プロジェクトマネジメントの現場 日建設計

創造的なマネジメントが明るい展望を開く
安藤正雄[千葉大学教授]
村山利栄[ゴールドマン・サックス証券株式会社マネージング・ディレクター]に聞く
プロジェクトマネジメント
The expression "project management" may be unclear to
many. For some, it evokes images of strict cost-cutting or
time-saving measures. Others regard it merely as an additional
social cost necessary for ensuring accountability. Still others
might be unfamiliar with the way that project management
works but feel that it is required.
It has been 9 years since the Nikken Sekkei Group first began
providing project management under the corporate keyword
"+M." Nikken Sekkei focuses on project management that
realizes not only cost reduction and schedule control but
also contributes by creating additional value.
The following pages introduce our most recent endeavors
in project management.
この言葉から何を連想されますか ? 冷徹なコストカッター、タイ
ムキーパーでしょうか。説明責任を果たすための、新たな社会的
コストでしょうか。必要なのだろうけれど業務内容が良く分からな
い、という印象をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。
日建設計グループが「+M」というキーワードのもと、プロジェク
トマネジメントを標榜して 9 年が経ち、その成果が実績として集積
しつつあります。
「コストカット」
「スケジュール管理」ばかりでなく、
「付加価値創造」
にも貢献するプロジェクトマネジメントを志向してまいりました。
本号ではその最新の事例を紹介します。
プロジェクトマネジメントの進め方
How project management is conducted
ゴールの確立
Setting the goal
共有
Exchange
ロードマップの策定
Creating a "road map"
計画
Plan
プロジェクトガイド
Guiding the project
サポート
Commissioning
Support
プロジェクトマネジメントは様々なマネジメントの要素を的確に提供し、ともに歩むガイドとなります。
Project Management provides various forms of guidance for the client at every step of the way.
02
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
中分 毅[日建設計]
日本の建築界で、プロジェクトマネジメントは正しく理解され、
うまく機能しているのだろうか。不動産の証券化など建築を取り巻く状況が大きく変わりつつある中、
何故、プロジェクトマネジメントが必要か、千葉大学の安藤教授と、ゴールドマン・サックス証券株式会社
マネージング・ディレクターの村山氏に語っていただきました。
分かりにくい日本の建設業界
でしょうか。
(※)SPC:特別目的会社。資産の購入や不動産担保証券の発行などを行う会社。
発注者の顕在化へ
中分●村山さんは、証券アナリストとして建設業界や不動産業界を分析
されていて、建築の外部からクールな目で見ていらっしゃいます。一方、
中分●建設業の良い部分を引き出して、明るさの感じられるような世界
安藤先生は、今の日本の建築生産システムが制度疲労を起こしている
にしていくためにはどうすればよいでしょう。安藤先生は、建設産業の
のではないかと、改革を提案されており、内在的に批判されてきたお立
コアコンピテンス(※)は何かというご研究をなさっていますが、その観点
場です。まず、村山さんから見て、
「日本の建設産業は特異」とお感じ
から見て、どのあたりに処方箋があると思われますか。
のところをお聞かせください。
安藤●コアコンピテンスを持っていたとしても、それを誰に訴求すれば
村山●今、日本の株式市場では海外投資家の活動が活発で、非常に
いいのか分からないのが日本の問題です。というのは、日本ではサプ
重要な役割を果たしています。ですが建設産業は、海外投資家に理解
ライ側のプレゼンスばかりがあって、デマンドとサプライ間に良好な緊張
してもらうという点で、苦労したセクターです。建設産業は、同業他社
関係がないのです。例えば、発注者が自分の希望を受注者へ述べたこ
間の違いや成長予測の描き難さなど、すべての面で分かりづらく、分か
とはなかったんじゃないですか。全部受注側が汲みとって形にしていっ
らないから買いたくないという投資家が多かったですね。日本の建設
た。そうするとコアコンピテンスを持っていても、誰がそれを使うのか
産業は上場している会社が多いにもかかわらず、資本市場からほとんど
が見えないですね。
恩恵を受けていない産業だと思います。
現在の状況を打開するには発注者に期待されるところが大きいという
中分●では、どうして分かりにくくなるのかを安藤先生に。
のが、僕の一つの結論です。マネジメントで言うと、自分の利益とリス
安藤●そもそも、高度成長が大きな要因になって日本の建設産業の近
クに関わることだから、自分でお金を出してマネジャーを雇えばよい。
代化が進みました。当時は「箱をつくること」が最優先され、本来、売
ところが発注者は、リスクと利益は受注者が担保してくれているという
り手市場の建設のリスクは発注者側にあるのに、工期・工費・品質を守
暗黙の了解があるために、コストが表面に出てくるものに対して、結果
ることで、受注者側がそのリスクを引き取ってきたのです。そして、引
的にお金を出し惜しんでいることを自覚していない。
き取ったリスクを担保する仕組みとして生まれたもののひとつが「設計施
中分●依存関係の中で分かりにくい構図ができてしまったのですね。
工」です。これらの仕組みが日本の建設産業が達成した独特の高度化
その中でプロジェクトマネジメントは、分かりにくいものを分かりやすく
におおいに寄与しました。ただ、設計施工では、段階を追って別の予
しようというのが出発点ではないかと思います。
算が登場するので、積算が実効的な意味を持っていません。となると、
安藤●私もそう思います。発注者の姿が顕在化してくると、プロジェク
こうした受注サイドに偏ったイニシアティブが海外の目から見ると不透明
トマネジメントということを真剣に考えざるを得なくなるからです。
で、不信感をかきたてるのではないかと思います。
マネジメントという言葉は、日本では「管理」のイメージが強いのでは
一方で 21世紀に入ると状況は全く変わりました。供給のほうが明ら
ないでしょうか。20 世紀では「計画」と「実行」にフェーズを分けてしま
かに需要より多く、買い手市場では取引のリスクは常に受注者の側にあ
う思考があって、
「実行」に関わっているものが「管理」でした。しかし、
る状況です。また、クライアントの形態も多様になりました。しかし、
実際には競争力のある産業では、計画と実行の段階が不可分なものと
成長期に形成されたビジネスモデルを今なお取り続けているのが日本の
してとらえられています。そうすると「計画」自体が、持続的な一連の行
問題ではないかと感じています。
為としての「マネジメント」に包摂されてくる。
「プランニングからマネジメ
ただ、状況が変化しても「現場は人材」です。日本の現場監督や所
ントへ」というのが、20 世紀から 21 世紀に至るときの一つのキーワー
長は豊富な経験を持っているから、そこはまだ大丈夫なのではないか。
ドではないかと思います。
(※)コアコンピテンス:技術・営業上の本質的な強み。
むしろ、建設業のトップマネジメントの戦略が、見えにくいのではないか
と……。
代理
聞き手●
マネジメントの意義とは
村山●現場の力量でいえば、海外出張で各国のホテルやオフィスを回っ
中分●我々の業務では、マネジメントに最初に期待されるのはコスト
た経験から、日本の建築物は圧倒的にクオリティが高いと実感していま
カットとタイムキーパーです。現場に入ると、発注者は喜びますが、建
す。けれど、おっしゃられた通り、状況は 180 度変わっています。発注
設関係者からは必要悪的な見方をされるケースが多いようです。マネー
者が SPC(※)や外資系になったりして、建設に関しては玄人ではない関係
ジャーは冷徹で魅力的ではないと思われがちで、このままでいいのかと
者に対しての説明責任を果たす義務が必要になりました。個々の現場
非常に気になるところです。領域は違いますが、分析して投資して、投
クオリティが良くても、会社がつぶれてしまったらどうにもならないです
資先が上手くいくように一貫した流れでマネジメントをされているお立場
し、日本の建設業は、環境不適応という状況に陥っているのではない
での村山さんのマネジメント感はいかがでしょうか。
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
03
村山●マネジメントの定義が、日本と世界では、ずれているのではない
安藤●大学では今まで、計画技術や生産技術といったサプライ側の知
かと思います。マネジメントは、現場の執行とはある意味切り離れた存
識を与えているに過ぎなくて、発注者のための建築教育をしたことがあ
在です。なぜならここが癒着していると、フェアーな判断や方向性の決
りませんでした。デマンド側の技術や知識をきちんと扱わないと建築の
定ができないからです。会社に関わる様々な種類の人々の利益を最大
大学教育は成り立たないということを一部の人と話し始めたところです。
公約数として追求するのが望む姿だという前提に立ったとき、会社がど
中分●設計者は、本来はデマンドサイドにいる筈ですが、ともすれば
う舵をとって進んでいくかを決定するのがマネジメントです。
サプライサイドに傾きがちです。設計を始める前に、プロジェクトマネー
中分●日本では、何か方針が決まったら、方針どおり物事がうまくいく
ジャーなら当然行う「この建物は何年もたせよう」という議論すらしてこ
ように管理するのがマネジメントだと思われているけれど、それはマネ
なかったように思います。学校教育もそうですが、マネジメントを通じて、
ジメントとは言いませんよということですか。
デマンド側の視点をいかに取り込む回路をつくっていくか、それが重要
村山●マネジメントにその機能がないとは申しませんが、現場で進行を
だと思っています。村山さんは建築関連の仕事の中では、そういう配慮
管理するようなマネジメントと、会社全体のマネジメントというのはちょっ
をされているのですか。
と違うのではないでしょうか。
村山●お客さんが何を求めているかを理解するのがまず第一だと思いま
安藤●マネジメントの意味が大きいときは、ビジネスのやり方や生産シ
す。例えば今は発注者の多くが SPC で、SPC は、
「何年もつのか」「メ
ステムそのもの、あるいはプロダクトを今までと違う方向に持っていこう
ンテナンスコストは」「キャッシュフローはどうなるか」「IRR(※)はとれる
というときではないかと思いますね。建設プロジェクトの場合は、規模
のか」ということから入るわけです。しかし建物をつくる側の人たちは、
が非常に大きいし、一回性を持ったものなので、本質的にそういう性格
ビルを建てたことによる利益やキャッシュフローに関しては恐ろしいほ
を持っているのではないでしょうか。
ど認識が希薄ですね。だから建築を教える学校では、キャッシュフロー・
マネジメントはアクティブで戦略的なもの
が市民権を得つつあるというのは、まさに発注者側への説明という流
当たる何かの専門分野を深くすると横棒部も分かるゼネラリストになる、
れに応えたものではないかと思いますね。
(※)IRR:内部収益率
すが本来、マネージャーとは横棒を見るスペシャリストなのだと思います。
From left, Masao Ando, Rie Murayama, and Takeshi Nakawake
安藤正雄[あんどう・まさお]
千葉大学工学部デザイン工学科教授
1972年 東京大学卒業
2002年 工学博士(東京大学)
1976 年~千葉大学
2003年より現職
「インターフェイス・マトリクスによる
構工法計画の理論と手法」で 2004 年
日本建築学会賞(論文)
『モデュラーコーディネーション』
(共著、丸善、1976)、
『21世紀の集合住宅
——持続可能で豊かな社会をめざして』
(共著、ベターリビング、1998)
『コンバージョンが都市を再生する、
地域を変える』
( 共著、日刊建設通信新聞社 , 2004)、
『建築と街の価値・安全性を高める
ペンシルビルの連結』
( 共著、日本建築学会 2006) など著書多数
村山利栄[むらやま・りえ]
毅[なかわけ・たけし]
中分
ゴールドマン・サックス証券株式会社
投資銀行部門 マネージング・ディレクター
1988 年 サンフランシスコ州立大学卒業
1981年~ 84 年 安田信託銀行株式会社
1988 年~ 93年 CS ファースト・
ボストン証券会社東京支店
1993年~ ゴールドマン・サックス証券会社
東京支店、株式調査部、経営管理室長等を経て、
2005年より現職
2005年~ 株式会社フジタ社外取締役
国土交通省委員、
内閣府総合規制改革会議
委員等を歴任
株式会社日建設計常務執行役員
プロジェクト開発部門代表兼工務部門代表
日建設計マネジメントソリューションズ
株式会社代表取締役
1954 年生まれ
1979 年 株式会社日建設計入社、企画開発室長、
プロパティマネジメントコンサルタント室長、
バリューマネジメント部門代表、
工務部門代表を経て、
2007年より現職
2000 ~ 2001年 国土交通省コンストラクション
マネジメント方式活用方策研究会委員
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネージャーがさらにプラスの価値を提案していく
ゴールドマン・サックス社の中では、マネージャーはマネジメントのプ
中分●経済行為としての建築物を見たときに、少なくとも発注者たちが
ロフェッショナルだというはっきりした認知がありますか。
何を気にしているかということを理解した上で、経済的に引き合う期間
村山●トレーダー出身、アナリスト出身など多様なバックグラウンドがあ
に合わせた提案をすることは必要条件ですが、もう一歩先として、さら
るので、ある程度T字型だと思います。ですが、マネージャーの育成に
に発注者が気付かないプラスの価値を提案していくことが大切です。プ
は、トレーニングやメンタリングなどかなり緻密に行っています。特別な
ロジェクトマネージャーは創造的なところに踏み込んでいかないと、若
プログラム以外に、日常のコミュニケーションから意識的に育成する考
い人がその職業に就きたいと思わなくなるのではないかと気になります。
え方というかカルチャーは、弊社の場合は非常に強いかもしれないです
安藤●収益性の数字だけで動いているわけではないことを理解するの
ね。なぜかというと、いいマネージャーはその部下ひいてはチーム全体
が重要だと思います。
をより成長させ、利益に貢献するからです。
単一の敷地の中に新しく投資をしてつくられるものを評価するのは簡
安藤●アメリカのプロジェクトマネージャーの団体である PMI が出して
単ですが、銀座や日本橋など既存市街地での開発は、単体の収益性
いる『PM Body of Knowledge(知識体系)』という本で、マネジメント
だけではない価値が関係します。学生や若い人は、今あるものをリソー
エリア別にどういう知識や手法があるかを整理していますが、その知識
スとしてどうすればよいかを考え始めていると思います。そのときに必
はあまり魅力的に見えていないのですね。マネジメントはもうちょっとア
要な知識は建築からはるかにはみ出て、いろいろな領域にある。人も
クティブで戦略的なものではないかと思います。
分野でも広範なネットワークの中での協働となってくると、分野そのもの
中分●教科書にはクリティカルパスを見極めて、そこに遅れが生じない
をリデザインしていかなければいけないと思います。
よう管理しなさいと書いてあります。しかし実際はそうではなくて、突
村山●不動産とか建設は内需セクターと言われていて、業界内の共通言
発事象が生じるとクリティカルパスは流動的になり、その状態でどう解
語ばかりで説明責任がそんなにありませんでした。けれど 1998 年ぐら
決するかができなくてはなりません。
いから証券化が始まって関係者が増えてきて、プロジェクトマネージャー
村山●難しい状況の中で収益を上げるために、社員それぞれにモチベー
に説明を求める世の中になってきました。そういう意味では、日本の建
ションを持たせるとか、パフォーマンスに対してフィードバックするとか、
設業界は初めて内の世界から外の世界への舞台に乗ったところなので、
最終的にはどうやって会社の価値を最大化するかに責任をもつことがマ
これからが面白くなるのではないかと思っています。
ネジメントであって、細かく工程表を書くということではないですね。
中分●今日のお話だとキーワードは二つで、ひとつはサプライサイドか
デマンド側の視点を取り込むプロジェクトマネジメント
04
プロジェクトマネジメントとコンストラクションマネジメントという言葉
中分●私が若い頃には
「T字型人間論」というのがあって、Tの縦棒に
一芸に秀でてこそ有能なマネージャーになるという論がありました。で
左から、安藤正雄氏、村山利栄氏、中分毅 ステートメントのつくり方と見方は教えてもらいたいと思います。
らデマンドサイドへ。もう一つは、狭い世界で通じる言語で話していて
はだめで、共感の得られる話し方を獲得していかなければいけないと
中分●今はどうアプローチしていったらいいのか、模索している時期だ
いうこと。逆にそれができたら、元々この世界はいいリソースがあるの
と思います。学校ではどうでしょう。
だから、明るい未来の展望があると思います。今が頑張り時ですね。
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
05
New Horizons in Creative Management
Masao Ando [Professor, University of Chiba]
Rie Murayama [Managing Director, Goldman Sachs Japan Co., Ltd.]
Moderator: Takeshi
Nakawake [Nikken Sekkei]
As Japan’s construction industry changes amid increasing securitization of real estate
and other factors, is project management being understood and applied correctly?
And why is project management important? We asked Rie Murayama and Masao Ando
to explore these and related issues.
The impenetrable Japanese construction industry
Nakawake (N): Ms. Murayama, as a security analyst, has been
studying the construction and real estate industries as an outside
observer. On the other hand, Professor Ando has been working from
within, pointing out that the Japanese construction production process system is encountering systematic fatigue and proposing reform.
First, Ms. Murayama—as an analyst, what do you think is unique
about the Japanese construction world?
Murayama (M): Today, overseas investors are quite active in the
Japanese securities market and are playing an important role. But
the construction industry is a sector that many foreign investors have
found hard to understand. The difference between the companies in
