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18
Vol.
2014.11
OPINION
PROLOGUE
原子力安全規制を巡る疑心暗鬼
澤昭裕
イベント開催報告
瀬口清之研究主幹 講演会
「グローバル経済をリードする東アジア
そのリスクと日本の責任」
OPINION
中国人訪日客激増で露呈する日本の外国人
旅行者受け入れ能力不足
~今年 8 月までの中国人訪日客の
年初来累計は前年比 84%増~
瀬口清之
シェールガスがもたらす交通運輸や
海事・海洋産業への変革
湯原哲夫
農協はなぜ農業を衰退させたのか
~自著『農協解体』を語る~
山下一仁
ナショナリズムと愛国心
~「東京 = ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第 66 号より~
栗原潤
米・中・イスラム国関係
美根慶樹
肌で感じた " 人質体験 "
宮家邦彦
オバマ政権の「テロとの戦い」始まる
~問われる日本の「地球儀俯瞰外交」の真価~
辰巳由紀
Contents
原子力安全規制を巡る疑心暗鬼…………………… 3
澤昭裕
中国人訪日客激増で露呈する日本の外国人旅行者受け入れ能力不足
~今年 8 月までの中国人訪日客の年初来累計は前年比 84%増~
瀬口清之
……………………………………………………… 4
シェールガスがもたらす交通運輸や
海事・海洋産業への変革…………………………… 7
湯原哲夫
農協はなぜ農業を衰退させたのか… ……………… 10
~自著『農協解体』を語る~
山下一仁
ナショナリズムと愛国心… ………………………… 12
~「東京=ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第 66 号より~
栗原潤
米・中・イスラム国関係… ………………………… 14
美根慶樹
肌で感じた "人質体験 "… ………………………… 16
宮家邦彦
オバマ政権の「テロとの戦い」始まる……………… 18
~問われる日本の「地球儀俯瞰外交」の真価~
辰巳由紀
イベント開催報告
瀬口清之研究主幹 講演会
「グローバル経済をリードする東アジア そのリスクと日本の責任」
……………………………………………………… 21
2
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
原子力安全規制を巡る疑心暗鬼
リサーチ・オーガナイザー ● 澤 昭裕
東京電力福島第一原子力発電
続き上の慣行や前例が一切参考に
技術、原子力発電所運営に係る事
審査プロセスを経なければならな
所の事故によって、原子力利用
業者の組織ガバナンス、政府の
原子力政策等原子力全般にわた
る不信感が急速に増大するなか、
原子力に対する信頼を再構築す
るための試みが徐々に行われ始
めている。なかでも、エネルギー
政策上原子力の推進を任務とす
る組織と、原子力利用の安全規
ならず、全く新たな許認可申請・
くなったため、いわゆる「予見可
能性」が喪失している。そのうえ、
原子力発電所が停止していること
による化石燃料の購入増大等の要
因によって財務状態が悪化してい
ることから、再稼働に向けての「焦
り」が事業者の心理を覆っている。
制を行う組織を分離し、安全規
こうした事業者—規制機関の関
いいわゆる三条委員会とする形
これが構造化してしまって長期間
制を担う組織として独立性の高
で原子力規制委員会(以下「規
係性は、一時的であればともかく、
継続するようなことでもあれば、
制委員会」
)が設置された。一方で事業者には、福
すべての関係者間で不信感や猜疑心だけが目立つよ
事故被害の拡大回避への対応や事故収束に向けた取
目的自体の達成が危ぶまれる事態に陥ってしまうこ
島第一原発の事故の原因となった要因、東京電力の
組みをまさに「我が事」としてとらえ、真剣に自ら
の組織文化や組織ガバナンスの改善に取り組むこと
うになり、「真の安全性向上」という関係者全員の
とが懸念される。
が期待されている。
一般論として、原子力の安全規制は他の技術の安
こうした政府、事業者の取り組みは、事業者(ラ
のには潜在的危険性が存在することを所与のことと
イセンシー)と規制機関(ライセンサー)の間の互
いに対する敬意(respect)と信頼(trust)に基づ
く健全かつ建設的な関係性が築かれて初めて実効的
なものとなる。規制機関とすれば、自らの規制対象
である原子力利用技術・設備・施設・事業について
の信頼を再構築していくためには、当然ライセン
シーである事業者に対して厳しい姿勢を取ること
が、第三者による評価を高めることになると考えて
も自然だ。
一方事業者は、こうした行政機関の態度の変化に
戸惑っている様子も見える。規制委員会設置以前の
規制活動における事業者と規制機関側との間での手
全規制分野と同じく、すべからく「技術」というも
して、その潜在的危険が顕在化する確率を最小化し、
仮に顕在化した場合でもそれによる被害を最小限に
止めるための措置を事前に要求するというのが安全
規制の本質的な考え方としてある。すなわち「安全」
は相対的概念であり、絶対的なものではない。福島
第一原発事故の前までもこうした考え方が安全規制
の本質であったことには変わりない。規制委員会と
事業者はこうした認識を持ったうえで、安全に稼働
するという両者に共通の目的を達成するために、こ
れまで途絶えがちだったコミュニケーションを正常
な状態に戻して、審査プロセスを効率的・効果的に
すすめることが必要である。
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
3
中国人訪日客激増で露呈する日本の外国人旅行者受け入れ能力不足
~今年 8 月までの中国人訪日客の年初来累計は前年比 84%増~
JBpress 2014 年 9 月 18 日 掲載 ● 瀬口
清之
昨秋以降、中国人訪日客の激増が続いている。8
る可能性は高くないと見るべきであろう。
降 12 カ月連続で各月の過去最高を更新中である。
これに対して、中国は少なくとも 2020 年頃まで
推計値または暫定値。
数年間は所得水準の急速な上昇が持続すると見込ま
月は 25.4 万人 * と前年比 56%増加し、昨年 9 月以
* 本文中の訪日外国客数に関するデータはすべて日本政府観光局発表の
■中国人訪日客は前年比倍増ペースで激増中
昨年日本を訪問した中国人旅行者は年間合計で
は経済の高度成長が続くと見られることから、今後
れる。しかも、日本への観光旅行を楽しむことがで
きるようになる所得水準の階層が急増する。
131 万人だった。ところが、今年は年初から 8 月ま
加えて現時点では中国人旅行者に対して日本滞在
でに昨年の 1 年分を上回った。このままのペースで
ると、増勢に一段と拍車がかかる可能性が高い。ち
での累計で 154 万人(前年比 84%増)に達し、す
ビザが免除されていないため、今後ビザが免除され
増加すれば通年で 240 万人に達する勢いである。
なみに昨年 7 月以降、日本滞在ビザが免除された
今年の 1 ~ 8 月累計の全世界からの訪日外国客
の訪日客数がいずれも 50%を上回る高い伸びを示
タイとマレーシアについては、本年 1 ~ 8 月累計
数は 864 万人、前年に比べ 26%増加した。その増
