RFID World Watcher Monthly Dec. 2009

特集 1 – NEC の RFID 戦略
11 月 4 日∼6 日に東京国際フォーラムで開催された「NEC C&C ユーザーフォーラム &
iEXPO 2009」において、NEC は同社の RFID 戦略を明らかにした。
同社の戦略を端的に示したのがセッション「利用者の『かざす』サービス構築支援!Paas
型プラットフォームサービス『BitGate(TM) 』と『RFID マルチリーダライタ』
」である。
セッションタイトルにある「RFID マルチリーダライタ」は今年の春に発表された、
13.56MHz・UHF・2.45GHz のマルチプロトコルに対応しながら 1 万円という戦略価格の
リーダー。この製品の現状を確認することが今回のフォーラム参加の最大の目的であった。
RFID マルチリーダライタは USB リーダー・ゲートターミナル・KIOSK などの形状です
でに提供が開始されているが、ハンドヘルド形式のものについては消費電力の問題で
NEC・モジュール OEM 先共に現在開発中とのこと。
もう一つの BigGate は RFID アプリケーション用のミドルウェア。タイトルにある「PaaS
型」とはミドルウェアを顧客が自社のサーバ上で動かすのではなくインターネット上のサ
ーバに接続して利用することを意味する。BigGate を RFID マルチリーダと共に利用する
ことで、以下のような処理をおこなうことができる。

複数のプロトコル間の違いを吸収して単一のアプリケーションにタグデータを送信す
る

プロトコルを元に複数のアプリケーションの中からタグデータ送信先を決定する

一つのタグデータ読み取りを複数のアプリケーションに送信する
この 2 つの製品は NEC の RFID 戦略の狙いを明確に示している。一つはセッションタイト
ルに「かざす」とあるとおり、Gen2 で可能になる数メートル以上での長距離読み取りをス
コープ外にするということ、もう一つは複数のタグ規格が混在する環境を想定し、むしろ
それを自社の強みとして積極的に訴求するということである。
同社では、RFID の普及がヒトからモノに、企業内利用から消費者サービスへと進むにつれ
利用されるタグ数が増加していくと想定しており、上記の狙いはこの想定に合致している。
つまり、消費者が利用するシーンでは消費者が意識しない長距離読み取りではなく意識的
な「かざす」という動作が必要であり、また既に普及が進んでいる IC カードとインレット
の単価が 10 円を切った Gen2 がそれぞれヒトとモノを識別するものとして併用されること
が自然なのである。
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一方、展示エリアでは、上記の「BitGate(TM)」と「RFID マルチリーダライタ」を利用し
たソリューションの展示がなされていた。RFID カンバンを用いた工程管理システム、IC
カード入館証に連動する給与・勤怠管理システム、カードをかざすことにより表示が変わ
るデジタルサイネージシステムなどである。
反面、同社が最近取り組んだ実事例(ANA での整備工具管理システム、手術器材管理システ
ム)などについては展示がまったく無く、既存のソリューションの訴求・販売促進よりもコ
ンセプトの提示・普及に興味があることが明白に見て取れる展示であった。
小欄の筆者は RFID の真価は遠距離自動読み取りだと考えており、NEC のコンセプトに必
ずしも同意するものではないが、Gen2 技術の普及の成果をこのような形で利用できる可能
性があるのは否定できない。NEC のような大手 IT ベンダーがこういう尖ったコンセプト
を持って RFID マーケットにアプローチするのは非常に興味深く、今後の成り行きが注目
される。
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特集 2 – 自動認識分野での光学情報利用(MR・自律移動ロボット)
11 月に開催された展示会では、MR(Mixed Reality、複合現実感)に関連したソリューショ
ンが多数展示されていた。拡張現実とは現実の空間を映した画像に情報を付け加えて表示
させる技術であり、手法は大きく以下の2つに分けられる。
1.
カメラに GPS と電子コンパスを取り付け、画像の外側で画像を映した位置や向きを測
定する
2.
