環境関連ニュース vol.2

Strategy and Economic Report
2008 年 9 月 26 日 全 10 頁
環境関連ニュース
vol.2
投資戦略部
物江陽子
米国大統領選目前
マケイン、オバマの政策比較と影響予測
[要約]

【トピック】 米国大統領選目前 マケイン、オバマの政策比較と影響予測/来る 11 月 4 日、米
国大統領選が行われる。米国の政策が環境関連市場に与える影響は極めて大きく、大統領選の行
方に注目したい。本稿では共和党の候補者マケインと民主党の候補者オバマの環境関連政策を概
観し、新政権が環境関連市場に与えうる政策インパクトを考察した。

【環境関連ニュース】 ■9 月 7 日 カナダ下院解散 10 月の総選挙では炭素税も争点に/■9 月
11 日 韓国政府、2012 年までに約 3 千億円を再生可能エネルギーに投資する計画を発表/■9 月
23 日 米 7 州・加 4 州、キャップ&トレード制度案を発表 2012 年に導入予定
株 式会社 大和 総研 丸の 内オ フィス
〒 100-6756 東京 都千代 田区丸 の内 一丁 目 9 番 1 号 グラ ントウ キョウ ノ ースタ ワー
このレポートは、投資の参考 となる情 報提供 を目的としたもので 、 投資勧 誘を意図するものではありません。投資の決定はご自 身の判断と責任でなされますようお願い申し上げます。
記載された意見や予測等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではなく、今後予告なく変更されることがあります。内容に関する一切の権利は大和総研にあります。
事前の了承なく複製または転送等を行わないようお願いします。本レポートご利用に際しては、最終ページの記載もご覧ください。株式レーティング記号は、今後6ヶ月程度のパフォー
マンスがTOPIXの騰落率と比べて、1=15%以上上回る、2=5%∼15%上回る、3=±5%未満、4=5%∼15%下回る、5=15%以上下回る、と判断したものです。
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【トピック】米国大統領選目前
マケイン、オバマの政策比較と影響予測
マケイン、オバマの環境・エネルギー政策
環境政策は大きな争
点にはならないが
大統領選を 11 月に控え、最大の争点となっているのは経済政策。環境政策は大きな
争点にはなっていない。景気後退と株式市場の混乱を受け、世論の関心が経済政策に
集中しているためだが、共和党候補者マケインが積極的な環境政策を打ち出しており、
同じく環境派の民主党候補者オバマと大きな差が見られないという事情も背景にある。
どちらが当選しても
ただし、両候補者の環境政策は現ブッシュ政権のそれとは大きく異なる。どちらに
環境ビジネスにはポ
転んでも新政権誕生後、米国の環境政策は大きく進展することが確実で、環境ビジネ
ジティブ
スにはポジティブだ。
①温室効果ガスの大
幅総量削減へ
第一に、両候補者はともに温室効果ガスの総量削減目標を掲げている。ブッシュ政
権は 2001 年、中印が削減の枠組みに入っていないことなどを理由に京都議定書のプロ
セスから離脱。今年になって定めた目標も「2025 年までに米国の温室効果ガス排出量
の増加を止める」というもので、「2020 年までに温室効果ガス排出量を 1990 年比 40%
削減」(ドイツ)など他の主要先進国の大幅な総量削減目標とは大きな開きがある。
一方、マケイン、オバマはともに「2020 年までに温室効果ガス排出を 1990 年レベルま
で削減」という中期目標、「2050 年までに温室効果ガス排出を 1990 年比 60%削減」(マ
ケイン)、同「80%削減」(オバマ)という長期目標を掲げている。次期政権下で米国
が大幅な総量削減に踏み切るのはほぼ確実だ。
②連邦レベルでキャ
第二に、上述した総量削減を実現するために、両氏とも連邦レベルでのキャップ&
ップ&トレード導入
トレードの導入を公約している。企業などの温室効果ガス排出主体に排出量の上限(キ
ャップ)を定め、過不足を排出枠として市場で取引きする(トレード)ことで削減費
用の最小化を図る制度だ。特にオバマは経済全体をカバーする 100%有償割当(オーク
ション制)の制度案を提示しており、導入されれば対象企業は予め年度ごとの排出量
を予測し、オークションで排出枠を調達しなければならない。マケインの案は無償割
