G/特集/編集部 99.3.29 14:04 ページ 21 公共施設における大型映像システム 編集部 第1部 1. はじめに 公共施設では、大画面を利用したディスプレイ システムが多く導入されている。美術館・博物館 をはじめとする鑑賞を目的としたものから、多様 な用途に対応したビジネス分野での利用まで活用 範囲は多岐にわたる。 表は、三菱電機のカタログに掲載されている 「映像情報システム用途分類別対応一覧」である。 現在、場所・用途に合わせて多彩なシステムが構 築できるようになっていることがよく理解できる。 公共施設での利用可能性が多いことがうかがえる。 一昔前は、大型映像装置は、その大画面に映像を 写すことに価値があるとすら考えられていた。し かし、多様化する情報社会の中で、 「映像情報」は システムのなかで大きな機能を担っている。特に、 ビジネス領域においては、 “効率化”を実現するツ ールとして欠くことができない。臨場感を高める、 説得力を持つ、空間を演出するなどはいうに及ば ず、時間や経費を削減し、意志決定の情報を提供 映像情報システム用途分類別対応一覧 するツールとしてのウェイトも高まっている。 大型映像は、このように情報システムの中にお いて大きな成果を生んでいる。しかし、昨今の経 2. 政治にもの申す 済状況からすれば、むしろ情報システムの中で大 ベルリンの壁の崩壊から、世の中は大きく動き きな果実を生むことによって、その応用範囲を広 出した。世紀末の大変革である。日本でもこの波 げているといえる。また、そうでなければ売れな を避けるべくもなく、明治維新、第2次世界大戦後 い時代になっている。 に続く近代第3の変革期と称されている。バブルの May 1998︱ 21 G/特集/編集部 99.3.29 14:04 ページ 22 崩壊の後遺症がいっこうに治癒せず、これまで考 えられたこともなかった銀行、保険、証券をはじ 3. “インフラ”に求められるもの めとする大型の破綻が相次いだ。今年に入ってか このような社会的な環境変化や産業構造の転換 らの景気指標は、 「過去最悪」に代表されるように によって、社会インフラに求められる機能も大き ありがたくない形容詞の後に続く。日本銀行が4月 く変化してきている。例えば、産業や市民生活の 2日に発表した企業短期経済観測調査(短観)は、 情報化の基本となる光ファイバの整備やITS 企業の景況感が大幅に悪化し、消費低迷や金融シ (Intelligent Transport System) 、医療情報ネットワー ステム不安で変調をきした景気がさらに悪化しか クシステムの整備は、従来の公共投資による社会 ねないという判断を示した。 4月8日には、一般会計総額77兆6,692億円の98年 インフラ整備に比べて、情報化をべースとした “新社会インフラ”として認知されるべきである。 度予算が参院本会議で可決、成立した。先に与党3 これらは、デジタル情報通信網により他の公共シ 党がまとめた総額16兆円を越える総合経済対策に ステム、例えば地域における総合防災システムや 沿い、橋本総理は、公共事業の積み増し、所得税 CATV網などとシームレスにつながっている。 減税の実施を柱とする大型の追加景気対策の取り 昨今の技術革新において、生活に最も大きな影 まとめに着手すると表明したが、何とも心許ない。 響と可能性を与えたものにインターネットがある。 近年のアジア諸国の急速な工業化や情報産業を インターネットは、個人による情報の受発信のみ 中心とする米国製造業の復活により、情報通信な ならず産業分野においても大きな可能性をもたら どの日本の強みを生かした技術やソフト、これら している。Electric Commerceやイントラネット、 の複合体であるシステムやキーデバイスなどを中 CALSなどにおけるセキュリティの問題など、今後 心とする産業への転換が急がれている。 「ビッグバ 普及のために整備すべき課題はあるものの、各方 ン」が始まり、日本はあらゆる産業で真の国際化 面で“効率化”と、新ビジネスを創出している。 に対応できるシステムを構築しなければならない。 地方行政上の政策課題である環境・福祉・教育 このような産業構造の大転換期にありながら、 などの面においても、マルチメディアによる情報 今回の総合経済対策においては、従来ながらの建 提供や双方向性を利用した住民参加の促進など、 設・土木の公共事業が中心であるのはまことに遺 新しい行政の仕組みや夢のある社会システムが検 憾なことである。