している。
が 25%を占めており、とくに中国人訪日客増加の
以上の点を考慮すれば、中国人訪日客急増は一過
加への寄与率を国別にみると、中国が 40%、台湾
もたらすインパクトの大きさは群を抜いている。
昨年の訪日外国客数は年間合計 1,036 万人と初め
性のものではなく、今後中長期的に大幅な増加が続
く可能性が十分あると見るべきであろう。
て 1,000 万人を上回った。国別順位では、1 位が韓
日本政府は 2020 年に訪日外国人旅行者数 2,000
で 131 万人だった。これら上位 3 国の合計は全訪
ためには、現在の中国人訪日客急増の勢いを持続さ
国の 246 万人、2 位が台湾の 221 万人、3 位が中国
万人の達成を目標としている。その目標を達成する
日外国客数の約 6 割を占めている。
せ、日本の観光関連ビジネスの急速な発展につなげ
今年は 8 月までの年初来累計では韓国が微減、台
とが最重要課題である。
台湾が 287 万人、韓国が 245 万人、中国が 242 万
■日本の訪日外国客受け入れ能力不足が露呈
首位の座を占めてきた韓国が 2 位に転落しそうであ
2 年前の 2012 年 9 月、尖閣諸島の領有権問題を
湾が 3 割増である。この伸び率が続くと、通年では
人となり、1988 年以降昨年までの 26 年間、ずっと
ていけるよう的確な政策をタイムリーに実施するこ
る。
巡って日中関係は最悪の状況に陥り、以後昨年の 6
先行きを展望すると、韓国と台湾はすでに国民の
が昨年の 7 月以降徐々に回復し始め、現在に至る
から所得増大の速度は緩やかであり、日本滞在ビザ
る。
ら日本への観光客が、中長期的に大幅な増加を続け
く可能性が高い。これは日本が以前からずっと追い
月まで中国人の日本旅行はずっと低調だった。それ
平均所得水準が高く、安定成長期に入っていること
中国人訪日客の急増は昨秋から始まったばかりであ
も免除されている。このため、今後、両国・地域か
今後は上述のとおり、中長期的に大幅な伸びが続
4
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
求め続けてきた念願のビジネスチャンスの到来であ
る。
しかし、そのビジネスチャンスにいま、黄信号が
灯っている。訪日外国客が予想を上回るスピードで
急増しているため、日本側の受け入れ能力が追い付
ただし、中国および台湾からの旅行客の増加が今
年の訪日外国客増加幅の 3 分の 2 を占めているこ
と、中長期的には中国人旅行者の伸びが大きいこと
などを考慮すれば、中国語圏の旅行客急増への対応
が求められていると言える。
かないという問題が生じているのである。
今のところ、上記の 3 つの問題による悪影響の
問題は 3 分野にわたっている。第 1 に、観光バ
ムは急速な広がりを見せており、中国人訪日客は激
スおよびバスの運転手の不足である。バスの運転手
は元々勤務条件が厳しく、とくに外国人客を扱う旅
行会社からのコスト削減要求が強いこともあって、
待遇は恵まれたものではなかった。
それに加えて、2012 年 4 月の関越自動車道高速
バス居眠り運転事故の発生を機に予備の運転手の配
備など安全対策が強化されたため、運転手の確保が
一段と難しくなったと言われている。
第 2 は、宿泊先ホテルの不足であり、第 3 は、
中国語通訳ガイドの不足である。基本的には、いず
れも訪日外国客が急増したことから露呈した問題で
ある。
範囲は限定的である。しかし、中国での日本旅行ブー
増し続けているため、上記の問題が短期間のうちに
深刻化するリスクが大きいことは肝に銘じておくべ
きである。
これらの 3 つの問題が深刻化すると、ネットを
通じて日本旅行の悪い評判が中国全土で一気に拡散
し、中国人の日本旅行に対する熱が冷め、現在の激
増に急ブレーキがかかるリスクがある。
中国人が日本旅行に来たい理由の中で、サービス
の良さ、交通の便の良さという長所は中国人が日本
に魅力を感じる重要な要素である。
もし、バス不足、ホテル不足、通訳ガイド不足と
【図表】訪日外国客数の推移
訪日外国客数
訪日外国客数
うち中国
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
(注)2014 年のデータは 1 ~ 8 月累計の前年比を基に年率換算にして算出。(出典:日本政府観光局)
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
5
いった問題が深刻化すれば、サービス水準や交通の
等があるため、すぐにホテルへの転用は難しいとい
スやホテルが確保できずに、ツアー自体がキャンセ
制緩和を検討中と聞く。
利便性の面で日本旅行の魅力は大幅に低下する。バ
ルされることも懸念される。
そうした問題点が頻繁に指摘されるようになれ
ば、日本旅行の魅力が薄れ、昨秋からの日本旅行ブー
う問題がある。この点についても国土交通省では規
第 3 の中国語通訳ガイドの不足については、改
善策としていくつかのアイデアがある。
ムが急速に萎んでしまうことが懸念される。
ひとつは、中国を訪問する日本人旅行客が激減し
それは、2020 年までに訪日外国人旅行客 2,000
く、通訳ガイドが大幅な余剰となっている。そこで、
万人の達成という政府目標の実現を極めて難しくす
ると同時に、日本の観光関連産業が大きなビジネス
チャンスを失うことを意味する。
ているため、中国国内では日本語通訳の仕事が少な
この中国人の日本語通訳ガイドが日本で働けるよう
に規制緩和を実施すれば、即戦力に近い形で大量の
通訳ガイドを確保することができる。
そうした事態を招かぬよう、上記の 3 つの問題を
もうひとつのアイデアとしては、日本に留学中の
クを解消することが日本にとっての喫緊の課題であ
を戦力化する方法である。この場合、学業との両立
早期に解決し、中国人旅行客受け入れのボトルネッ
る。政府、民間企業とも意思決定の遅い日本の組織
の体質を考えれば、どんなに対応を急いでも急ぎ過
ぎることはない。
中国人留学生や中国語を学んでいる日本人大学生等
が図れるよう、通訳ガイドの仕事をこなせば一定の
単位取得につながるような仕組みを導入することが
できれば、学生側のインセンティブは高まる。
■受け入れ能力不足の改善策
中国人訪日客の大幅増加が中長期的に持続すれ
上記の 3 つの問題のうち、第 1 と第 2 の問題に
に強力なエンジンとなる。
ついては、すでに国土交通省でも問題を認識してお
ば、日本の観光関連ビジネスの活性化にとって非常
り、一部は対策を実施している。
のみならず、大半の中国人は日本を訪問すると、
第 1 の観光バスおよびバス運転手の不足につい
し、日本人に対する理解と信頼を深めることが多い。
ては、バスの運行範囲を一定地域内に限定していた
規制の緩和によって旅客輸送力を高める措置をすで
に開始した。同時に、運転手の労働条件改善のため、
訪日以前に抱いていた反日・嫌日感情を大きく修正
これは今後の日中関係の改善にとって重要な相互理
解の土台となる。
今年の 4 月から新運賃制度も導入した。
このように大きな意義を持つ中国人訪日客の中長
しかし、後者については、外国人訪日客向けツアー
の課題、そして今はまだ見えていないが今後新たに
しく、導入は難航しているようだ。
第 2 のホテル不足については、マンションやリ
