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ISSN 1344-087X
A-11-2008
A-11-2008
YIES Annual Report 2007
山 梨 県 環 境 科 学 研 究 所 年 報
山梨県環境科学研究所年報
第 11 号
平成
年度
19
山 梨 県 環 境 科 学 研 究 所
環境にやさしい植物性大豆インキを使用しています。
平成 19 年度
山梨県環境科学研究所
プロジェクト研究 5
中山間地域における交流型地域環境資源管理システムの構築に関する研究
図 南アルプス邑野鳥公園を中心とした調査対象地域(早川町三里地区)
下図は集落範囲(家屋・耕作地)の変遷を示す。 1
プロジェクト研究 8
夏季の高温環境と心理的ストレスによる健康影響と熱中症警報システムの構築についての研究
図 3 デジタル温湿度計
図 4 百葉箱
図 5 猛暑日日数の分布(2007年 8 月)
図 6 熱帯夜日数の分布(2007年 8 月)
図 7 猛暑日の気温分布の例(2007年 8 月12日,左上:6 時,右上:11時,左下:13時,右下:14時)
2
基盤研究 1
山梨県内地下水の保全と管理 −化学的特性および物理的特性からの解明−
図 4 富士北麓の地下水面
基盤研究 4
山梨県レッドデータブック登載昆虫類の分布・生息環境モニタリングと保護・保全に関する研究
写真 山梨県版RDB絶滅危惧ⅠB類( EN )のチャマダラ
セセリ(左上)、絶滅危惧Ⅱ類( VU )のゴマシジ
ミ(右上)、同コヒョウモンモドキ(左下)
3
基盤研究 8
飲料水中微量元素の地域差がヒトに及ぼす影響に関する基礎的研究
写真 1 住民検診受診者への研究協力に関する説明
(右端に見えるのは、体脂肪率や内蔵脂肪レベルと測定する器械)
写真 2 、3 住民検診会場で研究協力を呼びかけるパネル
4
基盤研究13
衛星リモートセンシングによる地域環境の評価に関する研究
図 衛星画像データとLIDAR計測標高データの援用による青木ヶ原樹海周辺の森林の常緑林・落葉林区分結果
5
特定研究 2
住民主体による野生動物被害管理に関する研究
写真 1.放置された籾殻を食べるニホンザル。このような生ゴミは、ニホンザルを集落へ誘引する。
(2007年 1 月 富士河口湖町河口地区)
写真 3.モデルガンを用いてニホンザルを追払う「獣害対策支援
センター」の会員。(2007年 6 月 富士吉田市新倉地区)
写真 2.富士吉田市旭地区に設置された
サル自動接近警報システム
6
特定研究 4
高解像度衛星画像データ活用による森林管理情報把握に関する研究
図 2 衛星画像データと林班境界線の位置関係
特定研究 5
富士山の火山防災における観測及び情報の普及に関する研究
図 溶岩流シミュレーション 富士山北麓へ噴火流下したケース。噴火規模は富士山ハザードマップ検討委員会の「大規模噴火」を想定した。
7
特定研究 6
木質内装材が人の心と体に与える影響に関する研究
口絵 1 刺激画像。静止画像として黒( a )
、白( b )、壁紙( c )、木目( d )を作成した。壁紙画像は本所研究室の壁
紙を利用した。また木目画像は唐松材の画像データを基に作成した。これらを縦横約 1 mの正方形に拡大して
スクリーンに呈示した
8
A-11-2008
YIES Annual Report 2007
山梨県環境科学研究所年報
第 11 号
平成 19 年度
山梨県環境科学研究所
は じ め に
山梨県環境科学研究所は、
「研究」
「教育」
「情報」
「交流」の 4 つの機能を通じて、県民誰もが、安全
で健康、快適な暮らしをおくることができる県土の実現を支援するための中核施設として平成 9 年 4
月に設立されました。
研究分野につきましては、山梨の将来像を見据え、「自然と人との共生」をテーマとした研究を進め
るため「プロジェクト研究」
「基盤研究」
「特定研究」など多くの成果を上げてきたところであります。
当研究所は各種方面の環境問題等の変化などにも適切に対応できる研究施設として期待されているも
のであり、その成果が県内はもちろんのこと、国内外における地域の環境問題や地球環境問題の解決に
おいても貢献できるものと考えております。
今後は、さらに各部の研究課題等を検証する中で、自然的・地域的な特性を踏まえた取り組むべき課
題など、新たな研究テーマ等についても「自然環境・富士山火山研究部」
「環境健康研究部」
「地域環境
政策研究部」の 3 研究部のより充実した研究体制を図り、また、他の研究機関・大学等とも連携する中
で積極的な展開を図ってまいりたいと考えております。
環境教育・情報部門につきましては、各種事業・情報の展開を図る中で、本県の環境教育・情報の拠
点施設として、多様なプログラムの開発や学習機会の充実はもちろんのこと、指導者の育成・支援、各
種環境情報の提供など一層の推進を図っていきたいと考えております。
今後とも、より充実した環境保全等の支援等に努めていく所存ですので、県民の皆様をはじめ、関係
各位のご理解とご協力をお願い申し上げます。
平成20年 9 月
山梨県環境科学研究所 所 長 荒 牧 重 雄 目 次
1 研究所の概況 …………………………………………………………………………… 15
1 − 1 目 的 ………………………………………………………………………… 15
1 − 2 機 能 ………………………………………………………………………… 15
1 − 3 組 織 ………………………………………………………………………… 15
2 研究活動 ………………………………………………………………………………… 16
2 − 1 研究概要 ………………………………………………………………………… 17
2 − 1 − 1 プロジェクト研究 ……………………………………………………… 17
1 山梨県内の湖沼堆積物に記録された環境情報の時空分析 ………………… 17
2 富士山五合目樹木限界の生態系に撹乱が及ぼす影響の評価に関する研究 … 19
3 富士山における環境指標生物を対象にした保全生物学的研究 …………… 21
4 森林と高原の環境を活用したストレス軽減法に関する研究 ……………… 24
5 中山間地域における交流型地域環境資源管理システムの構築に関する研究 … 27
6 生ごみ由来生分解性プラスチックの生産と利用に関する
ライフサイクルアセスメントの研究 … 29
7 廃棄プラスチック中に含まれる化学原料の回収技術に関する研究 ……… 32
8 夏季の高温環境と心理的ストレスによる健康影響と
熱中症警報システムの構築についての研究 … 33
2 − 1 − 2 基盤研究 ………………………………………………………………… 38
1 山梨県内地下水の保全と管理
−化学的特性および物理的特性からの解明− …… 38
2 富士山森林限界付近の植生の生態学的研究 ………………………………… 40
3 富士北麓野尻草原群落の維持機構に関する研究 …………………………… 42
4 山梨県レッドデータブック登載昆虫類の
分布・生息環境モニタリングと保護・保全に関する研究 … 43
5 寒冷時の甲状腺ホルモンと脂肪組織の相互作用に関する研究 …………… 45
6 精神的ストレス環境下の認知処理機構とストレス増減作用に関する研究 … 47
7 環境要因変化に起因するストレスが体内恒常性に与える影響についての研究 … 48
8 飲料水中微量元素の地域差がヒトに及ぼす影響に関する基礎的研究 …… 50
9 微量バナジウムの脂質代謝への影響に関する研究 ………………………… 51
10 山梨県内で生じる廃棄プラスチックの新しい処理手法に関する研究 …… 53
11 廃棄プラスチック処理に関するライフサイクルアセスメントの研究 …… 54
12 自然環境情報からの環境計画指標抽出手法の開発 ………………………… 57
13 衛星リモートセンシングによる地域環境の評価に関する研究 …………… 58
14 地域における自然体験活動を通した環境認識の形成に関する研究 ……… 59
2 − 1 − 3 特定研究 ………………………………………………………………… 61
1 富士山青木ヶ原樹海におけるエコツアーに伴う
環境保全モニタリングシステム構築に関する研究 … 61
2 住民主体による野生動物被害管理に関する研究 …………………………… 64
3 学校林の教育利用活動の効用及び障害についての調査研究 ……………… 66
4 高解像度衛星画像データ活用による森林管理情報把握に関する研究 …… 67
5 富士山の火山防災における観測及び情報の普及に関する研究 …………… 69
6 木質内装材が人の心と体に与える影響に関する研究 ……………………… 70
2 − 1 − 4 総合理工学研究機構研究テーマ ……………………………………… 72
2 − 1 − 5 受託研究 ………………………………………………………………… 72
2 − 1 − 6 外来研究者研究概要 …………………………………………………… 73
2 − 2 外部評価 ………………………………………………………………………… 74
2 − 2 − 1 課題評価委員 …………………………………………………………… 74
2 − 2 − 2 平成19年度第 1 回課題評価の概要 ………………………………… 74
2 − 2 − 3 平成19年度第 2 回課題評価の概要 ………………………………… 75
2 − 3 セミナー ………………………………………………………………………… 76
2 − 4 学会活動 ………………………………………………………………………… 77
2 − 5 外部研究者等受け入れ状況 …………………………………………………… 77
2 − 6 助成等 …………………………………………………………………………… 78
2 − 7 研究結果発表 …………………………………………………………………… 78
2 − 7 − 1 誌上発表リスト ………………………………………………………… 78
2 − 7 − 2 口頭・ポスター発表リスト …………………………………………… 80
2 − 8 行政支援等 ……………………………………………………………………… 83
2 − 9 出張講義等 ……………………………………………………………………… 84
2 −10 受賞等 …………………………………………………………………………… 88
3 環境教育 ………………………………………………………………………………… 89
3 − 1 環境教育の実施・支援 ………………………………………………………… 89
3 − 1 − 1 環境学習室 ……………………………………………………………… 89
3 − 1 − 2 生態観察園・自然観察路ガイドウォーク …………………………… 89
3 − 1 − 3 学習プログラム「環境教室」
………………………………………… 89
3 − 1 − 4 環境講座 ……………………………………………………………………90
3 − 1 − 5 環境調査・環境観察 …………………………………………………… 91
3 − 1 − 6 イベント ………………………………………………………………… 93
3 − 1 − 7 支 援 ………………………………………………………………………94
3 − 2 指導者の育成・支援 …………………………………………………………… 95
3 − 3 調査・研究 ……………………………………………………………………… 95
3 − 4 環境学習資料作成 ……………………………………………………………… 96
3 − 5 情報提供 ………………………………………………………………………… 96
4 環境情報 ………………………………………………………………………………… 97
4 − 1 資料所蔵状況 …………………………………………………………………… 97
4 − 2 利用状況 ………………………………………………………………………… 97
4 − 3 インターネットによる情報提供 ……………………………………………… 97
4 − 4 環境情報提供システム ………………………………………………………… 98
4 − 5 出版物 …………………………………………………………………………… 98
5 交 流 …………………………………………………………………………………… 100
5 − 1 公開セミナー・シンポジウム ………………………………………………… 100
5 − 2 利用者数 ………………………………………………………………………… 103
6 研究所の体制 …………………………………………………………………………… 104
6 − 1 構成員 ……………………………………………………………………………
6 − 2 沿 革 ……………………………………………………………………………
6 − 3 予 算 ……………………………………………………………………………
6 − 4 施 設 ……………………………………………………………………………
6 − 5 主要研究備品 ……………………………………………………………………
104
105
105
106
106
1 研究所の概況
1 − 1 目 的
交 流
県民や国内外の研究者が、環境をテーマとして交流す
自然は、私たちの生活や行動によって汚れた空気や水
る場や機会を提供することにより、環境保全活動や研究
をきれいにしたり、気候を緩和するとともに、私たちの
活動の活発な展開、ネットワークの拡大を支援する。 心にうるおいややすらぎを与えてくれる。
今日の環境問題を解決し、快適な生活を送るために
は、こうした自然の恵みを十分に受けることができる地
域づくりを進めるとともに、私たち自身、環境に負荷を
1− 3 組 織
かけない生活を心がけ、自然と人の生活とが調和した県
土を築いていくことが不可欠である。
環境科学研究所は、本県の将来を見据え、予見的・予
防的な視点に立った環境行政の展開を支援することを基
本姿勢として、
「研究」
、
「教育」
、
「情報」
、
「交流」の各
機能を通じて、こうした県土の実現を支援する。
健康で
安全、快適な
自然と人との共生
山梨の実現
●自然と人の生活とが調和した地域の実現の支援 ●環境に配慮した日常生活の実践や環境保全活動の支援
1 − 2 機 能
研 究
山梨の将来を見据え、
「自然と人との共生」をテーマ
とした研究を進めることにより、地域の自然と人の生活
とが調和し、自然がもつ浄化能力が十分発揮できる地域
づくりを支援する。
教 育
子供から大人まで、幅広く県民に環境学習の場や機会
を提供することにより、県民一人ひとりが環境への関心
を高め、日々の生活が環境に配慮したものとなるよう支
援する。
情 報
環境に関する情報を幅広く収集し、わかりやすく提供
・倫理委員会
・動物実験倫理委員会
・動物運営委員会
・中央機器運営委員会
・広報委員会
・編集委員会
・ネットワーク管理委員会
・毒物・劇物及び特別管理産業廃棄物管理委員会
することにより、県民の環境学習や環境保全活動、快適
環境づくりに向けた施策や研究所業務の効率的推進を支
援する。
15
2 研究活動
○研究の種類
し、生物多様性保全を考察する保全生物学的研究であ
プロジェクト研究
えている野生動物の分布・生態を解明し、その管理手法
中長期的な視点から研究所として取り組む戦略的な研
や保全を考察する野生動物管理学的研究である。前者は
究で、所員がプロジェクトチームを組み、国内外の研究
主にプロジェクト研究「富士山における環境指標生物を
機関とも連携しながら 3 ∼ 5 年程度の期間を定めて行
対象にした保全生物学的研究」に、後者は特定研究「住
う研究。
民主体による野生動物被害管理に関する研究」に関与し
り、もう一つは、県内の農林業に対して大きな影響を与
ている。
基盤研究
プロジェクト研究を推進し、新たな課題に対応する
ため、研究員が各専門分野において取り組む基礎的な研
究。
環境健康研究部
環境生理学研究室
自然資源が人にもたらす快適性について,自然のもつ
特定研究
ポテンシャルと,それを受容する人間の特性の両面から
緊急の行政課題に対応するため、2∼3年程度の期間
明らかにすることを目指している。平成19年度は,プロ
を定め、他の試験研究機関とも共同して取り組む研究。
ジェクト研究「森林と高原の環境を活用したストレス軽
減法に関する研究」を継続するとともに、特定研究「木
○研究体制
質内装材が人の心と体に与える影響に関する研究」を開
自然環境・富士山火山研究部
肪組織の相互作用に関する研究」の最終年の実験を行
地球科学研究室
トレス増減作用に関する研究」を開始した。脳科学、生
人間の一生を遥かに超える時間のオーダーで地球は変
理学、心理学などの手法を総合的に用いて、心身の健康
化し、その姿を変えてきた。この現象は、地球表層部の
の維持・向上を目指した環境資源の活用法について研究
岩石圏と大気圏の境界面における風化・侵食を始めとす
を行っている。
始した。基盤研究では、「寒冷時の甲状腺ホルモンと脂
い、さらに「精神的ストレス環境下の認知処理機構とス
る物質循環システムの中で行われてきたものである。こ
のシステムに規制され、ヒトを含む生物が育まれてき
生気象学研究室
た。いいかえれば、その時その時の地球表層部の岩石・
生気象学とは「気象、気候と人間を含むさまざまな種
地層等の状況が水を媒体にして生物類に影響を与えてき
類の生き物との関係を研究する学問」であり、裾野が広
た、ということである。この物質循環システムを過去か
く人体生気象、動物・植物生気象や都市計画など様々な
ら現在までについて明らかにし、その上で将来の自然環
専門分野を多く含んでいるのが特徴である。当研究室で
境変動を予測しようという研究を進めている。
はその中で気象要因が健康に与える影響を研究してい
る。気象要因の中で特に「温度」に着目し研究を行って
植物生態学研究室
きており、甲府盆地での気候環境の調査と健康問題(熱
本県の森林、草原、湖沼などの自然生態系における植
中症)との因果関係についての研究や実験室内での動物
物の分布や生態を明らかにする。これを基本として、植
モデルを使用した気温変化が生体に対して起こすストレ
物への地球環境変化の影響を予測するためのプロジェク
ス作用のメカニズムの解明を行っている。
ト研究や基盤研究を行う。具体的なテーマとしては、
(1)
富士山五合目樹木限界の生態系に攪乱が及ぼす影響の評
環境生化学研究室
価に関する研究、
(2)富士山森林限界付近の植生の生態
環境中には、自然界由来のものや内分泌攪乱化学物質
学的研究、
(3)富士北麓野尻草原群落の維持機構に関す
(環境ホルモン)のように人間活動に由来するものなど、
る研究などがある。
様々な化学物質が存在する。化学物質の濃度は自然環境
の違いや、人間活動の質と量の違い等によって地域ごと
動物生態学研究室
に異なり、生体に対して種々の影響を与えている可能性
主に二つの研究に取り組んでいる。一つは県内の様
がある。本研究室では、水に含まれる微量元素を中心と
々な自然環境下に生息する動物の生息状況や生態を解明
して、県内の水の特性の現状を調べると共に、環境中に
16
存在する化学物質の生体影響とその機構に関する研究に
取り組んでいる。
2 − 1 研究概要
2 − 1 − 1 プロジェクト研究
地域環境政策研究部
環境資源研究室
資源とエネルギーを有効活用し、地球の環境保全を推
進させるために、山梨県内で発生する廃棄プラスチック
プロジェクト研究 1
山梨県内の湖沼堆積物に記録された環境情報の時空分
析
や生ごみなどの様々な廃棄物の安全な処理方法や新しい
リサイクル技術の研究開発を行う。同時に各廃棄物処理
担当者
による環境への様々な影響を高度なコンピューター計算
地 球 科 学 研 究 室:輿水達司・内山 高・石原 諭
により、予測評価するLCA(ライフ・サイクル・アセ
環境計画学研究室:杉田幹夫
スメント)の先端研究を進める。両研究を融合して、山
県衛生公害研究所:小林 浩
梨県に適したリサイクル技術の早期開発とその実用化を
東海大学海洋学部:根元謙次
目指している。
研究期間
環境計画学研究室
平成19年度∼23年度
衛星画像や空中写真を利用した上空からのリモートセ
ンシング技術活用を基盤に、私たちの身近な自然環境の
研究目的、および成果
広域かつ客観的な現状把握をはじめ、土地利用を含めた
近年の地球温暖化等をはじめとする環境問題の解明に
自然環境の変化をモニタリングする手法を研究開発す
あたり、観測記録などを基に過去からの変化を基に将来
る。さらに、GIS(地理情報システム)を核として、人
対策を試みる場合、よりどころとする記録が数十年、長
との関わりの観点からみた地域環境の維持・保全、身近
い場合でも百年程度といった短期間に制約されるため、
な自然環境の活用、都市環境の改善などを目指した研究
精度の高い将来予測を、しばしば困難にしている。これ
を進めている。その結果として得られる技術は環境保全
に対し、湖底堆積(たいせき)物や海洋底堆積物を材料
にとどまらず、各種調査、分析、対策立案の基盤データ
に検討した場合、より広範な年代幅につき環境変化の記
を提供することを通じ、社会に貢献すると期待される。
録を読みとることを可能とし、結果として精度の高い将
また、植生学、都市・地方計画、その他の専門領域にわ
来予測に寄与する。そのため、内陸地域においては湖底
たる知見、衛星データや空中写真などの資料を総合し、
堆積物等をボーリングコアとして採取し、この中に記録
GISなどを基盤的な技術として分野横断的な研究を行
されている各種の環境情報を解析し、さらに歴史的変化
い、政策の立案、実施、モニタリングという環境計画の
を明らかにする研究が、国の内外において活発に実施さ
プロセスをサポートする。
れるようになってきた。
このような背景から、先行プロジェクト研究におい
人類生態学研究室
て、富士五湖湖底堆積物をボーリングコア採取し、富士
人々は、自らを取り囲む環境を変化させていくととも
山の過去からの活動につき地域特性の解明をはじめ、火
に、その環境に強く制限されて生活している。地域の環
山防災上重要なデータを明らかにした。本プロジェクト
境、特に身近な自然環境が、住民のライフスタイルの変
研究に関連する成果として、環境変動の方面からは、富
化とともにどのように変化するか、そして、身近な環境
士五湖地域における過去からの大気環境等の歴史的変遷
の変化とライフスタイルの変化が相互に関連しながら地
の情報を明らかにできた。また、中国大陸からの黄砂(こ
域住民の生活にどのような影響をおよぼすかについて、
うさ)飛来量変化についても検討し、東アジア地域の環
個々の地域の特性の違いを考慮に入れたフィールド調査
境変化の規則性を知ることができた。さらに、地球規模
を実施することによって明らかにする。さらに、人と
の環境変化につき概ね10年周期の規則性についても湖
身近な自然環境との関係を見直し、地域の環境資源を持
底堆積物から新たに見出した。このような成果の中には
続的に活用することによって、自然環境の保全と住民の
地球自身による寒・暖のリズムからもたらされる現象の
健康で快適な生活が両立したいわゆる“健康な地域生態
ほかに、人為的活動の結果としての地球温暖化現象も包
系”の構築を目指す研究を進めている。
含されている。
そこで、本プロジェクト研究においてはこのような研
究方針を富士山麓地域は勿論、さらに甲府盆地一帯にお
ける湖沼の堆積物に分析対象を拡げ、堆積物中に記録さ
17
れている環境変遷の歴史的解明を図り、将来の山梨県に
り、黄砂識別に新方法を提案できた。その上で、具体的
おける環境予測の基礎資料を構築する。
な富士五湖ボーリングコア試料について、時代を追った
黄砂飛来量の変遷を検討したところ、過去一万年間の中
(1)黄砂の長期間の環境変遷解析
で最近百年間が最大であることが明らかになった。これ
毎年春になると中国大陸から飛来する黄砂は、日本人
は、中国大陸における人為的な開発行為が、結果として
にとって身近な風物詩になっている。この黄砂は、最近
砂漠化に拍車をかけたとみて、大きな矛盾はないと判断
我々が富士五湖湖底から採取したボーリングコアの中に
した。このように、湖底堆積物中の石英粒子について新
も、長い時代にわたって記録されている。富士五湖湖底
しい視点からの厳密な化学分析を実施することにより、
ボーリングコアには、富士山噴火の歴史や富士五湖周辺
これまで見えなかった気候変動の様子が読み取れるよう
の環境変化などの情報が記録され、このうち黄砂には、
になってきた。
地球規模の気候変動の謎を解く鍵が隠されており、湖底
ところが、先行研究では現在から過去 1 万年前頃ま
のボーリングコア試料を材料にして解析することによっ
で遡る試料につき検討したのみであり、それ以前の状況
て、多様な環境の情報が読み取れる(図 1 )
。
については未解決のままであった。この事情を踏まえ本
年度は富士五湖湖底堆積物の約 2 万年まで遡る試料に
つき、黄砂飛来量の検討を試みた。その結果、最近約百
年間の人為影響が端的に認められる時代を除いてみた場
合、2 万年前あたりから幾分古い、いわゆる最終氷期頃
に黄砂の日本列島への飛来量が、分析対象とした試料の
中では、最大であることが把握できた(図 2 )。すなわ
ち、最近の 2 万数千年間で最も寒い時代の地球において
は、黄砂が日本列島に最も多く飛来していることが認め
られた。逆に、この期間において比較的温暖な縄文時代
半ば頃の黄砂の飛来は少ない傾向が認められた。このこ
とは、既に大洋底や南極氷床等から採取されたコア試料
につき検討されている地球史の寒暖の環境変遷の規則性
を支持するものである。すなわち、内陸地域の湖底堆積
物に含まれる黄砂を材料に、過去からの気候変動のリズ
ミカルな規則を実証したものである。
図 1:湖底堆積物の各種分析概念図
このような研究を進める背景として、東アジア地域に
おける気候変動が黄砂の発生量に反映されているとの指
摘がなされ、地球温暖化の問題に対する一つの研究方針
として、湖底や海底の堆積物を用いて時代を追った黄砂
量の変動を明らかにし、過去から現在にわたる気候の復
元を試みる研究が活発になってきている。ところが、従
来の研究においては、黄砂粒子の識別において厳密さを
欠く場合が多く、そのために日本列島およびその周辺域
図 2:富士五湖の黄砂飛来量変遷
への黄砂飛来量の変遷を議論する上で、最も基本となる
黄砂の定量の方法に問題があると我々は考えた。
しかも、この寒暖の変化と黄砂飛来量の対応関係が、
そこで、先行プロジェクト研究において走査型電子顕
仮に現在まで継続しているとすると、最近約百年間にお
微鏡とエネルギー分散型X線分析法を組み合わせた方法
ける黄砂飛来量の増加傾向(図 2 )は、気候が寒冷でな
により、試料中の個々の石英粒子の不純物組成を分析す
ければ説明できない、という矛盾を生じることになる。
る新規な方法を試み、その結果、個々の石英粒子を指標
結局、近年大きな環境問題になっている地球温暖化現象
とすれば、黄砂起源の石英を日本列島の岩石・土壌由
が人為的な原因であることを、黄砂飛来量の変遷を時系
来の粒子から、ある程度明瞭に識別することが可能にな
列的に検討することにより明らかにできた。
18
プロジェクト研究 2
富士山五合目樹木限界の生態系に撹乱が及ぼす影響の
評価に関する研究
低木が密生し、森林への復活過程を見ることが出来る。
このように、自然撹乱は五合目付近の自然に大きな影響
を与えている。
さらに、富士山五合目付近は、富士北麓を訪れた非常
に多くの観光客が集中する場所である。また、観光客だ
担当者
けでなく、登山者やキノコ、コケモモ等の林産物採取者
植物生態学研究室:中野隆志・安田泰輔・石原 諭・
等が集中する場所でもある。このため一般観光客やコケ
古屋寛子
モモやキノコの採取などによる踏みつけといった人為
地 球 科 学 研 究 室:輿水達司・内山 高
的撹乱が植物や土壌動物の分布や生態に影響を与えてい
茨
城
大
学:山村靖夫
る。
東
邦
大
学:丸田恵美子
以上のように、雪崩などの自然撹乱や、人為による撹
静
岡
大
学:増沢武弘
乱が富士山の自然に及ぼす影響を評価する研究は、富士
北
里
大
学:坂田 剛
山の植生環境を理解し、富士山の自然環境を保護保全し
昭
和
大
学:伊藤良作・萩原康夫
ていくうえで避けては通れない研究課題である。本研究
㈶電力中央研究所環境科学研究所:梨本 真
では、1 )雪崩などの自然攪乱が及ぼす影響と、2 )人
為攪乱が及ぼす影響を評価することを目的にした。
研究目的、および成果
はじめに
方法、結果、及び考察
富士山は山梨県が世界に誇る山岳であり、貴重で豊か
1 )雪崩などの自然攪乱が及ぼす影響
な自然が存在している。富士山は、火山であること、独
本年度は、研究の初年度にあたり、調査地の決定や研
立峰であること、標高が著しく高いこと、歴史が新しい
究の方向性を確認することが主な目的となり、共同研究
ことなど他の山岳に比べて特異で、そこに成立する生態
者とともにいくつかの雪崩跡地を検証し、調査地の決定
系も他の山岳と比較し特性に富んでいる。さらに、富士
を行った。その結果、いくつかの場所を永久調査区とし、
山にはレッドデータブックに記載された動植物の絶滅危
毎木調査を行うことに決定した。特に1997年と2004年
惧種、絶滅危惧植物群落が多く見られる。このように富
に 2 度の大きなスラッシュ雪崩が生じた場所、雪崩か
士山の貴重で豊かな自然は県民の大きな財産である。こ
ら10年以上経過した場所、現在雪崩跡に成立したと思
の貴重な富士山の自然を次世代に引き継いでいくことの
われるカラマツ林、2004年の雪崩で大きな被害を受け
重要性に鑑み、本県は静岡県と共同で「富士山憲章」を
た場所を調査地として選んだ。調査地は、雪崩により破
制定し、
「富士山を守る指標」を作成するなど富士山保
壊の種類(林冠を構成する樹木の破壊の有無、土石の堆
全対策の推進を図っている。
積の有無と厚さ)といつ雪崩にあったかによりタイプ分
富士山五合目付近から上部はスコリア荒原が広がって
けし、それぞれの場所を比較することで雪崩の影響を評
おり、現在カラマツなどの先駆樹種がスコリア荒原に定
価することとした。いくつかの場所で、毎木調査用永久
着し、森林限界が上昇している過程にあるといわれてい
方形枠を張り、毎木調査を開始した。図 1 に1997年大
る。五合目付近のスコリア荒原上の草本群落、カラマツ
流し近くでおこったスラッシュ雪崩後の樹木の分布図を
等が矮性化したクルムホルツ、天然のカラマツ林などは
示した。この場所は2004年にもスラッシュ雪崩が生じ
他の山岳に類を見ない富士山を特徴づける植生である。
ている。図左側が森林方面、図上側が斜面上部となって
一方で、富士山五合目付近は、富士北麓に散らばって
いる。この雪崩は、スラッシュ雪崩により上層木のみ破
いた観光客の多くが訪れる、非常に観光客が集中する場
壊され、林床にはスコリアが堆積せず流れ去り、元の土
所である。富士山五合目の富士山を特徴づけるこれらの
壌は残っている場所で、シラビソの前生稚樹が残って
植生は、観光客に強烈な印象を与えることで、非常に重
いた。カラマツおよびダケカンバ、ミネヤナギは典型的
要な観光資源であるともいえる。
な陽樹として知られており、出現した稚樹は雪崩後に発
また、富士山は日本の象徴であり、多くの外国から
芽したものが多く見られた。カラマツとダケカンバの稚
の観光客が訪れるのは周知の事実である。富士山五合目
樹の分布を見ると、枠の原点から約 3 mのところできれ
は、京都や奈良と同様に世界に誇る観光地となってい
いに分かれていた。すなわち、森林よりにカラマツの稚
る。
樹が、雪崩の中心よりにダケカンバの稚樹が多く見られ
ところで、富士山五合目から上部は、自然撹乱すなわ
た。シラビソの前生稚樹が見られたのは、森林よりの
ち、雪崩が頻発する地域である。最近では、1997年 7
4 mの場所までであった。このことはこの場所までが、
月、2004年12月に大規模なスラッシュ雪崩があり、特
雪崩以前に森林であった可能性型が高く、上層木のみを
に1997年の雪崩ではカラマツ林が破壊された。現在、
破壊するようなスラッシュ雪崩では、雪崩が生じる前森
19
林があった場所ではカラマツが、開けていた場所ではダ
ケカンバが出現すると考えた。より陽樹であり低木とな
るミネヤナギ、ミヤマハンノキは、森林から最も離れた
位置に見られた。ミネヤナギ、ミヤマハンノキともに
集中的に分布しており、親木が倒れた後に、株から萌芽
したものではないかと考えた。したがって、本調査地の
9 m付近は1997年の雪崩以前は、カラマツ林の林縁でミ
ネヤナギやミヤマハンノキの低木林が存在していたと考
図 1 富士山五合目1997年の雪崩跡における稚樹の分布
えた。
シラビソの樹齢を芽鱗痕から推定した。その結果。雪
崩後に出現した個体も見られることがわかったが、雪崩
前からの前生稚樹も多く見られ、最長の個体では21歳
であった(図 2 )
。
図 3 に同じ雪崩後で、シラビソの稚樹が多く見られる
場所に 5 m× 5 mの方形枠をとり同様に分布を調べると
ともに、稚樹の高さを測定した。その結果、陽樹である
ダケカンバやカラマツが前生稚樹であるシラビソの高さ
を追い抜き、今後、この雪崩跡地は、ダケカンバやシラ
ビソといった、陽樹の林へと変化していくと考えた。
以上まとめると、上層木のみが破壊されるようなスラ
ッシュ雪崩が生じた場合、たとえシラビソの前生稚樹が
あっても、陽樹であるカラマツまたはダケカンバの林に
図 2 シラビソ稚樹の年齢構成
変化していくと考えた。さらに、より谷沿いの部分には
ダケカンバが優占する林が、より森林よりの尾根地形
に近い場所にはカラマツが優占する林が成立すると考え
た。今後さらに多くの場所で、方形枠を設置し、雪崩が
五合目付近の植生に及ぼす影響を解明するとともに、方
形枠を永久方形区として整備し、今後も測定を続けてい
けるようにしていく予定である。
また、2004年に大規模な雪崩があった御庭洞門では
3 次元レーザープロファイラで地形測量を行った。レー
ザープロファイルを 1 年おきに行うことで、雪崩後の地
形変化を明らかにする予定である。
2 )人為攪乱が及ぼす影響
人為的攪乱は、人による踏みつけを対象とすることに
した。本年度は、五合目付近を歩き調査地の決定を行っ
た。踏みつけの程度を定量化することは困難であること
から。土壌硬度計を用い、高踏みつけ区と低踏みつけ区
を設置することにした。一方で、踏みつけからの回復過
程を見ていくために、立ち入り禁止区を設置し、植生の
回復過程と土壌動物の回復過程を見ることで共同研究者
と合意し、場所を決定した。また、踏みつけは、一見地
上部だけのもののように見えるが、土壌を圧迫すること
で地下部にも影響を及ぼす可能性がある。したがって、
地上部のみ刈り取りを行った場所を作成し、回復過程を
観察していくのが良いという結論になった。
20
図 3 高さサイズクラスごとの個体数( 5 m× 5 m )
プロジェクト研究 3
富士山における環境指標生物を対象にした保全生物学
的研究
数が増加することが判明した。同様の関係は、多様性指
数( H' )の間にも認められ(図 2 )、半自然草原のチョ
ウ類群集の多様性の維持に、人的管理(草刈り)が重要
な役割を持つことが示唆された。
担当者
動 物 生 態 学 研 究 室:北原正彦・吉田 洋・
古屋寛子・小林亜由美
自然体験計画ひめねずみ社:白石浩隆
野 生 動 物 保 護 管理事務所:姜 兆文
研究期間
平成19年度∼平成24年度
研究目的
山梨県環境基本計画の中で、本県行政が重点的に取り
組む施策に「富士山及び周辺地域の環境の保全」がある。
本研究は富士山に生息する環境指標性の高い生物群を対
象に、その保全生態を解明することで、生物多様性保全
図 1.各調査区のチョウ類の総種数と 人的管理の程度との相関関係。
の面から本施策推進に寄与することを目的としている。
具体的には、昆虫類・小型哺乳類については、生態系
の管理形態や生態系の違いと多様性パターンの関係を解
明する。大型哺乳類については、行動パターンと土地利
用状況との関連性を把握し、生活基盤としての景観構造
の機能を評価する。以上の調査・研究を通じて、富士山
とその周辺域における生物多様性保全の在り方を探求す
る。
研究成果
研究期間初年にあたる今年度は、昆虫類(チョウ類)、
小型哺乳類および大型哺乳類(ツキノワグマ)で予備的
な成果を得ることができた。
図 2.各調査区のチョウの種多様性と 人的管理の程度との相関関係。
(1)チョウ類
富士山麓の半自然草原で、人的管理(草刈り)様式
一方、環境省認定のレッドリスト種は全 7 種が確認さ
の違いがチョウ類の多様性に及ぼす影響について調査し
れたが、全地区共に 4 − 5 種記録され、地区間の相違
た。調査は2007年 5 月より10月まで行った。調査区を
はほとんどなかった。しかし、ヒメシジミ(図 3 )
、ヒ
人的管理段階の異なる 6 地区に分けて、各々で月 2 回、
メシロチョウ、ホシチャバネセセリ(図 4 )等、管理段
トランセクト・カウント法を用いてチョウ類成虫の個体
階の高い地区で密度の高い種が存在し、一部のレッドリ
数モニタリングを実施した。
スト種の保全には人的管理が重要な役割を持っているこ
調査区の管理の段階(程度)は、1 )管理なし、2 )
2002年まで管理、その後放置、3 )2006年まで管理、
とが示唆された。
(2)小型哺乳類
その後放置、4 )毎年秋に草刈りを実施、刈った草はそ
調査地として、富士北麓の主要溶岩流である青木ヶ原
のまま放置、5 )毎年秋に草刈りを実施、刈った草は外
溶岩流・剣丸尾溶岩流・鷹丸尾溶岩流を選択して、調査
に持ち出す、の 5 段階が認められた。1 から 5 に進むに
地ごとに小型哺乳動物の分布・種構成などを調査した。
つれて人的管理段階が高くなると考えた。
・調査地 1 青木ヶ原溶岩流
解析の結果、管理の程度とチョウ類群集の総種数の間
富士河口湖町の東海自然歩道沿いで精進湖民宿村周
には、有意の正の相関関係が認められ( r=0.899,P<
辺にあたる。標高約920∼950m 。西暦864年∼866年に、
0.05)
(図 1 )
、人的管理段階が高まるほどチョウ類の種
現在の精進口登山道一合目付近にある長尾山をはじめと
21
国立公園特別保護地区に該当するために、調査地からは
除外した。
調査手法は、初夏および晩秋の 2 シーズンに捕獲によ
る定量調査を行った。捕獲には、シャーマンタイプのラ
イブトラップを用いた。各々の調査地に100m×100mの
調査エリアを設定し、シャーマントラップ50個をラン
ダムに設置し、一晩経過したのちに回収し、捕獲された
個体を同定・カウントした。誘因のためのエサは、ヒマ
ワリの種を用いた。捕獲された個体は同定後現地に放獣
した。
初年度の調査で予報的記述に留めるが、全般にヒメネ
ズミの捕獲頭数が多く、富士山の、特に溶岩流上に再生
図 3.ヒメシジミの各人的管理段階における生息密度
・発達した森林にはヒメネズミが圧倒的に優位であるこ
