第21号 - 埼玉県立総合教育センター

政策研究報告書
第21号
21世紀における教育センターの
望ましい在り方に関する研究
平成12年3月
埼玉県立南教育センター
政策研究部
表紙
1》
はじめに
2》
1
2
3
4
総合化の必要性と意義
教育センターの現状
総合化の必要性
総合化の意義
期待される教育センターへ
3》
1
2
現状と課題
市町村教育委員会対象アンケート調査の分析・考察
都道府県政令指定都市の教育センターの状況
4》
1
2
3
4
5
研究のまとめ
研究・研修・相談事業等の一層の充実
新たな機能の整備
施設設備の整備・充実
開かれた教育センターを目指して
行政の取組
5》
おわりに
6》
参考文献等・幹事・担当所員
奥付け
1》
は
じ
め
に
社会の急激な変化に対応した教育を推進し、教育上の諸課題の解決に向けた取組を行うことが
学校教育に強く求められている。また、そうした教育や取組を担う教職員の資質向上や意識改革
が急務となっている。
一方、平成2年度に教育局内に設置された教職員研修・研究事業等整備検討委員会において、
「教職員研修・研究事業等の整備について」が検討され、それに基づき、県立教育センターの研
修・研究部門の組織再編等が行われ、改善・充実が図られてきたが、機能の一本化と運営の一体
化という課題についての解決が残されたままになっている。
こうした状況を踏まえ、南・北教育センター及び情報処理教育センターの機能と運営について
検討を行い、それぞれの機能が効率的・効果的に働くように改善を図るとともに、市町村教育委
員会との連携・協力の在り方や役割分担の望ましい在り方について研究を進めることにより、教
育センターの機能の向上と運営の弾力化を図ることが重要になってきている。
そこで、現在の教育センターの現状と課題を探るとともに、行財政改革や地方分権の流れを踏
まえながら、教育センターと市町村教育委員会とが連携・協力した研修体系の在り方及び研究・
相談事業の連携の在り方を検討し、21世紀における教育センターの望ましい在り方について、
早急かつ具体的に研究することが必要であると考え、この主題を設定した。
研究に際しては、教育センターの在り方に関する文献・資料を収集・整理する一方、市町村教
育委員会における研究・研修・相談事業の実施状況や課題に関する調査を行い、基礎資料とした。
なお、研究期間は、平成11年4月から平成12年3月までの1年間である。
2》
総合化の必要性と意義
1
教育センターの現状
これまで、南・北教育センター及び情報処理教育センターは、それぞれ研究・研修・
相談の各事業を分担し、今日的な教育課題や学習指導要領の改訂に伴う教育課程に関す
る課題、各学校が抱える課題等に対応して、相応の成果をあげてきたところである。
しかし、一方で、社会の急激な変化とともに、いじめ・不登校・いわゆる学級崩壊な
どの多様な教育課題が生じ、これらを踏まえた教育改革の大きなうねりがこれまでの教
育の在り方や、指導内容・方法、学習形態等の見直しを迫っている。こうした諸課題に
対する早急かつ効果的な対応策を検討し、それに基づく研究・研修・相談の各事業の実
施が教育センターに強く求められている。
一方、教育センターの現状に目を向けると、研修事業については、南・北教育センタ
ーを中心として、年次研修・特定研修・希望研修等の業務を分担し実施してきたが、初
任者研修等の実施に伴い、研修事業が増大し、それまでの研究・研修・相談の各事業と
その担当組織の見直しが必要になってきた。
また、研究事業では、研修や相談の事業などとの連携を図りつつ行っているが、様々
な教育課題や新学習指導要領の具現化に早急かつ効果的に対応するには、運営の一体化
を図り、各教育センターの持つ機能をさらに向上させることが必要になってきている。
相談事業についても、いじめ・不登校などに加え、いわゆる学級崩壊の問題や薬物の
問題も出てきており、そうした課題に対応するためには、教育相談的機能をより一層高
めるなど「心の教育」の充実を推進していくことが求められている。
さらに、南教育センターの建物については、建築後25有余年を経過し、施設設備の
老朽化が著しく、研究・研修・相談の各事業の実施に支障をきたしている。特に、情報
教育関連の研修や、学校・関係教育機関を結んだ情報教育ネットワークの構築について
は、その影響が大きく、他県の総合教育センターの施設設備と比べると、今後早急に解
決すべき重要な課題となっている。また、駐車場が十分でないため、教育相談や研修等
で来所する県民・保護者等に負担や不自由をかけている状況もある。
2
総合化の必要性
こうした現状を踏まえつつ、組織の効率化や、新たな教育課題などに早急かつ効果的
に対応するためには、各教育センターがそれぞれ独自に事業を行うよりも、南・北教育
センター及び情報処理教育センターの統合・再編を行い、総合化を図ることで、
1】機能及び運営の一体化のもとで、学校の要請や教職員のニーズに応えた柔軟でタ
イムリーな研究・研修・相談の各事業を展開する
2】施設設備を効率的に活用した研究・研修・相談事業を計画・実施する
3】各教育センターの縦割り的な構造から脱却し、一貫性のある体系化された研究・
研修・相談事業へと改善する
4】新しい時代に対応した情報教育が展開できる研究・研修・ネットワークづくりを
進める
ことが必要である。
あわせて、新たな教育課題や教育行政の緊急課題に早急かつ効果的に対応できる機動
性と弾力的な運営のできる組織の構築が必要である。
3
総合化の意義
総合教育センターへの統合・再編に伴い、研究・研修・相談の各事業を見直し、体系
化を図るとともに、新たな機能を付け加えることにより、教育センター機能の充実強化
を図ることができる。
(1)機能の一本化による機能の強化
研修事業では、重複する研修の調整や新たな研修の企画・実施、施設設備を有効活用
した研修内容・方法の改善、教育センターと支所の2カ所で計画的に行うことによる研
修機会の増加など、研修機能の強化が期待できる。
また、研究事業については、各教育センターごとに行われていた研究が、総合化によ
り、適時性と柔軟性のある研究計画に基づき、多様な教育課題に即応した研究や、学校
の教育活動を支援・援助できる研究、教育行政の政策立案に資する調査研究など、研究
機能の充実を図ることができる。
相談事業でも、総合化により、機能的な相談・研修体制を確立でき、これまでの教育