ゾートマンションをホテルに転用するアイデアがあ
る。ただし、ホテル業としての営業認可を得るには、
入り口にフロントがなければならないといった要件
6
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
生じる様々な課題に迅速かつ柔軟に対処していくこ
とは日中関係の将来にとって極めて重要である。
■
を催行する旅行会社からのコスト引き下げ要請が厳
期的な大幅増加持続の実現を目指し、上記の 3 つ
シェールガスがもたらす交通運輸や海事・海洋産業への変革
2014 年 9 月 17 日 CIGS ホームページ 掲載 ● 湯原
哲夫
はじめに
イプラインを利用する米国の流通機構と液化天然ガ
シェールガス革命は電力事業や化学産業のみな
大きい。LNG 輸送によるコストは百万 BTU 当り約
らず、海事産業や海洋産業にも大きな影響を及ぼ
して行く。本稿では、米国における安い天然ガス
が米国内だけでなく、世界の交通運輸や海運・海
洋産業へどのような変革を促しているかについて
ス(LNG)による輸送コストの差に起因する割合が
6~10USD とみられ、この差を解消し、安いシェー
ル ガ ス の 恩 恵 を 広 く 普 及 さ せ る た め に は、LNG
チェーンの合理化と見直しが求められている。
考察する。特に圧縮天然ガス(CNG:Compressed
2.圧縮天然ガス(CNG)船の登場
Gas-to-Liquid) について考える。
2014 年 7 月に世界で初めて圧縮天然ガス(CNG)
1.日米の天然ガス価格差がもたらすもの
電力会社の子会社から中国の造船所に 2,200㎥の積
Natural Gas) と 天 然 ガ ス 液 体 燃 料 化 技 術 (GTL:
日米の天然ガス価格差は現在、4 倍程度(百万
BTU 当り日本で 17USD、米国では 4USD 程度)で
推移しており、国際エネルギー価格予測によれば、
この差は今後、徐々に縮まっていくものの、長期
間に渡り維持されると見られる。その差は既設パ
船が建造されることとなった。インドネシアの国営
載量を持つ CNG 船が発注されたのである。
CNG は自動車燃料として広く普及している技術
で、ガス輸送の手段としても 1960 年代から研究さ
れてきた。また、1990 年代から CNG 船のコンセプ
トと開発が欧米を中心に進められてきた経緯がある
が、実現しなかった。CNG は LNG のように高額の
液化・再ガス化設備への投資を必要としないため、
そのニーズは根強いものがあり、今回やっと実現し
たという感がある。シェールガス産地からではなく、
アジアの中小ガス田を中心に CNG 市場が広がり、
新たなるゲームチェンジャーになるのではないか。
さらに、地球温暖化抑制等の環境への配慮から、
油田・ガス田開発に伴う随伴ガスのフレアリング(燃
焼処理)禁止が決められている。その対応策として
パイプライン敷設や液化プラントを設置できないよ
うな場合の有力な手段として、CNG による貯蔵・
運搬が有力なオプションとなりうると考えられる。
3.CNG 容器の進化
CNG はその燃焼の過程で窒素酸化物をほとんど
放出しないため、その低い公害性から主に車両での
普及が進んできた。ジェトロセンサー 2013 年 8 月
号によると、米国における CNG 自動車の普及は、
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
7
乗用車とトラックを合わせて、今後 10 年間で 10
4.もう一つの可能性 GTL
この大規模な伸びの背景には、①炭素繊維で補強さ
天然ガスを常温常圧で液体燃料とする GTL(Gas-
テナでの輸送や流通機構の整備による安いシェール
動車・航空機・船舶の燃料として使うことができる。
倍の規模(250 万台)に達すると予測されている。
れた CNG 容器の高圧化と低価格化、② CNG のコン
ガスの普及の加速、③ガソリンと CNG の小売価格
差があるのではないだろうか 。
金属ライナーと複合材からなる CNG 容器「CRPVs
(Composite Reinforced Pressure Vessels)」 の 価 格
は、既に鋼製容器の 3 倍程度まで下がっている。一層
の量産化と技術革新による更なるコスト圧縮により、
軽量で強度に勝る CRPVs の普及が期待されている。
水素・燃料電池自動車で使用される圧縮水素容器
To-Liquid)は安いシェールガスを液体燃料化し、自
GTL は、既存の給油・物流インフラ・エンジンの
活用が可能で、硫化物 SOX や微粒子 PM2.5 を出さ
ないクリーンな燃料であり、期待は大きい。
シェールガスが火力発電やトラック用だけではな
く、軽油の代替燃料として乗用車や航空機・船舶で
利用されるようになると、シェールガス革命は石油
時代からガス黄金時代への本格的移行と言えるよう
になる。
現 在、 米 国 で は 百 万 BTU 当 り、 原 油 は ほ ぼ
においても、高圧化と低価格化が進んでいる。現在、
17USD、天然ガス 4USD である。この差の中に GTL
ある。安いシェールガスから水素を製造し、液化水
争力があると言える。既にカタールでは日量 14 万
820 気圧の耐圧容器が出現し、認証を受けた段階に
素に比べ経済性・簡便性に優れる高圧水素容器と商
業化に達した燃料電池利用の相乗効果により、電気
自動車と競合する形で普及が図られると考えられ
る。
ここでも、LNG から CNG による輸送改革が進行
するかどうかは,容器の価格低減にかかっており、
その可能性は十分にあると考えられる。
このような陸上の動きは、天然ガスの海上輸送
にも影響を及ぼしている。既にノルウェー船級協
会(DNV)は LNG チェーンに代わるサプライチェー
ンを提案している。CNG 船と高圧圧縮ガス容器を
用いて、LNG 輸送で必要な液化・再ガス化を省き、
産地(ガス田)から需要家にガス輸送を直結させる
のである。このようなコンセプトが今、天然ガスの
の製造コストがあれば、GTL は軽油に対して十分競
バレルという大規模なプラントが運転・生産中で
あり、また米国ではシェールガス田上にエチレン・
GTL プラントの建設が計画されている。
5.洋上での GTL プラント
現在、海洋からの石油・天然ガス生産量が伸びて
いる。石油・天然ガスの開発は陸上から海洋へ移
行しており、世界の石油・天然ガスの全生産量の 3
割強が海洋から生産され、間もなく 4 割に迫る勢
いである。原油バレル 100USD 時代が定着し、今
後とも海洋で大型の油田・ガス田開発が続くと、そ
の規模も海洋プラント(浮体式海洋石油・ガス生産
貯蔵積出設備:FPSO)だけで 2020 年には 34 兆円
の規模に達すると予測されている。
価格高騰に悩む需要家とガスの完全自由化を控えた
2009 年、韓国のサムスンが石油メジャー Shell
られる素地は十分あるのである。CNG 容器による
を受けた。それをきっかけとして、韓国では洋上プ
ガス会社にとって魅力あるシステムとして受け入れ
ガス輸送は、既存のコンテナ船やバルクキャリアで
十分対応可能であり、専用船の必要はない。この点
においても既存の LNG チェーンは挑戦を受けてい
ると考えられる。
8
