1 - ファイザー株式会社

ジェノトロピン
®
一般名:ソマトロピン(遺伝子組換え)
CTD 第 2 部 資料概要
2.6 非臨床概要
毒性試験
ジェノトロピン®5.3mg
ジェノトロピン®ミニクイック皮下注用 0.4mg
ジェノトロピン®ミニクイック皮下注用 0.6mg
ジェノトロピン®ミニクイック皮下注用 0.8mg
ジェノトロピン®ミニクイック皮下注用 1.0mg
ジェノトロピン®ミニクイック皮下注用 1.2mg
ジェノトロピン®ミニクイック皮下注用 1.4mg
ジェノトロピン®ミニクイック皮下注用 1.6mg
ジェノトロピン®ミニクイック皮下注用 1.8mg
ジェノトロピン®ミニクイック皮下注用 2.0mg
ジェノトロピン®注射用 12mg
ファイザー株式会社
ジェノトロピン
目
2.6 非臨床概要
毒性試験
目次
Page 3
次
2.6.6
毒性試験の概要文..............................................................................................................5
2.6.6.1
まとめ...........................................................................................................................6
2.6.6.2
単回投与毒性試験 ........................................................................................................9
2.6.6.3
反復投与毒性試験 ........................................................................................................9
2.6.6.4
遺伝毒性試験.............................................................................................................. 11
2.6.6.5
がん原性試験.............................................................................................................. 11
2.6.6.6
生殖発生毒性試験 ...................................................................................................... 11
2.6.6.7
局所刺激性試験 .......................................................................................................... 11
2.6.6.8
その他の毒性試験 ...................................................................................................... 11
2.6.6.9
考察および結論 ..........................................................................................................12
2.6.7
毒性試験概要表................................................................................................................15
ジェノトロピン
2.6 非臨床概要
毒性試験
目次
Page 4
2.6.6 毒性試験の概要文
ジェノトロピン
2.6.6
Page 5
毒性試験の概要文
本項で使用した用語および略号を表 2.6.6.1 に示した。
表 2.6.6.1 用語および略号一覧
用語および略号
内容
AGHD
成人成長ホルモン分泌不全症