もはや、情報通信が大きな価値を 討されはじめているという。さらには、ひとつの 生み出すとことが明らかな時代にである。こうい 行政機関で複数の行政サービスが受けられる、い う分野に投資しなければ、日本の21世紀はどうな わゆるワンストップサービスの導入など、国政に るのであろうか。建設・土木が悪いというのでは おいても大きな可能性が秘められている。 ない。公共投資は、投資に見合った効果が期待で きる事業にのみ限定すべきであるということだ。 “PFI” (Private Finance Initiative)という方式が 4. “効率化”と歩む大型映像システム にわかにクローズアップされてきた。国や自治体 “効率化”を実現するツールという考え方を抜 などが担当していた社会資本の建設や運営を、民 きにしては、大型映像の展開も難しい。現在の経 間事業者の主導で進める方式のことである。急速 済状況もこのことを求めている。インターネット なスピードで進展する高齢化に伴う社会福祉の充 や多チャネル化する衛星放送などを議論する中で、 実、地球環境の悪化に伴うリサイクル・環境保 “コンテンツ”の重要性が叫ばれている。多くのヒ 護・省エネルギーへの要望が高まるなど多様化す ットを得るためには、よりよい視聴率を稼ぐため る社会のニーズに対応するためにも、旧態依然の には良い“コンテンツ”は欠くことができない。 財政支出の見直しは焦眉の急である。 “効率化”へ のパラダイムの転換が強く求められている。 “コンテンツ”が重要なことに間違いはない。しか し、大型映像システムの場合、 “コンテンツ”は明 確になっていることが多い。問題はいかに映像化 22 ︱eizojoho industrial G/特集/編集部 99.3.29 14:04 ページ 23 するかをはじめ、このコンテンツを生かすシステ につぎ込まれた。冷戦構造崩壊以降、優れた軍事 ム設計、仕掛け作りが重要であるように思う。今 技術の“民生”転換が活発である。フライトシミ 後、需要の増すことが予想される有望分野を挙げ ュレーションをはじめとするシミュレーション技 てみよう。 術もそのひとつである。現在でも各国・陸海空軍 q 制御監視 で利用されているが、航空、鉄道、船舶などの交 警察や、道路公団、電力・ガスなど準公共機 関、また化学プラントなどの製造設備では、い わゆる“監視・制御用”ディスプレイシステム 通関連施設での導入が期待されている。 e 多目的施設 “村おこし”で各地に登場した「⃝⃝博物館」 が業務の“効率化”ツールとして大きな力を発 「⃝⃝温泉ランド」などの施設でも、映像装置は多 揮している。各システムのプロセスを集中監視 用されているが、有効活用されているかというこ できるメリットは測り知れない(写真1)。 とになると疑問点が多い。 w シミュレーション 東西冷戦時代には、際限のない予算が軍事技術 さて、こうした状況を背景に、文化と情 報を国際規模で交流できる空間として開 業した「東京国際フォーラム」は、オー プンして1年が過ぎた。首都東京という特 殊な環境にあるものの、高稼働率をあげ ている。同施設での大型映像装置の利用 環境におけるシステム構成を詳報する。 以下の記事は、機器の納入を担当した松 下電器産業発行「National Technical Report」 写真1 関西電力のネットワークによる集中監視(三菱電機提供) 第43巻第5号をもとにした。 去る4月3日、東京恵比寿のシリコングラフィックス・クレイ社において、 バルコ主催の“Calligraphic Light ”のデモンストレーションが開催された。 “Calligraphic Light ”テクノロジは、実世界の光の輝きをコン ピュータグラフィックスの世界で実現させるための技術であ る。端的な例が、夜間の航空機視界・滑走路灯の表示である。 夕闇迫る空港が視界に現れ、着陸態勢に入る状況が実物以上 に再現されていた。 この技術は、BARCOグループのElectronic Imege Systems (EIS)社のプロジェクタ(EIS5080)と専用ボードにより実 現された。 “Calligraphic Light ”のポイント数は、昼間モード で1,600、夜間モードで6,000に及ぶ。走査周波数は水平60∼ 80kHz、垂直20∼90Hz。 