小学校第5学年における2次元表及び棒グラフを活用させる指導の提案

小学校第5学年における2次元表及び棒グラフを活用させる指導の提案
聖徳学園小学校
川上 貴
1.提案内容
現行の学習指導要領では、第3学年に棒グラフを、第4学年に2次元表を学習する。しかしながら、
棒グラフや2次元表の指導がこの時点で行われるだけでその後の学年ではほとんど扱われない。スパ
イラルの観点からも棒グラフや2次元表をその後の学年で活用する指導が必要ではないかと考えた。
そこで今回は、小学校第5学年における2次元表及び棒グラフを活用させる指導を構想した。第5学
年を設定したのは、本指導では、割合や百分率を必要とするからである。なお、本校のカリキュラム
では、小学校第5学年において「資料の調べ方」の単元の中で円グラフ、帯グラフと共に度数分布表
や柱状グラフの学習も行う。今回構想した指導は、その「資料の調べ方」の単元の中に第1時として
位置づけて行う予定である。
2.学習指導案
対象:聖徳学園小学校 第5学年数学 A クラス(32 名)
日時:2011 年 12 月~1月
指導者:川上 貴(聖徳学園小学校)
(1)単元名「資料の調べ方」
(2)単元の指導計画(全13時間)枠囲み部分:今回提案する授業
指導
○指導内容「授業タイトル」
時
項目
主問題
間
第1時
1
○2次元表や棒グラフを用いて、カテゴリデータどうしの相関関係をよみとること。
相
対
度
数
2
次
元
表
「性格と血液型との相関関係のよみとり」
棒 一般的に A 型の人は几帳面だというイメージがあります。下の資料は、実際に 100 人
グ
ラ に聞いた血液型と「あなたは几帳面だと思いますか?」という質問に対する答えです。
フ
この資料から、A 型の人は几帳面だと言えそうですか?
※棒グラフ、2次元表、割合(単位量のあたりの大きさ)、百分率については、本時の前
に学習しているものとする。
第2時・3時
2
○円グラフや帯グラフを用いてカテゴリデータの特徴をよみとること。
「家庭のエネルギー使用の割合」
今年の夏は省エネがさかんに言われています。省エネをするためには、何にエネルギー(電
帯
グ
ラ
フ
円
グ
ラ
フ
気やガスなど)が使われているのかをまず知る必要があります。下の資料は、最近(2008
年)の一世帯あたりのエネルギー使用の割合を表したものです。最近の家庭では、何にど
のぐらいの割合のエネルギーが使われているのでしょうか?また、下の資料は、昔(1965
年)の一世帯あたりの家庭のエネルギー使用の割合です。最近(2008 年)とくらべて、ど
んなことがいえますか?
※割合、百分率は、本時の前に学習しているものとする。
1
第4時・5時
2
○ドットプロットや平均値、最頻値、範囲などを用いて数値データの特徴をよみとること。
「5年両クラスの 50m走の記録くらべ」
ド
ッ
ト
プ
範 ロ
囲 ッ
ト
平
均
値
運動会の徒競走では、のぞみ組は 350 点、はやて組は 400 点でした。この結果をみると、
はやて組の方がみんな早いように思います。下の表は、5年生両クラスの50m走の記録
です。両クラスの記録には、それぞれどんな特徴がありますか?また、両クラスの記録を
くらべると、はやて組の方がのぞみ組よりも早いといえますか?
※学習指導要領では、
「ドットプロット」は第6学年の指導事項であるが、今回は実験的に
第5学年で指導を試みる。
※学習指導要領では、
「資料の平均」は第6学年の指導事項であるが、本校のカリキュラム
では、第5学年に配置されている。
第6時・7時
2
○幹葉図や平均値、最頻値、範囲などを用いて数値データの特徴をよみとること。
「4年生と5年生の睡眠時間くらべ その1」
範 幹
囲 葉
( 図
中 平
央 均
値 値
)
学年があがると勉強もいそがしくなり、遅くまで勉強していて睡眠時間が短くなることが
予想されます。下の表は5年 A クラスの学校がある日の睡眠時間を調べたものです。あな
たは、5年 A クラスの中で睡眠時間は短い方、長い方のどちらだといえますか?
4年 B クラスの学校がある日の睡眠時間を調べました。両クラスをくらべて、5年 A クラ
スの方が4年 B クラスよりも睡眠時間が短いといえますか?
