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Coyle et al.

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Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
第2部 ロジスティクス・サプライチェーン・プロセス
ロジスティクス・システムの調達局面と販売局面にある基本的なプロセスを理解するこ
とは、ロジスティクス・サプライチェーンの管理にとって決定的に重要である。パートⅡ
は、付加価値を創出したり、費用を引き下げる基本的なプロセスについて徹底的に議論し
分析する。パートⅡのはじめの二章は、あらゆるロジスティクス・システムにとって決定
的に重要な活動(在庫)について考察する。第5章は、ロジスティクス・サプライチェー
ンにおける在庫を概説する。第6章では在庫の決定と統制の方法について考察する。第6
章は、第 3 章で開発された調達ロジスティクス・システムで使われた在庫技術に関する情
報に基づいて、述べる。
第7章はロジスティクス・サプライチェーンにおける貨物保管について論ずる。保管領
域の効果的な管理と統制のために、必要な主要な意思決定とともに、保管の本質と論理的
根拠が提示される。第8章は、保管と在庫に重大な影響をもつ荷役と包装に関連した話題
について考察する。ここでは、荷役と包装両方を概観し、これらの話題にとって決定的な
問題についても考察する。
第9章と第 10 章は、ロジスティクス・システムの費用項目の中で、しばしば最大になる
輸送について既述する。第9章は、ロジスティクス管理者が利用できるあらゆる輸送選択
肢について、その有利・不利を強調して概観する。第 10 章は、戦略上および運用上の局面
を特に強調して、輸送活動の管理を眺める。
第 11 章は、発注処理と情報システムについて論議する。今日の環境において、情報は費
用を引下げ、顧客サービスを改善するための重要な要素である。情報は、発注サイクルそ
の他のロジスティクス領域に対する「接着剤 glue」である。情報は、21 世紀に入ったこれ
からも引き続いて成功を持続するための主要な要素である。
学修の目的
以下の課題に応えられるよう、本章を読み進めてもらいたい:
− 経済に対する在庫の重要性を理解し認識しなさい。
− ロジスティクス・チャネルを通した在庫配備(場所と量)における現在の変化を確認し
なさい。
− 企業が調達資材在庫と製品物流在庫を維持する理由を論じ、その在庫によっていかなる
機能と目的が実現されるか知りなさい。
− 在庫維持費用、発注/立上げ費用と期待品切れ費用を含む在庫費用を計算しなさい。
(1)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
− 在庫分析の ABC 法に従って、在庫を分類しなさい。
− 企業がどれくらい効果的に在庫を管理しているか評価しなさい。
第 5 章 ロジスティクス・システムにおける在庫
LOGISTICS PROFILE:
PROFILE:AT&T's PROCESS REDESIGN
数年前、アメリカン・テレホン・アンド・テレグラフはその在庫が手に負えなくなった
と決定した。そこで、同社は過剰在庫を減らすことによって明らかな方法でその問題に着
手した。
ああ、過剰な在庫レベルは下がったままになっていないだろう。それはしばらくの間落
ちるだろうが、その後少し逆戻りするだろう。「人々は中に入り、もはや必要でないものを
確認するだろう」と、AT&T ベル研究所の OR 分析グループ主任であるドナルド R.「ボブ」
スミスは言った。「一旦その努力が過ぎ去ったならば、在庫は再び戻るだろう。」問題は在
庫が減らされたが、しかし調達資材を管理する方法は変わらなかったということである、
とスミスは言った。
後年、AT&T 等の会社は在庫を制御する方法を開発した。AT&T の在庫は 2 億ドル減っ
て 29 億ドルになった。
Competitive Edge 競争力
スミスその他は、会社が競争力を得るために全在庫流の管理をますます多く用いてきて
いることを示した。
在庫が管理されるプロセスを再設計することは製造業者の収益性に重要な衝撃を与える
と、スミスは指摘した。
しかし、それは、サブライヤーと製造業者から流通業者と顧客にいたるまで多数のプレイ
ヤーが関係する難しいビジネスである。
マネージャーは、全流れ技術を使用して在庫を減らすために、どんなプロセスを使用す
ることができるか?
第一に、あなたは種々のタイプの在庫を見て、それらがどのように働くかについて理解
しなければならない。
(2)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
スミスは、それらを 5 つのカテゴリーに分割した:パイプライン、規模の経済、過剰在庫、
ヘドロ在庫(売れ残り品)と安全在庫。
取引量を縮小することなくパイプライン在庫を取り除くために、マネージャーは時間間
隔を減らすことができる。
「1 週間の輸送間隔と 5,000 万ドルの取引量を持つならば、あなたは輸送ネットワークに
商品の 100 万ドルの商品を持とうとする」と、スミスが言った。
「その時間間隔を短縮しなさい、そうすればローカル在庫を最適化する」と、彼が付け加
えた。
規模の経済に基づく在庫は、顧客需要にともなって上下する。
市場の不確実性を狭めることにより、製造のセットアップ数と多様性を減らすことができ
る。
在庫の山はかくして減らされる。
売残り品ないし時代遅れの在庫は、生産、引渡し、販売のためにリードタイムを短くする
ことによる減らすことができる。
それは、より短い時間で製品を時代遅れにし、特にハイテク電子装置に対して特に重要で
あると、スミスが言った。
Modeling モデリング
しかしながら、在庫を減らす最も重要な手段は、時間局面の在庫管理と呼ばれた AT&T
使用のモデリング技術である。
それは、需要と供給における不確実性を測量することによる必要とされる安全在庫の量を
予測する能力をマネージャーに与える。
スミスは、次のように述べた:「安全在庫は、本当に時間間隔をめぐって関係づけられた諸
不確実性の相互作用である。間隔短縮は、不確実な時間が短くなるので、安全在庫を減ら
すことができる。」
意思決定者にとっての課題はサプライチェーンを通して不確実性を計測し、その後そのデ
ータをとり、予測するために在庫モデルを利用することである、とスミスは言った。
ADAPTED FROM: Ann Hagen, "AT&T's Approach to Inventory Control," American Shipper (April
1993): 42. Used with permission.
在庫の管理と統制は、ビジネス・ロジスティクス・プロセスにおける重要な活動領域で
ある。この文がもつ重要性を誇張して言うと、あるコンサルティング会社は、ビジネス・
ロジスティクスを「動かない在庫もしくは移動中の在庫の管理」であるとした。予想され
るように、在庫の効果的・効率的な管理は、ビジネス・ロジスティクス機能全体が満足の
(3)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
いく成果をもたらす上で決定的に重要である。
本章は、ロジスティクス・システムにおける在庫の役割と関連する一般的な問題に着目
する。在庫の役割と重要性を強調する議論に従って、在庫費用と在庫を分類するためのア
プローチについて言及する。本章は結びで、企業の在庫管理アプローチの有効性を評価す
る方法について論議する。
今日、プライオリティーが最も高いものの一つが、ロジスティクス・プロセスを合理化
し調整することであることを理解し、ロジスティクス・パイプラインを通して在庫水準を
下げながら、顧客サービスを改善する方法を発見することは、決定的
決定的である。伝統的なロ
決定的
ジスティクス・システムは、充分な在庫量を維持していくことが必須であるという考え方
に立って組み立てられた。進歩的なアプローチは、可能なときはいつでも過剰な在庫維持
費用を除去する必要があることを示唆する。ロジスティクス・プロセスを認識し調整する
ことを強調することは、ロジスティクス・プロフィールで論議しような AT&T のアプロー
チと一致している。AT&T の経験は在庫管理プロセスの再設計が収益性に重大な影響を持
つことを示す反面、再設計はとても複雑であり、サプライチェーンに多くのプレイヤーが
関わっていることがわかった。
第6章では、今日の経営環境において効果的であることが証明された在庫管理アプロー
チを確認し、記述する。と同時に、これらの二つの章は、消費者のために新たな価値を創
造しうる全ロジスティクス・プロセスの一つの要素である在庫がそのロジスティクス・プ
ロセスどのように関連するかについて理解するのに役立つ。
Ⅰ THE IMPORTANCE OF INVENTORY 在庫の重要性
本書の主眼は企業内でのビジネス・ロジスティクスの管理にあるけれども、幅広い、マ
クロ経済的な見方から在庫の重要性を理解することは有用である。我々は、在庫が経済全
体とどのように関連しているかという点について簡潔に討議し、それから、在庫が個々の
企業にとって決定的 critical になるいくつかの特定の方法を記述する。
1) Inventory in the Economy 経済のなかの在庫
表 5-1 は、米国国民総生産(GNP)、製造業・商業における在庫水準、GNP に対する在
庫の比率を示したものである。
図 5-1 はこの 21 年間における在庫比率の推移を示している。
表 5-1 GNPに対する製造業・商業の在庫の割合(経常㌦)
年
1974
GNP($10 億)
1.43
在庫($10
($10 億)
在庫
286
在庫の対
GNP 比率
20.00
年
1985
(4)
GNP($10 億)
4.00
在庫($10
($10 億)
在庫
645
在庫の対
GNP 比率
16.13
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
1975
1.55
288
18.58
1986
4.24
657
15.50
1976
1.72
319
18.55
1987
4.53
683
15.08
1977
1.92
351
18.28
1988
4.87
735
15.09
1978
2.16
397
18.38
1989
5.23
780
14.91
1979
2.42
444
18.35
1990
5.46
820
15.02
1980
2.63
483
18.37
1991
5.68
815
14.35
1981
2.94
520
17.69
1992
5.96
832
13.96
1982
3.07
520
16.94
1993
6.38
862
13.51
1983
3.31
510
15.41
1994
6.73
893
13.27
1984
3.78
546
14.44
DATA SOURCE: Survey of Current Business: U.S. Statistical Abstract, U.S. Department of
Commerce; and Robert V. Delaney, reprinted with permission.
METHODOLOGY: Heskett, Ivie, and Glaskowsky, Bus/ness Logistics, 2d ed. (New York: Ronald Press,
1973): 19-21. Inventory investment reflects manufacturing, wholesale, and retail trade inventory as
defined by the Bureau of Economic Analysis, U.S. Department of Commerce.