the industry and their growth forecasts are difficult to comprehend.
This lack of clarity makes many investors shy away from construction stocks. Although numerous Japanese construction companies
are listed, the industry is not receiving much benefit from the capital
markets.
N: Why is it so difficult to understand, Prof. Ando?
Ando (A): In the past when economic growth was strong, the Japanese construction industry went through a period of rapid modernization. During that time, even though demand surpassed supply, the
situation entailed that construction companies bear risks for projects,
prompting them to want to be in charge of both design and construction. This system contributed to the industry’s unique advancement.
However, it resulted in the presentation of different estimates at different stages, which may have been a source of uncertainty for overseas clients. Now, in the 21st century, with supply clearly surpassing
demand, risks are always on the side of construction companies, and
clients have diversified. I think the problem is that the industry is
still applying the same business model that was used during the period of high economic growth.
But I must point out that human resources constitute a bright spot in
the industry. There are many experienced site foremen and directors
in Japan, so I believe there is no problem from that perspective. In
contrast, I think that the strategies of the top management of Japanese construction companies are not always so clear.
M: I agree with you that experienced workers are abundant. But, as
you mentioned, times have changed completely. Accountability to
06
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
clients has become obligatory and even if the quality of buildings is
superb, it won’t amount to anything if the company goes bankrupt. I
think that Japan’s construction industry is experiencing situational
maladjustment.
Involving clients, from planning to management
N: Prof. Ando, based on your expertise regarding core competencies
in the industry, what can be done to bring out the best in Japanese
construction and lead it to higher ground?
A: Even if the industry possesses a variety of core competencies, the
benefits are often unclear to clients. However, in order to resolve this
situation, clients should become more involved in key aspects of the
project, thus developing understanding of various issues that may
initially be unclear. They should realize that they are often reluctant
to bear necessary costs that cover risks and help lead to profits.
N: Shouldn’t it be one of the prime tasks of project management to
try to simplify such matters?
A: Yes, I agree. When the presences of clients become evident,
project management receives serious attention. And I also think that
the conception of the meaning of the term “management” needs to
change. In the 20th century, there was a tendency to separate “planning” and “execution” as two different phases, with “management”
being more related to “execution.” But in competitive industries, the
“plan” itself becomes a continuing activity and is included in the
management process. I believe that this represents a central issue in
understanding the changeover to the new reality of the 21st century.
What is the significance of management?
N: Project managers are expected to reduce time and expenses,
which often delights clients—while those in construction may regard managers as a necessary evil. I am rather concerned about the
perception of management and the way in which it is regarded. Ms.
Murayama, what are your thoughts on the role of management?
M: The definition of “management” here may be slightly different
compared to that in other parts of the world. Management decides
how to steer the company to benefit its employees and all others involved. Therefore, it is often distanced from work execution at the site.
N: In Japan, management is often regarded as a process to be implemented to help control things and to follow a predetermined strategy.
Are you saying that this is not the true meaning of management?
M: I am not saying that this is not a part of management. However,
it must be remembered that management at a work site and management in a boardroom are often two different things.
A: I think that an understanding of the wider meanings of management allows businesses, production systems, and products to advance
in new directions. This is especially apparent in construction projects, which are one-time endeavors that are massive in scale.
Management is both strategic and active
N: When I was young, there was a theory that was in vogue about
good managers. The idea was that people with deep knowledge as
specialists in particular areas would come to acquire broad general
knowledge about other fields that would allow them to be good managers. Ms. Murayama, how does Goldman Sachs treat the balance
between generalization and specialization in management?
M: In our company, there are many specialists and therefore I think
that to some extent we nurture such managers and great care is put
on mentoring and training them. The reason for this is that employees
and teams that work with great managers show substantial progress
and yield profits.
A: A book titled “A Guide to the Project Management Body of
Knowledge” classifies methods and knowledge based on management
area, but such schemes do not have much appeal, and I think that
management is something more active and strategic.
N: In reality, unexpected occurrences happen, changing critical
paths and calling for the ability to solve problems as they emerge.
M: Management must take responsibility for generating profits even
in difficult situations, motivating employees, and maximizing value.
The role of management is not simply to write detailed operations
guidelines.
Project management to bring clients into the fold
N: Given the overall state of flux, what is the situation like in the
academic world?
A: Basically, universities have been providing the knowledge necessary for the construction side. However, they haven’t been offering
architectural education that takes the viewpoint of clients into proper
account.
N: Architects should be on the client side but have tended to tilt
towards the construction side. In the past, necessary discussions with
the clients may have been curtailed. Through school education and
project management, it is vital to create channels that bring the views
of clients into the fold. Ms. Murayama, what are your thoughts?
M: The important thing is to first understand the client’s needs.
These days, many clients are SPCs (special purpose companies).
Coming from a financial background they are usually concerned with
issues such as cash flow, IRR (internal rate of return), maintenance
costs, and how long a building will last. But the people who are constructing the buildings are not concerned about cash flow. Since this
is the case, I wish that architecture schools would educate students
about making and understanding cash flow statements. I think that
the terms “project management” and “construction management” are
increasingly heard these days because they are ways to answer client
needs for accountability.
Project management to propose added value
N: When looking at architecture from a financial perspective, at the
very least the construction side should be aware of what clients require and make proposals meeting schedule and financial needs. To
take it one step further, they should be able to make proposals that
lead to added value that the client is not aware of. Project managers
need to delve deeper into creative areas, which will make project
management more attractive as a profession.
A: It is easy to evaluate a new investment built on an isolated piece
of land, but when it comes to development in already established
urban areas like Ginza or Nihonbashi, other factors (such as the
value of the surrounding area) come into play. The knowledge that
is needed often comes from various sources beyond the bounds of
architecture as a specific field. When people and various divisions
collaborate on a large scale, such fields must redesign themselves.
M: Real estate and construction were traditionally considered to be
areas related to domestic demand. Since there were no language barriers in the past, accountability was not an issue most of the time. But
from around 1998, with the beginning of the trend of securitization
of real estate, the scope of the parties with interests in the industry
expanded. This triggered the need for project managers to provide
communication and satisfactory explanations. I think this was the
beginning of the global expansion of the Japanese construction industry, and it marked the start of an intriguing era.
N: I believe that there are two key concepts that have emerged from
today’s discussion. One is “the shift of focus from the construction
side to the client side.” The other is that “it is important to stop talking in a limited language and to establish a way of communication
that touches a cord with clients.” The industry is full of talented human resources and advanced capabilities. It is my firm belief that if
we are able to achieve the above key points, the industry has a bright
future ahead of it. I think now is the time to push to realize these goals.
