大成建設技術センター報 第 46 号(2013) UFC床版の羽田空港D滑走路への適用 世界初となる UFC 材料の大規模適用と量産化システムの開発 武者 浩透*1・大竹 明朗*2・渡辺 典男*3・大熊 光*4 Keyword:UFC, ultra-high strength, fiber reinforced, precast, slab, pre-tension, mass production UFC,超高強度,繊維補強,プレキャスト,床版,プレテンション,大量生産 1. はじめに 超高強度繊維補強コンクリート(以下,UFC)は, 高強度と高耐久性を兼ね備えている優れた材料である UFC床版設置範囲 が,その適用には UFC の特性を十分に活用すると同時 に,経済性とのバランスを取ることが重要である。 この度,羽田空港D滑走路の桟橋部のうち,滑走路 及び誘導路の外側のエリアに,約 6,100 枚の UFC プレ キャスト床版が採用された(写真-1)。この UFC 床版 には,航空機荷重に耐えうる耐荷性能と,軽量化や効 率的な量産化による経済性が必要であった。そのため, 構造から大量生産方法までの一連の開発を実施し,リ ブ形状を有する 2 方向プレテンション UFC 床版構造, 写真-1 UFC 床版設置範囲 ならびにその量産化システムを開発した。 Photo.1 UFC slab allocation UFC を用いたこのような構造の大型の床版構造は世 界でも例がなく,UFC の適用規模(UFC 数量:21,600 m3)としても世界最大である。ここでは,高耐荷 UFC 床版構造の開発と,構造検証実験,および UFC 床版の 量産化について紹介する。 化による下部工費の削減,および高耐久性の 3 つのメ リットを活かす必要があった。また,約 6,100 枚にも およぶ大量生産において経済性を確保するには,効率 なお,今回用いる UFC 材料には, UFC 材料として は 1 番長い歴史を有しており,世界各国でも用いられ て最も信頼性の高い材料であるダクタル るには,高強度を活かした高耐荷構造と,床版の軽量 1),2) を採用し た。 的な生産システムが不可欠である。そのため,UFC 床 版構造の開発においては以下の点を開発条件とした。 ①大幅な軽量化:従来のコンクリート構造と比較して, その重量を 50%以下に軽量化すること。 2. UFC 床版構造の開発 2.1 UFC 床版の開発条件 ②高い耐荷性能:UFC の超高強度特性が有効に活用で きる高い耐荷性能を有すること。 ③製作性の確保:製作時のコストを抑えるため,製作 性の良い構造であること。 海洋構造物である羽田空港D滑走路へ UFC を適用す *1 *2 *3 *4 技術センター 土木技術開発部 土木技術開発プロジェ クト室 東京支店 土木工事作業所 名古屋支店 土木工事作業所 関西支店 土木工事作業所 10-1 2.2 構造選定 設定した開発条件を踏まえて,表-1 に示すホロース ラブおよびリブ付き床版 2 ケースの計 3 ケースの床版 構造について比較検討を行った 3) 。高耐荷な薄肉床版 を実現するために,いずれも大型のプレキャスト部材 大成建設技術センター報 第 46 号(2013) としては極めて稀な 2 方向プレテンションの PC 構造 回の条件下では最も適した構造であると判断した。 とした。比較検討は,耐荷性能,軽量化,製作性,量 2.3 UFC 床版の構造 産化対応,大量生産時の経済性の観点から実施した。 図-1 に開発した UFC 床版の詳細構造(D 滑走路に実 特に,開発条件に「量産化」を前提とした要件として 際に設置した)を示す。この UFC 床版は,長辺: 「製作性の良さ」があるため,全てのケースにおいて 7820mm×短辺:3530mm の長辺 2 辺を単純支持された 実際の床版の 1/4 程度の大きさとなる 2m×4m 程度の PC 床版であり,短辺方向にはリブ(H=250mm)が配 床版製作実験を行い,具体的な製作性と量産化に必要 置されている。また,UFC の優れた力学特性を活用す な設備の検討も合わせて実施した。その結果,ケース ることにより,部材の厚さを非常に薄くすることが可 3 に示す「2 方向プレテンション・リブ付き床版」が今 能となり,リブ厚は 82mm,床版厚は 75mm である。 