AUC0-24h
投与後 24 時間までの血清中濃度−時間曲線下面積
Cmax
最高血清中濃度
F0
親世代
F1
第 1 世代
GH
成長ホルモン
IGF-I
I 型インスリン様成長因子
IU
国際単位
PCA
受身皮膚アナフィラキシー
毒性試験実施当時のジェノトロピンの単位は IU 表示であったため,本項では必要に応じて IU
表示と mg 表示を併記した。両者間の換算率は,原著に別途記載ある場合を除き,1 mg = 3 IU で
ある。
ジェノトロピン
2.6.6.1 まとめ
Page 6
2.6.6.1 まとめ
今回の成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)に対する適応症の追加申請にあたり,成人に対
して長期間投与されることを考慮し,性的に成熟したカニクイザルを用いて 12 ヵ月間反復皮下
投与試験を行った。本試験は日本,OECD および FDA の毒性試験法および GLP ガイドラインに
準拠して実施した。
ジェノトロピンの 0.13,0.65 および 3.23 mg(0.4,2 および 10 IU)/kg/day を 52 週間反復皮下
投与したところ,血清中 IGF-I の増加が雄は 0.13mg/kg/day 以上,雌は 0.65 mg/kg/day 以上で,血
清中インスリンの増加が雄の 0.65 mg/kg/day 以上で,また雌雄における血清中プロラクチンの減
少および雌における黄体期と推定される時期の血清中プロゲステロンの減少が 3.23 mg/kg/day で
認められた。また,月経周期の延長の発現頻度が 3.23 mg/kg/day 群で上昇し,3.23 mg/kg/day 群
の 1 例において,不正子宮出血を伴う月経周期の消失が投与期間中にわたって観察された。組織
学的な所見としては,雌雄における腹部脂肪細胞の肥大および雌における乳腺腺房の拡張がすべ
ての薬物投与群で認められ,また 3.23 mg/kg/day 群では雌雄において乳腺腺房の過形成も認めら
れた。これらの所見はいずれも成長ホルモン(GH)の薬理作用によるものと考えられ,12 週間
の休薬後では認められなかった。無毒性量は,3.23 mg/kg/day において乳腺腺房の過形成および
月経周期の延長もしくは消失の頻度上昇が認められたことより雌雄ともに 0.65 mg/kg/day と考え
られ,この用量における AUC0-24h は雄が 2.66 µg (8.22 mIU)・h/mL,雌が 2.32 µg (7.19 mIU)・h/mL
(投与 1 日目)であり,AGHD 患者に 0.04 IU/kg/day(0.013 mg/kg/day:体重 75 kg の患者におけ
る臨床最大投与量 1 mg/body/day に相当)を投与した時の AUC0-24h(115.4 ng・h/mL)のそれぞれ
23 および 20 倍であった。
前回申請までに実施した毒性試験の概略を以下に示した。今回の申請用量(最大 1
mg/body/day)は既承認効能における用量(最大 0.05 mg/kg/day;2.7.3.1 表 3)の範囲内であり,
また投与経路(皮下)の変更もないため,既承認の毒性試験成績による本申請における安全性の
評価は可能と考えられる。
2.6.6.1.1
単回投与毒性試験
マウスおよびラットにおける急性毒性を筋肉内投与,皮下投与および経口投与にて,またアカ
ゲザルにおける急性毒性を筋肉内投与にて検討した。
マウス,ラットでは,筋肉内投与で臨床用量の 560 倍に当る 40 IU/kg,皮下投与で 1120 倍に
当る 80 IU/kg,また経口投与で 2240 倍に当る 160 IU/kg を投与したが,死亡例はなく,また症状
等にも全く異常は認められなかった。アカゲザルでは 16 IU/kg(臨床用量の約 200 倍)を筋肉内
投与したが,死亡例はなく,症状等にも全く異常は認められなかった。
2.6.6.1.2
反復投与毒性試験
ラットおよびカニクイザルによる検討を行った。ラット 1 ヵ月間筋肉内投与試験において,雌
では GH の薬理作用と考えられる体重増加,乳腺腺房増生が 0.625 mg (1.7 IU)/kg/day 以上で,ま
ジェノトロピン
2.6.6.1 まとめ
Page 7
た子宮における脱落膜反応が 3.125 mg (8.4 IU)/kg/day 投与の 1 例に認められ,最大無影響量は
