December 2013 UBIQUITIN NEOBIOLOGY NEWSLETTER The world of Volume 1 新学術領域研究 ユビキチンネオバイオロジー: 拡大するタンパク質制御システム 領域ニュースレター Vol. 1 発行日:2013年12月 UBI QUI T I N New aspect of the ubiquitin system The world of UBIQUITIN ユビキチンネオバイオロジー ニュースレター 第1号(2013年12月発行) 編集人 川原 裕之・駒田 雅之 発行人 岩井一宏 発行所 新学術領域「ユビキチンネオバイオロジー」 ニュースレター編集局 〒192-0397 東京都八王子市南大沢11 首都大学東京大学院理工学研究科生命科学専攻 Tel: 042-677-1111 (ex. 4367) E-mail [email protected] 印 刷 株式会社トライス 領域ホームページ: http://ubiquitin.jp/ Copyright ©2013 ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム All Rights Reserved 巻頭言 CONTENTS 巻頭言(領域代表挨拶) 岩井 一宏 01 研究班員一覧 02 班員紹介 04 岩井 一宏(京都大学・大学院医学研究科・教授) 本新学術領域研究 「ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム」 (略 称:ユビキチン制御) は平成24年度に発足致しました。 本年度からは17名の先生方に公募 研究班として加わって頂き、 いよいよ研究体制が整いました。 Review & Essay BRCA1、 なぜ? 太田 智彦 32 化合物を使ってユビキチン化を制御する 内藤 幹彦 36 ユビキチン修飾系はタンパク質分解系の一部として発見された経緯から、 「ユビキチン」 = 「分解」 として研究が発展してきましたが、現在ではユビキチン修飾系は分解のみならず、多 様な様式でタンパク質の機能を制御する翻訳後修飾系であることが明確となってきました。 ユビキチン修飾系は 「時を得て選択的に基質タンパク質を識別してユビキチンを付加できる」 能力を有します。 すなわち、 細胞は 「望むときに、 望む場所」 で特定のタンパク質にユビキチン Technical Reports ポリユビキチン鎖を量る 佐伯 泰 39 ユビキチンネオバイオロジー・Kick-Offシンポジウム 佐伯 泰 43 ユビキチンネオバイオロジー第1回班会議 西出 旭 44 第4回都医学研国際シンポジウム 「ユビキチンプロテアソームシステムの最前線」報告 松田 憲之 医学研国際カンファレンスに参加して 濱崎 純 学会参加記 内藤コンファレンスに参加して 平野 有沙 第35回内藤コンファレンス 「ユビキチン-プロテアソームシステム:メカニズムから病態まで」 に参加して 奥村 文彦 平成25年度 第1回領域班会議レポート 水島 恒裕 EMBO conference "Ubiquitin and ubiquitin-like proteins: From structure to function"に参加して 吉原英人, 土屋光 いにより異なった様式でタンパク質の機能が調節・変換されると想定されています。 したがっ て、 あるタンパク質がユビキチン化されているとしても、 結合しているユビキチン修飾のタイプ を同定出来なければ、 その調節様式が理解できません。 それゆえ、 ユビキチン研究手法は複 雑化、 高度化し、 1つの研究室で全ての研究手法に対応することはもはや不可能であると言 45 46 46 わざるを得ません。 そのような状況を踏まえ、 本領域では計画・公募研究としてユビキチン修飾系の研究者の みならず、 ユビキチンを視野に入れつつDNA修復、 転写、 膜タンパク質制御、 刺激伝達、 植物、 微生物など多様な分野に携わる研究者に結集して頂きました。 加わっていただきました先生 方のご協力を得て世界トップレベルのユビキチン研究を遂行するとともに、 今後のユビキチン 研究に不可欠であったり、 世界をあっと驚かせるような日本発の新規な実験手技の開発を進 47 49 めたいと思っています。 本領域では、 計画研究班のメンバーらが樹立している研究試料・手法 のみならず、 本領域で開発する新規ユビキチン解析手法を計画研究班・公募研究班の区別な く提供して領域の発展に資することを目指しています。 この研究プラットフォームの構築が本 領域の大きな特徴ですので、 是非広く利用ください。 まだ、 領域外の先生方には利用いただけ 51 54 る状況にはなっておりませんが、 領域研究の後半では利用いただけるようにしたいと思って おります。 また、 ユビキチン修飾系は神経、 免疫、 発生などの個別の生命現象を取り扱う領域とは異 なり、 状況に応じたタンパク質制御というシステムを扱う研究領域ですので、 本領域にはユビ 55 キチンが関与する広範な生命現象の研究者が結集しています。 それゆえ、 本領域の班会議な どは多彩な生命現象の研究成果と考え方に触れることの出来る絶好の機会であると思いま PLAYBACK “ぷろておりしす” ’96 す。 是非、 領域の若手の研究者の皆さんには積極的に領域研究に参加して頂き、 生命科学全 膜蛋白質のユビキチン化論争:プロテアソームへのターゲッティングシグナル?、 それともエンドソーム/リソソームへのソーティングシグナル? 田中 啓二 般を俯瞰できる豊かな見識を持った研究者に成長していただきたいと願っております。 57 のユビキチン研究をさらに大きく発展させ、 領域終了時には、 世界トップレベルのユビキチン 研究業績と研究インフラを確立して、 日本の生命研究のレベルの底上げに少しでも貢献出来 領域ニュース 1 本新学術領域に参加して頂いている計画・公募研究の先生方とともに切磋琢磨して日本 受賞報告/アウトリーチ活動報告 59 編集後記 61 領域代表挨拶 第35回内藤コンファレンス 「ユビキチン-プロテアソーム:メカニズムから病態まで」 に参加して 鈴木 隆史 ユビキチン研究は 「ネオバイオロジー」 の時代に突入しています。 細胞内には多様なユビキチン修飾様式が存在することが示され、 ユビキチン修飾様式の違 Meeting Reports Cold Spring Harbor Laboratory Meeting “The ubiquitin family, 2013”に参加して 渡部 昌 を結合させてその機能を調節することで多彩な生命現象を制御していることが明確となり、 るようにしたいと思っております。 どうか、 新学術領域研究 「ユビキチンネオバイオロジー:拡 大するタンパク質制御システム」 に温かいご支援を頂きます様お願い申し上げます。 01 研究班員一覧 総括班 計画研究班 研究代表者 研究分担者 連携研究者 岩井 一宏 京都大学・大学院医学研究科 教授 駒田 雅之 東京工業大学・大学院生命理工学研究科 准教授 嘉村 巧 名古屋大学・大学院理学研究科 教授 佐伯 泰 東京都医学総合研究所・生体分子先端研究分野 首席研究員 水島 恒裕 兵庫県立大学・大学院生命理学研究科 教授 川原 裕之 首都大学東京・大学院理工学研究科 教授 大竹 史明 国立医薬品食品衛生研究所・毒性部 研究員 太田 智彦 聖マリアンナ医科大学・大学院医学研究科 教授 畠山 鎮次 研究課題名 直鎖状ポリユビキチン鎖の選択的生成機構とその役割 ユビキチン修飾系による膜タンパク質の輸送制御機構 研究代表者/分担者 所属・役職 (代表)岩井 一宏 京都大学・大学院医学研究科 教授 (代表)駒田 雅之 東京工業大学・大学院生命理工学研究科 准教授 (分担)石戸 聡 昭和薬科大学・薬学部 教授 転写調節機構におけるユビキチン修飾系の役割解明 (代表)大竹 史明 国立医薬品食品衛生研究所・毒性部 研究員 K6およびK63ユビキチン鎖によるDNA修復制御機構 (代表)太田 智彦 聖マリアンナ医科大学・大学院医学研究科 教授 A02 ユビキチン修飾の識別、検出法の開発とその応用 研究課題名 ユビキチンリガーゼによる選択的基質識別メカニズム 研究代表者/分担者 所属・役職 (代表)嘉村 巧 名古屋大学・大学院理学研究科 教授 (分担)畠山 鎮次 北海道大学・大学院医学研究科 教授 昭和薬科大学・薬学部 教授 ユビキチン識別タンパク質によるポリユビキチン鎖情報の (代表)川原 裕之 デコード機構とその役割 首都大学東京・大学院理工学研究科 教授 加藤 龍一 高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所 准教授 選択的なポリユビキチン鎖検出・定量法の開発 (代表)佐伯 泰 田中 啓二 東京都医学総合研究所・所長 東京都医学総合研究所・生体分子先端研究分野 首席研究員 (代表)水島 恒裕 兵庫県立大学・大学院生命理学研究科 教授 大隅 良典 東京工業大学・フロンティア研究機構 特任教授 (分担)加藤 龍一 高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所 准教授 石戸 聡 評価委員(連携研究者) 北海道大学・大学院医学研究科 教授 A01 ユビキチン修飾系による生体制御機構 選択的ユビキチン識別機構の構造生物学 水島 昇 東京大学・大学院医学系研究科 教授 永田 和宏 京都産業大学・総合生命科学部 教授 公募研究班 村田 茂穂 東京大学・大学院薬学系研究科 教授 A01 ユビキチン修飾系による生体制御機構 白川 昌宏 京都大学・大学院工学研究科 教授 研究課題名 研究代表者/分担者 ユビキチン修飾による膜交通と葉緑体形成制御機構の解明 (代表)山口 淳二 所属・役職 北海道大学・大学院理学研究院 教授 ストレスセンサーKeap1のユビキチンライゲース活性制御機 (代表)鈴木 隆史 構の解明 東北大学・大学院医学研究科 助教 mRNA品質管理機構におけるユビキチン化の新規機能の解析 (代表)稲田 利文 東北大学・大学院薬学研究科 教授 時計タンパク質CRYの安定化と分解という拮抗作用を導く (代表)深田 吉孝 2種類のE3リガーゼ 東京大学・大学院理学系研究科 教授 FAAP20によるK63結合型ポリユビキチン鎖特異的認識の (代表)佐藤 裕介 構造的基盤 東京大学・放射光連携研究機構 助教 バクテリアが利用するユビキチンシステム (代表)金 玟秀 東京大学・医科学研究所 特任准教授 腎臓および肺の線維化を左右するユビキチン制御の解明 (代表)北川 雅敏 浜松医科大学・医学部 教授 ユビキチン修飾系による転写因子Hes1タンパク質の安定化 (代表)小林 妙子 と幹細胞制御 京都大学・ウイルス研究所 助教 原核生物で発見された真核生物型ユビキチンシステムの生 (代表)金井 保 化学的解析 京都大学・大学院工学研究科 講師 多重ドメイン蛋白によるユビキチンシグナルの選択性と疾患 (代表)小松 賢志 京都大学・放射線生物研究センター 教授 ユビキチン化による鉄代謝制御システムの解明 九州大学・生体防御医学研究所 助教 (代表)西山 正章 システイン残基ユビキチン化修飾の分子基盤とペルオキシ (代表)藤木 幸夫 ソームタンパク質輸送制御 九州大学・大学院理学研究院 特任教授 細胞創傷治癒機構におけるユビキチンの役割 (代表)河野 恵子 名古屋市立大学医学部・大学院医学研究科 講師 ユビキチン連結酵素PARKINを活性化するメカニズム (代表)松田 憲之 東京都医学総合研究所・蛋白質代謝研究室 副参事研究員 A02 ユビキチン修飾の識別、検出法の開発とその応用 研究課題名 研究代表者/分担者 (代表)紺野 宏記 金沢大学・バイオAFM先端研究センター 准教授 直鎖型ポリユビキチン鎖合成の構造的基盤の解明 (代表)杤尾 豪人 京都大学・大学院工学研究科 准教授 ケミカルバイオロジーを利用した人工的ユビキチン修飾シス (代表)内藤 幹彦 テムの開発 02 所属・役職 ユビキチンによるタンパク質翻訳後修飾のダイナミクス 国立医薬品食品衛生研究所・機能生化学部 部長 03 班員紹介 計画 A01 計画 A01 直鎖状ポリユビキチン鎖の 選択的生成機構とその役割 ユビキチン修飾系による 膜タンパク質の輸送制御機構 研究代表者:岩井 研究代表者:駒田 一宏(京都大学・大学院医学研究科・教授) 雅之(東京工業大学・大学院生命理工学研究科・准教授) ユビキチン修飾系は主としてユビキチンが数珠状に連なったポリマーであるポリユビ 【代表論文】 細胞膜タンパク質の発現レベルは細胞のおかれた状況に応じてそれぞれ適切に調節 【代表論文】 キチン鎖を結合させることで分解のみならず、多様な様式でタンパク質の機能を制御 1. Sasaki, Y., Sano, S., Nakahara, M., されており、 その破綻はがんなどの様々な病態につながります。 その発現量調節のた 1. Tanno, H., Yamaguchi, T., Goto, E., する翻訳後修飾系です。細胞内には多様なユビキチン鎖が存在し、 ユビキチン鎖の種 類によってタンパク質の制御様式が異なります。我々は新規ポリユビキチン鎖である 直鎖状ポリユビキチン鎖(M1鎖)を選択的に生成するLUBACユビキチンリガーゼを Murata, S., Kometani, K., Aiba, Y., Sakamoto, S., Watanabe, Y., Tanaka, K., Kurosaki, K., and Iwai, K. (2013) Defective immune responses in め、細胞は分解すべき細胞膜タンパク質だけを選択的にエンドサイトーシスにより取 り込み、 エンドソームを経てリソソームに輸送して分解します。 ユビキチン化修飾は、 分解すべき細胞膜タンパク質をリソソームに運ぶための2つの選別輸送ステップ、 す Ishido, S., and Komada, M. (2012) The Ankrd 13 family of UIMbearing proteins regulates EGF receptor endocytosis from the plasma membrane. Mol. Biol. Cell 23, 1343-1353. 発見し、LUBACによるM1鎖生成が種々の刺激依存的なNF-κB活性化に関与する mice lacking LUBAC-mediated ことを報告してきました。NF-κBは種々の刺激によって活性化され、炎症、免疫応答、 EMBO J. 32, 2463-2476. ソソームへの輸送(分解経路)”を始動するシグナルとして働いています。 これらの選別 2. Mukai, A., Yamamoto-Hino, M., 細胞の生存などに関わる転写因子であり、 リウマチ・アレルギー性疾患、 ガンなどの疾 2. Tokunaga, F., Nakagawa, T., 輸送のシグナルとして働くのは主にK63ポリユビキチン化であることが知られていま *Komada, M., and *Goto, S. (*co- 患でその異常活性化が報告されています。本研究では多様なユビキチン修飾:ユビキ M., Sakata, S.-I., Tanaka, K., チンコードによる多彩な細胞機能制御機構の解明の一環として、選択的M1鎖生成メ カニズムを中心に、M1鎖によるNF-κB活性化の分子メカニズムとその生理的役割 の解明を進めます。加えて、 これまでの技術的蓄積を活かし、他の計画研究と共同して 今後のユビキチン研究の必須なインフラ整備を進めます。 linear ubiquitination in B cells. Nakahara, M., Saeki, Y., Taniguchi, Nakano, H., and Iwai, K. (2011) SHARPIN is a component of the NF-κB activating linear ubiquitin chain assembly complex. Nature 471, 633-636. なわち“細胞膜からの取り込み (エンドサイトーシス)”および“初期エンドソームからリ す。本研究では、 ユビキチン化修飾(ユビキチンコード) による細胞膜タンパク質のリソ ソームへの輸送の制御機構、 すなわちこのプロセスを制御するユビキチンリガーゼ、 脱ユビキチン化酵素、 およびそのユビキチンコードを識別するタンパク質(デコード因 子) の同定とそれらによる選択的ユビキチン鎖識別機構の解明を行います。 Awano, W., Watanabe, W., correspondence) (2010) Balanced ubiquitylation and deubiquitylation of Frizzled regulate cellular responsiveness to Wg/Wnt. EMBO J. 29, 2114-2125. 3. Sato, Y., Yoshikawa, A., Yamagata, 3. Tokunaga, F., Sakata, S.-I., Saeki, Y., A., Mimura, H., Yamashita, M., Satomi, Y., Kirisako, T., Kamei, K., Ookata, K., Nureki, O., Iwai, K., Nakagawa, T., Kato, M., Murata, S., Komada, M., and Fukai, S. (2008) Yamaoka, S., Yamamoto, M., Structural basis for selective Akira, S., Takao, T., Tanaka, K., and cleavage of Lys63-linked Iwai, K. (2009) polyubiquitin chains. Involvement of linear Nature 455, 358-362. polyubiquitination of NEMO in NF-κB activation. Nature Cell Biol. 11, 123-132. 細胞膜タンパク質のユビキチン化は、 そのエンドサイトーシス、 および初期エンドソームか らリソソームへの輸送(分解経路) を始動するシグナルとして働きます。本研究では、 これら のプロセスの制御の分子機構と、 その生理学的・病理学的意義を解明します。 04 05 計画 A01 計画 A01 ユビキチン修飾系による 膜タンパク質の輸送制御機構 転写調節機構における ユビキチン修飾系の役割解明 研究分担者:石戸 聡(昭和薬科大学・教授) 研究代表者:大竹 史明(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・研究員) 膜結合型E3ユビキチンリガーゼであるMARCH(membrane-associated RING- 【代表論文】 化学物質はその有効性の一方毒性作用を有するため、 その分子作用機構の解明は CH) ファミリーは、免疫応答を制御する様々な膜タンパク質をユビキチン化する事 1. Goto, E., Yamanaka, Y., Ishikawa, 重要です。遺伝子発現制御系とユビキチン系は化学物質に対する細胞応答に重要な によりリソソームでの分解を誘導する。現在、11種類の分子がMARCHファミリー メンバーとして報告されているが、その中で生理的な基質が分かっている分子は MARCH-Iのみである。従って、MARCHファミリーメンバーの生理的な基質を探索す る事により、 ユビキチン化による新たな免疫制御機構を明らかにする事を目的とする。 A., Aoki-Kawasumi, M., MitoYoshida, M., Ohmura-Hoshino, M., Matsuki, Y., Kajikawa, M., Hirano, H., and Ishido, S. (2010) Contribution of K11-linked ubiquitination to MIR2-mediated MHC class I internalization. J. Biol. Chem. 285, 35311-35319. 2. Ishido, S., Goto, E., Matsuki, M., and Ohmura-Hoshino, M. (2009) E3 ubiquitin ligases for MHC molecules. Current Opinion in Immunology 21, 78-83. (Review) 3. Matsuki, Y., Ohmura-Hoshino, M., 役割を担っていますが、両者の相互連関には不明な点の多いのが現状です。転写制 御因子群はユビキチンのリジン48を介したユビキチン鎖(K48鎖) の修飾によって分 解される一方、K63鎖やモノユビキチン化によって分解非依存的な機能制御を受け ています。私たちは最近、 ユビキチン分子自身のリジン残基がアセチル化修飾を受け ることを見出しました。 そこで本研究課題では、 アセチルユビキチン化や特異的ユビキ チン鎖を含む 「ユビキチン・コード」 が転写制御因子群の運命調節を介して化学物質 応答に関与する機構を解析します。 アセチルユビキチンなどの修飾型ユビキチンのユ ビキチン鎖形成やデコーディングにおける分子機能、転写因子やヒストンのユビキチ ン化に及ぼす影響を検討します。 またこれらユビキチン・コードの生物学的意義を細 胞および個体レベルでの遺伝子発現応答や毒性応答をモデルに解析します。 Goto, E., Aoki, M., Mito-Yoshida, M., Uematsu, M., Hasegawa, T., Koseki, H., Ohara, O., Nakayama, M., Toyooka, K., Matsuoka, K., Hotta, H., Yamamoto, A., and Ishido, S. (2007) Novel regulation of MHC class II MARCHファミリーは膜タンパク質を基質とするユビキチン化酵素である。MARCH-Iは免疫を起動する分子で あるMHC class II (MHC II)を制御する。 しかしながら、他のMARCHの基質は免疫制御分子であると推測さ れているが、未だ不明である。 よって、 それらの基質を同定する事により新たな免疫制御機構の探索を行う。 06 function in B cells. EMBO J. 26, 846-854. 07 計画 A01 計画 A02 K6およびK63ユビキチン鎖によ るDNA修復制御機構 ユビキチンリガーゼによる 選択的基質識別メカニズム 研究代表者:太田 研究代表者:嘉村 巧(名古屋大学・大学院理学研究科・教授) 智彦(聖マリアンナ医科大学・大学院医学研究科・教授) DNA損傷に対する相同組換え修復(homology-directed repair: HDR)の異常は 【代表論文】 ユビキチン修飾系は選択的にタンパク質を識別し、多彩な形態のユビキチン (ポリユ 【代表論文】 ガンを誘発する一方、化学療法の感受性を亢進させるため、 その理解はガンの治療 1. Sato, K., Sundaramoorthy, ビキチン鎖など) を結合させて分解のみならず多様な様式でその機能を制御すること 1. Liu, Y., Nakatsukasa, K., Kotera, 戦略上きわめて重要です。 この経路には乳ガン抑制遺伝子産物であるBRCA1をはじ め、少なくとも8つのE3ユビキチンリガーゼが関与しており、 ポリユビキチン鎖(K6鎖、 K63鎖)の形成とそれを認識するユビキチン結合モチーフを介した修復因子の制御が 中心的な役割を果たしています。 E., Rajendra, E., Hattori, H., Jeyasekharan, A.D., Ayoub, N., Schiess, R., Aebersold, R., Nishikawa, H., Sedukhina, A.S., Wada, H., Ohta, T., and Venkitaraman, A.R. (2012) A DNA-damage selective role で、細胞周期進行・シグナル伝達・DNA複製・神経変性疾患・免疫応答など多岐にわ たる生命現象において重要な役割を果たしています。 ユビキチン系はユビキチン活性 化酵素(E1)、 ユビキチン結合酵素(E2)、 ユビキチンリガーゼ (E3) の3種類の触媒酵 再構築においてユビキチン修飾が果たす役割を解析します。 さらにK6鎖を合成する技 and DNA repair. Curr. Biol. 22, 1659-1666. る標的タンパク質は非常に多く、 それを特異的に認識するE3も非常に多数(ヒトで約 2. Izawa, N., Wu, W., Sato, K., 600種類)存在しています。 そこで本研究では、他の計画研究と共同し、様々なE3に 検出し、 治療標的とバイオマーカー開発の基盤を確立することを目的としています。 HERC2 interacts with Claspin and regulates DNA origin firing and replication fork progression. Cancer Res. 71, 5621-5625. 3. Wu, W., Sato, K., Koike, A., Roy1/Ymr258c interacts with Mol. Biol. Cell 22, 1575-1584. ン結合タンパク質を中心に、HDR経路、 チェックポイント制御およびヘテロクロマチン Itoh, F., and Ohta, T. (2011) Non-SCF type F-box protein を結合させることで始動します。 このことより、E3による基質識別メカニズムの理解は ubiquitylation, CHK1 activation, 充実を図ります。 一方、 ガンにおけるユビキチンを介したDNA修復メカニズムの異常を T. (2011) a Rab5-like GTPase Ypt52 and for BRCA1 E3 ligase in claspin Nishikawa, H., Kato, A., Boku, N., Kishi, T., Mimura, S., and Kamura, 素群によって、E3が特異的に認識する基質タンパク質に種々の様式のユビキチン鎖 本研究ではK6鎖とK63鎖を触媒するE3、脱ユビキチン化酵素(DUB)およびユビキチ 術や抗K6鎖抗体の樹立、 K6鎖生成阻害剤の開発をとおしてユビキチン研究ツールの M., Kanada, A., Nishimura, T., ユビキチンネオバイオロジーの解明に不可欠な研究テーマです。 ユビキチン修飾され 対する基質を免疫沈降法および質量分析法の組み合わせにより分離・同定し、 さらに はこれら酵素・基質関係により制御される生命現象を解明することを目的とします。 inhibits Ypt52 function. 2. Mimura, S., Komata, M., Kishi, T., Shirahige, K., and Kamura, T. (2009) SCFDia2 regulates DNA replication forks during S-phase in budding yeast. EMBO J. 28, 3693-3705. 3. Liu, Y., Mimura, S., Kishi, T., and Kamura, T. (2009) A longevity protein, Lag2, interacts with SCF complex and Nishikawa, H., Koizumi, H., regulates SCF function. Venkitaraman, A.R., and Ohta, T. EMBO J. 28, 3366-3377. (2010) HERC2 is an E3 ligase that targets BRCA1 for degradation. Cancer Res. 70, 6384-6392. 08 09 計画 A02 計画 A02 ユビキチンリガーゼによる 選択的基質識別メカニズム ユビキチン識別タンパク質による ポリユビキチン鎖情報の デコード機構とその役割 研究分担者:畠山 鎮次(北海道大学・大学院医学研究科・教授) 研究代表者:川原 裕之(首都大学東京・大学院理工学研究科・教授) ユビキチン修飾システムは、選択的にタンパク質を識別し、 エネルギー依存的に、多彩 【代表論文】 BAG6は、 ヒト染色体MHC領域にコードされるユビキチン様タンパク質として同定さ 【代表論文】 なユビキチン鎖を結合させる細胞内修飾反応系です。 その機能は、 タンパク質の分解 1. Sato, T., Okumura, F., Ariga, T., れました。 その機能は長らく不明でしたが、BAG6はユビキチン化された新合成不良 1. Minami, R., Hayakawa, A., のみならず、多様な様式で作用し、細胞周期・シグナル伝達・DNA複製・神経変性疾 TRIM6 interacts with Myc and 患・免疫応答などのさまざまな生命現象で重要な役割を果たしています。 