映像学科 参考作品 AO入試 Ⅰ期・Ⅱ期 《作品A》 ○リリィ ・シュシュのすべて (監督・脚本 岩井俊二 二〇〇一年) ●対象入試区分 この映画はとある中学校を舞台に、主人公の少年にとって生きていく上で特別な存在であるアーティスト 「リリィ ・シュシュ」 を通じて、思春期特有 AO入試 Ⅰ期・Ⅱ期 の感情が独特な表現方法で映像化されており、 監督の岩井俊二は「自分で遺作を決めることができるならこの映画」 と語っています。 ●出題意図 学力だけでは測れない、意欲や感性、創造力などを課題や面接、あるいは作品によって把握し、総合的に評価します。 私がこの映画を初めて見たのは十七歳の時で、 その時の衝撃は未だに忘れることができないほどです。私が中学生だった頃に感じていた理由 のない不安感、虚無感のような言葉には表現しにくい感情がそこに映像化されていたのです。 ごく普通の中学校に通う登場人物たち、 ありふれた 日常風景、 それは私が見ていた世界とほとんど変わらないものであるのに、 まるで別世界のように美しく、 切なく、 しかも残酷に描かれていました。 映画を見ていて強く感じたのは映像の美しさでした。 しかし画質などが目立って良いというわけではなく一見美しくは感じないのですが、 なぜかと I M A G I N G ても美しいのです。何気ない田畑の風景や学校の教室が少し褪せた色で画面に現れ、 それらは思春期の頃の不思議な感覚を連想させ、 まるで ●評価のポイント 映像を学ぶにあたっての動機・意欲と、論理的思考力・文章表現力を評価します。 記憶の中の映像を見ているかのようでした。 そしてその映像をより印象的にしているのが音楽であると感じました。映画のストーリーはいじめや家庭 崩壊、援助交際、 そして死を時には過激な描写で描いており、内容としてはとても暗いものとなっていますが、 その内容とは対照的なリリィ ・シュシュ の優しい歌声とドビュッシーの美しいピアノの旋律が流れ続けます。 その美しい音楽により、何気ない風景や人物の心境、内容がより際立ち、音楽 によってここまで印象的な表現ができるのかと感じました。 そして何よりも、暗い内容の映画に対照的な美しい音楽を流すことで作られる不思議な ●アドバイス 面接ではご自身の作品を持参することも可能です。積極的にアピールしてください。 美しさを持つ世界観に強い印象を受けました。 A R T I M A G I N G ● 課題 ● 映像学科 Department of imaging art 課題 劇中では度々、文字やセリフが画面上にタイピング音とともにインターネット掲示板の書き込みとして打ち込まれ、物語の進行や登場人物の心理 描写などの役割を担っています。私が注目したのは二〇〇一年にこのようなインターネットを用いた表現をしているということです。今でこそインター A R T ネットは誰もが気軽に利用していますが、二〇〇一年ではインターネットの日本国内普及率は五十パーセント程度であり、 まさに流行し始めた頃だっ たと思われます。 その頃こういったインターネットを使った表現は、 新しい試みだったのではないでしょうか。 それまで映画は私にとってストーリーや演技を楽しむものでした。 しかしこの映画を見てからは、映像表現や音楽、撮影方法などにも目が向くよう になり、全く違った視点でも映画を楽しむことができるようになりました。 そしてそれは映画だけでなく、普段何気なく見ている映像や日常風景の見方 までも変えてくれました。 そのような素晴らしい作品をこれからもたくさん見たいと思うと同時に、私が感じたように人の心に響く映像作品を作りたいと 思うきっかけを与えてくれた、 特別な作品です。 課題内容 AO入試 Ⅰ期・Ⅱ期 あなたが映像学科を目指そうと思うきっかけになった映像作品(映画・TV番組・プロモーションビデオなど)、演劇などについて の論述:市販の400字詰原稿用紙(3枚程度)で表現してください。 筆者がリアルタイムで経験している思春期における言葉では表現できない虚無感や不安感が、取り上げた映像作品によって的確に表現できていることが分かります。ひとつの映 像作品に非常に衝撃を受けた筆者が、 どのような映像を制作するのか楽しみです。 《作品B》 私が映像学科に進もうとしたきっかけになった理由は、 日本テレビで日曜午後八時から放送されている 「世界の果てまでイッテQ」 という番組を観 て感動したからである。 この番組は、 日曜の夜、 家族団欒の時間で常識的には夕食中の、 いわゆるゴールデンタイムに放映されている。私はこの番組について、 旬のアイ ドルや芸人が出演していない、 出演者が地味な番組であると思っていた。 「世界の果てまでイッテQ」は、 当初はクイズ番組であったが、現在は世界各国の行事、不思議な現象、生き物を分かり易く説明、解説し、紹介す るコーナーがある。 また、視聴者から疑問を募集し、 その謎を解いていくことも行なっている。 それから、番組の中で出演者が過酷な挑戦をしていく 様子をドキュメントで伝えるコーナーもある。 私は、 この番組の出演者やスタッフの視聴者に向ける 「熱い思い」に感動した。出演者による様々な挑戦を放映してきたこの番組は、視聴者に 勇気と感動を数多く伝えて来たのだ。 私が観た、 「流氷の上でイナバウアー」 と 「アコンカグア登頂」 という二つの挑戦は、 どちらも成功まであと一歩のところで天候が悪くなり、 失敗に終 わってしまった。 しかし、 この二つの挑戦から伝わって来たものは、 失望ではなく、 感動であった。 編集次第で成功も演出できるテレビ界の中で、 いわゆる 「ヤラセ」ではなく、 失敗したときの悔しい気持ちが伝わって来たのである。 あと一歩のところであったが失敗は失敗であり、 視聴者に成功したところを伝えることは出来なかった。 しかし、 この番組は失敗したままを放映し、 そのときの出演者全員が涙を流した様子を伝えたのだ。 その涙は悔し涙であり、視聴者に申し訳ないという涙、頑張ったけれど出来なかった労い の涙でもある。 出演者、 スタッフ、挑戦に協力した人たち全員が全力で取り組み、団結し助け合って来たのだ。事前に調査、分析を行い、簡単なこと ではない挑戦を本気でする。 その姿から私は、結果ではなく大事なのは過程であり、 やってみせるという気持ちであると学んだのである。 「挑戦する こと」がいかに「難しく大変なこと」で、 また、 それが「貴重なこと」であり、 たとえ成功できなかったとしても、 「全力で取り組む姿勢」が大事であるとい うことだ。 私は、 この番組から伝えられたこと、 学んだことを生かして今後は私が番組を企画、 制作し、 多くの人たちに感動してもらいたいと思った。 私の将来の目標は、番組制作会社に就くことである。 そうして、 そこで、事実のありのままを伝えるドキュメンタリー番組を制作し、視聴者の心に残 る番組を放映したい。 そのためには、貴学の映像学科でたくさんの知識と経験を積み、将来のために大きく成長する必要があるため、私は貴学の 映像学科に進むことに決めたのだ。 筆者が取り上げたテレビのバラエティ番組の概要を的確に説明している点が評価できます。また、番組内容のどのような点で映像学科に進むきっかけになったのかを整然と記 述できている点も優れています。 11
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