0.125 mg (0.34 IU)/kg/day と考えられた。ラット 3 ヵ月間皮下投与試験では,1 IU/kg/day 以上でそ
の成長促進または薬理作用に基づくと考えられる変化が肝臓,腎臓,副腎に認められたが,毒性
学的に重大な意味のある変化とは考えられず,また休薬により回復した。サル 3 ヵ月間皮下投与
試験では,0.125 mg (0.33 IU)/kg/day 以上で血中コレステロール値の減少が,また 3.125 mg (8.33
IU)/kg/day 投与で雄に乳腺導管増生が認められ,最大無影響量は 0.125 mg (0.33 IU)/kg/day 未満と
考えられた。
2.6.6.1.3
遺伝毒性試験
細菌を用いた復帰変異試験(Ames)およびマウスリンパ腫 L5178Y 細胞を用いた遺伝子突然変
異性試験,ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験およびラット骨髄細胞での染色体異常試験にお
いて,いずれも陰性の成績であり,ジェノトロピンは遺伝毒性を有さないと考えられた。
2.6.6.1.4
がん原性試験
ジェノトロピンは,ヒトの GH と全く同一のアミノ酸配列を有する遺伝子組換え医薬品であり,
下垂体抽出ヒト成長ホルモンは長年の使用においても,その安全性に対して特に問題は認められ
ず,また,実験動物に対して異種蛋白であることから,免疫反応が生じる可能性が高く,長期毒
性試験は実施困難と考えられた。更に,本薬の製造方法から勘案される大腸菌ペリプラズム蛋白
の混入は 2 ng/IU 以下であり,他の不純物の混入も否定されたので,がん原性試験は実施しなか
った。
2.6.6.1.5
生殖発生毒性試験
2.6.6.1.5.1. ラットを用いた受胎能および着床までの初期胚発生に関する試験
F0 生殖能に対しては,3 IU/kg 以上で雌の性周期への影響および 10 IU/kg で雌雄の交尾率,妊
娠率の低下が認められたが,F1 胎児では着床,胚・胎児致死作用,催奇形作用および胎内発育へ
の影響はなかった。生殖能に対する最大無影響量は雄で 3 IU/kg,雌で 1 IU/kg,また,胚・胎児
に対する最大無影響量は妊娠前・妊娠初期投与では 3 IU/kg,妊娠初期投与では 10 IU/kg であっ
た。
2.6.6.1.5.2. ラットおよびウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験
ラットを用いた胚・胎児発生に関する試験において母体では 1 IU/kg より体重増加の促進が認
められたが,胎児では胚・胎児致死作用,催奇形作用および胎内発育への影響はなく,また,F1
生後の機能,分化,発育への影響もなく,胎児に対する最大無影響量は 10 IU/kg であった。
ウサギを用いた胚・胎児発生に関する試験において 1 IU/kg 以上の投与で母体体重増加抑制お
よび摂餌量の低値が,また一部の母体に軟便が観察された。胎児の観察では,胚・胎児致死作用
並びに催奇形作用は認められなかったが,母体体重に影響の認められた 4 IU/kg 投与で生存胎児
体重が低値を示した。化骨進行に影響は認められなかった。以上のことより,ジェノトロピンの
ジェノトロピン
2.6.6.1 まとめ
Page 8
母体に対する無影響量は 0.25 IU/kg,胎児に対する無影響量は 1 IU/kg と考えられた。
2.6.6.1.5.3. ラットを用いた出生前および出生後の発生並びに母体の機能に関する試験
F0 では分娩および哺育に影響はなかった。 F1 では 10 IU/kg で授乳期に一過性の体重増加の促
進が認められたが,生後の機能,分化への影響はなく, F1 に対する最大無影響量は 3 IU/kg で
あった。
2.6.6.1.6
局所刺激性試験
筋肉内投与による局所刺激性をウサギを用いて検討した結果,局所障害性は生理食塩液と同程
度であった。
2.6.6.1.7
その他の毒性試験
サルの反復皮下投与試験における抗体産生並びにモルモットにおける抗原性を検討した。サル
に 3 ヵ月連続投与した結果,抗ヒト GH 抗体および大腸菌のペリプラズムペプチドに対する抗体
産生は認められなかった。モルモットに対する皮内反応,全身性アナフィラキシー反応,PCA 反
応およびゲル内沈降反応による検討では,いずれの試験においても異種蛋白によると考えられる
陽性の結果を得た。
ジェノトロピン
2.6.6.2
