研究紀要第246号 F9−01 中学校における アンガーマネージメントの試み 平 成 15 年 2 月 岡山県教育センター ま え が き 岡山県教育センターでは,教育に関する専門的,技術的事項の調査研究,教育関係職員の研修,教 育相談,教育情報の収集・蓄積・発信等の諸事業を行っております。特に,調査研究におきましては, 国の教育改革の動向と本県の教育課題を踏まえ,幾つかの研究主題を設定し,共同研究・個人研究を 行い,その成果の提供と普及に努めております。 完全学校週5日制の下,新学習指導要領は,小・中学校で平成14年度から全面実施され,高等学校 では平成15年度から学年進行で実施されます。「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し,児童生 徒に豊かな人間性や自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成することがねらいとなっていま す。特に,「心の教育」の充実と「確かな学力」の向上は教育改革の重要なポイントとされ,その実 現に向けて,各学校で新しい学校づくりの取り組みが推進されています。 文部科学省の「生徒指導上の諸問題の現状について(概要)」(平成14年12月)によりますと,平 成13年度の学校内における暴力行為の発生件数は近年2番目の多さとなっています。学年別の加害児 童生徒数では,全体の74%を中学生が占めており,暴力の防止をねらいとした教育が求められる現状 が,特に中学校において顕著に現れております。 これまで当教育センターでは,心の居場所のある学級づくり,心の教育を行うための教員研修,教 育相談の推進,望ましい人間関係の育成,ピア・サポート等に関する研究を通して,具体的な教育方 法として構成的グループエンカウンター,ソーシャルスキル教育,リラクセーション等を用いた予防 的,開発的な心理教育の在り方を示してまいりました。 こうした流れに沿いながら,本研究では「怒りの感情」に焦点を当て,怒りに適切に対処できる生 徒を育てる授業の在り方を示しております。 御高覧の上,御意見,御批判をいただくとともに,本研究の成果を日々の教育実践のために御活用 いただければ幸いです。 終わりになりましたが,この研究を進めるに当たり,御協力をいただきました協力委員の先生方並 びに関係各位に厚くお礼申し上げます。 平成15年2月 岡山県教育センター所長 門 野 八 洲 雄 目 次 研究の要旨………………………………………………………………………………………………………1 Ⅰ はじめに……………………………………………………………………………………………………2 Ⅱ 研究の目的…………………………………………………………………………………………………2 Ⅲ 研究の内容 1 アンガーマネージメントの定義 (1) アンガー(anger)…………………………………………………………………………………3 (2) マネージメント(management)……………………………………………………………………3 (3) アンガーマネージメント……………………………………………………………………………4 2 アンガーマネージメントに関する先行研究 (1) Life Skills Training………………………………………………………………………………4 (2) Anger Management……………………………………………………………………………………5 (3) セカンドステップ……………………………………………………………………………………5 (4) Peer Mediation と Conflict Resolution ………………………………………………………5 (5) 包括的スクールカウンセリング……………………………………………………………………6 3 本研究におけるアンガーマネージメント・プログラム……………………………………………7 4 分析方法 (1) プログラムの計画と授業の内容について…………………………………………………………7 (2) プログラムの効果について…………………………………………………………………………8 5 授業実践 (1) 実践記録1(A中学校)……………………………………………………………………………8 (2) 実践記録2(B中学校)……………………………………………………………………………13 6 結果 (1) プログラムの計画と授業の内容について…………………………………………………………16 (2) プログラムの効果について…………………………………………………………………………16 7 考察 (1) プログラムの計画と授業の内容について…………………………………………………………17 (2) プログラムの効果について…………………………………………………………………………18 (3) 指導の在り方について………………………………………………………………………………19 Ⅳ 成果と課題…………………………………………………………………………………………………19 Ⅴ おわりに……………………………………………………………………………………………………19 巻末資料:アンガーマネージメントの授業案,ワークシート,振り返りシート………………………21 研究の要旨 中学校における アンガーマネージメントの試み アンガーマネージメントは,人間にとって自然な感情である「怒り」と上手に 付き合い,自己コントロールできるようにすることを目指した教育方法です。 研究の方法 国内外のプログラムから 三つの構成要素 感情を理解すること 怒りを理解すること 怒りに対処すること 授業案の作成 三次計画6時間で構成 授業実践 成果と課題 このプログラムによって生徒は ○ 相手の感情に気を付けて話すようになる ○ 怒りの感情について理解が進む ○ 怒りをコントロールする方法が身に付く より効果的な授業にするには ○ 動機付けに工夫する ○ 生徒の実態に応じた内容を選択する ○ 継続した取り組みで定着化を図る (巻末資料) アンガーマネージメントの授業案,ワークシート,振り返りシート 研究の概要 本研究は,中学校においてアンガーマネージメントの授業を試み,その成果と課題を 示し,指導の在り方を検討したものである。予防的,開発的な授業を三次計画6時間で 実施したところ,怒りの特徴の理解やコントロールの仕方に一定の成果が見られたが, 怒りをはじめとする感情の理解と表現,生徒の動機付け,学習したスキルの定着化が課 題となった。 キーワード アンガーマネージメント,怒り,教育相談,教育方法,攻撃性,暴力 Ⅰ はじめに 平成14年12月の文部科学省の発表ア) によれば, 平成13年度に暴力行為が学校内で発生した中学校の, 全中学校数に占める割合は33.7%である。岡山県の て,人間関係づくりを促進する構成的グループエン カウンター(以下「SGE」と言う。)やグループ ワークトレーニングが行われており,研究論文も数 多く発表されている。しかし,これらの教育方法は 怒りの源となり得る疎外感や不安感,不満,ストレ 場合 1) は中学校171校中103校において延べ857件の 暴力行為が発生しており,60.2%の中学校で暴力行 為が発生していることになる。前年度比で件数は微 減しているものの,依然として高い水準である。暴 力行為の形態は,「教師の胸ぐらをつかんだ」等の ス等を軽減するといった効果は期待できるものの, 生徒が怒りをコントロールできるようになることを 直接ねらった教育方法とは言い難い。 怒りをコントロールするスキルをターゲットにす れば,ソーシャルスキル教育が一つの方法となり得 対教師暴力が161件,「同じ学校の生徒同士のけん か」等の生徒間暴力が421件,「ドアを壊す」等の器 物損壊が272件,「偶然通りかかった人と口論の末け がをさせる」等の対人暴力が3件で,いわゆる「キ レる」現象に代表される,怒りをコントロールでき る。しかし,ソーシャルスキル教育は生徒の行動面 に働き掛けて対人関係スキルの向上を図るものであ る。怒りをコントロールできるようになるためには 「感情の発達」や「怒りの理解」等が大切で,行動 面だけでなく認知面にも働き掛ける必要がある。 ないがために発生した暴力行為に,多くの教師が苦 慮していることがうかがえる。 一口に「怒り」と言っても,何に怒っているのか が違うので,ずいぶんと気持ちは異なるはずである。 例えば,思いどおりにいかない状況にいらだってい 本研究では,このような課題に配慮した教育方法 として,アンガーマネージメントを試みた。アンガ ーマネージメントは暴力に及ぶ主感情である「怒 り」に特化した教育方法であるが,我が国の中学校 における実践報告はまだ少ない。背景となる理論や, る,うまくできない自分に腹を立てている,相手が 悪いので仕返ししたいなど,「怒り」は様々である。 ところが,生徒たちは「むかつく」とか「うざい」 とか,単純な言葉で様々な感情を表現しようとする 傾向がある。対人関係において様々な感情を交感し プログラムについての先行研究はあるが,具体的な 授業の在り方や指導上の工夫についてはこれからの 蓄積が求められるところである。 なお,アンガーマネージメントは予防教育だけで なく,その場での対応(危機介入)の在り方や事後 合った経験の乏しさが推測されるが,これでは浅い 感情交流しかできず,相手の気持ちになって物事を 考えることが難しくなってしまう。その結果,自分 の本当の感情を伝えられない,理解してもらえない 状況に陥り,その不満感や不安感,不快感などが 指導の在り方をも含んだ教育方法である。本研究は このうちの予防教育における試みを実践した。 「怒り」を招くのだと思われる。しかもその「怒 り」もうまく処理されないので,最悪の場合「キレ る」ことになってしまう。 こういった事態を未然に防ぐための教育方法とし 中学校におけるアンガーマネージメントの授業案 を作成し,その成果と課題を検討し,今後の指導の 在り方を探る。 Ⅱ 2 研究の目的 Ⅲ 研究の内容 攻撃性誘発刺激 1 アンガーマネージメントの定義 (1) アンガー(anger,怒り) 怒りとはどんな感情かを定義することは案外難 攻撃反応 直接的問題解決反応 無気力 逃避反応 反応的攻撃 し い 。 そ れ は , 一 般 的 に は感情としての怒り (anger),態度としての敵意(hostility),行動 としての攻撃(aggression)のいずれをも怒りと 呼んでいるからである。 アメリカのスクール・サイコロジストであるア ン・メイル(2002)2) は,怒りを「軽いイライラか ら激怒まで,激しさに多様性が見られる情緒的状 態」と定義している。怒りの誘引には,自分があ る状況において選ぶ思考や行動といった内的誘引 と,いじめの被害に遭うといった外的誘引とがあ 道具的攻撃 表出性攻撃 不表出性攻撃 ( 言語, 身体) ( 敵意) 主張性など 図1 攻撃性誘発刺激に対する反応の分類 (山崎,2 0 0 0 改) 情報の収集 るとし,怒りの表現手段として,「攻撃的行動」 「主張的行動」「受動的行動」を指摘している。 そして,主に学級での行動に問題を持つ子どもた ちを対象に,怒りを制御して望ましい対処ができ るような教育を行っている。 解釈 反応の探索 相手の意図についての情報を集めるために表 情に注意を向ける 相手の行為の意図を推測する 問題解決のために攻撃反応や向社会的反応を 探索する 反応の決定 性格と行動という心の特性を教育する「フィー クス」というプ ロ グ ラ ム を 提 唱 し て い る山 崎 (2000)3) は,健康領域の研究の影響で細分化さ れた攻撃性の概念を見直し,攻撃を誘発する刺激 を受けた際の反応を図1のように分類している。 実行 結果の評価 この図の「攻撃反応」「直接的問題解決反応」「無 気力逃避反応」は,それぞれアン・メイルが指摘 した「攻撃的行動」「主張的行動」「受動的行動」 に相当する。なお,「攻撃反応」の下位概念であ る「反応的攻撃」は攻撃誘発刺激に直接駆られて 実行した反応の結果が自分や他人に及ぼす影 響について考えながら評価する 図2 攻撃行動に至る情報処理過程 (山崎,2 0 0 0 改) 本研究では,怒りをアン・メイルの言う「軽い 生まれる攻撃で,そのうちの「表出性攻撃」は, 怒り感情を時間をおかずに言語的あるいは身体的 に表出することである。もう一つの「不表出性攻 撃」は敵意とも言われ,怒り感情を持っていても 表現しないという特徴があり,これが非合理に処 イライラから激怒まで,激しさに多様性が見られ る情緒的状態」と定義し,その表現手段としての 攻撃行動(攻撃反応)の中に,山崎の言う「表出 性攻撃」と「不表出性攻撃」があるととらえる。 理されたものが「キレる」という現象である。 「道具的攻撃」は,明らかな攻撃誘発刺激がない 場合にほとんど怒り感情なしに出現することもあ り,目標達成のために攻撃反応を道具として利用 するという意味である。 (2) マネージメント(management,管理) マネージメントと類似した表現にコーピング ( coping ) が あ る 。 コ ー ピ ン グ は , stress coping や anger coping,coping with anger と いった表現をされることが多いが,ネガティブな さらに山崎はドッジ(Dodge,K.A.)の社会的 情報処理モデルを基に攻撃性誘発刺激を受けてか ら攻撃行動に至るまでの情報の処理過程を説明し ているが,それは図2のように表せる。 情動反応に対処し,軽減するための様々な試みと いう意味である。これに対しマネージメントは, 字義的には管理,統御,支配といった意味を持つ が,coping より少し広い概念だと考える。 3 (3) アンガーマネージメント (1)(2)に基づいてアンガーマネージメントを定 義すると,次の三つの意味があると考えられる。 第一に「怒りを誘発する刺激に対するマネージ メント」という意味がある。怒りを誘発する刺激 の中に Life Skills Training (以下「ライフス キル・トレーニング」と言う。)がある。 ライフスキル・トレーニングは,児童生徒の問 題行動を減らし,学力を付けさせ,責任感ある市 民を育成するための教育プログラムの一つとして, を制限するよう環境に働き掛けることも,アンガ ーマネージメントにおける対応策の一つである。 第二に「怒りを誘発する刺激を認知(解釈)し, 評価することに対するマネージメント」という意 味がある。相手の感情を推測したり,自分の中に アメリカのカンザス州ブルーバレーの学校区内す べての小学校から中学校にわたって実施されてい る。中学1年生の教師用手引きの目次は表1のよ うになっており,そのうちの「怒りに対処するこ と」のプログラムは表2のようになっている。 ある感情の種類や程度を理解したりすることに関 する介入方策などが相当する。第三に「コーピン グスキルの獲得や修正を目的としたマネージメン ト」という意味がある。 