※「幹葉図」については、学習指導要領にはない事項であるが、今回は実験的に第5学年
で指導を試みる。
※「中央値」については、中学校第1学年の指導事項であるが、発展的内容としてふれる。
第8時・9時・10時
度
数
平 分
均 布
値 表
範 柱
状
囲 グ
ラ
フ
3
○度数分布表、柱状グラフや平均値、最頻値、範囲などを用いて数値データの特徴をよみ
とること。
「4年生と5年生の睡眠時間くらべ その2」
さらに4年 A クラスと5年 B クラスの学校がある日の睡眠時間も調べ、今度は、学年どう
しの睡眠時間のちがいをくらべたいと思います。4年生と5年生をくらべて、5年生の方
が4年生よりも睡眠時間が短いといえますか?
※学習指導要領では、
「度数分布表」や「柱状グラフ」は第6学年の指導事項であるが、本
校のカリキュラムでは、第5学年に配置されている。
表
や
グ
ラ
フ
の
選
択
第11時・12時・13時
目
的
応
じ
た
3
○目的やデータのタイプに応じて表やグラフを選択し、それらを用いて情報発信すること。
みんなは、データリサーチ社の一員です。データリサーチ社とは、学校の友だちや先生な
どの周りの人たちに役に立つ情報を発信する会社です。自分でデータを集めて調べたこと
をポスターにまとめて、学校のみんなに伝えよう。
※「Statist」や「科学の道具箱」などの統計グラフソフトの使用も可とする。
2
3.本時の目標と展開:第1時「性格と血液型との相関関係のよみとり」
【本時の目標】
・
「センサス@スクール」から収集した 100 人分の血液型のデータ※と性格自己判断のデータについて、
2次元表および棒グラフを作成し、観察することを通して、自己判断による性格と血液型との間に
相関関係があるかを判断することができるとともに、相関関係を調べる棒グラフの新たな使い方や、
相関関係を判断する際に割合(相対度数)を用いる必要性を理解する。
※)統計 Web サイト「センサス@スクール」に登録されているデータから 200 人分のエクセルデー
タを提供していただき、その中から 100 人分を無作為抽出した。
【展開】
指導内容と主な発問
予想される主な反応
指導の重点及び留意点
1.性格と血液型との間には関係が
あるか予想させる
「血液型と性格は関係あると思いま
すか?」
・一般的に A 型の人は几帳面だ
「関係ある」
「あまり関係ない」
というイメージがあること
「A 型は几帳面」
を伝える
「AB 型は変わってる」
「O 型はのんびりしてる」
2.主問題を提示する
一般的に A 型の人は几帳面だというイメージがあります。下の資料は、実際に 100 人に
聞いた血液型と「あなたは几帳面だと思いますか?」という質問に対する答えです。
この資料から、A 型の人は几帳面だと言えそうですか?
O型
B型
A型
A型
B型
B型
A型
A型
B型
O型
A型
A型
A型
B型
O型
B型
O型
AB型
AB型
A型
A型
AB型
A型
AB型
O型
○
×
×
○
×
×
×
×
×
×
×
○
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
○
A型
B型
A型
A型
B型
A型
A型
AB型
O型
A型
O型
A型
A型
A型
O型
B型
O型
A型
A型
A型
B型
A型
A型
AB型
AB型
×
×
×
×
○
×
×
×
○
×
×
×
×
×
×
×
×
○
×
×
×
×
×
×
×
A型
O型
A型
A型
A型
AB型
A型
A型
B型
A型
A型
B型
O型
O型
B型
O型
O型
O型
B型
A型
O型
A型
O型
A型
O型
3
×
×
×
×
×
○
×
○
×
×
○
×
×
×
×
×
○
×
×
×
○
○
×
×
×
A型
B型
B型
O型
A型
B型
A型
AB型
B型
A型
A型
A型
A型
O型
AB型
A型
O型
B型
A型
B型
O型
B型
A型
B型
A型
O型
A型
A型
O型
A型
B型
AB型
O型
B型
A型
AB型
A型
O型
A型
O型
B型
B型
A型
B型
A型
AB型
AB型
O型
AB型
A型
×
×
×
○
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
○
×
○
×
×
×
○
×
×
×
×
×
×
○
×
×
×
○
×
×
×
×
×
×
×
×
○
×
×
×
×
×
×
×
・データの収集方法について
説明し、「センサス@スク
ール」を簡単に紹介する
3.2次元表に整理させる
性格
血液型
「どんな血液型の人が几帳面に多
几帳面だと思いますか?