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
から 10 基 500 億 USD に上る天然ガス FPSO の発注
ラント上のプロセス・プラントや海中・海底の生産
システム(サブシー分野の機器等)等の高付加価値
な製品の国内内製化を図る産官学の戦略的な取り組
みを実施中である。さらに、2012 年からは独自な
洋上 GTL プラント開発を民間主導で実施中である。
アジアに数多ある中小の石油・天然ガス田におい
倍、重さで 1.5 倍、主機システム価格で 3 倍の負担
を船側に強いる結果となっている。
ても、前述のように随伴ガスの燃焼処理(フレアリ
それに対して、GTL を燃料として使う GTL 船は、
出す必要が出てくる。コンパクトで効率のよい GTL
ステムとする事が可能で、将来の有力なオプショ
ング)が禁止され、今後その天然ガスを貯蔵し積み
プラントがあれば、現地で商品化と積み出しを行う
ことが可能だ。GTL-FPSO は将来性ある洋上プラン
トで、小型化が重要であるが、それが障壁となり未
だ商業的なプラントは存在していない。すでに海外
市場で競争力を有する我が国の海洋プラント産業も
あり、今後の展開が期待される。
6.船舶用燃料としての GTL の可能性
船舶の排ガス規制の動きが世界に広がっている。
従来エンジンのまま、脱硫装置の不要なエンジンシ
ンである。更に、ライトサイクル油(LCO)などに
GTL を助燃剤として使い、より合理的な燃料システ
ムを構築する事も可能である。GTL はその製造プロ
セスで天然ガスの約 40% の熱量を用いる。これは、
LNG が液化プロセスにおいて 15% 程度を消費する
のに対して大きい。しかし、GTL をこのように数十
パーセントを添加する助燃剤として使う事により、
LNG に比べてトータルな燃料効率や二酸化炭素の
排出削減においても優位に立つ事も可能である。
1 世紀以上前から船舶燃料として使われてきた重油
7.まとめ
汚染や温室効果ガスを大量発生するため長く問題視
圧倒的にコスト競争力を有する天然ガスは、交通
されてきた。
その対策として、重油を燃料とする従来の船舶に
比べ、大気汚染ガスや温室効果ガスをほとんど排出
しない LNG 船の導入や船舶燃料の残渣油から極低
硫黄軽油への切り替えが進んでいる。しかし、これ
らは、LNG 容器の船積み、軽油エンジンとガスエ
ンジンをかねる主機への切り替え・換装が必要とな
る。このような設備対応により、容積にして 4 〜 5
運輸分野にも普及し、CNG や水素、GTL を燃料と
する交通運輸への燃料転換、新しい海洋プラント産
業の出現を促している。このような中、天然ガスは
製造コスト、エネルギー転換システム、輸送運搬シ
ステムの 3 拍子そろった組み合わせで変革が進み、
関連する陸海の天然ガス開発・生産事業、エンジン
等のエネルギー転換産業、及び海運等の輸送運搬事
業者の成長と拡大を可能にする。
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
■
は、残渣油と呼ばれる質の悪い油で、燃焼時に大気
9
農協はなぜ農業を衰退させたのか
~自著『農協解体』を語る~
『改革者』2014 年 9 月号 掲載 ● 山下
一仁
JA 農協について、国民はど
のようなイメージを持ってい
るのだろうか?農家の利益向
上団体、テレビ番組サザエさ
んのスポンサーの銀行、かつ
ての米価闘争や今日の TPP 反
対活動を展開している圧力団
体、など様々だろう。
なんでもできる
権能を与えられ
た農協
これは、JA 農協が行ってい
ることが、政治活動から、農
産物や農業資材の販売、銀行
業務、生命保険や損害保険の
業務、病院経営、葬祭事業ま
で、多岐にわたっているから
である。こんなになんでもで
きる権能を与えられた法人は、
日本には農協以外には存在し
ない。
そのような農協は株式会社ではなく、農業振興を目的とする協同組合である。名目
上は、農家という弱者が強大な資本に対抗するために作られた組織である。
協同組合という制
度の理念と現実が
食い違っている
しばしば、農協の現実の活動が農家や農業のためになっていないという批判に、農
協関係者が、協同組合の理念からすれば的外れだと、現実を理念にすり替えて、反論
する場面に遭遇する。彼らがこのような対応しかできないのは、理念と現実が大きく
食い違っていることを認めざるを得ないからだ。このようなかい離が生じているのは、
理念と現実をつなぐ制度の設計が間違っているからである。理念を実現するために、
現実を変えようとすれば、制度の変更が必要となる。つまり、農協改革である。
戦前の地主制も、当初は農業振興に努めたが、やがて寄生化し、農地改革で解体・
消滅した。地主制と農協制は、全く異なる体制ではない。戦前の地主階級の利益を代
弁していた農会という組織は、戦時中の統制団体を経て、今の JA 全中という組織に
なっている。地主制と同様、農協制も、高い関税、高い米価の維持を強力に推進して
きた。農協制も、地主制と同様、強力な政治力を発揮して、農業・農村に君臨した。
しかし、地主制にとって代わった農協制についても、ほころびが目立ち始めた。
10
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
主人公である組合
員が逆に農協に支
配されている
利用者である組合員が主人公であるのに、組合員は逆に強大な権限を持つ農協に支
配されている。肥料では 8 割のシェアを持つのに、協同組合という理由で農協には、
独占禁止法が適用されない。組合員が安い資材を購入するために作ったはずの農協に
よって、組合員は独占的な資材価格を押しつけられている。
農協が推進した高米価政策によって、コストの高い零細な兼業農家が多数滞留し、
米農業は衰退した。しかし、農業所得の 4 倍に達する兼業所得も年間数兆円に及ぶ農
地の転用利益も、銀行業務を兼務できる農協の口座に預金され、農協はわが国第 2 位
のメガバンクに発展した。兼業農家から集まった資金は、地域住民ならだれでもなれ
る准組合員に、住宅ローンとして貸し出された。准組合員は年々増加し、農協は、今
では農家ではない准組合員の方が多い、" 農業 " の協同組合となった。
米価を上げることで、農協が制度として持つ全ての歯車がうまく回転した。農業を
発展させるための組織が、それを衰退させることで発展したのである。農協は、もは
や " 農業 " のための組織でもないし、利用者である組合員が設立し、所有し、管理し
ているはずの " 協同組合 " でもない。主体であるはずの農家は、農協という組織が利
益を得るための客体となっている。しかも、利用者の多数を占める准組合員は、組合
運営に発言権を持たない。農協は、利用者が管理するという、協同組合の大原則から
逸脱している。
本書は、農協が戦前の統制団体を改組して作られた経緯、それに起因する理念と現
実のかい離、農協改革の基本的な視点を述べたのち、具体的な改革案を提示した。こ
のかなりは、規制改革会議で取り上げられた。特に、全農の株式会社化はこの本で初
めて提案したものである。国民が農協改革を議論する際の参考になることを期待して
やまない。
■
農業を発展させる
ための組織が農業
を衰退させた
著者:山下一仁
出版社:宝島社
ISBN 9784800219244
