高エネルギーQCD における非平衡物理 板倉数記 KEK素核研 熱場の量子論とその応用 2007年9月6日 京都大学 二つの「非平衡過程」 1.高エネルギー散乱における 多重グルオン生成 = 反応拡散系 (昨年度の20分講 演) 2.重イオン衝突における「熱平衡化」 のプロセス(QGP生成過程) Æ「カラーグラス凝縮」が重要な役割 第1部 高エネルギー散乱における 多重グルオン生成 高エネルギーハドロン散乱 高エネルギー極限=Regge極限 全散乱エネルギー >> 運動量移行 ハドロン・ハドロン散乱 a c s b 陽子の深非弾性散乱 e γ∗ pµ proton qµ t e d s=(pa+pb)2 t=(pa - pc)2 s >> |t| W2 =(p+q)2, Q2 =-q2 W2 >> Q2 >> ΛQCD2 (非摂動スケール) 或いは、 x ~ Q2 /(W2 + Q2 )Æ 0 Cf) Bjorken limit: x=Q2/2pq を固定して Q2 Æ∞, 2pµ qµ ~ W2 + Q2 Æ∞ 高エネルギー散乱での陽子の振る舞い 深非弾性散乱でみた陽子の内部構造 パートン:クォークとグルオンの総称 陽子 各パートンの分布関数 γ* 1/Q transverse longitudinal 1/xP+ Q2 = qT2 : transverse resolution x =p+/P+ : longitudinal mom. fraction パートンの持つ運動量比x ・ 陽子は単純な3つのヴァレンスクォークの集まりでは「ない」 ・ 陽子は小さな運動量比( x < 10 -2 )を持つ膨大な数のグルオンからなる ・ そのグルオンは高エネルギー散乱( x ~ Q2/(Q2+W2) Æ0 )で見えてくる 同様のことは、全てのハドロンや原子核にあてはまる グルオン多重生成 高運動量パートンの「揺らぎ」の寿命は「長く」て「短い」 p µ = ( p, 0 ⊥ , p ) k µ = ( Ek , k ⊥i , k z = xp) 1 1 2 x (1 − x ) p ~ = 揺らぎの寿命 ∆ t ~ ∆E Ek + E p−k − p k ⊥2 (xp >> kt のとき) xp >> kt Æ 揺らぎが長寿命化 • エネルギーが大きければ大きいほど、 x の小さい長寿命の揺らぎが可能 • 子供のパートン(グルオン)が十分長寿命ならば、「孫」を産む Æ 多重生成 (グルオン3点相互作用) • 揺らぎはパートンの波動関数を与え、「散乱」によって、それが顕在化する • 一つのグルオンを生成するdiagram Æ αs ln 1/x (αs =g2/4π) n 個の生成 (αs ln 1/x)n 小さいx が大きな寄与 Æ 高エネルギー散乱では • 親パートンのエネルギー(運動量)大 グルオンの多重生成が重要 グルオン多重生成 (さらに深く) • 運動量の“strong ordering” p >> k1 >> k2 >>…. (kT については同程度を考える) Æ 子供のグルオンは「親にくらべると」寿命が非常に「短い」 (時間スケールの分離) ∆ t1 ~ 2 xk 1 2 xk 2 >> ∆ t ~ >> ∆ t 3 >> ...... 2 2 2 k⊥ k⊥ Æ 世代が進むにつれて、短寿命化 ・・・ 揺らぎは xki ~ kt で終了 最初の運動量が大きければ、数多くのグルオンが生成できる Æ 短寿命のグルオンにとって、それ以前の全世代のグルオンは静止している → エネルギー増加の下でのグルオン増殖は「局所的」 Æ 放出されるグルオンは、それ以前に生成したグルオンたちがソースとなる • これらの揺らぎはランダムに発生 Æ 「エネルギーの増加」を「時間経過」と 見なすと、確率過程、特に「マルコフ過程」で記述できる • さらにグルオン数が増加すると、グルオン間の相互作用が効いてくる Æ カラーグラス凝縮へ 深非弾性散乱でのグルオン増殖 x ~ Q2/W2 がそれほど小さくないとき Q2 W2 • 仮想光子がクォーク・反クォーク対に「揺らぎ」、 その寿命が十分長くなるほどの運動量をもつフレーム(ダイポール・フレーム) カラーダイポールの散乱振幅 ∼ 陽子内部のパートン数 • 陽子側はヴァレンス的描像が成り立つ →光子側はそのままで、核子だけブーストしていく (散乱エネルギーを増加) グルオン数の線形増殖 散乱エネルギーの増加と共に、グルオン数が増えていく. BFKL方程式 新しいグルオンは既に生成しているグルオンから生まれる Æ 線形な発展方程式 (グルオンの3点相互作用 gÆ gg) Y ~ ln s ラピディティー について局所的 Æ グルオン数や散乱振幅が指数関数的に増加 Æ ユニタリ性の破れ グルオンの飽和とカラーグラス凝縮(CGC) グルオン数が膨大になると、生成グルオン同士の相互作用が効きはじめる カラーグラス凝縮(CGC): 高密度グルオン状態 グルオン再結合 (ggÆ g) により、増加が遅くなる Æ グルオン数の飽和、ユニタリ性の回復、カラーグラス凝縮 非線形な発展方程式: gÆgg (分裂) とgg Æ g (再結合)の競合 Balitsky-Kovchegov 方程式 BFKL+非線形項 CGCの記述方法 自由度の分離 大きな x : ヴァレンス粒子 Æランダムなカラー荷分布 ρ a(x) 小さな x : 大きな x のカラー荷が つくる輻射場 (D F ) ν νµ a = δ µ + ρ a ( x⊥ ) ρa: 2次元面上のカラー荷分布. カラー荷分布に対する「重み関数」を導入 最も簡単な例: Gaussian = McLerran-Venugopalan model ⎧ 1 2 ρ a ( x⊥ ) ρ a ( x ⊥ ) ⎫ Wx 0 [ ρ ] = Ν exp⎨− ∫ d x⊥ ⎬ 2 µ ⎩ 2 ⎭ 飽和運動量 QS(x) カラーグラス凝縮を特徴付けるセミハードスケール(>> ΛQCD) 1/QS(x) : ハドロンの横平面がグルオンで覆い尽くされたときの グルオンの典型的な大きさ R 1) ρ ・σ ~ 1 2) when the unitarity effects set in N Y ( r = 1 / Qs ) ≈ 1 LO BFKL [Gribov,Levin,Ryskin 83, Mueller 99 ,Iancu,Itakura,McLerran’02] NLO BFKL [Triantafyllopoulos, ’03] 飽和したカラーグラス状態とそうでない状態の「境 界」 グルオンのもつ運動量の典型的な大きさ → 弱結合系 αS(QS) << 1, Qs >>ΛQCD kN(k) QS k Balitsky-Kovchegov 方程式 Y ~ ln s ラピディティー • T xy : 位置 x と y にあるカラーダイポールの散乱振幅 ∼ グルオン数 が 散乱エネルギーの増加と共にどう変化するかを記述する「発展方程式」 Y • BFKL + 非線形項 Æ T xy Y が飽和する [at fixed b = (x+y)/2] : • T xy Y ≤1 飽和運動量Qs(Y ) はラピディティーについて増加 : Qs2(Y ) ~ e cαY c = 4.88339 [Iancu,Itakura,McLerran] • 幾何的スケーリング Æ 振幅 T xy T xy Y ( ≅ r⊥2 Q S2 (Y ) ) λs Y が (x-y)Qs(Y ) の関数 , λ s = 0 .627549 → 実験で見つかっている 幾何的スケーリング [Stasto,Kwiecinski,Golec-Biernat 2001] 深非弾性散乱で発見された The γ*-proton total cross section σ(Q2 , x) becomes a function of only one variable ξ= Q2/Qs2(x) at small x σ(Q2 ,x)=f(ξ) , with Qs2(x) ~1/xλ , λ∼0.3 determined by the fit Æ Qs の存在を保証する重要な結果 Qs の x依存性はCGCの結果と矛盾しない γ*p total cross section 弱結合CGCのdualは5次元重力? Alvarez-Gaume, et al. “Scaling phenomena in gravity from QCD” Phys. Lett. B649 (2007) 478 (hep-th/0611312) “One of the most intriguing papers of 2006” by Distler in his blog “Musings” Choptuik臨界指数 重力崩壊に現れる「臨界現象」。 初期物質分布(massless scalar)を指定する パラメータ p について、 小さい p Æ 物質は拡散して平坦な時空へ 大きい p Æ 重力崩壊してブラックホールへ 臨界値 p* が存在し、その近傍では地平線半径が r0 = (p-p*)γ なるスケーリング。 Choptuik臨界指数γは、初期条件の詳細に依らない この現象はCGCの非線形性の発現と同じ物理ではないか? 