Masao Ando
Rie Murayama
Takeshi Nakawake
Prof. Ando graduated from the University of
Tokyo in 1972 and received a doctorate in
engineering in 2002. He has been teaching at
the University of Chiba since 1976 and has held
his current position of Professor of the Faculty
of Engineering at the University of Chiba since
2003. He received the 2004 Architectural Institute of Japan Award for his thesis "The Method
and Theory of Structural Engineering Planning
Using Interface Matrices." He has authored
many publications on architecture, such as
"Modular Coordination" (co-author, published
by Maruzen,1976), "Housing Complexes of the
21st century—Creation of an Affluent Society
for the Future" (co-author, published by Better
Living, 1998), "Conversion Revives Cities and
Communities" (co-author, published by Nikkan
Kensetsutsushin Shimbun Corporation), and
"The Combination of Slender Buildings which
Increases the Value and Safety of Architecture
and the City" (co-author, published by Japan
Architectural Institute of Japan 2006).
Ms. Murayama began her career at Yasuda
Trust and Banking Company Ltd. (1981-84). After graduating from San Francisco State University in 1988, she joined Credit Suisse First Boston (Japan) Ltd. and worked at the Tokyo Office
(1988-1993). In 1993 she joined the Security
Analyst Department at the Tokyo branch of
Goldman Sachs (Japan) Ltd., and later became
the General Manager of the Management
Control Department. She has held her current
position as Managing Director of the Investment Banking Department at Goldman Sachs
(Japan) Ltd. since 2005. She has also been an
external board member of Fujita Corporation
since 2005, a committee member for the Ministry of Land, Infrastructure and Transportation,
and a member of the Cabinet Office’s Council
for Regulatory Reform.
Born in 1954, Mr. Nakawake joined NIKKEN
SEKKEI LTD. in 1979. He has held the positions
of General Manager of Planning Development,
General Manager of the Property Management Consultant Department, Head of the
Value Management Department, and Head of
the Engineering Department. He is currently
Managing Director and Operating Officer, Head
of the Project Development Department, and
Head of the Engineering Department. He is also
Representative Director of Nikkei Sekkei Management Solutions Inc. From 2000 to 2001, he
was a member of a committee of the Ministry
of Land, Infrastructure and Transportation that
studied ways to apply construction management methods.
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
07
特徴的マネジメント事例紹介
マネジメントが効果を上げる
Effective Management for Effective Results
Nikken Sekkei’s distinctive project management spectrum
社会状況、市場経済の変化とともに建設プロジェクトは多様化の一途をたどっています。そ
れに対して、従来通りの建設プロセスでは不都合・不合理が生じてしまう場合があります。そ
こで近年では、プロジェクトを円滑・高品質・合理的に達成するためにマネジメントの導入が
求められ、マネジメントの領域は拡がりつつあります。
ここでは、幅広く奥の深いマネジメント領域の中から特徴的な事例を 5 つ紹介します。
03
ブランド店舗の多数同時オープン
レクサス店舗 開発・設計
▶ P. 22
Simultaneous opening of multiple shop fronts
Toyota Lexus Project
商品ブランドを最大限に生かす
独創的な設計マネジメント
As social conditions and the market economy undergo far-reaching
transformations, the nature of construction projects is changing as well.
Implementing traditional construction processes amidst this emerging reality may
cause inconveniences and inefficiencies. Now more than ever, effective project
management is necessary for the smooth and timely achievement of high-quality
results, and the areas in which management can be applied are expanding.
Presented here are examples that serve to highlight the range and variety of
Nikken Sekkei’s work in the field of project management.
01
文化財修復
東本願寺 真宗本廟 御影堂
▶ P.10
Restoration of cultural asset
Extracting maximum performance for
buildings that are branding tools
04
Goeido, Higashi Honganji Temple
02
Cost
Schedule
Communication
海外不動産投資コンサルタント
China Central Place
▶ P. 28
Consultation for overseas real estate investment
China Central Place
文化財修復工事に
現代技術の新風を吹き込む
過熱する中国不動産市場、
品質を確保した不動産投資事例
Prying open the black box of restoration and
allowing in the sunlight of modern engineering
Creating world-class quality and avoiding risk
in the growing Chinese real estate market
Quality
Cost
Quality
Cost
Schedule
Communication
Schedule
Communication
大規模再開発
東京ミッドタウン
▶ P.16
Large-scale urban redevelopment
Tokyo Midtown
08
Quality
05
タウンエネルギーマネジメント
晴海アイランド
トリトンスクエア
▶ P. 32
Community-wide energy management
Harumi Island Triton Square
新たな都市を生み出す、
大規模プロジェクトの成功のために
運用時の環境負荷削減
マネジメントでランニングコストを下げる
Leading a large scale project
to success with project management
Reducing environmental burdens and
running costs at every stage with skillful
project management
Quality
Cost
Quality
Cost
Schedule
Communication
Schedule
Communication
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
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文化財修復工事プロセスをオープンにするマネジメント
文化財修復工事プロセスをオープンにするマネジメント
東本願寺 真宗本廟 御影堂
The Restoration of Higashi Honganji Temple:
Management for the restoration of a cultural asset
プロジェクトタイプ 文化財修復
キーワード 伝統技術の保持と先端技術の導入 分離発注 中立性の維持 最高議決機関・専門委員会の設置 試作・検証実験
真宗大谷派(東本願寺)本山の多くの伽藍の中でも、その象徴といえる御
Goeido (''Founder’s Hall'') is one of the world's largest wooden
structures and is among the most symbolically important temples
within the Shinshu Otani-ha Higashi Honganji Temple complex.
Ravaged by fire four times since its original construction in 1602,
the current structure was rebuilt in 1895 by Heizaemon Ito. An
architect as well as a carpenter, he also took on the role of project
manager. To preserve this outstanding achievement for the future,
the restoration of Goeido is currently underway and is scheduled to
be completed in 2008.
影堂 ( ごえいどう ) の修復が行われています。現在の建物は、1602年にこの
地に境内を定めて以来4度の焼失を経て、1895年(明治28年)に再建され
た世界最大級の木造建造物です。当時の建設責任者であった棟梁・伊藤平
左衛門は設計者であると同時に施工者であり、プロジェクト運営の全体指
揮を務める当時のプロジェクトマネジャーでもありました。この優れた
先達の偉業を、遠い未来に向けて健全に残していくために 2008年末の竣
工を目指して修復を行っています。 Prying open the black box of restoration
修復ブラックボックスの扉を開ける
The Goeido restoration project probably represents the first time
that a comprehensive design company such as Nikken Sekkei (rather
than a public office or a specialized design administration association) has been appointed to conduct the restoration of a priceless
Japanese cultural asset. The project involves an array of complex
issues and uncertainties where today’s advanced technology can
be utilized. The endeavor called for a management expert with the
ability to take into account both the changes in social environment
and the project’s overall progress while at the same time promoting
it in a way that satisfies the client. In addition, because this particular project has been financed by donations from over 1.3 million households, exceptionally high levels of quality, efficiency, and
transparency would be required at all stages.
Broadly speaking, the restoration project comprises two basic types
of work. The first involves highly specialized efforts relating to areas
such as roof tiles, woodwork, metal garnish, and Japanese lacquer.
Such processes can only be carried out by experts who are in the
same league as those designated as ''living national treasures.'' The
other type of work relates to improvements and repairs that make
use of advanced contemporary technologies, such as those for
structural and seismic reinforcement and equipment repairs. Nikken
Sekkei was required to manage both aspects of the undertaking in
an adequate and efficient manner, all the while steadily maintaining a tight schedule and keeping expenses at reasonable levels.
従来、文化財の修復は官公庁や特定の文化財を専門とする設計監理団体に
よって実施されてきました。日建設計のような総合設計事務所がこのよ
うな修復を行うことはおそらく初めてのケースです。文化財の修復には
種々の未解決部分が残されており、現代の先端技術を必要とする余地が極
めて多くあります。社会環境の変化やプロジェクトの全体像を見据えなが
ら、同時に発注者が納得できる事業とするには、プロジェクト全体を的確
に遂行するための中立的な舵取り役、つまりマネジメントの専門家が必要
となります。
本修復工事は全国約130万戸に及ぶ御門徒の浄財によって賄われていま
す。このため、工事の質の確保とともに、高い合理性や透明性・公開性が
求められました。また、ひとことで修復工事といっても、屋根瓦工事・木
工事・錺金物工事・漆工事など、人間国宝級の専門家が関わる文化財的保
存修理と、構造補強・耐震補強・設備改修など最新技術を取り入れた改善
修理が混在しています。その中で、伝統技術の保持・先端技術の導入・ス
ケジュール管理・コストのコントロールなどを適切かつ合理的に整理しマ
ネジメントするのが、日建設計に求められる役割です。
重機のない時代に数トンにも及ぶ木材を人力で組み上げた軸組構造。 Massive wooden beams
真宗本廟両堂御修復・御影堂
建築主:宗教法人 真宗大谷派
建設地:京都市下京区
建物種別:宗教施設
構造:木造
階数:地上 1 階
延べ面積 :2,891.98 ㎡
竣工: 2009 年 2 月
(御影堂は 2008 年12月)
Restoration of Goeido (Founder's Hall),
Higashi Honganji Temple
Client: Shinshu Otani-ha
Location: Kyoto, Japan
Major functions: Religious structure
Structure: W
Number of floors: +1
Total floor area: 2,891.98m
Completion: Feb. 2009
(Goeido-Dec.2008)
2
and columns were assembled in an era with no heavy construction equipment.
執筆者プロフィール Authors
降井繁蔵[ふるい・しげぞう]
二宮 彰[にのみや・あきら]
1942年12月生まれ
1968 年 4月入社
1952年5月生まれ
1989 年 4月入社
日建 設 計顧問、日建 設 計コ
ンストラクション・マネジメ
ント副会長
日建設計バリューマネジメン
ト部門 東本願寺御修復設計
監理室 室長
SHIGEZO FURUI
Born: Dec.1942
Joined: Apr. 1968
Adviser, NIKKEN SEKKEI
Vice Chairman, Nikken
Sekkei Construction
Management
AKIRA NINOMIYA
Born: May 1952
Joined: Apr. 1989
Design Principal, Higashi
Honganji Restoration
Project, Design and
Construction Supervision
Team, NIKKEN SEKKEI
鉄骨を柱の中に入れて、強化する。鉄骨は将来の解体
修理の際、取り外し、本来の姿に復旧する方針である。
Pillars have been reinforced by steel.
工事開始前の御影堂東側正面全景。
広角レンズでも全体を収めることが難しい。
East side of Goeido prior to restoration.
The massive structure is difficult to capture,
even with the use of a wide-angle lens.
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FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
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文化財修復工事プロセスをオープンにするマネジメント
東本願寺 真宗本廟 御影堂
The Restoration of Higashi Honganji Temple:
Management for the restoration of a cultural asset
国内初、文化財修復での「コストオン分離発注方式 (※)」で大幅コストダウン
A new method realizes vast cost reductions
真宗本廟両堂御修復・御影堂工事 業務体制表
今回の修復では、学識経験者や多くの専門家の助言を得ながら仕様を決
For this project, specifications have been determined with advice
obtained from many academic experts and professionals. For each
specialized type of construction work, an optimal constructor was
selected at a rational cost with client consent. This was the first
time for such a "cost-on split ordering" method to be applied in
the areas of specialized type of construction work in the restoration
of a cultural asset in Japan.
