SEMI News - SEMI.ORG

SEMIの最近の活動から
一年でいちばん過ごしやすい季節となりましたが、皆様ご清祥のことと存じ上げます。
さて、3、4月には、SEMIではHTUとGFPCという2つの大きなイベントがありました。
HTU(ハイテク・ユニバーシティー)は、理工系離れが進む青少年に半導体関連技術の面白
さを知ってもらうため、SEMIが世界各地で進めているプログラムで、今回は日本での二回目の
.....
開催となりました。茨城県下の4つの高校から男女それぞれ18名の生徒が参加し、ひたちなか
市の日立ハイテク殿とルネサス テクノロジ殿のご協力のもと、3月25・26の両日開催されまし
た。高校生たちのために工夫された講義や実習には、生まれて初めてのバニースーツを着用
してのクリーンルームへの入室、半導体製造ラインの見学、そして自分たちで分解した携帯電
で拡大するなど、さまざまな企画が盛り込まれ、
話から取り出したICをSEM(走査型顕微鏡)
SEMIジャパン 代表
中川 洋一
生徒さんに存分に楽しんでもらえました。講師の先生をはじめ主催者側は、次回はもっと完成
度を高めるぞとさらに張り切っております。
一方、今年のGFPCは、宮崎のフェニックス・シーガイヤ・リゾートで開催されました。GFPC
は、フラットパネル・ビジネスに関わる世界のエグゼクティブが一同に会するセミナーで、情報
入手とネットワークの拡大に活用いただいております。日本のほか、米国、カナダ、英国、
ドイツ、
スウェーデン、フィンランド、ロシア、中国本土、香港、台湾、韓国と世界12の国と地域から過去
最高の200名を超える参加者がありました。東国原宮崎県知事のスピーチと知事を囲んでの
記念写真で和やかにオープンしたGFPCは、世界を代表する講師の方々からのご講演、活発
なラウンド・テーブル・ディスカッションなどが行われ、参加者の皆様にご好評をいただきまし
た。
SEMIジャパンでのこれからの主な行事は、グランキューブ大阪で6月19・20日に開催される
SFJ(SEMI Forum Japan)
、東京ビッグサイトで7月30日から3日間開催される太陽光発電の総合
イベントPVJapanがあります。
今後ともみなさまのご支援を宜しくお願い申し上げます。
SEMI News • 2008, 5-6
Contribution Article
明るい将来のため
株式会社日立ハイテクノロジーズ 執行役常務 中村 修
最初に、SEMIの皆様ならびに業界関連の皆様には日頃大変
お世話になっており、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
講師の提供をさせていただき
ました。SEMIの活動の中でも、
教育という未来を見据えた素
また、皆様のご活躍の内容を拝見させていただくにつけ、敬
晴らしい観点といえましょう。
服の念を抱かざるを得ませんことを改めて申し上げます。
ところで、SEMIジャパンは今年1月から中川代表を迎え、新体
さて、SEMIの活動と業界の活動に関して僭越ながら一言申し
制でスタートされました。SEMIの活動はSEMIジャパンの方々
上げたいと思います。私個人としては、2000年11月のITPC
と関連業界会員メンバーの方々とのチームプレーであり、運営
(International Trade Partners Conference)
から本格的にSEMI
は会員の会費と各イベントの収益で成り立っていると理解して
の活動に参加させていただいております。
以降、ITPCへは2001年の9.11のために参加を控えたのを除
おります。これらを前提にして、新体制で活動されるSEMIジャ
パンに対して、私なりに若干のお願いをさせていただきたいと
き、連続して参加しています。2004年にはGlobal Vice Chairman/
思います。
日本委員会委員長、
2005年にはGlobal Chairmanを担当させて
①グローバル企業としてのSEMIにおけるSEMIジャパンの位置付
いただきました。セミコン・ジャパンでは、2004年から諮問委員を担
当させていただいております。また、私ども日立ハイテクノロジー
ズとしても、SEMIジャパンの各方面への委員会活動において委
員を出させていただき、積極的に取り組んでいます。今後とも引
け/SEMIグローバルの各々の組織と役割の明確化
②SEMIジャパンのより効率的な運営/スタッフの役割の明確化・
効率化
③情報の公開/会員企業への運営、経営状況報告
続き積極的に取り組んでまいります。
SEMIには業界のさまざまな活動のいわゆる幹事役として、ま
私事ですが、本年 4月より当社の半導体製造装置営業の統
た情報発信基地として、非常に重要な役割を担っていただいて
括本部長を拝命することになりました。2008年度の半導体市場
おります。そして、半導体、液晶、太陽光発電と、その活動の市場
は、さまざまな要因から厳しいスタートになりました。その中で重責
をさらに広げております。また最近では、ハイテク・ユニバーシ
を担うことになりました。
ティへの取組み、つまり高校生を対象とした半導体業界、ハイ
テク産業への啓蒙活動にも力を入れて取り組んでいます。この
私どもは、2001年10月に日立製作所の半導体製造装置部門
ような社会貢献活動は非常に重要であり、大いに評価できます。
と日製産業が事業統合して、日製産業の従来からある商事部門
(株)
私どもも今年3月末の第2回目ハイテク・ユニバーシティに
と併せて、
(株)
日立ハイテク
ノロジーズが発足しました。その後、製
ルネサステクノロジ様とともに参加し、会場、プログラムの企画、
造部門として基板実装装置部門を統合、さらには半導体検査装
置、液晶関連装置、ハードディスク関連装置を統合し、自社製造
製品群を増やし現在に至っております。商事部門と製造部門が
共存し、相互にシナジーを進め、グローバルな事業展開を目指し
ております。今後ますますグローバルな展開が余儀なくされて
いく状況の中で、私どもはグローバルなコラボレーションを実
行し、信頼の得られる事業展開を進めてまいる所存です。
SEMIのグローバルな活動のご支援を賜り、さらには業界関連
の皆様の一層のご指導ご鞭撻を賜りたく、よろしくお願い申し
上げます。
高い関心を集めたハイテク・ユニバーシティ in 茨城
(茨城新聞2008年3月26日付)
5-6, 2008 • SEMI News
最後に、SEMIジャパンならびに半導体市場の更なる発展を祈
念して、ご挨拶とさせていただきます。
1
GFPC 2008 Report
GFPC(Global FPD Partners Conference)2008 報告
−テーマは“Green & Growth - New FPD Driving Forces”−
GFPC 2008 エグゼクティブ・ステアリング委員 / 株式会社アルバック 営業企画室 市場調査部長 佐藤 光世
去る4月9日
(水)∼12日
(土)の4日間、九州宮崎フェニック
などは、前回まで行われてきた取組みに加え、環境の視点から切
ス・シーガイア・リゾート・ワールドコンベンションセンターサ
り込むという、正に時流を捉えた会議となった。ただし、問題点
GFPC
(Global FPD Partners Conference)
2008が
ミットにおいて、
もあった。ひとつはグランドフィナーレ・パネルディスカッショ
開催された。今回のGFPCへの参加者数は、前年比24.9%増の
ン。初日から快調に各セッションが盛り上がってきたが、フィナ
201名で、世界12ヵ国・地域からの参加があり、GFPCとしては最大
ーレとしてはパンチ不足だった。もう少し初日、2日目の議論を
規模での開催となった。
踏まえた構成にしたかった。もうひとつは、参加対象者をエグゼ
GFPC 2008のテーマは「Green & Growth-New FPD Driving
クティブクラスとしているため、参加費が高めなことである。企
Forces」で、従来のLCD中心の討議内容に加え、電子ペーパー、
業の中堅や中小企業でも参加できるような救済策はないものだ
有機ELなどの新規ディスプレイも積極的に討議内容に加えら
ろうか。
れた。さらに、今回新しい試みとして太陽電池に関するセッショ
いずれにせよ、同会議は、今後のFPD業界を占う意味で、ひと
ンも加えられ、新規分野との融合も進む開放的な会議となった。
つのターニングポイントを迎えたことを実感される会となった。
物事は、ひとつがうまく回り始めると連鎖的に良い点が波及
していく傾向がある。今回のGFPCはその典型例とも言え、各講
師の講演、パネルディスカッション、ブレイクアウトセッション
時間
種類
主な内容は表に示すとおりである。以下、各セッションの概要
をまとめる。
テーマ
講演者/モデレータ
4月9日
(水)
14:00-16:00
太陽光発電セッション
特別企画
「宮崎県総合農業試験場本場」見学
4月10日
(木)
08:30-08:45
ウェルカム・リマークス
08:45-09:30
オープニング・キーノートスピーチ
TFT-LCDディスプレイ産業を超えて
09:30-10:15
キーノートスピーチ
中国液晶産業の将来
SVA, President, Xinhua Fu
モデレータ:日経BP社 日経マイクロデバイス発行人 兼
日経ものづくり発行人 望月 洋介
宮崎県 知事 東国原 英夫
AU Optronics, Vice Chairman & CEO, Hsuan Bin Chen
10:35-12:20
パネルディスカッション
次世代携帯情報端末“スマートフォン”
13:20-14:50
エグゼクティブ・
ラウンドテーブル
ディスプレイ産業の新たな成長機会を
探る
15:10-15:55
キーノートスピーチ
メディアとディスプレイ
ソフトバンク 広報室長 田部 康喜
15:55-17:40
パネルディスカッション
紙が消える日、電子ペーパーの将来
モデレータ:東海大学 工学部 光・画像工学科教授 面谷 信
08:30-09:15
キーノートスピーチ
デジタルシネマ
日本電信電話 未来ねっと研究所所長 萩本 和男
09:15-10:00
キーノートスピーチ
EHS/イノベーション
4月11日
(金)
BRICs/VISTAと電子ディスプレイ
10:30-12:00
ブレイクアウトセッション
離陸した有機ELディスプレイの現状と
将来動向
太陽光発電−ビジネスと技術−
13:15-14:00
キーノートスピーチ
車とディスプレイ
14:00-14:45
キーノートスピーチ
グローバルビジネス環境
15:15-17:15
グランドフィナーレ・
パネルディスカッション
ディスプレイ産業の新たな成長機会を
探る
17:15-17:30
クロージングリマークス
太陽光発電技術研究組合 理事長 桑野 幸徳
モデレータ:フィノウェイブ インベストメンツ 取締役社長
若林 秀樹
モデレータ:日経BP社 日経マイクロデバイス 編集長 朝倉 博史
モデレータ:Edwards Korea, President, J.C. Kim/
テック・アンド・ビズ 代表 北原 洋明
トヨタIT開発センター 代表取締役社長 山本 圭司
経営共創基盤 代表取締役CEO 冨山 和彦
(元 産業再生機構 代表取締役専務COO)
モデレータ:Samsung SDI, Corporate R&D Center,
Executive Vice President, CTO, Ho Kyoon Chung
シャープ 常務取締役 研究開発本部長 水嶋 繁光
4月12日
(土)
07:00-16:00
2
ソーシャルアクティビティ
SEMI News • 2008, 5-6
GFPC 2008 Report
■「話題の人」東国原英夫知事本人が登場
的に取り組むという。これらの技術を用いて、32型ECOデザイ
初日は、
昨年宮崎県知事に就任にした
「話題の人」
東国原英夫
08年にLCD-TVの消費電力を
ンのLCD-TV用パネルを生産し、
知事本人が登壇、挨拶からスタートした。同氏は、宮崎県のセー
56W以下にまで下げる。これにより、台湾第1号の原子力発電所
ルスマンとして注目を集めているが、粛々と行政を施行してい
のエネルギー消費量の40%を節約できるという。以上、AUO
ることをアピールした。特に、韓国との直行便があること、産業
CEOのH. B. Chen氏の講演要旨を述べた。要は、これまで製
誘致にも積極的であることなどを、短時間内で早口で訴えた。
造業が当たり前としてきた省エネルギーと低コスト化対策を、Green
というスローガンの下に、企業活動、生産活動の目標として取り
組むということである。台湾トップ、世界有数のTFT-LCDメー
カーが、このような取組みについてスマートに提示したことに、
会場の参加者は唸らされ、圧倒され、拍手を送っていた。
Greenへの取組みに関連して、太陽光発電技術研究組合 理事
長の桑 野 幸 徳 氏は、
「 Expecting More Solid Convergence
between Photovoltaic Power Generation Industry and Semiconductor Industry」
とする基調講演で、エネルギー消費、代替
エネルギー、IT技術について総括した。もともと、TFT-LCDに
使用されるa-Siと薄膜太陽電池に使用されているa-Siは同根で
ある。桑野氏は、世界で初めて自宅に太陽電池を設置・発電し、
東国原宮崎県知事と握手するSEMIのDan Martin上級副社長
■ Greenを取り入れたLCD製造
(AUO)
のVice
オープニングの基調講演は、台湾AU Optronics
Chairman & CEO, H. B. Chen氏。Chen氏は、
「Beyond TFT-
電力会社に電気を売電した人である。この経験は桑野氏の自著
にも示されているが、現在ドイツを中心としたフィールド・イン・
タリフの先駆けとなった。また桑野氏は、太陽電池と超伝導ケ
ーブルを組み合わせたAlbany Cableサイトを紹介した。
LCD Display Industry」
という今回のGFPCの主旨を見事に捉え
たプレゼンテーションを行った。結論から言えば、AUOは台中で
