学校教育用グループウェア「スタディノート」における学校

学校教育用グループウェア「スタディノート」における学校間協調学習の支援(2)
−ディレクトリサービス「みんなのアドレス帳」によるアドレス情報の共有と自動更新−
Support for collaborative learning among schools by using groupware studYnote (2)
余田義彦 * ([email protected]) ,山野井一夫 * ,中山和彦 **
Yoshihiko Yoden *, Kazuo Ymanoi *, Kazuhiko Nakayama **
東京家政学院筑波女子大学 *,21世紀教育研究所 **
Tokyo Kaseigakuin Tsukuba Womens' University*, Educational Research Institute for the 21st Century**
[要約] 学校教育用グループウェア「スタディノート」における学校間協調学習支援機能の内で、電子
メールのインターネット機能と、ディレクトリサービス「みんなのアドレス帳」によるアドレ
ス情報の共有と自動更新機能について報告した。
[キーワード] グループウェア、遠隔協調学習、CSCL、ディレクトリサービス
はじめに
筆者らは、1990 年より子どもたちの協調学習
の支援を目的として、スタディノートと呼ぶ学
校教育用グループウェアを開発してきた。この
システムは、子どもたちに自分の考えを表現す
るためのツールと、表現したものを社会的に公
開し共有していくためのツールを提供する。
このシステムを用いた協調学習は、校内での
やりとりに限られていた。今回の開発では、機能
を拡張し、インターネット電子メール、メーリン
グリストを利用した他校の子どもたちとの協調
学習を可能にした。本稿では、電子メールのイン
ターネット対応機能の概要と、他校と交流を支
援するために電子メールに付加した「みんなの
アドレス帳」機能について報告する。
1.電子メールのインターネット対応機能
スタディノートには、子どもが作成したノー
トと呼んでいるマルチメディア・ドキュメント
を校内の友だちとやりとりできる電子メール機
能があった。この機能を拡張し、他校の児童や組
織・個人との間でもインターネット・メールを送
受信できるようにした。
このスタディノート電子メールは、次の特徴
を備えている。
①小学生でも使いこなせる操作性の実現
②マルチメディア・メールの送受信が可能
③インターネットの電子メール・アドレスを一
つだけ利用
④インターネットの電子メール・アドレス一つ
で利用者「個人」とメールの送受信が可能
⑤学習活動で役立つアドレス帳を用意
⑥校外へ発信されるメールや校外から届くメー
ルを先生がチェック可能
2.電子メールの「アドレス帳」機能
2−1.二種類のアドレス帳
インターネット電子メールについて何も(例
えばアドレスの表し方など)知識がない小学生
でも、簡単に他校と情報をやりとりできるよう
にするため、電子メールに「みんなのアドレス
帳」
「自分のアドレス帳」という機能を加えた。前
者は、交流の相手校や学習に役立つ情報を提供
してくれる組織・個人のアドレス情報を学習資
源の一つとして校内で共有するための機能であ
る。後者は、共有する必要のないアドレス情報を
個々で管理するための機能である。
2−2.「みんなのアドレス帳」の検索機能
「みんなのアドレス帳」には、送信先のアドレ
スを効果的に検索できるように「おすすめ検
索」、
「ところで検索」、
「情報で検索」という3種
類の検索機能を備えている。
「おすすめ検索」を使うと、多くのアドレス情
報の中で特に選ばれたアドレス情報だけを表示
できる。この仕組みは、教師が子どもの活動をあ
る方向へ導きたいときや、子どもが他の子ども
の活動を支援したいときなどに利用できる。
「と
ころで検索」を使うと、所在地を指定してアドレ
ス情報を検索できる。
「情報で検索」を使うと、欲
しい情報を指定して、それを提供してくれるア
ドレスの一覧を表示できる。
2−3.「みんなのアドレス帳」の学校間共有
「みんなのアドレス帳」は、学校で独自にカス
タマイズできるが、他校ともその内容を共有で
きる仕組みが備えられている。そして、自分の学
校のアドレス情報を更新すると、「みんなのアド
レス帳」を共有している他の学校のそのアドレ
ス情報も更新されるようになっている。そのた
め、先生にとって最小の作業負担で最新の「授業
で使える」アドレス帳を用意できる。
ネットワーク上の資源を、使いやすく、管理し
やすく系統立ててエンドユーザや管理者に提供
するシステムをディレクトリサービスという。
「みんなのアドレス帳」の学校間共有機能は、学
校間協調学習の支援を目的としたディレクトリ
サービスの一つとして位置づけられる。
2−4.協調学習モデルと「みんなのアドレス帳」
筆者 らは、 協調学 習を、 頭の中 の知識
(Intangible knowledge)、一時的情報(Ephemeral
knowledge)、成果物(Tangible knowledge)の3
種類の情報が生産され、それがある形態から別
の形態へと内容を変えたり新たな情報を生み出
しながら伝えられていく生成的過程としてモデ
ル化している。そして、
「みんなのアドレス帳」を
含むスタディノートの学習支援機能を、それぞ
れ次のように位置づけている。
ノート……頭の中の知識を外化して可視化した
り、可視化されている知識を内化するためのメ
ディア
電子メールと掲示板……ノートを一時的情報と
してやりとりするためのメディア
共有データベース……ノートを成果物(作品)と
して共有するためのメディア
みんなのフォルダ……ノートの素材を成果物
(副産物)として共有するためのメディア
みんなのアドレス帳……電子メールのアドレス
を成果物(副産物)として共有するためのメ
ディア
本研究の一部は、
文部省科学研究費補助金
(課題
番号:09558020, 10878024)の補助を受けている。
①ノートを
選ぶ
②アドレス
帳を選ぶ
③アドレス
を選ぶ
一時的情報
電子メール
電子掲示板
外
内
化
識
の
知
識
①
の
知
③
存
用
利
保
の
再
・
成果物
作品
共有データベース
④知識の内化
私的
知識
④「送る」
ボタンを
クリック
②知識の外化
共有知識
私的
知識
報
用
私的知識
情
的
時
化
一
頭の中の知識
引
ノート
副産物
みんなのフォルダ
みんなのアドレス帳
図1.協調学習における情報の種類と流れの三角
モデルとスタディノートの学習支援機能
図2.インターネット・メールの送信手順