5次元ブラックホールのChoptuik臨界指数 γ = 0.412 ±1% とSaturation scale Qs2(Y) ~ ecαY の指数 c から得られる [Iancu,Itakura,McLerran] 2/c = 0.409552 の一致は偶然ではない。 強結合重力と弱結合ゲージ理論の対応を示唆? CGC = 反応拡散系 Munier & Peschanski (2003~) 運動量表示でのBK方程式は、高エネルギーで良い鞍点近似のもとで、反応拡散系 の一種である FKPP方程式 (Fisher, Kolmogorov, Petrovsky, Piscounov) に等価である ここで t ~ Y, x ~ ln kt2 , u(t, x) ~ <T (k)>Y . もっと詳しく言うと 運動量空間でのBK方程式 χ を saddle point γ=1/2 の周りで展開し、2次までとる FKPP方程式と進行波解 FKPP eq. = “reaction” + “diffusion” 反応 拡散 反応拡散系:非平衡物理における重要な研究対象。幅広い応用(生物、化学も) 例:パターン形成、伝染病の拡散、神経系のパルスの伝播、化学反応の進行 数学的には拡散方程式に反応項がついた微分方程式系の総称。 方程式は、ミクロ的には確率過程として定義される。 Reaction : Logistic growth (gÆgg, vs ggÆg) F(u) = u-u2 =0 Æ u=0, 1が(不安定、安定)固定点 不安定状態から時間経過と共に指数関数的に増加し、非線形効果で安定化する解 u = 1: stable (人口爆発とその沈静化) Diffusion : 安定状態の拡大 Æ進行波解 Traveling wave solution t t’ > t u = 0:unstable CGCとの対応 進行波解に対して、波の先端(フロント) 進行波解に対して、波の先端(フロント)を定義できる を定義できる x(t) x(t)==v(t)t v(t)t. . Æ x(t) ~ ln Qs2(Y) Saturation scale ! “Boundary” btw dilute and saturated regimes Main part of QS(Y) is determined irrespective of initial conditions (selection of front velocity) saturated R QS2 ( x ) ∝ (1 / x ) λ = e λY dilute 十分時間が経過すると解の形は変わらなくなり、 十分時間が経過すると解の形は変わらなくなり、xx––vtのみの関数になる vtのみの関数になる Æ x - v(t)t ~ ln k2/Qs2(Y) Geometric scaling !! Asymptotic solution u ~ exp{ -γ (x-vt)} QS(Y) from the data consistent with theoretical results. BK方程式を超える Iancu-Triantafyllopoulos ‘05 BK 方程式 = “fan” diagramの足し挙げ Æ target とprojectileについて非対称. Pomeron 分岐の効果を含まず! (from target point of view) projectile “fan” diagrams Nonlinear effect ~ - N2 BFKL evolution target Splitting: important at low density T (r ) Y ≈ α S2 n(r , Y ) << α S2 Æ Pomeron 分岐の効果をBK方程式に手で付け加える Stochastic FKPP equation Iancu-Triantafyllopoulos ‘05 運動量空間での変更されたBK方程式 (b依存性を粗視化) Æ ノイズを導入する!!! Å BK in mom space Å Noise term Stochastic BK reduces to Stochastic FKPP in the diffusive approximation FKPP ノイズ項 白色ノイズ Stochastic FKPP 方程式 = 「FKPP方程式」+「揺らぎの効果」 反応項をAA⇔Aとする反応拡散系のMaster方程式に対して Doi-Pelitiの第2量子化法を用いて自然に導出される (Itakura, unpublished) Stochastic FKPP equation 幾つものイベントに対する 2つの時刻における解(赤) 黒線はその平均 FKPPの解に対する2つの変更点 sFKPP FKPP t t’ > t Enberg, Golec-Biernat, Munier PRD72 (05) 1. フロントの平均的な速度が遅くなる. 