平成 18 年度 地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用

ENAA GEC 2006-P3
平成 18 年度
地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用
システムの実現化の調査研究
報 告 書
平成 19 年 3 月
財団法人 エンジニアリング振興協会
地 下 開 発 利 用 研 究 セ ン タ ー
この事業は、競輪の補助金を受けて
実施したものです。
http://ringring.keirin.go.jp
序
本報告書は、財団法人エンジニアリング振興協会が日本自転車振興会から機械工業振
興資金の補助を受け、同協会・地下開発利用研究センターの平成18年度「地域産業活
性化をめざした水素エネルギー供給利用システムの実現化の調査研究」
(以下「研究」と
いう。)について成果をまとめたものであります。
京都議定書により、世界規模で二酸化炭素の排出を抑制する活動が具体化に向けて活発に
なってきています。二酸化炭素を排出しないエネルギー源として水素も注目を集め、工場に
おける副生水素の更なる活用、水素製造に関わる新たな製造方法開発など水素に関する技術
開発も高まりをみせています。平成 18 年 3 月には、
(財)エネルギー総合工学研究所「超長
期エネルギー技術ビジョンロードマップ報告書」が公表され、2100 年までのエネルギーの技
術戦略マップも描き出されました。
このような背景の下に、本研究は、二酸化炭素の排出抑制を目的に水素を始め新エネルギ
ーの利用を積極的に行っている地域を対象にして、中長期の水素エネルギーの普及を考えな
がら水素コミュニティの実現化を想定し、水素・電力・熱供給のネットワークモデルを構築
しました。
また、製鉄所、製油所、化学工場などで製造される副生水素の量と地域に関して調査
し、水素の製造および利用の実態などの調査も実施しました。このような 事例の調査など
を参考にしながら、水素社会に至るプロセスについてもケーススタディを行い、今後、水素・
電力・熱供給ネットワークモデルの中心技術である、コージェネレーションについても調査
研究を行いました。
水素社会がすぐに到来することは考えにくいですが、二酸化炭素の排出規制など考えると、
中長期的には水素を活用する地域が出現すると考えられます。その時を想定した場合に、本
研究でまとめた水素・電力・熱供給ネットワークモデルは有効に活用されるものと考えられ
ます。
本研究は、学識経験者、関係官庁ならびに当協会会員企業の専門家から構成される委
員会(委員長
松下
潤
芝浦工業大学教授)および作業部会(部会長
山下博文 (株)
大林組)で実施しています。
なお、取りまとめにあたっては、株式会社大林組が中心となって行いました。
本年度の事業にご協力いただいた関係者に対し心から謝意を表するとともに、本報告
書の成果が有効に活用されることを切望する次第です。
平成19年3月
財団法人エンジニアリング振興協会
会
長
増
田
信
行
平 成 1 8年 度
「地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システムの実現化の調査研究」委員会
委員名簿
委
員
委
長
松下
潤
員
中川
二彦
委
員
伊藤
英芳
委
員
渡邊
不士夫
委
員
合田
佳弘
芝浦工業大学
システム工学部
環境システム学科
JFE技研(株)
機械研究部
名古屋大学
客員教授
(株)大林組
土木技術本部
(㈱)竹中工務店
エネルギービジネスプロデュース本部
電 源 開 発 (株 )
環境エネルギー事業部
副部長
設計第二部長
調査役(地下担当)
委
員
廣安
博之
(有)ヒロ技術研究所
代表
広島大学
名誉教授
教授
本部長
副部長
委
員
岡野
一清
水素エネルギー協会
理事
委
員
山下
博文
(株)大林組
土木技術本部
オブザ-バ
井上
裕章
経済産業省
経済産業政策局地域経済産業グループ
設計第二部
設計部長
産業施設課課長補佐
オブザ-バ
降井
寮治
経済産業省
製造産業局国際プラント推進室
課長補佐
事
務
局
田辺
克己
事
務
局
仙名
宏
( 財 ) エ ン ジ ニ ア リ ン グ 振 興 協 会 地 下 開 発 利 用 研 究 センター技 術 開 発 第 一 部 研 究 主 幹
土木技術本部
(株)大林組
設計第二部
設計課長
平 成 1 8年 度
「地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給利用システムの実現化の調査研究」委員会
作業部会員名簿
部
会
長
山下
博文
(株)大林組
土木技術本部
部
会
員
中村
尚弘
(株)竹中工務店
技術研究所先端研究開発部
設計第二部
アーバンテクノロジー部門
部
会
員
合田
佳弘
部
会
員
浜田
謙二郎
電 源 開 発 (株 )
主任研究員
環境エネルギー事業部
調査役(地下担当)
J F E エ ン ジ ニ ア リ ン グ (株 )
設計部長
副部長
エネルギーエンジニアリング事業部
エネルギーシステム技術部
部
会
員
久保
啓冶
(株)大林組
建築本部
部
会
員
田内
英二
(株)大林組
土木技術本部
副部長
生産施設エンジニアリング部
アドバイザ
庄司
一夫
アドバイザ
内堀
勉
専任役
企画部
企画第一グループ
部長
東洋エンジニアリング(株)
技術ビジネス本部
技術研究所
芝浦工業大学
大 学 院 工 学 マ ネ ジ メ ン ト 研 究 科 MOT形 成 支 援
所長
プログラム開発員
部
会
員
仙名
宏
(株)大林組
土木技術本部
設計第二部
設計課長
要旨
(1) 研 究 の 基 本 的 な 視 点
( 財 )エ ネ ル ギ ー 総 合 工 学 研 究 所「 超 長 期 エ ネ ル ギ ー 技 術 ビ ジ ョ ン ロ ー ド マ ッ プ 報 告 書 」
( 平 成 18年 3月 ) が 公 表 さ れ 、 そ こ で は 2100年 ま で の 長 期 的 視 野 か ら 地 球 的 規 模 で 将 来 顕
在化することが懸念される資源制約、環境制約を乗り越えるために求められる技術の姿を
逆算することで、エネルギー分野の技術戦略マップを描き出している。その中で、今後の
情 勢 等 に よ っ て 変 わ り 得 る 前 提 で は あ る が 、 短 中 期 的 に は 必 要 に 応 じ て CO 2 回 収 ・ 隔 離 に
よ り 大 気 中 CO 2 濃 度 増 大 を 回 避 し 、 長 期 的 に 見 れ ば 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー を 最 大 限 活 用 し つ
つ、省エネを究極的に行い、原子力を安定的に運転していくことが望ましい組合せと考え
ている。民生、運輸等の各分野に対して、エネルギー供給は可能な限り電化・水素化を要
求しており、この方向の技術開発・研究が進められていくであろう。
現在、水素の製造はコークス炉やその他各種化学プラントの操業に伴う副生水素、化石
燃料、バイオ燃料や廃プラスチックガスの改質、風力発電による電気分解など各種の研究
開発が実施されている。一方、地方自治体では下水汚泥の水素化や廃棄物からのメタンガ
ス回収、廃棄物燃料による発電など、再生可能エネルギーの活用が積極的に推進されてい
る。さらに、地球温暖化対策地域協議会を設立した自治体の動きも出てきており、技術的
および経済的フィージビリティーからの方向性を示すことにより、水素利用が更に前進す
る可能性がある。
このように、水素社会を早急に発展実現して行くために、水素を中心としたエネルギー
を 身 近 の も の と し て 導 入 す る 事 を 前 提 に 、地 方 の 特 徴 に 合 致 し た「 ロ ー カ ル ネ ッ ト ワ ー ク 」
「水素利用コミュニティ」の事業実現性の調査・研究を行うことは、都市部のみではなく
地方域での早急な普及実現の意味でも重要である。
(2) 研 究 趣 旨
本調査研究では、このような視点から、近未来の水素エネルギーの普及を考えた水素利
用コミュニティの実現化を想定し、水素エネルギーの急速な地域的普及と定着の実現を図
ることを目的として、地域の特性に即した課題を抽出し、地域のエネルギー自立性を向上
する実用可能な社会基盤の構築方策の検討を行った。
本年度は、昨年度の調査研究結果を踏まえ、水素エネルギーの普及に積極的で、自然エ
ネルギー供給ポテンシャルと熱需要が多い寒冷地をモデル地域と想定し、「水素・電力・
熱供給ネットワークモデル」の検討を実施した。
さらに、今後の水素を利用したネットワークモデルの普及に向けた課題および他地域へ
の展開における課題を検討・整理した。
本 報 告 書 は 、 2 年 間 の 調 査 研 究 の 最 終 年 と し て 、 平 成 17年 度 の 活 動 に よ っ て 得 ら れ た 成
果・課題を踏まえて、水素・電力・熱供給ネットワークモデルの検討について取りまとめ
たものである。
(3) 研 究 成 果
以下に、本年度に得られた調査研究の成果について概説する。
第1章の調査研究の概要では、昨年度の研究概要および本年度の研究方針を示した。特
に、水素・電力・熱供給ネットワークモデルを設定するにあたり、モデルの前提条件を整
理した。
第2章の国内地域における水素・電力・熱供給ネットワークモデルの検討では、仮定し
た水素エネルギーの普及段階に応じて①短期、②中長期、③超長期に分けてネットワーク
モデルを設定した。ネットワークの電力源は、現状の技術段階での経済性、電力の安定供
給の観点から、電力会社による系統電源をベース電力とし、ピーク需要時の電力源として
分 散 型 電 源 を 取 り 入 れ 、短 期 は ガ ス エ ン ジ ン /デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン 、中 長 期 お よ び 超 長 期 は
燃料電池とした。さらに、排熱の有効利用を図る新たな技術を取り入れ、熱の用途として
は上水予熱、吸収式冷凍サイクルによる冷房などを考慮し、熱輸送はトランスヒートによ
るオフライン式輸送を利用することとした。
また、エネルギー需要サイドである各種建物の用途、規模、需要パターンの想定、およ
び供給サイドの各種設備の種類・発電規模などの調査、電気、熱、水素の輸送および貯蔵
方法の整理を実施した上で、各種建物をネットワーク化した時の電力・熱の需給バランス
の検討を行った。検討は、基準地(東京)と寒冷地(青森)の負荷比較、コージェネレー
ション導入、分散・集中電源の組み合せについて定量評価を実施した。その結果、エネル
ギー負荷の異なる建物を組み合わせた電気・熱の需給バランスの検討では、エネルギー源
を 共 有 す る こ と に よ り 、大 幅 な エ ネ ル ギ ー の 供 給 源 能 力 の 削 減 が 期 待 で き る こ と を 示 し た 。
さらに、コジェネ導入効果を高めるには、電気による負荷を低減することが有効であり、
暖房や給湯以外に冷房についても熱源を利用することによって年間を通じて有効になるこ
とを示した。特に、寒冷地では熱需要が相対的に高いので、ベースの集中電源の契約容量
を少なくすることができ、コージェネレーションの効率を高められること、併せて、装置
余剰熱や給湯排熱などの融雪や給水予熱への活用が可能であることを示した。また基準値
(東京)の場合にも、夏期と冬期におけるベースの集中電源の契約容量を工夫することに
より、総合効率の高い分散型電源システムが組めることを示した。
第3章の水素・電力・熱供給ネットワークモデルの展開では、ネットワークモデル普及
に向けた課題の整理、および地域特性を考慮したネットワークモデルの展開の可能性につ
いて言及した。ネットワークモデルの普及に向けた課題の整理では、今後あるべき技術開
発の方向性、法整備・規制緩和の必要性および国の補助金交付や優遇税制措置による助成
の必要性を提示した。また、地域特性を考慮したネットワークモデルの展開の可能性にお
いては、副生水素供給可能な工場隣接地域、および大都市圏・地方都市への分散型エネル
ギーシステム導入について考察した。
第 4 章 の 18年 度 活 動 の ま と め で は 、本 年 度 に 行 っ た 調 査 研 究 の 成 果 に つ い て 整 理 、取 り
まとめた上で、今後、水素を中心としたエネルギーのローカルネットワークの普及に向け
ての提言として以下のことを示した。
●今後、水素・電力・熱供給ネットワークモデルの中心技術の一つはコージェネレーシ
ョン技術であるが、コージェネレーションでは、発電量に倍する多量の熱エネルギー
が供給されるので、負荷側として、電気需要が小さく、熱需要が大きいネットワーク
に適用すると、大きな効果を生むことができる。
●水素・電力・熱供給ネットワークモデルの普及がよりスムーズにかつ効果的に進むた
めには、負荷側の電力消費が小さく、熱エネルギー消費が大きいシステム構成を実現
できるような要素技術の開発が重要となってくる。具体的には、電気消費量を低減す
る技術として例えばLED(発光ダイオード)、排熱を有効利用する技術として例え
ばヒートポンプ等の技術開発を、マイクログリッド技術の開発と並行して推し進める
ことを提案する。これらの技術進展により、エネルギー需要の増加が抑制され、コー
ジェネレーションの導入効果が向上し、燃料電池技術の進歩もあいまって、水素エネ
ルギー社会の実現性が早まる可能性がある。
●また、現状の水素利用に関する技術レベルから判断して、直ちに水素エネルギーの導
入を目指すことは困難であるが、現在利用可能なエネルギーによってマイクログリッ
ドの構築を推進することは重要である。その理由は、水素利用社会が到来した際に、
既存のエネルギーが水素に置換することで水素・電力・熱供給ネットワークモデルが
成立するためである。
●周辺を取り巻く課題について言えば、現行の関連法規は、水素エネルギー利用が考慮
される以前に制定されたものであり、現状では水素利用に様々な制限がかかるので、
法整備、一層の規制緩和および技術基準の再点検が必要である。また、水素導入段階
では、関連インフラ整備が必要となり、民間だけでは事業化が困難であると考えられ
る。このため、国の補助金交付(揮発油税の転換を含む)や優遇税制措置などの新た
な助成措置の検討が望まれる。
●今後の都市再生には、大都市圏における都市再開発や地方都市におけるコンパクト都
市の整備などが考えられる。ここでは、エネルギー需要の増加も伴うことから、分散
型エネルギーシステム導入のチャンスでもある。都市再生事業の計画検討のなかで、
本調査研究の成果が活用されることを期待する。
水素・電力・熱供給ネットワークモデル案 - 超長期
超長期
コメント
①マイクログリッドの用途別・規模
・エリア全体を電力線(自営線)で連結
②電力源
・電力会社からの購入電源をベース
・燃料電池(FC)の電力に占める割合が増加
・燃料は、製造供給設備からパイプライン(既設都市ガス導管
を転用または新たに敷設)あるいはローリーによって、エリア
全体に、液体水素や液体燃料(現地改質)を輸送する等、
様々なオプションが可能
・水素源は、LNG(都市ガス)、バイオマス等の改質および工場
副生、原子力
・太陽光、風力による発電が可能であれば、直接、電力として
使用(余剰電力については水電解による水素の製造)
③熱利用
・熱はパイプライン輸送またはオフライン輸送でエリア全体で
共同利用
・用途は給湯、上水予熱、暖房、吸収式冷凍サイクルによる
冷房など
・熱損失が懸念されるので同一敷地外へは出さないが、同一
敷地内程度であれば融雪への利用可能
原子力発電所
熱分解or電解
水素製造
供給設備
燃料(水素等)
太陽光・風力
発電分
電力会社
より購入分
アジアパイプライン
(ハイタン*)
工場副生水素
*)メタン(天然ガス)にハイドロジェン(水素)を混ぜるこ
とから、ハイタンと呼ばれているが、ハイタンという名称
は商標登録(米国HCI社)されているため、ヨーロッパで
はナチュラルハイ(Naturalhy: Natural Gas + Hydrogen)と
呼ばれている。
風力発電
太陽光発電
水電解
電気
FC:燃料電池
電力会社
FC
住宅系
グリッド
自営線
近接敷地内
コジェネ
発電分
水素
貯蔵
工場地域
燃料製造
供給設備
熱媒体
FC
電力
負荷
LNG
バイオマス
業務系
グリッド
(商業施設、病院、
ホテル等)
パイプライン輸送
またはオフライン輸送
水素
供給
パイプライン
ローリー 等
(集合住宅等)
ネットワークエリア
住宅系
グリッド
業務系
グリッド
(商業施設、病院、
ホテル等)
FC
近接敷地内
(集合住宅等)
FC
時間
バイオマス
発電
下水道
終末処理場
平成 18 年度調査研究報告
目
第1章
次
調査研究の概要 ····················································· 1
1.1 平成 17 年度の研究概要 ················································ 1
1.2 平成 18 年度の研究方針 ··············································· 3
第2章
国内地域における水素・電力・熱供給
ネットワークモデルの検討 ··········································· 10
2.1 ネットワークモデルの考え方 ··········································· 10
2.2 需要サイドの検討 ····················································· 15
2.3 供給サイドの検討 ····················································· 24
2.4 インフラの検討 ······················································· 36
2.5 電力・熱の需給バランスの検討 ········································· 52