表-1 Table.1 検討ケース UFC床版構造 UFC 床版構造の比較 Comparison of UFC slab structure ケース1 ホロースラブ ケース3 リブ付き床版B(プレプレ) ケース2 リブ付き床版A(プレポスト) 構造概要図 主方向:プレテンション 横方向:ポストテンション ◎:2方向のプレストレスのため △:ポストテンション側の鋼材間隔により 耐荷性能 十分な性能を確保 性能が影響を受ける ○:ポストテンション側の横桁により、重量が 軽量化 △:ホロー形状により、断面スリム化に制約 多少増加 ○:横方向鋼材の緊張・切断作業が必要 △:ポストテンション鋼材の緊張・グラウト 製作性 ホロー部の内空確保のため作業量増加 ・定着部保護作業が多大 △:2方向プレテンション設備が課題 ○:1方向のみのプレテンション構造のため 量産化対応 ホロー形状(精度)維持の工夫が必要 従来技術で対応可能 △:製作性に劣るため、量産化時の 経済性 △:軽量化・量産化対応の点で経済性に劣る 製作コストがかさむ ◎:2方向のプレストレスのため 十分な性能を確保 ◎:最小の部材厚による断面構成が可能 ○:横方向プレテンション鋼材の 緊張・切断作業が必要 △:2方向プレテンション設備が課題 ?:量産化時の設備の効率性に大きく依存 ○ 製作性実験、載荷実験 製作性実験、載荷実験 20 a部 250 横方向PC鋼材 1S15.2 82 435 150 20 横方向PC鋼材1S15.2 横方向PC鋼材1S15.2 A-A 7820 7815 主方向PC鋼材1S19.3 17@404=6868 140 517 図-1 Fig.1 主方向PC鋼材 1S19.3 UFC 床版構造図 Outline of UFC slab suructure 10-2 115 20 主方向PC鋼材:1S19.3(60本) 設計緊張力290.3kN/本 75 横方向PC鋼材:1S15.2(24本) 設計緊張力193.2kN/本 35 B 148 200 横方向 150 20 3164 A 3060 上面 3460 下面 3530 主方向 A B 10 148 35 59 151 平面図 上面 7800 下面 7820 7504 ゴム支承 △ 製作性実験 B-B 主方向PC鋼材1S19.3 3530 3460 35 15159 21@160=3360 △ 実施実験 148 35 200 35 総合評価 10 148 140 2方向プレテンション 2方向プレテンション 82 322 82 295 a部詳細(リブ断面図) 250 PC構造 140 大成建設技術センター報 第 46 号(2013) プレテンション方式の PC 鋼材は 2 方向に配置され, 床版構造の主方向となる短辺方向にはφ19.3mm の PC 表-2 鋼より線が各リブに 3 本,合計 20 のリブに計 60 本配 UFC 床版の設計条件(要求性能) Table.2 performance requirement 置され,17,418kN ものプレストレスが導入されている。 また,長辺方向には 75mm の床版厚の中央にφ15.2mm 使用限界状態 の PC 鋼より線が 24 本配置され,プレストレスは 荷重 4,637kN である。UFC が鋼繊維補強であるため,この 条件 非常に薄い UFC 床版には鉄筋が 1 本も配置されていな 床版死荷重+自動車荷重 終局限界状態 (航空機荷重時) 床版死荷重+航空機荷重 早急に取替や補修を必要と いが,縦横に張られた PC 鋼材と,UFC の超高強度に 要求 UFC にひび割れや損傷を より導入が可能となった非常に大きなプレストレスに 性能 生じさせない。 照査 ・引張応力<制限値 ・破壊に対する安全率>1.0 項目 ・圧縮応力<制限値 ・PC 鋼材応力<降伏応力 より優れた耐荷性能を有している。 この UFC 床版と同一条件で設計した場合,従来のコ ンクリート床版(設計基準強度 50N/mm2 )の厚さは 320mm 程度となる。一方, UFC 体積を床版面積で割 って算出した UFC 床版の換算平均版厚は約 135mm で ある。