下水道循環のみち研究会 - 日本下水道施設業協会

下水道循環のみち研究会
第20回セミナー講演録
講演日:平成25年12月13日
一般社団法人日本下水道施設業協会
「肥料用リン酸資源としての下水道リンの循環のみち」
講演:用山 徳美氏
(日本燐酸株式会社 新事業企画マネージャー)
リン資源の回収
日本は技術でリードせよ
本日は、リン資源を取り巻く日本の環境ならびに下水汚泥焼却灰をはじめとする未利用リ
ン資源の活用技術と課題、今後の展望などについてお話しをさせていただきたいと思います。
下水道循環のみち研究会 /一般社団法人日本下水道施設業協会| 平成 25 年 12 月
まず弊社の紹介を兼ねて我が国のリン酸製造の現状についてお話ししますと、実はリン酸
の製造を手掛ける会社は国内に2社しかありません。1つは東洋燐酸㈱(山口県下関市)で、
もう1つが私どもの日本燐酸㈱(千葉県袖ヶ浦市)です。日本燐酸は輸入したリン鉱石から
リン酸やリン酸アンモニウムを製造して肥料会社に供給していますが、その量は平成 25 年
度の予算ベースで約5万 2000 トン(P2O5換算)に達します。
千葉県袖ケ浦市にある製造プラントは昭和 44 年の操業開始ですが、ご存じの通り、隣接
する都県には下水道が整備され、今や大きな処理場がいくつも点在します。昨今の調査では、
関東圏で年間約 13 万トンの下水汚泥焼却灰(以下、汚泥焼却灰)が発生しているとされて
おり、そうしたデータを踏まえますと、日本燐酸の製造拠点周辺には相当量のリン資源が潜
在していることになります。
世界のリン資源を巡る環境を見てみましょう。最近では、リン資源は人類のグローバル問
題として捉えられ、大阪大学の大竹久夫教授の言葉をお借りすれば、世界の食糧供給を支え
る上でリンの持続的利用は最も大きな関心事の1つです。グラフ1は世界におけるリン鉱石
の生産量と人口の推移を表したものです。第二次世界大戦後の経済発展、人口増加を支える
ため食糧増産が求められ、農業用のリン需要が高まり、リン鉱石の生産量は増え続けていま
す。
世界のリン鉱石の埋蔵量は表1のように一見まだ安泰のように思われますが、近い将来ア
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メリカや中国の資源は間違いなく枯渇するでしょうし、そうなった時、実はモロッコが世界
需要の9割を担う状況が予測されます。つまりリスクの分散が非常に難しくなります。
グラフ2は、リン鉱石・リン酸アンモニウムの FOB 価格(本船渡条件価格)の推移を表し
たものです。ご覧の通り、平成 20 年(2008 年)のサブプライム問題を契機にリンの価格は
約5倍に高騰し、同年9月のリーマンショックを経てその後価格は落ち着いたものの、それ
でも平成 18 年(2006 年)初頭と比べると今は倍の値段になっています。このような相場の
変動は今後も起こり得るリスクとして覚悟しなければなりません。また、将来モロッコの寡
占化による価格高騰も不安材料です。
以上のことを踏まえてリン資源に関わる不安要素を整理してみますと、以下の3つのポイ
ントに絞られます。
①リン鉱石の偏在
②高品質リン鉱石の枯渇
①は先ほども申しましたように、寡占化による価格高騰や、産出国が中近東に偏っている
ことに伴う政情不安等への懸念。②は、良い品質のリン鉱石が少なくなることへの不安で、
③は経済的採掘鉱区の減少や環境問題等への対応です。この経済的採掘鉱区というのは文字
通り、採算に見合った採掘ができる鉱区のことですが、採掘作業を進めていくうちに掘りや
すい場所は少なくなっていくわけですから、将来的に技術の大きな転換が求められることに
なるでしょう。
このようにリン資源の確保には大きな不安が付きまとうわけですが、前出の大竹教授は日
本の立ち位置について、「“Recycle more”の推進と技術により、産業に利益をもたらす仕
組みの構築に取り組むべき」と指摘してい
ます。つまり、技術で世界をリードする役
割が求められるのであり、そのために本講
演のテーマにもなっている下水道からのリ
ン回収等の技術の開発や改良に加え、コス
トの削減、さらにはリン活用のための法制