当から有償割当に徐々に移行するというものだが、やはり最終的には有償割当の割合
を最大限に増やすとしている。いずれにせよ米国でも中期的に「炭素に価格がつく」
可能性が高い。
③環境関連技術に政
策的支援
第三に、両氏とも環境関連ビジネスの育成に積極的だ。具体的には再生可能エネル
ギー、クリーンコール、原子力、環境配慮型車両、バイオ燃料、省エネ技術に政策的
支援がなされる見通し(図表 1)。さらに、キャップ&トレードの導入はこうした「低
炭素技術」には追い風となる。米国の環境関連市場は急激に拡大するであろう。
超過利潤課税、原子
一方、両氏には力点の違いもある。原油価格高騰への対策として、マケインは主に
力、バイオ燃料などで
国内の海底油田の掘削解禁と天然ガスの国内供給、原子力発電の開発に力点をおく。
は意見の対立も
一方、オバマは石油会社への超過利潤課税を導入、収益を一般家庭への払い戻し・減
税に充てる政策を打ち出している。原子力と原油・天然ガスの国内供給には肯定的で
あるものの、どちらかといえば既存の油田の活用や再生可能エネルギー・省エネ推進
に力点がある。対するマケインは超過利潤課税の導入に強く反対しており、再生可能
エネルギー・省エネには肯定的なものの、オバマに比べると政策上の位置づけは低い。
また、オバマがバイオ燃料の導入目標を定め、税制優遇措置を導入するとしているの
に対し、マケインはエタノール対象の価格支援の廃止を打ち出している。
新政権誕生は概して環境ビジネスにポジティブだが、個々の技術に関してはどちら
が政権をとるかで明暗が分かれそうだ。
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図表 1
マケイン、オバマの環境・エネルギー政策
共 和党・ マケイン
・ 石油会社へ の超過利潤課税 に反対
・ 原油への行き過ぎ た投機を規制
原油高 騰
への対 応
民主 党・オバマ
・ 石油会社への 超過利潤課税を導入
・ 家庭へ1 000 ドルのエネ ルギー税払い戻しを実施
・長期的に中間層を対象に年間1000ドルの減税を実施
・原油への行き過ぎた 投機を規制
・戦略的石油備蓄を利用
・2025年までにエネルギー自立を達成
・ 石油の国内供給の強化
・ 米国沖の海底油 田掘削解禁
エ ネルギー ・天然ガスの国内供給の推進
自給率の
向上
・10年以内に中東とベネズエラからの石油輸入をなくす
・石 油会社が所有する6 80 0万エ ーカーの土地で の原油採掘 を進める
・既 存の油田における石油増進回収( EOR) を推進
・石 油と天然ガ スの 国内生産を責任あるか たちで推進する。 原油採掘に関
する物理的な 障害や連邦 の許可プロセ スの遅延な どを早期に特定
・アラスカの天然ガスパイプラインの建設を優先的に実施
・2012年までに温室効果ガ ス排出を2005年レベルまで削減
温室効 果 ・2020年までに温室効果ガ ス排出を1990年レベルまで削減
ガス 削減目 ・2030年までに温室効果ガス排出を19 90年比22% 削減
標
・2050年までに温室効果ガス排出を19 90年比60% 削減
・2020年までに温室効果ガ ス排出を1990年レベルまで削減
・2050年までに温室効果ガ ス排出を1990年比80%削減
・連邦レベルで 導入
・対象:電力、 運輸部門の燃料、産業な ど全排出量の9割近くを占めるセク
ター。中小企業は対象から 除外
・ 徐々に無償割当を減ら し、 有償割当を増やす
・オークションによる収益はCCS、原子力や蓄電技術の開発な どの研究開発
キャ ップ&
及び商業化支援、低所得世帯への影響緩和に充当
トレード
・バンキング、ボロイングを許可
・国内オフセット・海外オフ セット クレジットの利用を無制限に許可
・外国市場と統合
・戦略的炭素ク レジ ット備蓄を導入
・連邦レベルで 導入
・対象:経済全体
・1 00 %有償割当
・オークションによる収益は再生可能エ ネルギーの導入や生息環境保護、一
般家庭が影響を被ら ないための措置に充当
温暖化 国 ・国連の気候変動枠組み条約の枠組みに積極的に参加
際交渉
・国連の気候変動枠組み条約の枠組みに復帰
・主要排出国会合のプロセスを活性化
・ 再生可能エ ネルギー導入普及のた め、現 在の一時的で複 雑な生産税
還 付(PTC )を 合理化
・ 今後1 0年間に15 00 億ドル をク リーン エネ ルギーに投資、5 00 万人の新し
