆された(ブルーム
バーグ 2014/09/09)。M2 はすでに国内総生産(GDP)の 2 倍に膨らんでおり、追加緩和の余
地は限られている。ただ、多くのアナリストは、状況が悪化すれば、利下げや全ての銀行
を対象とする預金準備率引き下げが実施される可能性があるとみている (ロイター
2014/09/12)。
図表 6 通貨供給量(M2)の伸び率 (単位:%)
16
15
14
14.7
14.2
13.6
13.2
13.3
13.2
13.4
13.5
13
12.1
12
11
10
(出所)国家統計局より作成
8
12.8
マクロ経済動向分析 8-9 月
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5. 銀行理財商品に対する販売規制強化の動き
中国の銀行業監督管理委員会(CBRC)は 8 月 27 日、シャドーバンキングへの新たな規制
案を公表した。サイトに掲載した規制案によると、銀行は証券・保険・信託会社を通じた
委託ローンや理財商品などによるリスクを「包括」管理するよう求めている (ロイター
2014/08/27)。
元本保証のない理財商品の場合、銀行は販売責任だけを負い、損失は顧客が負担するの
が原則だ。中国の成長鈍化が鮮明になった 2013 年ごろから理財商品の返済を巡ってトラブ
ルになる例が出始め、理財商品の潜在的なリスクを問題視する銀行監督当局は、7 月にも理
財商品の規制強化策を発表していた。規制強化が影響し、6 月末以降は販売ペースが鈍って
いる模様だ(日本経済新聞 2014/09/23)。
6. 地方財政立て直しへ
膨らむ借金に歯止め
中国の全国人民代表大会常務委員会は 8 月 31 日、予算の透明性を高めて地方財政への監
督を強める予算法の改正案を議決した(朝日新聞 2014/09/02)。近年、資金供給量は経済規模
を大きく上回るペースで増加し、資金効率が低下している。また、地方政府への流入が顕
著 で あ る 一 方 、 中 小 企 業 や 農 村 で は 資 金 不 足 問 題 が 継 続 し て い る (日 本 総 合 研 究 所
2014/08/26)。今回の改正は、地方政府の借金の膨張に歯止めをかけると同時に、資金配分
の見直しがが狙いだ(朝日新聞 2014/09/02)。人民銀調査局の首席エコノミストも、地方政府
の歳出が金利の変化に敏感になるため、金融政策での調整への反応が改善すると指摘した
(ロイター2014/09/05)。
改正後は一般会計以外の、日本の特別会計などにあたる部分も公開し、透明性を高める。
各省に自らの責任で地方債を発行することを認め、不透明な借金をやめるよう促す。ただ、
巨額支出を続ける地方政府に自己責任を突きつける効果は不透明だ。中国交通銀行アナリ
ストの連平は「小さな地方政府で債務不履行(デフォルト)が起こり得る」と指摘する(朝日
新聞 2014/09/02)。
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7. 貿易黒字額は過去最高、欧米向け輸出が牽引
中国税関総署が発表した 8 月の貿易統計によると、中国からの輸出は前年同月比 9.4%増
の 2084 億 6000 万ドル(約 21 兆 8900 億円)と 5 ヵ月連続でプラスとなった。ただ、伸び幅
は 7 月の同 14.5%から大きく後退した(海関総署 2014/09/08)。輸出は鈍化したが、世界的
な需要は堅調なことを示した。RBS のエコノミストは、
「一段の金融緩和を促す内容だが、
同時に輸出が堅調で黒字幅も過去最大となっており、通貨高を当局に求める内容になって
いる」と述べた(ロイター2014/09/08)。1-8 月の輸出を地域別に見ると、最大の貿易相手で
ある欧州連合(EU)が前年同期比 10.9%増、米国向けが 7%増と、いずれも 1-7 月から伸び率
が拡大した(毎日新聞 2014/09/09)。
一方で、8 月の輸入は同 2.4%減の 1586 億 3000 万ドルで、2 ヵ月連続のマイナスとなっ
た(海関総署 2014/09/08)。貿易収支は 498 億ドルの黒字で過去最大。市場予想は 400 億ド
ルの黒字だった(ロイター2014/09/08)。内需の鈍化もあり、原油や鉄鉱石などの輸入が伸び
悩んだ結果、黒字額が膨らんだとみられ(三井住友アセットマネジメント 2014/09/17)、資源
国にとっては、資源価格の下落と共に打撃となる可能性がある(朝日新聞 2014/09/09)。