とが今回の調査からも確認された(表 1 )。溶岩流間の
差はあまり明白ではなかったが、青木ヶ原溶岩流におい
てネズミ類の捕獲頭数が最も多かった。これは、青木ヶ
原樹海が 3 つの溶岩流間では、もっとも人手の加わっ
ていない原生状態にあることが起因していると考えられ
る。これに対し、剣丸尾溶岩流や鷹丸尾溶岩流は、アカ
マツを選択的に残してきた二次林的要素が関係したと思
われる。
表 1.各調査地における捕獲されたネズミ類と捕獲頭数
調査地
図 4.ホシチャバネセセリの 各人的管理段階における生息密度
ヒメネズミ
アカネズミ
スミスネズミ
合計
鷹 丸 尾
8
2
5
15
剣 丸 尾
12
3
0
15
青木ヶ原
15
0
3
18
合計
35
5
8
48
する寄生火山の噴火によって流出した溶岩流である。現
在は、その溶岩流の上にツガやヒノキなど常緑針葉樹を
中心とした原生林を形成し青木ヶ原樹海と呼ばれてい
る。なお、精進口登山道沿いおよびその東側は国立公園
特別保護地区にあたり調査地からは除外した。
・調査地 2 剣丸尾溶岩流
富士吉田市のスバルライン沿い、生物多様性センター
北側にあたる。標高約930∼980m 。西暦937年に富士山
八合目付近より噴火流出したと推測される溶岩流。この
調査地は、アカマツの優占林であり、青木ヶ原樹海とは
全く樹相が異なる。ここは明治∼昭和初期にかけて薪炭
林としての利用やアカマツ植林の記録が残っており、人
為的な面を含んだ二次林と考えられた。
図 5.調査地ごとにみたネズミ類の捕獲頭数の割合
・調査地 3 鷹丸尾溶岩流
山中湖村の旧東海自然歩道北側でハリモミ純林保護
さらに 3 つの溶岩流共に、ヒメネズミの生息優占度が
区北側にあたる。標高約930∼950m 。西暦800∼802年
高いことは共通だが、その他のネズミ類の種数や生息割
に富士山六合目付近より噴火流出したと推測される溶岩
合に違いが見られることも判明した(図 5 )。まだ単年
流。調査地はアカマツ優占林で、南側には樹齢250年ほ
度の調査なので、その傾向が普遍性のあるものなのかど
どのハリモミ林があり青木ヶ原、剣丸尾とも景相が異な
うかやそれを生じるメカニズムについては、次年度以降
る。なお、ハリモミ純林は国指定の天然記念物ならびに
の課題としたい。また、ネズミ類を指標にした多様性・
22
生態系保全の在り方についても次年度以降考察していき
長い期間での調査が必要である。
たい。
(3)大型哺乳類(ツキノワグマ)
研究期間初年にあたる今年度は、捕獲調査と餌の指標
と考えられるミズナラ種子の豊凶を調査した。
・ツキノワグマの捕獲調査
2007年 6 月∼11月に、富士山北麓の県有林内にドラ
ム缶式捕獲檻10基を設置し、ツキノワグマの捕獲を試
みた。捕獲調査の結果を表に示す(表 2 )
。今年度は、
オスのツキノワグマ 2 頭を捕獲した(図 6 )
。
表 2.ツキノワグマの捕獲計測記録
体重 体長 捕獲地点の
(㎏) (㎜) 標高( m )
個体№
捕獲年月日
性別
1
2007年 8 月16日
♂
70
924
1410
2
2007年 9 月 3 日
♂
40
649
1370
図 7.ミズナラ種子の落下密度(2004年∼2007年)
平均値+標準偏差
表 3.ミズナラ落下種子密度( g/㎡)の年次変化
調査地
胸高断面積合計 種子落下密度
(㎡/ha )
( g/㎡)
文 献
豊作年
栃木県 日光市
26∼30
19.5∼21.3
Kanazawa(1982)
岐阜県 白川村
46.6
17.2
溝口ほか(1997)
岐阜県 根尾村
31.5
24.1
吉田ほか(2003)
山梨県 鳴沢村
8.2
10.6
本研究
栃木県 日光市
26∼30
0.1∼19.5
Kanazawa(1982)
岐阜県 白川村
46.6
0.1∼4.8
溝口ほか(1997)
岐阜県 根尾村
31.5
0.5∼6.2
吉田ほか(2003)
山梨県 鳴沢村
8.2
0.2∼2.0
本研究
凶作年
図 6.捕獲したツキノワグマ。外部計測の後、麻酔を
覚まして放獣した(2007年 8 月 鳴沢村)
・ミズナラ種子の豊凶
ツキノワグマの、秋季における主要な食物であるミズ
ナラ種子の豊凶を明らかにするために、富士山北斜面の
標高1,260mのミズナラ林に、10×10mの方形プロットを
5つ設置して調査を行った。
毎木調査の結果、調査区のミズナラの立木密度は300
本/ha 、平均胸高直径は17.0㎝、胸高断面積合計は8.24
㎡/haであった。
さらに、結実調査の結果、ミズナラの落下種子密度
は、2004年には10.6 ± 12.4 g /㎡、2005年には0.2 ±
0.2 g /㎡、2006年には2.0 ± 1.7 g /㎡、2007年には0.7
± 1.6 g /㎡と、2004年に比べ、2005年、2006年およ
び2007年には少なかった(図 7 )
。この結果と、他地域
における調査結果を照らし合わせると、本調査区におい
ては、2004年はミズナラ種子の豊作年、2005年、2006
年および2007年は凶作年であった可能性が高い(表 3 )。
ただし、ミズナラ種子の豊凶を把握するためには、より
23
プロジェクト研究 4
森林と高原の環境を活用したストレス軽減法に関する
研究
林内の散策( 2 ㎞、約 1 時間)を行うと、前述の安静
の効果は現れなかったが、安静の前後での主観的疲労感
が顕著に軽減した。疲労感軽減の度合いは、 1 度目と
2 度目の間で差はなかった。
平成19年度は、富士吉田恩賜林の土丸尾地区をフィ
担当者
ールドとして、同一被験者が1時間前後の散策を、一週
環 境 生 理 学 研 究 室:永井正則・石田光男・
間の間隔を空けて 3 回連続して行った効果を検討した。
齋藤順子
散策の前後で不安感は低下した(図 1 )。
人 類 生 態 学 研 究 室:本郷哲郎
環 境 計 画 学 研 究 室:池口 仁
東京大学農学生命科学研究科:山本清龍
山 梨 大 学 教 育 人 間 科 学 部:小山勝弘
研究期間
平成18年度∼22年度
研究目的
山梨県の自然資源として、県土の78%以上を占める
森林や海抜800∼1500メートルの高原地帯の価値は大き
い。森林環境をどのように利用すれば、より大きなスト
レス軽減効果がもたらされるのかを、自律神経や免疫機
能および脳の活動などを、心理指標と合わせて測定する
ことにより明らかにする(サブテーマ 1 )
。また、高原
図 1.散策前後での不安の変化
60分前後の森林散策により不安感が低下する。
地域の特徴である低い酸素分圧が、体内で発生する活性
酸素による酸化ストレスをどのように軽減するかを明ら
交感神経活動の指標となる唾液中アミラーゼ濃度は、散
かにする(サブテーマ 2 )
。
策後に低下した(図 2 )。
研究成果
サブテーマ 1 森林の利用:森林への嗜好の形成が人の
心と身体に与える影響についての研究
サブテーマ 1 A
学生や社会人を対象に、森林を利用する活動を繰り返
し行い、活動の前後での自律神経活動や粘膜免疫および
脳の活動の変化を経時的に調べることを目的とする。平
成18年度は、山中湖村の東京大学富士演習林中の同一地
点において、同一被験者が 1 週間の間隔を空けて、20
分間の安静を 2 度繰り返した場合の心理指標と生理指
標を比較した。心理指標としては、心理調査用紙POMS
( Profile of Mood State )を用いて主観的気分を、心理
調 査 用 紙 STAI ( State- and Trait-Anxiety Inventory )
を用いて状態不安の高低を調べた。生理指標としては、
図 2.散策前後での唾液アミラーゼ濃度の変化
60分前後の森林散策により唾液アミラーゼ濃度が
低下する。
連続血圧計による脈波の連続記録から、血圧と心臓の拍
動間隔、拍動間隔の変動係数を求めた。さらに、脈波成
分を高速フーリエ解析により周波数分析することで、心
臓交感神経活動と心臓副交感神経活動を推定した。森林
での安静により不安が軽減し、心臓の拍動間隔が延長し
た。不安の軽減度と拍動間隔の延長度については、1度
目と2度目の間で差はみられなかった。安静に先立ち森
24
さらに、血圧も散策によって低下した(図 3 )。
附属中学校とも実施の方向で打ち合わせを行った。並行
して、児童・生徒用に迅速かつ安全な唾液採取法の検討
を行った。その結果、写真1に示す柄付きスポンジを用
いることで、1 分以内に分析に必要な唾液を安全に採取
する方法を確立した。
図 3.散策前後での血圧の変化
60分前後の森林散策により収縮期血圧が低下する。
不安感の低下などによる心理要因の変化が、交感神経活
動の低下をもたらしたと考えられる。散策開始前の血圧
は、散策を繰り返すことで低下していった(図 4 )。
写真 1.児童・生徒の唾液採取のための柄付きスポンジ
先端のスポンジが唾液を吸収して膨張する。膨
張したスポンジは柔らかいので、誤操作があっ
ても口腔内を傷つけることがない。
平成19年度は、長野県高遠市で行われた山梨大学附属
中学校の 2 年生を対象とした校外活動に同行し、オリエ
ンテーリングの前後で生徒の唾液を採取し、唾液中の分
泌型免疫グロブリンA( sIgA )の濃度を分析した。60∼
90分のオリエンテーリングの後、唾液中の分泌型免疫グ
ロブリンA( sIgA )の濃度は上昇していた(図 5 )
。
図 4.散策の繰り返しが血圧に及ぼす影響
1 週間おきに60分前後の森林散策を繰り返すこと
で、散策前の収縮期血圧が低下していく。
森林を利用した散策を繰り返すことで、平常時の血圧に
も好ましい影響が現れる可能性が示された。今後も引き
続き、この可能性を確かめる実験を続けていく。
サブテーマ 1 B
学校における林間学校などの自然教育活動の前後で粘
膜免疫の指標となる分泌型免疫グロブリンA( sIgA )の
図 5.校外学習におけるオリエンテーリング前後の唾液
中免疫グロブリンA( sIgA )濃度の変化
濃度および分泌速度を測定し、学校における自然教育活
動を生理機能から評価することを目的とする。平成18
森林を利用した活動により、粘膜免疫能が強化される可
年度は、山梨大学教育人間科学部附属小学校の林間学校
能性が示された。
(朝霧高原、八ケ岳)に同行して、どのような活動を行
っているかを調査し、データー取得の方法やタイミング
サブテーマ 2 高原環境の利用:海抜1000メートル地
につき、担当の先生方と打ち合わせを行った。自然教育
帯の酸素濃度がもたらすストレス軽減効果
活動中のデーター取得につき、山梨大学教育人間科学部
海抜1300∼1400メートルの高原で運動をすると、運
25
動中に発生する活性酸素により生体の脂質や遺伝子が受
血液中のビリルビン濃度は、海抜3000メートル条件で
ける傷害が、低地に比べて少ないことを以前報告した
海抜400メートル条件に比べより大きく増加していた
(山梨県環境科学研究所研究報告書第 7 号)
。その原因と
(図 8 )。
して、高原地帯の低い酸素分圧が、抗酸化作用のあるビ
リルビンの産生を促進することで、生体の坑酸化作用を
高める可能性を考えた(図 6 )
。
図 6.高原の酸素条件とビリルビンによる抗酸化作用
(仮説)
高原の低酸素環境がビリルビンの産生を盛んに
し、ビリルビンの抗酸化作用により生体成分や遺
伝子が活性酸素から受ける傷害が低減する。
図 8.低酸素条件下でのビリルビン濃度の変化
海抜3000メートルの酸素条件(低酸素)は血中の
間接ビリルビン濃度を増加させる。3 時間低酸素
条件で過ごした後、24時間経過した時点でも血中
ビリルビン濃度は高い。
より低い酸素条件が、血液中のビリルビン濃度を上昇
させることがわかった。赤血球由来のヘモグロビンから
ビリルビンを誘導する酵素ヘムオキシゲネースは、海抜
3000メートル条件でより多い傾向にあった(図 9 )
。
この可能性を確かめることで、海抜1000メートルレベ
ルの高原環境の保健・休養面での価値を明らかにするこ
とを研究の目的とする。
山梨大学武田キャンパス内(海抜350メートル)の低
酸素実験室を用いて、海抜400メートルと海抜3000メー
トルの酸素条件に 3 時間滞在した被験者の、尿中酸化指
標および坑酸化指標の測定を行った。動脈血酸素飽和度
は、設定した酸素濃度を反映して低下していた(図 7 )。
図 9.低酸素条件下でのヘムオキシゲネースの変化
ビリルビンを誘導する酵素ヘムオキシゲネースの
メッセンジャーRNA( mRNA )の発現量を示す。
低酸素条件によりビリルビンを誘導する酵素の
mRNAが増加する。
ビリルビンを増加させる可能性が示された。海抜1000
∼1500メートル条件で滞在時間を長く取る実験を今後
行っていく。
図 7.動脈血酸素飽和度の変化
海抜3000メートルの酸素条件(低酸素)では、動
脈血酸素飽和度が低下する。
26
(文責 永井正則)
において、来訪者との交流を前提に地域環境資源を持続
プロジェクト研究 5
中山間地域における交流型地域環境資源管理システム
の構築に関する研究
的に活用することによって地域活性化を進める上では、
地域特性を活かしたプログラムを作成し、それに、地域
住民が主体的役割をもって関われる仕組みをつくり、来
訪者に提供することによって地域住民と来訪者が一体と
担当者
なった地域理解を形成することが重要であることを明ら
人 類 生 態 学 研 究 室:本郷哲郎
かにした。さらに、県内中山間地域(早川町)を対象と
環 境 計 画 学 研 究 室:杉田幹夫
した事例研究を通してこの図式を検証するとともに、地
早川町日本上流文化圏研究所:鞍打大輔・柴田彩子
域が進める地域づくり活動の支援を行なった。
㈱ 生 態 計 画 研 究 所:小河原孝生・中村忠昌
この経過のなかで、地域住民と来訪者が一体となった
北
学:山内太郎
地域環境資源の維持・管理につながる仕組みの構築を具
学:萩原 潤
現化していくためには地域をより限定して取り組む必要
海
宮
道
城
大
大
があると判断され、本研究では早川町内三里地区を対象
研究期間
地域として選定した。三里地区は早川町のほぼ中央に位
平成19年度∼平成23年度
置し、早川の河川敷や水田が広がり、急峻な地形が続く
町の中でも比較的開けた景観をもつとともに、山腹部に
研究目的
も集落が点在しており、多様な自然環境がモザイク状に
中山間地域においては、高度経済成長期を境にした第
立地している。そのような自然環境の特質を生かし、自
一次産業の衰退と、それに伴う少子高齢化・核家族化、
然体験活動の拠点施設として位置づけられる「南アルプ
過疎化により地域住民のライフスタイルも大きく変わっ
ス邑野鳥公園」が設置されているほか、郷土資料館、宿
た。その結果、それまで維持・管理されていた地域の自
泊施設、飲食施設が立地している。また、先行研究での
然環境にも大きな変化が生じ、身近な生物の絶滅や生物
支援結果として地区の住民組織による散策路の整備やガ
多様性の低下などの問題を引き起こす一方、人の領域と
イドマップの作成などの計画が進んでいる。
の間にあった緩衝地帯がなくなることによって、野生動
調査地域は、地区の境界線、集落位置、および基準地
物が集落周辺まで出現し農作物等への被害がふえるとい
域メッシュ(総務省統計局、1 ㎞四方)の区切り等を考
った人の生活に及ぶ問題も生じてきている。第一次産業
慮して範囲を設定した(口絵カラー図)。
によって維持されてきた地域環境資源管理システムの消
(2)自然環境特性の把握
失に代わり、自然に対する認識や価値観が変容してきて
地形情報をメッシュデータの形で用い、傾斜角と標
いる都市を中心とした地域外の人々をも加えた新たな
高差に関するデータの組み合わせを基準にして地形区分
「交流型地域環境資源管理システム」の構築が求められ
(平坦地形、斜面移行地形、斜面地形、尾根地形)を行
ている。
なった。その結果、対象地域の82%を斜面地形が占め、
このような視点から、基礎的な生活条件の整備に加
平坦地形は 8 %に過ぎなかった(図 1 )。
え、人と身近な自然との関わり方を見直し、来訪者との
交流を前提に新たな自然環境の維持・管理の仕組みをつ
くることによって、地域環境資源を持続的に活用し、自
然環境の保全と住民のアメニティの向上が両立した地
域づくりを目指すことを目的とする。そのために、(1)
人との関わりの視点からの二次的自然環境の質の把握、
および(2)自然との関わりの視点からの地域住民の日
常生活に対する満足度( QOL )の把握を通して、自然
環境管理につながる自然体験活動プログラムの開発と試
行、地域住民の役割の明確化と住民主体の組織づくりに
より、
(3)交流型地域環境資源管理システムを構築しそ
の効果および問題点を明らかにする。
研究成果
(1)研究の方向性と対象地域の設定
図 1.対象地域の地形区分
植生に関しては、環境省第 5 回自然環境保全基礎調査
(平成 6 ∼10年度)の現存植生図GISデータを用いてま
先行研究である「中山間地域における地域環境資源の
ず大まかな把握を試みた。植林地(38.9%)、二次林(33.2
多面的・持続的な活用に関する研究(平成14∼16年度)」
%)の順に大きな面積を占め、自然林(2.2%)を合わ
27
せた森林面積が全体のおよそ 3/4 に達していた。また、
屋や耕作地からなる集落範囲の変遷を地形区分ととも
リモートセンシングデータを用いて、森林面積や森林構
に示す(口絵カラー図、図 2 )。2001年には、1947年の
成を把握するための指標の検討を行なった。
18.8%に減少し、特に、平坦地形以外の利用はほとんど
(3)自然環境あるいは土地利用の違いによる生物相の把
みられなくなっていることがわかる。
握
人の生活との関わりをもつ集落周辺の二次的自然環境
を適切に維持・管理するための自然体験活動プログラム
を実践していく上で必要となる基礎情報として、自然環
境あるいは土地利用の違いによる生物相の特徴を把握す
る調査を行なった。今年度は、野鳥公園を中心とした地
区(口絵カラー、拡大図)を対象に、地区全体のより広
範囲にわたる自然環境特性との関係を把握することを目
的とした鳥類相調査と、地区の中で耕作地、耕作放棄地、
植林地などの土地利用との関係を把握することを目的と
した小区画における昆虫類を中心とした小動物相調査を
実施した。
図 2.地形区分ごとの集落範囲の変遷
鳥類相調査は、約250m四方のメッシュを単位とし、
34メッシュについて分布種を記録した。繁殖期で44種、
住民生活に関する予備的調査として、斜面に立地する
越冬期で47種が確認され、それらの組み合わせの特徴
一集落を対象にした聞き取り調査を実施した。立地条件
からメッシュのタイプ区分を行なった。その結果、鳥類
の悪さや生活基盤の不便さから若年層の流出が続き、現
相は、樹林選好種群、林縁選好種群、河川選好種群、地
在の定住者の平均年齢は70歳を超えている。多くの住
域普遍種群に大別され、種群の組み合わせから、対象地
民が農作業に従事しているものの、自家消費用の作物を
区の自然環境は、樹林環境、河川と林縁環境、集落環境
栽培するのみで、耕作地の範囲も、かつては河川沿いの
がモザイク状に組み合わさっていることが明らかとなっ
平坦地にまで及んでいたが、現在では集落内が大部分で
た。
あり、1 日の作業時間の平均は 3 時間程度であった。そ
昆虫類を中心とした小動物相調査(調査手法上、チョ
の一方で、農作業自体や子供や孫に農作物を届けること
ウ目、トンボ目、バッタ目の昆虫類と両生類、爬虫類を
が生きがいであるといったように、農業に対する思い入
対象)は、耕作地や耕作放棄地等を含む河川沿いの地区
れの大きい対象者も多かった。
と、既存の樹林を一部改変して設置された野鳥公園を対
象とした(それぞれ、250m四方のメッシュおよそ 2 個
分に相当)
。河川沿いの地区は、比較的開けた草地空間
がひろがり、しかも畑地や低茎草地、高茎草地、低木の
混在した草地、林縁部など多様な環境がモザイク状に分
布しているため、いずれの分類群でも野鳥公園より多く
の種数が記録された。一方、野鳥公園は、樹林主体の環
境であり種数は少ないものの、敷地内にある池や流れの
存在により河川沿いの地区ではみられなかった種が確認
された。
(4)集落範囲の変遷と住民生活
1940年から2000年までの人口変化に関するこれまで
の分析結果から、三里地区の人口は、電力開発に伴うダ
ム建設の労働力として外部からの、特に男性の流入によ
り1960年に顕著なピークがみられたのちは、急激な人
口減少と少子高齢化が進行している。また、農業センサ
スデータによる農家戸数の変化をみると、1940年を 1
とした場合2000年には0.16まで減少し、特に、1965年
から1975年にかけての10年間におよそ半分に急激に減
少していた。
1947年、1976年、2001年の空中写真から判読した家
28
プロジェクト研究 6
生ごみ由来生分解性プラスチックの生産と利用に関す
るライフサイクルアセスメントの研究
の技術を用いることで、廃棄物である生ごみから付加価
値の高いPLAを生成でき、さらに焼却処理の際に多く
の燃焼エネルギーを必要とする生ごみの焼却量を削減す
ることができると考えられる。しかし、この手法を用い
た生ごみ処理システムが環境へ与える影響については明
担当者
らかにされていない。
環境資源学研究室:森 智和・齊藤奈々子
本研究では、このPLA生産手法を用いたシステムを
生ごみ処理システムとして捉え、従来の焼却による生ご
共同研究者
み処理システムや、他の新たな処理法として考えられて
静岡県立大学:佐野慶一郎
いるメタン発酵を用いた生ごみ処理システムと、ライフ
九州工業大学:白井義人
サイクルアセスメント( LCA )手法を用いて、環境に
山 梨 大 学:鈴木嘉彦
与える影響を評価し、比較を行う。さらに、山梨県内に
おいてPLA生産による生ごみ処理システムを用いるこ
研究目的
とで、環境負荷物質排出量や資源消費量の削減を達成で
持続可能な発展を目指す循環型社会への変化を進める
きるかを定量的に把握することを目的とした。
ため、我が国では2000年 6 月に「循環型社会形成推進
基本法」を制定した。これにより、リユース・リデュー
研究成果
ス・リサイクルという、いわゆる 3 Rへの取り組みが強
本研究では、生ごみ処理を行うモデルシステムを山梨
化され、廃棄物のリサイクル処理が推進されることとな
県内でも中程度の規模システムとして、山梨県富士吉田
った。廃棄物の発生量は依然として膨大であり、その性
市のごみ処理施設(富士吉田市環境美化センター)を選
質や状態はさまざまであるため、それぞれの性状に対応
定した。このごみ処理施設では、富士吉田市、西桂町、
したリサイクル処理の方法が求められている。
忍野村、富士河口湖町の 1 市 2 町 1 村で発生する生ご
中でも、食品系生ごみは水分や油分、塩分の含有率が
み(年間2,123ton )を処理している。この富士吉田市環
高く、安定的な品質を確保することが難しいため、取り
境美化センターで現在ごみ処理システムとして採用され
扱いが非常に困難である。そのため従来は、9 割以上の
ているストーカ式焼却炉と、それに伴うごみ発電で処理
生ごみが可燃ごみとして焼却処理もしくは埋め立て処理
するシナリオ(焼却シナリオ)、近隣のメタン発酵施設
されているという状況であった。
でメタンガス化を行い、そのガスを燃料としたディーゼ
2001年に施行されたいわゆる「食品リサイクル法」
ル発電により処理するシナリオ(メタン発酵シナリオ)
、
では、食品関連事業者は、食品循環資源(いわゆる生ご
生分解性プラスチックを生産するシステムで処理する
み)の再生利用等の実施率を20%以上に向上させるこ
シナリオ( PLA生産シナリオ)の 3 つを想定し、LCA
とを目標としている。また、農林水産省が推進する「バ
手法を用いてそれぞれの環境影響について比較・評価し
イオマス・ニッポン総合戦略」では、生ごみをバイオマ
た。
ス資源と見なし、燃料や素材原料として活用する取り組
図 1 、図 2 、図 3 にそれぞれ焼却システム、メタン
みを進めている。
発酵システム、PLA生産システムのプロセスフローを
このような状況のなかで、新たな生ごみの処理方法と
示した。
して、堆肥(コンポスト)化、メタン化等のさまざまな
それぞれの生ごみ処理シナリオの機能単位は、富士吉
リサイクル方法が研究・開発されている。その中でも、
田市で一年間に発生する生ごみ2,123tonを処理するもの
高付加価値な環境適合素材(エコマテリアル)である生
分解性プラスチックを生ごみから生成する技術が注目さ
れている。
一方、わが国では、循環型社会の形成に向けて自然の
物質循環に組み込まれる生分解性材料の研究開発が活発
に行われており、その中でも注目を浴びている生分解性
材料の一つとしてポリ乳酸( PLA )がある。PLAは、
その優れた物性と透明性からさまざまな分野での代替プ
ラスチックとして期待されているが、生産コストが高い
ことが普及の妨げとなっている。
九州工業大学の白井らは、PLAの生産コスト縮小を
狙い、生ごみからPLAを生産する手法を開発した。こ
図 1.焼却シナリオのプロセスフロー
29
とした。本来、生ごみは可燃ごみと混合して各家庭から
薬剤量、回収されたメタル原料などのインベントリデー
排出され、収集されているが、今回はPLA生産システ
タは、平成18年度に富士吉田市環境美化センターにて
ムそのものの評価が目的なため、便宜上、すでに生ごみ
行われた焼却処理の実績データを用いた。また、焼却の
が収集、分別されているものと仮定した。
際のごみ発電によって得られた電力は、同量の電力を発
焼却を行うシナリオとメタン発酵を行うシナリオ、
電所で発電したものとして、システム全体から環境負荷
PLAを生産するシナリオについて、評価の対象とする
の減算を行った。次に、メタン発酵シナリオにおいて使
システム境界をそれぞれ図 1 、図 2 、図 3 にそれぞれ「焼
用された燃料や電力等のユーティリティや、使用された
却シナリオ」
、
「メタン発酵シナリオ」
、
「 PLA生産シナ
薬剤、発酵副資材量、排出された発酵残渣などのインベ
リオ」としてプロセスフローを示した。図中の破線に囲
ントリデータは、山梨県河口湖町の富士ヶ嶺バイオセン
まれた内部が今回LCAを行うシステム境界であり、こ
ターにて平成18年度に行われた牛糞によるメタン発酵
のシステム境界内にて消費される資源と排出される環境
の実績データを用いた。メタンガスによる発電で得られ
影響物質を評価対象とした。
た電力は、同量の電力を発電所で発電したものとして、
ここで、焼却シナリオにおいて焼却発電プロセスで使
システム全体から環境負荷の減算を行った。さらに、こ
用された燃料や電力等のユーティリティや、使用された
のシステムでは、富士吉田市環境美化センターから富士
図 2.メタン発酵シナリオのプロセスフロー
図 3.PLA生産シナリオのプロセスフロー
図 4.各シナリオの被害算定指数比較
30
ヶ嶺バイオセンターまで生ごみを輸送しなければならな
この結果から、富士吉田市環境美化センターで年間
いため、26.3㎞の輸送プロセスが発生している。最後に、
2,123tonの生ごみを焼却処分するシナリオでは、約750
PLA生産シナリオにおいて使用された燃料や電力等の
万円の環境への被害があることがわかる。それに対し、
ユーティリティや、使用された薬剤、発酵副資材量、排
富士ヶ嶺バイオセンターでメタン発酵を行うシナリオ
出された発酵残渣や廃水量などのインベントリデータ
では、約120万円の被害と約 6 分の 1 の被害に減少する
は、九州工業大学 白井研究室より提供されたデータを
ことになる。さらに、PLA生産を行うシナリオでは、
使用した。また、PLAはポリカーボネート( PC )に物
PLAをプラスチックとして利用することで、約68万円
性が近いことから、ポリカーボネートの生産を代替する
の環境への被害を減少させることがわかった。
ものとして環境負荷の減算を行った。
今回の結果より、細かい部分での検討はまだまだ必要
本研究において評価する影響領域は、地球温暖化、人
なものの、メタン発酵やPLA生産などの、生ごみを資
間への毒性(発癌性、慢性疾患)
、生態毒性(水棲、陸棲)、
源とみなし、バイオマスとして活用することが、単純に
酸性化、富栄養化、廃棄物、資源の消費、エネルギー消
焼却するよりも環境への影響が少ないことが示された。
費の10項目とした。システム内の各プロセスで用いた
来年度以降は、
(1)生ごみの処理にコンポスト化、メ
パラメータは、上記聞き取りや文献を基に推定した数値
タノール化プロセスを組み込んだシナリオとの環境影響
を使用した。また、得られなかったインベントリデータ
の比較、(2)PLAの代替プラスチック能力の検討、
(3)
については、JEMAI-LCA PRO Ver.2に基づいた。
県内の地域特性等を考慮した処理施設建設地の検討等を
実施する。
JEMAI-LCA PRO Ver.2を用いてLCAを行い、各シ
ナリオでの環境影響の比較を被害算定型環境影響評価手
法( LIME: Life -cycle Impact assessment Method based
on Endpoint modeling )を用いて行った。各シナリオの
保護対象ごとの被害評価を分析したところ、図 4 のよう
になった。焼却処理シナリオでは焼却排出物に起因する
地球温暖化と都市大気汚染、酸性化による人間健康と社
会資産への被害が大きくなることがわかった。メタン発
酵シナリオでは、発酵プロセスでの残渣や汚水による影
響で、水圏の富栄養化が増大し、社会資産への被害が大
きくなっている。PLA生産シナリオでは発酵や精製プ
ロセスでの残渣を処理しなければならないため、廃棄物
が増大し、生物多様性と一次生産量への被害が大きくな
ることが示された。
次に、LIMEに基づき、これら各シナリオで求められ
た被害算定指数から、環境へどの程度影響を及ぼすかを
統合し、日本円に換算した統合化指数を算出した。その
結果を図 5 に示す。
図 5.各シナリオの統合化指数比較
31
機構については、昨年度の研究報告を参照されたい。
プロジェクト研究 7
廃棄プラスチック中に含まれる化学原料の回収技術に
関する研究
担当者
環 境 資 源 学 研 究 室:齊藤奈々子
静
岡
県
立
大
学:佐野慶一郎
神奈川県産業技術総合研究所:高見和清・高橋 亮
日清オイリオグループ㈱:高柳正明・板垣裕之
日清プラントエンジニアリング㈱:齊藤哲男
(独)
産業技術総合研究所:田原聖隆
研究期間
平成17年度∼平成19年度
図 1.UPから無水フタル酸生成の反応機構
研究目的
2.UPからの化学原料の回収
近年、廃棄プラスチックの有効活用の観点から、高度
これまでの研究成果より菜種油でUPを熱分解する際
な技術を用いた大規模プラントにて、廃棄ペットボトル
に、無水フタル酸が分離回収できることが分かった。
からテレフタル酸の分離回収が一部で始まっている。し
UPの主原料はフタル酸であり、約30%を含有している。
かし、いまだ、廃棄プラスチックから化学原料を回収す
フタル酸は、プラスチックや合成繊維の原料、塗料原
るケミカル・リサイクルの研究は立ち遅れており、そ
料、プラスチックやゴムの可塑剤、機械油の安定剤など
の事例は少ない。特に、廃棄される熱硬化性樹脂は熱分
工業的用途が広く付加価値が高い。そのため、より回収
解性が悪く、化学原料の分離回収も困難と考えられてい
率を上げることで環境負荷軽減への貢献だけでなく、リ
る。本プロジェクトの目的は、植物油中で熱硬化性樹脂
サイクルにおいて課題となる経済性の面でも大いに貢献
を熱分解する独自の技術を基に、FRP(繊維強化プラ
できると考える。そこで、UPの菜種油中での加熱分解
スチック)に用いられているUP(不飽和ポリエステル)
条件の検討を行った。その結果、分解温度は、320℃か
樹脂の廃棄物から芳香族の化学原料を分離回収するケミ
ら340℃が最適であることが分かった。300℃以下の場
カル・リサイクル技術を研究開発する。全体計画として、
合、UPがほとんど溶解せず分解することが出来なかっ
先ず、UPを熱分解し、化学原料を分離回収する手法を
た。また、350℃を超えると菜種油が発火する恐れがあ
考案する。次いで、回収した化学原料を分析し、その成
るため安全に処理できる温度として340℃以下が望まし
分と純度、回収率を求める。また、UPが熱分解し、化
い。UPと菜種油との、質量比は 1:3 ∼ 1:5 の割合で
学原料を分離回収するまでの反応機構も考察する。
加熱分解することが好適である。UPの比率が高くなる
と、流動性が悪くなり、ハンドリング性が低下する。一
研究成果
方で、コスト面からは植物油の割合は低い方が良い。ハ
1.UPの菜種油中での熱分解挙動
ンドリングとコストの両面を考慮すると 1:3 の割合で
本年度は、これまでの研究成果を基にFRPの原料で
の分解がもっとも望ましいと考える。以上の各工程の処
あるUP母材の菜種油中での加熱分解過程における分解
理を行うことにより、簡便、かつ低コストにて無水フタ
挙動について検討し、化学原料を分離回収するまでの反
ル酸回収することができる。無水フタル酸の回収率とし
応機構を推察した。その反応機構を図 1 に示す。
ては、UPを分解したときに得られる理論上の無水フタ
まず、結晶として回収される無水フタル酸は、熱分解
ル酸量に対して最高50%以上の回収率が望めることが
過程で主鎖部から切断され、菜種油由来の水素を受容し
分かった。回収した無水フタル酸は、バージン材同様に
オルソフタル酸になり、さらに加熱分解中に脱水反応(油
工業利用することを想定している。今後、回収物の回収
温:300℃以上)が起き、無水フタル酸として回収でき
から精製・再利用までを含めた一連の廃FRPのケミカ
ることを確認した。その他の同定された 3 物質( Benzene,
ル・リサイクル・プロセスの環境影響評価を行う予定で
dimethyl 、Benzene, 1-methylethyl 、9-Octadecenoic acid
(8)
ある。
-2,3-di-hydroxypropyl ester )においては、発生量が少な
く、分離回収するためには過度の冷却が必要となりリサ
イクルが困難であることがわかった。これらの生成反応
32
プロジェクト研究 8
「夏季の高温環境と心理的ストレスによる健康影響と
熱中症警報システムの構築についての研究」
分析や器官への影響を見ることが難しく、また実験室内
での熱中症症状を誘発する暑熱暴露は倫理的な問題な
ど様々な理由で困難である。そのため実験動物ラット
( Wistar系オス、体重250g∼310g )を使用し実験を行っ
た。通常24℃前後の室温で飼育されており、体温は37
担当者
℃前後を維持している。ラットを暑熱暴露をはじめとし
生気象学研究室:宇野 忠・十二村佳樹・齋藤順子・
た温度環境下に置き、物理的心理的ストレスを与えから
外川雅子
だの抵抗力の変化を健康を保つために重要な調節機構で
ある神経系、内分泌系、免疫系の各生体試料を測定する
研究目的、および成果
ことにより検討する。
盆地形状である甲府地域には地形的な要因による気候
身体的、心理的ストレス負荷の方法はコミュニケーシ
上の特徴として夏季の高温環境や冬季寒冷環境、年間日
ョンボックス装置(以下CB装置)を用いた(図 1 )
。
間の大きな寒暖差があり、生活する人々にとって非常に
厳しい気象環境であるといえる。特に甲府盆地地域で
は、頻繁に全国上位に記録されるような夏季の高温環境
が形成され、熱中症などの問題が生じている。さらに、
最近の地球温暖化の傾向から、今後夏季高温環境の傾向
がさらに激化することが予想され、様々な健康への影響
が懸念される。
本研究では、サブテーマ 1 において夏季高温環境での
健康問題(熱中症、気温とストレスに由来する疾患の関
連)を解決するために、動物モデルを使用した実験によ
り高温環境が特に心理的ストレス負荷時のからだの抵抗
力へ与える影響を明らかにする。そして、サブテーマ 2
にてこのような夏季に特有なからだに対する負荷を少し
図 1.コミュニケーションボックスを使用し身体的スト
レス、心理的ストレスをあたえる
でも軽減するために、甲府盆地での夏季温度、湿度分布
変動の測定と熱中症患者の地域的救急搬送データを解析
装置は床に刺激電流(0.5mA 、10秒間/60秒サイクル)
することでヒートアイランド現象の可能性と熱中症の関
が流れるステンレス製のグリッドが敷かれており、透明
係を把握し、地域的特徴を加味した熱中症警報システム
で穴の開いたアクリル板で 4 区画に仕切られている(各
の構築に繋がる基礎的な知見を得ることを目的とする。
区間は10㎝×10㎝、高さ40㎝)。直接電気刺激を受ける
区画Aとプラスチック製のショック回避用プレートを敷
サブテーマ 1 高温環境が心理的ストレスに対するか
くことにより電気刺激を受けない区画Bを交互に 2 区画
らだの抵抗力に与える影響についての研究
ずつ設けた。区画Aのラットは直接電気刺激により身体
的ストレスにさらされる。一方、区画Bのラットは直接
夏季などにみられる高温環境の健康(からだ)への直
電気刺激されないため身体的ストレスは受けないが、隣
接的な影響はこれまでにさまざまな研究が行われてきて
接する区画Aの電気刺激負荷ラットの飛び跳ね、もがき、
おり、当研究室においても過去熱中症動物モデルなどを
悲鳴、排尿、排便などの情動反応を嗅覚、視覚、聴覚で
用いて免疫機能へ与える影響について研究を行ってき
感じることにより、不安や恐れなどの心理的ストレスを
た。一方、昨今の複雑化する現代社会において、より問
受ける。CB装置を温度が調節できる人工気象器内に設
題となってきているのは四季を通じて存在する社会心理
置し、24℃環境と36℃環境(暑熱暴露)にて 2 時間の
的ストレスに関連する疾患や心身症である。特に高温環
身体的ストレス負荷と心理的ストレス負荷を行った。ス
境に由来するストレスが最も強くなる夏季においては、
トレス負荷後、エーテル麻酔下にて血液を採取、遠心し
社会心理的ストレスは体に対して相乗的な影響を与える
て得た血漿中のコルチコステロン濃度を測定することに
恐れがある。よって快適な生活環境条件を模索してゆく
よりストレス負荷強度の指標とした。図 2 に示すように
ためには気象環境による直接的な影響(本研究では高温
24℃、36℃環境とも身体的ストレス負荷により有意に
環境)と心理的に受けるストレスの関連を解明すること
高いコルチコステロン濃度が観察された。心理的ストレ
が必要である。
ス負荷においてもコントロール群に比べてコルチコステ
高温環境刺激である暑熱暴露の生体機能への影響を見
ロン濃度が高くなる傾向が確認され、コミュニケーショ
るために人被験者を使用する実験は、詳細な生体試料の
ンボックス装置によるラットへの身体的心理的ストレス
33
負荷動物モデルの作成が行えた。環境温度の違いによる
今後、誰もが日常的にさらされる環境温度とストレス
コルチコステロン濃度は24℃環境に対し、36℃環境で
関連疾患につながり得るからだへの影響を明らかにする
低くなる傾向が見られ、高温環境では内分泌系のストレ