本研究では,アンガーマネージメントは狭義に 表1 ライフスキル・トレーニング・プログラム № 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 13. 14. 15. 16. 17. 18. 19. はこれらの意味を持つと考える。これらは自分の 中にある怒りをどのようにコントロールするかと いう意味合いが強いが,更に広義にアンガーマネ ージメントをとらえるとき,他者の感情としての 怒りをどのようにマネージメントするかという意 味もある。例えば,いわゆる「キレた」状態にあ る生徒を,教師がどのようにマネージメントする かといったことである。これもアンガーマネージ メントの持つ大切な側面であるが,本研究では中 心テーマとしては扱わない。 いずれにしても,アンガーマネージメントの目 的は単に怒りを抑制することではなく,人間にと って自然な感情である怒りと上手に付き合い,自 己コントロールできるようにすることと言える。 内 容 序論 実行ガイドライン 教師のための背景的情報 自己像と自己改善 決定すること 喫煙:神話と現実 喫煙と生体自己制御 アルコール:神話と現実 マリファナ:神話と現実 広告 暴力とメディア 不安に対処すること 怒りに対処すること コミュニケーション・スキル ソーシャル・スキル(A) ソーシャル・スキル(B) 自己主張 葛藤対立の解消 参考 かっ 表2 怒りに対処すること № 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 2 アンガーマネージメントに関する先行研究 Web上には「アンガーマネージメント (Anger Management)」や「暴力予防( Violence Prevention)」をキーワードとした実におびただ しい数のプログラムがある。その中から,アメリ カ等の学校園で採用されている四つのプログラム を概観してみたい。 (1) Life Skills Training コロラド大学の暴力予防・研究センター(The Center for the Study and Prevention of 内 容 セッションのゴールと目的 導入 怒りを感じること 怒りの定義 怒りの身体的影響 怒りをコントロールする理由 怒りを処理することと効果 怒りをコントロールするテクニック 要約 語彙 い 表2の8「怒りをコントロールするテクニッ ク」では,具体的に次の四つを挙げている。 ① 警告信号:怒りそうな状況になると頭の中で点 滅する信号をイメージする。 イ) Violence, CSPV)が Blueprints と呼ばれるプ ロジェクトで有効性を検証した 11 のプログラム は,思春期の暴力犯罪,攻撃性,怠学,薬物乱用 などに効果があるという。この 11 のプログラム ② 4 10 カウント:怒りがわいてきそうなとき,深 呼吸してゆっくり 10 数える。 ③ 言い聞かせ:怒らないように,自分で自分に言 い聞かせる。 ④ リフレーム:目の前の状況に対する見方を変え る。そのための質問を自分で自分にする。 表3のとおりである。 表3 セカンドステップのねらい № 1. (2) Anger Management アメリカ・インディアナ州教育政策センターが 実施した「安全で反応的な学校プロジェクト」 (The Safe and Responsive Schools Project) 2. 3. で は , ア ン ガ ー マ ネ ー ジ メ ン ト ( Anger Management ウ))に関する幾つかのプログラムを紹 介している。その概要は次のようになっている。 ① 他者を理解する能力を育てるために,「人の身 になって考える」ことを学ぶ。 (4) Peer Mediation と Conflict Resolution ピア・サポートは,子どもたちが他の子どもた ちを援助できるようになることを目指したプログ ラムとして,近年注目されてきている。 小・中学校におけるピア・サポートの展開につ いて実践的に著されたガイドブックとして,Kids ② 自分が怒ったとき,情緒や身体がどうなるかを 学ぶ。 ③ セルフ・コントロールを学ぶために,リラクセ ーションのテクニックを知る。 ④ 対立や葛藤に対応する具体的な方法(例:「ス トップ! 考えろ! 何をしなければいけない か?」Stop! Think! What should I do?)を学ぶ。 そして,以下の問題解決スキルを練習する。 ア 問題を確認する イ 解決の選択肢を考える ウ エ オ 内 容 相互の理解 自分の気持ちを表現し,相手の気持ちに共 感して,互いに理解し合い,思いやりのある関 係をつくること。 問題の解決 困難な状況に前向きに取り組み,問題を解 決する力を養って,円滑な関係をつくること。 怒りの扱い 怒りの感情を自覚し,自分でコントロールす る力を養い,建設的に解決する関係をつくるこ と。 それぞれの解決方法の結果を考える 効果的な反応を選ぶ 結果を評価する なお,プログラム(1)(2)の背景には,銃や麻薬 Helping Kids4) が あ る 。 こ の 中 に 対 立 の 調 停 (Peer Mediation) や 対 立 の 解 消 ( Conflict Resolution)に関する項目があるが,悪者を作ら ず win-win(両者が勝ち)を促進するところに特 徴がある。具体的な内容については日本語訳を著 したバーンズ亀山ら(2002)5) に詳しい。 この,対立の解消や怒りの処理等について,別 に詳しく著されているのが,Creative Conflict Resolution6) である。指導者のためのトレーニン グマニュアルによれば,プログラムの構成は表4 のようになっており,アンガーマネージメントが 扱われている。 「対立の理解」によると,対立は肯定的でも否 定的でもなく,また,勝ち負けを争うものでもな によって深刻な事態を招くのを防止するという, アメリカ教育界の喫緊の課題がある。 (3) セカンドステップ 「セカンドステップ」プログラムは,米国ワシ 表4 創造的対立解消のプログラム ン ト ン 州 に あ る NPO 法 人 : Committee for Children (1978 年設立)によって,虐待を防ぐプ ログラムである「ファーストステップ」に続いて 開発された。このプログラムは,子どもが健全な 対人関係を育 み,様々な場面で問題解決力を養 № 1. 2. 3. 4. 5. っていけるようレッスンが計画されている。日本 では現在,日本版「セカンドステップ・コース1 (4−8歳向け)」エ) が出版され,普及活動が行 われている。それによると,レッスンのねらいは, 6. 7. はぐく 5 内 容 序論 教師,カウンセラー,トレーナーへ 対立の理解 対立の様式 三つのスキル 交渉 調停 アンガーマネージメント いじめと暴力 注意書き 高 ① サメ 怒りのサイクル 次の五つの段階について,心と身体に何が起き ているかを話し合い,怒りの増加に反比例して判 断力が減少することを学ぶ。 ア 引き金の段階 フクロウ 主張性 イ ウ エ オ キツネ エスカレーション段階 危機段階 回復段階 落ち込み段階 気分温度計 ② カメ テディベア 低 協調性 図3 提示された状況にどの程度の怒りを感じるかを 話し合い,同じ状況でも人によって感じる程度が 異なることを学ぶ(図4)。 高 対立状況における反応のタイプ い。対立中は,問題に厳しく,人に優しくあらね ばならない。そして,対立に対してどのように反 だれかが私にちょっかいを出す時……( )℃ だれかが私の悪口を言う時……………( )℃ だれかが私をいじめる時………………( )℃ だれかが私のうわさを広げる時………( )℃ だれかが私の告げ口をする時…………( )℃ その他(自分で考える)………………( )℃ 応するかは,責められることのない個人の選択で ある。 「対立の様式」によると,対立状況に接したと きの人の反応は図3の五つのタイプに大別できる。 ○ 相手を(言葉や腕力で)負かして我を通す “サメ” ○ 首を引っ込めてかかわろうとしない“カメ” ○ 自分を主張しないで相手に合わせるだけの “テディベア” ○ 合意まで至らずに妥協してしまう“キツネ” ○ 100 爆発! 80 怒る 60 イライラ 40 不満 20 悲しい 0 問題ない い 相手も自分も活かして合意し,創造的な解消 をしようとする賢い“フクロウ” 表4の5「三つのスキル」のうち, 「交渉」は 聞く,話す,説明することで,まず相手の言い分 を傾聴することを強調している。「調停」は対立 図4 気分温度計 ③ 状況・反応・結果 どんな状況で怒りを感じ,どんな反応をしてど んな結果を招くかを話し合い,怒ることが問題な する二人を調停するためのスキルで,調停のため の公式を示して様々な場面の練習を求めている。 「アンガーマネージメント」は,調停をするとき に起こり得る怒りを理解し,対処する方法を学ぼ うというものである。したがってここでは,自分 のではなく,怒った結果どう行動するかが問題で あることを学ぶ。 (5) 包括的スクールカウンセリング 以上,四つのプログラムを概観したが,これら 自身にわいた怒りと他の人によって表された怒り の双方を扱っている。 アンガーマネージメントのプログラムは,次の 3段階である。 のプログラムはいずれも学級や学年のすべての児 童・生徒を対象にした予防的,開発的なものであ り,学校心理学(石隈,1999)で言うところの 「一次的援助サービス」7) に当たる。しかし,学 6 校や学級を対象とした予防教育だけでなく,怒り をコントロールしにくい傾向のある生徒に対する 「二次的援助サービス」や,いじめや暴力を度々 繰り返す生徒に対して必要に応じて関係・専門機 関と連携して行う「三次的援助サービス」も必要 どうやって自分の怒りをコントロールするか, どうすれば自分も相手も傷付けないように表出 できるか,など。 また,授業として行うときの手法としては,ソ ーシャルスキル教育(以下「SST」と言う。) である。この点について本田(2002)8) は,包括 的スクールカウンセリングの立場からアンガーマ ネージメントの一連の流れを①啓発教育,②危機 介入,③個別対応プログラムの3期に分けて整理 している。そして,①では「怒りの理解」「感情 の手法(インストラクション→モデリング→リハ ーサル→フィードバック→ホームワーク)のほか に,SGEやロールプレイングなど,心理教育の 手法を用いることが適切と思われた。 これらを柱として,中学校におけるアンガーマ の発達」「対立解消スキル」「アサーション」等を 学級活動,道徳,教科の時間を通して実践するこ とを,②ではいじめや暴力現場での教師の対応の 在り方を,③ではいじめや暴力を繰り返す生徒へ の怒りのコントロールプログラムや,対立してい ネージメント・プログラムを試作した(表6)。作 成に当たっては,研究協力校の学級の実態や,す でに年間の教育課程が決定しているということ等 を考慮して,以下の基準を設けた。 ○ 予防的,開発的な内容であること。 る者同士の対立解消ステップを,それぞれ提唱し ている。 ところで,より効果的な予防プログラムにする ためには,今生徒たちはどんな状態にあって,ど のようなプログラムが必要かというアセスメント ○ ○ ○ の問題も浮かび上がってくる。例えば本田(前掲 書)は,怒りの表現方法のタイプとそれぞれへの 対応例を述べている(表5)が,生徒がどのタイ プなのかを見分ける方法は明確でない。また,怒 りが表現されてどのタイプかが分かる前に実施す した指導のための補足を授業案に付した。 学級担任が指導できるものであること。 心理教育の手法を用いること。 数時間の授業でできる計画であること。 なお,心理教育の手法としてはSGE,SST, ロールプレイングを用い,授業の進め方等を説明 表5 怒りの表現方法と対応の例 表現方法 表現型 本研究におけるアンガーマネージメント・プロ グラム 2の(1)∼(5)で概観したアンガーマネージメン トのプログラムから,予防的,開発的なプログラ ムには次の三つの構成要素が必要と思われる。 慢性型 ︵ネガティブ思考 でいつも不快感︶ 3 激情型 ︵突然爆発︶ るのが予防的,開発的教育であるという考えもで き,その場合,プログラムはどのタイプにも適し た内容を包含するよう,認知面,感情・心理面, 行動面のそれぞれから構成することになる。 ○ 感情を理解すること 自分にわいた感情は,何(だれ)に対する, どんな,どの程度の感情か,また,相手の表情 等から,相手はどんな感情をどの程度抱いてい るか,など。 放出タイプ ため込みタイプ (目に見える) (見えにくい) ・ 「きっかけ外し」 ・リラクセーション ・リラクセーション ・怒りは自然な感情で適 ・きっかけの認知的理解 切に表現可能という認 ・感情の分化 知的理解 ・感情の質,レベル,方 ・怒りは自然な感情で適 向の整理 ・適切な表現方法の獲得 切に表現可能という認 知的理解 ・適切な表現方法の獲得 本田(2002)から作成 4 分析方法 (1) プログラムの計画と授業の内容について ○ 怒りを理解すること 怒りはどんな状況で感じやすいか,どんな感 情か,怒るとどうなるか,など。 ○ 怒りに対処すること 生徒に毎時記入させた振り返りシートの5段階 評定と,実践記録の記述内容から,プログラムの 計画の在り方,授業で用いた演習内容及び指導の 在り方を検討する。 7 表6 アンガーマネージメント・プログラム 計画 授業の内容 第1 時 第一次 目標 <感情を受け止めよう> ○ 表情,しぐさ,声,状況な 「見えないキャッチボール」 どから,相手の感情を推し量 「あなたの気持ちは???」 る 様々な感情 ○ を知ろう 人によって感じ方が違うこ <感情に焦点を当てて聞こう> ○ 「伝わってきたあなたの気持ち」 第1 時 第2時 <怒りがどんな感情かを知ろう> ○ 自分が怒りを感じた状況, 程度に気付く <怒りがどんな感情かを知ろう> ○ 「怒りの火山」 怒りとはどんな感情かを知 る ○ の感情を知 ろう 相手の感情に焦点を当てた 聞き方を学ぶ 「私が怒りを感じたとき」 (ホームワーク) 自分の怒り 感情カード 振り返りシート とを知る 第2時 第二次 準備物 せりふカード 振り返りシート ホームワークシ ート2-1 ワークシート2-1 振り返りシート 怒ると身体感覚がどうなる かを知る 第3時 <自分の怒りの特徴を知ろう> ○ 「怒りの温度計」 自分の怒りの特徴(対象, ワークシート2-2 程度,怒りが起きる状況,表 振り返りシート 出方法)に気付く 第1時 <怒りの感情をコントロールしよ ○ う> 第三次 怒りの感情をコントロール 振り返りシート する方法を学ぶ 「キレないテクニック」 怒りの感情 第2時 をコントロ 「DESC法」 <怒った気持ちを表現しよう> ○ 非攻撃的な自己主張ができ る表現の仕方を身に付ける ールしよう ○ 大切なのは,怒らないこと DESC法説明 シート 振り返りシート ではなく,怒りを感じてどう するかであることを知る (2) プログラムの効果について 実践記録の「学習の定着」等の記述内容を基に も事後処理的な対応であった。