日本からのツル情報の発信

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特定非営利活動法人
タンチョウ保護研究グループ会誌
2014 年 11 月
第 23 号
日本からのツル情報の発信
理事長 百瀬邦和
巻頭言 ・・・1
向海国家級自然保護区で開催された
国際ネイチャースクールで折り鶴教
室をしました ・・・2
中国・スンナン平原でのツル類と希
少水鳥類の調査に参加しました
・・・3
IUCN/WI ツル専門家部会の第一回
運営委員会が開催されました
・・・4
第 8 回ヨーロッパ・ツル会議に参加
・・・4
3 羽のヒナを連れたタンチョウ
・・・6
鳥学会でのポスター発表
・・・6
活動記録 ・・・8
11 月に参加したヨーロッパでの二つの会議では、ツルに関する
日本からの情報が十分に伝えられていないという思いを強くしまし
た。ヨーロッパではツルと農業問題が問題になってきていますし、
電線との衝突事故も南アフリカやスペインなどを中心に問題になっ
ていて国際的なワーキンググループが作られています。ツルの電線
事故といえば何といっても日本が先進地?のはずです。タンチョウ
ではすでに 1970 年代には事故が多発してマーカーを付ける作業が
行われ一定の成果を得ていますし、食害等農業とのトラブルはツル
関係の集まりでは毎回議題に上っています。
ツル関係者といっても世界には大勢(IUCN/WI ツル専門家部会
メンバーだけでも 300 名以上)いて頻繁に顔を合わせることは難
しいのですから、情報を集めるのはどうしても文献調査やインター
ネットで検索するということになります。世界で情報を集めるとな
ると、言葉はどうしても共通言語の英語ということになってしまい
ますが、中国やロシアでは中国鶴類通信(CHINA CRANE NEWS)
や NEWSLETTER OF CRANE WORKING GROUP OF EURASIA(ロシ
ア)を発行して発信に努めています。しかし、日本からの発信はご
く僅かなのが現状です。精度の高い総数調査や 25 年前から続けて
いるタンチョウ標識調査、特に追跡観察の記録は日本が世界に誇る
ものです。ホームページを外国の人にも見て頂けるようにしたり、
英語での報告を心がけるなど、タンチョウ保護研究グループとして
私たちの情報をもっと海外へ発信したいものです。
向海国家級自然保護区で開催された国際ネイチャース
クールで折り鶴教室をしました 百瀬ゆりあ
シアンハイ
中国吉林省の向 海で 10 月 13 日と 14 日、今年
工繁殖はしていないそうです。毎年春には 4 〜 5
最後の国際ネイチャースクールが向海国家級自然保
番いを放鳥しており今のところ 4 番いが生息して
護区と向海市の教育委員会のご協力のもと開催さ
いますが繁殖は確認されていないと伺いました。
れました。向海学校の生徒が初日は 90 名、二日目
は 70 名ほど参加しました。講師陣は東北林業大学
の学生を中心にロシア・日本からの参加をあわせる
と 10 数名になりました。両日とも 3 班にわかれて
1 〜 3 時限目までに湿原、トリ、植物のお勉強を一
時間ずつします。そして 4 時限目に美術の時間が
ありそこで粘土で落ち葉の型を取ったり、絵を描い
たりしてその日に学んだり感じたことを表すのです
が、そこで折り鶴の教室をすることになりました。
中国にも勿論おりがみがあり折り鶴もありますが日
本のものとはちょっと違いますので皆真剣に取組ん
折り鶴教室(撮影:ジム・ハリス氏)
でくれました。
この自然保護区では過去に水の管理が上手くいっ
ていなかったことが災いして野生のタンチョウが最
後にここで繁殖したのは 5 年前になります。しか
し今では国際ツル財団のジム・ハリス氏が中心とな
りすすめている水管理プロジェクトが軌道に乗り始
め湿原の状態が改善されてきていますので、野生の
タンチョウが再び繁殖するのもそう遠くない先であ
ろうといわれています。ここのヨシは中国としては
珍しく刈り取りがなされません。滞在中は晴天に恵
まれたせいもあり、一面の黄金色に光り輝くヨシ原
は見事なものでした。因に、この保護区では、飼育