本床版は UFC の採用により,従来のコンクリー トを用いたものに比べて約 56%もの大幅な自重削減を 実現している。 3. なるような損傷を生じさせ ない。 終局限界状態においては,ひび割れの発生は許容す るが床版が崩壊に至らないことを要求性能とし,特に 航空機の走行に対しては,早急に補修や取替を必要と せず,その後の使用にも耐え得る限定的な損傷に留め ることとした。この条件を満たすために,航空機荷重 載荷時には PC 鋼材応力が降伏応力以下とする制限を UFC 床版の設計概要 設けた。 UFC 床版に関する設計条件(要求性能)を表-2 に示 す。 設計計算における UFC の物性値や応力の制限値は, 4. 実物大 UFC 床版の載荷実験 開発した UFC 床版構造とその設計を検証するために 土木学会刊行の「超高強度繊維補強コンクリートの設 計・施工指針(案)」4)に準じて設定した。UFC の設計 基準強度は 180 N/mm2 である。UFC 床版に発生する断 実物大の UFC 床版を用いた載荷実験 5)を実施した。そ の際,UFC 床版の耐荷性能と変形性状の再現性を確認 するために載荷実験は 2 体実施した。 面力は,3 次元弾性 FEM 解析に基づき算出した。FEM 4.1 解析においては,ジャケットの梁もモデル化し,レグ 実験目的 本実験では,各限界状態において設計計算通りの応 は鉛直バネとして評価した(図-2) 。 答や耐荷性能であることを検証するために,以下の内 着目床版の短辺応力分布の一例 シェル要素 ソリッド要素(着目床版) 図-2 Fig.2 解析モデル Analysis model 10-3 (自動車の輪荷重を版中央載荷のケース) 大成建設技術センター報 第 46 号(2013) 容を確認した。 置が異なるため,自動車荷重で発生する最大引張応力 ①使用限界状態:自動車荷重を載荷し,ひび割れが生 度 29 N/mm2 になるような載荷荷重:156kN/輪を算定し じないこと。荷重に対する応答(変位,ひずみ)が 等価自動車荷重と設定した。 線形で,計算値と同程度であること。 4.3 実験結果 ②終局限界状態:航空機荷重が載荷された場合,PC 実験より得られた荷重-変位曲線,および実験の妥 鋼材が降伏しないこと。その指標として,荷重が複 当性を検証するために実施した FEM 解析結果を図-6 に 数回繰り返されたとき,変形の増加が顕著にならな 示す。FEM 解析は材料によるバラツキの影響を把握す いこと,ならびに除荷時の残留変形が小さいこと。 るため,想定される材料定数の上限値と下限値を用い ③最大荷重状態:航空機荷重を超える荷重を載荷し, て解析を実施した。 荷重と変位の関係が単調増加の範囲にあること。航 (1)使用限界状態について 空機荷重時に対して十分な余裕があること。 ・自動車荷重時の 3 回の繰返し載荷時においては,変 4.2 載荷装置及び載荷ステップ 位は線形で,有意な残留変位も生じていない。また, 図-3 及び図-4 に実験の載荷装置と載荷位置図を,図- FEM 解析結果とも良く一致している。 5 に載荷ステップ図を示す。実験では,まず自動車荷 ・最初のひび割れは,荷重が 200kN を少し超えた段階 重を 3 回載荷し,引き続き航空機荷重を 2 回繰返した で短辺方向の梁に発生した。計算上では,梁が UFC 後,破壊するまで載荷を行った(写真-2) 。 の引張応力の制限値(8 N/mm2 )に達す る荷重は なお,荷重作用位置は,終局状態において主たる荷 178kN/輪である。 重となる航空機荷重の車輪位置に合わせた(図-4)。そ (2)終局限界状態について のため,自動車荷重を再現する場合,航空機と車輪配 ・等価航空機荷重(321kN/輪)載荷では,1 回目と 3 油圧ジャッキ 1,000kN 供試体 図-3 Fig.3 載荷装置 図-4 Load test equipment 荷重載荷装置 Fig.4 Position of wheel loads on UFC slab 終局断面力が最大となる荷重 使用限界荷重 図-5 載荷ステップ Fig.5 Loading steps 写真-2 Photo.2 10-4 載荷状況 Loading test 大成建設技術センター報 第 46 号(2013) 700 設計計算上の曲げ破壊荷重 