2.6.6.4 遺伝毒性試験
Page 9
単回投与毒性試験
単回投与毒性試験は,下垂体性小人症の申請時に,マウスおよびラットにおいて筋肉内,皮下
および経口投与にて,またサルにおいて筋肉内投与にて実施されている(下垂体性小人症 概要
p.124,成績の要約は 2.6.6.1 参照)
。
2.6.6.3
反復投与毒性試験
2.6.6.3.1. サルにおける 12 ヵ月間反復皮下投与毒性試験
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 添付資料 4.2.3.2
カニクイザルにおける 3 ヵ月間皮下投与試験(下垂体性小人症 概要 p.126)では,ジェノト
ロピンを投与した全群において血中コレステロール値の減少が認められたが,高用量の 3.125 mg
(8.33 IU)/kg/day では 8 週間の休薬期間後にも減少を認めたため,本試験における最高用量を 3.23
mg (10 IU)/kg/day とした。低用量の 0.13 mg (0.4 IU)/kg/day は,骨端線閉鎖を伴わない下垂体性小
人 症 並 び に タ ー ナ ー 症 候 群 等 に お け る 臨 床 投 与 量 ( 0.175 〜 0.35 mg/kg/week : 0.025 〜 0.05
mg/kg/day に相当)の 2.6〜5.2 倍に相当する。中間用量には,公比 5 として 0.65 mg (2 IU)/kg/day
を設定した。
性的に成熟したカニクイザルに溶媒(グリシン−リン酸緩衝液)に溶解したジェノトロピンを
1 日 1 回 52 週間反復皮下投与した。また対照群および 3.23 mg/kg/day 群では一部の動物について
12 週間の休薬期間を設け,その回復性について検討した。更に,投与前,投与 1 日,27 週およ
び 50 週目に血清中薬物濃度を測定した。
0.13 mg/kg/day 群の雄 1 例を投与 210 日目に切迫屠殺した。この動物では屠殺前の約 5 週間に
わたり,補助栄養食を与えたにもかかわらず下痢と栄養失調が認められ,その原因は慢性腸炎に
よる衰弱および脱水と考えられた。本試験は野生のカニクイザルを用いて実施した。腸炎は野生
で捕獲されたカニクイザルにおいて散発的に観察される所見で,その原因は必ずしも明らかでは
ないが,寄生虫感染が腸炎を引き起こす可能性があることが考えられる。
また,本試験の他の動物で認められた消化器系に関する剖検および組織学的所見は対照を含む
各群で散発的に見られるのみで,用量相関性も認められない。このように,切迫屠殺例以外の動
物で特に問題となるような所見が消化器系に認められなかったことより,切迫屠殺例で発現した
腸炎は,本剤の投与とは関連しないと考えられる。
内分泌検査における投与に関連した変化としては,血清中 IGF-I の増加が雄は 0.13mg/kg/day
以上,雌は 0.65 mg/kg/day 以上で,血清中インスリンの増加が 0.65 mg/kg/day 以上の雄で,また
雌雄における血清中プロラクチンの減少および雌における黄体期と推定される時期の血清中プロ
ゲステロンの減少が 3.23 mg/kg/day で認められた。これらの変化は,回復性試験で確認できなか
ったプロゲステロンを除き,休薬によって回復した。これらの内分泌検査値の変化は,GH の薬
理作用によるものと考えられ,毒性学的な意義は低いと考えられた。
ジェノトロピン
2.6.6.4 遺伝毒性試験
Page 10
クレアチニンクリアランスは,投与 49 週目の 0.13 mg/kg/day 群の雌においてのみ対照群と比
較して有意な低値を示したが,用量依存性はなく,ジェノトロピンの投与に関連した変化ではな
いと考えられた。
組織学的な所見としては,雌雄における腹部脂肪細胞の肥大および雌における乳腺腺房の拡張
がすべての薬物投与群で認められ,また 3.23 mg/kg/day 群では乳腺腺房の過形成が雌雄で認めら
れたが,休薬によって回復した。
精巣容積は 0.65 mg/kg/day 群においてのみ対照群と比較して有意な低値を示したが,投与開始
前より低値傾向を示し,用量依存性もなかったことから,ジェノトロピンの投与に関連した変化
ではないと考えられた。
月経周期の延長の発現頻度が 3.23 mg/kg/day 群で上昇した。また,3.23 mg/kg/day 群の 1 例に