[percentage of GNP] GNP に対する割合
図 5-1 から、在庫の対 GNP 比率は、1970 年代のほぼ 17∼20%から現行水準の 13∼14%
へと減少してきたことがわかる。この低下は主に 4 つの要因による。
第一に、企業は全体として在庫管理に熟練し、その結果として、それらが在庫の「移動ス
ピード」ないし在庫回転率を改善することに成功した(この点については本章後段で論議
する)
。第二に、情報通信技術の進歩は、企業の在庫管理をより効果的にするのに貢献した
EDI(電子データ・インターチェンジ)等の技術は、企業の在庫削減をもたらした。
第三に、輸送産業における競争の激化は、荷主がカスタマイズされたサービス等、高品質
の輸送サービスを購入する機会を増やし、かくして大きい在庫を維持するニーズをある程
度減らした。第四に、企業には過剰在庫や非付加価値費用に敏感となり、不必要な在庫水
準を減らしたり、無くそうとする動機が芽生えた。
(5)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
2) Inventory in the Firm 企業のなかの在庫
在庫をめぐる最近の傾向が個々の企業の在庫管理に重要な影響を与えることを、経験は
示している。本節は、企業内にある在庫の重要性を強調している話題
強調している話題について論議する。
強調している話題
a) Growth and Significance of Inventory Cost. 成長と在庫費用の重要性
[product line proliferation] 製品ライン拡散
Increased product line variety has resulted in greater levels of inventory for many
多くの企業で製品ラインの多様化がすすんだために、在庫水準は上昇した。例えば、プ
ロクタ・アンド・ギャンブルが将来の乳児用おしめ売上げ個数が 50 万箱と推定される場合、
生産と在庫を最終的に決定する前に、この数字を色(例えば青対ピンクの)
、包装サイズ、
吸収力の違いごとに分けて把握しなければならない。50 万箱の基礎的在庫に安全在庫とし
て追加される 4 万∼5 万箱をプラスして維持するのではなく、各々のライン・アイテムに安
全在庫を設けて、全体で 70 万∼75 万箱の在庫(基礎在庫プラス安全在庫)を必要とするか
もしれない。
[inventory carrying cost] 在庫維持費用
在庫の増加がコストにどのような影響を及ぼすかを示すために、平均 100 万ドルの在庫
をもつハードウェアのディスカウントストアを考えてみよう。本章後段で説明するように、
一般に企業は、年間在庫維持コストを平均在庫品金額の割合として計算する。この割合を
20%と仮定すると、100 万ドルの在庫品を維持する年間費用は、100 万ドル×0.20 =20 万ド
ルである。平均的な在庫水準が 150 万ドルに高まるならば、年間維持費用は 20 万ドルから
30 万ドルに増加する。このディスカウントストアの全体的な利益マージンが売上高の 5%
と仮定すると、平均在庫の 10 万ドル増加を相殺するためには売上高を 200 万ドル(10 万
ドル÷5%=200 万ドル)だけ増加させねばならないだろう。
b) Inventory in Relation to Overall Asset Structure.
全面的資産構造と関連した在庫
[inventory as a percentage of assets] 資産の一定割合としての在庫
もう一つの視点から、在庫投資はしばしば企業総資産のかなり大きな割合を示す。これ
は企業によって異なるかもしれないが、在庫投資はしばしば企業の総資産ベースの 50%に
以上になるかもしれない。表 5-2 は、米国の著名な製造企業、卸売り/小売企業企業の金融
データである。表が示すように、総資産の割合としての在庫は、工場・設備に対する支出
が総じてより大きいのために、製造企業で小さくなりがちであり、かくして企業の総資産
ベースを拡大する。
表 5-2 財務データ抜粋(金額の単位は 10 億㌦)
企
業
経常売上高
総資産額
製造業
(6)
平均在庫額
対総資産在庫率
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
Ford Motor
General Electric
Kraft General Foods
$ 100.1
56.3
28.8
26.8
44.5
6.9
5.4
4.6
2.9
1.2
1.4
10.5
1.8
2.1
0.55
0.96
8.80
0.80
1.60
20.1%
10.3%
42.0%
卸・小売業
Bergen Brunswig
5.0
Fleming Co.
12.9
K-Mart
38.0
The Limited
6.9
Kroger
22.1
SOURCE: 1992 corporate annual reports.
45.8%
68.6%
83.8%
44.4%
76.2%
c) Current Trends toward Shifting Inventory in the Logistics Channel.
ロジスティクス・チャネルにおける現在の在庫シフト傾向
[shifting and eliminating inventories] 在庫のシフトと排除
米国の製造業と商業を支えるのに必要な全体的在庫水準(在庫の対 GNP 比率)は近年低
下しているけれども、ロジスティクス・チャネルにある諸企業に対していくぶん不均等な
衝撃が時々あった。例えば、多くの小売・卸売企業はコスト圧力を受けて、在庫水準を積
極的に減らし、負担を製造業者とサプライヤに効果的に転嫁した。これはある程度論理的
な戦略である反面、直接の効果は、在庫維持の責任を、チャネル全体の機能をより能率的
にするためにほとんど何もしないチャネルの「上流」に位置するメンバーにシフトさせた
にすぎない。
このような状況にあるサプライヤは追加された在庫の維持費用を最終的に埋め合わせる
必要があるので、この費用は、追加的な取引費用として顧客(小売と卸売り)に必然的に
転嫁される。今日人気のある好ましい解決策は、製品の買い手と売り手が win-win になる
在庫戦略を認識することである。その結果、最近、ロジスティクス・チャネル全体の在庫
水準を故意に減らそうとする在庫管理アプローチの開発に重大な関心が払われるようにな
った。QRと効率的消費者対応(ECR)のような、そのいくつかは第 6 章で論議する。
全体的に、企業は在庫費用節減を通した節約機会に関して心を開いていなければならな
いだけでなく現実的でなければならない。
本章および本書全体を通して討議するように、企業は、支出を減らしながらサービスを改
善する革新的なソリューションを捜さなければならない。
それは必ずしも明白でないかもしれないが、こうしたソリューションはひとたび認識され
るならば、非常に効果的かもしれない。
(7)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
Ⅱ RATIONALE FOR CARRYING INVENTORY
在庫維持の論理的背景
現代の企業は可能であればいつでも在庫を最小化ないし除去しようとするけれども、企
業が在庫を持ったり蓄積する理由を理解することは役立つ。調達資材在庫と物流製品在庫
を論議した後に、我々は、在庫の機能別類型を見るための一般的フレームワークに注意を
向ける。本節は結びで、ロジスティクス以外のビジネス機能に対する在庫の重要性を要約
する。
[logistics channel] ロジスティクス・チャネル
図 5-2 は、相当量の在庫があるかもしれないロジスティクス・チャネル内の地点を示して
いる。本質において、原料、部品、半製品の在庫と修繕維持アイテムは一般に、サプライ
ヤの立地点、原材料倉庫あるいは工場・製造施設で象徴的に見いだされる。したがって、
完製品や中間製品の在庫は、工場(製造施設)、工場倉庫、市場指向型物流センター、小売
地点(消費地)で見いだされるかもしれない。図 5-2 は、ロジスティクス・チャネルの中に
在庫が見いだされるかもしれない地点が多数あることのメモとして役に立つ。最終消費者
のニーズを満足させる重大な責務があることを仮定すると、全プロセスのキーポイントで
在庫を削減・除去する仕事は、本当に挑戦的な課題である。しかしながら、それは、今日
多くの企業のロジスティクス戦略にとって中心的な課題である。
1) Physical Supply Inventories 調達資材在庫
調達資材在庫
(8)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
考察する最初の在庫は、企業の加工、製造、組立て機能を支える在庫である。そのよう
な在庫を蓄積する主な理由は、購入節約、輸送節約、安全在庫、投機的な購入、供給季節
変動、調達元の維持といった点にある。
a) Purchase Economies. 購入節約
[discount versus storage cost] 割引対保管費用
調達資材在庫を蓄積する 1 つの理由は、企業が購入節約を実現できるかもしれない、と
いうことである。例えば、企業は価格割引が利用できることから、原料を大量購入するか
もしれない。直ちに使わない原材料は貯蔵する必要があるけれども、在庫費用の増加は大
量購入による節約より小さいかもしれない。これは、調達崎を、重大な数量割引が得られ
る海外に求める企業にとって重要になりつつある。このような場合、企業は購入価格割引
と保管費用をトレードオフすることになる。購入価格の割引きによって節約される総額が
保管費用を上回る限り、原材料在庫を進んで蓄積しようとする。
この論理は意味があるけれども、真の費用トレードオフがそうすることを正当化するか
どうかを無視して、企業が原材料や部品の在庫を備蓄することは普通である。購入価格割
引の利用するために原材料在庫を維持する戦略に固執することは、関連するすべての費用
の良心的・客観的な分析で裏打ちされる必要がある慣行である。
b) Transportation Savings. 輸送節約
[carload/truck load savings] 一車積み節約
調達資材在庫を蓄積する第二の理由は輸送節約であるかもしれない。しばしば、企業は
輸送節約を前述の購入節約と結びつける。大量購入する企業は大量輸送することができる。
多くの企業は、輸送費用を減らすために一車積み・一船積みで原材料を輸送する。いくつ
かの事例で、企業は
企業は 100 ポンドあたりより低い賃率でさえある複数の一車積み・一列車積
みで出荷する。
みで出荷する
[impact on selling price] 販売価格への衝撃
原材料の輸送費用は通常、最終販売価格の重大な部分を占める。移動量が大きく、輸送
が非常に重要になるので、運賃率がわずかに低下してもそれはしばしば重大である。同時
に、原材料の在庫費用と保管費用は通常比較的小さい。例えば、石炭のような原料は野積
みにしておくことができる。その結果、在庫と倉庫の費用は輸送コストの低下ほど増加し
ないかもしれないので、流動量の大量化により輸送費用の削減はたびたび総費用を減らす。
この状況はアイテムの価値とともに変化する。自動車メーカーは、例えば原材料の在庫費
用が高すぎて、あらかじめ在庫を維持しておくことを正当化できないことがわかるかもし
れない。
(9)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
c) Safety Stock. 安全在庫
[production shutdown] 生産停止
調達資材在庫をもつの第三の理由は、緊急生産停止を防ぐことである。言い換えると、
多くの企業は、輸送遅延等発注に応じる際に問題がでた場合に、バッファ(安全在庫)と
して一定量の在庫をもつ。部品の品切れによる組立てラインの停止は1時間あたり数千ド
ルのコストを発生させるかもしれない。維持される資材の量は、引渡しが遅延する確率と、
企業が使用する原料の量に依存する。
d) Speculative Purchase. 投機的購入
[future uncertainties] 将来の不確実性
調達資材在庫の第四の理由は、将来の価格上昇、ストライキ、政策の変更、引渡しの遅
延、金利の変動、世界市場における通貨変動に対応するための投機的な購入またはヘッジ
のためである。また、いくつかの企業にとって将来の資材供給は不確実であるかもしれな
い。例えば、鉄鋼産業ストライキの脅威は、ストライキ発生に備えて自動車産業に鋼材を
蓄積させる。さらに、関税や輸入割当て等の輸入障壁の設定を懸念して、日本の消費財メ
ーカーは時々、米国で最終製品在庫を備蓄するかもしれない。
e) Seasonal Supply.
