グローバル企業の社会貢献活動の研究 ――トヨタ自動車の社会貢献活動を事例として―― 中京大学 岡村徹也 1 目的 報告の目的は、グローバル企業の社会貢献活動について分析することであるが、対象とするのはトヨタ 自動車株式会社(以下、 「トヨタ」と略記)である。トヨタが行う社会貢献活動は何を意図して行い、何を 得ているのかを明らかにする。具体的に注目するのは、社会貢献活動の実施主体である企業と貢献対象者 (団体)との間に、ある種の交換関係があるのではないかという点である。企業と貢献対象者との間には、 貢献対象者から見れば、企業に対して金銭等の協力を要請する形になるが、それを受けて貢献活動を行う 側の企業にも何らかの報酬があり、その部分で交換関係が生まれていると考える。また、企業はそうした 交換関係の無いところにも新しく交換関係を作り出していくこともあると考える。 本報告では交換によって均衡状態が発生する過程を企業によるヘゲモニー確立の過程と考え、その中で 企業が使用し、獲得する資源に注目する。中でも重要な資源として獲得されるものを企業イメージと考え る。トヨタはどのような企業イメージを、どのような社会貢献活動から得たのか、またそこでどのような 交換関係を成立させたのかに注目する。 2 方法 グローバル企業としてのトヨタが行う社会貢献活動の中で、自動車に関連した分野以外で最初の社会貢献 活動となったアマチュアオーケストラへの支援活動「トヨタ・コミュニティーコンサート」を中心的な調 査対象とする。社会貢献活動として実施するトヨタと貢献対象者との関係性を明らかにするために、これ に関わったトヨタ関係者、貢献対象関係者へのインタビュー調査によって分析を試みる。 3 結果 トヨタが社会貢献活動として、自動車に関連した分野以外で最初に行った活動は、トヨタと販売店のイメ ージアップを図って行われた。その際、トヨタは、過去の事例、周りの状況などを観察し、自らの行動を 決定付けた。この段階でトヨタが獲得したイメージは、社外の具体的な評価にはつながらなかったが、ト ヨタが意図したものは獲得できた。それは、 「地域文化の担い手」 、 「地域文化の活性役」という貢献対象者 の持つ集合財であった。さらにその後、トヨタは貢献対象者との多面的な交換を繰り返すことになった。 4 結論 トヨタと貢献対象者との関係は相互が提供する報酬によって維持されている。しかし、双方にもっと価 値のある報酬を提供できる相手がいれば、その関係は解かれたと考えられる。しかし、最初の交換が順調 に進み、第二第三の交換へと進み、交換が多面化するにつれ、相互はいろんな面で類似し、相互に好意を 持ち、さらに付き合いが頻繁になり、関係が深まるようになった。企業と貢献対象者がお互いに欠かせな い存在となった場合、その社会貢献活動は継続する可能性、規模・内容が充実する可能性が高まることが 明らかになった。また、グローバル企業といえども展開する地域それぞれが重要拠点であることが明らか となった。
© Copyright 2024 Paperzz