生徒相互の人間関 係をより望ましいものに育てるとともに,トラブ ルの予防や再発防止をねらった取り組みも必要だ 検討する。 と感じた。そこで,学級活動の時間を利用してア ンガーマネージメントの授業に取り組んだ。 ② 授業実践 5 授業実践 表6のプログラムに基づいてアンガーマネージ メントの授業を実践した2事例を載せる。いずれ ア 第一次第1時 <感情を受け止めよう> 「見えないキャッチボール」「あなたの気持ち も中学校第2学年での実践記録である。 (1) 実践記録1(A中学校) ① は???」(6月5日) (ア) 指導者として配慮したこと 学級の実態 男子 21 人,女子 15 人。ほとんどの生徒が明る 初回なので,アンガーマネージメントの効果に ついて生徒が納得できるように説明を工夫した。 く素直で,落ち着いた学校生活を送ることができ ている。しかし,感情のままに発した言葉や態度 「怒ることって,みんなで生活する中で当然ある よね。怒りの感情がわくのは自然なことで,決し が原因で,トラブルに発展したこともあった。当 事者にはその都度個別指導をしてきたが,いずれ て悪いことじゃないと思う。でも,怒り方によっ 8 てはトラブルになったり,自分や相手を傷付けて しまったりすることがある。そうなると,互いに 不愉快だし,そんなことばかり繰り返していたら, かりに相手の気持ちに沿った言葉や態度の返し方 を考えさせ,相手の気持ちに焦点を当てて話が聞 けることを目指した。うまくできたかどうかは, 学級の居心地も悪くなってしまう。だからそうな らないように,怒りの感情と上手に付き合ってい 相手に尋ねたり,班員に判定してもらったりして 確認できるようにした。 けるように,みんなで楽しく勉強してみようよ。 きっと自分に合った方法が見付かって,困ること (イ) 授業中の生徒の様子 生徒は代表のモデリングを見た後,各グループ が少なくなると思うよ。」 特に,今後学習していく内容は,一つ一つが独 でいろいろな返し方からわき起こる感情を体験し た。リハーサルでは相手を替えながら現実場面を 立したものではなく,関連していることを強調し た。また,演習に不慣れな生徒のために,ウォー 想定して行った。最初は照れ臭そうにぎこちなく 演習をしていた生徒も,相手の感情を上手にキャ ミングアップの時間を多目にした。 (イ) 授業中の生徒の様子 ッチして返すことができたり,自分の感情をキャ ッチしてもらえたりするうちに自然に表情が豊か 初めはぎこちなかった生徒だが,次第に慣れ, 「あなたの気持ちは???」のころには,和やか になり,喜びの言葉も多く出るようになっていっ た。そして,ほとんどの生徒が上手な返し方がで な雰囲気で取り組めた。しかし,友達に十分気持 ちが伝わらなかったり,友達の表情から微妙な感 情の変化をつかみ取ることができなかったりして, きるようになっていった。 (ウ) 指導者としての授業後の感想 同性同士のペアでは比較的容易に演習ができた 苦労している様子もうかがえた。 (ウ) 指導者としての授業後の感想 が,男女のペアでは互いに意識してやりにくそう にしている場面もあった。アンガーマネージメン 生徒たちはロールプレイングをこれまでに何度 か経験しているので,取り組みに対する抵抗は少 トとは別に,男女の相互理解を進めてよりよい人 間関係を築く取り組みの必要性を感じた。また, なかった。しかし,日常生活で相手の感情を推し 量る場面が少ないためか,友達の大きな感情の変 生徒にとって相手の感情に焦点を当てて聞く活動 は新鮮だったようで,それだけこのようなことが 化はつかみ取ることができても,細かい感情をつ かみ取ることはかなり難しそうであった。ただ, 日常生活であまり意識されていないことが分かる。 したがってこうした態度を身に付けるには,ホー 今回の体験を通して相手の気持ちを推し量るとい う姿勢は少しではあるが身に付いたと思われた。 ムワークを工夫して繰り返しフィードバックする ことが大切だと感じた。 (エ) 学習の定着 生徒同士の日常会話の中から「今怒っとる?」 (エ) 学習の定着 生徒との日常会話の中で,「人と話をするとき 「イライラしとらん?」などの声が聞こえ,今回 の取り組みが生徒の日常生活の中に溶け込みつつ あることを感じた。 には話の内容だけでなく,感情も分かろうと今ま で以上に真剣に聞く努力をしている」「相手の気 持ちや立場を考えて,話す内容や言葉を選んでい イ 第一次第2時 <感情に焦点を当てて聞こう > 「伝わってきたあなたの気持ち」(6月 19 る」「相手の話を真剣に聞くには,相手の目を見 て聞くように努力している」などの声を聞くこと 日) (ア) 指導者として配慮したこと が増えた。それぞれが自分の気付きを大切にして, 日常生活を送っていた。 第二次第1時 <怒りがどんな感情かを知ろ う>「怒りの火山」】(9月 25 日) 前時との連続性を意識して前時の振り返りに時 間を取り,相手の表情から感情を読み取るエクサ ウ サイズをおさらいとして行った。本時のモデリン グでは日常会話の様々な場面を用い,相手の言葉 (ア) 指導者として配慮したこと ホームワークのシートを使って班ごとに情報交 や態度によって自分にわき起こる感情を自覚する ことを促した。そして,自分にわいた感情を手掛 換させた。生徒は自分の日常生活を振り返り,怒 りの感情を持った場面を思い起こし,そのときの 9 原因や感情,そのときにとった行動,その後の思 いなどを話し合った。そのうちの幾つかを数人の 生徒に発表させた。そして「人間が生活する中で, ることの未熟な生徒にとって,この体験は大きな 収穫になったと思われる。 エ 第二次第2時 <自分の怒りの特徴を知ろう 怒りの感情を持つことは悪いことではなく,ごく 一般的なことである。問題なのは,その怒りの感 >「怒りの温度計」(10 月2日) (ア) 指導者として配慮したこと 情の表現の仕方や処理の仕方である。それを誤る とトラブルに発展する。後悔しないためには,怒 前時で学習した「怒りが爆発するまでのメカニ ズム」について,簡単に復習した。「私の怒りの りの感情を上手にコントロールすることである」 と説明した。 パターン」のワークシートを使って自分の怒りの 特徴を知り,怒りを表出することとその結果とを (イ) 授業中の生徒の様子 生徒たちは「怒りの火山」の図に大変興味を抱 関連付けて考えられるようにした。特に,自分の 怒りの度合いを温度として数値化することで,同 いた。怒りが爆発するまでの心と身体の様子につ いて,どの班も真剣にかつ活発に話し合って図を じ事象に対して怒りに個人差があること,「自分 の感情=友達の感情」ではないことに気付かせた。 完成させていた(写真1)。「怒りが具体的に見え た」と言う生徒が多かった。 (イ) 授業中の生徒の様子 生徒たちにとっては,前時に引き続き分かりや すい内容だったように思われる。取り組む姿勢は もちろん,ロールプレイングにも熱が入っていた (写真2)。特に,本時の目標であった自分の怒 りの特徴や,表現の仕方については十分に自覚で きたようである。 写真1 「怒りの火山」をワークシートに記入 (ウ) 指導者としての授業後の感想 生徒たちは自分や相手に発生した怒りの感情が 爆発に至った経験はあるが,それがどのようなメ カニズムでエスカレートするのかを細かく分析し 写真2 「怒りのパターン」の発表 て考えたことはなかった。今回の学習は,そのよ うな生徒たちにとって貴重な時間となった。今ま (ウ) 指導者としての授業後の感想 本時の特徴は,自らの怒りを温度計になぞらえ で目に見えなかった怒りを形にして表すこの学習 は,生徒の学習意欲を高めたようである。 て数値化したことである。怒りの程度について 「大」「中」「小」くらいの漠然とした認識しか持 (エ) 学習の定着 友達とトラブルになりかけたときに,相手の表 っていなかった生徒にとって,自分の怒りの程度 を知るきっかけになったようである。また,同じ 情や態度などから怒りの度合いを推し量り,大き なトラブルに発展せずに終わった事例を生徒から 出来事に接しても怒りを感じる程度にはかなりの 個人差があることを知ることができた。さらに, 聞いた。生徒は「だってあいつ,鼻の穴がふくら んできたから,だいぶ腹が立ってきたんだと分か ったよ。」と言い,この授業で学んだことをトラ 多くの例題に取り組んだので,自分の怒りの特徴 やパターンに気付くことができた。話し合いを通 して,友達の怒りに対する姿勢やトラブルを上手 ブルの回避に生かしていた。相手の感情を推し量 10 に回避する態度などを知ったことは,生徒相互の 理解を促進し,学び合うきっかけにもなったと思 われる。 うまくできるようになったらいいなあ」「このや り方はすぐに使えそう」などの感想が多く聞かれ たので「一つだけでなく,複数のやり方が使える (エ) 学習の定着 生徒同士の会話の中に「今の気持ちは○○度じ ようになるといいね」と付け加えた。 (ウ) 指導者としての授業後の感想 ゃ」とか「温度計が○○度になった」などの声を 聞くことが度々あった。一見遊びのようにも見え アンガーマネージメントの授業も軌道に乗り, 生徒たちもいろいろな技法を知りたい,身に付け るが,生徒たちは怒りの感情の存在と,その程度 を温度という形で表現することにより,自らの怒 たいと思っていたときだったので,どの方法につ いても意欲的・積極的に取り組んだ。身近なとこ りを客観視することができるようになったようで ある。 ろで使えそうなこれらの技法の演習は,生徒たち にはずいぶんと役に立ったようである。 第三次第1時 <怒りの感情をコントロール しよう> 「キレないテクニック」(10 月 17 オ (エ) 学習の定着 「今まで,怒りの感情のぶつけどころがなくて, 日) (ア) 指導者として配慮したこと その感情を関係のない弟や妹,物にぶつけたりし ていたけれど,自分の中で上手に扱えるようにな 怒りについての学習が深まってきたので,本時 では,怒りの感情を上手にコントロールし,爆発 をしないようにうまく生活する方法を学習するこ って,親から叱られることがなくなった」「部活 動の試合のとき,相手チームからやじられていつ もならキレて自滅していたのが,あまり腹が立た とを目標とした。怒りを感じる場面に対する数種 類の対処方法を説明し,モデリングをしてみせた。 なくなって最後までいいプレイができた。部の先 生から『おまえ,成長したなあ』と言われた」な 生徒には,すべての対処方法を疑似体験させるこ とで,いろいろなテクニックがあることを教え, どの感想を聞いた。大なり小なり,生徒たちは日 常生活の中で活用しているようである。 その中から自分に一番合うと思われる方法を発見 させたいと考えた。 第三次第2時 <怒った気持ちを表現しよう > 「DESC法」(10 月 23 日) カ (イ) 授業中の生徒の様子 深呼吸については,使用している生徒が比較的 (ア) 指導者として配慮したこと 怒りの感情を自分の中でうまく処理する方法に 多かった。その他の方法については,初めて体験 する生徒がほとんどで,興味津々の様子であった。 ついては,たくさんの方法を学んできたが,自分 の中の怒りの感情を相手に上手に伝えて気持ちを 体験後の感想を班内で意見交換させた(写真3)。 自分の感じと友達の感じとの違いや,怒りの度合 理解してもらう,非攻撃的な表現の仕方について 学習するのが本時のねらいである。ここで用いる いによってどの方法が適しているかなどを話し合 った。生徒の感想からは「怒りのコントロールが DESC法は生徒が理解するには難しいことが予 想されたので,補助プリントを作成し配付した。 (イ) 授業中の生徒の様子 DESC法の考え方は生徒の日常生活にはほと んどなく,かなり難しかったようである。教師も 生徒も苦労しながら班内でのロールプレイングを 行ったが,ぎこちなかった。DESC法がよい方 法であることは生徒にも伝わったが,実際に使う となると,慣れるまでは難しいように思われる。 (ウ) 指導者としての授業後の感想 非攻撃的な自己主張の方法は,生徒たちも必要 であると感じているだけに,なんとか指導方法を 工夫して生徒の身に付けたい。しかし,DESC 写真3 班での話し合い 11 いた。本学級にはA生徒以外にも怒りのコントロ ールができにくい生徒が何人かおり,アンガーマ ネージメントを是非実施したいと考えていた。 アンガーマネージメントの授業が始まってもし ばらくの間は,ときどきいさかいがあったが,こ の授業が進むにつれてそういったトラブルは学級 からなくなっていった。生徒同士の会話や生活ノ ートの記述などからも,だれかが我慢してトラブ ルが減っているのではなく,うまく人間関係を保 ちながら,互いに自己表現することを工夫してい る様子がうかがえた。また,自分の意思を表すこ 写真4 D,E,S,Cを班ごとに板書 とが苦手な生徒には,周囲の生徒がその気持ちを 代弁する動きも見られるなど,学習したことがう という4段階で自己主張した体験は生徒にはほと んどなく,1時間でDESC法を学習することは まく絡み合って生徒の中に浸透していったようで ある。以下は給食時間や休み時間に聞いた生徒の 難しかった。 →E→S→Cと一つ一つ階段を上 るように,少なくとも2時間掛けて学習すること 声である。 ○ 友達の話を聞くときには,目を見て聞くよう にしている。 が必要のように思われた。 (エ) 学習の定着 教科の授業で自主学習の時間に,数人の生徒が ○ 言葉だけでなく表情にも注意するようになっ た。 DESC法の使用を試みたことを教科担任から聞 いた。しかし,使いこなすのは困難だったように ○ 今までは,すぐに怒りが爆発していたのに, そんなことがなくなった。 思われる。別の事例として,ちょっとしたトラブ ルに遭遇した生徒が「デスク法・・・デスク法・・・」 ○ ○ とつぶやく場面があった。その生徒は「こういう ときはDESC法を使って自分の言いたいことを 兄弟げんかや親とのトラブルが減った。 家で,「最近大人になったね」と言われた。 ○ なんだか,友達付き合いがうまくなったよう な気がする。 伝えればいいんだ」とは気付いたものの,いざ使 おうとすると使えるほどには身に付いておらず, ○ 自分と相手の両方の立場を考えるようになっ た。 焦る気持ちがつぶやきを招いたと思われる。この 方法に習熟するにはかなりのホームワークとフィ ○ 怒りの静め方は,大変勉強になった。 アンガーマネージメントの授業の展開や時間の ードバックの繰り返しが必要と思われた。 ③ 授業の成果と今後の課題 経過とともに,学級の雰囲気はますます穏やかな ものとなり,A生徒はもちろんのことその他の生 徒も落ち着いた生活を送っている。器物破損やけ 【成果】 本学級には,1年時に度々友人とトラブルを起 こしたり,ストレスの発散のためか物を壊したり んかなどで生徒を指導をすることはなくなり,担 任としてもありがたかった。 したA生徒がいた。A生徒は2年生の1学期当初 はささいなことから口げんかをしたり友達の物を 【課題】 ほとんどの生徒が,アンガーマネージメントの 壊したりすることがあった。