ため、このコミュニケーションボックス装置を使用した
ス反応が抑制される可能性が見出された。
心理的ストレス負荷動物モデルを使用し、心理的ストレ
ス負荷に対するからだの抵抗力が暑熱暴露をはじめとし
た環境温度によりどのように変化するか神経系(自律神
経活動)、内分泌系(カテコールアミン)、免疫系( NK
細胞活性、サイトカイン産生能、免疫グロブリンなど)
の各生体試料を測定することにより検討する。
図 2.24℃環境と36℃環境(暑熱暴露)における身体的、
心理的ストレス負荷時の血漿中コルチコステロン
濃度 n= 8
また、あらかじめ心電位と体温、行動量を覚醒時自由
行動下で測定できるテレメトリーセンサーを体内に埋め
込む手術を行い、1 週間の回復期を設け体重が回復した
後、上述した人工気象器内での24℃、36環境下でのCB
装置による心理的ストレス負荷を行い心拍数、体温、行
動量の変化の比較を行った。図 3 に体温の変化を示す。
心理的ストレス負荷を与えることにより24℃環境、36
℃環境(暑熱暴露)のどちらのラットにおいても約 1 ℃
の体温上昇が見られた。この体温上昇はストレス誘因性
高体温と呼ばれるものであり、細菌やウィルスからの外
因性発熱物質に対する免疫応答である発熱とはことなる
機序で体温が上昇する高体温症状である。36℃環境暴
露群では暑熱暴露による体温上昇に加え、24℃環境下
と同程度の体温上昇を示し、高温環境下でのストレス負
荷は熱中症症状に陥りやすく注意が必要であると考えら
れる。
図 3.24℃環境と36℃環境(暑熱暴露)における心理的
ストレス負荷時の深部体温変化 n= 4
34
サブテーマ 2 甲府盆地でのヒートアイランド現象の
ったことが確認できる。一方、夜間に着目すると気温が
把握と地域的熱中症警報システムの構築についての研究
25℃を下回らない熱帯夜は 7 日間となっており、日中
酷暑環境が形成される頻度と比較し、さほど多くはない
研究目的
ことがわかる。
図 1 に県内における1995年∼2007年夏季( 7 ∼ 9 月)
図 6・7 に2007年 8 月の猛暑日日数・熱帯夜日数の分
を対象とした熱中症(または熱中症の疑い)による救急
布を示す。猛暑日は甲府市南部で25日程度と多く発生
搬送者数注 1 )の年推移を示す。この図より、期間の始ま
している様子が観察できる。一方で、その近傍ではある
りと比較して最近は救急搬送者数が 3 ∼ 4 倍程度増加
ものの10日程度と比較的発生日数の少ない地域も見受
している様子が明瞭である。このような傾向は山梨県だ
けられる(但し、後述のとおり気温は35℃弱まで上昇
けに表れているわけではなく、他の都市においても指摘
している)。熱帯夜は甲府市域付近での発生日数が圧倒
されてきており、これには都市の温暖化が影響している
的に多い様子が見受けられ、甲府中心部の新紺屋小周辺
とも考えられてきている。
では20日程度の発生が認められる。甲府市域での発生
そこで本テーマでは、甲府盆地における 1 )温熱環境
日数が多いのは、他地域と比較して建物等をはじめとす
の実態と 2 )熱中症発生の実態を明らかにして、双方の
る人工構造物の比率が高いためであると考えられる。
間にある関係を定量的に明らかにしていくことを目的と
図 8 に猛暑日(日最高気温が35℃以上の日)であっ
して研究を行った。
た 8 月12日の広域気温分布の一例を示す。早朝では甲
府駅周辺やその南部に高温域が発生している様子が見受
研究成果
けられ、これらの地域は熱帯夜発生日数が多い地域(図
1 )甲府盆地における温湿度実測調査
7 )ともほぼ一致していることがわかる。日中は甲府駅
2007年夏季に図 2 に示す甲府盆地内34点を対象とし
南から甲府市の南部にかけて気温が高くなっており、特
た温湿度の長期多点同時測定を実施した。測定器には自
に甲府市南部においては午後に最高38℃程度まで上昇
記記録式デジタル温湿度計(図 3 )を用い、これらを小
している様子が観察される。クールスポットのようにな
学校が保有している百葉箱(図 4 )に設置し
注2)
自然通
っている地域もわずかに見受けられるものの、いずれの
風状態において10分間隔でデータ収録した。
時刻においても比較的都市化の進む甲府市域近辺の気温
図 5 に2007年 8 月の全測定点平均気温の月変動を示
が高い様子が多く観察されることから、甲府盆地におい
す。27日間が真夏日(日最高気温が30℃以上の日)、そ
の内12日間が猛暑日(日最高気温が35℃以上の日)と
なっていたことからも、昨夏の甲府盆地が極めて暑か
図 2 温湿度測定点の分布
図 1 熱中症による救急搬送者数(集計期間は 7 ∼ 9 月)
図 3 温湿度測定器
図 4 百葉箱
図 5 全測定点平均気温の月変動(2007年)
35
てもヒートアイランド現象が発生しているものと考えら
の要因であると指摘されている。1 )で示したように過
れる。盆地東部と西部では大きな気温差が生じていない
酷な熱環境が形成される 8 月に多くなることは容易に
が、これは東部と西部では土地利用の傾向に大きな相違
理解されよう。
がないためであると考えられる。なお、他の猛暑日にお
図10に年別の月平均日最高気温・日最低気温と救急
いてもここに示したこととほぼ同様の傾向が観察されて
搬送者数との関係を示す。集計の対象月は2004・2005
いる。
年が 5 ∼ 9 月、2006・2007年が 4 ∼ 9 月である。これ
らの図より、最高気温では30℃程度、最低気温では22
2 )甲府盆地における熱中症発生の実態
℃程度を上回ると搬送者数が急激に増加している様子が
図 9 に2004年から2007年までの月別の熱中症による
見受けられる。気温・搬送者数とも月毎の集計値であり
救急搬送者数を月積算値とともに示す。この図より、7
俯瞰による推測になるが、熱帯夜ではなかった日におい
月と 8 月における搬送者数が極めて多い様子が明瞭で
ても相当数の搬送者数が確認できることから、熱中症の
ある。7 月に多いのは、梅雨が明け、暑くなってくるこ
発生を抑制するためには主として日中を熱的に快適な空
とはもちろん、人体が暑熱馴化できていないことも一つ
間としていくことが課題であると考えられる。
図 6 猛暑日日数の分布(2007年 8 月)
図 7 熱帯夜日数の分布(2007年 8 月)
図 8 猛暑日の気温分布の例(2007年 8 月12日,左上:6 時,右上:11時,左下:13時,右下:14時)
36
図10 気温と救急搬送者数との関係
(左図:最高気温,右図:最低気温)
図 9 熱中症による月別救急搬送者
図12
男女別搬送者数
図13
活動状況別搬送者数
図14
場所別搬送者数
図11 年代別救急搬送者数
熱中症発生の実態について2007年のデータを基にし
てさらに細かくみていく。図11は年代別の救急搬送者
数である。他の年代と比較して10代の搬送者数が突出
しており、そのうち 9 割程度は運動中に発生している
ことから、個人の体調管理はもちろんのこと、指導者側
も十分な配慮をする必要があると指摘できる。図12に
男女別、図13に活動状況別、図14に発生場所別に集計
した搬送者数の割合をそれぞれ示す。救急搬送者のうち
68%が男性であり、女性の 2 倍以上であることがわか
図15 活動状況別の熱中症発生地点分布
(集計期間は2007年 4 ∼ 9 月)
る。活動状況別では、38%が何らかの運動中、26%が
農業等の労働作業中、それ以外が36%とさまざまな状
況下で熱中症が発生していたことが確認できる。なお、
た熱中症警報システムを構築していくことを予定してい
活動状況別に搬送者数の男女比をみると、運動中では女
る。
性が24%、作業中では女性が20%、その他では男女ほ
ぼ同数であった。また発生場所は約 7 割が屋外であっ
た。このような熱中症が実際にどこで発生していたのか
を、甲府盆地周辺を対象として図15に示す。一つのマ
注 1 )熱中症による救急搬送者数データは、県消防防災
課によって収集されたものである。
注 2 )各小学校における百葉箱の設置状況は必ずしも一
ーカーが一人の搬送者を表している注 3 )。総じて見れば、
様ではなく、温湿度測定結果にはこの影響も含ま
特定の地域に集中している様子はなく、盆地内全域でま
れている。この問題点を解消することは次年度の
んべんなく発生していたことが確認できる。ただし、
「運
課題の一つである。
動」
「その他」は甲府市域近辺で多く、
「作業」は盆地東
注 3 )http://pc035.tkl.iis.u-tokyo.ac.jp/~sagara/geocode/
西部で比較的多い等の特徴も見受けられることから、地
( CSVアドレスマッチングサービス)を利用し熱
域の特性が熱中症の症例に影響していると推測できる。
中症発生地点の経緯度を取得した。
今後は、 1 )の熱環境の実態と 2 )の熱中症発生の
実態との時空間関係を定量的に明らかにしていくことが
必要であると考えており、将来的には地域特性を考量し
※図 3・4・6・7・8 は口絵写真にカラーで掲載して
いる。
37
2 − 1 − 2 基盤研究
岩が、甲府盆地の西側から南東域の御坂山地等に分布す
る。また、中新世に活動した大規模な花崗岩類の貫入岩
基盤研究 1 :山梨県内地下水の保全と管理
−化学的特性および物理的特性からの解明−
体である甲斐駒岩体等が盆地の北西部から北部・東部を
とりまき分布している。その後、第四紀になると甲府盆
地北部から八ヶ岳地域にデイサイト質から安山岩質にわ
たる火山岩や火砕流の形成が知られている。さらに第四
担当者
紀の後半に入ると、富士山の玄武岩質を主体とする火山
地球科学研究室:輿水達司・内山 高・石原 諭
活動によって厚い噴出物が形成された(図 1 )。
衛生公害研究所:小林 浩
研究目的、および成果
先行基盤研究において、県内地下水を中心に河川水や
湧水も含む水試料につき、特に化学的特性からの検討を
行い、水試料中に含まれる特定の元素については、顕著
な地域差が浮き彫りにできた。このような地域差をもた
らす基本要素に地下地質の関与が想定され、この視点か
ら系統的検討を進め、従来不明であった県内地下水中に
含まれる元素濃度偏在につき地質学・地球科学的側面か
らの解明ができ、しかも地下水中の人為影響の地域差に
ついても新知見がもたらされた。
このような地下水中に含有される元素濃度の地域差を
検討する中で、地下地質の構成の地下水への影響につい
ては、単なる平面的な地域差のみならず、深度の相違に
ついても考慮する必要性が生じてきた。このような背景
から本研究においては、地下の地質構成とその深度や年
代の違いについても、より厳密に評価し地下を流動する
図 1.南部フォッサマグナ地域の地質概略図
(山梨県地質図編集委員会,1970;柴,1987;角
田,1988を基に作成)
水の循環について検討を加えることを目的とした。
また先行プロジェクト研究において富士山麓の地下水
以上のように比較的狭い範囲の中に、玄武岩類と花崗
の水位・水温等を中心としたモニタリングシステムを確
岩類のように地質化学的に極端に異なる性質を示す地域
立し、これらのデータの自然災害等への貢献も含めた検
が認められる。このことは、富士山麓側の玄武岩と甲府
討を進めており、今後このような地下水モニタリングを
盆地側の花崗岩のように、それぞれ特徴的に発達する岩
県内地下水につき、一層広範に展開することが期待され
石種の違いに応じて含まれる濃度に規則的な違いが認め
る。
られる元素については、その周辺の地下水や河川水に循
そこで本研究においては、地下水の化学的および物理
環するプロセスを検討する上で重要な地域といえる。す
的な視点からの解明を中心に、さらに地下地質の近年に
なわち、花崗岩類に比較し玄武岩類に卓越して含有され
おける詳細なデータも加味し、互いの関係を基に地下水
るバナジウムやリンなどの元素については、富士山麓側
循環システムにつき解明を図る。これらの検討から、将
の地下水や湧水等に系統的に多く含まれ、一方、玄武岩
来における健全な地下水利用について、望ましい保全・
類に比較し花崗岩類にその含有が卓越するウランなどに
管理の方法を導き出す。
ついては、甲府盆地側の地下水に多く含まれる。このよ
うな地下水をはじめとする水試料中の元素濃度の地域特
(1)南部フォッサマグナの地質化学的特性
性は、基本的には採取水試料周辺の地質化学的背景によ
先行基盤研究の成果を発展させ、本基盤研究を展開さ
り説明される。もちろん、水試料中に含まれるこれら元
せる上で、甲府盆地、富士山麓などを含む南部フォッサ
素のすべての割合が岩石・地質由来ではなく、人為的に
マグナ地域の地質を概観する必要がある。すなわち本地
もたらされる割合も無視してはならない。その具体例に
域の地質化学的特性を支配する地質発達史をみると、先
ず甲府盆地西縁には、糸魚川−静岡構造線が南北方向に
ついては、ここでは省略する。
(2)甲府盆地側に高濃度分布元素の検討
走り、この構造線の西側には白亜紀−第三紀の堆積岩類
甲府盆地側の地下水等の水試料に高濃度を示す元素と
を主とする四万十帯が分布している。これら堆積岩類を
しては、我々の今まで試みてきた地質情報と連携した研
基盤として新第三紀の安山岩類を主とする火山岩や堆積
究からは、ウランなどが具体例として挙げられる。さら
38
に、ヒ素についても同様に甲府盆地側に高濃度が認めら
そこで、火成岩類のみならず堆積岩類中に含まれるヒ素
れる。
についても考慮して検討する必要がある。甲府盆地側に
これらの元素の高濃度をもたらす背景として、人為的
その分布が卓越する岩石種には、花崗岩類の他に堆積岩
な影響を積極的に支持する根拠には乏しい。そこで、前
類として四万十帯が知られ、四万十帯および相当層の地
述の地質化学的特性を考慮し、検討を行った。すなわち、
層群(図 1 における先第三系)は、南部フォッサマグナ
甲府盆地側にはその分布が卓越する岩石としては実際に
地域において、糸魚川−静岡構造線を境にしてその西側
花崗岩が知られ、花崗岩類ではウラン含有濃度は高い。
に、また甲府盆地北側山地において北西から南東方向に
一般に火成岩類中のウラン濃度特性からも花崗岩類にウ
発達している。この地層群の甲府盆地北側については、
ランの高濃度は理解できる(図 2:図中のJGシリーズ
その後の第三紀の花崗岩に貫入を受けたり、第四紀の火
が花崗岩類で、JBシリーズが玄武岩類である。
)
。一方、
山噴出物に覆われたりしているため、陸上では必ずしも
富士山麓側の水試料ではウラン濃度が低く、しかも同地
その分布が十分把握できないものの、ボーリングコア試
域に広く発達する玄武岩類にはウラン含有が低いという
料などを加味して検討したところ、甲府盆地の北側地下
ことから、水試料中のウラン濃度分布の地域性は地質的
にはこの四万十帯およびその相当層が広く認められる。
背景から合理的に説明できる。
しかも、これらの地層は海成層の特徴を有することから
も、この地域一帯の地下水にヒ素の高濃度が認められる
原因となりうる。このように、その分布と地層形成環境
からして甲府盆地北側一帯の地表・地下に発達する四万
十帯およびその相当層は、この地域の地下水のヒ素をも
たらす地質学的背景となりうる可能性は高いことが理解
できそうである。つまり、甲府盆地の高濃度ヒ素の原因
として、地下のより深部における地層に由来している可
能性が高くなり、次年度以降は実際の地下地質の化学分
図 2.標準岩石中の二酸化ケイ素とウラン濃度
( Imai, et al,.1995)
析も含めた総合的な解析を進める予定である。
(3)物理的特性からの解明−水文地質学的構造の解明
火山体や火山山麓の湖を含めた水収支や地下水の賦
ところが、同様にヒ素について火成岩中の濃度特性を
存機構について、さまざまな視点から研究がなされてい
検討したところ、甲府盆地側にその分布が顕著な花崗岩
る。
には、ヒ素濃度は低く、むしろ玄武岩類の方に概して高
最近では、富士山麓の地下水の水質に注目が集まり、
濃度が認められる(図 3 )
。しかも、この傾向に基づけ
資源開発が進んでいるが、温泉を含む地下水資源の保全
ば甲府盆地側よりも玄武岩類の発達する富士山麓側の地
・開発可能性に関する研究・調査についてはあまり進展
下水にヒ素が多く含まれることが予想される。しかし、
が見られない。特に北麓全域にわたる総括的な水文地質
実際の地下水に含まれるヒ素の地域特性としては、逆に
学的構造の解明や流動系に関する研究は少ない。ここで
甲府盆地側で高濃度を示している。
は既存の研究を基に地下水位図を作成したので図 4 に
示す。
図 3.標準岩石中の二酸化ケイ素とヒ素濃度
図 4.富士北麓の地下水面図
このように、ヒ素の濃度偏在については、分布する火
成岩類に含まれる濃度のみから単純には説明できない。
一方、富士山の火山防災に関する研究の進展によって、
39
富士山麓および一部湖の地下地質に関する、新たな多数
のデータが蓄積されている(図 5 )
。
さらに温泉開発による掘削により、基盤岩の新第三紀
基盤研究 2
研究課題:「富士山森林限界付近の植生の生態学的研
究」
層まで達するデータも得られている。このような最新の
地下地質データを加えて、詳細な水文地質学的構造の解
明を進め、地下水流動系を明らかにする必要がある。ま
担当者
た、これに関連して当研究所では,防災科学技術研究所
研究担当者
と火山防災の視点から共同研究を行っており、地球科学
植物生態学研究室:中野隆志・安田泰輔・石原 論・
研究室では、長期的な地下水変動に関するモニタリング
古屋寛子
を実施している.
茨
城
大
学:山村靖夫・齋藤良充
東
邦
大
学:丸田恵美子・来間直也
北
里
大
学:坂田 剛
研究目的、および成果
はじめに
富士山は、山梨県のみならず日本のシンボルであり、
世界に誇る山岳である。また、富士山は豊かな自然を有
しており、この豊かな自然は世界に誇る山梨県民の財産
である。この富士山の貴重な自然を自然と調和したかた
ちで利用し次世代に引き継いでいくことは私たちに課せ
図 5.河口湖から研究所までの南北の地質柱状対比図
られた使命である。そのためには、まず富士山の自然を
科学的に評価することが必要である。
富士山は、他の日本の山岳と比べて非常に特異な山岳
である。例えば、火山であり火山噴出物が広がり土壌が
未発達であること、独立峰であり周囲の山岳から孤立し
ていること、山の歴史が新しく氷河期を経てないこと、
標高が著しく高いことなどがあげられる。したがって、
そこに成立した植生も他の山岳と比較して特異な植生が
多く、富士山の自然を特徴づけている。例えば、森林限
界付近では、スコリア荒原上の草本群落、カラマツ林、
ダケカンバ林など他の山岳であまり見られない特異な
植生が数多く見られ、学術的にも非常に貴重なものであ
る。
本研究では、富士山の森林限界付近に成立している植
生の構造と遷移を明らかにすること。さらに永久調査区
を整備し、今後植生の変化を直接観察できるようするこ
とを目的とした。永久調査区は、その名の通り、長期に
わたりさまざまな測定を行なえるように整備した調査区
である。富士山には、整備された永久調査区がほとんど
無いため、過去から植生がどのように変化しているかを
直接測定し示すことができなかった。現在問題となって
いる地球温暖化が富士山の植生に及ぼす影響を評価する
ときも、過去との比較が必要となる。
富士山五合目付近の御中道を歩くと、森林と火山性荒
原を交互に観察することができる。このように、富士山
森林限界は標高により一定ではない。半島状に森林が上
部に伸びた場所と火山性荒原が交互に現れる。このよう
に半島状に上部に伸びた森林を半島状植生と呼ぶことに
する。この半島状植生は富士山を代表する森林限界の形
40
態であるといえる。本研究の目的である森林限界付近の
さ1.3m以下の個体であった。半島上部では矮性化した
植生の構造と遷移の解明の調査地の一つとしてこの半
ミネヤナギが多く見られたこと、半島中部ではミネヤナ
島状植生を選んだ。半島状植生の上部、中部、下部にベ
ギがほとんど見られなかったことから、ミネヤナギは裸
ルト状の永久方形区を設置し、毎木調査を行うことにし
地に最初に定着し、林の遷移が進むにつれて枯死してい
た。
く種であると考えた。また、ミヤマハンノキは、半島状
上部ではほとんどが林と裸地との境界付近に分布してい
方法、結果および考察
た。半島状中部では、林内に胸高以上の中層木が見られ
昨年度までに、半島状植生の最も上部と中部に永久方
たこと、稚樹がほとんど見られないことから、半島状上
形区を設置し、その結果の一部について報告した。本年
部で定着したミヤマハンノキが林の中に飲み込まれなが
度は、半島状植生下部に永久方形区を設置した。永久方
ら残っているものと考えた。遷移後期種であり、本調査
形区の大きさは、半島を横切るように長さ200mで幅(高
地での極送受種であると考えられるシラビソは、半島上
さ方向)10mとした。各調査区において出現した胸高
部では全く見られなかったが、本調査地では僅かではあ
(1.3m )以上の総ての樹木について出現位置と種類を記
るが、中層木が見られるようになった。
録し、胸高直径( DBH )と樹高( H )を測定した。胸
以上のことから、まず、半島状植生の最先端を形成し、
高以下の植物については、本年度測定できなかったため
上部方向へ進出が可能な高木種はカラマツであると考え
来年度の測定とした。また、カラマツ、ダケカンバ、シ
られた。また、本研究で選んだ半島状植生の成り立ちを
ラビソの樹齢を測定するため、成長錐を用いコアサンプ
考えると、最初に古く大きくなったカラマツが分布する
ルを得た。
両側の 2 本の半島が発達したと考えた。これら二つの半
調査の結果、半島状植生の上部や中部で見られなかっ
島が発達したことで、その間の環境が緩和され、現在カ
た、シラビソが多く出現した。
(図 1 )
。森林限界が上部
ラマツの若木が二つの半島の間を埋め、一つの半島を形
に上昇していると考えると、この標高での極相種である
成したと考えた。ミネヤナギは、裸地に多く見られるこ
と考えられるシラビソが半島の先端より標高が約150m
とから、森林限界の遷移の最先駆種の一つであると考え
下方において出現した。樹齢分布やサイズ分布を比較す
られる。しかしながら、本種は低木種であり森林限界の
ると、シラビソはL字分布をしており、今後シラビソが
林を形成する主要な種ではないと考えた。ミヤマハンノ
より多くなっていくと考えられ、シラビソが富士山の亜
キは、半島の最先端から上部には出現しないことと半島
高山帯の極相種であることを示している。一方、カラマ
の中心部でも出現しないため、カラマツの定着後カラマ
ツは、森林内部では小さな個体が見られない一山型で、
ツの林床下に定着すると考えた。また半島中部では中層
今後衰退していくと考えた。
木が林の中心部に残存していた。さらに、ダケカンバは、
シラビソが多く見られたのは、森林内部であり、森林
富士山樹木限界を代表する先駆樹種の一つであるが、環
の端の方では、上部で多く見られたカラマツが多く見ら
境の厳しい半島状植生の最先端に出現しなかった。一方
れ、樹齢分布、サイズ分布ともにL字型であり、森林の
で、半島状植生中部では、林の中心部で多く見られた。
端の部分では、多くのカラマツが定着し、維持されてい
このことは、本種が遷移初期種と考えられているが、森
ると考えた。カラマツは典型的な陽樹であることが知ら
林限界を形成する種ではなく、攪乱や積雪など、カラマ
れていることから、本半島状植生の拡大はカラマツによ
ツとは異なった立地を占める種である可能性を示してい
る効果が大きいと考えた。このことは、森林限界を上部
る。
方向に広げる遷移初期種がカラマツであることを意味し
本年度は、半島状植生の下部に新しく永久調査区を設
ている。また半島状植生上部では、カラマツの胸高を超
置し、胸高直径以上の木に対して毎木調査を行なった。
える木は林内全体に見られたが、特に林と裸地との両側
今後は、半島状植生下部でも稚樹に関する調査を行うこ
の境界付近にサイズが大きな木が見られた。一方半島状
とが必要であると考えた。半島状植生の構造と遷移につ
植生中部では、カラマツは東西両方の林と裸地との両側
いて解明していくとともに、斜面方向の樹齢分布を調べ
の境界付近にしか見られなかった。特に胸高直径が20
ることで半島の上昇速度や、シラビソの侵入過程などが
㎝を超える大径木は東の林縁にしか見られなかった。カ
明らかになると考えている。さらに、空中写真による過
ラマツとは逆に、ダケカンバは、5 m以上の上層木とな
去との比較解析からも、森林の拡大や森林の変遷につい
った木は、中層木に関しても林の中央付近に多い傾向が
ての解析を行うことで、半島状植生の構造と動態を解析
見られた。稚樹に関しては、西側の林縁付近に多く出現
していく予定である。さらに、本研究では、一つの半島
した。亜高木から低木であるミネヤナギ、ミヤマハンノ
についてのみの解析結果である。今後は、その他の半島
キは、個体数が少なく林全体に見られる傾向があった。
での解析などを行っていくことが必要と考えている。
しかし、ミヤマハンノキは、高さ1.3m− 5 mの中層木と
なる物が多かったのに対し、ミネヤナギは、大部分が高
41
基盤研究 3
富士北麓 野尻草原群落の維持機構に関する研究
担当者
植物生態学研究室:安田泰輔・中野隆志・石原 諭・
古屋寛子
研究目的、および成果
富士山北西麓に位置する半自然草地に関するこれまで
図 1 基部調査区(200×10m )に出現した各種高木(樹
高1.3m以上)の分布図。縦軸 0 mの位置が斜面上
部を表し、図中の破線は林縁、実線は 1 m間隔の
等高線を示す。
の研究から、樹木の侵入が少なく草地の景観がそのまま
に残っていること、草地内部の群落は空間的に不均一な
構造が形成されていることが明らかにされてきた。本年
度はこの草地内部の空間的に不均一な群落構造の形成要
因を明らかにすることを目的として研究を行った。
草地群落の群落構造を明らかにするため、0.25㎡のコ
ドラートを60個設置し、群落高と優占種、種構成、種
数を調査した。本調査地ではこれまでの当研究所の研究
成果から、この草地には小型から中・大型哺乳類が生
息あるいは利用していることが明らかにされている。そ
のため、群落構造の形成においてこれら野生動物の攪
乱が考えられた。しかし、それぞれの動物種の植物群
落に対する攪乱を考慮することは困難だったため、こ
れら野生動物の攪乱の指標として、土壌硬度(土壌の
硬さ)を用いた。土壌硬度は植生調査の際に同時に測定
した。またGPSを用いて獣道の地図を作成し、獣道か
らの調査した地点までの距離も攪乱の指標の 1 つとし
て用いた。得られた植生データに対して除歪対応分析
( DCA;Detrended Correspondence Analysis )を行った。
その結果、シバスゲ(Carex nervata Franch. et Savat. )
、
カ リ ヤ ス モ ド キ( Miscanthus oligostachyus Stapf )
、オ
オ ア ブ ラ ス ス キ( Spodiopogon sibiricus Trin. )
、ト ダ
シ バ( Arundinella hirta ( Thunb. )C.Tanaka )
、ス ス キ
( Miscanthus sinensis Anderss. )の計 5 種の優占種が確
認された。この中でトダシバが優占するコドラート(以
下、トダシバ群落と呼ぶ)は38.3%であり、ススキが優
占するコドラート(以下、ススキ群落と呼ぶ)は45.0%
だった。
除歪対応分析を用いて各コドラートを序列化した結
果(図)、第 1 軸(図の横軸)が最も高い寄与率(49.7
%)だった。第 1 軸と土壌硬度の間には有意な負の相
関( Spearmanの順位相関係数:-0.58、p<0.05)があり、
獣道までの距離との間には有意な正の相関( Spearman
の順位相関係数:0.38、p<0.05)があった。このこと
から第 1 軸は攪乱の傾度を表していると考えられ、値が
0に近いほど攪乱を受けていること、大きいほど攪乱を
あまり受けていないことを表している。
第 1 軸の値が高いところにススキ群落が、低いところ
にトダシバ群落が分布していた。他の 3 つの群落はスス
42
キ群落とトダシバ群落の重なり合う中間に集中的に分布
する傾向があった。また、第1軸と種数との間には有意
な負の相関があり、群落高との間には有意な正の相関が
あった( Spearmanの位相関係数はそれぞれ-0.51; p<
基盤研究 4
山梨県レッドデータブック登載昆虫類の分布・生息環
境モニタリングと保護・保全に関する研究
0.05,0.71; p<0.05)
。
以上の結果からあまり攪乱を受けていないところで
担当者
は、ススキが優占し、群落高が高く、種数が少ない。一
動物生態学研究室:北原正彦
方比較的攪乱を受けているところでは、群落高が低く、
富 士 吉 田 市:早見正一
種数が多い傾向が示された。この傾向は一般的な草地の
傾向と合致しており、放牧によってススキ草地からシバ
研究目的、および成果
草地へ遷移するときにも同様な傾向がみられる。そのた
先年出版された山梨県版レッドデータブック( RDB )
め、少なくとも攪乱が現在の草地の群落構造に影響を及
に登載されている生物種は、県内における保護・保全を
ぼしており、その結果として種数や種構成が異なった群
要する緊急種とみなすことができる。本研究の主目的
落が成立し、空間的に不均一な群落構造が形成されてい
は、県版RDBに登載されている絶滅危惧昆虫類を保護
たと考えられる。
するための基礎的データ(分布様式、生息環境特性)を
本草地では草地全体にわたった火入れや刈取りなど人
収集し、これらの種の保護・保全の推進に寄与すること
為的な管理はほとんどなされていない。一般的な傾向で
にある。
は、このような草地はススキと低木が混在した状態を経
具体的には、県版RDB登載昆虫類の、現況における
て高木の移入により、森林へと遷移することが知られて
県内の詳細な分布様式を解明し(現在生き残っている場
いる。この草地から森林への遷移途中相では草地群落と
所の特定)、現況における生存地域の個体群の構造や特
低木群落、高木相が優占する群落が同時に成立するため
性、さらに生息環境特性を把握する。そしてこれらの調
多様な環境が形成される。本研究で明らかにされたこと
査研究を通して、本県に即した絶滅危惧種ごとの保護・
は草地群落内部においても、野生動物の攪乱によって多
保全策について考察することである。
様な群落構造の異なった草本群落が成立していたことで
RDB登載の昆虫類全てについて、上記の事項を調査
ある。
することは人員や予算の関係で無理なので、研究初年
今後、動物-植物の相互作用を理解することが草地の
の今年度は、県版RDB登載の絶滅危惧昆虫類の中から、
環境保全だけでなく地域の多様性の解明に重要であると
特に保護の緊急性の高い調査対象種を選択することにし
考えられる。
た(すなわち、本研究では県版RDBの絶滅危惧ⅠB類と
絶滅危惧Ⅱ類の昆虫を対象にした)。そして、調査対象
種群について、文献等を参考にして県内の既知の分布地
を割り出して、それを基に現況の分布調査を実施した
(既知産地の現在における生息状況、新分布地の発見な
ど)。調査対象種群について、生息が確認できた場所に
おいては、現在の個体群の状況(個体群サイズ、生態・
行動様式)と生息環境の状況(広さや維持されている状
況、餌資源の分布や状態)を調査して、各種の保護の緊
急性について判断した。
今年度は、調査対象種の生息可能性の高い地域、ある
いはかつて記録のある地域を重点的に調査した。その結
果、チョウ類全体としてはセセリチョウ科18種、アゲ
ハチョウ科 9 種、シロチョウ科10種、シジミチョウ科
図 除歪対応分析( DCA )
20種、テングチョウ科 1 種、マダラチョウ科1種、タテ
ハチョウ科23種、ジャノメチョウ科12種の計84種を確
認することができた。このうち調査対象種は 9 種中の
8 種の生息が確認できた。これらは概ね既知産地での記
録である。なお以下の記述では、コレクターによる乱獲
を防ぐために、多くの場合、具体的地名の記載は省略し
てある。
チャマダラセセリ(図 1 )は既知産地での記録である
43
が、同一地域の中でもあまり確認されていない環境にお
に韮崎市から山梨市にかけての既知産地を中心に調査し
いて確認できた。しかし、期間中いくつかの既知産地を
たが、全く見ることはできず、壊滅的状況と考えられた。
調査したが、全く未確認に終わり、大部分の生息地は危
ゴマシジミのような種は地理的変異が大きく、地域個体
機的状態に置かれていることが推測できた。本種の保全
群ごとの保全が急務の事項である。
対策は急務と考えられる。
図 2.山梨県版RDB絶滅危惧Ⅱ類( VU )のゴマシジミ
図 1.山梨県版RDB絶滅危惧ⅠB類( EN )の
チャマダラセセリ ミヤマシジミは、富士川の一部地域で生息を確認し
た。
ホシチャバネセセリも既知産地の記録のみである。甲
コヒョウモンモドキ(図 3 )は今回、奥秩父から南ア
府盆地北部での再確認も期待しながら調査を行ったが、
ルプス前衛にかけての既知産地を詳細に調査したが、1
残念ながら確認できなかった。次年度以降の調査に期待
カ所で1個体確認できたのみであった。本種の生息する
したい。
亜高山帯の草原は、恐らく温暖化なども関係して乾燥化
ツマグロキチョウは、調査員自身の未発表記録を基に
が一段と進み、生息環境が急変してきている。またコレ
調査を行ったところ、そこでの生息(夏型及び秋型)を
クターによる採集圧も強く、これらが本種急減の一因で
確認できた。本種は、食草があれば比較的狭い環境容量
あろう。
(25㎡程度)でも生息することを確認しているが(未発
表)、今年度の調査においても非常に狭いエリアに生息
していた。一方で、このような生息場所はわずかな攪乱
で壊滅する可能性を含んでおり、本種の保全上、特に考
慮しなければならない点だと考えられる。また、長らく
継続して生息していた地点でとうとう確認できなかった
地点もあった。生息地における刈払い作業のタイミング
がチョウの生息に影響したとも考えられるし、一部、コ
レクターによる強烈な採集圧も考えられ、今後の推移が
気になる生息地である。
シルビアシジミは県内での生息は特定の環境に限られ
ており、これまで河川堤防の草地のみでしか確認されて
いない。このため調査も重点的に河川堤防で行った。既
知産地を詳細に調査したが、安定的な生息環境は非常に
図 3.山梨県版RDB絶滅危惧Ⅱ類( VU )の
コヒョウモンモドキ 狭く、極めて厳しい状況と考えられた。本種の生息には、
河川堤防の管理形態が大きく影響していることが考えら
以上が本年度の調査結果の概要であるが、保全対策が
れる。
急務の種が多くあり、次年度以降の調査も絶滅危惧種の
ヒメシロチョウは富士北麓での生息調査に加えて、北
生息実態把握と保全策の究明に向けて努めていきたい。
杜市の既知産地での調査を行った。個体数は極めて少な
く、秩父山系での重点的な調査が必要と考えられた。
ゴマシジミ(図 2 )は、かつては県内全域に広く分布
していたが,急速に減退してきた種である。今年度は特
44
基盤研究 5
寒冷時の甲状腺ホルモンと脂肪組織の相互作用に関す
る研究
足させた。
先行する基盤研究の結果、4 ℃の寒冷に曝されたラッ
トでは、甲状腺ホルモンの血中濃度が寒冷 2 日目までに
ピークになることがわかっている。そこで、平成15年
度は、寒冷初日と 2 日目までの間、甲状腺ホルモンの合
担当者
成阻害薬プロピルチオウラシル( PTC )を飲用水中に
環境生理学研究室:永井正則・齋藤順子
投与したラットの褐色脂肪細胞の熱産生能を、合成阻害
薬の投与を受けずに寒冷にのみ 2 日間曝されたラット
研究期間
と比較した。その結果,ノルアドレナリンに対する熱産
平成15年度∼平成19年度
生の増加幅は、甲状腺ホルモン合成阻害ラットでも阻害
なしのラットでも近似した値を示し、甲状腺ホルモン合
研究目的および成果
成阻害の効果は観察されなかった。交感神経末端から放
山梨県は、気象条件が健康によくない影響を及ぼす可
出されるノルアドレナリンの作用には、α作用とβ作用
能性が高い都道府県のひとつに数えられている(吉野正
のふたつがある。脂肪細胞の熱産生反応は、ノルアドレ
敏・福岡義隆:医学気象予報、角川書店、2002年)。山
ナリンのβ作用によって活性化される。したがってこの
梨県の特徴である日較差による急激な気温低下、冬期の
結果から、交感神経が褐色脂肪細胞に及ぼすβ作用は甲
寒冷は、特に乳幼児や高齢者に大きな影響を及ぼす。人
状腺ホルモンの影響を受けないことがわかった。
が寒冷に適応するためには、脂肪や筋肉によって余剰の
寒冷環境下で熱を産生する褐色脂肪組織の重量は、寒
熱を産生する。このような現象は、ふるえを伴わないこ
冷 7 日目で大きく増大する。この重量の増加には、交感
とから非ふるえ熱産生と呼ばれている。本研究は、この
神経のα作用が関与する可能性が指摘されている。そこ
ような寒冷適応の生理学的メカニズムを明らかにするこ
で平成16年度は、寒冷環境に置く前 1 週間と寒冷 2 日
とを目指している。非ふるえ熱産生の調節について、現
目までの間、プロピルチオウラシルによって甲状腺ホル
在までにわかっていることを図 1 に示す。非ふるえ熱産
モン濃度を低下させたラットの褐色脂肪組織重量と褐色
生には、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺ホルモン、交感神
脂肪細胞の熱産生能を、甲状腺ホルモン合成阻害を受け
経の関与が大きいとされている。しかし、寒冷適応の過
ないラットと比較した。その結果、寒冷下での褐色脂肪
程で交感神経活動が甲状腺機能にどう影響するのか、ま
た、甲状腺ホルモンが脂肪細胞の脂肪分解による熱産生
や脂肪細胞の増殖にどう影響するのかについては、いま
だ解明されていない点が多い(図 1 )
。
図 1.寒冷適応過程での非ふるえ熱生産の調節
甲状腺刺激ホルモン、甲状腺ホルモン、交感神経
の関与が大きいとされているが、図中に?を付け
た部分は未だ解明されていない。
そこで、寒冷適応過程での甲状腺と脂肪組織の役割を明
らかにする目的で、平成15年より標記の基盤研究を発
図 2.交感神経のβ作用遮断薬が寒冷環境下での甲状
腺ホルモン分泌に及ぼす影響
β遮断薬プロプラノロールを与えた動物群と投与
なしの対照群との比較。平均値と標準誤差を示す
(n=10,p<0.05) 。
45
組織の重量の増加には、甲状腺ホルモンは関与しないこ
論することができる。
とがわかった。したがって、褐色脂肪細胞の熱産生能に
平成19年度は、寒冷暴露 7 日目まで交感神経のβ作
も両動物群の間で差は見られなかった。
用遮断薬を飲用させる実験群を設定し、寒冷 2 日目まで
平成15年度と16年度の実験結果から、褐色脂肪組織
β作用遮断薬を飲用させた実験群との比較を行った。そ
に対する交感神経のβ作用およびα作用を甲状腺ホルモ
の結果、β作用遮断薬を飲用させている間は、寒冷環境