北京から参加した少女と付き添いの先生
下に 150 羽ほどタンチョウが生息しており、フラ
イトショーで活躍しています。今年のシーズンには
18 つがいが繁殖し、31 羽のヒナが孵りました。人
折り鶴教室の行われた会場
Tancho (23)
2
タンチョウのフライト・ショー
中国・スンナン平原でのツル類と希少水鳥類の調査に参
加しました 百瀬邦和
10 月 3 日から 6 日にかけて黒龍江省西部から吉
てツルの居た湿原が開発されて水田に造成中だった
林省、内モンゴル自治区にまたがるスンナン平原で
り、密猟の現場に遭遇したり、またツルの群れが飛
行われた秋季調査に参加してきました。同調査は気
び回っている背後の台地上には風力発電用の風車が
候変動によって水環境の変動が激しく、希少な水鳥
建設中だったりと、ツル類の生息環境をとりまく厳
の調査が十分行われていない同地域の実情把握を目
しい現実を実感した調査でもありました。
的に、中国・東北林業大学のス リーイン博士が毎
年行っているものです。
調査は黒龍江省のチチハル駅で現地ドライバーに
よるレンタカーをチャーターし、調査対象の広大な
湿原に隣接した村や農道を回りながら、直接観察や
村人からの聞き取りを行うものでした。運良く秋の
乾燥シーズンにあたっていたため未舗装の農道でも
ぬかるみにはまることは無かったのですが、道は農
業用トラックやトラクターの轍によって凸凹になっ
ナベヅルの群れと風車
ているため、何度も車を下りて進路を誘導したり、 今回は秋のシーズンに当たっていたため、湿原に
場合によっては何キロも回り道をしたり、車を下り
接する一面のトウモロコシ畑では村をあげての収穫
て歩いて湿原に近づいたりを繰り返しながらの調査
作業中でした。村の中では綺麗な黄色の山になった
でした。
トウモロコシが各農家の前庭に積まれていて、豊か
な秋の風景です。一方、こちらの畑は北海道よりも
も
はるかに広いのですが、トウモロコシは房を捥いで
総て村に運ばれてしまうため、北海道で見られるよ
うに粉砕された房からのこぼれた粒をねらってツル
やガンなどの鳥たちが収穫の終わった畑に群れてい
る様子は見られません。
リーイン博士は春から秋にかけて毎年同様の調
査を継続していて、10 月中にもう一度現場に入る
水田に造成中の記録写真を撮るリーイン博士
今回の調査ではタンチョウ2グループ9羽、ソデ
予定だそうです。タンチョウ保護研究グループは
2009 年よりイオン環境財団の助成を受けてこの調
査に協力しています。
グロヅル 8 グループ 121 羽、ナベヅル2グループ
136 羽、クロヅル 3 グループ 30 羽に加えて、4種
類のガン類を計 1,100 羽程、カモ類はマガモを中
心に 2,000 羽程が観察できました。予想に反して
カモ類が少ない印象です。渡りのシーズン中なので
南下してしまっているツルもいるのでしょうが、タ
ンチョウは見られただけでも幸運だったというとこ
ろでしょうか。
今回調査した地域の多くは自然保護区に指定され
ていないため、一部では大規模な干拓によってかつ
農家の庭先にはトウモロコシの山
Tancho (23)
3
IUCN/WI ツル専門家部会の第一回運営委員会が開催され
ました 百瀬ゆりあ
国際自然保護連合・ウェットランドインターナ
の「戦略」はここ 1 〜 2 年での完成をめざしており、
ショナル(IUCN/WI)のツル専門家部会(CSG)の
もうすぐ皆さんにお目見えする予定です。
第一回運営委員会(SC)がドイツのヴァルスロー
デにあるヴェルト・フォーゲルパークで 11 月 6 日
から 4 泊 3 日の日程で開催され、理事長百瀬と百
瀬ゆりあとが招聘されました。運営委員会は CSG
のメンバー 11 名により構成されており委員の任期
は 4 年間です。今回はそのうち 10 名と関係者 8 名
との計 18 名が 13 カ国からあつまりました。
議題は大きく分けて 2 つあり、ひとつは IUCN の
もとで押し進められている「ツル保護戦略」の見直
しです。その一環として、ツル 15 種の種としての
評価がすすめられていますが、今回はタンチョウ、
アネハヅル、そしてアメリカシロヅルが例として取
お食事中も勿論議論のつづき!