怒りをうまくコント ロールできないことについてA生徒と話してみる 授業のねらいを達成し,身に付けたスキルを日常 生活の中で何らかの形で活用していることが分か と,彼自身も「自分でも直していきたいと思って いるけれど,なかなか直らない」「直し方がよく った。また,生徒たちの会話からも,アンガーマ ネージメントの授業で学んだことは元々生徒たち 分からない」と言ったので,アンガーマネージメ ントのことを前もって話しておいた。A生徒は 自身も身に付けたいと感じていたことであったと 考えられる。 「早くやってほしい」「早くやりたい」とアンガ ーマネージメントの授業の始まりを楽しみにして 12 バーで作るようにした。 (イ) 授業中の生徒の様子 演習をゲームをするように楽しめた生徒と,演 習することに抵抗を示して十分に活動できなかっ た生徒とに二分された。七つのグループで活動し しかし,怒りを題材にロールプレイングなどを 用いて授業を展開するためには,学級が安心して 自分自身を表現することのできる集団になってい ることが必要である。そのためには,アンガーマ ネージメントの授業を導入する前に人間関係づく たが,そのうち二つのグループは指示した内容に 対してやりにくそうにしていた。「あなたの気持 ちは???」では,喜怒哀楽のうち「喜」の感情 を表すことは多くの生徒がうまくできていたが, 「怒」の感情を表すのは難しそうにしていた。 りを意図的に取り組み,生徒相互の信頼関係を築 いておくことが大切である。そうすることによっ て,アンガーマネージメントの授業がより効果的 になると考えられる。 また,アンガーマネージメントの授業は単発的 に行うのではなく,生徒の実態に応じて計画的に (ウ) 指導者としての授業後の感想 生徒の関心や意欲を喚起するためには,なぜこ のような活動をするのかという説明が大切だと感 じた。本時の開始時に「生きていく上で怒りを感 じないで生活できることはまずあり得ません。み 行うことでその効果を発揮する。さらに,学習し たスキルを定着させるためには生徒がそのスキル を繰り返し用い,その都度フィードバックする工 夫が大切である。そして,学級全体に行う指導と ※ここに紹介するのは,アンガーマネージメント・プ なさんには怒りをコントロールできる人になって ほしい。」と,教師の期待は伝えた。しかし,そ れだけではなく,自分にわいた不快な感情を処理 するのに苦労した体験などを話し合ったり,人の 表情から感情を察することがなぜ大切かを丁寧に ログラムが実施された5学級のうちのB5組の実践 記録である。 説明したりしておけば,生徒の関心や意欲ももう 少し高くなったかもしれないと感じた。 学級の実態 男子 18 人,女子 15 人。男子は授業や学級活動 生徒が「怒」の感情を表すのを難しそうにして いたことに関して,「本気で怒っている姿は周囲 から見ると滑稽に映る」という生徒の感想があっ 個別に行う指導を組み合わせることも考えていく 必要がある。 (2) 実践記録2(B中学校) ① こ っ け い 等で活発に発言する生徒が多いが,女子は行動や 発言が慎重で,周囲の様子を見てそれに合わせて いく生徒が多い。穏やかでのびのびとした生徒が 多いが,結果を予測せずに軽い気持ちで発言した り,陰口を言ったりして友人同士のトラブルが起 た。学級ではこれまでに真顔で怒っている生徒を 周囲がからかってトラブルになるということがあ ったが,そういう心理が働いていたのかもしれな い。だとすると, 「怒」の感情を表すのは現在の 人間関係では恥ずかしくてできないのかもしれな きることも度々ある。 生徒たちは入学以来SGEやSST等の経験が ない。指導に当たった教師もこの度初めて行うの で,アンガーマネージメントの授業で用いられて いる演習に生徒がなじむか,教師はうまく指導で いと感じた。あるいは,怒ったことはあるが,何 に対してどの程度怒ったのかが明確でなく,その とき自分がどんな表情をしていたかの自覚がない ので再現できないのかもしれないとも感じた。 (エ) 学習の定着 きるかといった不安も持ちながらスタートした。 ② 授業実践 ア 第一次第1時 <感情を受け止めよう> 「 見 え な い キ ャ ッ チ ボ ー ル 」「 あ な た の 気 持 ち は???」(9月 30 日) 同じ感情でも人によって表情が違うことや,実 際は相手の表情から気持ちを推し量りながら生活 していることなどを,親しい友人同士で確認し合 っている姿が見られた。 イ 第一次第2時 <感情に焦点を当てて聞こう (ア) 指導者として配慮したこと SGEを用いた演習に慣れてない生徒が多いの でウォーミングアップを丁寧に行った。演習に対 する抵抗感を少しでも軽減するために,ロールプ レイングをするグループを人間関係のできたメン >「伝わってきたあなたの気持ち」(10 月2日) (ア) 指導者として配慮したこと 「せりふカード」のせりふを生徒の身近なもの にした。声の調子にも注目させるために,モデリ 13 ングで実際に声の調子を変えて示した。ロールプ レイングに対する生徒の抵抗感に配慮して,生活 班でグループを作るようにした。 (イ) 授業中の生徒の様子 生徒はリハーサルできちんと気持ちを返しても らない,怒るとすぐに爆発するという生徒が多く, 「怒りの火山」を完成するのに苦労した。呼吸が 荒くなる,脈拍が速くなるなどの身体的な変化を 自覚している生徒は少なく,どんな変化が起きる かをこちらから提示して確認していくことを繰り らえるとうれしそうにしていた。第1時で演習に 抵抗感を示して十分に活動できなかった生徒は, 本時も活動に消極的であった。グループの中で一 通りのことはするが,楽しそうではなく,仕方な くしているという感じだった。また,全く演習に 返した。生徒の気付きを得るのに有効な発問の在 り方を考えさせられた。 本時のねらいを達成するのが難しかった要因と して,エスカレートしていく怒りの感情を表現す る語彙が十分でないことが考えられた。また,前 参加しない生徒もいた。 (ウ) 指導者としての授業後の感想 時で生徒は友達に対して怒りをあらわにすること が少ないことが分かったが,怒りの感情を抱いて いないわけではない。怒りの感情がわいているの に面と向かって表現することが少ないので,その 怒りの感情が形を変えて「陰口を言う」という行 ロールプレイングを嫌がる生徒や恥ずかしがっ てしない生徒に対しては,演習することを強要せ ず「やってみない?」と軽く誘うに止め,嫌がる と ど 為になって現れているものと思われた。 (エ) 学習の定着 場合はそれ以上誘わなかった。演習の方法に生徒 が慣れるのは時間が掛かると感じた。 (エ) 学習の定着 普段の会話の中で相手の感情に気を付けて話を 聞くようにし始めたという生徒が多くいた。相手 怒りがエスカレートするときの身体と頭脳の変 化については理解できたようだが,どの程度定着 しているかを推し量れる出来事は見当たらなかっ の話を聞いて「よかったね」と言葉を返すとき, 同じ言葉でも言い方によっては嫌味に聞こえたり 共感的に聞こえたりすることを体験し,気持ちを 伝えるのは言葉よりも表情や声の調子の方が大切 だということを改めて確認し合っていた。 た。その代わりに,「怒りはコントロールできな い」と思っている生徒がいることが授業後の会話 から分かった。中には,一旦怒りを感じたらブレ ーキが効かない,怒り始めたらどうにも止められ ないと感じている生徒もおり,そういった生徒に ウ 第二次第1時 <怒りがどんな感情かを知ろ う>「怒りの火山」(10 月 11 日) (ア) 指導者として配慮したこと なぜアンガーマネージメントの授業をするかを 改めて説明した。「怒りを感じるのは悪いことで は個別の指導が必要なのかもしれないと感じた。 エ 第二次第2時 <自分の怒りの特徴を知ろう >「怒りの温度計」(10 月 23 日) (ア) 指導者として配慮したこと 友達の怒りの特徴を知り,自分の場合と比べる はなく,自然なことです。問題は怒りの感情がわ くのを抑えることではなくて,わいてきた怒りの 感情を上手に外に出すことです。上手に外に出す ことが必要な場面が,実生活では必ずあるはずで す。だから,みんながうまくできるように勉強し ことによって自分の怒りの特徴が理解しやすくな ると考え,話し合い活動を丁寧に行った。 (イ) 授業中の生徒の様子 人によって温度計の数値が大きく違うことを興 味深く感じたようで,どのグループも楽しそうに てみませんか。」と述べて,生徒の関心意欲を更 に喚起することを試みた。 (イ) 授業中の生徒の様子 怒りがエスカレートするときの身体と頭脳の変 化についての話し合いで「私はあまり怒らないか 話し合いをしていた。温度計の数値の違いを個性 の違いとしてとらえていたようだ。 (ウ) 指導者としての授業後の感想 怒りの程度を温度に表す活動は生徒にも分かり やすく,取り組みやすかった。しかし,中には温 らよく分からない」と言う生徒が意外に多くいた。 そのため,話し合いの活発さは今一つだった。 (ウ) 指導者としての授業後の感想 怒りが爆発するまでの身体と頭脳の変化が分か 度を付けることがなかなかできない生徒もいた。 自分の怒りがどの程度なのか測りかねていたのか もしれない。 (エ) 学習の定着 た ん 14 怒りを爆発させた結果が自分にとって損になる ことや周囲に迷惑を掛けることは理解できたよう で,生徒との会話でもそのことがうかがえた。し かし,前時と同じく「一旦怒ってしまうとそのと きには結果のことまで考えられない」と言う生徒 言い方を考えるのに苦労していた。「どう言った らいいか分からん」という生徒もいた。どのよう に言うかを黒板に整理し,リハーサルさせたが, 「何となく分かったような気がするけど,実際に 使うのは難しい」という意見が多かった。 もいた。知的な理解と,理解したことが実践力に なることとの間には距離があると感じた。 オ 第三次第1時 <怒りの感情をコントロール し よ う > 「 キ レ な い テ ク ニ ッ ク 」(11 月 27 日) (ア) 指導者として配慮したこと 怒りの感情をコントロールするためにどのよう な方法を生徒が使っているか,できるだけ多くの 生徒が発表できるようにした。そして,どのよう な方法でも否定的な評価をしないように気を付け 写真5 DESC法の発表 ながら,生徒たちがこれまでに使ってきた方法を まとめた。 (イ) 授業中の生徒の様子 すでに生徒が用いている方法を質問すると「深 呼吸をする」や「相手に聞こえないようにぶつぶ つと文句を言う」などが多かった。 (ウ) 指導者としての授業後の感想 モデリングしたテクニックを用いる場面を設定 し,班ごとにテクニックを使うリハーサルをさせ たが,難しそうであった。設定した場面が適切で あったかどうか,再検討する必要があると感じた。 (エ) 学習の定着 教科の授業中,生徒が集中できないでざわざわ しているとき,教師が大きく深呼吸して見せると, 「先生が怒っているぞ,みんな静かにしよう」と 呼び掛けていたことがあった。また,家で母親に 注意されたときにカウントアップなどを使ったと 話す生徒も多くいた。少しずつではあるが,習っ たことを実践しているようである。 カ 第三次第2時 <怒った気持ちを表現しよう 写真6 DESC法のリハーサル (ウ) 指導者としての授業後の感想 DESCの「E」では自分の気持ちを表現する が,自分の気持ちを言語化することさえ難しいと 感じている生徒がいた。このような生徒には第一 次の授業内容を繰り返し丁寧に行う方がよいと感 じた。 (エ) 学習の定着 生徒を注意するときに教師がDESC法を使う と,生徒は「この間習ったのじゃろう」と気が付 いた。この程度には身に付いているが,実際に 自分たちで使うことは難しかったようである。 >「DESC法」(12 月2日) (ア) 指導者として配慮したこと 生徒には難しい内容だと判断し,説明の仕方を 工夫することを考えた。教科の授業等で注意する 場面があったときにDESC法を使い,できるだ ③ 授業の成果と今後の課題 【成果】 学校生活の中で生徒同士のトラブルや物に当た ることなどが減少したというほどの成果は認めら れない。しかし,怒りという感情の特徴を知り, け生徒に身近なものにしようと試みた。 (イ) 授業中の生徒の様子 場面を設定してD,E,S,Cそれぞれについ てどのように言うかを質問したとき,自分なりの 15 コントロールしたり表現したりする方法があるの だということは理解できたようである。生徒が怒 りを爆発させて人や物に当たったとき,これまで の指導は「どのように怒ればよいか」という視点 が不足していたし,そうするための具体的な方法 か」が否定的評価となった。全体に評価は低目で, 相手の気持ちを感じることはできても,それを自 分の言葉にして表現するのは難しいことが改めて 示された。 ③ 第二次第1時 を練習させるということもほとんどなかった。そ の意味で,今回のアンガーマネージメント・プロ グラムは生徒にとっても教師にとっても新鮮で, 怒りという感情とどう付き合っていくかを考える きっかけを与えてくれた。 全学級全項目で肯定的評価になった。特に「怒 りがどんなときに感じるどんな感情か」「怒りが エスカレートすると身体や頭脳がどうなるか」で は「分かった」と回答した生徒が多かった。実践 記録からも,生徒の興味関心が高かったことが読 【課題】 学習したことを定着させるためには,単発的に 授業を行っただけでは不十分だと考えられる。授 業後の学校生活で繰り返し学習していくか,実践 したことを日常的に振り返って,生徒の関心を保 み取れた。 ④ 第二次第2時 前時と同じく全学級全項目で肯定的評価になっ た。怒りの感じ方や表し方が自分と他人とでは異 なることへの気付きを得た生徒が多かったようで っておく必要を感じる。 また,SGEやロールプレイングに慣れていな い生徒は演習に対する抵抗感が強く,そのために 学習内容を素直に受け止めにくい生徒もいた。ア ンガーマネージメントの授業を行う前に,日常的 ある。また,怒りを態度に表した結果どうなるか についても,活発に話し合いが行われていたこと が実践記録から読み取れた。 ⑤ 第三次第1時 「キレないテクニック」の理解については,実 にSGEなどを行っておく必要があると感じた。 第2学年の学級開きのころからSGEを実施して いたら,それほど抵抗なく演習に臨めたのではな いかと考えられる。 施した5学級のうち1学級で否定的評価になった。 「使えそうなテクニック」の選択では「深呼吸」 が最も多く,次いで「自己呼び掛け」「リフレー ミング」の順になった。「カウントアップ(数を 数える)」が使えそうだとした生徒は意外に少な 6 結果 (1) プログラムの計画と授業の内容について 振り返りシートは,5段階評定法で回答する項 目について学級ごとに平均を求めた(表7)。1 と2は否定的評価,4と5は肯定的評価で,学級 かった。 ⑥ 第三次第2時 実施した5学級のうち2学級で肯定的評価が得ら れず,学級によって差が出た。実践記録から,リ ハーサルを楽しく行えていた学級で肯定的評価に 平均が3未満の項目は授業の在り方に改善が必要 な項目である。 