おいて不正子宮出血を伴う月経周期の消失が投与期間中にわたって観察されたが,休薬によって
回復した。0.65 mg/kg/day 群でも月経周期の消失は 5 例中 1 例に認められた。しかし,本試験で
使用した野生のサルでは月経周期の変動は頻繁に起こっており,月経周期の延長は対照群でも 7
例中 3 例の動物で 5 件認められた。さらに,投与前の検査においても対照群を含む各群で月経周
期の延長が認められていることから,0.65 mg/kg/day 群で 1 例のみに認められた月経周期の消失
は,月経周期への影響の頻度において対照群あるいは投与前検査を超えるものではなく,本剤の
投与に関連した所見ではないと考えられる。一方,3.23 mg/kg/day 群では 7 例中 6 例で月経周期
の延長(13 件)または消失(2 例)が認められ,対照群と比較しても明らかにその頻度が上昇し
ていることから,3.23 mg/kg/day 群における月経周期への影響は本剤の投与によるものと考えら
れた。
組換えヒト GH に対する抗体を測定した結果,対照群および 3.23 mg/kg/day 群のいずれも雄1
例で,それぞれ投与 52 週および 26 週目に抗体が検出されたのみであった。
一般症状観察において対照を含む全群で投与部位の硬結が認められ,また同様に投与部位局所
において,剖検では血腫,病理組織学的検査では出血,炎症性細胞浸潤,小肉芽腫および繊維症
等が対照を含む全群で認められた。これらは反復皮下投与の影響によるものと考えられ,頻度お
よび程度において群間に大きな差はなかった。
その他の体重,摂餌量,精子検査,眼科学的検査,心電図,血圧,血液学的検査,血液生化学
的検査,尿検査,器官重量および骨髄検査について,ジェノトロピン投与による影響は認められ
なかった。
血清中薬物濃度は投与量に比例して上昇し,性差および蓄積性は認められなかった。
以上の結果よりジェノトロピンをカニクイザルに 52 週間反復皮下投与した際の無毒性量は,
3.23 mg/kg/day において乳腺腺房の過形成および月経周期の延長あるいは消失の頻度上昇が認め
られたことより,雌雄ともに 0.65 mg/kg/day と考えられた。無毒性量における AUC0-24h は雄が
2.66 µg (8.22 mIU)・h/mL,雌が 2.32 µg (7.19 mIU)・h/mL(投与 1 日目)であり,AGHD 患者に
0.04 IU/kg/day(0.013 mg/kg/day:体重 75 kg の患者における臨床最大投与量 1 mg/body/day に相
当)を投与した時の AUC0-24h(115.4 ng・h/mL)1) のそれぞれ 23 および 20 倍であった。
ジェノトロピン
2.6.6.3.2.
2.6.6.4 遺伝毒性試験
Page 11
前回申請までに実施された試験
下垂体性小人症の申請時に,ラット 1 ヵ月(筋肉内投与),ラット 3 ヵ月(皮下投与)および
サル 3 ヵ月(皮下投与)の反復投与試験が実施されている(下垂体性小人症
概要 p.125〜131,
成績の要約は 2.6.6.1 参照)。
2.6.6.4
遺伝毒性試験
下垂体性小人症の申請時に,細菌を用いた復帰変異試験(Ames)およびマウスリンパ腫
L5178Y 細胞を用いた遺伝子突然変異性試験,ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験およびラッ
ト骨髄細胞での染色体異常試験が実施されている(下垂体性小人症
概要 p.138〜144,成績の
要約は 2.6.6.1 参照)
。
2.6.6.5
がん原性試験
ジェノトロピンは,ヒトの GH と全く同一のアミノ酸配列を有する遺伝子組換え医薬品であり,
下垂体抽出ヒト成長ホルモンは長年の使用においても,その安全性に対して特に問題は認められ
ず,また,実験動物に対して異種蛋白であることから,免疫反応が生じる可能性が高く,長期毒
性試験は実施困難と考えられた。更に,本薬の製造方法から勘案される大腸菌ペリプラズム蛋白
の混入は 2 ng/IU 以下であり,他の不純物の混入も否定されたので,がん原性試験は実施しなか
った。
(下垂体性小人症 概要 p.145)。
2.6.6.6
生殖発生毒性試験
生殖発生毒性試験は,下垂体性小人症の申請時にウサギにおける胚・胎児発生に関する試験が
実施され,ターナー症候群の申請時にラットにおける受胎能および着床までの初期胚発生に関す