相談はもちろんのこと、いじめ・不登校・いわゆる学級崩壊などの教育課題への対応も
より一層可能になる。
(2)新たな機能の新設
ア カリキュラムセンター機能の新設
新学習指導要領への対応や教育課程の研究を推進し、教育活動のより効果的な支援を
図るため、カリキュラムセンター機能を新設することにより、教育課程の実施状況等に
関する実証的な調査分析や、総合的な学習の時間や情報教育などに関する先進的・実践
的な研究を通して、埼玉教育の方向性を示唆し、それぞれの学校に対して個別的・実践
的な支援をすることができるようになる。
さらに、カリキュラムセンター機能の新設により、県教育局や市町村教育委員会に対
して、教育行政を推進するのに有効な情報の提供や、教育課程編成に関する実証的な支
援が可能になるものと思われる。
イ 総合企画機能の新設
これまで、教育センター全体を見通しての企画一実施7》評価が十分できていなかっ
たため、社会の急激な変化や教育課題への対応が十分でなかったことを踏まえ、事業の
見直しと新規事業の企画・立案を総合的に行い、学校の要請や教職員のニーズ、県民の
要望や教育行政課題等に早急かつ効果的に対応した事業の展開ができるようになる。
あわせて、初任者から学校管理職までの研修体系の構築を推進できるとともに、県立
教育センターと市町村教育委員会との連携・協力体制の充実強化を進めることが期待さ
れる。
(3)人材の活用と施設設備の効率的運用
各教育センターに分散していた指導主事の配置を、緊急を要する事業や新規事業に弾
力的に配置したり、各校種や教科のバランスに配慮した配置にしたりすることで、人材
の活用をより一層図ることができる。これにより、研究・研修・相談事業の充実強化や
新規事業の効果を高めることができる。
また、各教育センターの有する施設設備を、研究・研修・相談の各事業で計画的に活
用することにより効率的運用を図ることができる。
(4)教育情報ネットワーク
学校や市町村教育委員会等を結んだ教育情報ネットワークを、教育センターが中核と
なって進めることにより、情報の収集・提供などの双方向のやりとりが可能になり、各
学校の特色ある教育活動の一層の支援や、学校の取組や教員の実践の共有化、市町村教
育委員会や各教育機関との連携などを進めることができる。
4
期待される教育センターへ
以上のように、教育センターが総合化されることにより、機能及び運営の一体化を推
進し、研究・研修・相談の各事業を充実させるとともに、これらの事業を通して、県民・
保護者の期待や学校・教職員のニーズに応え、県教育局や市町村教育委員会の要請に応
じた教育センターとしての役割を果たすことが、期待される教育センターへの第一歩で
あると考える。
以下に、教育センターのこれからの在り方について述べることとする。
3》
1
現
状
と
課
題
市町村教育委員会対象アンケート調査の分析・考察
(1)調査の概要
本研究のため、県内92市町村教育委員会を対象に、研究・研修・相談事業の実施状
況や課題について調査を行った。
回答数は87、回収率は94.6%、実施時期は平成11年7月である。
(2)研修の実施組織
ア 研修の実施形態
市町村教育委員会(以下、教育委員会を教委と略す)における研修の実施形態(複数
回答)は、「(1)市町村独自で研修を計画・実施している」87.4%、「(3)学
校に研究委嘱して研修を実施している」69.0%、「(5)県立教育センターの実施
する研修に参加させている」66.7%の順であるし。「(2)近隣の市町村と共同で
(共催して)研修を計画・実施している」は39.1%とやや少なく、文化・スポーツ
施設の共同利用と比べると、これからの課題であるといえよう。
また、「(5)県立教育センターの研修に参加させる」がほぼ2/3となっており、
県立教育センターの研修への期待の大きさを示していると言えよう。
研修の実施形態
イ 研修の担当指導主事
次に、研修を担当している指導主事の人数は「3人以下」が59教委67.8%と
2/3を超え、「10人以上」は8教委9.2%にすぎない。
また、「0人」というところも9教委10.3%あり、研修の体系化を考える際には、
市町村教委への移行だけでなく、県立教育センターの研修の実施形態や、支援・協力の
在り方も併せて考えていく必要があることを示している。
回答の中には、研修推進委員会を指導主事、校長、教頭、教諭で組織し、企画・運営
を行っているところもある。
研修の担当指導主事
ウ 研修の指導者
研修の指導者としては、「校長・教頭・教諭」が51教委58.6%と多く、次いで
「教育事務所・教育センター指導主事」が36教委41.4%となっている。
中には、「近隣市町村と連携した指導委員制度」を設けているところもある。
研修の指導者(記述)
エ 研修の実施上の課題
研修の実施上の課題(記述)としては、「指導者の確保」と「研修日程の確保調整」
がともに17教委19.5%、次いで、「予算の確保」が8教委9.2%となっている。
また、「参加者の確保」や「研修内容の充実」、「スタッフ不足」をあげる教委もあり、
少ないスタッフで、魅力ある研修をいかに行うか、苦労している様子がうかがえる。
研修の実施上の課題(記述)
オ 県立教育センターへの要望
研修を実施する上で、県立教育センターに支援してほしいことや要望(記述)につい
ては、「指導者の派遣・紹介・情報提供」が47教委54.0%と半数を超え、次いで、
「研修内容・方法等の情報提供」が15教委17.2%となっている。
「ウ 研修の指導者」でも、県立教育センター等の指導主事が41.4%もあり、ま
た、「エ 研修の実施上の課題」でも、指導者の確保があげられていることを踏まえる
と、県立教育センターの役割として、指導者の派遣・紹介・情報提供が大きなウエイト
を占めるものと思われる。南教育センターで行われている「要請訪問による指導助言」
は、各学校の教育課題や特色ある教育活動に直結していると評価されているが、このよ
うな形態の研修(学校に出向いての出前研修)が今後より一層必要になるものと思われ
る。
県立教育センターヘの要望(記述)
(3)研修の実施状況
研修の内容等については、担当指導主事が4人以下の教委(60市町村)と5人以上
の教委(19市)とに分けて、分析を行った。4人以下の教委の研修総数は448講座、
5人以上の教委の研修総数は437講座とほぼ同数である。