以下に,振り返りシートと授業記録から得られ た結果を記す。 ① 第一次第1時 なったことが分かった。指導者からは「DESC 法を生徒が理解するには時間が不足」という指摘 があり,授業の内容としてDESC法を用いるこ との是非が課題となった。 実施した6学級の平均が4項目中2項目で否定 的評価になった。自分の感情を非言語で表したり, 相手の表情から読み取った感情を言語化したりす ることは難しかったようである。 ② 第一次第2時 (2) プログラムの効果について 実践記録の「学習の定着」等の記述内容を基に 検討した結果を以下に示す。 ア 第一次第1時 A,Bどちらの中学校の実践記録からも,友達 実施した6学級の平均はいずれも肯定的評価だ ったが,1学級で「相手の気持ちに焦点を当てて 聞く聞き方が分かりましたか」「伝わってきた話 し手の気持ちを言葉にして返すことができました の表情から感情を察知することに対して生徒の関 心が高まったことがうかがえた。 イ 第一次第2時 友達との日常会話の中で,話された事柄だけで 16 表7 振り返りシート結果 実施した学級と人数 質問項目 A 36 B1 32 B2 32 B3 33 B4 33 B5 32 合計 一次1時 一次2時 二次1時 二次2時 三次1時 今日の授業は楽しめましたか 3.5 3.4 3.7 3.4 3.7 2.7 3.4 相手に自分の気持ちをうまく伝えることができましたか 3.0 3.4 3.3 2.4 2.6 2.6 2.9 相手の気持ちをうまくキャッチすることができましたか 3.0 3.2 3.3 2.5 3.0 2.6 3.0 相手はあなたの気持ちをうまくキャッチしてくれたと思いますか 3.0 3.5 3.4 2.7 2.6 2.5 2.9 話し手の気持ちに焦点を当てて聞く聞き方が分かりましたか 3.6 3.5 3.3 2.9 3.8 3.1 3.4 話し手の気持ちを感じることができましたか。 3.8 3.5 3.2 3.1 3.7 3.2 3.4 伝わってきた話し手の気持ちを言葉にして返すことができましたか 3.6 3.5 3.0 2.9 3.7 3.1 3.3 「怒り」は,どんなときに感じる,どんな感情か,分かりましたか 4.0 4.0 3.6 3.6 4.2 3.5 3.8 「怒り」がエスカレートすると,身体や頭脳がどうなるか分かりましたか 4.0 3.8 3.8 3.7 4.3 4.0 3.9 「怒り」をコントロールしやすい段階,しにくい段階が分かりましたか 3.6 3.4 3.0 3.3 3.6 3.1 3.4 自分の「怒り」の感じ方,表し方のパターン(特徴)が分かりましたか 3.5 3.3 3.2 3.4 4.0 3.7 3.5 他の人の「怒り」の感じ方,表し方のパターン(特徴)が分かりましたか 3.5 3.1 3.3 3.4 4.1 3.7 3.5 「怒り」を態度に出して表したとき,どうなるかが分かりましたか 3.9 3.5 3.6 3.7 3.8 3.8 3.7 「キレないテクニック」が分かりましたか 3.8 2.4 3.1 3.4 3.0 3.1 ①深呼吸 28 18 14 8 12 80 6 3 5 2 5 21 1 1 2 1 5 10 12 7 15 12 9 55 7 4 8 15 4 38 ②カウントアップ ③カウント深呼吸 (この項目は選択した人数を表示) ④自己呼び掛け 三次2時 ⑤リフレーミング 「怒り」を感じるのは悪くないんだ,ということが分かりましたか 3.5 4.0 2.8 2.9 4.0 3.7 「怒り」を表現してもいいんだ,ということが分かりましたか 3.5 3.8 2.9 2.9 4.2 3.7 「怒り」の表現の仕方(DESC 法)が分かりましたか 3.5 4.0 3.0 2.9 3.9 3.8 ※実施した学級のAはA中学校,B1∼B5はB中学校。数値は5段階評定の平均値(第三次第1時の①∼⑤を除く)。 なく相手の感情にも関心を払って聞こうとする態 度が見られるようになった。 ウ 第二次第1時 怒りがエスカレートしていくときの身体や頭脳 DESC法がどんなものかを理解することは一 定の成果が認められた。しかし,それを実践する となると困難であることが分かった。実践しよう としてもできなかった例もあった。 の変化について,知的に一定の理解が得られたこ とはA,Bどちらの中学校の実践記録からもうか がえた。しかし,その知識を生活に生かす実践力 となると結果が分かれた。知識を生かしてトラブ ルを未然に防ごうとした生徒もいたし,怒りはコ 7 考察 (1) プログラムの計画と授業の内容について ① 第一次について 自分の感情を非言語で表したり,相手の表情か ントロールできないという考えにとらわれたまま の生徒もいた。 エ 第二次第2時 自他の感情の程度を温度というスケールで表現 することによって,同じ出来事に対して人によっ ら読み取った感情を言語化したりすること(第1 時)が難しかった主な要因として,次のようなこ とが考えられる。 て感じ方が異なることを理解しようとする態度が 多く見られるようになった。 オ 第三次第1時 怒りがエスカレートするのを防ぐためのテクニ ックについて,知的な理解が得られたとともに, 姿は周囲から見ると滑稽に映る」という生徒の感 想があった。おそらく,相手の怒りの感情をきち んと理解することができるほどには感情面が発達 していないのであろう。そういった未熟さが生徒 相互にあるために,怒りを表現してもきちんと受 日常生活で多くの生徒が実践していることが分か った。実践した効果については生徒によって差が あった。 カ 第三次第2時 け止めてもらえない,あるいは表現したがために 攻撃されるといったことを学習してしまい,怒り を表現したときの不快な結果に対する防衛から, できるだけ表情に出さないようにしているのでは 一つは,自他の感情を理解する力の未熟さであ る。怒りの感情に関しては, 「本気で怒っている 17 第二次は第1時,第2時ともに評価が高かった。 怒りにまつわる身体と頭脳の変化や,怒りの程度 を図示することは,生徒にとって新鮮で興味深か ったと思われる。評価が高くなった他の要因とし て,プログラムの3・4時間目であることと,活 ないだろうか。このような心理が背景にあるため に,演習で怒りの感情を表情に表しにくかったと 考えられる。 このような実態が学級にあって,演習への抵抗 が予想される場合は,第一次の第1時以前に自分 の感情を理解することをねらった演習を重ねてお く必要がある。例えば,様々な感情を表す表情が 描かれたカードを用意し,朝の会で「今朝の感情 を表すのはどのカード?」と発問してカードを選 ばせることを繰り返すだけでも効果が期待できる 動の形態が生徒にとっては慣れ親しんだもの(与 えられたテーマについて班で話し合い,発表し, 教師がまとめる)であったことも考えられる。 ③ 第三次について 実践記録の「 (ウ) 指導者としての授業後の感 だろう。また,相互理解が不十分な人間関係が根 底にあることも考えられるので,相互理解を促進 する取り組みも並行するとよいと考えられる。こ の点についてはSGEが取り組みやすいだろう。 二つ目に考えられるのは,授業で用いた心理教 想」に「怒りの感情がわいているのに面と向かっ て表現することが少ないので,その怒りの感情が 形を変えて『陰口を言う』という行為になって現 れている」という指摘があったことからも,第2 時のように怒りの感情を上手に表現できることを 育の手法に対する生徒及び教師の抵抗感である。 特に第1時は,緊張感をほぐすねらいもあって体 を動かすエクササイズを多目に計画したが,こう いった演習に生徒及び教師が慣れていない学級で はかえって緊張感を高めてしまい,授業がやりに ねらった授業は必要である。その方法としてDE SC法を採用したが,習熟するまでに時間が掛か る上に生徒が活用できるかどうかの見通しが立た ないため,本研究ではその是非を判断することは できなかった。少なくとも,1時間程度では生徒 くかったようである。 生徒及び教師が心理教育の手法に慣れていない 場合は,早い段階で実施してなじんでおくとよい。 方法としてはSGEが様々なねらいに対応できて 実施しやすいと思われる。そうして生徒の緊張を の身に付かないことは明らかになった。 DESC法はアサーション・トレーニングで用 いられている方法で,相手の権利を尊重した上で 自分の主張もきちんとしたいとき,自分の意見を せりふとして整理して考えるのに役立つ方法であ 緩和し,生徒の相互理解も促進しておけば,心理 的距離も縮まって演習に対する抵抗感も少なくな るであろう。なお,SGE等の心理教育の手法は 心の動きを大切に扱うので,可能な限り教師自身 が事前に体験しておくことが望ましい。 る。生徒の将来を考えると是非トレーニングして おきたい方法であるが,習熟までの時間を考える と,中学校ではD(describe;自分が対応しよう とする状況や相手の行動を描写する。客観的,具 体的に,特定の事柄,言動を描写するのであって, 三つ目に考えられるのは,感情にはいろいろな 種類があり,それぞれを表す語彙があるが,それ らを生徒がよく知らないということである。この 傾向が強いと判断される場合は,第一次の内容に 感情と語彙を結び付けることをねらった演習を加 相手の動機,意図,態度などを描写するのではな い。)とE(express,explain,empathize;状況 や相手の行動に対する自分の主観的気持ちを表現 したり,説明したり,相手の気持ちに共感したり する。特定の事柄,言動に対する自分の感情や気 えることが必要であろう。例えば,「感情のこと ばを増やそう」「『感情を表すことばのノート』づ くり」8)などが実施しやすいと思われる。 いずれにしても,生徒の実態はどうなのか,何 ができて何ができていないのか,問題となってい 持ちを解決志向で,明確に,あまり感情的になら ずに述べる。)に重点を置いて学習し,まずは 「I(アイ)メッセージ」ができるようになるこ とを目指した方がよいと考えられる。 ることは何かなど,アセスメントをした上でプロ グラムの計画及び授業の内容を工夫する必要があ る。 ② 第二次について (2) プログラムの効果について 相手の感情に対する関心が高まったり,自分 の怒りの感情に対する理解が深まったりすること には成果が認められた。しかし,怒りがエスカレ 18 ートするのを防ぐためのテクニックやDESC法 を,生徒が身に付けたとは言い難かった。その要 因として,これらの方法がスキルとして定着する には6時間の授業では足りないことが考えられる。 かといって,年間の学級活動の時間は限られてお にある程度なじみがある方が指導の効果が上がりや すいことが分かった。 一方,指導内容の定着化を図り,プログラムの効 果を得るためには6時間程度の授業数では不足であ ることも明らかになった。中学校の教育課程を考え り,そう多くの時間を予防的,開発的なアンガー マネージメントの授業に当てることは現実的でな い。そこで,道徳,国語,総合的な学習の時間等 をうまく組み合わせてプログラムすることが必要 になってくる。また,朝の会や帰りの会も工夫次 るとき,すべての教育活動を通じた具体的な指導の 在り方を探っていくことが今後の課題となった。 第で有効に使えると考えられる。 今回は中学校のみの実践となったが,予防的,開 発的なプログラムの中心が自他の感情を理解する内 容であることを考えるとき,幼児教育や小学校での 実践が欠かせない。また,予防だけではなく,危機 介入や個別指導としてのアンガーマネージメントの Ⅴ (3) 指導の在り方について 予防的,開発的に授業を行う場合は,なぜ取 り組むかの動機付けが大切である。教師が十分に 説明し,生徒の納得を得るという方法も欠かせな いが,「できた,分かった,楽しかった,面白そ う」という内発的動機付けと,賞賛等のプラスの ストロークを得るという外発的動機付けとをうま く組み合わせてモチベーションを高めることも大 在り方も必要である。更には,教師自身のアンガー マネージメントも考えられるだろう。今後の研究課 題としたい。 ※ 切である。そのためにも,教師は事前にSGEや SST,ロールプレイング等を経験しておき,余 裕を持って指導に当たることが求められる。そし て,生徒にとって「楽しい」と感じられるような 雰囲気を作って演習を進め,演習に対する恥ずか 実践記録中,生徒のプライバシーにかかわる 部分は本質を損ねない程度に再構成していま すが,取り扱いには十分御留意をお願いいた します。 ※ 実践に協力してくださったA中学校,B中学 校の先生方に心から感謝いたします。 しさや抵抗感ができるだけ少なくなるとよいだろ う。 また,生徒の実態に応じて補助教材を用意し たり配当時間を変えたりしながら,常に興味・関 心を引き出す工夫も必要であろう。 さらに,アンガーマネージメントのためだけ に多くの時間を割くことができない実態があるの で,先に述べたように,学級活動,道徳,総合的 な学習の時間,教科の授業,朝の会,帰りの会な ど,あらゆる教育活動を通して実践する工夫も必 要である。 Ⅳ おわりに 成果と課題 アンガーマネージメント・プログラムと授業の内 容については,本研究で示した三次計画が柱となり, 生徒の実態等に応じた授業の内容を加えていけばよ いことが示唆された。指導の在り方としては,生徒 の動機付けを工夫し,教師と生徒が心理教育の手法 19 ○引用文献 1) 岡山県教育庁指導課:児童生徒の問題行動等に関する調査結果について(速報),2002 2) アン・メイル:Educating Children with Behavior Problems in the Classroom,2002(文部科学省 子どもの「心の教育」全国アクションプラン “米国スクールカウンセリングと地域連携を学ぶ”ワーク ショップ資料) 3) 山崎勝之:心の健康教育,星和書店,pp.17-28,2000 4) Trevor Cole, Ph.D. 1999 Kids Helping Kids(2nd Edition) Peer Resources, Victoria, British Columbia 5) バーンズ亀山静子,矢部文訳:ピア・サポート実践マニュアル,川島書店,2002 6) David R. Brown, M.Ed. 1999 Creative Conflict Resolution The Continuous Learning Curve Vancouver,BC,Canada 7) 石隈利紀:学校心理学 教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助サービス, 誠信書房,1999 8) 本田恵子:キレやすい子の理解と指導 学校でのアンガーマネージメント・プログラム,ほんの森出版, 2002 ○Webページ ア) 文部科学省:報道発表(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/index.htm) イ) The Center for the Study and Prevention of Violence (http://www.colorado.edu/cspv/blueprints/index.html) ウ) Safe & Responsive Schools Project at the Indiana Education Policy Center (http://www.indiana.edu/ safeschl/AngerManagement.pdf) エ) Committee for children Japan (http://www.cfc-j.org/second_step.html) ○参考文献 ・ Botvin,G.J. 1997 Life skills training; promoting health and personal development. Princeton Health Press, New Jersey. ・ 山中 寛・冨永良喜:動作とイメージによるストレスマネジメント教育<基礎編> −子どもの生きる力 と教師の自信回復のために− 北大路書房,2000 ・ 冨永良喜・山中 寛:動作とイメージによるストレスマネジメント教育<展開編> −心の教育とスクー ルカウンセリングの充実のために− 北大路書房,2000 20 計画第一次の第1時 <感情を受け止めよう> 「見えないキャッチボール」「あなたの気持ちは???」 ・表情,しぐさ,声,状況などから,相手の感情を推し量る 目標 ・人によって感じ方が違うことを知る 学習活動 指導上の留意点 <導入> 1 日常生活でどれくらい他人の気持ちを感じているかを振り返らせる。 1 本時の目標を知る。 2 計画の最初の時間なので,気持ちをほぐすエクササイズから始めて,最 2 ウォーミングアップのエ 後に4人組ができるようにする。 クササイズをする。 (1) ①教室を自由に歩き回らせる。②合図でだれかをつかまえてじゃんけん (1)「じゃんけんチャンピオン」 させる。③負けた人には勝った人の背後から肩に両手を置かせる。④次に (2)「叩いた数で集まれ」 勝った人同士でじゃんけんをさせ,負けたら相手の最後尾につかせる。⑤ <展開> 最後に1列になるまで続ける。④全員をそのまま一重の輪にして,先頭の 3 「見えないキャッチボー チャンピオンと最後尾に気持ちをインタビューし,どちらにもみんなで拍 ル」をする。 手を送る。 (1) 投げた球に合わせて (2) ①「私が手を叩いた数で集まってください。集まれたグループはしゃが (2) 相手の気持ちに合わせて んでください。どのグループが早いかな?」と指示する。②学級の人数に (3) 4人組で簡単に振り返り 合わせて4人以外のグループを1回ずつ3種類ほど作らせる。③最後に4 をする。 人組みを作らせ, 「そのグループがこの時間の基本になります」と告げる。 4 「あなたの気持ちは???」を 3 教室が狭い場合は2交代で行わせる。 する。 (1) ①4人を更に二人に分けさせる。②「ここからが今日の中心です。これ (1) 表現する役,当てる役の両 からボールを使わないでキャッチボールをしてもらいます。 」と教示する。 方を体験する。 ③「相手が投げた球の大きさ,高さ,方向,速さなどをよく見て,投げた (2) 4人組で振り返りをする。 球に合わせてキャッチボールしてください。ただし,声を出してはいけま <まとめ> せん。」と指示し,うまくできそうなペアにみんなの前で実演させる。③「大 5 振り返りをする。 変上手でしたね。拍手!では,今度はみなさんの番です。 」と,モデルを誉 (1) 全員で輪になって,感想を めた上で全員に体験させる。 言い合う。 (2) 今度は相手がうれしそうに投げていたらうれしそうに捕る,悔しそうに (2) 振り返りシートに記入す 投げていたら悔しそうに捕るなど,相手の感情に合わせて捕るキャッチボ る。 ールをさせる。投げる方にはボールに気持ちを込め,表情や動作で感情を (3) 振り返りシートを提出す 伝えるよう指示する。 る。 (3) 特に,相手の感情をうまくキャッチできていたかを振り返らせる。 (4) 次時の予告を聞く。 4 喜怒哀楽のほかに「悔しい」 「不安」「落ち込んでいる」等の感情を書い たカードを数枚で一組,グループ数分用意しておく。 (1) ①4人のうち一人に,残りのメンバーに見えないように感情を 記したカ ードを引かせる。②残った3人の前で,表情としぐさだけを使って無言で その感情を表現させる。③3人がその感情を当てる。④役割を交代して全 員が体験できるまで繰り返す。 (2) 表現する役,当てる役とも,何がどのように難しかったかを話し合う。 5 時間がなければ(1)は省略する。 ² SGE の経験が全くない場合は抵抗も予想されるので,学級活動などで事前に「四つの窓」や「フルー ツバスケット」などをしておくとよい。 ² 多目的ホールなど普通教室よりも広い場所の方がやりやすい。普通教室で行う場合は,事前に机を 廊下に出しておくとよい。 ² 4. 「あなたの気持ちは???」に使用するカードには, 「ちょっと怒っている」「むくれている」な ど,計画2につながる感情を入れておくとよい。 21 計画第一次の第2時 目標 <感情に焦点を当てて聞こう> 「伝わってきたあなたの気持ち」 相手の感情に焦点を当てた聞き方を学ぶ 学習活動 指導上の留意点 <導入> 1 第一時の学習内容を振り返り,感想を発表させる。本時の目標を「会 1 本時の目標を知る。 話の中で伝わってきた相手の気持ちを言葉にして伝え返す」と知らせ 2 ウォーミングアップのエ る。 クササイズをする。 2 ①4人組を作る。②その中でペアになる。③ペアは互いに左手で握手 「じゃんけん手叩き」 し,右手でじゃんけんする。④勝ったら握っている相手の手の甲を叩く。 <展開> ⑤負けたら自分の左手の甲が叩かれないよう右手のひらで防ぐ。⑥これ 3 を1分間繰り返す。⑦説明時に「叩くと相手が痛いだろうと思って遠慮 (1) 説明を聞く すると,相手は『仲良くなることを遠慮している』と感じるので,遠慮 (2) モデルを見る しないで叩くことがコツです。」と言い添えるとよい。 ① 生徒二人が実演する 3 (1) (インストラクション)①ふだん相手の気持ちをどれだけキャッ 生徒「試合のある日曜日が チし,伝え返しているかと問い掛ける。②「例えばこんな伝え返しをし 待ちきれないよ」 たらどうかな」と教師が例を見せる。(例)「雑誌の懸賞,当たったよ!」 A「どうせ負けるのに」 A「それがどしたん」B「何の雑誌?」C「ほんと!?」D「うゎあ, B「試合に出してもらえる そりゃうれしいね!」③A,B,C,Dの違いを問い,相手の気持ちに の?」 焦点を当てて聞く練習をすると伝える。 C「ずいぶんと張り切ってい (2) (モデリング) モデルはあらかじめ依頼しておくとやりやすい。 るね」 ①モデルにせりふカードを渡し,4通りの返し方を実演させる。②どの D「早く試合がしたいんだね, 返し方が気持ちを分かってもらえた気がするかをモデルに尋ねる。③モ 楽しみなんだね」 デルに対するフィードバック(賛辞,拍手)を 必ずする。④発言A,B, ② 言葉の返し方を話し合 C,Dの違いを話し合わせ,説明する(板書または用意したカードを貼 う る)。 (3) 実際にしてみる A=相手の気持ちを無視してばかにしている 言葉だけでなく,表情, (4) 振り返る B=自分の関心だけを尋ねている 視線,声の調子などに 4 フィードバック C=伝わってくる感じを伝え返している も注目させる。 幾つかのペアがみんなの D=自分が理解した相手の気持ちを返している 前で実演する (3)(4) (リハーサル)(フィードバック)①「さっきのDのように, <まとめ> 自分が理解した相手の気持ちを言葉にして返してあげると,相手も『分 5 振り返りをする。 かってもらえた』と感じますね。今度は,みなさんが試してみましょう。」 (1) 振り返りシートに記入す と指示し,最初の4人組にする。②一人が話し手,一人が聞き手,二人 る。 が観察者で,4人全員が全ての役ができるよう順番を決めさせる。③話 (2) 振り返りシートを提出す し手にせりふカードを渡し,聞き手に向かって言わせる。④聞き手は相 る。 手の気持ちに焦点を当てた言葉を返す。⑤返した言葉が適当だったか, (3) 次時の予告を聞く。 どんな気持ちがしたか,グループで話し合う。⑥③∼⑤を繰り返す。 各グループの様子に気を配る。 4 幾つかのペアにみんなの前で実演させ,賛辞や拍手を贈る。 5 相手の感情に焦点を当てた聞き方ができると,人間関係も温かいもの になると言い添え,日常的に心掛けて実践することを促す。 ※3-(2)-① 「せりふカード」の例:「今までできなかったけど,とうとうEメールを送れるようにな ったぞ!」「あの人ったら,『絶対ナイショよ』って言ったのに,ほかの人に話してるのよ,もう∼!」 「昨日の試合,僕がミスをしなかったら勝てたかもしれないのに・・・」「はぁ∼,どうして勉強なんかし なくちゃいけないのかなあ」など,生徒になじみの深いケースを用意する。生徒に考えさせてもよい。 22 【指導のための補足①】 この授業が生徒にとって難度が高いと思われる場合, 「上手な聞き方を学ぶ」という予備授業をしておくと よいでしょう。工夫をすれば朝の会や帰りの会を使ってできると思いますが,生徒の実態によっては,一時 間使って丁寧に扱った方がよいでしょう。 学習活動 指導上の留意点 1 説明を聞く。 1 「上手な聞き方って,できていますか? どんな聞き方かな?」 2 モデルを見る。 2 「悪い例を見せます」といって,生徒一人に先生に向かって話し掛け 3 上手な聞き方の特徴を知 させる。先生の聞き方は,①生徒の方を見ない,②身体は何かしながら る。 聞く,③相づちを打たない,④途中で割って入って別の話題を言う,な 4 実際にしてみる。 ど。 5 振り返る。 3 上手な聞き方は,①話し手に身体を向ける,②話し手の顔を見る,③ 相づちを打つ,④話した内容を繰り返す,⑤分かりにくいところを質問 する,⑥最後まで聞く。 4 ペアかグループで体験させる。 5 何人かにみんなの前で実演させ,上手なところを褒め,再確認する。 【指導のための補足②】 生徒同士の会話では,感情を伴わないで事柄だけを伝えることは少ないと思います。しかし,自分の心の 中の感情を上手に相手に伝えることは易しいことではありません。そこで,聞き手が話し手の感情に寄り添 って,相手の立場になって聞き,話し手の感情をキャッチすることが大切になってきます。話し手の方も, 自分が伝えたい感情(それは自分でも明確になっていない場合が多い)を聞き手がうまく理解してくれたか どうか確信がありません。だから,聞き手が「あなたからこんな気持ちが伝わってきましたよ」というメッ セージを込めて言葉を返してあげると,話し手も「分かってもらえた」と感じることができるのです。そし て,話し手自身自分の感情が明確でなかった場合は,聞き手が返してくれた言葉によって,自分の感情に気 付くこともあるのです。このようなやり取りの連続で,人間関係は深まっていきます。 「せりふカード」の例は,1文しか示していません。これでは分かりにくい場合は,状況を説明した文を 付け加えるとよいでしょう。 (例)「あの人ったら,『絶対ナイショよ』って言ったのに,ほかの人に話してるのよ,もう∼!」 ↓ 「宿泊研修のとき,夜,だれが好きかみんなで告白したんだけど,あの人ったら, 『絶対ナイショよ』っ て言ったのに,ほかの人に話してるのよ,もう∼!」 このせりふの場合,話し手の話し方によって伝わる気持ちは異なってきます。話し手が「約束を破ったあ の人に腹が立つ,許せない」という気持ちで話せば,聞き手の返す言葉は「裏切られたような気がして,と ても腹が立つんだね。悔しいんだね。」というのが good になります。一方, 『絶対ナイショよ』とは言ったも のの,ばらされても仕方がない(あるいはばらされてもいい)という気持ちがどこかにあって,ばらされた ことに対する腹立ちよりは,「自分の好きだという気持ちが当の本人に伝わったらどうしよう」という当惑, 恥ずかしさ(あるいは期待)を持ってしゃべった場合は,聞き手の返す言葉は「ほかの人にばれちゃって, 困ったなって感じなのね。もしかして,好きな人に伝わっちゃったらどうしよう・・・とか?」というのが good でしょう。 このように,同じせりふでも込められた感情が異なる場合があります。だから,4人組の演習では必ず「伝 えたかった感情」と「伝わってきた感情」を確認する話し合いをさせます。観察者にも「どんな感情が伝わ ってきたか」「自分ならどう返すか」を発言させるとよいでしょう。 なお,どうしても相手の感情をつかめないとか,うまくできないとかいう生徒がいるかもしれません。そ のような場合には,少なくとも相手の発言の一部分(多くは文末)を繰り返すことを教えます。 (例)「今までできなかったけど,とうとうEメールを送れるようになったぞ!」 23 ↓ 「そう,とうとうEメールを送れるようになったんだね!」 こうすれば, 「あなたの発言をちゃんと聞きましたよ」というメッセージは伝わり,話し手が「分かっても らえていない」とがっかりすることを防げます。ただし,連続してこの方法を使うと,話し手はばかにされ たように感じるので注意が必要です。 人が相手に感情を伝えようとするとき,およそ 35%が言葉(言語)によって,65%が“言葉ではない手段 (非言語)”によって伝わるといいます。 “言葉ではない手段(非言語)”とは,表情,しぐさ,視線,声の大 きさや調子などを言います。ですから,話し手にも聞き手にもこれらを十分に意識させ,言語によるメッセ ージと非言語によるメッセージが不一致にならないように注意させます。 最後に,話すのが苦手な生徒やコミュニケーションをとることに困難さを感じている生徒がいる場合は, 事前に指導したり,グループのメンバーに配慮したり,可能ならティーム・ティーチングを依頼したりすると よいでしょう。 24 計画第二次の第1時 <自分の怒りの感情を知ろう> ・怒りとはどんな感情かを知る 目標 ・怒ると身体感覚がどうなるかを知る 「怒りの火山」 学習活動 指導上の留意点 <導入> 1 本時の目標を知る。 1 ホームワークシート「私が怒りを感じたとき」を確認させる。 <展開> 2 「私が怒りを感じるとき」 2 ホームワークシート「私が怒りを感じたとき」に記入したことを発表 を発表し合う。 させ,板書する。 3 怒りとはどのような感情 3 発表し合った「怒りを感じる状況」の共通点を考えさせる。 かを話し合う。 ① ② 感じた怒りはどんな感情か。 (板書例) 怒り 4 5 拳に力 鼻息荒く 脈拍増加 <まとめ> 7 振り返りをする。 (1) 振り返りシートに記入す る。 (2) 振り返りシートを提出す る。 (3) 次時の予告を聞く。 ワークシートを配布する。 「怒りの火山」の図を板書する。 きっかけ ワークシートに記入する 4 怒りがどのようにエスカ 5 レートするか,そのとき身体 感覚はどうなるかを話し合 う。 6 先生の説明を聞き,ワーク シートに記入する。 