い雇用を創出
・ 退役軍人に対するク リーンエネルギー分野の職業訓練を実施
・ 製造センターでクリーンテクノロジーに関する訓練を実施。年間10億ドルを
出資
・ クリーンテクノロジ ーに関する職業訓練を実施
・ クリーンテクノロジ ーに関する研究開発費を倍増
・ クリーンテクノロジ ーベンチャ ーキャピタルファンドを設定
・ 20 12年 までに電力の1 0% を、2 025 年までに2 5%を再生 可能エネ ルギー
にする。 このた め連邦レベルで固 定枠買取制度( RPS) を導入する。生産
税 還付( PTC) を5年 間延長
・ 2020年までに連邦政府の消費電力の25%を再生可能エネルギーで供給
・ク リーンコール技術に年間20億ドルを拠出
・ク リーンコール技術の開発推進。エネルギー省が中心となり官民協力して
CCSつき商業用石炭火力発電所を5基建設
・ 原発を2 03 0年まで に4 5基、最 終的には10 0基建設する。国 産での製造
を 目指す
・ 安全な 原子力発電の推進。 原子力な しで は削減目標達成は困難 だが、
燃 料や廃棄物の管理 には 注意が必要。燃料 管理のた めの指針を法制化
する。 廃棄物処分場は適地 が見つかるまで 各発電所で保管する
再生可 能
エ ネルギー
ク リーン
コ ール
原子力
・ゼロエミッションの自動車を購入する消費者に対して5000ドルの税額控除
を実施。 他の車両に関しては、温室効果ガスの排出量が少ないほど控除額
を増やす仕組みを導入
・プラグイン・ハイブリッド及び電気自動車を商業化できる蓄電技術の開発に
3億ドルの賞金を供与
環境配 慮
・混合燃料対応車の推進。自動車業界は2012年までに車両の50%を混合燃
型車両
料対応車(fle xible fuel vehicle)にする目標を掲げているが、より早く目標達
成することを要求
・自動車の燃料効率基準:CAFEスタンダードに従わない製造業者への罰金
を増額
・燃料経済性基準を年間4%づつ向上
・2015年までに1ガロンあたり150マイル走行で きる国内製プラグイン・ハイブ
リッドカーを100万台導入。先進的車両の購入に対する7000ドルの税額控除を
実施
・国内の自動車会社・部品製造会社に年間40億ドルの減税と借入保証を提供
し、燃費効率のよい車両開発のための設備更新を進める
・大統領の任期第一期終了時までに全ての新型車両を混合燃料対応車
(flexible fuel vehicle)に
・ トウモ ロコシ 起源のエタ ノール に特 化し た補助金 や価格支援は市 場
ベース の解決を妨げるので 廃止する
・ アルコ ールベースの燃料推進。 第二世代のセルロース・エタノールにも大き
バイオ燃料
な 可能性
・ 20 30年 までに60 0億ガ ロンの次世代 バイオ 燃料を燃料 供給に使用。税 制
優 遇措置を導入
・連邦の低炭素燃料基準を設定。 2010年には燃料供給者に5年以内に燃料
に占める炭素の割合を5%減らし、 10年以内に10%削減することを義務づける
・バイオ燃料の導入が環境破壊につながらないよう持続可能性に配慮
・連邦政府における省エネ 推進
・送電線・メータリングの改善。スマートメーター技術の導入
省エネ
(出所)マケイン、オバマ各公式ウェブサイトより大和総研作成
(注)太字・下線部は特に両氏の政策が異なる箇所を示す
・2020年までにエネルギー需要を予測より15%削減。発電所に年次省エネ目
標を義務付け。 建築や機器の基準を厳格化
・2030年までに全新築住宅をカーボンニ ュートラルに。10年以内に新築住宅
のエネルギー効率を50%向上させ、既存住宅のエネルギー効率を25% 向上さ
せる
・機器の省エネ 基準を改訂。2014年までに白熱灯を廃止する法律を制定
・連邦政府のエネルギー消費量を削減。5年以内に連邦政府の新築施設のエ
ネルギー効率を40%向上させ、2025年までに全施設でゼロエミッションを達成。
5年以内に既存の施設のエ ネルギー効率を25%向上させるために投資する。
2025年までにエ ネルギー消費量を15%削減
・電力会社の省エネ推進インセンティブを導入、技術的にも 支援。施策推進の
ため州政府を資金的に支援
・先進的送電設備(ス マートグリッド)の配備。補助金供与、プログラムやデモ
ンストレーションなどを実施
・10年間、年100万の低所得世帯を省エネ住宅に(遮熱性・断熱性の向上)
