農業経営用語 参考URL:農林水産関係用語集(http://www.maff.go.jp/yougo̲syu/) インテグレーション(Integration) 農業の生産から販売までの過程をある資本系列のもとに、統合していくことを言う。 具体的には多くの関連企業を動員し、農業資材の供給、資金の融通を通じて、契約生産 あるいは直営生産という形で生産面を押さえ、更に生産物の集荷、処理、加工、流通面ま で一手に系列化していくことである。 わが国では、昭和 3 0 年代にブロイラー生産に総合商社が進出し養鶏農家がその傘下に 入った事例が最初であり、特に畜産で著しい。また、農協インテグレーションも生まれて いる。 オペレーター(Operator) 英語の意味は運転者、技師、電話の交換手であったが、農業関係においては、トラクタ ーやコンバイン等の操作や、ライスセンターで精米施設等を制御するなどのサービスを行 う人のことをオペレークーと呼んでいる。 一般的には電子計算機の各種オペレーションを担当する人、など他者から一定の目的・ 目標を与えられその実現を目指して具体的な作業を行う人を指す。 オペレーションは技術的な資質としてこれらの機器の操作に関する知識・技術など基礎 的知識が要求される。さらに、オペレーターは技術的な資質はもちろんのこと、オペレー ションにともなう種々の複雑な事態に迅速に対処しうる機敏性、注意力、忍耐力などが要 求される。 青色申告 青色の申告用紙を使用することからこの名がある。会社等法人では業種にかかわらず採 用できる。農家では本人の申告により一定の帳簿記録を基に申告納税制度となっている。 所得税法では不動産所得、事業所得、山林所得に限り、正確な帳簿を備えている個人に ついて、青色申告特別控除や青色事業専従者(納税者と生計を同じにする配偶者や親族で 専らその事業に従事する者) に対する給与の必要経費算入などの特典が認められている。 これに対して一般の申告は税務署の標準額により査定される標準課税制度と言われ、白 い用紙を用いるので俗に白色申告という。 経営類型(営農類型) 農業の経営組織は、立地条件、個人的事情によって左右され、地域により農家により異 なるが、はぼ相似た立地条件のもとにある経営は、およそ相似た特徴をもつものとなりや すい。そこで、経営組織の類似の特徴をとらえて分類・モデル化したものを経営組織の類 型、または経営類型という。 【例】経営頬型の分け方 (1) 部門別の類型: 普通作、野菜、果樹、畜産等 (2) 経営組織別の類型: 単一経営、複合経営 オーナー制度 消費者と農業生産の場を直接結ぶ方法として考案された。消費者が一定の料金を支払い 農家と契約を結び、果樹の樹木や作付けした野菜の畝、肉用子牛などの所有者となる。栽 培管理や飼育管理は農家が行い、収穫物は消費者のものになるシステムである。 この制度は観光農業の中で行われたり、個人やグループ契約など様々な方式で行われて いる。具休的な事例としては、みかん、りんご、いちご、さつまいもなどに多く見られ、 収穫だけでなく栽培管理を楽しむ方式もあり、家族づれに人気がある。 経営計画 一般に農業経営計画あるいは営農設計といわれている。計画とは、農業経営者が将来の 自分の行動すなわち「経営を組織し、運営する」ことについて意思決定= 計画的判断する ことである。 意思決定には、経営の現状認識(経営実態調査)、将来予測(将来状態)、望ましい将 来状態の想定・構想(計画目標)、目標実現のための問題点の指摘やその方法、手順の選 択と決定等、一連の体系的判断が伴う。計画の期間を基準に短期(1−3 年) と長期(5 −1 0 年) 計画とがある。経営計画は、作付計画、労働計画、生産・販売計画の総称であ る。 経営診断 個別または集団的に活動する経営体に対し、より客観的な視点で経営管理の問題を発見 し、その対策を確定・勧告するとともに、その活動目的の達成を援助する行動である。 診断する場合、だれが診断するのか(診断主体)、だれが診断をうけるのか(診断客体)、 なにを診断するのか(診断内容) によって診断の要領が変わってくる。 診断主体によって分類すると、外部診断と内部診断とに分かれ、それぞれ長所短所があ る。前者は部外者によって行われる診断であり、関係者が行う場合とプロ・コンサルタン トが行う場合とがある。後者は自己診断である。 経営者能力 経営者能力とは、農業の社会的意義、職業としての農業の意義、経営理念を確立して、 農業(経営) の可能性を発見・創造し、それを追求・実現していく総合的能力であり、そ れは狭義の能力と同時に、経営者の精神、気質等とも密接に関連するものである。 