ユビキチン 系の酵素系のなかで、 ユビキチンリガーゼ (E3) が特異的に基質タンパク質を認識し、 種々の様式のユビキチン鎖を結合させることが知られています。 ユビキチンによって修 and Hatakeyama, S. (2012) maintains the pluripotency of mouse embryonal stem cells. J. Cell Sci. 125, 1544-1555. 2. Yaguchi, H., Okumura, F., 飾される標的タンパク質は細胞内に非常に多く存在し、 またそれを認識するE3も非 Takahashi, H., Kano, T., Kameda, 常に多く存在しています。私たちは、 ヒト遺伝子に存在するRING型E3(ヒトに約300 Watanabe, M., Sasaki, H., and 遺伝子)、 そのなかでもTRIM型E3(ヒトで約70遺伝子:模式図参照) に注目し、免疫 沈降法や質量分析法を組み合わせることで、 これらの酵素・基質関係により制御され る生命現象を解明することを進めています。TRIMタンパク質はがんや免疫などに重 要な働きをしていることが最近判明してきており、細胞内のTRIMタンパク質の分子メ カニズムの解明により、医学の発展に寄与することが期待できます。 H., Uchigashima, M., Tanaka, S., Hatakeyama, S. (2012) TRIM67 protein negatively regulates Ras activity through degradation of 80K-H and indices neuritogenesis. J. Biol. Chem. 287, 12050-12059. 3. Hatakeyama, S. (2011) TRIM proteins and cancer. Nature Rev. Cancer 11, 792-804. ポリペプチドを認識し、 これらをプロテアソーム依存的分解系にリクルートすること を我々は最近明らかにしました。 また、BAG6はリボソームから生まれ出てきたばかり の膜タンパク質の膜貫通ドメインをトラップし、小胞体膜へのアッセンブリを促進しま す。 このようにBAG6は新生タンパク質の品質管理に関与していることが明らかなの ですが、 その作用機構は十分解明されていません。私たちはこれまでBAG6は細胞内 で大きな複合体を形成しうること、 その複合体内には複数のユビキチン受容体が内 含されることを見いだしました。本研究ではBAG6複合体の全容を解明し、新合成不 良タンパク質をユビキチン経路に導く識別経路の解明を目指します。BAG6複合体に 内包されるユビキチン受容体の特異性解明を足掛かりに、本領域で開発する多様な ポリユビキチン鎖ライブラリを活用して、 ポリユビキチン鎖情報を選択的にデコードす るユビキチン識別システムの解明を行います。 Kagawa, H., Yanagi, Y., Yokosawa, H., and Kawahara, H. (2010) BAG-6 is essential for selective elimination of defective proteasomal substrates. J. Cell Biol. 190, 637-650. 2. Shimada, M., Kanematsu, K., Tanaka, K., Yokosawa, H., and Kawahara, H. (2006) Proteasomal ubiquitin receptor RPN-10 controls sex determination in Caenorhabditis elegans . Mol. Biol. Cell 17, 5356-5371. 3. Kawahara, H., Minami, R., and Yokota, N. (2013) JB Review: BAG6/BAT3: Emerging roles in quality control for nascent polypeptides. J. Biochem. 153, 147-160. (Review) TRIM型ユビキチンリガーゼの多様性 10 11 計画 A02 計画 A02 選択的なポリユビキチン鎖 検出・定量法の開発 選択的ユビキチン識別機構の 構造生物学 研究代表者:佐伯 泰(東京都医学総合研究所・生体分子先端研究分野・教授) 研究代表者:水島 恒裕(兵庫県立大学・大学院生命理学研究科・教授) ユビキチンによるタンパク質の翻訳後修飾は、分解のみならずシグナル伝達やタンパ 【代表論文】 多彩な生命現象の制御において中核的な役割を果たすユビキチン化修飾は分子内 【代表論文】 ク質の輸送など広汎な生命機能を制御することが明確となってきました。 ユビキチン 1. Saeki, Y., Isono, E., and Toh-e, A. に7 個存在するリジン(K6、K11、K27、K29、K33、K48、K63)、 およびN末端のメチ 1. Sanada, T., Kim, M., Mimuro, H., 修飾にはモノユビキチン化と8種類の異なる構造のポリユビキチン鎖が存在し、 それ Preparation of ubiquitinated オニン(M1)を介した8 種のユビキチン間の連結により、 ポリユビキチン鎖としての構 A., Ashida, H., Kobayashi, T., らが使い分けられることで標的タンパク質の運命が決定されます。 さらに、 最近では混 合鎖や分岐鎖など複雑なユビキチン鎖も細胞内に存在することが示唆されています。 このようにユビキチン修飾は“ユビキチンコード”とも呼ぶべき膨大な情報を内包して おり多彩な生理機能を発揮しますが、 ユビキチン修飾の構造すなわちユビキチン鎖の 種類や長さ、複雑さを決定する解析法が完全には確立されておらず、 ユビキチンシグ ナル発動の機構は未解明な点が多いのが現状です。 そこで、本研究では、 ユビキチン 修飾の情報を生化学的に解読する方法を確立します。 まず、 ポリユビキチン鎖のユビ キチン間結合について質量分析計を用いて絶対定量する系を確立します。 また、 ポリ ユビキチン鎖の長さ及び複雑さの解析技術、 さらにアーティファクトを極力排除したユ ビキチン化試料調製法を開発することで、 ユビキチンコードの全貌解明に挑戦します。 (2005) substrates by the PY motifinsertion method for monitoring 26S proteasome activity. Methods Enzymol 399, 215-227. 2. Saeki, Y., Toh-e, A., Kudo, T., Kawamura, H., and Tanaka, K. (2009) Multiple proteasome-interacting proteins assist the assembly of the yeast 19S regulatory particle. Cell 137, 900-913. 3. Tsuchiya, H., Tanaka, K., and Saeki, Y. (2013) The parallel reaction monitoring method contributes to a highly sensitive polyubiquitin chain quantification. Biochem. Biophys. Res. Commun. 436, 223-229. 造的多様性を獲得し、 タンパク質機能を調節しています。 このユビキチン化修飾によ る膨大な情報(ユビキチンコード)はユビキチン鎖を認識する識別タンパク質、合成を 行うユビキチンリガーゼ(E3)、除去の役割を持った脱ユビキチン化酵素に加え、多様 な連結様式によりタンパク質機能を調節するユビキチン鎖により制御されています。 この多様なユビキチン鎖を介したタンパク質の相互作用の特異性と機能制御のメカ ニズムの詳細を理解するためには、機能状態のタンパク質およびタンパク質-タンパク 質複合体の三次元構造情報が必要不可欠です。本研究ではユビキチン修飾経路の 各段階において選択的なユビキチン識別に関わるタンパク質の構造解析を行い、 そ れらによる調節機構を、立体構造を基盤とした構造生物学的側面から解析します。 Suzuki, M., Ogawa, M., Oyama, Koyama, T., Nagai, S., Shibata, Y., Gohda, J., Inoue, J., Mizushima, T., and Sasakawa, C. (2012) The Shigella flexneri effector OspI deamidates UBC13 to dampen the inflammatory response. Nature 483, 623-626. 2. Takagi, K., Kim, S., Yukii, H., Ueno, M., Morishita, R., Endo, Y., Kato, K., Tanaka, K., Saeki, Y., and Mizushima T. (2012) Structural basis for specific recognition of Rpt1, an ATPase subunit of the 26S proteasome, by a proteasome-dedicated chaperone Hsm3. J. Biol. Chem. 287, 12172-12182. 3. Nishide, A., Kim, M., Takagi, K., Himeno, A., Sanada, T., Sasakawa, C., and Mizushima, T. (2013) Structural basis for the recognition of Ubc13 by the Shigella flexneri effector OspI. J. Mol. Biol. 425, 2623-2631. 12 13 計画 A02 公募 A01 選択的ユビキチン識別機構の 構造生物学 ユビキチン修飾による膜交通と 葉緑体形成制御機構の解明 研究分担者:加藤 研究代表者:山口 龍一(高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所・准教授) 淳二(北海道大学・大学院理学研究院・教授) タンパク質はユビキチン修飾されることにより、 さまざまな調節を受けている。 このユ 【代表論文】 植物においてもタンパク質のユビキチン(Ub)修飾に由来する様々な制御機構が存在 【代表論文】 ビキチン化修飾による膨大な情報(ユビキチンコード) の機能制御機構を詳細に理解 1. Hirano, S., Kawasaki, M., Ura, H., します。私たちは, モデル植物シロイヌナズナを用いて,植物に特有の膜局在型ユビキ 1. Sun, H.H., Fukao, Y., Ishida, S., するために、立体構造を基盤にした構造生物学研究を推進する。現在、本領域内で以 H., and Wakatsuki, S. (2006) 下の共同研究を進めている。 ユビキチン様ドメインを含む BAG6 は、新合成ポリペプチドの構造不良領域を認識 しこれらをプロテアソーム系へ輸送する新因子であること、tail-anchor (TA) 型膜タ ンパク質の生合成経路(GET 経路) にも関与すること、 などが近年明らかにされた。 首都大学東京の川原教授との共同研究で BAG6 複合体の結晶構造解析を行い、 GET 経路とプロテアソーム経路の制御の分子機構を明らかにしたい。 東京工業大学の駒田准教授との共同研究では、K63 ユビキチン鎖に特異性を示す Ankrd 13 の ubiquitin interacting motif (UIM)について、 そのポリユビキチン鎖 Kato, R., Raiborg, C., Stenmark, Double-sided ubiquitin binding of Hrs-UIM in endosomal protein sorting. Nature Struct. Mol. Biol. 13, 272277. 2. Rahighi, S., Ikeda, F., Kawasaki, M., Akutsu, M., Suzuki, N., Kato, R., Kensche, T., Uejima, T., Bloor, S., Komander, D., Randow, F., Wakatsuki, S., and Dikic, I. (2009) Specific recognition of linear ubiquitin chains by NEMO の種別を見分ける分子機構を明らかにするため、K63 ユビキチン鎖と UIM の複合 is important for NF-kappaB 体の立体構造解析を進めている。 Cell 136, 1098-1109. activation. 3. Rohaim, A., Kawasaki, M., Kato, R., Dikic, I., and Wakatsuki, S. (2012) チンリガーゼATL31が炭素・窒素代謝の制御(C/N応答) に関与することを証明しま した。 さらに,ATL31は,病原体に対する宿主の抵抗性(これを植物免疫と称します) に関与することを明らかにしました。ATL31相互作用因子としてSNAREタンパク質 を中心とした複数の膜交通関連タンパク質が同定されました。植物は, 糸状菌などの 病原体の侵入箇所に細胞壁成分を分泌させます (添付図参照)。 これにより,細胞壁 Yamamoto, H., Maekawa, S., Fujiwara, M., Sato, T., and Yamaguchi, J. (2013) Proteomics analysis reveals a highly heterogenous proteasome composition and the posttranslational regulation of peptidase activity under が肥厚化し,菌の侵入を防御します (これをパピラ形成と称します)。 申請者らが同定 pathogen signaling in plants. したSNAREは, このパピラ形成場所の位置決めに関与することから, ユビキチン修 [10.1021/pr400630w] 飾は膜交通-植物免疫シグナル伝達制御反応に係わると考えられました。上記以外に も,植物プロテアソームと葉緑体移行タンパク質のトランジットペプチドとが相互作 用することを見出しました。 この知見は, ユビキチン修飾による新たなオルガネラ形態 形成制御の存在を示唆しています。 これらの知見と実績に基づき,本研究では,植物における新たなユビキチン修飾制御 とその細胞内生理機能の解明を目指します。 J. Proteome Res. in press 2. Maekawa, S., Sato, T., Asada, Y., Yasuda, S., Yoshida, M., Chiba, Y., and Yamaguchi, J. (2012) The Arabidopsis ubiquitin ligases ATL31 and ATL6 control the defense response as well as the carbon/nitrogen response. Plant Mol. Biol. 79, 217-227. 3. Sato, T., Maekawa, S., Yasuda, Structure of a compact S., Domeki, Y., Sueyoshi ,K., conformation of linear Fujiwara, M., Fukao, Y., Goto, D.B., diubiquitin. and Yamaguchi, J. (2011) Acta Crystallogr. D 68, 102-108. Identification of 14-3-3 proteins as a target of ATL31 ubiquitin ligase, a regulator of the C/N response in Arabidopsis thaliana. Plant J. 68, 137-146. 14 15 公募 A01 公募 A01 ストレスセンサーKeap1のユビキチン ライゲース活性制御機構の解明 mRNA品質管理機構における ユビキチン化の新規機能の解析 研究代表者:鈴木 研究代表者:稲田 隆史(東北大学・大学院医学研究科・助教) 利文(東北大学・大学院薬学研究科・教授) ストレスセンサーKeap1は転写因子Nrf2のユビキチン化反応を制御し酸化ストレス 【代表論文】 生命現象の基盤となる遺伝子発現の正確性は、 細胞の保持する様々な品質管理機構 【代表論文】 防御機構の中心的役割を担う鍵因子である。最近の私たちの研究成果からKeap1- 1. Suzuki, T., Motohashi, H., and によって保証される。我々は、mRNAの分解促進に加えて、翻訳抑制とタンパク質の 1. Tsuboi, T., Kuroha, K., Kudo, K., Nrf2システムは多様なストレス刺激に応答してユビキチン化反応を制御すること、 ま たその制御機構として 「閂と蝶番モデル」 を提唱した。 しかし、 その実証は未だ不十分 である。本研究はこの成果を発展させ、 ストレスセンサーKeap1によるユビキチンリ ガーゼ活性制御機構の解明によりNrf2活性化メカニズムを明らかにすることを目的 Yamamoto, M. (2013) Toward clinical application of the Keap1-Nrf2 pathway. Trends Pharmacol. Sci. 34, 340346. 2. Suzuki, T., Shibata, T., Takaya, K., とする。閂と蝶番モデルを実証するために、 ダブル蝶番Nrf2分子を創出し機能的実 Shiraishi, K., Kohno, T., Hunitoh, 証を試みる。 また、 さらなるセンサーシステイン残基の使い分けを実証するために各 K., Hosoda, F., Sakamoto, H., 種システイン残基変異体を作製し検証を行う。 また、 システイン残基欠失Keap1分子 を創出し新たなユビキチン化反応制御機構の存在解明に挑む。基質であるNrf2とユ ビキチンリガーゼKeap1の両方向から本システムのユビキチン活性制御機構の解明 に挑む。 H., Tsuta, K., Furuta, K., Goto, Motohashi, H., and Yamamoto, M. (2013) Regulatory nexus of synthesis and degradation deciphers cellular Nrf2 expression levels. Mol. Cell. Biol. 33, 2402-2412. 3. Suzuki, T., Maher, J.M., and Yamamoto, M. (2011) Select heterozygous Keap1 mutations have a dominantnegative effect on wild-type 分解が異常mRNA由来の遺伝子産物の発現抑制に重要であることを明らかにしてき た。 この異常タンパク質の分解は品質管理機構として重要であるのみならず、翻訳に 共役した新生ポリペプチド鎖のユビキチン化という点でも新しい分子機構である。 本公募研究では、以下の2点について研究を行う。 【1】翻訳アレストに共役した異常 タンパク質分解における2つのE3ユビキチンライゲースとCdc48の機能解析。Ltn1 とNot4の2つのE3ユビキチンライゲースが恊働的に作用し、翻訳アレスト産物がユ ビキン化されプロテアソームによって分解される。 これらの2つのライゲースの基質特 異性を明らかにする。 【2】翻訳アレストに共役したmRNA分子内切断に必須なE2/ E3ユビキチンライゲースUbc4/Hel2の機能解析。翻訳アレストに起因するmRNA分 子内切断(NGD: No-Go-Decay) は、異常mRNAを迅速に分解するmRNA品質管 理機構の1つである。NGDにおける分子内切断反応に必須なE2/E3ユビキチンライ ゲースUbc4/Hel2の機能解析を行い、 ユビキチン化がmRNA分子内切断を引き起 こす分子機構を明らかにする。 Makino S., Inoue, E., Kashima, I., and Inada, T. (2012) Dom34:Hbs1 plays a general role in quality control systems by dissociation of stalled ribosome at 3’ end of aberrant mRNA. Mol. Cell 26, 518-529. 2. Kuroha, K., Akamatsu, M., Dimitrova, L., Ito, T., Kato, Y. Shirahige, K., and Inada, T. (2010) RACK1 stimulates nascent polypeptide-dependent translation arrest. EMBO Rep. 11, 956-961. 3. Ito-Harashima, S., Kuroha, K., Tatematsu, T., and Inada, T. (2007) Translation of poly(A) tail plays crucial roles in nonstop mRNA surveillance via translation Keap1 in vivo. repression and protein Cancer Res. 71, 1700-1709. destabilization by proteasome in yeast. Genes Dev. 21, 519-524. 16 17 公募 A01 公募 A01 時計タンパク質CRYの安定化と分解 という拮抗作用を導く2種類のE3リガーゼ FAAP20によるK63結合型 ポリユビキチン鎖特異的認識の構造的基盤 研究代表者:深田 研究代表者:佐藤 吉孝(東京大学・大学院理学系研究科・教授) 裕介(東京大学・放射光連携研究機構・助教) 普遍的な細胞機能である概日時計は、個体の正常な生理機能の維持に必須です。概 【代表論文】 DNA損傷の一つであるDNA鎖間架橋は、複製や転写といった細胞の増殖に必須 【代表論文】 日時計の異常やシフトワークなどによる概日リズムの乱れは、睡眠障害・ガン・生活習 1. Hirano, A., Yumimoto, K., な機能を阻害するため、毒性が非常に高い。 ごく最近、K63結合型ポリUb鎖修飾が 1. Sato, Y., Fujita, H., Yoshikawa, 慣病など多くの疾病の原因になります。哺乳類の行動リズムを制御する中枢時計は 視床下部の視交叉上核 (SCN) に存在し、 これが全身の末梢組織に存在する多数の 時計機構を制御しています。 中枢・末梢いずれの概日時計も、 その24時間振動は時計 遺伝子の転写フィードバック制御に基づいていますが、時計振動の本体である24時 間周期の転写リズムが生まれます。二つのCry遺伝子にコードされるCRY1とCRY2 の機能の違いは不明ですが、いずれもPERに比べてはるかに強い転写抑制活性を もっています。 さらにCRY1・2のタンパク質量や細胞内の局在は一日を通してダイナ ミックに変化し、 これが厳密に制御されなければ時計機能は破綻をきたします。本研 究課題では、 サーカディアンリズムの主役とも言えるCRYタンパク質のダイナミックな Tsunematsu, R., Matsumoto, M., Oyama, M., KozukaHata, H., Lanjakornsiripan, D., Nakayama, I, K.#, and Fukada, Y.# (#corresponding authors) (2013) FBXL21 regulates oscillation of the circadian clock through ubiquitination and stabilization of cryptochromes. Cell 152, 1106-1118. 2. Kurabayashi, N., Hirota, T., Sakai, M., Sanada, K., and Fukada, Y. (2010) DYRK1A and GSK-3beta: A dual 量的制御の徹底的な理解を目指し、CRYを安定化に導くE3リガーゼFBXL21を含 kinase mechanism directing む複数のユビキチン化・脱ユビキチン化酵素によるユビキチン-ネットワークの全体像 CRY2 for circadian timekeeping. に迫ります。 proteasomal degradation of Mol. Cell. Biol. 30, 1757-1768. 3. Harada, Y., Sakai, M., DNA鎖間架橋修復シグナルとして働くことが解明された。DNA鎖間架橋が起こる と、 キナーゼATRによるリン酸化を引き金として、RNF8とUbc13によってDNA損傷 箇所近傍のヒストンH2A、 もしくは未知の基質がK63結合型ポリUb鎖修飾をうけ る。FAAP20はK63結合型ポリUb鎖を特異的に認識し、DNA鎖間架橋修復を行う Fanconi anemia (FA) タンパク質群をDNA損傷箇所に集積させる。従って、FAタン パク質群のDNA損傷箇所集積メカニズムの解明にはFAAP20によるポリUb鎖の識 別機構を明らかにする必要がある。本研究ではFAAP20のubiquitin-binding zinc finger (UBZ)ドメインとK63結合型Ub2量体の複合体の結晶構造解析、 さらに変 異体を用いた解離定数の測定を行うことで、FAAP20によるK63結合型Ub鎖の認 識機構を明らかにする。 A., Yamashita, M., Yamagata, A., Kaiser, SE., Iwai, K., and Fukai, S. (2011) Specific recognition of linear ubiquitin chains by the HOIL-1L NZF domain. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 108, 20520-20525. 2. Sato, Y., Yoshikawa, A., Mimura, H., Yamashita, M., Yamagata, A., and Fukai, S. (2009) Structural basis for specific recognition of Lys63-linked polyubiquitin chains by tandem UIMs of RAP80. EMBO J. 28, 2641-2468. 3. Sato, Y., Yoshikawa, A., Yamagata, A., Mimura, H., Yamashita, M., Ookata, K., Nureki, O., Iwai, K., Kurabayashi, N., Hirota, T., and Komada, M., and Fukai, S. (2008) Fukada, Y. (2005) Structural basis for specific Ser557-phosphorylated mCRY2 cleavage of Lys 63-linked is degraded upon synergistic polyubiquitin chains. phosphorylation by GSK-3beta. Nature 455, 358-362. J. Biol. Chem. 280, 31714-31721. 18 19 公募 A01 公募 A01 バクテリアが利用する ユビキチンシステム 腎臓および肺の線維化を左右する ユビキチン制御の解明 研究代表者:金 玟秀(東京大学・医科学研究所・特任准教授) 研究代表者:北川 腸管病原細菌による感染疾患は人類にとって大きな脅威であり、 その感染機構の解 【代表論文】 慢性腎障害や間質性肺炎は組織繊維化を伴う予後不良で効果的な治療法のない疾 【代表論文】 明とその知見に基づく新たなワクチン・治療薬の開発が喫緊の課題です。 ユビキチン・ 1. Nishide, A., Kim, M., Takagi, 患で、 その進行メカニズムや責任遺伝子は不明の点が多い。 我々は、 腎障害進行におけ 1. Suzuki, S., Ohashi, N., and プロテアソーム依存性の蛋白質分解経路は高次生命現象やヒト疾患の理解に不可 欠な要素ですが、近年、病原細菌やウイルスによる感染症においても、 これらが宿主 細胞の中でユビキチン分解経路を制御することによって、感染成立に必要な細胞応 答を引き起こすことが明らかになってきました。