・交通関連財源を改革、自動車と 公共交通のバランスをと る
・建築基準のエネルギー効率基準を早期に実施した 州・自治体に助成金を供
与
・州・自治体が省エネ建築を推進するよう助成金を供与
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【環境関連ニュース】
■9/7 カナダ下院解散
*2008 年 8 月下旬∼9 月下旬の環境関連ニュースをお届けします。
10 月の総選挙では炭素税も争点に
カナダ下院は 9 月 7 日に解散、10 月 14 日に総選挙が実施される見通しとなった。最
大の争点は経済政策だが、野党自由党が提案している炭素税も争点となっている。
カナダでは 2006 年来、保守党のハーパー政権が少数与党として政権を運営している。
ナノス・リサーチ社の最近の世論調査では保守党の支持率は 35%、自由党は 30%。引き
続き保守党が少数与党として政権運営にあたる可能性が高いが、自由党も一定の支持
を得ており、選挙は接戦の様相を呈している。
自由党の政策の柱は「グリーン・シフト」と銘打った経済政策。税制中立型の炭素
税を導入し、所得税・法人税の減税や低所得者向けの補助金供与、インフラ投資を行
うというものだ(図表 2)。
図表 2
自由党の政策「グリーン・シフト」概要
・炭素税を導入:燃料に温室効果ガス含有量に応じて課税。制度導入時は
1t-CO2あたり10カナダドル(約千円)、年毎に10カナダドルづつ課税額を
増額し、4年後に1t-CO2あたり40カナダドル(約4千円)まで増額。使途を
限定しない税制中立型の税制とする
・所得税減税
・法人税減税
・中小企業税減税
・10年間に700億カナダドル(約7.5兆円) をインフラ関連に投資
・温室効果ガス削減目標:2020年までに1990年比20%削減
・キャップ&トレードの導入
(出所)自由党ウェブサイトより大和総研作成
一方、保守党は炭素税は景気悪化につながるとして導入に強く反対している。しか
し、9 月 3 日に発表されたイプソス社の世論調査では、導入賛成が 45%、反対が 51%。
反対が上回っているものの、一定の支持を得ているようだ。
カナダ政府は京都議定書に批准しており、日本と同様に 2008 年から 2012 年までの 5
年間に温室効果ガス排出量を 1990 年比 6%削減する義務を負っているが、現実には同国
の排出量は 2005 年時点で 1990 年比 25%増加している。昨年 4 月、現政権は京都議定書
の目標達成の断念を明言。代わりに「ターニング・ザ・コーナー」と名づけた温暖化
対策を発表した(図表 3)。京都議定書は目標達成ができない場合の不遵守措置を定め
ているが、実際の措置は 2013 年以降の次期枠組みが合意された後に明らかになる見通
しだ。
図表 3
現政権の温暖化対策「ターニング・ザ・コーナー」概要
・ 温室効果ガス削減目標: 2020年までに2006年比20%削減
・産業部門の排出量を2015年までに半減
・排出量取引制度(ベースライン&クレジット方式)の導入
・各企業が原単位での削減目標を定め、実績が目標を下回ればクレジットと
して販売可能
(出所)カナダ政府ウェブサイトより大和総研作成
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以上概観したように、自由党・保守党で温度差はあるものの、どちらが政権をとっ
ても同国の温暖化政策が後退することはないだろう。エコス社の調査によればカナダ
国民の 63%は、同国が直面する最大の課題として環境問題を挙げており、そうした世論
を背景にカナダ新民主党やブロック・ケベコワ、緑の党など他の政党もキャップ&ト
レード及び炭素税の導入を支持している。また今年に入りブリティッシュ・コロンビ
ア州が炭素税を導入、いくつかの州が 2012 年より地域レベルでキャップ&トレード導
入を計画するなど、州レベルの取り組みが先行している(6 ページ「米 7 州・加 4 州、
キャップ&トレード制度案を発表」参照)。とはいえ、仮に自由党が政権をとること
になれば直近では環境ビジネスには追い風となる。まずは同国の総選挙の行方に注目
したい。
(出所)自由党・保守党ウェブサイト他各種報道資料
■9/11 韓国政府、2012 年までに約 3 千億円を再生可能エネルギーに投資する計画を発表
韓国知識経済部は 9 月 11 日、李大統領が主宰する「グリーン・エネルギー産業発展