供給の季節変動
[interruption in supply] 供給の中断
季節商品の入手可能性は、調達資材在庫を蓄積することの第五の理由である。穀物(小
麦等)のような農産物は、年のある一時期だけ入手できるアイテムの好例である。そのよ
うな商品の場合、企業は年間を通して需要を満たすために供給の蓄積を必要とするかもし
れない。いくつかのケースで、輸送手段は、季節的な入手可能性に影響するかもしれない。
例えば、鉄鉱石は五大湖を通ってセントローレンス川を下る。各冬の水路凍結は鉄鉱石の
供給を中断する。この例で、鉄鋼企業にとって最善の選択は、たとえ維持費が増加しても、
鉄鉱石の在庫を季節的に蓄積することである。この追加的費用は、別の輸送手段による年
間を通した積み出しが望ましい場合に実現される追加的輸送支出と比較するときに、正当
化される以上のものがある。正味
正味 net 結果も、鉄鋼企業は年間を通して生産を平準化する
結果
ことができ、かくして単位あたりの生産費を下げる。
f) Maintenance of Supply Sources. 資材調達源の確保
[supplier efficiencies] サプライヤの効率
調達資材在庫を持つことの第六の理由は、資材調達源を確保することである。大手メー
カーは、自家生産できるときでも、大手企業のために組立部品や半製品を製造する中小の
ベンダーやサプライヤを頻繁に使う。大手メーカーは、公共倉庫を使うのと同じように、
ベンダーやサプライヤをよく利用するかもしれない;大手メーカーはピーク需要を満たす
(10)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
だけの生産能力が自社にないとき、ベンダーやサプライヤから購入する。
このアプローチがもつ一つの問題は、小さなベンダーやサプライヤが「親会社の専属会
社」であるかもしれない、ということある。言い換えると、彼らの唯一の顧客は1∼2の
大手メーカーであるかもしれない。大手メーカーが小さなベンダーから一年のある時期購
入しないことにすれば、小さなベンダーは完全に納入先を絶たれ、工場閉鎖と従業員の解
雇を余儀なくされるかもしれない。大手メーカーが再び資材を必要とするとき、小さなベ
ンダーは、従業員を呼び戻して再雇用することを試みねばならない。このためベンダーの
費用が増加したり、経験のない新しい従業員を雇わなければならない場合には品質の低下
も惹起されよう。大手メーカーは、小さなベンダーに生産能力を少なくとも部分稼働させ
続けるために、シーズンオフの仕事を与えるかもしれない。かかる行動は一定量の在庫蓄
積を意味するが、ベンダーを変更したり、小さなベンダーに再スタートしてもらうより安
くあがるかもしれない。この事例では通常、在庫維持費用の増加と、低いベンダー納品価
格および高い品質の間でトレードオフされる。
2) Physical Distribution Inventories 物流在庫
第二の在庫型は、主として顧客への出荷を待っている完成品の在庫である。物流在庫を
蓄積する理由は、輸送費節約、生産費節約、季節需要、顧客サービス、安定雇用、再販商
品の提供と関っている。
a) Transportation Savings. 輸送費の節約
[volume discounts] 数量割引
企業が完製品や半製品の在庫を蓄積する一つの理由は、資材蓄積の理由と似ている:輸
送経済である。企業は、混載輸送の LCL や LTL ではなく一車積み輸送によって、安い運
賃率を経験するかもしれない。輸送費節減が追加製品の保管に関わる経費よりも大きい限
り、大量出荷は有利である。大量出荷はまた、高速で信頼性の高い一貫輸送サービスのよ
うなより良いサービスを経験するかもしれない。これらの結果は、移動中在庫の維持費用
と製品の品切れに起因する潜在的な逸失販売費用のような他の費用を減らすのを助ける。
[market-oriented warehouses] 市場志向型倉庫
市場志向型倉庫
企業はしばしば、物流在庫に関わる輸送節約を市場指向型倉庫・物流センターの利用と
関連付ける。企業は、費用を最小化するために、自社工場から戦略的に立地させた市場指
向型施設まで、一車積みに相当する数量の貨物を発送し、その後で、顧客までの短距離区
間を混載 LTL ないし小量輸送する。
伝統的に、荷主企業は低い運賃率と良質のサービスを大量出荷と結びつけてきたが、今
日では、小量出荷の場合でも、低い運賃率と高いサービス水準を交渉することができる。
(11)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
輸送企業は一般に、個々の荷主のニーズを満たすために、運賃率とサービスを進んでカス
タマイズしようとする。荷主は、商品価格と顧客サービスのニーズを慎重に確認し、その
ニーズを最も良く満たすことができる輸送企業と販売条件を交渉する。
b) Production Savings. 生産の節約
[production runs] 生産継続期間
物流在庫の蓄積を正当する第二の根拠は、生産経済の問題と関連する。製造管理に携わ
る多くの人々は伝統的に、生産費を最適化する最善の方法が、アイテムを選択して、その
生産継続期間(ラン)を長くとることであると感じた。その結果、企業は、将来のある時
点まで必要のない完製品在庫が高い水準に発生することが異常なことでなくなった。この
戦略は、高水準の完製品在庫を維持する費用が生産節約の合計額より少ないという理論に
よって正当化された。
しかしながら、現在の考えは次のようである。企業は、おそらくライン転換費用を減ら
したり、平均製造費用を下げたりすること等々によって、小量を効率的に製造する方法を
開発しようとしなければならない。この結果、企業による大量の完成品在庫の維持を正当
化できるという考えに疑問が呈せられようになり、かくして、多くの企業では、過剰在庫
の維持費用が生産費の節約より大きいことがわかった。
[order versus stock] 受注対在庫
もう一つの興味深い状況は、在庫を回避し受注生産する企業のそれである。受注生産は
共通して生産継続期間を短くし、企業は頻繁なライン転換の費用を下げる技巧と科学を修
得することに務めた。受注生産は完製品在庫を維持するニーズを実質的に取り除き、この
便益はしばしば財務的にかなりな額になった。例えば、ゴルフ・クラブの Ping ブランド
(Karsten 社製)は受注生産であり、数週間分の受注残 backlog は普通である。
c) Seasonal
Seasonal Demand. 季節需要
完成品を蓄積する第三の理由は、製品に対する需要が季節的に大きく変動するかもしれ
ないということである。
繁忙期の需要を満たすだけの生産能力をもつことは効率的でなく、そのような大きな生産
能力をもつよりも、小さな工場で年間を通して規則正しく生産する方が良いかもしれない。
かかる戦略は、低い平均生産費を確保するために、需要閑散期に完成品を貯蔵する保管施
設を要する。もう一度言うと、企業は、生産費およびおそらく工場投資と、在庫費用をト
レードオフする。
[apparel industry] アパレル産業
例えば、季節変化が大きく、在庫水準の高さが特徴のアパレル産業に、重大な変化が起
こった。アパレル産業は、精度の高い需要予測、POS 販売情報の入手可能性と分析、非常
に高い品質かつ時間に敏感な輸送サービスに着目することによって、ロジスティクス・パ
(12)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
イプラインから大量の在庫を除去することができた。アパレル産業は、全体の在庫とロジ
スティクス費用を大幅に減らし、小売業が経験する顧客サービス水準を改善した(QR 戦略
に関して第 6 章で討議する)。
d) Customer Service. 顧客サービス
顧客サービス
[substitutability] 代替性
第四の理由は、顧客サービスを改善したり逸失販売費用を減らすために、企業が物流在
庫を持つかもしれないということである。これはマーケティングの観点から非常に重要で
ある。代替性それ自体、および販売と費用に対するその効果については上述した。代替性
が高い場合、企業は完成品在庫を消費者の近くに配置して、引渡しをスムースにするかも
しれない。逸失販売の費用と在庫維持費用の間にはトレードオフがある。
情報技術の進歩と、企業が集中立地から非常に効果的に顧客サービス・センターを運営
する方法が進歩するとともに、最近では、必要とされる顧客サービス水準に依存して、在
庫をグループ分けする傾向があらわれた。企業が優先度の高いアイテムを主要な市場やそ
の付近で確実に入手可能とすることに務めている証拠があった反面、フェデラル・エクス
プレス、UPS、Airborne のような高い品質の急行ロジスティクス・サービスの利用は、必
要とされる時に即座に引渡しができるよう、中心地点でこれらのアイテムを保有すること
を正当化する。
e) Stable Employment. 雇用の安定
[skilled labor] 熟練労働
物流在庫を持つ第五の理由は、安定した雇用を維持することである。企業が熟練労働を
失いたくなければ、これは特に重要である。在庫は、長期人件費と製品の品質に対してト
レードオフする。雇用を安定させるために在庫を持つことは長期的にみれば適当でないけ
れども、企業は、費用効率をあげることが短期的な戦術として好都合であることを見出す
かもしれない。
f) Goods for Resale. 再販売商品
[customer service] 顧客サービス
完成品在庫を持つ第六の理由は、消費者ニーズをタイムリーに満たすことである。企業
は需要が発生したときにそれを満たすのに十分な在庫を手元にもつことは賢明であろう。
しかしながら同時に、不必要なほど高い在庫水準に起因する余分な費用の発生を避けるた
めに、在庫をもつ企業は消費者と密接に協働しなければならない。
(13)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
3) Functional Types of Inventory 在庫の機能別タイプ
本節ではこれまで、企業が資材管理の一部や物流の責任として在庫を持つことを正当化
する理由について述べてきた。在庫について考えるもう一つの方法は、在庫がもつ 7 つの
主要な機能と関連づけることである。我々は、以下の議論においてこれについて言及する。
ロジスティクス・プロフィールで指摘したように、AT&T は在庫を種々のタイプに分割し
た。AT&T は、種々のタイプの在庫がはたす機能に重要な違いがあることを認識した。
[cycle stock] 運転在庫
機能別に見た在庫の第一のタイプは運転在庫である。それは、正常な販売や使用を通し
て減少し、日常的な発注プロセスを経て補充される在庫である。このタイプの在庫は、企
業が正常な業務活動で規則正しく消費する製品の数量でもある。次章を検討するように、