第3章
水素・電力・熱供給ネットワークモデルの展開 ························· 58
3.1 ネットワークモデルの普及に向けて ····································· 58
3.2 地域特性による展開の可能性 ··········································· 58
第4章
18 年度活動のまとめ················································· 64
4.1 調査研究のまとめ ····················································· 64
4.2 今後の提言 ··························································· 65
添付資料
東京都下水道局オフライン熱供給技術視察報告
青森県コジェネシステム及び柳町融雪システム他視察報告
第1章
1.1
調査研究の概要
平 成 17年 度 の 研 究 概 要
本 調 査 研 究 は 、平 成 17年 度 と 平 成 18年 度 の 2 年 間 に 渡 り 実 施 し 、本 報 告 書 は 、こ の 2 年
間の活動により得られた検討結果を取りまとめたものである。
ま ず 、平 成 17年 度 で は 、水 素 利 用 先 端 地 域 と し て の 候 補 地 域 内 の 既 存 お よ び 再 生 可 能 エ
ネルギーの取り組みや、水素社会に必要なインフラ環境の調査、地域内での供給可能な水
素 エ ネ ル ギ ー 関 連 設 備 と そ の 燃 料・電 力・熱 エ ネ ル ギ ー 需 要 と の 課 題 を 検 討 し た 。以 下 に 、
平 成 17年 度 に 得 ら れ た 調 査 研 究 結 果 の 概 要 を 記 述 す る 。
1)全 国 13 地 域 の 水 素 エ ネ ル ギ ー プ ロ ジ ェ ク ト の 現 状 の 活 動 状 況 を 、 推 進 リ ー ダ ー 、
資金源、推進体制を中心に調査した。その結果、①多数の水素エネルギー利用のプ
ロジェクトが計画・実施されているが、構想や検討の段階であるものが多く、実施段
階に至っている事例は必ずしも多くない。②実施段階に進んだ事例より、プロジェク
ト進展の要因として、現状は次のように考えられた。
推進者:自治体の首長が意欲的に取り組んでいる
資
金:国の補助金の獲得。現時点では経済的自立は難しい
体
制:現状では官(自治体)主導。産(企業)と学(大学)との連携が重要である
2)水 素 の 供 給 源 と し て 期 待 さ れ る 、 副 生 水 素 の 供 給 能 力 と そ の 製 造 所 分 布 を 調 査 し
た。
-石油精製、鉄鋼・コークス製造、電解苛性ソーダ製造における水素製造能力は、
そ れ ぞ れ 約 101億 N m 3 /年 、約 64億 N m 3 /年 、約 14億 N m 3 /年 で あ り 全 国 に 分 布 し
て い る 。 燃 料 電 池 自 動 車 ( 水 素 消 費 量 990Nm 3 /年 /台 ) に 換 算 す れ ば 約 1,800万 台
相当である。
-現在の副生ガスは、ほぼ全量が所内の燃料として有効に使用されており、エネル
ギーバランスが取られている。現状では、外販には製造・出荷設備、貯蔵設備、
輸送などへの高額な投資が必要となり、付加価値の高い水素需要がなければ成立
しないと想定される。
- 製 造 所 で の 水 素 製 造 コ ス ト は 20-30円 /Nm 3 と 推 定 さ れ る が 、 圧 縮 、 液 化 し 充 填 コ
ス ト や 輸 送 コ ス ト 、 水 素 ス テ ー シ ョ ン 建 設 ・維 持 コ ス ト 、 石 油 並 み の 税 付 加 な ど
が加算されるために、コストダウンに関する技術開発とともに水素流通には相当
の補助政策が必要との結論を得た。
3)都 市 再 開 発 に お け る 水 素 エ ネ ル ギ ー 供 給 モ デ ル が 想 定 で き る か 、 現 状 の 都 市 再 生
プロジェクト計画を調査した。その結果はエネルギー供給のバックアップシステ
ム機能を確保する施策に乏しいことがわかったが、「長岡防災シビックコア地区
整備計画」、「DMEを用いたエネルギーの再循環」に関する情報を得た。
-1-
4)対 象 地 域 の 候 補 を 想 定 す る に は 、 ① 企 業 城 下 町 は 企 業 に 主 導 権 あ り 、 地 域 活 性 化
の下に企業PRと資金拠出の両立が成立し易い、②エネルギーのベストミックス
を想定した再開発地域も判断材料とする。さらに、本委員会の目標である地域活
性化と水素エネルギーのキーワードを踏まえ、対象地域の選定を議論した。その
選択には主に以下の4項目を満足できることが最善であるとした。
-地域活性化を目指し、自治体が新エネルギーの導入に積極的な地域
-新エネルギーによる電気・熱供給が可能で、将来の水素供給を目指した地域
-副生水素供給の可能性がある地域
-地域開発や防災区域などの計画がある地域
調 査 の 結 果 、現 状 で 上 記 4 項 目 を 全 て 満 足 で き る 地 域 は 存 在 し な い た め 、再 度 検 討
を行った。各地域プロジェクトのうち、青森県および八戸市のプロジェクトは、必ず
しも水素がプロジェクトの中心ではないが、新エネルギー利用の先進的事例であり、
次年度の検討対象地域と想定し、さらに詳細に調査を実施した。
5)平 成 18年 度 に お い て は 、 地 域 内 ネ ッ ト ワ ー ク 構 築 へ の 既 存 お よ び 新 規 イ ン フ ラ 整
備の課題検討から地域内の産業・エネルギー施設の有効活用を踏まえた水素ネッ
トワークのモデル提案へ向けた検討を行う予定とした。
-2-
1.2
平 成 18年 度 の 研 究 方 針
1.2.1
調査研究の目的
本調査研究は、近未来の水素エネルギーの普及を考えた「水素利用コミュニティーの実
現化」を想定し、水素エネルギーの急速な地域的普及と定着の実現を図ることを目的とし
て、地域特性に即した課題を抽出し、地域のエネルギー自立性を向上する実用可能な社会
基盤の構築方策の検討を行う。
( 財 )エ ネ ル ギ ー 総 合 工 学 研 究 所「 超 長 期 エ ネ ル ギ ー 技 術 ビ ジ ョ ン ロ ー ド マ ッ プ 報 告 書 」
( 平 成 18年 3月 ) が 公 表 さ れ 、 そ こ で は 2100年 ま で の 長 期 的 視 野 か ら 地 球 的 規 模 で 将 来 顕
在化することが懸念される資源制約、環境制約を乗り越えるために求められる技術の姿を
逆算することで、エネルギー分野の技術戦略マップを描き出している。その中で、今後の
情 勢 等 に よ っ て 変 わ り 得 る 前 提 で は あ る が 、 短 中 期 的 に は 必 要 に 応 じ て CO2回 収 ・ 隔 離 に
よ り 大 気 中 CO2濃 度 増 大 を 回 避 し 、 長 期 的 に 見 れ ば 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー を 最 大 限 活 用 し つ
つ、省エネを究極的に行い、原子力を安定的に運転していくことが望ましい組合せと考え
ている。民生、運輸等の各分野に対して、エネルギー供給は可能な限り電化・水素化を要
求しており、この方向の技術開発・研究が進められていくであろう。
現在、水素の製造はコークス炉やその他各種化学プラントの操業に伴う副生水素、化石
燃料、バイオ燃料や廃プラスチックガスの改質、風力発電による電気分解など各種の研究
開発が実施されている。一方、地方自治体では下水汚泥の水素化や廃棄物からのメタンガ
ス回収、廃棄物燃料による発電など、再生可能エネルギーの活用を積極的に推進されてい
る。さらに、地球温暖化対策地域協議会を設立した自治体の動きも出てきており、技術的
および経済的フィージビリティーからの方向性を示すことにより、更に前進する可能性が
ある。
このように、水素社会を早急に発展実現して行くために、水素を中心としたエネルギー
を 身 近 の も の と し て 導 入 す る 事 を 前 提 に 、地 方 の 特 徴 に 合 致 し た「 ロ ー カ ル ネ ッ ト ワ ー ク 」
「水素利用コミュニティー」の事業性実現の調査・研究を行うことは、都市部のみではな
く地方域での早急な普及実現の意味でも重要である。
1.2.2
調査研究の概要
昨年度の調査研究結果を踏まえ、具体的なネットワークモデル案を検討する。そのモデ
ル案には、熱エネルギーの有効活用を含めることとし「水素・電力・熱供給ネットワーク
モデル」として検討する。
現在、水素利用の多くが燃料電池自動車と定置式燃料電池の普及へ向けられているが、
水素ネットワークとしてのインフラ整備がないのが現状である。よって、モデル案の検討
においては、短期、中長期、超長期と時間ファクターで水素供給の整備が進むことを取り
入れた検討とする。
具体的には、地域のエネルギー戦略を積極的に進められており、水素エネルギーの普及
や自然エネルギーの供給ポテンシャルが高く、熱需要が高いなどの地域特性から寒冷地方
-3-
(例えば、青森)をモデル地域と想定し検討する。
さらに、今後の水素ネットワークモデルの普及に向けて、モデル案の検討から得られた
課題の整理、マイクログリッドの普及に対して取り巻く課題(規制、補助金、インフラな
ど)を整理する。また、副生水素の供給が可能な地域などへの展開に向けた課題をとりま
とめる。
-4-
1.2.3
検討フロー
本 年 度 の 検 討 フ ロ ー を 図 1.2.3-1に 示 す 。
-5-
平成18年度 調査研究フロー
水素・燃料電池関連プロジェクトの現状調査
水素供給源の能力調査
水素ネットワーク構築へ向けた基本調査
平成17年度
水素・電力・熱供給ネットワークモデルの全体像(短・中・長期)
電気・熱需要サイドの検討
電気・熱の供給サイドの検討
電気・熱の供給インフラの検討
対象建物の設定・需要エネルギー用途の設定
各種コジェネ設備の検討(出力規模、開発段階)
電気の輸送および貯蔵方法検討
各種建物の熱・電力負荷の検討(最大、年間)
自然エネルギー利用の発電設備(風力、太陽光)の検討
(出力規模、開発段階)
熱の輸送および貯蔵方法検討
建物別の熱・電力負荷パターンの検討(月別、時刻別)
水素の輸送および貯蔵方法検討
各種水素製造設備の検討(出力規模、開発段階)
その他発電設備の検討(出力規模、開発段階)
平成18年度
電力・熱の需給バランスの検討
各建物ごとの需給バランスの検討
各建物の組合せによる需給バランスの検討
水素・電力・熱供給ネットワークモデルの展開
水素・電力・熱供給ネットワークモデルの課題整理
ネットワークモデル普及に対する課題整理
地域特性による展開の可能性検討
まとめ
図 1.2.3-1
検討フロー
-6-
1.2.4
モデルの設定方針
1)モ デ ル の 前 提 条 件
①電力系統との連携
我が国では、電力会社による集中型電力系統が発達しているため、地域特性を生
かした自然エネルギーからの電力を利用する場合、電力会社の系統を供給のベース
とすることが取り組みやすい。しかし、電力会社の電力系統をベースとした場合、
分散型電源は、電力供給の最適化および排熱の有効利用に対して制限が生じ、その
経済性を高めることが困難となる。
分散型電源をベース電力とし、不足分を電力会社から購入した場合、電力料金の
上昇を招くデメリットはあるものの、分散型電源への設備投資回収を早め、熱電併
給による省エネルギー効果がある。
したがって、ベース電力は、分散型電源の設備規模・価格(初期、運転、燃料)
と購入電力の価格の比較、熱需要(時間帯・量)に対する熱供給方法・コストの比
較等から、有利な方を選択すればよいこととなる。
本モデルでは、現状の技術段階での経済性、電力の安定供給の観点から、電力会
社による系統電源をベース電力(深夜の電力需要程度)として、ピーク需要時の電
力源として分散型電源を取り入れる。
将来的には、省エネルギー推進の一法として電力需要を低減する技術開発を推進
することで熱需要の占める割合が増加し、系統電源からのベース電力を少なくし、
分散型電源の占める割合を増やすことが可能となり、コージェネレーションのメリ
ッ ト が 顕 在 化 し て く る で あ ろ う 。 ま た 、 欧 州 で は 、 イ ン フ ラ は 50~ 100年 サ イ ク ル
で 考 え る の に 対 し て 、需 要 側( 家 庭 )は 10年 サ イ ク ル で 変 化 す る た め 、イ ン フ ラ 整
備 に 膨 大 な 投 資 を 行 う よ り LCA( ラ イ フ サ イ ク ル ア セ ス メ ン ト )に 基 づ く 有 効 な 社
会資本の投資を行うために、分散型電源を取り入れるという考え方が主流になりつ
つある。
②マイクログリッドの規模
マイクログリッドは、複数の分散型電源と複数の消費先などから構成される特定
地域におけるエネルギーの供給システムである。したがって、分散型電源を持つ集
合住宅1棟、商業ビル1棟など、各グリッドでのエネルギーの過不足は、ネットワ
ークを形成することによってグリッド間で相互融通を図ることになる。
マイクログリッドの適当な規模およびエネルギー需要密度の設定は、エネルギー
効率やエネルギーコストの定量化とその比較によって検証する必要があるが、一般
的には、電力会社の系統電源の整備されていない地区、エネルギー需要密度の高い
地区においてマイクログリッドが成立しやすい。
ここでは、エネルギー需要の異なるグリッド(施設)を組み合わせることによっ
てエネルギー効率が上がることを想定としたモデルとした。
-7-
③水素の役割、合理性
地 球 温 暖 化 問 題 を 解 決 す る た め に 、 二 酸 化 炭 素 ( CO 2 ) の 排 出 を 抑 制 す る こ と が
強く要求されている。そのため、石炭や石油等の化石燃料からの脱依存を進めてい
く 必 要 が あ り 、 火 力 発 電 の エ ネ ル ギ ー 源 と し て 化 石 燃 料 の 中 で 最 も CO 2 排 出 量 が 少
ない天然ガス、さらには、原子力の占める割合が増加している。また、エネルギー
セキュリティ上、石油代替エネルギーとしての再生可能エネルギー(自然エネルギ
ー)の普及(導入量の拡大)、従来型エネルギーの新しい利用形態が求められてい
る。
こ の よ う な 背 景 の 下 、 水 素 は 、 CO 2 削 減 に 寄 与 す る 環 境 に や さ し い エ ネ ル ギ ー 源
であること、様々な原料から製造できるのでエネルギー源を多様化し、エネルギー
セキュリティの向上効果があることにより、製造・利用の技術開発が進められてき
た。遠い将来と考えられていた水素エネルギーの利用が最近の燃料電池技術の進歩
によって現実的なものになりつつあり、近い将来、エネルギー源として水素が普及
していく可能性がある。
総 合 資 源 エ ネ ル ギ ー 調 査 会 需 要 部 会 「 2030年 の エ ネ ル ギ ー 需 給 展 望 」 ( 平 成 17
年 3月 )の 需 給 見 通 し に よ れ ば 、省 エ ネ ル ギ ー 、新 エ ネ ル ギ ー 技 術 が 大 き く 進 展 し 、
量産効果によりコスト低減が実現すれば、分散型エネルギーの導入が現在の5倍近
くまで進む可能性があることを示している。さらに、小型で高効率な燃料電池の開
発 に よ っ て 、分 散 型 電 源 が 総 発 電 量 の 約 20% 程 度 ま で 拡 大 し 、燃 料 電 池 は 4 % 程 度
となる可能性もあることを試算している。
今後、電力需要を低減する技術開発の進展による熱電比の改善を目指していくこ
とで、従来利用されることのなかった排熱を有効利用し、エネルギー効率の向上を
可能とするコージェネレーション導入が進み、燃料電池技術の進展とあいまって水
素エネルギーの必要性が増してくるであろう。本委員会では、このような水素利用
社会が到来し、その到来に備えておくことが必要であるとの大前提の下で検討を進
める。そのため、ネットワークモデルにおける分散型電源の燃料は、現在、化石燃
料とし、今後、他の石油代替燃料が普及する可能性もあるが、将来的には水素に置
換していくものと想定とする。
④エネルギー貯蔵としての水素の優位性
天候に左右される自然エネルギーによる発電は任意にコントロールができないた
め、また、原子力発電による電力は社会の活動パターンにより深夜に需要が少なく
なるため、余剰電力が発生する。この余剰電力を有効に利用することを考慮する。
水素社会を前提とした場合、電力と水素がエネルギーシステムの中心的な2次エネ
ルギーとしての役割を担うと考えられ、有効利用方法としては、電気として蓄電池
に貯蔵する方法、水電解によって水素を製造・貯蔵する方法が考えられる。水素と
-8-
電気は互いに変換することができるので、それらの特性を生かして状況に応じて選
択すればよい。一般に、水素は電気に比べて大量貯蔵が可能であり、今後の貯蔵技
術の開発の進展によってその優位性が生かせるであろう。
本モデルでは、余剰電力の有効利用として水素の製造・貯蔵とするが、蓄電池に
よって電気として貯蔵することも可能である。
2)水 素 利 用 の 進 展 段 階 に 応 じ た モ デ ル
本 モ デ ル の 分 散 型 電 源 は 、 当 面 、 化 石 燃 料 を エ ネ ル ギ ー 源 と す る GE( ガ ス エ ン ジ ン )
/ DE( デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン )と す る が 、将 来 、水 素 社 会 が 到 来 し 、燃 料 電 池 の 普 及 段 階
に応じて、下記段階に分けてモデル化する。
短
期( 現 在 ~ 2030年 )
現 在 お よ び GE/ DEコ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン シ ス テ ム 導 入 段