■ ビジネスの厳しさを痛感
建設中のFab “L7B”を、2008年末までにGreen Fabの旗艦工場
元 産業再生機構 代表取締役専務COOで経営共創基盤 代
と位置付ける。
(LEEDはLeadership in Energy and
「LEED」
表取締役CEO 冨山和彦氏は、産業再生機構時代の企業再建
Environmental Designの略。
)
そのため、Chen氏はAUOの取組みの4つのポイントを示した。
の経験を実例で語った。その中で冨山氏は、再建人として選任し
た管財人でその職務を全うしたのは1/4に過ぎなかったこと、また
、2つ目は02年から
ひとつ目は2000年からの「Efficiency Focus」
リストラは、その企業、団体が全滅しないための次善の策である
、3つ目は05年からの
「Value Focus」
、4つ
の
「Technology Focus」
ことを示した。重要なことは、日本的温情に流されないこと。そして
「Vision Focus」
と、段階的に加えていることを示
目は08年からの
それを実行する責任者の人間としてのタフさが重要であるとい
した。Efficiencyは、01年にADTとUnipacが合併、さらに06年に
う。冨山氏の話は聞いていてあまり気持ちのいいものではなか
QDIを吸収したことを指す。Technologyとは、
「AMVA」
「ASPD」
ったが、いざという時は、氏の話を思い出して適切に対処すべき
「Hi Color」
「ATP in cell」
などの同社が持つ技術を指す。
「APE」
だと感じた。
Valueは、CS、ソリューションなどである。08年から取り組み始め
「Environment
たのはVisionである。これは「Green Solution」
■ アプリケーションに広がり
Caring」である。同社のGreen Solutionの取組みは、①Green
今回のGFPCは、中小型アプリケーションについてのテーマが
Innovations ②Green Procurement ③Green Production ④Green
充実してきたことも特徴のひとつである。初日は、スマートフォ
Recycling ⑤Green Logistics ⑥Green Serviceに分けられる。
ンについてのパネルディスカッションがあった。日本、アジアか
さらに同社の掲げるGreen Innovationsは、①ノートブッPC用
TFT-LCDのバックライトを、11年までにすべてLEDに置き換え
らパネラーが参加し、活発な議論が行われた。新しいパネルとし
て、有機ELへの期待も語られた。
る②モニタおよびTVの消費電力を半分にする③CCFLの水銀
また、電子ペーパーに関するパネルディスカッションも行わ
使用量を30%削減する、などである。また、製造技術についても
れ、モデレータの東海大学 面谷氏、ブリジストン 増田氏、凸版
環境の視点から見直すほか、
再利用可能材料の使用などに徹底
印刷の檀上氏、セイコーエプソン 飯野氏などが議論を行った。
5-6, 2008 • SEMI News
3
GFPC 2008 Report
壇上氏は、実物を常に携帯して電子ペーパーの理解を求めて
OLEDに向く新アプリとは何か?との問いには、とにかく市場
いた。会場からは「紙と比較した電子ペーパーの必要性」
に関
に TVとしての製品を出すことで新しいアプリが見えてくる
する問いがあったが、私個人としては、タグや電子ブックとして
とし、狙いはポスト液晶TVではなく、今ま
(ソニー、三星SDI)
電子ペーパーが理解されてきていることを感じた。また、紙と比
でのTVのコンセプトを変えるようなTVを目指すべきだとの意
べるのであれば、表示媒体としてのみだけでない何か別のアプロ
見が会場からも出された。薄さから来る期待はフレキシブル
(ベ
ーチがあるのではないかと感じた。
ンダブル)
に向かい、有機半導体といっしょになれば実現できる
との意見も出された。モデレータの進行もうまく、会場からの質
■ さらに突っ込んだブレイクアウト
問にパネリストが答える場面も続出し、熱のこもったディスカッ
ブレイクアウトセッションは、さらに少人数に絞り込んだパ
ションを展開した。会場の多くの意見としてはポスト液晶とし
ネルディスカッションである。有機EL、BRICs、太陽電池に関す
てのOLEDではない、新しいデバイスとしての新アプリケーシ
るブレイクアウトが持たれた。
ョンの登場が待望される。こんなまとめが適当ではなかったか。
1. BRICs/VISTAと電子ディスプレイ
GFPC 2008のテーマである“Green & Growth”のGrowth市
場成長について地域の観点を考えた時、今後大きくFPD市場を
(本セッション担当:大日本スクリーン 嶋治 克己)
3. 太陽光発電−ビジネスと技術−
本セッションでは、日本、韓国、台湾、米国からの報告があった。
牽引して行くのは、発展途上国であるBRICs/VISTA諸国である
米Applied Materials副社長Jonathan C. Pickering氏は、同社の
と思われているにもかかわらず、意外とこれらの国々について知ら
太陽電池製造システムが累積で9セットの受注を獲得し、すでに2
ないことが多いのも事実である。そこで、それら地域の経済動向
セットが設置に入っていることを明らかにした。また台湾 Gallant
に詳しい識者として、若林氏、BRICs研究所の門倉氏、そして松
Precision MachiningのLai-Cheng Chen氏は、台湾の太陽電池
下電器のTVメーカー地域IVOの担当者の和田氏、現場でディ
Chen氏によると、
台湾太陽電池メーカ
産業の現状について語った。
スプレイ製造を行っている橋本氏によるパネルを行った。
ーは、結晶系が11社、薄膜系が10社予定されている。なおGallant
冒頭モデレータである若林氏より
「長期的な視点と短期的な
Precision Machiningは、結晶系太陽電池製造装置メーカーであ
視点からBRICs/VISTAでのPFD市場はどのように成長してい
る。太陽電池のセッションでは、
「エネルギー・ペイ・バックタイム」
くか」
という問題提起があり、パネリスト各位の意見を発表、討
について議論が出た。太陽電池のエネルギー・ペイ・バックタイ
議が行われた。BRICs/VISTA諸国は資源輸出による経済成長
ムは2年半∼3年とみられる。
(本セッション担当:筆者)
に強く依存していると思われているが、実は非常に堅調な内需が
経済成長を牽引しているとの報告があり、短期的には世界的に
進行するサブプライムローンに多少影響されることはあるが、
内需が実体経済を牽引しているBRICs/VISTA諸国は着実に経
済成長を続け、パネル市場も拡大していくのではないかという結
論であった。特に、中国の現場で実際にパネル製造に携わるIVO
社 橋本社長による成長実感が強く語られていたことは印象的
であった。
(本セッション担当:三井物産 小日山 功)
2. 離陸した有機ELディスプレイ
(OLED)
の現状と将来動向
パネリストはSamsung SDIのLee氏、出光興産の細川氏、住友
化学の大西氏、ソニーの占部氏、TMDの茨木氏。各パネリスト
からのポジショントークのあと、ディスカッションに入った。話題は
■ 最後に
どうしても液晶デバイスとの違いを中心に議論が進み、いくつ
そのほかGFPC 2008では、デジタルシネマや自動車技術に関
かの利点の中でも動画の画質の良さはデバイスの持つポテンシ
する講演などが行われた。専門ビジネスに忙殺されるFPD業界
ャルの違いであるとの意見が出された。寿命の問題は最近にな
のエグゼクティブにとっては、現在のFPD産業が置かれる状況
って劣化因子の分析・解析に移ってきており、近い将来大幅な改
を改めて認識したコンファレンスであったと思う。アクティビ
善が期待される
(出光)
との発言があった。また、マザーガラス
ティを含めて4日間のコンファレンスであるが、さらに内容の充
も出さ
サイズでは当面はG4サイズになるとの見方(三星SDI)
実を図り、GFPCがFPD業界をリードするグローバルコンファレ
れ、14'TVの発売を計画されていることも明らかにされた。
ンスとして成長することを期待したい。
4
SEMI News • 2008, 5-6
High Tech U Report
高校生を対象の教育プログラム「ハイテク・ユニバーシティ in 茨城」
−見て、聞いて、そして触って。「半導体ってすごい!」
−
去る3月25日
(火)
・26日
(水)
の2日間、茨城県ひたちなか市の
(株)
日立ハイテクノロジーズおよび(株)
ルネサス テクノロジの那
「ハイ
珂事業所において、高校生を対象に、SEMI教育プログラム
テク・ユニバーシティ」が開催されました。昨年3月の熊本での
開催に続き、日本では2回目の開催となります。茨城県立高校の
1、2年生合わせて36名の高校生が参加しました
(1年生13名、2
年生23名。男子・女子それぞれ18名)
。
■ 一日目:日立ハイテクノロジーズ
始めに、二日間のルールが確認されました。
・楽しくやろう!明るく、楽しく、元気よく。
今後、SEMIでは日本においても年に1、2回のペースで各地に
・何かをつかんで帰ろう。
て開催する計画です。本プログラムは、趣旨にご賛同賜り、ご支
・たくさん参加しよう。一生懸命に聞く、考える、体験する、質
援をいただけるスポンサーシップによって支えられています。
問する、議論する。
今回の開催にあたり協賛いただいた企業・団体に感謝申し上げ
期間中は失敗を恐れずとにかく積極的に参加することを、す
るとともに、今後のご支援を募集いたします。
べての講師、スタッフが生徒たちに奨励し、会場を盛り上げまし
<ハイテク・ユニバーシティin 茨城 共催企業・団体>
た。そういった働きかけもあり、次第に生徒たちの固さは取れ、
日立ハイテクノロジーズ ルネサス テクノロジ アドバンテスト
自発的に発言する姿が見られました。高校生にとって大変身近
荏原製作所 キヤノンマーケティングジャパン スズデン
な存在である携帯電話を
“破壊”
し、半導体を探し出して電子顕
大日本スクリーン製造 電子情報技術産業協会半導体部会
微鏡で観察。
「ナノの世界」を目の当たりにして、驚きと歓声が
東京エレクトロン 日本半導体製造装置協会 日本マイクロニクス
聞かれました。また、半導体の基本要素である二進法、ゲートの
畠山文化財団 半導体先端テクノロジーズ 日立化成工業
動作を、体を使って体験しました。そして、お待ちかねの工場見
フェローテック 堀場製作所
学。初めて着るクリーンスーツに、
「着るのが難しい」
「息苦し
い」
「動きにくい」
との声が挙がっていましたが、初めて見る製
造現場に感動した様子でした。この日は、私たちの生活にいかに
半導体が重要な役割を果たしているのかの講義もあり、実感し
た一日となりました。
■ 二日目:ルネサス テクノロジ
この日のテーマは「仕事って何?」
「半導体業界での仕事
は?」です。
「エンジニアとは何か、開発とは何か」や、
「世界で
活躍するには」
といったテーマで講義がありました。また、最先
端の巨大半導体工場を目の当たりにして、高校生たちは圧倒さ
れた様子でした。最後に半導体業界で活躍する若手の先輩によ
るパネルディスカッションの後、自らの「未来を描いて」みまし
た。
「将来は技術者になりたい」
「もっともっと勉強しなくては
と思います」
「半導体ってこんなに広いんだって知りました」
「将来を考えるきっかけになった」
「もっと、もっと挑戦したい」
「失敗を恐れないで頑張りたい」
と次々に感想が寄せられま
した。
5-6, 2008 • SEMI News
ハイテク・ユニバーシティ in 茨城 プログラム概要
1日目
(3月25日)
日立ハイテクノロジーズ
・開会式
・自己紹介とチームづくり
「じゃんけん自己紹介ゲーム」
「ザ・サバイバル・
ゲーム」
(グループワーク)
・ミクロの世界、そしてナノの世界へ
(講義と実習)
・①ミクロの世界で見えるモノ、ナノの世界で見えるモノ −電子顕微鏡での観察
・②携帯電話を壊して、半導体を探し出せ
・いつもあなたのそばに
・∼私たちの暮らしの「ベンリ」の秘密、半導体∼
(講義)
・人間計算機「俺ッ、半導体!!(
」実習)
・工場見学-電子顕微鏡製造現場、デモラボ、クリーンルーム
・グループ討議「今日は何を学んだか?」
2日目
(3月26日)
ルネサス テクノロジ
・世界に羽ばたく半導体エンジニア
(講義)
・工場見学−「LSIの製造現場を見てみよう」
・小さな半導体と大きな仕事
(講義)
・半導体業界での仕事
・①就職・進路について
「パーティゲーム」
(実習)
・②先輩の助言
(パネルディスカッション)
・グループ討議「未来をイメージしてみよう!」
・修了式と立食パーティー
5
FPD China / SEMICON China Report
FPD China / SEMICON China 2008 開催報告
−着実に成長する中国のFPD産業と半導体産業−
■ FPD China 2008
■ SEMICON China
(火)
∼13日
(木)
に上海国際
FPD China 2008は、去る3月11日
FPD Chinaの翌週3月18日
(火)
∼20日
(木)
に、上海市の上海新
(INTEX)
)
展覧中心
(Shanghai International Exhibition Center
(SNIEC)
)
国際博覧中心
(Shanghai New International Expo Center
を主会場に開催された。
SEMICON China 2008が開催された。隣り合うホール
を会場に、
小間数
今年は10ヵ国・地域から109社・254小間の出展があり、
パネルの展示が大幅に増えた画
昨年比5%増の規模であったが、
期的なものであった。韓国 Samsung、LGと中国のBOE、SVA、
electronicaChina & ProductronicaChina 2008、
CPCA Show
では、
2008、Laser. World of Photonics Chinaが同時開催された。