価格:本体 1,200 円+税
発行:2014 年 4 月初版
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
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ナショナリズムと愛国心
~「東京=ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第 66 号より~
2014 年 10 月 2 日 CIGS ホームページ 掲載 ● 栗原
潤
9 月下旬、中韓両国に出張した。中国では梅原龍
三郎画伯の『北京秋天』を思い出す程の好天に恵ま
れ、友人達と世界の政治経済情勢や各国で昂揚するナ
ショナリズム・愛国心に関し、率直な意見交換を行っ
た。対話の中で筆者は、優れた文献—例えば在米の
中 華 系 研 究 者、 萬 明 教 授 の Sino-Japanese Relations:
Interaction, Logic, and Transformation (Stanford
University Press, 2006) や筆者の知人、何忆南教授の
“Forty Years in Paradox: Post-Normalisation Sino-
Japanese Relations ” (China Perspectives, 2013)—、ま
た、或る元帝国海軍航空兵が日中戦争から敗戦までの
模様を率直かつ淡々と綴った名著『修羅の翼—零戦特
攻隊員の真情』に言及しつつ、東アジアの将来につい
て語った。
捉え難いものの、ナショナリズムや愛国心は世界の
命運を左右する重要な要因だ。これに関して、甲南大
学の安西敏三教授は、福澤諭吉先生の愛国心に関する
理解を通じ冷静な対処法を示唆している。即ち、諭
吉先生は、トクヴィルの名著『米国の民主政治 (De la démocratie en Amérique )』を
読み、2 種類の愛国心を考えたのだ。その第一は①「天稟 ( テンピン ) の愛国心 (le
patriotisme instinctif)」で、本能に基づき故郷を想う心に由来し、私心の無い愛国心だ。
もう一つは②「推考の愛国心 (le patriotisme réflechi)」で、①に比して情熱面では欠
けるものの、知識や法律という合理的思考に基づく愛国心だ (『福澤諭吉と自由主義』
( 慶應義塾大学出版会 2007))。
「天稟の愛国心」
は或る種の宗教で
あり「推考の愛国
心」は合理的思考
に基づく
勿論、両者に関し良否・優劣を判断することは出来ない。ただ、①に関して「故郷
への想いは、往往にして宗教的情熱により刺激を受け、このために絶大なる奮闘努力
を生み出す。従ってこの愛国心は或る種の宗教であり、理屈ではなく、信条や感情に
基づく (Souvent cet amour de la patrie est encore exalté par le zèle religieux, et alors
on lui voit faire des prodiges. Lui-même est une sorte de religion; il ne raisonne point,
il croit, il sent, il agit.)」ことを理解する必要がある。翻って、②は非情なる国際政治力
学を冷徹に分析し、一国の政戦略を熟考する際に影響力を持っている。—例としては、
チャーチルの冷徹な愛国心が挙げられよう。Hitlerite Germany に対する彼の戦いは凄
まじく、毛沢東主席とキッシンジャー氏との対話の中でも言及されている (『キッシ
ンジャー「最高機密」会話録 (”Kissinger Transcripts” )』)。第一次世界大戦後、チャー
チルは Bolshevik Russia を極度に嫌って “Kill the Bolshie, Kiss the Hun” とまで言った。
12
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
が、第二次大戦時はナチス打倒という大きな目的を前にして、持論に反してスターリ
ンと協力したのだ。
社会的困難の顕在
化とポピュリスト
政治
複雑怪奇な情勢下、熱烈な「天稟の愛国心」と冷徹な「推考の愛国心」を如何にバ
ランスするか ? 本当に難しい問題だ。戦前の優れた外交評論家、清澤洌は名著『外交史』
の中で次のように述べている—「日本外交史において最も有能なる外交家として、陸
奥と小村を擧ぐることに何人も異議はあるまい。だがその當時の事情に觀れば、その
二人ほど恐らくは無能外交家を以て呼ばれたものはない。陸奥の日清戰爭外交の後…
衆議院における政府弾劾上奏案が待ってゐた。…小村の日露戰爭外交の後には、帝都
未曾有の騒擾 ( ソウジョウ ) がかれを待った。…民論はその性質上無責任で感情的だ。
だが、これが國民層に深く喰ひ込んで居る關係から、これを無視してしまふといふこ
とは全く不可能」、と。これに関して大阪大学の米原謙教授も「政治の劇場化は顕著
で…いずれの国においても、社会的困難が顕在化すればするほど、ポピュリスト的な
政治指導者が出現する…。それは容易に過激なナショナリズムの温床になる… ナショ
ナリズムは、まるで忘れていた歴史の怨霊のように、今後もわれわれを苦しめ続ける」
と語っている (『ナショナリズムの時代精神』( 萌書房 2009))。
北京では、中国の友人の厚意により、周恩来総理の書による門標を持つ外交学院に
おいて、“ 外交官の卵 ” の前で講演する機会を得て大変満足している。彼等は緊迫し
た現在の日中関係に対し関心を抱き、しかも自分なりの考えを持っており、感銘を受
けた次第だ。近年の日中両国の世論に関して、記者出身で北海道大学の藤野彰教授は、
両国民が共に相手国に対して良くない印象を抱き、そうした判断を下す際、情報源の
大部分は直接的な実体験ではなく、自国のメディアであることを指摘している。そし
て「日中のメディアが日々伝える膨大な情報は、日本人の中国観、あるいは中国人の
日本観を、昔よりも内容豊かで、冷静で、バランス感覚に富んだものにしているであ
ろうか。…メディアは…国民に対して中国や日本の等身大の姿を伝えることができて
いるであろうか。…その答えはどうも否定的である」と述べ、今後は「メディアの自
助努力に加えて、社会全体が国民のメディアリテラシーの向上、学校や企業での国際
情報教育の強化、日中民間交流の促進といった課題に積極的に取り組まなければなら
ない」と語っている (「日中報道の『罪と罰』—メディアの責任と課題」『外交』(No.
15, 2012))。
筆者は “a cautious optimist” として長期的には楽観視している。しかし、それは藤
野教授が語る通り、自然に形成されるものではない。様々な分野の「志」の高い人々が、
日中間、或いは多国間で協力し、努力を積み重ねなくては、相互理解も友好関係も決
して生まれて来ないものと考えている。このことを銘記し、次世代の人々に、出来る
だけ良い “ バトン ” を渡せるよう自己研鑽に努めたいと思っている。
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
■
日中メディアは相
手国の等身大の姿
を冷静に伝えてい
るか?