Advanced technology, construction techniques, and worksite administration were the focus when ordering the construction of a
temporary structure to shield the restoration site from wind and
rain. A basic design plan was first created based on the client’s
requests. It was then presented to multiple general contractors,
who were asked to submit proposals detailing the construction
techniques they would use to realize their designs. The proposals
were reviewed and the pool of contractors was narrowed down
by a panel of experts, with the final choice being made in light of
price competitiveness. At each stage of the selection process, reports to and approval from the client’s restoration committee were
necessary. The entire selection process was disclosed after the company had been chosen. Nikken Sekkei appointed the same general
contractor to coordinate maintenance and specialized construction
work for the temporary structure and to oversee safety-related
issues such as accident insurance. All of the various expenses involved were separately calculated and disbursed, resulting in a clear
and highly detailed picture of the related finances. This, in turn,
made cost reduction and rationalization much easier.
Sharing information about the management processes with the client helped them to gain full understanding of and familiarization
with all angles of this intricate project. The method also allowed
each operation to be realized at sufficiently lower cost than had
been projected. Furthermore, it helped build solid relationships
with the client, thus contributing to smooth forward progress
throughout the project.
Work organization chart for the Higashi Honganji Temple (Goeido) restoration project
定し、各専門工事に最適な施工者を合理的な工事費とともに選定し、そ
の都度、宗派の承認を得ながら発注を行っています。このように専門性
が高い工事を段階的に発注する「コストオン分離発注方式」を、文化財
修理の分野においては我国で初めて採用しています。一例をあげれば、
瓦葺き替え工事では、わが国には 3 名しかいない、文部科学省が選定
した文化財選定保存技術保持者により編成された共同企業体に直接発注
し、合理的な経費で工事を進めることが実現しています。
修復時に風雨から修復現場を守るために設置した仮設素屋根は、最新仮
設技術の導入と仮設工事・現場管理技術を重視した発注を行いました。
まず、宗派の意向を踏まえた基本設計をまとめ、複数のゼネコンに対し
て仮設工法などの提案を求めたプロポーザルを実施。各提案内容を学識
経験者の審査により絞込み、価格競争を経てゼネコンを特定しました。
これらの過程の節目ごとに宗派内の御修復委員会に報告し承認を受け、
最終的には選定経緯をすべて公開しています。さらに素屋根の保守・専
門工事間の調整助言・損害保険を含む、安全管理などを求めた統轄管理
業務を設定し、素屋根工事施工者に選定されたゼネコンに対して一定の
経費を見込んで別途に発注しました。このことで通常では表面化しない
共通仮設や諸経費の詳しい内容にも踏み込み、コストを下げることがで
きました。
修復内容の一部始終を発注者と共有することで、発注者にとっては工事
の具体的な内容が理解し易く、身近に感じていただけると思います。当
初に予定されていた全体工事予算も個別に発注された各工事においてこ
れを下回る傾向にあり、合理性を高めることができています。
これらを通じて築いた発注者との信頼関係は、プロジェクトをスムーズ
に進める上でも重要な要素となりました。
(※)コストオン分離発注方式:一般的には、分離発注と呼ばれる方式である。
真宗大谷派(東本願寺)
Shinshu Otani-ha (Higashi Honganji Temple)
発注担当者
最高議決機関 Supreme decision-making body
Ordering party
宗会(宗議会・参議会) ※主に予算執行の議決
宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌本部事務室
(真宗本廟両堂等御修復事務所)
設計監理
承認機関 Authorizing body
Design and supervision
真宗本廟両堂等御修復委員会 ※修復内容・業者選択・請負金額決定
日建設計
Nikken Sekkei
技術全般
文化財・建築史
Cultural asset / architectural history
文化財統括
文化財監修
General manager
for cultural assets
Cultural asset supervisors
文化財技術指導者、文化財報告監修
伊藤延男
文化財調査指導、文化財報告指導
重要文化財建造物修復主任技術者
文化財建造物保存
技術協会元理事長
伊原恵司
鈴木嘉吉
文化財建造物保存
技術協会前常務理事
奈良文化財研究所
元所長
総括
降井繁蔵
室長
二宮 彰
建築担当
滝川伸一
監理担当・建築
小林一郎
監理担当・設備
村上義弘
Structural and seismic
耐震調査委員会
技術専門員
Committee for
seismic review
Engineering specialist
主任専門員
伊原恵司
(文化財建造物保存技術協会前常務理事)
技術専門員
伊藤延男
(文化財建造物保存技術協会元理事長)
事務担当
津田裕史
日建設計嘱託
Working on contract with Nikken Sekkei
構造担当
田代靖彦
北川高行
小松慎二
機械設備担当
三浦満雄
電気設備担当
小倉良友
水谷朋子
技術サポート(伝統建築物)
(奈良文化財研究所元所長)
技術専門員
(京都大学・名誉教授)
技術専門員
(京都大学防災研究所・教授)
技術専門員
Engineering support (traditional buildings)
(京都大学・名誉教授)
木工事技術監修
Overall supervision for
traditional buildings
Wood construction
engineering supervision
(現場調査・木造監理・文化財報告書)
(有)建築文化研究所
取締役 八木清勝
大阪オフィス
技術専門員
建築担当
竹原秀樹
文化財建築物木工事主任技術者
構造担当
多賀謙蔵
元棟梁 滝 正治
設備担当
大高一博
音響設備担当
中川浩一
コスト担当
清 孝好
植栽・造園担当
森山 明
監理担当
山口 猛
(日建設計嘱託技師)
(日建設計嘱託技師)
(有)中村設計工房
中村靖男
(日建設計嘱託技師)
委員長
鈴木祥之
顧問
金 潔
顧問
荒木正亘
顧問
西澤政男
委員
鎌田輝男
委員
斎藤幸雄
委員
秦 正徳
委員
小松幸平
委員
林 康裕
委員
棚橋秀光
(京都大学防災研究所・教授)
(京都大学・名誉教授)
(全京都建築協同組合前理事長、アラキ工務店会長)
技術専門員
伝統建築全般監修
構造・耐震
Overall engineering
東本願寺設計監理室
鈴木嘉吉
(日本伝統建築技術保存会会長、西澤工務店社長)
金 潔
(福山大学工学部建築学科・教授)
鈴木祥之
(富山大学芸術文化学部・教授)
川上 貢
(京都大学生存圏研究所・教授)
近角真一
(集工舎建築都市デザイン研究所取締役)
技術専門員
永井規男
技術専門員
(京都大学大学院工学研究科建築学専攻・教授)
(元京都府立大学人間環境学部・環境デザイン学科・教授)
(元関西大学・教授/建築史専攻・古材文化の会)
(京都工芸繊維大学・名誉教授)
(広島国際大学社会環境科学部建築創造学科・教授)
委員
後藤正美
委員
長谷川益夫
委員
下川雄一
委員
奥田辰雄
(金沢工業大学環境・建築学部建築学科・准教授)
(富山県林業技術センター・副主幹研究員)
中村 武
(金沢工業大学環境・建築学部・建築系・講師)
(木四郎建築設計室・主宰)
体制・発注区分 Organization and ordering scheme
真宗大谷派(東本願寺)
Shinshu Otani-ha (Higashi Honganji Temple)
専門工事
Specialized construction
文化財修理主任技術者
技術専門員(複数)
日建設計(CMr)
Nikken Sekkei (CMr)
統括管理業務
Management control duties
Engineers specialized in
cultural asset restoration
契約関係
Contractual relationship
日建設計(設計監理)
工事管理(設計・監理)
Construction control
Nikken Sekkei (Design supervision)
※監理業務が主体。設計業務は仮設素屋根工事
(基本設計)
、構造補強工事・耐震補強工事・設備工事
(基本・実施設計)各専門工事(実施設計見直し)
仮
設
素
屋
根
工
事
屋
根
工
事
木
工
事
土
居
葦
工
事
構
造
補
強
工
事
耐
震
補
強
工
事
石
工
事
技術指導
Technical guidance
錺
金
物
工
事
左
官
工
事
建
具
工
事
塗
装
工
事
内
装
表
具
工
事
内
装
畳
工
事
金
属
工
事
)
防
鳩
・
樋
清
掃
工
事
統括管理
Management control
防
蟻
防
腐
工
事
厨
子
修
復
工
事
設
備
工
事
(
統
括
管
理
業
務
(
電
気
・
消
火
仮
設
解
体
工
事
)
︵
共
通
仮
設
・
統
括
安
全
管
理
︶
御影堂耐震調査研究委員会
Goeido seismic research
study committe
宗派承認機関に工事の進捗・発注の状況等を説明し、了承を得ながら、慎重に事業を推進。
The client was briefed at various intervals and approval was obtained for individual construction tasks.
全工事を約20 の専門工事に分け、その特殊性に応じ、きめ細かく発注方法を選定。すべての発注手順、選定経過は宗派へ報告され、了承された後、各工事を発注・契約する。
The entire construction project was divided into approximately 20 detailed and individually organized processes. The client was given reports at every
stage, and actual orders were given only after client approval had been confirmed.
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FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
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文化財修復工事プロセスをオープンにするマネジメント
東本願寺 真宗本廟 御影堂
The Restoration of Higashi Honganji Temple:
Management for the restoration of a cultural asset
伝統技術と現代技術の融合
Tomorrow’s engineering meets traditional craftsmanship
日建設計の持つ総合力を生かし、現代技術を取り入れた様々な提案も行っ
Coupled with its sophisticated engineering capabilities, the storehouse of Nikken Sekkei’s experience allows it to present new construction ideas. For example, in most cases, prototypes of roof tiles
are made after construction has been officially ordered. For this
project, however, production of prototypes began a year earlier.
The original tiles were carefully examined and analyzed with the
goal of improving quality and installation methods while preserving
unique characteristics. During temporary structure construction,
studies for tiles employed electronic microscopy, x-ray images, confirmation tests for structural reinforcement, and the production of
multiple models. The results were used to carefully plan schedules,
and timesaving methods (such as computerized tile inscription of
donor names) were employed for added efficiency.
Goeido, which is over 110 years old, calls for especially adroit use
of technology in special fire prevention and seismic systems. After
reconstruction is completed, the building should be able to withstand even the shock of a massive earthquake as damaging as the
one that devastated Kobe in 1995. Nikken Sekkei has cooperated
closely with the Disaster Prevention Research Institute of Kyoto University, and the outcomes of this group’s studies have been utilized
in the design. The result has been a new form of earthquake resistance technology that employs the natural flexibility of wood. High
hopes abound that it will also be possible to apply this technology
in the future to regular wood-frame buildings.
Shigezo Furui, Akira Ninomiya
ています。通常は工事発注後に行われる瓦試作を、発注の1年前から行い、
文化財的価値の検証や品質の向上・施工性の改善などに反映させました。
約1年間の素屋根建設期間は、電子顕微鏡やX線を使った瓦の調査・構造
補強のための確認実験・各種試作品の制作などに有効に活用し、その結果
をもとに工事工程に無理な偏りが生じないように工夫を加えました。ま
た、寄進者の芳名を瓦に記載すためにコンピューターを利用し、専用の印
刷機械を導入して短期間に行い全体の工期に影響を与えないシステムを
印刷・製版機器メーカーと共同開発しました。
約110年経過した建物のため、老朽化した防災設備の強化・更新に加え、
阪神・淡路大震災クラスの地震が起きても倒壊しないような耐震補強を
行うなど、現在の最先端技術も多く取り入れています。
修復の大きな柱である耐震補強については、先行して宗派から委託研究を
受けていた京都大学防災研究所の研究グループと密接な連携をとり、実験
で得られた結果をスムーズに設計に盛り込むことでその成果を修復に生
かしています。木造のもつ変形性能をうまく生かしたこの技術は、伝統木
造建造物の補強にとどまらず、一般の木造建物にも将来応用できるものと
して期待されています。
降井繁蔵・二宮 彰
Project Type Restoration of cultural asset
Keywords
Retaining traditional techniques and implementing advanced engineering, Split ordering, Maintaining neutrality,
Establishing a supreme decision-making body and expert panel, Creating prototypes and conducting verification experiments
真宗本廟両堂等御修復・御影堂工事 全体実施工程概要
Higashi Honganji Temple, Goeido restoration project: Overall construction schedule
竣工
Completion
工事名称
Construction process
A 素屋根工事
2003
2004
設計・発注
工場制作
2005
2006
2007
2008
移設
鉄骨建方
B 石工事
C
屋根改修工事
C' 瓦印刷
設計・発注
企画・構想
設計・発注
瓦降し・金型製作
受付
機器開発
G 木工事
設計・発注
調査・研究
特定確認
I
外部錺金物工事
内陣・外陣美掃工事
撤去・加工
葺上げ
設計・発注
実験・協議・加工・取付
仕上・造作補修
設計・発注
清掃・取付
設計・発注
検討委員会
搬出・工場修理・搬入取付
美掃・補修
設計・発注
設計・発注
設計・発注
M 彩色工事
設計・発注
N 床漆・小口塗工事
設計・発注
P 畳工事
T 境内設備整備工事
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
Data from this shaking table test (conducted by the
Disaster Prevention Research Institute of Kyoto University) was applied to seismic design.