る試験,胚・胎児発生に関する試験,並びに出生前および出生後の発生並びに母体の機能に関す
る試験が実施されている(下垂体性小人症
概要 p.133〜135,ターナー症候群
概要 p.25〜34,
成績の要約は 2.6.6.1 参照)。
2.6.6.7
局所刺激性試験
下垂体性小人症の申請時にウサギにおける筋肉内投与による局所刺激性試験が実施されている
(下垂体性小人症 概要 p.146,成績の要約は 2.6.6.1 参照)
。
2.6.6.8
その他の毒性試験
下垂体性小人症の申請時にサル 3 ヵ月間皮下投与試験における抗体産生およびモルモットにお
ける抗原性が検討されている(下垂体性小人症 概要 p.136〜137,成績の要約は 2.6.6.1 参照)
。
ジェノトロピン
2.6.6.9
2.6.6.9 考察および結論
Page 12
考察および結論
前回申請までにジェノトロピンについて実施された反復投与毒性試験で認められた主な所見は,
ラット 1 ヵ月間筋肉内投与試験における体重増加,乳腺腺房増生および子宮における脱落膜反応,
並びにサル 3 ヵ月間皮下投与試験における血中コレステロール値の減少および乳腺導管増生であ
り,これらはいずれもジェノトロピンの GH としての生物学的活性に起因するものと考えられる。
今回実施したサル 12 ヵ月間皮下投与試験で認められた主な所見も,血清中プロラクチンの減
少,血清中インスリンの増加,血清中プロゲステロンの減少,血清中 IGF-I の増加,月経周期の
延長あるいは消失の発現頻度上昇,脂肪細胞の肥大,並びに乳腺腺房の拡張および過形成と,い
ずれも GH の直接的な,あるいはプロラクチン様作用などの二次的な薬理作用を介したものと考
えられた。
血清中 IGF-I 濃度は 075 臨床試験においても有効性評価項目として測定されており,ジェノト
ロピンの投与によってプラセボ群と比較して有意な上昇が認められている(2.7.3.3.2.2.3
薬力学
的指標に対する効果 表 19)。
GH に抗インスリン作用および糖尿病誘発作用があることは古くから知られており,本剤につ
いて下垂体性小人症の申請時に実施した薬理試験でも確認されている。本試験で認められた血清
中インスリン濃度の上昇はこれらの作用のフィードバックによる可能性が考えられ,臨床におい
ても同様の影響が起こる可能性が考えられるため,本剤の糖尿病患者に対する投与は禁忌とされ
ている。
GH とプロラクチンは共に下垂体前葉から分泌され,互いに類似した遺伝子およびアミノ酸配
列を持つペプチドであり,GH はプロラクチン受容体に結合してプロラクチン様作用を示すこと
が知られている。高用量(3.23 mg/kg/day)における血清中プロラクチン濃度の低下は,このプ
ロラクチン様作用に伴う負のフィードバックによる可能性が考えられる。また,高プロラクチン
血症においては,黄体不全に伴い,月経周期の延長や無月経,またプロゲステロン分泌阻害が生
じることが知られており,本試験で認められた月経周期の延長または消失,あるいは血清中プロ
ゲステロン濃度の低下も,GH の投与によるプロラクチン様作用に起因している可能性が考えら
れる。しかしながら,これらの影響が認められた 3.23 mg/kg/day 群の投与 1 日目における
AUC0-24h は雄で 17051 ng・h/mL,雌で 15687 ng・h/mL で,これは AGHD 患者における AUC0-24h
(115.4 ng・h/mL)1)のそれぞれ約 148 倍および 136 倍に相当する。さらに,075 および 076 臨床
試験においても高プロラクチン血症の際に見られる月経周期の異常・乳汁漏出などの有害事象は
認められておらず(2.7.4.2.1.1.1
有害事象の発現頻度とその重症度
表 6),本試験で認められ
た所見がヒトにおいて発生する可能性は低いと考えられる。
このように,臨床上問題となるような副作用を示唆する所見は認められなかったが,3.23
mg/kg/day において乳腺腺房の過形成および月経周期の延長あるいは消失の頻度上昇が認められ
たことより,無毒性量は雌雄ともに 0.65 mg/kg/day と考えられた。本試験成績より,ジェノトロ
ピンを成熟サルに 12 ヵ月という長期間投与した時の毒性所見は,これまでラットおよびサルの
3 ヵ月までの投与で確認された毒性プロファイル(GH の薬理作用を介した作用)と共通である
ことが示唆された。