501kN/輪 (材料係数1.3を考慮) 600 400 梁にひび割れ 発生(205kN/輪) 150 荷重(kN/輪) 荷重(kN/輪) 500 床版中央の荷重-変位曲線 (自動車荷重時3回繰返し) 等価航空機荷重 321kN/輪 300 100 等価自動車荷重(長辺)194kN/輪 等価自動車荷重(短辺)156kN/輪 200 解析 下限 解析 上限 50 実験 最終載荷 100 実験 航空機1回目 0 0 0 0 -10 -20 -30 床版中央変位(mm) 図-6 Fig.6 -40 -50 -1 -2 -3 -4 -5 床版中央変位(mm) 荷重-変位曲線 Load - displacement 回目(最終載荷)の挙動に有意な差はなかった(鉛 の運搬道路等を含めて延長 104.5m,幅 45m の規模の生 直変位は,8.79 から 9.01mm へ 2.5%増加) 。 産ラインとなり,2 ライン合わせて週 4 サイクル,合 ・設計計算上の曲げ破壊荷重(501kN/輪)を超える荷 重(600kN/輪)を載荷した場合であってもひび割れ 計 80 枚/週が生産可能な大型 UFC 床版の生産システ ムが構築された。 幅は概ね 0.1mm 以下であり,床版にはまだ耐力に余 裕があると判断された。 今回のように,多数の型枠を並べて 100m 以上のプ レテンションラインを構築し,しかも主方向 17,418kN, ・厚さ 75mm 部の床版の押し抜きせん断についても, 横方向 4,637kN もの 2 方向プレストレスを導入する大 航空機荷重を超える 600kN/輪までの載荷に対して顕 型床版の大量生産は世界でも例がない。そのため,こ 著な損傷はなかった。 れまで培ってきた様々な UFC 部材製作に関する多くの 実験は 2 体実施したが,もう一方の供試体に対する 知見をベースに入念な事前検討を実施し,設備計画か 実験結果 3) も概ね同様であった。航空機荷重時の床版 ら実際の床版製作に至るまでの精緻な製造計画を策定 中央における鉛直変位の差は2つの実験でわずか 1.8% した上で,実製作で得られた情報をリアルタイムで次 程度であり,本床版は航空機荷重に対して十分かつ再 の製作にフィードバックする改良を重ねた。その結果, 現性の高い安定した耐荷性能を有していると判断され 製作開始から 1 か月程の短期間でフル生産体制とする た。 ことができ,前述の 3 日サイクルを実現し,1 年 8 か 月後には 6,139 枚の床版の製作を無事完了することが 5. UFC 床版の量産化システム できた。 ここでは,UFC 床版の大量生産のために建設した専 6. 大量生産時の UFC 強度 用工場,および新たに開発した量産化システムの概要 を紹介する。 ここでは,先に紹介した量産化システムの検証の1 生産ラインは型枠を主方向(短辺方向)の向きでラ イン上に 20 組並べ, 60 本の PC 鋼材の設置と緊張を 項目として,UFC の強度管理データを示す。 UFC の強度に関する品質管理項目としては,UFC の 一括で行うことにより作業の効率化を図った(写真-3)。 マトリックス部が受け持てる圧縮力を確認する圧縮強 20 組の型枠の周囲にはプレテンション用のアバットを 度試験,マトリックス部の引張強度を確認するひび割 配置し,養生層の側壁の役割を兼ねさせた。 れ発生強度試験,ひび割れ発生後の鋼繊維による靱性 工場にはこの生産ラインを 2 ライン配置し(図-7), を確認する引張強度試験の 3 種類が規定されている。3 3 日サイクルで交互に生産することにより,工場全体 種類の強度試験結果の度数分布図を図-9 から図-11 に示 の作業の平準化を実現した(図-8)。これにより,周囲 す。 