企業が運転在庫を持つのは、需要とリードタイムの長さに確実性がある場合に発生する需
要や使用に応えるためである。
[in-process stock] プロセス在庫
在庫の第二のタイプは、製造途中商品と移動中商品に関連する。仕掛品(WIP)、半製品な
どと呼ばれるものは、製造状況において重要である。移動中在庫は、運送業者が買い手の
もとへ輸送しつつある在庫である。時々、購入企業は輸送中商品に対して所有権者として
の関心をもつので、その在庫の維持は重要な財務的な含意をもつ。輸送中在庫はまた、商
品が消費者へ輸送されている間、販売企業が依然所有している在庫である。付録 6A では、
輸送中在庫の話題について詳細に述べる。
[safety stock] 安全在庫
機能別に見た在庫の第三のタイプは、需要とリードタイムの不確実性による損害を未然
に防ぐ安全在庫ないしバッファ在庫である。企業は、そのような不確実性とその影響を回
避することを目的に、運転在庫に加えて安全在庫を持つ。安全在庫を持つことは、需要が
不意に増加しても、品切れという消費者に対して負の結果を回避するのに役立つ。
品切れ費用の評価は、適切な安全在庫量を決定するための前提条件である。企業は、品
切れ費用を評価した後、安全在庫の上積みにともなう費用増分が品切れ費用より少ない場
合にのみ、追加的安全在庫を維持すべきである。
[seasonal stock]
季節在庫
在庫の第四のタイプは、需要期に先立って蓄積し保持する季節的な在庫である。大きな
季節在庫を必要とする産業としては、アパレル、スポーツ用品、自動車がある。クリスマ
ス用品もある。1月∼6月に海外で製造された多くのクリスマス用品は春から夏にかけて
米国に発送される。その後米国内の小売店に向けて発送される初秋までの期間、在庫とし
て保持するかもしれない。企業はまた、生育と収穫の季節性を調整すべく、販売前にトマ
ト・ジュースのような加工品の在庫を積むかもしれない。
[promotional stock] 販売促進在庫
(14)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
機能別に見た在庫の第五のタイプは販売促進在庫である。それは、企業のロジスティク
ス・システムがマーケティング販売促進や、流通チャンネル通して製品を引き寄せる意図
流通チャンネル通して製品を引き寄せる意図
をもった企業が顧客に提供する price deal に迅速かつ効果的に対応するために保持される。
企業はしばしば、そのような目的のために、テレビ、ビデオカセットレコーダー、タイヤ、
タバコ製品等の製品を蓄積する。マーケティング販売促進の成功は、比較的短い通告 notice
で大量の製品を市場に注ぎ込むロジスティクス・システム能力に大きく依存する。
[speculative stock] 投機的在庫
在庫の第六のタイプは投機的在庫である。
製造・組立関連企業が必要とする資材との関連がもっとも深いこの種の在庫は、価格の上
昇や調達の制約のリスクから保護するものである。
例えば、米国の企業は、韓国、日本、シンガポール等の企業から購入した部品・小組立品
を備蓄する。これは、上述した不確実性や輸入割当て、関税等から米国企業を保護する。
それに加えて、Hershey Chocolate Company、Pillsbury および Kraft General Foods 等多
くの加工食品企業は、その製品に不可欠な材料の世界先物市場に積極的に参加しなければ
ならない。
[dead stock] 不動在庫
第七の在庫タイプ(不動在庫)は、正常な事業目的からみて価値のないものである。企
業は、真のビジネス価値をもつ場所に不動在庫を送ったり、海外市場に売却ないし流通さ
せたり、企業と環境の基準を満たす形で処分するかもしれない。ロジスティクス・プロフ
ィールで指摘したように、AT&T は、生産、引渡し、販売というサプライサイドにおける
リードタイム短縮は、不動在庫を減らす鍵であることを見出した。企業は、製品(ハイテ
ク電子設備)を短期間に陳腐化させることによって、目的に役立たない在庫量を減らすこ
とができた。
現在、不動在庫から経済価値を引き出すことに関心のある 200 社以上の企業が、投資回
復協会に所属している。このグループは、組織にとって使用済みないし過剰な商品を売却
ないし移転させるための効果的な方法を研究し、メンバーの間で印象的な結果をえた。例
えば、そのようなプログラムからの収入や節約は、プログラムを管理する平均費用の 10∼
15 倍に達するかもしれない。
特殊な例として、その投資回復プログラムが 15 年を経過して成熟した小売業務 retailing
operation に進化したウエアハウザ社のケースがある。その店舗は、中古製材設備等を提供
し、他企業の余剰商品を保管さえする。Mead 社は、類似したニーズをもつ企業に余剰設備
を販売する。フィリップス・ペトロリアム社は、余剰アイテムの用途を社内に見出すこと
に務めた後、過剰な商品を売却するために、隔月に一回一日だけ、66,000 平方フィートの
倉庫(
「ショールーム」)を一般公開している。
(15)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
4) The Importance of Inventory in Other Functional Areas
他の機能領域における在庫の重要性
[functional interfaces] 機能的な協働
これまでの章で、ロジスティクスがマーケティング組織や製造組織等の他の機能領域と
協働する方法を調べた。その協働は通常、在庫領域との協働ほど目立つ領域はない。ロジ
スティクス・システムにおける在庫の重要性を分析するための背景として、我々は、ロジ
スティクスがビジネスの他の機能領域を在庫問題とどのように関連するかについて検討す
べきである。
◎マーケティングは、製品の入手可能性を確保して、できるだけ迅速・完全に消費者ニ
ーズを満たすことが重要であることから、高い顧客サービス水準と補充体制が整った在
庫を望む。
◎製造は一般に、時間外手当ての支払いを避けて製造費用を最小化するために、早い時
製造は一般に、時間外手当ての支払いを避けて製造費用を最小化するために、早い時
期に季節アイテムを生産するとともに、生産継続期間を長くし調達費用を最小化するこ
とを望む。
◎財務は、在庫回転率を高めて流動資産を減らし、資産の高い資本報酬率を高くするた
めに、少ない在庫を望む。
上述の諸点は、他の機能領域が在庫に関心を抱く理由を明らかに示している。それと同
時に、財務領域の目的は、マーケティングや製造領域の目的と明らかに矛盾するかもしれ
ない。マーケティングと製造の間では、ともに高い在庫水準に関心を抱いているけれども、
時には微妙な矛盾が生ずる。製造が望む長い生産継続期間は、消費者需要を満たすために
マーケティングが必要とする製品の不足を惹起することがありうる。例えば、マーケティ
ングが目下供給不足にある別の製品を必要とするときでも、製造は 5,000 単位まで特別な
生産継続期間(操業 production run)を続けたいかもしれない。
[arbitrator role of logistics]
ロジスティクスの調停者的役割
多くの企業では、こうした在庫目的の矛盾を解決するために、正規のロジスティクス組
織を使うことができる。在庫はロジスティクスに重要な影響を与え、在庫管理は多くのロ
ジスティクス組織に課されたきわめて重要な活動である。ロジスティクス管理者は、他の
ロジスティクス領域との間だけでなくここで検討した機能領域との間の在庫トレードオフ
を分析するのに卓越した位置に置かれている。いくつかの事例で、これはほとんど調停者
としての役割である。
在庫の適切な管理と統制は、顧客、サプライヤ、組織の主要な(機能)部門に影響を及
ぼす。ロジスティクス・システムの中で在庫をもつことに多くの利点があるけれども、在
庫維持費用は主要な費用でありので、ロジスティクス・システムは在庫水準を引下げを強
調すべきである。
(16)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
Ⅲ INVENTORY COSTS 在庫費用
[importance of inventory costs] 在庫費用の重要性
在庫費用は主に次の 3 つの理由から重要である。第一に、多くの企業で、在庫費用は総
ロジスティクス費用の重大な部分を占める。第二に、企業がロジスティクス・システムの
諸地点で維持する在庫の水準は、顧客に提供できるサービスの水準に影響する。第三に、
ロジスティクスにおける費用トレードオフの決定はしばしば在庫維持費用に左右されるが、
最終的にはそれに影響する。本節は、ロジスティクス管理が在庫政策を決定するときに考
慮すべき費用に関する基本的な情報を提供する。主な費用としては、在庫維持費用、発注
/準備費用、期待品切れ費用、移動中在庫の維持費用がある。
1) Inventory Carrying Cost 在庫維持費用
Douglas M. Lambert は、目印となる調査プロジェクトの中で、在庫維持費用を構成する
4 つの主要な要素を引用した:資本費、保管空間費用、在庫サービス費用、在庫リスク費用
である1】。それぞれの費用は固有の性質を持ち、その特別な計算には種々の費用が含まれる。
a) Capital Cost. 資本費
時として利子ないし機会費用と呼ばれているこの種の費用は、在庫と結びついた資本を
もつことが企業にどの程度の費用負担を強いるかということに着目する(資本を財務的に
生産的な他のものに投資することに比べて)
。言い換えると、「他の価値あるプロジェクト
に資本を投資することに代えて、在庫に投資することの黙示的価値は何か?」
資本費はしばしば在庫維持費用の最大部分を占める。在庫維持費用は通常、保有在庫総
額の割合として表わされる。例えば、資本費は製品価額(100 ドル)の 20%として表され
た場合、実際の資本費は$100×20%=20 ドルになる。同じように、製品価額が$300 ならば、
資本費は 60 ドルになる。
[calculating capital cost] 資本費の計算
実際問題として、資本費として受け入れることができる金額を決定することは、たやす
いことではない。事実、ほとんどの企業は、資本費の決定が科学というより芸術とみなす
かもしれない。在庫を決定するために資本費を計算する 1 つの方法では、企業のハードル・
1
Douglas M. Lambert, The Development of an Inventory Costing Methodology: A Study of the Costs
Associated with Holding Inventory (Chicago: National Council of Physical Distribution Management,
1976).