2. 解の形状は大きく変わらないが、フロントの位置はランダムウォークをする 時空について相関のないノイズが種なのに、自明でない応答 sFKPP解の2つの振る舞いの理解 1.フロントの平均速度が遅くなるのは最先端での粒子数の離散性のため 現象論的、直観的には説明できる FKPP with a cutoff Brunet, Derrida, ’97 2.フロントが揺らぐのは、FKPP解のゼロモードの揺らぎとノイズが結合したため ノイズ項を摂動と扱い、線形解析 → フロント位置の揺らぎがノイズと比例 δX (t ) ∝ ∫ t dφ0 dt '∫ dz ' e ( z ' ) ε F (φ ) η ( z ' , t ' ) dz cz ' Panja, Itakura (unpublished) 定性的にはOK ところが、拡散係数 < δX(τ)2>=Dτ が定量的におかしい 線形応答解析 D ~ 1/ln6N 一方、数値解析(large t)では、 D ~ 1/ln3N この食い違いは、ゼロモードに対する摂動が特異摂動になっているのが原因で、 性質1を含めて、「くりこみ群の方法」により説明できる Sasa-Itakura (in preparation) 第1部のまとめ 高エネルギーハドロン散乱における 重要な物理量: 全断面積、構造関数、パートン分布関数 σtotal F2(x, Q2) xG(x,Q2) Æグルオン数密度 (カラーダイポール散乱振幅) その外部パラメータ (散乱エネルギー、 分解能など)の<変化>に対する、 物理量の「応答」を知る Æ 散乱エネルギー s 又は「ラピディティーY」 の増加のもとでのグルオン多重生成 s = s0 eY 定式化: 「発展方程式」 パラメータについての偏微分方程式 → 線形、非線形 Æ 線形・・・BFKL方程式 非線形・・・BK方程式 ラピディティーY Æ 時間とみなすと 多重生成過程は「確率過程」 反応拡散系と本質的に同等 BK方程式 → FKPP方程式 揺らぎの効果を含めても関係は成立 Stochastic BK → Stochastic FKPP 第2部 重イオン衝突における 「熱平衡化」の問題 RHICの提示した問題:早い熱平衡化? RHICでの非中心衝突における「楕円流れ」を「完全流体模型」が非常によく再現する。 2つの重要な示唆 (例えば、Heinz, “Thermalization at RHIC” hep-ph/0407067) 1.完全流体 → 強結合QGP ? 2.シミュレーションの開始時間が非常に早い teq < 1 fm/c QGPとは「局所熱平衡状態」なので、これは非常に早い熱平衡化の実現を示唆 → 理論的にこの早い熱平衡化を説明できるか? (「完全流体模型」に振り回される必要はないけれど、、、) 熱平衡化の理論 昔から様々な模型 ex) フラックスチューブ模型 (ストリングの崩壊、Schwinger機構による粒子生成) 有限の太さ、長さのフラックスチューブ、先端が光速で伸びるチューブからの粒子生成 最近の発展 ・・・よりQCDから熱平衡化を理解しようとしている CGCの与える初期状態から出発し、t > 1/Qs (RHICでは1/Qs ~0.2 fm/c)に対して * Bottom-upシナリオ (ハード粒子間の摂動的粒子散乱による平衡化、Boltzmann方程式) 平衡まで時間がかかりすぎる! t eq ~ 3-4 fm/c ? * プラズマ不安定性 (ハード粒子とソフトゲージ場の相互作用、Vlasov方程式) (運動量空間での)等方的分布は比較的早く得られる が、真の熱平衡については未知 cf) 奈良寧 『高エネルギー原子核衝突におけるQCDプラズマ不安定性』 原子核研究 次号掲載 しかし! これらの枠組みで理論的に早い熱平衡化を説明するのはかなり難しい 何故、t > 1/Qs としているか? 