我々は腸管病原細菌の病原因子の解 析を進め、 ユビキチン分解システムに関わる病原因子を発見しています。 これらの病 原因子は大きく (1) ユビキチン分解システムの酵素活性を持つ分子(E3 ユビキチン リガーゼ)、(2) 宿主細胞内でユビキチン化・分解を受ける基質分子、(3) 宿主のユビ キチン分解システムを制御する分子に分けられますが、 これらの病原因子について、 感染成立における生理機能や作用機序がまだわかっていません。本研究では、腸管 K., Himeno, A., Sanada, T., Sasakawa, C., and Mizushima, T. (2013) Structural basis for the recognition of Ubc13 by the Shigella flexneri effector OspI. J. Mol. Biol. 425, 2623-2631. 2. Sanada, T., Kim, M., Mimuro, H., Suzuki, M., Ogawa, M., Oyama, A., Ashida, H., Kobayashi, T., Koyama, T., Nagai, S., Shibata, Y., Ghoda, J., Inoue, J-I., Mizushima, T., and Sasakawa, C. (2012) The Shigella flexneri effector るTGF-β経路の制御機構としてのユビキチンシステムの機能を報告してきた。 一方で、 SCF型E3リガーゼSkp2がその補助因子Cks1と共に腎障害進行に伴い著明な増加 を示し、 Skp2ノックアウト(KO)マウスで腎障害進行が抑制される事、 Skp2-/-p27-/マウスを用いてSkp2の標的分子のうちp27の分解が腎障害進行に重要である事を報 Roles of the Skp2/p27 axis in the progression of chronic nephropathy. Cell Mol. Life Sci. 70, 3277-3277. 2. Suzuki, S., Fukasawa, H., Misaki, T., Togawa A., Ohashi, N., 明な蓄積を見出し、p130が腎障害進行に重要な分子である事が示唆された。 しかし Liu, N., Nakayama. K., Nakayama, p130の増加はその既報のE3であるSkp2の増加と矛盾し、K48以外のユビキチン化 によるp130の安定化あるいはp130の新規E3の存在 (障害進行で低下?) が示唆され る。 本研究では腎障害に関与するp130のE3の同定とユビキチン鎖のリンクを明らかに する。 また、 同じ組織繊維化を伴う難治疾患間質性肺炎においてp27/ Skp2経路およ OspI deamidates UBC13 to システムが果たす役割を明らかにしていきます。 response. び、 p130の安定性制御機構の関与を動物実験および臨床病理学的解析で検証し、 医 Nature 483, 623-626. 学的応用を目指す。 dampen the inflammatory Kitagawa, M. (2013) 告した。 さらに我々は最近、 腎障害進行に伴いRBファミリーのp130RB2タンパク質の著 病原性大腸菌の感染において、病原性大腸菌側と宿主側の各々が有するユビキチン 3. Kim, M., Nakamoto, T., Nishimori, 20 雅敏(浜松医科大学・医学部・教授) Kitagawa, K., Kotake, Y., Niida, H., K.I., Yamamoto, T., and Kitagawa, M. (2012). The amelioration of renal damage in Skp2-deficient mice is canceled by p27 Kip1 deficiency in Skp2-/- p27-/- mice. PLoS ONE 7, e31249. 3. Uchida, C., Miwa, S., Kitagawa, K., Hattori, T., Isobe, T., Otani, S., Oda, T., Sugimura, H., Kamijo, S., Tanaka, K., and Chiba, T. T., Ookawa, K., Yasuda, H., and (2008) Kitagawa, M. (2005) A new ubiquitin ligase involved Enhanced Mdm2 activity inhibits in p57KIP2 proteolysis regulates pRB function via ubiquitin- osteoblast cell differentiation. dependent degradation. EMBO Rep. 9, 878-884. EMBO J. 24, 160-169. 21 公募 A01 公募 A01 ユビキチン修飾系による転写因子Hes1 タンパク質の安定化と幹細胞制御 原核生物で発見された真核生物型 ユビキチンシステムの生化学的解析 研究代表者:小林 研究代表者:金井 保(京都大学・大学院工学研究科・講師) 妙子(京都大学・ウイルス研究所・助教) 連携研究者:跡見 晴幸(京大・院工)、布浦 拓郎(海洋研究開発機構) 抑制型転写因子であるHes1は、分化を促進する転写因子等の発現や活性を抑制 【代表論文】 ユビキチン(Ub)は真核生物内での配列保存性が極めて高く、 その分子進化過程を議 【代表論文】 し、幹細胞・癌細胞などの様々な未分化細胞の維持に必須です。Hes1の発現パター 1. Kobayashi, T., and Kageyama, R. 論することが極めて困難である。近年、国内地下鉱山の熱水環境のメタゲノム解析よ 1. Nunoura, T., Takaki, Y., Kakuta, J., り解読された、未培養好熱性アーキア’Caldiarchaeum subterraneum ’のゲノム上 Chee, G. J., Hattori, M., Kanai, A., ンは特徴的で、 自身の発現を抑制するネガティブフィードバックループによって、細胞 内での発現量が周期的に増減(振動) します。近年、Hes1は、 その振動ダイナミクスを 使い分けて幹細胞の分化を制御していることが分かってきました。 しかし、振動を制 御する細胞内の分子機構はほとんど明らかになっていません。我々は、Hes1タンパク 質の安定性を調節し、幹細胞分化を制御する分子機構を明らかにすることを目的に、 Hes1タンパク質と相互作用する因子の網羅的同定を行っており、現在、同定された 因子の中からユビキチン修飾系関連因子の解析を行っています。 本研究では、 これらの因子によるHes1タンパク質の制御機構を明らかにしていきま す。 これらの研究成果から、個体の発生現象における幹細胞の維持、 がん細胞の未分 化性の維持におけるユビキチン修飾系の機能を明らかにしたいと考えています。 (2011) Hes1 oscillations contribute to heterogeneous differentiation responses in embryonic stem cells. Genes 2, 219-228. 2. Kobayashi, T., and Kageyama, R. (2010) Hes1 regulates embryonic stem cell differentiation by suppressing Notch signaling. Genes Cells 15, 689-698. 3. Kobayashi, T., Mizuno, H., Imayoshi, I., Furusawa, C., Shirahige, K., and Kageyama, R. (2009) Hes1のネガティブフィードバックグループによる発現振動 The cyclic gene Hes1 contributes to diverse differentiation に、 これまで原核生物には存在しないとされてきた真核生物型Ub遺伝子が存在する ことが判明した。本遺伝子産物の分子系統学的解析、 および本Ub遺伝子が共に発 見されたE1, E2, E3ホモログ遺伝子群と共にオペロン構造を形成することから、 こ れらの遺伝子が真核生物からの水平伝播により獲得された可能性は低いと考えられ る。従って、本菌のUb遺伝子群は、Ubシステム全体の進化を考える上で、極めて重要 な存在であると期待される。本研究では、本菌の Ubシステムの機能検証を目的とし て、 まずはin vitroにおけるタンパク質Ub化反応の再構成を試みる。 さらに他生物種 (アーキア)細胞内に本Ubシステムを導入し、細胞内での機能検証を試みたい。 Nishi, S., Sugahara, J., Kazama, H., Atomi, H., Takai, K., and Takami, H. (2011) Insights into the evolution of Archaea and eukaryotic protein modifier systems revealed by the genome of a novel archaeal group. Nucleic Acids Res. 39, 32043223. 2. Kanai, T., and Atomi, H. (2013) Enzymes from thermophilic organisms in Protein Engineering Handbook (Lutz, S. & Bornscheuer, U. T., eds) pp. 145-162, Wiley-VCH, Weinheim, Germany. 4. Kanai, T., Takedomi, S., Fujiwara, responses of embryonic stem S., Atomi, H., and Imanaka, T. cells. (2010) Genes Dev. 23, 1870-1875. Identification of the Phrdependent heat shock regulon in the hyperthermophilic archaeon, Thermococcus kodakaraensis . J. Biochem. 147, 361-370. 22 23 公募 A01 公募 A01 多重ドメイン蛋白によるユビキチ ンシグナルの選択性と疾患 ユビキチン化による鉄代謝制御 システムの解明 研究代表者:小松 研究代表者:西山 賢志(京都大学・放射線生物研究センター・教授) 正章(九州大学・生体防御医学研究所・助教) 細胞内に数多く存在する蛋白制御系の中でユビキチン化が「時を得て選択的に基質 【代表論文】 哺乳類細胞の鉄代謝制御システムにはユビキチン修飾系が深く関与しています。鉄は 【代表論文】 タンパク質を識別」 するためには、拮抗する制御系から適正なユビキチン化系が、適 1. Kondo, T., Kobayashi, J., Saitoh, 生命活動に必須の微量金属である一方で、 その過剰はフリーラジカルの産生源とな 1. Takeishi, S., Matsumoto, A., るため、細胞内鉄代謝は厳密に調節される必要があります。 われわれは、鉄と直接結 and Nakayama, K.I. (2013) 正なタイミングで選択される必要がある。 ナイミーヘン症候群の蛋白NBS1はそのC 末側の約100aaの狭い領域にDNA修復を協調的に行うための、RAD18, RNF20, ATM, MRE1の4種類の蛋白との結合ドメインが存在し、 それにより損傷乗り越え DNA合成(RAD18によるPCNAユビキチン化)、 クロマチン・リモデリング(RNF20 によるH2Bユビキチン化)、 チェックポイント (ATMによる各種基質のリン酸化)、相同 組み換え修復(MRE11ヌクレースによるDNA切断端プロセシング) を制御する。 本研究では、我々が最近報告した紫外線損傷の乗り越えDNA合成のユビキチン化 が,選択的に開始する機構を解析する。 さらにRAD18結合ドメイン欠損のNBS1モ デルマウスの解析により、 ユビキチン蛋白制御異常が原因のナイミーヘン症候群の分 子病態を明らかにする。 T., Maruyama, K., Ishiib, K.J., Barber, G. N., Komatsu, K., Akira, S., and Kawai, T. (2013) The DNA damage sensor MRE11 recognizes cytosolic doublestranded DNA and induces type I interferon by regulating STING trafficking. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110, 2969-2974. 2. Yanagihara, H., Kobayashi, J., Tateishi, S., Kato, A., Matsuura, S., Tauchi, H., Yamada, K., Takezawa, J., Sugasawa, K., Masutani, C., Hanaoka, F., Weemaes, C.M., Mori, T., Zou, L., and Komatsu K. 合するユビキチンリガーゼFBXL5が鉄代謝制御因子IRP1/2を分解することで生体 内の鉄代謝が厳密に保たれていることを発見しました。 その後の研究の中で、 当初鉄 代謝の最上流に位置すると考えていたFBXL5が、 さらに上位のユビキチンリガーゼ によって分解制御を受けていることが明らかになり、鉄代謝制御システムへのユビキ チン修飾系の複雑な関与が推定されました。 また、鉄代謝制御異常による鉄の蓄積 は、 ヒトにおいて発がんや神経変性疾患などに関与することが注目されていますが、 その疾患発症の分子メカニズムはほとんど明らかになっていません。 そこで、本研究では 「ユビキチン修飾系による鉄代謝制御システムの解明」 を目指し、 ユビキチン化による鉄代謝制御メカニズムの全貌を解明すると共に、 がんや神経変性 (2011) 疾患などの鉄代謝関連疾患にこのシステムがどのように関与しているのかを明らかに NBS1 recruits RAD18 via a していきます。 RAD6-like domain and regulates Pol η-dependent translesion DNA synthesis. Mol. Cell 43, 788-797. 3. Nakamura, K., Kato, A., Onoyama, I., Naka, K., Hirao, A., Ablation of Fbxw7 eliminates leukemia-initiating cells by preventing quiescence. Cancer Cell 23, 347-361. 2. Moroishi, T., Nishiyama, M., Takeda, Y., Iwai, K., and Nakayama, K.I. (2011) The FBXL5-IRP2 axis is integral to control of iron metabolism in vivo. Cell Metab. 14, 339-351. 3. Nishiyama, M., Oshikawa, K., Tsukada, Y., Nakagawa, T., Iemura, S., Natsume, T., Fan, Y., Kikuchi, A., Skoultchi, A.I., and Nakayama, K.I. (2009) CHD8 suppresses p53-mediated apoptosis through histone H1 recruitment during early embryogenesis. Nature Cell Biol. 11, 172-182. Kobayashi, J., Yanagihara, H., Sakamoto, S., Oliveira, D.V.N.P., Shimada, M., Tauchi, H., Suzuki, H., Tashiro, S., Zou, L., and Komatsu, K. (2011) Regulation of homologous recombination by RNF20dependent H2B ubiquitination. Mol. Cell 41, 515-628. 24 25 公募 A01 公募 A01 システイン残基ユビキチン化修飾 の分子基盤とペルオキシソーム タンパク質輸送制御 細胞創傷治癒機構における ユビキチンの役割 研究代表者:藤木 研究代表者:河野 幸夫(九州大学・大学院理学研究院・特任教授) 恵子(名古屋市立大学医学部・大学院医学研究科・講師) ペルオキシソームは哺乳動物に必須の細胞内小器官であり、 その多くの生理的機能 【代表論文】 外界との境界である細胞膜が保たれることは細胞の生存に必須であり、細胞膜の損 【代表論文】 を担うタンパク質群は厳密かつ高度な空間的秩序に基づいてペルオキシソームへ輸 1. Yagita, Y., Hiromasa,T., and Fujiki, 傷を修復する細胞創傷治癒機構は進化的に保存されています。受精、細菌感染など 1. Kono, K., Saeki, Y., Yoshida, S., 送、局在化される。Pex5pはペルオキシソームマトリクスタンパク質輸送の中心的分 Tail-anchored PEX26 targets 子である。Pex5pのN末領域に保存されたシステイン残基がチオエステル結合を介し たモノユビキチン化修飾(Cys-Ub化と略) され、 このPex5pの独特なUb化修飾がマ トリクスタンパク質輸送に必須であることを発見した。本研究は、新たな 「ユビキチン Y. (2013) peroxisomes via a PEX19dependent and TRC40independent class I pathway. J. Cell Biol. 200, 651-666. コード」 の一つといえるこのCys-Ub化修飾による細胞内タンパク質輸送の制御機構 2. Miyata, N., Okumoto, K., Noguchi, の解明を目的とする。 エネルギー準位としては等価であるはずのE2-Ub複合体から AWP1/ZFAND6 functions in Pex5 基質であるPex5pのシステイン残基へのUbの転移がどのように実行されるのか、 な ぜPex5pのUb化修飾において一般的なリシン残基ではなくシステイン残基が特異 的に選択されているのか、E2、E3の同定を含めたPex5pのCys-Ub化修飾の分子基 盤とマトリクスタンパク質輸送制御における生理的意義を解明する。 M., Mukai, S., and Fujiki Y. (2012) export by interacting with Cysmonoubiquitinated Pex5 and Pex6 AAA ATPase. Traffic 13, 168-183. 3. Okumoto, K., Misono, S., Miyata, N., Matsumoto, Y., Mukai, S., and Fujiki, Y. (2011) Cysteine-ubiquitination of peroxisome-targeting-signal 外界からの物理的障害のみならず、心臓の拍動、骨格筋の収縮といった通常の生命 活動においても細胞表層はしばしば損傷を受けます。 すると傷の周囲には速やかに 分裂リング様の構造が形成され、細胞質分裂によく似たメカニズムで膜修復が行わ れます。 これは神経細胞や心筋細胞、 あるいは卵母細胞など、代わりを容易には準備 できない細胞において重要なメカニズムで、欠損があるとデュシェンヌ型筋ジストロ フィー症などを発症することが知られています。 本研究では、真核細胞のシンプルなモデルである出芽酵母の強力な遺伝学を背景 に、特定のタイプ・長さのユビキチン鎖が細胞創傷治癒機構において果たす役割を検 討します。 ユビキチン鎖の質量分析による解析法や、 レーザーを利用した顕微鏡下で Tanaka, K., and Pellman, D. (2012) Proteasomal degradation resolves competition between cell polarization and cellular wound healing. Cell 150, 151-164. 2. Kono, K., Nogami, S., Abe, M., Nishizawa, M., Morishita, S., Pellman, D., and Ohya, Y. (2008) G1/S cyclin-dependent kinase regulates small GTPase Rho1p through phosphorylation of RhoGEF Tus1p in Saccharomyces cerevisiae . の細胞創傷治癒実験といった新規技術を活用し、 さらに新たな現象を切り口とするこ Mol. Biol. Cell 19, 1763-1771. とで、 これまで積み重ねられてきた多くの重要な知見とは異なる角度からユビキチン 3. Yoshida, S., Kono, K., Lowery, の本質に光を当てることを目指します。 D. M., Bartolini, S., Yaffe, M. B., Ohya, Y., and Pellman, D. (2006) type 1 (PTS1)-receptor Pex5p Polo-like kinase Cdc5 controls regulates Pex5p recycling. the local activation of Rho1 to Traffic 12, 1067-1083. promote cytokinesis. Science 313, 108-111. 26 27 公募 A01 公募 A02 ユビキチン連結酵素PARKINを 活性化するメカニズム ユビキチンによるタンパク質 翻訳後修飾のダイナミクス 研究代表者:松田 研究代表者:紺野 憲之(東京都医学総合研究所・蛋白質代謝研究室・副参事研究員) 宏記(金沢大学・バイオAFM先端研究センター・准教授) Parkin は常染色体劣性若年性パーキンソン病(症候群)の原因遺伝子産物であり、 【代表論文】 ユビキチン修飾系に関する研究は、 当初、主に生化学・分子生物学的手法を用いて進 【代表論文】 N-末端にユビキチン様ドメインを、C-末端にRING-IBR-RINGドメインを有するユビ 1. Iguchi, M., Kujuro, Y., Okatsu, K., められ、 これまでにユビキチン化を担う酵素群や標的となる基質タンパク質の同定な 1. Konno, H., Nakane, T., Yoshida, キチン連結酵素(E3)である。 申請者は2010-2012年に“Parkinが PINK1(ミトコン N., Uchiyama, S., Tanaka, K., and ドリアに局在するタンパク質リン酸化酵素で、遺伝性劣性パーキンソン症候群の原因 遺伝子産物)と協調して不良ミトコンドリアをユビキチン化しており、 その破綻がミト コンドリア品質の低下や酸化ストレスの蓄積を招き、最終的にパーキンソン病を引き 起こす”ことを提唱・報告した。 同様の報告が海外の研究グループから相次いだことも あり、現在ではこの考えが病気の発症機構の有力仮説の一つになりつつある。 しかしながら、 このモデルには多くのミッシング・ピースが残されている。 中でも重要な ものが“ParkinのE3活性を正に制御する仕組み”である。我々はミトコンドリアに異常 が起きると Parkinが活性化されて、 はじめてE3酵素として機能する (=Parkinは 「ミ トコンドリア異常」 というシグナルが無いとE3として機能しない) ことを示した(JCB 2010)。 ごく最近になって、 リン酸化やユビキチンーチオエステル中間体の形成が Koyano, F., Kimura, M., Suzuki, Matsuda, N. (2013) Parkin catalyzed ubiquitin-ester transfer is triggered by PINK1dependent phosphorylation. J. Biol. Chem. 288, 22019-22032. 2. Koyano, F., Okatsu, K., Ishigaki, S., Fujioka, Y., Kimura, M., Sobue, G., Tanaka, K., and Matsuda, N. (2013) The principal PINK1 and Parkin cellular events triggered in response to dissipation of mitochondrial membrane potential occur in primary neurons. Parkinの活性化に重要であることが示唆されているが、 その仕組みは依然として多く Genes Cells 18, 672-681. の謎に包まれている。Parkinの活性化機構を解明することは、病気の治療戦略のみ 4. Okatsu, K., Oka, T., Iguchi, M., ならず、基礎科学の観点からも非常に重要である。本研究では生化学的な再構成や、 semi vitro 系を駆使して、Parkin活性化機構の本質に迫りたいと思っている。 どが行われてきました。近年は、構造生物学的解析によりユビキチン化(各種酵素間 でのユビキチンの受け渡し、基質タンパク質上でのポリユビキチン鎖の伸長など)のメ カニズムが構造の観点から議論できるようになってきました。一方で、分子のダイナミ クスをリアルタイムで観察する報告がほとんど見受けられません。 本研究では、高い空間・時間分解能を兼ね備えた高速AFM装置を用いてユビキチン 修飾における構造ダイナミクスをリアルタイムで観察し、 ユビキチン化に必須な各種 酵素の相互作用の際の構造変化や基質タンパク質のポリユビキチン鎖の伸長機構の 詳細を明らかにしていきます。生化学的、分子生物学的、構造生物学的手法に加え、 高速AFMを用いた分子ダイナミクスのリアルタイム観察により、 これまで以上にシー ムレスな構造機能相関の解明が期待できると考えています。 M., Ueoka-Nakanishi, H., Hara, S., and Hisabori T. (2012) Thiol modulation of the chloroplast ATP synthase is dependent on the energization of thylakoid membranes. Plant Cell Physiol. 53, 626-634. 2. Konno, H., Isu, A., Kim, Y., Murakami-Fuse, T., Sugano, Y., and Hisabori, T. (2011) Characterization of the relationship between ADPinhibition and ε-inhibition in cyanobacterial F1-ATPase. J. Biol. Chem. 286, 13423-13429. 3. Konno, H., Murakami-Fuse, T., Fujii, F., Koyama, F., UeokaNakanishi, H., Pack, CG., Kinjo, M., and Hisabori, T. (2006) Imamura, K., Kosako, H., Tani, The regulator of the F1 motor: N., Kimura, M., Go, E., Koyano, inhibition of rotation of F., Funayama, M., Shiba- cyanobacterial F1-ATPase by the Fukushima, K., Sato, S., Shimizu, ε subunit. H., Fukunaga, Y., Taniguchi, H., EMBO J. 25, 4596-4604. Komatsu, M., Hattori, N., Mihara, K., Tanaka, K., and Matsuda, N. (2012) PINK1 autophosphorylation upon membrane potential dissipation is essential for Parkin recruitment to damaged mitochondria. Nature Commun. 3, e1016. 