階
中 長 期 ( 2030~ 2050年 )
燃料電池普及段階
超 長 期 ( 2050~ 2100年 )
燃料電池本格普及、水素供給インフラ整備
3)排 熱 の 有 効 利 用
コージェネレーションは、排熱の利用の可能性を広げて、エネルギー効率を上げるこ
とが可能なシステムである。そこで、本モデルでは熱利用を念頭に置き、排熱を最大限
に利用するため、新たな技術を取り入れる。
-9-
第2章
国内地域における水素・電力・熱供給
ネットワークモデルの検討
2.1
ネットワークモデルの考え方
本調査研究において検討するネットワークモデルは、仮定した水素エネルギーの普及程
度に応じて短期・中長期・超長期に分けて設定した。さらに、短期については、マイクロ
グリッド化に必要なインフラ整備の進展を考慮して2段階とした。設定したネットワーク
モ デ ル を 図 2.1-1~ 2.1-3に 示 す 。
モデル作成において以下の通りである。
1)マ イ ク ロ グ リ ッ ド の 用 途 別 ・ 規 模
マイクログリッドの対象とする建物の用途は、集合住宅および商業施設、病院、ホテ
ル等の熱、電力需要がまとまって必要なものとした。
ま た 、マ イ ク ロ グ リ ッ ド の 規 模 は 、最 小 単 位 と し て 集 合 住 宅 な ど 1 棟 か ら ス タ ー ト し 、
その規模を広げていき、複数の敷地をまたぐエリアまで拡大していく。
具体的な規模は以下の通りである。
①短期-段階1:集合住宅(または、商業施設、病院、ホテルなど)1棟または1
敷地単位
②短期-段階2:同一敷地内あるいは近接する複数の敷地を電力線(自営線)で連
結
③中長期
:同一敷地内あるいは近接する複数の敷地を電力線(自営線)で連
結
④超長期
:複数の敷地を電力線(自営線)で連結
2)電 力 源
現状の技術段階での経済性、電力の安定供給の観点から、電力会社による系統電源を
ベース電力とする。ピーク需要時の電力源として分散型電源を取り入れ、現在水素エネ
ルギーが普及していないこと、および将来水素製造技術の進展、利用機器の普及が進む
こ と を 前 提 と し て 、 短 期 は ガ ス エ ン ジ ン ( GE) / デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン ( DE) 、 中 長 期
お よ び 超 長 期 は 燃 料 電 池 ( FC) と し た 。
さらに、太陽光、風力による発電が可能であれば、直接、電力として使用し、水素利
用が進んだ中長期および超長期においては余剰電力を水電解による水素の製造に利用す
ることとした。
代表的な分散型電力源を以下に示す。
① 短 期 - 段 階 1 : 石 油 、 LNG、 DMEを 燃 料 と し た ガ ス エ ン ジ ン ( GE) / デ ィ ー ゼ
ル エ ン ジ ン ( DE)
② 短 期 - 段 階 2 : 石 油 、 LNG、 DMEを 燃 料 と し た ガ ス エ ン ジ ン ( GE) / デ ィ ー ゼ
ル エ ン ジ ン ( DE)
- 10 -
③中長期
: 燃 料 電 池 ( FC) ( GE/ DEを FCに 置 換 )
初 期 は 炭 化 水 素 系 燃 料 ( 石 油 、 LNG、 DMEな ど ) の 改 質 、 FCの
種 類 は 「 改 質 器 + PEFC」 、 「 SOFC」
④超長期
: 燃 料 電 池 ( FC)
燃料は製造供給設備からパイプライン(既設都市ガス導管を転用
または新たに敷設)あるいはローリーによってエリア全体に供給
燃 料 源 は 、液 体 水 素 や 液 体 燃 料( 現 地 改 質 )と し 、LNG( 都 市 ガ
ス)、バイオマス等の改質および工場副生、原子力発電の余剰電
力による水電解など
( 地 球 環 境 問 題 を 考 え た 場 合 、原 子 力 は 国 の エ ネ ル ギ ー 政 策 に 不
可欠なものであり、青森県のように原子力関連施設の立地推進
地域においては、将来的に、原子力の夜間、休日等の余剰電力
を利用した水素の製造が可能である。)
3)熱 利 用
コージェネレーションは、排熱の利用の可能性を広げて、エネルギー効率を上げるこ
とが可能なシステムである。しかし、排熱の有効利用が難しく、エネルギー効率が上が
らないことが課題であった。そこで、本モデルでは、排熱の有効利用を図る新たな技術
を取り入れる。
熱の用途は、給湯、上水予熱、暖房、吸収式冷凍サイクルによる冷房などとし、特に
寒冷地では熱損失が問題とならない範囲で融雪への利用も考慮する。熱輸送および利用
は、トランスヒートによるオフライン式熱輸送を同一棟内あるいは同一敷地内で共同利
用することとし、長期においてはパイプライン輸送によってエリア全体で共同利用も可
能とする。
- 11 -
水素・電力・熱供給ネットワークモデル案 - 短期
短期-段階1
コメント
① マイクログリッドの用途別・規模
・集合住宅(または、商業施設、病院、ホテルなど)1棟または
1敷地単位
②電力源
・電力会社からの購入電源をベース
・分散型電源は、石油、LNG(都市ガス)、DMEを燃料としたガス
エンジン(GE)/ディーゼルエンジン(DE)
・太陽光、風力による発電が可能であれば、直接、電力として
使用
③熱利用
・熱は同一棟内で共同利用
・トランスヒートによるオフライン式熱輸送・利用
・用途は給湯、上水予熱、暖房、吸収式冷凍サイクルによる
冷房など
短期-段階2
コメント
①マイクログリッドの用途別・規模
・同一敷地内あるいは近接する複数の敷地を電力線
(自営線)で連結
②電力源
・電力会社からの購入電源をベース
・分散型電源は、石油、LNG(都市ガス)、DMEを燃料としたガス
エンジン(GE)/ディーゼルエンジン(DE)
・太陽光、風力による発電が可能であれば、直接、電力として
使用
③熱利用
・熱は同一敷地内または近接敷地内で共同利用。
・トランスヒートによるオフライン式熱輸送・利用
・用途は給湯、上水予熱、暖房、吸収式冷凍サイクルによる
冷房など
・熱損失が懸念されるので同一敷地外へは出さないが、
同一敷地内程度であれば融雪への利用可能
短期-段階2
電力
負荷
近接敷地内
コジェネ
発電分
蓄電
短期-段階1
放電
太陽光・風力
発電分
LNG(都市ガス)、石油、DME
同一敷地内
電力会社
より購入分
時間
蓄電池
(NAS電池)
熱媒体
電気
太陽光発電
風力発電
GE:ガスエンジン
DE:ディーゼルエンジン
GE/DE
コジェネ
熱用途:
給湯、上水予熱、融雪など
電力会社
住宅系
グリッド
(集合住宅
等)
自営線
短期-段階1
同一敷地内
蓄電池
(NAS電池)
太陽光発電
風力発電
LNG(都市ガス)、石油、DME
GE/DE
コジェネ
業務系
グリッド
(商業施設、
病院、ホテル
等)
- 12 -
トランスヒート
システムによる
オフライン熱輸送
電力会社
トランスヒートシステム
によるオフライン熱輸送
排熱
熱用途:
給湯、上水予熱、融雪など
下水道
終末処理場
水素・電力・熱供給ネットワークモデル案 - 中長期
中長期
コメント
①マイクログリッドの用途別・規模
・同一敷地内あるいは近接する複数の敷地を電力線(自営線)
で連結
②電力源
・電力会社からの購入電源をベース
・GE/DEを燃料電池(FC)に置換
・初期は炭化水素系燃料(石油、LNG(天然ガス)、DMEなど)
の改質→種類「改質器+PEFC」、「SOFC」
・将来、水素供給があれば受け入れ
・太陽光、風力による発電が可能であれば、直接、電力として
使用(余剰電力については水電解による水素の製造)
③熱利用
・熱は同一敷地内または近接敷地内で共同利用
・トランスヒートによるオフライン式熱輸送・利用
・用途は給湯、上水予熱、暖房、吸収式冷凍サイクルによる
冷房など
・熱損失が懸念されるので同一敷地外へは出さないが、同一
敷地内程度であれば融雪への利用可能
電力
負荷
中長期
コジェネ
発電分
水素
貯蔵
近接敷地内
水素
供給
太陽光・風力
発電分
水素貯蔵
電力会社
より購入分
LNG(都市ガス)、石油、DME
時間
FC
電気
太陽光発電
風力発電
水素
FC:燃料電池
水素貯蔵
熱用途:
給湯、上水予熱、融雪など
水電解
熱媒体
電力会社
住宅系
グリッド
自営線
LNG(都市ガス)、石油、DME
トランスヒート
システムによる
オフライン熱輸送
またパイプライン
電力会社
水電解
業務系
グリッド
(商業施設、
病院、ホテル
等)
- 13 -
トランスヒートシステム
によるオフライン熱輸送
排熱
FC
太陽光発電
風力発電
(集合住宅
等)
下水道
終末処理場
熱用途:
給湯、上水予熱、融雪など
水素・電力・熱供給ネットワークモデル案 - 超長期
超長期
コメント
①マイクログリッドの用途別・規模
・エリア全体を電力線(自営線)で連結
②電力源
・電力会社からの購入電源をベース
・燃料電池(FC)の電力に占める割合が増加
・燃料は、製造供給設備からパイプライン(既設都市ガス導管
を転用または新たに敷設)あるいはローリーによって、エリア
全体に、液体水素や液体燃料(現地改質)を輸送する等、
様々なオプションが可能
・水素源は、LNG(都市ガス)、バイオマス等の改質および工場
副生、原子力
・太陽光、風力による発電が可能であれば、直接、電力として
使用(余剰電力については水電解による水素の製造)
③熱利用
・熱はパイプライン輸送またはオフライン輸送でエリア全体で
共同利用
・用途は給湯、上水予熱、暖房、吸収式冷凍サイクルによる
冷房など
・熱損失が懸念されるので同一敷地外へは出さないが、同一
敷地内程度であれば融雪への利用可能
原子力発電所
熱分解or電解
水素製造
供給設備
燃料(水素等)
太陽光・風力
発電分
電力会社
より購入分
アジアパイプライン
(ハイタン*)
工場副生水素
*)メタン(天然ガス)にハイドロジェン(水素)を混ぜるこ
とから、ハイタンと呼ばれているが、ハイタンという名称
は商標登録(米国HCI社)されているため、ヨーロッパで
はナチュラルハイ(Naturalhy: Natural Gas + Hydrogen)と
呼ばれている。
風力発電
太陽光発電
水電解
電気
FC:燃料電池
電力会社
FC
住宅系
グリッド
自営線
近接敷地内
コジェネ
発電分
水素
貯蔵
工場地域
燃料製造
供給設備
熱媒体
FC
電力
負荷
LNG
バイオマス
業務系
グリッド
(商業施設、病院、
ホテル等)
パイプライン輸送
またはオフライン輸送
水素
供給
パイプライン
ローリー 等
(集合住宅等)
ネットワークエリア
住宅系
グリッド
業務系
グリッド
(商業施設、病院、
ホテル等)
FC
近接敷地内
(集合住宅等)
FC
時間
バイオマス
発電
- 14 -
下水道
終末処理場
2.2
需要サイドの検討
本節では、水素・電力・熱供給ネットワークモデルとなる施設の各種エネルギー需要量や特
性パターンを設定した。
2.2.1 条 件 設 定
施設の各種条件は以下の通りと想定した。
対象建物・用途
同上収容規模
延面積
病
院
300 床
24,000 ㎡
ホテル
店
舗
スポーツ施設
400 室
――
――
28,000 ㎡
20,000 ㎡
10,000 ㎡
集合住宅
900 戸
90,000 ㎡
地域
基 準 地 ( 東 京 )、
寒冷地(青森を想定)
需要パターン
エ ネ ル ギ ー ( 電 気 、 熱 )、 パ タ ー ン ( 各 種 )
熱源方式
ボイラー、冷凍機、ガス・ジーゼルエンジン、燃料電池等
供給エネルギー種類
電気、都市ガス、灯油
需要エネルギー用途
冷房、暖房、給湯、蒸気
他に融雪(寒冷地の冬期のみ)
注:建 物 用 途 に よ る 収 容 規 模 か ら の 建 物 面 積( 原 面 積 )算 定 は 、一 般 的 な 建 築 設 計 資 料 に よ っ た 。
寒冷地は、相対的に熱需要が高いことで熱の有効利用を図り易いことで検討対象とした。
スポーツ施設を含めたのは、熱需要の比率が特に高いことによる。
2.2.2 各 種 建 物 の 最 大 ・ 年 間 負 荷
1)各種建物の最大電力負荷および最大熱負荷
建 物 毎 の 最 大 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 試 算 し た 結 果 を 表 2.2.1( a,b)、図 2.2.1(1-a,b)、図 2.2.1(2-a,b)
に示す。負荷算出に当たっては、施設規模を表中の原単位により建物延面積を算出し、エネル
ギー原単位を掛け合わせた。
結果をみると、単位面積当りの最大負荷では、スポーツ施設が特に大きいが、これは給湯の
占める割合が多いためである。また、今回の規模で当てはめてみると、集合住宅は地域の中核
として規模を大きくしたため、負荷が一番高い。一方、エネルギー多消費型と言われる病院、
ホテル、店舗では、冷暖房の比率が高い。ホテルでは給湯の比率が大きいことも分かる。
青森では、当然ながら暖房や給湯の負荷が高く、冷房負荷の小さくなる量を上回るため、全
体ではやや東京の負荷より大きくなっている。
な お 、算 定 の 根 拠 と な る エ ネ ル ギ ー 負 荷 原 単 位 は 文 献 1)を 基 本 と し て 採 用 し た 。た だ し 、ス
ポーツ施設(文献ではスポーツセンター)の給湯負荷は建物規模によらず実数で示されている
が、本報告では規模による影響を若干考慮した。
ま た 、寒 冷 地 に お け る エ ネ ル ギ ー 負 荷( 冷 房 ・ 暖 房 )は 文 献 2)を 参 考 に し た 。今 回 の 場 合 は
青 森 と し た の で 、地 域 に よ る 補 正 係 数( 基 準 値 東 京 に 対 す る 比 率 )は 冷 房 用 0.89、暖 房 用 1.23
と し た 。 給 湯 は 1.1 と 仮 定 し 、 ま た 、 電 気 に つ い て は 変 わ ら な い ( 1.0) と し た 。
- 15 -
表 2.2.1(a)
各種建物の最大電力・熱負荷<東京>
用 途
病 院
ホテル
規 模
300 床
400 室
900 戸
原単位
80 ㎡/床
70 ㎡/室
100 ㎡/戸
㎡
24,000
28,000
20,000
10,000
90,000
W/㎡
50
50
70
70
30
kW
1,200
1,400
1,400
700
2,700
W/㎡
47
116
23
147
19
kW
1,116
3,256
466
1,465
1,674
W/㎡
95
78
93
122
35
kW
2,287
2,181
1,860
1,221
3,141
W/㎡
105
87
140
122
47
kW
2,513
2,442
2,790
1,221
4,185
面 積
電力負荷
熱負荷
原単位
給 湯
暖 房
冷 房
スポ施 設
集合住宅
図2.2.1(2-a).各建物の最大負荷 <東京>
図2.2.1(1-a).各建物の単位最大負荷 <東京>
14,000
600
冷房
暖房
給湯
電気
400
12,000
最大負荷 [kW]
500
最大負荷 [W/㎡]
店 舗
300
200
冷房
暖房
給湯
電気
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
100
0
0
病 院
ホテル
店 舗
スポ施設
病 院
集合住宅
ホテル
店 舗
表 2.2.1(b)
スポ施設
集合住宅
建物名
建物名
各種建物の最大電力・熱負荷<青森>
用 途
病 院
ホテル
規 模
300 床
400 室
900 戸
原単位
80 ㎡/床
70 ㎡/室
100 ㎡/戸
㎡
24,000
28,000
20,000
10,000
90,000
W/㎡
50
50
70
70
30
kW
1,200
1,400
1,400
700
2,700
W/㎡
51
128
26
161
20
kW
1,228
3,582
513
1,612
1,841
W/㎡
117
96
114
150
43
kW
2,813
2,683
2,288
1,502
3,863
W/㎡
93
78
124
109
41
kW
2,236
2,173
2,483
1,087
3,705
面 積
電力負荷
熱負荷
原単位
給 湯
暖 房
冷 房
- 16 -
店 舗
スポ施 設
集合住宅
図2.2.1(1-b).各建物の単位最大負荷 <青森>
図2.2.1(2-b).各建物の最大負荷 <青森>
600
14,000
最大負荷 [W/㎡]
500
400
最大負荷 [kW]
冷房
暖房
給湯
電気
300
200
12,000
冷房
暖房
10,000
給湯
電気
8,000
6,000
4,000
2,000
100
0
0
病 院
ホテル
店 舗
スポ施設
病 院
集合住宅
建物名
2)
ホテル
店 舗
建物名
スポ施設
集合住宅
各種建物の年間電力負荷および年間熱負荷
建 物 毎 の 年 間 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 試 算 し た 結 果 を 表 2.2.2、 図 2.2.2(1)、 図 2.2.2(2)に 示 す 。
前節と同様に、負荷算出に当たっては、施設規模を表中の原単位により建物延面積を算出し、エ
ネルギー原単位を掛け合わせた。
結 果 を み る と 、単 位 面 積 当 り の 年 間 負 荷 で は 、最 大 負 荷 と 同 様 に 、ス ポ ー ツ 施 設 が 特 に 大 き い 。
また、今回の規模を当てはめた場合には、ホテル、病院、店舗の順で大きく、集合住宅を上回っ
ている。これは、集合住宅のようにある時間帯に集中する負荷でなく、一日の高負荷が長時間に
わたるためと考えられる。また、最大負荷の場合と異なり、電気負荷の占める割合が高くなって
いることも負荷変動が少ないためとみられる。青森の場合にも同じような現象であるが、東京と
比べやや高いエネルギー消費量となっている。
表 2.2.2(a)
各種建物の年間電力・熱負荷(東京)
用 途
病 院
ホテル
規 模
300 床
400 室
900 戸
原単位
80 ㎡/床
70 ㎡/室
100 ㎡/戸
㎡
24,000
28,000
20,000
10,000