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米・中・イスラム国関係
2014 年 9 月 8 日 CIGS ホームページ 掲載 ● 美根
オバマ大統領は中
国 は「 た だ 乗 り 」
していると指摘
慶樹
オバマ大統領はニュー
ヨークタイムズ紙によるイ
ン タ ビ ュ ー(8 月 8 日 付 Friedman 記者の記事)で、
「中
国について大統領はどうする
つもりなのか。中国は現在イ
ラクで最大のエネルギー投資
国である。大統領は、中国に
対して、貴国はこの世界でた
だ乗りでなく、ステークホル
ダーとなる時が来ている、と
言うつもりはあるか」と質問
されたのに対し、オバマ大統
領は「そう言いたい。中国は
たしかにただ乗りしている。
過去 30 年間ただ乗りした」
と述べた上、大国としての自
覚と責任に関する持論を展開
し、米国は他国のために行動
することを期待されており、大国とはそういうものだと述べつつ、中国はそのように
は見られていないし、行動もしていないなどと厳しく指摘した。
中国はイラク南部
の油田群で積極的
に 開 発・ 生 産 を
行っている
戦争で落ち込んだイラクの産油量は急速に回復しつつあり、2014 年 4 月には 304
万 BD を超え、OPEC ではすでにサウジに次ぐ産油国になっている。中国は世界最大
級の埋蔵量があるイラク南部の油田群、ルメイラ、西クルナ、ハルファヤとアブダブ
などで石油メジャーやロシアとともに多額の投資を行ない、開発・生産に加わってい
る。イラクの最重要パートナーだとも言われている中国石油天然ガス集団公司(CNPC)
は同時にパイプラインや輸出ターミナルの建設計画を進めており、インフラ関連を含
め派遣中国労働者の数は 1 万人を超えると推定されている。他の中近東やアフリカ諸
国へ送り込まれている労働者の数と比べこれはむしろ控え目な推定であり、リビアの
政変では 3 万人が脱出した。
米国はイラクにおいて莫大な犠牲をこうむった。戦死者だけでも約 4 千 5 百人に上っ
た。しかし、イラク戦争に参加しなかったどころか批判的であった中国とロシアがイ
ラクで権益を拡大し、ある意味で最大の受益者となっている。このような状況は米国
から見ると、「ただ乗り」と見えるのであろう。オバマ大統領に限らずそれが米国民
の気持ちであることはインタービューアーの質問からも窺える。
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CIGS Highlight Vol.18 2014.11
ISIS は中国を「復
讐ランキング」
首位に
しかし、中国にとっても事は簡単でない。香港の『鳳凰週刊』は 8 月 9 日、「ISIS、
数年後に新疆ウイグルの占領を計画、中国を『復讐ランキング』首位に」と題した記
事を掲載した(12 日の新華社日本語版が転載)。ISIS は言わずと知れた「イスラム国」
であり、イラク政府はもちろん米国にとっても頭の痛い問題となっている。英国出身
の戦士が米国人記者を処刑し、その模様をインターネットに流すというおぞましい行
為が行なわれたのもイスラム国である。
鳳凰テレビは日本ではフェニックス・テレビとして知られている。香港を拠点とし
ているが、海外で中国の代弁をしっかりやっている。先日、中国機が米軍機に異常接
近したことについて米国防省のスポークスマンが危険行為であったと指摘すると、同
テレビの記者は逆に、米国は中国に対してスパイ行為をしているではないかと食って
掛かったことがあった。前置きが長くなったが、『鳳凰週刊』はつぎのように記して
いる。翻訳上の問題があるので一部修文した。
「イスラム国の目標は、アフガンにイスラム国を実現させるというタリバンの目標
よりもっと壮大で、カリフの伝統に戻ることを主張しており、数年後に西アジア、北
アフリカ、スペイン、中央アジア、インドから中国・新疆ウイグル自治区までを占領
する計画を立てている。
イスラム国は、
『中国、インド、パキスタン、ソマリア、アラビア半島、コーカサス、
モロッコ、エジプト、イラク、インドネシア、アフガン、フィリピン、シーア派イラク、
パキスタン、チュニジア、リビア、アルジェリアと、東洋でも西洋でもムスリムの権
利が強制的に剥奪されている。中央アフリカとミャンマーの苦難は氷山の一角。われ
われは復讐しなければならない!』と表明し、その筆頭に中国を挙げている。バグダッ
ドでの声明では何度も中国と新疆ウイグル自治区に言及し、中国政府の新疆政策を非
難した。中国のムスリムに対し、全世界のムスリムのように自分たちに忠誠を尽くす
よう呼び掛けている。」
中国が資源の確保を求めて進出している地域はイスラム圏が多い。イスラム諸国に
とって中国は、かつては第三世界の利益を守ってくれる頼もしい存在であったが、今
や矛盾することが目立つようになっている。イスラム過激派との関係は特殊であるが、
矛盾の象徴でもある。
一方、オバマ大統領の発言は、イスラム圏において中国は米国との関係でも矛盾を
抱えていることを示している。中国はこのような状況でどのように対応するか。中国
が多国籍軍に参加することは、いくら米国がイスラムの過激派と戦うのに強力な味方
を必要としていると言っても当面はまずありえないが、将来起こりうるパワーバラン
スの変化としては頭の片隅に留めておくべきことと思われる。
(本コラムはエナジー・ジオポリティクス代表の渋谷祐氏の許可の下、「ジオポリ」
2014 年 8 月号(第 133 号)をもとに作成したものである)。
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
■
イスラム国の目標
は中国・新疆ウイ
グル自治区までを
占領すること
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肌で感じた "人質体験 "
産経新聞【宮家邦彦の World Watch】2014 年 9 月 11 日 掲載 ● 宮家
対テロ演習での
「人質体験」
邦彦
講義の真っ最中に突然、賊が押し入った。「床に伏せろ」と大声で叫んだ 8 人の荒
くれ男に襲撃されたのだ。どうやらわれわれは人質になったらしい。ポケットの電話
や貴重品をすべて奪われ、頭には 2 枚重ねた枕カバー。視界ゼロのまま外まで引きず
られていった。強引に車にほうり込まれるまで 30 秒もかからなかった。その際後部
座席ドアに頭を強打し、脳振盪になりかけた。なるほど、これがテロリストの人質奪
取なるものなのか。イラン・イラク戦争中とイラク戦争後、バグダッド勤務を 2 回経
験はしたが、「人質」体験だけはまだなかった。以上が先週英国某所で参加したテロ・
誘拐対策実地体験演習のハイライトだ。この原稿は、怒りで興奮さめやらぬロンドン
発の夜行便の中で書いている。
なぜ怒っているのか。演習の主催者は危機管理専門の多国籍企業だったが、怒りの
対象は企業へではなく、筆者自身だった。危機管理の「危機」については常人よりも
少しは経験を積んだつもりだが、「管理」の方が不十分であることが分かったからだ。
あれだけ痛めつけられて宣伝するのもしゃくだから具体名は伏すが、この対テロ演習、
実に効果的だと言わざるを得ない。今回は企業秘密に触れない範囲で、この興味深い
演習の概要をご紹介する。
実にリアルな対テ
ロ訓練カリキュラ
ム
コースは 3 日間、合計 20 時間弱だが、単なる座学ではない。冒頭紹介した通り、
全ての講義内容は実地訓練で体にたたき込まれる。正直なところ、初めは「どうせ模
擬演習だろう」などとばかにしていたが、やってみるとこれが実にリアルなのだ。主
なカリキュラムは次の通りである。
◆個人の安全対策
騒乱、カージャック、デモ、強盗、スリから身を守る方法を包括的に伝授される。「人
を見たら泥棒と思う」以外に効果的な対処法はなさそうだ。
◆救急医療の対処法
個人的にはこれに一番興味があった。2 回のバグダッド勤務で同僚や邦人の死亡事
件に遭遇し、救急医療の知識不足を大いに憂えたからだ。座学ではまず気道の確保、
続いて止血 ...。その後、模擬襲撃現場で被害者の手当てを実際に行う。本物の血では