り上げられ、理事長百瀬がタンチョウについて、エ
レナ・イリヤシェンコがアネハヅル、ジョージ・アー
チボルドがアメリカシロヅルについて発表しまし
た。もうひとつの主な議題は資金が乏しい中でいか
に CSG の活動を SC として活発化させて行くか、と
いうものでした。
連日連夜、参加者全員が熱い思いを言葉にのせて
議論を重ねました。折角、世界中から 500 種もの
トリを集めて飼育しているフォーゲルパークが会場
ですのに会議室を出て施設を見学できたのは、残念
なことに、お昼休みのほんの一時でした。なお、こ
会議で発表する百瀬理事長
第 8 回ヨーロッパ・ツル会議に参加 百瀬邦和
今回の会議はスペインのガリョカンタ
るのは緩やかな丘の斜面に囲まれた盆地の底にある
(Gallocanta) で 11 月 10 日から5日間の日程で開か
ような湿地で、周辺には樹木がほとんど無いため何
れました。この会議は4年毎に各国持ち回りで開催
処からでもよく見ることができます。この村は斜面
されているヨーロッパ・ツル・ワーキンググループ
の中腹にあり、村はずれにある近代的なビジターセ
(ECWG)の集まりで、私は 2006 年のハンガリー、 ンターが会場でした。
2011 年のドイツに続いて 3 回目の出席です。スペ
会議にはヨーロッパ各国とアメリカから 90 名程
インはクロヅルの越冬地として知られており、ガ
が集まりました。発表のテーマの多くは渡りに関す
リョカンタは同国の主要な越冬地の一つです。資料
るもので、やはり渡り鳥であることがヨーロッパ人
によれば最大6万羽が記録されているということで
がツルに魅力を感じる要因の一つであることを感じ
すが、今回はまだ時期が早いためか見られたのはお
ます。ヨーロッパにはクロヅルの渡るコースが三つ
およそ1万羽でした。クロヅルがねぐらをとってい
あり、主にスカンジナビアと北ドイツからアルプス
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よるワーキング
グループを作る
ことになりまし
た。 メ ン バ ー も
その場でほぼ決
めてしまう素早
さです。「ツルは
何処まで増やせ
ば 良 い の だ??」
という声がヨー
ロッパでも聞か
れるということ
で す が、 一 般 の
人たちにもツル
はコウノトリと
同じくらい好か
れ て い て、 ま た
ガリョカンタ湖のクロヅル
自然環境を守っ
の西側を通ってスペインに至るもの、バルト海東岸
ていくための目玉であるという役割も強いので、数
地域から東ヨーロッパ・トルコ半島を通って地中海
を問題にするのは止めようという言葉で臨時集会は
の東側を回りアフリカのエチオピアに至るもの、3
締められました。
つ目はその中間で東ヨーロッパからアルプスの東側
ECWG のメンバーは自ら「クレイジー」と言う
を通ってイタリア半島を横断しそのまま地中海を
くらいツル好きの人たちが集まっていて、4年に一
渡って北アフリカに至るということが示されまし
度の同好者の集まりそのものです。会場の周辺は百
た。西ヨーロッパの農業形態の変化により、アルプ
軒以下の小さな村が点在しているのですが、どこも
スの西側を通るルートで個体数の増加が続いている
この国がたどってきた古い歴史を背負っていて、宗
ことも報告されました。面白かったのは、一旦クロ
教戦争や内戦の際に造られたり破壊されたりした城
ヅルがいなくなってしまったイギリスで再導入プロ
や砦の跡が街の一部になったり、背後の丘の頂きに
ジェクトが順調に進んでいて、渡りをしない群れが
立っています。朝と夕方にはその上空をツルの群れ
増えているとのことでした。すぐ隣のフランスやド
が棹になって鳴きながら飛ぶのが普通の風景で、そ
イツで個体数が増えているのだから、そこまでしな
れを楽しんでいる参加者の様子と共にとても印象的
くてもじきに渡ってくるようになると思って別の国
な景色でした。
の人に感想を聞いてみたところ、「連中(イギリス
人)もツルが欲しいのさ」という答えでした。一方
アネハヅルに関する発表では、アフリカ北西端にあ
るモロッコと、トルコに生息していた渡りをしない
独立した個体群が居なくなってしまったということ
で、ちょっとショックでした。
会議中には発表内容とそれについての質問を受け
て臨時集会が企画されました。朝の飛び立ちを見
る朝食前のミニツアーをキャンセルして集まった
のは 20 名程、ツルと農業問題について議論が始ま
り、最後には ECWG の中に 10 名程のメンバーに
