日 はじめます。 間 月 え、じゃあ、だれが話はじめる 金 あ、じゃあ 火 だれにする 月 話、はじめる? 木 はなしはじめる 月 なんかおもしろいことあった?最近 金 あー、あ、うん 月 え、なに 金 あー、あんまり面白い話じゃないんだけど 月 じゃあいいよ 金 あー、まあ 月 え、だって面白くないんでしょ 金 まあうん 月 え、なに、話したいの? 金 別に 土 ↑モーメント! 火 え、なに 土 って言ったら、みんな止まります。 月 え、なに急に 土 止まってください。で、動いた人が退場っていう 金 え 土 ↑モーメント! a え(動く)、あ… 動いたa退場 月 だるまさんがころんだ<的な(?)>… 土 ↑モーメント! 全員止まる。間。music(moment)全員定位置に移動 土 …昔々、大雨が降り↙ありました。 月 え、な 土 昔々、大雨がありました。 火 どこで降ったのですか? 金 世界中です。 火 世界、中ですか? 土 そうです、世界中で大雨が降りました。 月 どのくらい降ったのですか? 金 どのくらいと言うと、量ですか? 火 ↑期間ですか? ウ いつからですか? 雨 3日前です。 ウ 3日間 雨 あ、3日前なので、2日半くらいですかね ウ 2.5日ですね。きっかけとか 雨 あー…、中吊り広告、美容薬品の広告をながめていました、数年に一度、 木 一瞬しか花を咲かせないことで有名なこの花から抽出された成分アルドモメノイドは活性 酸素を、 雨 とそこまで読んで、わたしは飽きてしまった。地下鉄の広告は金融会社と脱毛エステが交 互に並んでいる。休日の銀座線は空いていて、わたしは上品そうなおばあさんのとなりに座っ た。おばさあんからは、何か、何だろ、なんかとても懐かしい匂いがして、 ウ どんな匂いでした? 雨 たぶん…、ああ、わかんないですね。何の匂いだろ。うーん、匂いって人に伝えるのむず かしいですね。 ウ それで 雨 そう、それで、そしたら涙が出てしまって、そうですね、泣いたっていうより、涙が出 たっていう感じなんですよね ウ なるほど 雨 そしたら、止まらなくなってしまって、悲しいわけでも悔しいわけでもないんですよ、わ たし ウ うーん…。3日間、2.5日の間ずっとですか?出てます? 雨 はい、あーでも、動いてると少し止まる様な気がします。 ウ 寝ている間も? 雨 はい。なかなか寝付けなくて。で、何とか寝るんですけど、起きたら、というか、途中で 目が覚めちゃって、そしたら枕がびしょびしょになってるんですよ。水こぼしたみたいに。 ウ はあ 雨 で、無いとは思うんですけど、このまま寝てたらわたし れちゃうんじゃないかって思っ て、心配になっちゃって 全 ははは 雨 … 雨 中学生に上がったくらいには治ったんですけどね ウ あー、でも大人になってから再発する人も結構多いですよ 雨 はあ ウ はい、じゃあ、わかりました。とりあえずお薬出しておくんで、それで様子みましょう。 雨 はい ウ 3日分出しておきますから。それで様子見て、4日後、○○日に予約入れておきますの で、また来てください。 雨 はあ ウ あ、眠くなるんですよ。この薬なので、運転します? 雨 あ、いえ ウ じゃあ、大丈夫だと思うんですけど、あと、やっぱり、止めるっていっても、涙だけとい うのは難しいので、汗とか、他の分泌、身体から出る水分みたいなものも、止めてしまうの で、あんまり運動とかはしないようにしてくださいね、体温上がっちゃいますから、あ、あと お水いっぱい飲んでくださいね。 雨 あー、わか、りました。 ウ では、お大事に。 雨 はい。失礼します。 土 これが3日前 金 だから、何から3日前? 土 雨が降る、日 木 雨 雨音 男 あのさ 女 … 男 寝てる? 女 うん 間 男 あのさ 女 うん? 男 いい話と悪い話がある 女 (笑って)なにそれ、映画? 男 どっちから聞きたい? 女 聞きたくない 男 聞きたい? 女 悪い話は聞きたくない 男 じゃあいい話ね 女 うーん 男 おれが本気で好きになっちゃったらどうする? 女 …えー 男 なんか、結構タイプかも、とか、思ってんだけど 女 えー、っていうか、それがいい話? 男 え…うん 女 悪い話じゃなくて? 男 うん…え、ひどくない? 女 (笑って)ごめん 男 … 女 ごめんって、もー、すねないの 男 別に 女 じゃあ、私も 男 うん 女 悪い話と悪い話があるんだけど 男 どっちも? 女 うん、どっちから聞きたい? 男 え 女 悪い話A、悪い話B 男 え、えらばなきゃだめ? 女 だめ 男 じゃあ、C 女 つまんない 男 A 女 ロリコン 男 え 女 ロリコン 男 え、なに 女 …私高校生だよ、JK 男 は、え、うそ 女 嘘じゃないし 男 え、だって、さっき 女 え、ていうか、知ってたでしょ 男 や、や、知らない 女 うそだ、ふつー家出なんかしないでしょ、家出すんのは、JKかJC、気づけし 男 あー、や、でも 女 あせってる、うける 男 えー 女 ロリコンロリコンロリコンロリコンロリコン… 男 いたいいたいって 間 男 雨、まだ降ってる? 土 昔々大雨がありました。 火 大雨が降りました。 金 どこに降りましたか? 火 それは世界中に降りました。 月 降ったそうです。 金 世界中ですか? 月 はい。そうです。 木 世界中っていうと、世界中ですか? 月 ↑はい、世界中です。 木 その雨は、どこで降りましたか? 月 だから、世界中です。 金 どのくらい降りましたか 月 あー、え、量? 土 あーね 火 あー、え、どのくらいでしょうか。どのくらい? 土 ? 金 じゃあ、ペットボトル何本分ですか? 木 いや、よけいわかりずらいでしょ 金 (ペットボトルを拾って)これ 月 や、わかないけど、ずーと降ったらしいです。一ヶ月、とか、一年とか 土 年!? 火 うん、そうらしいよ 土 えー、ありえないでしょ、え、年!?でしょ 火 うん、だから、そうだって 土 年? 火 雨やまないね 土 あーね 金 あれ、なんか一人足りなくない? 土 あーね 金 え、誰がいない? 月 あー、え、全員いるんじゃん? 金 月火…、や、6人しかいなくない? 火 あれ 金 探しに行く? 月 帰ってくるでしょ。だまってても 土 そうかなあ 雨 そう、それで、仕事になんないから、 母 うん 雨 うん、そう、あ、でも有給いっぱいあったからちょうどいいかなって、仕事も一段落した ところだし 母 神様が休めっていっているのよ 雨 えー、だったら、もう少しましな方法で休ませてほしいんだけど 母 ははは 雨 あー、だめだ、止まってると、すごい 母 薬飲めば? 雨 うーん、あ、で思ったのが、動いてると出ないのね、涙 母 うん 雨 で、思ったんだけど、汗も涙も一緒なんじゃないかなって 母 えー、どうだろ 雨 んー、厳密には違うんだろうけど、ほら、同じ水分じゃん、だから、だから動いてると、 出ないのかなって、涙 母 うん 雨 だから、私、走る… 土 そういって彼女は走りはじめたそうです。 金 しかし、実際に走り出したのは、その翌日でした。と言われています。 雨子、ランエコ運動をする。 母 走るって、簡単に言うけど 雨 簡単に、言ってる、つもりは。ないんだけど 母 普段運動してないんだから、歩く事から始めた方がいいんじゃない? 雨 でも、それじゃ、涙、止まんないし、たぶんだけど、それに、ずっと、走ろうと、思って いたから 母 身体壊さないようにね 木 昔々大雨がありま… 月 ↑それはもういいよ 火 これは、本当にあったお話です。 