ンが修飾する可能性が低いことがわかった。
下での甲状腺重量の増加が持続的に抑制されていること
一方、平成16年度と17年度に行なった交感神経のβ
を観察した。(図 3 )
作用遮断薬(プロプラノロール)を用いた実験により以
このことから、交感神経系がそのβ作用を介して甲状腺
下のことが明らかとなった。①β遮断薬を寒冷 2 日目ま
機能に抑制的に作用することをさらに確かめることがで
で飲用させたラットでは、寒冷 7 日目の褐色脂肪組織重
きた。
量が寒冷負荷のみの対照群と比べ有意に低下していた。
以上の結果から、脂肪細胞による熱産生とその増殖に
②β遮断薬を投与したラットでは、血液中の遊離トリイ
よる寒冷適応の過程に甲状腺ホルモンが一義的に関与す
オドサイロニン( FT4:活性型甲状腺ホルモン)濃度
る可能性は低いことがわかった。寒冷適応の過程での脂
が寒冷負荷のみの対照群と比べ有意に上昇していた(図
肪細胞の増殖は、交感神経のβ作用を介した熱産生に伴
2 )。
って脂肪組織中で起こる局所要因によることが予想され
しかし、甲状腺ホルモンの合成阻害薬の投与は、寒冷環
る。一方、寒冷負荷による交感神経活動の変化が、甲状
境下での褐色脂肪組織重量に影響を与えないことが平成
腺ホルモンの分泌に影響する可能性が示された。
16年度に実験によりわかっているので、β遮断薬投与
(文責 永井正則)
による活性型甲状腺ホルモン濃度の増加は、褐色脂肪組
織重量の増減とは無関係であると考えられる。
平成18年度は、交感神経のβ作用遮断薬を飲用させ
る実験をさらに続け、寒冷 2 日目の甲状腺重量がβ作用
遮断薬飲用群で有意に低下することを確認した。寒冷 7
日目では、β作用遮断薬飲用群と非飲用群の甲状腺重量
の差は消失していた。甲状腺重量の低下は、甲状腺から
のホルモン分泌が亢進した結果と考えられる。β作用遮
断薬の飲用により寒冷 2 日目の血中甲状腺ホルモン濃
度、特に甲状腺から放出されるサイロキシン( T4)濃
度が上昇しているという前年度までのデーターと合わせ
て考えると、寒冷環境下での甲状腺ホルモンの分泌は、
交感神経のβ作用により抑制的な影響を受けていると結
図 3.交感神経のβ作用遮断薬が寒冷環境下での甲状腺
重量に及ぼす影響
β遮断薬プロプラノロールを与えた動物群と投与
なしの対照群との比較。平均値と標準誤差を示す
(n=10,p<0.05) 。
46
基盤研究 6
精神的ストレス環境下の認知処理機構とストレス増減
作用に関する研究
上述の一対比較の結果から、実験刺激に純音、輸液ポ
ンプ警告音、心電図モニタ警告音の 3 音を採用し、こ
れらの音圧を70dBに固定した.実験は安静状態を 6 分間
計測した後、次の 2 つの課題(各 6 分間)を施行した。
一つの課題には、上記の 3 種類の音刺激を聞く受動的聴
担当者
取課題を設定した。もう一課題には、心電図モニタ警告
環境生理学研究室:石田光男・齋藤順子・永井正則
音を標的音とし、標的音検出とボタン押しを求める弁別
反応課題を設定した。この課題ではボタン押しの反応時
研究目的
間、ヒット数、誤反応数を記録した。音はヘッドホンに
同じストレス環境におかれても、感受されるストレス
よりランダムに提示された。また 2 課題の施行順序は被
の強度には個人差が存在する。それは性格、経験などに
験者によってランダムに変更された。
よって心理社会的ストレス事象に対する認知スタイルが
心理的ストレス評価としてNASA-TLXを施行した。
異なることに由来する。本研究は環境の認知的処理の個
これは精神的作業負荷量を評価する質問紙法である。生
体差に着目し、それらが心理的・生理的ストレス反応に
理的指標には、非観血式連続血圧測定装置( COLIN,
如何なる差異をもたらすのかを検討することを目的とし
JENTOW-7700)によって収縮期血圧( SBP )と拡張
た。
期血圧( DBP )、拍動間隔( P-P )を連続的に記録した。
実験開始年度にあたる本年度は、探索的研究として、
さらに各セッション終了後に唾液採取し、分泌型免疫グ
臨床経験で学習される看護師特有の感受性がもたらす影
ロブリンA( sIgA )濃度を分析した。
響に関して実験を実施した。看護師は病棟におけるナー
(2)実験結果と考察
スコール、心電図モニタなどの各種医療機器類が発する
弁別反応課題において,看護師群は非看護師群と比較
アラーム音に対してストレスを感じていることが報告さ
して高いNASA-TLX得点、反応時間短縮と誤反応率が
れており、看護師はそれらの機器音によって不快感情を
見られた(表 1 )。このことは看護師群では反応時間の
想起しやすい。すなわち機器音の暴露環境は、看護師経
短縮と引き替えに課題遂行の正確さが低下するトレード
験のない人に比べ、高いストレス環境として感受されや
オフが生じていたようである。NASA-TLX得点につい
すい.本研究では、機器音に対する感受性の違いの個体
て、群×課題の反復測度ANOVAを施した結果、弁別反
差に着目し、認知スタイルの個体差がもたらす心理、生
応課題での群差に有意差は認められなかった。また反応
理的反応の差異を調べる。
時間についてt検定を行った結果、有意では無かったが
看護師群の反応時間が短い傾向( (
t 29)=1.97,p<0.06)
研究成果
(1)実験方法
であった。
血圧については安静期を基準とした変化量を求め、
被験者は看護師15名(女性13名、男性 2 名、平均年
60秒間毎の区間平均値を算出したところ、DBPに群差
齢25.1±3.7歳)
、非看護師16名(女性13名、男性 3 名、
が観察された(図 1 )。群(2)×課題(2)×区間(6)
平均年齢23.9±4.6歳)を対象とした。
の反復測度ANOVAを施した結果、主効果、交互作用と
はじめに医療機器音に対する不快度の違いを比較する
もに有意では無かったが、群の主効果( F(1,29)=3.67,
ため、音の一対比較を行った。医療機器音には輸液ポン
p<0.07)と群×課題×区間の交互作用( F(5,145)=
プ警告音、心電図モニタの単音、心電図モニタ警告音、
2.27, p<0.06)に有意な傾向が認められた。sIgA濃度
医療機器以外の音には、ガラスのクラッシュ音、純音
では条件、群に顕著な差は認めらかった。このように両
( 1 k㎐)
、クラップ音の合計 6 種類の音を用いた。一対
課題ともに看護師群の血圧が高い傾向にあることから、
比較データから各音の不快さの強度を算出し、順位を
機器音の暴露環境では比較的強いストレスを感じている
比較した。看護師群では、クラッシュ音(0.317)、輸液
といえる。また拍動間隔の短縮(心拍率の上昇)が無い
ポンプ警告音(0.188)
、クラップ音(0.159)
、心電図モ
ことから、主に血管収縮による血圧上昇が生じていたと
ニタ警告音(0.151)
、純音(0.102)
、心電図モニタ単音
考えられる。
(0.083)の順に不快であった。一方、非看護師群では、
以上の結果より、同じ環境においても認知処理過程の
クラッシュ音(0.327)
、クラップ音(0.197)
、輸液ポン
個体差が心理、生理的ストレス反応発生に違いをもたら
プ警告音(0.188)
、心電図モニタ警告音(0.124)、純音
すことが示された。今後は心臓血管系のストレス反応パ
(0.089)
、心電図モニタ単音(0.075)であった。以上の
ターンの違いにも焦点を当て、反応の個体差に関与する
結果は、看護師群は機器音(輸液ポンプ、心電図モニタ
認知スタイルを調べる予定である。
警告音)に対して強い不快を感じていることを示してい
る。
47
表 1 精神的作業負荷量と遂行成績
基盤研究 7
「環境要因変化に起因するストレスが体内恒常性に与
える影響についての研究」
−環境温度変化によるストレス−
担当者
生気象学研究室:宇野 忠・齋藤順子・外川雅子
研究目的、および成果
夏季での熱中症、不定愁訴(冷房病など)や冬季の血
液循環系への負担といった環境温度やその変化により生
じる健康問題を考えていくために、さまざまな環境温度
● 看護師群
○ 非看護師群
や温度変化にさらされたときに生じる生体の生理学的な
機能への影響、メカニズムを動物モデルを使用し、ヒト
での実験では行えない手法を用いて明らかにする研究で
ある。これにより実際に人の健康に影響を与える問題へ
の対処、または予防処置の提案のための基礎となる研究
成果を提示するのが目的である。
これまでに外的環境要因の一つである温度(気温)の
生体への影響の研究として、高温環境下での熱中症に関
する研究(プロジェクト研究:都市化に伴う環境変化が
ヒトの生活と健康に及ぼす影響に関する研究)、繰返し
温度変化環境が生体に与える影響についての研究(プロ
ジェクト研究:急激な気温変化がヒトの健康に及ぼす影
響に関する研究)を行ってきた。これらの研究で高温環
境、低温環境、繰返し温度変化環境に曝露されることに
より生体は強いストレスを受けており、これらの動物モ
デルにおいて外因性発熱物質であるリポポリサッカライ
ド( LPS )投与により引き起こされる実験的発熱反応
が増強される事が明らかとなった。本基盤研究ではこの
ストレスを伴う環境温度暴露による発熱反応増強のメカ
図 1 拡張期血圧( DBP )
ニズムの解明を目的とし、生体防御機構を司る免疫機能
への影響を考察する。
平成18年度までの研究により、腸内細菌由来の物質
エンドトキシンが重要な役割を担っていると考えその作
用機序を推察し、検証してきた。エンドトキシンとはグ
ラム陰性桿菌の細胞壁を構築する一成分であり、非常に
強い様々な生理活性を持つ物質である。単球やマクロフ
ァージなどの免疫細胞に作用しサイトカインの産生、放
出を誘引し、様々な発熱を初めとした全身性の反応を引
き起こすサイトカインカスケードの引き金となる。通常
問題となるエンドトキシンは外部から進入してくる細菌
などに由来するものであるが、外傷や炎症、外科手術に
よる侵襲、拘束などの非常に強い身体的ショックにより
腸内細菌叢由来のエンドトキシンが腸管粘膜を透過し
( Bacterial translocation )血液中に漏洩し、多臓器不全、
全身性過剰炎症症候群、敗血症などの重篤な疾患を引き
起こすことが知られている。
48
日常的にさらされる環境温度に伴うストレスによって
さらに血液凝固因子の増加も起こり血液の粘度が上昇、
も弱いBacteria translocationが発生し極微量のエンドト
これらに伴い腸管粘膜において腸間膜動脈毛細血管の収
キシンの漏洩が引き起こされるならば、単球やマクロフ
縮、腸末梢循環障害が起こり腸管の虚血が引き起こされ
ァージのサイトカイン産生が増強される可能性が考え
腸管粘膜の透過性が増大し、腸内細菌由来のエンドトキ
られる。これまでの実験において、環境温度暴露により
シンの腹腔への漏洩が引き起こされる。漏洩エンドトキ
血液中のエンドトキシン濃度の極微量な上昇と、発熱時
シンが腹腔マクロファージのサイトカイン産生能を鋭敏
のサイトカインTNF−α濃度の顕著な上昇が確認でき
化した状態とし、風邪や感染症時に見られるような外部
た。本年度では、環境温度に伴うストレス状況に暴露し
からの発熱物質の作用により、通常時に比べサイトカイ
た動物の免疫細胞(マクロファージ)のサイトカイン産
ン産生、放出が増加し、発熱反応の悪化(増強)が引き
生能が鋭敏化作用を受けているかを検証した。環境温度
起こされる。
を変化させることのできるチャンバー内でラットを 3
つの環境温度条件で 2 日間曝露(25℃環境:ストレス
小、4 ℃低温環境:ストレス中、4 ℃−27℃ 1 時間間隔
繰返し温度変化環境:ストレス大)を行い、腹腔のマク
ロファージを単離し生存細胞数測定後、濃度調整( 1
×106 個/ml )した初代培養細胞を24ウェルプレートに
分注した。そして発熱物質LPS(10ng/ml )を投与し24
時間インキュベート後、培養上清中に産生されたサイト
カインTNF−α濃度をELISA法( Endogen Rat TNFα
ELISA kit )を用い測定した。図 1 に示すように繰り
返し環境温度変化環境に暴露された群では有意に高い
TNF−α濃度を示し、寒冷環境暴露群においても高い
傾向が確認できストレスを伴う環境温度暴露により腹腔
マクロファージのサイトカイン産生能が鋭敏化されてい
図 2.環境温度暴露による発熱増強現象のメカニズム
ることが明らかとなった。
以上の研究結果は夏期の冷房病をはじめとする環境
温度変化にさらされたことによっておこる不定愁訴のメ
カニズムの解明に貢献することが可能であると考えられ
る。マクロファージが産生するサイトカインは細胞性免
疫反応で産生、放出され生体内恒常性維持に重要な様々
な機能を持つ物質であり、からだのさまざまな器官に影
響を及ぼすため環境温度暴露によって細胞性免疫反応の
機構がストレスを介し影響を受けた結果、産生放出され
るサイトカイン量が変化すれば、これにより生理的機能
のバランスが崩れる可能性が考えられる。これは将来的
にストレスの原因となるものが気温変化だけにはとどま
らず、一般的な精神的ストレス、社会的ストレス、物理
的ストレスにより起こる体調不良のメカニズム解明にも
図 1. 2 日間暴露後、採取した腹腔マクロファージの初
代培養細胞へLPS投与を行った24時間後の細胞培
養上清中TNF−α濃度( n=4)
繋がる可能性を示唆している。
これまでの研究結果や既往研究から環境温度暴露によ
る発熱反応の悪化(増強)現象は図 2 に示すようなメカ
ニズムが考えられる。正常な状態では腸内細菌由来のエ
ンドトキシンは糞便として体外に排出、または漏洩した
としても上腸管膜静脈から肝門脈を経て肝臓で無毒化さ
れているが、絶対温度的、温度変化による寒冷刺激によ
り交感神経活動の亢進が起こり、腸の活動が低下する。
49
厚生連の担当であった。
基盤研究 8
飲料水中微量元素の地域差がヒトに及ぼす影響に関す
る基礎的研究
体脂肪率や検診データの多くは、性別や年齢で異なる
場合が多いため(図 1 )、地域差の有無は性・年齢・地
域別にデータを処理して分散分析(統計処理)を行った。
また、30歳未満ならびに66歳以上のデータは少なかっ
担当者
たため、以下の解析からこれらのデータは除いた。その
環境生化学研究室:瀬子義幸・長谷川達也・外川雅子
結果、血糖値、総コレステロール、中性脂肪、HDL(善
玉コレステロール)、LDL(悪玉コレステロール)
、体
研究目的および成果
脂肪率、内臓脂肪レベル、BMI( Body Mass Index 、肥
我々がこれまでに行った県内地下水微量元素調査で、
満度を表す指数)については、男女とも地域間の差は認
バナジウム、ルビジウム、タングステン、ウランの濃度
められなかった。一方、比較的長期にわたる血糖値の平
には地域差のあることがわかっている。山梨県は水道水
均的状況を示すHbA1cは、男性では地域差は認められな
の約60%は地下水を原水としているため、ヒトが飲料
かったものの、女性ではわずかながら統計学的に有意な
水から摂取するこれらの微量元素の量は地域によって異
地域差が認められた(図 2 、女性では富士吉田市と富士
なる可能性がある。本研究は、微量元素摂取量の違いが、
河口湖町の値が北杜市より低かった)。
地域住民に何らかの影響を与えているか否かを明らかに
することを目的とし、健康の地域差の現状と微量元素の
微量元素、中でも富士山の地下水に他の地域より多く
含まれているバナジウムはその健康影響が注目されてい
る元素であり、富士山の地下水の飲用が健康に何らかの
影響を及ぼす可能性を示唆する報告もある。しかしなが
ら、この点に関して明確な結論は得られていない。本研
究は、特にバナジウム摂取量の違いに着目して住民検診
内臓脂肪レベル
関連性を探るものである。
で得られたデータの地域差の有無を解析した。
年 齢
方法:2007年 9 月10日∼11月30日の間に、富士吉田
市( 9 月10・27日、10月23・24・25日)
、富士河口湖町
(11月28・29・30日)
、北杜市(10月30・31日)が行っ
図 1.内臓脂肪レベルの年齢別・地域別・男女別平均値
(平均値±標準偏差)
た住民検診の際に、研究協力者(表 1 )を募り、同意を
得た方々について体脂肪率(内臓脂肪レベル)測定、末
(血糖値、中性脂肪等)を提供いただいた。また、検診
で余った尿、血液(血漿、血清、血球、血餅)を微量元
素等の測定のためにいただいた。一部の協力者からは、
後日頭髪を送付していただいた。データの解析には、統
計ソフトSPSSを用いた。なお、富士吉田市と富士河口
HbA1c
(%)
梢血液循環レベル(血管年齢)測定を行い、検診データ
湖町はバナジウム摂取量の多い地域として、また北杜
市は富士吉田市と富士河口湖町と標高や気温が同程度
年 齢
で飲料水からのバナジウム摂取量の多くない地域として
選定した。富士吉田市の検診は富士吉田医師会検査セン
ターの、また、富士河口湖町と北杜市の検診はJA山梨
図 2.HbA1cの年代別・地域別・男女別平均値
(平均値±標準偏差)
表 1.研究協力者の地域別、男女別人数
尿中塩分濃度は、男女共に富士吉田市が富士河口湖町
調査地
富士吉田市
男
女
合計
と北杜市より統計学的に有意に高かった。尿中塩分濃度
を尿中クレアチニンおよび除脂肪体重で補正しても同様
126(119)
246(238)
372(357)
82 (57)
168(133)
250(190)
であった。尿中塩分排泄量は塩分摂取量を反映すると考
北杜市
102 (65)
123 (97)
225(162)
えられているが、変動が大きいため測定値の評価には慎
合計
310
537(468)
847(709)
重を要する。しかし、興味深い結果であり、今後の検討
富士河口湖町
( )内は、解析に用いた30∼65歳の人数
50
課題である。
末梢血液循環レベルは、動脈硬化など血管の老化の指
標として測定されているもので、今回の調査ではいずれ
の調査地も男女ともに年齢と共に悪化していた。富士吉
基盤研究 9
微量バナジウムの脂質代謝への影響に関する研究
田市の女性の末梢血液循環レベルは、他の 2 地域より有
意に低い結果が得られた。末梢血液循環レベルについて
担当者
も今後の検討課題である。
環境生化学研究室:長谷川達也・外川雅子・瀬子義幸
今回の調査では、合計約800人分について検診データ
や内臓脂肪レベルなどのデータが得られた。それらを使
研究目的および成果
い地域差の有無を解析し、統計学的に有意な地域差が認
我々は、富士山周辺の地下水や湧水に多く含まれてい
められた項目もあった。収集した生体試料中(血液、頭
る微量元素「バナジウム」と糖尿病との関連性の研究を
髪)の微量元素濃度との関連性については検討中であ
行ってきた。その結果、地下水に含まれる濃度レベルの
る。
バナジウムには、血糖値を下げる効果のないことを報告
今回のデータは無作為抽出(ランダムサンプリング)
した。一方、これらの一連の研究で、バナジウム摂取に
で得られたものではなく、住民検診を自発的に受診し研
よりコレステロールや中性脂肪が減少することを見出し
究協力をしてくれた方々のものである。そのため、それ
た。しかし、このコレステロールや中性脂肪に対する効
ぞれの地域を代表するデータとは言い難いが、一定の方
果はわずかであった。この原因として、エサ由来のバナ
法で研究協力者を募って収集したものであるため、地域
ジウムが関与していることが考えられた。バナジウムが
差の有無をある程度反映していると考えている。但し、
エサに多く含まれている場合、飲料水に加えた微量のバ
800人分のデータを男女、年齢、地域別に分けると、1
ナジウムの効果は隠れてしまう可能性が考えられる。そ
群当たりの人数は数十人に減ってしまう。今後、サンプ
こで、エサ中のバナジウム濃度を低くして実験を行う
ル数や調査地を増やし、より確度の高いデータとするこ
ことにより飲料水から与える微量のバナジウムの効果を
とが必要である。
より明確に把握することができると考えた。コレステロ
ールや中性脂肪は高脂血症を引き起こし、心筋梗塞や脳
謝辞:調査に協力して下さいました住民検診受診者の
梗塞の原因となる動脈硬化のリスクを上げることが知ら
皆さま、多大なご協力を賜りました富士吉田市・富士河
れている。もし、微量のバナジウムが脂質代謝に影響し
口湖町・北杜市・ JA山梨厚生連・富士吉田医師会臨床
ているなら、その摂取量を適切に保つことが生活習慣病
検査センターに感謝申し上げます。
やメタボリックシンドロームの予防に役立つ可能性があ
る。
我々が、この研究の開始準備をしている時期に、他
の研究グループが、バナジウムの血糖降下作用を研究
する場合、動物の系統の違いにより得られる結果が異
なることを発表した。我々も、以前バナジウムの毒性
がマウスの系統の違いにより異なることを見出してい
る。従って、バナジウムに対して感受性の高いマウスの
系統を見出すことが、これから開始する実験に重要と
考えられる。そこで、近交系マウス 3 種類( C57BL/6,
DBA/2,C3H/He )、クローズドコロニー系マウス 2 種
類( ddY ,ICR )、合計 5 種類のマウスにバナジウムを
投与し、肝臓および腎臓に蓄積するバナジウムの経時変
化を分析した。臓器への蓄積が多く排泄が少ない動物種
が、感受性の高い可能性がある。なお、投与したバナジ
ウムは毒性の現れない量である100μmol/㎏とした。図
− 1 に肝臓および腎臓中バナジウムの経時変化を示す。
その結果、肝臓中バナジウム濃度はC57BL/6マウスと
ddyマウスで投与 6 時間後がピークとなり、24時間後に
は減少した。しかし、DBA/2マウスは24時間後でもバ
ナジウム量が増加していた。ICRマウスとC3H/Heマウ
スは 6 時間と24時間後で有意な違いがなかった。腎臓
のバナジウム量はDBA/2マウス以外、投与 6 時間後が
51
ピークとなり、24時間後には減少した。そこで、感受
性が異なると予測されるマウスとしてC57BL/6マウス、
DBA/2マウス、ICRマウスの 3 種類を選び以降の実験
を行うことにした。現在、これら 3 種類のマウスに、低
バナジウム飼料(クレア精製飼料)を与えてSPF動物
室において飼育を行っている。来年度には微量バナジウ
ムの効果を示すデータが得られる予定である。
DBA/2マウス
C57BL/6マウス
ICRマウス
図− 1 臓器中バナジウム量の経時変化
52
ネルギーとして焼却処理されている。表 1 に平成 4 年
基盤研究10
度からの16年度までの発泡スチロールの生産量と再資
山梨県内で生じる廃棄プラスチックの新しい処理手法
源化率の推移を示す。2005年度のPSのリサイクル率は、
に関する研究
マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルを合わせて
71.1%と高い値で推移しているが、現在の容リ法では、
担当者
サーマルリサイクルはリサイクルとは認められていな
環 境 資 源 学 研 究 室:齊藤奈々子・森 智和
い。しかしながら、現状は、廃棄プラスチックの回収量
静
の増加に再資源化技術が追いついていない状況であり、
岡
県
立
大
学:佐野慶一郎
神奈川県産業技術総合研究所:高橋 亮
容リ法が一部改定され平成19年 4 月よりサーマルリサ
イクルもリサイクル手法として認められるようになっ
研究期間
た。このように、再資源化技術は立ち遅れており、某大
平成15年∼平成20年度
手メーカーでも、リモネンによるPSの水平リサイクル
が行われていたが、リサイクル工程中のコストが課題と
研究目的
なり実用規模に至っていない。そこで本研究では、溶媒
平成 7 年に容器包装リサイクル法が成立し、容器包
に植物由とリモネンを混合したものを用い発泡スチロー
装の大半を占めるプラスチック製容器包装を分別収集す
ルを低温で加熱することで減容化し、廉価で容易にPS
る自治体が、年々増加している。なかでも、発泡スチロ
樹脂を回収する手法について検討した。
ールは、ポリスチレン樹脂( PS )を約10∼50倍に膨張
させて製造しており、成形加工が容易で、耐衝撃性や保
研究成果
温性に優れた特性を持つことから、家電製品の梱包材や
植物油とリモネンを重量比 1:1 の割合で混合し、各
食品トレーなど多くの分野で使用されている。しかし、
温度条件で発泡スチロールを加熱減容化させた。
いったん廃棄されると嵩張るごみとして問題になってお
実験サンプルには、家電製品などの梱包資材として使用
り、リサイクルが積極的に進められている。現在、PS
されている発泡スチロールを 1 ㎝角に切断したものを
の主なリサイクル手法はマテリアルリサイクルではある
用いた(写真 1 )。植物油は市販の菜種油を用い、リモ
が、再資源化率は、4 割にとどまっており、残りは熱エ
ネンは柑橘類全般の果皮に含まれるd体のリモネンを用
いた。実験手順として、ビーカー内に菜種油とリモネン
を各50gずつ投入し、次に、大気下で50℃、100℃、150
℃の 3 つの条件下で加熱し、各温度条件に昇温した時点
で加熱を止め、発泡スチロールを 3 g投入した。ビーカ
ーをそのまま室温まで冷却し、PS樹脂を沈殿させ回収
した。発泡スチロール減容化中(溶媒温度150℃時)に
発生するガス成分のGCマススペクトルをグラフ 1 に示
す。減容化中に発生するガスは、殆どがリモネンであり、
スチレンモノマーやダイマーなどのPS樹脂を熱分解さ
せた際に発生する低分子成分は検出されず、PS樹脂の
加熱による劣化は起こっていないことが推察された。さ
らに、各温度条件で回収したPS樹脂には、菜種油が付
着しているためn-ヘキサンにて洗浄した。50℃、100℃
で減容化した場合、洗浄後も塊状になっており菜種油が
PS樹脂の中に取り込まれ精製することが出来なかった。
グラフ 1 発泡スチロール減容化中の発生ガス成分
一方、150℃で減容化したPS樹脂は、n-ヘキサンで洗浄
表 1 発泡スチロールの生産量と再資源化率の推移
生
年 度
H 4 年度
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
産
232
225
223
224
225
226
213
212
209
201
197
193
194
量
国内流通量
170
165
158
179
180
182
182
182
183
176
176
173
175
資源化量
29.5
33.2
38.3
48.9
51.6
55.0
56.8
60.4
63.9
66.3
68.8
68.0
71.8
資源化率
17.4%
20.1%
24.2%
27.3%
28.7%
30.2%
31.2%
33.2%
34.9%
37.8%
39.1%
39.3%
41.0%
出典:発泡スチロール再資源化協会資料
53
基盤研究11
廃棄プラスチック処理に関するライフサイクルアセス
メントの研究
担当者
環境資源学研究室:森 智和・齊藤奈々子
共同研究者
静岡県立大学:佐野慶一郎
工 学 院 大 学:佐藤貞夫
山 梨 大 学:鈴木嘉彦
写真 1 廃棄発泡スチロールの試料
研究目的
持続可能な社会を目指し、リサイクルを取り入れた循
環型社会への変化を推進しなければならない。特に、現
在身の回りに無くてはならない素材として一般化され、
毎年大量に生産・廃棄されているプラスチックにおい
て、リサイクルの導入は急務である。
全国で発生する廃棄プラスチックの多くはその他のご
みと共に、各市町村の焼却施設で処理されている。それ
に伴う二酸化炭素をはじめとする環境負荷物質の発生は
膨大で、環境への悪影響が問題視されている。また、石
油の枯渇が現実となった今、プラスチックは石油由来の
化学合成製品であるため原料不足が懸念されており、リ
サイクルが求められている。しかし、環境への影響が不
写真 2 減容化PS樹脂
明瞭であり、種々のリサイクル手法の環境保護効果が数
値化されていないため、プラスチックリサイクルの事業
後、粉末状になり菜種油を除去することが出来た。洗浄
化は停滞している。
後の減容化PS樹脂を写真 2 に示す。リモネンでの発泡
本研究所では、廃棄FRP(繊維強化プラスチック)
スチロールの減容化では、分子構造が非常に類似してい
を廃食用油中で分解するという新しいプラスチック処理
る事から相容性が高く、常温での反応が可能である。し
方法が、先行する基盤研究にて研究・開発されている。
かし、相容性が高いほど分離精製にエネルギーが必要と
この新たな処理方法を用いた廃プラスチック処理シス
なり処理費がかさむ結果となる。今年度の実験結果よ
テムを山梨県に適用した場合の環境負荷の変化を検討す
り、リモネンに植物油を混合することで、従来の方法よ
ることを本研究の目的とした。環境負荷物質排出量や資
り発泡スチロールを少ないエネルギーで減容化分離精
源使用量を客観的に評価するため、環境影響評価手法
製しPS樹脂として回収出来ることがわかった。今後は、
のひとつである、ライフサイクルアセスメント( LCA )
リモネンと植物油のより効果の高い混合比率の検討と温
を用い、県内の廃棄プラスチック処理の改善方法を提案
度条件、精製方法などの基礎実験を行う計画にある。
する。
研究成果
本研究では、新たな処理方法でリサイクル処理する廃
棄プラスチックを、FRPと想定した。FRPはボートや
車の外装材として主に使用されており、共に廃棄後は処
理が困難とされているプラスチックである。我々はH18
年度に先行研究として行われた「廃棄プラスチックの
熱分解とリサイクル技術の研究開発」にて25Lの実証試
験用小型廃棄プラスチックリサイクル装置を試作してお
り、本年度はこのリサイクル装置を用いて分解実験を行
54
い、その実験で得られたデータを用いて環境への影響を
ス繊維に分離され、ガラス繊維は埋め立て処理される。
評価した。
油化物は粘度低下のための軽油を添加した後、ディーゼ
まず、新規に想定したFRP処理方法を利用したシナ
ル発電燃料として使用される。
リオ(新規シナリオ)と現在行われているFRP処理方
比較するシナリオ間では同機能を持たなくてはならな
法によるシナリオ(現行シナリオ)のプロセスフローと
いので、現行シナリオには発電プロセスを、シナリオに
システム境界を設定した。
は発熱プロセスを追加し、それぞれをFRP処理システ
現行シナリオでは、廃FRPは処理センターへ輸送さ
ムとした。図 1 、図 2 に現行シナリオ、新規シナリオ
れ、埋め立て処理される。廃植物油は処理センターへ集
それぞれのプロセスフローを示した。
められた後、銭湯等へ輸送され、燃料として焼却される。
破線に囲まれた内部が今回LCAを行うシステム境界
新規シナリオでは、廃FRPは処理センターへ輸送され、
であり、このシステム境界内にて消費される資源と排
廃植物油を用いて熱分解される。その後、油化物とガラ
出される環境影響物質を評価対象とした。これらの廃
図 1.現行シナリオのプロセスフロー
図 2.新規シナリオのプロセスフロー
図 3.各シナリオの被害算定指数比較
55
FRPの処理システムの機能単位として、
「一ヶ月あたり
の被害が大きいことがわかる。新規シナリオでは人間健
1 tonの廃FRPと 3 tonの廃植物油を処理し、54.1MWh
康被害と社会資産への被害が大きい。主に、都市大気汚
の電力と、119.1GJの熱を生成するシステム」と設定し
染と資源消費による被害である。これは、新規プロセス
た。
では廃FRP分解物をディーゼル燃料として発電に利用
今回の評価においては、地球温暖化、人間への毒性(発
しているため、燃焼による煤塵が多量に発生することに
癌性、慢性疾患)
、生態毒性(水棲、陸棲)
、酸性化、富
よる大気汚染と、燃料の粘度を下げるために軽油で希釈
栄養化、廃棄物、資源の消費、エネルギー消費を影響領
しなければならない事で資源の消費が増大していること
域項目とした。システム内のそれぞれのプロセスで使用
が原因になっていると考えられる。
された燃料および電力や薬剤の製造に使用された資源・
次に、LIMEに基づき、これら各シナリオで求められ
排出された物質のパラメータは、上記実証試験用装置か
た環境へどの程度影響を及ぼすかという被害算定指数を
ら得られたデータや、三共クリン株式会社から提供いた
統合し、日本円に換算した統合化指標を算出した。その
だいたデータを用い、それ以外のパラメータは文献やデ
結果を図 4 に示す。統合化指標でみると、現行シナリオ
ータベースからの推測値を用いた。
では約20万円、新規シナリオでは約130万円の環境に対
JEMAI-LCA PRO Ver.2を用いてLCAを行い、それ
する被害となっている。この新規シナリオの環境への被
ぞれのシナリオでの環境影響の比較を被害算定型環境
害は大半が都市大気汚染の被害によるものであり、この
影 響 評 価 手 法( LIME: Life -cycle Impact assessment
原因はやはりディーゼル発電の際に排出される煤塵によ
Method based on Endpoint modeling )を用いて行った。
るものであると考えられる。都市大気汚染を除いた統合
図 3 にFRP 1 tonを処理した時の現行、新規シナリオそ
化指標を図 5 に示す。この場合は、廃FRP処理による
れぞれのケースにおける各保護対象への被害算定指数を
廃棄物の減少や、廃食用油を燃やさないことによる地球
示した。現行シナリオでは、生物多様性と一次生産量へ
温暖化物質の抑制の効果から、現行シナリオよりも新規
シナリオの方が環境への被害が減少していることがわか
る。
つまり、新規システムにおいて利用しているディーゼ
ル発電による煤塵の発生が環境負荷増大の重大な原因で
あり、このシステムを実用化するためには、煤塵の発生
をいかに抑えるかという事がポイントになると考えられ
る。
現 在、本 研 究 室 で は 廃 FRP だ け で な く、廃 FPF
( Flexible Polyurethane Foam ,軟質発泡ポリウレタン)
の分解についても検討を行っている。来年度は、この廃
FPFの処理についても報告する予定である。
図 4.各プロセスの統合化指数の比較
図 5.各プロセスの統合化指数の比較
(都市大気汚染を除く)
56
基盤研究12
自然環境情報からの環境計画指標抽出手法の開発
わせて確率的に取り扱うことによりモデルの適合性の向
上を図ることにした。
平成18年度にはこれらの解析を行う環境整備として
コンピュータのハードウエア環境とGISソフトウェアを
担当者
整えた。平成19年度は、植生指標としてグリッドセル
環境計画学研究室:池口 仁
内にある群落境界の境界線長を多様性の指標として集計
し、多様性尺度のパラメータとして用いる手法の開発を
研究目的、および成果
行っている。
地域の自然的環境を計画的に考える上で、その地域が
より広い範囲の自然環境の構造の中でどのような位置づ
けをもつのかを知ることは非常に重要である。
このような知識が重点的に集積したデータソースとし
て現在では環境省による自然環境保全基礎調査(緑の国
勢調査)結果がある。緑の国勢調査の結果によって、例
えば山梨県の植生や、動物の分布が現在どうなっている
か、ということはある程度知りうるが、植生や動物の
分布の現況から環境の保全や利用のために人がどのよう
に行動すべきか知るための手段は限られている。そのた
め、緑の国勢調査結果の環境計画への応用は希少な動植
物の保護など限定的に用いられているにすぎない。そこ
で、この研究では長期的課題として広域の自然環境情報
の構造的理解に基づいた指標抽出に取り組み、山梨県の
自然環境の位置づけをより明確化し、環境の変化のモニ
タリングを通じて未来の環境を計画するための手法を開
図 第 3 回自然環境保全基礎調査データが示す
地球科学的自然環境要素と植生の関連性
発することを目的とし、第二・三回自然環境保全基礎調
査データを対象に、多様性に注目した解析を行うことを
当初 3 年間の目標に設定した。
すでに第二・三回自然環境保全基礎調査データの解析
では植生と気象及び地形・地質・土壌との相互関係が地
理情報データ上に表現されていること(武内,恒川,池
口,1989)
、動物分布が森林の分布である程度説明され
ること(原科,恒川,武内,高槻,1999)などが明ら
かになっている。しかし、植生の分布によって動物の分
布をある程度説明するモデルの提案まではなされていな
い。そこで、当面は地理情報的データの取り扱いから見
直し、適切なパラメータを新たに設定し、これを媒介と
して植生を説明変数として動物分布をある程度表現可能
なモデルを提示することによって、人工衛星等によって
モニタリングしやすい植生の変化状況から他の環境変動
も表現可能にしていくことを目指すことにした。
既存の解析では、植生データからすでに抽出されてい
る代表値を用いて約 1 平方キロの 3 次メッシュデータ
として取り扱い、同じく 3 次メッシュデータである動物
分布と対応させていた。具体的には既存のグリッドセル
データを直接用いるのではなく、植生データを図形的な
地理情報として取り扱い、グリッドセルに対応させて植
生の面積及び何らかの多様性尺度をパラメータとして設
定すること。さらに動物分布を確定的にグリッドセル代
表値とするのではなく、各動物種の行動圏のサイズに合
57
基盤研究13
衛星リモートセンシングによる地域環境の評価に関す
る研究
てしまう恐れがあるため、利用目的に合致した情報の提
供が不可欠であると考えられる。
その一方で、環境にかかわる諸現象は、時間的・空間
的にそれぞれの占める位置・範囲・スケールが異なり、
それらの現象が相互に影響を及ぼし関連し合っている。
担当者
県単位や市町村単位といった地域レベルの環境モニタリ
環境計画学研究室:杉田幹夫
ングでは、複雑に絡み合った微細な環境変化を、長期間
継続的に監視し把握することにより、地域環境の現状把
研究目的
握、現象解明、影響解析などを行うことが要求されてお
衛星リモートセンシング技術は昨今の環境問題の深刻
り、リモートセンシングからの情報は非常に有用であ
化で認知度が増し、その期待は大きい。コンピュータの
る。
性能が飛躍的に向上すると共に多種多様な地理情報デー
現在では複数の地球観測衛星が運用され、新しい衛星
タが手軽に使えるようになり、衛星画像処理手法も進展
の打ち上げも国内外で計画されており、衛星データ利用
している。しかし、これらの技術はまだ確立していると
が地域環境の把握・理解のために役立ち、これまでにな
は言えず、成果情報が実社会において一般市民や行政組
い新しい領域を開拓することが期待されている。一部の
織に利活用されることは少ないのが現状である。実利用
衛星データは無償あるいは比較的安価に、また容易に入
を促進するには、まずリモ−トセンシングによって提供
手することが出来る状況となり、一般市民による利用に
される情報の信頼性向上と高付加価値化が不可欠である
対する障壁は低くなっているが、実利用に即するために
と考えられる。また、例えば土地被覆分類は、目的が曖
は利用目的に応じた適切な処理方法を確立し、普及させ
昧なまま土地被覆分類体系を設定してデータ提供を行っ