乾燥した丘をバックに飛ぶクロヅル
Tancho (23)
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3 羽のヒナを連れたタンチョウ 百瀬邦和
中国スンナン平原で 10 月の調査の際、3羽のヒ
に子別れをしてしまうか、あるいは親代わりの面倒
ナを連れたタンチョウの家族に出会いました。3日
見の良いつがいや家族と一緒になることも十分考え
の夕方、チチハル市の 40km 程西でトウモロコシ
られます。北海道のタンチョウの例では、厚岸町で
畑脇の草地の中で見た時には成鳥 1 羽とヒナ3羽
片親を無くしたまだ飛べないヒナが、隣にいたヒナ
が並んでいて、100 m程離れた所に成鳥1羽が立っ
のいないつがいと一緒に行動し始めたという観察が
ていました。翌朝再訪した時には同じ場所でヒナ3
ありました。この時には残念ながら問題のヒナが程
羽と両端に成鳥が並んでいたのです。タンチョウが
なく列車事故で死んでしまったためにその後の経過
3羽以上のヒナを連れていたのは見たことがありま
が確認できませんでした。また、標識をつけたヒナ
せん! 一緒にいた国際ツル財団のメンバーで東北
が 12 月中に親が残っている繁殖地を離れて給餌場
林業大学の教授のス・リーイン博士も初めての記録
の集団の中に入っていた例もあります。この時は両
だと興奮気味です。タンチョウに限らずほとんどの
親ともに元気でしたし、例年このつがいは春までヒ
ツル類は卵を一度に2個までしか生みませんから、 ナと一緒でしたから、この年だけ特に早い時期の子
一つのつがいが3羽のヒナを連れていることは無い
別れだったのでしょう。どちらに何があったのか判
はずなのです。
りませんが、ヒナがまだ早い時期に親から離れる
今回の例については、メス親が例外的に3つの卵
ケースはあるのでしょう。
を産みそれが全て無事に育ったか、あるいは別のつ
いずれにしても、今回は渡り前の秋の時期にタン
がいのヒナが何かの理由で親から離れてヒナのいる
チョウのヒナが親から離れただけでなく別の家族に
家族に合流したか、のどちらかでしょう。私はおそ
合流したと思われるケースを目撃した珍しい観察で
らく後者の方だと考えています。実は1万羽のツル
した。
が集まることで知られている鹿児島県の出水平野で
は、3羽か4羽のヒナを連れたナベヅルの家族が観
察されています。こちらのケースでも大きな群れの
中で渡りの途中か、あるいは越冬地の出水について
から親と別れてしまったヒナが別の家族にくっつい
ているのだろうと地元で観察している人たちは想像
しているようです。出水では春になる前からヒナだ
けで行動しているのを観察することも珍しくないの
です。何しろ一万羽を超えるツルが狭い場所にひし
めいているのですから、親からはぐれるヒナがいて
もおかしくないでしょうし、それがきっかけで早め
3 羽のヒナを連れたタンチョウ家族
鳥学会でのポスター発表 正富欣之
8 月に鳥類に関する学会が 2 つ開催され、その
Congress) です。発表タイトルは、”The breeding
どちらにもポスター発表という形で参加してきま
status of Grus japonensis in Kushiro Marsh, Japan,
した。ひとつは ”IOC2014” と呼ばれる国際学会で
and the southeast marsh around Khanka Lake,
した。”IOC” といえば、真っ先に思い浮かぶのは、 Russia” でした。簡単に内容を説明しますと、北海
国 際 オ リ ン ピ ッ ク 委 員 会 (International Olympic
道の釧路湿原とロシアのハンカ湖周辺の湿地におけ
Committee) で す。 よ く 誤 解 さ れ ま す が、 こ ち ら
るタンチョウの繁殖状況を比較し、釧路湿原ではロ
は 国 際 鳥 類 学 会 議 (International Ornithological
シアの約 3 倍の高密度で繁殖していることを示し
Tancho (23)
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たものです。これまでもロシアの調査報告でお伝え
“Wintering ecology of the Red-crowned Crane (Grus
しましたが、北海道では狭い範囲に多くのタンチョ
japonensis) in eastern Hokkaido, Japan” D. Hu,