金 で、これが2日前、雨が降る 土 ふうん 火 そいえば、帰ってきた? 土 行方不明だよ 月 何か大事になっちゃったな 火 家出? 金 そういえば、また発見されたって 月 家出少女? 土 うん。 月 死体で? 土 うん 火 じゃあ、早く探しに行かないと、死んじゃうかも、殺されて 月 つーかいないのって誰?女? 金 女でしょ。 月 ちゃんと覚えてる人いる? 間 月 じゃあ、みんなで、覚えてること、彼女(?)の、言ってく? 火 女だった気がする 土 わたしも 月 じゃあ、女ね 金 あとは、なんだろ 火 えー、背は普通っていうか、わたしと一緒くらいだったはず、比べた記憶ある 月 顔は? 木 顔は… 間 月 あー、ね 女 何かおもしろい話して 男 えー、ちょっと待って… 女 はやくぅ 男 あ(携帯を取り出す)面白い動画あって、ちょっと待って 女 はやくはやくはやくはやくはやく(叩く)はやくはやくはやく(女、マッチを擦って男の すね毛を燃やす) 男 え、え、ちょっと何してんの? 女 すね毛ない方がセクシーだよ 男 え、や、え、あつっ!… 女 まだ? 男 ちょ、えー 女 まだ? 男 あ、はい、これ、痛い、待って、はい 動画見る。 男 面白くない?www 女 ( ́_ゝ`)フーン 男 え、面白くない? 女 これどこの人? 男 えーどこだろアメリカ? 女 海外行ったことある? 男 あるよ 女 どこ 男 エジンバラ 女 ってどこの 男 どこ?イギリスの 女 ↑アフリカ? 男 や、イギリス 女 嘘だ、アフリカだよ絶対、エジンバラだよ 男 や、おれ行ったから 女 アフリカに? 男 あーうん、じゃあ、そうかも、アフリカだったかも 女 でしょ 男 そうそう 女 なんかお話して? 男 なんの? 女 エジンバラっていうか、アフリカ 男 アフリカ? 女 うん、おはなし 男 や、アフリカって、え、南アフリカ? 女 昔々、あるところに 男 え、なに、昔話? 女 (笑って)だめ? 男 うーん 女 はい、昔々、あるところに、 男 …ちょっとまって 女 おそい 男 そんなすぐでないよ 女 じゃあ私が話す。 男 うん 女 いい? 男 うん 女 昔々、あるところに 男 おじいさんが 女 もう話しない 男 ごめんって 女 …昔々、あるところに…、えーと、一つの国がありました。 男 うん 女 その国には大変立派な王様がおりました。 月 王様は国民から大変慕われておりました。 火 王様は英雄でした。 木 王様は戦争の時も先頭に立って、なんかカリスマでした。 金 王様はもてもてでした。 月 王様は…えーっと↓…眼鏡でした。 女 王様やって 男 あー、うん 女 はい 男 あー、王様です。 女 王様は、です。とか言わない 男 あ…、わしは王様じゃ。 女 王様はまだ、24、5歳でした。 男 わたしが王様である。(男→王) 日 王様、東の魔女が悪さをして、民が困っています。 王 悪さ、たとえば 火 子供たちがさらわれているそうです。あと、麻薬の密売とか、中東から武器や弾薬を受け 取って紛争地帯にばらまいているそうです。 月 嘘だろ。 木 なんか子供をさらってなんかしているようです。いかがいたしましょう。 王 また、魔女の仕業か。ようし、わしが行ってみよう。 女 わたし 王 よし、わたしが行って成敗しよう。 女 王様は4人の兵隊を連れ魔女を退治しに行きました。 王 この国には4人の魔女が住んでいました。 女 東の魔女以外の3人の魔女はアホでした。 王 なんで 女 なんでも、はい、次 王 魔女の家に着きました。 女 はやい、はやくない? 王 うーん、ごめん、眠いかも 女 ↑その間に4人の兵士は王様の身代わりとなり、無惨に散っていきました。 王 まじか 女 そして、王様も重傷を負いました。 王 なんで?どういう状態? 女 なんかイバラで、あ、魔女の住む森はイバラの森だったのでした。 王 あー、あれ、これアフリカだっけ、森とか無くない? 女 アフリカ馬鹿にすんな、あるし、森くらい 王 あー、そう 女 はやく 王 なに? 女 王様 王 あー、ぐぅ… 女 … 王 満身創痍じゃ 女 … 王 ぐぅ… 火 聞いた?つーか見た? 月 ↑聞いた 土 ↑うん、聞いた 火 聞いてよ 土 うん 火 見つかったって 土 なにが 火 女の子、3人目 月 あー、へえ 火 死体で 月 あー、でも、そうだろうね 火 結構ひどいらしいよ。テレビでは遺体の一部としか言ってないけど 月 あー 火 ね、上半身だけだって 土 えー 木 下半身だけまだ持ってたりするのかな、犯人 土 ないわー 木 足フェチとか 月 穴フェチ? 木 それはひどい 月 viginaフェチ 木 vigina言うな 土 変態じゃん、こえーよ 月 でも被害者、全員ビッチでしょ。天誅じゃね 木 出会い系少女連続殺害事件ですからね、ざまあ 月 中古少女全滅していい 土 もう一人はまだ? 火 まだ、だけど 月 もう死んでんじゃん、殺されて 魔 起きた? 王 うん 間 王 何時? 魔 何? 王 今、時間 魔 あー、今日は月が無いからわかんないよ 王 …そっか 間 魔 お腹空いてる、よね? 王 うーん 魔 (料理を出して)はい 王 あー、ありがと。え、ていうか、作ったの? 魔 そうだけど 王 なんもなかったでしょ 魔 …なに?寝ぼけてんの? 王 …や、ああ、うん 魔 話のつづきは? 王 なに? 魔 つづき、王様 王 あー 魔 うん 王 えー、っていうか寝た? 魔 ううん 王 眠くない?寝ないの? 魔 眠くない。寝ない。私、魔女だし 王 まじか 魔 早く、つづき 王 えー、横になったら眠くなるかも 魔 ならない 王 試しに、ほら 魔 は? 王 ほら、寝ようよ 魔 食べないの? 王 あー 魔 お腹空いてるって言ったじゃん 王 ああ、うん 魔 食べないならいいよ 王 うそ、食べる食べる。(食べて)うま 魔 ほんと?おいしい? 王 うまいよ 魔 よかった 王 あ、でも、冷蔵庫なんもなかったでしょ、買いにいった? 魔 うーん、うん 王 肉うまいね。久しぶりに食べた。牛? 魔 ふっふっふ 王 なに? 魔 それは子供の肉じゃ 王 マルエツで買ってきた? 魔 そうじゃ、マルエツプチで買った子供の肉じゃ。100グラム198円じゃ 王 まじか、子供うまいね、子牛? 魔 子牛の肉、そんなに安く買えないし 王 そっか 魔 ケガの具合はどうかね? 王 あー… 魔 どうかね? 王 あ、うん、まあ 魔 何、まあって 王 あー…、うむ、まだ少し痛むが、大丈夫じゃ 魔 それはよかった。ほら、もっと食べるがいい 王 うむ。でも、いいのか? 魔 何が? 王 そなたの分が無くなってしまうんじゃないか、わたしはいっぱい食べるからな 魔 ははは、大丈夫じゃ、わたしはどうせひとりだし 王 …そうか 間 王 なんで、助けた? 魔 えー、べつに… 王 なに? 魔 まあ、ケガしてたら助けるじゃん、ふつう。 王 そうか 魔 それに、わたし、学校女子校だし。 王 うん 魔 だから、出会いとかないから、みたいな 王 そっか 魔 うーん、寂しいじゃん、一人だと、寂しくない? 王 まあ 魔 あー、でもごめんね。一緒に来た人達は、さすがに無理だった。 王 そうか… 魔 死んでたし 王 … 間 魔 なんかごめんね。私のせいだよね 王 や 魔 彼女いないの? 王 …うむ 魔 へへ、じゃあ、一緒だ。 魔女布団に入り込む。 魔 やっぱちょっと眠いかも。寝ようかな。 