ることが重要である。
ても、結局何にも有効に利用できないという結果になっ
このような背景から本研究では、山梨県を対象として
図 衛星画像データとLIDAR計測標高データの援用による青木ヶ原樹海周辺の森林の常緑林・落葉林区分結果
58
各種の衛星画像処理手法の評価・検証を行い、実利用に
即した地域環境の評価手法を確立し、地域的な環境の評
価を通じて課題解決に貢献するリモートセンシングの実
現を図ることを目的としている。具体的には、
(1)単
基盤研究14
地域における自然体験活動を通した環境認識の形成に
関する研究
一時期の衛星画像処理の高度化、高付加価値化と信頼性
向上、
(2)複数時期の衛星画像からの変化域抽出の高精
担当者
度化、変化量評価の高度化、
(3)実利用性の高い地域環
人類生態学研究室:本郷哲郎・渡邉 学・大森さおり
境指標分布図のデータセットの整備を研究目標としてい
東京大学大学院農学生命科学研究科:山本清龍
る。
研究目的、および成果
研究成果
近年、自然への関心の高まり、余暇時間に対する価値
富士砂防事務所の提供により、青木ヶ原樹海一帯の
観の変化、アウトドアスポーツの普及などにより、多く
LIDAR計測による細密な標高データ(以下、LIDARデ
の人が様々な形で自然とふれ合う機会を求めるようにな
ータと略す)を入手することが出来たことから、これを
ってきており、自然公園に代表されるような地域の自然
用いて青木ヶ原樹海周辺地域をテストケースに自然環境
環境を利用した自然体験活動が増加するとともに、質的
資源状況把握を行うことを目的に、研究室がこれまでに
にも多様化している。その結果、自然環境の質だけでな
収集した衛星画像データ、空中写真を含め、関連データ
く利用者体験の質の低下が問題視され、より環境に配慮
の整備を行った。これに加え、数メートルという分解能
した形での利用が求められるとともに、新たな自然志向
で地表の様子を識別可能な高分解能衛星であるイコノス
に対応した人と自然との関係性の再構築の必要が生じて
( Ikonos )
、クイックバード( QuickBird )の観測画像や、
いる。
2006年に打ち上げられた最新の国産衛星「だいち」の
このような背景のなかで、本研究では、自然体験活動
観測画像を新規に収集し、解析作業を進めた。解像度の
(自然環境を利用し、自然とふれ合い、自然を楽しむ活
向上に伴い、既存地図データ、空間情報データとの位置
動)を通した利用者の自然環境に対する認知、評価を把
合わせ精度が重要な問題となることから、相互の位置ず
握するために必要となる指標を確立すること、さらに、
れを評価するためツールを整備した。
地域の環境を保全していく活動につながる環境認識(環
以下に今年度整備したデータの活用で衛星画像処理の
境を認知し評価する過程)がどのように形成されるかを
高度化の一例として、青木ヶ原樹海周辺を対象に、植物
明らかにすることによって、地域自然環境の利用のあり
調査および動物調査と比較するための環境要因情報抽出
方について提言することを目的とする。なお、自然体験
を目的として森林の区分を試みた結果を示す。
活動の項目については、既存文献のなかで様々な分類が
使用した青木ヶ原樹海のLIDARデータは、2001年 4
なされており、取り上げられている活動の範囲も多岐に
月18日および同年 5 月 3 日の計測データが統合されて
わたっているが、ここでは、地域を拠点として活動を行
おり、青木ヶ原樹海を覆い尽くすように東西約10㎞、南
なっている施設、団体等が提供するプログラムが、その
北約9.5㎞の範囲をカバーする。地上空間分解能は 1 m 、
利用者に対して環境認識の形成に効果があるかを明らか
標高計測の機械精度は0.15m 、地上実測データとの比較
にすることをねらいとした。
による計測精度はRMSEで0.20mと評価されている。標
研究初年度にあたり、まず、これまでの調査研究事例
高計測には第一反射光と最終反射光が利用されているた
や既存の文献資料の整理から調査手法についての検討を
め、立木部においては樹冠標高( DSM )と地表面標高
行なった。その結果、環境認識の形成に関連する要因と
( DEM )が同時に取得されている。DSMからDEMを差
して、自然志向度の違い、自然環境への関心度や親近感
し引くことで樹木の高さに関する情報が得られる
の違いといった利用者の特性の把握が、また、自然体験
衛星画像単独の解析処理では、森林の樹高に関する情
活動を通した意識構造の変化、特に満足感獲得の有無の
報を取り出すことが難しいが、今年度入手した青木ヶ原
把握が重要であることが明らかとなった。一方、自然体
樹海のLIDARデータからは上記の通り樹高分布を取り
験活動を通じた環境教育的効果の段階的達成目標とし
出すことができ、立木部の抽出が容易となった。この樹
て、関心をもつ、理解する、行動するの 3 段階が設定さ
高分布を援用することで単一時期(落葉期)のSPOT(ス
れている。このステップにおいて、行動、すなわち地域
ポット)衛星データから常緑林(ヒノキ・ツガなど)と
の環境を保全する活動につながるかどうかを判断するた
落葉林(カラマツ・ブナなど)を精度良く区分できるこ
めの環境認識の要素として、環境配慮意識と地域愛着意
とが示唆された(図)
。さらに解析を進めることで、よ
識(地域のことをよく知り一体感をもつこと)が 2 つの
り細かな樹種区分に分類することも可能であり、生態学
軸として重要であることが整理された(図 1 )。
研究や自然環境資源ゾーニングへの応用が期待できる。
これらの整理から、
(1)自然環境利用者の意識構造(利
59
用者特性としての自然志向度、自然環境への関心度や親
がある」と答えたものは、2 回以上の参加者で63%と他
近感、利用者の満足感等)
、
(2)環境配慮意識の形成過程、
の 2 群に比べ高い割合であった(図 2 )。また、2 回以
(3)地域愛着意識の形成過程を明らかにするための調査
を、方法論を検討しながら行なうこととした。
上の参加者は居住地のまわりの自然環境についても73
%が「非常に関心がある」と答え、他の 2 群(いずれ
も40%程度)に比べ高い割合であった。富士山や富士
山麓の自然環境を守っていくための役割や責任について
「かなりあると思う」と答えたものも、2 回以上の参加
者で58%と高かった(図 3 )。
図 1.研究の枠組み
本年度は、研究所の環境教育部門の事業として実施さ
れたガイドウォークへの参加者を中心に、来館者に対し
て年齢、性別、居住地等の属性、ガイドウォークへの参
加回数、日常的な自然体験活動、動植物名や地名、エコ
図 2.ガイドウォークへの参加回数と富士山や富士山麓
の自然環境への関心との関連
ツーリズム等の語彙に対する認知度、自然環境への関
心、自然環境への危機感、自然環境保全への責任感、環
境配慮意識、自然環境保全活動への参加意思等の項目か
らなるアンケート調査を実施し、203人(男性92人、女
性106人、不明 5 人)より回答を得た。
対象者の年齢は、18歳から80歳で、30、40、50、60
歳代がほぼ20%ずつを占めていた。居住地は、県内が
43%で最も多く、次いで東京都29%、神奈川県12%の
順であった。ガイドウォークへの参加回数は、参加した
ことのない人が38人(20.0%)
、はじめての参加者が115
人(60.5%)
、2 回以上の参加者が37人(19.5%)であり、
不明が13人であった。
日常的な自然体験活動のなかで、2 回以上の参加者で
図 3.ガイドウォークへの参加回数と富士山や富士山麓
の自然環境への責任感との関連
「よくする」との回答が多かった項目は、野鳥や野草な
どの自然観察、クラフト作り、農業・林業体験、登山・
富士山や富士山麓の自然環境について「非常に関心が
ハイキング、逆に「したことがない」との回答が多かっ
ある」と答えたもののうち、41%がその自然環境が「か
た項目は、川や湖・海での遊び、サイクリングであった。
なりあれていると思う」と答え、69%がその自然を守
語彙に対する認知度については、
「フジアザミ」
、
「キク
っていくための役割や責任が「かなりあると思う」と答
ガシラコウモリ」
、
「大室山」に加え、
「富士山憲章」や「富
えており、「やや関心がある/あまり関心がない」もので
士山青木ヶ原等エコツアーガイドライン」等の項目で、
はそれぞれ、12%、16%にとどまっていたのに比べ高
ガイドウォーク参加者の認知度が高かった。
い割合であった。一方、自然環境を歩くときに気をつけ
全体の対象者のなかで、自然環境に対して「非常に関
ていることとして「ゴミを捨てない」、「コースのみ歩き
心がある」ものは、富士山や富士山麓については43%
道を外れない」、「自然に対し見ているだけで何もしな
で居住地の周りについての47%と大差はなかった。一
い」等、具体的な内容をあげたものは、いずれの群でも
方、自然環境を守っていくための役割や責任が「かなり
75%と差はなかった。また、自然環境保全活動への参
あると思う」ものは、前者については39%で後者につ
加意思として、ごみ拾い活動への参加、植林活動への参
いての55%に比べ低かった。
加、自然環境調査活動への参加、自然保護団体への寄付
富士山や富士山麓の自然環境について「非常に関心
についてたずねた結果では、「非常に関心がある」と答
60
えたものでは、90%をこえる高い割合でいずれの項目
2 − 1 − 3 特定研究
についても「参加(寄付)したい」と答えていたが、
「必
ず参加(寄付)したい」に限るとその割合は 5 ∼15%
にとどまり、
「やや関心がある/あまり関心がない」も
のとの差も顕著ではなくなった。
以上のように、ガイドウォークへの複数回の参加者で
特定研究 1
富士山青木ヶ原樹海におけるエコツアーに伴う環境保
全モニタリングシステム構築に関する研究
は富士山麓(訪問地)の自然環境への関心が高く、関心
の高さが自然環境への危機感やその保全のための責任感
担当者
につながっていると考えられた。しかし、具体的な環境
人 類 生 態 学 研 究 室:本郷哲郎
配慮意識や保全活動への積極的参加意思にどのようにつ
植 物 生 態 学 研 究 室:中野隆志・安田泰輔
ながるかは今回の調査からは必ずしも明らかではなく、
環 境 計 画 学 研 究 室:杉田幹夫
調査手法の検討を含め今後の課題と考えられた。
地域自然財産研究所:篠田授樹
東
京
大
学:山本清龍
昭
和
大
学:伊藤良作・萩原康夫・桑原ゆかり
東
邦
大
学:丸田恵美子
自然体験計画ひめねずみ社:白石浩隆
研究期間
平成17年度∼平成19年度
研究目的
青木ヶ原樹海利用の特徴として、周辺地域と合わせ年
間約400万人の人が訪れる観光地であり、多くの人が様
々な形で自然を楽しんでいるという点があげられる。最
近、よく耳にするようになった「エコツアー」もそのひ
とつの利用形態と位置づけられる。そのような自然環境
を利用する楽しみ方が多様化していくなかで、自然資源
の質の劣化だけでなく、利用者体験の質の劣化の問題が
生じてきている。
このような背景のなかで、青木ヶ原樹海の自然資源を
保護し持続的に利用していくことが求められている。そ
のためには、自然資源の質の視点から、また、利用者体
験の質の視点から様々な情報を集積し、その変化を絶え
ず分析・評価しながら適切な管理計画につなげていく一
連のプロセスとして「環境保全モニタリングシステム」
の構築が不可欠となる。
そこで、本研究は、観光部観光資源課からの委託を受
け、自然環境の特性と利用実態を正しく把握し、その変
化について分析・評価することを可能とする情報を収集
するためのモニタリング調査手法を確立するとともに、
モニタリングシステム構築のために必要となる事項を明
らかにすることを目的とする。
研究成果
(1)研究の枠組み
既存の文献・資料の整理から、モニタリングシステム
を構築する上での留意点として、情報が欠けていて利用
の影響が分かっていない場所や利用によって深刻な問題
が発生している場所を対象にすること、初期段階の基準
61
となる状態を把握するとともに定期的に継続して情報を
収集すること、客観的で測定しやすい指標を選択するこ
とがあげられた。
本研究で対象とした青木ヶ原樹海においては、これま
でのところ、自然環境の特性についても、また、利用実
態についても定量的な情報が不足している一方で、溶岩
洞穴あるいは溶岩上ルートといった樹海に特徴的な環境
において利用に伴う問題が顕在化している。そこで、モ
ニタリングシステムの基礎となる情報収集のための調査
手法として、
「特定環境モニタリング」
、
「指標生物モニ
タリング」
、
「利用実態モニタリング」の 3 つの枠組みを
設定し、これら 3 つのモニタリング調査によって得られ
た情報を分析・評価していく過程で、調査手法を見直し
図 1.コウモリ類が確認された洞穴数
ながら確立していくことが、モニタリングシステム構築
のまず第 1 ステップとなると考えられた。
(2)
「特定環境モニタリング」
コウモリ類のグアノから多くの無脊椎動物類が得られた
結果であり、洞穴内の生物群集におけるコウモリ類の重
青木ヶ原樹海を特徴づける環境である溶岩洞穴、およ
要性を強く示唆するものといえる。
び溶岩上ルートを特定環境とし、利用による環境変化を
溶岩上ルートについては、エコツアーでの利用制限や
評価するためにその環境特性を明らかにすることを目的
利用頻度が異なるルートを調査対象として選定し、利用
とした。
による踏圧の影響を最も受けやすいと考えられるコケの
溶岩洞穴については、洞穴性動物相(コウモリ類、無
生育状況調査、ならびに、土壌の物理的特性と無脊椎動
脊椎動物類)の生息状況を把握すること、また、コウモ
物類の調査を行なった。
リ類の高度な利用(繁殖・越冬など)や真洞穴性動物な
コケの生育状況の変化は、溶岩上や木の根上で立ち入
ど特記すべき無脊椎動物類が過去に確認されている、あ
りを規制する場所(規制区)と規制しない場所(非規制
るいはエコツアーでの利用頻度が高い等の条件をもつ洞
区)に方形枠(30×30㎝)を設置し、上部からデジタ
穴については季節をかえて複数回入洞し、データロガー
ルカメラにて写真撮影を行ない把握することとした。撮
による温湿度の連続測定やトラップ設置による無脊椎動
影画像について幾何補正、色調補正を行なったのち、色
物類の採集を行ない重点的に情報を収集することとし
相、彩度、明度からコケの部分のみを抽出するプログラ
た。調査期間中に59洞穴で延べ106回の調査を行なった。
ムを作成し被度の定量化により変化を把握することが可
コウモリ類は、コキクガシラコウモリ、キクガシラコ
能となった。調査期間中の変化からは、例えば溶岩上で
ウモリ、ヒメホオヒゲコウモリ、モモジロコウモリ、ウ
は利用制限を行なったルートでは全体として値が増加し
サギコウモリ、テングコウモリの 6 種が確認された。い
ていること、制限のないルートでは規制区で値の減少の
ずれかのコウモリ類が確認されたのは28洞穴(47.5%)
仕方が小さいことなどの傾向をよみとることができた。
であったが、コウモリ本来の性質である集団(30個体
土壌調査については、林床植生などの環境の違いから
以上)が認められたのは4洞穴に過ぎず(図 1 )
、また、
判断した踏圧の負荷の違う地点(非踏圧、弱踏圧、強踏
確認された繁殖洞は 2 洞穴、越冬洞は 3 洞穴のみであ
圧)で試料採取を行なった。土壌密度、含水率等の物理
った。
的性状から、強踏圧土壌は非踏圧土壌に比べ孔隙の少な
データロガーによる温湿度の連続測定の結果、洞穴内
い環境であることが示された。また、土壌無脊椎動物類
の湿度はほぼ100%を保っていること、気温は外気温に
については、非踏圧土壌で他に比べ確認された分類群が
比べ日内変動、日間変動ともに小さく安定しているもの
多く、分類群によって踏圧の影響のあらわれ方に差があ
の外気温の影響を受けていることが明らかとなった。コ
るものの、全体的にみて強踏圧土壌では個体数が少なか
ウモリ類の繁殖と越冬の両方に利用されている洞穴の気
った。このように、踏圧の違いによって林床植生の被覆
温変動は 3 ℃∼10℃の範囲で、特に越冬期でも 3 ℃∼
に違いがみられるだけでなく、物理的環境やそこに生息
7 ℃程度に維持されており、この温度範囲が越冬に適し
する土壌無脊椎動物類の群集構成にも違いがみられるこ
ていることが示唆されるとともに、このような条件を満
たす洞穴は限られていると考えられた。
とが明らかとなった。
(3)
「指標生物モニタリング」
無脊椎動物類については、41洞穴(69.5%)で、合計
自然環境の特性に応じたゾーニングを行なうととも
21分類群が確認された。確認された分類群数はコウモ
に、今後の環境変化を追跡、評価するための基礎情報と
リ類が確認された洞穴で多い傾向がみられた。これは、
なるよう、生物相の特徴についての現状を地区ごとに明
62
らかにすることを目的とした。
く、今後も継続した情報収集が必要なことが課題として
対象地区をメッシュに区切り、リモートセンシングデ
明らかとなった。また、情報集積のためのモニタリング
ータやGISデータを用いた解析により、植生や土地利用
調査手法を確立した後には、自然資源および利用実態か
状況など地区により異なる特徴をもつことが明らかとな
らみた地区特性の把握と、それに応じた基準の設定が必
った。植物相については、 1 ㎞のルートを 6 ルート設
要で、そのためには、個々の地区で、何を保護しどのよ
定し、100mを単位として両側 5 m以内に出現する植物
うに利用するのかに関する地域での合意形成が重要とな
種を季節を変えて記録し、地区ごとの特徴の違いを明ら
る。さらに、指標を汎用化し、実施主体を明確化するこ
かにした。
とにより、住民参加型のモニタリングシステムを地域協
動物相については、鳥類および哺乳類を対象にルート
働により構築することが、適正な管理計画、すなわち、
センサスを実施した。特に森林生態系の上位に位置し環
地域の自然を保護しながら持続的に活用する仕組みを確
境の指標性が高いと考えられる夜行性猛禽類(フクロウ
立する上で必要となると考えられた(図 3 )。
類)に着目し、ルートセンサス中にいくつかの定点を設
け一定時間立ち止まる方法を用いた夜間調査を行なっ
た。39定点で62回の調査を行なった結果、定点では12
か所、定点以外を含めると19か所で確認され、必ずし
も一様に分布しているわけではなく、奥深く針葉樹が卓
越するような場所よりも、周辺の落葉樹が混じった環境
で出現頻度が高い傾向が認められた。このように、生態
学的な視点から樹海を区分けする試みが今後重要になる
と考えられた。
(4)
「利用実態モニタリング」
エコツアー実施状況を含めた青木ヶ原樹海の利用状況
(利用場所、利用季節、人数等)および利用者意識を明
図 2.利用者意識の形成過程
らかにすることを目的とした。
利用者数の把握のために、複数の場所に通過数カウン
トシステムを設置するとともに、季節を変えて流動調査
を実施した。エコツアー実施団体への実施状況に関する
アンケート調査結果と合わせ、一般観光とエコツアーで
は利用場所や利用のピークとなる時期が異なることが明
らかとなった。
さらに、利用者体験の質という視点から、一般観光客
の利用者意識に関するアンケート調査を実施した。利用
者は普段の自然体験活動や自然への関心度の違いから様
々な利用目的をもち、様々なイメージをいだき、期待感
をもって樹海を利用し、その期待感が充足されるかで満
図 3.環境保全モニタリングシステムの構築
足感を得ていること、より具体的なイメージをもつこと
で環境配慮意識が形成されること、環境配慮意識をもっ
て利用することによって高い満足感が得られると同時
に、満足感が高ければ環境配慮意識も高まり、そのこと
が自然資源の質の維持にもつながること、といった利用
者意識の形成過程が明らかとなった。適正な管理を考え
た場合、例えば、利用形態の違いによるゾーニング、的
確な情報提供、環境教育・啓蒙活動の充実、インタープ
リテーションの質の向上などが、それぞれの意識形成に
どのように効果がみられるかについて、利用者意識の把
握に関わるモニタリングが重要と考えられた(図 2 )。
(5)モニタリングシステム構築のための課題
これらのモニタリング調査から、青木ヶ原樹海の自
然特性や利用実態についての客観的な情報は十分ではな
63
特定研究 2
住民主体による野生動物被害管理に関する研究
落内において、ニホンザルが作物および作物由来の植物
を、摂食もしくは持ち去ること。」とした。具体的には、
収穫後に水田でイネの落ち穂を摂食している場合や、畑
に投棄された農作物の残骸を摂食している場合には、作
担当者
物摂食に連動していると考えて被害とみなし、遊休農地
動物生態学研究室:吉田 洋
や畦でタンポポの根等を摂食している場合は被害とみな
さなかった。
共同研究者
調査期間は2004年 4 月から2007年11月で、月最低 5
帝京科学大学:杉本志保里・森 貴久
日以上の放探を実施した。なお、サル自動接近警報シス
岐 阜 大 学:中村大輔・松本康夫
テムは、富士吉田市の旭地区と新倉地区に各 1 機ずつ設
置され、2006年12月から運用が始まり、さらに「獣害
研究期間
対策支援センター」による追払いは旭、新倉、下吉田の
平成18年度∼21年度
3 地区で2007年 6 月から行われていた。
「吉田群」による被害を季節ごとにみると、葉茎菜を
研究目的
栽培しているにもかかわらず、夏期にはトマトやナス、
近年、全国的にニホンザル( Macaca fuscata ) による
インゲンマメなどの果菜に被害が集中し、秋期にはカキ
農作物被害が増加し、社会問題化している。ニホンザル
などの果樹に被害が集中していた。一方、冬期と春期に
による農作物被害は、農家の営農意欲に影響を及ぼすこ
は、ネギやホウレンソウなどの葉茎菜や、ダイコンなど
とが指摘されており、中山間農業地域において農業を存
根菜への加害が多く(図 1 )、隣接する「西桂群」と同
続するうえで、重大な障害要因のひとつになっている。
じ傾向が認められた(山梨県環境科学研究所研究報告書
現在、この被害に対して、有害鳥獣捕獲が実施されてお
第19号参照)。
り、年間約 1 万頭のニホンザルが捕獲されている。し
富士吉田市3地区における農作物の摂食頻度をみる
かしながら有害鳥獣捕獲により、被害の実質的な減少に
と、自 動 接 近 警 報 シ ス テ ム の 運 用 を 開 始 し た 直後の
至らないどころか、より被害が増加した事例も報告され
2006年12月から2007年5月までは、他の年の同じ時期の
ている。さらに有害鳥獣捕獲は、野生ニホンザル個体群
摂食頻度に比べ高い傾向があった。これは、同時期には
動態にかなりの影響を及ぼしている可能性が示唆されて
住民による追払いの体制が整備されておらず、その結果
おり、最悪の場合、地域的な絶滅も予想されている。こ
ニホンザルの追払いが十分になされていなかったためと
れらの点を勘案すると、捕獲に頼った被害対策は、効果
考える。このことから、自動接近警報システムを導入し
に限界があるうえ、ニホンザル保全上の問題があるため
ても、追払い体制が整備されていなければ、被害防除効
好ましくないと考える。
果はほとんどのぞめないといえる。
そのなかで現在、富士吉田市はサル自動接近警報シス
「獣害対策支援センター」が追払いを開始した2007
テムを設置し、さらにサルが人里に降りて来る度にソフ
年 6 月以降の、富士吉田市 3 地区における摂食頻度は、
トエアーガンを使って脅かすことで、人里は危険なとこ
他の年の同じ時期の頻度に比べ低い傾向があった。さ
ろだと学習させ、サルの出現頻度を減少させる方法であ
らに、追払いの効果がもっともあらわれた秋期におけ
るニホンザルの追払いに、市民団体「獣害対策支援セン
る「吉田群」の行動圏をみると、追払い開始前の2004
ター」が主体となって取り組んでいる。本研究では、こ
年と2006年には、富士吉田市 3 地区の住宅地は「吉田群」
のニホンザルの追払いに効果があるのかを調査し、獣害
が頻繁に利用するコアエリアに含まれていたが、追払い
被害対策のモデルとして住民の被害対策に資することを
開始後の2007年にはコアエリアに含まれていなかった
目的とした。
(図 2 )。これらのことは、ニホンザルを人里から遠ざけ、
農作物の被害を軽減するうえで、追払いの効果はあるこ
研究成果
とを示している。
富士吉田市の旭、新倉、下吉田地区および富士河口
また、同時期の富士河口湖町 3 地区における摂食頻度
湖町の船津、浅川、河口地区を行動圏とするニホンザ
は、他の年の同じ時期の頻度に比べ、低い傾向があった。
ル「吉 田 群」の オ ト ナ メ ス に VHF 発 信 器 付 き の 首 輪
このことは、追払いを実施した地区だけでなく、その近
( ATS-M2950, Advanced Telemetry System, USA )を装
隣地区へも追払いの効果がある可能性を示唆している。
着し、ラジオテレメトリー法で移動追跡を行って、サ
この結果をふまえ、今後、追払いを効果のある獣害被害
ルが利用している土地を調べた。また、そのときにニホ
対策として住民に提案し、富士吉田市の追払い活動をモ
ンザルが加害する農作物の種類と分布を、直接観察によ
デルとして普及したいと考える。
り把握した。本調査では、被害の定義を「農地および集
最後に、本研究を実施するにあたり、富士吉田市農林
64
課および富士河口湖町農林課には、情報提供および捕獲
調査の実施に協力していただいた。ここに記して、厚く
お礼申し上げる。
写真 1.放置された籾殻を食べるニホンザル。このよう
な生ゴミは、ニホンザルを集落へ誘引する。
(2007年1月 富士河口湖町河口地区)
図 1.ニホンザル「吉田群」による農作物の摂食頻度の
経時変化(2004年 6 月∼2007年11月)
写真 2.富士吉田市旭地区に設置された
サル自動接近警報システム
図 2.秋期( 9 月∼11月)におけるニホンザル「吉田群」
の行動圏(2004年∼2007年)
実線:最外郭法(95% )による行動圏、破線:コ
アエリア(50% )
●:サル自動接近警報システム設置位置
国土地理院25000分の 1 地形図を使用
写真 3.モデルガンを用いてニホンザルを追払う「獣害
対策支援センター」の会員。
(2007年 6 月 富士吉田市新倉地区)
65
特定研究 3
学校林の教育利用活動の効用及び障害についての調査
研究
ば借りてくる。
このような大原則のもと、現在まである程度の数の学
校で学校林が教育に活用されるようになってきた。
この研究は、ヒアリング調査をもとに活動が一定期間
を経た現在において、学校林がどのような効果をうんで
担当者
いるか、さらなる活用への障害となっているのは何かを
環境計画学研究室:池口 仁
まとめようとするものである。
ヒアリングの結果をまとめると以下のようになる。
研究目的、および成果
1 )教育環境としての学校林の効果
山梨県では、戦後多くの学校で学校経営の基盤の一つ
学校林活動に関係する教員やボランティアへのヒアリ
として学校林の設定がなされている。学校林は全国に見
ングでは、「児童生徒の積極性を引き出せた」との意見
られる森林経営の形態の一つであり、森林資源に恵まれ
が多く聞かれる。また、実際に学校林活動に研究員自ら
た山梨県では、多くの小中学校が学校林を経営してい
参加した場合にも、日頃学習への意欲をあまり表現しな
る。
い児童生徒が、初対面の外部講師などに対し、適切なコ
学校林とは、学校が森林に権利を持ち、学校と関係
ミュニケーションをとっている姿が観察される。
者が林木の育成に必要な労役を提供し、成長した林木の
児童生徒の興味を引き出し、教育者とのコミュニケー
伐採により得られる収益が分配される仕組みになってい
ションを充実させる「教育の場」としての利点は教育内
る。例外的に学校が所有権を保有して森林経営を行って
容によらず一定の効果を生んでいると考えられる。
いるケースもみられる。
2 )教材としての学校林の有用性
しかし、近年では以下に列挙するような変化によって
里山地域では土壌、地形、気候条件は大きな変化がな
学校林経営の継続が危ぶまれるようになってきた。
くても、人為的な介入の種類や頻度、その歴史によって
1 .木造校舎の減少
異なる生物種が生息し多様性が高い。学校林は、里山的
2 .木材の価格低下による収益環境の悪化
な山林が多いこともあり、生物的な自然環境を学ぶ場と
3 .住民の流動化による意識変化
して活用の事例が多い。
4 .作業内容の重労働化
3 )ヒアリング対象の感じる課題
山梨県環境科学研究所では森林の多面的な価値に注目
実際に学校林活動を行う上で、苦労を感じる点、障害
し、地域住民が関与する森林を活用していくことにより
となっている点としては以下のような意見が多かった。
良好な地域環境を形成することを提唱し、地域住民と関
「教員の主体的な努力の必要」、「学校内での教育にも時
りの強い森林の一例として学校林を挙げていた。この提
間が必要」、「教員の資質向上とともに外部の助力が必
唱に対し、実際に学校林の管理の問題に直面していた甲
要」、「人事異動の結果によっては活動が同一水準を保て
府市内のPTA役員から相談を受けることになり、平成9
ない」
「継続して安全管理をするためには、お金、労力、
年から実際に学校林の「多面的価値」を引き出し、「毎
管理できる人材が必要」などである。
年投資する労力に対して十分な満足感を学校関係者が毎
学校林の効果は強く実感され、学校林がうまくいって
年得られるようにする」ことを目標に学校林の利用を再
いることは強く認識されている一方、安定的持続的に教
構築する試みに参加している。
育効果をうみ続ける事ができるかという点では関係者は
平成 9 年当時には山梨県の学校林は必ずしも教育に
多少懐疑的であると考えられる。
積極的に活用されていなかった。
「総合的な学習の時間」
の導入をきっかけにして、学校林の価値を材木の生産
学校からの距離でみる学校林のメリット
だけに求めず、教育に利用しようとする試みがはじめら
ヒアリングの結果、学校林の活用に対して拮抗的に働
れ、教育効果を発揮しつつ、山梨の基本的な環境である
く要因として、時間、特に時間効率が問題となっている
森林についての体験をもつ次世代を育てていく事が期待
事がうかがえた。そこで、山梨県の学校林がどの程度魅
された。
力的な教育環境となっているかを、学校林利用にかけ
当時、学校林を活用していくために最低限克服しなけ
ているコストで評価する事を目的に、2001年と2006年
ればならない課題について検討がなされ、学校林に関係
の国土緑化推進機構の調査から、山梨県での学校林活動
する主体の間で下に列挙するような基本的な整理がなさ
が、それと拮抗する主要な要因である学校と学校林との
れている。
距離とどのように関係しているかを分析した。
a)学校林を児童生徒が安全に活動できる場所にする。
距離が離れれば離れるほど、活動実施のための移動時
b)学校林で何を教えるかを教員が考える。
間が長くなり、児童生徒の体力的負担も増えるため、学
c)安全と教育に必要な技術、知識は学校に足りなけれ
校林と学校との距離は学校林活動を実際に行った場合の
66
効率に強い影響を及ぼす要因となっている。学校林を活
用する事によって得られる教育効果が、距離の効果を上
回らなければ学校林は利用されない。従って、学校林の
効用の大きさは、利用する学校と利用していない学校の
特定研究 4
高解像度衛星画像データ活用による森林管理情報把握
に関する研究
数が拮抗する距離で計れる。
表 は、国 土 緑 化 推 進 機 構 の 調 査 か ら、2001 年 か ら
担当者
2006年に県内の学校林の利用動向にどのような変化が
環境計画学研究室:杉田幹夫
見られたかを小学校と学校林の間の距離が確認できた学
県森林総合研究所:長池卓男
校について距離圏別の利用状況をまとめたものである。
2001年時点では、学校と学校林が近接していても、
研究目的
利用していない学校もあったが、2006年では活用校数
本県のような森林県にとって、森林を健全な状態に維
が増え、特に学校林と学校の間の距離が短い学校で利用
持するために不可欠な情報を効率的に収集・利用するた
が活発である傾向が読み取れる。
めの基盤技術を手に入れることは重要である。例えば地
学校林と隣接する小学校2校はいずれも複数回の学校
球温暖化の防止おいては森林整備による森林吸収源対策
林活動を行っており、2 ㎞圏内の学校では 8 校中 6 校が
を着実に進める必要があり、森林の状況を正確に把握す
複数回、1 校が年一回程度の活動を行っている。2 − 4
ることはその大前提となる。また、森林や環境に対する
㎞圏では13校中 3 校が複数回、4 校が年一回の活動を行
県民の意識が高まるとともに、都市住民を中心に森林ボ
っている。4 − 6 ㎞圏では 8 校中 3 校が複数回、1 校が
ランティアやNPOが組織され、都市上流地域の森林整
年一回の活動を行っている。6 ㎞を超える学校では 4 校
備を行うといった動きもあり、行政の持つ森林情報に対
中 2 校が年一回活動を行っている。
するニーズが増えてきている。県が管理する森林簿や森
小学校、中学校ともに、概ね学校林との距離が 5 ㎞で
林計画図は森林行政に関する基礎資料であるが、奥地を
は学校林が活用され、それを超えると積極的な活用が見
中心に現況との乖離が見られる箇所もあるため、精度向
られないことになる。
上は喫緊の課題である。
このことから、2001年以降の学校林活動への意欲と
一方、公務員改革など行政の効率化が進められている
外部支援に支えられて、学校林が学校から 5 ㎞以内であ
中で、森林行政も今後は一層業務の効率化を進められる
れば学校林を利用するメリットが移動時間を消費するコ
ことが予想されており、森林情報の精度を上げつつ業務
ストを上回る状況が構築されていると評価できる。
を効率化する手段として、高解像度衛星画像を用いたリ
モートセンシング技術による森林解析が有効であると考
表 距離圏別に見た小学校の学校林利用頻度
えられる。
本研究では、森林の基礎情報となる森林簿、森林計画
2001年の利用状況
距離
隣接
2㎞
2 4㎞
4 6㎞
6㎞
毎月
1
1
毎学期
1
2
3
1
7
毎年
1
2
3
3
9
なし
1
4
8
4
1
18
計
なし
計
2
8
13
8
4
35
2006年の利用状況
距離
隣接
2㎞
2 4㎞
4 6㎞
6㎞
毎月
1
1
1
毎学期
1
5
3
2
3
11
毎年
1
4
1
2
8
1
6
4
2
13
2
8
12
8
4
35
図の精度向上を目指し、森林の林相、分布、資源量等と
いった森林の現況を高解像度衛星画像(数メートル分解
能)から把握する手法を確立し、GISデータ化すること
を目的とする(図 1 )。具体的には、高解像度衛星画像
データを用いた森林の林相判別手法の確立、森林の分布
と資源量把握手法の確立、県内の代表的林相の森林を対
象とした森林の現況把握とその評価、森林情報のGISデ
ータ化と既存の森林管理情報との比較を研究目標として
いる。
研究結果
これまでの研究成果として、基盤研究「環境変動把握
手法と環境変動モデリングに関する研究」
(平成 9 ∼14
年度)、基盤研究「広域環境調査手法と環境の指数化に
関する基礎的研究」
(平成 9 ∼14年度)では、中分解能
(数十メートル分解能)の衛星データの解析手法の開発
・整備に取り組み、山梨県全域といった数十キロメート
ル∼100キロメートル四方程度の広範囲の自然環境を人
工衛星観測データによりモニタリングする場合、山梨県
67
の険しい地形起伏による衛星データの歪みを取り除き、
地形図などに対して正確に精密に位置合わせする手法
(衛星画像の高精度オルソ画像化手法)を確立するとと
もに、地形起伏による陰影の補正に取り組み、実用に足
る手法を確立した。このことは、山梨県全域を対象とし
た衛星データ解析の基盤技術となっている。このほか、
プロジェクト研究「富士山周辺における自然特性に関す
る研究」
(平成 9 ∼13年度)およびプロジェクト研究「森
林による地球温暖化ガスの吸収効率に関する研究」
(平
成14∼17年度)では、ランドサット衛星(30メートル
分解能)およびスポット衛星(10メートル分解能のプ
ロダクト)の観測データを使用して、主に富士山北麓地
域の樹種分類などを行い、森林の分布把握の手法につい
図 1 研究の概要 衛星データから森林の基礎情報を把握する。
て関連する知見を得たとともに、10メートルの地上分
解能は森林の林相判別には不十分であることが確認され
ている。
本研究では、高分解能の衛星画像データから林相情報
を正確に取り出し、分類することが最重要課題のひとつ
である。これまで衛星画像処理に用いられてきた一般的
な画素単位を基本とする画像解析ツールとは異なり、解
析対象画像を細かく区画化することで生じるイメージオ
ブジェクトを利用して解析を行う新しいタイプの画像処
理ソフトウェアが高分解能衛星画像からの林相判別に有
効であることが既往研究でも報告されている。イメー
ジオブジェクトが持つ属性(スペクトル・形状・大き
さ・テクスチャなどの情報)およびイメージオブジェク
トが持つ相互関係から得られる情報を用いて画像解析を
行うことにより、従来の一般的な分類よりも複雑な分類
を行うことが可能になるほか、林班に特徴的な形状を覚
え込ませて分類を支援することで、林班ごとの分類を高
度化できる。このような解析は、本研究で対象とする高
い解像度を有する衛星画像を使用して初めて可能とな
るものである。本研究では林相分類手法の確立のため、
分類対象の形状についての情報が利用できるDefiniens
Professionalソフトウェアを導入整備した。
このほか平成19年度は、解析に使用するデータとし
て研究室所有の中分解能の衛星データを再整理したのに
加え、新規の高解像度衛星データとして、スポット 5 号
が2007年11月に観測した衛星画像データ(オルソ補正
済み、5 m分解能)を、県の南西部をカバーする範囲で
入手し、その位置精度を評価した後、山梨県森林GISに
整備されている情報との関係を照合するための予備解析
を行った。図 2 に森林GISにおける林班境界線と衛星画
像データの位置関係を例示する。
68
図 2 衛星画像データと林班境界線の位置関係
特定研究 5
富士山の火山防災における観測及び情報の普及に関す
る研究
料作成に加え、本年度は外国人観光客を主な対象とした
「英語版ハザードマップ」を、地元防災行政関係者との
共同作業によって完成させた(図 1 )。この英語版ハザ
ードマップは、そもそも本邦の活火山の中でも富士山に
は外国からの観光客の訪問が特別に多いという特異な性
担当者
格を有する火山の性格からも待望の資料として活用され
地 球 科 学 研 究 室:輿水達司・内山 高・石原 諭
ている。
防災科学技術研究所:鵜川元雄・藤田英輔
研究目的、および成果
山梨県環境科学研究所は富士山の麓に位置し、富士山
の火山活動に関する研究につき、今までに関係の研究機
関との連携を図り情報の共有化に努めてきた。今後も引