ア 研修の内容
研修の内容について(記述)は、4人以下の教委では「領域」研修が181講座
40.4%と多く、次いで、「生徒指導・教育相談」研修が81講座18・1%である。
5人以上の教委では「領域」研修が156講座35.7%と多く、次いで、「教科指
導」研修が129講座29.5%である。
「領域」研修の具体的な内容は、情報関連の研修が133講座と一番多く、同和教育
が86と続く。
「生徒指導・教育相談」研修の具体的な内容では、カウンセリング研修が97と
3/4近くを占めている。
研修の内容
研修内容の主なもの
イ 研修数の平均
研修数の平均を比べると、4人以下の教委が7.5講座であるのに対し、5人以上の
教委が23.0講座と3倍を超える数値になっている。研修の内容ごとに比べた研修数
の平均でも、「領域」や「教科指導」研修では大きな差がみられる。
こうした研修数の差異は、市町村の規模に関連している部分が大きいと思われるので、
市町村教委と県立教育センターとの連携・協力の在り方を考える際には、一律の対応で
はなく、市町村の規模や指導主事の人数を十分配慮した対応が必要になる。
研修数の平均
ウ 研修の日数及び時間帯
研修の日数については、「1日」が研修総数の47.8%と半数近くを占め、「2日」
が18.3%、「3日」が14.8%の順になっている。
また、研修の時間帯については、「午後」が35.1%、「全日」が27.9%、
「放課後」が21.1%となっている。
アンケートの回答に添付された研修に関する資料から、「全日」の研修の場合、長期
休業中に行うなど、授業時間の確保に配慮しながら行われていることがわかる。
県立教育センターの研修では、全日の日程になることが多いので、時期や日程の工夫、
県立教育センターの方から市町村教委等に出向いていき、午後や放課後に研修を実施す
るなどの工夫改善が必要になろう。そういう意味では、南教育センターで行っている
「共催研修」や「学校の要請訪問による指導助言」は、今後の研修の在り方を示唆して
いると言えよう。
研修の日数
研修の実施時間帯
(4)研修の今後の在り方
ア 他市町村等の教員の受入
市町村教委が行う研修への他市町村の教員や県立学校の教員の受入については、
「(3)条件附きで可能である」が28.6%、「(1)可能である」が27.3%、
「(2)研修内容によって可能である」22.1%であり、「(4)不可能である」は
15.6%にすぎなかった。
受入の条件としては、「共催であれば」「定員に余裕があれば」「会場の確保ができ
れば」「経費の一部負担」などがあげられている。
また、受入可能な内容としては、「初級カウンセリング研修」「教育講演会」などで、
すでに近隣の市町村の教員を受け入れているところも2教委あった。
受入が不可能な理由としては、「人数的に限界」「指導主事不足」「予算の関係」な
どである。
他市町村等の教員の受入
イ 研修の共同実施の体制づくり
近隣の市町村教委が共同で研修を実施できるような体制づくりについては、「(1)
必要である」が67.1%、「(2)現在は必要ないが、今後必要になる」が30.6%
で、2つを合わせると、ほとんどの教委がその必要性を認めている。
しかし、実際に行うとなると、どのように調整を行うかといった方法の問題や、予算・
会場の確保の問題、指導主事の対応の問題など解決すべき課題があり、各市町村の柔軟
な姿勢が必要である。
共同実施の体制づくり
研修の共同実施の必要な理由として(複数回答)は、「(2)研修内容の充実を図る
ため」が59.8%、「(1)研修内容の多様化を図るため」が57.5%、「(3)
今日的な教育課題に対応する研修を行うため」が50.6%、「(6)指導者の確保が
難しいため」42.5%の順になっている。
教職員の資質向上が叫ばれる中で、内容の濃い充実した研修を行い、教職員の資質を
向上させたいという教委の姿勢がみてとれる。
共同体制の必要な理由
近隣の市町村教委が共同で実施する際の配慮事項(記述)としては、「予算の分担の
調整」34.5%、「運営方法の明確化・効率化」19.5%、「会場(駐車場付)の
確保」13.8%、「研修内容・方法の共通理解・充実」12.6%などである。中に
は、「他市町村との連携の経験がないので、事例を聞きたい」という率直な意見もあった。
公共施設の共同利用が進められる中で、教職員の研修についても、連携・協力が進み、
共同して実施できれば、財政的にも、スタッフの面でも、さらには、教職員相互の資質
向上に関しても、有効かつ効率的な手だてになると考えられる。したがって、県立教育
センターも関わりながら、研修の共同実施に向けた検討を進めていくことが必要である。
共同実施の配慮事項
ウ 共催研修
県立南教育センターと市町村教委との共催研修については、「(1)必要である」が
79.1%、「(2)現在は必要ないが、今後必要になる」が17.4%である。
研修の時間帯や指導者の確保の観点から考えても、こうした共催研修の拡大・定着が
今後一層重要になっていくと考えられる。その際、市町村教委の希望に沿った研修内容
にできるような体制づくりが必要である。
※共催研修は、ア.南教育センターが指導者の派遣や研修方法等の提供を行い、市町
村教委が場所の確保や運営等を行う方式と、イ.南教育センターで講義を受講し、
市町村教委で演習・協議を実施する方式の2つがある。
共催研修の必要性
共催研修の必要な理由として、「(5)指導者の確保ができるため」73.6%、
「(2)研修内容の充実が図れるため」63.2%、「(3)今日的な教育課題に対応
する研修が行えるため」56.3%、「(6)研修方法や研修資料等の提供が受けられ
るため」47.1%の順で、「(8)出張旅費を削減できるため」は42.5%であっ
た。
研修内容としては、「初級カウンセリング研修」「総合的な学習の時間に関する研修」
「今日的な教育課琴に対応する研修」の順であり、県立教育センターがどのような役割
を果たすべきかが読みとれる。
必要な理由
エ 研修の連携の在り方
研修について、各市町村教委と、県教育委員会や県立教育センターとの連携では、
「(1)指導者の派遣による連携」85.1%、「(2)研修資料・研修方法の提供に
よる連携」64.4%であり、「(5)研修の役割分担による連携」を考えるまでは至っ
ていないことがわかる。
また、連携推進の組織については、「(2)県立教育センターが連絡調整機関となる」