なお、経営者能力は、学習と経験を通して開発され、成長していくもので、特定の「個 人」に具現されるものであり、「また、組織」を通して具現される。 互助制度 農業生産活動を行う上で、農家が相互に助け合う形態をいその代表的なものとしては、 農作業の労力移動の 1 形態として「ゆい」、手間替え」と呼ばれる労力交換がある。 これは親戚とか部落といった血縁、地縁関係を単位として結ばれるもので、古くはそれ が 1 つの集団的な拘束力をもっていたが、現在では当事者間の任意契約的な意味合いを濃 くしている。 個別経営体 個別経営体とは、個人または一世帯によって農業が営まれている経営体であって、他産 業並の労働時間で地域の他産業従事者と遜色ない生涯所得を確保できる経営を行い得るも のとしている。 組織経営体 組織経営体とは、複数の個人または世帯が、共同で農業を営むか、またはこれと併せて 農作業、受託等を行う経営体であって、その主たる従事者が他産業並の労働時間で地域の 他産業従事者と遜色ない生涯所得を確保できる経営を行い得るものとしている。 法人経営 財務管理の効率化や信用力の増強を図るため、人または財産が結合した権利・義務能力 を持った法人の形態をとって経営を行うものをいう。 経営移譲 経営移譲とは、農地等の農業用資産や経営に関する権限を経営主からあとつぎに譲るも のであり、その型には管理委託型、賃貸型、資産移譲型がある。経営移譲に際し、経営主 とあとつぎは一定の協定を結ぶが、協定方式には、労働報酬協定、部門分担協定、家族協 業協定、経営移譲協定などがある。 一般的には就農して 2 〜 3 年はプロジェクト協定(試案協定)労働報酬協定→ 部門分 担協定→協業協定の順序であとつぎの年齢に対応して進むことが望ましい。 協業化 2 戸以上の農家が出資し、つ以上の農業部門の生産から生産物の販売、収支決算、収益 の分配に至る経営を共同化することをいう。協業化する部門数によって、1部門協業、2 部門協業、全面協業などに分類される。 協業化には人の和が重要であり、 農家間の個人的利害関係が一致しなくては永続しない。 基本的な条件として、個人より協業で行うほうが利益になること、人間関係への配慮、民 主的な運営、合理的な経理組織、適正な共同計算などを大切にする必要がある。 シミュレーション(Simulation) ある予測条件のモデルの上での実験をいう。したがって、疑似実験あるいは身代り実験 とも呼ばれている。実験の意味ではこれは思考実験と通常の実験との中間に位置している。 モデルとシミュレーションの関係は写真と映画の関係に類似している。前者は動きがな いが、後者は動きがある。画像モデルに対して画像シミュレーションがある。また、シミ ュレーションには結果が一意的にまとまる確定的シミュレーションがあるョンとそうでな い不確定的シミュレーションがある。 例えば、線形計画法により各種経営条件を変化させた場合の農業経営計画の比較検討な どがある。 産地間競争 一般に産地という用語は、生産物市場における買手サイドからの観点で特定の農産物を 生産する農業経営が集中している地域として用いられることが多い。 産地の形成は当初は一部の経営だけが参加して伝統的な産地を形成するが、やがて多数 の経営が参画して産地規模を拡大していき、共販による組織化された主産地形成に発展す る。さらに同様な産地が他の地域に生まれ、包装・荷姿による市場シェアの拡大、高級ブ ランドの形成などによる産地間の競争に発展していく。 企業者マインド コスト感覚、市場感覚等の経営感覚に優れ、革新的な技術導入にも積極的に対応し得る 企業経営者のような柔軟かつ強靭な精神をいう。 「2 1 世紀へ向けての農政の基本方向」(昭和 6 1 年 1 1 月、農政審議会報告) の中 において、需要の動向に即した生産性一のつとして、企高い農業を確立するために講ずべ き施策の業者マインドと知識を持った農業者の育成が掲げられている。 土地生産性 土地のもつ生産力の程度をいい 1 産出量をその生産投入した土地面積で除した土地面積 1 単位当たりの産出量で示される。土地生産性は、土地の生産力を表すもので、その土地 が持っている経済性を他の土地と比較する際の指標として用いられている。 ① 農家経済調査では、経営耕地面積 1 0 a 当たり農業純生産で表している。 ② 計算式 土地生産性= 農業純生産額÷ 経営耕地面積 労働生産性 一労働のもつ生産力の程度をいい、般に産出量をその生産に投入した労働量で除した労 働量 1 単位当たりの産出量で示される。 投下した労働量とその結果として得られた生産量の割合で、他産業との比較や農家間の 比較する指標として用いられる。 ① 農家経済調査では、農家全体の生産性の指標として農業労働時間 10 時間当たり農業 純生産で表している。 ② 計算式 労働生産性= 農業純生産額÷ 総投下労働時間 地域輪作農法 例えば、水稲と転作作物(麦、大豆等) などを有機的に結び付け、集落等の} 定の広 がりの中で、地域の自主性と創意工夫を生かしながら田畑輪換(畑作物栽培または水稲栽 培として一定の周期でその利用形態を変えていく土地利用方式)やプロックローテーショ ンなどの集団的土地利用を行うこと水稲により、水田の持っ高い生産能力を最大限に発揮 させ、と転作作物を通じて地域の水田農業全体の生産性を向上させることを意図した農法 である。 農業法人 農業生産を行う法人をいい、農地を利用しない一般農業法人と農地を使って生産を営む 農業生産法人に分けられる。 農業法人の種類(5−(1)参照) 農業生産法人の要件(農地法第2条) ①主たる事業が農業(関連事業を含む)であること ②構成員は次のいずれかであること ・農地の提供者又はその後継者 ・農地等を現物出資した農地合理化法人 ・その法人の事業の常時従事者 ・地方公共団体、農協、農業協同組合連合会 ・農業法人投資育成法人 ・一定の範囲内で法人の行う事業と継続的取引関係にある個人・法人 ③常時従事者が業務執行役員の過半数を占めること 農事組合法人 農業協同組合法に基づき、その構成員の農業生産の協業化農事組合法人を図り、共同の 利益を増進することを目的に農民5人以上が発起人となって設立される法人である。 性 格 ① 農業にかかわる共同利用施設の設置又は農作業の共同化に関する事業を行うもの(1 号法人) ② 農業の経営を行うもの(2号法人) ③ 農業の経営とこれに付帯する施設の設置又は農作業 の共同化を併せ行うもの(1号、2号法人) トップマネージメント(Top management) 経営における決定−指令−指示機能を示す。担当者としては、全ての管理活動を総合す る判断を必要とする企業の最高首脳部がこれに当たる。 固有の機能は、 ① 長期的問題の解決 ② 企業全般に関係する問題の解決 ③ 重要な価値判断を伴う問題の解決 その結果は、企業の存在そのものに影響を与える性質のものであると考えられている。 地域マネージメント 地域農業(集落、市町村等) を単位としてそれを経営、管理、運営することをいう。 地域における将来方向を明らかにし、組織化や土地利用等生産性の高い農業を構築してい くリーダーが重要となっている。 ① 地域農業を方向付ける(仕掛け人) ② 地域合意を取り付ける(まとめ役) 複合経営 基幹作物が数種類あっていずれも重要な現金収入源となっている経営で、主幹部門が二 つ以上からなる農業経営をいう。センサス(8 0 年以降) では、総農産物総販売額の 8 0 % 以上を占める部門が無い場合をいう。 地域農業においては、大規模経営の有利性を活かしながら複合経営のメリットも確保し ていこうとする地域複合経営も取り組まれている。 複合経営のメリット ①固定的生産要素の利用効率の向上 ②地力の有効利用 ③経済的危険性の分散 農業所得 農業所得は農業粗収益から農業経営費を差し引いたものをいう。 農家は、家族労働力、自己所有の土地、資本を利用して農業経営を行い、その農業生産 活動の成果が農業所得である。 家族労賃、自作地地代、利潤が含まれた自己資本利子、混合所得となっている。 計算式 農業所得= 農業粗収益一農業経営費 農業粗収益 農業経営によって得られた総収入額をいう。農業粗収益 農業粗収益には、農産物の販売収入、副産物収入、家計消費仕向け、経営内仕向け、農作 業受託収入などが入る。 粗収益の求め方 (経営全体の農業所得を求める場合) 農業粗収益= 販売収入+ 家計消費+ 副産物+ 雑収入 (作目ごとの農業所得を求める場合) 農業粗収益= 販売収入+ 家計消費+ 副産物 (生産費を求める場合) 農業粗収益= 販売収入+ 経営内仕向け+ 家計消費+ 副産物 農地流動化 担い手農家など農業経営に意欲・能力のある人に農地の利用権又は所有権を移すことを いう。 農地法により農地の権利移動、転用等が厳しく制限されたことや地価の高騰による農地 の財産的保有傾向が強まったため、農業経営の規模拡大が難しくなった。 このため、農業振興地域の整備に関する法律、農用地利用増進法の制定等により、地域 を単位とした農地の賃貸借を促進する制度が整備され、農業経営の規模拡大を促進する農 地の利用権移動が図られている。 