き続き、火山性地震の観測・監視システムの充実および
観測情報の共有化が本研究所には求められている。さら
に、集積されたデータ等の地元住民や観光客への周知等
についても期待されている。
先行プロジェクト研究(
「富士山の火山活動に関する
研究( H14∼18)
」
)により、本研究所では富士山の火山
性地震観測強化の目的で、忍野地域に地震計を設置し
た。これにより、北麓の忍野地域のデータをはじめとす
る他の富士火山関連データと共に、防災科学技術研究所
との共有化を可能にした。また、富士山の火山活動との
関連を探るため、北麓地域において地下水の水位・水温
の連続観測も開始した。
本特定研究では、富士山の噴火予知や火山災害軽減の
ために、山体変動の調査の全てをカバーすることは無理
であり、我々は特に火山性地震や地下水の水位・水温等
の観測・監視を継続的に実施する。さらに、これら以外
図 1:富士北麓地域の英語版ハザードマップ
の富士火山に関係する観測データの収集にも努め、噴火
に対する備えとなる情報を地元住民や観光客を中心に、
(2)富士北麓地域の地下水変動観測
日常的に発信することの整備を研究目的とする。この情
火山活動を考える上で、地下水(温泉を含む)の影響
報発信をより効果的に行うためには、上記の観測情報や
は重要とされている。マグマや高温の火山ガスが地下深
富士北麓の一般住民向けに作成した資料である「富士火
くから上昇してきて、地下水と接触することで、前兆現
山のガイドブック」や「富士山火山防災避難マップ」な
象が起きたり、噴火の様式も変化したりすると考えられ
どを、ビジュアル化などにより、わかりやすい情報とし
ている。このように火山活動と地下水変動とは関係が深
て発信することが望ましい。
い。このため、当研究所では、富士北麓の 4 箇所に観測
点を設けて地下水変動の連続観測を実施している。観測
本年度の成果
(1)ハザードマップ普及版作成
点は、北東麓忍野観測点、北麓富士吉田観測点、河口湖
観測点、北西麓富士ヶ嶺観測点である。この 4 観測点で
国による「富士山ハザードマップ」の完成以降、山梨
地下水位、地下水温、pH 、電気伝導度を測定している。
県環境科学研究所では富士北麓の防災行政担当者と協力
現時点では、季節、経年変動だけで、火山活動に関係す
し、北麓住民に向けた「富士火山を知る−富士北麓住民
ガイドブック」及び「富士山火山防災避難マップ」を完
る変動は観測されていない。
(3)富士北麓の溶岩流等シミュレーション
成させてきた。このうち、富士火山のガイドブックはハ
防災教育、分かりやすい情報の提供・表示方法を検討
ザードマップの内容を、一般向けにわかり易く簡潔な説
するために、共同研究機関である防災科研と共同して、
明を施したものであり、また防災避難マップは、北麓市
研究を行った。すなわち、富士山の噴火による溶岩流が
町村毎に具体的な避難に備えた基本事項を地図に表記
発生した場合を想定し、溶岩流シミュレーションを実施
したものである。これらの一般向けの火山防災関係の資
した。溶岩流シミュレーションコードは、防災科研が中
69
心となり開発したLavaSIMを用い、防災科研のスーパ
ーコンピュータSGI Origin 3800により計算を実施した。
シミュレーションのパラメータなどの実施条件等は別
特定研究 6
木質内装材が人の心と体に与える影響に関する研究
途報告するが、今回は概略を報告する。溶岩の流出地点
は、内閣府「富士山ハザードマップ検討委員会報告書(平
担当者
成16年 6 月)
」による想定噴火口の範囲から、山腹の谷
環境生理学学研究室:永井正則・石田光男・齋藤順子
筋地形を鑑みて、富士山北東方面へ流下すると予想され
る地点を選定した。また、過去の溶岩流流出実績から、
研究目的
剣丸尾第 1 溶岩流、檜丸尾第2溶岩流と同等の噴出地点
森林環境部森林環境総務課および林業振興課からの依
を念頭に検討した
頼に基づき、木質内装材の「癒し」効果を人の心と体の
以上の視点を踏まえ、3 つのケースについて計算を行
両面から検証する。本特定研究においては、森林環境部
った。大規模噴火の例として、山頂北側付近を仮想噴出
より学校や職場、老健施設などを木造にした場合に利用
口とするケース( FYN )を富士山ハザードマップ検討
者が受ける生理的および心理的影響を科学的に検証す
委員会報告書での定義である大規模噴火を仮定して実施
ることを求められた。まず手始めに、木質内装材を使っ
した。また、中規模噴火のケースとして、北東山麓の 2
た屋内に立つ時の気分変化や体のバランスのとりやすさ
ヶ所からそれぞれ流出するケース( FYS1、FYSH )を
(姿勢維持機能)について調べることを目的とした。直
実施した。
立時の人の姿勢は、視覚、体性感覚(筋や腱)、平衡感
今後は表示、展示方法を検討して、分かりやすい情報
覚(内耳)の三つの感覚情報によってコントロールされ
の発信を進めていく予定である。
ているが、視覚情報の影響は大きく、直立時に向かい合
う壁の色を変えるなどして視覚情報を操作すると、重心
動揺にも変化が現われることも知られている。そこで木
質内装材とその他の壁材(非木質)との比較によって、
木質内装材の視覚的効果の特徴を確認する。
研究成果
通常の直立時に比べ大きな揺れが生じた状態で(例え
ばめまい、映像酔いなど)、木質内装材の特徴が揺れの
減衰効果を有するかを検討することを目的に、実験は計
画された。人工的な揺れを誘発させた後に呈示する静止
画像時の重心動揺を記録した。刺激(縦横 視角54.5
×54.5 )は観察距離 1 mにて透過型スクリーンを用い
て呈示した。人工的に揺れを誘発させるため回転速度
2 rpm(12 deg/s )にて格子画像を30秒間回転させ、回
転停止直後、静止画像を60秒間呈示した(図 1 )
。静止
画像には木目、壁紙、黒色、白色のいずれかを呈示した
図 1 刺激呈示方法。格子画像を30秒間回転させた後、
静止画像を60秒間呈示した。回転時には視覚誘
導性の重心動揺が増大する。
70
(口絵 1 )
。重心動揺は重心動揺計( Anima Gravicorder
覚情報には、1 )揺れの誘発後の重心動揺を減衰させる
G-5500)によって回転時(30秒)および静止時(60秒)
こと、2 )主観的な揺れが少なくバランスをコントロー
が連続して測定された。条件間の特徴を検討するため、
ルしやすさが高いなどの効果を有することが確認され
静止画像呈示時の重心動揺波形について、重心移動距
た。今後は、木目の詳細な特徴(年輪、節、つなぎ目等)
離、包絡面積、外周長が抽出された。また被験者には、
に着目し、それぞれの要素が良好な姿勢制御に関与する
回転画像停止後の主観的な揺れが消失した時点を口頭報
のか検討する予定である。
告させることと、主観的な姿勢制御のしやすさについて
順位づけを求めた。被験者は視覚異常を持たない健常成
人21名とした。
木質内装材の視覚的効果
条件毎(木目、壁紙、黒、白)に各指標の平均値を求め、
反復速度ANOVAよって条件間の比較を行った。さらに、
必要に応じてLSD法による多重比較を行った。
主観的揺れの消失時間は、木目、壁紙、白色、黒色の
順に遅延していた(図 2 )
。統計的分析では条件の主効
果( F
(3,60)
=4.19,p<0.01)が有意であった。また各
画像間の比較では、黒色vs.壁紙( p<0.03)
、黒色vs.木
目( p<0.01)白色vs.木目( p<0.02)の間に有意差が
認められた。一方、主観的な姿勢制御のしやすさについ
図 3 最も姿勢制御のしやすい静止画像として
判断される頻度 ては、最も姿勢制御がしやすい画像として選択される頻
度を求めた。その結果、木目(57.1)
、壁紙(19.0)、黒
色(14.3)
、白色(9.5)の順であった(図 3 )
。
重心動揺波形では、画像間の違いが重心移動距離に
現れていた(図 4 )
。黒色に比べ、白色、壁紙、木目の
移動距離が短いことがわかるが、特に木目はその移動
距離が最も短い。統計的分析の結果、主効果( F
(3,60)
=7.95,p<0.001)が有意であり、黒色vs.白色( p<0.05)、
黒色vs.壁紙( p<0.01)
、黒色vs.木目( p<0.001)白色
vs.木目( p<0.02)の間に有意差が認められた。その他、
包絡面積、外周長については、黒色が他の 3 条件に比べ
増大する傾向にあったが、白色、壁紙、木目の間に顕著
な差は認められなかった。
以上の結果より、非木質内装材に比べ木質内装材の視
図 4 回転停止後の重心移動距離を示す。木目画像が
最も移動距離が短く、回転停止後の減衰が強い。
図 2 回転停止後における主観的揺れの消失時間
71
2 − 1 − 4 総合理工学研究機構研究テーマ
2 − 1 − 5 受託研究
「山梨県のブドウ搾り滓を活用した家畜排せつ物の堆肥
化および環境負荷低減化技術の開発」
策技術の開発」
(平成19年∼平成21年)
長谷川達也、森 智和、齋藤奈々子、高橋照美、山
委託元:独立行政法人森林総合研究所
修平、
上垣良信、高尾清利、御園生拓、金子栄廣、早川正幸
「甲府盆地飲料用地下水を中心とする水質特性の時系列
解析および新規地下水調査」
(平成19年∼平成21年)
小林 浩、輿水達司、尾形正岐
72
「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響の評価と高度対
2 − 1 − 6 外来研究者研究概要
同一であると報告されている。阿寒湖産のマリモに関し
ては比較的知見が得られているものの、富士山近郊の湖
富士山西湖のマリモ( Aegagropila linnaei )の成長特
性に関する研究−西湖産マリモの単藻化の試み−
に生育するマリモの生育環境や分布、生育量などについ
てわずかな報告があるのみで、マリモの至適光量や補償
点、至適温度や限界温度などといった保護にも関わると
考えられる成長特性についての知見は乏しい。成長特性
芹澤(松山)和世
を調べる培養実験を行なう場合、他の生物の影響を排除
植物生態学研究室
するため、マリモを単藻化する必要がある。しかしマリ
モは生殖細胞による繁殖が確認されていないことや、生
研究目的、および成果
長が著しく遅いこともあり、これまで富士山近郊で採集
緒言:
緑色植物門アオサ藻綱に属し、世界の海跡湖などに局
所的に分布するマリモは糸状藻である。糸状体がときに
集合して球形をつくることから注目を集め、1952年に
は阿寒湖産のマリモが藻類で唯一、国の特別天然記念物
に指定された。山梨県内では1956年に山中湖で初めて
マリモの生育が確認され、その後河口湖や西湖でもその
生育が確認され、山梨県教育委員会は山中湖、河口湖、
西湖に生育するマリモを一括して「フジマリモ及び生息
地」として地域指定の天然記念物に指定した。山梨県内
で発見されたマリモは当初マリモの一変種、フジマリモ
として記載されたが、最近の分子系統解析ではマリモと
図 a;保存培養されていた房状マリモ,b d;マリモと付着物,b ,原生動物,c ,細菌類,d ,珪藻,e;単藻化されたマリモ.
73
されたマリモの単藻株は確立されていない。本研究では
マリモの成長特性を明らかにすることを目的に研究を行
2 − 2 外部評価
なっているが、本年度はその基盤研究としてマリモの単
平成13年 3 月策定の「山梨県立試験研究機関におけ
藻化を試み、西湖産マリモの単藻化に成功した。
る評価指針」に基づき、平成14年度から全試験研究機
関に導入された「試験研究課題及び機関運営全般に関す
材料と方法および結果:
る外部評価」のうち、研究所が実施する調査・研究課題
材料には2005年7月 8 日に山梨県西湖より採集され、
について、事前評価(調査・研究課題の選定時に、調査
山梨大学で保存培養されていたマリモを用いた。保存培
・研究に着手することの適切性・妥当性について行う評
養されていたマリモは緑色を呈し、肉眼的には良好な状
価)、中間評価(一定期間を経過した時点で、当該調査
態であったが(図a )
、生物顕微鏡で藻体を観察すると、
・研究の継続及び見直しについて行う評価)及び事後評
原生動物や細菌、珪藻などの付着が多く見られた(図b 、
価(調査・研究終了後、研究目的・目標の達成度や成果
c 、d )
。そこで藻体を実体顕微鏡下でピンセットを用い
の妥当性等について行う評価)を実施した。
て小枝に分け、ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液および滅菌
水などで洗浄し、洗浄した36枝を 1 枝ずつマルチプレ
2 − 2 − 1 課題評価委員
ートに入れ、pH7.0に調整した1/4C培地で、22°C 、長
日(14:10LD )
、約50μmol photon/㎡/sの条件下で培養
委員長
した。一部のプレートには培地の他に抗生物質混液や二
西岡 秀三:独立行政法人国立環境研究所参与
酸化ゲルマニウム水溶液を添加した。その結果、マリモ
副委員長
は抗生物質には感受性があり細胞の変形が見られたが、
神宮寺 守:山梨大学大学院医学工学総合研究部教授
珪藻類の生長を阻害する二酸化ゲルマニウムの影響はほ
委 員(50音順)
とんど認められなかった。1 ヶ月後に原生動物や細菌、
小田切陽一:山梨県立大学看護学部教授
珪藻などが観察されなかった藻体はわずか 2 枝であっ
鳥井 敏男:環境省自然環境局生物多様性センター長
た(図e )
。今後この単藻化した藻体を培養して増殖させ、
平田 徹:山梨大学教育人間科学部教授
マリモの成長特性を調べる実験を行なう予定である。
三宅 康幸:信州大学理学部教授
2 − 2 − 2 平成19年度第 1 回課題評価の概要
評価対象研究課題
平成20年度から研究を開始する研究課題 4 件及び平
成18年度に研究を終了した研究課題3件について、評価
を行った。
(1)事前評価 4 件
1 )基盤研究 3 件
①ストレスに起因する腸内細菌由来エンドトキシン
が生体機能に与える影響についての研究( H20∼
H22)
②夏季の甲府盆地における風況・人工排熱の調査研
究( H20∼H21)
③工芸品材料採取が続けられる村落における自然
環境と住民生活の変化との関連性に関する研究
( H20∼H23)
2 )特定研究 1 件
①山梨県の市街地における緑の現況についての調査
及び研究( H20∼H21)
(2)事後評価 3 件
基盤研究 3 件
①本県の絶滅危惧昆虫の分布・生態と保護に関する
研究( H 9 ∼H18)
②昆 虫 類 を 用 い た 環 境 生 物 指 標 の 研 究( H 9 ∼
74
H18)
③広域環境調査手法と環境の指数化に関する研究
( H 9 ∼H18)
3 :良好・適切である。
2 :やや劣っている。
1 :劣っている。
課題評価委員会開催日時
平成19年 9 月13日(木)午前10時30分∼午後 4 時
研究課題に対する評価結果
(1) 7 課題に対する総合評価点は、4.8∼3.8(平均4.2)で、
全ての研究課題について「妥当」との評価結果であ
った。
2 − 2 − 3 平成19年度第 2 回課題評価の概要
評価対象研究課題
平成18年度で研究を終了した研究課題 9 件について、
評価を行った。
(1)事後評価 9 件
1 )プロジェクト研究 2 件
①富 士 山 の 自 然 生 態 系 の 循 環 機 構 に 関 す る 研 究
( H14∼H18)
②富士山の火山活動に関する研究( H14∼H18)
2 )基盤研究 5 件
①山 梨 県 の 地 下 水・湧 水・河 川 水 中 の 元 素 循 環
( H 9 ∼H18)
②ツキノワグマの食物環境と栄養状態に関する研究
( H16∼H18)
③微 量 元 素 生 体 影 響 評 価 法 の 開 発 に 関 す る 研 究
( H 9 ∼H18)
④環境ホルモン等化学物質の野生生物に対する影響
に関する研究( H14∼H18)
⑤生活環境の変化と地域住民のライフスタイルとの
相互関連に関する研究( H 9 ∼H18)
3 )特定研究 2 件
①河川環境に与える外来生物の影響について( H17
∼H18)
②森林が人に与える快適性に関する研究( H16∼
H18)
課題評価委員会開催日時
平成19年11月27日(火)
午前10時30分∼午後 4 時
研究課題に対する評価結果
(1) 9 課題に対する総合評価点は、4.6∼3.8(平均4.2)で、
全ての研究課題について「妥当」との評価結果であ
った。
※ 5 段階評価 5 :非常に優れている。
4 :優れている。
75
2 − 3 セミナー
平成19年度 所内セミナーリスト
環境変動の時空特性」
輿水 達司(地球科学研究室)
「富士北麓のLIDAR計測標高データについて」
杉田 幹夫(環境計画学研究室)
平成19年 4 月25日
「圧受容体反射から見た森林環境下の心臓血管系反応」
平成20年 1 月30日
石田 光男(環境生理学研究室)
「ストレス対処行動と感覚閾値」
永井 正則(環境生理学研究室)
平成19年 5 月29日
「実測・ GISに基づく都市環境設計のための気候解析
−東北地方太平洋沿岸都市・仙台の事例−」
「富士山樹木限界付近における半島状植生の構造と遷
移」
中野 隆志(植物生態学研究室)
十二村佳樹(生気象学研究室)
平成20年 2 月27日
平成19年 6 月27日
「野尻草原における遷移過程と攪乱の影響」
「青木ヶ原樹海における環境保全モニタリングシステ
ムの構築に関する研究」
安田 泰輔(植物生態学研究室)
本郷 哲郎(人類生態学研究室)
「廃棄プラスチックの熱分解とリサイクル技術の研究
「富士山北麓の地下水と水理地質構造」
開発」
内山 高(地球科学研究室)
齊藤奈々子(環境資源学研究室)
平成20年 3 月26日
平成19年 7 月25日
「伝統的工芸品とタケ」
「バナジウム多量摂取による生体影響」
小笠原 輝(人類生態学研究室)
長谷川達也(環境生化学研究室)
「生分解性プラスチック生産による生ゴミ処理システ
ムのLCA 」
森 智和(環境資源学研究室)
平成19年 9 月26日
「富士山の雪の安定同位体比」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
「 Google earth情報による都市形態の比較アプローチ
と緑地計画」
池口 仁(環境計画学研究室)
平成19年10月31日
「学問と現場の狭間で・・・」
吉田 洋(動物生態学研究室)
「基盤研究:本県における絶滅危惧昆虫(蝶)類の分
布・生態及び保護・保全に関する研究の成果について」
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19年11月28日
「環境要因変化に起因するストレスが体内恒常性に与
える影響について」
宇野 忠(生気象学研究室)
平成19年12月26日
「 1 富士山麓のボーリングコアに記録された火山活
動の時空特性、2 山梨県の湖沼堆積物に記録された
76
2 − 4 学会活動
本郷 哲郎:日本民族衛生学会幹事、評議員、編集委員
2 − 5 外部研究者等受け入れ状況
外部研究者
会副編集委員長、日本栄養・食糧学会評議員、日本栄
養改善学会倫理審査委員会委員
植物生態学研究室
芹澤(松山)利世
池口 仁:社団法人日本造園学会企画委員
研修生
北原 正彦:日本環境動物昆虫学会評議員、日本蝶類保
全研究会幹事
植物生態学研究室
茨城大学理学部 4 年生、4 名
輿水 達司:日本地質学会中部支部幹事、日本地質学会
首都大学大学院理学研究科博士課程 2 年生、1 名
第四紀部会編集委員、社会地質学会編集委員、環境地
首都大学大学院理学部 5 年生、1 名
質学シンポジウム委員会編集委員
静岡大学大学院理工学研究科修士課程 2 年生、1 名
玉川大学農学部 4 年生、1 名
森 智和:プラスチック成形加工学会環境リサイクル
専門委員会委員、日本LCA学会第 3 回LCA学会研究
動物生態学研究室
発表会実行委員
㈱野生動物保護管理事務所 研究員、1 名
東京大学大学院農学生命科学研究科
永井 正 則:日 本 生 理 学 会 評 議 員、日 本 自 律 神 経 学
会評議員、日本病態生理学会評議員、Neuroscience
生圏システム学専攻博士課程 5 年生、1 名
山梨大学教育人間科学部
Letters誌論文審査員
瀬子 義 幸:日 本 ト キ シ コ ロ ジ ー 学 会 J. Toxicol. Sci.
編集委員、日本トキシコロジー学会評議員
杉田 幹夫:日本リモートセンシング学会論文賞・論文
奨励賞選考委員、日本リモートセンシング学会実利用
ソフトサイエンス学科 4 年生、1 名
環境生理学研究室
山梨大学大学院医学工学総合教育部 1 年生、1 名
環境生化学研究室
帝京科学大学環境科学科 4 年生、2 名
特別委員会推奨技術・評価部会委員
内山 高:日本地球惑星科学連合広報・アウトリーチ
委員会委員、日本地質学会第四紀地質部会行事委員
吉田 洋:日本哺乳類学会クマ保護管理検討作業部会
委員、野生生物保護学会青年部会(グリーンフォーラ
ム)幹事
宇野 忠:日本生気象学会熱中症予防研究委員会委員
十二村佳樹:㈳日本建築学会環境学委員会・都市環境気
候図小委員会・都市環境気候図標準化検討WGメンバー
77
2 − 6 助成等
長谷川達也
2 − 7 研究結果発表
2 − 7 − 1 誌上発表リスト
日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究( C ))
分担研究者
陳俊,塩見正衛,安田泰輔(2007)草地の新しい植生調
「富士山地下水中の微量元素バナジウムは地域住民の
査法(5)−被度の推定−.畜産の研究,61,8,870-874.
健康に影響を及ぼしているのか?」
長谷川達也,佐藤雅彦,瀬子義幸(2007)山梨県内に
北原 正彦
生息するコイの肝膵臓中メタロチオネイン量.環境毒性
日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究( B ))
学会誌,10,59-67.
研究代表者
「半自然草原の管理・維持機構とチョウ類の群集構造
・多様性保全に関する研究」
Honda,T.,Sugita,M.(2007 )Environmental factors affecting
damage by wild boars( Sus scrofa)to rice fields in Yamanashi
Prefecture,central Japan. Mammal Srudy, 32, 4, 173-176.
中野 隆志
文部科学省科学技術件研究費補助金基盤研究( C )
十二村佳樹,渡辺浩文(2008)海風の夏季都市気温緩
研究分担者
和効果に関する研究−気温の長期多点同時測定と観測風
「富士山における森林限界上昇の過程と構造の研究」
データの基づく分析−.日本建築学会環境系論文集,第
73巻,第623号,93-99.
文部科学省科学技術件研究費補助金基盤研究( B )
研究分担者
上石勲,山口悟,佐藤篤司,兒玉裕二,尾関俊浩,阿部
「富士山の永久凍土と環境変動」
幹雄,樋口和生,安間荘,竹内由香里,町田敬,諸橋良,
後藤聡,輿水達司,内山高,川田邦夫,飯田肇,和泉薫,
瀬子 義幸
花岡正明,岩崎和彦,中野剛士,福田光男,池田慎二,
日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究( C ))
会田健太郎,勝島隆史(2007)2007年 2 月∼ 4 月に発
研究代表者
生した雪崩事故状況調査報告.雪氷,69,2,507-512.
「富士山地下水中の微量元素バナジウムは地域住民の
健康に影響を及ぼしているのか?」
北垣俊明,堀内一利,山本玄珠,輿水達司,内山高(2007)
富士火山南西斜面の風祭川上流に見つかった直立炭化木
杉田 幹夫
群.地球科学,61,453-462.
日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究( B ))
研究分担者
北原正彦(2008)チョウ類の分布域拡大現象と地球温
「半自然草原の管理・維持機構とチョウ類の群集構造
暖化.昆虫と自然,43,4,19-23.
・多様性保全に関する研究」
北原正彦(2007)冬の気温上昇がナガサキアゲハを北
安田 泰輔
上させている.自然保護,499,9・10,10-11.
日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究( B ))
研究分担者
北原正彦,白石浩隆(2007)人口巣を利用したフクロ
「半自然草原の管理・維持機構とチョウ類の群集構造
ウの繁殖生態について:森林生態系におけるその重要性
・多様性保全に関する研究」
について.うぐいす(日本鳥類保護連盟山梨県支部報)
,
4,1-4.
Kobayashi,T.,Kitahara,M.and Tanaka,E.( 2008 )Effects
of habitat fragmentation on the three-way interaction
among ants,aphids and larvae of the giant purple emperor,
Sasakia charonda( Hewitson )
, a near-threatened butterfly.
Ecological Research, 23,409-420.
78
Kobayashi,K.,Kuroda,J.,Shibata,N.,Hasegawa,T.,
大野洋美,齋藤順子,和田万紀,永井正則(2007)グ
Seko,Y.,Satoh,M.,Tohyama,C.,Takano,H.,Imura,N.,Saka
レープフルーツの香り吸入が課題遂行時に伴う集中力低
be,K.,Fujishiro,H. and HimenomS.( 2007 )Induction of
下を防ぐ.Aroma Research ,8,60-63.
metallothionein by manganese is completely dependent
on interleukin-6 production. J.Pharmacol.Experimental
奥野智史,長谷川達也,上野仁,中室克彦(2007)セ
Therapeutics,320,721-727.
レノメチオニンの解毒機構と生理学的利用−シスタチオ
ニンγリアーゼの役割−.Biomed.Res.Trace Elements ,
輿水達司(2007)富士火山の成り立ちと特徴.Textbook
18,221-230.
for English Nature Guide in and around Mount Fuji ,富
士河口湖ふるさと振興財団,3-7.
Han, Q., Kawasaki, T., Nakano, T. and Chiba, Y.( 2008 )
Leaf-age effects on seasonal variability in photosynthetic
輿水達司,山本玄珠,内山高(2008)富士山麓のボーリ
parameters and its relationships with leaf mass per area
ングコアによる富士火山活動史の時空解析.第17回環境
and leaf nitrogen concentration within a Pinus densiflora
地質学シンポジウム論文集,71-76.
crown. Tree Physiology, 28, 551-558.
三田村理子,山村靖夫,中野隆志(2008)雪崩攪乱で
Seko,Y.,Nakamura,T.,Kazama,F. and Hasegawa,T.
生じた強光環境に対するシラビソとカラマツ稚樹の光
( 2007 )Stable isotope ratio of oxygen and hydrogen in
合成特性の応答.富士山研究(研究所内出版物),2,
snow of Mt.Fuji,Japan:fluctuation of deuterium-excess.
15-20.
21st Century COE Program "Research and Education
Integrated River Basin Management in Asian Monsoon
森智和,齋藤奈々子,佐野慶一郎(2007)繊維強化プ
Region"Annual Report 2006,Univ.Yamanashi pp.41-42.
ラスチックの動向とリサイクル.繊維機械学会,60,
12,673-677.
清水静也,山村靖夫,安田泰輔,中野隆志,池口仁(2007)
河 川 敷 に お け る 帰 化 植 物 オ オ ブ タ ク サ( Ambrosia
森智和,齋藤奈々子,田原聖隆,高橋俊一,佐藤貞雄,
高柳正明,唐亮,佐野慶一郎(2007)廃棄発泡ポリウレ
trifida L. )の生育に対する人為的撹乱と環境条件の効
果.保全生態学研究,12,36-44.
タンの新規リサイクル処理に関するLCA .自動車技術
会,102-07,9-12.
菅又昌実,山折潤子,矢野一好,瀬子義幸,長谷川達也
(2007)大規模自然災害時における衛生水準の低下と二
永田斉寿,飯塚日向子,北原正彦(2007)福島県いわき
次災害としての感染症について−特に飲料水の安全性確
市郊外山域のチョウ類群集における成虫の食物資源利用
保維持の重要性について−.都市科学研究.1,63-70.
様式.日本環境動物昆虫学会誌,18,4,153-160.
Tanaka,A., Yamamura,Y. and Nakano,T.( 2008 )Effects
中村大輔,吉田洋,松本康夫,林進(2007)ニホンザ
of forest-floor avalanche disturbance on the structure
ル被害に対する集落住民の対策意識−混住化集落の場合
and dynamics of a subalpine forest near the forest limit
−.農村計画学会誌,26,317-322.
on Mt.Fuji. Ecological Research, 23, 71-81.
中野隆志,安田泰輔,古屋寛子,石原諭,渡辺伸(2008)
Tsuji,Y.,Kazahari,N.,Kitahara,M.andTakatsuki,S.
富士北麓、通称ブナ広場における大木の分布パターン.
( 2008 )A more detailed seasonal division of the energy
富士山研究(研究所内出版物)
,2,25-31.
balance and the protein balance of Japanese macaques
(Macaca fuscata )on Kinkazan Island,northern Japan.
小笠原輝(2008)地方都市近郊集落における土地利用
Primates,49,157-160.
の変化とサル・イノシシの出現との関連についての一考
察.生態人類学会ニュースレター2007,13,21-23.
山本玄珠,輿水達司,青木智彦(2008)富士山の基盤
としての西八代層群の火山岩類の岩石化学.富士山研究
大野洋美,永井正則(2007)香りと睡眠−ラベンダー
(研究所内出版物),2,1-13.
の香りが睡眠中の自律神経活動に及ぼす影響−.自律神
経,44,94-97.
山本清龍,本郷哲郎(2007)青木ヶ原樹海における適
正利用にむけたモニタリングシステムへの社会的指標
79
の導入.日本造園学会誌ランドスケープ研究,70,5,
姫野誠一郎,藤代瞳,千佳明,小林一男,長谷川達也,
543-546.
瀬子義幸(2007)金属化合物によるインターロイキン
− 6 とメタロチオネインの誘導.第14回免疫毒性学会 ,
吉田洋(2007)在来種(ヤンバルクイナ)と外来種(マ
神戸.
ングース)が棲む森やんばる−在来種と外来種問題の最
前線−報告.Wildlife Forum ,12,1,29-30.
今井峻司,栗田尚圭,長谷川達也,瀬子義幸,佐藤雅
彦,永瀬久光(2007)カドミウムの胎仔毒性における
吉田洋(2007)市民活動による野生動物被害管理の可
鉄輸送体遺伝子の関与.第34回日本トキシコロジー学
能性.Bears Japan ,8,2,34-35.
会,東京.
吉田洋(2007)サルの防止対策.山梨の園芸,55,8,
今井峻司,長谷川達也,瀬子義幸,藤原泰之,佐藤雅彦,
38-41.
永瀬久光(2007)カドミウムの鉄輸送体発現に及ぼす
影響.衛生薬学フォーラム2007,大阪.
2 − 7 − 2 口頭・ポスター発表リスト
石田光男,齋藤順子,有井良江,名取初美,和田万紀,
萩原康夫,北原正彦,安田泰輔,中野隆志(2007)半
永 井 正 則( 2008 )Influence of anxiety on the postural
自然草地における管理放棄後の植生遷移とアリ群集の変
control during stance in pregnant women. The 85th
遷.日本土壌動物学会第30回記念大会,横浜.
Meeting of the Physiological Society of Japan ,東京.
長谷川達也,小林一男,佐藤雅彦,姫野誠一郎,瀬子義
石田光男,齋藤順子,永井正則(2007)血圧−拍動間
幸(2007)バナジウムの毒性とインターロイキン− 6
隔の最大相互層相関係数による森林浴時の心臓血管反応
との関連性.第18回日本微量元素学会,福井.
の評価.第25回日本生理心理学会大会,札幌.
Hasegawa, T., Satoh, S., Shimada, A. and Seko,
伊藤珠樹,小林剛,太田岳史,隅田明洋,三木直子,加
Y.( 2008 )Role of metallothionein in hepatic toxicity
藤京子,松本一穂,里村多香美,飛田博順,中野隆志,
caused by vanadium compound in mice. Society of
安田泰輔(2007)個葉スケールにおける気孔コンダク
toxicology 47
th
annual meeting Seattle, Washington,
タンスの環境応答特性の地域性.日本森林学会第118回
USA.
大会,福岡.
長谷川達也,瀬子義幸(2007)MTを誘導するバナジウ
十二村佳樹,渡辺浩文(2007)既成斜面住宅地の温熱
ムの毒性発現を増強する因子について.第10回MTノッ
・風環境実測調査その 2 斜面冷気流の流下・厚さに関す
クアウトマウス研究会,富士宮.
る検討.2007年度日本建築学会大会,九州.
長谷川達也,瀬子義幸(2008)地下水の含まれるバナ
十二村佳樹,渡辺浩文(2007)既成斜面住宅地を対象
ジウムと健康.第 8 回東海メタロチオネイン研究会,岐
とした温熱環境実測と冷気流が及ぼす影響に関する調査
阜.
研究.日本建築学会東北支部研究報告会,盛岡.
長谷川達也,鳥居国政,外川雅子,瀬子義幸(2007)
Junimura,Y. and Uno,T( 2007 )Space-Time Relations
高濃度バナジウム溶液と高脂肪飼料とで飼育したマウス
between Urban Thermal Environment and Heatstroke( A
の血糖および脂質代謝に関する検討.メタロチオネイン
Prompt Report ).CAST Forum "Analysis and Design of
およびメタルバイオサイエンス研究会2007,徳島.
Urban Climate", 仙台.
長谷川達也,外川雅子,鳥居国政,瀬子義幸(2007)
川崎達郎,千葉幸弘,韓慶民,中野隆志(2007)成木
河川に生息するコイのメタロチオネインと銅に関する研
アカマツ林の地上部非同化器官の呼吸による年炭素放出
究.衛生薬学フォーラム2007,大阪.
量の推定.日本森林学会第118回大会,福岡.
長谷川達也,外川雅子,鳥居国政,瀬子義幸(2008)
Kikuchi,A.,Hataya,N.,Mochida,A.,Yoshino,H.,Tabata,
高脂肪食摂取はバナジウムの毒性を増強する.日本薬学
Y.,Watanabe,H.and Junimura,Y( 2007 )Field Study
会第128年会,横浜.
of the Influences of Roadside Trees and Moving
80
Automobiles on Turbulent Diffusion of Air Pollutants
輿 水 達 司,内 山 高,杉 田 幹 夫( 2007 )富 士 山 の 雪 代
and Thermal Environment in Urban Street Canyons.
災害の 3 次元映像による監視.日本地球惑星科学連合
The 6th International Conference on Indoor Air
2007年大会,千葉.
Quality,Ventilation & Energy Conservation in Buildings,
仙台.
輿水達司,内山高,嵯峨山積,八木公史,竹下欣宏(2007)
甲府盆地500mボーリングコアの地質年代と古環境.日
菊池文,持田灯,幡谷尚子,吉野博,田畑侑一,渡辺浩文,
本地質学会第114学術大会,札幌.
十二村佳樹(2007)街路樹と自動車の走行が街路空間
の風・温熱環境と乱流拡散性状に与える影響に関する研
輿水達司,小林浩(2007)甲府盆地の地下水中ヒ素起源.
究 その 1 実測概要と風環境・乱流拡散性状の実測結
日本地下水学会秋季講演会,長野.
果.2007年度日本建築学会東北支部研究報告会,盛岡.
Koshimizu,S. Tomura,K. and Kobayashi,H.( 2007 )
菊池文,持田灯,幡谷尚子,吉野博,田畑侑一,渡辺浩
Geochemical behavior of trace elements in the springs,
文,十二村佳樹(2007)街路樹と自動車の走行が街路
groundwater and lake water at the foot of Mt.Fuji,
空間の風・温熱環境と乱流拡散性状に与える影響に関す
central Japan.10th International Riversymposium,Brisba
る研究 その 2 温熱環境の実測結果と歩行者の温熱快
ne,Australia.
適性の評価.2007年度日本建築学会東北支部研究報告
会,盛岡.
久保満佐子,小林隆人,北原正彦,林敦子(2008)山
梨県上ノ原地区の半自然草原における植生とチョウ類群
北原正彦(2007)富士山北西麓青木ヶ原樹海周辺にお
集の関係.日本生態学会第55回全国大会,福岡.
けるチョウ類の多様性と蜜源植物種数の関係.日本鱗翅
学会第54回大会,新潟.
三田村理子,中野隆志,山村靖夫(2008)雪崩攪乱に
よる環境変化がシラビソ稚樹の光合成に与える影響.日
北原正彦(2007)富士山周辺における絶滅危惧蝶類の
本生態学会第55会大会,福岡.
保全生物学的研究.第10回自然系調査研究機関連絡会
議調査研究事例発表会,福井.