当日は、シリコングラフィックス・クレイ社のONYX2で生 成されたCASA社(スペイン全土を網羅したデータベース)、 Thomson Training社(香港空港)のフライトシミュレーショ ンソフトがデモされたが、実写に迫る迫力であった。 ☆バルコ! 3 03-5950-8100 ☆シリコングラフィックス・クレイ! 3 03-5488-1834 May 1998︱ 23 G/特集/編集部 99.3.29 14:04 ページ 24 第2部 ■ 東京国際フォーラム ■ 写真1 東京国際フォーラムの全景 cハットリスタジオ 東京・有楽町駅前の旧都庁舎跡地に建設された東京国際フォーラムは、5,000人収容の大ホールをはじめとする4 つのホール、大・中・小の会議室、レセプションホールなど多数の施設を擁した大型の多目的施設である(写 真1) 。国際都市・東京のランドマークとして国際的な多様なイベントにフレキシブルに対応できる施設を基本 コンセプトとして、1997年1月より開業した。東京都の中核的施設として、また東京全域にわたる生涯学習セン ターとして位置づけられている。 1. 映像情報システムの概要 イビジョンの映像(音声)情報で効果的にサポー トするシステムである。 東京国際フォーラムの映像情報システムは、大 東京国際フォーラムは、ホールA棟からホールD 小4つのイベントホール、レセプションホール、展 棟およびガラスホールにより構成された大規模複 示ホール、大会議室や中小会議室、映像ホールの 合施設であり、コンサートや各種イベントあるい 24面マルチビジョン(写真2)やガラスホールロビ は国際的な大会議から小規模な会議、集会など、広 ーの16面マルチビジョンの諸設備を、AVセンタを 範囲な催しに対応可能な設備を備えている(図1) 。 中心として光ケーブルや同軸ケーブルなどの伝送 路で結び、施設の利用・運用をNTSC方式およびハ 東京国際フォーラムにおける映像情報設備とは、 AVスイッチングセンタを中心として、フォーラム 内の各ホール、会議室との映像/音声信号双方向 連携、および16面マルチビジョンや展示場に対す る映像送出が主なものである。映像信号について はハイビジョン信号(Y/Pb/Pr/SYNC)とコンピュ ータ画像信号(R/G/B/H/V)も考慮したものとなっ ている。ハイビジョン信号の配信としては、各調 整室内のUNIHI VTRなどがある。ホールA(5,000 人ホール) 、ホールC(1,500人ホール)については、 ハイビジョンカメラを用い、ホール内の各種イベ ントを撮影し、その映像を館内各所にハイビジョ ン中継する仕様となっている。両ホールについて 写真2 映像ホール cエスエス東京 24 ︱eizojoho industrial は、それぞれ400インチ、300インチのスクリーン G/特集/編集部 99.3.29 14:05 ページ 25 るため、専用のビデオ調整室を設置するとともに、 大会議室や展示ホール・レセプションホールにつ いても、施設の利用目的に見合った内容の映像音 声設備を常設している。また、中小会議室につい ては、可搬型の映像音声設備により、必要に応じ て対応できる。 ハイビジョン系については、その利用目的を明 確に打ち出した簡素なシステム対応とすることで、 設備投資を抑えている。具体的には、1台のHDラ イブカメラとHD書画カメラ装置により、国際会議 などの大型会議や講演会などにおける大型ビデオ プロジェクタへのカメラ実写映像の放映や資料提 示などを主体としたシステム構築を行った。 AVセンタ設備は、これらの分散設置された諸施 図1 東京国際フォーラムの諸施設の配置 設の映像情報サービス関連設備を統括あるいは運 用サポートするものとして設けたシステムであり、 諸施設相互間の番組交換機能や2つの独立した調整 (16:9)を配し、必要に応じて舞台最背面に設置 室での番組制作・編集機能をもっている。AVセン されたビデオプロジェクタからリア投写を行い、 タと諸施設は、AVネットワークで有機的に接続す 各種講演や催事の際にコンピュータ画像を含む高 ることにより、番組のVTR収録のみにとどまらず、 精細映像を効果的に利用できる仕様となっている。 複数の施設を使用した同時開催イベントへの対応 東京国際フォーラムの映像情報システムの構 や大規模イベント時のホールビデオ調整室に対す 築・設計にあたって、とくに配慮したことは、表 る演出運用サポートをも可能としている。 