どんなとき ・欲しいものが得られなかった ・大事なものを奪われた ・心の平和を乱された ・攻撃された ・とても不安になった ・とても孤独になった どんな ・仕返ししたいような ・強い衝動が混ざった ・不満な 瞳孔散大 爆発 回復 身体 普通 普通 だんだん わけが 分からなくなる 脱力 後悔 頭脳 回復 判断力ゼロ 6 出た意見をまとめながら,怒りのエスカレートと判断力は反比例する こと,怒りのコントロールは初期段階の方が易しいこと,などを説明す る。 7 次時も自分の怒りについて学ぶことを予告する。 25 私が怒りを感じたとき ( )年( )組 氏名( ) 月 日 ∼ 月 日の間で,あなたはどんな状況で怒りを感じましたか。また,その怒りはどの 程度でしたか。下に書きましょう。(不満だった,イライラした,むしゃくしゃした,キレたなどのほかに, くやしかったなども怒りの感情の仲間です。) 怒りを感じた状況(だれが,何をして,どうなった 今までで印象に残っている「怒ったこと」を書いてください。 26 など) 怒りの程度 (○をぬりつぶす) 小 中 大 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 「怒り」とは・・・ ( )年( )組 氏名( ) 1.「怒り」とは・・・ (1) どんなときに起きる感情か ² ² ² ² ² ² ² ² (2) どんな感情か ² ² ² ² 2.「怒りの火山」 ︵ ( ) ︵ ︵ ︶ ( ) ︶ ) ︶ きっかけ ( ( ) 普通 普通 ( ( ) ( ) ( ) ) ( ( ) 27 ) 計画第二次の第2時 <自分の怒りの特徴を知ろう> 「怒りの温度計」 ・自分の怒りの特徴(対象,程度,怒りが起きる状況,表出方法)に気付く。 目標 ・怒りを表出するとどんなことが起きるかに気付く。 学習活動 <導入> 1 本時の目標を知る。 指導上の留意点 1 前時で学習したことを簡単におさらいする。ワークシート「私の怒り のパターン」を配布する。 <展開> 2 ワークシートに記入する。 2 3 発表し合う。 4 先生の話を聞く。 以下のことに留意しながら記入させる。 ○ふざけた回答にならないように指示する。 ○実際にあり得る反応を書かせる(「殺す」という反応には, 「殺したい ほど腹が立つってことかな?で,本当はどうするの?」などと質問し, 実現できそうな反応を書かせる)。 ○どんな反応であっても否定しない。 ○異様に残忍な反応は,個別指導が必要な場合もあるのでチェックして おく。 ○「結果」は,そのように反応したらどんな結果が予想されるかを書か せる。 3 班の中で発表し合わせる。その後,参考例として幾つかを全員の前で 発表させる。 ○どのような内容でも否定しない。 ○発表した内容をばかにした言動が出ないよう注意し,出た場合は指導 する。 4 同じ出来事でも人によって感じ方や反応の仕方が違うことを指摘し, 自分の怒りのパターンを知ることがコントロールにつながると説明す る。 <まとめ> 5 振り返りをする。 5 時間があれば各自の振り返りを発表させ,分かち合う。次時は「怒り (1) 振り返りシートに記入す のコントロール法」を学習することを予告する。 る。 (2) 振り返りシートを提出す る。 (3) 次時の予告を聞く。 28 私の怒りのパターン ( )年( 氏名( )組 ) 100 爆発! 80 怒る 60 イライラ 40 不満 20 残念 0 何ともない あなたは,次のようなとき,どの程度の怒りを感じますか。 「温度」欄 に,右上の「怒りの温度計」にある温度を記入してください。また,そ のように怒りを感じたとき,自分はどんな態度をすると思いますか。そして,そのような態度をとったとき, 自分や周囲にどんなことが起きると思いますか。 出来事 温度 (例)下校時,隣の人が開い た傘が自分の顔に当たった。 100 自分の態度 自分の態度の結果 「痛ぇーなぁ,このやろう!」と多分 相手に嫌われる。親や先生に叱られる。 キレて,殴るかけるかする。 けがをさせたら警察ざたになる。 ①廊下を歩いていたら, ふざけていた人がぶつ かったのに,謝らずに去 っていった。 ②給食のおかずに髪の 毛が入っていた。 ③自分の悪口を書いた 落書きを見つけた。 ④自分が大切にしてい たCDを貸したら返し てもらえない。 ⑤家に遊びに来た友だ ちがゲームを黙って持 って帰った。 ⑥自分の失敗を学級の 人から「あほじゃあ∼」 と笑われた。 ⑦(先生が言います) 29 計画第三次の第1時 目標 <怒りの感情をコントロールしよう> 「キレないテクニック」 怒りの感情をコントロールする方法を学ぶ 学習活動 <導入> 1 本時の目標を知る。 <展開> 2 説明を聞く。 3 モデルを見る。 4 実際にしてみる。 指導上の留意点 1 怒りが爆発しないようにコントロールすることが学校生活をうまく やっていくコツの一つであることを強調する。 2 「みなさんは,自分が怒ってしまいそうになったとき,気持ちを静め たりキレないようにしたりするためにどんな方法をとっていますか?」 と問い掛ける。生徒が実践している方法はすべて批判せず,よい方法は 賞揚する。 3 (1)∼(5)についてそれぞれ説明し,実演する。 (1) 深呼吸は,静かにゆっくりとする。 (1) 深呼吸 (2) カウントアップは,数えていることが相 (2) カウントアップ 手にあからさまにならないよう心の中で (3) カウント深呼吸 数える。 (4) 自己呼び掛け (3) 自己呼び掛けは,経験上効果があった言 (5) リフレーミング 葉がある人はそれでもよい。 4 (1) それぞれのテクニックを用いるのに適当な擬似状況(例:自分の失 敗をみんなが笑っている)を用意する。 (2) 全員がテクニックを体験できるよう,少人数のグループで練習させ る。 (3) うまくできていないグループには直接指導する。(4)グループごと に振り返らせる。 5 フィードバック 5 (1) それぞれのテクニックごとに代表者にみんなの前で実演させる。 (2) うまくできたところを見付けて必ず賞揚する。 <まとめ> 6 振り返りをする。 6 (1) 振り返りシートに記入す (1) テクニックは使わないと身に付かないことを強調し,日常生活の中 る。 でチャンスがあれば使うよう促す。また,テクニックを使ったら,そ (2) 振り返りシートを提出す れについて生活ノート等で教えてほしいと伝える。 る。 (2) 生徒の中から「怒りを外に出してはいけないのか」という質問が出 (3) 次時の予告を聞く。 たら,よいことに気付いたと褒め,「怒りは小さいうちに外に上手に 出せるのがよい。その方法を次時に学ぶ」と告げる。 【指導のための補足】 (1) 深呼吸 昔からよく用いられている方法です。静かに,ゆっくりと深呼吸します。できれば,鼻から吸って口か ら吐くのがよいでしょう。リラクセーションでは,1・2・3で吸って4で軽く止め,5・6・7・8で 吐きます(1・2・3・4で吸って5で止め,6・7・8・9・10 で吐く方法もあります)。余裕があれ ばこの方法も知っておくとよいでしょう。とにかく,静かにゆっくりと深呼吸することです。手を広げた 30 りしてあからさまにすると,相手を刺激して怒らせてしまうことがあるので注意します。 (2) カウントアップ(数唱) 心の中で静かにゆっくりと数を数えます。1から順に,少なくとも5以上,できれば 10 以上数えます。 カウントダウンする方法もありますが,爆発する秒読みと受け取ってしまう生徒がいるかもしれません。 これも,数えていることがあからさまになると,相手を刺激して怒らせてしまうことがあるので注意しま す。 (3) カウント深呼吸 (1)と(2)を同時に行う方法です。1・2・3・4と心の中で静かに数えながら息を吸い,5で止め,6・ 7・8・9・10 と心の中で静かに数えながら吐くとできます。 ※ ※ (1)(2)(3)とも,相手がしゃべっているときはその話を聞きながら行います。相手の方を見ながら。 「怒る」ことと「数を数える」ことは同時にはできません。(2)(3)のねらいは,同時にできないことを させることによって怒りのエスカレートを防ぐことにあります。 (4) 自己呼び掛け(おまじない) 怒ってしまいそうだなと思ったときに,心の中で自分に言葉を掛けます。掛ける言葉は,自分が使えて 効果がある言葉なら何でもよろしい。 「待て」 「ストップ」 「落ち着け」 「タイム」 「怒らない,怒らない」な どの短い言葉から, 「どうしたらいいか考えよう」 「大丈夫,私はうまくやることができる」 「私は落ち着い たままでいることができる」 「自分で自分をコントロールできている感じを味わうぞ」など少々長目の言葉 まで,自分にあったものを探させます。 「ペヨンポヨン」など,本人にしか意味が分からないものでも,目 的を達成できるものならかまいません。 ※漫画,小説,ドラマ等で,やけになりそうになった人が「私には家族(子ども,恋人)がいるんだ・・・・・・」 と踏みとどまる場面がよくありますが,これとよく似ています。前もってテクニックとして身に付けよう とするところと,自然に心の底からわき上がってくるところが異なります。 (5) リフレーミング 状況に対する見方,考え方を変えることがリフレーミングです。そのために,見方,考え方を変えるこ とにつながるような質問を心の中で静かに自分にします(質問せずにできる人はそれでかまいません)。 (例) 「私を困らせようとしてわざとしたのか?」(だれかがぶつかった,机上の物を落とした等の場合) 「怒ることで問題は解決するか?」 「こうなったのは私のせいか?」 ※教師はよくリフレーミングを用いています。宿題を忘れた理由を「怠けた」というフレーム(見方) から「やろうとしても分からなくてできなかったのかもしれない」 「昨日の部活で疲れてできなかったのか もしれない」に変えたりするのがそうです。 「怠けた」と思えば怒りたくなりますが,見方を変えるとブレ ーキが掛かりやすくなります。部活動等で叱られた生徒に対して, 「努力が足りないことを責められている のではなく,見込みがあるから叱咤されているんだよ」と励ましたりするのも,リフレーミングを用いた 方法です。 し っ た 31 計画第三次の第2時 <怒った気持ちを表現しよう> 「DESC法」 ・非攻撃的な自己主張ができる表現の仕方を身に付ける 目標 ・大切なのは,怒らないことではなく,怒りを感じてどうするかであることを知る 学習活動 指導上の留意点 1 (1)「怒り」はだれでも感じる感情なので, 「怒らない」ことはできな <導入> い。感じた「怒り」をどうするかが大切だ。(2)「怒り」をエスカレー 1 本時の目標を知る。 トさせる前に上手に表現する方法を学ぶ。・・・と話す。 2 「困ったことが起きていて,だんだんと腹が立ってしまいそうなとき, <展開> 怒りが小さいうちに上手に自分の気持ちを表現する練習をします。」と 2 説明を聞く。 言って,DESC法の説明をする(あらかじめ模造紙に記しておく)。 3 場面設定をし,DESC法に従って表現するせりふを考え,表現して みせる。 (例)清掃時間にほうき係のX夫とY夫が紙くずで野球をして掃除をし ない。同じほうき係として腹が立つが,どう言ったらいいか困っている。 3 モデルを見る。 (D)相手の気持ちも自分の気持ちも入れないで,出来事だけを説明す ると?→「ほうき係の仕事をしないで遊んでいる」 (E)いい気持ちじゃないことを素直に表すと?→「自分一人で全部し なければならないように感じる」 (S)したいこと,してほしいことを言うと?→「ほうき係の仕事をし てほしい」 (C)してくれた結果として起きそうなよいことを予想すると?→「余 裕を持って掃除ができる」 このように,D⇒E⇒S⇒Cの順に,落ち着いてゆっくり言うのがD ESC法です。次のようになりますね。「君たちがほうきの仕事をしな いで遊んでいるから,ぼくは一人で全部しなくちゃいけないように感じ るよ。ほうきの仕事をしてほしいな。そうすれば,みんな余裕を持って 終われると思うよ。」 4 質問があれば受け付ける。 4 質問があればする。 ○(E)で「腹が立つ」という反応が予想されるが,それは相手が遊ん でいる結果ではなく,「自分一人でしなければならない」と感じた結 5 実際にしてみる。 果であることを説明する。 ○「DESC法を使って言っても相手が言うことを聞いてくれなかった らどうするか」という質問が予想される。まず,最初の(S)を相手 が受け入れてくれなかったときを予想して,(C)の後に別の(S) を言うこともできると説明する。「もし,ほうきの仕事がどうしても できないのなら,だれかと仕事を代わってもらってほしい」など。 ○「それでも聞いてくれない場合は?」という質問には,「こうやって 言えば相手が必ず言うことを聞いてくれるとか,相手は自分の言うこ 6 フィードバック とを聞くべきだなどと思ってはいけません。私たちは相手がどうする かを提案することはできますが,その提案を受け入れるのも拒否する のも相手が決めることで,こちらが決めることではないのです。」と <まとめ> 説明する。 7 振り返りをする。 5 (1) 「自習時間にXさんとYさんがおしゃべりばかりして,自分がプ (1) 振り返りシートに記入す リントに集中できなくて困っている場面」を設定する。(2) DESC法 る。 に従ってせりふを考えさせる。(3) 全員がせりふを言えるよう,2∼4 (2) 振り返りシートを提出す 人の小グループで演習させる。 6 幾つかのグループにみんなの前で実演させ,よいところを賞揚する。 る。 (3) これまでのまとめを聞く。 7 計画第一次の第1時から学習してきたことを振り返り,「実生活に試 してみることが大切」だと強調する。そして,「試してみたらその結果 を教えてほしい」と要求する。 【指導のための補足】 32 計画第二次の第1時「自分の怒りの感情を知ろう 怒りの火山」で学習したように,怒りの程度が小さい うちは判断力もあって,コントロールしやすいです。それはちょうど火が小さいうちは消火しやすいのと同 じですね。そこで,怒った気持ちを表現するのも,怒りの程度が小さいうちに行います。怒りの程度は,大 まかに言って,次の3段階に分かれます。 1 マイルドな怒り・・・「好きでない」「同意できない」「いやだ」という気持ち 2 中程度の怒り ・・・「腹立たしい」「イライラする」「反対だ」「煩わしい」と言いたい気持ち 3 最も強度の怒り・・・「頭にくる」「怒鳴る」「ぶん殴ってやりたい」などの激怒の気持ち この授業では, 「自分にとって困ったことが起きているけど,うまく言えそうにない,何と言ったらいいか 迷う」という,そのまま何も表現しないでいれば次第に怒りがエスカレートしそうな場面を想定して,怒り が3の程度に至る前に上手に表現する方法を学びます。その方法は“DESC法”です。DESC法は次の ようなステップを踏んで自分の気持ちや考えを明らかにし,せりふ化してから話す方法です。 DESC法 D=describe:描写する 自分が対応しようとする状況や相手の行動を描写します。客観的,具体的な,特定の事柄・言動を描 写します。