10-5 大成建設技術センター報 第 46 号(2013) 倉庫 試験室 製作ヤード上屋200m×45m 排水処理槽 緊張設備 2次養生槽 Aライン Bライン UFCプラント 門型クレーン UFC床版 プラントヤード 47.5m 養生ヤード 30.0m UFC打設・プレテンションヤード 133.5m 図-7 UFC 床版制作工場レイアウト Fig.7 Layout plan of UFC slab factory 1日目 作業内容 製作場 2日目 仕上げ・検査ヤード 23.0m 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 UFC打設 40℃保持12-18hr 1次養生 主方向 脱型 プレストレス導入 A ラ イ ン 横方向 型枠組立 PC配置・緊張 2次 第1槽 養生槽 第2槽 90℃・48hr保持 徐冷 昇温15℃/hr 第3槽 写真-3 検査場 端部処理 製作場 UFC打設 2 方向プレテンション PC 鋼材 Photo.3 図-8 1次養生 脱型 UFC slab production line 40℃保持12-18hr 製作サイクル Fig.8 Production cycle プレストレス導入 B ラ 表-3 型枠組立 イ なお,この強度試験結果は,羽田空港 D 滑走路に適 ン UFC 強度のまとめ Table.3 PC配置・緊張 Strength of UFC 用された約 7,000 枚の UFC 床版の内,UFC(ダクタル) 2次 第1槽 養生槽 を使用した 6,139 枚の試験データに基づいている。強 第2槽 度試験は,UFC 打設量 50m3 毎に採取したテストピー 第3槽 検査場 ス(圧縮強度およびひび割れ発生強度:φ100×200mm, 統計値 端部処理 引張強度:100×100×400mm)を用いて行うため, 1 日に約 70m3 打設する本工場では,日に 2 回頻度で各 3 本ずつ採取し,その平均値で管理した。 本製作 ひびわれ 引張強度 発生強度 記号 単位 圧縮強度 N fm ---- 623 623 623 平均値 N/mm2 211 10.2 14.6 標準偏差 σ 変動係数 δ fk 標本数 特性値 特性値 UFC指針 (規格値) fk 2 注)養生のうち、青色:昇温、赤色:温度保持、灰色:徐冷 11.0 0.8 2.2 N/mm % 5.2 7.6 15.2 N/mm2 193 8.9 10.9 2 180 8.0 8.8 N/mm 図-9~図-11 にその強度データを示す。これは本 UFC 床版製作工場のみの試験データではあるが,標本数 n 正確な単位水量の管理がなされている点,および長時 =623 個という十分な量であるため,いずれの試験結 間の蒸気養生により十分な強度増進を図っている点な 果においても度数分布グラフがきれいな正規分布形状 どが理由として挙げられる。 を示している。 また,製作時期による圧縮強度の変化を表したグラ 本製作より得られたデータを用いて特性値 fk を算定 フを図-12 に示す。この強度の推移がどのような理由に し,UFC 指針における特性値と比較した結果を表-3 に よるものかは,今後の研究に委ねるが,今回のような 示す。圧縮強度の変動係数は 5.2%と通常のコンクリー UFC 部材の大量生産は世界でも例が無く,この品質管 トの半分程度であり,ばらつきが小さいと言える。こ 理データ(強度データ)は,UFC 材料の特性を把握す れは UFC(ダクタル)は絶乾状態の硅砂を細骨材とし る上で貴重である。 て用いているため骨材の表面水補正等の必要が無く, 10-6 大成建設技術センター報 第 46 号(2013) 120 Φ 100×200mm供試体 標本数 :n=623 平均値 :211N/mm2 標準偏差:11.0N/mm2 変動係数:5.2% 特性値 :193N/mm2 100 80 度 60 数 40 20 Φ 100×200mm供試体 標本数 :n=623 平均値 :10.2N/mm2 標準偏差:0.8N/mm2 変動係数:7.6% 特性値 :8.89N/mm2 7.5 265 260 255 250 245 240 235 230 225 220 215 210 205 200 195 190 185 180 175 170 0 180 160 140 120 度 100 数 80 60 40 20 0 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 11.5 12.0 12.5 13.0 13.5 14.0 ひび割れ発生強度(N/mm2) 圧縮強度(N/mm2) 図-9 図-10 圧縮強度の度数分布図 Fig.10 Fig.9 Frequency distribution