(17)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
レート(新投資の期待最小報酬率)を確認することが必要である。このように、企業は、
広告や新工場建設、新しいコンピュータ設備の導入への支出決定と同じ方法で在庫決定を
するかもしれない。
例えば、企業の平均在庫価値が 30 万ドルであるとする。この在庫は企業にとって機械や
他の設備と同じ資本資産である。ハードル・レートを 15%とするならば、資本費は年間
45,000 ドル($30 万×15%)となる。
[accurate inventory costing] 正確な在庫原価計算
在庫評価法は資本費を正確に決定するためにきわめて重要であり、さらにその後の在庫
維持費用全体の決定に対しても決定的に重要である。Stock & Lambert によると、「資本の
機会費用は、現金払い在庫投資にのみ適用されるべきである....これは、在庫が保管場所ま
で送られる間に発生する直接的な可変費用である。2」」かくして、財務的に在庫水準の変動
は在庫価値の可変部分にのみ影響を及ぼし、配賦費用の固定部分に影響を及ぼさないとい
う理由から、完全配賦製造費用で在庫を評価するという、一般に認められた会計慣行は、
在庫決定の場合に受け入れられない。しかしながら、在庫価値に調達輸送費を含めること
はこの勧告と一致しており、企業は可能なときはいつでも、そのような費用の計測値を含
めるべきである。
資本費の話題に関わる最終的提案は、関連する費用要素を正確かつ包括的に計算するよ
う努めることである。それは時々誘惑的であるけれども、教科書に見られる産業の平均値
または割合%(25%のような)を利用する傾向はまぎらわしいだけでなく、非常に不正確な
結果を生むかもしれない。
b) Storage Space Cost. 保管空間コスト
このカテゴリーは、倉庫からの製品を出し入れと関連した荷役費用、および賃貸料、暖
房・照明のような保管費を含む。かかる費用は、状況によって大きく変化するかもしれな
い。例えば、完成品は一般に、安全な荷役と複雑な保管施設を必要とする一方で、原材料
はしばしば鉄道貨車から直接を荷下ろしし、野外で保管することができる。
[fixed versus variable expenses] 固定費対変動費
保管空間費用は、在庫水準の変動とともに増減する。かくして、空間費用を推定すると
き、資本費と同様に、固定費よりむしろ可変費を含めるべきである。おそらく、営業倉庫
の利用と自家用倉庫の利用を比較することによって問題をはっきりと説明することができ
る。営業倉庫を使うとき、事実上すべての荷役費と保管費は在庫品保管量とともに直接的
に変化する。その結果、これらの費用はすべて在庫決定と関連する。しかしながら、企業
が自家用倉庫を使うとき、多くの(建物の減価償却のような)保管空間費用は固定され、
在庫維持費用と関連しなくなる。
在庫維持費用と関連しなくなる
2 Douglas M. Lambert and James R. Stock, Strategic Logistics Management, 3rd ed. (Homewood, IL:
Irwin, 1993): 378-379.
(18)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
c) Inventory Service Cost. 在庫サービス費用
[insurance and taxes]保険料と租税
保険料と租税
在庫維持費用のもう一つの構成要素は保険料と租税である。損失・損害のリスクは、製
品の価値とタイプによって異なる保険料を必要とするかもしれない。また、多くの州は、
時に月単位で在庫品の価値に課税する。企業が製品の保管場所を決定する際、高い租税費
用をもたらす高い在庫水準は重大である。保険料と租税は製品によってかなり変化するか
もしれず、在庫維持費用を計算するとき、この点を考慮に入れなければならない。
d) Inventory Risk Cost. 在庫リスク費用
[risk and obsolescence] 危険と陳腐化
この最後の主要な在庫維持費用の主たる構成要素の最後のものは、「会社の統制範囲を
越えた種々の理由から、在庫品の価値が大きく減少するかもしれない」真の可能性を反映
している。例えば、あり期間保管された商品は陳腐化して、価値が減少するかもしれない。
流行シーズンが終われば、ファッションアパレルも価値を急速に失うかもしれない。生鮮
食料品でも品質が低下したり価格が下落するとき、この現象は起きる。同じ程度でないが、
工業製品もよく似たリスクに直面するかもしれない。ライフ・サイクルが比較的短いコン
ピュータ及びその周辺機器、半導体のような非常に高価な製品は極端な例である。そのよ
うな事例で、陳腐化または減価償却の費用は非常に大きいかもしれない。
在庫リスク費用のどんな計算も、在庫品の陳腐化、損傷、抜き取り、窃盗等々のリスク
と関連する費用を含めるべきである。在庫アイテムがそのようなリスクに直面する程度は、
在庫品の価値したがって維持費用に影響する。
2) 在庫維持費の計算
[valuation of inventory] 在庫の評価
特別な保管アイテムに対する在庫維持費用の計算には、3 つの段階がある。第一は、保管
アイテムの価値を確認することである。伝統的な会計慣行によると、最も広く認められた
在庫評価法は先入れ先出し(FIFO)基準、後入れ先出し(LIFO)基準、平均費用基準の
三つである。在庫決定に対して最も重要な価値尺度は、企業のロジスティクス施設に目下
搬入されつつある販売商品の原価または可変製造費用である。もう一度言うと、これは、
在庫水準の変動が、在庫品価値の可変部分だけに影響し、固定部分には影響しないためで
ある。
[carrying cost percentages] 維持費の割合
第二の段階は、在庫維持費用を計測するために、個々の維持費用構成要素を製品価値の
(19)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
割合として計測し、構成要素割合を付加することである。かくして、維持費用は製品価値
の割合として一般的に表される。保管空間、在庫サービスと在庫リスクの諸費用を計算す
る場合、最初に金額でこれらの費用を計算し、その後で率に変換することは役に立つかも
しれない。
[calculation of carrying cost] 維持費の計算
最後の段階は、(製品価値の割合としての)維持費用全体に製品価値を掛け合わせること
である。これは、特別な在庫量に対する年間維持費用を計測するであろう。
a) Example.
$100 X 25% = $25 per year
ある企業が1機あたり 100 ドルの可変的製造費用でパソコンハードディスクを製造する
と想定しよう。表 5-3 は、維持費用の各構成要素を製品価値の割合としてリストしたもので
ある。ハードディスク1機の在庫を一年間維持する費用は、次のように計算される:
$100×25%=$25(年間)
表 5-3 維持費用の構成要素(パソコンHD)
費用
資本
保管空間
在庫サービス
在庫リスク
合計
製品価値に対する割合
12%
2
3
8
25%
3) Nature of Carrying Cost 維持費の性質
[concept of average inventory] 平均在庫の概念
基本的に類似の維持費用がかかるアイテムは、在庫1ドルあたり維持費用が同じ推定値
を用いるべきである。しかしながら、すぐに陳腐化してしまうアイテムまたは劣化防止の
サービスを要するアイテムは、個別の費用推定値を必要とするかもしれない。その年に維
持された在庫品価値の割合として表される在庫品価値1ドルあたり維持費用の推定値は、
維持費用が在庫品価値の多寡によってどのように変わるかを反映する。表 5-4 は、平均在庫
量が高くなるにつれて(すなわち在庫水準が上がるにつれて)
、年間維持費用が増加する(そ
の逆)ことを示す。言い換えると、維持費用は可変であり、平均在庫量または平均在庫価
値と直接比例する。
表 5-4 コンピュータHDの維持費情報
発注期間
年間発注回数
1週
2週
52
26
平均在庫(1)
価値(2)
単位
50
㌦ 5,000
100
10,000
(20)
年間在庫維持費用合計(3)
1,250 ㌦
2,500
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
4週
13
200
20,000
5,000
13 週
4
650
65,000
16,250
26 週
2
1,300
130,000
32,500
52 週
1
2,600
260,000
65,000
(1)1 週間の在庫供給は 50 単位 (2)単位当たり価値は$100 (3)維持費用割合は 25%と想定
4) Order/Setup Cost 発注/立上げ費用
総在庫費用に影響する第二の費用は、発注費用または立上げ費用である。発注費用は追
加的在庫を発注する費用であり、製品自体の費用を含まない。立上げ費用は、特に、例え
ば製品ラインの転換を促進するために、生産ないし組立てプロセスを変更する費用である。
a) Order Cost. 発注費
在庫品の発注または調達と関連した費用には固定要素と可変要素の両方がある。固定要
素は、情報システム、施設および発注活動を促進するために利用可能な技術の費用である
かもしれない。この固定費用は発注回数に関して一定である。
[activities affecting cost] 費用に影響する諸活動
また、在庫を増やすための発注回数とともに変化する多くの費用がある。こうした可変
費用を発生させる活動には次のようなものがある。
(1)在庫水準の見直し;
(2)発注書 requisition または購入発注の準備と処理;
(3)受取り報告の準備と処理;
(4)在庫投資に先立つ在庫のチェックと点検(この活動は総合品質管理および「初めてそ
れを正しく行うこと」の責務の一部として最小化されるべきであるけれども);
(5)支払いの準備と処理。
ある種の人々とプロセスが果たす役割は取るに足りないほど小さく見えるかもしれない反
面、発注と受入れに関連するすべての活動を考慮するとき、それらは非常に重要である。
b) Setup Cost 立上げ費用
[production changeover] 生産転換
生産立上げ費用は、発注費用ないし調達費用より明白かもしれない。立上げ費用は、企