現場修復
小口塗・下地調整
床修復
取外し・裏張り・補修取付け
設計・発注
Q 清掃・防腐防蟻工事
S 機械(消火)設備工事
京都大学防災研究所を中心とした耐震調査研究委員会によ
る人工的に地震を再現する振動台での実験。得られたデー
タは耐震設計に応用される。
中塗・仕上塗
建具取外し・修復
設計・発注
O 表具工事
R 電気設備工事
工事段階
Construction
建具工事
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Study and review
加工・取付
K 左官工事
L
調査・研究
企画から発注まで
葺上げ
小屋・軒反り修正・補修
H 金属工事
J
裾直し
印刷
準備・協議・検討
実験・計画
設計・発注
焼成
試作
設計・発注
E 構造補強工事
耐震補強工事
No artificial daytime illumination is necessary beneath the temporary structure, which allows for abundant natural lighting.
Planning to order
試作・仕様検討
D 土居葦工事
F
完成した明るい素屋根内部。昼間はほとんど人工照明に頼らずに済む。
2009
修復・敷込
設計・発注 小屋裏・堂内・床下処理
設計・発注
設計・発注
設計・発注
設備更新
復旧・調整
設備更新
復旧・調整
電気・機械整備
各専門工事の関連性を把
握しながら全体を見渡す
ための全体スケジュール。
Overall schedule clarifying the timing and relationships among processes
完成した素屋根。景観への配慮と共に自然換気、自然採光、雨水利用など省エネルギーを目指した仮設設計。
The design of the temporary structure focused on harmony with the surrounding landscape, natural
ventilation and lighting, and utilization of rainwater.
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
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国内外の複数デザイナーによる大規模プロジェクト
東京ミッドタウン
Tokyo Midtown:
Large-scale project involving multiple designers
プロジェクトタイプ 大規模再開発
キーワード
内外多数デザイナーの一元管理 ロードマップの明 確化 デザインスコープの明示 マルチトラック
六本木防衛庁跡地の再開発として進められた東京ミッドタウンは国内外
のデザイナーが複数参画して街をデザインしています。日建設計はその
デザイナーをまとめ、街をつくり上げるマネジメント業務を行いました。
内装、照明デザインも含めるとそのデザイナーの数は 10を超えます。この
ような大きな開発では多様な個性を尊重しつつ、それをゆるやかにまとめ
一体感を与えることが、街としての活気を生み、街を特徴づけることがで
きると考えました。
ゴールの早期明確化
「プロジェクトのゴールを明確にすること」はいつも私たちがプロジェクト
マネジメントの最初のミッションとしていることです。東京ミッドタウンの
ような大規模都市開発では、各用途の開発規模、これを成立させる交通計
画、これらの実現性を具象化するモデルプラン、オープン時期などをゴール
として明確化します。いくつもの代替案を検討し、東京都、港区、警察など
との複雑な協議を踏まえ、計画開始後の数ヶ月でこれらを明確化しまし
た。特に区立檜町公園を一体の計画区域にできたことで、約4ha のオープ
ンスペースという他に類例のないこの街の個性が見えてきました。
The Tokyo Midtown redevelopment project took place in the Roppongi district, where the Ministry of Defense had previously been
located. Including lighting and interior designers, the project involved the work of more than ten different designers from around
the world. Nikken Sekkei’s role was to manage all of the various
designers, allowing them to exercise their personalities while at
the same time loosely uniting them as a team. Nikken Sekkei’s
work was an essential factor in bringing out the distinctive flavor
and vitality of a project that took place on an extremely large
scale.
Setting the goal at an early stage
When managing any project, Nikken Sekkei begins by carefully delineating its goals. In a large-scale urban undertaking such as the
Tokyo Midtown project, it is necessary to create a plan model that
actualizes the project’s underlying concept and to clarify development scale, the transportation infrastructure plan, and the schedule for completion, among other matters. After consideration of
a number of alternatives and discussions with parties such as the
Tokyo Metropolitan Government, Minato Ward authorities, and
Tokyo Metropolitan Police Department, a lucid and detailed picture of the project emerged. Communication with such authorities
yielded highly beneficial results, such as permission to incorporate
the adjacent and publicly owned Hinokicho Park into the urban
development plan. This resulted in creating about 4ha of open-air
space, providing unique characteristics.
執筆者プロフィール Authors
16
大松 敦[おおまつ・あつし]
高木義雄[たかぎ・よしお]
1960 年5月生まれ
1983年 4月入社
1964 年 4月生まれ
1989 年 4月入社
日建 設 計プ ロジェクト 開 発
部門副代表 プロジェクトマ
ネジメント室 室長
日建 設 計プ ロジェクト 開 発
部門プロジェクトマネジメン
ト室 主管
ATSUSHI OHMATSU
Born: May 1960
Joined: Apr. 1983
Deputy Principal, Project
Development Department
& Chief Planner, Project
Management Section
NIKKEN SEKKEI
YOSHIO TAKAGI
Born: Apr. 1964
Joined: Apr. 1989
Senior Architect, Project
Development Department
NIKKEN SEKKEI
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
東京ミッドタウン
建築主:三井不動産株式会社・全国共済農業協同組合連
合会 ・明治安田生命保険相互会社・ 積水ハウス株式会社・
富国生命保険相互会社・大同生命保険株式会社
所在地:東京都港区
建物種別:事務所・住宅・店舗・ホテル他
構造:鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地上54階、地下5階他数棟
延べ面積:563,800㎡
竣工:2007年1月
Tokyo Midtown
Client: Mitsui Fudosan Co., Ltd., Japan Agricultural
Cooperatives, Meiji Yasuda Life Insurance Company
Sekisui House Ltd., Fukoku Mutual Life Insurance Company
Daido Life Insurance Company
Location: Tokyo, Japan
Major functions: office, residential, commercial, hotel
Structure: S, RC, SRC
Number of floors: +54, -5
Total floor area: 563,800 ㎡
Completion: Jan. 2007
一体感のある街のデザインと緑溢れる公園が、六本木に個
性的な街並みを創出した。
The cohesive design and park’s lush greenery gave life
to a unique area in Roppongi.
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
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国内外の複数デザイナーによる大規模プロジェクト
東京ミッドタウン
統括設計者(コアアーキテクト):日建設計
マスタープランデザイン(マスターアーキテクト):スキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル・エルエルピー
Core architect: NIKKEN SEKKEI Master architect: Skidmore, Owings & Merrill LLP
Tokyo Midtown:
Large-scale project involving multiple designers
D
12社・30の設計契約を束ねる
E
ランドスケープ
設計:EDAW
Landscape
EDAW INC.
ザ・リッツ・カールトン東京
内装:フランク・ニコルソン
全体概要図 Overall plan
街のデザインの一体感と多様な個性とを同時に実現するために、デザイ
ナーの選定は戦略的に行いました。まずは街の骨格に関わるマスターアー
キテクト・ランドスケープデザイナーを選定しました。彼らと議論を重ね
ミッドタウン・タワー
設計:スキッドモア・オーウィングス・アンド・
メリル・エルエルピー
Midtown Tower
Skidmore, Owings & Merrill LLP
A
The Ritz-Carlton Tokyo interior
Frank Nicolson, Incorporated
街の基本計画をまとめた上で各々の建物や商業部のデザイナーを順次選
定し、デザインの基本方針を共有しながら各々の個性を発揮した SD
(※1)、
DD
(※2)
の作成を行いました。建物デザインに関わる照明デザイナーは SD
終了後、入居テナントに関わるホテル内装やサインのデザイナーは DD終
了後の参画とし、デザイナー選定を適時に行いました。なお、契約も海
外のデザイナーについてはすべて日建設計が一元的に管理しました。契約
デザイン・ウィング
(21_ 21 DESIGN SIGHT)
設計:安藤忠雄建築研究所+日建設計
は区切りの良い業務期間ごとに分割し、
その数は12社で約30となりました。
多数のデザイナーが同時にひとつの街をデザインするにあたり、明快なデ
ザインスコープおよびきめの細かいスケジュールの管理を心がけました。
階ごとに作成されたデザイナースコープ図は、新規デザイナーが参画する
ごとに整理・調整したものを全デザイナーに提示しました。また長期のス
Design Wing (21_ 21 DESIGN SIGHT)
Tadao Ando Architect & Associates +NIKKEN SEKKEI
F
D
B
パーク・レジデンシィズ
外装デザイン監修:青木淳建築計画事務所
ザ・パーク・レジデンシィズ・アット・
ザ・リッツ・カールトン東京
内装:フランク・ニコルソン
Park Residences (Exterior design overview)
Jun Aoki & Associates
ケジュールを提示した上で、各デザイナーにはより詳細なスケジュールも
併せて提示し、確実なスケジュール管理を行いました。
The Park Residences at The Ritz-Carlton
Tokyo interior
Frank Nicholson, Incorporated
A
(※1)SD
(Schematic Design):日本でいう基本設計にあたる。
(※2)DD
(Design Development):日本でいう実施設計にあたる。
Coordinating 30 contracts with 12 companies
Designers for Tokyo Midtown were strategically selected with the
aim of realizing a unified atmosphere with numerous distinctive
characteristics. The master architect and landscape designer were
chosen first, and after the formulation of an overall plan, designers
for individual structures and commercial facilities were then specified. Schematic Design (SD) and Design Development (DD) methods
preserved a basic overall plan while allowing different designers to
express their individual visions. Lighting specialists were appointed
after the SD process, and those working with signage and hotel
interior spaces, following the request of the tenants, were asked
to participate after the DD stage. Contracts with foreign designers
were all concluded through Nikken Sekkei on the basis of efficient
and workable timetables. Overall, there were about 30 agreements
signed by 12 companies.
Because the project involved the simultaneous efforts of many different designers, it was necessary to explicitly specify the scope of
design and rigorously adhere to a detailed schedule. The design
scope diagram was created on a floor-by-floor basis, with revisions
made and distributed each time a new designer joined the project.
Designers were also presented with a long-term schedule including
a thorough supplementary agenda in order to make sure that careful time management was maintained.
デザイナースコープ図
Designer's scope
ガーデンテラス
設計:隈研吾建築都市設計事務所
B
Garden Terrace
Kengo Kuma & Associates
C
F
E
C
G
大屋根
Large Roof
東京ミッドタウンレジデンシィズ内装
—( 共用部 ):日建スペースデザイン
—( 共用部 ):ヨシ デザイン ニューヨーク
アンド ゲンスラー
—( 専有部 ):アイランド・アルファ
J
I
H
Midtown East
Skidmore, Owings & Merrill LLP
Tokyo Midtown Residences interior
(Common area) Nikken Space
Design Ltd.
(Common area) Yoshi Design
New York and Gensler
(Apartments) I-Land-Alpha Co., Ltd.