1に示すように多くの分散した多岐にわたる諸施 設に対する映像情報提供やホール映像演出を、い かに経済的に効率的に運用できるシステムとして 実現するかという点にあったという。また、サー 2. 東京国際フォーラムのAVネットワーク 東京国際フォーラムのAVネットワーク設備は、 ビス規模の拡大や高品位映像によるサービス内容 映像情報システムを支えるインフラ設備として重 の充実などの将来的な展開に対する拡張性・発展 要な意味をもっている。AVネットワークは、広範 性も重要な要素となった。大型複合施設である東 囲に分散した諸施設とAVセンタ内のAVスイッチ 京国際フォーラムの映像情報システムの基本的な ングセンタ間を光ケーブルと同軸ケーブル・音声 コンセプトは、 ケーブルによって接続することにより、館内各所 q 将来を見通した情報インフラ(AVネットワーク) からの映像・音声信号の受信と配信を可能にして の充実 w 設備の分散と集約による適正な設備投資と効率 的な設備運用 であった。 いる。 図2にAVネットワークの概念図を示す。東京国 際フォーラムでは、AVスイッチングセンタを介し た諸施設間の映像情報の送受ネットワークを形成 以上の基本的なシステム設計理念のもとに、東 することにより、分散設置された映像設備が相互 京国際フォーラムの映像情報システムは、AVネッ 補完あるいは共有化運用できる有機的な総合シス トワークシステムを基盤とした統合的なシステム テムが構成されている。 構築を行った。劇場形式の大規模ホールAとホー AVネットワークの伝送路については、各施設の ルCにはライブイベント時の独立運用を可能とす 利用目的やその規模に応じた適切な回線数を確保 May 1998︱ 25 G/特集/編集部 99.3.29 14:05 ページ 26 表1 映像情報システム施設の概要 26 ︱eizojoho industrial G/特集/編集部 99.3.29 14:05 ページ 27 ための「CATV自動送出シス AVセンタ ホールA 客席カメラ HD/NTSC ビデオ 調整室 (A504) 400インチ用 VP テム」や「ヘッドエンド設備」 AVスイッチング センタ (D837) ガラス棟 音響 調整室 (A511) 同時通訳 設備 中会議室6 (G610) 同時通訳 設備 ホールB 調整室 (B834) 同時通訳 設備 中会議室5 (G602) 同時通訳 設備 ホールC 客席カメラ HD/NTSC ビデオ 調整室 (C837) 300インチ用 VP 中会議室4 (G510) 同時通訳 設備 音響 調整室 (CM603) 同時通訳 設備 ホールD 中会議室3 (G502) 同時通訳 設備 音響 調整室 (D801) 同時通訳 設備 中会議室2 (G409) 映像ホール 24面マルチビジョン 同時通訳 設備 機 器 室 (D232) 中会議室1 (G402) 同時通訳 設備 レセプションホール 音響調整室 (B621) 展示ホール 会議室 (D503) 会議室 (D502) 会議室 (D401) 会議室 (G607) 会議室 (G606) 会議室 (G601) 会議室 (G605) 会議室 (G604) 会議室 (G603) 目的とするシステムであり、 会議室 (G509) 会議室 (G508) メタルケーブルによるNTSC系 会議室 (G507) 会議室 (G506) 映像音声伝送路およびハイビ 会議室 (G501) 会議室 (G505) 会議室 (G504) 会議室 (G503) 会議室 (G410) 会議室 (G408) 会議室 (G407) 会議室 (G406) 会議室 (G401) 会議室 (G405) 会議室 (G404) 会議室 (G403) AV調整室1 (D831) AV調整室2 (D834) AV編集室 (D840) アナウンス ブース (D833) ネットワークの回線交換を主 ジョン対応光伝送路のネット ワーク管理機能のほか、ホー ル設置のライブカメラ系統の 管理機能も備えている。 q カメラシステム系統 ホールAおよびホールCに は、リモコン雲台を使用した NTSC方式のライブカメラシス 1式をそれぞれ常設している。 