が46.1%、
連携の在り方
「(1)市町村教育委員会の代表と県立教育センターで連絡調整機関をつくる」が
31.5%であり、県立教育センターが何らかの働きを担うことが期待されている。
連携組織
県と市町村、市町村相互の連携については、「特にない」が47教委で半数を超えて
いるが、それ以外の意見では、連携を推進する内容が多くみられる。以下に、その意見
を列記する。
・各種研修の資料提供
・県との連携協力は必要不可欠
・規模の小さな市町村では近隣の市町村教委と連携を図りながら研修を進めることは大
変ありがたいことである
・県や市町村が担う研修の役割についての見直しが必要
・県及び市町村職員を教員研修の指導者として招へいする
・規模の小さい市町村ほど県教委や県立教育センターの強力なサポートが必要
・研修を企画実施できない町村もあるので、県立教育センターの研修を充実させてほしい
・県の研修が市町村に切り替わるのではなく、相互補完的な連携が望ましい
・県立教育センターの各部の研究を市町村に流すことで連携協力を推進
・今までどおり南教育センターの指導主事が指導するシステムが継続されると研修が深まる
・市町村教委によっては対応能力に差異や限界があるので、これまで以上に県立教育セ
ンターとしての機能を充実させてほしい、本町ではピンポイント的な研修を行っている
・資格が取得できる研修や新しい教育課題に対応した研修について連携していく必要
・研修会参加者が増え、活気がでる、他市との交流も深まり効果が上がる
・出張旅費・時間から近隣の市町村が一緒に研修できるよう県立教育センターから指導
者を派遣
・新しい課題に関する研修はある期間内にあるレべルに達するための研修システムが絶
対必要である
・新しい課題の研修体系を組織し、県や市町村相互の連携を推進する
・総合的な学習の時間の研究開発校を西部地区につくり、県立教育センターがスーパー
バイザーとして全面支援してほしい
・他の市町村や県との交流、情報交換の充実を一層推進すること
・市町村相互の研修の乗り入れを進めているが、市町村の特色を出せるよう連絡調整す
る必要がある
・市町村相互の連携協力により事務局の負担が増えないようにし、効果的に事業が展開
できるように創意工夫する
・研修規模が大きくなると小回りがきかなくなる恐れがある
・事務量・予算の軽減が図れるが、連絡調整に手間がかかり、小回りがきかなくなる恐
れがある
・研修会の数が多いので、県全体で精選する必要がある
・研修内容の重複をさける
・研修日の確保
・県教委・教育事務所・県立教育センターの各機関が日程や内容の調整をすることが大事
・講座が増える−方で出張旅費の減少に学校も苦慮している
・教員の高齢化に伴う研修の在り方や時代に対応する研修の在り方等を見直す
・指導者・会場・経費の確保
・教育課題や教員のニーズ等を探り、研修を厳選していく必要がある
・新しい教育課層に対応する研修の種類
・服務に関する研修や法令等の研修(事務職や管理職には行われているが、一般教員に
は行われていない)
(5)研究の実施状況と課題
ア 研究の進め方
各教委での研究は、「(5)学校に研究委嘱をして行う」73.6%、「(4)研究
協力委員(教員)で組織された研究委員会が行う」31.0%、「(6)研究員制度が
あり、教員を研究員に委嘱して行う」24.1%である。
研究の進め方
イ 研究の内容
研究の内容としては、「(5)学習指導要領の実施に向けた研究や教育課程の編成
に関する研究」55.2%、「(4)環境教育、情報教育、福祉・健康などの新しい教
育課題に対する研究」52.9%、「(1)各教科の学習指導法の工夫改善」48.3
%の順になっている。
研究の内容
研究を行う上での課題は、「研究推進委員の確保」10教委、「研究時間の確保」
8教委、「予算の確保」5教委、「指導者の確保」4教委、「指導主事が少なく研究に
時間がとれない」4教委となっており、研究の実施に苦慮している様子がうかがえる。
県立教育センターで行ってほしい研究の内容としては、「今日的な課題」8教委、
「教育の先導的立場に立つ研究」4教委、「総合的な学習の時間などの先行的研究」
4教委、「新教育課程の実践的な開発」3教委、「学校教育や社会教育の課題の改善・
解決に向けた研究」2教委となっている。県立教育センターの研究としては、学校に直
接役立つ内容や先進的な内容が望まれている。
(6)教育相談の実施状況と課題
ア 教育相談の実施状況
市町村教委で行われている教育相談の内容としては、「(2)面接相談」89.7%、
「(1)電話相談」88.5%、「(4)就学相談」78.2%の順である。
教育相談の内容
相談組織(記述)としては、「教育相談室・教育相談所等」が52教委59.8%と
多く、教育委員会の「学校教育課等」が15教委17.4%となっている。
相談組織
イ 教育相談担当職員
教育相談を担当している指導主事については、「1人」が46教委52.9%、「0
人」が20教委23.0%で、2つを合わせると 3/4を超えている。
指導主事を含めた担当職員については、「2人」が16教委18.4%、「1人」と
「7人〜10人」がともに14教委16.1%で、担当職員の職種等を加味すると、実
際の相談に応じているのは、非常勤職員の相談員というのが実情のようである。
教育相談担当職員
ウ 教育相談の課題
教育相談の課題としては、「さわやか相談員等との連携・協力の在り方」9教委、
「関係機関との連携の在り方」3教委、「LD児・ADHD児への対応」3教委、「相
談内容の重度化・病理化に伴うより専門的な指導が必要」1教委などといった相談内容・
方法に関わる課題や、「専門の教育相談員の配置ができない」9教委、「担当指導主事
の人数不足」1教委、「指導主事の仕事の兼務により継続した相談ができない」1教委
など相談業務そのものが十分行えないという課題もあげられている。
エ 連携・協力の在り方
教育相談について、各市町村教委と県立教育センターとの連携・協力は「事例紹介や
相談状況の情報提供」12教委、「教育相談担当者等への研修の実施」9教委、「市町
村教委のスーパーバイザー的役割を期待」5教委、「相談内容への専門的援助」5教委、
「教育センター相談担当者による巡回相談の実施(月1回か週1回)」4教委などとなっ
ており、県立教育センターに寄せる期待の大きさがうかがえる。
(7)県立教育センターへの期待や要望