G
サントリー美術館
設計:隈研吾建築都市設計事務所
Suntory Museum of Art
Kengo Kuma & Associates
照明デザイン フィッシャー・マランツ・ストーン、
建築照明計画(協力)
サインデザイン
井原理安デザイン事務所
アートディレクター
清水敏男アートオフィス
H
I
J
ミッドタウン・イースト
設計:スキッドモア・オーウィングス・アンド・
メリル・エルエルピー
ミッドタウン・ウエスト
設計:スキッドモア・オーウィングス・アンド・
メリル・エルエルピー
Midtown West
Skidmore, Owings & Merrill LLP
Lighting design
Fisher Marants Stone Partners
in collaboration with Architectural
Lighting Group
Signage design
Rian Ihara Design Office
Design office
Toshio Shimizu Art Office
ガレリア他商業施設
設計:Communication Arts
Galleria and other commercial design
Communication Arts, Inc.
ガーデンサイド
設計:坂倉建築研究所
Gardenside
Sakakura Associates
18
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
19
国内外の複数デザイナーによる大規模プロジェクト
Tokyo Midtown:
Large-scale project involving multiple designers
海外デザイナーとのコラボレーション
Collaboration with foreign designers
デザイナーの作業を望ましい方向に導き、そのパフォーマンスを最大限
In order to steer project designers in the desired direction and
bring out their best, Nikken Sekkei supervised each individual design using a three-tiered management method providing so-called
"frontal, "central," and "rear" support. "Frontal" support involves
organizing design criteria based on client requests and carrying
out necessary procedures for governmental urban development.
"Central" support consists of actions that help maintain the flow
of communication among the designers. Examples in this case included regular videoconferences and design sessions in Tokyo. Support from the "rear" relates to general management supervision by
Nikken Sekkei and measures taken to obtain required authorization
permits and the like. Overall, these measures were enormously
helpful in maintaining optimal performance and ensuring requisite
high levels of quality.
During the SD stage, employees of Nikken Sekkei were dispatched
to the New York office of Skidmore, Owings & Merrill LLP, the
master architect for this project. These staff members were responsible for making sure that the project continued to meet the
requirements of Japanese legislation and market trends. The fact
that Tokyo and New York are located in nearly opposite time zones
worked to Nikken Sekkei’s advantage, enabling nonstop design
work to continue 24 hours a day.
に引き出すために、日建設計は個々のデザインの前方・中方・後方で、3層
構成のマネジメントを行いました。デザインの前方ではクライアントの要
望に合わせた設計条件の整理や都市計画の手続きを行い、デザインを適
切な方向に導きました。またその中方ではデザイナー相互の意思疎通を
図るために、定期的にビデオカンファレンスや東京でのデザインセッショ
ンを開催し、全員で共通の全体像を描きました。またデザインの後方で
は各種の許認可や工事発注に必要な最終的な設計・監理業務を日建設計
にて行い、高品質の確保に配慮しました。特に SD の期間中、マスターアー
キテクトである SOM ニューヨーク事務所へ人材を派遣し、日本の法規
や市場動向などに合わせるための設計マネジメントも行いました。ニュー
ヨークと東京の時差がほぼ昼夜逆転していることを利用して双方の事務
所で 24時間連続して作業を進め、効率的にデザイン業務を行いました。
スケジュール・マネジメントの離れ業
ゴールに向かって最短経路で進んでいくためには、デザインや設計と並
行して様々な専門的技術の検討や行政との協議・手続きなどを最適な手
順で実施しなくてはなりません。これらの手順などを定めたものがロード
マップ(=マスタースケジュール)であり、大きなプロジェクトチームをま
とめていくためには必須アイテムです。これを正しく策定することで、小
さな変更には左右されず、プロジェクトの進行を適切にナビゲートするこ
とができます。
長期プロジェクトでは、社会・経済状況の変化に応じて設計与条件を変
更することがありますが、東京ミッドタウンでもデザインウイング(21_21
デザインサイト)やプラザ大屋根の設置など、都市計画変更まで必要にな
る大きな変更が途中にありました。普通なら大きくオープン時期が遅延す
るところですが、初めに策定したロードマップがしっかりしていたために、
当初のオープン予定時期を変えることなく、最適手順で変更をナビゲート
することに成功しました。具体的には、設計体制を多層化し、設計変更作
業を順次並行的に実施、その都度変更申請すること(マルチトラック)
で、
工事工程を遅延なく進めることが可能となりました。マネージャーととも
に、設計チーム並びに施工者も含めたプロジェクト関係者全員が協力で
きたからこそ実現したプロジェクトマネジメント効果であると言えます。
大松 敦・高木義雄
Feats achieved by schedule management
Effective management of large-scale projects is impossible without
some sort of master plan that clearly articulates required procedures, timeframes, and goals. At the outset of each endeavor, Nikken Sekkei drafts a "road map" that provides overarching vision
and organization. A correctly formulated road map allows a project
to avoid undue influence from minor changes or setbacks. During
a long-term project, design criteria may undergo major modifications, often in response to changing social or economic conditions.
During the Tokyo Midtown project, the overall design was altered
suddenly in certain key ways, such as with a decision to place a
large central roof over the plaza. Ordinarily, transformation of this
scale would probably mean a delayed opening, but Nikken Sekkei
was able to weather the changes and keep the project on track.
Nikken Sekkei’s strong yet flexible project road map contained
provisions for the rapid implementation of special multi-design
task forces. This measure provided a way to coordinate engineering changes with other activities as specific needs arose ("multitrack" process). By inspiring the cooperative spirit of all involved
and deftly adapting to emerging new realities, Nikken Sekkei was
able to achieve the effects of project management and conclude
the project successfully in line with the original deadline.
Atsushi Ohmatsu, Yoshio Takagi
Project Type Large-scale urban redevelopment
Keywords
Uniform management of multiple foreign and domestic designers, Clarifying the road map, Specifying scope of design, Multi-track
ロードマップ(マスタースケジュール )
Road map (master schedule)
⋮
⋮
⋮
⋮ 2005
⋮ 2003
⋮ 2004
⋮
⋮
⋮
⋮
都市計画協議
(変更)
都市計画手続き
(変更)
都市計画協議
都市計画手続き
⋮
⋮
⋮
⋮City development plan
Apply for plan
City development plan
Apply for plan
⋮ approval
⋮ discussions
⋮discussions(modified) approval(modified) ⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮ 課題4
業務課題
課題1
課題3
課題5
課題n-1
課題n
……
……
⋮
⋮ 課題2
⋮
⋮
⋮
Operational issues
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
日建設計
⋮
⋮
⋮
全体調整 ⋮
マスタープラン.1
マスタープラン.2
マスタープラン.
3
追加変更マネジメント
⋮
⋮
⋮
⋮
NIKKEN SEKKEI
⋮
Overall adjustments
Master plan 1
Master plan 2
Master plan⋮
3
Management of additional changes
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
各部インテリアデザイン等
SOM, FMS他
SOM, FMS etc.
⋮ 照明DD
⋮
大屋根DD
⋮
⋮
⋮
Interior design for each section, etc.
Large roof ⋮
DD
⋮ Lighting DD
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
Jun Aoki & Associates
青木淳建築計画事務所
⋮
⋮
⋮
Park
Residences
/
Gardenside
⋮
CD
レビュー
⋮
⋮
隈研吾建築都市設計事務所 Kengo Kuma & Associates ⋮
⋮
SD / DD
CD (Construction
Document) review
⋮
⋮
⋮
⋮
Sakakura Associates
坂倉建築研究所
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
商業スペース⋮
SD / DD
⋮
⋮ CDレビュー
COMMARTS
⋮
⋮Commercial space
CD
review
⋮ SD / DD
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮ ・West
⋮
⋮ CDレビュー
⋮ M-t Tower・East
⋮
SOM
⋮
⋮
⋮ CD review
SD / DD
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
マスタープランデザイン
⋮
SOM
SOM
⋮
ランドスケープ
DD
CDレビュー
⋮
⋮
⋮
ランドスケープSD
⋮
Landscape
DD
CD
review
⋮
EDAW(ランドスケープ)
EDAW (landscape)
⋮
⋮ Master plan design Landscape SD
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
日建設計
基本設計
実施設計
監理
⋮
⋮ Design
⋮
Schematic
Design Development ⋮
Supervision ⋮
NIKKEN SEKKEI
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
建築許認可
⋮
⋮
⋮
Obtain construction approval
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
施工者協議
⋮
⋮
⋮
Discussions with constructors
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
2001 ⋮
⋮ 2002
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
東京ミッドタウン
マルチトラックによる工程表
The "multi-track" process
変更前
Before changes
変更後
After changes
マネジメント
Management
設計
Design
許認可
Obtain
approval
設計
Design
工事
Construction
許認可
Obtain
approval
設計変更
Design change
設計
Design
設計変更1
Design change1
設計変更2
Design change2
許認可
Obtain
approval
工事
Construction
許認可
Obtain
approval
工事
Construction
許認可
Obtain
approval
⋮
⋮
⋮
⋮
変更による遅延
⋮ Delay due to changes
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
工事
⋮
Construction
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
マネジメント効果
⋮ Management
effects
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
⋮
工事
Construction
長いプロジェクトの間には、世の中の情勢、景気動向に伴い必ず
設計与条件の変更が発生します。変更が、工事工程に影響を与え
ないよう多層的に設計体制をとることで対応しました。
東京でのセッション風景 Design sessions held in Tokyo
20
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
Over the course of a long-term project, situations such as
shifts in the social or economic environment may occur,
necessitating design changes. Nikken Sekkei’s "multitrack" process allowed such alterations to be made
without impact on the construction process.
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
21
大量店舗一斉オープン・ブランド構築の設計マネジメント
レクサス店舗 開発・設計
Lexus Shop Front Development and Design for
Toyota Motor Corporation:
Design management for the creation of a brand image
約150のブランド店舗を一斉オープン
同時オープンしたレクサス店舗所在地
レクサス店舗設計プロジェクトは、トヨタ自動車が、海外で展開しているレ
Lexus shop front locations
プロジェクトタイプ ブランド店舗多数同時オープン
キーワード
ブランドイメージ保持 設計センターによる一元管理 モデルプラン開発 専用 webサーバーや3D-CAD(T-shop)
設計プロセスの情報共有 2方向クライアント対応
クサスブランドを日本市場に導入するために、独自性のあるブランドイメー
ジを持った約150店舗を 2005年 8月に全国同時オープンさせるという、他
に類のないプロジェクトです。
建築の設計では一品一様のプロジェクトが通常ですが、レクサス店舗で
は、同時期に進捗する全店舗に対して、ブランドイメージを保持しながら、
クオリティ・スケジュール・コストをマネジメントしていくことが求められ
ました。
全国にある建設地はすべて異なる敷地条件であり、クライアントである
各々のレクサス販売会社からも独自の要求やコスト上の制約を提示され
る一方、レクサス店舗としての店舗ファシリティ基準に合致させるため、
より的確なプロジェクトマネジメントが必要とされました。
Simultaneous opening of multiple shop fronts
Although the Lexus brand has been a great success abroad for
Toyota Motor Corporation, until recently it had never been sold in
Japan. The Lexus shop front development and design project called
for nearly 150 showrooms evoking the prestigious image of the
brand to be opened simultaneously across Japan in August 2005,
representing a completely new marketing approach.
Design projects usually entail work on a particular site with its own
unique features. But this case required a single sophisticated design
to be applied in a highly coordinated manner at numerous different locations. Showroom sites would have different construction
restrictions, and there would be individual owner requests and cost
limitations to consider as well. Precise and accurate project management resulting in high quality, accurate scheduling, and cost
control was imperative to ensure that all the shops satisfied shop
facility standards of Lexus.