of compressive strength 120 240 2 圧縮強度(N/mm ) 80 度 60 数 Frequency distribution of first crucking strength 260 Φ 100×100×400mm 供試体 標本数 :n=623 平均値 :14.6N/mm2 標準偏差:2.2N/mm2 変動係数:15.2% 特性値 :10.9N/mm2 100 ひび割れ発生強度の度数分布図 40 220 200 180 20 実測値 規格値 平均値 特性値 09.07.27 09.06.30 09.06.04 09.05.01 09.04.06 09.03.10 09.02.12 09.01.16 08.12.12 08.11.14 08.10.16 08.09.19 08.08.25 08.07.21 08.06.24 08.05.29 08.04.25 08.03.31 08.03.04 08.02.06 24.0 23.0 22.0 21.0 20.0 19.0 18.0 17.0 16.0 15.0 14.0 13.0 12.0 11.0 10.0 9.0 8.0 7.0 07.12.11 160 0 引張強度(N/mm2) 図-11 Fig.11 7. 引張強度の度数分布図 図-12 製作時期による圧縮強度の変化 Fig.12 Variation of compressive strength by production time Frequency distribution of tensile strength おわりに 性が実験等にて確認され、実生産に際して量産化シス テムが順調に稼動し無事 UFC 床版を製作し終えたこと, 今回,海洋上に架設する大型床版への UFC 適用に際 また,この UFC 床版が用いられた D 滑走路の供用が しては,構造の開発・選定から,構造検証,製作性の 羽田空港の発着能力を高め,利用者の利便性向上につ 検証,量産化システムの開発に至るまでの一連の開発 ながったことは無常の喜びであり,ご支援頂いた関係 が必要であった。 各位に心から感謝申し上げる。 そして今回の約 4×8m の大型薄肉 UFC 床版構造の 採用,2 方向で 84 本もの PC 鋼材配置と約 22,000kN の プレストレス導入,長さ 100m を超すプレテンション ラインと 20 組の型枠配置,6,139 枚の UFC 床版の大量 生産など,極めて高難度の製作工事であった上、ほと んどが初めての試みであり,大きなチャレンジであっ た。これらの開発の背景には,長年培ってきた UFC 技 術の蓄積があり,今回の量産化により一層の技術のス テップアップを得られたと確信している。 今日では,UFC の実績数や使用量では日本は世界を 大きくリードしており,日本の玄関として増強される 羽田空港でこの UFC が多く用いられていることは,日 本の UFC 技術力を世界に発信(発進)する良い機会で あると考えている。今回開発した UFC 床版構造の安全 10-7 参考文献 1) 田中 良弘,武者 浩透,大竹 明朗,下山 善秀:超高強 度繊維補強コンクリートによる PC 歩道橋の設計施工法, コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.2,pp1603-1608, 2002 2) 武者 浩透,大島 邦裕,細谷 学,稲原 英彦:UFC を用 いた PC 歩道橋の事例とその特徴,プレストレストコンク リート,Vol.49,No.6,pp48-56,2007 3) 武者 浩透,大竹 明朗,横井 謙二,野口 孝俊:高耐荷 UFC 床版構造と量産化システムの開発,コンクリート工 学,Vol.48,No.11,pp28-35,2010.11 4) 土木学会:超高強度繊維補強コンクリート設計・施工指 針(案),コンクリートライブラリー113,2004 5) 渡辺 典男,宮田 正史,野口 孝俊,武者 浩透:大型 UFC 床版の載荷試験の結果と評価,土木学会第 62 回年次 学術講演会,第Ⅴ部門,pp453-454,2007.9
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