ないのに傷口があまりにリアルで、思わず足がすくんでしまう。
◆即席爆弾、地雷等対処法
ここら辺は慣れており、余裕で受講できた。実地訓練では爆竹を鳴らしていたが、
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CIGS Highlight Vol.18 2014.11
さすがに本物を爆発させるわけにはいかないのだろう。
◆路上検問所の対処法
バグダッドでは何度も経験したことだが、実際に金銭を要求されたのはこの演習が
初めてだった。それでも殺されるよりはまし、である。
◆誘拐人質事件生き残り法
座学では人質がコモディティー(商品)であり、商品価値がある限りは殺さないので、
犯人の指示には素直に従うべしと教えられた。だが、冒頭のとおり僅か 30 秒で人質
にされてしまうと、そんなことを考えている余裕はゼロだ。
◆メディア・トレーニング
こればかりは筆者もいろいろ言わせてもらった。講義は教官による突撃インタ
ビューで始まる。一部始終を録画し後でそれを映しながら各受講者の弱点を指摘して
いく。
教官はいずれも歴戦の勇士だ。主任と専門家からなる講師陣はイラク、アフガニス
タンでの実戦警備経験者、救急医療専門の元消防士、元 BBC 記者など。豊富な現場経
験を持つプロならではの講義だった。悔しいが、日本で行われるこの種の講義には実
戦経験が決定的に欠けている
ことを改めて痛感した。
問題はこれらの演習が全て
英語で行われたことだ。実施
場所は英国だが、教官が話す
英語は出身地によってそれぞ
れ微妙に異なる。日本語でやっ
てもらえたら理解はもっと深
まるだろう。それでも、この
ような演習は日本では不可能
だ。やはり、百聞は一見(験)
に如かず、である。
■
日本で行われるこ
の種の講義には実
戦経験が決定的に
欠けている
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オバマ政権の「テロとの戦い」始まる
~問われる日本の「地球儀俯瞰外交」の真価~
WEDGE Infinity 2014 年 9 月 16 日 掲載 ● 辰巳
新たな「テロとの戦い」を開始せざるを得ない状
況になったオバマ政権の関心が再び中東に向き始め
た。引き金となったのはイラク・シリア間の国境地
帯で勢力を拡大している武装勢力のイスラム国によ
る活動が活発化したことである。
■空爆拡大容認に向かう世論
当初はその全容が把握されていなかったイスラム
国だが、6 月にイラク政府軍や治安部隊を圧倒して
イラク国内の複数の主要都市を勢力下に収めたあ
たりから、その脅威がより現実感を持って議論さ
れ始め、8 月 21 日にはチャック・ヘーゲル国防長
官とマーティン・デンプシー統合参謀本部議長が
共同記者会見の席上でイスラム国を「喫緊の脅威
(immediate threat)」と呼ぶに至った。
6 月以降、ほぼ毎日、CNN をはじめとする主要
メディアがイスラム国の残忍性について伝える報道
を連日行い続けていることとの相乗効果で、イスラ
ム国が米国に直接的な安全保障上の脅威を与え得る
存在だという認識が広がり始めている。さらに、ス
ティーブン・ソトロフ氏及びジェームズ・フォーリー
氏の二人の米国人ジャーナリストの斬首処刑映像が
ユーチューブで流布したことが、この流れに拍車を
かけた。米国内の世論はこれまでイラクに米国が再
び軍事介入することには消極的だったが、ここに来
て、いまだ地上軍の派遣には慎重だが、空爆の規模
を拡大することや軍事物資の提供、人道支援の継続
などに対してはこれを容認する空気が強くなってき
たのだ。
例えば、9 月 9 日にワシントン・ポスト紙上で発
表された同紙と ABC ニュースによる共同世論調査
の結果では、91%という圧倒的多数がイスラム国
を米国に対する直接の脅威と捉えているという結果
が出た。さらにこの調査では 71%がイラク国内の
スンニ派武装勢力に対する空爆を支持、シリア国内
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CIGS Highlight Vol.18 2014.11
由紀
の武装勢力への空爆についても 65%がこれを支持
しているという結果が出ている。
また、9 月 10 日付のウォール・ストリート・ジャー
ナル紙でも、NBC ニュースとの共同世論調査で 3
分の 2 が武装勢力への空爆を支持しているという結
果が出ている。わずか 3 カ月前の 6 月にワシントン・
ポスト紙と ABC ニュースが共同世論調査を行った
ときにはイラクへの空爆について賛成(45%)と
反対(46%)が拮抗していたことを考えると、世
論が確実に空爆拡大容認に向かって動いている様子
が窺える。
■オバマ大統領の演説が意味するもの
このような中、9 月 10 日夜、オバマ大統領は国
民に対して米国の対イスラム国家戦略について直接
訴えるため、テレビ演説を行った。この演説の中で
オバマ大統領は「米国はイスラム国を破壊する」と
それでも、10 日夜のオバマ大統領による演説は、
する空爆の継続、(2)(クルド系イラク人やイラク
で外交・安全保障を中核となって担う主要な人間に
明言、そのための戦略として(1)テロリストに対
政府、シリアの反アサド勢力など)現地の勢力に対
する軍事援助の提供、(3)(資金凍結や人の流れを
止めるなどの)対テロ措置の継続的な強化、
(4)人
道支援の継続、の 4 点を挙げた。この流れの中で
新たに 475 人の米軍人を軍事顧問として追加的に
派遣することも表明した。特に、空爆については「米
国民や施設に対する脅威に対しては断固たる措置を
取るというのが私の大統領としての原則」と述べ、
「そのためにはシリア国内のテロリストや関連施設
を空爆の対象にすることも躊躇しない」と言い切っ
少なくとも当面の間、オバマ大統領をはじめ、政権
とっての外交・安全保障政策上の最優先課題が再び
中東になったことを明確に示している。「軍事作戦」
ではなく「対テロ対抗措置」であろうと、地上軍を
派遣していなかろうと、米国が再びイラク情勢に軍
事力を以て関与し始めることに変わりはない。しか
も今回は、イラクとシリアの国境の無法地帯で一定
の勢力を確立することに成功してしまったイスラム
国という過激派テロ集団が相手だ。
た。
■「三正面」に対応しなければならない米国
しかしその一方で、今回の米軍による関与の拡大
それだけではない。クリミアやウクライナ東部を
る性質のものであることを必死にアピールしようと
より、今年 5 月に発表した「四年毎の国防見直し
がブッシュ政権時代のイラクへの軍事介入とは異な
めぐり 3 月から続いているロシアとの緊張関係に
している様子も窺えた。上記の戦略すべてを「対テ
(QDR)」の中では最も安全保障環境が安定した地域
のものは空爆や情報収集・提供などの任務に限定さ
わってしまった。しかも、南シナ海や東シナ海での
ロ(counter-terrorism)活動」と称し、軍事行動そ
れ、地上軍が前線で戦闘任務に就くものではないこ
とを何度も強調した。また「米国は決定的な違いを
もたらすことができる」としながらも「イラクが本
来自ら行うべきことをイラクのために代わってやる
として認定されていたヨーロッパの状況が大きく変
中国の強硬な動きは引き続き目が離せない。つい先
月も、米海軍の P-8 哨戒機が中国の戦闘機に異常接
近を受け、米国が中国に抗議したばかりだ。
ことはできない。またアラブ地域の諸国に代わって
第二次世界大戦後、米国の国防政策は基本的に二
べ、米国による活動の拡充が効果を上げるか否かは、
り、米軍の態勢もその前提で整えられてきた。この
この地域の安全を確保することもできない」とも述
アラブ諸国の自助努力にかかっていることを示唆し
ようとした。
無理もない。2008 年にイラク・アフガニスタン
両地域における米軍の軍事行動を終結させ、米軍を
撤退させることを選挙公約に掲げて大統領選挙を戦
い当選、外交・安全保障政策上の自分の最大のレガ
シーは両地域からの米軍撤退になるはずだったオバ
マ大統領が、よりによって、長期戦を覚悟しなけれ
ばならないことを承知の上で再びイラクに米軍を関