90,000
kWh/㎡ y
170
200
226
250
21
MWh/y
4,080
5,600
4,520
2,500
1,890
kWh/㎡ y
93
93
27
183
35
MWh/y
2,232
2,604
534
1,831
3,141
kWh/㎡ y
86
93
41
94
23
MWh/y
2,064
2,604
814
942
2,097
kWh/㎡ y
93
116
145
94
9
MWh/y
2,232
3,256
2,906
942
837
面 積
電力負荷
原単位
給 湯
熱負荷
暖 房
冷 房
- 17 -
店 舗
スポ施 設
集合住宅
図2.2.2(1-a).各建物の単位年間負荷 <東京>
図2.2.2(2-a).各建物の年間負荷 <東京>
20,000
冷房
暖房
600
年間負荷 [MWh/y]
年間負荷 [kWh/㎡・y]
800
給湯
電気
400
200
15,000
10,000
5,000
0
病 院
ホテル
店 舗
スポ施設
0
集合住宅
病 院
建物名
表 2.2.2(b)
ホテル
店 舗
建物名
スポ施設
集合住宅
各種建物の年間電力・熱負荷(青森)
用 途
病 院
ホテル
規 模
300 床
400 室
900 戸
原単位
80 ㎡/床
70 ㎡/室
100 ㎡/戸
㎡
24,000
28,000
20,000
10,000
90,000
kWh/㎡ y
170
200
226
250
21
MWh/y
4,080
5,600
4,520
2,500
1,890
kWh/㎡ y
102
102
29
201
38
MWh/y
2,455
2,864
587
2,014
3,455
kWh/㎡ y
106
114
50
116
29
MWh/y
2,539
3,203
1,001
1,159
2,579
kWh/㎡ y
83
104
129
84
8
MWh/y
1,986
2,898
2,586
838
745
面 積
電力負荷
熱負荷
原単位
給 湯
暖 房
冷 房
店 舗
スポ施 設
集合住宅
図2.2.2(2-b).各建物の年間負荷 <青森>
図2.2.2(1-b).各建物の単位年間負荷 <青森>
20,000
800
冷房
暖房
給湯
電気
600
年間負荷 [MWh/y]
年間負荷 [kWh/㎡・y]
冷房
暖房
給湯
電気
400
200
冷房
暖房
給湯
電気
15,000
10,000
5,000
0
0
病 院
ホテル
店 舗
スポ施設
病 院
集合住宅
ホテル
店 舗
建物名
建物名
- 18 -
スポ施設
集合住宅
2.2.3
建物別の月別・時刻別負荷
各建物のエネルギー負荷の時間特性を調べるため、建物毎に月別、時刻別エネルギー負荷も
試算した。なお、時刻別エネルギー負荷については、夏期、冬期の3パターンを計算した。各
パターンの基となるデータは、夏期は月別エネルギー負荷の8月を、冬期は同負荷の2月を採
用した。
1)
病院
病 院 の 月 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.3( 1-a,b) に 、 時 刻 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.3( 2-a,b)
[ 夏 期 ]、 図 2.2.3( 3-a,b)[ 冬 期 ] に 示 し た 。 グ ラ フ は 、 す べ て 累 積 値 で 示 し て い る 。
結果をみると、月別では8月が最大(主に冷房)となり、中間期が最小となった。また、時
刻 別 で は 、夏 期 は 9 時 ~ 19 時( 主 に 冷 房 )、冬 期 は 朝 方( 主 に 暖 房 )、中 間 期 は 日 中( 主 に 電 気 、
給湯)が最大となった。
図2.2.3(1-b).病院の月別負荷 <青森>
図2.2.3(1-a).病院の月別負荷 <東京>
1,600
1,800
冷房
暖房
給湯
電気
1,400
1,200
冷房
暖房
給湯
電気
1,400
月 間 負 荷 [MWh/月 ]
月間負荷 [MWh/月]
1,600
1,000
800
600
400
200
1,200
1,000
800
600
400
200
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
0
12
1
月
3
4
図2.2.3(2-a).病院の時刻別負荷 <東京> -夏期-
6
7
8
9
10
11
12
図2.2.3(2-b).病院の時刻別負荷 <青森> -夏期-
3.5
給湯
冷房
3.0
電気
暖房
2.5
2.0
1.5
1.0
給湯
冷房
電気
暖房
3.0
負 荷 [MWh/h]
3.5
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.5
0.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
時刻 [h]
図2.2.3(3-b).病院の時刻別負荷 <青森> -冬期-
図2.2.3(3-a).病院の時刻別負荷 <東京> -冬期-
4.0
3.5
2.0
負 荷 [MWh/h]
2.5
給湯
暖房
電気
冷房
3.5
給湯
暖房
電気
冷房
3.0
負荷 [MWh/h]
5
月
4.0
負荷 [MWh/h]
2
1.5
1.0
0.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
- 19 -
2)
ホテル
ホ テ ル の 月 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.4( 1-a,b) に 、 時 刻 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.4( 2-a,b)
[ 夏 期 ]、 図 2.2.4( 3-a,b)[ 冬 期 ] に 示 し た 。 グ ラ フ は 、 す べ て 累 積 値 で 示 し て い る 。
結果をみると、月別では8月が最大(主に冷房)となり、中間期が最小となった。また、時刻
別 で は 、夏 期 は 13 時 ~ 21 時( 主 に 冷 房 )、冬 期 は 9 時 ~ 20 時( 主 に 暖 房 )、中 間 期 は 12 時 ~ 23
時(主に電気、冷房)が最大となった。
図2.2.4(1-a).ホテルの月別負荷 <東京>
図2.2.4(1-b).ホテルの月別負荷 <青森>
3,000
2,500
冷房
暖房
2,000
給湯
電気
冷房
暖房
給湯
電気
2,500
負 荷 [MWh/h]
負 荷 [ MWh / h ]
3,000
1,500
1,000
2,000
1,500
1,000
500
500
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
0
12
1
月
4
5
6
7
8
9
10
11
12
図2.2.4(2-b).ホテルの時刻別負荷 <青森> -夏期-
6.0
6.0
4.0
3.0
2.0
給湯
冷房
電気
暖房
5.0
負 荷 [MWh/h]
給湯
冷房
電気
暖房
5.0
負 荷 [MWh/h]
3
月
図2.2.4(2-a).ホテルの時刻別負荷 <東京> -夏期-
4.0
3.0
2.0
1.0
1.0
0.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
時刻 [h]
図2.2.4(3-a).ホテルの時刻別負荷 <東京> -冬期-
図2.2.4(3-b).ホテルの時刻別負荷 <青森> -冬期-
6.0
6.0
給湯
暖房
電気
冷房
4.0
給湯
暖房
電気
冷房
5.0
負 荷 [MWH/h]
5.0
負 荷 [ MWH / h ]
2
3.0
2.0
4.0
3.0
2.0
1.0
1.0
0.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
時刻 [h]
- 20 -
3)
店舗
店 舗 の 月 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.5( 1-a,b) に 、 時 刻 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.5( 2-a,b)
[ 夏 期 ]、 図 2.2.5( 3-a,b)[ 冬 期 ] に 示 し た 。 グ ラ フ は 、 す べ て 累 積 値 で 示 し て い る 。
結果をみると、月別では7~8月が最大(主に冷房)となった。また、時刻別では、夏期は 9
時 ~ 19 時( 主 に 冷 房 )、冬 期 は や は り 9 時 ~ 19 時( 主 に 暖 房 、電 気 )、中 間 期 は 10 時 ~ 19 時( 主
に電気)が最大となった。
図2.2.5(1-b).店舗の月別負荷 <青森>
図2.2.5(1-a).店舗の月別負荷 <東京>
3000
3000
冷房
暖房
給湯
電気
2000
冷房
暖房
給湯
電気
2500
負荷 [MWh/月]
負荷 [MWh/月]
2500
1500
1000
2000
1500
1000
500
500
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
1
12
2
3
4
6.0
7
8
9
10
11
12
6.0
給湯
冷房
電気
暖房
4.0
給湯
冷房
電気
暖房
5.0
負 荷 [MWh/h]
5.0
負 荷 [MWh/h]
6
図2.2.5(2-b).店舗の時刻別負荷 <青森> -夏期-
図2.2.5(2-a).店舗の時刻別負荷 <東京> -夏期-
3.0
2.0
1.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
1
2
3
4
5
6
7
8
時刻 [h]
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
図2.2.5(3-b).店舗の時刻別負荷 <青森> -冬期-
図2.2.5(3-a).店舗の時刻別負荷 <東京> -冬期-
6.0
6.0
4.0
3.0
2.0
給湯
暖房
電気
冷房
5.0
負 荷 [MWh/h]
給湯
暖房
電気
冷房
5.0
負 荷 [MWh/h]
5
月
月
1.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
時刻 [h]
- 21 -
4)
スポーツ施設
ス ポ ー ツ 施 設 の 月 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.6( 1-a,b) に 、 時 刻 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.6
( 2-a,b)[ 夏 期 ]、 図 2.2.6( 3-a,b)[ 冬 期 ] に 示 し た 。 グ ラ フ は 、 す べ て 累 積 値 で 示 し て い る 。
結果をみると、月別では2月が最大(主に給湯)となった。また、時刻別では、夏期は 8 時~
23 時( 主 に 給 湯 、冷 房 、電 気 )、冬 期 は 朝 方 と 夜( 主 に 給 湯 )、中 間 期 は 8 時 ~ 23 時( 主 に 給 湯 )
が最大となった。
図2.2.6(1-a).スポーツ施設の月別負荷 <東京>
図2.2.6(1-b).スポーツ施設の月別負荷 <青森>
3000
冷房
暖房
給湯
電気
2500
2000
月間負荷 [ MWh/月]
月間負荷 [ MWh/月]
3000
1500
1000
500
冷房
暖房
給湯
電気
2500
2000
1500
1000
500
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
4
5
月
8
9
10
11
12
図2.2.6(2-b).スポーツ施設の時刻別負荷 <青森> -夏期-
6.0
6.0
負 荷 [MWh/h]
4.0
給湯
冷房
電気
暖房
5.0
給湯
冷房
電気
暖房
5.0
3.0
2.0
4.0
3.0
2.0
1.0
1.0
0.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
1
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
時刻 [h]
図2.2.6(3-a).スポーツ施設の時刻別負荷 <東京> -冬期-
図2.2.6(3-b).スポーツ施設の時刻別負荷 <青森> -冬期-
6.0
6.0
給湯
暖房
電気
冷房
5.0
4.0
給湯
暖房
電気
冷房
5.0
負 荷 [MWh/h]
負 荷 [MWh/h]
7
月
図2.2.6(2-a).スポーツ施設の時刻別負荷 <東京> -夏期-
負 荷 [MWh/h]
6
3.0
2.0
1.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0.0
1
2
3
4
5
6 7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
1
時刻 [h]
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
- 22 -
5)
集合住宅
集 合 住 宅 の 月 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.7( 1-a,b)に 、時 刻 別 エ ネ ル ギ ー 負 荷 を 図 2.2.7( 2-a,b)
[ 夏 期 ]、 図 2.2.7( 3-a,b)[ 冬 期 ] に 示 し た 。 グ ラ フ は 、 す べ て 累 積 値 で 示 し て い る 。
結 果 を み る と 、 月 別 で は 冬 期 ( 12 月 ~ 3 月 ) が 最 大 ( 主 に 暖 房 、 給 湯 ) で 、 夏 期 ( 7
~ 8 月 )に も 小 ピ ー ク( 主 に 冷 房 )が あ っ た 。ま た 、時 刻 別 で は 、夏 期 は 20~ 22 時( 主 に 冷 房 )、
冬 期 は 19~ 23 時 ( 主 に 給 湯 )、 中 間 期 は 夜 間 ( 主 に 給 湯 、 小 ピ ー ク ) が 最 大 と な っ た 。
図2.2.7(1-b).集合住宅の月別負荷 <青森>
図2.2.7(1-a).集合住宅の月別負荷 <東京>
3000
冷房
暖房
給湯
電気
2500
2000
月間負荷 [MWh/月]
月間負荷 [MWh/月]
3000
1500
1000
500
冷房
暖房
給湯
電気
2500
2000
1500
1000
500
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
1
12
2
3
4
5
図2.2.7(2-a).集合住宅の時刻別負荷 <東京> -夏期-
4.0
負 荷 [MWh/h]
負 荷 [M Wh/h]
9
10
11
12
給湯
冷房
電気
暖房
5.0
3.0
2.0
1.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
0.0
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
1
2
3
4
5
6
7
8
時刻 [h]
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
図2.2.7(3-a).集合住宅の時刻別負荷 <東京> -冬期-
図2.2.7(3-b).集合住宅の時刻別負荷 <青森> -冬期-
6.0
6.0
給湯
暖房
電気
冷房
4.0
給湯
暖房
電気
冷房
5.0
負 荷 [MWh/h]
5.0
3.0
2.0
1.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
1
時刻 [h]
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
天 然 ガ ス コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 計 画 ・ 設 計 マ ニ ュ ア ル 2005、 (社 )日 本 エ ネ ル ギ ー 学 会 編
日本工業出版
2)
8
6.0
給湯
冷房
電気
暖房
5.0
負 荷 [MWh/h]
7
図2.2.7(2-b).集合住宅の時刻別負荷 <青森> -夏期-
6.0
1)
6
月
月
HASS 112-2000 冷 暖 房 熱 負 荷 簡 易 計 算 法
空気調和・衛生工学会規格
- 23 -
2.3
供給サイドの検討
本節では、水素・電力・熱供給のネットワークを考える上でエネルギー供給サイドに適
用 可 能 な コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 設 備( 内 燃 機 関 、燃 料 電 池 )、発 電 設 備 、水 素 製 造 設 備 、ご
み 焼 却 場 / 下 水 処 理 設 備 な ど 各 種 設 備 の 種 類 、概 要 、規 模 な ど の 調 査 結 果 に つ い て 述 べ る 。
2.3.1
コージェネレーション設備(内燃機関)
現 在 実 用 化 、ま た は 開 発 段 階 に あ る 内 燃 機 関 使 用 の コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 設 備 と し て は 、
(1)
ガスエンジンコージェネレーション設備
(2)
マイクロガスエンジンコージェネレーション設備
(3)
ガスタービンコージェネレーション設備
(4)
マイクロガスタービンコージェネレーション設備
(5)
ディーゼルエンジンコージェネレーション設備
がある。
各々の設備の技術段階、発電規模等を下表に示す。
下表に示すコージェネレーション設備は、いずれも実用段階にあり、分散型の熱電供給
設備として産業分野、民生分野で広く使用されている。
表 2.3.1
設備名称
技術段階
発電規模
発電効率
設備例
ガスエンジン