王 うん 木 魔女はすやすやと無防備な顔で眠ってしまいました。 月 やべーキスしたい、していい 木 キース!キース!… 魔 アフリカの人ってなんで色黒いの?暑いから? 王 あー 魔 じゃあ、日焼けしてんの?生まれたときは白い? 王 や、生まれたときから黒いでしょ 魔 なんで 王 なんでって、あー、でも、人間、最初の 魔 うん 王 人類が誕生したのはアフリカって言われているから 魔 そうなの? 王 タンザニア?たしか 魔 へえ 王 だから、もともと、黒いのが普通で、まあ、ふつーっていうか、まあ、普通で、だから、 そのあと白くなったり、黄色くなったりっていうのが正しい。気がする。 魔 じゃあ、黒い方がエラい 王 別にエラくはないでしょ 魔 ふーん 間 王 家出… 魔 …なに? 王 家出…何でしたの? 魔 … 王 別に言いたくなければいいけど 魔 …忘れた 王 そっか 間 魔 しばらくいていい? 王 うん、いいよ 魔 やさしいね 王 やさしいよ 魔 へへ 王様、魔女にキスをしようとする。 魔 ちょ… 王 なんで 魔 や、だって、えー… 王 いや? 魔 いや、っていうか、会ったばっかじゃん 王 関係なくない? 魔 んー 王 好きだよ 魔 会ったばっかなのに? 王 嫌い? 魔 んー、ていうか私魔女だよ 王 もういいから 魔 なんか怖い 王 怖くないよ 魔 んー… 魔女泣く。 王 え、あ、ごめんごめん 魔 うー… 王 ごめん、怖かった? 魔 (うなずく)ちょっと… 魔女しばらく泣く。 魔 わたしね… 王 うん 魔 はじめて、したのが 王 うん? 魔 聞いてくれる? 王 うん 魔 わたし、はじめてしたのが、10歳で 王 え、相手は? 魔 友達のお父さん 王 おー… 魔 で、それは、別に嫌じゃなかったんだけど、でも、バレて、したことが、友達が見てたん だよね、あ、そのお父さんの子供じゃない、別の子ね 王 うん 魔 学校で されて、先生にもバレて、親にもバレて、向こうの家族も離婚したりで、めちゃ くちゃになって 王 … 魔 中学生になっても、すぐ 広がって、先輩とか、呼び出されて、やらせろって強要された り。わたし、別にビッチじゃないのに 王 うん 魔 でも、本当、そんなことは本当にどうでもよくて、本当に悲しいのはね… 王 …うん 魔 お母さんも、お父さんも、みんなと同じ目でわたしを見るんだよ(泣く) 王 …そっか 魔 わたしの居場所なんか、どこにもない、うー 間 王 あのさ… 魔 うん(うなずく) 王 好きなだけ、いていいから、ここ 魔 ほんとに 王 うん 魔 信じていい? 王 うん 魔 裏切ったら絶対許さないからね 王 わかってるって 魔 呪うからね 王 こわ 魔 ひひひ 月 王様は魔女と寝てしまいました。 火 子供にそんな話して大丈夫? 木 大丈夫よ、どうせ寝ているのでした。 火 かわいそうに 月 どうしたら目を覚ますのかしら 木 お姫様のキッスで目を覚ますのです。 火 お姫様はどこにいますか? 「お姫様はどこにいますか?」のグーグル検索結果を投影。 月 洞窟にいるって 木 ドラゴンはどこにいるの? 火 そもそも、そのお姫様でいいのでしょうか? 月 姫もいっぱいいるからね 「姫」の画像検索結果を投影。間 木 なんでこんなことになっちゃったんだろうね。よよよ 母 何、やめちゃったの? 雨 やったよ 母 どのくらい 雨 20分くらい 母 そう。 雨 うん 母 止まったの? 雨 何が? 母 何がって、涙だだだ 雨 あー、走ってる間はね 母 駄目じゃない 雨 だって、ずっと走り続けるなんて無理だし。無理じゃん。 母 うん 雨 明日、また走るから 母 薬飲みなさいよ、嫌いなのわかるけど 雨 はーい、別にアレルギーがあるわけではないんですけど。薬が嫌いで、子供の頃から。 母 ほら、飲まないとよくならないわよ 雨 わかってるよ!って、なんか。身体の形とか性質とか、よくわかんないけど変わりそうな 気がするから怖くて昔から。や、でも、だって、涙以外にもいろいろ止まるって、そんなの怖 すぎるじゃないですか。 木 そして、彼女はそのまま眠ってしまいました。 金 ふて寝です。 雨子 れて目を覚ます。 雨 ばびごべばごべべ 月 翌日、彼女は れて目を覚ましました。 木 で、無いとは思うんですけど、このまま寝てたらわたし れちゃうんじゃないかって思っ て 金 あったね 雨 ぶくぶくぶくぶく… 木 (雨子の台詞と同時に)そして窓を開けると町が沈んでいました。水に。 金 ↑涙に 月 薬飲まないから 雨 ぶくぶく! 土 △くすり! 月 窓を開けた拍子に薬はどこかに流れていきました。 雨 どうしよ 金 そうこうしているうちにも、彼女の目からは涙があふれてとまりません。 木 このままでは世界中が水浸しになってしまうわ 金 彼女はそう思い。まだ涙に沈んでいない場所を目指して泳ぎました。 土 数百メートル泳ぐと、あ、彼女の家は地形的に下…谷底 月 ↑彼女の家は四谷の谷の底にあったので、少し泳ぐとまだ沈んでいないところが、ところ に着きました。町が涙に沈んだと言ったのはちょっと大げさでした。 金 ↑東京都新宿区若葉2丁目4−3 月 彼女にはちょっと大げさに言う癖がありました。 金 おーい!きみ! 雨 あー、どうもウエーン 土 そこにいたのは、あの医者でした。 ウ 大変な事になったね 雨 あーはい、みたいですね。グスン ウ 原因はきみだよね。 雨 ああ、そうなんですかねグスン ウ みんなに言ってやろ 雨 ウエーン ウ 薬を飲まないからこんなことになるんだよ 雨 や、わたし飲みました… ウ ↑飲んでない。嘘を言わない。 雨 …ウエーン ウ で、薬は? 雨 あー、どこかに、流れて ウ omg…うちも沈んじゃったから、代わりは無いよ、どうするの 雨 … 間 ウ あー、まあ、完全に無いわけではないけど、ちょっと遠くにあるから 雨 薬飲んだら本当に止まるんですか? ウ うん、だから、取ってくるまで何とかしてよ、走るとか 雨 はい ウ オケー。じゃあ、ぼくが薬を取ってくるまで決して止まってはいけないよ、走りつづける んだ。 雨 あの、どのくらいかかりそうですか?ウエーン ウ わかんない。1日じゃ無理かな 雨 …そうですか? ウ 大丈夫? 雨 …はいグスン ウ じゃあがんばってね 木 彼女はそんなことできるはずないと思いました。 金 でもやらないと、すごく怒られそうなので、走ることにしました。 土 走りました。 金 走りました。 月 20分走りました。 土 疲れました。 金 止まりました。 木 涙が れました。 雨 また、町が、一つ、沈みました。 金 走りました。 雨 走り、ました 金 疲れて 雨 止ま、りました。 金 町が、また、一つ、沈みました。 土 彼女が止まる度に、町が一つ沈みます。 木 町の人の悲鳴が聞こえてきました。 雨 逃げる、ように、走り、ました。 月 彼女はもう走るしかありませんでした。 雨子走る。 月 彼女は無我夢中で走りました。 金 意識が朦朧としてきたそのとき 月 気づくと、隣に並んで走っているランナーがいました。 雨 高橋、尚子、でした。わあ、Qちゃんだ、すごい、あの、すごい、見て、ました、金メ ダ、ル 木 Qちゃんは、声をかけてはくれませんでした 月 が、しかし、しばらく並んで走ったのち 雨 こっちを、見て、にっこり、笑う、と 月 Qちゃんは、彼女にあるものを手渡しました。 金 そして、もう一度にっこり微笑むと 月 Qちゃんは、彼女をおいて先に行ってしまいました。 