CATV 自動送出 (D834) 同時通訳 設備 AVスイッチングセンタは、 映像情報システムにおけるAV テム4式とハイビジョンカメラ H/E 設備 大会議室 (DM604) 会議室 (D331) 会議室 (G608) 16面マルチビジョン 調整室2 (E2009) a AVスイッチングセンタ 会議室 (G609) マルチビジョン 機器室 (E1377) 調整室1 (E2008) も併せもっている。 また、ハイビジョン方式の書 凡例 1. は、光伝送路(HD対応)を示す。 2. は、メタル伝送路(HD映像・音声 専用ライン)を示す。 3. は、メタル伝送路(同軸ケーブル・ 音声ケーブル)を示す。 4. 図中( )内の英数字は、施設ブロック名およ び部屋番号を示す。 画カメラシステムについても、 それぞれ1式設備している。こ れらのカメラ群はホールイベ ントの内容に応じた運用形態 に合わせ、柔軟な対応がはか 図2 AVネットワーク概念図 れるようにシステム的な考慮 をしている。 するものとし、とくにホールAからDの調整室と大 会議室には、ハイビジョン信号の伝送に対応した w 光伝送路 本システムでは、GIモード仕様の12芯マルチコ 双方向光伝送路を常設している。なお、光伝送路 ア光ケーブルを使用し、16ケ所の館内施設に対し については、NTSC映像4回線と4チャネル音声回線 て、AVスイッチングセンタを核としたスター型の として使用することもできる。 光伝送AVネットワークを構築している。 とくに、ホールAからホールDと大会議室の5施 3. AVセンタ映像情報システム AVセンタはホール棟Dブロックの8階に位置し、 設に対しては、ハイビジョン送受伝送路として2チ ャネルを割り当てている。また、その他の施設に ついては、AVスイッチングセンタからの送信幹線 東京国際フォーラムの映像情報システムの中枢と チャネル(下りチャネル)として各1系統を常設し しての役割を担っている設備である。AVセンタは、 ている。なお、これらの片方向の伝送路について 「AVスイッチングセンタ」 「AV調整室1」 「AV調整 は、必要に応じて光伝送モジュールの差替えによ 室2」「アナウンスブース」「AV編集室」により構 り、上りチャネルとして使用することもできるが、 成され、館内CATV向け自主放送や再送信を行う 予備ケーブルとして光ケーブル6芯を残しており、 May 1998︱ 27 G/特集/編集部 99.3.29 14:05 ページ 28 将来の拡張対応として容易に上りチャネルの増設 ができるように配慮している。 がはかれるようにも考慮している。 また、各施設に対しては、NTSC基準同期信号と 東京国際フォーラムのAVネットワーク光伝送路 してBB(ブラックバースト信号)を、ホールAと の特長として、映像信号の送受信にべースバンド ホールCおよびAV調整室1についてはハイビジョ 伝送方式の光伝送装置(E/OおよびO/E)を採用し ン3値同期信号をも分配供給しており、館内の映像 ていることがあげられる。この装置は30MHz帯城 情報システム全体として、同期の一元化をはかっ のべースバンドハイビジョン映像信号の伝送能力 ている。 をもっており、送受4式でY、Pb、Pr映像信号と3 s AV調整室1 値同期信号用の4チャネルの映像信号伝送路として AV映像調整室1は、AVセンタ映像情報設備のサ いる。また、音声信号については、送受2式でL、R ブ設備として、AVスイッチングセンタに隣接した およびC、Sの2チャネルデジタル多重音声信号伝 位置に設置され、NTSC、ハイビジョン情報におけ 送路とし、映像伝送路と合わせてハイビジョン映 るホールビデオ調整室制作ライブ番組の収録や再 像・音声信号の伝送路1系統を構成している。 加工配信、および番組編集のためのホール制作支 e NTSC系番組入出力分配システム 援機能と編集加工処理機能を備えた調整室である。 NTSC系映像・音声情報は、東京国際フォーラム q 主なシステム機能群 の映像情報サービスの主体であり、施設相互間の ・ホール内カメラの遠隔制御システム 回線交換や番組配信機能を充実させるとともに、 ・ホール番組の収録、再加工向け編集システム 運用操作性・監視機能についても十分考慮したシ ・高品質映像情報の配信と受信システム ステムとしている。 回線交換部は、AV調整室1と2を基点とした入力 AVセンタとの情報交換信号には、以下の内容が ある。 