戦略」報告会で、再生可能エネルギー産業育成政策を発表した。2012 年までの 5 年間
に政府が 1 兆 7,000 億ウォン(約 1,770 億円)、民間が 1 兆 3,000 億ウォン(約 1,350
億円)、合計 3 兆ウォン(約 3,120 億円)を再生可能エネルギー関連産業に投資する
計画だ(図表 4)。政府はこの政策に基づき、来年 3 月までに中長期的な技術開発のロ
ードマップを作成する予定。
図表 4
新再生可能エネルギー産業育成政策
・太陽光発電、風力、発光ダイオード(LED)、IT(情報技術)、水素燃料電池、
ガス・石炭液化(GTL・CTL)、石炭ガス化複合発電(IGCC)、CCS、エネ
ルギー貯蔵の9分野に3兆ウォン(約3,120億円)を投資
・太陽光発電に3,600億ウォン(約380億円)を投資
・洋上風力発電 に2,900億ウォン(約300億円)を投資
・RPS法を導入し、電力会社に発電量の一定割合(2012年3%・2020年
10%)以上を再生可能エネルギーで供給するよう義務づける
・大学に1兆ウォン(約970億円)を支援、環境分野の人材を10万人育成
(出所)各種報道資料より大和総研作成
今回の政策発表は 8 月 15 日、李大統領が独立記念日の祝辞で発表した「低炭素・グ
リーン成長」に基づくものだ。同日、大統領は同戦略を国家ビジョンの軸に掲げると
宣言。図表 5 のような目標を掲げた。
図表 5
低炭素・グリーン成長戦略
・エネルギー自給率を現状の 5%から任期中に 18%、2050年には50%まで
向上させる
・エネルギー消費における新再生可能エネルギーの割合を2030年までに
11%以上に、 2050年に 20%以上 に拡大
・グリーン技術の研究開発投資を 2倍以上に拡大
・100万のエコ住宅を建設
・任期中に 環境配慮自動車の 世界第四位の生産国になる
(出所)韓国大使館ウェブサイトより大和総研作成
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これは同国の経済政策の転換とも言える。昨年末の大統領選の争点は経済政策。李
氏は公約として①7%の経済成長と②一人あたり国民所得 4 万ドル、③世界 7 位の経済
大国入りを約束する「747 プラン」を掲げ、政権交代を果たした。しかし今年に入って
原油・穀物価格の高騰を背景に経済状況は急速に悪化。政府は成長率目標の引き下げ
を余儀なくされた。大統領は「過度な石油依存時代とは決別しなければならない」「石
油の一滴も出ない韓国には、こうした変化は危機であると同時にチャンスである」(8
月 15 日の大統領演説)として、化石燃料に依存するビジネスモデルを転換、環境関連
ビジネスを半導体・自動車産業に次ぐ基幹産業として育成する方針を示した。
韓国は京都議定書の第一約束期間は削減義務の枠外にあるが、2013 年以降の次期枠
組みでは削減義務が課される可能性が高い。同国ではそうした可能性も見据えて 2010
年∼2013 年をメドに炭素税及びキャップ&トレードの導入も検討している。温室効果
ガス排出規制の進展とともに環境関連産業が活況を呈しそうだ。
(出所)韓国大使館ウェブサイト他各種報道資料
■9/23 米 7 州・加 4 州、キャップ&トレード制度案を発表
2012 年に導入予定
9 月 23 日、米国の 7 州・カナダの 4 州が参加する「西部気候イニシアチブ」
(Western
Climate Initiative: WCI)がキャップ&トレード制度案を発表した。WCI は 2007 年 2
月にスタートした、州レベルの温暖化対策のイニチアチブ。図表 6 に示す米国・カナ
ダの州が参加し、地域レベルでキャップ&トレードの導入準備を進めている。
図表 6
WCI 参加州・オブザーバー州一覧
<参加>
・米国:アリゾナ州 カリフォルニア州 ニューメキシコ州 オレゴン州
ワシントン州 ユタ州 モンタナ州
カナダ:マニトバ州
・
ブリティッシュ・コロンビア州 ケベック州 オンタリオ州
<オブザーバー>
・米国:コロラド 州 カンザス州 ネヴァダ州 アイダホ州 アラスカ州
ワイオミング州
・カナダ:サスカチュワン州
・メキシコ:ソノラ州 バハ・カリフォルニア州 チワワ州 コアウイラ州
ヌエボ・レオン州 タマウリパス州
(出所)WCI ウェブサイトより大和総研作成
18 ヶ月の検討期間を経て 9 月 23 日に発表された制度案は、2020 年までに温室効果