また,今回実施したサル 12 ヵ月間皮下投与試験において行ったトキシコキネティクスの検討
ジェノトロピン
2.6.6.9 考察および結論
Page 13
結果から,無毒性量(0.65 mg/kg/day)における曝露量(AUC0-24h)は AGHD 患者に臨床最大投
与量(1 mg/body/day)を投与した時の曝露量の 20〜23 倍であることが示された。
以上,今回実施したサル 12 ヵ月間反復皮下投与試験で認められた主な所見は,これまで実施
された反復投与毒性試験で確認されている毒性プロファイル,すなわちジェノトロピンの GH と
しての生物学的活性に起因する変化の範囲内であり,特に臨床上の問題となるような新たな所見
は認められなかった。また,安全域も 20〜23 倍と広かったことより,成熟サルにジェノトロピ
ンを長期間投与した本試験の結果から,臨床において成人にジェノトロピンを長期間投与しても,
臨床上問題となる副作用が発生する可能性は低いと考えられる。
ジェノトロピン
引用文献
Page 14
引用文献
1) 伊藤善也ら:遺伝子組換えヒト成長ホルモン(SM-9500)の短期投与が甲状腺機能および
骨代謝に及ぼす影響
−成人成長ホルモン欠損症患者と健常成人男性における検討−
理と治療 25, 505-517, 1997
薬
トキシコキネティクス
トキシコキネティクス試験の一覧表
被験物質:ソマトロピン
試験の種類
試験系
投与方法
投与量(mg/kg)
GLP 適用
試験番号
資料番号
52 週間毒性試験
カニクイザル
皮下
0, 0.13, 0.65, 3.23
GLP
570 004-XFI
4.4.2.1
ジェノトロピン
表 2.6.7.2
2.6.7 毒性試験概要表
Page 16
トキシコキネティクス
トキシコキネティクス 試験成績の一覧
1 日投与量
カニクイザル 1)
ヒト 2)
(mg/kg)
AUC0-24h (ng・h/mL)
AUC0-24h (ng・h/mL)
雄
雌
1 日目 27 週目 50 週目 1 日目 27 週目 50 週目
0(対照)
69
12
47
58
35
1 日目
51
115.4
0.13
628
466
417
380
567
434
0.65
2655
2337
2294
2323
2088
2372
3.23
17051
14266
12798
15687
11913
12731
2) 2.6.6 引用文献 1)
2.6.7 毒性試験概要表
0.013
1) 添付資料 4.4.2.1
被験物質:ソマトロピン
ジェノトロピン
表 2.6.7.3
Page 17
単回投与毒性試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.6
ジェノトロピン
表 2.6.7.5
反復投与毒性試験:重要な試験以外の試験
本申請における提出データなし。
2.6.7 毒性試験概要表
Page 19
反復投与毒性試験
試験番号:570-004(続き)
0(対照)
投与量(mg/kg/day)
0.13
0.65
3.23
M: 7
F: 7
M: 5
F: 5
M: 5
F: 5
M: 7
F: 7
眼科学的検査
−
−
−
−
−
−
−
−
心電図検査
−
−
−
−
−
−
−
−
血液学的検査
−
−
−
−
−
−
−
−
血液生化学的検査
−
−
−
−
−
−
−
−
7.6
10.0
9.5b)
11.0
5.7
4.7
0.9*
3.0*
−
95*
−
145*
−
動物数
ジェノトロピン
表 2.6.7.7
内分泌検査:52 週(プロゲステロン以外)
b)
33
−
68
第 1 月経周期
ND
446
ND
448
ND
227
ND
61*
第 4 月経周期
ND
267
ND
263
ND
309
ND
64
第 7 月経周期
ND
334
ND
577
ND
108
ND
43
第 10 月経周期
ND
335
ND
609
ND
585
ND
77
575
1324*
1152*
1932*
926*
インスリン(µIU/mL)
a)
プロゲステロン (ng/mL)
IGF-I(ng/mL)
1285*
b)
673
445
尿検査
−
−
−
−
−
−
−
−
クレアチニンクリアランス(mL/min)
:49 週
−
7.8
−
4.0*
−
7.2
−
7.0
器官重量
−
−
−
−
−
−
−
−
評価動物数
5
5
4
5
5
5
5
5
投与部位:結節