与させる決定を下さざるを得なくなってしまったの
だ。「戦争を終わらせた大統領」として任期を終え
るはずだった自分が、「新しい戦いの口火を切った
大統領」になってしまった。オバマ大統領は忸怩た
る思いだろう。
正面作戦に対応することを前提に策定されてきてお
態勢が、近年、国家財政状況の悪化で国防予算削減
が余儀なくされる状況になってきたために維持でき
なくなり、1.5 正面、つまり大規模な軍事行動を一
つの地域で展開しつつ、ほかの地域での小規模な武
力衝突に対応できる態勢を目指す流れに移行してき
ていた。今回、イラクに米軍を再び関与させなけれ
ばならなくなったことで、米国は外交的には「中東・
欧州・アジア太平洋」の三正面に対応しなければな
らなくなり、国防面でもこの 3 つの地域にそれな
りに説得力のある軍事力を展開しなければならなく
なった。予算に制約が課されたままの状態でこのよ
うな事態に陥ったため、結果、どの地域においても
満足の行く対応ができない結果になるリスクが生じ
ているのである。
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■問われる「地球儀俯瞰外交」の意味
イラクでは既にイギリス、フランス、オースト
ラリアが、軍事援助の提供や人道支援の空中投下に
参加しており、オーストラリアについては、戦闘任
務に就く可能性も含んだ人員のイラク派遣も決めた
ようだ。中東地域ではサウジアラビアが、米国によ
るシリア国内の穏健な反体制派に対する訓練の受け
入れに合意したと言われている。中国を訪問してい
たスーザン・ライス国家安全保障担当大統領補佐官
も、訪問中に楊潔チ国務委員と会談した際などに、
イスラム国への対応について協議したと言われてい
る。このように中東情勢を巡って国際社会の主要国
が動き始めている中で日本が何をしているのかを振
り返ると、甚だ心もとない。
日本は安倍政権発足以降、「地球儀俯瞰外交」を
イラク情勢についても、今年 2 月にイラク北部
の難民に対する緊急支援を決めたあと、6 月以降、
急激に状況が悪化しているにも拘わらず何ら追加の
措置を打ち出せていない。日本政府にとっては、先
月からイスラム国に人質に取られている日本人男性
が、米国人や英国人のように公開処刑になるような
事態だけは回避したいだろう。このことを考えると、
今日本政府に打ち出せる措置にはどうしても限界が
あり、シリアやイラクの難民に対する人道支援を拡
大することぐらいしか現実にはできないのかもしれ
ない。それでも、日本が世界有数の主要国だという
自負があるのであれば、このような限界の中でも日
本政府はイラク情勢にどのように関わるつもりなの
か、また、どのような理由で今回は関与をできるだ
け最小限にとどめたいのか、などについての議論は
もっと活発に行われてもいいのではないだろうか。
合言葉に安倍総理が積極的に外遊、岸田外務大臣や
この点を考えると、今年の夏、大挙してワシント
り、諸外国とのカウンターパートとの会談を行った
ウクライナ情勢に対して日本がとるべき対応につい
小野寺前防衛大臣も積極的に国際会議に出席した
りしてきた。特に安倍総理は、歴代の総理の中で初
めて東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟 10 カ国を
全て訪問したほか、外遊先は豪、欧州、南アジア、
湾岸諸国、中南米などにおよび、アボット豪首相や
モディ印首相と密接な個人的関係を構築するなどし
ている。「顔が見えない日本外交」と言われていた
ころと比べると雲泥の差だ。
しかし、それにも拘わらず、イラク情勢、さらに
は今年春から続いているウクライナ情勢をめぐる緊
張の中で日本はほとんど存在感がない。このような
「今そこにある危機」に日本として主体的に関与す
ンにやってきた日本の国会議員の中でイラク情勢や
ての知見を披露した人はほぼ皆無。イラク情勢につ
いて話題に出た時でも、「米国はどうするつもりな
のか」「国際法上、何を根拠にするつもりなのか」
など、評論家的な議論しか行われず、議論の大部分
が中国に対する懸念の表明や米国の対中政策、米韓
関係、日本国内の集団的自衛権に関する議論の説明
など、東アジア地域の問題に費やされたことは残念
でならない。これでは「世界のほかの地域で何が起
こっていても、日本は自国の身の回りのことにしか
関心がありません」と宣伝して歩いているようなも
のだからだ。
ることができていないからだ。
「地球儀俯瞰外交」を掲げる今の日本の政権にこ
特に、ウクライナ情勢に関する日本の対応につい
動に関して、これまでのようにアメリカや国際社会
は反対』とあれだけはっきりと主張し、米国をはじ
め世界各国に支援を求めている日本が、なぜ、ロシ
アがまさに力による現状変更をしているこの状況を
前にもっと断固たる姿勢を取らないのか」(某元連
邦議会スタッフ)という意見に代表されるような不
満が水面下でくすぶっている。
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から言われてやっと重い腰を上げる、という悪しき
前例を打破してもらいたいものである。
■
ては、米国では「東シナ海では『力による現状変更
そ、イラクのように日本から遠く離れた地域での活
イベント 開催報告
2014 年 9 月 19 日 CIGS ホームページ 掲載
瀬口清之研究主幹 講演会
「グローバル経済をリードする東アジア そのリスクと日本の責任」
2014 年 9 月 4 日 開催
全体プログラム
・14:00--14:10 開会挨拶
福井 俊彦(キヤノングローバル戦略研究所 理事長)
・14:10--15:30 講演「グローバル経済をリードする東アジア そのリスクと日本の責任」
瀬口 清之(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)
・15:30--16:00 質疑応答
テーマ概要
グローバル経済における米国の地位が相対的に低下しつつある中、日本、中国、韓国 3 国からなる東アジ
アの GDP の合計値が昨年、初めて米国を上回った。その中核である中国経済は安定を保持しながら高度成長
を持続し、日本経済は 20 年以上続いた慢性的停滞からようやく抜け出す兆しが見られ始めている。その状況
から見れば、グローバル経済における東アジアの主導的地位は今後も続く見通しである。
このように重要な役割を担うようになった東アジアであるが、日中関係は領土問題、歴史認識問題等不安定
な火種を抱えており、しばしば経済関係にも悪影響を及ぼしてきている。足許は政経分離の様相を呈しており、
厳しい日中関係の下でも経済交流は拡大を続けている。しかし、領土や歴史をめぐる摩擦が暴発すれば、経済
関係にも深刻な影響が及ぶリスクと常に背中合わせの状態が続いているのも事実である。
中長期的には、2020 年代に中国経済が大きなリスクに直面すると予想され、そのリスクを軽減するために
も日中経済関係の緊密化、それを支える日中関係の改善および安定保持は極めて重要である。
以上のような問題意識に立ち、今後の日中関係の安定確保、そして東アジアの経済発展を通じたグローバル
経済への貢献の継続・拡大を展望し、日本は世界においてどのような責任を担うべきかについて問題提起を行っ
た。
講演資料は以下の URL からご覧ください。http://www.canon-igs.org/event/report/20140919_2727.html
CIGS Highlight Vol.18 2014.11
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CIGS Highlight Vol.18 2014.11
CIGS Highlight Vol.18
発行日 :2014 年 11 月 14 日
編集・発行:一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所
〒 100-6511 東京都千代田区丸の内 1-5-1 新丸ビル 11F
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