28 29 公募 A02 公募 A02 直鎖型ポリユビキチン鎖合成の 構造的基盤の解明 ケミカルバイオロジーを利用した 人工的ユビキチン修飾システムの開発 研究代表者:杤尾 研究代表者:内藤 豪人(京都大学・大学院工学研究科・准教授) 幹彦(国立医薬品食品衛生研究所・機能生化学部・部長) ポリユビキチン鎖のタンパク質への付加は、 よく知られているタンパク質の分解シグ 【代表論文】 私たちの研究室では、低分子化合物を利用して標的タンパク質特異的にユビキチン 【代表論文】 ナルとなるのみならず、様々な細胞内事象に関わる翻訳後修飾です。 ユビキチン鎖は 1. Sekiyama, N., Jee, J., Isogai, 化を誘導し、 プロテアソームによる分解を引き起こすプロテインノックダウン法の開発 1. Hao, Y., Sekine, K., Kawabata, A., 結合の様式によって、Lys48型やLys63等の八つの異なる型に分類されますが、 その Ariyoshi, M., Tochio, H., and を行ってきました。 プロテインノックダウン活性を示す化合物SNIPER (Specific and H., Katayama, R., Hashimoto, C., 中で直鎖状ポリユビキチン鎖は、炎症反応に関わる細胞内シグナル伝達経路におい て重要な役割を果たすことが知られています。 すなわち、LUBAC(Linear UBiquitin S., Akagi, K.-I., Huang, T.-H., Shirakawa, M. (2012) NMR analysis of Lys63-linked polyubiquitin recognition by the chain Assembly Complex) と呼ばれるユビキチンリガーゼによってNEMOに直 tandem ubiquitin-interacting 鎖状ポリユビキチン鎖が付加され、 これにより最終的にはNF-κBの核内移行が促さ J. Biomol. NMR 52, 339-350. れます。私たちは、 自己炎症疾患の発症機構についてインフラマソームの形成機構や 関連するシグナル伝達経路について主に構造生物学的手法を用いて解析を進めてい ます。LUBACの機能不全もまた自己炎症疾患を引き起こすことが報告されています。 本研究ではX線結晶構造解析やNMR等の構造生物学的手法を用いて、LUBACによ motifs of Rap80. 2. Isogai, S., Morimoto, D., Arita, K., Unzai, S., Tenno, T., Hasegawa, J., Sou, Y.-S., Komatsu, M., Tanaka, K., Shirakawa, M., and Tochio, H. (2011) Crystal structure of the UBA Non-genetic IAP-dependent Protein Eraser) は、cIAP1に結合するMeBSと標 的タンパク質に結合するリガンドをハイブリッドした構造をしており、cIAP1と標的タ Nakamura, H., Ishioka, T., Ohata, Zhang, X., Noda, T., Tsuruo, T., and Naito, M. (2004) Apollon ubiquitinates SMAC and ンパク質を架橋する事により細胞内でユビキチン化を誘導します。 これまでにレチノイ caspase-9, and has an essential ン酸結合タンパク質(CRABP2)、 エストロゲン受容体(ERα) などの標的タンパク質 Nature Cell Biol. 6, 849-860. を分解するSNIPERを開発してきました。 本研究では、化合物によるタンパク質の架橋反応を基に、細胞内で任意の標的タンパ ク質を任意のユビキチンリガーゼで強制的にユビキチン化する実験系を構築し、形成 されるユビキチン鎖の構造とユビキチン修飾が引き起こす細胞応答を解析します。 cytoprotection function. 2. Sekine, K., Takubo, K., Kikuchi, R., Nishimoto, M., Kitagawa, M., Abe, F., Nishikawa, K., Tsuruo, T., and Naito, M. (2008) Small molecules destabilize cIAP1 by activating auto- る直鎖状ポリユビキチン鎖の合成機構を解明し、 自己炎症疾患の治療法開発に貢献 domain of p62 and its interaction ubiquitylation. することを目指します。 with ubiquitin. J. Biol. Chem. 283, 8961-8968. J. Biol. Chem. 286, 31864 -31874. 3. Morimoto, D., Isogai, S., Tenno, 3. Itoh, Y., Ishikawa, M., Naito, M., and Hashimoto, Y. (2010) T., Tochio, H., Shirakawa, M., and Protein knockdown using methyl Ariyoshi, M. (2010) bestatin-ligand hybrid molecules: Purification, crystallization and design and synthesis of inducers preliminary crystallographic of ubiquitination-mediated studies of Lys48-linked degradation of cellular retinoic polyubiquitin chains. acid-binding proteins. Acta Crystallogr. Sect. F J. Am. Chem. Soc. 132, 5820- Struct. Biol. Cryst. Commun. 5826. 66, 834-837. 30 31 REVIEW & ESSAY BRCA1、 なぜ? 太田 智彦(聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科・応用分子腫瘍学) 疑 問点を解決していくことは研究の醍醐味ですが、長年研究をしていると、 どうしても解決できない疑問が徐々 に蓄積されてくるものです。 ここではBRCA1にまつわる私が直面しているこうした疑問とともに、BRCA1に 関する一般的な疑問も含め、 「なぜ?」 と思うことを6つ、思いつくがままにまとめてみました。 I)アンジェリーナ・ジョリーさんは なぜ、予防的な乳房切除を しなければならなかったのか? があった場合、本人だけでなく、家族にまで 生命保険などで不利益が生じないとも限 ネティックな変化をもとに戻すことができな りません。予防的乳房切除は癌ではないの くなる。 つまり、BRCA1がH2Aのユビキチ で手術代、入院費など、一般的な保険は下 ン化を介してヘテロクロマチンの再構築を BRCA1に生殖細胞系列変異があると りません。 この点を早く解決しなければい 行っているのではないかと考えています。 あ そのタイプによって乳癌になる浸透率が予 けませんが、その意味でも今回のアンジェ るいはBRCA1がないことによってヘテロク 測可能です。Truncation を起こすframe リーナ・ジョリーさんの発表は大事であっ ロマチンがほぐれやすい状況になり、 エスト shiftかnon-sense変異、 あるいはRINGド たと思います。 ところで、なぜBRCA1に変 ロゲン受容体が結合しやすくなっているの エストロゲン受容体陽性で、エストロゲン ヒトではBARD1との結合をたもったまま メインおよびBRCTドメインのミスセンス変 異があっても残りの13%は乳癌にならない かも知れません。 これに対してHNPCC変 の標的臓器です。BRCA1変異による卵巣 E2との結合を阻害するタイプのRINGフィ 異の浸透率は高く、予防的な乳房切除ある のかは興味が持たれる点で、乳癌にならな 異で大腸癌が多い理由としては、大腸は細 癌は実は卵管癌なのかも知れません。 ンガーのミスセンス変異が家族性乳癌の いは卵巣切除の適応になります。 アンジェ いBRCA1変異キャリアの遺伝子背景を調 菌にさらされた臓器なのでROSなどによる リーナ・ジョリーさんの変異の場合は87% べることは治療に繋がる可能性があるかも single strand DNA(ssDNA)のイベント の浸透率と公表されています。遺伝子変異 知れません。 がより頻回に起こり、 これにミスマッチ修復 があっても手術はせずに、頻回に検診を受 けて発症したら早期のうちに手術をすれ ばいいのでは、 と思われるかも知れません が、BRCAキャリアに対して確実に早期の 32 解除することによって引き起こすエピジェ IV)相同組換え修復、種によってこ んなに機能が違う? 原因変異として複数認められています2) 。 上述したI26Aの疑問点についてはもう III)BRCA1のE3活性は乳癌抑制 に必須なのか? またそのような変異によってサテライト領 一つの可能性があります。それはヒトでは 域のヘテロクロマチン構成が阻害されて癌 乳癌になるが、 マウスでは乳癌にならない、 す。 つまり、臓器によって頻回に生じるDNA B R C A 1 の E 3 活 性 について、長 年 Ludwig博士ら自身も2008年にI26Aマウ 性です。 そもそもBRCA1ヘテロ欠損マウス 損傷のタイプが異なり、 それに対応する遺 BRCA1遺伝子改変マウスの研究をして スのES細胞を使った論文でマイトマイシン はp53変異と掛け合わさない限り、乳癌を 伝子の変異によって癌が生じるのだと思わ いるThomas Ludwig博士の研究室から CによってDNAの恒常性が低下することを 発症しません。 ヒトとは異なるわけです。他 経路が必要なのではないか、 と考えていま II)BRCA1変異があると、 なぜ 乳癌と卵巣癌になるのか? 図1: DNA相同組換え修復機構におけるBRCA1の役割 3) の原因になることも報告されています 。 という種によって異なる表現型が出る可能 4) うちに乳癌を検出しうる検診方法が確立 BRCA1によって発症する癌の臓器特異 れます。 とてもショッキングな結果が2011年に報 supplementary dataで見せています 。 の分野は知りませんが、私の研究している されておらず、手遅れになるケースが高頻 性はいつも学会発表や講演で訊かれる質 ちなみに乳腺と卵巣はいずれもエストロ 告されました 1) 。E2との結合を阻害する 私たちはAshok Venkitaraman博士との 相同組換え修復の分野では最近、 このよう 度にあるために治療が必要となります。 タ 問で、恐らくみんなが疑問に思っている点 ゲン標的臓器と漠然と考えている人が多い BRCA1のRINGドメイン変異であるI26A 共同研究でE3死活型のBRCA1はDNA な種による違いが散見されています。中に モキシフェンなど抗ホルモン薬の内服治療 だと思いますが、結論から言うと、 その理由 のですが、実は乳腺はそうですが、卵巣は のノックインマウスには乳癌の易罹患性は クロスリンカーに対する相同組換え修復 はとても不可解なものもあります。 いくつか という選択もありますが、癌予防効果が不 はまだわかっていません。 ただし、私はエス エストロゲン産生臓器であって標的臓器で 生じず、 またそのMEF細胞はDNAクロスリ はほぼ正常に機能するが、CPT-11など、 例を挙げてみます。 確実な上に、長期内服による副作用、経費 トロゲン受容体と関連することはまず間違 はありません。 これについては私もかねてよ ンカーであるマイトマイシンCに対して野 ssDNA損傷を引き起こす薬剤に対して複 BRCA1のC末端にはBRCTと呼ばれ などの問題から手術が最も一般的な手法 いないと思っています。諸説をまとめて私 り疑問を抱いていたのですが、最近おもし 生型と同等の相同組換え修復能をもつ、 製後修復における相同組換えに破綻を生 るモチーフが有り、リン酸 化 蛋白質との 5) となっています。手術の時期が遅いと予防 が一番可能性が高いと思っているのは1) ろいことがわかりました。卵巣癌はほとんど という論文です。すなわち、BRCA1のE3 じることを見出しています 。 つまり、E3活 結合を介して重要な役割を果たします。 効果は100%ではなく、転移として発症す エストロゲン受容体が転写を起こすとき が進行癌で見つかり、 この時点では卵管采 活性は役立たずなのか、 と心配するところ 性はBRCA1そのものよりは役割は少ない Abraxas, BACH1およびCtIPの3つの る症例があり、乳房切除は25歳、卵巣切除 に生じるTopoIIβによるDNA二本鎖切断 が巻き込まれた状態になっています。 ところ ですが、 このマウスは精子形成不全を起こ が、 やはり損傷のタイプによっては必要なこ 結 合 蛋 白 質 が 知られていて、それぞれ は40歳がおおよその目安となっています。 をBRCA1変異細胞では治すことができな が、海外の予防的な卵巣切除を行った患 すようで、 ひとまず安心しました。 しかし、 そ とがわかります。 BRCA1-A, -B, -C複合体と呼ばれ、DNA 残念ながら日本では法整備が遅れていて、 い。 2)BRCA1が機能しないと、 エストロゲ 者さんを詳細に調べた研究で卵管采に微 うはいっても乳癌にならず、相同組換え修 損 傷 修 復に必 須の複 合 体と考えられて 遺伝子差別の問題があります。遺伝子異常 ン受容体がLSD1などとともにsilencingを 小な癌が見つかってきています。卵管采は 復に影響を与えないのも腑に落ちません。 いました。特にBRCA1-CtIPは相同組換 33 え修復においてDNA二本鎖切断端の5’ スではC645はもともとR、V695はもとも end resectionによるssDNA形成(図1) とIです。 ということは、 マウスではBRCA1に必須なのはなかば常識でした。 ところが、 BARD1の早期の損傷局所へのリクルート です。BRCA1との結合を阻害するCtIPの は起こらないことになってしまいます。前述 私たちは2004年にBRCA1によって触 S326A変異をノックインしたマウスの細 したBRCA1-CtIPの結合がマウスでは必 媒されるユビキチン鎖がK6鎖であることを 胞はほぼ正常な相同組換え修復能を持 要ないことを考えあわせると、 このことは納 報告しました14)。同時期に他の2つの研究 ち、癌も発症しないことが今年になって報 得できることなのかも知れませんが、 今のと 室からやはりBRCA1によるK6鎖の論文 告されました 。実はこれには布石があっ ころ半信半疑、 といったところでしょうか。 が報告され、現在ではBRCA1はK6鎖を て、2010年にDT40細胞のBRCA1結合 最後の事例はHERC2です。私たちは 触媒する代表的なE3となっています。 しか 阻害変異であるCtIP S332Aノックイン細 HERC2がBARD1から解離したBRCA1 し、BRCA1は本当にK6鎖特異的なE3な 胞は野生型と同等の相同組換え能を有す を分解するE3であることを報告していま のかと訊かれると、答えはノーです。私たち ることが既に報告されていました7)。 そうす この論文はNCBをはじめ、 トップ すが 10) 、 がBRCA1のE3活性を報告した初期の論 ると、DT40細胞にヒトCtIP S327Aをノッ ジャーナルでいい線までは行っても結局蹴 文では、当時比較的ポピュラーだったいく クインすると相同組換えが欠失するという られて最終的にCancer Resになった論文 つかのE2との相互作用を解析した結果、 2009年のNatureの論文 はいったい何 でした。実はちょうど同じ時期にオランダの UbcH5cとの相互作用を認めました。 この だったんだろう、 という疑問が生じます。 ヒ トップラボからNCBにHERC2の論文が投 E2との組合せではK6鎖が生じます。 しか トCtIPだったからそうなったのか、今のとこ 稿されていて、HERC2が相同組換え修復 し、 その後、ほぼ全てのE2との組合せを解 ろ全くわかりません。 経路においてRNF8とUbc13のassembly 析した結果、BRCA1-Ube2wではモノユ 2つめの事例はBRCA1とRING二量体 factorとして働き、下流の相同組換え因 ビキチンが生じ、 このモノユビキチンを認識 を形成するBARD1が、C末端のBRCTド 子の集積に必須であることが報告されま してBRCA1-Ubc13/Mms2ではK63鎖、 メインを介してpoly(ADP-ribose)に結合 した11)。驚くべきことに、HERC2の欠損を BRCA1-Ube2KではK48鎖が触媒される するという今年Cancer Cellに報告され RNF8-Ubc13フュージョン蛋白質が代償 ことをRachel Klevit博士らが報告してい た論文です 。DNA二本鎖切断応答にお してしまうことが示されています。E3とE2 ます15) 。彼女曰く、E3とE2、そして時には けるBRCA1の機能は図に示したように、 をフュージョンさせるとユビキチン鎖を触 E3とE2と基質の位置関係によって、 どのユ ① 上述したssDNA形成、② BRCA1- 媒する活性が出るということです。 当然私た ビキチン鎖が生じるかが左右されるようで Abraxas-RAP80複合体によるssDNAの ちも損傷部位における機能を調べようとし す。 ただ、私の知る限りではUbc13/Mms2 長さの調整、③ BRCA1-PALB2-BRCA2 ていたのですが、残念ながらHERC2が損 はK63鎖に特化したE2であるのではない を介したRAD51のリクルート、④ ATR- 傷局所に集積することさえ示せませんでし かと思われます。in vivoでは果たしてどう Claspinを介したChk1活性化、の大き た。 ところが、です。昨年になってこの論文 なのか、 この点は私の研究室で解明しなく く4つに分けることができます。 この論文 の筆頭著者が共著者となっている新たな てはならない課題であると考えています。 では、この4つの複合体の中で、DNA損 論文で、DT40細胞ではHERC2はそのよう 傷 後 数 秒から数 分に起こる最も早 期の な機能を持っていないことが報告されまし BRCA1の損傷局所への誘導(おそらく①) た12)。DT40とヒトではHERC2の機能は全 がPARP1/2によって生じるpoly(ADP- く違うということですが、相同組換え修復 ribose)とBARD1-BRCTの結合によって にはいろいろ複雑な要素が有り、困惑して 結論から言うと、 なぜ続けているのかは 生じることを報告しています。BARD1の います。今後の研究はTALENとCRISPRを はっきりかわかりません。 きっかけは自分が BRCTが何と結合するかは以前より謎だっ 使ってヒト細胞を中心に解析をしようと考 乳腺外科医であったこと、ROC1を単離し たので、非常に重要な論文です。 さらに重 えています。余談ですが、初めてのRINGフィ てRINGフィンガーがE3であることに気が 要なことに、家族性乳癌家系で同定され ンガーとE2の結晶構造はCblとUbcH7 ついたことでした。ROC1は小さすぎて、 す 6) 8) 9) 34 V)BRCA1によって触媒されるユ ビキチン鎖はK6鎖? 13) がでしょうか? 文 献 1) Shakya, R., Reid, L.J., Reczek, C.R., Cole, F., Egli, D., Lin, C.S., deRooij, D.G., Hirsch, S., Ravi, K., Hicks, J.B., Szabolcs, M., Jasin, M., Baer, R., and Ludwig, T. (2011) BRCA1 tumor suppression depends on BRCT phosphoprotein binding, but not its E3 ligase activity. Science 334, 525-528. 2) Morris, J.R., Pangon, L., Boutell, C., Katagiri, T., Keep, N.H., and Solomon, E. (2006) Genetic analysis of BRCA1 ubiquitin ligase activity and its relationship to breast cancer susceptibility. Hum. Mol. Genet. 15, 599-606. 3) Zhu, Q., Pao, G.M., Huynh, A.M., Suh, H., Tonnu, N., Nederlof, P.M., Gage, F.H., and Verma, I.M. (2011) BRCA1 tumour suppression occurs via heterochromatinmediated silencing. Nature 477, 179-184. 4) Reid, L.J., Shakya, R., Modi, A.P., Lokshin, M., Cheng, J.T., Jasin, M., Baer, R., and Ludwig, T. (2008) BRCA1 tumor suppression depends on BRCT phosphoprotein binding, but not its E3 ligase activity. Proc. Natl. Acad. Sci. U S modifications from double-strand breaks to facilitate subsequent break repair. PLoS Genet. 6, e1000828. 8) Yun, M.H., and Hiom, K. (2009) CtIP-BRCA1 modulates the choice of DNA double-strandbreak repair pathway throughout the cell cycle. Nature 459, 460-463. 9) Li, M., and Yu, X. (2013) Function of BRCA1 in the DNA Damage Response Is Mediated by ADP-Ribosylation. Cancer Cell 23, 693704. 10) Wu, W., Sato, K., Koike, A., Nishikawa, H., Koizumi, H., Venkitaraman, A.R., and Ohta, T. (2010) HERC2 is an E3 ligase that targets BRCA1 for degradation. Cancer Res. 70, 6384-6392. 11) Bekker-Jensen, S., Rendtlew, Danielsen, J., Fugger, K., Gromova, I., Nerstedt, A., Lukas, C., Bartek, J., Lukas, J., and Mailand, N. (2010) HERC2 coordinates ubiquitin-dependent assembly of DNA repair factors on damaged chromosomes. Nat. Cell Boil. 12, 80-86. and Lisby, M. (2012) RNF8 and RNF168 but not HERC2 are required for DNA damageinduced ubiquitylation in chicken DT40 cells. DNA Repair (Amst). 11, 892-905. 13) Zheng, N., Wang, P., Jeffrey, P.D., and Pavletich, N.P. (2000) Structure of a c-CblUbcH7 complex: RING domain function in ubiquitin-protein ligases. Cell 102, 533-539. 14) Nishikawa, H., Ooka, S., Sato, K., Arima, K., Okamoto, J., Klevit, R.E., Fukuda, M., and Ohta, T. (2004) Mass spectrometric and mutational analyses reveal Lys-6-linked polyubiquitin chains catalyzed by BRCA1BARD1 ubiquitin ligase. J. Biol. Chem. 279, 3916-3924. 15) Christensen, D.E., Brzovic, P.S., and Klevit, R.E. (2007) E2-BRCA1 RING interactions dictate synthesis of mono- or specific polyubiquitin chain linkages. Nat. Struct. Mol. Biol. 14, 941-948. 12) Oestergaard, V.H., Pentzold, C., Pedersen, R.T., Iosif, S., Alpi, A., Bekker-Jensen, S., Mailand, N., A. 105, 20876-20881. 5) Sato, K., Sundaramoorthy, E., Rajendra, E., Hattori, H., Jeyasekharan, A.D., Ayoub, N., Schiess, R., Aebersold, R., Nishikawa, H., Sedukhina, A.S., Wada, H., Ohta, T., and Venkitaraman, A.R. (2012) A DNA-Damage Selective Role for BRCA1 E3 Ligase in Claspin Ubiquitylation, CHK1 Activation, and DNA Repair. Curr. Biol. 22, 1659-1666. 6) Reczek, C.R., Szabolcs, M., Stark, J.M., Ludwig, T., and Baer, R. (2013) The interaction between CtIP and BRCA1 is not essential for resection-mediated DNA repair or tumor suppression. J. Cell Biol. 201, 693707. 7) Nakamura, K., Kogame, T., Oshiumi, H., Shinohara, A., Sumitomo, Y., Agama, K., Pommier, Y., Tsutsui, K.M., Tsutsui, K., Hartsuiker, E., Ogi, T., Takeda, S., and Taniguchi, Y. (2010) Collaborative action of Brca1 and CtIP in elimination of covalent 歓談される太田先生(右端) VI) なぜ私はBRCA1の研究を しているのか? るBARD1の変異(ただし、浸透率などは で示されましたが 、 この2つの蛋白質の ぐに研究テーマがなくなってしまうのでは わかっていない)であるC645Rあるいは 結合は強すぎるために実際には活性のな ないかと思いBRCA1にしましたが、案の V695Lが、完全にpoly(ADP-ribose)との い複合体となります。E3とE2の結合はあ 上、ROC1自体を題材にした論文はすぐに 結合を阻害し、早期のBRCA1-BARD1の まり強くないのが一般的ですが、RNF8- 頭打ちになっているようです。BRCA1研究 損傷局所への誘導が阻害されることが示 Ubc13の場合はフュージョンしていても分 を始めて13年が経ちました。時々ふと、 「他 されています。 ところが、 です。論文中には何 子内にフレキシブルに動く余地があれば活 のテーマで研究をするのもおもしろいので も触れられていませんが、調べてみるとマウ 性があるのかもしれません。 は」、 と思うこともありますが、皆さんはいか 35 REVIEW & ESSAY NCO-) に置換すると、 cIAP1減少活性は著 化合物を使ってユビキチン化を制御する 称は、橋本研究室の若い大学院生さん達 試みている。病態と関連する酵素活性がな を見ながら、MeBSのメチル基の部分を別 が考えだしてくれたものである。SNIPERと いため阻害剤を開発できないが、 そのタン のタンパク質と結合するリガンドに置き換 いう言葉のイメージが、標的タンパク質を パク質を減少させることにより病態の改善 えたらどうだろうと考えていたわけである。 