ポリカーボネートフィルムの複屈折の温度・荷重特性

2011.08
王子計測機器株式会社
ポリカーボネートフィルムの複屈折の温度・荷重特性
● はじめに
高分子材料のガラス転移温度Tgは、非結晶性樹脂が低温で固いガラス状の状態から、高
温で柔らかいゴム状の弾性を示す状態に移る温度で、延伸加工をしてフィルムにする場合、
あるいは成形品の残留ひずみを除去するためにアニール処理をする場合等の温度は、Tgを
基準に±数10℃範囲の最適な温度に制御する必要があります。また、特に光学フィルムは
位相差や配向軸を高度に制御されており、後工程でフィルムに熱や応力が加わることがあれ
ば、加工前の光学特性を変化させてしまい不良の原因となることがしばしばあります。
ここでは、ポリカーボネート(PC)フィルムの複屈折の温度と荷重に対する特性を調べ
た結果を報告いたします。
● 使用した装置と試料
装置:
位相差測定装置
KOBRA−WR
使用ソフト:位相差測定
試料:
REソフト
PCフィルム(面内位相差約7nm)
寸法
15mm×60mm×t70μm
オーブン:滅菌乾燥機 SPO−015(岩城硝子㈱製)
専用治具:図1
図1
専用治具
● 実験方法
実験は以下の手順で行いました。
①A4サイズのフィルムの遅相軸方向を調べた後、15mm×60mmの長手方向
が遅相軸になるように、必要な枚数の試料を切出す。
1
②KOBRA−WRを用いて3次元屈折率測定を行い、各試料の加熱前の面内複屈
折ΔNxy、面配向係数ΔPおよび光軸角Ωを求める。
③試料を図1の専用治具にセットし、図2のようにオーブンに入れて荷重と温度の
条件を変えた試料を作製する。
④③の各試料を②と同様の測定を行い、加熱後の各数値を求める。
図2
オーブンにセットした治具
● 測定結果
1)加熱時間の影響
荷重を194g一定にして、オーブン内が設定温度120℃に達した後の経過時間を変え
たときの試料について、加熱前後の各数値の変化量をグラフにすると図3のようになります。
50
40
30
20
10
0
0
10
20
30
-10
40
50
ΔNxy (×1/100000)
ΔP (×1/100000)
-20
時間 (分)
図3
Ω
加熱時間の影響(荷重194g、温度120℃)
2
60
2)荷重の影響
荷重を変えて、オーブン内の温度が120℃に達した後30分経過したときの試料につい
て、加熱前後の各数値の変化量をグラフにすると図4のようになります。
90
ΔNxy (×1/100000)
80
ΔP (×1/100000)
70
Ω
60
50
40
30
20
10
0
-10
0
50
100
150
200
250
300
350
400
-20
荷重 (g)
図4
荷重の影響(温度120℃、加熱時間30分)
3)温度の影響
荷重を194g一定にし、加熱時間30分でオーブンの設定温度を変えたときの試料につ
いて、加熱前後の各数値の変化量をグラフにすると図5のようになります。
70
ΔNxy (×1/100000)
ΔP (×1/100000)
60
Ω
50
40
30
20
10
0
90
100
110
120
130
140
150
温度 (℃)
図5
温度の影響(荷重194g、加熱時間30分)
● おわりに
以上はPCフィルムを例にして複屈折の温度・荷重特性を調べた結果ですが、Tg近くの
温度での状態変化や応力緩和も関係しており、現象は複雑であると言えます。異なる材料で
も同様のデータをよることにより、新たな知見が得られると考えます。
以上
3