実用段階
100~ 6,000kW
21~ 45%
図 2.3.1-1
マイクロガスエンジン
実用段階
5~ 25kW
24~ 31%
図 2.3.1-2
ガスタービン
実用段階
650~ 30,000kW
20~ 35%
図 2.3.1-3
マイクロガスタービン
実用段階
27~ 295kW
18~ 27%
図 2.3.1-4
ディーゼルエンジン
実用段階
15~ 17,000kW
30~ 47%
図 2.3.1-5
- 24 -
ガスエンジンコージェネレーション
(日立製作所(株)HP より)
図 2.3.1-1
ガスエンジンコージェネレーション
マイクロガスエンジン
コージェネレーション
(大阪ガス(株)HPより)
図 2.3.1-2
マイクロガスエンジンコージェネレーション
- 25 -
ガスタービンコージェネレーション
(東京ガス(株)HPより)
図 2.3.1-3
ガスタービンコージェネレーション
マイクロガスタービン
コージェネレーション
(東京ガス(株)HPより)
図 2.3.1-4
マイクロガスタービンコージェネレーション
- 26 -
ディーゼルエンジン
コージェネレーション
(ダイハツディーゼル(株)HPより)
図 2.3.1-5
ディーゼルエンジンコージェネレーション
- 27 -
2.3.2
コージェネレーション設備(燃料電池)
現在実用化、または開発段階にある燃料電池コージェネレーション設備としては、
(1)
燃 料 電 池 ( PAFC) コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 設 備
(2)
燃 料 電 池 ( PEFC) コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 設 備
(3)
燃 料 電 池 ( SOFC) コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 設 備
がある。
各々の設備の技術段階、発電規模等を下表に示す。
燃料電池を用いたコージェネレーション設備は、実用化初期段階または実証/開発段階
にあり、今後、さらに高効率化、低価格化、高耐久性化、コンパクト化などを目指した研
究が進められていくものと思われる。
表 2.3.2
設備名称
技術段階
発電規模
発電効率
設備例
燃 料 電 池 ( PAFC)
実用段階
100,200kW
40%
図 2.3.2-1
燃 料 電 池 ( PEFC)
実証段階
700W~ 1kW
31% 以 上
図 2.3.2-2
燃 料 電 池 ( SOFC)
開発段階
数 kW~ 数 百 kW
40~ 45%
図 2.3.2-3
燃料電池(PAFC)コージェネレーション
(東京ガス(株)HPより)
図 2.3.2-1
燃 料 電 池 ( PAFC) コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン
- 28 -
燃料電池(PEFC)コージェネレーション
(東京ガス(株)HPより)
図 2.3.2-2
燃 料 電 池 ( PEFC) コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン
燃料電池(SOFC)コージェネレーション
(NEDO HPより)
図 2.3.2-3
燃 料 電 池 ( SOFC) コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン
- 29 -
2.3.3
発電設備
現在実用化階にある熱供給を伴わない発電単独の設備としては、
(1)
風力発電設備
(2)
太陽光発電設備
がある。
各々の設備の技術段階、発電規模を下表に示す。
風力発電、太陽光発電ともに現在実用化段階にある。ただ現段階では、補助事業により
初期投資コストを低くする形で導入が進めれているが、化石燃料を全く使用しない発電方
式であり、今後が、さらなるコストダウンにより、より一層の普及が望まれる。
表 2.3.3
設備名称
技術段階
発電規模
設備例
風力発電
実用段階
30~ 1,650kW/1 基
図 2.3.3-1
太陽光発電
実用段階
3~ 200kW
図 2.3.3-2
風力発電設備
http://ja.wikipedia.org/wiki/よ り
図 2.3.3-1
風力発電設備
- 30 -
太陽光発電設備
(新エネルギー財団 HPより)
図 2.3.3-2
太陽光発電設備
- 31 -
2.3.4
水素製造設備
現在実用化階にある水素製造設備としては、
(1)
水蒸気改質型水素製造設備
(2)
水電気分解型水素製造設備
(3)
水 素 分 離 設 備 ( PSA)
がある。
各々の設備の技術段階、設備規模を下表に示す。
水素製造設備は、製油所、製鉄所で使用される大規模なものから、産業用に使用する中
規模タイプ、民生用燃料電池を対象とした小規模なものまで、各種容量/方式のものが実
用化されている。
な お 、 水 素 の 貯 蔵 技 術 に 関 し て は 、 2.4 節 で 述 べ る こ と に す る 。
表 2.3.4
設備名称
技術段階
発電規模
設備例
水蒸気改質型水素製造
実用段階
オ ン サ イ ト 型 : 30~ 200Nm 3 /h
図 2.3.4-1
PEFC
設備
用 : 0.75Nm 3 /h
製 油 所 : ~ 10 万 Nm 3 /h
水電気分解型水素製造
実用段階
1~ 60Nm 3 /h
図 2.3.4-2
実用段階
製鉄所副生ガス対応のものでは
図 2.3.4-3
設備
水 素 分 離 設 備 ( PSA)
分 離 能 力 が 500 ~ 1,000Nm 3 /h 程
度 、製 油 所 の 改 質 型 水 素 製 造 設 備 対
応 の も の で 、10 万 Nm 3 /h 程 度 の も
のまで実績がある
水蒸気改質型水素製造設備
(大阪ガスエンジニアリング(株) HPより)
図 2.3.4-1
水蒸気改質型水素製造設備
- 32 -
水電気分解型水素製造設備
((株)神鋼環境ソリューション HPより)
図 2.3.4-2
水電気分解型水素製造設備
水素分離設備(PSA)
(新日鉄エンジニアリング(株) HPより)
図 2.3.4-3
水 素 分 離 設 備 ( PSA)
- 33 -
2.3.5
ごみ焼却場、下水処理場における発電規模
2.3.1、 2.3.2、 2.3.3 に 記 載 し た も の 以 外 に 、 地 域 に 電 力 、 熱 の 供 給 を 行 う 可 能 性 の あ
る設備としては、ごみ焼却場、下水処理場などがある。
ご み 焼 却 場 に 発 電 設 備 が 併 設 さ れ て い る 例 は 国 内 の 一 般 廃 棄 物 焼 却 設 備 で 約 210 個 所 あ
り 、 総 発 電 出 力 は 、 1,057,720kW( 平 成 13 年 度 現 在 ) に も お よ ぶ 。 発 電 設 備 の 規 模 も 1
個 所 当 た り 、 小 さ い も の で 100kW 程 度 、 大 き い も の で は 50,000kW 程 度 ま で あ る 。 発 電
設 備 の 一 例 を 図 2.3.5-1 に 示 す 。
青 森 県 の 例 で は 、 八 戸 清 掃 工 場 第 1 工 場 ( ご み 処 理 能 力 : 300t/日 ) が 、 1,300kW の ご
み発電設備を備えている。
ご み 発 電 設 備 の 場 合 、 新 し い も の を 除 い て 、 一 般 的 に は 発 電 効 率 が 5~ 15%程 度 と 低 い
ものが多く、その分、地域にて利用可能な排熱も多く存在する可能性がある。
ま た 、 下 水 処 理 場 で は 、 国 内 18 個 所 の 下 水 処 理 場 に 消 化 ガ ス を 燃 料 と す る ガ ス エ ン ジ
ン 発 電 設 備 が 設 置 さ れ て い る 。 設 備 の 一 例 を 図 2.3.5-2 に 示 す 。 発 電 規 模 と し て は 1 個 所
あ た り 、50~ 3,700kW 程 度 で あ り 、ご み 発 電 設 備 に 比 べ る と 、設 置 個 所 数 、発 電 規 模 共 に
小さい。また、下水処理場では、ごみ焼却場に比べて、所内で使用する熱(汚泥消化用な
ど)も多い。
ごみ発電設備
(新エネルギー財団 HPより)
図 2.3.5-1
- 34 -
ごみ発電設備
下水処理場消化ガス発電設備
(八戸市 HPより)
図 2.3.5-2
下水処理場消化ガス発電設備
- 35 -
2.4 インフラの検討
本節では、ネットワークモデルの基幹となる、電気、熱、水素の輸送および貯蔵方法を整理する。
2.4.1 電気の輸送および貯蔵方法
1) 輸送方法
マイクログリッドにおける電気の輸送は、独立の自営線を設ける場合と、電力会社の系統を利
用する場合が考えられる。
(1) 自営線
自営線を用いたマイクログリッドの事例としては、八戸市で実施している新エネルギー等地域
集中実証試験「八戸市 水の流れを電気で返すプロジェクト」を前年度現地調査している。
これは、下水処理場用地のバイオガスエンジン、太陽光、風力により発電された電力を、自営
線により学校、市庁舎等に供給するマイクログリッド(図 2.4.1-1 参照)の実証研究であり、地
域内の産業活性化と新エネルギーの導入等を検討、推進し、八戸地域の活性化を図るものである。
詳細は前年度報告書の「5.3 現地調査の報告」を参照されたい。
- 36 -
図 2.4.1-1 「八戸市 水の流れを電気で返すプロジェクト」の概要
(NEDO ホームページ http://www1.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/egy/より)
- 37 -
(2) 電力会社の系統
電力会社の系統を用いる事例として、京都市京丹後市で行われている京都エコエネルギープロ
ジェクトについて示す。このプロジェクトは、NEDO の実証実験(平成 15~19)で、不安定電
源である風力発電と太陽光発電をバイオマス発電で制御し、需要に応じて安定的に電力供給を行
う実験である。
これらの供給施設と需要施設(市庁舎、病院等)を電力会社の系統を用いて連携し、需要供給
の同時同量の制御により、系統に与える影響を最小限に抑えることを実証する。下記のように専
用の電力網(自営線)を持たないため、仮想マイクログリッドと呼ばれている。
プロジェクトの概要を図 2.4.1-2 に示す。
図 2.4.1-2 「京都エコエネルギープロジェクト」の概要
(NEDO ホームページ http://www1.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/egy/より)
- 38 -
2) 貯蔵方法
電力貯蔵の方法は、エネルギーの貯蔵形態により、表 2.4.1-1 のように分類されるが、現時点で
実用化されているものは少ない。
大規模な貯蔵システムとしては、揚水発電が現在唯一実用的な方法といえる。しかし自然保護へ
の意識の向上や送電線の建設費負担の増大等により、揚水発電の適地は少なくなっており、海水
揚水発電所や地下揚水発電所の開発が進められている。
表 2.4.1-1 電力貯蔵の形態
エネルギーの貯蔵形態
力学的エネルギー
電力貯蔵の方法
運動エネルギー
フライホイール
位置エネルギー
揚水発電
圧力エネルギー
圧縮空気貯蔵
電磁界エネルギー
超伝導エネルギー貯蔵
化学的エネルギー
2次電池電力貯蔵
〃
水素貯蔵
マイクログリッドでは、需給調整のため貯電システムは重要であり、八戸市のシステムでは2
次電池として鉛蓄電池が用いられている。表 2.4.1-2 に主な 2 次電池の比較を示す。
今後は、エネルギー貯蔵密度の高いナトリウム硫黄(NAS)電池やリチウムイオン電池の適用
が期待されている。このためにはコストが課題であり、機能改良や量産による低価格化が進めら
れている。
表 2.4.1-2 主な 2 次電池の比較
(社団法人
建設電気技術協会 HP
- 39 -
http://www.kendenkyo.or.jp/より)
2.4.2 熱の輸送および貯蔵方法
コジェネレーションシステム(以下、コジェネ)において排熱の有効利用は、エネルギー効率向
上のために重要な課題である。以下では、コジェネにおける排熱の輸送方法及び貯蔵方法について
整理する。
1) 輸送方法
(1) 配管
(a) 建物・敷地内
コジェネは 1980 年台後半から普及が始まり、2003 年時点で日本の発電設備容量の約 2.5%に相
当する 650 万 kW が導入されている。現在でも、熱需要が多い、工場、病院、ホテルなどを中心
に毎年 40 万 kW 以上が新たに設置されている。
現在そのほぼ全ての熱の輸送が、配管により行われている。一般のマンションでも、コジェネ
の排熱を給湯用や空調用として専用配管により各戸へ供給する事例は多い。以下に、商業施設内
での大規模な熱の輸送の事例として、六本木ヒルズのエネルギー供給システムを示す。
六本木ヒルズはオフィス、住宅、商業・文化施設を中心に、ホテル、情報施設等を複数の街区
にわたり一体的に再開発を行うもので、事業区域は約 11.6ha である。
エネルギー供給により省エネルギー化を図り、併せて環境負荷の低減や非常時の防災型電源と
しての活用などを目的に、大規模なコージェネレーションシステムが導入された。
電気は、ガスタービンコージェネレーション(合計36,500kW)により再開発地区内の
事務所棟、ホテル棟、劇場棟、住宅棟等に供給される(図 2.4.2-1 参照)。
図 2.4.2-1 六本木ヒルズのエネルギー供給システム
(森ビル株式会社ホームページ http://www.mori.co.jp/companyInfo/press/2000/.より)
- 40 -
発電時の排熱は蒸気として回収され、蒸気ボイラ(合計89.4t/h)及び蒸気吸収冷凍機(合
計66,810kW)により、給湯用熱源および吸収式冷凍機により作られる空調用冷水として
再開発地区内の全建物に供給される。
(b) 敷地外
供給側と需要側の距離が離れると、インフラ整備コストが大きくなり、適用事例も少なくなる。
敷地外の事例としては、豊洲 3 丁目エネルギー供給施設(豊洲 IHI ビルから芝浦工大豊洲キャン
パスに熱供給)の事例があるが、敷地が隣接しており、建物間の配管距離は 100m 以下と比較的
短い。
より配管の距離の長い事例としては、青森県庁舎内のコジェネシステムの排熱を、数百m先の
歩道の融雪に利用する例がある(図 2.4.2-2 参照)。
図 2.4.2-2 コジェネ排熱を歩道の融雪に用いる例
(青森県ホームページ www.pref.aomori.lg.jp/douro/aoimorinomitidukuri/11project.pdf より)
- 41 -
(2) オフライン
熱源施設と熱利用施設が離れている場合、従来は、導管などによるオンライン方式で熱を供給し
てきたが、車両で熱を搬送する「オフライン」供給方式では、以下のメリットを生じる。
① 配管等のインフラ整備コストが大幅に削減できる。
② 遠方(半径 20km 程度)への熱供給が可能となる。
③ 導管敷設時の制限(障害物による弊害、場所の固定など)に縛られることなく、自由な熱供給
が可能となる。
またオンライン方式とオフライン方式、それぞれの特徴を表 2.4.2-1 に示す。
このオフライン方式の代表例としては、蓄熱材として酢酸ナトリウム三水和物などの「潜熱蓄熱
材(PCM:Phase Change Material)」をコンテナに充填し、トラックなどにより輸送する方式(以
下、PCM方式と呼ぶ)と、
「顕熱蓄熱材」である水(温水)をローリーにより輸送する方式(以
下、温水宅配システムと呼ぶ)がある。
両者の長所と短所の比較を表 2.4.2-2 に示す。
(表 2.4.2-1、2 とも経済産業省 経済産業政策局
「廃棄物発電排熱のオフライン方式による熱供給の PFI 事業化マニュアル」参照)。
表 2.4.2-1 各熱輸送方式の特徴
表 2.4.2-2 潜熱蓄熱と顕熱蓄熱の長所と短所
- 42 -
以下に、潜熱蓄熱材(PCM)の適用例としてトランスヒートコンテナシステムと、顕熱蓄熱材
の検討例として温水宅配システムを示す。
a) トランスヒートコンテナシステム
トランスヒートコンテナシステムとは、下水汚泥焼却施設や廃棄物焼却施設などから発生する
低温廃熱(200℃以下)を潜熱蓄熱材(PCM)に効率よく回収・貯蔵し、コンテナ車で運搬して
離れた施設の熱エネルギーとして供給する技術である。図 2.4.2-3 にシステムの概念を、図 2.4.2-4
にトランスヒートコンテナを示す(いずれも三機工業株式会社ホームページ
http://www.sanki.co.jp/ より)。
図 2.4.2-3 トランスヒートシステムの概念
図 2.4.2-4 トランスヒートコンテナ
- 43 -
この技術はドイツ航空宇宙研究所で研究されていたもので、1999 年に実用化された。2001 年に
はフランクフルトで、化学工場の排熱をコンテナ 6 台で 12km 離れたオフィスに運んで暖房・給
湯熱源として使用し、燃料費削減に大きな効果を示した。
2003 年に、三機工業株式会社と株式会社栗本鐵工所が技術導入し、平成 16 年度の環境省の「地
球温暖化対策技術開発事業」の一つに採択された。この事業の一部として本年度は、下水処理場
から発生する未利用の廃熱を有効利用する実証試験が行われている。
これは、東京都下水道局清瀬水再生センターの廃熱をトランスヒートコンテナに充填し、約
2.5km 離れた清瀬市民体育館まで運び、給湯・冷房・暖房用熱源として利用するものである。
蓄熱媒体には酢酸ナトリウムやエリスリトール(人工甘味料の一種)が用いられ、コンテナ一
台当たり 2000kWh の蓄熱能力を有する。
b) 温水宅配システム
また、顕熱蓄熱材の適用事例として、温水宅配システムが検討されている。図2.4.2-5に、温
水宅配システムの概要を示す(経済産業省
経済産業政策局「廃棄物発電排熱のオフライン方式
による熱供給のPFI事業化マニュアル」参照)。
このシステムの特長は以下である。
・ローリーにより温水を供給するので配管が不要である。