狙って分解するという化合物の活性とよく を期待できるようなタンパク質は、SNIPER おそらく図2のようなメカニズムで標的と 合っていて、 とても気に入っている。 の標的として面白いと思っている。 しかし ン化し、 プロテアソームで分解できるので はないかと想像していたのだが、いかんせ ん自分では化合物の合成はできない。 また 2 SNIPERを合成するためには標的タンパク III) エストロゲン受容体を標的とす るSNIPER(ER)の開発 009年3月、私は大学の研究室の後片づけに毎日明け暮れていた。 4月から厚生労働省の国立医薬品食品衛 化合物の合成をどこかにお願いしたとして SNIPERは、cIAP1に結合するリガンド 生研究所(衛研) に異動する事になっていたからである。 自由な大学とは違う国立の研究所で、今までと同じよ も、その活性評価をどうするか。当時は研 (ベスタチン) と標的タンパク質に結合する 究室のマンパワーも不足していて、なかな リガンド (X) をリンカーでつないだ構造を か新しい事にチャレンジする勇気が持てな しており、 リガンド (X) を置換することによ かった。 り様々なタンパク質を標的とする事ができ うに研究が続けられるかどうか一抹の不安はあったが、 「あれこれ考えても仕方がない、行けば何とかなるだろう」、 くらいの気持ちでいた。 どこに行っても、 アイデアがあれば何かしら面白い研究はできるはずだとも思っていた。 片づけが一段落したところで、有機化学を専門とする橋本祐一教授のところに異動の挨拶と、共同研究のお願い に行った。 ここ数年来、小分子化合物を使って標的タンパク質をユビキチン化するアイデアを暖めていたが、 マンパ ワー等の問題もあってなかなか一歩を踏み出せずにいた。異動を機に、新しい化合物の合成をお願いしてみようと 思い立ったのである。私たちのSNIPER(Specific and Nongenetic IAP-dependent Protein ERaser) の研究 はこうして始まった。 2) 質を標的とするSNIPER化合物の開発を しく低下した。 これらの結果を念頭に図1 するタンパク質をcIAP1によってユビキチ 内藤 幹彦(国立医薬品食品衛生研究所) 質と結合するリガンドが必要であり、多くの タンパク質ではそのリガンドが見つかって いない。 そのため、現状ではリガンド探索が SNIPER開発研究の隘路となっている。 V) 研究用ツールとしての SNIPER類縁化合物 る。そこでタモキシフェンを利用して、エス 細胞内で任意の標的タンパク質のユビ トロゲン受容体を標的とするSNIPER(ER) キチン化を誘導できる化合物があれば、 ユ を開発することを考えた。初発乳がんの ビキチン修飾の機能を細胞レベルで解析 多くは女 性ホルモン依 存 性の増 殖を示 する有用な試薬となる可能性がある。 そこ し、エストロゲン受容体のシグナルを遮断 でNi-NTAをリガンドとしてHisタグタンパ 冒頭に書いたように、私にとって衛研へ すると乳がん細胞の増殖は抑制される。 ク質をユビキチン化するSNIPER(His)の開 の異動が転機になった。異動直前に橋本 SNIPER(ER)の分子デザインと合成は、衛 発を試みている。細胞に任意のHisタグタ II) SNIPERによる CRABP2タンパク質の プロテインノックダウン I) メチルベスタチンによるcIAP1 自己ユビキチン化の活性化 ンパク質の一つcIAP1が著しく減少すると 誘導する事を明らかにした (図1)。 教授にこのアイデアを話すと大変興味を 研有機化学部の出水さんらが協力してくれ ンパク質を発現させた後に、SNIPER(His) いうのである。ベスタチン自体にはcIAP1 MeBSの構造活性相関を解析した結果、 持ってくれ、すぐに助教の石川さんと大学 た。 できあがったSNIPER(ER)は、cIAP1依 処理によりユビキチン化を誘導し、細胞内 減少活性はほとんど認められなかったの MeBSのメチルエステル (CH3-OCO-) を、 院生の伊藤さんを呼んで、合成してみよう 存的にエストロゲン受容体の分解を引き起 でHisタグタンパク質の挙動を解析しようと 話は5年ほど前にさかのぼる。東大分生 で、 この現象はベスタチンの抗がん作用と ベンジルエステル (C6H5-CH2-OCO-) や という話になった。 こうして最初にできてき こし、受容体からのシグナルを遮断した。興 いう計画である。今まではSNIPER処理に 研でアポトーシス阻害タンパク質の研究を はあまり関係なさそうであったが、MeBS オクチルエステル(CH3-(CH2)7-OCO-) た活性化合物が、 標的リガンドとしてATRA 味深い事に、SNIPER(ER)で処理した乳が よって細胞質タンパク質をcIAP1でユビキ していた私の研究室に、研究生として日本 が様々な細胞でアポトーシスを増強する など比較的大きな置換基に換えてもこの (all-trans retinoic acid)を利用した ん細胞ではエストロゲン受容体の分解後 チン化する事により、 プロテアソームでの分 化薬から関根さんがやってきた。関根さん ことをうまく説明できると思われた。その 活性は保持されているが、ベスタチン骨 SNIPER-2であった。SNIPER-2は、ATRA にROSの産生が増加し、乳がん細胞は速 解を観察してきたが、細胞膜タンパク質や はApollonの研究でも重要な貢献をしてく 後、会社に戻った関根さんと、新しく研究 格を修飾するとcIAP1との相互作用が失 結合タンパク質であるCRABP2(Cellular やかにネクローシス様の細胞死を起こした ミトコンドリア表面のタンパク質をSNIPER Retinoic Acid Binding Protein 2) と 6, 7) で強制的にユビキチン化したらいったい何 1) れたが 、会社に戻る日も近づいたある日、 室に来た大学院生の協力も得てcIAP1 われ、cIAP1減少活性もなくなることがわ 3) 。 エストロゲン受容体のプロテインノッ 面白い実験結果をもってきた。 白血病治療 減少のメカニズムを詳しく解析し、MeBS かった。従ってMeBSはそのベスタチン骨 cIAP1を減少させる活性を示した 。 そして クダウンを起こすSNIPER(ER)が、新しい が起こるだろうか? 薬として日本化薬から販売しているベスタ はcIAP1のBIR3ドメインと相互作用し、 格でBIR3ドメインと相互作用していると考 SNIPER-2のエステル結合をアミド結合に 乳がん治療薬のリード化合物になる事を SNIPERは、標的タンパク質をcIAP1に チンのメチルエステル誘導体(MeBS) をが cIAP1のRING依存的な自己ユビキチン化 えられる。また興味深い事に、メチルエス 置換したSNIPER-4では、cIAP1の減少は 期待している。 よってユビキチン化するようにデザインさ ん細胞に処理すると、 アポトーシス阻害タ を活性化してプロテアソームによる分解を テル(CH3-OCO-) をメチルアミド (CH3- ほとんど見られず、CRABP2特異的な減少 4) が見られるようになった 。異動先の衛研 cIAP1によるCRABP2のユビキチン化が 近年、選択的キナーゼ阻害剤など、病原 任意のユビキチンリガーゼで標的タンパク 誘導され、標的タンパク質がプロテアソー 性タンパク質の活性を阻害する分子標的治 質をユビキチン化する事ができれば、 ユビ ムによって分解される事がわかった 。 この 療薬の開発が盛んに行われている。病原性 キチン鎖の違いによるタンパク質の挙動変 ように、CRABP2は本来cIAP1によってユ タンパク質を分解する事ができれば阻害剤 化を解析する事ができる。そこで2種類の 5) 図2: SNIPERによる標的タンパク質のユビキチン化と分解のメカニズム チン鎖は主にK11、K48、K63を介したポ リユビキチン鎖であると予想される (この点 析を行い、想定したとおりSNIPERによって 図1: MeBSによるcIAP1の自己ユビキチン化と分解 れた化合物であるため、形成されるユビキ IV) プロテインノックダウン法を基 にした創薬研究 では、研究室の奥平さんがメカニズムの解 36 た。 ちなみに、SNIPERというcatchyな名 については今後確認する必要がある)。 もし ビキチン化されるタンパク質ではないが、 と同様な治療効果を期待できるわけだが、 タグと化合物でヘテロ二量体形成を誘導 SNIPERによってCRABP2とcIAP1を細胞 これまでタンパク質を選択的に分解する研 するシステムを利用して、任意のユビキチン 内でクロスリンクする事により、CRABP2 究はあまり行われていない。現在私たちは リガーゼと任意の標的タンパク質を細胞内 のユビキチン化を誘導できる事がわかっ 製薬会社との共同研究で、様々なタンパク で強制的に結合させることにより、 ユビキチ 37 TECHNICAL REPORTS S., Naito, M., and Hashimoto, Y. (2011) Development of target protein-selective degradation inducer for protein knockdown. Bioorg. Med. Chem. 19, 3229-3241. 5) Okuhira, K., Ohoka, N., Sai, K., NishimakiMogami, T., Itoh, Y., Ishikawa, M., Hashimoto, Y., and Naito, M. (2011) Specific degradation of CRABP-II via cIAP1-mediated ubiquitylation induced by hybrid molecules that crosslink cIAP1 and the target protein. FEBS Lett. 585, 1147-1152. 図3: ヘテロ二重量体形成を利用した人工的ユビキチン修飾システムの模式図 ン修飾を誘導する事ができないか検討して とにより対応するユビキチンリガーゼをリク いる (図3)。 ルートできる事を示唆している。 これらの実験系は非常に人為的な実験 系であり、ユビキチン修飾されるリジン残 おわりに 基、 ユビキチン鎖の種類等は、生理的条件 でその基質タンパク質に起こるユビキチン ニュースレターの原稿ということで、気楽 鎖とは異なる事に注意が必要である。 しか に読んで頂けるよう心がけながら私たちの し、 ユビキチン修飾がもたらす直接的な影 研究の一端を紹介させて頂いた。本文中に 響を細胞内で観察できるユニークな実験 名前をあげた方以外にも多くの方々のご協 系になると考えている。 力を頂きながら研究を進めており、 この場 を借りて御礼申し上げたい。 VI) Competitorの存在 私たちのSNIPER関連化合物の研究は まだ始まったばかりであり、研究領域の発 サリドマイド、 オーキシン、IAPアンタゴニ 展にどれほど貢献できるか定かではない。 スト等ユビキチン修飾系を制御する化合 しかし、私たちの化合物が領域の皆様の研 物の例は他にもいくつか報告されている。 究に少しでもお役に立つことがあれば、公 また私たちと同じように、 デザインした化合 募研究に採択して頂いた甲斐があったとい 物を使ってユビキチン化を制御する研究を うものである。皆様からの御指導、御助言 行っているグループも少数ながらある。例 等を賜りますようお願い申しあげます。 えばYale大学のグループ等が開発している PROTACは、SNIPERと同様にユビキチン 文 献 リガーゼと基質タンパク質をクロスリンク 1) Hao, Y., Sekine, K., Kawabata, A., Nakamura, H., Ishioka, T., Ohata, H., Katayama, R., Hashimoto, C., Zhang, X., Noda, T., Tsuruo, T., and Naito, M. (2004) Apollon ubiquitinates SMAC and caspase-9, and has an essential cytoprotection function. Nat. Cell Biol. 6, 849-860. する事によりユビキチン化を誘導する。彼 らはF-boxタンパクに結合するリン酸化ペ プチド、MDM2に結合するNutlin等を利用 8, 9) してPROTACを開発している 。一方、化 合物に疎水性タグをつけて結合タンパク質 の表面を疎水性にする、 あるいは化合物と の相互作用により結合タンパク質の表面に degronを露出させる、等の方法で標的タ 質を強制的にクロスリンクしなくても、化合 物でタンパク質の表面状態を変化させるこ 4) Itoh, Y., Ishikawa, M., Kitaguchi, R., Sato, 10-12) れている 。 これらの知見は、化合物を 使ってユビキチンリガーゼと標的タンパク 38 7) Okuhira, K., Demizu, Y., Hattori, T., Ohoka, N., Shibata, N., Nishimaki-Mogami, T., Okuda, H., Kurihara, M., and Naito, M. (2013) Development of hybrid small molecules that induce degradation of estrogen receptoralpha and necrotic cell death in breast cancer cells. Cancer Sci. in press 8) Sakamoto, K. M., Kim, K. B., Kumagai, A., Mercurio, F., Crews, C. M., and Deshaies, R. J. (2001) Protacs: chimeric molecules that target proteins to the Skp1-Cullin-F box complex for ubiquitination and degradation. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 98, 8554-8559. 9) Schneekloth, J. S., Jr., Fonseca, F. N., Koldobskiy, M., Mandal, A., Deshaies, R., Sakamoto, K., and Crews, C. M. (2004) Chemical genetic control of protein levels: selective in vivo targeted degradation. J. Am. Chem. Soc. 126, 3748-3754. 10) Bonger, K. M., Chen, L. C., Liu, C. W., and Wandless, T. J. (2011) Small-molecule displacement of a cryptic degron causes conditional protein degradation. Nat. Chem. Biol. 7, 531-537. 11) Neklesa, T. K., Tae, H. S., Schneekloth, A. R., Stulberg, M. J., Corson, T. W., Sundberg, T. B., Raina, K., Holley, S. A., and Crews, C. M. (2011) Small-molecule hydrophobic tagginginduced degradation of HaloTag fusion proteins. Nat. Chem. Biol. 7, 538-543. 12) Long, M. J., Gollapalli, D. R., and Hedstrom, L. (2012) Inhibitor mediated protein degradation. Chem. Biol. 19, 629-637. 佐伯 泰(東京都医学総合研究所) ユ ビキチンによるタンパク質の翻訳後修飾は、 プロテアソームと協調したタンパク質の死のシグナルとして研究 が進展してきたが、近年、 シグナル伝達やDNA修復、 タンパク質輸送など多彩な生命現象をも制御すること が明確となってきた1, 2)。 ユビキチン修飾はユビキチンモノマーが付加したモノユビキチン化、 ユビキチンポリマーが 付加したポリユビキチン化、 さらに枝分かれした分岐鎖が付加したものなど構造多様性をもち、 それらが時間空間 特異的にユビキチン結合タンパク質によって識別されることで多彩な機能を発揮すると考えられている3)。私たちの グループではユビキチンシグナル発動のメカニズムを明らかにすべく、 ユビキチン修飾の構造を、 ユビキチン鎖の 「種 類」、 「長さ」、 「複雑さ」 の3つの要素に分け、 内在性レベルで定量的に解析する手法を開発している。今回は、各ポリ ユビキチン鎖の種類を識別し定量する手法について紹介したい。 I) ポリユビキチン鎖を見分ける方法 ユビキチン変異体を用いた解析法で、 ユビ より、K48鎖がプロテアソームの分解シグ キチン研究者なら一度は試したことがある ナルとして細胞増殖に必須の役割を果た ユビキチンは7つのリジン残基をもち、 さ だろう。 ポリユビキチン鎖形成に用いられる すこと、K63鎖がDNA損傷に関与すること らにN末端のメチオニンがポリユビキチン 特定のリジンに変異(多くの場合Argに置 が明確に示された6, 7)。 しかしながら、変異 鎖の形成に使われるため、合計8種類の異 換) を導入したユビキチンを用いると、 ポリ ユビキチンの使用はアーティファクトを生じ なる構造のポリユビキチン鎖(K6鎖、K11 ユビキチン鎖の伸長反応が阻害される。 こ る可能性が指摘されており、現在では質量 鎖、K27鎖、K29鎖、K33鎖、K48鎖、K63 の方法はvivo でもvitro でも利用可能であ 分析計によるデータを要求されることが多 鎖及びM1鎖) が存在する。 ポリユビキチン るが、特に酵母などのユビキチン遺伝子欠 くなっている。二つ目の手法として、鎖特異 鎖のタイプを決定する方法として、現在3種 損株中で用いるのが最も効果的である。実 的ポリユビキチン抗体が開発されている8, 類の方法が存在する4, 5)(図1)。一つ目は 際、ユビキチン変異体による相補テストに 9) 。現在、K11鎖、K48 鎖、K63 鎖、M1鎖 のモノクローナル抗体が入手可能であり、 ウエスタンブロッティング、免疫沈降、免疫 染色などの幅広いアプリケーションに適用 できる。特にK48鎖特異的抗体は、抗ポリ ユビキチン鎖抗体FK2(こちらは全ての鎖 と反応する) と同等の力価を持つため、非 2) Sekine, K., Takubo, K., Kikuchi, R., Nishimoto, M., Kitagawa, M., Abe, F., Nishikawa, K., Tsuruo, T., and Naito, M. (2008) Small molecules destabilize cIAP1 by activating auto-ubiquitylation. J. Biol. Chem. 283, 89618968. 3) Itoh, Y., Ishikawa, M., Naito, M., and Hashimoto, Y. (2010) Protein knockdown using methyl bestatin-ligand hybrid molecules: design and synthesis of inducers of ubiquitination-mediated degradation of cellular retinoic acid-binding proteins. J. Am. Chem. Soc. 132, 5820-5826. ンパク質を不安定化する化合物も報告さ 6) Demizu, Y., Okuhira, K., Motoi, H., Ohno, A., Shoda, T., Fukuhara, K., Okuda, H., Naito, M., and Kurihara, M. (2012) Design and synthesis of estrogen receptor degradation inducer based on a protein knockdown strategy. Bioorg. Med. Chem. Lett. 22, 1793-1796. ポリユビキチン鎖を量る 常に有効なツールとなっている。 しかしなが ら、残りの4種類の鎖特異的抗体が未だ存 在せず、ポリユビキチン鎖の種類を確定す ることは難しい。3つ目の手法として質量分 析計による鎖特異的ペプチドの検出・定量 が開発されている。 この方法は時間を要す るもの、質量分析計および解析ソフトウェ アの高性能化により数年前と比較しても非 図1: ポリユビキチン鎖タイプの決定法 常に高感度かつ簡便な手法となっている。 39 る。岩井先生から質量分析計によるユビキ チン鎖の定量解析を日本でも可能にした いとお声がかかり、本新学術領域研究の 発足にあたり約1年間を質量分析計の機 種選定に費やした。 タイミングの良いこと にThermo社からショットガン解析および 定量解析の両方が可能なQ Exactiveとい う機種が新しく発表された。Q Exactiveは 二つの四重極とOrbitrapを備えた新しい 構造のハイブリッド型質量分析計であり、 四重極フィルターによる高いイオン選択 性と高分解能のOribitrap検出器を最大 限活かした新しいMS/MS定量法(PRM: Parallel Reaction Monitoring) が開発さ 図2:トリプシン消化によるポリユビキチン鎖特異的ペプチドの生成 れている11, 12)。 QQQ型質量分析計のSRM (Single Reaction Monitoring)法や 化してきた。 ひとつは網羅解析(ショットガ MRM(Multiple Reaction Monitoring) II) 質量分析計によるポリユビキチ ン鎖識別法 ン解析)に特化した高分解能型質量分析 法がフラグメントイオンを1種類ずつモニ 計であり、 もう一つは定量解析(ターゲット ターするのに対し13)、PRM法ではMS/MS ユビキチンは7つのリジンと4つのアルギ プロテオミクス解析) に特化したトリプル4 測定で検出される複数のフラグメントイオ ニン残基をもつため、 トリプシンで消化す 重極型の質量分析計である。 どちらも、何 ンを同時にモニターする。そのため測定メ ると12種類のペプチド断片が得られる。 千何万種類のペプチド混合物を扱うが、前 ソッドの作製が容易であり、 データを取得 一方、ポリユビキチン鎖をトリプシン消化 者のショットガン解析では液体クロマトグ した後、S/N比の高いフラグメントで再計 すると、例えばK48リンク鎖では、K48側 ラフィーで分離され溶出されてくるペプチ 算が可能のため、 サンプルの複雑さによっ 昨年11月に待望のQ Exactiveが東京 PRM法によるユビキチン鎖定量の操作 濃度の過酸化水素を積極的に添加し酸 鎖にDistalユビキチンのC末端が共有結合 ドを片っ端からMS/MS測定し同定するの てメソッドを変更する必要がない。 さらにQ 都医学総合研究所に設置され、私も興奮 を簡単に紹介する(図4)。まず細胞粗抽 化型に変換させる。 この最終サンプルを90 しているためトリプシンはK48残基を切断 に対し、後者の定量プロテオミクスでは特 Exactiveは高分解能検出器を用いている 気味でまるまる1ヶ月間本機を使い倒し 出液や試験管内で調製したポリユビキチ 分程度のグラジエントでナノLCにより分 できず(miscleavage)、Distalユビキチン 定の既知のペプチドを待ち受けて検出する ため複雑な生物試料から超微量のペプチ てみた (図3)。Q Exactiveはショットガン ン化タンパク質をSDS電気泳動で分離す 離し、 ターゲットMS/MSモードで質量分 のC末端のペプチド断片ジグリシンがK48 ことにより特定のタンパク質やペプチドを ドを確実に定量できる点が革新的である 解析においても非常に気持ちよく働いてく る。興味のあるゲル領域を切り出し、 トリプ 析計により測定する。 最終的に確立したUb 超高感度に検出定量することが可能であ 11, 12) れて (旧型のTOF/TOFやQ-TOFの50倍 シンによりゲル内消化する。生じたペプチ (Ubiquitin)-PRM法では、細胞抽出液中 peptide) が産生する(図2)。 このようなペプ の同定量!)、ユビキチン鎖の定量解析も ドを回収し濃縮後、内部標準として安定 の各ポリユビキチン鎖特異的ペプチドを高 チドマッピングによるポリユビキチン鎖の検 Thermo社のサポートもあり比較的簡単に 同位体標識したペプチド (AQUAペプチ 感度(100アトモル~)に再現性良く定量 出は1989年にすでに開発されており、N末 確立することができた (実際には親水性の ド: Absolute QUAntification peptide) することが可能であった(図4)。 これは従 端分解則 (N-end rule) の基質からK48鎖 K29鎖ペプチドがピークにならない、K63 を混合する。ユビキチンにはメチオニンが 来報告されていた定量専用機によるMRM が検出されたことから、K48鎖がプロテア 鎖ペプチドがバイアルに吸着するなど問題 存在し、M1鎖は酸化型と非酸化型の2種 の結果を完全に凌駕するものであった14)。 ソーム分解の主要なシグナルであることが が多発した) 。 類に分かれてしまうため、定量目的では低 に付加した特異的なペプチド (Signature 。 図4: PRM法によるポリユビキチン鎖の絶対定量 10) 提唱された 。 8種類のポリユビキチン鎖は トリプシン消化により異なる鎖特異的ペプ チドを生じるので、液体クロマトグラフィー による分離と質量分析計を用いた高感度 検出により簡便にユビキチン鎖の種類を決 定することが可能である。 III) 質量分析計を用いたポリユビキ チン鎖の絶対定量 質量分析計はこれまで2つの方向性に進 40 東京都医学総合研究所蛋白質解析室,2012年 図3: Q Exactive 図5: Ufd4はK29鎖の生成に関与する 41 MEETING REPORT IV) K29鎖問題 ・ポリユビキチン鎖の鎖長と種類の関係 細胞内のポリユビキチン鎖のうち主要な ・ユビキチン結合タンパク質の認識するユ ものはK48鎖、K63鎖、K11鎖の3種類で あり、残りの非典型的なポリユビキチン鎖 は全ユビキチン鎖の1%以下として、細胞 抽出液を用いた解析では無視されること 15) が多い 。 しかし、 これは大きな間違いで、 私達は酵母、 ヒト培養細胞、 マウス肝臓で K29鎖がK48鎖、K63鎖に次いで多いこと を見出している。少々マニアックな話ではあ るが、K29鎖は親水性ペプチドであり、 ペプ チドの脱塩処理に用いるC18チップやナノ LCのトラップカラムに吸着しないため見逃 されてきたと考えられる。私たちは、 ゲル内 消化ペプチドをトラップカラムなしで直接 分析カラムに添加することでこの問題を克 (佐伯、土屋) ビキチン鎖の種類(佐伯、吉原) ・細胞内ユビキチン化基質の網羅同定(総 括班・田中先生) ・プロテアソームおよびオートファジー欠損 マウスで蓄積するポリユビキチン鎖定量 (総括班・田中先生) ・LUBACによる直鎖形成メカニズムの解析 (岩井先生) ・ユビキチンアセチル化修飾の定量解析 (大竹先生) ・DNA損傷により変動するユビキチン鎖の 定量解析(太田先生) ・プロテアソーム形成異常変異体の定量解 析(水島先生) 14) 服している 。 ハーバード大学の某先生に、 ・mRNA品質管理とユビキチン修飾系(稲 「みんな気がついていたけどどうしようも ないので無視していた」 と言われ少々愕然 としたことを覚えている。 さて、K 2 9 鎖 は 変 異 ユビキチンを用 いた解析よりUFD(Ubiquitin Fusion 田先生) ・細胞創傷治癒機構におけるユビキチンの 役割(河野先生) ・ ユビキチンリガーゼParkinの活性化メカ ニズムの定量解析(松田先生) Degradation)経路においてHECT型E3 7) Spence, J., Sadis, S., Haas, A. L., and Finley, D. (1995) A ubiquitin mutant with specific defects in DNA repair and multiubiquitination. Mol. Cell. Biol. 15, 1265-1273. 8) Newton, K. et al. (2012) Using linkage-specific monoclonal antibodies to analyze cellular ubiquitylation. Methods Miol. Biol. 832, 185196, doi:10.1007/978-1-61779-474-2_13. 