度の見直しを進めていかなければなりませ
ん 。 そ し て 「 Take action without
delay」、つまり“できることからやる”
姿勢が大事です。
不純物の含有量が課題に
日本は戦前からリン酸質肥料を多用し、土壌改良に努めてきました。が、それは日本の耕
作地に火山性の洪積土が多いことに原因があります。というのも、火山灰には活性アルミナ
という物質が含まれていて、それがリン酸を吸着する特性を有するのです。そのため、耕作
地ではリン不足が起こりやすく、生育の遅延や花芽形成の阻害などを引き起こします。その
課題を克服するために日本は古くからリンを耕作地に撒いてきた(グラフ3参照)わけです
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③リン鉱石の採掘・加工コストの増加
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が、そのおかげで近年は土壌改良が一定程度進み、全国的に農地が減った影響もあるにせよ、
リン鉱石の輸入量は年々縮小の方向に向かっています。日本は世界に先駆けてリン資源の節
約型農業を実践しているわけです。ただリンの需要が縮小したとはいっても、今後も肥料が
不可欠な生産資材であることに変わりはなく、リン資源の安定的な確保は相変わらず我が国
の課題です。そうした中、近年は国内の未利用リンへの関心が高まり、その回収と活用が強
く求められるようになりました。
図1をご覧ください。これは、東北大学の松八重一代教授らが「廃棄物からの人工リン資
源回収」の中でまとめられた平成 12 年のリンに関する我が国のマテリアルフローです。左
側が海外から輸入されるリン資源の量を示していて、右側がその消費に伴うアウトプットと
なっています。統計的に古いデータですが、リンフローのアウトラインは現在も概ね変わっ
ていません。肥料やリン鉱石で輸入されるリンは年間約 60 万トンであるのに対し、食糧や
飼料として入ってくるものが約 40 万トン。鉄鉱石等の鉱物として約 30 万トン。逆に、人間
活動等のアウトプットとして排出されるリンが 23 万トンあるほか、農地利用した際の土壌
蓄積が 86 万トン、鉄鋼スラグが 21 万トンという結果が出ています。
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人間活動で排出されるリンの多くは河川や海に流出するか、あるいは下水道等を介してセ
メント等への混入あるいは埋め立て処分されているのが現状で、その回収による農業用途へ
の還元は未利用リン資源の活用を図る上で大きなポイントです。全国の下水処理場から排出
されるリンは年間約 13 万 2000 トン(P2O5換算)にのぼると見られ、その内訳は処理水中が
3万 7000 トン(同)、脱水汚泥中が2万 8000 トン(同)、汚泥焼却灰中が6万 7000 トン
(同)で、汚泥焼却灰に含まれるリンが全体の半分を占めます。汚泥焼却灰はリン鉱石と同
程度のリン濃度(P2O5として 24~35%、リン鉱石は 32~38%)を有するものの、アルミや
鉄・マグネシウムなどの不純物も多く、リン鉱石と同様に扱うことはできません。そこで、
下水道リンの肥料化ルートをまとめたのが図2で、具体的な再資源化の仕方としてはまず、
汚泥焼却灰を直接リン酸質肥料に使う方法(焼成汚泥肥料として肥料登録、販売可)があり
ます。ただこれは、せっかくリン酸成分を含んでいるのに有効成分としての公定規格がない
こと、また重金属等の品質管理の問題の指摘がなされていること、さらに名称「汚泥」への
抵抗感からほとんど普及していません。次に、汚泥焼却灰に何らかの処理を施してリン酸質
肥料に変える方法です。これには、熔融処理した「熔成汚泥灰複合肥料」(三機工業)や、
焼成処理してリン酸を可溶化する「焼成法肥料」(太平洋セメント)など、各社特長のある
取り組みが進められていて、今後の普及に期待が高まります。そして、三番目に化成肥料等
の主成分である水溶性リン酸を供給するためのリン酸にする方法が考えられますが、現在使
用されているリン鉱石原料に比べ不純物が多いことから、これまで直接リン酸化する試みは