決して相手の動機,意図,態度などを描写するのではありません。 E=express,explain,empathize:表現する,説明する,共感する 状況や相手の行動に対する自分の主観的気持ちを表現したり,説明したり,相手の気持ちに共感した りします。特定の事柄や言動に対する自分の感情や気持ちを解決志向で,明確に,あまり感情的になら ずに述べます。 S=specify:特定の提案をする 相手に望む行動,妥協案,解決策などの提案をします。具体的,現実的で,小さな行動の変容につい ての提案を明確にします。 C=choose:選択する 肯定的,否定的結果を考えたり,想像したりして,それに対してどういう行動をするか選択肢を示し ます。その選択肢は具体的,実行可能なもので,相手を脅かすものではないように注意します。 このまま生徒に提示すると難しいので,次のように説明するとよいでしょう。 ... (D)出来事だけを言う 何が起きているかを客観的な見方をして言葉にします。自分の気持ちや相手の 気持ちを含まない言い方で,相手も認めるような事実だけを述べます。 . (E)いい気持ちでないことを言う 自分の気持ちや感じていることを,感情的にならないで素直に言い ます。 . (S)したいこと,してほしいことを言う こうなったらいいな,こうしてほしいな,と思うことを,短 く,分かりやすく,きつくならないように言います。 . (C)結果がどうなるかを言う (S)の結果どんなよいことが起きるか, (S)のようにできないならほ かにどんな方法があるかを言います。 (例1)自習時間にX子とY子が大声で話し始めた。とてもうるさくて,プリントをする邪魔になる。自 分はまだプリントが終わっていないので,静かに取り組みたい・・・という状況。 <よくある反応> ①うるさいとは思うが何も言えない(自分の中に怒りの感情がたまる) ②「うるさいなあ,静かにしろよ!」 (相手が言うことを聞いてくれないと,トラブルの元。言うことを 聞いてくれても,こちらの心も平穏でなくなり,静かにプリントに取り組むという願いを達成しにく くなる。) 33 <DESC法> 「あなたたちが大きな声で話すと(D)私には騒がしく感じるわ(E)。私はプリントの問題に集中した いので(E),話すのをやめてもらえないかしら(S)。そうすれば,みんなも気持ちよくできると思う よ(C)。」 (例2)清掃時間に,ほうき係のX夫とY夫が紙くずで野球をして掃除をしない。自分も同じほうき係な ので,このままだと一人で3人分の仕事をしなければいけないし,掃除時間内に終わらないかも しれない。 <よくある反応> ①清掃時間に遊んではいけないとは思うが何も言えない(自分の中に怒りの感情がたまる) ②「遊ばないで掃除をしろよ!」 (相手が言うことを聞いてくれないと,トラブルの元。言うことを聞い てくれても,互いに後味が悪く,二人との関係がギクシャクする。) <DESC法> 「君たちがほうきの仕事をしていないので(D),ぼくが3人分しなきゃいけないように感じるよ(E)。 ほうきの仕事をしてくれないかな(S)。そうすれば,余裕を持って終われると思うよ(C)。」 なお,指導者は,怒りは外界の出来事や周囲の言動の結果起きるのではなく,出来事や言動を自分が認知 した結果,自分で怒りの感情を引き起こしているのだ,ということを知っておくとよいでしょう。つまり, 「あなたの言動」の結果「私が怒る」のではなく,「あなたの言動」で,例えば「私が不安を感じ」「その不 安を感じたくない」ので「私が怒る」のです。したがって,怒りは自分の責任下にあることになります。 最後に,この授業を通して生徒に学んでほしいことをもう一度確認しておきます。 (1) 「怒り」を感じるのは悪いことではなく,自然なこと。 (2) 問題なのは,「怒り」を感じてどうするかであること。 (3) 感じた「怒り」はエスカレートしないうちに表現する方がよいこと。 (4) そのためにDESC法があること。 したがって,DESC法の習得にあまりこだわる必要はありません。生徒が「怒りは感じてもいいし,外 に出してもいいんだ。大切なのは,自分も相手も傷付かない出し方をすることなんだな」と感じることが大 切なのです。また,DESC法に基づいた思考がすぐにできなくて,せりふがすらすら出てこなくてもかま いません。「え∼っと,出来事の次はいい気持ちじゃないことを言うんだから・・・」と考えながらでもかまわ ないし,考えるために相手に「ちょっと待ってね」と言ってもよいのです。その段階で怒りのエスカレート は止まっていますから。もし,DESC法の理解が難しい生徒がいるようなら,DとEができるだけでもず いぶん違うでしょう。 <DとEだけの例> 相手がこっちをにらんでいるような場合。「君がずっとこっちを見ているから(D),ぼくはにらまれて いるように感じて不愉快だ(E)。」 生徒がどうしてもDESC法にとらわれてしまうようなら, 「計画第三次の第2時 怒った気持ちを表現し よう」を2時間扱いにするか,朝の会や帰りの会等を使って繰り返し練習することをお勧めします。 34 振り返りシート ( 1 ) どちらかというと 楽しめなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 楽しめた 4 とても 楽しめた 5 どちらかというと できなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと できた 4 とてもよく できた 5 どちらかというと できなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと できた 4 とてもよく できた 5 相手はあなたの気持ちをうまくキャッチしてくれたと思いますか。 ぜんぜん 思わない 1 5 氏名( 相手の気持ちをうまくキャッチすることができましたか。 ぜんぜん できなかった 1 4 )組 相手に自分の気持ちをうまく伝えることができましたか。 ぜんぜん できなかった 1 3 )年( 今日の授業は楽しめましたか。 ぜんぜん 楽しめなかった 1 2 1−1 どちらかというと 思わない 2 どちらとも いえない 3 今日の授業の感想を自由に書いてください。 35 どちらかというと 思う 4 とてもそう 思う 5 振り返りシート ( 1 氏名( ) どちらかというと 楽しめなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 楽しめた 4 とても 楽しめた 5 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 どちらかというと できた 4 とてもよく できた 5 話し手の気持ちを感じることができましたか。 ぜんぜん できなかった 1 4 )組 話し手の気持ちに焦点を当てて聞く聞き方が分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 3 )年( 今日の授業は楽しめましたか。 ぜんぜん 楽しめなかった 1 2 1−2 どちらかというと できなかった 2 どちらとも いえない 3 伝わってきた話し手の気持ちを言葉にして返すことができましたか。 ぜんぜん できなかった 1 どちらかというと できなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと できた 4 とてもよく できた 5 5 自分が話し手のとき,自分の気持ちを言葉にして返してもらうと,どんな気持ちになりましたか。 6 今日の授業の感想を自由に書いてください。 36 振り返りシート ( 1 ) どちらかというと 楽しめなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 楽しめた 4 とても 楽しめた 5 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 「怒り」をコントロールしやすい段階,しにくい段階が分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 5 氏名( 「怒り」がエスカレートすると,身体や頭脳がどうなるか分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 4 )組 「怒り」は,どんなときに感じる,どんな感情か,分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 3 )年( 今日の授業は楽しめましたか。 ぜんぜん 楽しめなかった 1 2 2−1 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 今日の授業の感想を自由に書いてください。 37 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 振り返りシート ( 1 ) どちらかというと 楽しめなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 楽しめた 4 とても 楽しめた 5 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 「怒り」を態度に出して表したとき,どうなるかが分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 5 氏名( ほかの人の「怒り」の感じ方,表し方のパターン(特徴)が分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 4 )組 自分の「怒り」の感じ方,表し方のパターン(特徴)が分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 3 )年( 今日の授業は楽しめましたか。 ぜんぜん 楽しめなかった 1 2 2−2 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 今日の授業の感想を自由に書いてください。 38 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 振り返りシート ( 1 )組 氏名( ) どちらかというと 楽しめなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 楽しめた 4 とても 楽しめた 5 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 「キレないテクニック」が分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 3 )年( 今日の授業は楽しめましたか。 ぜんぜん 楽しめなかった 1 2 3−1 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 あなたが使えそうなテクニックはどれですか。(○をつける) (1) 深呼吸 (2) カウントアップ (3) カウント深呼吸 (4) 自己呼び掛け (5) リフレーミング 4 どんなときにそのテクニックが使えそうですか。 5 今日の授業の感想を自由に書いてください。 39 振り返りシート ( 1 ) どちらかというと 楽しめなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 楽しめた 4 とても 楽しめた 5 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 どちらかというと 分かった 4 とてもよく 分かった 5 「怒り」の表現の仕方(DESC 法)が分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 5 氏名( 「怒り」を表現してもいいんだ,ということが分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 4 )組 「怒り」を感じるのは悪くないんだ,ということが分かりましたか。 ぜんぜん 分からなかった 1 3 )年( 今日の授業は楽しめましたか。 ぜんぜん 楽しめなかった 1 2 3−2 どちらかというと 分からなかった 2 どちらとも いえない 3 今日の授業の感想を自由に書いてください。 40 FAX用紙(所員研究係行き) ******************* ***** 岡山県教育センター研究紀要をお読みくださり,ありがとうございました。皆様の御意見 を,今後の所員研究や学校支援の改善のための参考とさせていただきますので,次のアンケ ートに御協力ください。 岡山県教育センター研究紀要に関するアンケート 本書のタイトル:研究紀要第246号 1 中学校におけるアンガーマネージメントの試み あなたの所属はどちらですか。 県内:小学校,中学校,高校,特殊教育諸学校,大学,教育機関,その他( 県外:小学校,中学校,高校,特殊教育諸学校,大学,教育機関,その他( 本書を何で知りましたか。 ( a) 岡山県教育センターからの送付 ( c) 岡山県教育センターのWebページ ( e) 岡山県教育センター所員研究成果発表会 ( g) その他( ) ) 2 (b) 岡山県教育センターの所報 (d) 岡山県教育センターの研修講座 (f) 他の先生等からの紹介 ) 3 本書の内容についての御意見・御感想をお聞かせください。 (1) よかった点,教育実践に役立つと思われる点について記述してください。 (2) 工夫,改善すべき点について記述してください。 4 生徒の「怒り」や「攻撃性」に関する研究について,今後どのような内容を取り上げて ほしいですか。 御協力ありがとうございました。 このページの写しをファクシミリで下記へお送りください。 ******* FAX 086−272−1207 岡山県教育センター所員研究係 平成13・14年度岡山県教育センター個人研究 教育相談協力委員会 協力委員 岡 島 靖 岡山大学教育学部附属中学校教諭 (平成13年度 岡山市立岡輝中学校教諭) 山 﨑 克 磨 岡 山 市 立 竜 操 中 学 校 教 諭 松 末 昌 樹 岡 山 市 立 妹 尾 中 学 校 教 諭 横 田 貴 弘 真 備 町 立 真 備 中 学 校 教 諭 なお,岡山県教育センターでは,次の者が本研究に当たった。 渡 辺 淳 一 教育相談部指導主事 平成15年2月発行 中学校におけるアンガーマネージメントの試み 編集兼発行所 〒703-8278 岡山県教育センター 岡山市古京町二丁目2番14号 TEL (086)272-1205 FAX (086)272-1207 URL http://www.edu-c.pref.okayama.jp/ E-MAIL [email protected]. jp 9 Okayama Prefectural Education Center
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