雨 やっぱ、り、速い、なあ 木 Qちゃんは去ってしまいましたが、その笑顔は彼女に大きな勇気を与え、 月 そして、彼女の、その手に握られたそれは、ターザンでした、雑誌の 金 彼女の手に残されたターザンには、走ることについて彼女の知らないことがいっぱい書い てありました。 雨 目から、鱗が、おち、ました。 土 ターザンとの出会いは、今後の彼女の人生を大きく変えることとなるで… 金 ↑変えたのでした。 月 ターザンには、長い距離を走るためのあらゆる手段が書かれていました。 雨 私は、その、教えに、したがって、あらゆる、無駄を、無駄な、動きを、なくす事に… 間 月 そうして、彼女のランニングフォームは、次第に、美しく、なっていったのでした。 金 山を越え、海を渡り、ミニマリズムを追求した完璧なフォルム 月 そのあまりの美しさに人々は驚き 金 なんて美しいんだ 土 美しい 月 彼女の姿は瞬く間に全世界に知れ渡りました。 王 魔女ってさ空飛んだりできんの? 魔 できないよ、そんなの 王 そっか… 間 王 できないのか、そっか… 魔 うん…、え、なに、飛べなきゃだめ? 王 や、そういう… 魔 飛べない魔女嫌い? 王 そんなこと言ってないでしょ 魔 や、言った 王 言ってない 魔 言ってないけど、心の声が聞こえた、魔法で 王 そんなことできんの? 魔 うん 王 そっか 魔 うん、嘘ついてもすぐわかるからね 王 そっか 魔女、王様をじーっと見つめる 王 あー… 魔 なに 王 あれ、ほかに何ができるの? 魔 え、なに? 王 ほかに 魔 えー、なんでも(?)空飛ぶ以外ならなんでも。でも、基本は薬つくったりしてるがのう 王 何の? 魔 なんでも(?) 王 そっか 魔 あとはー… 王 何? 魔 さっきも魔法つかったよ、気づいた? 王 え、いつ 魔 へへ 王 あ、…えー 魔 どうじゃった? 火 魔女のテクニックはすごかったのでした 月 とてもとてもすごかったので 木 具体的には… 月 すごかったのでした 魔 だてに長生きしてないでしょ 王 あー、はい 魔 ねえ 王 はい 魔 そういえば…、何をしにきたのじゃ? 王 え 魔 わざわざこんなところまで。私に会いにきたのじゃろ 王 あー…、なんだっけ 魔女、じーっと見つめる 魔 … 王 あれ… 魔 大丈夫? 王 … 魔 まあ、ゆっくりしていっていいからの 木 王様の頭の中は霧がかかったようにぼんやりとしていました。 火 なにか大事な用事があったような 木 なにか大事な用事があったような 月 王様の頭の中は魔女のあのテクニックでいっぱいでした 王 んー 魔 なに? 王 んー 魔 もっかい? 王 んー 魔 なに? 王 んー 魔 もっかい? 王 んー 魔 なに? 王 んー 魔 もっかい? 月 彼女は山でひとりの少女に出会いました。 盲の少女、雨子ぶつかる 雨 あ、ごめんなさい、大丈夫ですか 月 少女は目が見えませんでした。 盲 いえ、いいのよ、大丈夫 雨 じゃあ 盲 ちょっと待って 雨 ごめんなさい、わたし止まっては行けないの 盲 ちょっと待ってって 雨 ごめんなさい 盲 あなたはどこからきたのかしらしら 雨 私は東京から来ました。 盲 東京?where? 雨 東京は日本の、あー、JAPAN、わかる? 盲 OH!JAPAN?それ知ってる。でもどこにあるかわたしは知らないのいの 月 どんなところ 雨 どんな、あー、ビル、とか、あ、ご飯がおいしいよ、米 盲 It's wonderfulful!私、今、英語しゃべっているのよ。うまいまい? 雨 あー、good!so nice! 盲 yeah!(ハイタッチ、笑う)で、どうしてあなたは走っているのるの 雨 うん、話せば長くなるんだけど 盲 じゃあ、結構。それより、わたしの話を聞いていて 雨 OK 盲 もうすぐ、子供が生まれるのるの 雨 おめでとう 盲 やだ、わたしの子供じゃなくってよてよ、うちで飼ってるアルパカのクォカーチョの子供 よもよ 雨 そう 盲 クォカーチョはすごいのよのよ 雨 うん 盲 その毛の品質で最高の賞をもらったのだから 雨 へえ、すごいね 盲 その子供が生まれるの 雨 …そう 盲 クォカーチョの毛は本当に軽くて暖かくて、お日様みたいないい香りがするのるの、本当 よ。 雨 お日様に匂いはないよ 盲 あなたお日様の匂いも知らないの?東京って町には、お日様がないのかしらしら、変なと ころねろね 雨 … 間 盲 あら、機嫌を悪くしてしまったの、ごめんなさい。私のわるいくせねせね 雨 べつに 盲 それでね、そう、子供が生まれるの 雨 うん 盲 でも、クォカーチョは、もうおばあさんだから、子供を生んだらきっと死んでしまうわう わ 雨 そう 盲 クォカーチョはこの村で生まれて、どこにも行かずに、そして、死ぬのよのよ。そんな のって… 雨 … 盲 でもね。クォカーチョの毛を原料にした、セーターやマフラーはいろんな国で売られてい るのよ。それも、うんと高値でねでね。きっとあなたの生まれた町でも売られているわ 雨 うん、きっとね 盲 でも、わたし、わたしだって、遠い国へ行ってみたいわ 雨 うん 盲 あなた、これから、どこへ行くの? 雨 さあ、わたしにもわかんないよ 盲 いい事を思いついたわたわわ。私、糸を紡ぐわぐわ、最後のクォカーチョの毛を使ってっ て 雨 そう 盲 だから、海まで、その糸をつないでほしいの、わたしは、あなたが走るスピードに合わせ て、糸を紡ぐから、そうすれば、わたしはこの指先から世界を感じる事ができるのですからか ら、えい! 雨 えー、まあ、いいか 盲 アディオス!知らない人! 雨 アディオース 月 彼女はクォカーチョの毛糸を尾にひき流星のように走りました。 木 お日様の匂いは世界に広がり、世界はちょっとだけほっこりしました。 月 世界は毛糸で覆われました。 土 これが、地球温暖化の全容です。 金 や、嘘だろ 月 地球は巨大な毛糸玉になりました。 木 そこへ巨大猫星人が毛糸玉となった地球をころころしにきました。 土 かーわいーい 金 や、嘘だろ 木 猫にころころされたおかげで地球は太陽系の軌道をはずれ、銀河系を抜け、遠い旅路に出 ました。 月 宇宙船地球号の誕生です。 土 ↑そう、嘘なのでしたが、世界中の人々によくわからない勇気と感動を与えた雨子、そう 彼女の名前は雨子なのでした。 金 雨子は世界中の人々によくわからない勇気と感動を与え賞賛されましたが、それはほんの 一瞬のことでした。 月 これが一日前のことです。 木 そうです。まもなく、雨が降ります。 月 世界を滅ぼす大雨です。 3人三角に座って 月 おーい 金 おーい 火 △おーい 月 おーい 金 △おーい 火 △おーい 月 呼んだ? 金 △呼んだ? 火 △呼んだ? 月 お前じゃないから 金 △お前じゃないから 火 △お前じゃないから 月 ごめん 金 ごめん 火 ごめん 木 どこいったんだろうね 月 誰が? 火 △誰が? 木 ひどい 土 ひどーい(>_<) 木 じゃあ、誰? 月 誰だっけ 土 あ、そういえば見つかった? 月 でも被害者、全員ビッチでしょ。天誅じゃね 金 出会い系少女連続殺害事件ですからね、ざまあ 月 中古少女全滅していい 火 もう一人は、まだ? 土 まだ、だけど 火 もう死んでんじゃん殺されて(王様にビンタする) 王 あ! 魔 びっくりした。え、なに? 王 あー… 魔 どしたの? 間 魔 …思い出した? 王 …うむ 魔 そっか、なに? 