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ありませんでした。
汚泥焼却灰の使用比率は 2.5%
先述したように汚泥焼却灰には不純物が多いため、少し前までは「下水汚泥はリン酸製造
原料として使えない」というのが私ども日本燐酸の見解でした。しかし平成20年(2008年)
のリン鉱石の価格高騰や入手困難な状況等を経験したことに加え、リン資源推進協議会の発
足(同年)ならびに国土交通省のバックアップ体制が整ったことなどから、弊社は「使う努
力」へと大きく舵を切った経緯があります。具体的には「海外リン鉱石への依存脱却」、
「資源循環型社会の構築への貢献」を経営方針に掲げ、汚泥焼却灰の再資源化事業の目的を
安価な汚泥焼却灰を利用することによるリン酸のコストダウンと位置づけました。また事業
化において、既存の設備と、今持っている技術で、今できることから速く立ち上げることに
重点を置きました。ちなみに、コストダウンのポイントは“汚泥焼却灰に手を加えない”こ
と。安価な焼却灰のまま原料に使用することで、そこに本来の原料であるリン鉱石との価格
差を生み、利益を上げていこうという試みです。
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では実際にどのように汚泥焼却灰を使うのかといいますと、既存のリン鉱石に硫酸を反応
させる工程において、リン鉱石の一部に汚泥焼却灰を代替して使うのです。この時、砂状の
リン鉱石に対して汚泥焼却灰は粉状ですから、汚泥焼却灰をリン鉱石と一緒に既存設備に投
じることはできません。専用の設備(貯蔵設備と計量器)が必要となります。
汚泥焼却灰は計画上、リン酸濃度 30%以上、鉛 60mg/kg 以下の条件を満たすものを選び、
ジェットパック車で運べる乾灰で使用します。リン鉱石との使用比率は 2.5%(計画数量
3000 トン/年)で、これは、できあがりの製品(リン酸液と石膏)の品質との兼ね合いに
よるものです。
従来、下水処理場で発生する汚泥焼却灰は自治体が民間にお金を払ってセメント原料化す
るケースが多かったのですが、私どもの事業の場合、汚泥焼却灰は有価物として扱います。
つまりお金を払って引き取りますので、自治体にとっては汚泥処分費の軽減になりますし、
私どもにとっても原料費のコストダウンが図れるという意味で、まさにWin・Winの関
係が成り立ちます。
汚泥焼却灰(原料)に対する要求品質はいくつか項目がありまして、1つは製品の安全性
です。重金属や放射能が基準値を満たしていることはもちろんですが、それ以外にも有害成
分の含有量(肥料取締法)や臭気なども厳正に
チェックします。また 、製品(リン酸液と石
膏)の機能面として石膏ボードに適した石膏の
結晶形状をしていることや、リン酸液の品質で
は肥料の有効成分を保証するため、鉄、アルミ
等の金属が少ないことを確認し、条件の良い汚
泥焼却灰を選別します。
実際に私どもが茨城県から神戸市まで広く汚
泥焼却灰を集めて分析を行ったところ、鉄やア
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ルミ、鉛の含有量に大きなバラツキがあることが分かりました。鉄やアルミは、脱リンや脱
水処理の過程で投入する薬剤の影響が出ているものと思われますし、また鉛は処理している
下水の性状によって地域、下水処理場による固有の特徴が見られます。一方で、季節による
変動はほとんど見られませんでした。つまり、下水処理を取り巻く外的な要因と処理場内で
人工的に行われている処理の違いによって汚泥焼却灰の品質が変わるので、結果的に私ども
は下水処理場を選別することになります。
リン酸原料としての評価試験のポイントには、副産物として生成される石膏の品質を示す
鉛溶出や結晶形状、肥料品質としての水溶性リン酸成分と有害成分、そして植物の成長への
影響が挙げられます。石膏の鉛溶出は、鉛濃度 50mg/kg の汚泥焼却灰を使用すると仮定した
場合、全体の1~3%の比率ならば品質基準の 60ppm 以下をクリアすることが可能です。結