レクサス宇都宮南 Lexus Utsunomiya South
レクサスならではの高級感はもとより、お客様中心の考えを徹底的に追求し、すべての来訪者にい
つでも同じ印象と、質の高いおもてなしを提供するために、外観・内観のデザインおよび機能を統
一し、全国展開を図りました。
In designing Lexus shop fronts, great emphasis was put on evoking the brand image and
serving the customers. The shop fronts were entirely unified in terms of interior and exterior designs as well as functions.
レクサス店舗
執筆者プロフィール Authors
建築主:全国レクサス販売会社
所在地:全国143箇所(2005 年 8月30日時点)
建物種別:店舗
構造:鉄骨造(一部鉄筋コンクリート造)
階数:地上1階~4 階、
(1層型が約70%)
延べ面積:約1,700㎡(1層型基準モデル)
Lexus shop front
Client: Lexus dealers all over Japan
Location: 143 all over Japan (as of Aug. 30, 2005)
Major functions: shop front
Structure: S, (except for Lexus Okinawa - RC)
Number of floors: +1 to +4 (70% of shop fronts are 1-story)
Total floor area: about 1,700m2 (Basic 1-story model)
三輪哲夫[みわ・てつお]
小日向 敬[こひなた・たかし]
1946 年11月生まれ
1970 年 4月入社
1968 年 8月生まれ
1993年 4月入社
日建 設 計コーポレート部 門
CR 室 CR 推 進 役 日建 設 計
総合研究所 企画部長
日建設計設計部門設計室主
管 兼プ ロジェクト開 発 部 門
PMO室
TETSUO MIWA
Born: Nov. 1946
Joined: Apr. 1970
Senior Manager, Corporate Department, NIKKEN
SEKKEI
Planning Manager, Nikken
Sekkei Research Institute
TAKASHI KOHINATA
Born: Aug. 1968
Joined: Apr. 1993
Senior Architect, Architectural Design Department
Architect, Project Developement Department
NIKKEN SEKKEI
レクサス高輪 Lexus Takanawa
22
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
23
大量店舗一斉オープン・ブランド構築の設計マネジメント
レクサス店舗 開発・設計
Lexus Shop Front Development and Design for
Toyota Motor Corporation:
Design management for the creation of a brand image
レクサス店舗設計センターでの品質確保
Securing quality at the Design Center
約150 もの店舗を同時に設計する上で、トヨタ自動車が名古屋市内に設
In order to design nearly 150 shop fronts simultaneously, Nikken
Sekkei personnel were stationed at the Lexus Shop Front Design
Center in Nagoya. There, together with Toyota staff, a design team
was created to centrally control design development. Necessary
tools such as a tailored CAD system and standard drawings were
made available at the Center, allowing intensive design in accordance with Toyota requests. To achieve high-quality results so that
all shop fronts would maintain the quality of the brand image and
to solve various other issues, plans at individual sites were scrupulously monitored and checked with Toyota, in terms of facility criteria, design quality, and cost.
Although the design process was unified and carried out by the
Lexus shop front design Joint Venture (JV) team, construction supervision was assumed by local companies at each site, meaning
that there were risks of unforeseen design changes. To be ready
for any eventualities during the construction stage, tools such as
request forms for confirmation of design change, question and
answer sheets, order forms for additional design work, and sheets
detailing special points for attention during construction were created. A system was established to ensure that all incoming information relating to these materials would be brought to the attention of Toyota staff.
立したレクサス店舗設計センターに常駐しながら、トヨタ自動車の方々と
ともに集中管理を行いました。トヨタ自動車の意向反映や開発された各
種ツール(CAD システム、基準モデル、標準図、コストシステムなど)
を設計
チーム内に展開、集中設計を行っています。特にブランドの品質管理では、
全店舗を対象に、ブランド保持や個別店舗の課題解決を目指しトヨタ自動
車と協働でプランチェックをしました。そこでは、設計の段階ごとにファ
シリティ基準、設計品質、コストについてチェックを行いました。
レクサス店舗設計システムでは設計業務は設計 JV が実施しますが、工事
監理は地元対応会社の役割です。このため、トヨタ自動車・設計者が予
期しない設計変更などが発生する可能性があります。そこで工事段階で
想定されるリスクに対処できるように下記ツールを作成しました。なお、
これらのツールは設計センターのトヨタ自動車担当者を経由するシステム
としました。
1
設計変更確認依頼書
2
質疑応答書
3
設計に関する追加指示
4
施工に関する留意点
プロジェクト推進体制
Project promotion structure
開発段階 / Development stage
協力会社
トヨタ自動車国内マーケティング部 レクサス店舗開発担当
(日建設計、
ジオ・アカマツほか)
Domestic Marketing Dept., Toyota Motor Corporation
in charge of Lexus shop front development
Cooperating companies
(Nikken Sekkei, Geo Akamatsu, etc.)
基準モデルの策定、実現方法の確立
Establishing shop front prototype model and execution method
設計段階 / Design stage
レクサス店舗設計共同体
トヨタ自動車国内マーケティング部 レクサス店舗開発担当
(日建設計、
ジオ・アカマツ、中日設計)
Domestic Marketing Dept., Toyota Motor Corporation
in charge of Lexus shop front development
Lexus shop front design JV
(Nikken Sekkei, Geo Akamatsu,
Chuunichi-sekkei Corporation)
設計
ファシリティ基準適合チェック、販売店の調整、進捗管理
Design
Check conformity with facility criteria, dealer adjustments,
progress management
レクサス店舗設計センター
Lexus Shop Front Design Center
設計契約は直接締結
Concluding design agreement directly
全国のレクサス販売店
Lexus dealers
レクサス店舗設計共同体は、日建設計、ジオ・アカマツ、中日設計の
3 社で組織されました。プロジェクトを所管するトヨタ自動車と、個々
の店舗設計の発注者である全国のレクサス販売会社(約 100 社)の 2
方向のクライアントが存在することが特徴です。さらに、各販売会社
が地元行政協議や工事監理業務を委託する地元対応会社とも連携しな
がら設計を進める体制としました。
The Lexus shop front design JV was organized by Nikken
Sekkei, Geo Akamatsu, and Chuunichi-sekkei. The project
was notable in that two types of client were involved: Toyota
as the overall client and the 100 Lexus dealers individually
ordering shop front designs. Furthermore, the JV carried out
design in cooperation with local companies commissioned by
individual dealers to negotiate with local authorities and to
supervise construction work.
品質管理
Quality control
管理項目
Management
items
ブランド保持
店舗ファシリティ基準
Maintaining brand quality items
Criteria for shop front facilities
設計品質
Design quality
コスト
Costs
レクサス市川 Lexus Ichikawa
24
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
前半設計段階
後半設計段階
店舗完成段階
First half
of design process
Latter half
of design process
Shop front
completion stage
発注図書の品質チェック
店舗のファシリティ適合確認
プランチェック
コストチェック
成果品チェック
概要書チェック
Plan check
Cost check
Finished product check
Operational outline check
○
○
○
○
○
◎ 完了
Completion
Quality check of
ordering drawings
and documents
Confirming that the
facility complies with
shop front requirements
◎ 完了
Completion
査図・検図 完了
of drawings
◎ Completion
instruction and verification
ブランド保持、品質管理のための設計段階別プランチェック。 Stage-by-stage check list for maintaining brand and quality control
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
25
大量店舗一斉オープン・ブランド構築の設計マネジメント
レクサス店舗 開発・設計
Lexus Shop Front Development and Design for
Toyota Motor Corporation:
Design management for the creation of a brand image
設計情報を共有する設計システム・T -SHOP 他
Sharing information using design systems
設計手順は、予め販売会社から提示された店舗計画書に基づく事前検討
After careful study based on information provided by dealers, appropriate layouts, detailed plans, and interior finishing patterns
were determined. Some features of the design process were as follows:
(1) Toyota’s patented T-SHOP utilizing specialized web and server
features, 3D-CAD, and a prototype shop front were used to communicate interior image and shop front layout to dealers, resulting
in a reduction of necessary design changes.
(2) Steel was ordered during the plan confirmation stage to avoid
steel shortages during construction.
(3) Construction cost updates were presented as appropriate
throughout the design stage.
After 8 weeks (the first half of the design period), the plan had
been established and confirmed. A special design development
team consisting of members of various design teams was then
formed, and the design development was completed in about 6
weeks (the latter half of the design period). With the conclusion of
this process, drawings were delivered to dealers, followed by cost
estimation and ordering procedures, and the JV applied for building permits.
後に、前半設計
(基本設計)の 8週間で敷地条件に合ったレイアウトや詳細
プラン、
内装パターンを決定します。この設計システムの特徴は次の点です。
1
手戻りを少なくし、店舗レイアウトや内装イメージを販売会社に分かりや
すく伝達するための、専用 web サーバーや3D-CAD を活用した T-SHOP
(トヨタ自動車のビジネス特許)
、モデルルーム
(名古屋市内にトヨタ自動車
が建設)
等の活用。
2
全店舗が一斉に工事着手した場合の鋼材不足に備えた、プラン確定段
階での鋼材の事前発注。
3
設計過程における、随時の建設コストの提示。
前半設計でのプラン確定後、担当チームごとに編成された実施設計専門
チームによって後半設計(実施設計)を 6 週間程度で完成させます。その
後、販売会社に図面を納品し、見積・発注を行っていただくとともに、レク
サス店舗設計共同体で確認申請を行いました。
一斉オープンに向けてのスケジュールマネジメント
スケジュール管理の点で工夫したことは、1 設計のステータス管理(プラン
フィックス、鋼材発注、成果品納品、確認申請提出、許可など設計の節目節
目において、予定と実際の状況を把握すること)
、2 設計センター内全員が
確認できる管理ボードの掲示、3 鋼材先行発注のスケジュールを全販売会
社へ連絡し遅延のない店舗プランフィックスの促進などです。
また、販売会社へのコストの提示時期は事前検討、プラン検討段階、プラン
確定後など、毎回提示しています。しかも、設計内容が進むごとに精度を
向上させています。特に、前半設計の最後に提出する概算工事費の算出で
は 3D-CAD データを活用しています。この内容は、トヨタ自動車とともに
確認した上で、販売会社へ提出しました。
建物もブランドを構築する重要な要素のひとつ
Schedule management for simultaneous openings
The project schedule management process featured a number of
distinctive and innovative points. Design status management was
implemented for each important step of the overall process. A
special notice board was established at the Center to rapidly communicate updated information to all personnel. Individual dealers
received schedules regarding steel orders, to achieve plan finalization without schedule delays or other problems.
Cost estimation was provided to dealers at various intervals. Estimation accuracy improved as the design stage progressed, particularly at the end of the first 8 weeks, when 3D-CAD data was used
to calculate overall construction costs.
ひとつの建物のグレードを高めてそれをブランドイメージとして発信する
以外に、今回のように、多数の拠点から同時発信するブランド戦略は今後
も考えられます。今回開発した手法やツールはそうした面で応用できるも
のと考えています。
三輪哲夫・小日向敬
Integrating buildings and brand
One way to transmit a particular brand image is to improve overall
design and architectural quality of one particular building, while
another method is to communicate a unified message from multiple locations. This project successfully combined both approaches,
and the tools and methods developed in this case are expected to
be of great use in the future.