研究・研修・相談の各事業について、幅広く期待や要望が寄せられた。以下に、その
意見を列記する。
・各市町村教育委員会のオピニオンリーダー的存在であることを期待します
・研修に対するアドバイスをお願いしたい
・今後とも研修会等多く実施してほしい
・今後も指導者の派遣について協力してほしい
・研修会等の講師を依頼したい
・指導主事の派遣希望に応えられるよう指導主事の増員を希望します
・年次研修等の報告を一本化し、教育センター内で割り振りをしてほしい
・保護者に対して、幼児期からの心ある養育の大切さを知らせる講演会の企画等で指導
をしてほしい
・本市共催の研修はもとより、本市教員の資質向上のため、今後とも充実した研修を実
施してほしい
・初級カウンセリング研修会の指導者を派遣してほしい
・教育相談員の資質向上や相談技術の向上のため、トレーニングプログラムや研修機会
をつくってほしい
・教育相談員対象の研修を実施してほしい
・特に障害児教育についてのスーパーバイザーを依頼したい
・専門分野における情報提供
・今まで同様に最新情報の提供をしてほしい
・県立教育センターの教育資料等の活用を一層図るため、インターネットを活用し、市
町村のHPとのリンクを促進する協議会が必要になってきている
・教員が自由に活用できる県立教育センターとして勤務時間外にも情報・データの利用
や専門家への相談できるようにしてほしい
・県立教育センターとの文書収受が事務所経由のため直前であることが多いので、事務
所に県立教育センター宛の専用ボックスを用意してほしい
2
都道府県政令指定都市の教育センターの状況
「平成11年度 都道府県指定都市教育研究所要覧」(都道府県指定都市教育研究所長協議会)
をもとに、都道府県政令指定都市(以下、県市と略す)における教育センターの組織や研究・研
修事業の状況等を調査してまとめた。)
なお、この要覧には、埼玉県だけ南・北教育センター2つがあげられているが、統計処理の関
係で、南・北教育センターを合わせて扱い、1県市1教育センターとして処理し、59教育セン
ターを対象とした。
(1)教育センターの組織
ア 総合教育センターの設置
総合教育センターの設置状況は、「設置している」が17県市28.8%で、「設置していな
い」が42県市71.2%である。
また、いずれの教育センターにおいても、教育センターと理科教育センター、情報処理教育セ
ンターなどが統合されたり、特殊教育センターや教育相談センターなどが併設されたりして、総
合化・多機能化されているのが現状である。
統合の例としては、「教育センターと理科教育センターの統合」7県市、「教育センターと情
報処理教育センターの統合」2県市、「教育センターと特殊教育センターの統合」2県市などで
あり、また、併設されている教育センターとしては、「情報教育センター」4県市、「幼児教育
センター」3県市などである。
総合教育センター
併設されている教育センターの種類
情報教育センター4、幼児教育センター3
視聴覚センター2、作業学習実技研修センター1
悩み相談センター1、心の教育総合センター1
イ 他の教育センターの設置
教育センター以外の他のセンターの設置状況は、「設置している」が32県市54.2%、
「設置していない」が27県市45.8%である。
「設置している」センター数は、「1機関」が19県市32.2%、「2機関」が9県市
15.3%、「3機関」が4県市6.8%である。
「設置している」センターの種類としては、生涯学習センターが11県市、次いで、情報処理
教育センターが7県市となっている。
他の教育センター
他の教育センターの設置状況
埼玉県のように、教育センターが2つある県市は、東京都、神奈川県、島根県の3県である。
ウ 職員数
各教育センターの職員数は、「41〜50人」が12県市20.3%、「31〜40人」と
「51〜60人」とがそれぞれ11県市18.6%である。
埼玉県の職員数111人は、福岡県の138人に次いで2番目の人数となっている。
職員数
また、職員1人当たりの教員数を比べると、「201〜300人」が20県市33.9%、
「301〜400人」が13県市22.0%、「401〜500人」が8県市13.6%となっ
ている。
全体の平均が 333.5人であり、埼玉県は380.5人である。
職員1人当たり教員数
(2)研修・研究事業と生徒実習の状況
ア 研修事業
各教育センターで実施されている研修講座数は、「51〜100」が20県市33.9%、
「101〜150」が17県市28.8%、「151〜200」が11県市18.6%の順である。
平均が約130講座であり、埼玉県の140講座は中位に位置する。
研修の講座数
また、研修機会の状況をみるために、研修1講座当たりの教員数を比べると、「51〜100人」
が15県市25.4%、「101〜150人」が12県市20・3%、「1〜50人」が10県
市16.9%の順である。
平均は約129人であり、埼玉県は約302人である。数値の高いところは、教員数の多い大
都市圏となっている。
1講座当たりの教員数
イ 研究事業
研究の主題数は、「6〜10」が21県市35.6%、「0〜5」が15県市25.4%であ
り、20を超えるところが10県市16.9%である。
これらの研究の内容を個々にみると、教科領域における指導方法の改善や教材開発的な内容が
多くみられ、本県における研究紀要の内容に相当するものである。
そこで、教科領域に関わる研究を除いた本数で比べたのが、「教科領域を除く」の数値である。
これから、「0〜5」が39県市66.1%、「6〜10」が19県市32.2%となり、ほと
んどの教育センターが10テーマ以下であることがわかる。
平均は 3.6で、埼玉県は14本である。
また、研究と研修を分けて行っているかを調べると、ほとんどの教育センターが研究と研修を
並行して行っていることがわかる。
研究の主題数
ウ 生徒実習
各教育センターにおける生徒実習の実施状況は、14県市23.7%であり、他に情報処理教
育センターが設置されているところが7県市あるので、これを含めると、21県市35.6%で
ある。
実習のほとんどが、情報処理関連の実習であるが、水産関係の学科のある富山県では、教育セ
ンター所有の実習船による実習が行われている。
生徒実習
参 考
平成5年度の要覧では、生徒実習を行っているところは38県市64.4%である。
(3)情報教育