・熱媒に水を使うため、安定、無害かつ安価である。
・蓄熱、放熱に時間を要さないため、1 日当りの輸送回数を増やすことが可能である。
・温水ローリー(蓄熱容器等)の構造が単純なため、システムの価格が安価である。
・「排熱+水」の供給事業であるため、需要家の水道コストの削減も可能となる。
図 2.4.2-5 温水宅配システムの概要
- 44 -
2) 貯蔵方法
(1) 蓄熱槽
一般的なマンションのコジェネシステムでは、発電機で生じた排熱は熱交換機を経て貯湯槽に蓄え
られ、専用給湯配管により各戸に給湯される。各戸では、給湯、暖房に用いられる。図 2.4.2-6 に代
表的なマンション・コジェネシステムのシステムのイメージを示す。
図 2.4.2-6 代表的なマンション・コジェネシステムのシステムのイメージ
(2) 受水槽での蓄熱
排熱で上水受水槽を加温する上水予熱方式と呼ばれる方法が近年開発されている。関西地区のマ
ンションで5件(2005 年 2 月時点)実績があるが、実績データ等は現時点で未公開である。
その長所は、コジェネシステム本体(エンジンと排熱回収設備)以外の設備不要であり、イニシ
ャルコストが低い点にある。図 2.4.2-7 に上水予熱方式のシステムのイメージを示す。
一方現状の制約としては、昇温余地が限られる(上記事例で 5℃程度)であり、利用可能な排熱
が少ない点があげられる。ただし寒冷地であれば昇温余地が拡大するため、適用性や有効性が広
がる可能性がある。
図 2.4.2-7 上水予熱方式のシステムのイメージ
- 45 -
2.4.3 水素の輸送および貯蔵方法
1) 水素の輸送方法
水素の輸送方法としては、オンライン(パイプラインによる輸送)と、オフライン(車両による
輸送)に大別される。各々について国内外の現状を以下に整理する。
(1) パイプライン
①海外の状況
欧米では 1940 年代より水素パイプラインが運用されており、欧州では、総延長が 900km を超
えるものもある。設置方法は、地中埋設(直接埋設かケーシングによる埋設)が一般的である。
パイプラインの圧力は、欧州では 10MPa 以下、米国では 5.6MPa が標準的であり、パイプライ
ンの鋼材は特殊なものではなく、天然ガス用と同じ材料が用いられている。
欧州では、水素を天然ガス配管に混ぜて輸送・使用する Naturalhy プロジェクト(図 2.4.3-1 参
照)が進んでいる。
図 2.4.3-1
Naturalhy プロジェクトの概要
(http://www.naturalhy.net/images/posters/Poster%20(small).jpg
より)
②国内の状況
日本では、敷地内あるいはコンビナート内では古くから実績がある。しかしその外に出した例は
ない。
「水素フロンティア山口推進構想」
(図 2.4.3-2 参照)で工場敷地外にパイプを伸ばし家庭で
用いる検討を実施した事例がある。
しかし現状では法規対応が難しく、水素パイプラインのネットワーク実現は困難である。このた
- 46 -
めには今後、安全性の確認と基準の策定が必要である。
図 2.4.3-2 水素フロンティア山口推進構想
(山口県、水素フロンティア山口推進構想調査報告書、2004 年 5 月より)
- 47 -
(2) オフライン
WE-NET で、2002 年に横浜鶴見にオフサイト型水素供給ステーションを建設した。水素は供給
する水素トレーラは最高圧力 19.6MPa、積載量 約 2,030Nm3 程度の水素トレーラで輸送している。
また愛・地球博では、燃料電池バス用の水素ステーション二基のうち、一基はオフサイト型で、
トレーラで輸送している。
水素トレーラとは、水素の長尺容器を集結し輸送用容器化したものである。長尺容器とは1本の
長さが6メートル以上もある長い大型容器のことで、長尺容器1本あたりの水素容量も 60~140
m3 と大きく、また、重量も 500kg 以上となる。これらは単独で使用されることはほとんどなく、
集結されることを前提に製作されたものである。
この他に、ロケット燃料向け等の大量供給に対して、液体水素ローリーがある。高圧ガス保安法
では、タンクローリーは移動式製造設備として取り扱われ、2時間以上同一場所に留め置いて使
用する場合は、貯蔵設備としての届出も必要となるため、使用には十分な注意が必要となる。
図 2.4.3-3 に水素トレーラの、図 2.4.3-4 に液体水素ローリーの例を示す(いずれも岩谷産業株式
会社ホームページ
http://www.iwatani.co.jp より)。
図 2.4.3-3 水素トレーラの例
図 2.4.3-4 液体水素ローリーの例
- 48 -
2) 貯蔵方法
水素の貯蔵方法に関する現状の動向を以下に整理する(以下、エヌティーエス編、水素利用技術
集成、2003 より)。
(1) 高圧タンク
圧縮水素貯蔵は、燃料電池自動車(FCV)の有力な燃料貯蔵法の一つであり、車両登載用と同時
に水素充填所(水素ステーション)での貯蔵についても研究開発が進められている。表 2.4.3-1 に
日本の FCV 用水素充填所の蓄ガス容器の概要を示す。いずれの地点でも、FCV の車両充填圧(350
気圧)より高い 400 気圧の蓄ガス容器を用いている。容器の材料としては、Cr-Mo 鋼が用いられて
おり、鋼製容器は世界的に見てもほとんど用いられていない。海外では、炭素繊維を用いた C-FRP
製容器の開発が進められているが、国内では法規制上課題がある。
FCV の航続距離をガソリン車と同等の 500km とするためには、さらなる高圧貯蔵(700 気圧)が
必要とされる。カナダでは 2003 年に車両充填圧 700 気圧の実証検討が行われ、875 気圧の蓄ガス
容器が用いられた。
表 2.4.3-1
日本の FCV 用水素充填所の蓄ガス容器(2002 年度まで)
蓄ガス容器
施設名称
場所
水素製造方法
圧力
容器容量
総ガス量
本数
(Mpa)
(l)
容器材料
(m3)
水素供給ステーション
高松市屋島西町
固体高分子電解質水電解
40
250
3
300
水素供給ステーション
大阪市鹿島
天然ガス改質
40
80
3
96
水素供給ステーション
横浜市鶴見区末広町
ソーダ電解(副生水素)
40
240
13
1,248
横浜・大黒水素ステーション
横浜市鶴見区大黒町
脱硫ガソリン改質
40
-
-
1,500
横浜・旭水素ステーション
横浜市旭区上白根町
ナフサ改質
40
300
10
1,200
千住水素ステーション
東京都荒川区南千住
LPG改質
40
-
-
-
有明水素ステーション*
東京都江東区有明
液体水素貯蔵
40
80
4
128
川崎水素ステーション
川崎市川崎区小島町
メタノール改質
40
250
8
820
移動式水素ステーション
東京都千代田区霞ヶ関
高圧水素貯蔵
40
250
2
200
Cr-Mo 鋼
*東京都環境局の「水素供給ステーションパイロット事業」としても実施。
(2) 液化タンク
既存の液化タンクの最大容量は、国内では種子島宇宙センターの 540m3、海外ではケネディ宇宙
センターの約 3200m3 のものがある。
表 2.4.3-2 に液化水素と液化メタン(LNG)の物性比較を示す。水素の沸点は-253℃であり、LNG
の-162℃に比べて大幅に低いため、液化水素は LNG に比して約 10 倍蒸発しやすい性質を持って
いる。その結果、LNG タンクと同等の断熱性能を持つためには、熱伝導率を 1/10 とするか断熱材
の厚さを 10 倍にする必要があり、前者は技術的に後者はコスト的に課題が大きい。
- 49 -
表 2.4.3-2 液化水素と液化メタン(LNG)の物性比較
項
分
目
子
点
発
液体メタン
2.0
16.0
(K)
20.27
111.63
(kJ/kg)
447
510
(kJ/m3)
31.600
216.200
量
沸
蒸
液体水素
潜
熱
3
沸 点 の液 体 密 度
(kg/m )
70.8
422.6
標 準 状 態 のガス密 度
(kg/m3)
0.0899
0.717
標準状態のガス粘度係数
(Pa・s)
8.75×10-6
11.0×10-6
(kJ/kg)
142.000
55.600
*(kJ/m3N)
12.750
39.840
10.090
23.600
高
位
発
熱
量
3
(MJ/m )
(注)*ガス
(3) 水素吸蔵合金
水素は多くの金属と反応して金属水素化物を生成する。これらの金属のうち、安定な水素化物を
作る金属(Mg, Ti, La 等)と不安定な水素化物を作る金属(Fe, Ni 等)を組み合わせた合金には、
可逆的に水素の吸蔵と放出が可能なものがある。常温常圧付付近で水素と反応して金属化合物の
形で水素を吸蔵し、加熱や減圧により容易に水素を放出し、かつその反応速度の早い合金が「水
素吸蔵合金」と呼ばれている。多くの材料に関して研究が行われているが現時点では、重量当た
りの含有率やコストの面で理想的なものは見つかっていない。
また水素貯蔵媒体としてカーボンナノチューブやカーボンナノファイバを用いる研究も行われ
ているが、現時点では性能・コスト両面で課題が多い。
(4) 有機ハイドライド
シクロヘキサンやデカリンなどの有機ハイドライド(水素を共有結合により取り込んだ有機化合
物)は、水素ガスを 1/1000 の体積として貯蔵できる。図 2.4.3-5 に有機ハイドライドの水素化、
脱水素化反応を、表 2.4.3-3 有機ハイドライドの水素貯蔵量を示す。有機ハイドライドは、常温常
圧で液体であり貯蔵・輸送はガソリンとほぼ同等に取り扱える利点も有する。
一方課題としては、脱水素反応時に高温に加熱する必要があること、触媒に白金を用いるためコ
ストが高いこと等があげられる。これらの改良のため、研究開発が続けられている。
また近年では、有機ハイドライドから水素を取り出すことなく、直接高出力の電気と熱を取り出
せる直接型燃料電池の開発も行われている。
- 50 -
5H2
50~150℃
50~150℃
3H2
(触媒下)
(触媒下)
-5H2
-3H2
150~300℃
ナフタレン
C10H8
150~300℃
デカリン
C10H18
シクロヘキサン
ベンゼン
C6H12
C6H6
図 2.4.3-5 有機ハイドライドの水素化、脱水素化反応
表 2.4.3-3 有機ハイドライドの水素貯蔵量
水素貯蔵量
材 料
wt(%)
kg/m3
デカリン-ナフタレン
7.3
65
シクロヘキサン-ベンゼン
7.1
55
メチルシクロヘキサン-トルエン
6.2
48
(5) 水酸化ホウ素ナトリウム水溶液
水酸化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は、ナトリウムイオン Na+とボロハイドライドイオン BH4を結合する化合物である。多量の水素を含有し、水素吸蔵合金と比べ、1.4~7.5 倍の水素貯蔵量
を有する。
これを用いた水素貯蔵・供給システムの例を図 2.4.3-6 に示す。このシステムは、高いエネルギ
ー密度、水素発生に際して熱源が不要であること、貯蔵条件が温和なため容器が軽量化できるこ
と等の特徴を有し、実用性が高い。
一方で、材料である NaBH4 の市場価格が高いため、現状では経済的に成立しない。現在生産コ
ストの低減を目指し開発が続けられている。
燃料
(NaBH4)
水素
燃料
還元剤
(リサイクル)
水素製造工程/
還元剤再生工程
燃料 H2
使用済燃料
(NaBO2-4H2O)
使用済燃料
燃料スタンド
ボロハイドライド
製造工程
(水力/原子力を利用した水素製造)
図 2.4.3-6 水酸化ホウ素ナトリウムを用いた燃料システム
- 51 -
燃料電池
燃料電池車
2.5
電力・熱の需給バランスの検討
2.5.1
全建物におけるエネルギー負荷の試算
2.2 節 で 求 め た 各 建 物 を 今 回 の 地 域 モ デ ル の 建 物 群 構 成 と 考 え 、 地 域 内 に お け る ト ー タ ル エ ネ
ルギー(電気+熱)需要量を求め、その特性を分析した。
図 2.5.1( 1-a)~( 3-a)を み る と 、月 別 で は 夏 期 が 最 大 と な る 。ま た 、夏 期 で は 昼 間 が ピ ー ク
となるが、冬期では朝方と夜に2つのピークが現れる。
一 方 青 森 で は 、図 2.5.1( 1-b)~( 3-b)を み る と 、月 別 で は 夏 期 と 冬 期 が ほ ぼ 同 じ 負 荷 と な る 。
また、両地域の比較では、夏期は東京の方が、冬期は青森の方が、より高い負荷となっている。
図2.5.1(1-a).全建物の月別負荷 <東京>
図2.5.1(1-b).全建物の月別負荷 <青森>
6000
冷房
暖房
給湯
電気
5000
4000
月間負荷 [MWh/月]
月 間負 荷 [MWh/月 ]
6000
3000
2000
1000
冷房
暖房
給湯
電気
5000
4000
3000
2000
1000
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
1
12
2
3
4
5
6
図1-1.全建物の時刻別負荷 <東京> -夏期-
9
10
11
12
14
12
12
給湯
冷房
電気
暖房
10
8
負荷 [MW h/h]
負 荷 [MW h/h]
8
図2-1.全建物の時刻別電気・熱負荷 (青森) -夏期-
14
6
4
給湯
冷房
電気
暖房
10
8
6
4
2
2
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
1
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
時刻 [h]
図2-2.全建物の時刻別電気・熱負荷 (青森) -冬期-
図1-2.全建物の時刻別負荷 <東京> -冬期-
14
14
12
12
給湯
暖房
電気
冷房
10
8
負 荷 [MWH/ h]
負 荷 [MWH / h]
7
月
月
6
4
2
融雪
給湯
暖房
電気
冷房
10
8
6
4
2
0
1
2
3
4
5
6
7
8
0
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
1
時刻 [h]
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
- 52 -
これらのピーク負荷量は、電源や熱源の供給能力や装置の選定にかかわることになる。
今 回 検 討 し た 各 建 物 の エ ネ ル ギ ー 種 別 ピ ー ク 負 荷( 図 2.2.3( 2,3-a,b)~ 図 2.2.7( 2,3-a,b)が
対 象 )の 合 計 と 、全 建 物 を エ ネ ル ギ ー 的 に 一 体 化 し た 場 合 の エ ネ ル ギ ー 種 別 ピ ー ク 負 荷( 図 2.5.1
( 2,3-a,b)) を 求 め 、 こ れ ら を 表 2.5.1( a)( b) に 集 約 し た 。
両 者 ( 表 中 の ( A) と ( B)) を 、 エ ネ ル ギ ー 供 給 源 の エ ネ ル ギ ー 特 性 や 効 率 を 考 慮 せ ず 単 純 に
比 較 す る と 、全 建 物 と し て エ ネ ル ギ ー を 一 元 化 し た 方 が 、電 気 ・ 暖 房 ・ 冷 房 で は 各 10%余 り 、給
湯 で は 20%以 上 の 削 減 率 と な り 、エ ネ ル ギ ー 供 給 源 を 共 有 す る こ と に よ り 、大 幅 な エ ネ ル ギ ー の
供給源能力の削減が期待できることになる。
表 2.5.1(a). 全 建 物 の ピ ー ク 負 荷 < 東 京 >
負 荷 [MW]→
電気
給湯
暖房
表 2.5.1(b). 全 建 物 の ピ ー ク 負 荷 < 青 森 >
荷 [MW]→
冷房
電気
給湯
暖房
冷房
病院
0.80
0.69
1.89
2.28
病院
0.80
0.76
2.32
2.03
ホテル
1.04
0.76
1.25
2.26
ホテル
1.04
0.84
1.54
2.01
店舗
1.21
0.23
1.46
2.19
店舗
1.21
0.25
1.79
1.95
スポ施 設
0.50
0.52
0.40
0.54
スポ施 設
0.50
0.57
0.49
0.48
集合住宅
0.57
1.63
1.01
1.78
集合住宅
0.57
1.79
1.24
1.58
ピーク合 計 (A)
4.13
3.83
6.00
9.04
各 ピーク合 計 (A)
4.13
4.21
7.38
8.05
全 建 物 合 計 (B)
3.70
3.02
5.39
7.84
全 建 物 合 計 (B)
3.70
3.32
6.63
6.98
B/A*100[%](C)
89.6
78.8
89.9
86.8
B/A*100[%](C)
89.6
78.8
89.9
86.8
削 減 率 [%]100-C
10.4
21.2
10.1
13.2
削 減 率 [%]100-C
10.4
21.2
10.1
13.2
2.5.2
寒冷地でのエネルギー負荷の特性
青森を想定した寒冷地における全建物のエネルギー負荷を基準地である東京のそれと比較し、
エネルギー特性をみた。
全 建 物 に お け る ピ ー ク 負 荷 は 前 節 2.5.1 の 表 2.5.1( a)( b) の 結 果 か ら わ か る よ う に 、 電 気
に つ い て は 同 じ 、給 湯 ・ 暖 房 に つ い て は そ れ ぞ れ 10%・ 23%増 し 、冷 房 は 11%減 と な っ た 。ま
た 年 間 負 荷 に つ い て は 、 2.2.2 節 の 表 2.2.2( a)( b) の 結 果 か ら 、 同 様 の 結 果 と な る 。 こ れ ら
は 、 当 初 設 定 し た エ ネ ル ギ ー の 地 域 補 正 係 数 ( 2.2.2( 1) 参 照 ) に よ る も の で あ る 。
熱 需 要 量 の 違 い を み る と 、表 2.5.1( a)と( b)の 比 較 か ら 、
( 給 湯・暖 房・冷 房 )合 計 で は 、