今年記念すべき20回目を迎えたSEMICON Chinaは、初開
Tianmaのパネルメーカーそれぞれが、10∼30小間の広いエリアを
(昨年:
催以来着実に成長を続け、出展社数約900社・2,400小間
120Hz高速駆動など
使って、
薄型化、
エリア制御バックライト技術、
997社・2064小間)
と過去最大での開催となった。総来場者数は
の液晶新技術、またデジタル看板、情報表示、アート表示など、新
昨年の29,251名を上回り、約37,000名と会場は活気に溢れてい
応用例を競って展示した。また、テレビパビリオンを設け、パナソニ
た。来場者としては、マネージャー、工場長クラスが散見され、中国
ック、日立、Hisense、長虹各社が新製品テレビを多数展示。世界
北部からの来場者も増え、出展社の満足度を高めるものであった。
のパネル、テレビメーカーが中国の薄型テレビ市場の急速な発展
また、初めて来場する地元の顧客も多く、新しい引合いがあると
をにらんで競合を始めた感がある。
いう出展社の声が多く聞かれ、展示会の質の向上が見られて、中
会場周辺で行われた併催セミナーは、中国光学光電子産業協
SEMI、SID他の共催、国および市の関連部局
会液晶部会主催、
国における半導体製造装置の中心展示会になりつつあることが
感じられるものであった。
の後援を得て、キーノートセッションのほか、
液晶(市場・技術)
、有
会場内には、
半導体関連のみならず太陽光発電関連製品も多
機EL、PDPなどの技術に関する4セッションが行われた。初日の
く、製造ラインの紹介から最新製造装置の展示など幅広い展示
キーノートセッションは、約400名収容の会場が終日賑わい、多く
が見られ、関連するセミナーは、特設会場が聴講者で溢れるほど
の若い技術者が、
日、
米、
台湾、
中国学会の講師の話を熱心に聞
になり、
その関心の高さが窺われた。
半導体製造装置関連の展
く構図となっていた。
示では、6インチの製造ラインをターゲットに着実に営業を続ける
初日の夜には、SEMI主催でFPD Asia Nightと称して参加各
出展社や、毎回この展示会で最新技術の発表を行う出展社など
国・地域のVIP約300人によるディナーレセプションが開催された。
多岐にわたり、中国におけるビジネスチャンスを逃さないとい
日、韓、台、米国、独ほかのディスプレイ関係者と中国関係者が一
う各社の意気込みが感じ取られた。
堂に会して、人的・情報交流する機会が設けられ、FPD Chinaが
また、
今回から来年の出展予約受付が展示会場内で行われ、
中国における国際的FPDイベントとして定着していくことと思わ
多くの企業が積極的に予約申込みを行っており、中国半導体産
れた。
業への期待が表れていた。
来年も同時期の3月17日∼19日に同会
来年のFPD Chinaは、同会場にて2009年3月11日∼13日に開
催される予定である。
6
場で開催される予定であり、半導体のみならず中国電子産業全
体の活性化につながる展示会として目の離せないものとなる。
SEMI News • 2008, 5-6
SEMI Forum Japan
SFJ 2008 プログラム委員長インタビュー
−半導体関係者だれにとっても、必ず役に立つ情報が見つかるといってよいでしょう−
SEMI が2001年より大阪で毎
もパワーデバイスセミナーへ大きな
J SEMI
年 開 催している S F (
関心が集まっています。今年のプロ
Forum Japan)
が、今年も6月19日
グラムでは、
シリコンカーバイト系、
(金)
の2日間、グラン
(木)
と20日
窒化ガリウム系ワイドバンドギャッ
キューブ大阪を会場に行われま
プパワーデバイスを中心に講演を提
す。開催に先立ち、今回の特徴や
供します。
聴き所を、プログラム委員長の
(株)
リコー 電子デバイスカンパ
MEMSや太陽光発電についても取
ニー 技術開発部 シニアスペシャリスト 佐藤裕彦氏にお聞き
り上げられていますが
しました。
MEMSはCMOSとの融合が進ん
でいます。実装技術では、MEMSか
SFJ 2008
プログラム委員長
佐藤裕彦 氏
今年で8回目を迎えるSFJですが、これまで多くの方に参加い
ら半導体への技術移転も見られる
ただいている理由はどこにあるのでしょうか
を用いた
ようになりました。具体的には、シリコン貫通電極
(TSV)
半導体を中心としたマイクロエレクトロニクス産業のキーと
積層ダイの実装に、MEMSの3次元加工技術を利用しようとする
なる技術課題を、広くセミナーに取り入れていることがその理
ものです。MEMSセミナーでここを取り上げますが、初日の
由でしょう。関西地域では、これほどの規模のセミナーは他にな
JISSOセミナーでICのフリップチップ実装技術も合わせて聴
いと思いますが、実は参加者の4割は関東からおいでくださっ
講されると、実装の近未来が見えてくると思います。
ています。また、SFJは、主催するSEMI以外にも半導体関連のさ
太陽光発電業界は、半導体企業の参入やそれに向けての調
まざな団体のご支援をいただいており、各団体主催のプログラ
査研究が各所で発生しており、SFJとしては、太陽電池Tutorialセ
ムも合わせると、私から見ても実にさまざまな課題をすくい取
ミナーという形で基礎を解説することにしました。またビジネス面
っていると思います。半導体関係者であればどなたでも、役に立
では、SEMIマーケットセミナーの中で市場の概要と展望を提供
つ情報を一つは見つけられるのではないでしょうか。
いたします。
今年の基調講演には、島津製作所社長の服部様をお迎えす
最後に、どんな方に参加を勧めるかお聞かせください
ることになりました
SFJは、半導体デバイス、製造装置、材料分野の研究・開発、
なかなかお話しを伺う機会のない方なので、私も大変楽しみ
プロセスエンジニア、そして、営業、マーケティングに携わっている
にしています。島津製作所では、1896年に発明間もないX線写
方、また、ベンチャーやアカデミアの分野という多岐にわたる業
真の撮影をされたそうです。その後も、日本初の電子顕微鏡の商
種、職種の方々にご参加いただいていることが大きな特徴です。
品化、ガスクロマトグラフの開発と、科学の根幹をなす計測技術
最先端の技術動向、最新の市場動向や展望が語られるセミ
をリードしてこられました。また、ノーベル化学賞受賞者を輩出
ナーに加え、わかりやすく基礎を解説するTutorialセミナーなど、多
されたことは記憶に新しいところです。同社の長い歴史の中で
種多様なセミナーが開催されますので、業界を熟知しておられ
培われた企業文化、科学技術への思いに触れることは、近代科
る方はもとより、他分野から新たに半導体や太陽光発電の分野
学の先端に位置するといってよい私たち半導体関係者にとって、
に移られた方、若手のエンジニアの方にも興味を持っていただ
科学の基本に立ち返って考えるよい機会となると思います。
けることでしょう。
今年新しく加わったテーマはありますか
多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。
地球温暖化問題を中心とする環境対策は、あらゆる産業のサ
ステイナビリティを左右するテーマであり、半導体産業も例外
ではありません。今年のマニュファクチャリングサイエンスセ
ミナーでは、環境対策の戦略化について、証券業界や自動車産
業からの視点を含め、多角的に考察するプログラムを組むことが
6月6日
(金)
までにお申込みいただくと、
早期割引価格が適用されます
SFJに関する詳細ならびにお申込み:www.semi.org/sfj
お問合せ:SEMI ジャパン イベント受付
Tel:03-3222-5993 Email:jeventinfo@semi.org
できました。また、省エネのキーデバイスとして、昨年来SFJで
5-6, 2008 • SEMI News
7
SEMI Standards
韓国におけるFPD関連標準化活動の今後の動向
Samsung Electronics社 Jong Seo Lee
■ はじめに
かにこれは現実的に容易ではないことだと認めざるを得ませ
CRT(ブラウン管)ディスプレイに続くLCD、PDPなどのフ
んが、こうした努力は常に必要です。上述のような標準制定期
ラットパネルディスプレイ
(以下FPD)のめざましい発展によ
間の長期化により、結果的に産業界には実質的に意味のない
って、ディスプレイ産業だけでなく一般消費者にも大きな経済
標準案が制定されることこそ、憂慮すべきであると考えます。
的・文化的恩恵がもたらされたことは非常に歓迎すべきことだ
■ SEMIスタンダードの長所と利用の重要性
と思います。しかし、FPDの急速な発展の一方で、依然として未
こうした観点から、SEMIのFPDスタンダード活動にはさまざ
着手の広範囲な標準化の課題が存在することも事実です。デ
まな長所があると言えます。第一に、産業や技術が成長段階にあ
ィスプレイ業界と消費者が共有すべき各種の便益についても、今
る業界では、将来を見越して標準案を準備することができると
のところまだ最適な状態にはありません。すなわち、産業界では
いう利点があります。先に述べたような国家が主軸となって推
標準化が確立されていないために、不要な開発費用と時間の投
進するISO、IEC、ITUとは異なり、SEMIスタンダード活動は関係
資が余儀なくされ、利益の極大化が達成できていない状況にあ
企業が中心となってコンセンサス形成するものであるため、産
ります。また、消費者の立場においては、製品の特性に関する偏
業界にとって本当に必要な事案についてタイムリーに対処でき
った情報に基づいて商品を選択せざるを得ないため、ややもす
るという点において、無限の可能性があります。第二に、他の標
ると高いコスト負担を強いられることになりかねません。しか
準開発団体に比べ、比較的短い時間で標準案を制定できると
し、こうした一連の状況は、
「標準化」
という特別なプロセスに
いう利点があります。もちろん、標準案の完成度に問題が生じ
より正常化することができ、そうした観点から、ディスプレイ業
る場合もあるため、こうした短期間での標準化が必ずしも良い
界と消費者は今よりもさらに多くの恩恵を受けることができる
というわけではありませんが、相対的にシンプルな手続きが有
ようになると考えられます。
利に作用することは明らかです。したがって、SEMはこうした長
■ 従来の標準化に多く見られる問題点
「産業界およ
所を生かして、今後のFPD標準化活動において、
現在ディスプレイに関連する国際的な標準化活動には、国際
び消費者にとって必要かつ適用可能な標準をタイムリーに制定
、
国際電気標準会議
(IEC)
、
国際電気通信連
標準化機構
(ISO)
できるようにする」
という重大な使命感を認識すべきであると
合(ITU)等の国家が主軸となって推進する公的標準と、関連
考えます。
企業が中心となって活動する SEMI 、VESA
(Video Electronics Standards Association)等の業
界フォーラム標準があります。残念ながら、これ
らのどの標準化活動にも、将来を展望して準備
(先行開発)
された標準案はありませんでした。
このことはすなわち、新しいディスプレイ技術が
産業化され消費者に供給されて初めて、必要な
標準案が構築・制定されてきたということを意味
しており、この大きな問題点のひとつとして、標
準化の制定に時間がかかりすぎてしまい、標準
案が制定されたころにはすでに業界でその標準
案は有名無実化して、それまでの標準化の労力
が全く無駄なものになってしまうというケースが多
く見られるという点があります。したがって、今
後出てくるディスプレイ関連技術について予め技
術的・市場的検討を通して準備をしておくことこ
そ最上の標準化プロセスであると言えます。確
8
図1 Korea FPD Committeeの現在の組織図とロードマップ
SEMI News • 2008, 5-6
SEMI Standards
■ 次世代ディスプレイの標準化
SEMIが、未来のディスプレイ標準化活動のリーダーとなること
現在のディスプレイ産業において最大の課題領域とも言える
を心から願っています。
のが、まさに次世代ディスプレイにおける技術開発分野です。現
在のところまだ本格的に商業化されていないフレキシブルディ
デ
スプレイ
(電子ペーパー)
、3Dディスプレイ、有機EL(OLED)
ィスプレイの工程、技術、評価に対する標準化案は、どの標準開
発団体においても皆無の状態です。これらは、SEMI FPDスタン
ダード活動において、今後重要な案件となるべきものです。現在、
SEMI Korea FPD Committeeでは、これら案件に対する準備を進
めています。
■ SEMIに期待すること
しかしながら、韓国だけの努力で未来の主要技術に対する標
準化活動を遂行することは望ましいことではありません。未来
Korea FPD Committee会議の様子(SEMICON Korea 2008)
中央で立っているのがLee氏
に備えて一歩先の準備をするという大義名分のもと、標準化を
より効率的に達成するためには、各地区の技術委員会の連携に
筆者紹介:Jong Seo Lee(Samsung Electronics)
より組織を超えたチームを構成していくことが望ましいと思わ
1995年、Research EngineerとしてDaewoo Electronicsに入社。1996年
れます。ある地区では遂行不能な標準案に対して、その標準案に
からはTexas A & M Universityで学び、2003年に博士号を取得。2003
関心のある他地区の専門家が有機的に知識や情報を結集す
年から現在に至るまでSamsung ElectronicsのLCDビジネスにDirector
ることができるシステムをさらに強化していくことを、SEMIは真剣
of Display Vision Lab.として従事。
に考慮すべきでしょう。近い将来、更なるディスプレイ革新によ
2004年よりFPD International Standardization Korean National
対外的には、