分布関数が定義できる時間(デコヒーレンス時間) では、t < 1/Qs では何が? → 「グラズマ」(= Glass + Plasma) 以下では、グラズマで熱平衡化について何が言えるのかを議論する cf) 板倉『衝突から熱平衡まで:強ゲージ場、不安定性、粒子生成』原子核研究 (会議録)2007年特集号 K.Itakura, “Can the Color Glass Condensate describe early thermalization?” PTP Suppl. (07) YKIS06 初期条件としての CGC 重イオン衝突=2つのシートの衝突 [Kovner, Weigert, McLerran, et al.] ρ1 ρ2 各原子核に対するカラーソースがグルオン場を作る Å 初期条件 α1 , α2 : 各原子核の持つグルオン場 実際、Region (3)では、 τ =0+のゲージ場は α1 と α2 で決まる グラズマとは何か? グラズマ: 領域(3)に生ずる熱平衡の前の状態 µν [ Dµ , F ] = 0 • ソースのないYM方程式 • CGCの初期条件のもとで解く → 真空とは異なる • 強い場、時間依存性あり • 膨張 → 多くの場合、ビーム軸方向にブースト不変な解を仮定 (Bjorken expansion) • 衝突直後 τ = 0+ には Ez と Bz は値を持ち、 ET と BT はzero フラックス・チューブ的構造 グラズマと熱平衡化の問題 「ブースト不変」な解では、グルオンのpz方向は、熱化しない Æ 「ブースト不変性」を破る種を入れる必要 (もともとの原子核の厚み、量子的な揺らぎ*に起因) *Fukushima-Gelis-McLerran P.Romatschke & R. Venugopalan, 2006 ブースト不変性を破る揺らぎが、指数関数的に成長し、縦方向の 圧力(つまり、等方化)に寄与することを数値的に発見 longitudinal pressure 3+1D 数値計算 PL ~ 膨張するプラズマのWeibel 不安定性 に似ている [Romatschke, Rebhan] (注意) Glasmaの描像が使えない領域 にまで踏み込んでしまっている g2µτ ~ Qsτ グラズマ不安定性 Q: 数値的に見つかった不安定性の正体は何か? 解析的な議論 ラピディティーに依存する揺らぎがブースト不変な解を背景にしてどう成長するか? Aη = −τ 2α (τ , x⊥ ) + aη (τ ,η , x⊥ ) Ai = α i (τ , x⊥ ) + ai (τ ,η , x⊥ ) 揺らぎについて線形解析 板倉 簡単な外場(コンスタント)のもとで、不安定性アリ (’07 春の学会、未出版) 電場(Schwinger的)、磁場両方とも。但し、t-z座標での解析。 福嶋 不安定性を示唆 (arXiv:0704.3625) Eη とAηを無視、CGCのアンサンブル平均をとる、 τ−η座標での解析 岩崎 カラーゲージ場の持つ異常磁気能率が原因で不安定性アリ (本研究会講演) Æ プラズマ不安定性で議論されているものと同じかどうか?不安定性はあるのか? まだ未解決 グラズマ:より深く CGCの初期条件を考慮して、より現実に近い状況でグラズマの不安定性を考察 H.Fujii and K.Itakura (work in progress) 状況の設定 1.熱平衡化が本当に起こるのであれば、CGCのある特定の カラー荷分布に対して起こるはず。 → 「アンサンブル平均」をとらずに議論 しかし、その分布(あるイベント)は2次元的にランダムであり、 それについての平均をとる必要がある → スピングラスでの self-averagingに相当 2.CGCの性質から、2次元空間上のランダム性はドメイン構造をなし、 その拡がりは1/Qsで与えられる。 3.衝突直後のフラックス・チューブも、横方向は1/Qs程度の拡がりをもち、 内部の電場、磁場の大きさはランダムで、ラピディティーに依存しうる 4.揺らぎの成長がある場合、それをバックリアクションで取り入れることも考慮 (Weibel不安定性との関係をみるため。Schwinger機構は全く異なる描像) より詳細は、学会で、、、 まとめ • 高エネルギーQCDに現れる、2つの非平衡物理を議論した • CGCは多重グルオン生成により形成されるが、エネルギーの増加を時 間経過と見なせば、確率過程と考えられる。特にBK方程式は、反応拡 散系と同等。 • 重イオン衝突で如何に熱平衡状態が達成されるのかは難しい問題。 様々なシナリオが考えられているが、CGCからのアプローチ(グラズ マ)は、もっとも衝突初期から議論できるもの。そこでの不安定性が示 唆されている。但し、その正体は未知。
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