間 王 一人でこんなところに住んで、寂しくないか 魔 うーん、でもずっとひとりだし 王 うむ… 間 魔 へへ、ずっと一緒にいてくれるんでしょ 王 … 間 魔 …何か思い出した? 王 …うむ 魔 そか 間 魔 で、どうしたの? 王 うむ… 魔 なんでこんなとこまで来たの? 王 うむ…、実は我が国で子供がいなくなる事件が多発してな 魔 うん 王 うむ… 間 魔 え、あれ、わたし疑われてる? 王 や… 魔 疑ってるでしょ 王 あ 魔 疑ってるから来たんでしょ、ここまで 王 あ、まあ 魔 でた。はい、でました、え、まじで言ってる? 王 あ、でも今は… 魔 今は? 王 … 間 魔 ふっふっふっ 王 … 魔 たしかに、わたしが子供たちをさらったのじゃ。しかし、もうここにはおらん 王 … 魔 その子供は… 王 … 魔 お前のお腹の中じゃ! 間 魔 …なーんちゃって 王 … 魔 ビビった?ビビった?超ビビってる、うけるんですけど 王 … 魔 ほんと嘘だって、うーそ 王 …いや 魔 やだなー、そんなことしないって、ほんと、まじで 王 … 間 魔 わかった、じゃあ、いいよ、わたしがさらったことにして 王 … 魔 わたしがさらって殺した 王 … 魔 それでいいよ、そう言えば、みんな納得するんでしょ 王 …や 魔 わたし魔女だし、そういうの慣れてるから 王 わたしは… 魔 そうやって結局、西の魔女、北の魔女、南の魔女、3人のあのアホな魔女たちと同じ様 に、私のことも殺すのでしょう。 王 や、それは 魔 ほら、わたしの首を持って帰って、そうして王様は英雄になるのでした。 王 や、ならないから 魔 ↑なるのでした。 月 王様は魔女を殺しました。 火 △王様は魔女を殺しませんでした。 月 王様は魔女の首をはねました。 火 △王様は魔女の首をはねませんでした。 月 はねました。 火 △はねませんでした。 月 はねま 火 △はねま 月 はねま、しー 火 △はねま、せー 魔 さあ、はやく、わたしの首を持って帰って、国民を安心させておやりなさい 王 … 王様 藤したのち、魔女を抱きしめる。 魔 どうした? 王 やはり、わたしには、できん 月 性欲が勝ちました。 魔 いいの? 王 かまわん 魔 うれしい、ありがとう。絶対一人にしないでね 王 うん しばらく抱擁。いちゃいちゃする。 王 なんか、喉乾いちゃった。なんか飲む? 魔 うん 王 お酒はだめだぞ、なんて… 月 王様は冷蔵庫を開けました。 魔 あ 月 中には無惨に切り刻まれた子供たちがきれいに並べられていました。 王 わー(腰が抜ける) 火 次の瞬間、王様は剣を魔女めがけ振りおろし 月 振り抜き(?)ました 木 その冷たく鋭利な切っ先が首の皮膚にに触れたその時、 魔 つめたっ! 月 剣を通して魔女の声が聞こえました 王 なんだ 魔 わたしの首を持ち帰る間、 王 え、持ち帰らなきゃ駄目? 魔 わたしの首を持ち帰る間、決してわたしの顔を見てはなりませぬ 月 フラグが立ちました 火 王様はきっと魔女の顔を見るでしょう。 木 見てないよ 火 ほんとに? 月 じゃあ、最後に見たの誰? 間 木 …わたし、かも 月 ほら 火 どんな感じだった? 木 や、特に変わった様子はなかった、と思う、や、ていうか、そんなのわかんないよ、いな くなると思ってなかったもん 月 王様は魔女の首を持ち帰り 火 持ち帰ろうとしました。 月 しかし、歩いても歩いても魔女の森から出ることはできません。 雨 歩い、ても、歩い、ても 月 王様は暗い森の中を何日も何日も歩きました。 火 魔女の森は木々が高くそびえ、太陽を隠し、いつでも夜の様に暗く 月 暗く 火 △暗く、方角もわかりません。 魔 わたしのこと裏切ったから悪いんだからね 月 でも、首をはねろと言ったではないか 魔 乙女心がわかんないやつは消滅したほうがいい 月 おれが悪いのか 魔 え、じゃあ誰が悪いの? 王 …それは 魔 じゃあ、謝ったら許してあげる 王 うむ、すまなかった 魔 目を見て 月 それは 魔 できないの? 王 … 月 それからまた何日も歩きました 火 歩きました 月 歩きました 火 一歩歩くたびに大事な事をひとつずつ忘れて行くような不安に襲われました 木 それはただの不安ではなく、事実王様の記憶に残っているのは、魔女と過ごした数日の 王 エロい 木 記憶でした。 魔 もっかいする? 王 ↑したい! 月 王様はそもそもそんなに意志の強い方ではありませんでしたので我慢はそろそろ限界で す。 魔 頭を身体に戻したら、魔女は復活するのよ。試してみる? 月 もう限界 王 したい! 火 と思ったそのとき 木 そのとき空が明るくなりました。 雨子走り抜ける 月 なんだあの美しい光は 木 空に一筋の星が流れました 魔 ぐわあ 月 魔女が叫びました 木 あれについて行けば森を出られるかもしれません。 魔 いってはならぬ 月 いってはならぬ、と魔女はうめきましたが 火 王様はその星に向かって走りました。 魔女、王様を必死に止める。 王 森を抜けました。 月 そこには見たことのない広大な湖が広がってるだけで、王様の愛した町はもうありません でした。 火 なん…だ…と 魔 だから言ったのに。 月 魔女は全てを知っていました。 魔 だから言ったのにぃー 木 魔女の声が遠くから聞こえました。 火 王様は振り返ってみましたが、そこにはあの鬱蒼とした魔女の森も、もうなくってまし た。 月 ↑なくなって、ただ1本の老木が生えていました。 木 それは魔女の身体でした。 魔 わたしと一緒にいればよかったのに 月 王様は魔女の顔を戻そうとしましたが、首がどこか、どこにあるのかちょっとわかりませ んでした。 魔 。・゚゚(ノД`)あ゙∼ん 火 魔女は泣きました。 木 世界中に響くほどのそのはげしい泣き声に、王様はうっかり、そして、大方の予想通り魔 女の顔を見てしまいました。 月 魔女はこの世のものとは思えないおもしろい顔を… 木 ↑恐ろしい顔をしていました。 火 王様は呪われました。 月 それからというもの、国を亡くしたこの哀れな男は、数千年にわたり今でもひとり、アフ リカ、タンザニアのどこかで、魔女に捧げる歌を歌っていると言われています。 火 この時にできた湖が、タンザニアの北に広がるタンガニーカ湖です。この湖は世界でも二 番目の深さをほこり、その豊富な水産資源は周辺地域の人々の生活を長年に渡って支えていま す。 魔 そしてこの魔女の身体と言われているのが、かの有名なバオバブ木です。恐ろしい伝説を 持つ反面、乾燥した大地でも枯れる事がないため、その神秘的な力は古来より信仰の対象とし て、あ、(携帯を見て)やばい…ごめん、わたし、帰る。 王 … 魔 じゃあね、また来るから 木 ぽつり 金 雨子が走ったあとに一粒の雨が落ちました。 木 二粒 月 と数える余地も無く 木 あっという間に豪雨。 雨 え、なにこれ 月 雨子の前には雨が降っていません 雨 え、なにこれ、雨、が追って来るんだけど 金 違います。その時、ちょうど中目黒にいて 土 うん 金 そしたら、目黒川(?)、あるじゃん 土 うん。 金 あっという間に水かさが増えて 土 うん 金 で、やばいと思って 土 うん 金 すぐ逃げて、代官山の方に 月 川が れました 金 でも、どんどん、くんの、水が、で、やばくて…、やばかった。 雨 え、なに、これ ウルヒト、車で登場 雨 あ ウ どうも、えらいことになってるね 雨 これ、なんですか ウ 知らないよ、嘘、知ってるよ 雨 どっちですか ウ 知ってるよ ウルヒト、雨子を写メって、スマホをいじる 雨 なんですか ウ うん… 雨 え、なんですか ウ ちょっと待って… 雨 あの、すみません。