情報教育を担当する組織については、「情報教育部」が37県市62.7%、「情報処理教育部」
が6県市10.2%、組織「なし」が15県市25.4%である。組織「なし」の県市のうち、
7県市に「情報処理教育センター」が設置され、2県市には「情報教育センター等」が置かれて
いる。
行われている内容は、小・中・高・特殊教育諸学校の教員を対象にした実習的研修やネットワー
クの構築など、情報教育の推進に欠かせない内容になっている。
このことは、次の特色ある事業において、「ネットワークの構築」をあげている県市が39.0%
あることからも裏付けられる。情報教育はすべての学校教育に関わりの深いものになってきてお
り、教育センターとしての役割はまますます大きくなるものと思われる。
情報教育の組織
参 考
平成5年度の要覧では、
情報教育部
8県市13.6%
教育情報部
7県市11.9%
情報処理教育部 18県市30.5%
情報処理教育センター13県市22.0%
(4)特色ある事業
各教育センターの特色ある事業をみると、「ネットワークの構築」関連が23県市39.0%、
「研修方法の改善」が17県市28.8%、「公開講座」が13県市22.0%である。「総合
教育センター構想」をあげているところが6県市ある。
「ネットワークの構築」では、「銀河コスモスネット(研究論文・学習指導案)」「教育情報
システムAOBA−NET」などがあり、教育センターと各学校をつないで、情報教育を推進す
る中核的役割を教育センターが担っていることがわかる。また、学習指導案などをホームページ
に書き込めるようにして、他の教員が活用できるようなシステムもみられる。
「研修方法の改善」では、「移動教育センター」や「衛星通信研修」「サテライト研修」など、
教育センターの方から出向いていったり、衛星放送を使った研修方法の改善がみられる。また、
「山口県セミナーパーク」のように、知事部局の研修機関と教育センターとが同じ敷地内にあり、
相互に連携を深めているものもある。
「公開講座」では、教育講演会の他に、天体観測会や親子で楽しむインターネット、楽しいパ
ソコン入門講座など、多彩な内容になっている。教育センターの施設設備はもちろん、研修のノ
ウハウや人材を生かした公開講座の開設が行われている。
特色ある事業
4》
研
究
の
ま
と
め
教育センターの総合化に向けて、研究・研修・相談事業のより一層の充実を図るとと
もに、新しい時代に対応した機能の新設や、施設設備の充実・整備を推進することによ
り、埼玉教育をリードし、各学校の教育活動を積極的に支援・援助することや、教職員
の資質能力の向上に寄与することが強く求められているし)こうしたことを踏まえ、以
下に、研究の成果をまとめ、総合教育センターの方向性を示すこととする。
1
研究・研修・相談事業等のより一層の充実
案1 研修体系の整備・充実
教職員の資質能力の向上を図るためには、教育センターと県教育委員会、市町
村教育委員会が連携・協力して、教職員の研修体系の整備・充実を推進する必要
がある。
そのためには、教職員の教職経験に応じて身に付けるべき資質能力や指導技術、
関係法規等を定めた「彩の国・教職プログラム」(仮称)を作成し、これに基づ
く研修内容・方法の工夫改善や、教育センターと市町村教育委員会との役割分担
の明確化や、運営方法の検討を進めることが必要である。
あわせて、上記の研修を単独で実施するのが難しい市町村教育委員会への支援
策として、教育センターと市町村教育委員会、または、近隣の市町村教育委員会
が共同して行う共同研修制度などを検討する必要がある。
また、管理職等研修についての研修プログラムの開発と実施、指導力不足教員
の再教育についての客観的基準や再教育プログラムの構築により、実効性のある
研修内容・方法にすることも必要である。
案2
スペシャリストを目指す研修の整備・充実
教職員の生き甲斐や、やり甲斐を発掘し、生涯にわたって意欲的に教職に従事
できるようにするため、特定分野のスペシャリストとしての能力・技能を磨く研
修の整備・充実が必要である。そのためには、教職員のニーズに応えた充実した
研修内容・方法にするとともに、研修の階層化、例えば、ベーシック研修とアド
バンスト研修というようなレベル化について、市町村教育委員会との連携のもと、
検討する必要がある。
また、指導力のある優秀な教員を指導者として招へいできるような指導教員制
度などの導入や、教育センターと市町村教育委員会とが共催して行う研修(共催
研修)のより一層の推進により、指導者の育成や研修の質的向上に努める必要が
ある。
案3
市町村教育委員会や学校への支援
市町村教育委員会の中には、教職員の研修を行うに当たり、指導者の確保や研
修内容・方法の準備に苦慮しているところもある。そこで、教育センターの有す
る研修内容・方法のノウハウや指導者に関する情報の提供、並びに、指導主事の
派遣により、市町村教育委員会を支援することが必要である。
また、特色ある教育活動や特色ある学校づくりを個別に支援するため、各学校
の要請に基づき、研修資料や情報の提供、指導主事の派遣などが積極的に行える
ような体制を整えることも必要である。
案4
研究事業の充実
教育センターの研究には、学校における教育課題の解決につながる実践的研究
や、教育ビジョン・教育施策等の立案のための基礎研究が求められている。
そこで、教育情報や各機関の研究報告書、学校教育や生涯学習に関する情報や
資料、国や他県の動向などを広く深く収集・整理・蓄積するとともに、今日的な
教育課題や早急に解決すべき課題などを踏まえた主題設定、研究方法の確立及び
研究成果の普及に努める必要がある。
また、指導方法の改善に示唆を与える研究や教材開発、学校の教育活動の実施
や授業に直接役立つ実践や資料等の収集・提供を双方向的に推進することも必要
である。さらに、緊急を要する調査にも対応し、教育行政の政策立案に資するこ
とも必要である。
案5
教職員の研究活動の支援・援助
教職員が研究活動を通して資質能力の向上が図れるよう、研究活動を支援・援
助するための体制づくりや、研究活動ルームの設置、資料室等の開館時間の延長
や日曜日等の利用ができるような条件整備についても、より一層の推進を図る必
要がある。
案6
相談事業における役割分担の明確化と支援
各市町村教育委員会における教育相談体制などは徐々に整備されてきているが、