分配マトリクススイッチャと出力分配マトリクス NTSCカメラ制御情報 ×4回線 スイッチャによりシステムを構築しており、館内 ハイビジョンカメラ制御情報 ×1回線 各所の施設からのライブ番組映像音声上り信号は、 書画装置制御情報 AV調整室1もしくは2の番組リソース信号として取 NTSC系AV情報 下り×1回線 り込みを行った後に、出力系のマトリクススイッ チャにより、必要箇所へ分配配信することを番組 ハイビジョン系AV情報 は、放送局におけるマスタコントロールルームに 上り×1回線 下り×1回線 管理の基本的な考え方としている。いわば、AVセ ンタのAVスイッチングセンタと2つのAV調整室 ×1回線 上り×4回線 ・ハイビジョン映像も含むホールライブ番組制作 支援映像調整システム 準じた役割を担っているともいえる。AV調整室で ・音声系ホールライブ番組制作支援調整システム は、必要に応じてライブ番組のVTR収録を行うほ d ホールA調整室 か、プログラムの再加工処理などの運用サポート ホールAには、3階分のスペースを使った吊り物 にも対応が可能である。なお、入力分配マトリク 用大規模昇降設備などさまざまな舞台装置があり、 ススイッチャには、汎用の選択出力「UTL1」と 立体空間を自由に演出できる仕組みが備わってい 「UTL2」の2系統を備え、出力分配マトリクススイ る。また、最大規模の国際イベントホールにふさ ッチャの入力として供給する形態をとっているた わしく、客席をはじめ、ステージ、ホールの内装 め、館内施設からの上り信号はAV調整室を介さず 仕上げは、高級感あふれる最高級の建築工法が施 に直接他施設へ配信することも可能としている。 されている(写真3) 。 ホールや会議室などの各施設とAVスイッチングセ このようなホールでのイベント効果を最大限発 ンタ間には、施設の利用目的を想定した本数の映 揮できるよう、リア投写型400インチスクリーン対 像音声トランク(汎用連絡ケーブル)を設備して 応プロジェクタ、フィルム映写機器やマルチサラ おり、イベントの内容や規模に応じて柔軟に対応 ウンド音響など、さまざまな演出効果用設備が用 28 ︱eizojoho industrial G/特集/編集部 99.3.29 14:06 ページ 29 ンタ経由副調整室からも制御可能 w 書画装置 書画装置はステージ内のどの位置にも移動可能 で、講演者または補助者による資料セットが簡単 にでき、映像による補助資料提供を行う。 ・NTSC書画映像とハイビジョン書画映像の放映が 可能 ・NTSC書画装置は、ハイビジョン書画装置を流用 して放映可能 ・ハイビジョン書画装置はB4サイズの反射・透過 写真3 5,000人収容のホールA c川澄建築写真事務所 原稿から35mmスライドフィルムまでを映像変換 e 映像情報配信、受信システム 本設備で制作・加工される映像情報を使用目的 意されている。また、国際会議を含むイベント用 に合わせ、光AVネットワークまたは同軸網でAV に支援設備も充実しており、たとえば8室の同時通 スイッチングセンタと効率よく、映像品位を損な 訳ブースで、最大8ヶ国語までの同時通訳を行うこ うことなく配信、受信を行う。 ともできる。 ・AVネットワークは、広帯域光伝送装置と低損失 大規模イベント対応のホールA調整設備は、以 下に述べるシステム群で構成されており、これら のシステムは有機的に機能群が結合され、各種イ ベントにおける情報提供、イベント支援など多目 的に映像情報を制作、加工、配信できる。 q カメラシステム カメラシステムはステージの左右アングル、セ ンタアングルからのイベント内容を漏れなく撮る マルチ同軸の採用で高品位画像を保証(7C2V相 当の特性を確保) ・光伝送装置は1装置で4系統の映像情報と4チャネ ルの音声情報の送受信ができる ・光伝送装置1装置でハイビジョン映像音声1系統、 NTSCでは、映像4系統2チャネル音声2系統の送 受信が可能 r 映像調整システム ことと、自由なショット位置での撮影映像を映像 カメラ映像および調整室内単体機器からの映像 調整システムに提供する役割をもつ。NTSCカメラ を加工処理し、ホールプロジェクタとAVスイッチ 映像とハイビジョンカメラ映像をサポートし、カ ングセンタに配信する。映像信号の特性監視、維 メラワークはすべて雲台制御方式を採用した。カ 持を行う。NTSC映像加工処理装置にD2シリアル メラ調整はホール調整室と副調整室(AVセンタ) 対応デジタルスイッチャを採用。デジタルスイッ の両室からの運用が可能になっている。 