危ないですよ、運転しながら ウ わかってるから、すぐ終わるって 間 ウ 拡散しといた 雨 …なんですか 土 え、なにこれ、雨、が追って来るんだけど 金 違います。 ウ これ、あなたの汗ですよ、この雨 雨 え… ウ だって、あれだけの涙を汗で発散したら、普通に考えて、降るでしょ、雨 雨 ふつーって ウ ほら、見てごらん 雨 え ウ 後ろ 土 雨子の後ろは嵐 金 というより天変地異です。 木 太陽を遮る厚い雲と大きな海が広がっていました。 雨 それでわたしは美しいなって思ってしまったのでした。 ウ もうみんなこれが君の仕業だって知ってるよ。 雨 え…。あ、薬!ありました? ウ え、あー…、うーん、うん。 雨 ほんとですか?よかった!飲んだら止まるんですよね、これ ウ うん、まあ、たぶんね 雨 ください ウ タダで? 雨 や… ウ 高いよ、払える? 雨 …いくらですか ウ 50万 雨 …え、なんでですか ウ この前の薬はもう無くて、別の薬になっちゃうのと、今、あなたのせいで、円が暴落し ちゃってるんだよね、だから 金 一応ジェネリックもありますけど ウ どうする? 雨 じゃあ、それで ウ 45万、キャッシュで払えます?ビットコインだったら少し安くなるけど持ってないよね 雨 は…い。あ、カードって使えますか、クレジット ウ 大丈夫ですけど、限度額大丈夫ですか? 雨 あー、じゃあ、現金でって言って、コンビニのATMでお金おろしたんですけど、なん か、涙が止まらなくて、わたし何やってるんだろって、いつかお父さんとお母さんと旅行でも 行けたらなって思って貯めてたのに、もう無理みたい、ごめんね。って、こんなことだった ら、ちゃんとお母さんの言う事聞いてちゃんと薬飲んでおけばよかった。って考えてるころに は胸のところまで涙があふているのでした。 ウ おろせた? 雨 はい ウ はい、たしかに。 雨 … ウ じゃあ、これね 雨 はい 間 雨 わたしはそれを左手で受け取り、右手の人差し指が 木 その薬に触れたその瞬間、わたしの人差し指は去年の誕生日に買ったノートPCのキー ボードUのキーに触れていて、そのキーを叩いたのは累計1万3287回目だったそうです。 雨 それで、軽く口を開けて、その薬を舌の上にのせて、なんか熱くて舌に引っ付く感じがし ました。 金 ↑その時、わたしは、スタバなうでした。 雨 ↑手元に水がなかったので仕方なく、唾液だけで飲み下しました。 月 ↑その時、わたしは、電車に乗っていて、中吊り広告、美容薬品の広告をながめていまし た、moment 雨 で、すごい、目眩がして、あ、やばいって、お腹の中がすごく熱くて、そんな感覚はじめ てだから、これって熱いんだよなって、でやばいって、なって、目眩がして、その次の瞬間、 身体が、膨らんで、比喩じゃなくて、ほんとに、血管が、全身の血管が膨らんで、マシュマロ マン、ゴーストバスターズの、ミシュランのあの変なマスコットのあんなかんじ、で、皮膚が ところどころでさけて、血と何て名前か知らないけど、体液が れて、右目が先に破裂して、 左目が破裂する手前、もう無理って思った時、急激に身体がしぼんで、あ、しぼむ、よかっ たって思って、思った頃、わたしは死んでいました。 雨音 月 それで、雨は止んだのですか? 火 いいえ。彼女から蒸発した水分は巨大な雲を作り結局大雨を降らしたそうよ。 土 世界中で? 火 世界中で。 土 彼女は死んだの? 火 はい、残念ながら、からからに干涸びて、 土 からからに干涸びて、ミイラになって死にました。これです。(干物を置く) 金 世界は滅んだのですか? 月 滅んだと言われています。 金 でも世界中で雨が降り続けることなんてあるんですか? 土 あります! 火 どのくらいふったの? 木 ものすごい。世界は、低気圧だけになったのでした。 金 そんなことありえなくない? 月 彼女のミイラはどうなったのですか? 木 あーそれなら、彼が持って行きましたよ。 金 彼? 雨 犬がいて、とても痩せた犬がいて、その犬が私の左足、膝から下をくわえて持って行って しまいました。犬はすごいスピードで走ります。私は自分の足ではそんなに速く走った事無 かったから新鮮で、自分では難しくても人に任せたら簡単にうまくいくことってあるよなやっ ぱりって思っていました。要領が悪いんだなって、そんなこと今気づいてもどうしようもない けど。でも犬の行動範囲は私が思っているよりずっと狭くて、あの(この?)犬はどうせこの 町から出られないんだろうし、それだったら渡り鳥とか、私の足をもっと小さくバラバラにし て、それで、渡り鳥とかに、もっと遠くまで運んでほしい。そうだ、それだったらクジラ、ク ジラがいい。クジラだったら何万キロという距離を移動するというし、クジラだったら、私を まるごと飲み込んでしまえるし、私の身体をバラバラにする手間も省ける。クジラは海しか移 動できないけど、陸より海の方が面積が広いしずっといいな、と思っていました。でも現実で は犬が私の足をくわえていて、この犬が海まで行く事はないだろうと思います。そもそも海は どっちだろうか、この町に無いにしても、この国に海はあるんだろうか。ここどこですか? 土 地球を、私が、地球だとすると、この辺です。 木 ここは? 土 ここは…ウズベキスタン 木 ここ 土 トリスタン 金 トリスタン 月 トリスタンなんて国なくない? 土 あ、るよ。ね 金 あほだ 雨 あー、無いかな 木 ほらっ 金 無いよね ウ おい!足無くなってんじゃん! 雨 … ウ 足無くなってんじゃん 雨 … ウ 聞いてる?困るんだけど 雨 … ウ まじかー 雨 … ウ 全部 ってないと、買いたたかれるんだよね 雨 どういうことですか… ウ ↑なんだ聞こえてんじゃん、これどうしたの? 雨 あ ウ これどうしたの? 雨 あ、犬が、持って行きました ウ 犬(舌打ち)あー! 雨 … ウ …ま、いいか。気をつけてね、これ以上減ったら困るから 雨 ここどこですか? ウ どこだと思う? 雨 あ ウ ↑カシュガル 雨 …どこですか? ウ …(携帯を見ている) 土 ウズベクです。 雨 わたし、どうなるんですか? ウ …。どうなるって、もう死んでるんだから、どうなってもいいでしょ 雨 …これから、 土 これから、まずはカイロを目指します。 雨 カイロ。エジプトですか? ウ そう、いくつかルートあるけど、どうする? 雨 あ、ちょっと、わからないんで ウ ↑おまかせで 雨 おまかせで…はい。あの…わたし、死んだんですか? ウ うん、え、自分でわかんないの? 雨 …実感は無いです。 ウ そっか、まあ、おれも死んだこと無いから、そんなもんかもね 雨 わたし、どうなるんですか? ウ …。 間 ウ うん、まあ、端的に言うと、あなたを欲しがっている人がいるので、その人に売ります。 雨 (ぼそっと)たすけて 間 ウ あれ、またいなくちゃった? 雨 死んだわたしの意識は一定の場所に留まることは難しいようで、魂とか霊とかわたしは生 前一切信じていなかったんですけど、こうして死んでみると案外あるもんだなっていうか、精 神も物質なのかもっていうのが一番、あるなーって思います。 土 そうして、雨となった雨子はその一粒一粒にその記憶を宿し、世界中に降り注いだという ことです。 