また、貿易黒字の拡大を背景に、このところ人民元相場は上昇が続いている。6 月上旬に
人民元相場は対ドルで 1 ドル=6.25 元前後まで下落したが、以降は上昇傾向にあり、9 月に
入り 6.15 元を上回る人民元高水準で推移している。ファンダメンタルズからみれば、米国
の長期金利は金融緩和の終了を織り込みながら上昇、中国の金利は低位安定しているため、
金利差は人民元安ドル高要因となり、貿易黒字の拡大が実需を通じて人民元相場を押し上
げていると考えられる(伊藤忠経済研究所 2014/09/16)。
10
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図表 7 輸出の伸び推移(単位:%)
20
15
14.5
12.7
10.6
10
9.4
7.0
4.3
5
-7.2
0.9
0
-6.6
-5
-10
-15
-18.1
-20
(出所)海関総署より作成
図表 8 輸入の伸び推移(単位:%)
20
15
10
8.3
10
10.1
5.5
5.3
5
0.8
0
-1.6
-5
-10
-15
-1.6
-11.3
-20
(出所)海関総署より作成
11
-2.4
マクロ経済動向分析 8-9 月
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図表 9 輸出品目別統計
商品名称
単位
1-8 月累計
数量
同比(%)
金額(億ドル)
数量
金額(億ドル)
機械・電気設備製品
-
-
5074.2
-
-0.5
ハイテク製品
-
-
2661.5
-
-6.2
12116.0
694.8
2.0
-2.5
自動データ処理設備及び部品
万台
服飾
-
-
636.9
-
4.8
電話機
-
-
489.6
-
2.7
紡績・織物及び製品
-
-
450.4
-
3.0
農産品
-
-
278.1
-
4.8
鋼材
万トン
5683.0
275.2
35.4
22.1
IC
億個
964.5
246.7
1.2
-39.8
靴類
万トン
331.0
230.2
8.3
13.5
家具及び部品
-
-
202.4
-
-3.2
自動車部品
-
-
199.9
-
8.4
プラスチック製品
万トン
623.0
147.0
7.0
6.8
貴金属及び貴金属アクセサリー
トン
507.1
141.0
-18.9
13.0
液晶パネル
億個
15.9
129.0
-31.1
-14.6
電灯・照明装置及び類似品
万トン
-
119.1
-
33.2
1912.0
104.1
-0.5
0.7
製油
万トン
鞄
万トン
200.0
107.8
-0.1
-3.8
船舶
万隻
235.0
98.6
8.5
-13.3
(出所)海関総署より作成
12
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マクロ経済動向分析 8-9 月
図表 10 輸入品目別統計
商品名称
単位
1-8 月累計
同比(%)
数量
金額(億ドル)
数量
金額(億ドル)
機械・電気設備製品
-
-
3366.0
-
-2.1
ハイテク製品
-
-
2145.0
-
-6.5
原油
万トン
20092.0
963.6
8.4
7.5
IC
億個
1800.3
834.8
3.1
-13.9
-
519.8
-
8.5
61438.0
418.4
16.9
-1.8
95.0
252.4
28.8
33.6
1702.0
213.0
7.5
8.6
-
農産品
鉄鋼砂及び精鋼
万トン
自動車(セット部品含む)
万台
プラスチック原料
万トン
液晶パネル
億個
19.0
176.0
-19.8
-16.4
未鍛造銅及び銅材
万トン
320.0
146.5
14.3
6.2
自動車部品
-
-
129.5
-
14.6
自動データ処理設備及び部品
万台
47972.0
119.4
0.4
-4.8
飛行機
万トン
692.0
101.6
45.1
27.7
製油
万トン
1965.0
97.5
-28.3
-28.2
石炭及び褐炭
万トン
20176.0
97.0
-5.3
-19.8
ダイオード及び類似半導体部品
億個
3070.7
89.9
26.6
0.0
銅鉱砂及び精鋼
万トン
729.0
82.1
18.5
9.2
液化石油ガス
万トン
1783.0
75.3
25.8
33.0
鋼材
万トン
964.0
74.0
4.4
6.4
(出所)海関総署より作成
13
慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
マクロ経済動向分析 8-9 月
図表 11 主要国別輸出入
輸出最終目的国
単位:億ドル,%
当月
金額
輸入原産国
累計
金額
単位:億ドル,%
同比
当月
累計
金額
金額
同比
総額
2084.7
14834.6
3.8
総額
1586.3
12829.3
0.6
アメリカ
366.0
2490.8
7.0
韓国
149.5
1198.9
1.1
香港
270.8
996.3
-31.3
日本
133.6
1060.9
1.2
日本
116.9
980.7
3.0
アメリカ
121.4
1049.7
4.0
韓国
77.0
650.8
7.3
台湾
125.3
972.6
-8.0
ドイツ
68.2
476.9
10.0
中国
122.1
910.6
-11.8
ロシア
58.2
339.7
9.5
ドイツ
98.3
696.6
13.8
オランダ
56.9
417.6
9.8
オーストラリア
82.8
679.4
8.1
イギリス
54.9
361.9
16.4
ブラジル
53.5
375.6
4.2
インド
53.2
351.5
7.9
マレーシア
43.1
360.5
-6.3
ベトナム
52.6
378.7
25.9
サウジアラビア
41.3
330.8
-6.4
(出所)海関総署より作成
14
慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
マクロ経済動向分析 8-9 月
図表 12 ドル円対人民元
相場推移
(2014/4/14-2014/9/22)
620
618
617
610
616
600
615
614
590
613
580
612
611
570
560
2014/4/14
610
2014/5/14
2014/6/14
2014/7/14
2014/8/14
2014/9/14
609
元/10000円(左軸)
元/100ドル(右軸)
(出所)中国外貨管理局より作成
図表 13 香港ドルユーロ対人民元
相場推移
(2014/4/14-2014/9/22)
8.7
79.7
8.6
79.6
8.5
79.5
8.4
8.3
79.4
8.2
79.3
8.1
79.2
8
79.1
7.9
7.8
2014/4/14
2014/5/14
2014/6/14
2014/7/14
2014/8/14
2014/9/14
79
元/ユーロ(左軸)
元/香港ドル(右軸)
(出所)中国外貨管理局より作成
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マクロ経済動向分析 8-9 月
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駒形哲哉研究会
8. 李首相「外資たたき」否定、誘致に積極姿勢
中国の李克強首相は 9 月 10 日、天津市で開幕した「世界経済フォーラム(夏季ダボス会
議)」で講演し、
「積極的な開放戦略を堅持・実行し、さらに開放された経済システムへと改
善していく」と述べ、当局による外資たたきとの見方を否定した。外資誘致に積極姿勢を
示すことで、投資環境が悪化しているとの外資企業の懸念を払拭する狙いがあるとみられ
る(読売新聞 2014/09/11)。
8 月 17 日には、独自動車大手ダイムラーが市場の支配力を乱用して補修部品の価格を不
当につり上げたと国家発展改革委員会が認定したことが明らかになった。それ以前にも、
外資系高級車メーカーの事務所が立ち入り調査を受けている。どのメーカーも中国企業と
合弁企業を設立しているが、提携先の中国企業は圧力を掛けられていないようだ(日本経済
新聞 2014/09/05)。また、中国独占禁止法当局は 8 月 20 日、日本の自動車部品メーカーな
ど 12 社が不正に価格をつり上げたとして独禁法違反を認定し、うち 10 社に計 200 億円余
りに相当する罰金を科したと発表した(日本経済新聞 2014/09/10)。そのため、自動車部品メ
ーカーや IT(情報技術)関連などの外資企業の間で、
中国当局が独禁法を国内産業保護のため
の「外資たたき」に利用しているとの懸念が強まっている(読売新聞/2014/09/11)。
商務部は 9 月 16 日、8 月の世界から中国への直接投資額(実行ベース、金融除く)が前年
同月比 14%減の 72 億ドル(約 7700 億円)にとどまったと発表した。7 月(17%減)に続く 2 桁