チャはアナログ入出力へ対応し、独立のPGM、VE、 ・NTSCカメラ4台とハイビジョンカメラ1台による プレビュー監視ができる。また、プロジェクタ用 映像配信 ・NTSCカメラはステージに対し左右2ヶ所とセン タからの撮影が可能 ・ハイビジョンカメラはセンタからの撮影が可能 ・雲台制御はパン、チルト、ターン、ズーム、フ ォーカス制御とショットメモリ再生が可能(カ メラは6階客席前部床下へ設置) ・バストショットからステージ全景までの自由な 撮影が可能 ・雲台制御、カメラ調整は、パッチ切替えでAVセ ハイビジョン映像変換システムを装備。 ・カメラ4台、CG、VTR(D2)書画映像など16素材 の加工合成とPGM列、PVW列、VE列への出力 ・4:1のハイビジョンスイッチャを装備し、プロジ ェクタ、AVセンタ配信が可能 ・すべての入力素材、選択された出力映像の測定、 監視が可能 t 音声調整システム ビデオ調整室内音声システムは、音響調整室か らの4チャネル音声と調整室内映像付帯音声信号を May 1998︱ 29 G/特集/編集部 99.3.29 14:06 ページ 30 したがって、各建物間、設備間を相互にネットワ ークされるシステムでは、以下の項目に留意した 設計が必要である。 q システム初期の段階で電源設備系統とアース系 統の使い分けをきちっと整理する。 w アースは機器専用アースと保安アースを明確に 使い分ける。 e 設置される機器は建物との絶縁をとり、フロー ティング環境をつくる。 r フローティングした機器は適切なアースポイン 写真4 ホールC cエスエス東京 トに1点アースで接地する。 s 光伝送と同軸伝送の考え方 大型システムでは、広範囲のAVネットワークが ミキシングして音響室、AVセンタへ配信する役割 必要となり、伝送距離は数10mの極めて短い設備 をもつ。 間配信から約lkmに及ぶ長距離の伝送が必要とな ・音声入力は最大12系統のミキシングと1系統 る。このような伝送形態の経済性と特性の確保を (4ch) 、2系統(2ch)の出力バスをもつ 両立させるためには、同軸伝送方式と光伝送方式 ・出力バスは2チャネル、4チャネルの使い分けが を併用することとし、どちらを使用するか定量的 できるグループフェーダをもち、用途により使 な目安を定めた。定量的に振り分けするには、同 い分けが可能 軸にイコライザ補償を行ったときの特性劣化状態 ・音響調整室、AVセンタ、VTR収録のレベル調整 が独立 ・独立のモニタ出力バスをもち事前視聴が可能 が、光伝送を行った場合の特性より下回ったとこ ろを同軸伝送と光伝送との切り分け点とし、トー タル伝送の特性補償とコストバランスの評価を初 期段階で行う必要がある。 f ホールC設備 ホールC(写真4)は、同施設内で第2の規模を d 複合化対応 東京国際フォーラムのような超大型システムは、 持つ多機能ホールで1,500人を収容する。ホールC 広範囲にわたる複数の施設との統合化により構築 に設置された映像調整設備は、ホールAと同様の されている。これは、システムインテグレート技 構成・性能を持つ制作情報提供システムである。 術と合わせて施工設計技術、建築対応設計技術な ど、システムを総括的にまとめていく多くの要素 4. システム導入での配慮すべき点 技術を導入することにより遂行可能となったもの である。システムの大型化と複合化は、今後ます 東京国際フォーラムの映像情報システムの詳細 ます顕著に進むであろうと予想され、そうしたシ について述べたが、大型システムの導入にあたり、 ステムに対応するためには、ハイインテリジェン とくに配慮された点は以下のとおりである。 ト化対応技術とマルチメディア技術を融合した統 a 機器接地の考え方 合技術が必要であると考えられる。 今回導入を行った東京国際フォーラムのような 大型システムでは、各設備が各々の建物に分散さ れているため、機器アースのポテンシャルが設置 [ 参考文献 ] 場所により異なる。ポテンシャルに違いが生じる 榎元宏明、巻頭言:大型公共システム特集号に ため、各設備間、機器間に相互干渉誘導を生じ、 よせて、National Technical Report、Vol.43、 各機器の映像信号、音声信号に悪影響を与える。 No.5、pp.2-4、1997 30 ︱eizojoho industrial
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