一方で、相談内容の重度化・病理化の傾向もあり、一層の専門的な知識や指導・
助言が必要とされる状況も生じている。
そこで、教育センターと市町村教育委員会との相談事業における役割分担を明
確にして連携を深めるとともに、市町村教育委員会の相談事業を支援・援助する
体制を整えることが必要である。例えば、市町村教育委員会の相談員を対象にし
た研修会や相談事例に関する事例研究会の開催、相談事例に関する情報の提供な
ど、相談員の資質向上や相談事業の充実に向けた取組を推進する必要がある。
案7
情報関連の研修の充実とネットワークの構築・整備
学校教育において、コンピュータやインターネットを活用した学習形態や学習
活動は大きなウェイトを徐々に占めるようになり、教員一人一人の情報活用能力
の向上と指導方法の工夫改善が急務となっている。
そこで、小・中・高・特殊教育諸学校における情報教育推進担当の養成講座を
早急に実施するとともに、各学校の管理職・教員を対象にした情報活用研修等を
市町村教育委員会との連携・協力のもとに実施することが必要である。
また、小・中・高・特殊教育諸学校や市町村教育委員会、教育機関等を結ぶ
「彩の国教育ネットワーク」(仮称)の構築・整備に関して、教育センターが中
核的な役割を果たすとともに、各学校における情報教育の推進に対して、様々な
支援を行うことが必要である。
2
新たな機能の整備
案8 カリキュラムセンターの設置
各学校における様々な課題や新学習指導要領に対応して、特色ある教育活動を
展開できるよう、教育内容や指導方法の工夫改善、並びに、特色ある教育課程の
編成についての支援・援助が教育センターに求められている。
そこで、教育センターにカリキュラムに関する研究を深め、各学校や教育委員
会に情報を提供し、教育課程の編成等に関しての総合的な支援・援助を行うカリ
キュラムセンターを設置する必要がある。
カリキュラムセンターの業務としては、
1】教育課程全般(教育課程の編成及び指導内容・方法)に関する調査研究
・各学校における教育課程の実施状況の調査
・各学校(研究指定校を含む)における取組や実践事例等の調査・分析
・学校教育に対する社会の要請や社会の変化等に対応した教育課程の在り
方についての基礎的研究
・指導内容・方法の研究開発・工夫改善
2】教育課程全般についての支援・援助
・関係機関への実証的な調査資料の提供
・各学校への指導内容・方法に関する効果的な支援・援助
・教育課程や指導計画案、指導資料等に関する情報の収集・整理・提供
3】新しい教育課題に関する研究・研修
・「総合的な学習の時間」等に関する研究、指導プログラムの作成、教材
の開発・収集・提供、研修体制の充実整備
・高等学校の新教科「情報」「福祉」の免許取得認定講習の実施、研修体
制の整備充実
などが考えられる。
案9
教育情報センターの設置
県内の特色ある学校や教育実践の情報、研究報告書・研究紀要などの研究情報、
並びに、教員の開発した教材や教具の情報などを収集・整理・蓄積し、共有化と
活用の促進を図るため、教育情報センターを設置する必要がある。
そこでは、教育センターの資料室が所有する教育資料・図書はもちろん、県教
育局からの通知や指導資料、上記の教育情報などをデータベース化し、インター
ネットによる閲覧・活用ができるようにするとともに、ホームページなどに各学
校の実践や取組、教員の開発教材が書き込めるような双方向の情報システムを構
築する必要がある。
その際には、著作権に関するルールづくりを進めることも必要であるし、(現
在の資料室・ソフトウェアライブラリー・埼玉教育の3業務を教育情報センター
として総合化する。)
案10
インターネットによる公開授業やサテライト授業
公開授業に基づく研修では、実際に公開授業を行う学校に出向いて、その授業
を見る必要があったが、今後の高度情報通信社会を踏まえると、公開授業の録画
をデジタル化して記録し、それをインターネットにより各学校で見ながら行う研
修や、予備校のサテライト授業のように、指導力のある優秀な教員による「理科
実験講座」などを作成・記録した「彩の国サテライト授業」(仮称)をインター
ネットを通して利用できるようにすることも、今後検討していく必要がある。
案11
附属小・中・高等学校の設置
教育実践に根ざした研究や研修を推進するため、教育センターに附属小・中・
高等学校を併設し、埼玉教育のリーダー的な役割を果たす先進的・実証的な取組
が行えるように検討することも必要である。
また、初任者研修や指導力不足教員の再教育についても、上記の附属諸学校に
おいて実施し、教育実践に根ざした研修プログラムの構築や、指導主事によるき
め細かい指導を通して、より一層資質能力の高い、熱意を持った教員の育成を図
ることや、指導力の回復を目指した再教育を推進することができるよう検討する
ことも必要である。
3
施設設備の整備・充実
案12 施設設備の整備・充実
これまで、南・北教育センターに分かれて行われてきた運営の一本化が図れる
ことにより、両センターの施設設備の利用状況を見直し、重複する施設を研修室
等へ転用改修するとともに、一新しい時代に対応できる施設設備の整備・充実を
進める必要がある。例えば、
1】所内ネットワークシステム(各部屋を光ファイバーでつなぎ、所内LAN
を組み、インターネットの活用やデータの効率的な利用等を図る。また、
教育センターと支所との間を光通信網でつなぎ、インターネット会議や研修
ができるようなシステムを構築する。
2】マルチメディアセンター及び教育情報センター
3】研究活動ルーム(教員の研究活動に利用できる施設)
などが考えられる。
案13
教育センターの建設促進
新しい時代に対応できる施設設備を備えた教育センターの建設について、早急
に検討する必要がある。その際、すべての学校が利用しやすい地理的な配慮とと
もに、次のような施設設備を整備することが必要である。
1】研究・研修・相談事業に必要な施設
・各種研究室、各種研修室、各種相談室、教科研究室・実験室、コンピュー
タ室、資料室
2】所内ネットワークシステム(各部屋を光ファイバーでつなぎ、所内LAN
を組み、インターネットの活用やデータの効率的な利用等を図る。また、
教育センターと支所との間を光通信網でつなぎ、インターネット会議や研
修ができるようなシステムを構築する。)(再掲)
3】マルチメディアセンター及び教育情報センター(再掲)