ウが生息していることがはっきりとわかります。
S. Wang and K. Momose
もう一つの学会は、日本鳥学会です。例年は 9 月
に開催されるのですが、今年は国際鳥類学会議に合
“The stereotypy and variability of repertoires in
わせて 8 月に行われました。こちらでは、「近年の
two groups of nonpasserine birds in evolutionary
北海道におけるタンチョウの営巣環境は変化した
perspective” A.S. Opaev
か?」というタイトルで発表を行いました。北海
道、特に道東地域ですが、個体数が増加したこと、 “Development of cues to individuality and sex in
また人馴れしたことにより、タンチョウの繁殖地が
calls of three crane species (Gruidae, Gruiformes)”
人の生活圏と近くなってきていると言われていま
M. V. Goncharova, A.V. Klenova and E.V. Bragina
す。釧路の周辺を車で走っていると、道路脇や農家
周辺で見かけることが多くなってきているように感
“Microsatellite analysis of Red-crowned Cranes in
じます。そこで、データに基づき定量的に表わすこ
Oka Crane Breeding Center and sex ratio of theirs
とを考えました。地理情報システム (GIS)という、 nestlings.” Nesterenko Olga, Kashentseva Tatyana
コンピュータ上で様々な位置情報を重ね、それらの
情報を用いて分析を行うシステムを利用しました。 “Detection of vegetation types at nest sites of Grus
具体的には、繁殖状況調査で得られた巣の位置情
japonensis in eastern Hokkaido, Japan, by using
報 (1997、2007 と 2012 年 ) と、道路や建築物の
vegetation maps” H. Masatomi and Y. Masatomi
位置情報を用いて、巣との距離を計算しました。巣
から道路までの平均距離は、1997 年には 547m、 “Survival of the White-naped Crane requires larger
2007 年には 462m、そして 2012 年には 450m と
international efforts in East Asia” Nyambayar
徐々に近づいていることが判りました。また、建築
Batbayar, Claire Mirande, George Archibald,
物までの平均距離も、1997 年には 1,244m、2007
Tseveenmyadag Natsagdorj, Iderbat Damba, Robert
年には 1,028m、そして 2012 年には 994m と、こ
Skorkowsky, and Liz Schnackenberg, Jiao Shengwu,
ちらも距離が短くなっていました。したがって、個
Li Fengshan
体数増加にともない営巣地域が拡大しているもの
の、近年の営巣環境は過去のそれと異なり、多くの
“Helminths and arthropod parasites of Red-
番いが人の活動域に近い場所で繁殖するようになっ
Crowned Crane (Grus japonensis) in Hokkaido,
ていることが明らかとなりました。
Japan” T. Yoshino, H. Iima, F. Matsumoto, R.
今後は、このような研究結果を参考にし、タンチョ
Shimura and M. Asakawa
ウの保全に取り組む必要があると考えます。
最後に、IOC2014 と日本鳥学会でタンチョウなど
“Influence of thermodynamic costs on daily
のツル類に関する発表がありましたので、タイトル
movement decisions and habitat use of the Brolga
と著者を列記しておきます。興味のある方は、イン
(Grus rubicunda)” I. Veltheim, M. Kearney, M.