業が種々のアイテムを在庫確保のために生産する生産ラインを修正するたびに発生する費
用である。立上げ費用の固定部分は、生産施設を変更するのに必要な資本設備の使用を含
む反面、可変費用は生産ラインの修正・変更プロセスで発生する人件費を含むかもしれな
い。
(21)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
c) Nature of Cost. 費用の性質
発注/立上げ費用の固定部分と可変部分を分けることは絶対に必要である。ちょうど計
算が在庫の資本費用の可変部分を強調すべきであるのと同様に、発注と立上げ費用の計算
もこれらの費用の可変部分を強調すべきである。第6章で述べるように、この強調は有意
義な在庫戦略の開発の中核である。
[general relationship] 一般的関係
年間発注費用の計算は通常、個々の発注や立上げと関連した費用や料金から始まる。し
たがって、毎年の発注・立上げ回数は年間総発注費用に影響を及ぼす;単純な立上げまた
は転換を前提にすると、この回数は個々の発注の規模や製造単位数(生産継続期間の長さ)
と逆の関係がある。表 5-5 はこの一般的な関係を示す。
表 5-5 コンピュータHDの発注間隔と発注費用
発注間隔
年間発注回数
年間総発注合計
年間発注回数
1 週間
52
$ 10,400
2 週間
26
5,200
4 週間
13
2,600
13 週間
4
800
26 週間
2
400
52 週間
1
200
*発注1回あたり費用を$200 と仮定
表 5-5 が示すとおり、発注間隔が短ければ、1 回あたりの発注量は少なくなる。小量発注
でも大量発注でも同じように可変的発注費用が発生するので、年間の総発注費用は、年間
の発注回数と直接な関連して増加する。毎年の販売と需要に変化がなければ、年間の総発
注費用や立上げ費用は年間発注回数や立上げ回数と同じ方向に変化し、発注量の大きさや
生産継続期間の長さに対して逆方向に変化する。
d) Future Perspectives. 将来展望
[decreasing significance] 重要度の低下
在庫費用の正確で包括的な記述は発注/立上げ活動と関連した部分を含めねばならない
が、これらの費用の大きさは将来減少しそうである。発注の管理と処理を自動化するシス
テム導入に向けた動きと、在庫受取り慣行を簡素化する動きを考え合わせると、個々の発
注を処理する可変費用が非常に少なくなることは確かである。「ベンダーが管理する在庫」
プログラムを運用している企業において、その発注自体の概念が重要性を失っており、発
注費用の概念も意味を失っている。同じように、企業が生産プロセスを迅速・効率的に変
更する能力を高めるにつれて、プロセス変更と関連した可変費用も同じく減少する。発注
/立上げ費用の中で計測可能な要素が常にあるかもしれない反面、この経費は将来重要で
なくなりそうである。
(22)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
5) Carrying Cost versus Order Cost 維持費対発注費
[trade-off perspective] トレードオフ展望
表 5-6 が示すように、発注回数または発注サイズに対する発注費用と維持費用の関係は、
正反対である。総費用も発注サイズとともに変化する。緻密な検討すると、発注費用は当
初維持費用の増加幅より大きく減少し、そのため総費用が減少することがわかる。言い換
えると、発注費用の限界的な節約が在庫費用の限界的な増加より高いので、正のトレード
オフが起こる。しかしながら、ある点を過ぎると、この関係は変化して、総費用は増加し
はじめる。この場合、限界発注費用の節約は限界維持費用の増加幅より小さいので、負の
トレードオフが起こる。図 5-3 が示す通り、三つの費用曲線によりこの関係を見ることがで
きる。
表 5-6 在庫・費用情報の要約
年 間 発 注 平 均 在 庫 (1) 総 年 間 発
回数
(単位)
注費用(2)
1 週間
52
50
$10,400
2 週間
26
100
5,200
4 週間
13
200
2,600
13 週間
4
650
800
26 週間
2
1,300
400
52 週間
1
2,600
200
備考 (1)販売ないし使用は週あたり 100 単位と仮定
(2)発注コストは$200
(3)価値は単位あたり$100、維持費は 25%.
発注間隔
総発注費
用の変化
- 5,200
- 2,600
- 1,800
- 400
- 200
総年間在庫維
持費用(3)
$ 1,250
2,500
5,000
16,250
32,500
65,000
総維持費
用の変化
+ 1,250
+ 2,500
+11,250
+16,250
+32,500
総費用
$11,650
7,700
7,600
17,050
32,900
65,200
6) Expected Stockout Cost 期待品切れ費用
在庫決定に決定的な役割を果たすもう一つの費用は品切れ費用である。それは、顧客が
(23)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
需要または必要とするときに、製品が入手できないことから生ずる費用である。ある販売
アイテムが特定の時点で入手できないとき、顧客は、その後しばらくした後にその製品が
入手できるバックオーダー(品切れの商品について,それが入荷するまで持つことを顧客が
承認している注文)を受け入れるかもしれないし、競争他社の製品を購入するかもしれな
い。後者の場合、品切れを起こした企業は他社に利益を奪い取られることになる。当該企
業が競合他社のために顧客を永久に失うならば、利益の損失は間接的だが、長く継続する。
品切れは、調達サイドでも、新しい資材や半製品、部品でおきるかもしれず、このことは
総作動時間の減少あるいは製造設備全体の操業停止を意味する。
a) Safety Stock. 安全在庫
品切れ発生の可能性があるほとんどの企業は、需要あるいは補充に必要なリードタイム
の不確実性に対応するために、安全在庫ないしバッファ在庫を考慮する。在庫決定者の困
難は、安全在庫をどのくらいにすべきかを決めることである。安全在庫が多すぎると在庫
は過剰になる反面、十分でなければ、品切れと逸失販売が生ずる。
[carrying cost] 維持費
どの程度の安全在庫水準を維持すべきかを決めるための情報の開発は、難しい仕事であ
る。さまざまな安全在庫水準と関連した維持費用を計測することは、維持費用一般を計測
することと似ている。最初に、資本費、保管空間費用、在庫サービス費用、在庫リスク費
用を含む維持費用の割合を決定せよ。次に、単位あたりドル価値と単位数をこの割合に掛
け合わせよ。
我々はここで 2 点指摘しておくべきである。
第一に、安全在庫の維持費用はたぶん運転在庫 cycle stock の維持費用と同じであるけれど
も、本来的に運転在庫より危険であり、その維持費は暗黙のうちにより高い。簡単化する
ために、本書は、同じ在庫維持費用が安全在庫と運転在庫の両方に適用されると仮定する。
第二に、推奨される安全在庫水準の決定方法は確率分析を含む。次章では、不確実性のも
とでの在庫決定の議論でこの点を強調して述べる。
b) Cost of Lost Sales. 販売機会逸失費用
[stockout costs]
品切れ費用
安全在庫の維持費用を決定することは比較的簡単かもしれない。しかしながら、販売す
るためのアイテムをもたないことの費用を決定することは、非常に骨の折れることかもし
れない。一つの生産ラインのために原材料や供給品を扱っている企業にとって、品切れは
全面的または部分的な操業停止を意味するかもしれない。資材管理の話題の中で上述した
ように、このような操業縮小は、製造や組立てをジャストインタイムで行う企業にとって
特に重大である。
最良の安全在庫維持量を決めるために、必要な投入部品や原材料が利用できない場合に
(24)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
操業停止がもたらす費用への影響について、製造企業は十分に理解すべきである。企業は
最初に毎時間ごとあるいは毎日の生産率を決定し、次にこの生産率に生産されなかった単
位数の利益逸失額を乗ずべきである。例えば、時間生産率 1,000 単位と単位当たり利益$100
をもつ工場が 4 時間操業停止するならば、損失は 400,000 ドルになる。しかしながら、企
業は、一時的な操業停止にもかかわらず労働者に賃金を支払う必要があるかもしれないの
で、この数字は若干控えめかもしれない。企業はまたしばしば、各生産単位に配賦される
間接費を考慮する必要があるかもしれない。
完成品の販売逸失費用が顧客に与える影響を計算することは通常、資材の品切れ費用を
計算するより複雑である。上述したように、完成品品切れの 3 つの主要な結果は、望まし
い順に述べれば、バックオーダー、販売逸失と顧客逸失である。
7) Inventory in Transit Carrying Cost 移動在庫の費用
[F.O.B. terms] FOB 条件
考えられるもう一つの在庫費用は移動在庫の維持費用である。この費用は上述した三つ
の在庫費用より明白でないかもしれない。しかしながら、ある種の環境下で、それは非常
に重大な費用であるかもしれない。例えば、製品を目的地で F.O.B.で販売する企業は、製
品が顧客の施設に到達するまで所有権の移転は生じないので、製品を顧客へ輸送する責任
がある。製品は財務的には依然売り手の在庫であり、運送業者の輸送手段または当該企業
の自家用トラックに積み込まれていよう。
[trade-offs] トレードオフ
この移動在庫は顧客に引き渡されるまで企業の所有であるので、企業は、維持費用の一
部である引渡し時間を検討すべきである。引渡しが速くなればなるほど、取引がより早く
完了し、企業は出荷報酬を早く受け取るかもしれない。速い引渡しは一般に高い費用の輸
送を意味するので、企業は、輸送費用と移動在庫維持費用のトレードオフを分析したいか
もしれない。付録 6A は特にこの状況について言及する。
a) Determining Cost of InIn-Transit Inventories. 移動在庫の費用決定
[comparison with warehouse inventory] 倉庫保管在庫との比較
この点での一つの重要な疑問は、移動中在庫の維持費用を計算する方法である−すなわ
ち、企業はどんな変数を考慮すべきか?