ブロックロ−テーション(Block rotation) 一定の広がりをもつ水田をいくつかに区分し、それぞれ水稲栽培または畑作物栽培とし て、一定の周期でその形態を変えていく土地利用方式を田畑輪換方式という。 このうち、転作場所を均等に一巡させるために畑作物栽培の期間を 1 年とする場合をブ ロックローテーションという。 メリット ①作業の効率化が達成される。 ②農地の集積ができやすくなる。 ③生産性が向上する。 ④補助事業の導入が容易となる。 ⑤転作助成金の内団地加算の対象となる。 ゆい(手間替え) 農家相互間の労力交換のことで、労力の等価交換を原則ととしているすべての労力交換 が含まれる。 したがって、労力の過不足を金銭、物品で精算したものや機械耕をしてやった代わりに その分を手間で帰してもらった場合もゆい、または手間替えとする。また、共同田植、共 同防除などの共同作業で作業をしてもらった場合もここに含める。このように農業センサ スでは、農業雇用労働力の観点から調査されている。 リレー農業 花き栽培等で実施されている形態で、海外や国内の有利な気象等立地条件を最大限に利 用して、栽培ステージの一部分を分業することにより、栽培期間の短縮・コスト低減等に よって経営合理化を図ろうとする農業である。 メリット ① 栽培期間が短縮され施設回転率が向上する。 ② 消費者ニーズに即応した生産が容易となる。 ③ 海外の安い労賃の活用や初期投資が少なくて済み生産コストが低減できる。 マーケティング(Marketing) 定義は組織と個人の目標を満足させる交換を創造するためにアイデア、製品、サービス を創りだす活動や価格・プロモーション・流通にかかわる活動を計画実行する過程である。 (アメリカマーケティング協会) 市場ないし消費者の動向を正確につかみ、売れるものを生産する。さらには、積極的に 市場や消費者に向かって量的・質的に新しい需要を創造するという活動であり、したがっ て消費や生産と密接に結び付いた活動として考えられる。生産された商品(農産物) が生 産者から消費者へ渡るまでに流れる経路をいう。 流通チャネル 従来の農産物流通は、生産者→市場→卸売業者→小売業者→消費者であり、大型市場へ の大量出荷、大量流通が有利販売と考えられていた。 しかし、消費者晴好の多様化や販売技術の発達に伴い、大規模小売店、大型専門店さら には、宅配便等による産地直売など様々な小売り形態により、流通経路に大きな変化が生 じている。 販売戟略 各種の販売促進方法を通じて需要を呼び起こし刺激することをいう。 市場、消費者の需要が高まるよう仕向け、あるいは、その欲望をさらに大きく強くさせ るよう仕向けることである。 販売促進方法・手段としてイベントなどの販売キャンペーン、ネーミング、さらには、 広告、訪問販売、広報活動、パッケーザインの工夫などがある。 質的レベルでの産地間競争が激化する中で、 販売戦略は極めて重要な活動となっている。 差別化農産物 差別化の原点は、品質における原点で「味」「鮮度」「安全性」がその基本となってい る。 農産加工においては、「簡便性」、「手作り・本物」が差別化のキーポイントとなって いる。 また、農産物の高付加価値化は、消費者ニ−ズの多様化に応じて農産物がより付加価値 (新たに加えられた価値) の高いものへとシフトしていくことをいう。 差別化・高付加価値の具体例 味 鮮 :完熟、高糖度味 度:朝採り、土付き(泥付き)、産地直送 安全性:無農薬栽培、低農薬栽培、有機栽培 ヘルパー制度 農業経営を安定的に継続していくために、農家が休日を確保したり、農家に突発事故が 発生した場合などに農家に代わり栽培・飼養管理を行う者の派遣又は派遣の斡旋を行う制 度である。 家族経営を主体とした極めて周年拘束性が強い酪農や温室メロン経営等で実施されてい る。 線形計画法 いくつかの経営条件(要因) を一次(不等) 式で表現し、収益を最大にするための経 営計画を決定する方法である。 農業経営純収益の最大化を達成するために、 生産要素の最適利用方式(最適組合わせ)を 導くために利用される。 原 則 ① 生産要素利用可能量がある水準に固定されている。 ② 生産部門は相互に独立的で、補完・補合関係にないこと。 ③ 収益・費用に関する収穫逓減が作用しないこと。 圧縮記帳 施設や機械などの固定資産を新築、購入した際に、国、方公共団体等からの補助金、 奨励金を受けた場合、交付を受けた補助金、奨励金の部分を資産額として計上しない取扱 い方をいう。 したがって、取得額から補助金を差し引いた顧を償却の対象とすることで、補助金部分 を償却しない措置である。
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