のマイナスで、日米欧の先進国を中心に海外企業による対中投資の落ち込みが鮮明となっ
た。人件費や不動産賃料の上昇を受け、生産拠点を東南アジアなどへ移す動きが広がって
いるが、上述の「外資たたき」が影響しているとの指摘も多い(日本経済新聞 2014/09/16)。
9. 英国が人民元建て債券発行へ、中国国外で初の起債
オズボーン英財務相は 9 月 12 日、中国国外では世界初となる人民元建て債券を発行する
と明らかにした。英財務省によると、年内にも債券発行を予定しており (ロイター
2014/09/12)、元建て債発行の理由について、国際経済や金融市場での人民元の役割が今後
高まると予想され、人民元がドルやユーロ、円、ポンドと並び、
「将来的な準備通貨」とし
て影響力を増す可能性があることを指摘した(時事通信 2014/09/13)。
多くの国・地域が人民元を決済・投資・勘定・外貨準備に取り入れており、人民元は世
界市場で支持を集め、国際化に向け着実に歩んでいる(人民網 2014/09/24)。今回の人民元建
て債発行で、英中関係もさらに深まる見通しだ(ロイター2014/09/12)。
16
マクロ経済動向分析 8-9 月
慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
10. 中国、インドに 200 億ドル投資、経済関係強化を図る
インドを訪問中の中国の習近平国家主席は 9 月 18 日、首都ニューデリーでモディ首相と
会談し、インド政府が掲げる高速鉄道網整備への協力を表明、今後 5 年間で総額 200 億ド
ル(約 2 兆 1700 億円)規模の投資を約束したほか(時事通信 2014/09/18)、原発輸出などを可
能とする原子力協定の交渉を始めることで一致した(毎日新聞 2014/09/19)。インドに接近す
る日本や米国を意識しつつ、経済を軸にインドとの関係を縮めるのが中国の狙いだ。ただ、
習主席の訪印中に両国の軍が国境で対峙するなど、安全保障面で両国に確執が残ることも
浮き彫りになった(日本経済新聞 2014/09/19)。
インドにとって中国は最大の貿易相手国で、2013 年の両国の貿易額は約 660 億ドル(約 7
兆円)にのぼる。だが、対中貿易赤字が膨らみ、今後は中国から直接投資を呼び込んで国内
産業を育成し、輸出を増やす必要がある(日本経済新聞 2014/09/18)。印西部グジャラート州
とマハラシュトラ州に中国企業専用の工業団地を設置することにこだわったのはその表れ
だ。
「メイク・イン・インディア(インドでもの作りを)」を標語に掲げるモディ首相は進出
企業に税優遇措置も与え、中国からの直接投資の誘い水にすることを狙う(日本経済新聞
2014/09/19)。
11. 本土市場は続伸、香港市場は一進一退
【8 月の株式市場動向】
8 月の本土株式市場は、中旬まで高値圏でのもみ合いが続いたが、下旬にかけて一段と高
まり、ボックスを切り上げる動きとなるなど、月間を通して終始堅調な展開となった
(2014/09/01 内藤証券)。
7 月下旬にかけて急上昇に転じた上海総合指数は 8 月に入っても堅調な動きが続いた。そ
の理由としては、7 月の PMI が 5 ヵ月連続の改善となり、景気回復への期待感が拡がった
ことが挙げられる。一方、月後半にかけては再び高値追いの動きになった。実際、8 月後半
に発表された経済指標は内需の停滞を示唆するものが多かった。しかし、預金準備率や政
策金利の引き下げなどの金融政策や今年 4 月以降に発動したような的を絞った内需刺激策
等の追加実施が可能であるため、今回のスローダウンが景気の失速に繋がる可能性は極め
て小さいと考えられ、本土株式市場の上昇トレンドは持続できた(2014/09/01 内藤証券)。
一方、8 月の香港株式市場は出足こそもたついたが中旬にかけて再度上昇に転じ、高値更
新基調を継続した。その後も月末に向けて高値圏での一進一退が続いた(2014/09/01 内藤証
券)。まず、8 月上旬が軟調であった理由としては、ウクライナ、中東情勢の緊迫化、アル
ゼンチンのデフォルト懸念など外部環境の悪化で海外資金の流出懸念が高まったことが挙
げられた。その後、中旬になると、中間決算発表の本格化で好業績銘柄に対する個別物色
が活発化したことから、株価市場は上昇に転じた(2014/08/15 内藤証券)。下旬の株式市場に
17
マクロ経済動向分析 8-9 月
慶應義塾大学
駒形哲哉研究会