る社会の変化が予想されるため、将来を見据えて準備をしてお
LCD Working Groupでリーダーを務めるほか、IEC TC110/WG2:Motion
くことこそが、あるべき標準化活動であると言えるのではない
Artifact Measurement Projectでもリーダーを務めている。
でしょうか。これは、産業界だけでなく一般消費者にとっても、
SEMIでは、Korea FPD Committeeの共同委員長であるとともに、当該
経済的・文化的便益を大いにもたらすこととなるでしょう。その
委員会傘下の複数のSubcommitteeおよびTask Forceのリーダーとし
ためにも、最適な標準開発システムを提供する潜在力を持った
。
て活躍中である
(図1参照)
Korea FPD Committeeの紹介
SEMIスタンダードの韓国における最初の正式な技術委員会として、2006年7月にKorea FPD Committeeが設立されました。ワーキング
グループとしてのそれまでの数年の助走期間中も含めて、同委員会が開発を手がけたSEMIスタンダードは、現在までに次の3規格があり
ます。
SEMI D33-0703「バックライトユニットの光学特性の測定方法」
SEMI D36-0306「LCDバックライトユニットの用語」
SEMI D41-0305「FPD画質検査におけるSEMIのムラの測定方法」
(LCD)
分野でした。LCD
これからも分かるように、これまでの同委員会の活動の中心は、日本のFPD関連委員会の活動と同様に液晶
分野の成長が一段落ついた今、活動分野をプラズマディスプレイパネル
(PDP)
や有機EL
(OLED)
にまで広げており、本年1月に開催された
SEMICON Korea 2008の会期中には「FPD Standards Workshop」を実施し、関連技術の紹介や意見収集が活発に行われました。同委
員会で現在進行中のスタンダード開発活動には以下の分野があります。
LCD分野:Image Sticking Measurement for LCD / Back Light Unit Reliability Measurement for LCDs
PDP分野:EMI Emission Regulation for PDP Panels / Tone & Color for PDP Panels
OLED分野:Encapsulation Properties for OLED Devices
これらに加えて、前述の「フレキシブルディスプレイ」や「3Dディスプレイ」
といった次世代ディスプレイまでも視野に入れつつあり、
活動の母体のあり方を模索しているような状況にありますので、活発化著しい同委員会のスタンダード活動からは目が離せません。SEMI
日本地区のFPD関連委員会では、上記分野についての取組みが始まっておりませんが、ご関心のある方はご連絡ください。
連絡先:SEMIジャパン スタンダード&アドボカシー部 担当:山本 E-mail:ayamamoto@semi.org
5-6, 2008 • SEMI News
Tel:03-3222-6018
9
FPD
スーパーハイビジョンの開発状況と課題
NHK放送技術研究所(人間・情報)研究主幹 野尻 裕司
1. スーパーハイビジョンの概要
NHK放送技術研究所は1930年に創立され、創立時からテレ
1960
ビの研究を行ってきた。
日本では1953年にテレビの本放送が、
当する。これは従来の家庭用テレビより大きな画面を想定した
拡張LSDI規格であり、SMPTE2036は基本的にこの中からテレビ
に関する映像パラメータを技術基準としたものである。
年にカラーテレビの本放送が開始された。1964年には東京オリ
(2k映像)
、水平、垂直の画素数がそ
図1で、ハイビジョン映像
ンピックが行われ、カラーテレビの普及に拍車がかかった。1960
れぞれハイビジョンの2倍の4k映像、スーパーハイビジョン映像
年代中ごろのこのような時期に、すでに次のテレビ放送をめざ
を比較する。50インチサイズのハイビジョン映像は
(8k映像)
して研究開発を開始したのが現在のHDTV、ハイビジョンであ
2mの距離から見ると1画素がおよそ1分の角度となる。視力1.0
る。ハイビジョンは2000年の衛星デジタル放送、2003年の地上
の人の解像力は角度で1分であり、1画素1分の大きさは視力1.0
デジタル放送で実現されたが、実現のめどがたった1990年代中
の人にとって十分な画素密度と考えられる。同様に100インチサ
ごろに、さらに次のテレビ放送をめざして研究を開始したのが
イズの4k映像、200インチサイズのスーパーハイビジョン映像も
スーパーハイビジョンである。スーパーハイビジョンの目標は、
2mの距離から見たとき1画素がおよそ1分の大きさとなる。200
あたかもその場にいるような臨場感の実現である。日本で最初
インチの画面サイズはかなり大きなリビングの壁一面の大きさ
に高柳先生がテレビの実験で「イ」の字の映出に成功してから
に相当し、将来的にディスプレイが進化して壁一面のウォール
カラーテレビ放送の開始まで約35年、ハイビジョンの研究開発
ディスプレイが実現できたときにも、画面いっぱいにスーパー
開始から放送実現までに約35年かかっていることを考えると、
ハイビジョンを表示することで、50インチ程度のハイビジョン
スーパーハイビジョンの実現にも研究開発開始からまた35年ぐ
と同等な高画質で、
広視野、
大画面映像を楽しむことができる。
らいかかるのだろうか。
さて、現時点でスーパーハイビジョン映像はハイビジョンを
2. 機器の開発状況と課題
ベースに、水平方向、垂直方向の画素数がそれぞれハイビジョン
現在までにカメラ、プロジェクター、ハードディスク記録再生
の4倍で、一画面内の画素数はハイビジョンの16倍である。この
装置、圧縮符号化装置、非圧縮光伝送装置、広帯域変復調器
ようなスーパーハイビジョン映像フォーマットは、2006年7月に
などの試作を行ってきた。また、それらの機器を用いて伝送実験な
(International Telecommunication Union-RadiocommuniはITU-R
どを行ってきた。現在の課題は、スーパーハイビジョンの一画面の
cation Sector)
勧告BT.1769
(BT:Broadcasting service
(television)
)
画素数に相当する3,300万画素で、毎秒60フレームで動作する撮
(SMPTE:全米
の中で国際規格に、2007年11月にはSMPTE2036
像素子と表示素子がないことである。そのため、撮像と表示には
映画テレビジョン技術者協会Society of Motion Picture and Televi-
830万画素の素子を4枚使って、Gのみ2枚の素子を互いに水平、
sion Engineers)
の中で技術基準になっている。表1は勧告BT.1769
垂直方向に半画素ずらして3,300万画素相当の解像度を実現し、
内に記されている映像パラメータであり、7,680×4,320LSDI system
R、Bは830万画素で水平、垂直方向に半分の解像度となってい
(LSDI:Large Screen Digital Imagery)
がスーパーハイビジョンに相
る。R、G、Bそれぞれが3,300万画素に対応したフル解像度のカ
表1 拡張LSDIの映像パラメータ
Values
3,840X2,160LSDI system 7,680X4,320LSDI system
1.1 Picture aspect ratio
16:09
1.2 Sample per active line
3,840
7,680
1.3 Active lines per picture
2,160
4,320
1.4 Sampling lattice
Orthogonal
1.5 Order of samples
Left to right, top to bottom
1.6 Pixel aspect ratio
1:1(square pixels)
1.7 Sampling structure
4:2:0, 4:2:2, 4:4:4
*
*
*
1.8 Frame rate(Hz)
24 , 25, 30 , 50, 60
1.9 Image structure
Progressive
1.10 Bit/pixel
10,12
1.11 Colorimetry
See Recommendation ITU‐R BT. 1361
*For the 24, 30 and 60 Hz systems, frame rates having values divided by 1.001 are
also included.
Item
10
Parameter
メラ、ディスプレイを開発し、スーパーハイビジョン本来
の画質を確認することが喫緊の課題である。
フル解像度のカメラについては、実験用の3,300万
画素の撮像素子を開発し撮像実験を行っており、開
発状況を2007年5月のNHK放送技術研究所の一
般公開
(技研公開)
で展示した。この時点で3,300万
画素の解像度は実現できたが、残念ながらフレーム
60Hz、
周波数が30Hzで白黒映像の展示であった。
カラー映像の撮像に向けて研究開発中である。さら
にその先では、現在のハイビジョンカメラ並みの小
型で高性能なスーパーハイビジョンカメラの開発
SEMI News • 2008, 5-6
FPD
送実験なども行ってきた。
2006年末には、NTT、NTT
コミュニケーションズと共同で、NHK紅白歌合戦を
東京から大阪までスーパーハイビジョンで生中継し
た。NHKホール内にスーパーハイビジョンカメラを
2台設置して、中継車内で切り替え、MPEG2ベースの
圧縮符号化装置で約600Mb/sに圧縮したのちIPに
変換して、NTTコミュニケーションズの商用回線で大
NHK大阪放送局のスタ
阪まで伝送した。
大阪では、
ジオ内にスーパーハイビジョンシアターを仮設し、
約450インチのスクリーンで約100人の一般視聴者
の方々が生中継を楽しんだ。ここでは1つの番組を
複数のIPセッションで伝送したが、1対1の伝送であ
図1 ハイビジョンとスーパーハイビジョン
が必要である。
った。2007年6月のインターロップ2007の展示では、やはりNTT、
ディスプレイについては、現状ではカメラと同様に830万画素
NTTコミュニケーションズ、NHKが共同でスーパーハイビジョ
の表示デバイスを4枚使用した前面投射型のプロジェクターを
ンの2対2のIPマルチキャスト伝送の実験展示を行った。これ
開発しており、3,300万画素の表示デバイスをR、G、Bに使用した
らの結果から、現在でも圧縮符号化、IP光伝送技術を使って、ス
フル解像度のプロジェクターおよびスーパーハイビジョン用の
ーパーハイビジョン番組(スポーツ中継や劇場中継など)のパ
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの開発が急がれる。
ブリックビューイングなどが技術的には可能であることが検証
記録再生装置には現在ハードディスクを使用している。非圧
できた。そのほか、2005年10月に、福岡県太宰府に日本で4番目
縮で2時間程度の記録再生が可能である。スーパーハイビジョ
となる九州国立博物館が開館したが、その中にスーパーハイビ
ン映像信号の記録レートと記録容量は、830万画素×4の場合に約
ジョンシアターが常設された。スクリーンサイズ350インチ、客
24Gb/s、10.8TB/hourであり、3,300万画素×3のフル解像度の場
席数約40席のシアターであるが、博物館の所蔵物をフィルムカ
32.4TB/hourとなる。
したがって、
記録容量に関し
合には約72Gb/s、
メラで静止画像として撮影し、それをスキャナーで読み取りデ
2
て言えば、現在のハードディスクの記録密度は100Gb/inch 程度
2
2
ジタル化したデータをもとにスーパーハイビジョン番組を制作
であり、600Gb/inch から1Tb/inch 程度までは達成できそうな報
して上映している。大変好評で、開館後2年間で約30万人がスー
告も見られるが、大型番組の編集などを考慮して200時間程度の
パーハイビジョンシアターで番組を楽しんでいる。
2
映像素材の使用を考えると、少なくとも記録密度5∼10Tb/inch
程度が必要ではないだろうか。
4. 終わりに
圧縮符号化装置については、約24Gb/sのスーパーハイビジョ
冒頭に述べたように、新しいテレビ放送の実現には長い年月
ン信号を、MPEG2ベースのもので200Mb/sから600Mb/sに圧縮
がかかってきた。デバイス技術や映像に対する人間の視覚心理
できる装置を試作した。現在はH.264ベースの圧縮符号化装置
効果などの基礎研究から伝送システムや受像機の開発など、広
の研究開発を行っており、2007年5月の技研公開では、ハードウ
範囲にわたる研究開発が必要である。ハイビジョン放送が実現
ェアを試作してリアルタイムで128Mb/sに圧縮した映像を展示
できた今こそ、次のテレビ放送の研究開発を進めていく時期で
した。
ある。スーパーハイビジョンは多くの技術課題もあり、放送実現
また、将来のスーパーハイビジョン放送をめざして、広帯域衛
にはまだかなりの時間がかかるが、一方ですでに実現可能な応
星伝送用変復調器とTWT擬似衛星中継器を試作し、圧縮符
用もある。その時々の技術で可能な応用を図りながら、一歩一歩
号化装置と合わせた伝送実験も実施している。スーパーハイビジ
放送実現に向けて研究開発を続けていきたい。
あわせて、
内外の
ョン映像としての圧縮率と画質の関係は今後の課題である。
放送機関や研究機関などとも連携を図り研究開発を加速すると
以上、個々の機器についてはまだまだ多くの課題があり、その
中には現在の技術の延長では解決できないものもある。
同時に、皆で力を合わせて将来のテレビ放送を実現したいと考
えている。
3. システムの実験状況
一方、現時点のスーパーハイビジョン機器を用いて展示や伝
5-6, 2008 • SEMI News
11
STS Award
「第15回STS Award」受賞論文紹介 1