ノ 道を歩いていて、 金 または、 ノ 走っていて額にピタっと何かが当たって、それが雨だと気づくのに必要な時間、それは人 s 金 oれぞr、 ノ eまあ、あると思うけど、僕も、普段の僕なら例外ではなくそれが雨だと気づくのに ちょっとだけ時間がかかる。 月 そしt ノ e、しかし、その日のそれw 金 a、たしk ノ a、に雨ではあったけど、その日僕の感は冴えていて、それが雨だと気づくよりs 月 aきに、全然 ノ 先に、その雨の炭素を少し含んだ水の分子の原子のたぶん、最初の水素が額に触れた瞬間 に、その雨の正体に気づいていたのさ。hello 雨 ヘロー ノ あ、どうも、はじめまして 雨 はじめまして ノ あなたは誰ですか? 雨 ? ノ Who r u ? 雨 あ、わたし? ノ y 雨 雨子 ノ omeko!?oh r u pussy? 雨 A、ME、KO。k?im not fuck'in vagina! ノ oh sry!悪気は無いんです。 雨 k、私下ネタは嫌いよ ノ im sry 雨 わかってもらえればいいのよ ノ まじごめん、オレってやつはまじでfuck'inクソ野郎だim really sry 雨 もういいって、ところでここどこ? ノ ここかい?あー 雨 なに ノ 実は僕にもわからないんだ 雨 どういうこと ノ 僕はここから動けないからね 雨 ふうん、そう。btw、あなた何してるの? ノ だから、何も 雨 ふうん…えっと、それって、つまり…、 ノ うん? 雨 ごめんなさい。気を悪くしないでね ノ おー、k、何だい 雨 あなたは、その、つまり…その、ずっと… ノ 何だい? 雨 だからね、その、うん、ひき<こもり>… ノ ↑おい、なんだ、おれをひきこもり呼ばわりするのか 雨 oh、ごめんなさい ノ それ本気で言っているのか、オレがそんな風に見えるかい 雨 ほんとに、ごめんなさい、そんな… ノ オレがそんな風に見えるのかって聞いてるんだ!答えろ!fuck'in vagina! 雨 だって、何もしてないって言ったじゃない ノ オレは、何も、って言ったんだ 雨 同じ事じゃな… ノ 何も、してない、と、何も、できない、は違うだろ!そんなこともわからないのか!それ におれは、こうも言ったはずだ。ここから、動けないってね、わかるかfuck'in vagina!! 雨 私の事をvaginaと呼ばないで! ノ k、ameko、k…、u r not vagina、そうだ君はvaginaじゃない、そうだ、そして、おれ も、引きこもりじゃない、わかるか 雨 ええ、わかったわ、ごめんなさい。もう言わないから ノ わかればいいんだ。オレは別に怒っているわけじゃないんだ。わかるだろ 雨 ええ、わかるわ ノ あーshit!くそ、おれってやつは、またやっちまった。ほんとに怒ってないんだ。ただ ちょっと、あーshit、おれはshitだ。 雨 そんな自分を責めないで。誰にでもあることよ ノ わかってくれるかい、本当に許してほしい、こんなことは二度としないって決めたんだ、 あの日からね 雨 もう大丈夫よ ノ そうだ、あの日、おれは変わるって決めたんだ 雨 うん ノ 話を聞いてくれるっていうのかい?君はジーザスか? 雨 No、私は雨子。ジーザスでもアラーでもof fuckin course、vaginaでもないわ ノ ははは、そうだな何から話そうか、あの頃オレは…、 雨 うん ノ 毎日…、毎日起きて寝て起きて寝て、ただ、それを繰り返していて、繰り返していて、返 していてえしていえしていえいして… 元 もう、わたしのことも覚えていないかもね ノ ごめんだめだ、やっぱり何も思い出せない P「将来何になりたい?」 ノ あー、なんだろ、あー、あ、宇宙飛行士、かな 木 わーすごい、そしたら、お母さんも宇宙に連れて行ってくれる? ノ や、それは無理でしょ。だって、宇宙行くにはすごい、くんれんとか、すごいしなくちゃ だめなんだよ 木 そっかあ、残念 ノ あ、でも、最初のメッセージは、宇宙からの、お母さんにするからね 元 そんな昔じゃなくて、私のこと思い出してよ 雨 どちらさまですか? 元 ああ、元…カノっていうんですか、わかんない 雨 ああ 元 そうなんですよね、付き合ってたかどうかも怪しいっていうか… 雨 あ、失礼ですけど、おいくつですか? 元 27歳です 雨 あ、同じです!わたしも、7 元 ああ 雨 はい 間 元 わたし、他の男の人と付き合った事ないから、よくわかんないんですけど…、割と信用し てた、しちゃってたんですよね…。だから結局自分が悪いのかもって思って、納得する様に最 近はしているんですけど。まあ、実際法律には触れているわけですから、あー、これ話さなく ちゃだめですか。じゃあ、言いますけど、大麻の栽培をしてて、わたし、家で。昔、っていう ほど前じゃないですけど、大学の2年のときに、だから、えーと、まあ、3、4年前に、おじ いちゃん家、あ、北海道なんですけど、行って、そしたら、庭に、生えてたんですよ、それっ ぽいのが、で、まあ、調べたら、で…。それで、室内栽培セット買って、その頃には一人暮ら ししていましたから、育てようと思って、で、結構うまくいったんですよ。…わたし、他に趣 味も無いし、なんか、たぶん、あー、わたし、結構いい子で通ってて、成績も良かったし、悪 い事、お酒とかたばことか、高校のときにはみんなやってたけど、わたしはそういうものやら なかったし、だから、たぶん、悪い事しているのが楽しかったんだろうと思います。別に人に 売る気もなかったし、自分でちょっと吸うだけで、あーでも、自生してる大麻ってあんまり… なんていうか、効かないみたいで、やっぱりそれ用にちゃんと育てた品種じゃないと駄目みた いです。 ノ 駄目みたいです、じゃねえよ、馬鹿 元 … ノ 恥かいたんだけど、どうしてくれんの? 元 … ノ どうしてくれんの? 元 … ノ まあ、恥かいたのは、別にいいんだよ、よくねーけど、別に、オレが恥かくくらいのこと はさ、どうでもいいわけ 元 うん ノ うん、じゃねえよ…、よくねえだろ全然、よくねーけど、我慢してんの、大人だから 元 ごめん 間 ノ で、どうすんの? 元 はい ノ はい、じゃなくて、お金、100万、どうすんの? 元 … ノ もう、3万くらいしか残ってねえよ、おれ、嘘、2万、2万 元 … ノ 残り、98万 間 元 あー…、あの ノ うん 元 わたし、関係ないですよね ノ は?なんで?お前のもんじゃん 元 たしかに、わたしの、ものですけど。 ノ そうだよね 元 それを勝手に売ったのは、あなたですよね。 ノ 勝手にって 元 ですよね。 ノ おれさー… 元 なんですか ノ おれ、こんなじゃん。だからさ、まじで今まで悪いことしたなって思ってて 元 うん ノ 結構まじめに考えてんだよね、恥ずかしいけど 元 わたしとのこと? ノ 一緒に旅行行きたいなとか、考えてて、行きたくない? 元 … ノ どこ行きたい? 元 …どこでもいいよ ノ おれ今まで海外行ったことないし、どう? 元 … ノ グアムとか、あったかそうじゃね。つーか、グアムって何?国? 元 …(笑う) ノ あー、今馬鹿にしたべ 元 …してない ノ まじで?よかった 元 うん ノ でもさ、おれほんとにがんばってるんだけど、スロット全然勝てなくて、や、トータルで 見たらちょっと勝ってるくらいなんだけど、でも、全然で、だから、もう、ほんとごめん。