情報を付加する対象にマーカーを取り付け、そのマーカー画像の角度や傾き、大きさ
を解析することで位置や向きを測定する
全般的に 2 次元マーカーを画像処理で識別するところまではほぼ枯れた技術であるとの印
象を受けた。今後の課題は精度の向上やアプリケーションの開発であるが、民生分野で基
礎技術の開発が進むため物流業務用途には突然予期しないような機能を持つソリューショ
ンが提示されるということがありうると感じる。
物流現場での利用の可能性という面で特に興味深いソリューションを展示していたのはキ
ヤノンである。同社が展示していた MR ソリューションは 2 つ。一つは 3 次元バーコード
をいくつも張ったハコの上に機械(デモではコピー機)の情報を重ね、ふたを開いたりといっ
た動作も含めてゴーグルで表示を行うというもの。もう一つは 4 つのツノの付いたゴーグ
ルを複数のカメラで撮影し、そこで取得した位置情報を元に大型機械や建物の中に入って
移動できるような映像を表示するというもの。後者については物流現場での利用の可能性
があるかと質問をしてみたら、小さい会議室程度のスペースに 300 万円のカメラを 6 台設
置する必要があるとの説明で、近い将来の物流現場での利用の可能性は薄いと思われる。
また、日立産機システムは 11 月 25 日∼27 日に開催された「システムコントロールフェア
2009」において「知能型ロジスティクス支援ロボットシステム」(以下 Lapi と表記する)を
発表した。
Lapi は基本的には AGV であり、その特徴は自律移動が可能な点にある。通常の AGV は名
前の通り磁気テープなどの走行ガイドの設置が必要であり、一部の高級製品は超音波など
の高精度 RTLS を用いて走行ガイドが無いエリアを移動することが出来るが、Lapi はこれ
らの外部インフラを必要とせずに自らの位置を測定することが出来る。
Lapi の位置測定手段はレーザー距離センサーである。新しく現場で自動搬送ラインを立ち
上げる際、まず Lapi を地図作成モードで搬送予定経路を走行させて現場地図を作成し、以
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降はその地図を用いて自分の位置を知ることが出来る。
もちろん現場には作業員や他の Lapi、床置きの荷物などが存在するため、それらに邪魔さ
れてレーザー距離センサーの測定結果と現在位置が一致しない場合がある。この場合、Lapi
は推測航法データと測定データとを比較し、その誤差が一定範囲に収まる場合には移動を
続ける。誤差が許容値を超えた場合には一旦停止し、障害物の移動により位置測定が回復
したときに移動を再開する。
なお、この製品は現在日立グループの工場で運用試験を行っており、まだ外部に提供でき
る段階には無いとのこと。
空間中の位置の取得は RTLS の主要利用分野であるが、位置情報を画像情報から直接取得
できることにはさまざまなメリットがあり、光学情報の処理によって取得が可能なのであ
れば従来 RTLS が利用されていた分野を置き換える可能性がある。
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RFID 関連ニュース
プロダクト
[ハードウェア]
NXP 社は RFID Journal 誌の取材に応じて製品ロードマップの説明を行った。同社による
と、Gen2 チップの次世代製品を年内に出荷し、UHF と 13.56MHz の両周波数に対応した
チップを 2011 年初頭に投入、また NFC チップの Mifare については継続的な活動を実施し
ていくとのこと。
Sirit 社の Gen2 リーダーInfinity 510 の最新バージョンでは、静止しているタグと移動し
ているタグを見分ける機能がサポートされた。Stray Tag Elimination という名称であり、
ポータルリーダーとして利用した場合に「不要なタグが読めてしまう」という問題の解決
に有効に利用できる可能性が高い。アンテナからの生データを処理して精度や付加価値を
上げるというアプローチは最近の高機能 RFID リーダーの多くで採用されている。
Savi が 433MHz アクティブ RFID(ISO 18000-7)に新しいライセンス体系 UnwiredPlane
を導入する。UnwiredPlanet では今までは 100 万ドル以上取っていた初期費用を廃止し、
完全な従量制課金となる。これにより、ライセンス料金が最大 10 分の 1 まで下がることに
なる。
[ソフトウェア]
コネチカットのソフトウェア企業 Pramari 社はオープンソースの RFID ミドルウェア
Rifidi Edge を発表した。オープンソースの RFID ミドルウェアとしては fosstrak がデファ
クト的な存在であるが、Rifidi は独自エンジンを採用することでバーコードリーダーやカメ
ラなどの非 RFID デバイスもコントロール可能な点が特徴。現時点で医療機関やアパレル
ショップがトライアルを検討しているほか、共同で開発を行った多くの大学で利用が始ま
っている。Rifidi 自体は無料でダウンロードして利用が可能であるのに加え、Pramari 社は
有償のサポートサービスも行っており、その価格は専用のハードウェア込みで一年 5,000
ドル。
IBM が InfoSphere Traceability Server V2.5 にリターナブルアセット管理機能を標準搭載
した。大規模なリターナブルアセット管理パッケージとしては従来 Xterprise Clarity が既