本章初めの部分で、在庫維持費用を構成する 4
つの主要な要素に着眼した:資本費用、保管空間費用、在庫サービス費用、在庫リスク費
用である。これらのカテゴリーがすべての妥当
妥当である反面、それらは、移動在庫の維持費
妥当
用にさまざまに適用される。
第一に、移動在庫の維持に関わる資本費は一般に、倉庫保管在庫の資本費に等しい。企
(25)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
業が移動在庫の所有権をもつならば、資本費が関連してくる。
第二に、輸送業者は一般に、設備と必要な荷役に関わる費用をその価格のなかに含める
ので、保管空間費用は一般に移動在庫にとって重要でない。
第三に、租税は一般に在庫サービス費用と関連しない反面、保険ニーズは慎重な分析を
必要とする。例えば、運送業者使用の義務規定はかなり特殊であり、運送業者を使う企業
は追加的保険を考慮する必要はないかもしれない(例えばある特定の「傘」範囲を除いて)。
自家用の輸送手段を使ったり請負輸送業者と契約する企業は、適切な保険の設定により大
きい価値を置くかもしれない。
第四に、輸送サービスは一般に短時間に提供されるので、移動在庫にとって陳腐化や劣
化のリスクは小さい。そういうわけで、この在庫費用は倉庫保管中の在庫より重要でない。
一般に、移動在庫の維持費用は概して、倉庫保管在庫の維持費用より多くない。しかし
ながら、実際の費用差異を最も正確に決定しようとする企業は、各在庫問題の詳細を深く
考察すべきである。
Ⅳ 在庫の分類
複数の製品ラインをもつ企業の在庫統制をするには、より重要な在庫アイテムに着眼し、
洗練された効果的な在庫管理法を適用することが要求される。効率的な在庫管理のための
第一歩は、在庫品の分類から始まるのが普通である。その分類は在庫統制ツールを論ずる
次章で言及するが、ほとんどの在庫決定の重要な局面を示すので、本章でもその話題に若
干触れる。
1) ABC 分析
[ranking system] 順位付けシステム
ゼネラル・エレクトリックの H. Ford Dicky は、在庫アイテムを重要度に応じて順位付
ける必要があることを、1951 年にはじめて認識した3】。彼は、GE が相対的な売上数量やキ
ャッシュフロー、リードタイム、品切れ費用に従って、アイテムを分類することを示唆し
た。彼は、現在特別な分類スキームのための ABC 分析と呼ばれているものを使用した。
このシステムは、アイテムをその相対的な衝撃ないし価値に従って 3 つのグループに振り
分けるものである。例えば、衝撃や価値が小さいアイテムは B や C のグループに含める一
3 Robert Goodell Brown, Advanced Service Pans Inventory Control, 2d ed. (Norwich, VT: Materials
Management Systems, 1982) : 155.
(26)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
方、A グループは最も大きい衝撃ないし価値をもつアイテムから構成されると考える4】。
a) Pareto's Law, or the "8080「80
"80-20 Rule." パレートの法則、「
80-20 ルール」
[80-20 rule]
実際に、ABC 分析は、
「取るに足りない多数」と「ごく少数の中核」に分けるパレートの
法則に根ざしている5】。在庫に照らして言えば、パレートの法則は、比較的少数のアイテム
や在庫維持単位(SKU)が、大きな衝撃や価値をもつかもしれないことを示唆する。19 世
紀のルネッサンス的教養人である Vilfredo Pareto は、多くの状況が相対的に少数の致命的
な要因によって支配され、母集団を構成する各要素の相対的な特徴が均一でないことを示
唆した6】7】。母集団の比較的小さい部分が衝撃や価値全体の大きい部分を説明するという彼
の法則は、
「80-20 ルール」と呼ばれ、それは多くの状況に当てはまることがわかった。
[examples] 例
例えば、マーケティング調査は、企業の顧客の 20%が売上高の 80%を説明することを明
らかにするかもしれない;あるいは、大学では、全コースの
あるいは、大学では、全コースの 20%が総授業時間の
20%が総授業時間の 80%を占
80%を占
めるかもしれない。あるいは、市民の
20%が犯罪の 80%に関わっているという研究結果が
めるかもしれない。
あるかもしれない。実際の割合は事例によって若干異なるかもしれないけれども、80-20 ル
ールが原則的に適用される。
b) Inventory Illustration. 在庫の図解
在庫の図解
[ABC inventories] ABC 在庫
図 5-4 は、在庫管理に適用される ABC 分析を示している。この図によれば、製品ライン
を構成するアイテムの 20%だけで売上高全体の 80%を占めている。この 20%のアイテムは
売上の重要な部分を占めることから、A アイテムと呼ばれる。B カテゴリーのアイテムは、
製品ラインのアイテム全体のおよそ 50%を占めるが、それらは、総売上の 15%を占めるに
過ぎない。最後に、残る 30%のアイテムは C アイテムであり、それらは売上の 5%程度で
しかない。
4 David P. Herron, "ABC Data Correlation," in Business Logistics in American Industry, ed. Karl
Ruppenthal and Henry A. McKinnel, Jr. (Stan ford, CA: Stan ford University, 1968) : 87-90.
5 Thomas E. Hendrick and Franklin G. Moore, Production/Operations Management, 9th ed.
(Homewood, IL: Irwin, 1985): 173.
6 . Lambert and Stock, Strategic Logistics Management: 426-429.
7 Jay U. Sterling, "Measuring the Performance of Logistics Operations," Chapter 10 in The Logistics
Handbook, ed. James F. Robeson and William C. Copacino (New York: The Free Press, 1994): 226-230.
(27)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
[relative importance] 相対的な重要性
多くの ABC 分析に共通して見られる誤謬は、BC アイテムが A アイテムよりはるかに重
要度が低いとみなし、その結果、管理上の注意をほとんど全面的に A アイテムに集中させ
てしまうことである。例えば、A アイテムの在庫水準を非常に高く設定し、BC アイテムの
それは入手可能性をほとんど保証しないような水準に決定されるかもしれない(つまりア
イテムカット)
。この誤った考えは、
「A、B、C カテゴリーの全てのアイテムがある程度重
要であり、各々のアイテムグループに対しては、適切な費用水準で入手可能性を保証する
独自の戦略を設定する価値がある」という事実と関連する。この考え方は、いくつかの企
業をして在庫政策を ABC のカテゴリーごとに区別することへと導く。A アイテムは、直ち
にあるいは急行ロジスティクス・サービスの利用を通して入手できることが保証される。
B と C のアイテムは多分、ロジスティクス・チャネルの上流で入手可能である反面
ロジスティクス・チャネルの上流で入手可能である反面、必要
ロジスティクス・チャネルの上流で入手可能である反面
なときにタイムリーに入手できるであろう。
BC アイテムの重要性を見のがさないことにたくさんの追加的理由がある。BC アイテム
の使用は、A アイテムと補完的関係にあるかもしれず、このことは、BC アイテムの入手可
能性の確保が A アイテムの販売にとっても必要である場合があることを意味する。C アイ
テムは、将来の売上増が期待される新製品であるかもしれない。C アイテムはまた、売上の
小さい部分しか占めていなくても、利益率が非常に高いかもしれない。
c) Performing an ABC Classification. ABC 分類の実行
[steps in ABC analysis] ABC 分析の手順
(28)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
ABC 分類は比較的単純である。
第一のステップでは、順位付けするために売上高のようないくらかの基準を選ぶ。次のス
テップでは、この基準に従って重要度の高い順にアイテムをランクづけし、各々のアイテ
ムについて総売上高に占める割合とその累積割合を計算する。この計算が、アイテムを ABC
のカテゴリーに分類するのに役立つことになる。
表 5-7 は、ライン・アイテムごとの売上高を基準とした ABC 在庫分析の方法を示したも
のである。最初の欄は、Big Orange 製品ラインにある 10 個のアイテムである。第二と第
三の欄は、各アイテムの年間売上高と総売上高に対する割合を示している。第四と第五の
欄は、売上高とアイテム数の累積割合を示している。これらの欄から、
「アイテムの 20%は
売上の 80%を説明する」と述べることができる。最後の欄は、年間売上高に基づいて各ア
イテムを ABC 分類した結果を示している。
表 5-7 Big Orange Products, Inc. の ABC 分析
アイテム
コード
64R
89Q
68J
37S
12G
35B
61P
94L
11T
20G
年 間
売上高
$6800
1200
500
400
200
200
200
200
150
150
$10000
同割合
68.0%
12.0
5.0
4.0
2.0
2.0
2.0
2.0
1.5
1.5
100.0%
累 積
売上高
68.0%
80.0
85.0
89.0
91.0
93.0
95.0
97.0
98.5
100.0
%
アイテム
10.0%
20.0
30.0
40.0
50.0
60.0
70.0
80.0
90.0
100.0
分
類
カテゴリ
A
A
B
B
B
B
B
C
C
C
この最後のステップはアイテムを ABC グループに割り当てる。このステップは最も難し
く、単純なテクニックは利用できない。この分析は正確なデータを投入することによって
支えられるが、最終的に決定するには、意思決定者の主観的な判断が必要である。アイテ
ムの順位を検討するとき、重要な自然の「中断 breaks」が時々あらわれる。しかしこれは
必ずしも真でなく、意思決定者は、アイテムの重要度や個々のアイテムのタイプを管理す
る費用のようなその他の変数を考慮しなければならないだろう。また、表 5-7 における第 4
列と第 5 列のデータが図 5-4 を作成するための基礎的データであることを注意すべきであ
る。これは、ABC 在庫分析の理解をぐるっと回って元に戻す。
[further insight] 更なる洞察
William C. Copacino は、ライン・アイテムによる総売上に基づく単純な ABC 分析を越
えて、修正 ABC 分析が、ライン・アイテム当たりの租利益額とライン・アイテム発注頻度
あたりの租利益額を可能性を包蔵する分割変数として使って行われることを示唆する。彼
は、衝撃ないし価値の多元尺度を使い、その後にアイテムを ABC カテゴリーに層化するた
(29)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
めの加重スキームを開発することを示唆した8】。このアプローチは売上数量の考察だけに限
定せず、アイテムの収益力(全体の収益性に影響する)と発注頻度(顧客サービス・パフ
ォーマンスに影響する)のようなたびたび見過ごされてきた問題に注目するものである。
さらに、この包括的なアプローチは、種々の基準や基準の種々の加重の適合性、および最
終的に二者択一的分類政策の戦略的に重要な問題(すなわち販売量、収益力、顧客サービ
ス、在庫投資)に対する影響をユーザーが検討するのを許す。
Ⅴ 企業の在庫管理法の有効性に関する評価
製品の買い手は、その製品がサプライヤとベンダーにより必要な時と場所で提供される
ことを確信しているにちがいない。同じように、製品の売り手の効果的な在庫管理能力は、
顧客満足度を基準として書き換えるべきである。かくして、買い手と売り手の双方は、企
業の在庫管理アプローチの効果を評価するとき、いくつかの疑問を考察するはずである。
[customer satisfaction] 顧客満足
提起すべき第一の問題は、顧客が既存の顧客サービス水準で満足しているかどうかとい
う点である。この問題は、顧客の忠実度、発注キャンセルの有無、品切れといった諸問題
を探求し、あらに企業のチャネル・パートナすべてとの一般的関係を評価することによっ
て深く洞察することができる。顧客サービス水準を改善する必要のある領域ではおそらく、
信頼度の高い輸送サプライヤを使うことは、顧客満足を高めるのに役立つ。
[backordering/expediting]
バックオーダー/急送
第二の問題は、バックオーダーや急送のニーズがどれくらい頻繁に発生するかという点
である。これが頻繁に発生するほど、在庫システムは効果的でないと考えられる。企業の
在庫管理アプローチは、追加発注を行うべき在庫水準の合図に迅速に応答しないかもしれ
ない。あるいは、顧客が必要とする時と場所で在庫が入手可能とするためには、企業は ABC
在庫システムと高速で信頼度の高い輸送サービスを必要とするかもしれない。
[inventory turnover] 在庫回転
第 3 の問題は、製品ライン全体と製品個々および製品群について計算される在庫回転尺
度に関連する。買い手と売り手は、これらの尺度が増加しているのか減少しているのか、
企業の流通システムにおける種々の保管地点でどのように変化するのかという点について
考えるべきである。
時々在庫速度と呼ばれる在庫回転は、年間売上額を平均在庫金額で割ることによって計
算される。在庫評価基準が等しい(すなわち、両方とも小売価格ないし販売原価で評価さ
8
William C. Copacino, "Moving Beyond 'ABC' Analysis," Traffic Management (March 1994): 35-36.