晶形状は菱形の板状の結晶が最適とされますが、原料にシリカが多く含まれている場合には
結晶が細長くなる傾向がありますので、理想の結晶形状を得るため、汚泥焼却灰は比率5%
以内に抑えなければなりません。
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一方で肥料品質としての評価は、水溶性リン酸成分と有害成分の2つが重要なポイントで
す。これまでの調査から、有害成分については特段問題がないことが分かっていますが、水
溶性リン酸成分は汚泥焼却灰の使用量を増やすと低下する傾向が確認されています。そのた
め、汚泥焼却灰の使用比率は5%以内に抑える必要があります。そして植物の成長への影響
ですが、こちらも焼却灰5%の肥料を使ってコマツナの植害試験を行い、特に問題ないこと
を確認しています。
以上を整理したリン原料に対する考え方が表2でして、総合評価から、汚泥焼却灰の比率
が 2.5%であれば充分原料として成り立つとの結論に至りました。
実績を重ねて資源としての認知を
それから事業化に当たってですが、私どもはまずプラントの実証試験を平成 22 年に4日
間行いました。千葉県花見川処理場の汚泥焼却灰 70 トンを譲り受けて実施したものですが、
その結果が良好であったことから平成 23 年に貯蔵・計量設備の設置を行い、同時に適合処
理場を関東圏から5ヵ所選定しました。その後、東日本大震災に伴う原発事故の影響から放
射性セシウムの問題が顕在化したため、関東圏の汚泥焼却灰の使用計画を中断せざるを得な
くなり、放射性セシウムが検出されない汚泥焼却灰を求め、愛知県以西の汚泥焼却灰の利用
検討に取り組みました。そして愛知県に関し、一年間の変動調査を踏まえて「使用可能」と
の結論が得られましたので、矢作川浄化センターに乾灰の出荷設備を設置していただき、平
成 25 年1月に本格的な使用を開始しました。
ちなみに、このような検討と併せ、農林水産省や廃棄物関連行政に相談して的確な指導を
受けたほか、顧客への事前アナウンスも
行って、汚泥焼却灰を使用することへの
理解と協力をいただいています。汚泥焼
却灰の利用は、リン酸製造の原料として
の利用が目的であるから有償で買い上げ
るのであって、廃棄物処分が目的ではあ
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りません。しかし、現状汚泥焼却灰はばいじんであり、産業廃棄物として取り扱われていて、
リン原料の商品として流通していないことから、汚泥焼却灰を使用するための廃棄物の中間
処理施設を設置し、産業廃棄物所分業を取得しました。今後実績を積み重ねていくことで、
資源(商品)として社会的に認知してもらえるように努力していく所存です。
品質管理については、まず受け入れ時にロット(ジェットパック車1台)毎の分析を行い
ます。現状、リン濃度 20%以上、鉛 80mg/kg 以下の水準を満たしているか確認し、その分
析値をもって使用比率の調整を行う仕組みです。ちなみに、リン鉱石の成分にも変動がある
ため、使用するリン鉱石の品質によっては汚泥焼却灰の使用量を制限するケースもあります。
グラフ4が矢作川浄化センターの汚泥焼却灰受け入れ量の実績値ですが、ご覧いただくと
お分かりのように、運転が軌道に乗ってからは定期修理の期間を除いて概ね月 100 トンのペ
ースで受け入れが行われてきました。ただこれは計画量の1/3程度に過ぎませんので、今
後も新規契約の獲得に努める必要があります。当面は関東圏の放射性セシウムの問題が収束
するのを待たなければならないと思いますが、それまでの間、私どもができる準備はしっか
りと進めておく考えです。
最後に、リン回収物の利用促進のポイントについて簡単に触れておきたいと思います。1
つは業務形態の特徴として、国内にリン酸製造プラントが2工場しかない現状を理解してい
ただき、なんとか同プラントまで高品質の未利用リン資源を運ぶ手立てを講じてほしいとい
うことです。逆に言えば、私どものプラントにお届けいただきさえすれば、あとは広域循環
のルートに載せることは容易で、特にリン酸を経由した加工を施せばニーズにかなりの汎用