9) Sasaki, Y. et al. (2013) Defective immune responses in mice lacking LUBAC-mediated linear ubiquitination in B cells. EMBO J. 32, 2463-2476, doi:10.1038/emboj.2013.184. 10) Chau, V. et al. (1989) A multiubiquitin chain is confined to specific lysine in a targeted short-lived protein. Science 243, 1576-1583. 11) Doerr, A. (2012) Targeting with PRM. Nature methods 9, 950. MEETING REPORT 01 ユビキチンネオバイオロジー・ Kick-Offシンポジウム 佐伯 泰(東京都医学総合研究所) 理工) はユビキチンシグナルのイレーサーとして機能する脱ユビ キチン化酵素群のうちUSP18とUSP13がそれぞれユビキチン 陽性封入体とストレス顆粒の形成に関与するこという新しい知 一連のユビキチンリガーゼ群についてBRCA1を中心に説明さ 術領域ユビキチンネオバイオロジーのkick-offシンポジウムが れた後、K6鎖特異的抗体の開発状況についてお話されました。 開催され総勢139名が集いました。 嘉村先生(名大・理)はユビキチンリガーゼの多様性をお話 され た 後 、非 S C F 型 F-boxタンパク質Roy1 がタンパク質の小胞輸 送を負に制御すること をお話されました。川 原先生(首都大・生命 会場を埋めた聴衆 まず領域代表の岩井先生(京大・医) から本領域の概要と目 科学) はポリユビキチン 指しているユビキチン研究の方向性について説明がありました。 鎖結合ドメインの多様性とユビキチン鎖認識機構についてこれ ユビキチンはタンパク質分解のキー分子としてみつかった歴史 までの知見を概略された後、新規合成の変性タンパク質分解に 的経緯よりこれまで“ユビキチン=分解“として研究が進展してき 関与するBAG6複合体に関するこれまでの研究を発表されまし ましたが、 ユビキチンの分解以外の新機能(ユビキチン修飾がリ た。佐伯(都医学研・生体分子) はユビキチン修飾がリンケージ ン酸化のようなタンパク質制御のスイッチとして機能すること) の種類、複雑さ、長さの3要素から構成されること、質量分析計 が現在世界的に注目されていること、 この新しい研究動向をユ により様々なユビキチン鎖を超微量試料から定量できることを ビキチン・ネオバイオロジーと称し新学術領域研究として大きく 示しました。最後に水島先生(兵庫県大・理) はこれまで構造解 進展させたいとお話しされました。 析に成功した一連のユビキチン関連分子についてお話され、 さ の一つUfd4が付加するユビキチン鎖とし といった数々のテーマが実施されていま て想定されていた。そこで、酵母UFD4 遺 す。国内短期留学も受け付けておりますの 伝子破壊株の粗抽出液を用いて早速解析 で、 ご興味のある方は気軽に連絡してくだ らに赤痢菌のエフェクタータンパク質OspIがユビキチンE2酵素 してみた。 その結果、K48鎖、K63鎖の量は さい。 UBC13を脱アミド化することで失活させ炎症シグナルの活性 化を阻害することを報告されました。 変動しないものの、K29鎖そしてK6鎖の量 が著しく減少していた (図5)。Ufd4の活性 文 献 中心変異体ではK6鎖の減少が観察されな 1) Hershko, A., and Ciechanover, A. (1998) The ubiquitin system. Annu. Rev. Biochem. 67, 425-479, doi:10.1146/annurev. biochem.67.1.425. いことから、K6鎖はUfd4と共に機能する 他のE3によるものと考えられる (土屋ら、 未発表)。 このように、ポリユビキチン鎖の 高感度絶対定量は特異的なユビキチン鎖 形成の解析に有効と考えられる。 V) 領域内の共同研究 現在、私達のグループの他、領域内の研 究者が来所しQ Exactiveを用いたショット ガン解析やユビキチン鎖の定量解析を実 施しており、Q Exactiveは設置後ほぼ不眠 不休で稼動しております。以下、 (おそらく) 差し支えない範囲で研究内容を羅列しま すと、 42 最新の知見を発表されました。続いて駒田先生(東工大・生命 まだまだ暑さの残る9月26日、京都大学新芝蘭会館にて新学 13) Peng, J. et al. (2003) A proteomics approach to understanding protein ubiquitination. Nature biotech. 21, 921-926, doi:10.1038/ nbt849. 15) Kaiser, S. E. et al. (2011) Protein standard absolute quantification (PSAQ) method for the measurement of cellular ubiquitin pools. Nature methods 8, 691-696, doi:10.1038/ nmeth.1649. ビキチンリガーゼによるユビキチン鎖伸長メカニズムについての 見を、太田先生(聖マリ大・医) はDNA損傷時において活躍する 12) Gallien, S., Duriez, E., Demeure, K., and Domon, B. (2013) Selectivity of LC-MS/ MS analysis: implication for proteomics experiments. J. proteomics 81, 148-158, doi:10.1016/j.jprot.2012.11.005. 14) Tsuchiya, H., Tanaka, K., and Saeki, Y. (2013) The parallel reaction monitoring method contributes to a highly sensitive polyubiquitin chain quantification. Biochem. Biophys. Res. Comm. 436, 223-229, doi:10.1016/ j.bbrc.2013.05.080. 生は直鎖状ユビキチン鎖による炎症シグナル制御と直鎖形成ユ 2) Grabbe, C., Husnjak, K., and Dikic, I. (2011) The spatial and temporal organization of ubiquitin networks. Nature Rev. Mol. Cell Biol. 12, 295-307, doi:10.1038/nrm3099. 3) Komander, D. , and Rape, M. (2012) The ubiquitin code. Annu. Rev. Biochem. 81, 203-229, doi:10.1146/annurevbiochem-060310-170328. 4) Ikeda, F., Crosetto, N., and Dikic, I. (2010) What determines the specificity and outcomes of ubiquitin signaling? Cell 143, 677-681, doi:10.1016/j.cell.2010.10.026. 5) Williamson, A., Werner, A., and Rape, M. (2013) The Colossus of ubiquitylation: decrypting a cellular code. Mol. Cell 49, 591600, doi:10.1016/j.molcel.2013.01.028. 6) Finley, D . e t a l . (1 99 4 ) Inhibit ion of proteolysis and cell cycle progression in a multiubiquitination-deficient yeast mutant. Mol Cell. Biol. 14, 5501-5509. 分解というキーワードを取り除くことによってユビキチンの新 しい姿が鮮明となり、私たちがユビキチン研究のパラダイムシフ トの真っ只中にいることを本シンポジウムを通じて実感しまし た。本領域の大きな発展と本シンポジウムに参加された先生方 から日本発の新しいユビキチン研究が次々と生まれることを楽 また、本領域では、 バイオロジー研究のみならず新規ユビキチ しみにして筆を置きたいと思います。 ン解析技術の開発にも大きく力を入れることで何故ユビキチン 修飾が多彩な機能をもち得るのか、 その基本原理を解明しバイ オロジー研究と相互に大きく発展させるようアクションしていく と述べられました。 そして、新学術領域研究のようなグループ研 究は日本独自のものであり、参加するメンバーが立場を越えて自 由に発言し議論できる貴重な機会であること、 ユビキチン研究 がこの5年間で大きく発展し、 さらにその後も継続するよう積極 的に行動していってほしいと会場に語られました。 後半は各計画班代表によるシンポジウムが開催され、岩井先 乾杯のご挨拶をされる田中啓二先生(都医学研所長) と 岩井一宏領域長(京都大) 43 MEETING REPORT 02 ユビキチンネオバイオロジー 第1回班会議 の研究事情や私事まで、年齢や所属の垣根を越え多くの方々と 激的で、 「そんな見方があるのか!」 と驚くことが非常に多く、学 のホテルに割り当てられることに。 ルームメイトはハーバード大の 話し合えた貴重な時間でした。 ぶことの多い2日間でした。 冒頭、岩井先生より 「若手の積極的 ポスドクの方 (フランス人) でした。 な討論を」 とのお言葉があったにも関わらず、 口頭発表で自発的 な発言ができなかったことが、唯一の悔みですが、 これを機に若 ご存じの方も多いかとは思いますが、 このCSHL meetingにつ 手の間で切磋琢磨していければと思います。 いて紹介させていただきますと、Ubiquitinのmeetingは隔年で 西出 旭 最後に、 このような貴重な機会を企画、運営された、岩井一 開催されています。 プログラムが密に組まれていて、 口頭発表が (兵庫県立大学 生命理学研究科 宏先生と岩井研究室の方々に、 この場を借りて厚く御礼申し上 朝9時から12時過ぎまで、午後は14時よりポスター発表、 夕食 ピコバイオロジー研究所 げます。 後19時半から22時半まで再び口頭発表、 その後は地下のBarで 構造細胞生理部門(水島研)) 一杯、 という流れになります。 私はホテルへの送迎バスが0時半ま でしかなかったので早めにホテルに戻りましたが、 ルームメイト MEETING REPORT 03 平成24年度から、新学術領域研究「ユビキチンネオバイオロ におけるユビキチンによって制御される様々な生体機能を研究 Cold Spring Harbor Laboratory Meeting “The ubiquitin family, 2013” に参加して する各研究者間の相互理解を深めるとともに、 これからの研究 渡部 昌(北海道大学大学院医学研究科 畠山研究室) ジー:拡大するタンパク質制御システム」が発足し、第1回班会 議が平成25年1月29、 30日の2日間、 兵庫県淡路島、 ウェスティ ンホテル淡路にて世話人 岩井一宏先生のもと開催されました。 天候にも恵まれ、 ホテルはセッションを行う国際会議場と併設 されており、 申し分ない環境でした。 今回の班会議は、領域内 44 は友人と車で来ていたせいか、 連日戻ってくるのは2時以降でした (誰が運転していたのかなどは怖くて聞けず…)。 その他、 ワイン &チーズパーティーやバイオリンの生演奏、 夕食にロブスター1匹 が丸ごと登場する日があるなど、 イベントも盛りだくさんです。 口頭発表では、英語が苦手な私は発表本体についてはスライ ドと組み合わせて何とか理解することができましたが、発表者の ジョークや質疑応答で質問者が何を聞いているのかなどが即 座に把握できず、1日1日が終わるたび頭の中が完全にオーバー ヒート。 ビールでクールダウンする毎日が続きました。 を担う若手研究者の育成を狙い、各研究室より11題の口頭発 2日目は午前9時よりエンドサイトーシス制御、質量分析によ 表と23題のポスター発表が実施されました。 る解析についての発表がありました。 エンドサイトーシスとユビ この度、平成24年5月14日から18日に開催されたCold キチンとの関係は興味深かったです。続いて、評価委員の村田茂 Spring Harbor Laboratory Meeting “The ubiquitin 穂先生と大隅良典先生の講演がありました。村田先生からは現 family”に参加し、ポスター発表をさせて頂きました。今回は 在のプロテアソームに関する研究を発表していただきました。段 Ron Hay, Ron Kopito, Brenda Schulmanの3氏のアレンジ 階をおいて着実にブラックボックスを明らかにしていくストラテ メントでの開催です。 ジーはとても印象的でした。大隅先生からは 「今振り返って思う 恥ずかしながら私は海外での国際学会が初めて、海外に出る こと」 と題して、 ご自身の歩みを昨今の研究を交えてお話しいた こと自体も2回目でして、 目新しいことだらけ緊張と興奮の旅とな だきました。将来や研究に焦りや不安を覚えることもありました りました。 まずは新千歳空港を出発し、成田空港を経由してJFK が、先生のお話を聞き肩の力が抜けました。最後に岩井先生よ 空港まで約13時間のフライト。興奮していたのか眠る事もでき り閉会の挨拶があり第1回班会議は終了しました。 ず、 エコノミーの席に13時間座り続けることの苦しさを実感しま 1日目、領域代表の岩井先生の挨拶があり第1回班会議が始 分解やオートファージだけではない様々な生体機能における した。空港から研究所までは電車を乗り継いでSyossetの駅ま ポスター発表ではどのポスターも人が途切れることがあまり まりました。続いて、Cullin E3酵素の機能解析、TRIM型ユビキ ユビキチン制御に触れ、意見交換が行われた非常に本領域に相 で約1時間、駅から研究所のシャトルバスで15分程度です。電車 ないほど、活気のあるものでした。私の発表にもある程度の人が チンリガーゼの機能、転写制御、OspI-Ubc13複合体解析、直 応しい班会議でした。私的には、 日頃、 タンパク質レベルでの研 の乗り継ぎで改札を通過できなかった、車内で切符を提示しな 来ていただけまして、下手くそな英語で身振り手振りを交えてな 鎖状ユビキチンのX線結晶構造についての口頭発表がありまし 究が中心であることから個体、細胞レベルの切り口は非常に刺 ければならないことを知らず切符をどこかにやってしまってアタ んとか健闘できたのかな、 と思っています。 た。X線結晶構造解析を学ぶ私には、構造生物学によるユビキ フタする、 などのトラブルなどを乗り越え、無事(?)到着すること 今回の発表では、脱ユビキチン化酵素、直鎖ポリユビキチン鎖、 チン鎖認識機構へのアプローチは印象的でした。 つづいて、休憩 ができました。気候は札幌とあまり変わりないほどの肌寒さで、 LUBAC、Parkinの酵素活性メカニズム、 タンパク質のquality を挟み免疫制御機構、Bリンパ球の発生、BAG6の細胞恒常性 緑 が 多く閑 静な場 所 controlなどが中心を占めていたように思います。最先端の研究 維持機構、DNA損傷応答についての口頭発表がありました。 ユ でした。まずは受付で の動向を把握することができましたし、彼らがどのような考え方 ビキチン制御というと細胞“内”における印象が強かったので、B 要旨集と参 加 証を受 で研究を思いつき進めていくのかを勉強することができ、非常に リンパ球の発生という細胞分化的な視点は興味深かったです。 け取り宿 泊 場 所の説 充実した5日間でした。 その後、 夕食を兼ねたポスター発表が行われました。慣れない 明を受けました。参加 また、今回参加された日本人の方は少なめであったように思 発表に四苦八苦しつつも時間を忘れ積極的な討論を行うこと 者が多かったのか(2- いますが、私個人にとってはより親交を深めることができたので が出来ました。 そのまま場所を移し、 ナイトセッションが催されま 3 0 0 人 程 度はいたの 幸いでした。 食事やお酒を飲みながら交わした会話は、 発表で得 した。 「ナイトセッションは朝まで…」 と噂には聞いていましたが、 でしょうか)、私は研究 た知識と同様に大きな財産となりました。最後になりますが、親 目次にも終了時刻は記載されておらず、朝5時まで精力的な討 所 内 の 施 設 ではなく 身にしていただいた先生方にこの場を借りて厚くお礼を申し上 論(?)がなされました。発表で聞きそびれた事を尋ねたり、互い Woodburyという隣町 げます。 45 MEETING REPORT 04 や Cold Spring Harbor Sympo. でも滅多にないのではない もがなですが、 プロテアソーム、 オートファジーのまさに源流とも うとしている気概にあふれていて、 研究について口を開くとまさに かと思う顔ぶれでした。個人的にも、普段は論文でしかお目にか 言える研究を行なってきたこの領域の生き字引であり、 なおすご 鼻息が粗い猛獣のようですらありました。 かることができない Big Name の発表を間近に聴くことができ いのは、長老の様にご意見番として居座るのではなく、本流なら ユビキチン・プロテアソーム研究は日陰に芽を出し風雪に堪え、 て、大変に刺激を受けました。 ではの根源的な研究を行いつつ、圧倒的な熱量を持っていまだ 日が当たるとともに大輪の花を咲かせたという歴史をふまえつつ に新しい領域を開拓されようと猛進されている事です。以下、海 も、色鮮やかなたくさんの花が咲き乱れている昨今、 ともすると 個々の発表内容に関しては紙面の都合もあって詳しく触れ 外公演者の発表の中で、個人的に特に印象的だったものについ 我々後進の輩は土を耕さずに花の善し悪しだけに目を奪われがち ませんが、Raymond Deshaies, Michele Pagano, Stefan て個別の研究topicというよりも雑感をまとめさせていただきま です。 特筆すべき事として、 この領域はきらびやかな新規性にもど Jentsch が事前に配布されていた Abstract に記載されて す (全て敬称略)。 ん欲ですが、 同じくらい根本的で基礎的な疑問にも継続的に真正 いない内容を発表の中心に持ってきたことに非常に驚きました R. Deshaies (Cal Tech, USA) は定量的質量分析解析によ 面から取り組んできたという事も誇らしい事であり、 実はこのシン 2013年7月8日に、 田中啓二先生 (都医学研) の主催のもと、 第 (特に Deshaies と Jentsch は、Abstract に記載された内 りubx変異体における蓄積タンパク質の網羅的な解析を元に分 ポジウムは最先端の研究トピック以上に、 若い研究者・学生に歴 4回 都医学研国際シンポジウム 「ユビキチンプロテアソームシス 容には一切触れずに、新ネタのみで発表を行いました)。彼らも 解メカニズムを明らかにする試みについて発表を行ない、 これま 史の作り方を身をもって教えるという、 参加者の人生にとって希有 テムの最前線」 (The 4 IGAKUKEN International Symposium 事前に登録していた内容や、直後に行われる内藤カンファレンス での質量分析を用いた 「同定」 の研究から、 「定量」 の研究への転 で貴重な経験だったのではないかと振り返って思いました。 entitled “Cutting-edge of the ubiquitin-proteasome と同じ内容で発表する方が楽だっただろうと推察しますので、今 換の重要性を指し示す発表でした。 数年前に発表したE3によるユ system”) が開催されました。 (於:都医学研・講堂) 。 回のシンポジウムに対する彼らの本気度を物語るエピソードで ビキチン化機構の定量的な解析しかり、 疑問は素朴ながらもアプ また、 Goldbergが発表時にあえて基礎研究の重要性を説いた はないかと思います。 ローチが洗練されていて、 学ぶところが多かったです。 事に素直に感動を覚える事も出来ますが、改めて振り返ると、基 W. Baumeister (Max-Planck, Germany) はこの数年で一気 礎研究への寄付も含めてコミュニティーや研究評価システムの先 に明らかになってきた26Sプロテアソーム構造について決定まで 進国 (少なくとも歴史的・システム上は) の米国中でも勝ち組であ 第4回都医学研国際シンポジウム 「ユビキチンプロテアソームシ ステムの最前線」報告 松田 憲之(都医学研・蛋白質代謝研究室) th 前週までの過ごしやすい天候とは打って変わって、高い気温 と高い湿度に苦しむ酷暑になってしまいましたが、会場はそれに 最後に、 Dr. Alfred L. Goldberg の格調高い講演中に “Major も負けない熱気に包まれていました。田中啓二先生、村田茂穂 advance often emerges from outside of established のプロセスと構造から予想される分解マシーナリーモデルについ るはずのHarvard Medical Schoolの大御所教授がわざわざ自 先生、小松雅明先生による適切な司会進行もあって、 また何より lines of research” … “Bortezomib beautifully illustrates てmovieも交えながら発表しました。 Lidのnon-ATPaseが形成す 身の発表において、 基礎と応用の不可分性に言及せざるを得ない も 100人近い聴衆が最後まで集中力を切らさずに会議に参加 how medical progress relies on advance in basic る馬蹄構造や個々の19Sサブユニットの具体的な配置など、 論文 という現状は、 米国においても想像以上に応用重視の (偏重?) 資 されていたこともあって、緊張感のある素晴らしいシンポジウム 基 biochemistry and cell biology.” という文章がありました。 ではなかなかイメージがつかみにくい複雑な構造を多くの聴衆に 金配分、評価体系が支配している事を暗に示しており、 日本はこ であったと思います。 礎研究者として特に印象に残ったこの台詞をもって、 結びの言葉 わかりやすく伝えており、 印象的でした。 ユビキチンレセプターであ れからどうなってしまうのか、若手としてはどうすべきなのかと少 と換えさせていただきます。 るRpn10とRpn13の配置が示された事で分解機構の詳細が明 し鬱屈とした気持ちを頭にもたげながら帰路についた事も正直に らかになったと言えますが、 基質認識やその後の分解までの一連 報告させていただきます。 今回のシンポジウムは北海道(札幌) で 7/9-7/12 に行わ れる内藤カンファレンス 「ユビキチン-プロテアソームシステム: メカニズムから病態まで」のサテライトシンポジウムとして企 画・実行されたのですが、その為に海外からの演者が(以下、 MEETING REPORT 05 Raymond Deshaies, Chin Ha Chung, Michele Pagano, 医学研国際カンファレンスに 参加して and Maria Masucci, という錚々たる顔ぶれで、 そこに国内演 濱崎 純(東京大学・薬学系研究科・蛋白質代謝学教室) 敬称略)Wolfgang Baumeister, Alfred Goldberg, Mark Hochstrasser, Peter-Michael Kloetzel, Stefan Jentsch, 者として佐伯泰博士、反町洋之先生、大隅良典先生が加わると の中といえ、 ますます興味深いところです。 余談ですが、 カンファレンス終了後のパーティーも盛況で、生 M. Hochstrasser (Yale, USA) はプロテアソームサブユニッ ビールのサーバーがあったり、和洋問わずおいしい食事がたくさ トSem1の働くプロテアソーム会合メカニズムの新モデルを提唱 ん並び、 学生ともどもここぞとばかりにたらふくいただきました。 外 しました。 これまでサブユニットとしての他にDNA修復、mRNA 国人発表者も日本の地震や原発への不安も見えない様子で楽し exportなど様々な機能が報告されるもその実体が不明であった んでいましたので、 今回のように直接訪れ接する機会が世界と日 Sem1がRpn3, 7と会合しプロテアソームlid形成に働くという説 本を近くし、 お互いを理解するのに本当に大事だと感じました。 は興味深いものの、 既知の機能を全て説明できるのかは今後更な いうとんでもない豪華メンバーでした (おまけ演者として筆者も 2013年7月8日、 内藤カンファレンスに先駆けて行なわれた東 る検討が必要なのではないかと思われました。 参加しました)。Ron Kopito さんが直前に私用で参加できなく 京都医学研(上北沢) での第4回都医学研国際シンポジウム 「ユ A. Goldberg (Harvard, USA) はプロテアソームのユビキチ なってしまったのは残念でしたが、 ビキチンプロテアソームシステムの最前線」 に参加しました。 ユビ ンレセプターRpn13がプロテアソーム阻害時にユビキチン化され キチン・プロテアソーム研究を主導するまさに大物が集まり、 密度 るという新しい知見から、 プロテアソームの分解メカニズムについ 肝心のプログラムですが、 この領域を長い間牽引してきたメン バー達の最先端の研究発表を聞く事で、領域全体のhistoryか それぞれ注意深く検討する事が必要であるとの認識が広く理解 ら最近のhot topicまで網羅した、 まさに 「来し方行く末」 を体感 されたのではないでしょうか。 できる贅沢なフルコースでした。 さらに印象的だったのは、迎え さらに、 発表を行なった反町、 松田、 佐伯と司会の小松、 村田各 2013年7月9日から12日まで、札幌シャトレーゼ ガトーキ 撃つ日本代表としての発表者、参加者が外国勢に引けを取らな 先生方については、 それぞれエネルギッシュに素晴らしい研究を ングダム サッポロにて第35回内藤コンファレンスが開催され いそうそうたる面々であった事です。 田中、大隅両先生は言わず されているのはもちろん、 領域の新しいトレンドを創成し、 牽引しよ た。招待講演者26人に加えて公募演題として60件のポスター (村田研)総出で参加しました。会場は規模は大きく無いものの 新しい研究所にふさわしい素晴らしい設備で、 発表者と聴衆が気 持ちのいい距離感で過ごせたように感じました。 これだけの海外演者が一同に会す機会は、FASEB meeting MEETING REPORT 06 第35回内藤コンファレンス て、 基質選択性や脱ユビキチン化酵素などのプロテアソーム会合 「ユビキチン-プロテアソーム: 因子による調節を組み入れた、 これまでより一歩踏み込んだ理解 が必要な事を提言しました。 発表後の質疑応答も含め、 一口にプ メカニズムから病態まで」 ロテアソーム阻害といっても、 20S活性阻害剤や脱ユビキチン化 に参加して 阻害剤を用いるのか、 はたまた遺伝学的変異体を駆使するのか、 では国際学会に引けを取らないプログラムとあって、 我々の研究室 46 のダイナミックな行程がどのように行なわれるのかは依然深い闇 鈴木 隆史(東北大学 大学院医学系研究科) 47 の招待講演者もAbstractを見るとすごい業績で錚々たる豪華 Communications 2011)されており、Ufm1システムが生理的 面々であった。 に重要な役割を担っていると考えられる。 このUba5遺伝子欠 以下、私が興味を持った発表についていくつか御紹介させて 失マウスの解析は小松雅明先生(東京都医学総合研究所) の当 いただく。本稿では筆者の主観による偏った内容の紹介になっ 時大学院生だった辰巳加奈子さんが行ったものである。 この仕 てしまい心苦しい。 より客観的な内容は平野先生や奥村先生の 事は筆者の所属する山本研究室でお手伝いさせていただいた レポートをご覧ください。 ので、辰巳さんの仕事がUfm1システム研究の重要な位置づけ にある論文になっていることに感慨深かった。Ufm1修飾をうけ る基質の同定とその機能解析が進むことによって、今後その意 ヒト疫学データを用いて実証したことは意義があると自負してい 義が明らかになっていくと期待される。 る。新学術領域ユビキチン制御の領域代表の岩井先生が筆者 のポスターを見に来てくださり初めてお会いできて嬉しかった。 Maria Masucci先生(Karolinska Institutet) はウイルス 由来システインプロテアーゼが脱NEDD8化によりCullin-RING 本コンファレンスではユビキチン化反応の生化学やプロテア 発表が行われた。