関しては、8 月 21 日に発表された 8 月の HSBC の PMI(速報値)が市場予想を大きく下回っ
たことで本土景気に対する警戒感が意識されたものの、
「滬港通」(上海・香港ストック・コ
ネクト)による資金流入への期待感は根強く、月末に向けて高値圏での推移となった
(2014/08/29 内藤証券)。
【9 月の株式市場動向】
9 月の本土市場は最初、経済の先行き不透明感で一進一退したが、下旬は PMI サプライ
ズでしっかり続伸した。9 月上旬、上海総合指数は小幅ながらも続伸した。PMI 指数が更
なる景気対策の期待材料になったことと「滬港通」(上海・香港ストック・コネクト)への期
待感があったことが原因であった(2014/09/12 内藤証券)。しかし、中旬になると、市場の波
動が大きくなり、一進一退を繰り返す状態に変化した。その理由としては、中国経済の先
行き不透明感が一段と強まったことと住宅市況の不振が目立ち、不動産や鉄鋼・建材・家
電セクターなどが売られたことが考えられた(2014/09/19 内藤証券)。その後、23 日からは
市場予想を上回る 9 月の HSBC の PMI(速報値)を受けると、
「滬港通」(上海・香港ストッ
ク・コネクト)への期待感などから月末まで続伸した(2014/09/26 内藤証券)。
一方、9 月の香港株式市場は出足こそもたついたがその後は 3 週続落という軟調な状態で
あった(2014/09/26 内藤証券)。9 月第 1 週、滬港通や中国サービス業 PMI などが刺激材料
となり、ハンセン指数は一度急伸した(2014/09/05 内藤証券)。しかし、第 2 週には米国の早
期利上げへの警戒感が利食い売りを呼んだことから続落し、その後、9 月 15 日に発表され
た弱い中国の経済指標と翌 16 日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えたリス
クオフの影響でまた下がった(2014/09/19 内藤証券)。下旬になると、景気刺激策への期待
感が後退したことから、市場は大幅に続落し、3 週続落となった(2014/09/26 内藤証券)。
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マクロ経済動向分析 8-9 月
図表 14 上海総合指数(終値)
(2014/7/25-2014/9/29)
2400
2350
2300
2250
2200
2150
2100
2050
2000
(出所)Searchina ファイナンス HP より作成
図表 15 ハンセン指数(終値)
(2014/4/14-2014/9/22)
25500
25000
24500
24000
23500
23000
22500
22000
(出所)Searchina ファイナンス HP より作成
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マクロ経済動向分析 8-9 月
参考 Web
・伊藤忠商事エコノミックモニター
http://www.itochu.co.jp/ja/business/economic_monitor/
・時事通信社
http://www.jiji.com/
・新華社
http://jp.xinhuanet.com/
・人民網
http://j.people.com.cn/
・中国海関総署
http://www.customs.gov.cn/publish/portal0/
・中国国家統計局
http://www.stats.gov.cn/
・内藤証券
http://www.naito-sec.co.jp/
・日本総合研究所
http://www.jri.co.jp/report/medium/publication/china/
・ブルームバーグ
http://www.bloomberg.co.jp/
・みずほ総合研究所
http://www.mizuho-ri.co.jp/
・三井住友アセットマネジメント
http://www.smam-jp.com/
・ロイター通信
http://jp.reuters.com/
・Searchina ファイナンス
http://searchina.ne.jp/
・XINHUA.JP
http://www.xinhua.jp/
参考新聞・資料
・朝日新聞
・産経新聞
・中国通信
・日本経済新聞
・毎日新聞
・読売新聞
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