ガス排出量を 2005 年比 15%削減するという目標を掲げ、削減手段として 2012 年からキ
ャップ&トレードを導入するというもの。制度詳細は図表 7 に示した。導入されれば
域内の温室効果ガス排出の 90%、住民 8,500 万人、米国経済の 20%、カナダ経済の 73%
をカバーする巨大な炭素市場が誕生することになる。
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図表 7
WCI キャップ&トレード制度案
対象ガス
・温室効果ガス6ガス
対象セ ク
ター
・発電部門(域外からの輸入電力を含む)
・産業・商業部門の化石燃料燃焼
・工業プロセス
・運輸部門のガス・ディーゼル使用
・住宅部門の燃料使用
※具体的な対象施設は各州が特定
・各州がそれぞれ割当方法を決定
排出枠割当 ・ただし導入時には排出枠の10%以上を有償割当で配布、2020年まで有償
割当の割合を25%以上に拡大
ス ケジュー
ル
・2011年:各州の温室効果ガスの報告を開始(2010年度排出量を対象)
・2012年1月∼2014年12月:第一フェーズ
対象:発電、産業部門の化石燃料燃焼(大規模排出者)、工業プロセス(計
測可能なもの)
・2015年1月∼:第二フェーズ
対象を拡大:運輸部門のガス・ディーゼル使用、産業・商業部門の化石燃料
燃焼全て、工業プロセス全て、住宅部門の燃料使用
オフセ ッ ト
・利用可能(ただし制限は設定)
バンキング
・可能
(出所)WCI ウェブサイトより大和総研作成
米国では WCI の他に、北東部 10 州による地域温室効果ガスイニシアティブ(RGGI)
や中西部 6 州及びカナダの 1 州による中西部地域温室効果ガス削減アコード(MGA)と
いった州レベルのキャップ&トレード導入の動きがある。特に RGGI は来年 1 月からス
タートする予定で、昨日 9 月 25 日には第一回のオークションが開催された。今回冒頭
記事で取り上げたように、次期政権下で連邦レベルでキャップ&トレードが導入され
る可能性も高い。巨大な温室効果ガス排出国である米国で炭素市場が誕生すれば、2007
年に既に 6 兆円を超えた(世界銀行調べ)炭素市場はさらに急激に拡大すると考えら
れる。
(出所)WCI ウェブサイト他各種報道資料
関連レポート
排出量取引については以下の関連レポートも併せてご覧ください。
・大和総研
丹本憲・真鍋裕子「排出量取引マーケットレポート」(隔週発行)
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日本証券業協会自主規制規則に基づき以下の事項の公表をいたします
㈱大和総研と大和証券SMBC㈱とは、㈱大和証券グループ本社を親会社とする同一のグループ会社であり、かつ大和証券SMBC㈱は
平成 19 年 9 月以降下記の銘柄に関する募集・売出し(普通社債を除く)にあたり主幹事会社となっております。
アルトナー(2163) ウェブマネー(2167) 成学社(2179) リニカル(2183) インフォマート(2492) ブロンコビリー(3091) スーパーバ
リュー(3094) 大西電気(3095) 物語コーポレーション(3097) 東京建物不動産販売(3225) 駐車場綜合研究所(3251) プレサンスコー
ポレーション(3254) アスコット(3264) 三井鉱山(3315) ネットイヤーグループ(3622) ベリサーブ(3724) シナジーマーケティング
(3859) トライウォール(3957) 東山フイルム(4244) ノエビア(4916) 日本電気硝子(5214) プロデュース(6263) ミマキエンジニア
リング(6638) ニホンフラッシュ(7820) 中央三井トラスト・ホールディングス(8309) マネースクウェア・ジャパン(8728) モリモト
(8899) オリックス不動産投資法人(8954) フロンティア不動産投資法人(8964) クリード・オフィス投資法人(8983) (銘柄コード順)
次頁以降に大和証券㈱・大和証券SMBC㈱より重要な注意事項がございますのでご一読ください。
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大和証券㈱のお客様へ
【重要な注意事項】
お取引にあたっての手数料等およびリスクについて
手数料等およびリスクについて