ターネット等で検索してみて下さい。
McCarthy, S. Cook
IOC2014
“Breeding ecology of Siberian and Sandhill Cranes
“Behavioral analysis of dance in the red-crowned
in Yakutia subarctic tundra” M.V. Vladimirtseva,
crane: a test of the pair bond hypothesis” I.P. Bysykatova and N.I.Germogenov
Kohei Takeda, Hisashi Ohtsuki, Mariko Hasegawa,
Nobuyuki Kutsukake
“Changes in the migratory pattern of cranes to
Izumi” Y. Haraguchi, F. Mizoguchi, K. Matsushima,
Tancho (23)
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9 月 17 日 韓国 NGO の GREF と EERF 来釧
9 月 19 日 GREF と釧路国際ウェットランドセン
ター共催のワークショップに参加(百
日本鳥学会
瀬ゆりあ)
「北海道のタンチョウ繁殖分布域はどのように拡大
9 月 20 日 理事会(於:タンチョウ保護研究グルー
してきたか」 正富宏之、正富欣之
プ事務所)
9 月 30 日 日本生態系協会事務局長を現地案内
「江戸時代におけるツル類の分布と季節移動-東北
(於:十勝)
地方における事例-」 久井貴世
10 月 3 日 運営会議 (7 名出席 )
10 月 3 日~ 6 日 中国・スンナン平原でのツル類
ほかの調査に参加(百瀬邦和)
「出水地方における鳥インフルエンザ発生時のナベ
ヅル Grus monacha の行動 加藤ゆき、重永明生、 10 月 9 日~ 11 日 国際タンチョウネットワーク
のカウンシル会議に出席(於:中国・
溝口文男
盤錦、百瀬ゆりあ・百瀬邦和)
10 月 12 日~ 18 日 国際ネイチャースクールに参
「国内におけるナベヅル及びマナヅルの飛来状況」
加(於:中国・向海、百瀬ゆりあ)
伊藤加奈、葉山政治、古南幸弘
10 月 20 日 TKG News 発送
10 月 22 日~ 23 日 北海道猛禽類研究会で講演(於:
札幌、百瀬邦和)
〈活動記録〉(2014 年 8 月〜 2014 年 11 月)
10 月 25 日 濤沸湖水鳥・湿地センターの環境学
8 月 1 日 運営会議 (9 名出席 )
習講演会「とうふつ自然教室」で講演
8 月 8 日 推進費検討課題会議に出席(於:札幌、
(於:網走、百瀬邦和)
正富欣之)
10 月 27 日 俵橋湿原でニオ作り ( 釧路から 6 名、
8 月 17 日~ 26 日 国際鳥学会と日本鳥学会で発
中標津より 3 名 )
表(於:東京、正富欣之)
10 月 31 日 運営会議 (8 名出席 )
8 月 25 日 舞鶴遊水池にタンチョウを呼び戻す会
11 月 7 日~ 9 日 IUCN/WI ツル専門家部会の運
の勉強会に出席(於:長沼町、百瀬邦和)
営委員会に出席・発表(於:ドイツ、
8 月 27 日 モスクワ動物園の Olga Nesterenko 氏
百瀬ゆりあ・百瀬邦和)
来釧
11 月 10 日~ 13 日 第8回ヨーロッパ・ツル会議
9 月 4 日 Tancho22 号発送
で発表(於:スペイン、百瀬邦和)
9 月 5 日 運営会議 (7 名出席 )
11 月 25 日 推進費アドバイザリーボード会議に
9 月 6 日~ 7 日 北海道バンダー連絡会総会に出
出席(於:札幌、正富欣之・百瀬邦和)
席(於:紋別市、百瀬邦和)
11 月 29 日 釧路市民学園講座で講演(百瀬邦和)
and K. Lee
<会員(11 月 18 日現在)>
運営会員:27 名、個人サポート会員:135 名、団体会員:13 団体
Red-crowned Crane Conservancy (RCC) newsletter
TANCHO
Twenty-third issue November 2014
特定非営利活動法人
<表紙写真>
タンチョウ保護研究グループ
「刈り取りの終わったトウモロコシ畑に
現れた足環を付けたヒナの家族」
〒 085-0036
北海道釧路市若竹町 9 番 21 号
Tel/Fax 0154-22-1993
e-mail: [email protected]
URL: http://www6.marimo.or.jp/tancho1213
(2014 年 10 月 西岡秀観 氏 撮影)
Tancho (23)
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