○
×
合計
く○をしているのか調べるため
A型
6人
35人
41人
に、2つのことがらを表す表をつ
B型
2人
21人
23人
くりましょう」
O型
6人
18人
24人
AB 型
3人
9人
12人
合計
17人
83人
100人
「A 型で○をしている人は6
・人数を数えている発問をと
人しかいないよ」
りあげ、表に整理してみる
「O 型も6人だよ」
よう促す
「AB 型や B 型はほとんどいな
・2つのことがらを調べると
いよ」
きには、2次元表をかいた
「そもそも A 型の人多いな」
ことを振り返らせる
・2次元表の枠は提示する
・全員で度数を確認する
4.相対度数で考える必要性に気付
・縦軸に度数を表した棒グラ
かせる
フを提示する
「下の棒グラフから、
A 型の人は几帳
面だと言えそうですか?」
(人)
8
6
4
2
0
あなたは几帳面だと思いますか?
A型
B型
「A 型が6人で一番多いから
O型
AB型
・児童から出なければ、A 型と
言える」
O 型の母数が2倍近く異な
「O 型も6人で一番多いから
るのに几帳面だと思ってい
O 型も几帳面だと言えそう」
る人はどちらも6人で一番
「O 型は几帳面じゃないから
多いという点に着目させる
そう判断するのかおかしい」
ことで、相対度数で考える必
「A 型と O 型のもともとの人
要性に気付かせる
数が2倍近く違うから、A 型よ
4
りも O 型の方が几帳面だと思
っている人の割合は多い」
「表に、血液型ごとに几帳面だと思
合計
割合
35人
41人
15%
2人
21人
23人
9%
O型
6人
18人
24人
25%
AB 型
3人
9人
12人
25%
合計
17人
83人
100人
っている人の割合を求めて追加しま
しょう。
」
几帳面だと思いますか?
性格
血液型
○
×
A型
6人
B型
「O 型や AB 型の割合が多い」
・小数第1位で四捨五入させる
「A 型の割合は比較的尐ない」
5.主問題に対する答えを考えさせ
・縦軸に割合を表した棒グラ
る
フを提示する
「下の棒グラフから、
A 型の人は几帳
面だと言えそうですか?」
(%) あなたは几帳面だと思いますか?
28
26
24
22
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
A型
B型
O型
AB型
「O 型や AB 型の割合が多いの
で、A 型が几帳面だとは言えな
い」
「一般的には A 型の人は几帳面だと
「今回の 100 人は、たまたま O
いうイメージがありますが、(今回
型や AB 型の割合が多かったけ
認め、
「今回のグラフからは」
の)棒グラフからは A 型の人が几帳
ど、別の 100 人なら A 型の割
という条件つきで結論づける
面だとは言えそうにないですね」
合が多いかもしれない」
5
・標本抽出の考えが出されたら
「さきほどの棒グラフと比べると、
「見た目が全く変わっている」
・4で示した棒グラフと見比べ
どんなことがいえますか」
「今回は縦軸がパーセントにな
させ、比較量(○した人数)
っている」
の場合と割合の場合とでは、
「○と答えた人数の場合と割合の場
導きだされた結果やグラフの
合とでは、結果が全く変わっている
見た目も大きく変わっている
ことが分かりますね」
ことを確認させる
・他の性格についてのアンケー
ト結果を示した棒グラフも幾
つか紹介する(資料2を参照)
・性格と血液型との関係は医学
的にもまだ解明されていない
ことも紹介する
まとめ
・2つのことがらを表す表や棒グラフを使うことで、A 型の人が几帳面だとは言えそうにない
ことが分かった。
・特に、2つのことがらの関係を調べるときに、棒グラフも用いることができる。
・2つのことがらが関係ありそうかどうかを調べるときに、割合で考えることが大切である。
もともとの数で考えてしまうと、判断をまちがってしまうことがあるので注意が必要である。
資料1:本時で用いた標本は日本人全体の血液型と同じとみなしてよいか?
・日本人の血液型分布(n=301,959)
血液型
比率(%)
A
O
B
AB
38.2
30.5
21.9
9.4
(出典:『遺伝血清学』
(O.プロコプ、W.ゲーラ―著、石山昱夫訳,1979,p.30)
・本時で用いた無作為抽出標本(n=100)の血液型分布
血液型
A
O
B
AB
度数
41
23
24
12
血液型
A
O
B
AB
観測度数
41
23
24
12
期待度数
38.2
30.5
21.9
9.4
カイ2乗検定を行うと、
χ2=0.205235602+1.844262295+0.201369863+0.719148936=2.970016696
χ2<7.815 より有意水準5%で有意差がないといえる。
6
資料2:他の性格については、どんな結果になっているか?(同じ 100 人分の標本からの結果)
(%)
(%)
(%)
7
(%)
(%)
(%)
(%)
8