4】宿泊施設(宿泊を伴う研修・研究等)・駐車場
5】ホール(定員500人程度、県民への貸し出しを前提にしたものにする)
6】体育館及びグランド(県民への貸し出しを前提にしたものにする)
8】研究活動ルーム(教員の研究活動に利用できる施設)(再掲)
9】談話室・食堂・喫茶室
4
開かれた教育センターを目指して
案14 生涯学習の場としての教育センターの開放
教育関係者に限られていた発表会・講演会等について、生涯学習の伸展や教育
に対する県民意識の高さを踏まえて、県民にも開放することを検討する必要がある。
あわせて、教育センターの有する人材や施設設備、研修のノウハウをもとにし
た県民公開講座や県民教育講演会等の企画・実施も検討する必要があるし、その
際には、開放のための管理運営に必要な人員配置や予算的措置を講じる必要がある。
案15
資料室等のより一層の開放
資料室は県民の利用も認めているが、大学生を除けば、県民の利用はほとんど
ないに等しい状況であるし、そこで、資料室を「教育関係図書館」として位置付
け、教育に関する資料や図書の整備、効率的な貸出業務ができるような管理シス
テムの整備を推進し、あわせて利用についての広報に努める必要がある。
また、県民や教職員の利用の便宜を図るために、資料室やソフトウェアライブ
ラリーなどは、開室時間の延長や日曜日の利用等についても検討するとともに、
インターネットによる情報の利用ができるようにする必要がある。
5
行政の取組
案16 近隣市町村の協力体制づくり
教職員の研修は、それぞれの市町村教育委員会が行っているが、予算や指導者
の確保の難しさ、指導主事の不足や研修内容・方法の準備不足などを考慮すると、
次のような実施形態を念頭においた市町村教育委員会の協力体制づくりをより一
層進める必要がある。
1】他市町村の教員の相互受け入れ研修制度
2】近隣の市町村教育委員会が共同して行う共同研修
3】教育センターと市町村教育委員会とが共催して行う共催研修
4】教育センターが市町村教育委員会の要請に応じて行う出前研修
その際には、教育センターと埼玉県都市教育長協議会、埼玉県町村教育長会
等により「研修事業協力推進協議会」(仮称)などを設置して、連携の在り方や
運営方法について検討することが必要である。
また、研究・相談事業についても、近隣の市町村教育委員会が協力して行える
ようなシステムや、教育センターと市町村教育委員会がより一層連携・協力でき
るような条件整備を進めることが必要である。
5》
お
わ
り
に
平成12年4月から、南・北教育センターと情報処理教育センターが統合・再編され、
総合教育センターとして、新たに船出することが決まった(3センターの機能及び運営
の一体化を図り、学校教育を取り巻く様々な教育課題に有効かつ的確に対応できるよう
なシステムを構築することが、総合化へのねらいである。
しかし、総合教育センターを取り巻く状況は、決して容易なものではない、財政事情
の厳しさは、新しいセンター建設を困難にしており、また、「いわゆる学級崩壊」やい
じめ、体罰など解決の難しい教育課題、新学習指導要領の実施に向けた取組、児童生徒
の多様化に十分対応しきれない教員の柔軟性の欠如、教員の高齢化に伴う学校活力の維
持など、総合教育センターが対応しなければならない課題が山積している。
また、高度情報通信社会が到来しつつある中で、コンピュータやインターネットなど
を活用した学習形態や学習活動が、これまでのチョークと黒板による一斉授業を大きく
変え始めており、こうしたことは、今までの学習の在り方や学力観を根底から覆す可能
性がある。そして、それは、学校教育に携わる教職員に、教育とは何かという教育の本
質を問い直すことを求めることになる。
こうした中で、学校や教育行政に役立つ実践的・実証的研究の推進、研修体系の構築
と有効な研修プログラムの検討、問題解決に有効な相談業務の実施、総合教育センター
と市町村教育委員会との連携・協力の体制づくりなどを積極的に行い、県民や保護者の
期待、学校や教員のニーズ、県教育局や市町村教育委員会の要請に応えていくことが、
総合教育センターの重要な役割であり、使命である。
そして、これはとりもなおさず、総合教育センターの指導主事に、埼玉教育のために
何ができるかをつきつけることになる。かつてのように、社会の流れが緩やかであれば、
十分な準備をして、対応することが可能であったが、社会の変化のスピードは、的確か
つ弾力的な対応を迅速に行うことを求めている。例えば、研修では、センターに教員が
集まってくるのを待つのではなく、こちらから学校へ出向いて行うことやマスメディア
を活用した研修形態などの工夫が求められ、また、研修内容もこちらで用意したもので
はなく、各学校の教育課題や特色ある教育活動に応じた内容の指導助言が求められるよ
うになり、そうした総合教育センターの取組いかんが、埼玉教育の今後にかかわってく
るのである。
21世紀における総合教育センターの役割は、学校や市町村教育委員会を個々に支援・
援助することではないだろうか。
6》
○
参考文献等・幹事・担当所員
参考文献等
「平成11年度
「平成5年度
都道府県指定都市教育研究所要覧」
都道府県指定都市教育研究所長協議会
平成11年9月
都道府県指定都市教育研究所要覧」
都道府県指定都市教育研究所長協議会
平成5年9月
「これからの時代に対応する教育センターのあり方」
都道府県指定都市教育研究所長協議会
「さがみはら教育
No.121」
「国立教育研究所の30年」
「全教連50年史」
○
国立教育研究所
昭和54年6月
平成10年6月
「本県教育研究機関の在り方に関する研究」
埼玉県立南教育センター政策研究部 平成9年3月
幹事(資料提供)
県教育局管理部財務課
調
県教育局指導部指導課
県教育局指導部指導課
○
相模原市教育研究所1998年3月16日
全国教育研究所連盟
政策教育報告書第10号
昭和60年3月
整
幹
矢
部
保
雄
主任指導主事
森
元
主任指導主事
中
林
幹
夫
主任指導主事兼部長
五十嵐
正
晴
〃
主任指導主事
金
子
光
明(主担当)
〃
主任指導主事
平
井
孝
雄
〃
指導主事
内
田
一
雄
州
担当所員
県立南教育センター政策研究部
政策研究報告書
平成12年3月
(平成11年度)
埼玉県立南教育センター
埼玉県浦和市三室1305−1
TEL 048−874−1221(代)