寒 冷 地 が 6%増 に 対 し 、( 給 湯 ・ 暖 房 ) 合 計 に 絞 れ ば 16%増 と な っ た 。
今回は、寒冷地における冬期に限り、全建物地域内での歩道に融雪システムを適用すること
を試みた。熱源は電気でなく、コジェネレーション等から出る排熱を利用するものとした。こ
の熱量は以下の想定により求めた。
全 建 物 を 含 む 敷 地 面 積 : 300m×200m = 60,000 ㎡
主 幹 道 路 長 : 縦 横 に 100m ピ ッ チ で 碁 盤 状 に 配 列 す る と し て 総 延 長 は 、
300m ×3+ 200m ×4= 1700m
融雪歩道面積:主要道路の両側に歩道があり、そのうち幅2mを融雪するとして
1700m ×2×2m= 6,800 ㎡
道 路 融 雪 負 荷 : 文 献 1)に よ る と 車 歩 道 で 標 準 電 力 と し て 170~ 300W と な っ て い る 。
今 回 は 、降 雪 や 天 候 変 動 に よ ら ず 常 時 循 環 と し て 計 算 す る た め 、下 位 を 取 っ て 170W を 採 用
すると、
- 53 -
170W×6,800 ㎡ = 1,156,000W
→ 1.2MW と す る 。
こ の 融 雪 負 荷 は 、 建 物 内 負 荷 と は 異 な る た め 、 2.5.4 節 の 分 散 ・ 集 中 電 源 の 部 分 で 検 討 の 対 象
とする。
2.5.3
コジェネレーションシステム導入の検討
全建物の地域として、熱および電気の負荷割合を調べた。
冷房、暖房、給湯のエネルギー源は、計画地域において、ガス、灯油、電気等を自由に選択
できるので、ここでは単純に以下の2通りの場合に分けて計算を行った。即ち、
ケース①
冷房・暖房・給湯用途を、電気以外のガス、灯油等の「熱」でまかなう。
電 気 用 途 を 、「 電 」( 電 気 、 電 力 、 電 源 の こ と ) で ま か な う 。
ケース②
暖房・給湯用途を、電気以外のガス、灯油等の「熱」でまかなう。
冷 房 ・ 電 気 用 途 を 、「 電 」( 電 気 、 電 力 、 電 源 の こ と ) で ま か な う 。
計 算 結 果 を 表 2.5.2( a)( b) に 示 す 。
基準地(東京)における熱電比(熱負荷/電気負荷)は、
①
年 間 平 均 で 1.56
( 季 節 別 に は 、 夏 期 2.00、 冬 期 2.18、 中 間 期 1.05)
②
年 間 平 均 で 0.66
( 季 節 別 に は 、 夏 期 0.11、 冬 期 2.11、 中 間 期 0.45)
一方、寒冷地(青森)の場合でみると、
①
年 間 平 均 で 1.66
( 季 節 別 に は 、 夏 期 1.84、 冬 期 2.58、 中 間 期 1.08)
②
年 間 平 均 で 0.79
( 季 節 別 に は 、 夏 期 0.11、 冬 期 0.13、 中 間 期 0.52)
表 2.5.2( a)
電力負荷
熱負荷
単 位:負 荷[ MWh/ 月 ]、熱 電 比[ - ]
月別エネルギー負荷と熱電比<東京>
月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
合計
-
1452
1336
1422
1415
1542
1553
1732
1815
1724
1622
1491
1486
18590
給湯
1102
1152
1122
1017
852
738
685
526
558
740
822
1028
10342
暖房
2034
1757
1504
602
129
41
35
10
20
33
742
1614
8521
冷房
33
65
184
264
635
1140
2142
3090
1648
684
201
91
10173
使 用 データ区 分
冬期
中間期
夏期
中間期
冬期
熱電比
ケース①
2.18
2.23
1.98
1.33
1.05
1.24
1.65
2.00
1.29
0.90
1.18
1.84
1.56
熱電比
ケース②
2.11
2.08
1.64
0.96
0.45
0.29
0.19
0.11
0.17
0.34
0.93
1.68
0.66
表 2.5.2( b)
電力負荷
熱負荷
単 位:負 荷[ MWh/ 月 ]、熱 電 比[ - ]
月別エネルギー負荷と熱電比<青森>
月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
合計
-
1452
1336
1422
1415
1542
1553
1732
1815
1724
1622
1491
1486
18590
給湯
1213
1267
1234
1118
937
812
754
579
614
814
905
1131
11377
暖房
2502
2161
1849
741
158
51
43
12
25
41
913
1985
10481
冷房
29
58
163
235
565
1014
1906
2750
1466
608
179
81
9054
使 用 データ区 分
冬期
中間期
夏期
中間期
冬期
熱電比
ケース①
2.58
2.61
2.28
1.48
1.08
1.21
1.56
1.84
1.22
0.90
1.34
2.15
1.66
熱電比
ケース②
2.51
2.46
1.94
1.13
0.52
0.34
0.22
0.13
0.20
0.38
1.09
1.99
0.79
- 54 -
一 般 的 な コ ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン の 熱 電 比 は 、34/ 32= 1.06 程 度( 図 2.5.2 参 照 )で あ る こ と か ら 、
①の場合では、年間を通して導入の価値が高いものと推定できる。
②の場合でも、冬期を中心に考えれば、導入の可能性が高い。
また、熱源システムとして、現状ではガスエンジン、ジーゼルエンジン等を適用し、将来的に
は燃料電池への移行が可能であると考えられる。
図 2.5.2
2.5.4
従来型システムとコジェネレーションの種エネルギー性比較
( 文 献 2 ))
分散・集中電源の組み合わせの検討
全建物のエネルギー負荷をまかなう分散電源(コジェネレーション、燃料電池等)と集中電源
(商用電源、系統電源)の組み合わせを検討した。ここでは集中電源をベース電源とし、分散電
源は主に昼間のピーク負荷対応として考えた。
1)
基準地(東京)の場合
東 京 に お け る エ ネ ル ギ ー 負 荷 と 供 給 の 組 み 合 わ せ 例 を 、夏 期 お よ び 冬 期 の 場 合 を 図 2.5.3( a)
に示す。
夏期においては、冷房負荷が大きいので、ベース電源で比較的安定な電気負荷をまかない、
分 散 電 源 で 冷 房 ・ 給 湯 負 荷 を ま か な う こ と と し た 。 集 中 電 源 の 契 約 容 量 を 4MW レ ベ ル と し 、
電気負荷変動に対処する。
一 方 、分 散 電 源 で 、
[ 電 気 ]部 分 で 冷 房 負 荷 を ま か な い 、同 時 に[ 熱 ]部 分 で 給 湯 負 荷 を ま か
なった残りの熱により吸収式冷凍機を用いて冷房負荷を補うことにした。したがって、分散電
源 の 容 量 は 、 6MW([ 電 気 ] 3MW、[ 熱 ] 3MW) と し て 、 変 動 追 随 運 転 を 行 う 。
ただ、今回では分散電源の方を負荷追随としたが、安定かつ高効率が得られるようにある程
度定常運転を維持させる。そのため、運転開始・停止時間帯に生じる負荷については、蓄熱や
電気貯蔵システムにより蓄えておき、ピークとなる昼間の負荷不足分に対応可能なように工夫
する。
冬 期 で は 、 電 気 の 負 荷 が 減 る た め 、 ベ ー ス 電 源 で 負 担 す る 設 定 容 量 を 下 げ 、 2MW と す る 。
ま た 、そ の 不 足 分 は 、分 散 電 源 で 補 う シ ス テ ム を 組 む 。そ う す る と 、分 散 電 源 の 持 つ 容 量 6MW
を最大限に活用でき、暖房・給湯負荷も十分まかなえ、総合効率の高いシステムを組めること
になる。
- 55 -
図1-1.全建物の時刻別電気・熱負荷 (東京) -夏期-
14
分 散 電 源 :6MW (コジェネ)
集 中 電 源 :4MW
コジェネ蓄 熱
12
給湯
負荷 [MWh/h]
10
冷房
夜間電力利用
電気
8
分散電源
集中電源
水素製造
6
暖房
4
「熱 」を吸 収 式 冷
2
凍 機 で冷 房
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
時刻 [h]
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
非 常 用 電 源 (バックアップ、
「 電 気 」 を ヒ ー ト ポ ン プ 式
防 災 )燃 料 電 池 車 用 等
冷 凍 機 で冷 房
図1-2.全建物の時刻別電気・熱負荷 (東京) -冬期-
分 散 電 源 : 6MW (コ ジ ェネ)
集 中 電 源 :2MW
14
コジェネ蓄 熱
「電 気 」をヒーター
負荷 [MWH/h]
12
分散電源
10
8
6
給湯
暖房
電気
冷房
で暖 房
夜間電力利
用水素製造
4
2
0
1
集中電源
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12 13 14
時刻 [h]
15
利用
16 水17素 18
19 燃20料 21
量最小化
分 散 電 源 : 7MW
(コジェネ+
バイオマス、風力、太陽光)
14
負荷 [MWh/h]
集
24 中 電 源 受 電 容
<東京>
図2-1.全建物の時刻別電気・熱負荷 (青森) -夏期-
分散電源
23
電池発電
2.5.3( a) 分 散 ・ 集 中 電 源 の 組 み 合 わ せ
図
22
コジェネ蓄 熱
12
集 中 電 源 :2MW
10
給湯
冷房
8
6
電気
4
暖房
2
0
1
集中電源
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11 12 13 14 15 16
時刻 [h]
17 18 19
20 21 22
23 24
コジェネ発 電
分 散 電 源 :7MW (コジェネ+
図2-2.全建物の時刻別電気・熱負荷 (青森) -冬期-
トランスヒートコンテナ等 非
バイオマス、風 力 、太 陽 光 )
集 中 電 源 :2MW
定常間欠熱需要
負荷 [MWH/h]
14
分散電源
融雪
給湯
暖房
電気
冷房
コジェネ蓄 熱
12
10
8
6
4
2
0
集中電源
1
2
3
図
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時刻 [h]
2.5.3( b) 分 散 ・ 集 中 電 源 の 組 み 合 わ せ
- 56 -
<青森>
2)
寒冷地(青森)の場合
一方、青森におけるエネルギー負荷と供給の組み合わせ例を、夏期および冬期の場合を図
2.5.3( b) に 示 す 。
寒冷地であることから熱負荷が電気負荷に比べ相対的に高いため、分散電源による供給を大
きくとり、熱の有効利活用を図った。また、同時にベース電源の契約電力を下げる効果も得ら
れる。
夏期においては、冷房負荷が相対的に小さくなるため、ベース電源で電気負荷をすべてまか
な わ ず 、 分 散 電 源 で 一 部 負 担 す る こ と と し た 。 こ の た め 、 集 中 電 源 の 契 約 容 量 を 2MW レ ベ ル
とし、昼間ではほぼ一定で最大の電力供給を受ける。
一 方 、分 散 電 源 で は 、
[ 電 気 ]部 分 で 残 り の 電 気 負 荷 と 冷 房 負 荷 を ま か な い 、同 時 に[ 熱 ]部
分で給湯負荷をまかなう。冷房負荷については同様に吸収式冷凍機を用いる。分散電源に係る
負 荷 は 、 7MW([ 電 気 ] 3.5MW、[ 熱 ] 3.5MW) と し て 、 変 動 追 随 運 転 を 行 う 。
基準地と同様に、運転開始・停止時間帯に生じる負荷については、蓄熱や電気貯蔵システム
により蓄えておき、ピークとなる昼間の負荷不足分に対応可能なように工夫する。
冬期では、暖房・熱負荷がかなり大きくなるが、電気負荷は夏期より減るため、ベース電源
の 最 大 容 量( 2MW)で ほ と ん ど の 電 気 負 荷 を ま か な え る 。ま た 、そ の 不 足 分 は 、分 散 電 源 で 補
う。分散電源は主に暖房・給湯をまかなう。
ま た 、 冬 期 で は 歩 道 融 雪 の 負 荷 ( 1.2MW レ ベ ル ) が 加 算 さ れ る 。( 2.5.2 節 参 照 )
こ れ は 、分 散 電 源 の う ち 通 常 利 用 が 困 難 と さ れ る 比 較 的 低 温( 60~ 80℃ レ ベ ル )の 排 熱 を 温
水に熱交換して利用することができ、また、不足時には全建物地域外からトランスヒートシス
テムによる熱輸送等の対応が可能となる。また、夜間では、深夜電力を利用したロードヒーテ
ィングも検討できる。
2.5.5
まとめ
今 回 実 施 し た 検 討 は 、エ ネ ル ギ ー 負 荷 を ま か な う エ ネ ル ギ ー 源 の 種 類 や 組 み 合 わ せ を 特 定 せ ず 、
また、エネルギー供給源のシステム効率を加味していないため、詳細なシステムを検討するまで
に至ってないが、これまでの検討結果で大略以下のことが推測できる。
基 準 地( 東 京 等 )で は 、エ ネ ル ギ ー 負 荷 の 低 減・平 準 化 を 行 う た め 、安 価 な 深 夜 電 力 を 利 用 し 、
各種蓄熱(顕熱・潜熱・化学)し、昼間へのシフトを図る。昼間では、コジェネレーションシス
テム導入・併用により、契約電力や電力需要を押さえ、最適となるエネルギーの組み合わせを行
う。蓄熱システムは、将来的には高効率の蓄電システムや水素変換で貯蔵し、バリエーションを
増やすことになるであろう。
一方、寒冷地(青森等)では、熱需要が相対的に高いので、コジェネレーションの効率を高め
られ有利に活用できると思われる。併せて、装置余剰熱や給湯廃熱の利用などを含め、融雪や給
水予熱に活用が可能と思われる。
引用文献
1)
空気調和・衛生工学便覧Ⅲ,空調衛生工学会編,オーム社
2)
天 然 ガ ス コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 計 画 ・ 設 計 マ ニ ュ ア ル 2005、 (社 )日 本 エ ネ ル ギ ー 学 会 編
日本工業出版
- 57 -
第3章
3.1
3.1.1
水素・電力・熱供給ネットワークモデルの展開
ネットワークモデルの普及に向けて
水素・電力・熱供給ネットワークモデルの課題
第2章の検討結果から、熱電比を大きくする、すなわち、電気の需要を減らし、熱の需
要を増やすことによってコージェネレーション導入の価値が高まることがわかった。すな
わち、寒冷地あるいは冬季の場合には、熱需要がより大きいのでコージェネレーションの
効 率 を よ り 高 め る こ と が で き る 。ま た 、コ ー ジ ェ ネ レ ー シ ョ ン 導 入 効 果 を 向 上 さ せ る に は 、
将 来 に わ た っ て 、LED( 発 光 ダ イ オ ー ド )等 の 電 気 消 費 量 を 減 ら す 技 術 開 発 、ヒ ー ト ポ ン
プ等の排熱を有効利用する技術開発を進めていくことが重要となってくる。
また、ネットワークの成立は、熱需要の大きな施設(例えば、スポーツ施設)の取り込
みや、積雪地域であれば融雪システムを構築するなどの、排熱の有効利用が図っていくこ
とが重要であると考えられる。
上記の技術開発およびネットワークの構築が進展し、さらに燃料電池技術の進歩によっ
て水素利用社会が到来した際には、既存のエネルギーが水素に置き換わることで、水素・
電力・熱供給ネットワークモデルが成立することになるであろう。
3.1.2 ネ ッ ト ワ ー ク モ デ ル 普 及 に 対 す る 課 題
高圧ガス保安法、消防法などの関連法規は、水素エネルギーの利用が考慮される以
前に制定されたもので、現行のままでは水素の利用には種々の制限がかかるので、一
般に普及させることは非常に困難である。安全との関わり合いがあるため、法規制を
緩和するためには根拠を示す必要があるなど難しい問題もあるので、各種の実験など
に よ る 安 全 性 の 検 証 を 行 い 、今 後 の 法 整 備 お よ び 一 層 の 規 制 緩 和 が 期 待 さ れ る 。ま た 、
将来的には水素のパイプライン輸送が有効と考えられるが、法規制面も含めてほとん
ど検討されていないため、法整備および技術基準の再点検が必要と考えられる。
水 素 需 要 が 増 大 す れ ば 、新 し い ビ ジ ネ ス と し て 水 素 関 連 産 業 の 発 展 が 期 待 さ れ る が 、
初期段階では、民間ベースだけで水素インフラを整備することは困難と考えられる。
そこで、水素導入段階では、国の補助事業として補助金の交付や優遇税制措置などの
新たな導入助成が必要であろう。
3.2
3.2.1
地域特性による展開の可能性
工場隣接地域
17年 度 の 調 査 研 究 報 告 書 で 記 し た よ う に 、 現 在 の 副 生 水 素 は 全 て 製 造 所 内 の 原 料 お よ
び燃料として有効に使用されており、エネルギーバランスが取られている。現状では、水
素流通には製造・出荷設備、貯蔵設備、輸送などへの高額な投資が必要となり、また供給
責任も伴うことから、パイプラインなどによって製造所外へ水素を輸送することは、付加
価値の高い水素需要かつ相当の補助政策がなければ成立しない。
し か し 、技 術 の 進 展 に よ る 水 素 製 造 貯 蔵 設 備 、輸 送 設 備 の コ ス ト ダ ウ ン 、お よ び CO 2 削 減
- 58 -
等の環境意識の社会的高まりによって、将来は水素需要が発生すると期待される。