に存在するが、IBM が続いたことでこの分野でのパッケージの存在感が増大した。
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ソリューション
[パッシブ]
ベンチャー企業 Linentracker 社はホテルのシーツやタオルの管理を RFID で行うソリュー
ションを提供している。現在同社はあるカリフォルニアのホテルでパイロットを実施して
おり、客室階 10 フロアの倉庫それぞれにリーダーを、シーツやタオル 2 万個に Gen2 タグ
を取り付けている。リーダーとタグは Alien の製品で、タグは最低 150 回のクリーニング
に耐える。このシステムの目的は、倉庫でのシーツ・タオルの在庫を可視化し、必要な分
だけ手配やクリーニングを行うことでコスト削減を行うことである。
METRO は自社の RFID 導入の現状を RFID Journal LIVE! Europe で報告した。同社はヨ
ーロッパで毎年 300 万個のパレットを RFID でトラッキングしており、RFID パレットで
は荷卸時間が 15 パーセント、検品時間が 50 パーセント削減されている。また同社ではス
ーパーマーケットのプロモーション展示の管理にも RFID を利用している。同社の次の
RFID プロジェクトは先日 EPCglobal で策定された EAS ガイドラインに準拠したシステム
を Checkpoint Systems 社と開発することであるとのこと。
[アクティブ・RTLS]
ミネアポリス/セントポール交通局ではバスの屋内駐車場内での車両位置管理に RTLS シス
テムを利用している。
同交通局では屋外でのバスの位置管理に GPS を利用しているが、
GPS
は屋内駐車場内では利用できず、別の位置測定手段を利用する必要があった。同社が導入
したのは Ubisense 社の UWB RTLS であり、平均 36,000 平方メートルの駐車場内に 60 台
のリーダを取り付け、1.5 メートルの測位精度を得ている。このシステムで困難だった点は、
タグを取り付けるバスの屋根と天井との間の距離が短く、かつ柱などの電波を邪魔する構
造物が多数存在した点である。
カナダの建設会社 North American Construction Group (NACG)では建設器材の位置管理
に RTLS システムを利用している。同社が管理する器材は広大な置き場に配置され、冬に
はしばしば雪に覆われる。従来は位置管理は目視で行われていたため冬季の作業は困難で
あった。同社では位置管理に Identec の 915MHz パッシブタグを導入した。在庫管理の担
当者は GPS 内蔵のハンディーターミナルを持って器材置き場に出かけ、RTLS 情報と合わ
せて器材の近くまで移動、器材に近づくとタグのランプを発光させて存在確認をおこなう
ことができる。
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Savi Network 社の SaviTrak システムをいくつかの企業が導入している。今回同社が導入
事例として公開したのはアメリカの食品輸入会社の Transmed Foods、メキシコの物流会社
Grupo Hemas、イギリスの飲料会社 Highland Spring。このうち Grupo Hemas 社はガー
ドマンをつけてアメリカに輸送している貨物に SaviTrak タグを適用する予定で、コスト削
減と確実なセキュリティ問題の発見を目標としている。同社のタグの当初導入数は数百個
である。SaviTrak システムの導入先としては、DHL グローバルフォワーディング、
COSCON ロジスティクスなどがすでに報道されている。
園芸用輸送部材のレンタル会社 Container Centralen 社はアメリカでも RFID を用いた園
芸用カートの管理を実施する。同社はヨーロッパでは Gen2 タグを利用した大規模な管理プ
ロジェクトを開始しているが、アメリカでは園芸農場の規模が大きく Gen2 タグでは読み取
り距離が不足するためアクティブタグを利用する。タグは RF Code 社の 433MHz アクティ
ブタグで、システムは Fluensee 社が導入。システム規模は全米 150 箇所の拠点で 25 万台
のカートを対象とするもので、2010 年 2 月に導入の完了を予定している。なお、同社のヨ
ーロッパプロジェクトは導入日が 2010 年の 2 月から 11 月に延期となりました。クリスマ
スのピークシーズンに導入作業が重なるのが理由だと同社は公表している。
規制・標準化
GS1 台湾は Gen2 パッシブタイプの e-Seal の標準策定を EPCglobal に求めると発表した。
これは台湾の高雄エリアで導入されている Yeon Technologies 社の Gen2 e-Seal の成功を踏
まえたもの。EPCglobal においては、ISO のリエゾンより同種のパッシブシールの得失は
ISO 内で議論した経緯があるということで、ISO から議論の資料が参考のために提示され
る予定。
ロードアイランド州で州上院が提出した RFID の利用規制法案に対し知事が拒否権を発動
した。この法案は、学校の生徒の現在位置把握のために RFID を利用すること、および高
速料金徴収システム E-Zpass の読み取りデータを料金精算以外に利用することを禁ずるも
の。ロードアイランドでは過去 2 回同様の提案が提出されて拒否権に遭っており、今回が 3
度目の拒否権発動になる。
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