こ れ、最後だから、150万貸してって言ったところでガツンって、このざまさ 雨 思ってたとおりのクソ野郎ね ノ でもさ、最近、すごく反省して、勉強して、それで性善説ってやつ知って、人間生まれな がらに悪い人はいないってやつ、聞いて、なんだよ、それ最高じゃん、おれも、ウルトラいい やつになれたかもしれないって思って、だから、やりなおせないかなって思ってて、思ってて というか、もう、やりなおせる、オレは、ヒーローになっちゃうぜって思っちゃってるわけで すよ。 雨 タスケテー! ノ だから、今すぐ、助けにいくからな、fuck'in vagina! ノーシばたばたと暴れるが動けない。 雨 あれ ウ おかえり 雨 ただいま。え、あ… ウ うん 雨 今どこですか? ウ どこだと思う? 木 今、ヘラートに着いたところです。 雨 今どこですか? ウ どこだと思う? 木 今、バグダッドに着いたところです。 間 ウ カイロに着いたよ 雨 …はい 間 雨 だれが… ウ うん 雨 だれがわたしを買うんですか? ウ 言ってもわかんないと思うけど、 雨 はい ウ アフリカの、ある部族で 木 女性のミイラを食べると、病気が治り、長寿の効果があると言われているそうです。 ウ アフリカには、呪術で病気を治したりするひとがいてね。昔から人間の干物っていうのは 珍重されてきたんだよね。 雨 人を食べるんですか? ウ うん、まあ、別に珍しいことじゃないから、それは 雨 …、わたし食べても病気なんか治りませんよ。 ウ うーん、どうだろうね 雨 や、治らないですよね。そんなの聞いたことないですよ。 ウ うん、まあ、そうかもね。あ、でも、すごいうまいらしいよ、人間の干物は。まあ食べた ことないからほんとかわかんないけど 雨 な… ウ まあ、あとは食べてるものにもよるけど、ほら、水一杯飲むでしょ、ね、多涙症の、涙止 まらない病気のひとは。それがいいらしんだよね。デトックス(?) 雨 そんな話信じられません。 ウ あんたが信じようが信じまいが、別にどっちでもよくて。実際に信じる人がいて、そうい う人がいっぱいお金を出してくれんの。わかる?それよくない? 雨 よくはないです。 ウ ああ、そう?つーか死体のくせにあんましゃべんじゃねえよ、めんどくせえな。 雨 死体だってしゃべりますよ。 ウ おれさー、あんたが診察に来た時さ、YES!YES!って思ったんだよね。神きたって。福 音が聞こえた、まじで。ハイタッチしそうになったもん、まじ感謝、yeah 雨 ちょっと、やめてください。 ウ なんで 雨 っていうか…、それって、わたしのこと売る為にあの薬飲ませたんですか? ウ え、うん、そうだけど、あ、でも、勘違いしないでね。違うよ 雨 なにがですか ウ や、だってああするしかないでしょ、ね。自分が何したかわかってるよね 雨 それとこれとは違うじゃないですか ウ ↑違わないでしょ。だってあのままほっといたら日本どころか世界中沈んでたよ。 雨 … ウ だから、むしろ、オレが英雄であんたが悪者ってことになってんのね、世界では。 雨 …日本、無くなっちゃったんですか。 ウ うーん、まあ、全部じゃないけど、関東平野から東海地方にかけては、ほぼ。 間 雨 わたし、帰りたいです、家に ウ だから、もう家なんてないんだって 雨 無くてもいいです。あったところで、死にたい、家の ウ もう、死んでるんだし、いいでしょ。ここで、犬とか鳥に食われるか、タンザニアまで 行って偉い人に食べられるか、もうどっちかしかないんだって。それだったら、ここで犬とか 鳥とかしょうもないもんのエサになるより、アフリカ行って、偉い人の寿命延ばして、オレが お金もらえる方がよっぽど人のためになるんだから、尊厳ある死っていうの(?)その方が断 然いいでしょ、誰が考えても 雨 …どっちでも一緒ですよ。 ウ どっちでもいいんだったら、だまってろ馬鹿 雨 今どこですか? ウ エチオピア、あと数日で着くよ。 雨 今どこですか? ウ まだエチオピア、町の名前はわかんないけど 雨 今どこですか? ウ タンザニアの国境を越えたよ。 雨 今どこですか? ウ もうすぐ着くよ。 雨 今どこですか? 男、干物の前に座る。 ウ 着いたよ。 男 いただきます。 ノーシの電源が落とされる。 土 その時、完全に干涸びたはずの雨子の目から一滴の涙がこぼれました。 間 雨 涙が落ちた先から一輪の真っ白な花が咲きました。その花こそ、あの幻の花モーメントで す。一瞬しか花を咲かせないことで有名なこの花から抽出された成分アルドモメノイドは活性 酸素を、とそこまで読んで、わたしは飽きてしまった。地下鉄の広告は金融会社と脱毛エステ が交互に並んでいる。その日わたしは、仕事が休みにも関わらず昼前10時頃、家を出た。姉 に子供が生まれたのは先月の初めのこと。今月ももう終わる。あれこれと言い訳を並べて、か れこれ2ヶ月近く甥との面会を延ばしてきた。自分と血のつながったしわしわの赤子を見て素 直にかわいいと言える自信がなかった。というのも、また言い訳で、結局わたしは、姉や、そ の旦那と顔を合わせるのがただ億劫なだけだったのだと思う。ほぼ毎日通勤で使っている黄色 の銀座線に乗って、職場がある赤坂見附の駅を過ぎ、溜池山王まで行って緑色の南北線、ヘル シンキ方面に乗り換えブルックリンまで行くつもりが、何を間違ったのか台北で降りてしまっ た。ずいぶん手前で降りてしまったと、自分の注意力の無さに辟易したが、実のところこれも きっと姉に会うことを回避しようとしている深層の表れで、そうであるなら、このまま姉との 約束をボイコットして屋台で昼間からビールでも ろうかとも思ったが、その一歩を踏み出す ことのできないわたしは、結局次に来た同じ緑の電車に乗り直した。わたしはもう大人なの だ、もうちょっとで大人の階段を踏み外すところだった。車内は先ほどと変わらず空いてい て、上品そうなお婆さんの横を選んで腰を降ろすとわずかに仁丹の嫌な匂いがした。わたしは 仁丹が嫌いだ。というか、あれを好きな人がいることが信じられない。若い人はまず食べない し、食べるのはほとんど年寄りだけ。歳をとると味覚が変わるというが、あんなものをおいし いとおもえるほど変わることがあるか、いや、ない。きっと歳を取ると歯が抜けるのと一緒に 舌も抜けるのだ。それで、入れ歯ならぬ入れ舌をする。仁丹はきっとその入れ舌を洗浄するた めの薬品で、そうであるなら、キオスクでオシャレなタブレットと一緒に並べないでほしい。 医薬品だろ、あと6駅で着く。景色が変わらないから地下鉄が嫌いという人は多いけれど、わ たしはその逆で、景色なんて何も見えない方がいいと思う。電車が走っている間は言ってみれ ばパソコンとモデムをつなぐLANケーブルみたいなもので、そんなものまじまじと見ていても 楽しいはずがない。結果だけあればいい。それに外を走る電車はずっと景色を眺めていると、 自分が動いている実感が薄くなって、町が次々に迫ってくるように思えて怖い。近景は速く、 遠景はゆっくりと動く。わたしはその駒の中心にいて逃げられない、そんな思春期を迎えたば かりのネクラな文学系JKが思う様なことをこの歳になっても考えてしまっていることがなによ り恐ろしいと思う。身動きがとれない。なんてとりとめのないことを考えているうちに、目的 のブルックリンに到着していて、わたしは慌ててホームに降りた。休日のブルックリンは思っ たより静かで、東京に比べてまだ肌寒かったがコートを羽織るほどではなかった。 間 雨 以上です。ありがとうございました。
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