性が期待できます。
もう1つは汚泥焼却灰そのものの品質です。是非、下水道事業者には先ほどから再三触れ
てきた鉛やアルミ、シリカ等の低減に努めていただきたい思いです。また、汚泥焼却灰の利
用ではなく、下水処理場からリン化合物を回収する方法も各社で開発されています。この場
合、回収されたリン化合物(リン酸カルシウムの場合)は鉄、アルミ、鉛、シリカなどの不
純物の含有量が少なくリン鉱石とそん色ないレベルですから、リン鉱石比で 10%かあるい
はそれ以上使用することが可能と考えられます。このように、リンを下水処理工程のどこで
回収するかを検討するのも重要な視点です。
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水処理過程で不純物を入れない工夫など意識改革を
このほか汚泥焼却灰の重金属ならびに金属除去の研究事例として表3を紹介しておきます。
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この中で日本燐酸は晶析法を用いた技術の開発を独自に進めているところですが、まだ皆さ
まに公表できる段階ではありません。今後、各方面からサポートをいただきつつ、一日も早
い事業化をめざしたいと思います。
今まで汚泥焼却灰といえば“捨てるもの”という認識が多分にありましたが、これからは
官も民も意識の改革が必要です。どうしたら “使いやすい”焼却灰になるのか、もう一度
考えていかなければなりません。例えば脱リンのためにPACを入れているのだとしたら、
そのPACの影響で汚泥焼却灰中のアルミ濃度が高くなる点にも目を向け、代わりの方法を
模索するなど、下水処理工程で人工的に入れている薬剤の軽減も議論していただければと思
います。
日本燐酸は、国内に放置されている未利用リン資源を使用可能なところからできるだけ多
く市場に組み入れ、将来的には全国をつなぐ広域流通を形成し、循環型社会の実現に貢献し
ていく方針です。そのためには本日お集まりの皆さま方からのご支援も不可欠ですので、良
いアイデアやご意見などがありましたら、どんどんお寄せいただければと思います。
本日はご清聴ありがとうございました。
【質疑応答】
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Q
下水汚泥焼却灰の受け入れにおける重金属類の条件を教えてください。
A 現状、弊社の汚泥焼却灰への重金属の要求品質は鉛のみ基準を設けています。具体的に
いいますと 80ppm 以下で、望ましいのは 60ppm 以下です。このほか、亜鉛も気になるところ
です。亜鉛は肥料取締法上の公定規格がありませんが、農用地への蓄積を警戒しておくべき
です。亜鉛はリン鉱石にも含まれており、今の汚泥焼却灰の使用比率が 2.5~5%であるこ
とを踏まえると、肥料への影響は少ないと考えられます。このほか銅についても亜鉛と同様
に現状の使用比率では肥料への影響は少ないと判断されます。亜鉛、銅に関して従来の事例
をとてつもなく大きく上回る数値でない限りは、私どもは受け入れを可としています。
Q
下水汚泥焼却灰を受け入れる場合の放射性セシウムの許容量を教えてください。
A 現状、農水省が出している肥料の暫定許容値は400ベクレル/Kgですが、私どもは規制値
がどうこうではなく、セシウムを含まないものを原料として使う方針です。この場合の「セ
シウムを含まない」という表現ですが、これは農林水産省の制定した検査方法、定量下限値
50ベクトル/Kg以下を測定できるゲルマニウム半導体検出器を使い、定量下限値以下だった
ものをそう呼んでいます。
【講師プロフィール】
用山徳美(もちやま・とくみ)。昭和 50 年に日産化学株式会社に入社。平成2年以降、日本燐酸株式会社勤務、
国交省における「下水・下水汚泥からのリン回収・活用に関する検討会(平成 20 年度)や「下水道におけるリ
ン資源化検討会」(平成 21 年度)などの委員としても活動。著作物に「リン資源の回収と有効利用」(共著、
S&T 出版)など多数。
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