受賞者:日本電気株式会社 デバイスプラットフォーム研究所 主幹研究員 石綿 延行
SoC混載に適したMRAM技術
受賞論文の紹介にあたり
SRAM・フラッシュに替わることが期待されている新・不揮発メ
STSプログラム委員会 前委員長
(2006∼7年)
:
(株)
荏原製作所
モリーのひとつです。確立された巨大市場である既存メモリー
常務執行役員 精密・電子事業カンパニー 装置事業部長 辻村 学
とどこが異なり、いつ上市されるのかまで言及している本論文
STS(SEMIテクノロジーシンポジウム)は2005年に25周年
は、
「半導体の技術動向、技術課題を抽出し、実用化技術を業
を迎え、昨年は新世紀第一弾としてSTRJとの融合に挑戦しまし
界に提示し、技術情報の交換の場とする」
というSTSの使命に正
STSは常に新しい企画を打ち出し、会員の皆様の満足度向上
た。
に最適な内容です。コスト
(セル面積)
と性能
(動作速度)
がトレ
に勤めています。そのSTSの信頼されている企画のひとつがSTS
ードオフの関係にある中で、小さな市場で始まった第一世代
Awardです。昨年も9つのセッションの中から、委員が7つの論
MRAMと異なり、大きな市場で戦える高速混載領域に絞り込ん
文を厳選しました。本誌SEMI Newsでは、その感激を再度味
「現
だ新技術を紹介しています。
世界最高速度250MHzを達成し、
わっていただきたく受賞者に寄稿をお願いしました。トップバッタ
行の揮発性ワークメモリーを不揮発化する」
という大きな可能
ーは、メモリーセッションから受賞される日本電気株式会社の
性を示しました。その技術内容もさることながら、卓越した発表
石綿延行さんの論文で「SoC混載に適したMRAM技術」です。
技術の高さを評価し、STSの受賞を勝ち得たものです。
MRAMはご承知のようにFeRAM、PRAMと並び、DRAM・
さあ、期待して読み進んでください。
■ MRAMとは
2007年のノーベル物理学賞に輝いたA. FertとP. Grünbergに
に端を発するスピントロ
よる巨大磁気抵抗効果の発見
(1988年)
ニクス研究の中で、1995年にT. MiyazakiとJ. S. Mooderaにより発
を契機に、MRAM
見されたトンネル磁気抵抗効果
(TMR効果)
の開発が活発化した。
MRAMは、スピン依存電気伝導に起因す
る大きなTMR効果を具現化するMTJ(Magnetic Tunnel Junction)
素子を基本とする。MTJはトンネルバリア層を介して、磁化方向
が一方向に固定された磁化固定層と、磁化方向が反転する磁化
自由層とから構成される。磁化固定層と磁化自由層の磁化の方
向が平行なときにはMTJの抵抗は低くなり、反平行のときには
「0」の情報を判定する。
高くなる。この抵抗の高低により
「1」
■ MRAMの位置づけ
既存の揮発性メモリーであるSRAMやDRAMは、動作が高速
ビットコストに対応するセル面積と性能に対応する動作速度
で書換え回数が無制限であるという特長から、ワークメモリー
とで、半導体メモリーを位置づけると、両者の間には明確なトレ
として使用されている。一方、既存の不揮発性メモリーであるフ
ードオフの関係が認められる。この中で、一部実用化が始まった
ラッシュは、セル面積が小さい一方で書換え時間が長く、その回
第一世代のMRAMは、コスト的性能的にあまり大きな市場の存
数に制限があるため、プログラムコードやデータのストレージ
在しない所に位置している。このことから、MRAMが市場を拡
メモリーとして使用されている。MRAMは、書換え回数が無制
大するためには、高速混載領域あるいは大容量汎用領域に向か
限で書込み・読出し速度が速いという点で、FeRAMやPRAMと
うべきことが明らかである。以下では、磁性体の特長である磁化
異なる特長を持つ。すなわち、これらの特長からMRAMは、既存
反転速度の高速性とその繰返し回数が無制限という点を生かし
のワークメモリーを不揮発化する潜在能力を有する。さらに、
た、高速混載への展開について述べる。
MRAMは、同様なMTJ素子を用いるHDDヘッドの高温動作実
■ 高速混載に適したMRAMセル構成
績などから、高温動作が要求される車載機器への搭載も期待さ
れている。
12
第一世代のMRAMは、ビット線とワード線の交点にMTJ素子
を配置し、双方を流れる電流が形成する合成磁場で磁化反転さ
SEMI News • 2008, 5-6
STS Award
せる。セルは1つのトランジスタと1つのMTJから成る。この
時、ビット線やワード線に連なる半選択状態のMTJが常に書込
み磁界にさらされる。よって、書込み電流の上限には厳しい規制
が設けられ、書込み電流源には電流値と電流波形の厳密な制御
が要求される。
その結果、
回路が複雑化し10ナノ秒以下の短いパ
ルス電流の供給が困難になるとともに、複雑な電流源回路が混
載の障害となっている。
SRAM並みの回路構成で高速動作を可能
この問題を解決し、
とするのが、2つのセルトランジスタと、セル内の書込み線上に
配置される1つのMTJから成るセル構造である。このセルでは、
セルトランジスタにより、データに対応した双方向の電流を書
込み線に流すことで発生する磁場により、書込みを行う。選択セ
ルのMTJにのみ書込み磁界が与えられるため、セル選択性は著
しく向上し、書込み電流の上限に制約がなくなる。そのため、電
流値や電流波形を厳密に制御する必要がなくなり、書込み回路
を簡素化できる。書込み回路をANDゲートで構成した場合、1
ナノ秒以下のパルス電流の生成が可能であり、書き込み速度を
GHzにまで向上させるポテンシャルを有すると期待される。こ
のセルを用いた1MbitのMRAMマクロを開発し、250MHzの高
速動作を確認した。これはMRAMとしては世界最高速度であり、
混載SRAMの置換えが可能な性能である。
このセルの面積は書込み電流の大きさに依存する。書込み電
流を低減するセルの構成として、書込み配線を挟んで磁化自由
層を静磁結合させて配置し、一方の磁化自由層上にMTJを形成
磁壁磁化に駆動トルクを与える。このトルクにより磁壁が移動
する。この構成によりSRAM並みのセルサイズ実現にめどがつ
することで、磁化反転がもたらされる。磁壁移動部上にトンネル
いている。一方、従来の磁界による磁化反転方式とは異なり、ス
バリアを介したリファレンス層を設けておくことで、磁壁移動
ピン偏極した電流により磁化反転させる、新しい技術が注目を
部の磁化とリファレンス層磁化の平行、反平行によるそれぞれ
集めている。スピン偏極電流による磁化反転方式では、磁化反転
の抵抗値を読み出すことができる。書込み時には電流はトンネ
は電流密度に依存することから、素子の微細化に伴って書込み
ルバリアを流れない。本素子は今後、2Tr-1MTJ構成に対応する
電流が低減することが期待される。このスピン偏極電流で磁壁
スケーラブルな素子として期待される。
を駆動する方法を応用することで、2Tr-1MTJセルに好適な素子
■ 終わりに
構造を実現できる。スピン注入源を通った電流はスピン偏極し、
MRAMが他の新しい不揮発メモリーと大きく異なる点は、そ
のRAMとしての潜在能力の高さである。この特長を生かした
応用領域をめざして進化を遂げたとき、MRAMには現行の揮発
性ワークメモリーを不揮発化するという、大きな応用領域が開
けてくることが期待される。本研究の一部はNEDOの支援を受
けて行われた。
STS論文募集
最新半導体製造装置技術の国際会議として業界から大きな評価
をいただいているSTSでは、現在STS 2008(12月3日∼5日)で
ご講演いただく論文を広く募集しています。
詳細はwww.semiconjapan.orgをご覧ください。
5-6, 2008 • SEMI News
13
Semiconductor Design
世界をリードする複合半導体パッケージ技術でシンポジウム開催
半導体新技術研究会 代表 / 株式会社元天 代表取締役 村上 元
半導体の素子技術とパッケージ技術を融合することで、高機能
装LSIの技術開発を進めている。東北大学の小柳光正教授のグ
な電子機器が多く生み出されている。高機能化する携帯情報機
ループと、人間の眼球を画像センサーに置き換える研究を進めて
器、薄型化するTV、電脳化する自動車、ロボット化する家電製品
いる。目の視神経細胞を3次元積層型人口網膜チップに置き換
を支える技術は、日本の半導体関係者の知性と感性に支えられ
える研究用素子を試作して、
電気信号の生体信号への接続研究
て発展してきた。世界をリードしてきた半導体パッケージ技術者た
を進めている。
ちが3月27日に集い、次世代の複合パッケージ技術をテーマに
「第
28回半導体新技術研究会シンポジウム」
を開催した。
1. 基調講演:㈱ルネサステクノロジ 赤沢 隆 氏
マイコンなどCPU素子に埋込みソフトを組み込むASIC素子、
論理結果などを保存するDRAMやフラッシュメモリなどの多
数個の素子を多段に実装するSiP
(System in Package)
の開発経緯
および適用製品・適用技術の紹介、
今後の展開計画などを説明さ
れた。
SiP技術は、携帯電話やデジカメの小型高密度実装技術と
して開発し、携帯型情報機器の小型化商品を生み出すことがで
きた。SiPは、高密度化のメリットのほか、電磁波ノイズなどに強
いメリットを持つので、医療機器や薄型TVなどにも適用が拡大
している。最近は自動車へも適用が拡大している。自動車は、各
図2 画像センサー素子の小型高密度実装技術
種センサーからのアナログ信号をデジタル信号に変換し、自動
車内の各種部品に信号を送る統合型システムに進んでいる。各
3.「DRAMの3次元実装技術」
エルピーダメモリ㈱ 菅野利夫氏
種センサーとマイコン素子を複合させてSiP製品の開発が進ん
パソコンやサーバーは、HDDなどに書き込まれた情報を引き
でいる
(図1)
。日本がSiP供給基地になり、半導体産業の再生を
出し、
CPUでの論理計算結果を一時的にDRAM素子に情報を
めざして活動を強化している。
書き込む構造になっているので、
情報取扱量の拡大に伴いDRAM
の素子容量を拡大してきている。パソコンでは、DRAM素子を
4個、8個あるいは16個(サーバーでは、9個、18個あるいは36
個)
を小型プリント基板上に実装し、メモリモジュールとし、ソケ
ットを介して3次元実装する。この実装方式において、DRAM
の世代交代やノートPC拡大に従い、米国の半導体標準化機
関(JEDEC)
に提案し、世界標準DRAMモジュールを開発して
きた。パソコンはノートパソコンでの小型大容量化が進み、小
型プリント基板の両面に16個実装したDIMM(Dual Inline
Memory Module)から、外形寸法を小型にした SO( Small
Outline )-DIMM 、SO-DIMM をさらに小型化した MicroDIMMへ進化している(図3)
。
今後はP2P
(Point to Point)
など、
図1 SiP技術の自動車への適用開発が進行中
より高速信号伝送システムの開発を進行する。
4.「パワーモジュールパッケージ」三菱電機㈱ 上田哲也 氏
2. 基調講演:㈱ザイキューブ 元吉 真 氏
地球環境問題から省エネルギー化などのために高効率のモー
産官学連携による3次元実装技術開発による新しい半導体デ
ターニーズが高まっている。低電力消費型モーターを実現する
バイスの開発技術を推進している。ASETの電子SI時代に開発
ためには、モーターを駆動するIGBT素子の使用や、時間ととも
して、シリコン貫通ビア電極構造はCCDやCMOSなど画像素子
に駆動電力を可変させ、モーターから電力を回収したりするマ
に適用を進めていて、マイクロレンズや保護ガラスを一体化し
イコン素子を1つのパワーパッケージに集積するパワーモジュ
たZyCSP
(r)
の事業化を進めている
(図2)
。このCSPを画像処理
ール開発を進め、
白物家電、
自動車、
産業機械など、
モーター駆動
LSI素子上に実装することで、画像処理部の小型化・高速化を実
システムを実現させている
(図4)
。適用外形形状は、
トランスフ
現するなど、スーパーチップインテグレーションによる3次元実
ァーモールドタイプで放熱効率の高いDIPIPM™やT-PMを開発
14
SEMI News • 2008, 5-6
Semiconductor Design
図3 小型化高速化するDRAMの3次元実装モジュール技術
図5 ナノインク技術によるCPU素子埋込みパッケージ技術開発
図4 低消費化小型化が進むパワーモジュール
図6 高密度化と大容量化を実現するPoP技術
してきた。T-PMではリードフレームとアルミ線接続する接続方
法に替え、リードフレームを素子表面で直接素子の電極部に接
7.「低電力駆動回路開発」元(株)
日立製作所 大沢通孝 氏
プラズマパネルは、200V前後の矩形高電圧
(サステイン電圧)
続するダイレクトリードボンド
(DLB)方式を開発し、抵抗やインダ
をパネルのX-Y電極端子に加え、蛍光体を発光させるため、電
クタンス成分を低減する構造とした。同時に放熱構造(材料)
も
圧の加え方で画質や消費電力に影響する。パネル内に生じた
改良し一層の放熱効果を高めた。今後は高バンドギャップエ
壁電荷で放電電流が遮断されるため、IGBTのtail電流の課題
ネルギー半導体であるSiC基板を使った半導体素子開発、水
が解決でき、高耐圧低飽和電圧の特長が活きた。IGBTとダイ
冷冷却による高パワー密度システムインモジュールの開発を進
オードチップのモジュール化で、全体を低抵抗化し高画質化と
めていく。
低消費電力化も実現した
(図7)
。
5.「インクジェット配線」九州工業大学教授 石原政道 氏
CPU素子を樹脂に埋め込み、樹脂の上下面に原子状水素
を用いた銅ナノ粒子をインクジェットプリント技術で配線後、水素
還元装置で銅粒子を還元して配線層を形成する技術を開発し、
この技術で電極を設けたDFP
(Dual Face Package)
の開発を、
産
学連携プロジェクトで進めている
(図5)
。
6.「3次元実装最新技術開発」
アムコアテクノロジジャパン㈱
谷口 潤 氏
...