招待講演者は海外から14名、国内から12名 ligase (CRL)活性を制御することを講演した。Epstein-Barr ソームの構造解析などの基礎的なものから、神経変性疾患など の著明な研究者が集まった。 ポスター発表は選考を経て採択さ ウイルスのBPLF1はCAND1 (Cullin-associated NEDD8- の病態やその治療法を探る研究まで幅広い視点から発表が行 れた60演題だけあって完成度の高い発表が多かった。 ポスター dissociated protein 1)と構造がよく似ており、Cullin- われた。 また、貴重な交流の場を得ることができた。 このような素 発表の中からも数演題が選ばれて口頭発表も行われた。 また、 CAND1の結合を阻害し脱NEDD8化したCullinのプロテア 晴らしい雰囲気のコンファレンスに参加させていただいたことを 最終日に組織委員によって選ばれた優秀演題発表者には研究 ソームによる分解を促進する。BPLF1はCullinファミリーに共通 大変光栄に思う。 コンファレンスのOrganizing Committeeの 助成金が贈られた。 して結合できるが、主に細胞質に局在するCul2に比べて核に局 先生方および関係者の皆様に深く感謝申し上げたい。 筆者は昨年の第33回「酸素生物学」 に続き内藤コンファレン 在するCul1を効率よく分解する。 これはBPLF1のプロテアーゼ スへ参加させていただくのは2回目であったが、今回も内藤コン 活性を有するN末部分が切断により核に局在するためだと考え 田中啓二先生(東京都医学総合研究所) は肝臓におけるオー られる。 ウイルス増殖におけるCRL活性制御メカニズムは非常 内藤財団スタッフの方々によるスムーズな進行、 シャトレーゼガ トファジーとプロテアソーム系の破綻マウスの解析について講 に興味深く、 ウイルス感染の治療戦略としてだけでなくCRL活 トーキングダムサッポロの快適な宿泊施設や美味しい食事は抜 演した。 オートファジーに必須なAtg7遺伝子の肝細胞特異的 性を自由自在に操る基礎研究への技術応用にも将来性が期待 群であった。 夕食後にはホスピタリールームが設けられ、時間を 欠失マウスの作製により、 オートファジー不全によって蓄積した できると感じた。 忘れて夜遅くまでディスカッションに花が咲いていた。同室だっ p62蛋白質がKeap1と結合しNrf2が活性化することをきれい た名古屋大学の鈴木倫毅先生は筆者と同世代ということもあり に明らかにした。Atg7欠失による肝障害はNrf2欠失によって 最 後 に 筆 者 が ポス 平野 有沙(東京大学 大学院理学系研究科 生物化学専攻 子育て等ライフイベントやキャリアのことなど異なる研究室の同 改善することから、オートファジー不全による肝障害は過剰な ターで発表させていた 深田研究室) 世代ならでは話をする機会を得た。 内藤カンファレンスはチャン Nrf2の活性化によるものである。一方、 プロテアソーム機能に だいた内容について報 スがあればまた是非参加したいミーティングである。 重要なRpt2遺伝子の肝細胞特異的欠失マウスの作製も行って 告させていただく。酸化 2013年7月9日から12日まで、札幌シャトレーゼガトーキン おり、 オートファジー不全と同様にNrf2が蓄積し肝障害を引き ストレス応答性の転写 グダムにおいて内藤コンファレンスが開催されました。 「ユビキ そもそも筆者が本コンファレンスに応募したきっかけは、 自分 起こす。 さらにこの二重欠失マウスは肝障害が重篤化すること 因子Nrf2の活性制御 チン-プロテアソームシステム ~メカニズムから病態まで~」 と銘 の研究対象である転写因子Nrf2がユビキチンープロテアソー から、 オートファジーとプロテアソームの両方の蛋白質分解機構 について研 究をしてい 打ってユビキチン化修飾の専門家が各国から集まり、4日間に ム系を介した分解制御を受けるためだが、 ユビキチン化や26S が恒常性維持に重要であることを示した。 プロテアソーム機能 る。非ストレス状態では わたってオーラル発表とポスター発表が行われました。筆者は、 学会参加記 内藤コンファレンスに参加して プロテアソームの歴史など詳しいことは正直よく知らなかった。 不全による肝障害はオートファジー不全と同様にNrf2の過剰 Nrf2はKeap1を介して 東京大学深田研究室に所属して体内時計システムにおけるタン 今回の参加者の主要メンバーはこれまでこのユビキチンープロ な活性化によるものなのか、 それとも異なるメカニズムなのか。 ユビキチンープロテア パク質修飾について研究しており、大変ありがたいことに当コン テアソームの分野を作り上げてきた中心的な研究者たちであ この研究が進むことでオートファジーとプロテアソームの分解 ソーム依存的に分解さ ファレンスにおいて研究発表の機会を与えていただきました。 こ り、彼らのトークからその歴史を感じることができたことは大変 機構の違いについて詳細が明らかになると思われ今後の研究の れるが、 ストレス刺激によりユビキチン化反応が停止しNrf2タン こでは、 コンファレンスの参加•発表を通して印象に残ったことを よい経験になった。 この歴史から知り得たことを自分たちの研究 発展が非常に楽しみである。 パク質は安定化する。安定化したNrf2は抗酸化酵素群などを 自由に書かせていただきます。 活性化しストレス適応に働く。 これまでNrf2活性制御の研究は に生かしたいと感じた。 48 MEETING REPORT 07 ファレンスの運営は素晴らしく、参加者への心配りの行き届いた ミーティング初日は、 コンファレンス組織委員長である田中 Chin Ha Chung先生(Seoul Natinal University) はユビ 主に 「分解」 に注目され 「合成」 のステップの重要性はほとんど注 内藤コンファレンスはハーバード大学のAlfred Goldberg教 啓二先生のオープニングリマークと、田中先生の御師匠Alfred キチン様タンパク質Ufm1 (Ubiquitin-fold modifier 1)につ 目されていなかったが、筆者らはNrf2の合成量も重要であるこ 授によるプレナリーレクチャーで幕を開けました。Goldberg L. Goldberg先生によるPlenary Lectureから始まった。二 いて講演した。転写共役因子であるASC1 (activating signal とを明らかにした。 また国立がんセンター柴田龍弘先生らとの 教授は、 プロテアソーム阻害剤として名高いMG132の開発者 人とも同じ写真(両先生が若かりし頃に日本で撮影したもの) cointegrator 1)をUfm1修飾の標的タンパク質として同定し 共同研究によりヒトNRF2遺伝子の発現量が低下する転写調 でもあり、 まさにプロテアソームのスペシャリストです。 プロテア を用いてトークを始め、両先生の間には良い友好関係が築か 核内受容体の転写調節に働くことを示した。 まだ未知の部分が 節領域の一塩基多型(rSNP)が肺がんリスクと高めることを明ら ソームがどのようにアッセンブリされ、 どのようにユビキチン化さ れていることを感じた。 3日目はノーベル賞受賞者のAaron J. 多いUfm1システムであるが、E1酵素であるUba5遺伝子の欠 タンパク質の合 かにした(Suzuki et al, Mol Cell Biol 2013)。 れた基質がプロテアソームに取り込まれていくかを最新のデー Ciechanover先生のKeynote lectureから始まった。 その他 失マウスは胎生致死であることが報告(Tatsumi et al, Nature 成と分解のバランスの重要性について遺伝子改変マウスおよび タと共に概説してくださいました。複数のプロテアソームの構成 49 因子がそれぞれ違う役割を果たしながら、順序よく基質の分解 スターも内容が濃いものばかりです。特に、 ユビキチン鎖の検出 プロセスを進めていくのはとても面白く感じました。筆者は、 マウ や基質の同定などメソッドロジーに関する発表も多く、今後の 半でした。 それでもまだ教授の先生方が元気に盛り上がってい 的に、1991年度より開催され スを用いた体内時計の研究をしており、 プロテアソーム分子そ 研究に役立ちそうでした。普段は体内リズムの学会に参加する たのには驚きました。本当に元気な研究領域です。 ている国際学術会議であり、 のものの生化学的な知識はほぼないままコンファレンスに参加 ことが多いため、 ユビキチン化修飾の専門家からアドバイスをも してしまいましたが、それでもとてもわかりやすく興味深いレク らえる絶好の機会となったことも収穫の一つです。 チャーでした。 レクチャーのあとは懇親会があり、北海道の海の 懇親会場は盛況で、筆者が部屋に帰ったのはなんと夜中の3時 1991年度より本年度に至る 最終日のオーラルセッションは、 ユビキチン化による基質特異 まで34回の開催実績があるそ 的な制御メカニズムと病態との関与がトピックとなっていまし うです。3泊4日の合宿形式で 幸を思う存分楽しみながら、多くの先生方と論文や実験の話な 3日目は、岩井一宏教授がチェアを務めるセッションから始ま た。筆者が共同研究で大変お世話になった中山敬一教授は、癌 行われるクローズドの国際学 どをして有意義な時間を過ごすことができました。 このような会 り、 最初はノーベル化学賞受賞者であるAaron Ciechanover 幹細胞ニッチにおけるFBXW7の役割についてまさに最新の研 会であり、世界各国から招いた に参加すると、 ユビキチン化研究の分野は研究者間のつながり 教授の講演でした。 ノーベル賞を受賞する仕事となったプロテ 究成果を発表されており、生体内におけるユビキチン化修飾の テーマ領域の第一線の研究者 の強さをとても感じます。実際、過去に特定領域の分解班に参 アソーム分解の発見から、転写因子のプロセッシングなどタンパ 重要性を再確認しました。 ユビキチン化修飾が制御する生命現 (約25名) と、公募の中から選 加させていただいたときに発展した共同研究先の先生も複数い ク質分解だけに留まらないプロテアソームの役割まで、幅広い 象は、 キナーゼシグナリング、DNA複製、酸化ストレス応答など 考されたポスター発表者(約 らっしゃいました。領域全体がまとまって、活発な研究活動が行 トピックで発表してくださいました。 その後、 ポスター発表から繰 多岐に渡っており、4日間かなり過密スケジュールで発表を聞き 60名) によって構成されています。 また、 コンファレンス会期内に われていることを実感します。 ホールでの懇親会のあとも、飲み り上げられた筆者の口頭発表がありました。名だたる諸先生方 続けていたにも拘らず、 ひとつひとつの話が大変興味深いもので 発表されたポスター発表の中から、優秀な発表者10名が選ば 足りない人がホスピタリティルームに集まって夜遅くまで宴は続 の中に混じって発表を行うことに極度の緊張を感じながら、 なん した。全体を通して、 まさに 「メカニズムから病態まで」様々な視 れ50万円の特定研究助成金が贈呈されます。今回のシンポジ きました。 とか英語で発表をこなせたと思います。一番の収穫は、Michele 点からユビキチン-プロテアソームシステムを眺めることができる ウムにはオーガナイザーの先生方(田中啓二先生、岩井一宏先 Pagano教授が私の講演に興味を持ってくださって、個人的に 学会でした。 生、 畠山鎮次先生、 中山敬一先生、村田茂穂先生) のご尽力によ お話する機会が持てたことです。読者の皆様の方がよくご存知 だとは思いますが、Pagano教授は、E3リガーゼの中でも特に F-boxタンパク質に関する研究で世界的に有名な仕事をされて いる先生です。2007年には、FBXL3が概日時計の周期制御に り、考えられないようなメンバーが国内外から集結しており参加 MEETING REPORT 08 できて幸運でした。以下その報告をさせていただきますが、後半 は参加できませんでしたので他の方の報告をご参考ください。 ま た、実際に聞き取った内容がAbstractに書いてなかったりする ンス誌に同時掲載され、 とても話題になりました。そのため、体 第35回内藤コンファレンス 「ユビキチン-プロテアソームシ ステム:メカニズムから病態ま で」 に参加して 内時計の (しかもユビキチン化を研究対象としている)研究者と 奥村 文彦(名古屋大学大学院理学研究科 分子修飾制御 2日目も引き続き、プロテアソームの構造 (Wolfgang しては絶対会ってみたいと思っていた先生でした。 この論文が 学グループ) Baumeister教授)、 プロテアソーム分解における脱ユビキチン 発表された年は、筆者がちょうど深田研究室に配属されて学部 化酵素USP14の役割 (Daniel Finley教授)、 プロテアソーム の卒業研究を始めた年でもあり、筆者が時計タンパク質の翻訳 7月9日から12日まで開催されたシンポジウムに参加してきま アッセンブリーの基礎とSem1の役割 (Mark Hochstrasser 後修飾に強く興味を持つきっかけともなった論文でもあります。 した。最終日は急遽予定が入ったため実際には11日午前までし 教授) など、 プロテアソーム分子についてのセッションが多く、 Pagano教授とはその日の夜のポスターセッションでも一時間 か参加できませんでしたが、国内・海外から多数の著名なトップ シンポジウムは田中啓 二 先 生のレクチャーで始まりまし 筆者にとってとても勉強になる講演ばかりでした。特にプロテア 以上ディスカッションし、 それだけでもこのコンファレンスに参加 サイエンティストが参加しており、非常に有意義なシンポジウム た。Alfred Goldbergとの長年の親交をユニークなスライド ソームの構成因子としての脱ユビキチン化酵素の話が興味深い できて大満足!と思えるほどでした (写真)。最後の夜も変わらず 重要な役割を果たすことを発表されています (Busino et al., Science, 2007)。Pagano教授のグループと、独立してマウス の変異体スクリーニングを行っていた2つの体内時計の研究グ ループ (Joseph Takahashi研究室とPatrick Nolan研究室) からFBXL3による時計制御に関する研究成果がセルとサイエ 共同研究で大変お世話になった中山敬一先生と。 ので、聞き誤りがあるかもしれません。詳細は発表論文などをご 参照ください。 となりましたので報告させていただきます。 7月9日の名古屋は気 を用いて紹介されました。その後、Plenary lectureとして、 と思いました。 プロテアソームがユビキチンタグのつけられた基 温が37度でした。札幌は28度ということでさぞかし涼しいだろ Alfred Goldbergが”New insights into biochemical 質を捕まえると、 そこには脱ユビキチン化酵素がスタンバイして うと思っていましたが、実際に札幌駅についてみると思いのほか mechanisms of the 26S proteasome”のタイトルで発 いる。 タグを除去して標的を小さくし分解効率を上げ、 ユビキチ 暑かったです。 その後はホテルに缶詰めでしたので気になりませ 表しました。 まず、既に有名な話ですが、 プロテアソーム阻害剤 ン分子はリサイクルする。複雑に構成された分解マシーンを正確 んでしたが、名古屋に帰ってきて改めて札幌はやっぱり涼しく快 (Bortezomib/Velcade)が多発性骨髄腫に有効であること に作り出すだけでなく、 なんて合理的なシステムを生物は持って 適だったと実感しているところです。 札幌駅から北へ車で30分ほ を紹介されました。次にプロテアソーム活性化メカニズムについ いるのだろうか、 と感心するばかりです。 また、 プロテアソームの ど走ったところにあるシャトレーゼ・ガトーキングダムというプー ての発表がありました。26Sプロテアソームに結合したUbe3c/ 発見から数十年経っているにも拘らず、 プロテアソームの構造、 ルや温泉を併設したホテルで開催されたので、一般のお客さん Hul5がRpn13をポリユビキチン化することで、 プロテアソーム 構成因子とその挙動について未だに新しい発見がぞくぞくと出 や外国人観光客も多く、それほど閉塞感はありませんでした。 活性を抑制することや、 ユビキチン化された基質によりプロテア ており分野の奥深さを感じました。 それから、E3リガーゼによる シャトレーゼが併設されているだけあって、休憩時には立派なス ソームが活性化されることを報告しました。 これは19Sに結合し 基質特異的なユビキチン化修飾とその生理的意義に関するセッ イーツがたくさん用意されており、 我慢するのが大変でした。 た脱ユビキチン化酵素Usp14やUch37がポリユビキチン鎖に ションが続きました。夜はポスターセッションがありましたが、 内 藤コンファレンスでは演題数が60題に限られているため、 どのポ 50 科学の基礎的研究の振興を目 ずっと会ってみたいと思っていたPagano教授とポスター会場にて。 左から、筆者、Michel Pagano教授、深田吉孝教授(筆者のボス) 結合することによって、 プロテアソームのATP加水分解活性が 内藤コンファレンスはホームページの情報によりますと、 自然 上昇し、 さらにはプロテアソームのゲートが開くことに起因して 51 います。盛りだくさんの内容であったので質疑応答の時間が無く TRC35、Ubl4aと複合体を形成し、新合成(翻訳) されたTail- きな店を選べるというスタイルでした。同じような食事に飽きな なり、場所を移してWelcome Receptionとなりました。 anchored (TA)タンパク質が膜へと輸送されるのか、 ユビキチン いようになっています。 -プロテアソーム経路で分解されるのか、 アグリゲートを形成する のかを決定する因子であることを発表されました。BAG6をノッ 午後の発表はRaymond Deshaiesの”Regulation クダウンするとUbl4aが不安定化することからBAG6はUbl4a of culling-RING ubiquitin ligases”で始まりました。彼 と結合することでUbl4aを安定化していると考えられます。 また、 はプロテアソーム阻 害 剤が抗ガン剤として用いられている この結合はMG132処理(ポリQタンパク質のアグリゲーション) ことや、MG132により癌細胞が死滅することから、Protein により阻害されること、BAG6がポリQタンパク質のインクルー homeostasisが異常になることがその大きなメカニズムと考え ジョンボディ形成を阻害することなどを示されました。 ました。 したがってp97阻害剤もプロテアソーム阻害剤のように 河 野 恵 子 先 生( 名 古 屋 市 立 大 学 )は” P r o t e a s o m a l 新たな抗ガン剤として機能する可能性を発表しました。 駒田雅之先生(東京工業大学) は”Recognition of K63- degradation resolves competition between cell 一條秀憲先生(東京大学)は”Ubiquitin-dependent linked ubiquitin chains by the ankrd13 family of 各口頭発表演者や、 内藤財団の代表者の紹介があった後、 田 polarization and cellular wound healing”というテーマ regulation of ASK1 stress signaling in cell death” UIM-bearing proteins regulates endocytosis of 中啓二先生の乾杯でReceptionが始まりました。豪華な食事を で発表されました。出芽酵母にレーザーを照射し、細胞膜を傷 のタイトルで発表されました。Apoptosis signal-regulating plasma membrane proteins”というタイトルで発表されまし 堪能した後、場所を変えて 「二次会」 が開催されました。確か23 害する実験系をもちいて細胞膜修復機構の詳細なメカニズム kinase 1 (ASK1)はLRLRGG配列をもち、 この配列は脱ユビキ た。Ankrd13A、B、DはUIMをもちK63ポリユビキチン鎖に結合 時前には温泉に行きましたので詳細はわかりませんが、24時頃 を明らかにされました。 この修復過程ではアクチン繊維制御因 チン化酵素USP9Xとの結合に重要であることを示されました。 しますが、 CはUIMがないため結合できません。 Ankrd13A、 B、 D まで続いていたのではないかと思います。 子Bni1とExocyst因子Sec3のプロテアソームによる分解が また、酸化ストレスによりASK1はリン酸化され細胞死を誘導 はEGFRのK63ポリユビキチン鎖に結合することで、 リガンド依存 必須であり、修復終期では別のアクチン繊維制御因子Bnr1と しますが、p-ASK1はRC3H2というユビキチンリガーゼにより 的なEGFRのエンドサイトーシスを抑制することを示されました。 Exocyst因子Exo70が分解されることを示されました。 これら 認識され分解へと導かれます。一方、p-ASK1はPP5により脱リ 畠山鎮次先生(北海道大学) は”Regulation of cellular の修復機構はヒトでも保存されている可能性があるそうです。 ン酸化されますが、 このPP5に対するユビキチンリガーゼとして functions by TRIM proteins”というタイトルで発表され 森戸大介先生(京都産業大学)はAAA+ ATPase活性を KLHDC10を同定したことも示されました。 ました。TRIM型ユビキチンリガーゼTRIM6はMycと結合し、 もつユビキチンリガーゼMysterinについて”Structure and 中山啓子先生(東北大学)は”Functional analysis of ES細胞の全能性維持に関与していることや、TRIM67がアダプ function of moyamoya disease-associated AAA+ F-box proteins in vivo”というタイトルで発表されました。 タータンパク質80K-Hと結合し、Rasの活性を制御していること ATPase/ubiquitin ligase mysterin”というタイトルで発表 Fbxw7の基質分子としてc-Myc、Cyclin E、Notchなどが知ら などを示されました。 されました。Mysterinはモヤモヤ病の原因遺伝子として同定さ れていますが、Fbxw7欠損MEFを用いた実験により、Notchの Thomas Sommer は”The HRD ubiquitin ligase: れ、 いくつかのSNPsを報告されましたが、発症との明らかな関 安定化による細胞増殖阻害を紹介されました。 しかしながら皮 managing protein quality control and ubiquitylation 2日目はWolfgang P. Baumeisterの発表で始まりました。 タ 係はまだつかめていないとのことでした。少なくともin vitroにお 膚ガンにおいてはNotchを分解することでガン化を促進、 あるい to maintain protein homeostasis in the secretory イトルは”Recent advances in structural studies of the いて、一部のMysterinはプロテアソームのCoreのように環状 はc-Mycを分解することでガン化の抑制、 と組織依存的にその pathway”というタイトルで発表されました。Hrd3とDoa10は 26S proteasome”でした。 詳細な構造解析により26Sプロテ 六量体を形成することも報告されました。質量分析計を用いて 機能は変化しうる可能性を紹介されました。 ERに局在し、ERADに関与するユビキチンリガーゼで、細胞内 アソームの立体構造の揺らぎなどをイメージムービーを用いて紹 Mysterin結合分子を探索した結果、脱ユビキチン酵素が含ま Minsoo Kim先生(東京大学) は“Real-time, label-free のアグリゲーション形成を抑制します。ERADに関与する分子 介されました。 26SプロテアソームのLidはCoreに対してかなり揺 れているということでした。 monitoring of poly ubiquitin chain formation with Cue1は3つ以上のユビキチンから成るユビキチン鎖に結合し、 らいでおり、 プロテアソームのLidがCoreの軸に対してずれて、 ペ 田中啓二先生は”In-depth analysis of cellular bacterial ubiquitin ligase”というタイトルで発表されまし 基質分子のユビキチン化を促進することを示しました。 プチドがCoreに入りにくい時があることなどを示されました。 dynamism of the proteasome”というタイトルで講演され た。 ポリユビキチン鎖形成を定量するために、FRETを利用した 次の演者はDaniel Finleyでタイトルは”Regulation of ました。膨大なデータを示されましたが、 そのうちのひとつを紹 方法があることを紹介されましたが、 ユビキチンにタグをつける 彼の発表の後、2回目の夕食となりました。今回は各自がテー proteasome activity”の予定でしたが到着が遅れたため 介させていただきます。 まず、mTORC1依存的にp62がリン酸 ことでartificialな可能性を指摘されました。 それを克服するた ブルに座るスタイルで、落ち着いて食事をしました。 その後ポス 山口淳二先生(北海道大学)が発表されました。タイトルは 化されることを示されました。 リン酸化p62はKeap1と結合し、 めにまずE3をプレートに固相化しておき、次にE1、E2、Ubなど ター発表があり、 あちこちで活発にディスカッションしました。時 ”Regulation of leaf organ size and gene silencing その結果Nrf2-Keap1-Cul3複合体形成が阻害され、Nrf2はフ を加えリアルタイムでポリユビキチン鎖の形成を測定する技術 間が経つにつれて盛り上がり、海外・国内の大御所の先生方の by plant proteasome”でした。 シロイヌナズナの19Sプロテ リーとなるため核内に移行し、下流の遺伝子発現を誘導すると を紹介されました。 談笑や笑い声も時折聞こえてきました。 さらに場所を移して 「2 アソームサブユニットであるRPT2にはふたつのパラログRPT2a いうデータを報告されました。 とRPT2bがあるが、RPT2aのみが葉のサイズを制御しているの Mark Hochstrasserの発表タイトルは”Regulation of に関与していることを紹介されました。RPT2a欠損をRPT2bが eukaryotic proteasome assembly”とでした。Sem1はPAM 3日目はAaron J. Ciechanoverの講演で始まりました。 レスキューできないことや、RPT5a欠損でも同様の現象がみら ドメインをもつタンパク質やSAC3ドメインをもつタンパク質と タイトルは”The ubiquitin proteolytic system-from れることからRPT2aとRPT5aを含むプロテアソームは葉のサイ 結合できます。 この相互作用によりSem1はRpn3やRpn7と結 basic mechanisms thru human diseases and on to ズを決定する特殊なプロテアソームであることを示されました。 合することを示しました。 このSem1-Rpn3-Rpn7複合体形成 drug development”でした。 ユビキチン発見の経緯から始ま 川原裕之先生 (首都大学東京) は”BAG6 is essential for はプロテアソームのLid形成に重要であると考えられています。 り、後半はモノユビキチン化されたタンパク質でもプロテアソー selective elimination of aggregation-prone defective proteins”というタイトルで講演されました。BAG6はTRC40、 52 次会」 も行われました。 ムにより分解されることを示しました。例えば、Ub-VVは安定で 彼の発表後ランチとなりました。和・洋・中のお店から各自好 あるがUb-VV-His6-HAは不安定であることを報告しました。 ユ 53 ビキチンのC末にある程度のペプチド鎖が必要であるが、150ア 会議は最初に領域代表である京都大学の岩井一宏先生のご ミノ酸以上になると分解は抑制されることを示しました。 挨拶および本領域の説明から始まりました。 まず、領域として、技 岩井一宏先生(京都大学) は”Linear polyubiquitination: 術や情報を班員内で共有すると共に、新規研究分野への展開を a new regulator of NF-κB activation”のタイトルで発表 支援することにより、各グループの研究の発展、世界に先駆けた されました。