 株式等の売買等にあたっては、「ダイワ・コンサルティング」コースの店舗(支店担当者)経由で国
内委託取引を行う場合、約定代金に対して最大 1.20750%(但し、最低 2,625 円)の委託手数料(税
込)が必要となります。また、外国株式等の外国取引にあたっては、現地諸費用等を別途いただくこ
とがあります。
 株式等の売買等にあたっては、株価の変動による損失が生じるおそれがあります。また、外国株式等
の売買等にあたっては株価変動のほかに為替相場の変動等による損失が生じるおそれがあります。
 信用取引を行うにあたっては、売買代金の 30%以上で、かつ 30 万円以上の委託保証金が事前に必要
です。信用取引は、少額の委託保証金で多額の取引を行うことができることから、損失の額が差し入
れた委託保証金の額を上回るおそれがあります。
 非上場債券(国債、地方債、政府保証債、社債)を当社が相手方となりお買付けいただく場合は、購
入対価のみお支払いただきます。債券は、金利水準の変動等により価格が上下し、損失を生じるおそ
れがあります。外国債券は、金利水準の変動に加え、為替相場の変動等により損失が生じるおそれが
あります。
 投資信託をお取引していただく際に、銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸経費、
等をご負担いただきます。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。
ご投資にあたっての留意点
 取引コースや商品毎に手数料等およびリスクは異なりますので、上場有価証券等書面、契約締結前交
付書面、目論見書等をよくお読みください。
 外国株式の銘柄には、我が国の金融商品取引法に基づく企業内容の開示が行われていないものもあり
ます。こうした銘柄については、外国証券内容説明書をご覧ください。
商号等 :大和証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 108 号
加入協会:日本証券業協会、社団法人 投資信託協会、社団法人 日本証券投資顧問業協会、
社団法人 金融先物取引業協会
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大和証券SMBC㈱のお客様へ
【重要な注意事項】
広告等審査済
広告等における表示事項
(金融商品取引法第 37 条に基づく表示事項)
本書面と一緒にご提供いたします各資料に記載した情報に基づき弊社とお取引いただく場合は、次の事項に
十分ご注意ください。
 お取引にあたっては、商品の購入対価の他に、個々のお取引ごとに、あらかじめお客様と弊社との間で決
定した売買手数料(注)をいただきます。また、購入対価に含まれる場合や手数料をいただかないお取引も
ありますので、お取引の都度、ご確認ください。なお、非居住者のお客様につきましては、有価証券をお
預かりする場合には、最大で 1 年間に 2 百万円(税込)の常任代理人手数料をいただく場合があります。
 デリバティブ取引や信用取引等の場合、あらかじめお客様と弊社との間で決定した担保や委託保証金を差
し入れていただく場合があります。その場合、お取引の額は、通常、差し入れていただいた担保や委託保
証金の額を上回ります。
 金利水準、為替相場、株式相場、不動産相場、商品相場等の変動に伴い、金融商品の市場価格が変動する
こと等によって、損失が生じるおそれがあります。また、お取引の内容によっては、損失の額が差し入れ
ていただいた担保や委託保証金の額を上回るおそれがあります。
 弊社がご案内する店頭デリバティブ取引の売付け価格等と買付け価格等には差がある場合があります。
 金融商品の経理、税務処理については、事前に監査法人等の専門家に十分にご確認ください。
(注) 売買手数料の額は、その時々の市場状況や個々のお取引の内容等に応じて、お客様と弊社との間で
決定しますので、本書面上にその額をあらかじめ記載することはできません。
なお、実際のお取引にあたっては、必ず契約締結前交付書面等をよくお読みになり、お客様のご判断と責任
に基づいてご契約ください。
商号等
:大和証券エスエムビーシー株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 109 号
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会