携帯電話向けにCPUとメモリデバイスを重ねはんだボールで
接続するPoP
(Package on Package)
技術で世界の携帯電話の
実装技術をリードしてきた
(図6)
。NANDフラッシュメモリでは、
素子の多段化、SDカードなどカードの小型化ニーズに対し、カー
図7 サステイン回路におけるパワー素子とパッケージの低抵抗化
ドの外形を、ケースを使うタイプからトランスファー成型で外
形を形成するタイプに替えてきた。
5-6, 2008 • SEMI News
参考文献:第28回半導体新技術研究会シンポジウム資料
15
Photovoltaic
太陽光発電の急進展を支える新技術
奈良先端科学技術大学院大学 冬木 隆
1
洞爺湖サミットにおいて議論される最重要課題のひとつが
)
た 。光入射面における電極シャドーロスをなくし高効率が期待
CO2削減であるように、環境問題は焦眉のグローバルな課題とな
できる。一方直列抵抗成分を減らし、また、基板少数キャリア拡
っている。太陽光発電はその最も有効な解決策のひとつとして、
散長を考慮した最適構造設計が高効率化には必要である、p型、
各国で導入が進められている。
特に欧州においては、
政策的支援
n 型領域の形成にフォトリソグラフィープロセスが必要で煩雑に
が後押しする形で生産、導入ともに急進展している。図1に主な
なる、などの理由で開発が進んでいなかった。近年、高効率化を
太陽電池の種類別年間生産量の年次推移を示す。単結晶なら
重点的な目的とし、拡散長の長い単結晶シリコン基板を用いた
びに多結晶シリコン系太陽電池が主流を占めており、薄膜系シリ
裏面両電極構造の素子が作製され、量産化素子においても22.4
コン太陽電池にも進展が見られる。原材料不足の問題があり、結
%が実現されている。pn接合は従来通りであるが、電極はスル
晶系シリコン太陽電池の伸びの停滞が懸念されているが、概し
構造
ーホールを介して裏面から取るエミッタラップスルー
(EWT)
て見ると生産量は年次推移に対して指数関数的に増加しており、
も検討され、効率の改善が報告されている。この構造を用いる大
2010年前後には全世界の年間総生産量は10GWを超えるのは
きな利点は、モジュール化する際にストリング構造をとる必要
必至と考えられる。
がない点で、量産化プロセスにおいてシーケンスの大幅な簡素
化が図れる利点は大きい。今後、多結晶シリコン基板素子におい
ても主流になると考えられる。
ここで必要な新しい技術は、フォトリソグラフィを用いない
裏面分離両電極の形成やスルーホールの形成である。この分野
で新しくレーザー光を用いた手法が注目される。レーザー光に
よるスルーホール形成は、損傷が少なく制御性の良い手法とし
て期待できる。またレーザー光によるp、n型価電子制御も実現
2
)
されている 。図2に示すように、光強度を変えることにより不
純物層の厚さの制御が可能であり、電流収集用pn接合の形成
(BSF)
層の形成に適用ができる。強調してお
やBack Surface Field
きたいのは、基板温度が室温であるという点で、薄型基板を用い
図1 主な太陽電池の種類別年間生産量の年次推移
これだけの生産量の増加を支えるために、従来にはない新技
た場合でも、高温での熱拡散による歪発生、熱ストレス現象をなく
すことができるので、歩留り向上に大きく寄与すると考えられる。
術が求められている。光電変換効率の高効率化が必須であるこ
量産化を推進するもうひとつの重要な課題は、迅速なプロセ
とは言を待たないが、ハイスループット化・高信頼性化が伴わな
スモニタリングと素子機能検査による信頼性の確保である。薄
ければならない。結晶系シリコン素子を例に挙げれば、ウェーハ
単位で見て”秒”
、モジュール単位で見ると”分”
のオーダーでライ
ンを動かす必要がある。さらに考えなければならない点は、基板
に比べて、100-150μm程度まで薄
の厚さが従来
(200-250μm)
くなる方向にあるという点である。材料不足に対応し、かつ価格の
低減に直接つながるという点で望ましいが、機械的強度が特に
多結晶シリコン基板においては低下し、基板割れなどのために
歩留りが悪くなる。そのために、熱ひずみを押さえる低温プロセス
を開発する必要がある。
以上を踏まえここ数年着目されているのが、片面両電極構造
素子とレーザーを用いたプロセスである。片面両電極構造素子
(IBC)
セルとして提案され
は、古くはInterdigitated Back Contact
16
図2 レーザドーピングによる不純物導入
(p型基板にリンを導入した例)
SEMI News • 2008, 5-6
Photovoltaic
型基板を用いた場合の基板破損やスルーホール形成、微細電極
形成時の欠損などを迅速に判別、スクリーニングすることが必
須になってくる。従来は、クラックは裏面からの強力な光の透過
法による検出や赤外光の散乱を用いる方法が使われているが、
比較的大きなものしか検出できていない。また、電極破断などの
欠損は目視による手法に頼っており、量産プロセスには向かな
い。現在行われている電流、電圧特性によるマクロは検査では、
素子のミクロな欠損、欠陥の検出は不可能である。近年新しい手
法として、エレクトロルミネッセンスを用いた手法が注目を集
3
)
めている 。図3に示すようなシステムで、太陽電池素子の欠損
を瞬時に画像として検出できるのが特長である。
図4 エレクトロルミネッセンスによる典型的な欠損観察像
今後、重要な技術課題として検討を進める必要がある。
10GWの年産量はすぐに突破し、近々、さ
世界的に見た場合、
らに文字通り桁違いの生産量を実現する技術の確立が必須とな
る。そのためには、単に従来技術の量的拡大あるいは改善による
対応では太刀打ちできない。
発想を変えた手法、
新技術の確立と
展開が強く求められる。
そのためには、
太陽電池製造会社の独自
の研究開発は必須であるが、
大学や国立研究機関の基盤的、
革
新的な研究との密接な連携が要求される。
図3 エレクトロルミネッセンスによる太陽電池検査システム
<参考文献>
1)M.D. Lammert, R.J. Schwartz, “The Interdigitated Back Contact Solar
原理はいたって簡単で、構造的にはpn接合素子である太陽電
Cell: A Silicon Solar Cell for Use in Concentrated Sunlight”, IEEE
池に順方向に電流を注入することにより発生する発光(エレク
Trans. On Electron Devices, Vol. ED-24. SO. 4, 1977, pp.337-342.
トロルミネッセンス)
を撮像する。欠陥や欠損がある場合は電
2)
K. Horiuchi, Yu Takahashi, A. Ogane, A. Kitiyanan, Y. Uraoka and T. Fuyuki,
流注入が阻害されるため、図4に示すように黒い線、点として明
“Fabraication of Silicon Solar Cells with Back Surface Field by Laser Doping
瞭に判別できる。pn接合が形成された後は、どのプロセスシーケ
Technique”,TechnicalDigestofPVSEC17,7OC-12,Dec.(2007)Fukuoka,Japan.
ンスにおいても適用が可能であり、インラインプロセスモニタ
3)
T. Fuyuki, H. Kondo, Y. Kaji, A. Ogane, and Yu Takahashi, “Analytic
リング手法として最適である。撮像の高速化、画像解析ソフトと
Findings in the Electroluminescence Characterization of Crystalline
プロセスへのフィードバック技術の確立などが課題であるが、
Silicon Solar Cells”, Journal of Applied Physics, 101, 023711 (2007)
真夏のPV ウィーク! 太陽光発電の新総合イベント
『PVJapan 2008』開催へ
7月31日(水)∼8月2日(金)東京ビッグサイト
SEMIと太陽光発電協会
(JPEA)
が共催する太陽光発電の総合イベント
『PVJapan 2008』
は、皆様から積極的な出展をいただき、お蔭様に
て、当初の予定を上回る規模で開催させていただくこととなりました。
は、展示会とシンポジウムから構成され、太陽光発電の普及促進とビジネス拡大の両方を担う、新しい形の総合イベン
『PVJapan 2008』
(主催:産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター)
、
「第3回再生エネルギー世界展示会」
トです。これに加え、
「RCPV シンポジウム」
(主催:再生可能エネルギー協議会)
も同時開催され、7月最終週はまさに真夏のPVウィークの様相を呈します。
各種シンポジウムの講演者は、国内外の業界第一人者より選ばれ、技術開発や市場動向についてグローバルな情報を得る貴重な機
は、環境問題が取り挙げられる洞爺湖サミット直後の開催であり、世界の太陽光発電および新エネルギー
会となります。
『PVJapan 2008』
産業の行方を見極める重要なイベントとなり、太陽光発電に関わるあらゆる業界の皆様に、有益な情報交換と情報発信の場となります。
5-6, 2008 • SEMI News
17
EHS
米国のLEEDとCASBEE等の日本の建造物の環境性評価基準
東京エレクトロン株式会社 星 丈治・井深 成仁
昨年 11月に行われたITPC
(International Trade Partners
Conference )
でTIの発表したサステイナビリティの中でLEED
(Leadership in Energy and Environmental Design)
が取り上げ
られてから、半導体工場がGreen Fabであるかどうかを評価する
手法として、LEEDに関心が寄せられている。
1993年に発足した米国グリーンビルディング協会資料では、
次のように述べられている。
環境問題がクローズアップされるのに伴い、アメリカ合衆国で
は建造物自体も環境に影響を与えると考えられるようになり、
持続可能な立地選定
水利用効率
エネルギーおよび大気
資材及び健康
室内大気環境
その他革新的技術等*
認証レベル
合格
シルバー
ゴールド
プラチナ
必須項目
1項目
選択項目
8項目・14ポイント
3項目・5ポイント
6項目・17ポイント
7項目・13ポイント
8項目・15ポイント
2項目・5ポイント
3項目
1項目
2項目
必要ポイント
26-32
33-38
39-51
52-69
*
その他革新的技術とは「持続
可能な立地場所選定、
水利用
効率の環境5分野の必須項目、
選択項目でカバーされていな
い革新的な技術」
を意味する。
グリーンビルディング(あるいはサステイナビルディング)
と
上表の必須項目すべてと選択項目の中から選択した項目につ
呼ばれるコンセプトが注目されだした。グリーンビルディング
いて所定の審査を受け、獲得したポイント数に応じて認証取得
とは、
建造物のエネルギー効率改善、
環境に配慮した立地選定や
が可能となる。
建材使用、建設廃材の削減、室内環境、建設・操業・維持・管
LEEDに対する登録された建造物数は、下記のとおりである。
理のさまざまな段階での環境配慮結果や活動に基づくものである。
環境面での効果ばかりではなく、次に示す効果があると考えられ
ている。
グリーンビルディングの4つの効果
分野
環境面
経済面
健康・安全面
地域社会への負担抑制
効果の例
大気汚染防止・水質汚濁防止・生態系保全
操業費用削減・生産性向上
室内環境改善に伴う健康・安全性の向上
埋立地・水供給・交通等の社会基盤への負担抑制
LEEDとは、米国ビルディング協会が定めた民間のボランタリ
ースタンダードである。本協会には、建築関係、大学・研究機関、
政府機関、公益事業者、報道、保険会社等、さまざまな分野の
4,000以上の団体が加盟している。協会の中心的活動がLEEDの
開発と認証制度の運用であるが、その目的は次の3点である。
1. グリーンビルディングに対する消費者意識を高める
2. ナショナルブランドとしてグリーンビルディングの市場価値を高める
3. 建造物の“グリーン化”競争を活性化する
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
プロジェクト登録数
カリフォルニア
ペンシルバニア
ワシントン
ニューヨーク
オレゴン
マサチューセッツ
イリノイ
テキサス
ミシガン
バージニア
アリゾナ
オハイオ
ジョージア
メリーランド
ニュージャージー
ノースカロライナ
コロラド
フロリダ
ミズーリ
バーモント
LEEDには次の分類がある。
:オフィスビル、学校等施
・LEED-NC(New Construction)
設の新築・大規模改築を対象
:上記の既存の建造物
・LEED-EB(Existing Building)
:住宅用
・LEED-H(House)
:近隣住区、その他の建
・LEED-ND(New Development)
次のような認証制度である。
18
人口百万当りプロジェクト登録数
1 バーモント
32.9
2 ワシントンDC
31.5
3 オレゴン
25.1
4 ワシントンDC
15.4
5 ニューハンプシャー
12.1
6 メイン
11.8
7 マサチューセッツ
10.7
8 アリゾナ
9.0
9 ペンシルバニア
8.1
10 ワイオミング
8.1
11 カリフォルニア
8.0
12 アラスカ
8.0
13 コロラド
7.9
14 メリーランド
7.7
15 バージニア
7.6
16 ユタ
7.6
17 ニューメキシコ
7.1
18 モンタナ
6.7
19 ハワイ
6.6
20 ネバダ
6.5
プロジェクト登録数(所有者別)
その他
146.90%
個人
18.10%
連邦政府