三田村理子,山村靖夫,中野隆志,堀良通(2007)富
士山亜高山帯における生育環境の違いに対するシラビソ
北原正彦,神尾めぐみ(2007)富士山北西麓の半自然
草原における人的管理がチョウ類の多様性に及ぼす影響
Abies veitchii 個葉の応答.日本森林学会第118回大会,
福岡.
(予報)
.第19回日本環境動物昆虫学会年次大会,亀岡.
森智和,齋藤奈々子,佐野慶一郎,白井義人,橋口順子,
小林浩,輿水達司,尾形正岐(2007)甲府盆地飲用地
鈴木嘉彦(2007)生分解性プラスチック生産による生
下水の水質変動の把握.日本地下水学会春季講演会,松
ゴミ処理システムのLCA .化学工学会第39回秋季大会,
戸.
北海道.
小林浩,輿水達司,堀内雅人(2007)甲府盆地地下水
森智和,齋藤奈々子,田原聖隆,高橋俊一,佐藤貞雄,
の農薬濃度と地域性.日本地下水学会秋季講演会,長野.
高柳正明,唐亮,佐野慶一郎(2007)廃棄発泡ポリウ
レタンの新規リサイクル処理に関するLCA .自動車技
小林浩,輿水達司,尾形正岐(2008)甲府盆地飲用地
術会2007年秋季学術講演会,京都.
下水中の硝酸性窒素濃度と水質特性.日本水環境学会,
名古屋.
森智和,齋藤奈々子,佐野慶一郎,白井義人,鈴木嘉彦
(2008)生分解性プラスチック生産による生ゴミ処理シ
小林隆人,北原正彦,大久保達弘(2008)シイタケ原
ステムのLCA .日本LCA学会第 3 回研究発表会,名古
木林施業とチョウ類群集の関係.日本生態学会第55回
屋.
全国大会,福岡.
高橋俊一,佐藤貞雄,森智和,齋藤奈々子,高柳正明,
小林隆人,北原正彦,中静透(2007)二次林の断片化
佐藤路子,唐亮,佐野慶一郎(2007)廃棄ポリウレタ
がオオムラサキの個体群に及ぼす影響.日本昆虫学会第
ンフォームの液相分解とリサイクル化の検討.自動車技
67回大会,神戸.
術会2007秋季大会,京都.
81
齋 藤 奈 々 子,森 智 和,佐 藤 貞 雄,高 柳 正 明,草 良 成,
坂田剛,中野隆志,可知直毅(2008)高標高域におけ
齊藤哲男,唐亮,佐野慶一郎(2007)廃食油を溶媒と
る低大気圧が個葉光合成の温度依存におよぼす影響.日
して用いた廃プラ分解装置の研究開発.自動車技術会
本生態学会第55会大会,福岡.
2007秋季大会,京都.
Sano.K, Sato.M, Saito.N, Mori.T, Kodera.Y, Takahashi.S,
齋藤奈々子,森智和,長谷川達也,佐野慶一郎,金子栄
and Sato.S( 2007 )Pyrolysis and recycling of polyurethane
廣(2007)ブドウ滓を利用した家畜糞堆肥化の悪臭抑
foam in asr by using vegetable oil solvent.4th International
制効果.化学工学会第39回秋季大会,札幌.
Symposium on Feedstock Recycling of Plastics & Other
Polymeric Materials, Korea.
Keiichiro Sano, Michiko Sato, Nanako Saito, Tomokazu
Mori, Yoichi Kodera, Shunichi Takahashi, Sadao Sato
瀬子義幸,長谷川達也(2007)富士山の地下水に含ま
( 2007 )Pyrolysis and Recycling of Polyurethane
れる微量元素バナジウムは健康によいのか?第 9 回応
Foam in ASR by Using Vegetable Oil Solvent. The 4th
用薬理シンポジウム,東京.
International Symposium on Feedstock Recycling, Jeju
Island, Korea.
Seko,Y.,Nakamura,T.,Kazuma,F. and Hasegawa,T.
( 2007 )Investigations following basic water quality
永井正則,石田光男,齋藤順子,有井良江,名取初美,
investigations:Outline of investigations on "water and
和田万紀(2007)妊娠中の重心動揺の特性.第25回日
human health" and "stable isotope ratios of Mt.Fuji
本生理心理学会大会,札幌.
ground water". Implementation of Research & Education
on Integral River Basin Management and Intermational
Nagai,M.,Ishida,M.,Saitoh,J.,Arii,Y.,Natori,H.and Wada ,
River Basin Scholarly Collaboration,Kofu
M.( 2008 )Characteristics of the standing posture and
its control in pregnant women. The 85th Meeting of the
杉田幹夫(2007)富士山周辺のLIDAR計測標高データ
Physiological Society of Japan,Tokyo.
について.第 9 回富士山セミナー,山梨県環境科学研究
所.
Nagai,M.and Ohno,H.( 2007 )Influence of anxiety on
postural control in humans standing with moving visual
Tanaka A., Nakano T. and Yamamura Y,(2007 )Effect of
cues. ISAN2007:The 5th Congress of International
forest-floor disturbance caused by slush avalanche on forest
Society of Autonomic Neuroscience,Kyoto.
structure and dynamics of subalpine forest in a volcanic high
mountain, Mt Fuji. International Conference: NATURAL
永野聡一郎,中野隆志,彦坂幸毅,丸田恵美子(2008)
HAZARDS AND NATURAL DISTURBANCES IN
風衝ストレス下にある常緑針葉樹ハイマツの光合成特
MOUNTAIN FORESTS Challenges and Opportunities for
性.日本生態学会第55会大会,福岡.
Silviculture, Torent, Italy.
中 村 大 輔,吉 田 洋,松 本 康 夫,林 進( 2007 )ニ ホ ン
徳本真紀,栗田尚佳,長谷川達也,瀬子義幸,島田章則,
ザル被害に対する集落住民の対策意識.農村計画学会
嶋澤雅光,原英彰,永瀬久光,藤原泰之,佐藤雅彦(2007)
2007年度秋期大会,岡山.
カドミウム妊娠期曝露における胎盤中メタロチオネイン
の局在.メタロチオネインおよびメタルバイオサイエン
尾形正岐,小林浩,輿水達司(2007)釜無川と桂川の
ス研究会2007,徳島.
PH 、DO 、BOD経年変化.日本水文科学会,東京.
Uno,T. and Ishida,M. Effect of stressful ambient temperature
尾形正岐,小林浩,輿水達司(2007)甲府盆地周辺河
to cytokine production in rat peritoneal macrophages. 85th
川水、地下水の水質性情把握−既存データから変化を探
Annual Meeting of Japanese Physiological Society, Japanese
る−.第13回地下水・土壌汚染とその防止対策に関す
Journal of Physiology, Tokyo, 58(Suppl.)
:S107, 2008
る研究集会,京都.
宇野忠 腸内細菌由来エンドトキシンを介した環境温度
及川真里亜,古林賢恒,吉田洋(2007)飼育飼料の変
に伴うストレスの生体影響.第46回日本生気象学会大
化がニホンジカ( Cervus nippon )の採食様式に与える
会,名古屋,抄録:日本生気象学会誌44巻 3 号,S69,
影響.日本哺乳類学会2007年度大会,東京.
2007年.
82
宇佳明,藤代瞳,姫野誠一郎,小林一男,長谷川達也,
瀬子義幸(2007)金属化合物によるメタロチオネイン
の誘導におけるインターロイキン− 6 の関与.メタロ
2 − 8 行政支援等
本郷 哲郎:早川フィールドミュージアム運営委員会ア
チオネインおよびメタルバイオサイエンス研究会2007,
ドバイザー、富士山青木ヶ原樹海等エコツアーガイド
徳島.
ライン推進協議会、南アルプス地域エコツーリズム地
域資源調査検討会
Uchiyama T. and Kumai H.( 2007 )The Lower-Middle
Pleistocene of the piedmont areas around Yatsugatake
北原 正彦:南アルプス世界自然遺産登録山梨県連絡協
Volcanoes,central Japan. International Symposium on
議会学術調査委員、南アルプス市櫛形山アヤメ保全対
Quaternary Environmental Changes and Humans in Asia
策 調査検討会委員、山梨県希少野生動植物種指定等
and the Western Pacific .つくば.
検討委員会オブザーバー、山梨県希少野生生物調査会
昆虫部会調査員、新山梨環状道路(北部区間)環境影
内山高,輿水達司,安間荘,諸橋良,上石勲,竹内由香
響評価技術検討委員、新山梨環状道路(東部区間)環
里,町田敬(2007)2007年 3 月富士山南斜面で発生し
境影響評価技術アドバイザー、環境省自然環境局生物
たスラッシュ雪崩堆積物−2004年12月北斜面の雪代堆
多様性センター企画審査委員会臨時委員、山梨県立博
積物との比較.日本地質学会第114年学術大会,札幌.
物館シンボル展「レッドデータブックの生き物たち」
展示協力員
山本清龍,本郷哲郎(2007)青木ヶ原樹海における適
正利用にむけたモニタリングシステムへの社会的指標の
導入.平成19年度日本造園学会全国大会,藤沢.
輿水 達司:南アルプス世界自然遺産登録山梨県連絡協
議会学術調査委員、富士河口湖町内天然記念物保存管
理計画検討委員会委員、環富士山火山防災連絡会オブ
安田泰輔,北原正彦,杉田幹夫,池口仁,中野隆志(2008)
ザーバー、富士山火山防災協議会アドバイザー、山梨
富士山北西麓の半自然草地の群落構造と動態 日本生態
県教育委員会スーパーサイエンススクール運営指導委
学会第55回大会,福岡.
員、山梨県高等学校自然科学研究発表会審査委員、
安田泰輔,中野隆志,北原正彦,杉田幹夫(2007)放
永井 正則:森林セラピー研究会委員、森の癒し体験プ
棄草地における種構成のスケール依存的動態と空間解析
ログラム選考審査会委員、富士北麓・東部地域産業ク
植生学会第12回大会,岡山.
ラスター協議会メンバー、北杜市リトリートの杜事業
コンソーシアム調査研究企画委員会委員
Yoshida,Y.,Hayashi,S.,Kitahara,M.,Furuya,H. and
Nakamura,D.( 2007 )Crop damage by a wild Japanese
吉田 洋:山梨県ニホンザル保護管理検討会オブザー
macaque troop and damage management in the northern
バー、山梨県イノシシ・ツキノワグマ管保護管理検討
area of Mt.Fuji, Japan .第 8 回ニホンザルセミナー,犬
会オブザーバー、地域適応型新技術等実証事業推進会
山.
議メンバー、富士・東部地域鳥獣害防止対策会議オブ
ザーバー
吉田洋(2007)野生動物の誘引物としての「柿」とそ
の対策の背景.野生生物保護学会第13回大会,流山.
渡辺浩文,十二村佳樹(2007)既成斜面住宅地の温熱
・風環境実測調査 その 1 実測の概要と気温測定結果.
2007年度日本建築学会大会,九州.
Watanabe,H.,Junimura,Y( 2007 )Urban Climate Analysis
from Viewpoint of City Planning with Greenery and
Sea Breeze in Sendai City. The 6th International
Conference on Indoor Air Quality, Ventilation & Energy
Conservation in Buildings, 仙台.
83
2 − 9 出張講義等
実習)」
北原 正彦(動物生態学研究室)
高校等への出張講義
平成19年 7 月21日
平成19年 5 月11日
北海道大学医学部保健学科および看護学科講義(北海
道大学)
「富士山の地下水に含まれる微量元素バナジウムは地
サイエンス・パートナーシップ・プログラム( SPP )
平成19年度科目(県立日川高等学校)
「富士山の誕生の秘密を探る」
輿水 達司(地球科学研究室)
域住民の健康に影響を及ぼしているか?」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
平成19年 7 月28日
サイエンス・パートナーシップ・プログラム( SPP )
平成19年 5 月17日
忍野村立忍野中学校
平成19年度科目・富士山の蝶:その分布と年次変動
(県立石和高等学校)
「富士山にすむ野生動物たち」
「富士山の蝶:その分布と年次変動の事前学習(講義)
」
吉田 洋(動物生態学研究室)
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19年 5 月17日
平成19年 7 月30日
忍野村立忍野中学校
サイエンス・パートナーシップ・プログラム( SPP )
「青木ヶ原樹海の成り立ちと、忍野の地史について」
内山 高(地球科学研究室)
平成19年度科目(県立日川高等学校)
「富士山の誕生の秘密を探る(野外巡検活動)」
輿水 達司(地球科学研究室)
平成19年 5 月31日、7 月 5 日
スーパー・サイエンス・ハイスクール( SSH )身近
な地域の科学・富士山講座(県立都留高等学校)
輿水 達司(地球科学研究室)
平成19年 8 月 2 日
サイエンス・パートナーシップ・プログラム( SPP )
平成19年度科目・富士山の蝶:その分布と年次変動
(県立石和高等学校)
平成19年 6 月13日
山梨大学工学部循環システム工学科特別講義(山梨大
学)
「富士山の蝶:その分布と年次変動:調査及び観察(青
木ヶ原樹海及び本栖高原現地実習)」
北原 正彦(動物生態学研究室)
「環境中に存在する金属元素の健康影響」
長谷川達也(環境生化学研究室)
平成19年 8 月 3 日
サイエンス・パートナーシップ・プログラム( SPP )
平成19年 6 月14日、7 月 5 日
スーパー・サイエンス・ハイスクール( SSH )身近
な地域の科学・富士山講座(県立都留高等学校)
「富士山の活動状況の把握」
、
「富士山の現地実習」
平成19年度科目・富士山の蝶:その分布と年次変動
(県立石和高等学校)
「富士山の蝶:その分布と年次変動:調査記録の集計
と標本作成(講義と実習)」
内山 高(地球科学研究室)
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19年 6 月21日
平成19年 8 月31日、9 月 7 日
スーパー・サイエンス・ハイスクール( SSH )身近
総合基礎「富士山と人間生活」
(健康科学大学)
な地域の科学・富士山講座(県立都留高等学校)
「富士山に生きる動物:富士山の蝶相の特徴と野生動物
「地球と富士山の歴史」、「富士五湖の生い立ちと歴史」
内山 高(地球科学研究室)
被害の現状(講義)
」
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19年 9 月 4 日
環境科学講座(県立上野原高等学校)
平成19年 7 月 5 日
「科学者が教える、おいしい水のひみつ」
スーパー・サイエンス・ハイスクール( SSH )身近
長谷川達也(環境生化学研究室)
な地域の科学・富士山講座(県立都留高等学校)
「動物生態学研究室の紹介と研究内容(当研究所来訪
84
平成19年 9 月 4 日
平成19年10月26日
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 植物科学
総合基礎「富士山と人間生活」
(健康科学大学)
講座(東京大学理学部生物学科)
野外実習
「富士山周辺の土地利用∼リモートセンシング入門∼」
杉田 幹夫(環境計画学研究室)
中野 隆志(植物生態学研究室)
平成19年11月 2 日
平成19年 9 月 8 日
総合基礎「富士山と人間生活」
(健康科学大学)
スーパー・サイエンス・ハイスクール( SSH )平成
「富士山の気象と健康」
19年度科目・山梨の自然と科学(県立甲府南高等学校)
宇野 忠(生気象学研究室)
輿水 達司(地球科学研究室)
平成19年11月 7 日
平成19年 9 月14,21日
総合基礎「富士山と人間生活」
(健康科学大学)
山梨科学アカデミー「未来の科学者訪問セミナー」
(富
士吉田市立明見中学校)
「富士山五合目の森林限界」
「富士山に生息する動物の生態と最近の話題(講義)
」
「富士山周辺の生態系」
北原 正彦(動物生態学研究室)
安田 泰輔(植物生態学研究室)
平成19年11月 9 日
平成19年 9 月18日
総合基礎「富士山と人間生活」
(健康科学大学)
「廃棄プラスチックのリサイクル」
(県立上野原高等学
「高原環境が人の心身に及ぼす影響」
校)
石田 光男(環境生理学研究室)
齊藤奈々子(環境資源学研究室)
平成19年11月14日
平成19年10月 6 日
総合基礎「富士山と人間生活」
(健康科学大学)
スーパー・サイエンス・ハイスクール( SSH )平成
「富士山信仰と産業」
19年度科目・山梨の自然と科学(県立甲府南高等学校)
小笠原 輝(人類生態学研究室)
「動物の生態を通して見た山梨の自然:動物相の特徴
と地球環境問題の影響(講義)
」
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19年11月16日
「人間と野生動物とのかかわりの変化−獣害対策支援
センターの発足と活動−」
(早稲田大学)
平成19年10月10日
吉田 洋(動物生態学研究室)
「職業人の講話」
(富士吉田高校)
石田 光男(環境生理学研究室)
平成19年11月17日
サイエンス・パートナーシップ・プログラム( SPP )
平成19年10月12日
総合基礎「富士山と人間生活」
(健康科学大学)
「富士山周辺の水環境と健康」
長谷川達也(環境生化学研究室)
平成19年度科目・富士山の蝶:その分布と年次変動
(県立石和高等学校)
「富士山の蝶:その分布と年次変動:標本の完成と調
査のまとめと考察(実習と講義)」
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19年10月18日
富士山の自然についての環境学習(県立富士北稜高等
学校)
「植物を中心とした青木ヶ原樹海の自然について」
平成19年11月30日
「山中湖の成り立ちと湖水の起源」
(山中湖村立山中小
学校)
中野 隆志(植物生態学研究室)
輿水 達司(地球科学研究室)
平成19年10月23日
平成19年11月30日
富士山の自然についての環境学習(県立富士北稜高等
総合基礎「富士山と人間生活」
(健康科学大学)
学校)
「生き物を中心とした青木ヶ原樹海の自然について」
北原 正彦(動物生態学研究室)
「野生動物と上手につきあうには?−野生動物の被害
管理−」
吉田 洋(動物生態学研究室)
85
平成19年12月14日
平成19年 7 月 4 日
総合基礎「富士山と人間生活」
(健康科学大学)
昭和大学薬学部平成19年度早期体験学習(環境科学
「富士山とゴミ」
森 智和(環境資源学研究室)
研究所)
「薬剤師と環境科学」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
平成19年12月21日
帝京科学大学生物環境特別講座(帝京科学大学)
平成19年 7 月13日
「富士山地下水に関するトピックス−富士山地下水と
富士山北麓と山中湖村の蝶展・講演会(山中湖交流プ
ヒトの健康」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
ラザ・きらら)
「アゲハチョウ科のチョウを巡る生態と地球環境問題
(講演)」
その他の出張講義・講演
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19月 4 月27日
平成19年 7 月19日
東山梨支部定期総会・研究会
道路敷地管理業務全国点検員研修会(東京)
「甲府盆地の地下で何が生じているか」
(東山梨教育会
「高速道路上の動物事故対策−動物の生態−」
館)
吉田 洋(動物生態学研究室)
輿水 達司(地球科学研究室)
平成19年 7 月24日
平成19年 4 月29日
「県民緑化まつりにおける生理心理指標測定実習およ
び供覧」
(韮崎市)
永井 正則、石田 光男、齋藤 順子(環境生理学研
中巨摩公立小中学校運営研究会夏期研修会(中巨摩教
育会館)
「富士山の噴火と防災」
荒牧 重雄(研究所長)
究室)
平成19年 7 月24日
平成19年 5 月19日
「武田の杜セラピーウォークにおける生理心理指標測
定実習および供覧」
(甲府市)
永井 正則、石田 光男、齋藤 順子(環境生理学研
究室)
平成19年度 野外観察による環境教育研修会(県内
小中高教員対象)
(県総合教育センター)
「八ヶ岳南麓における植物・動物の観察と授業への実
践(野外実習)」
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19年 5 月24日
平成19年 8 月 2 日
山梨大学工学部循環システム工学科1年生見学会(環
理科教員ステップアップ研究会(笛吹市)
境科学研究所)
「山梨の水環境と健康」
「野生動物の共存と環境教室」
吉田 洋(動物生態学研究室)
長谷川達也(環境生化学研究室)
平成19年 8 月 5 日
平成19年 6 月23日
日本鳥類保護連盟山梨県支部平成19年度総会(甲府
市西部市民センター)
「チョウを巡る富士山の自然と地球環境問題(講演)」
環境省自然環境局生物多様性センター「生物多様性ま
つり2007」
(同生物多様性センター)
「生物多様性の世界:生物多様性って何、色々な生き
物がいる意味は?(展示解説)」
北原 正彦(動物生態学研究室)
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19年 7 月 2 日
平成19年 8 月 7 日
昭和大学薬学部平成19年度早期体験学習(環境科学
平成19年度 総合的な学習の時間コーディネイター
研究所)
養成講座(環境科学研究所)
「環境科学への薬剤師のかかわり」
「水に含まれている化学物質」
長谷川達也(環境生化学研究室)
長谷川達也(環境生化学研究室)
86
平成19年 8 月 8 日
平成19年10月25日
峡北教育研究協議会夏期教育研究会理科教育研究会
富士の里市民大学必修講座
「八ヶ岳火山の生い立ちについて」
「気象環境が健康に与える影響」
内山 高(地球科学研究室)
宇野 忠(生気象学研究室)
平成19年 8 月 9 日
平成19年10月27日
富士吉田市教員研修(環境科学研究所)
第一回柿とりたい会(西桂町)
「富士山の水はミネラルが豊富? 」
「ニホンザルの現状と被害対策」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
吉田 洋(動物生態学研究室)
平成19年 8 月10日
平成19年11月8日
静岡県科学技術者育成セミナー
山梨市成人大学講座(山梨市)
「富士北麓の地下水の特徴と調べ方」
「バイオマスが支える地球の未来」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
齊藤奈々子(環境資源学研究室)
平成19年 9 月 5 日
平成19年11月10日
平成19年度鳥獣害防止技術指導員養成研修会(甲斐
明野地区獣害対策実施説明会(北杜市)
市)
「サルおよびクマの生態と防除対策」
「ニホンザルの被害対策−自動接近警報システムの導
入に向けて−」
吉田 洋(動物生態学研究室)
吉田 洋(動物生態学研究室)
平成19年 9 月22日
平成19年11月13日
「子どもの、あなたのバイオリズムは大丈夫?」、山梨
富士・東部地域鳥獣害防止対策会議(都留市)
県立看護大学公開講座「地球環境と健康」
(甲府市)
「獣害対策支援センターにおける取り組みについて」
永井 正則(環境生理学研究室)
吉田 洋(動物生態学研究室)
平成19年 9 月24日
平成19年11月14日
第27回富士山麓を歩こう「健康づくり美化ウオーク」
下水道環境フォーラム2007(ホテルハイランドリゾ
・野外講座(県環境科学研究所)
「富士山に生息する動物の生態と地球環境問題(講
演)
」
ート)
「富士北麓の地下水の水質」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
北原 正彦(動物生態学研究室)
平成19年10月18日
平成19年11月18日
山梨の魅力メッセンジャー制度(甲府市)
「金川の森まつりにおける生理心理指標測定実習およ
「山梨の地形・地質・気象」
輿水 達司(地球科学研究室)
び供覧」
(笛吹市)
永井 正則、石田 光男、齋藤 順子(環境生理学研
究室)
平成19年10月20日
山梨・水と森の会(山梨学院大学生涯学習センター)
平成19年11月23日
「山梨の水・日本の水」
「ストレスを解消し、心も身体も健康に」、ぴゅあ富士
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
エンパワーメントセミナー(都留市)
永井 正則(環境生理学研究室)
平成19年10月24日
山梨県森林総合研究所専門研修(増穂町)
平成19年12月 4 日、11日
「ツキノワグマの生態と被害管理−ツキノワグマはな
富士吉田市立看護専門学校講義(富士吉田市立看護専
ぜ人里に出るのか−」
吉田 洋(動物生態学研究室)
門学校)
「環境と健康」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
87
平成19年12月13日
平成19年度山梨県学校環境衛生研修会(総合教育セ
ンター)
「学校にもある化学物質」
(笛吹市)
2 −10 受賞等
2006年度森林立地論文賞
Tanabe, H., Abe, Y., Nakano, T. and Tange, T.( 2006 )
長谷川達也(環境生化学研究室)
Carbon and nitrogen change in A0 horizons in a Pinus
densiflora forest established on a Mt. Fuji lava flow.
平成19年12月16日
Japanese Journal of Forest Environment, 48, 1-8.
獣害対策ワークショップ(富士吉田市)
「富士吉田市周辺における獣害の現状」
日本生態学会第55会大会,生理生態部門最優秀ポスタ
吉田 洋(動物生態学研究室)
ー賞
永野聡一郎,中野隆志,彦坂幸毅,丸田恵美子(2008)
平成20年 1 月15日
風衝ストレス下にある常緑針葉樹ハイマツの光合成特
北都留地区教育研究協議会・平和と人権教育分科会
性.
(上野原中学)
「世界からみた日本の水、山梨の水 −水、食糧、エ
ネルギー、気候変動−」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
日本生態学会第55会大会,生理生態部門優秀ポスター
賞
三田村理子,中野隆志,山村靖夫(2008)雪崩攪乱
による環境変化がシラビソ稚樹の光合成に与える影
平成20年 1 月17日
山梨県高等学校保健会、郡内生徒保健協議会(県立都
留高校)
「河川水に含まれる化学物質と健康に関する話」
長谷川達也(環境生化学研究室)
平成20年 1 月29日
サル対策講演会(富士吉田市)
「ニホンザルの現状と被害対策」
吉田 洋(動物生態学研究室)
平成20年 2 月21日
富士吉田市富士の里市民大学(富士吉田市民会館)
「世界から見た日本の水、山梨の水 −水、食糧、エ
ネルギー、気候変動−」
瀬子 義幸(環境生化学研究室)
平成20年 3 月 2 日
山梨県立博物館講演会(笛吹市)
「ツキノワグマと共存するには」
吉田 洋(動物生態学研究室)
平成20年 3 月11日
平成19年度JICA国別研修(インドネシア)
「絶滅危惧
種・データ情報管理」
(県環境科学研究所)
「希少種調査等に関する山梨県環境科学研究所の取り
組みについて(講義・見学)
」
北原 正彦(動物生態学研究室)
88
響.
3 環境教育
3 − 1 環境教育の実施・支援
3 − 1 − 2 生態観察園・自然観察路の
ガイドウォーク(利用者数 594名)
県内外の市民一人ひとりの環境に配慮したライフスタ
イルの確立や、地域における環境保全活動を支援するた
本館来所者のうち希望者に対し、自由参加で生態観察
め、子どもから大人まで誰もが気軽に参加できる環境教
園・自然観察路のガイドツアーを実施した(概要は下に
室や観察会などの各種事業を実施した。
示す)。今後さらに基本的な内容を検討し、利用者の増
加と学習効果の向上をねらいたい。
3 − 1 − 1 環境学習室
(自然解説員・・小野巌、羽田君子)
「環境学習室」を自由に訪れ、個別に学習していった
個人・家族・自由学習団体等の状況を表 1 に示す。
自由学習団体
来所者数(団体数)
計
4月
398
0( 0)
398
5月
597
65( 3)
662
6月
259
64( 2)
323
7月
536
128( 5)
664
8月
1,118
0( 0)
1,118
9月
575
0( 0)
575
10月
398
57( 4)
455
11月
278
0( 0)
278
12月
172
0( 0)
172
1月
237
20( 2)
257
2月
148
0( 0)
148
3月
409
0( 0)
409
5,125
334(16)
5,459
合 計
7 月21日∼ 8 月19日(26日間)
※ 7・8 月は月曜と 8 月 4 日を除く毎日実施
表 1 環境学習室利用者数
個人学習
来所者数
開催日:4 月28日∼ 5 月 6 日( 9 日間)
ガイドウォーク
3 − 1 − 3 学習プログラム「環境教室」
(受講者数 203団体 12,304名)
環境学習の目的で来所する団体を対象に、研修室や学
習室を利用して水・大気・森林等の日常生活が原因とな
利用者は、大型連休や学校の夏季休業中などに集中し
っている地球規模の環境問題について、身の回りのこと
やすく、地域的には首都圏が目立った。
から実践していくことの大切さを学習する教育プログラ
また、利用者の年齢層は、幼児から小学校までの子ど
ムや生態観察園・自然観察路を利用して自然環境の保全
もとその親や祖父母の利用が多く、大人では中高年の利
の重要性を考るプログラムを実施してきた。
用が比較的多い。
受講状況を表 2・3 に示す。
学習機器は、小学校高学年から中学生の利用を想定し
た内容となっている。より学習室を楽しんでもらうため
に、チャレンジクイズを実施した。またエントランスホ
ールでは研究所周辺のネズミやメダカを飼育したりシカ
の角を自由に手で触れられるようにするなど、利用者が
興味をもてるように掲示や展示物を工夫してきた。今後
もさらに検討していく必要がある。
環境教室
89
上が県外の受講者であった。県外の学校の利用では、宿
泊学習などの校外学習の受講が目立ち、近隣に宿泊施設
を有する地域の学校が受講するケースが多かったが、本
年度は、環境教室の受講だけを目的として来所する団体
が増えたことが県外の受講者が県内の受講者を上回った
原因になったと考えられる。本施設が富士山麓に位置す
るということもあり、県外の受講団体数はこれからも増
加することが予想される。当研究所は環境省による「総
合環境学習ゾーン・モデル事業」の拠点施設でもあるこ
環境教室
とから、県外の団体の受け入れも積極的に進めてきた。
これからも各種学校の校外学習や修学旅行を受け入れる
表 2 A 利用団体数(種別) 表 2 B (地域別)
ために、多人数が短時間で受講できる学習プログラムの
種 別
団体数
種 別
団体数
小 学 校
96
県 内
108
中 学 校
33
県 外
95
高校・大学
20
合 計
203
一 般
39
行政機関
15
合 計
203
充実を図っていきたい。
また、本年度は学習内容や対応の質を維持しながら多
様なニーズに答えるために、小学生向きにネイチャーゲ
ームのプログラムを開発し、低学年の子どもたちを対象
として実施したが、各団体の指導者からも教室内容の選
択の幅が広がり多彩な環境教室が行えるようになりよか
ったという高評価をいただいた。今後も小学生から大人
までが行えるプログラムを充実していきたいと考える。
受講団体の代表者に対して実施してきたアンケートに
表 3 月別受講者数
月
4月
よると、内容の評価は非常に高く、特にスタッフの応対
受講者数(団体数)
782(
7)
5月
2,870( 37)
6月
1,681( 28)
7月
1,584( 32)
8月
743( 22)
9月
1,159( 19)
10月
2,468( 34)
11月
640( 14)
12月
55(
2)
1月
128(
3)
2月
164(
4)
30(
1)
3月
合 計
に関しては、ほぼ満点の満足度を得ている。今後とも質
の高い教育プログラムを目指して、レベルを向上させて
いきたい。
環境教室
12,304(203)
3 − 1 − 4 環境講座
(考 察)
本年度は、開所以来最も多い203団体が利用した。ま
環境体験講座( 3 回 受講者数 153名)
た受講者も開所以来2番目に多い12,304人を数えた。
体験活動を取り入れながら、身のまわりのものを題材
利用団体数は小学校が圧倒的に多く学校以外の団体で
として、地球環境問題との関連を視野に入れた講座を実
は、自治会などの地域の団体や自治体での利用がある。
施した。
その他、育成会や野外活動クラブ、行政主体の青少年育
成事業等での受講者も多く見られた。
県外への広報手段としては、主にインターネットによ
ア.子ども森を楽しむ会
平成19年 7 月28日(受講者数 61名)
る情報発信が効果を発揮している。
「インターネットで
見た」と言って、環境教室の問い合わせをしてくる数が
研究所周辺の剣丸尾の森を歩き、ネイチャーゲームを
年々多くなってきている。特に本年度は人数比で半数以
通して、自然の多様性や豊かさを体感する講座。夏休み
90
中の子ども向けの事業である。
(講師:高山 弘・流石皇甫)
山梨環境科学講座( 1 回 受講者数 80名)
自然や人体の仕組み、環境と人の生活との関わりや環
境問題などについての理解を深め、自分たちのライフス
タイルや環境に対するはたらきかけの方法について考え
させることを目的に、科学的なデータや知見、研究所や
関係機関の研究成果などを取り入れ、わかりやすい内容
で構成した県民対象の講座を開催した。
テーマ:「富士山・甲府盆地の
自然災害と景観美を考える」
平成19年 5 月12日(受講者数 80名)
講 師:
子ども森を楽しむ会
Ⅰ…林 晏宏
(山梨県立大学非常勤講師・元NHK記者)
イ.森の香りのキャンドルづくり
Ⅱ…池谷 浩
平成19年12月 8 日(受講者数 28名)
(地滑りセンター理事・当研究所客員研究員)
内 容:
木の香りのキャンドル作りを通し、フィトンチッド効
Ⅰ…「災害報道とマスメディア」
果等について知り、森林浴と人の健康との関係について
Ⅱ…「最近の自然災害から学ぶ」
考える講座である。
(講師:永井正則・環境教育担当職員)
環境科学講座
キャンドル作り
3 − 1 − 5 環境調査・環境観察
ウ.キノコ植菌に挑戦
平成20年 3 月 8 日(受講者数 64名)
身近な環境調査(参加校数 148校)
児童・生徒の環境への興味・関心を高めるため、県内
キノコの植菌作業を通してキノコの植生について知る
各地で身近な自然を対象として、児童・生徒による環境
と共に、森を作るキノコを理解し、自然環境保全の意識
調査を実施した。
を持たせる講座である。 (講師:柴田 尚)
調査結果は地図にまとめて参加校に配布したり、広報
紙やインターネットを通じて広く県民に提供した。
結果概要:
《季節の訪れ調査「サクラ」》
( H18年度調査結果)
内 容 サクラ(ソメイヨシノ)の開花日調査
調査期間 平成19年 3 月 1 日∼ 5 月 8 日
参加校数
報告数
開花報告日(最多)
148
148
3 月23日(報告数20)
きのこ植菌
91
さくらの調査
地域環境観察( 4 回 参加者数 220名)
富士山溶岩流観察
「秋の自然ときのこ観察」
地域の自然や環境を新たな視点からとらえることによ
平成19年10月 6 日(参加者数 47名)
り、地域環境への興味・関心を高めることを目的に環境
環境科学研究所敷地内の森において、秋の自然を楽し
観察会を実施した。
みながら、きのこ観察会を実施した。会に先立ち講師よ
り、「森ときのこの関係」と題して講義をしていただい
バスエコツアー 1「富士山五合目自然観察」
平成19年 8 月 4 日(参加者数 79名)
た。
講師:柴田 尚 山梨県森林総合研究所主幹研究員
富士山奥庭駐車場よりお中道を通り五合目駐車場まで
の植物観察会を実施した。森林限界での植物の種類や生
き方やについて学習をおこなった。
講師:田中厚志 茨城大学大学院博士課程卒
中野隆志 当研究所植物生態学研究員
安田泰輔 当研究所植物生態学研究員
きのこ観察会
「剣丸尾自然探検」
平成19年11月10日(参加者数 47名)
剣丸尾の森を歩きながら、初冬の草花・果実・キノコ
・鳥・動物などの様子や溶岩樹型などの観察を通して、
富士山五合目観察
富士山の成り立ちや北麓の自然について学ぶ。
講師:日本野鳥の会富士山麓支部
バスエコツアー 2「富士山溶岩流観察」
日本野鳥の会 宮下義夫 水越文孝 中川雄三
平成19年 8 月25日(参加者数 47名)
富士山の噴火によって流された溶岩流を観察すること
を通し、火山としての富士山についての学習をおこなっ
た。
講師:輿水達司 当研究所地球科学研究管理幹
内山 高 当研究所地球科学研究員
剣丸尾自然探検
92
3 − 1 − 6 イベント
企画展示( 3 期 鑑賞者数 10,705名)
専門家や愛好家の写真やパネルなどにより、自然の美
しさや環境の大切さを伝えるために、当研究所ホールに
おいて企画展示を開催した。
第 1 期「富士山・火山写真展」
平成19年 4 月21日∼ 6 月24日(鑑賞者数 4,874名)
きのこ写真展
火山としての富士山や世界の火山の様子を展示した。
特に、火山災害・火山防災・火山の恵みという観点から
富士山の写真を紹介した。 (監修 荒牧重雄)
環境映画会(鑑賞者数 608名)
映像を通して、地球環境への理解を深めるとともに、
地球と人類の望ましい関係を見つめていくことを目的と
した映画会を実施した。
※アース・ビジョン組織委員会共催
「やまなし地球環境映画会07」
平成19年 8 月11日・12日・18日の 3 日間実施
富士山・火山写真展
第 2 期「動物写真展」
平成19年 7 月 7 日∼ 9 月 9 日(鑑賞者数 3,129名)
魚類から哺乳類までの脊椎動物や、昆虫を中心とした
数多くの無脊椎動物の暮らしぶりや体の仕組みなどを紹
介した。 (協力 中川雄三・早見正一・小口尚良)
環境映画会
環境ドキュメンタリー作品の上映
「おとなりさんとわたし」
動物写真展
「雪渡り」
「地球は虫の惑星だー昆虫写真家海野和男の映像世界」
第 3 期「きのこ写真展」
平成19年 9 月22日∼11月25日(鑑賞者数 2,702名)
「イノセンス」
「石おじさんの蓮池」
富士北麓で見られるきのこの生態写真を展示し、森と
「ビック・ブルー」
きのこの関係などを紹介した。 (協力 柴田 尚)
「断罪の核心−元裁判長が語る水俣病事件」
「プージェー」
93
3 − 1 − 7 支援
らの質問への回答及び、教師への指導上の助言や資料提
供を行った。
・実践活動支援(利用数 96件 6,257名)
県民の主体的な環境学習及び環境保全活動の展開を推
進するため、
「学習指導者派遣」
「施設の提供」
「教材教具
の貸し出し」など、必要な支援を行った。
支援内容
利用件数
人数
学習指導者派遣 63
4,030
施設提供 19
1,012
学習備品等貸し出し
14
1,215
合 計
96
6,257
(考 察)
指導者派遣は、各学校で実施されている「総合的な学
習の時間」に伴い依頼が増えてきている。環境学習を重
視する学校が多い中で、学校内における環境学習依頼ば
かりでなく樹海のガイドなどの体験型学習の講師依頼も
多くなってきたためスタッフ対応の機能を高めていく必
要があるが、高等学校や大学などの専門的な高度な依頼
については研究員に対応してもらうケースもある。増加
する依頼の全てに対応するのは無理があるため依頼の精
選、派遣時期の分散化など今後考えていく必要がある。
環境に関するイベントや研究会、講演会、会議等への
施設提供は、本事業が周知されるにつれて増えてきてい
る。
学習備品等の貸し出しは、従来からの「総合環境学習
ゾーンモデル事業」による環境省から提供された備品の
貸し出しに加えて、企画展示で作成した写真やパネルの
貸し出し依頼が増え、公共機関やイベントなどでの展示
により、本研究所所蔵備品が一般の人々の目に触れる機
会が増加した。
外部講師
・エコロジー相談(相談者数 33件 43名)
環境学習を円滑に進めるため、実施上の障害や疑問な
どについて相談に応じた。特に学校の時間割に位置づけ
られている「総合的な学習の時間」における小中学生か
94
エコ相談
3 − 2 指導者の育成・支援
3 − 3 調査・研究
・環境学習指導者育成(利用団体数 30団体 361名)
・環境教育に関する情報収集
学校および地域における環境学習を推進するため、教
環境教育の手法やプログラム、環境教育教材について
職員や行政職の研修会の一部として、環境教室や教育事
の調査・研究を行った。視察地の主なものを以下に示す。
業の紹介を兼ねながらワークショップ的な研修会を開催
した。また、地域における環境保全活動の推進を図るた
環境教育学会全国大会(鳥取県鳥取市)
め、行政職や地域の環境活動推進委員、各種団体のリー
ダーなどの研修として学習会を実施した。
平成19年 5 月25日∼27日
オオムラサキセンター(北杜市)
県立科学館(甲府市)
・山梨環境科学カレッジ(修了者数 29名)
平成19年11月 7 日
当研究所では開所以来、環境教育事業として各種講座
神奈川県立生命の星・地球博物館(神奈川県小田原市)
や展示会、映画会等を開催し、多くの人々が環境への関
箱根町立森のふれあい館(神奈川県箱根町)
心を高め、日々の暮らしが環境に配慮したものになるよ
うに支援してきたが、継続性に乏しく、その場限りの学
平成20年 2 月20日
京エコロジーセンター(京都府京都市)
習になることもあった。そこで、継続的に幅広く講座を
平成20年 3 月17日
受講できるシステムを構築し、それらを受講することに
より、環境問題や環境教育への理解をより一層深めてい
・環境学習教材の作成と実証
もらうことを目的に、また将来的には地域の環境活動を
一般県民向けの環境学習プログラムを来所団体等に対
推進していけるような人材を育成する第一歩となるよう
して実施できるよう、実践的な検証を行った。
に「山梨環境科学カレッジ」を運営して 4 年目になる。
その結果を踏まえ、県民がより興味・関心を持って参
加し、わかりやすいものに更新している。
カレッジ修了式
・山梨環境科学カレッジ大学院(修了者数 27名)
山梨環境科学カレッジの修了者を対象に、環境問題や
環境教育についてより専門的に学習し、地域の環境活動
を推進していける人材の育成を目指して「山梨環境科学
環境教育事業の概要
カレッジ大学院」を創設して 3 年目になる。
カレッジ大学院
95
3 − 4 環境学習資料作成
3 − 5 情報提供
・環境学習資料作成
・ニューズレター(年間 3 回発行)
各種企画事業により作成し、実践検証してきたプログ
本研究所ニューズレターに環境教育部門のページを設
ラムや教材は、汎用性のあるものに加工洗練し、学習指
け、各種事業の概要と成果を紹介した。
導者や団体等に提供できるようにしてきた。
・「環境教育事業の概要」の発行
環境教育部門の活動を紹介するため、
「環境教育事業
の概要2006」を作成発行した。
ニューズレター
・インターネット
環境教育部門に関する情報提供としてインターネット
上にwebページを作成し、各種事業の概要と成果を紹介
している。
96
4 環境情報
4 − 1 資料所蔵状況
和
図
書
書
環境情報センターでは図書、逐次刊行物、AV資料等
の環境に関する資料の収集と、閲覧・貸出による利用者
一
般
書
10,573冊
児
童
書
2,852冊
参考図書
1,344冊
富士山関係
313冊
行政図書
495冊
小 計
洋
15,577冊
461冊
書
合 計
ビ
AV資料
デ
オ
DVD( ROM・ビデオ)
CD−ROM等
合 計
逐
次
刊 行 物
和
洋
雑
雑
誌
地
図
況に対応するため、10月にDVDデッキを 2 台購入し、
同時にDVDソフトの収集を行なった。そして、試験的
に10月よりDVDの館内視聴サービスを開始することと
586点
した。だが、開始時期が利用者の少ない時期と重なった
70点
ため、DVDの視聴サービス開始が利用者に伝わりにく
279点
い状況であった。今後も、利用者の環境学習を支援でき
935点
るDVD資料の収集に努めていきたい。
86タイトル
加したが、貸出冊数や団体の利用が減少している。利用
紀
要
145タイトル
行政資料
244タイトル
小 計
551タイトル
144タイトル
695タイトル
126点
状況改善のためには、資料の展示を工夫し、利用者が資
料を手にとりやすい環境を整えること、他の図書館では
蔵書数の少ない資料を収集・貸出をしていることを積極
的に発信していくことで利用者の増加を図りたい。
あわせて環境学習を支援する資料の更なる充実を行
い、環境学習支援施設としての機能を高めていきたい。
4 − 3 インターネットによる情報提供
研究所のネットワークを利用し、研究所内に設置し
12,026人
人 数
973人
冊 数
2,185冊
貸出
図書相互貸出
借受
CD−ROM利用
DVDとなり、次々とVHSが生産されなくなってきた状
学術雑誌
環境情報センター利用者数
DVD利用
(10月より集計開始)
また、近年視聴覚資料の発行形態の主流がVHSから
16,038冊
4 − 2 利用状況
ビデオ利用
成を意識して資料収集を行なった。
利用状況として、前年度に比べ個人の利用者は若干増
等
図書団体貸出
中心に学術書・一般書・児童書のバランスの良い蔵書構
76タイトル
誌
図書個人貸出
資料整備については前年同様、自然科学・環境工学を
一般雑誌
合 計
そ の 他
への情報提供を行っている。
件数
15件
冊数
16冊
件数
4件
冊数
5冊
件 数
5件
冊 数
65冊
人 数
3,146人
本 数
564点
人 数
101人
本 数
64点
枚 数
164点
レファレンス(調査相談)
たHTTPサーバーによりWWW情報提供サービスを行っ
ている。ホームページのURLは http://www.yies.pref.