0
0
0
0
0
0
1
0
投与部位:血腫
2
1
1
3
3
3
*p<0.05(Dunnett の両側検定[データが均一の場合]又は Wilcoxon の順位和検定[データが不均一の場合])
a) 黄体期に測定,b) n=4,ND:実施せず,−:特記すべき所見なし
3
4
2.6.7 毒性試験概要表
プロラクチン(ng/mL)
剖検所見
Page 21
反復投与毒性試験
投与量(mg/kg/day)
動物数
試験番号:570-004(続き)
0(対照)
0.13
0.65
3.23
M: 7
F: 7
M: 5
F: 5
M: 5
F: 5
M: 7
F: 7
5
5
4
5
5
5
5
5
5
5
4
ジェノトロピン
表 2.6.7.7
病理組織学的検査
評価動物数
b)
0
1
2
2
3
乳腺腺房:拡張
0
0
0
3
0
3
0
3
乳腺腺房:過形成
0
0
0
0
0
0
1
2
投与部位:出血
3
3
2
5
4
3
3
4
投与部位:炎症性細胞浸潤
4
3
1
3
2
5
4
4
投与部位:白血球浸潤巣
0
1
0
0
2
0
0
1
投与部位:小肉芽腫
2
1
2
4
3
3
4
3
投与部位:線維症
2
2
1
3
3
2
3
3
−
ND
−
ND
−
ND
−
ND
19.72c)
ND
16.49b)
ND
11.04*
ND
20.05
ND
月経周期延長 a)
ND
5
ND
1
ND
1
ND
13
月経周期の消失
ND
0
ND
0
ND
1
ND
2
抗ヒト GH 抗体産生
1d)
0
0
0
0
0
1e)
0
骨髄検査
−
−
−
−
−
−
−
−
精子検査
精巣容積(mL)
:52 週
2.6.7 毒性試験概要表
脂肪細胞:肥大
月経周期
ND:実施せず,−:特記すべき所見なし,a) 投与期間中の発現件数,b) n=4,c) n=6,d) 52 週のみ,e) 26 週のみ
Page 22
*p<0.05(Dunnett の両側検定[データが均一の場合]又は Wilcoxon の順位和検定[データが不均一の場合])
反復投与毒性試験
投与量(mg/kg/day)
動物数
試験番号:570-004(続き)
0(対照)
0.13
0.65
3.23
M: 7
F: 7
M: 5
F: 5
M: 5
F: 5
M: 7
F: 7
2
2
0
0
0
0
2
2
0
0
ND
ND
ND
ND
0
1
0
2
ND
ND
ND
ND
1a)
2
a)
2
1
ジェノトロピン
表 2.6.7.7
回復性の評価
評価動物数
一般症状
投与部位:痂皮形成
病理組織学的検査
投与部位:小肉芽腫
1
2
ND
ND
ND
ND
1
投与部位:線維症
0
1
ND
ND
ND
ND
1a)
ND:実施せず,a) n=1
2.6.7 毒性試験概要表
投与部位:白血球浸潤巣
Page 23
ジェノトロピン
表 2.6.7.8
2.6.7 毒性試験概要表
Page 24
In Vitro 遺伝毒性試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.9
In Vivo 遺伝毒性試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.10
がん原性試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.11
生殖発生毒性試験:重要な試験以外の試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.12
生殖発生毒性試験:受胎能および着床までの初期胚発生に関する試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.13
生殖発生毒性試験:胚・胎児発生に関する試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.14
生殖発生毒性試験:出生前および出生後の発生並びに母体の機能に関する試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.15
新生児を用いた試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.16
局所刺激性試験
本申請における提出データなし。
表 2.6.7.17
その他の毒性試験
本申請における提出データなし。