165.10%
営利法人
435.25%
州政府
207.12%
造物用も開発予定
LEEDは、米国ビルディング協会が建造物を認証するもので、
271
100
91
88
86
68
67
65
64
54
46
45
44
41
37
35
34
32
28
20
非営利法人
331.19%
地方政府
〈郡、市など〉
404.24%
建物の所有者別プロジェクト登録数
(2004.12.8現在)
SEMI News • 2008, 5-6
EHS
多目的ビルやオフィスビルが多くを占めているが、教育施設、
〈 5 つの柱〉
公安・治安施設、博物館・美術館・研究施設など、
公的な施設も
残りのほと
多くなっている。
建造物の所有者は営利法人が25%で、
んどを政府機関や非営利法人が占めている。
周辺環境への
配慮
周辺地域に与える影響の軽減、地域生態系の保護育成、
大気、水質、土壌等の周辺環境の汚染防止等に努めます。
(関連技術:屋上の緑化、透水性舗装など)
運用段階の
省エネ・省資源
負荷の抑制、自然エネルギーの利用、エネルギー・資源の
有効利用により運用段階の省エネ・省資源に努めます。
(関連技術:太陽光発電、自然換気など)
長寿命
階高、
床面積・床荷重等の機能的ゆとりの確保と、
耐久性・
耐震性等の物理的ゆとりの確保により、長寿命に努めます。
(関連技術:階高・床面積のゆとりの確保など)
エコマテリアル
資源の枯渇に配慮した材料、
リサイクルが容易な材料等、
環境負荷の少ない材料
(エコマテリアル)
の採用に努めます。
(関連技術:高炉セメント、再生砕石など)
適正使用
適正処理
建設時における、建設副産物の発生抑制・再利用、運用段
階の適切なごみ処理への配慮等、適正使用・適正処理に努
めます。
(関連技術:ゴミ搬送システム、梱包レス化など)
TIのRFAB(Richardson FAB)が半導体工場として認証され
たのに続いて、SEMICONDUCTOR INTETRNATIONAL
によれば、
Intelも次の建物でLEEDの認証を目指すとのことである。
TIでは米国以外への展開や既存工場への展開も意図して
また、
いると発表している。
LEEDは、昨年暮れに改訂されたITRS( International
Technology Roadmap of Semiconductors)
でも環境安全分野
で例として参照されている。建造物のエネルギー消費を削減する
ためには、内部に設置される機器もエネルギー消費削減が求めら
れることから、今後の指標としての使用が増えるのは確かであろう。
ここまでは米国のLEEDについて述べてきたが、日本でも建物
の環境エネルギー評価基準を持っている。ここからは、日本の制
度について紹介する。
代表的な2つのシステムとして、CASBEE(Comprehensive
屋上緑化
太陽光発電
十分な断熱
雨水散水
Assessment System for Building Environmental Efficiency:建
築物総合環境性評価システム)
とグリーン庁舎がある。
名称
認証機関
基幹官庁
特色
(財)
建築環境・
CASBEE 省エネル ギー 国土交通省 定性的基準
建築計画系
機構
グリーン
庁舎
床による
直射光のカット
自然換気
その他
高性能ガラス
認証実績:
約20件
定量的基準
国土交通省 既存官庁舎の改修
大臣官房営 イニシャル・ランニ
繕部
ングコストも算出さ
れ、発注側の体系
次のような5段階評価である。
落葉樹による
日照のカット
きめ細かい
照明制御
高効率照明
エコマテリアル
による内装
透水性舗装
躯体の長寿命化
主要設備機器の高効率化
排水再利用
雨水利用
Sランク:
(素晴らしい) Aランク:
(大変良い) B+ランク:
(良い)
B−ランク:
(やや劣る) Cランク:
(劣る)
CASBEEとは、建築物の環境性能で評価し格付けする手法で
PAL
PAL/CECがあり、左図のようなイメー
ある。省エネ、エネルギー効率や省資源・リサイクル性能という環
境負荷削減の側面はもとより、室内の快適性や景観への配慮と
日本の建造物の省エネ基準の指標として
CEC
(Perimeter
ジである。PALは年間熱負荷係数
いう環境品質・性能向上の側面も含めた建築物の環境性能に
Annual Load Factor)
で、建造物の外被構造
ついて、ライフサイクルを通じて総合的に評価するシステムである。
に関する熱損失の防止の指標である。CEC
半導体等の電子産業分野の建造物にも活用しようという動きが
は設備システムエネルギー消費係数(Coefficient of Energy
出てきており、CASBEEの電子産業向けの評価手法も、JEITAが
Consumption)
であり、次の5つがある。
主催する説明会等で紹介されている。
CEC/AC:空調設備 CEC/V:機械換気設備 CEC/L:照明
「グリーン庁舎」
は、建築物の計画から建設、運用、廃棄にいた
設備 CEC/HW:給湯設備 CEC/EL:昇降設備
るまでのライフサイクルを通じた環境負荷の低減に配慮し、我
このように、日本でも建造物の環境性を定量化して評価し、格
が国の建築分野における環境保全対策の模範となる官庁施設と
付けする仕組みが昨今は活用されるようになってきていること
して、その整備が推進されている。
を認識しておく必要があると考えられる。
5-6, 2008 • SEMI News
19
MEMS
ウェーハレベルパッケージング用貫通配線LTCC基板
ニッコー株式会社 研究開発部 毛利 護
MEMS
(Micro Electro Mechanical Systems)
の実装技術と
(Wafer Level Packaging)
が活発に開発され実用化
して、WLP
されてきている。このWLP用基板材料として、シリコンと熱膨張が
( Low Temperature
近く陽極接合などの接合も可能なLTCC
Co-fired Ceramics)
貫通配線基板を開発し、試作活動も行ってい
るので、紹介させていただく。
現在パッケージングコストは、MEMSデバイスコストの50%
をはるかに超えるといわれている。WLPでできれば、組立プロセ
スが大幅に簡略化され、歩留り低下の大きな要因であった可動
部をもつベアチップ状態でのハンドリングがなくなるだけでな
く、1ウェーハでとれるチップ数が増大し、コスト低減に大きな
効果をもたらす。またMEMSデバイスの小型化・低背化が可能と
図1 ビア・パターン印刷されたグリーンシート
なり、さまざまなアプリケーションへの応用がしやすくなる。
WLP用実装基板材料として求められる重要な性能は、シリコ
ンと熱膨張係数がとれていること、貫通配線が形成できること、
ハーメチックレベルの接合ができるなどである。現在検討され
ている基板材料はガラスやシリコンであり、セラミックはダイ
レベルパッケージング用パッケージ基板として数多く使われて
いるものの、WLP用基板としてはほとんど使われていない。
■ LTCC材料
LTCCは、焼成温度がAgやAuなどの低抵抗導体の融点以
図2 LTCC基板の断面SEM写真
下である800∼900℃に調整された材料を用い、誘電体をグリー
ンシートプロセスで形成する技術である。グリーンシートはセラミッ
ているが、これまでシリコンに熱膨張を近似させた材料が特殊
ク粉末とバインダーから構成されている。焼成する前の柔軟性
用途を除いて開発されていなかった。
弊社の既存のLTCC材料の
のあるグリーンシートへ、パンチピンで層間接続用のビア穴や
(High Temperature Co熱膨張係数も5.5ppm/℃で、HTCC
キャビティを開けることは容易で量産性がある。スクリーン印
fired Ceramics)
の7ppm/℃よりは小さいが、MEMS用WLP基板
刷でビアおよびパターンを印刷した後に積層・焼成する。図1に
に用いるには十分な値とはいえなかった。また接合技術も、Au/Sn
ビア・パターン印刷されたグリーンシートを示す。任意の位置に
共晶半田などの接着能力をもつ材料を利用したものでしかなかっ
ビアをレイアウトしたIVH(Interstitial Via Hole)構造が標準仕様
MEMS実装は、実装温度、熱膨張係数、汚染などを気にし、で
た。
で自由度のある設計ができる。
図2にLTCC基板の断面SEM写真
きるだけシンプルな実装構成が望まれる。セラミック基板が
を示す。
WLP用実装基板材料としてほとんど検討されていなかった理由
LTCCはガラスとセラミックフィラーから成っている。その熱
として、上述のようなことが考えられるが、これらの面に対して
膨張係数は厳密には粒形や粒界の状態などの影響を受けるが、
解決案を提示できれば、設計自由度があって低コストな貫通配
近似式としての
線基板が作れるLTCC基板の利点を活かした有用なWLP用実
i
:熱膨張係数 V:体積分率)
からある程度設
α=ΣαiV(α
装基板が作れるものと考え、開発に着手した。
計することができる。すなわち、膨張係数の異なる材料を数種類
用いることでシリコンに近づけた設計が可能である。
セラミック基板は貫通配線基板の面からは優れた利点を有し
20
■ 陽極接合可能なLTCC材料
LTCCはガラスを重量比で50∼70%含むことから、そのガラス
SEMI News • 2008, 5-6
MEMS
成分を検討することで陽極接合できる可能性が高い。ガラス基
板と同様に、シリコンウェーハに接するLTCC基板・ガラス成分
中のアルカリ金属が、
高温・高電圧化で電離し陰極側に移動すれ
ば、非架橋酸素イオンが発生し、これがシリコン原子と静電的に
引き合い共有結合することで、強固な接合が得られると考えら
れる。
陽極接合電流が流れる、
すなわち高温・高電圧印加時にイ
オン伝導性を示すLTCC組成を調査した。その結果、パイレック
スガラスと同等な接合電流挙動を示すLTCCの材料が開発でき
た。図3に接合電流挙動を示す。
図4 熱膨張率曲線
(シリコン、LTCC)
表1 陽極接合LTCC仕様と特性
Na2O-Al2O3-B2O3-SiO2系ガラス+
アルミナコージェライト
組成
析出結晶相
3
図3 陽極接合電流の時間変化
なし
(非晶質)
密度
(g/cm )
2.43
吸水率
(%)
<0.05
熱膨張係数
(ppm/℃)
3.3
抗折強度
(MPa)
150
■ 終わりに
シリコンと熱膨張係数の近似がとれ、陽極接合も可能なLTCC
実験は東北大学の江刺教授・田中准教授グループのご指導を
をMEMS用途を目的に開発した。この基板材料は次のような特
いただきながら行い、陽極接合試験条件はホットプレート設定
徴を持ち、新しいWLP用貫通配線基板として期待されている。
600VDC印加である。直接接合だけに基板の表面粗
温度400℃、
・簡易な製法で製造でき低コスト化が期待できる。
さは非常に重要である。焼きあがった状態の基板の表面粗さは
・狭ピッチ・小径ビアが形成できるのでデバイスの小型化が可
200nmRa程度であるが、鏡面研磨加工レベルを上げることで、
能である。
3nmRaとパイレックスガラスと同等な表面粗さにまで仕上げる
・IVH構造の3D配線により自由度のある設計が可能である。
ことができた。ガラス切りを用いてシリコンとLTCCが接合され
MEMS側パッドレイアウトを2次実装パッドレイアウトに再配
(不連続点)が発
た試料を4分割し、破断面にデラミネーション
線設計しやすく、他のデバイスとの複合化にも適している。ま
生するかを調べたところ、連続的な破断面になっており、しっか
た受動部品を基板に内蔵させることで、より小型で機能性の
りと接合できていることが確認できた。また真空中でダイヤフ
高いデバイスやモジュールが可能になる。
ラムデバイスを陽極接合し、大気中に取り出した後の圧力差に
よるダイヤフラムの凹みを測定し、ハーメチックシールレベル
で接合できていることを確認した。
・表面粗さがガラス基板と同等であり、プラズマ金属活性接合
など多様な接合方法が取れる可能性がある。
連絡先:m.mohri@nikko-company.co.jp
熱膨張係数も、陽極接合のような直接接合の場合、非常に重
要である。熱膨張係数を設計するにあたっては、シリコン単結晶の
SFJ(SEMI Forum Japan)
にてMEMSセミナー 開催
熱膨張曲線もデータ取りを行って調整した。開発した材料とシ
(金)
10:00-17:15
日時:6月20日
320℃付近で2つの材料の熱膨
リコンの熱膨張曲線を図4に示す。
場所:グランキューブ大阪
(大阪国際会議場 大阪市北区中之島)
張曲線がクロスし、400℃での熱膨張率の違いは0.1ppm/℃程度
(消費税込 テキスト、昼食付)
参加費用:28,000円
であった。
※6月6日までにお申込みいただくと、早期割引価格22,000円が
開発した陽極接合可能な低熱膨張LTCCの仕様と特性を表
1に示す。
5-6, 2008 • SEMI News
適用されます。
詳細ならびにお申込みはwww.semi.org/sfjにて
21
Marketing Statistics
中国の生産キャパシティ拡大を支える中古装置
SEMI サミュエル・ニー(Samuel Ni)
過去5年間の業界動向を調べると、半導体前工程の生産キ
ィの拡大が中古装置に大きく依存していることが示されています。
ャパシティの伸率では中国がトップとなっています。中国のキャパ
2001年∼2004年の間に移転してきた200mmの生産キャパシ
シティ拡大が特に著しかったのは2003年と2004年で、それぞれ
(上海)
とHJTCのものです。Hynix-ST
ティは、大部分がTSMC
100%と82%という伸率でした。世界全体では前工程生産キャパ
とASMCによる移転は2006年のピークを形成しています。2006
シティは、2003年に約4%、2004年に9%拡大したにすぎません。
年以降では、大手ファブのほぼすべてが、200mm生産キャパシテ
しかし、ここ最近では成長率が鈍化してきています。これは中国
ィ拡大の手段として中古装置を採用するか、その検討をしてい