yamanashi.jp/ である。
171件
97
4 − 4 環境情報提供システム
に関する研究」
(平成13年12月発行)
第 5 号 プロジェクト研究「都市化に伴う環境変化が
情報センターに設置しているコンピュータにより、山
人の生活と健康に及ぼす影響に関する研究」
梨の環境に関する情報を提供している。
(1)自然環境(自然環境特性、大気・水質、地形、気候、
(平成14年10月発行)
第 6 号 プロジェクト研究「『自然環境』と共存した
土地分類、動物、植物)
『街』づくりの在り方に関する研究」
(平成15
(2)自然公園・自然環境保全地区(自然公園、自然保護
地区、景観保存地区等)
年 3 月発行)
第 7 号 特定研究「高原地域の環境が人の心と体に与
(3)自然遺産(天然記念物、自然記念物)
(4)景観(景観形成地域、景観形成住民協定締結地域)
える効果に関する研究」
(平成15年 7 月発行)
第 8 号 プロジェクト研究「富士五湖周辺の自然環境
(5)身近な自然クイズ
変遷史に関する研究」
(平成16年 2 月発行)
(6)環境科学研究所の概要(ホームページ)
第 9 号 プロジェクト研究「山梨県の水環境(特に地
下水)の化学的特性の把握」
(平成16年 3 月
発行)
4 − 5 出版物
第10号 特定研究「魚の雌化を指標とした環境ホル
モンの影響に関する調査研究」
(平成16年 3
・山梨県環境科学研究所年報(第10号)
・山梨県環境科学研究所ニューズレター
月発行)
第11号 特定研究「人工衛星データを用いた緑被率
( Vol.11№1∼Vol.11№3)
の推定手法の開発に関する調査研究」
(平成
・環境教育事業の概要 2006
・山梨県環境科学研究所国際シンポジウム2007報告書
16年 3 月発行)
第12号 プロジェクト研究「富士山周辺における自
−青木ヶ原樹海の保護と利用
∼望ましい姿を求めて私たちにできること∼−
然特性に関する研究」
(平成16年 3 月発行)
第13号 プロジェクト研究「山梨の自然がもたらす
・山梨県環境科学研究所研究報告書第20号
・山梨県環境科学研究所研究報告書第21号
快適性に関する研究」
(平成16年 9 月発行)
第14号 プロジェクト研究「山梨県の水質の地域特
・富士山研究№2( ISSN 1881−7564)
性とその健康影響に関する研究」
(平成16年
・「日本一の火山富士山」
( ISBN978-4-9903350-1-4)
12月発行)
第15号 特定研究「中山間地域における地域環境資
年報, 研究報告書等発行リスト(平成 9 年度∼19年度)
源の多面的・持続的な活用に関する研究」
(平
山梨県環境科学研究所年報( ISSN 1344-087X )
第 1 号(平成10年 9 月発行)
成18年 3 月発行)
第16号 特定研究「地域の景観と調和した色彩に関
第 2 号(平成11年 9 月発行)
する研究」
(平成19年 3 月発行)
第 3 号(平成12年 8 月発行)
第17号 プロジェクト研究「森林による地球温暖化
第 4 号(平成13年 8 月発行)
ガスの吸収効率に関する研究」
(平成19年 3
第 5 号(平成14年 8 月発行)
月発行)
第 6 号(平成15年 9 月発行)
第18号 プロジェクト研究「急激な温度変化が人の
第 7 号(平成16年11月発行)
健康に及ぼす影響に関する研究」
(平成19年
第 8 号(平成17年 9 月発行)
3 月発行)
第 9 号(平成18年 9 月発行)
第19号 特定研究「野生動物による農作物の被害防
第10号(平成19年 9 月発行)
止に関する研究」
(平成19年 3 月発行)
第20号 特定研究「山梨県内における生ごみの循環
山梨県環境科学研究所研究報告書( ISSN 1345-5249)
第 1 号 プロジェクト研究「快適な環境づくりに必要
処理に関する評価研究」
(平成20年 3 月発行)
第21号 特定研究「河川環境に与える外来植物の影
な基準についての研究」
(平成12年12月発行)
響について」
(平成20年 3 月発行)
第 2 号 特定研究「農林業に対する鳥獣害防止のため
の調査研究」
(平成13年 3 月発行)
第 3 号 特定研究「紫外線が県民の健康に及ぼす影響
に関する研究」
(平成13年 7 月発行)
第 4 号 特定研究「河川の水質浄化及び自然再生手法
98
その他
山梨県環境科学研究所富士山シンポジウム2001報告書
−心のふるさと「富士山」との共生を目指して−
( ISSN 1347-3654)
(平成14年 3 月発行)
山梨県環境科学研究所国際シンポジウム2002報告書
−生体微量元素−
( ISSN 1347-3654)
(平成15年 3 月発行)
山梨県環境科学研究所国際講演会2003報告書
−火山災害の軽減を探る−
( ISSN 1347-3654)
(平成16年 3 月発行)
山梨県環境科学研究所国際シンポジウム2004報告書
−環境要因の変化と人の健康−
( ISSN 1347-3654)
(平成17年 3 月発行)
山梨県環境科学研究所国際セミナー2005報告書
−野生動物の被害管理の現状と未来−
( ISSN 1347-3654)
(平成18年 3 月発行)
山梨県環境科学研究所国際セミナー2006報告書
−プラスチック・リサイクルの現状と未来−
( ISSN 1347-3654)
(平成19年 3 月発行)
山梨県環境科学研究所国際セミナー2007報告書
−プラスチック・リサイクルの現状と未来−
富士山研究№1
( ISSN 1881-7564)
(平成19年 3 月発行)
富士山研究№2
( ISSN 1881-7564)
(平成20年 3 月発行)
学術書「富士火山」
( ISBN978-4-9903350-0-7)
(平成19年 3 月発行)
「日本一の火山富士山」
( ISBN978-4-9903350-1-4)
(平成20年 3 月発行)
99
5 交流
5 − 1 公開セミナー・シンポジウム
どを実習(体験)することにより、理科教育の一層の充
●フォーラム「富士山:世界遺産と環境保全」
に第 1 回目を 8 月13日・14日に第 2 回目を 8 月16・17
期日・会場
日にそれぞれ 2 日間の日程で実施した。
第 6 回 平成19年 5 月11日(金)
第 1 日目は、火山学講義を聞いた後、火山についての
山梨県環境科学研究所
グループディスカッションを行い、午後からは「ゼラチ
第 7 回 平成19年 7 月29日(日)
富士吉田市上吉田コミュニティーセンター
実を図ることを目的に県内小・中・高等学校教員を対象
ンを使ったマグマの上昇と割れ目噴火」
「溶岩流の流れ」
「地図上での降下火砕物」などのアナログ実験を行い、第
講師:田畑 貞寿 千葉大学名誉教授
2 日目は、富士山五合目における噴火形態、西湖こうも
西村 幸夫 東京大学大学院教授
り穴、鳴沢旧石切場など北麓周辺の野外巡検を実施した。
富士山の世界遺産登録を目指すことが決定され、実質
●国際セミナー2007
的な作業が開始された現在、目標が文化遺産のカテゴリ
「青木ヶ原樹海の保護と利用
ーであるにせよ、その基幹をなす自然景観の保全を十分
に行うことが必要欠くべからざることは明らかである。
∼望ましい姿を求めて私たちにできること∼」
平成19年11月 3 日(土)
富士山をめぐる景観の保全、自然環境の保護につい
て、適切かつ十分な計画の策定と実行プログラムを地元
開会あいさつ:荒牧重雄(山梨県環境科学研究所所長)
と行政・国民会議などが緊密に協力して作り上げ、推進
第 1 部:「青木ヶ原樹海利用の現状と課題」
していくことが必要である。フォーラムの目的はあくま
青木ヶ原樹海における環境保全モニタリングシ
で情報と意見の交換であり、昨年度は座談会等を中心に
ステム構築の試み
5 回開催され、山梨・静岡両県の地元一般住民、自然・
本郷 哲郎(山梨県環境科学研究所)
環境保護の活動家・グループ、地元企業(観光産業を含
自然資源の質の視点から
む)、市町村当局、県の担当者、国の機関、国民会議の
篠田 授樹(地域自然財産研究所)
中から適当な組み合わせを行う中で、各参加者から、活
利用者体験の質の視点から
発な意見交換がなされた。
山本 清龍(東京大学大学院)
本年度は、昨年度に続き 2 回開催し、第 6 回目では、
第 2 部:招待講演
田畑貞寿氏による「富士山とわれらのまちをまもる」と
「自然資源管理のための
題しての講演会と自由討論、また第 7 回目では、西村幸
夫氏による「世界遺産登録をまちづくりに生かす」と題
地域協働における研究者の役割」
スティーヴン・ F ・マックール
しての講演会と討論を行った。
(モンタナ大学教授)
第 3 部:パネルディスカッション
●学校教員研修会 ∼体験で学ぶ火山∼
「地域の望ましい姿を求めて」
期日・会場
座 長:熊谷 嘉隆(国際教養大学地域環境研究センター)
第 1 回 平成19年 8 月13(月)
・14日(火)
パネリスト:
山梨県環境科学研究所
スティーヴン・ F ・マックール(モンタナ大学)
第 2 回 平成19年 8 月16(木)
・17日(金)
愛甲 哲也(北海道大学大学院)
山梨県環境科学研究所
伊藤 延廣(裏磐梯エコツーリズム協会)
講師:荒牧 重雄 山梨県環境科学研究所
川元 修(山梨県観光部)
林 信太郎 秋田大学教育文化学部教授
篠田 授樹(地域自然財産研究所)
小山 真人 静岡大学教育学部教授
山本 清龍(東京大学大学院)
高橋 正樹 日本大学文理学部教授
中野 隆志(山梨県環境科学研究所)
高田 亮 (独)産業技術総合研究所主任研究員
閉会あいさつ:志村 充(山梨県環境科学研究所副所長)
中野 隆志 山梨県環境科学研究所
総合司会:本郷 哲郎(山梨県環境科学研究所)
共 催:自然公園研究会
学校教員研修会 ∼体験で学ぶ火山∼ は山梨県教育
委員会との共催により、火山に関する教材・教育方法な
100
後 援:環境省関東地方環境事務所、日本エコツーリズ
ム協会、国際教養大学
富士山北麓地域には毎年たくさんの観光客が訪れ、そ
い内容であった。今後の富士山の研究を続けていくうえ
の自然を多くの人が様々な形で楽しんでいる。自然環境
で、静岡県側と共同して研究を行っていくことが重要で
を利用する楽しみ方が多様化していくなかで、青木ヶ原
あると感じた。本セミナーで、静岡大学の増澤教授と今
樹海の貴重な自然を保護し、持続的に利用していく方法
後の富士山の研究について議論できたことも大きな収穫
について参加者と一緒に考えていく機会となるようなシ
であった。本年度も植物に関する発表が多かったが、今
ンポジウムを開催した。
後、動物生態学、地球科学はもとより、社会科学系の発
第 1 部では、青木ヶ原樹海の適正な管理を目指して現
表が増えることを期待し、来年度以降も本セミナーは続
在当研究所が進めている「環境保全モニタリングシステ
けていく予定である。
ムの構築に関する研究」の成果をもとに、本郷主幹研究
員および共同で研究に取り組んでいる篠田氏、山本氏よ
第 9 回富士山セミナープログラム
り青木ヶ原樹海利用の現状と課題についての講演が行わ
根岸 正弥(茨城大学大学院理工学研究科・修士 1 年
れた。
生):「富士北麓冷温帯アカマツ林における土壌呼吸の
第 2 部は、自然公園管理の専門家であるアメリカモ
分離」
ンタナ大学のスティーヴン・ F ・マックール教授をお
招きし講演いただいた。自然資源の適切な管理を行うた
めに、研究者の役割と限界は何か、科学的データの蓄積
大内 法輔(茨城大学理学部・4 年生):「富士山麓アカ
マツ林における粗大木質リター( CWD )の炭素動態」
山村 靖夫(茨城大学理学部・助教授):「火山地におけ
を適切な管理に結びつけるためには何が必要かが論じら
る植物の生育への窒素とリンの制限;標高との関係」
れ、その地域の目標は何か、何を保護しどのように利用
坂田 剛(北里大学自然科学教育センター・助手):
するのかの合意形成が必要なことが伝えられた。
第 3 部のパネルディスカッション「地域の望ましい姿
「高標高域における低大気圧が個葉光合成の温度依存
性におよぼす影響」
を求めて」では、自然資源管理のための取り組みについ
三田村理子(茨城大学大学院理工学研究科・博士 3 年
て国内外の事例が紹介され、自然資源の変化に関する情
生):「雪崩攪乱による環境変化がシラビゾ稚樹の光合
報をどのように収集するか、その情報を適切な保護・利
用計画に結びつけるには地域協働をどのように進め合意
形成を図ればよいか、さらに住民参加型のモニタリング
システムをどのように構築していくのかについて、参加
者とともに活発な議論が交わされ有意義なシンポジウム
となった。
成に与える影響」
伊藤 理恵(静岡大学理学部・学部 4 年生)
:
「富士山森
林限界付近におけるイタドリ実生の移植実験」
小出 富美,来間 直也(東邦大学理学部 4 年生、3 年
生):「シャクナゲ属の生理生態学的研究」
杉田 幹夫(山梨県環境科学研究所・研究員):「富士山
周辺のLIDAR計測標高データについて」
●第 9 回富士山セミナー
滝島 啓介(首都大学東京都市環境学部・地理学科 5 年
平成19年12月 1 日(土)
生):「富士山北西斜面の樹木限界付近におけるパッチ
状群落の高度変化」
富士山セミナーは、山梨県環境科学研究所が主催し、
芹沢 守也(茨城大学大学院理工学研究科・修士 1 年
平成11年度より年一度開催されている。本セミナーの
生):「富士山の森林限界におけるシラビゾの動態」
目的は、富士山を中心に研究を行っている研究者や学生
荻野 恭子(玉川大学大学院農学研究科・修士 2 年生)
:
が集まり、研究発表を行うことで、富士山に関する情報
「富士山雪崩攪乱跡地におけるカラマツの侵入様式と
の交換や研究のレベルアップを図るとともに、富士山を
中心に研究を行っている研究者の交流を進めることであ
る。また、大学院生や大学生に発表の機会を与え、研究
者と議論することで、学生への教育も大きな目的の一つ
である。本年度は平成19年12月 1 日に開催した。15題
遷移阻害要因」
岡 秀一(首都大学東京大学院・准教授):「村山古道
からみる富士山南斜面における森林帯の変遷(予報)
」
萩原 康夫(昭和大学吉田教養部・講師):「富士北麓に
おけるキシャヤスデ類の大発生(報告)」
の最新の研究発表があった。参加者は40名を越え、富
安田 泰輔(山梨県環境科学研究所・研究員):「富士北
士山を研究対象とする研究者や学生、大学院生が多く集
西麓野尻草原における野生動物と植生とチョウ類の関
まったため、集中した活発な議論が展開され非常に有意
係」
義な会となった。特に、普段聞くことの少ない富士山南
斜面静岡県側での研究について静岡大学の学生による発
表があり、普段わからない静岡県側の情報が聞けたこと
は非常に有意義であった。また、富士山の高山帯との
冨田 美紀(静岡大学大学院理工学研究科・博士 2 年
生)
:
「日本と北極圏に共通して生育する植物の不思議」
「総合討論 総合討論,まとめ,提案,報告,来年度の
計画等」
比較という意味で、北極の植物についての発表も興味深
101
●富士山自然ガイド・スキルアップセミナー
本セミナーは続けていく予定である。
(富士山の自然環境学講座)
期日・会場
第 4 回セミナー:プログラム
第 1 回 平成20年 2 月11日(月)
//持続可能な社会を目指して//
山梨県環境科学研究所
第一部 基調報告「食料生産と循環型社会」
第 2 回 平成20年 2 月16日(土)
梅津 一孝 教授
山梨県環境科学研究所
(帯広畜産大学大学院畜産学研究科)
第 3 回 平成20年 3 月22日(土)
山梨県環境科学研究所
第二部 パネルディスカッション
講師:清水 善和 駒澤大学総合教育学部
パネリスト
上條 隆志 筑波大学生命環境学群生物資源学類
梅津 一孝 教授(帯広畜産大学大学院畜産学研究科)
田中 厚志 茨城大学理学部
時友裕紀子 教授(教育人間科学部家政教育講座)
千葉 達郎 アジア航測株式会社
御園生 拓 教授(工学部循環システム工学科)
宮下 弘文 山梨県総合教育センター
林 信太郎 秋田大学
コーディネーター
荒牧 重雄 山梨県環境科学研究所
竹内 智 教授(工学部循環システム工学科)
中野 隆志 〃
●国際ワークショップ2007【噴火未遂事象に学ぶ】
富士山の自然に関する魅力や不思議をインタープリテ
期日・会場
ーションによって効果的に伝えていくためには、科学に
平成19年12月16日(日) 山梨県環境科学研究所
おける新しい発見、整理に対する正しい理解が欠かせな
平成19年12月18日(火) 防災科学技術研究所(茨城県)
い。それゆえ、インタープリテーションに役立ちそうな
講師:
自然科学基礎的情報を提供することを意図して、本年度
(16日)
は 3 回開催した。参加者は富士山の自然ガイド、インタ
Herman Patia パプアニューギニア ラバウル火
ープリター、一般県民の皆様の参加を得て、活発な意見
交換がされた。
山観測所
Giovanni Orsi イタリア国立地球物理学火山学研
究所ベスビオ火山観測所
●山梨県環境科学研究所/山梨大学大学院・医学工学総
合教育部・持続社会形成専攻:合同セミナー
平成19年12月11日(火)第 4 回合同セミナー
鵜川 元雄 防災科学技術研究所
真田喜久雄 富士吉田市役所
井口 正人 京都大学防災研究所
齊藤 徳美 岩手大学
本セミナーは、山梨県環境科学研究所と山梨大学大学
広瀬 弘忠 東京女子大学
院・医学工学総合教育部・持続社会形成専攻が共同主催
荒牧 重雄 山梨県環境科学研究所
し、平成17年度より、原則として年二度開催する予定
(18日)
で開始された(平成17年度は一度)
。本セミナーの目的
Jake Lowenstern 米国地質調査所イエローストー
は、同じ山梨県内にある大学と県立研究機関が共同して
セミナーを開催していくことで、大学と研究機関が行っ
ン火山観測所
Herman Patia パプアニューギニア ラバウル火
ているそれぞれの研究に関する情報の交換や、研究のレ
ベルアップを図るとともに、研究者の交流を進めること
山観測所
Giovanni Orsi イタリア国立地球物理学火山学研
である。最終的には、大学と研究機関のそれぞれの長所
究所ベスビオ火山観測所
を生かし、共同研究の道を探ることにある。昨年度は平
鍵山 恒臣 京都大学大学院
成18年 9 月 1 日に第 2 回目のセミナーを山梨県環境科
北川 貞之 気象庁
学研究所で、平成18年12月13日に第 3 回目を山梨大学
で開催した(第 1 回は、平成17年12月 9 日山梨大にて
国際ワークショップ2007を、12月16日・18日の 2 日
行った)
。本年度は平成19年12月11日に山梨大学で、
「持
間にかけて、当研究所と防災科学技術研究所において開
続可能な社会を目指して」と題して研究者の基調講演を
催した。
もとにし、パネルディスカッションを行った。これまで
日本有数の活動火山である富士山の最後の噴火から300
のように研究発表会でなくテーマを設けてのセミナーで
年を数える本年、火山噴火未遂事象と防災行政をテーマ
あり非常に内容の濃いセミナーであった。来年度以降も
に開催した本ワークショップは、
「噴火未遂事象に学ぶ」
102
と題して、噴火の兆しを捉えながらも実際の噴火に至ら
環境科学研究所
なかった国内外の火山の事例を基に、行政の判断・対応
や避難命令の内容・時期などについて、それらが抱える
研究所の研究成果や研究活動の一端を一般県民に知っ
問題点と改善に向けた課題を検討するため、海外から講
てもらうために、普段は公開していない研究施設を見て
師を招き、米国(ロングバレー、イエローストーンカル
もらう「研究室公開」を行っている。平成19年度は研
デラ)
、イタリア(カンピ・フレグレイカルデラ)
、パプ
究所の開設10周年に当たるため、記念講演会と研究室
ア・ニューギニア(ラバウル火山)の事例が発表された。
公開を同時に開催した。
ま た、国 内 か ら は 2000 年 富 士 山 低 周 波 地 震 活 動、
1998年岩手山の噴火未遂事象等について、その事例を
(1)講演会
発表するとともに、災害心理学の視点から火山情報の発
「富士火山、最近10年の話題」
信などについても講演と活発な意見討論を行った。
荒牧 重雄(山梨県環境科学研究所長)
2 日間とも、火山の専門家をはじめとして多くの参
「10年間の成果概要」
加者が集まる中で、当ワークショップが有益な情報共有
( 3 研究部および環境教育の報告)
・情報交換の場となり、数少ない噴火未遂事象の教訓か
ら、今後の火山防災を考える上で、大きな意義があった。
(2)研究室公開
・見てみよう!火山噴火と地層の液状化
16日には、70余名、18日には60余名の参加者を得、
改めて火山防災に対する関心の高さを実感した。
(地球科学研究室)
・骨が語る動物の姿(動物生態学研究室)
・富士山アカマツ林エコツアー(植物生態学研究室)
●国際シンポジウム【自然公園としての富士山】
・寒さと血圧 −人工気象室体験−
期日・会場
(環境生理学研究室)
平成20年 1 月17日(木)
・目で見る温度の違い(生気象学研究室)
山梨県環境科学研究所
・血管年齢、内蔵脂肪をはかろう!
講師: J. ゲール
米国国立公園局ハワイ国立公園イ
ンタープリティション主任
(環境生化学研究室)
・私たちの生活と身近な自然との関わり
L. フレザー 米国国立公園局ハーバーズ・フェ
リー・センター副管理監
(人類生態学研究室)
・地域環境を守るゴミのリサイクル
P. グリーン ニュージーランド、トンガリロ国
立公園保護管理監
関根 達朗
(環境資源学研究室)
・空から見る地域環境の移り変わり
関東地方環境事務所 統括自然保
(環境計画学研究室)
護企画官
高橋 進
共栄大学 国際経営学部教授
当シンポジウムは、
「自然公園としての富士山」と題
して、自然公園の保護管理の先進国から専門家を招き、
また、国内の専門家も交えて富士山地域の自然公園の保
護・管理、特に学習・教育的分野は如何にあるべきかに
ついて、講演と討論を行った。
米国からはイエローストーンとハワイについて、また
ニュージーランドからはトンガリロについて世界自然遺
産等に登録されている各国立公園の保護・管理運営やイ
ンタープリティション等について講演をいただいた。
また、国内での自然保護の実情、富士箱根伊豆国立公園
を中心とした日本の国立公園の保護活動についての説明な
ど海外との比較を行う中で、活発な意見交換が行われた。
●「山梨県環境科学研究所10周年記念講演会及び研究
室公開」
期日・会場
5 − 2 環境科学研究所利用者数
月別利用者数 (のべ数,人)
4月
2,828
5月
9,584
6月
5,160
7月
5,474
8月
5,805
9月
4,237
10月
6,541
11月
2,665
12月
678
1月
1,000
2月
985
3月
1,185
合 計
46,142
※環境学習室及び環境情報センター利用者を含む
平成20年 3 月23日(日)
103
6 研究所の体制
6 − 1 構成員
非常勤嘱託 笠 井 裕 里
臨 時 職 員 小 澤 亜由美
所 長
臨 時 職 員 小 俣 友 美
荒 牧 重 雄
臨 時 職 員 渡 辺 多喜子
副 所 長
志 村 充
自然環境・富士山火山研究部
特別研究員
部 長 輿 水 達 司
永 井 正 則
地球科学研究室
研究管理幹
研究管理幹 輿 水 達 司(兼務)
瀬 子 義 幸
研 究 員 内 山 高
輿 水 達 司
植物生態学研究室
客員研究員
研 究 員 中 野 隆 志
林 進
研 究 員 安 田 泰 輔
(岐阜大学名誉教授)
動物生態学研究室
池 谷 浩
主幹研究員 北 原 正 彦
(㈶砂防・地すべり技術センター理事長)
非常勤嘱託 吉 田 洋
奥 脇 昭 嗣
臨 時 職 員 石 原 諭
(東北大学名誉教授)
臨 時 職 員 古 屋 寛 子
特別客員研究員
藤 井 敏 嗣
環境健康研究部
(東京大学地震研究所教授)
部 長 瀬 子 義 幸(事務取扱)
高 橋 正 樹
環境生理学研究室
(日本大学文理学部教授)
特別研究員 永 井 正 則(兼務)
林 信太郎
非常勤嘱託 石 田 光 男
(秋田大学教育文化学部教授)
生気象学研究室
高 田 亮
研 究 員 宇 野 忠
(
(独)
産業技術総合研究所主任研究員)
非常勤嘱託 十二村 佳 樹
藤 田 英 輔
環境生化学研究室
(
(独)
防災科学技術研究所主任研究員)
研究管理幹 瀬 子 義 幸(兼務)
研 究 員 長谷川 達 也
総務課
臨 時 職 員 齋 藤 順 子
課 長 杉 山 圭 二
臨 時 職 員 外 川 雅 子
総務担当
主 査 渡 辺 正 憲
地域環境政策研究部
副 主 査 清 水 信 一
部 長 本 郷 哲 郎
主 任 桒 原 正 照
環境資源学研究室
非常勤嘱託 桒 原 美 幸
非常勤嘱託 森 智 和
非常勤嘱託 堀 内 むつみ
非常勤嘱託 齊 藤 奈々子
臨 時 職 員 安 富 由 香
環境計画学研究室
環境教育・情報担当
研 究 員 杉 田 幹 夫
副 主 幹 笠 井 淳
研 究 員 池 口 仁
主 査 小佐野 親
人類生態学研究室
主 任 桒 原 正 照(兼務)
主幹研究員 本 郷 哲 郎(兼務)
研 究 員 杉 田 幹 夫(兼務)
研 究 員 小笠原 輝
研 究 員 宇 野 忠(兼務)
臨 時 職 員 渡 邉 学
非常勤嘱託 倉 澤 和 代
臨 時 職 員 大 森 さおり
104
倫理委員会
石 田 光 男
委 員 長 荒 牧 重 雄
森 智 和
委 員 志 村 充
永 井 正則
ネットワーク管理委員会
瀬 子 義 幸
委 員 長 杉 田 幹 夫
輿 水 達 司
委 員 池 口 仁
本 郷 哲 郎
清 水 信 一
御 園 生 拓(外部)
小佐野 親
高 橋 智 子(外部)
桒 原 正 照
内 山 高
動物実験倫理委員会
宇 野 忠
委 員 長 荒 牧 重 雄
森 智 和
委 員 志 村 充
永 井 正 則
毒物・劇物及び特別管理産業廃棄物管理委員会
瀬 子 義 幸
委 員 長 瀬 子 義 幸
輿 水 達 司
委 員 長谷川 達 也
杉 田 幹 夫
清 水 信 一
吉 田 洋
動物運営委員会
齊 藤 奈々子
委 員 長 瀬 子 義 幸
十二村 佳 樹
委 員 清 水 信 一
長谷川 達 也
吉 田 洋
十二村 佳 樹
6 − 2 沿 革
平成 3 年11月 「環境科学研究所検討委員会」の
中央機器運営委員会
設置
委 員 長 瀬 子 義 幸
平成 4 年11月 「環境科学研究機関設置準備室」を
委 員 杉 山 圭 二
環境局内に設置
内 山 高
平成 5 年 2 月 「環境科学研究所顧問」
( 9 名)を
宇 野 忠
委嘱
安 田 泰 輔
3 月 「環境科学研究所基本計画」の策定
齊 藤 奈々子
平成 7 年11月 起工式
平成 9 年 4 月 1 日 組織発足
広報委員会
30日 竣工式
委 員 長 輿 水 達 司
委 員 杉 山 圭 二
渡 辺 正 憲
笠 井 淳
桒 原 正 照
北 原 正 彦
宇 野 忠
小笠原 輝
編集委員会
委 員 長 本 郷 哲 郎
委 員 杉 山 圭 二
渡 辺 正 憲
6 − 3 予 算
平成19年度予算(単位:千円)
事 項
予 算 額
所運営費
130,005
研究・企画費
110,822
環境教育推進費
16,741
環境情報センター費
計
9,184
266,752
※職員給与費は除く
中 野 隆 志
北 原 正 彦
105
6 − 4 施 設
6 − 5 主要研究備品
敷地面積 30ha
施設名
設置場所
構 造
延べ面積
鉄筋コンクリート造り
館 (一部鉄筋一部木造)
地下 1 階地上 3 階
2,500.631㎡
研 究 棟
鉄筋コンクリート造り
地下 1 階地上 2 階
3,429.005㎡
連絡通路
鉄筋コンクリート造り
地下 1 階
95.813㎡
附 属 棟
コンクリートブロック造り
地上 1 階
171.277㎡
管 理 棟
コンクリートブロック造り
地上 1 階
98.280㎡
温
室
鉄骨造り 地上 1 階
通
路
鉄骨造り
本
合 計
101.286㎡
17.6㎡
6,413.892㎡
備 品 名
分光光度計
蛍光光度計
原子吸光光度計
ICP発光分析装置
ICP質量分析装置
ガスクロマトグラフ質量分析装置
ガスクロマトグラフ
CHN分析装置
中 央 機 器 室
高速冷却遠心機
ドラフトチャンバー
イオンクロマトグラフ
生化学分析システム
超遠心機
分析走査型電子顕微鏡
安定同位体比質量分析システム
生体高分子解析システム
恒温恒湿室
脳波解析システム
多チャンネル高速データ処理システム
人 工 気 象 室
刺激装置
生体情報処理システム
シールドボックス
動物飼育観察室 クリーンラック
冷
凍
庫
室 超低温槽( -150°C )
クリーンルーム クリーンルーム及び内部機器
敷 地 内 露 場 気象観測システム
α線測定器
地震計
ドラフトチャンバー
蛍光X線分析装置
地球科学実験室
偏光顕微鏡画像解析装置
屈折率測定装置
水位・水温連続記録計
地震データ転送システム
野外環境モニタリング機器
グロースキャビネット
携帯用光合成蒸散測定システム
温室効果ガス動態測定システム
植 物 生 態 学
エコタワー環境測定機器
実
験
室
生態系炭素収支モニタリングシステム
環境∼生理反応実験装置
携帯型土壌呼吸測定システム
携帯用光合成蒸散測定装置
生物顕微鏡システム
ラジオテレメトリーシステム
動 物 生 態 学 野外測定システム
実
験
室 繊維定量装置
脂肪定量装置
動物個体サイズ・シェイプ解析装置
106
設置場所
備 品 名
蛍光顕微鏡システム
環 境 生 理 学 血圧・心拍連続記録システム
実
験
室 急性実験用血圧心拍解析システム
胃電計装置
生体電気現象記録装置
テレメトリーシステム
生気象学実験室
自律神経シグナル測定システム
脳血流測定システム
TOC自動分析装置
ドラフトチャンバー
環 境 生 化 学 マイクロプレートリーダー
実
験
室 高速液体クロマトグラフ
高速液体クロマトグラフ質量分析計
ICP−MS試料導入装置
フーリエ変換赤外分光分析装置
フーリエ変換赤外分光分析装置用オプション
環 境 資 源 学 廃プラスチック熱分解装置
実
験
室 廃プラスチック熱分解装置遠心分離器
廃プラスチック熱分解装置脱臭設備
ポリフェノール測定装置
大容量ファイルサーバー
画像解析装置
地理情報装置
環 境 計 画 学 スペクトルラジオメーター
実
験
室 3 次元画像解析装置
サーモビュアー
マイクロ波データ解析システム
画像解析ソフトウエア
マイクロウェーブ分析装置
自動水銀分析システム
人 類 生 態 学
分光光度計
実
験
室
蛍光光度計
ドラフトチャンバー
107
A-11-2008
平成19年度
山梨県環境科学研究所年報
第11号
YIES Annual Report 2007
2008年 9 月発行
編集・発行
山梨県環境科学研究所
〒403 0005 山梨県富士吉田市上吉田字剣丸尾5597 1
電話:0555 72 6211
FAX:0555 72 6204
http://www.yies.pref.yamanashi.jp/
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