(30)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
れる)と仮定すると、結果として得られる数字は、平均在庫が年間何回回転したかをあら
わす。
例えば、年間の製品売上額を 5 万㌦、その平均手持ち在庫が1万㌦と仮定しよう。その
とき、年間の在庫「回転」数は、$50,000÷$10000=5 である。「平均在庫は1年間に 5 回
回転する、もしくは在庫アイテムは平均して、1年の 5 分の 1 の期間あるいは 10.4 週間棚
の上にとどまる」と言うことができよう。
在庫回転は、産業や企業によって、大きく変わる。在庫回転は概して、迅速な在庫移動
システムを通して、多くの製造業で 5∼10 回転、卸小売企業で 10∼20 回転と変動する。い
ずれにせよ、在庫回転を推定する前に、買い手と売り手は、企業とそのロジスティクス・
システムについて、独特の細目を持たなければならない
独特の細目を持たなければならない。
独特の細目を持たなければならない (上で引用した割合は業界標準で
はなく、それぞれの産業における特定企業に値である。
)
年間の在庫回転が高ければ、それは在庫管理が効果的であることを意味する反面、もし
も回転が高過ぎて必要な保管アイテムに欠品がでるようであれば、顧客サービスは低下す
る。在庫回転を高めることに関心を抱く企業は、顧客サービス水準を維持する一方で、安
全在庫投資の削減としたがって在庫水準の引下げに寄与する高速で信頼度の高い輸送サー
ビスや効率の良い発注処理システムに切り変えるべきである。個々の製品や施設ごとに在
庫回転を検討することは、ロジスティクス・システムの中で問題がある場所を見出すのに
役立つかもしれない。
表 5-8 が示すように、在庫回転が増加するにつれて、平均在庫と平均在庫維持費用は、減
少する。この関係は図 5-5 でも示される。また、Cass Information Services とオハイオ州
立大学の研究によれば、工場や企業敷地にある倉庫に保管された在庫は、今後回転が高ま
っていくものと予想される。調査に基づく推定は、図 5-6 で示される。
表 5-8 在庫の回転と平均在庫、在庫維持費用の関係
在庫回転
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
平均在庫
$20,000,000
..10,000,000
....6,666,667
....5,000,000
....4,000,000
....3,333,333
....2,857,143
....2,500,000
....2,222,222
....2,000,000
在庫維持費用(1)
維持費節約の増分
$ 6,000,000
3,000,000
$3,000,000
2,000,000
1,000,000
1,500,000
500,000
1,200,000
300,000
1,000,000
200,000
857,143
142,857
750,000
107,143
666,667
83,333
600,000
66,667
(1)在庫維持費用を 30%と仮定
(31)
維持費の累積節約
$3,000,000
4,000,000
4,500,000
4,800,000
5,000,000
5,142,857
5,250,000
5,333,333
5,400,000
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
[ratio of inventory to sales] 売上に対する在庫の比率
提起すべき第四の問題は、企業の売上増加にともなう、売上/在庫比率の変動である。
一般に、在庫管理が効果的であることを前提にすると,この比率は売上の増加にともなっ
て低下するはずである。企業の在庫が売上の増加より大きいか等しいならば、企業は、在
庫政策全般を再検討する必要があるかもしれない。自社製品の需要が増加している多くの
企業では、顧客が集中している場所で、その製品を「過剰在庫する」姿が共通して見られ
る。もっと適切な選択肢は、そのようなアイテムの供給を集中させ、効果的な輸送サプラ
イヤに依存し、顧客への製品の適時な引渡しができるよう発注処理システムの性能を高め
ることであるかもしれない。
(32)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
まとめ
本章では、ロジスティクス・システムにおいて在庫が果たす役割と重要性に関連したい
くつかの基本的な考え方を紹介した。今日のビジネス環境における在庫決定の方法につい
て議論するために、これらの考え方は以下のキーポイントで要約される:
◎在庫がビジネス活動全体に占める割合は低下し続ける。
その説明要因には以下のものがある:在庫管理に関する専門知識の増大;情報通信技術の
進歩;輸送サービス市場における競争激化;非付加価値的活動を通した費用削減の強調。
◎製品ラインが増殖して SKU 数が増加するにつれて、経営にとって在庫維持費用は重要な
支出になる。
◎同時に、卸小売り企業は、ロジスティクスにおける顧客サービス改善を求めると同時に、
不必要な在庫を大幅に削減ないし除去するよう、他のサプライチェーン参加者に圧力を加
える。
◎製品物流在庫と同様に、資材調達在庫を維持する大きな理由がたくさんある。
在庫の主要な「機能別タイプ」には以下のものがある:運転在庫;輸送中商品;安全在庫;
季節在庫;販売促進在庫;投機的在庫;および不動在庫。
◎在庫費用の主要なタイプは、在庫維持費用、発注/立上げ費用、期待品切れ費用、輸送
中在庫維持費用である。
◎在庫維持費用は、資本費用、保管空間費用、在庫サービス費用および在庫危険費用から
成る。これらの費用は各々正確に計算する方法がある。
◎ABC 分析は、在庫管理の効果を改善するのに役立つツールである。
◎企業の在庫管理アプローチの効果を評価するにあたっては、重要な疑問や問題が数多く
ある。
練習問題
1.米国経済に見られる在庫の主要な傾向は何か? どんな要因が、在 GNP/在庫比率の最
近の減少を説明するのに役立つか?
2.なぜ、在庫はロジスティクス・チャネル全体にとって重要か? 今日、ロジスティクス・
チャネルを通した在庫の処置に関して、どんなプライオリティーがはっきり見えるか?
3.調達資材在庫と物流製品在庫に関して、一つの企業を選び、在庫維持の理由を論じなさ
い。
4.主要な機能別に見た在庫の主なタイプを識別しなさい。運転在庫と安全在庫の基本的な
(33)
Chap-5:ロジスティクス・システムにおける在庫
相違について論じなさい。
5.在庫維持費用の構成要素うちは主要なものは何か? 在庫政策を決定するために資本費
はどのように計測するのだろうか?
6.特定の製品に対する、在庫費用維持はどのように計算されるか? 在庫維持費用の計算
で使われる製品価値の尺度を決定するために、あなたはどんな提案をするか?
7.在庫維持費用と発注費用の相違を説明しなさい。
8.最終商品の逸失販売費用を決定することは一般に、何故、原材料在庫のそれよりも難し
いのか?
9.輸送在庫を維持する費用ついて論じなさい。
10.24,000 個の在庫ライン・アイテムを持つ大きなドラッグストア・チェーンに、あなたは
コンサルタントとして呼ばれたとしよう。在庫分類がどのようにこの企業の在庫統制の改
善に役立つか、説明しなさい。
11.企業の在庫管理アプローチの効果を判断する場合、重要な問題としてどんなものがある
か?
売上に対する在庫の比率が上昇しているように見えるとき、あなたはこれにどのよ
うな関心を抱くか? 説明しなさい。
12.在庫回転はどのように計算されるか。そして在庫維持費用と在庫回転の関係にはいかな
ん性質があるか?
参考
1) 流動資産(current assets)〔財務会計〕
貸借対照表資産の部の一区分で、現金預金、営業債権、有価証券等の当座資産、商品、
原材料、仕掛品等の棚卸資産、およびその他の短期性資産からなっている。流動資産は、
比較的短期間内に支払手段に充当できる資産であり、流動負債との関係を示す流動比率は
企業の安全性判断の重要な指標として用いられる。流動資産と固定資産を分類する基準に
は正常営業循環基準と一年基準がある。前者は正常な営業循環の過程にある資産、つまり
受取手形・売掛金・商品・製品、原材料等は、期間に関わりなくすべて流動資産として区
分する基準である。その他の資産については一年基準が適用され、一年以内に直接または
間接的に現金化するものが流動資産として区分される。現代用語の基礎知識 2001 年版
(c)2001
在庫維持費用(Stock Carrying Costs または Stock Holding Costs)
在庫の保持と結びついた総費用。この費用は単位仕入原価、再注文費用、保持費用、在庫
切れ費用から成る。
(34)
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