のデバイスメーカーが、キャパシティの上積みにこれまでより
ます。SMIC、HHNEC、GSMCもこの中に入ります。今後3年間
注意深くなってきたことを示しています。前工程生産キャパシ
については、200-300mmの総生産キャパシティならびに移転さ
ティの伸率は、2010年まで年間15∼20%で推移するでしょう。
れたキャパシティの累積量の伸びは、いずれも2002年∼2007
これまで、中国の前工程生産キャパシティ拡
大の大きな部分は、新品装置の購入によるもの
1400
350%
1200
300%
1000
250%
800
200%
600
150%
400
100%
200
50%
ではなく、海外からの中古装置移転でしたが、そ
れは今後も変わらないでしょう。中古装置の中
国への移転には2つの方法があります。ひとつ
て移転する場合です。TSMCが上海に移転した
千枚
は、前工程プロセスを一括して中古ファブとし
200mmファブや、Hynix-STが江蘇省無錫に移
転した200mmファブがこれにあたります。もうひ
とつは、装置を1台ずつ海外から購入し、既存の
ファブのキャパシティを拡大する場合です。ど
ちらの場合も、中国への生産キャパシティの移
0
2001
2002
転に伴い、海外で相応のキャパシティ減少が発
2004
2005
200-300mm全生産キャパシティ
全生産キャパシティ伸び率
生します。移転されるキャパシティの大きさ
は、移転前の元々の大きさよりは小さくなるのが
2003
2006(E) 2007(F) 2008(F) 2009(F) 2010(F)
0%
移転した生産キャパシティの累積量
移転生産キャパシティ伸び率
図1 200-300mm生産キャパシティの対中国移転量推移(200mmウェーハ換算月産枚数)
通常です。たとえば、月産2万枚の150mmのフ
800%
350
ァブが中国に移転しても、実際は使用できない
装置も中にはあり、実効的には月産1万5,000枚
700%
300
しかないといったケースです。したがって、中国
600%
250
へ生産キャパシティが移転しても、全世界的に
500%
はキャパシティの追加は発生しないことになり
図1に、200-300mm生産キャパシティの対中
国移転量の推移を示します。2001年∼2007年に
千枚
ます。
200
400%
150
300%
100
200%
かけて、SMIC、HHNEC 、HJTC、GSMC、
ASMC、Hynix-ST、TSMC
(上海)
、CSMC、
GMIC、ProMOS、PowerChip、IC Spectrum、
Intelの各社が移転したものが対象です。移転さ
れた中古設備が中国の生産キャパシティ全体の
中で占める比率の高さによって、中国のキャパシテ
22
50
0
100%
2001
2002
2003
2004
2005
2006(E) 2007(F) 2008(F) 2009(F) 2010(F)
200-300mm全生産キャパシティ
移転した生産キャパシティの累積量
全生産キャパシティ伸び率
移転生産キャパシティ伸び率
0%
図2 150mm生産キャパシティの対中国移転量推移
(月産枚数)
SEMI News • 2008, 5-6
Marketing Statistics
年よりも大幅に低くなる見込みです。しかし中古装置の中国へ
開始されていないか、最新情報を提供します。
の移転は今後も活発であり、2010年までに200-300mm生産キャ
中国国産装置サプライヤレポート
パシティの半分以上が海外から移転されたものとなりそうです。
中国国産装置メーカーについて、売上、生産能力、サプライチェ
図2には、150mm生産キャパシティの対中国移転量の推移が
イン関係、技術開発戦略の情報を提供するレポートです。主要装
2001年∼2006年にかけて、CSMC、SG-NEC(上
示されています。
LEDへの装置提供
置メーカーの会社概要と、
半導体、
太陽電池、
海、北京)
、ASMC、BCD、SinoMOS、ACSMC、CSWC、Silan-
情報も含まれます。
IC、Founder Microelectronics、Jujian Fushun Micoroelec-
中国TFT-LCD産業レポート
tronics、XETC、Anadigics
(昆山)
の各社が移転したものが対象
中国TFT-LCD産業レポートは、中国TFT-LCD工場とその製
です。このグラフでは、各社をトータルした150mm生産キャパシティ
造装置・材料支出について、詳しい検討を加えた包括的な市場
の推移、移転キャパシティの累積量の推移も知ることができます。
調査の報告書です。レポートには急成長を続ける中国TFT-LCD
150mmの生産キャパシティ移転の動向は、200mmの場合とは
市場への参入を計画している企業、あるいは活動中の企業にと
かなり異なります。CSMC、BCD、SinoMOSが生産を開始した
って絶好の資料となります。
2003年∼2004年にかけてが、150mmの生産キャパシティが最も
活発に中国へ流入した時期でした。今後については、既存の
150mmファブの大半が、キャパシティ拡大を200mmで行う計画で
世界半導体製造装置市場統計 2008年
1-2月販売高データ
す。一部の125mmファブは、150mmの中古設備での拡大を計画
装置カテゴリー別月間販売高
(単位 1,000米ドル)
していますが、中国の中央政府や地方政府はこうしたファブ計
画の支援にはもはや興味を示さないため、政府や銀行からの資
金調達を必要とする新しい半導体メーカーが、150mmで事業計
画をする可能性はありません。
全体としては、中国の既存メーカーが150mm中古装置を国内
に移転する勢いは減じています。しかし若干は移転が継続し、
2010年までには150mm生産キャパシティの累積移転量は、中国
電池製造に使われる可能性があることに留意する必要がありま
す。また上述の150mmファブの中にも、数年後には太陽電池製
造に転換するものが現れる可能性があるでしょう。
125mm以下の装置については、中古装置の供給が少ないの
で、今後の移転は難しくなります。また、新しく施行された中国版
RoHS規制によって、10年以上使用された状態の悪い中古装置
2008年2月
0,611,747
0,546,209
0,217,123
0,523,114
0,605,558
0,143,968
0,169,462
2,817,181
出典:Worldwide Semiconductor Equipment Statistics(SEMI, SEAJ)
SEMI Book-to-Billデータ
製造装置市場は、今後ますます縮小するでしょう。中国のファブ
よびファウンドリアウトルック
(China Semiconductor Wafer Fab
2008年1月
0,632,636
0,583,459
0,218,135
0,552,575
0,768,849
0,248,159
0,243,920
3,247,733
日 本
北 米
欧 州
韓 国
台 湾
中 国
その他
合 計
の輸入が妨げられるようになります。すでに小さい125mm以下の
「中国半導体工場お
についての詳細な情報は、SEMIが提供する
2008年2月
0,042,173
0,029,717
2,148,070
0,176,480
0,304,657
0,116,084
2,817,181
装置市場別月間販売高
(単位 1,000米ドル)
全体の150mm生産キャパシティの88%を占める見込みです。
ただし、中国へ輸入される中古150mm装置のある部分は、太陽
2008年1月
0,046,899
0,023,505
2,520,093
0,142,863
0,404,304
0,110,069
3,247,733
マスク、レチクル製造用装置
ウェーハ製造用装置
ウェーハプロセス用装置
組立・パッケージング用装置
テスト用装置
半導体製造装置用関連装置
合 計
1.20
2000
受注額
1800
販売額
BBレシオ
1.00
1600
and Foundry Outlook)
」
をご覧ください。
1400
■ ダイナミックに発展する中国市場をSEMIがレポート
1200
中国半導体工場およびファウンドリアウトルック
1000
0.80
0.60
800
中国は半導体の新工場やファウンドリが最もダイナミックに展
開しているエリアです。過去数年の間にも多くの新工場が発表
されていますが、遅れているもの、延期されたもの、キャンセル
されたものもあります。このレポートでは、中国の工場、ファウ
ンドリ建設プロジェクトについて、どれが実現しており、どれが
5-6, 2008 • SEMI News
0.40
600
400
0.20
200
0
07年4月 5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月 08年1月 2月
3月
0.00
SEMI BBレシオの12ヵ月間推移(単位:百万米ドル、3ヵ月移動平均)
23
Column
海外オフィスから ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日本−心の車窓から
東京エレクトロン株式会社 欧米営業・サービス本部 本部長 白井 浩毅
私はスポーツ番組とニュース以外あまりテレビを見ないが、
空が白み始めた時、
真っ黒な稜線が宙に浮かびあがった。
列車が
「世界の車窓から」
という番
日本で深夜に5分ほど放映される
山裾を回りこみながら高さをかせぐにつれ、稜線は刻一刻と
組はいつも好んで見ていた。有名な都市から聞いたこともない
荒々しさと威圧感を増し近寄ってくる。クライマックスとなる
村まで、世界中のさまざまな場所を走り抜ける鉄道の車窓に写
主峰赤岳の登場とともに、山はとうとうその雪と岩の全貌を
る風景や人々の様子から、今まで旅したことのない国や地方の
現した。
それは宇宙空間と神様の存在を始めて感じた瞬間だった。
土地柄や、そこに住む人たちの人柄まで感じ取ることができる。
寝台急行「銀河」が約60年にわたる任務を終え勇退したとの
アメリカ在住も長くなったが、仕事での国内移動はほぼ飛行
ニュースを聞いた。鉄道ファンならずとも、多くの日本人がこの
機とレンタカーで、電車やバスに乗ってのんびり車窓を眺め楽
東京-大阪間を走り続けた伝説的ブルートレインとの別れを惜し
しんだことがないのは残念だ。一方、日本への出張時には毎度、
んでいるという。もちろん私もその一人だ。高校3年の夏、甲子
成田エクスプレスの窓から季節の移ろいを味わい、我が母なる
「銀
園での箕島-星陵の延長18回の死闘に感動し、その直後に
大地の美しさと優しさにあらためて驚いたり、感謝したりする
河」
に乗り込んでしまった思い出は、夢にまで見た甲子園球場の圧
ことも多い。本稿を依頼された直後に帰国した時は、まさに満
倒的迫力といっしょに今も鮮明に甦る。
開の桜たちの出迎えをうけ、
「春のうららの隅田川」
を目にする
ブルートレインはいつの時代も鉄道少年たちの憧れであり、
ことができた。
その冒険心をそそらずにはいられない。小学校6年生の夏休み、
車窓の向こうに広がる景色を、人は大抵もう一枚の窓を通し
..
て見ている。心の窓だ。それを通して見る景色は情景となって
クラスの友人と3人だけで寝台特急「さくら」に乗って長崎へ
向かった時の開放感、自尊心、そして不安が入り混じった気持ち。
網膜へ投影され、特に印象に残ったものはさらに脳に保存され
興奮のあまり眠れず、寝台上段にある小窓を開けて眺めた遠く
る。心の窓の大きさ、厚み、色などは人それぞれ違い、同じ人のも
知らない街の闇と光。終着駅で祖母に迎えられたときの安堵感。
のでも日々微妙に変化するし、環境や体験によって大きく変わ
近所の学校であろうと親の送り迎えが必要なアメリカでは考
ってしまうこともある。しかし日本人という大きな集合体でく
えられない体験だったかもしれないが、もはや日本の子どもに
くってみると、その窓を通して最深層に保存されている個々の
さえもこんな冒険は許されないのか? 世界がどう変わろうとも、
情景には以外と似通った部分が多いかもしれない。
日本だけは、かわいい子に旅をさせられる平和な国であってほ
昨年の秋、ある会議に出席するためおよそ15年ぶりに軽井沢
を訪れた。都心からたった150キロという距離にもかかわらず、
「軽井沢」
という街の名前にははどこか俗世から隔絶された響
しい。
日本の車窓から私の記憶に残るいくつかの情景を辿ってきた
が、そろそろ時空を超えた旅を終えて家路につこう。そこには私
きがある。晩秋の高原へのいざないに浮き立つ気持ちをおさえ、
が必ず最後に帰ってくる場所と情景があるから。そのふところ
新幹線「あさま号」に乗り込んだ。
(横川駅のホームに降り、峠
で私を優しく、時に厳しく育み、慈しんでくれた武蔵野の台地こ
の釜飯とプラスティック容器に入った煎茶を買う。丁寧にお辞
そ、私にとっての日本の原型イメージであり、中学校卒業後30年
儀をする弁当売りの人たちに見送られ、連結した電気機関車が
を経てもなお母校校歌の詩と旋律とともに心の車窓に残り続
轟音を立ててやっとの思いで碓氷峠を越えると浅間山が歓迎の
ける。
そんな旅愁に浸る間もなく、ほんの1時間
噴煙をあげていた...)
あまりで到着。しかも白樺林だった駅の南口には大規模なアウ
武蔵野に新しい光満ちて 風になる緑 若い命
トレットモールが広がる。思い描いていたイメージとのギャッ
健やかな心 健やかに育て
プの大きさには驚いてしまったが、頬をさす高原の空気の、心地
たくましい力 たくましく鍛え
よい感触と匂いだけは変わっていないことを知りほっとした。
今この丘陵に この土に 美しい三年の時を刻もう
鉄道日本最高地点を走る小海線に初めて乗ったのは1976年の
真実の未来を求めよう友よ
ことだった。重油の臭いを放って始発列車が小淵沢駅を発車し、
悠久の歴史を支えよう友よ
暗闇の中急勾配を上っていく。八ヶ岳はいったいどこに隠れて
いるのだろう? 凍てつく車窓に額をつけて目を凝らす。わずかに
24
SEMI News • 2008, 5-6