2.4に お い て 紹 介 し た「 水 素 フ ロ ン テ ィ ア 山 口 推 進 構 想 」で は コ ン ビ ナ ー ト の 工 場 地 帯 か
ら周辺住宅地へパイプラインで水素を供給する実験的検討が進められており、今後も水素
利用社会を前提とした取り組みを継続し、データを蓄積していくことが必要である。
3.2.2
大都市圏
大都市圏は人口が密集しており、エネルギー密度が高いことよりマイクログリッド方式
による分散型電源システムが普及しやすいと考えられる。例えば、六本木ヒルズは、大規
模コジェネを導入し、一般電力事業者に代わって全電力を供給する特定電力事業を実施し
て 、 地 域 冷 暖 房 施 設 は 発 電 設 備 か ら の 排 熱 を 有 効 活 用 し て い る ( 図 3.2.2-1) 。 ( た だ し 、
この供給システムは「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」に基づき経済産業
大臣認定を受け、補助金の交付を受けている。)
マイクログリッドシステムの事例(六本木六丁目ヒルズ)
図 3.2.2-1
六本木ヒルズの事例
(出典:マルチユーティリティ研究会)
ま た 、現 在 、全 国 150地 点 を 越 え る 地 点 で 地 域 冷 暖 房 シ ス テ ム が 導 入 さ れ て お り 、特 に 東
京、大阪に多い。環境負荷低減、エネルギー供給の効率化の視点から、今後もこのような
地域熱供給事業が増加することが予想される。分散型電源システムの普及に熱の有効利用
が 大 き な か か わ り を 有 し て い る こ と よ り 、 地 域 冷 暖 房 の 普 及 が 進 む こ と が 期 待 さ れ る 1) 。
さらに、大都市圏では大規模地震が発生した場合に備え、避難所の整備が必要であると
されている。阪神大震災の教訓から、被災地における被災時の生活の安心・安全をエネル
ギー面から確保することは重要な課題であり、分散型エネルギー技術の役割が大きい領域
である。一定期間のエネルギー備蓄も必要であり、この点は最新の防災計画指針類に記述
されている。しかし、東京都区内の実際の広域避難所等を見ても水や食料の備蓄以外は十
分に対応できていないようである。そこで、都市再生機構による「防災公園」のイメージ
- 59 -
に、隣接する市街地再整備地区を統合したマイクログリッドを張り巡らせ、日常的には分
散型のコジェネ設備から公園内の夜間照明や市街地再整備地区の病院等にエネルギーを供
給する一方、被災地にはエネルギーの一部を防災公園に避難する人々に割譲するシステム
( 図 3.2.2-2)が 構 築 で き れ ば 、新 エ ネ ル ギ ー の 付 加 価 値 が 高 ま り 、事 業 と し て の 合 理 性 が
確保しやすいと考えられる。また、地域的なエネルギーの融通については、特定供給の仕
組 み ( 図 3.2.2-3) を 応 用 す れ ば 可 能 性 が 広 が る と 考 え ら れ る 。
マルチ・ユーティリィティの発想
(防災公園と分散型エネルギー・システム)
マイクログリッドシステム
(エネルギー備蓄)
図 3.2.2-2
防災公園と分散型エネルギーシステム
(出典:松下潤氏提供、防災公園イメージは都市再生機構)
- 60 -
分散型電源システムモデル
【特定供給の仕組み】
図10 完全自立型マイクログリッド
(システムモデル図)
被災時の電力需要供給
(シミュレーション図)
図 3.2.2-3
特定供給の仕組み
(出典:松下潤氏提供)
3.2.3
地方都市
大都市における災害時の安全性、コミュニティーの崩壊、高齢化問題、さらにエネルギ
ーの過剰消費による地球環境への負荷の増大等様々な問題に対する今後の都市開発のモデ
ル と し て 、 コ ン パ ク ト シ テ ィ が 提 案 さ れ て い る 2) 。 こ の 中 で 、 建 築 を 高 層 化 す る こ と で 緑
地スペースを確保し、これによって災害時の避難所の確保、車両規制による歩行者空間と
コミュニティー空間の創出をはかれること、インフラ面ではコージェネレーションシステ
ムの導入によるエネルギー使用量を低減できることを示している。このようなエネルギー
供給のクローズド化・自立化の考え方を、大都市だけでなく、地方都市にも適用していく
ことは有効であると考えられる。
今後、地方都市の人口減少が予想されおり、この状況は既存の都市空間の再編を進める
- 61 -
ことになり、職住が近接し、高齢者を含めた多くの人々にとって暮らしやすく、環境への
負荷が小さい都市構造をつくりあげる絶好のチャンスであることが指摘されている(国土
交通白書、コンパクトシティ)。
都市構造の変化はエネルギー需要分布の変化ももたらし、都市のコンパクト化(図
3.2.3-1)に 伴 っ て 、職 住 の 近 接 化 が 進 展 す れ ば 、熱 、電 気 お よ び 社 会 基 盤 維 持 エ ネ ル ギ ー
の減少が見込まれ、熱電負荷の平準化が進み、電力と熱を効率的に利用するコージェネレ
ーションを始めとした効率的なエネルギー供給システムの整備がより現実的になると期待
される。
図 3.2.3-1
都市のコンパクト化
(出典:国土交通省東北地方整備局ホームページ)
- 62 -
参考文献
1)
S M A R T 研 究 会 編 : 「 地 域 分 散 エ ネ ル ギ ー 技 術 」 , 海 文 堂 出 版 ( 2004) 発 行
2)
小 柳 秀 光 ほ か : 「 コ ン パ ク ト シ テ ィ 」 計 画 に 関 す る 研 究 ( そ の 1,2) , 日 本 建 築 学 会
大 会 学 術 講 演 梗 概 集 ( 1996.9)
- 63 -
第4章
4.1
18年度活動のまとめ
調査研究のまとめ
本調査研究は、近未来の水素エネルギーの普及を考えた、水素利用コミュニティの実現
化に関し、地域の特性に即した課題を抽出し、地域のエネルギー自立性を向上する実用可
能な社会基盤の構築を研究し、水素エネルギーの急速な地域的普及と定着の実現を図るこ
とを目的として検討を行ったものである。
本年度は、昨年度の調査研究結果を踏まえ、水素エネルギーの普及に積極的で、自然エ
ネルギー供給ポテンシャルと熱需要が多い寒冷地をモデル地域と想定し、「水素・電力・
熱供給ネットワークモデル」の検討を実施した。さらに、今後の水素を利用したネットワ
ークモデルの普及に向けた課題および他地域への展開における課題を検討・整理した。
1) 本 年 度 の 活 動 内 容
(1)国 内 地 域 に お け る 水 素 ・ 電 力 ・ 熱 供 給 ネ ッ ト ワ ー ク モ デ ル の 検 討
①水素・電力・熱供給モデルの検討:短期・中長期・超長期ネットワークモデルの
設定
②需要サイドの検討:各種建物の用途、規模、需要パターンの想定
③供給サイドの検討:各種供給設備の検討
④ネットワークにおけるインフラの検討:電力・熱の輸送および貯蔵方法の検討
⑤電力・熱の需給バランスの検討:基準地と寒冷地の負荷比較、コジェネ導入の検
討
(2)水 素 ネ ッ ト ワ ー ク モ デ ル の 課 題 整 理
① ネ ッ ト ワ ー ク モ デ ル の 普 及 に 向 け た 課 題: 技 術 開 発 の 方 向 性 、法 整 備 、規 制 緩 和
②他地域への展開:工場隣接地域、大都市圏、地方都市
2) 活 動 成 果
(1)水 素 ・ 電 力 ・ 熱 供 給 ネ ッ ト ワ ー ク モ デ ル の 設 定
水素・電力・熱供給ネットワークモデルを、仮定した水素エネルギーの普及段階に
応じて①短期、②中長期、③超長期に分けて設定した。電力源は、現状の技術段階で
の経済性、電力の安定供給の観点から、電力会社による系統電源をベース電力とし、
ピ ー ク 需 要 時 の 電 力 源 と し て 分 散 型 電 源 を 取 り 入 れ 、 ① の 短 期 は ガ ス エ ン ジ ン /デ ィ
ーゼルエンジン、②の中長期および③の超長期は燃料電池とした。また、インフラと
しては、①②③ともにマイクログリッドの整備を行う必要があり、これに加えて③で
は、分散型電源に水素を供給する水素配管の整備も必要である。さらに、①②③とも
に、排熱の有効利用を図る新たな技術を取り入れ、熱の用途としては上水予熱、吸収
式冷凍サイクルによる冷房などを考慮し、熱輸送はトランスヒートによるオフライン
式輸送を利用することとした。
(2)電 気 ・ 熱 の 需 給 バ ラ ン ス の 検 討
エネルギー負荷の異なる建物を組み合わせた電気・熱の需給バランスの検討では、
エネルギー源を共有することにより、大幅なエネルギーの供給源能力の削減が期待で
きることを示した。さらに、コジェネ導入効果を高めるには、電気による負荷を低減
することが有効であり、暖房や給湯以外に冷房についても熱源を利用することによっ
て年間を通じて有効になることを示した。特に、寒冷地では熱需要が相対的に高いの
- 64 -
で、ベースの集中電源の契約容量を少なくすることができ、コージェネレーションの
効率を高められること、併せて、装置余剰熱や給湯排熱などの融雪や給水予熱への活
用が可能であることを示した。また基準値(東京)の場合にも、夏期と冬期における
ベースの集中電源の契約容量を工夫することにより、総合効率の高い分散型電源シス
テムが組めることを示した。
4.2
今後の提言
1) 技 術 開 発 面 の 課 題
今後、水素・電力・熱供給ネットワークモデルの中心技術の一つはコージェネレーショ
ン技術であるが、コージェネレーションでは、発電量に倍する多量の熱エネルギーが供給
されるので、負荷側として、電気需要が小さく、熱需要が大きいネットワークに適用する
と、大きな効果を生むことができる。そこで、水素・電力・熱供給ネットワークモデルの
普及がよりスムーズにかつ効果的に進むためには、負荷側の電力消費が小さく、熱エネル
ギー消費が大きいシステム構成を実現できるような要素技術の開発が重要となってくる。
具体的には、電気消費量を低減する技術として例えばLED(発光ダイオード)、排熱
を有効利用する技術として例えばヒートポンプ等の技術開発を、マイクログリッド技術の
開発と並行して推し進めることを提案する。これらの技術進展により、エネルギー需要の
増加が抑制され、コージェネレーションの導入効果が向上し、燃料電池技術の進歩もあい
まって、水素エネルギー社会の実現性が早まる可能性がある。また、現状の水素利用に関
す る 技 術 レ ベ ル か ら 判 断 し て 、直 ち に 水 素 エ ネ ル ギ ー の 導 入 を 目 指 す こ と は 困 難 で あ る が 、
現在利用可能なエネルギーによってマイクログリッドの構築を推進することは、水素利用
社会が到来した際に、既存のエネルギーが水素に置換することで水素・電力・熱供給ネッ
トワークモデルが成立することになるので重要と考えられる。
2) 制 度 面 の 課 題
周辺を取り巻く課題について言えば、現行の関連法規は、水素エネルギー利用が考慮さ
れ る 以 前 に 制 定 さ れ た も の で あ り 、現 状 で は 水 素 利 用 に 様 々 な 制 限 が か か る の で 、法 整 備 、
一層の規制緩和および技術基準の再点検が必要である。
また、水素導入段階では、関連インフラ整備が必要となり、民間だけでは困難と考えら
れるため、国の補助金の交付や優遇税制措置などの導入助成が必要である。これらの施策
の一部はすでに取り組みが開始されてはいるが、今後もこれまで以上の取り組みが求めら
れる。国の補助金の財源としては、揮発油税の使途の弾力的な利用も含めた検討を望みた
い。
大都市圏における都市再開発や地方都市におけるコンパクト都市の整備など、今後の都
市再生は、エネルギー需要の増加も伴うため、分散型エネルギーシステム導入のチャンス
でもある。このような都市再生事業の計画検討において、本調査研究の成果が活用される
ことを期待する。
- 65 -
添付資料
青森県コジェネシステム及び柳町融雪システム他視察報告
「地域産業活性化をめざした水素エネルギー供給システム
実現化の調査研究」作業部会
青森調査 報告書
日
時:平成 19 年 1 月 23 日~24 日
場
所:青森県コジェネシステム及び柳町融雪システム(23 日)、青森県工業総合研究センタ
ー及び大矢建設工業バイオマスプラント視察(24 日)
参加者:田辺、仙名、久保、竹田、合田(記)
(敬称略)
相手方:青森県(高坂副参事、石戸、佐々木グループリーダー)
工業総合研究センター(アブリティ部長、赤平、葛西、各田)
大矢建設(大矢社長、高田)
1.青森県コジェネシステム及び柳町融雪システム視察
●概要説明等(13:45~15:30)
佐々木グループリーダーよる概要説明ののち現地を視察した。
県で進めているコジェネシステムは東北では初めての ESCO 事業であり、15 年契約
で四半期ごとにベースラインを見直すこととしている。視察状況は別紙-1 のとおり。
【質疑応答】
・電力会社との受電契約は?
→夜間 10 時以降は受電を中心とし、日中はコジェネベースで 70%程度の電力を賄っ
ている。深夜電力料金は安く、日中のベース電力契約を抑える契約である。
・融雪利用の目的は?
→青森では降雪量が日本一、二を争うほど多く、ロードヒーティング等の対策を実施
してきているが、コジェネの排熱利用として、利用されにくい比較的低温の熱を利
用した融雪システムを試験的に導入した。本事業は国交省の補助の部分であり、本
体は NEDO の補助事業である。メイン配管部は 65℃の温水を循環させ、ロードヒ
ーティング部はこの温水から不凍液に熱交換して循環させている。
・配管の埋設深度は?
→凍結深度は 70cm 弱であるが、市道部は設計上 120cm 以上の被りを取る事とされ
ている。また国道 4 号線横断部は、種々の埋設物を避けるため、深度6mの深さの
位置に推進管工法で埋設した。不凍液のロードヒーター部は、地表面下 10cm であ
る。
・屋外設置の制御部分の温度対策は?
→当初建屋方式も考えたが、景観に配慮した設計とするため、屋外に箱置構造とした。
制御機器は青森の気象条件の温度変化の範囲では問題ない。
●意見交換(15:00~17:30)
石戸氏より青森県エネルギー産業振興戦略についての説明
仙名氏より ENAA 本作業部会で検討状況を説明
【意見交換内容】
・コジェネ検討用のデータのうち、現在エン振協で入手しているデータは標準的な例で
あり、寒冷地特有のデータではないので、青森県のデータを早急に入手して県から送
付する。
・本計画では、分散型電源の検討手法について論じ、実際に具体的に検討する場合に役
立つように検討フロー等を中心に纏められると良いのではないか。
・分散型をネットワークで繋ぐ場合には、負荷平準化のメリットが出るように同一グル
ープではなく負荷タイプの異なる種々のグループを組合わせて考えることも重要で
ある。
・現状では、コジェネベースで、系統受電をピーク対応と考えるのは無理がある。深夜
電力は安いので、石油高騰もあって太刀打ちできないだろう。やはり、契約電力のベ
ース電力を抑え、負荷変動分をコジェネで吸収させるのが一般的であると思う。また
夏期の熱利用に関しても需要が問題となる。
・燃料電池の実現性としては SOFC を中心としたものが有力と考えられる。
●その他
石戸氏より以下のお願いがあった。
①「むつ小川原・エネルギー産業振興フォーラム」の開催について
②あおもり水素エネルギー創造戦略推進会議の設立について
2.青森県工業総合研究センター視察
●概要説明等(9:15~9:30)
アブリティ部長より概要説明があった。
新エネルギー技術研究部は 2 年ほど前にできた新しい部であり、バイオガスを使用で
きる燃料電池(電極素材)の研究や燃料電池の排熱を利用した暖房・融雪利用の研究を
行っている。この他、光触媒による水素ガス等の混合ガス発生触媒についての研究も実
施している。視察状況は別紙-2のとおり。
●現地調査(9:30~10:30)
LPG を改質して使用する燃料電池の暖房・融雪実験設備を見学した。燃料電池で発
生する熱を高純度の水に熱交換し、さらに床暖房やロードヒーティング用に不凍液に熱
交換した設備である。燃料電池を用いた融雪システムは、発電と熱利用を合わせた総合
効率が 80%程度期待でき、電気や温水を用いたロードヒーティングの効率 30%以下に
比べ有効と考えられるとのこと。
その他、燃料電池の電極に関する研究、光触媒を用いた水素等の混合ガス発生の実験
について紹介を受けた。
3.大矢建設工業バイオマスプラント視察
●現地調査(11:00~12:00)
大矢社長より設備の説明があった。
大矢建設は産業廃棄物処理業者であり、解体業を主体とするが、この廃材や廃プラを用
いたバイオガスの発生プラントを作り、実験を行っている。視察状況は別紙-3のとおり。
以
上
別紙-1 現地調査状況写真
(青森県コジェネシステム及び柳町融雪システム視察)
概要説明
ガスエンジン(燃料:A 重油)
温水用の熱交換機
温水送水管の建屋出口部
ロードヒーティング部
センサー類
(黄色ブロック挟んで幅2m区間)
(左:水分センサー、右:温度センサー)
1 区画
循環ポンプ小屋
ロードヒーティング部
屋外コントロール箱
不凍液への熱交換器(青色)
制御・モニタリングパネル
同左(拡大)
別紙-2
現地調査状況写真
(青森県工業総合研究センター視察)
青森県工業総合研究センター
実験建屋
融雪パネル(コンクリート部)
床暖房
注)燃料電池本体は共同研究事業の撮影禁止
別紙-3
現地調査状況写真
(大矢建設工業バイオマスプラント視察)
破砕機
破砕された廃材
バイオガス製造装置
同左
スターリングエンジン
ガス貯蔵タンク(1MPa 対応)
書
名
平成 18 年度
地域産業活性化をめざした水素エネルギー
供給利用システムの実現化の調査研究報告書
発
行
平成 19 年 3 月
財団法人
エンジニアリング振興協会
地下開発利用研究センター
(GEC:Geo-space Engineering Center)
〒105-0003 東京都港区西新橋 1-4-6
TEL 03-3502-3671
印刷・製本
株式会社
伸
FAX 03-3502-3265
榮
禁無断転・掲載