直鎖ポリユビキチン鎖形成ユビキチンリガーゼ複合 成果の創出を目指していること、本研究分野において、将来の研 体LUBAC発見の経緯や直鎖ポリユビキチン鎖がNF-κBの活 究を担う若手研究者を育成していくことの説明がありました。 MEETING REPORT 10 EMBO conference "Ubiquitin and ubiquitinlike proteins: From structure to function" に参加して 性化に重要であることを発表しました。 ユビキチンがたった二つ ンパク質分解により制御される生命現象の研究を目的として発 直鎖上につながったものでもIKKの活性化に十分であることや、 足した重点領域研究、 それに続く特定領域研究の流れを汲むも B細胞においてはTNF受容体刺激によるNF-κBやERKの活性 のであり、本年度からは 「オートファジーの集学的研究」 が採択 化には直鎖ポリユビキチン鎖が必要であるが、B細胞受容体刺 となり、 タンパク質分解による生命現象の制御の重要性はます 激によるNF-κBやERKの活性化には直鎖ポリユビキチン鎖が ます拡大しています。 また、新学術領域のように同じ分野の研究 吉原 英人, 土屋 光 必要でないことなどを示されました。 者が集まって研究をすることは日本独自のものであり、 これによ (東京都医学研、東京大学大学院農学生命科学研究科) 若槻壮市先生(Stanford university)は“Structural り多くの成果が生まれています。 basis of ubiquitin chain recognition”というタイトルで 2013年10月1日から5日まで、 イタリア ガルダ湖の湖畔にあ 発表されました。NEMO-UBANドメインとHOIP、直鎖ジユビキ 今回、私も含め会議に参加した私の研究室の若手や学生は、 るAstoria Park HotelにてEMBO conferenceが開催されま チン鎖の結合様式や、AIRAPLのUIMドメインとK48トリユビキ 次に、名古屋大学の嘉村巧先生、東京工業大学の駒田雅之 講演の内容をすべて理解することは困難でしたが、班会議に参 した。招待講演者31人に加えて、公募演題として26件の口頭 チン鎖の結合様式などを、結晶構造解析により明らかにされま 先生から、領域の研究推進を支えるために構築された研究協力 加し、大学では聞くことのできないユビキチンの関わる生命現象 発表、113件のポスター発表が行われました。招待講演者はす した。 また、 ユビキチン鎖とUb-binding domain(UBD) の不安 および支援システムと研究情報を共有する方法、領域のホーム に関する研究成果を聞けたこと、 コーヒーブレイクで先生方とお べて海外の研究者で、国内からは京都大学の岩井先生が口頭 定な結合様式を決定するために、X-ray free electron laser ページとユビキチンフォーラムの説明が行われた後、今年度より 話しできたことにより、多くの知識を得ることが出来たと共に、今 発表をなさり、岩井研の武田博士、東京都医学研の佐伯先生、 LCLSを紹介されました。 採択された公募班員17名の研究発表となりました。 後の研究や勉強に対する意欲が増し、非常にいい刺激を受ける 我々の5人がポスター発表を行いました。 ことが出来ました。 発表を聞けたのはここまででしたが、今回のシンポジウムは 公募班員の方々による、 それぞれの研究発表は未発表のデー チャイムがなく、 発表時間があまりタイトに縛られていなかったの タを含んでいることから、 ここでは紹介することが出来ませんが、 新学術領域「ユビキチンネオバイオロジー」 では12月に熱海 で、 じっくりと聞くことができて良かったです。論文を読んだだけ それらの発表は、 ユビキチン修飾により制御される生命現象の詳 で平成25年度第2回班会議が開催されることから、 これから では伝わってこない、現場での苦労や喜びなどが発表者から伝 細な解明を目指すもの。 ユビキチンにより制御される生命現象に の数カ月は、本会議で得たものを活かし、新しい研究成果を発 わってきて、 やはりシンポジウムはできるだけ参加すべきだなと再 関わる新たな因子の探索や、 その発見に関するもの。 ユビキチン 表できるよう研究に励むと共に、研究室の若手の成長のために 認識しました。 ポスター発表も話が予想外の所に移ったりして、 経路において働くタンパク質が、 これまでに知られていた機能以外 努めなければいけないと改めて感じました。 大変有意義でした。 次回また機会があれば必ず参加します。 の異なる働きを持つ可能性を示唆したもの。 新たに開発された装 MEETING REPORT 09 置を用い、Ub修飾経路を解析することにより大きな発展が期待 最後に、本会議で発表をして頂きました公募班員の先生方、 される研究。 植物におけるユビキチン修飾経路の役割の研究。 バ 運営をご担当いただきました、岩井一宏先生と研究室の方々、 クテリアの感染とユビキチン修飾経路の関係に関する研究。 構造 お忙しい中参加して頂きました評価委員の先生方および関係者 生物学の手法を用いた、 ユビキチン修飾経路の反応機構解明を の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。 平成25年度 第1回領域班会議レポート 水島 恒裕(兵庫県立大学 大学院生命理学研究科ピコバ 問が少なく、大いに盛り上がったとは言えませんでしたが、内容 のホテルに宿泊しなくてはならない人が出ていました。 また、 ポ イオロジー研究所 構造細胞生理学研究部門) に関する質問に加え、評価委員の先生方や領域代表からのアド スター発表は、テーマごとなどではなく、発表者名のアルファ バイスもあり、 内容のあるものでした。 ベット順という少々驚きの順番でした。 このように運営には少し 目指した研究。 などに関するものであり、 多数の応募の中から選ば 営の方に一括で準備していただく形式でした。 しかし、想定以上 れた課題だけに、 どれもすばらしい成果が期待できるものでした。 の参加者が集まったせいなのか、 ホテルが会場のAstoria Park これらの発表に対する質疑討論では、若手研究者の方からの質 Hotelだけでは足りなくなり、会場まで徒歩30分近くかかる他 平成25年7月26日 (金)京都駅の大学コンソーシアム京都 54 今回、 ホテルは個人で予約するのではなく、conferenceの運 難があったのですが、肝心のプログラムは非常に充実しており、 において新学術領域研究「ユビキチンネオバイオロジー:拡大す 本班会議は2回のコーヒーブレイクをはさみ、全17演題が行 linear ubiquitinやE3の活性調節機構などをはじめとしたユビ るタンパク質制御システム」 の平成25年度第1回班会議が開 われました。 コーヒーブレイクでは、発表内容に関すること以外 キチン研究の最先端のトピックを数多く聞くことができました。 催されました。本会議は昨年度より始まった新学術領域「ユビキ にも多くの情報交換や研究に関する議論を行うことができ、 これ 以下に印象に残った講演の概要を紹介させていただきます。 チンネオバイオロジー」 に公募班員を迎えた最初の会議であり、 らの時間も含めて貴重な時間を過ごすことが出来ました。 全17名の公募研究者による研究発表が、領域代表、計画班員、 そして、全演題終了後、領域代表の岩井一宏先生のご挨拶、 David Komander先生 (MRC Laboratory of Molecular 公募班員、領域の評価委員の先生方と所属するスタッフ、学生 評価委員である田中啓二先生からのご講評があり、班会議は閉 Biology, UK)は、Linear ubiquitin鎖を特異的に脱ユビキチ の参加のもと行われました。 会となりました。 田中啓二先生のお話の一部ですが、本領域はタ 水島先生(中央) と研究室の皆さん ン化するOTULINについて講演しました。OTULINはLinear 55 PLAYBACK “ぷろておりしす” ’96 いることを明らかとしました。 また、USP7がIRSの量制御を介し て、 インスリン/IGFシグナルにおけるフィードバック機構の一環 を担っていることを示しました。1時間半の発表時間の間、岩井 先生をはじめとして多くの方々が間髪を容れずに見に来てくださ り、英語での質疑応答が大変でしたが、非常に嬉しかったです。 土屋は、 ユビキチン鎖の長さを測定する手法 (Ub-ProT法 Ubiquitin Chain Protection from Trypsinization)を報告 させていただきました。 ユビキチン修飾の構造を決定する3つの 要素であるユビキチン鎖の 「種類」、 「長さ」、 「複雑さ」 の解析法 は完全には確立されておらず、 ユビキチンシグナル発動の機構 ubiquitin鎖とのbinding affinityが他のlinkage typeの は未解明な点が多くあります。特に、複雑なユビキチン鎖をもつ ubiquitin鎖に比べて100倍以上あり、脱ユビキチン化活性を介 生物試料からユビキチン鎖の鎖長情報を取得する方法は未だ してNFk signalingやNOD2 signalingを阻害する働きがありま 存在しませんでした。 そこで我々はユビキチン鎖の長さを生化学 す。 また、 OTULINは Linear ubiquitin鎖を特異的にタンパク質 的に決定する新手法・Ub-ProT法 を開発しました。本手法を用 に付加するE3リガーゼLUBACのサブユニットHOIPと結合しま い、細胞抽出液を用いてグローバルなユビキチン化基質のユビ す。 この結合は、 PUB domainとPIM (PUB interact motif)を介 キチン鎖長決定を試みたところ、増殖細胞では基質タンパク質 していますが、 これらのdomainを持つ他のタンパク質とは少し構 に平均2~6個のユビキチン鎖が結合していることを明らかとしま 造が異なり、 OTULINとHOIPはお互い特異的に結合しています。 した。 また、 プロテアソーム阻害剤(MG132)処理を施した細胞 では基質結合のユビキチン鎖の量は増えるが長さは変わらない Ivan Dikic先生 (Goeth University, Germany)は講演の こと、 プロテアソームの上流でユビキチン化基質の仕分けに関 前半はPUB domainとOTULNか相互作用し、OTULINのリン 与するシャペロン様分子Cdc48/p97変異体中ではユビキチン 酸によりその相互作用が外れ、DUB活性が解除される機構を 鎖長が伸長することを見出しました。英語は苦手なので相手に 示しました。 また後半は、 ユビキチン鎖の種類を特異的に認識す しっかりと伝えられたのか不安ですが、英語を話すとてもよい勉 るユビキチン結合ドメインを用いることにより (M1鎖→NEMO 強の機会となりました。 UBAN、K63鎖→Rap80 UIM)細胞内におけるそれぞれのユビ キチン鎖の局在をモニターする手法開発の話でした。 この仕事 最後にこのような素晴らしいconferenceに参加させていた はたまたま学会中のホテルが同室だった方が主に行った仕事で だいたことを大変光栄に思います。 また次の機会があれば、 ぜひ した。筆者と同年代の方の仕事がこのような学会で発表されて 参加させていただきたいです。 いることにとても感銘を受けました。 自分ももっと頑張ろうとモ チベーションが上がりました。 1 996年から4年間、鈴木紘一先生が率いた文部省科学研究費重点領域研究「蛋白分解のニューバイオロジー」班、我がユ ビキチン班の源流の一つとしてご存知の方も多いのではないでしょうか? 「蛋白分解」班は、領域ニュースレター発行の先駆けでもあります。 編集長は、臨床研にいらした田中啓二先生と川島誠一先生のツートップ、様々な話題をご提供下さいました。 当時、 田中研の片 隅で実験にいそしんでいた編集子にとっては、 田中先生が深夜まで編集作業を (楽しそうに!)取り組んでおられたお姿が思い出 されます。 この創刊号の中で、 田中先生はなんと3編の総説を一気に書き下ろされております。 当時の原稿を読み返してみますと、思わず 『おオー!』 と感嘆して膝を打ってしまうことの連続で驚きました。特に、田中先生のご指摘(大預言?) の多くはそのまま後日に 実証され、 また現在の我々の課題に繋がっていることに気付きます。 そこで、本『ユビキチン』班ニュースレター創刊号に、 田中啓二先生の手になる 『ぷろておりしす』創刊号原稿のうち、 田中先生ご 自身が書かれた一編を、 田中先生のご厚意を得まして、再掲載してみたいと思います。 というわけで、 『PLAYBACK “ぷろておりしす”’96』 気鋭の若手研究者(当時!)、 田中先生の珠玉の文章をご鑑賞下さい! (HK) 膜蛋白質のユビキチン化論争: プロテアソームへのターゲッティングシグナル?、 それともエンドソーム/リソソームへのソーティングシグナル? 田中 啓二(都臨床研) 1 986年、 リンパ球のホーミングレセプ で細胞を処理すると、 インスリンレセプター た4)。 Sec61pとSss1pの分解にはユビキチ ターがユビキチン化されることが発見 やEGFレセプターが減少し、 この分解消失 ン結合酵素E2群に属するUBC6(膜結合 いて報告させていただきます。今回、吉原は東京大学での研究 されたのが膜蛋白質とユビキチンの最初の にユビキチン化が関与していることが明ら 型の大きなE2酵素) およびUBC7が関与し 成果を発表させていただきました。我々の研究室では、インス 関わりである。爾来、形質膜の内在性蛋白 かになるとともに、 EGFレセプターの分解が ていることがわかった。 また、 同じER膜蛋白 リン/IGFの生理活性制御機構の解明を目指し、特にinsulin 質である多くのポリペプチドレセプター群が リソソームの阻害剤には不反応であるが、 質であるHMG-CoAレダクターゼの分解に receptor substrate (IRS)に注目して研究を行っています。一 ユビキチン化されていることが相次いで見 ペプチドアルデヒド型のプロテアソームの もプロテアソームの関与していることが判 般的にインスリン/IGFが膜上の受容体に結合すると、受容体 出されてきた。 とくに血小板由来増殖因子レ 阻害剤で強く抑制されることを見出され、 プ 明している。 これらの結果、 膜内在性蛋白質 最後に筆者らがポスターで発表させていただいた内容につ 56 PLAYBACK “ぷろておりしす” ’96 重点領域研究ニュース 「ぷろておりしす」 創刊号より 2) キナーゼが活性化し、IRSがチロシンリン酸化されます。 これを セプター(PDGFR)がシグナル依存的にユビ ロテアソームの関与が強く示唆された 。 更 はその細胞質側ドメインにユビキチン化が 引き金に下流シグナル経路が活性化、 インスリン/IGFの広範 キチン化されることが発見されたが、 その意 に小胞体膜に存在する塩素イオンチャネル 起こり、 それがプロテアソームへのターゲッ な生理活性が発現されると考えられています。我々は、IRSを介 義は長い間不明であった。千葉大学の森ら CFTR(嚢胞性線維症の原因遺伝子) がプ ティングシグナルとして作用することが強く したインスリン/IGFシグナルの修飾機構を解析する過程で、 はプロテアソームの特異的な阻害剤ラクタ ロテアソームによって選択的に分解される 示唆された。 3) IRSと相互作用するタンパク質を網羅的に探索した結果、複数 シスチンを用い、 シグナル依存的なPDGFR こと 、 また酵母のER膜に局在するタンパク 種の脱ユビキチン化酵素の同定に成功しました。 なかでも、IRS のユビキチン化がプロテアソームの標的に 輸送装置Sec61pの変異体及び、 その結合 一方、免疫組織学的方法でリソソーム 1) との相互作用が一番顕著に観察されたUSP7について解析を その後チロシ なることを最初に見出した 。 タンパク質であるSss1pがユビキチン-プロ にユビキチンが蓄積していることは数多く 進め、USP7がIRSを脱ユビキチン化することで分解を抑制して ンキナーゼの阻害剤であるHerbimycin A テアソーム系で分解されることが報告され 報告されている。また、ユビキチン活性化 57 領域ニュース 酵素E1の温度感受性変異株を用いた解 況である。多分、両方とも正しいと考察して る仕組みも考えられる。 これが空想でない 析から、 リソソームにおけるタンパク質分 おくのが現状では無難であろう。 しかし、本 とすれば、 これまでリソソームが無選別なタ 解にユビキチン化が関与していることが報 当にこれでよいのかという疑問も湧いてく ンパク質分解にのみ関与し選択的蛋白分 告されたが、 これらの結果は当時、筆者も る。今後の検証を待ちたい。 このためには 含め多くの研究者間では半信半疑であっ 受賞・表彰 実施代表者:東京大学 講演者:深田吉孝 (東京大学大学院 理学系研究科 生物 受講生:高校生22名 科研費の意義について代表者である 化学専攻 教授) 川原が説明した後、 22名の高校生がグ 解には組みしないと考えられていた概念を 佐伯泰先生が文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞しました。 受講生:高校生180名 ループに別れて研究室に入り、 「たんぱく 個々の膜蛋白質のユビキチン化に関与する 覆すことになる。誰かがこの常識の打破に 受賞名:平成25年度科学技術分野の文 さる8月8日に東京大学で開催された 質を見てみよう!〜生化学実験入門〜」 た。 ところが、非常に不安定な酵母のABC ユビキチン結合酵素E2とリガーゼE3の同 挑戦すべきと思うがいかがであろうか? 部科学大臣表彰若手科学者賞 「 高 校 生のためのオープンキャンパス などの実験を行いました。 その後、横田直 輸送蛋白質であるSte6がUBC4/UBC5 定が不可欠である。上記に記載したように 研究課題: 「プロテアソームの動態と作 2013」 において講演会を行いました。対 人助教を中心に懇談会を開催し、研究生 依存的にユビキチン化され、 その消失がエ 遺伝学的方法でその一端が解明されつつ 動機構に関する研究」 象は、理学部の研究に興味を持って来て 活についてや大学時代の過ごし方などに ンドサイトーシスの異常変異株end4株や あるが、 未だ詳細は不明である。 くれた高校生約180名で、講演会場であ ついて活発な交流を実現させました。最 リソソームプロテアーゼAの欠損変異株の これに関連して言えば、 ユビキチン鎖の る小柴ホールが満席になり、立ち見が出 後に、修了式を行い、参加高校生22名 pep4株で強く安定化されていることが判 形成具合がこの認識の相違に関与してい るほど盛況でした(写真)。講演では、理 に未来博士号を授与しました。参加者の 学部の魅力からスタートし、深田の研究 アンケート調査においては、我々の研究 分野である 「体内時計」の仕組みについ 活動・成果に強い興味を持って下さった て解説し、最新の研究成果であるユビキ 方が多く、本「ユビキチン制御」領域にサ チン化修飾の重要性にもふれました。朝 ポートされた我々の科学研究を広く発信 寝ぼうや時差ボケなど、普段から身近に し、その成果への理解を広めることに意 感じられるテーマであるため、参加者は 義があったと考えます。 5) さらに、酵母のもう一つのトラン 明した 。 るかも知れない。例えば、 マルチユビキチン スポーターであるPdr5も同様にユビキチ 化がプロテアソームへのターゲティングシ ン/リソソーム経路で分解されることが判 グナルの形成であり、 モノユビキチン化がエ 6) 明した 。 また、酵母の形質膜蛋白質である ンドサイトーシスへのソーティングシグナル uracil permease はユビキチンリガーゼ として作用するかもしれない。が、 これまで E3であるRsp5の変異株で安定化されてい の報告をみると正しい議論とは言い難いよ ることからユビキチン経路で分解されるこ うである。 とが示唆され、 この分解がpep4株で安定 ところで、ごく最 近プロテアソームの 化されているが、 プロテアソームの変異株 サブユニットの 一 つ S 5 a がマルチユビ (平成8年6月) 文献 1) Mori, S., et al., (1995) J. Biol. Chem. 270, 29447-29452. 2) Sepp-Lorenzino, L., et al., (1995) J. Biol. Chem. 270, 16580-16587. 3) Ward, C., et al., (1995) Cell 83, 121-127; Jensen, T.J. et al., (1995) Cell 83, 129-135. 4) Biederer, T., et al, (1996) EMBO J. 15, 20692076. 5) Kolling, R., and Hollenberg, C.P., (1994) EMBO J. 13, 3261-3271. 表彰式会場にて、阪大の吉森先生と佐伯班員 6) Egner, R., and Kuchler, K., (1996) FEBS Lett. 378, 177-181. 7) Galan, J.M. et al., (1996) J. Biol. Chem. 271, 10946-10952. 8) Hicke, L., and Riezman, H., (1996) Cell 84, 277-287. 興味を持ってくれたようです。講演会の終 アウトリーチ活動報告 了後も多くの高校生が列を作って質問を 投げかけてくれました。生物が地球上で 鈴木紘一先生が領域代表を務められた Kyoto University Academic Days のような仕組みで動いているのか、それ 1)として同定されたことから、 ユビキチン鎖 平成8~12年(1996~2000年)文部省重 平成25年6月19日 (水) 15時15分-40分 らを解き明かす面白さを理解してもらえ ビキチン化され、 この分解がプロテアソーム をターゲティングシグナルとして識別する 点領域研究「蛋白分解のニューバイオロ α-Station(FM京都) で放送 たと感じました。 今回のオープンキャ の変異株に影響されないことから、Ste2p 分子的基盤が確かなものとなってきた。 も ジー」 のニュースレター「ぷろておりしす」復 実施代表者:岩井 一宏(京都大学・大 ンパスでは、教員による講演会の他にも のユビキチン化がリガンドであるMATα2 し、 ユビキチン化がエンドソームあるいはリ 刻版PDFファイルは、都医学研カルパイン 学院医学研究科・教授) 理学部1号館を開放して大学院生による 依存的なエンドサイトーシスのシグナルとし ソソームへのソーティングシグナルとして機 プロジェクトリーダー・分野長の反町洋之 京都大学の教員がα-Station(FM京 学科紹介やラボツアーなどを企画しまし 能しているのであれば、 エンドソーム膜ある 先生のホームページにてご覧頂くことがで 都) で 「学び」 をキーワードに色々な話を た。 これらの活動を通じて、未来の科学者 いはリソソーム膜にユビキチン識別レセプ きます。 する企画に医学研究科を代表して領域 を育てるという大学の使命に大きく貢献 このように、膜タンパク質のユビキチン化 ターが存在するかも知れない。 もし、 このよ http://www.igakuken.or.jp/calpain/ 代表者の岩井一宏がDJの福岡千幸との できたと思います。 の意義に関する結果は、歩み寄ることので うなレセプターが実在するとすれば、細胞 MainPages/proteolysis.html 対談形式で 「基礎研究者としての思い」 と きない左右の旗の下で睨み合っている状 質蛋白質を選択的にリソソームへ取り入れ 是非、 ご一読下さい。 のタイトルで現在の研究、 これまでの研 7) さ では影響されていないことが判明した 。 キチンレセプター をコードする遺 伝 子 らに、 G-タンパク応答型膜レセプターである MBP1(multiubiquitin binding protein Ste2pがUBC1/UBC4/UBC5依存的にユ 8) て作用していることが示唆された 。 生きていくために獲得した時計機構がど 究者人生などについて話をしました。 平成22年度日本学術振興会 科学研究費補助事業 「ひらめきときめきサイエンス」 広報活動 「ぷろておりしす」誌の表紙を飾った、 田中研大学院生(当時) の鶴身千鶴子さんのオリジナルイラスト 58 JST「サイエンス・パートナーシッ プ・プログラム」 講座のテーマ 『人が病気にかかると体の中で何が起き 平成25年度 東京大学 高校生の ためのオープンキャンパス - 教員 による小柴ホール講演会 平成24年8月10日 (金)首都大学東京南 るのだろうか』 大沢キャンパス ~診察・診断・治療の基礎知識~ 実施代表者:川原裕之(首都大学東京理 平成25年6月24日 (月)札幌市立中央中 平成25年8月8日 東京大学本郷キャンパス 工学研究科・教授) 学校 59 編集後記 院医学研究科・教授) 学2年生の理科(生物及び化学分野) に 兵庫県立川西名峰高校、姫路飾西 高校からの研究室訪問 受講生: おいては、 ヒトの体の生理学領域の勉強 平成25年7月9日 (火) 、 7月30日 (火) 札幌市立中央中学校2年生 128名 がなされます。 そこで、 ヒトの体の各臓器 兵庫県立大学播磨理学キャンパス JSTによる 「サイエンス・パートナーシッ の役割及びその破綻に関して 「風邪」 と 大学側代表、見学受入担当: プ・プログラム」事業において、札幌市立 いう具体的事例をもとに、 その基本的知 水島 恒裕(兵庫県立大学大学院生命理 中央中学校の協力のもと 「人が病気にか 識、診察そして治療に関する説明と実習 学研究科・教授) かると体の中で何が起きるのだろうか」 の計画を進めました。授業前半としては 受講生: というテーマで6月25日 (月) に出張授業 新学術領域研究でも進められている感 川西名峰高等学校 生徒28名 (実習) を行いました。本活動は、上記の 染症及び炎症における細胞内タンパク質 姫路飾西高等学校 生徒40名 JSTプログラム及び文部科学省科学研 の重要性に関してもなるべく簡素にわか 高校生が兵庫県立大学を訪問し、全 究費補助金新学術領域研究「ユビキチン りやすく説明しました。後半は診察等に 体説明の後、4グループに別れて理学部 ネオバイオロジー:拡大するタンパク質 関する実習 (脈拍測定、聴診、打診、膝蓋 の4研究室を順番に訪問し、大学で行わ 制御システム」 のアウトリーチ活動として 腱反射、 アルコールパッチテストなど) を れている研究内容の説明を受けた後、模 行われたものです。 実際に各々の生徒に経験してもらいまし 擬実験や研究施設の見学を行いました。 対象が中学2年生であることから、そ た (写真参照:授業風景)。最後には質問 構造細胞生理学部門(水島研)の訪問で の学年における理科(生物及び化学分 コーナーを設け、 「からだ」のことでこれ は、 ユビキチンやGFPを例にタンパク質の 実施代表者:畠山鎮次(北海道大学大学 しました。文科省による指導要領下の中 野) に関する内容を考慮し、本アウトリー まで疑問に感じていたことを聞き、 ディス 立体構造とその働きの関係、 また生体内 チ活動のテーマを 「人が病気にかかると カッション形式で授業を進めました。中 におけるユビキチン修飾の重要性を紹介 体の中で何が起きるのだろうか」 に決定 学校に大学の教員もしくは医師が現れる しました。 新学術領域『ユビキチンネオバイオロジー』 ニュースレ のは初めてであるためか生徒は緊張して ター第一号を漸くお届けすることができます。 いましたが、積極的に実習に参加し、元 ご協力頂いた皆様、本当に有難うございました。 気よく質問してくれる姿がみられました。 このようなニュースレターの先駆けとなった 「ぷろてお また、市内の他中学の教員の先生方も 聴講に来ておられ、 われわれ大学側のさ らに積極的な貢献が実現できれば今後 も実り多い交流の場が形成されることで しょう。 りしす」創刊号の編集後記にはこのようにあります, 「 “ 班員相互の情報交換および共同研究の推進をはかる ために、革新的な重点ニュースの発行を企画しました」”。 本『ユビキチン制御』 ニュースレターも、読者皆様「相互の 情報交換」 に大いに貢献し、 ひいてはユビキチン研究の世 界に全く新しいチャレンジを目指す 「共同研究の推進」 に 役立つことを念願しております。 その種を、 是非、 本号に見 つけて頂きたく思います! 皆様方からのご投稿を大歓迎致します! 皆様の研究に関連したミニレビュー、学会(特に海外) 参加報告記、研究者社会を眺めながらのエッセイ、 オピニ オン、研究室の若手紹介、領域内共同研究の宣伝など、 ご 自由なスタイルでご寄稿下さい。 また、本誌の誌面に活用 させて頂けるお写真(学会・班会議でのスナップショット、 秘蔵の歴史的写真、研究生活の日常シーンetc..) なども ご提供いただけるとありがたく思います。直ちに第2号の 編集に取りかかる予定です。皆様よりのご寄稿を常時お 待ち申し上げております。 (川原・駒田) 60 61
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