Tetsuo Miwa, Takashi Kohinata
Project Type Simultaneous opening of multiple Lexus brand shop fronts
Keywords
Portraying and maintaining brand image, Uniform management at the design center, Development of model plans Use of special web server and 3D-CAD(T-shop), Sharing information on the design process, Responding to two different clients
店舗設計のステップ
Shop front design stages
標準スケジュール
Standard schedule
レイアウト決定
デザイン選択
Finalizing layout
Design selection
建設コスト検証
Study of
construction cost
事前検討
事前検討
Prior study
店舗計画書に基づいたモデルプランで
敷地のあたりをつける(定量的なチェック)
Prior study
Determining actual construction site
based on the shop front plan (quantative check)
第1回
打ち合わせ
First
meeting
第2回
打ち合わせ
Second
meeting
基準コスト(目安)
Standard cost
(rough figure)
現地確認
Confirming work site
●敷地条件に応じたレイアウト案の検討
●周辺状況を踏まえたアニメーション・
モンタージュで検討
モデルルームにて
内装パターンと家具の検討
Study of interior finishing pattern
and furniture at prototype shop front
●Conduct review of layout draft
accommodating site conditions
●Conduct review using animation and
montage of surrounding area
企画コスト(目安)
Planning cost
(planning figure)
レイアウト決定
精度アップ
Finalization of layout
前半設計
8週間
First half of
design process
8 weeks
第3回
打ち合わせ
Third
meeting
Improving accuracy
●詳細プラン検討
●精度アップしたアニメーションや立体プランで検証
animation and 3D plans
プランフィックス
Fourth
meeting
Finalizing interior pattern
●Conduct review of plan details
●Conduct review using improved
内装パターン決定
Finalization of plan
第4回
打ち合わせ
内装パターン決定
Finalizing interior pattern
精巧なCGで照明効果を確認
鋼材発注手配
企画コスト1
Planning cost: (1)
精度アップ
Improving accuracy
Confirming lighting effects
using sophisticated CG
Ordering of steel
●精巧なCGで再確認
●Reconfirmation using sophisticated CG
前半設計完了
Finalizing details
後半設計
6週間
Latter half of
design process
6 weeks
確認申請
Building
permit
application
企画コスト2
Planning cost: (2)
後半設計
Latter half of designing process
入札
発注
確認申請
Order
bidding
Applying for building permits
工事
工事
Construction
Construction
T ショップの画面 Screen image of T-SHOP
26
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
27
海外不動産投資のためのリスク回避と付加価値向上
China Central Place
China Central Place(以下 CCP)は、リプラス・チャイナ・アセットマネジ
メント(以下リプラス)
が運用するファンドが購入した賃貸オフィスであり、
日系不動産ファンドとしては中国国内における初めての大型投資案件と
される建物です。
この中の当時工事中のオフィス棟 2棟について、2005 年末に売却が計画
され、リプラスにより購入が検討されました。我々はリプラスからの依頼
により、購入時のスペック・リスク検討から購入後の施工に関するアドバ
イザリー業務の実施まで広範なマネジメントサービスを行いました。
世界不動産市場に通用させる
中国における不動産購入リスクは、建築品質などの点で日本国内より大
きなものとなります。また、今回の案件は建設途中での購入であり、今
後の建設の進捗により発生するリスク(スケジュールの遅延、品質の低下
等)
も大きな要素となります。
当初の依頼はエンジニアリングレポートの作成でしたが、想定されるリ
スクは膨大であり、それらのリスクマネジメント手段の提示とあわせて業
務実施を行うことが不可欠と判断しました。
また、日本に比べて賃貸不動産マーケットに関する情報が不足する中で、
競争力の高い商品設計が重要でした。これに関しては、日建設計の中国
での豊富なプロジェクト経験を踏まえて、必要とされるスペック基準を定
めて分析し、改善の必要性を判断しました。
契約書に性能品質を記入する
通常、日本国内における開発型プロジェクトの不動産売買においては、
想定されるリスクは図面の変更により、かなりの程度、改善が可能であり、
変更図面をもって契約することでリスク回避が可能となります。しかしな
がら、中国においては、建物の品質は施工体制や施工能力も含めた複合
的な問題であり、図面による改善検討ではリスク回避が不十分となりま
す。そのため、契約書に必要とされる性能品質を記入することによりリ
China Central Place:
Avoiding risks and enhancing value in
overseas real estate investment
プロジェクトタイプ 海外不動産投資コンサルタント
キーワード
付加価値向上 リスク分析 性能品質契約 経験者によるチーム編成 スペック向上
Project Type
Consultation for overseas real estate investment
Keywords
Improving added value, Analyzing risks, Performance quality contract, Forming teams of experts, Improving specifications
The purchase of China Central Place by Re-plus China Asset Management Inc. represented the first large-scale investment made in
China by a Japanese real estate fund. Before actually buying the
two office buildings of the complex (which were still under construction at the time), Re-Plus contacted Nikken Sekkei as part of
its preliminary studies. Nikken Sekkei was able to provide a wide
range of management services for the fund, such as constructionrelated advice and analysis of specifications and risks.
Achieving global real estate market standards
In many ways, the risks involved when purchasing real estate in
China are greater than those in Japan. Areas of particular concern
include construction quality and the potential for schedule delay.
Although Re-plus’s initial request was only for the creation of an
engineering report, Nikken Sekkei’s clear grasp of the possible dangers allowed it to propose and later supervise essential and effective risk management procedures.
There is comparatively little information available on Chinese rental
properties. At the same time, it is increasingly imperative in the
Chinese market to design highly competitive buildings. Fortunately,
Nikken Sekkei’s vast project experience in China gave it the ability
to conduct rigorous analysis for the China Central Place project,
determining specification criteria and pinpointing the necessary improvements.
Specifying performance quality in contracts
Generally speaking, in Japan, making changes to drawings and
implementing them through revised agreements is an effective way
to cope with assumable risks associated with developments of this
type. In China, however, it is important to secure quality through a
combination of multiple approaches relating to matters such as the
construction system and the ability levels of those involved. For this
reason, Nikken Sekkei took care to make sure that the contract in
this case contained detailed performance quality requirements.
スク回避を行ないました。
中国北京市内 CBD(Central Business District)地区の大規模開発事業の一環として計画され、街区には、商業モール、シティホテル 2 棟、事務所、住宅等が配されている。
China Central Place was planned as a part of a large-scale urban development project in the Central Business District of Beijing. A shopping mall, 2 hotels, offices, and
residential housing are situated in the same area.
海外不動産投資のためのマネジメントの流れ
Management for real estate investment
競争力向上・リスク回避のための
契約内容の作成および交渉支援
スペックおよびリスク分析と
必要される契約与件を整理
華貿中心
(CHINA CENTRAL PLACE)
建築主:北京国華置業有限公司
所在地:中国 北京市
建物種別:事務所
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋
コンクリート造
階数:地上 32階、塔屋1階、地下4 階
延べ面積:212,975.6㎡
竣工:2007年1月
設計:KPF
(米国)
+華東建築設計研究院
リスク分析フロー
Risk analysis
中谷憲一郎[なかたに・けんいちろう]
陸 鐘驍[ろう・つぉんしょう]
1969 年 6月生まれ
1993年 4月入社
1966 年11月生まれ
1994 年 4月入社
日建設計バリューマネジメン
ト部門バリューマネジメント
業務開発室 室長
日建設計コンストラクション・
マネジメント コンストラクショ
ンマネージャー
日建設計設計部門設計室 室
長、日建設計・上海 董事長
28
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
潜在的リスク
Overt risk
Potential risk
Analyzing elements of risk (quality,
construction system, schedule,
regulations, and environment)
ROH TZUONSHOW
Born: Nov. 1966
Joined: Apr. 1994
Chief Architect, Architectural Design Department
NIKKEN SEKKEI
President, NIKKEN SEKKEI
Shanghai
対応が必要な問題点は、
いくつかの顕在的な問題
点と、今後の建設プロジェクトの進捗において、発生
が想定される潜在的な問題点に整理される。
Problems that could occur as the project
progresses are classified as either "overt" or
"potential."
手前 2 棟がオフィス棟 In front are two office buildings
Monitoring contract content and
confirming final quality
顕在的リスク
リスク項目の分析
(品質・施工体制・スケジュール・
法規・環境)
執筆者プロフィール Authors
KENICHIRO NAKATANI
Born: Jun. 1969
Joined: Apr. 1993
Chief Architect, Value
Management Department
NIKKEN SEKKEI
Construction Manager,
Nikken Sekkei
Construction Management
Assisting in negotiations, contract
drafting to enhance competitiveness
and avert risks
Analysis of specifications and risks and
organizing essential terms of the contract
China Central Place
Client: Peking Guohua Property Management Co. Ltd.
Location: Beijing, China
Structure: SRC, RC
Number of stories: +32, Penthouse 1, - 4
Total floor area: 212,975.6m2
Completion: Jan. 2007
Design: KPF (U.S.), East China Architectural Design &
Research Institute Co. Ltd.
契約内容のモニタリングと
最終品質確認
不動産マーケットを踏まえた
スペック分析
Analyzing specifications based on
the real estate market
問題点の重要性・対応策の検討
Reviewing important issues and
countermeasures
具体的な対応方針を契約に盛り込み、
その後の対応をモニタリング
Adding contract details and
monitoring actual activities
必要な性能品質を詳細に契約に
盛り込み、リスク回避を実施
Averting risk with detailed
stipulation of quality performance
measures in the contract
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
29
海外不動産投資のためのリスク回避と付加価値向上
China Central Place
China Central Place:
Avoiding risks and enhancing value in
overseas real estate investment
付加価値向上で優良テナント誘致
Added value to attract quality tenants
購入時はすでにほとんどの発注が終了し、工事も躯体構造が完了してお
When Re-plus purchased China Central Place, the frame structures
of the buildings had already been completed and work was underway on the exterior and for equipment installation. The Chinese
construction administration system, material procurement channels, and building methods are different from those in Japan, so
extensive knowledge regarding Chinese construction was vital in
order to spot errors instantaneously and predict potential pitfalls.
Amidst a very tight schedule, Nikken Sekkei was able to rapidly put
together a team of people with far-reaching experience in China
and expertise in all the necessary areas.
To avoid confusion from the outset, particular emphasis was put
on consulting activities concerning safety, schedule monitoring,
and development and enhancement of functions. Nikken Sekkei’s
knowledge of what to focus on resulted in an increase of the value
of the buildings and creation of an advanced and attractive property that appealed to the international financial institution, leading
European bank, and major Japanese companies now scheduled to
move in.
Kenichiro Nakatani, Ron Tzuonshow
り、外装と設備の取り付けを行っている最中でした。発注形態、施工工法、
工事監理システムなど多くの点において日本と異なり、慣習的に工事を
行っている中国では、工事のミスを瞬間的に見抜く力と、内部事情に精通
し、様々なリスクを予測できる能力が要求されます。一刻を争う厳しい
スケジュールの中、我々は、まず中国の現場経験が豊富なメンバーによる
チーム作りから始めました
現場の混乱を避けるために、コンサルティング業務の要はエンジニアリン
グレポートの調査内容をベースに図のように主に安全対策(遵法性・品質)
の対応、スケジュール管理のモニタリング、機能の拡張という点に絞られ
ました。
こうしたマネジメントの結果、建物の価値が向上し、ヨーロッパ系大手銀
行を始め、国際的金融機関や日本の大手企業など、優良企業の入居が決定
しています。
中谷憲一郎・陸 鐘驍
コラム Focus
いま、中国の不動産マーケットが熱い !!
Growing excitement in the Chinese real estate market
2008 年の北京オリンピック、2010 年の上海
万博、WTO への加盟、二桁の成長率、13
しかし、上海、北京では不動産市場が停滞化
その投資熱が建設中の物件にまで及んでい
したように見えるが、大連、深圳、武漢、成都
る。これらの背景には住宅不動産の抑制政
億人口の需要、
人民元の切り上げ……様々な
などの地方都市では伸び続けている。特に
策のほか、中国の WTO 加盟による外資系
プラス要因によって、
中国の不動産マーケット
中央政府が濱海新区をはじめとする渤海湾
企業の急激な進出にも要因がある。近年、上
の上昇率は日本のバブル時代と比べられる
開発を国家発展戦略に盛り込りこんでいる
海や北京の CBD エリアでの高性能インテリ
ほど伸び続けている。
ことから、天津のマーケットはいま世界の熱
ジェントビルが大幅に不足している状況が続
このような状況の中で、2005 年から中国政
い視線を集め、上海の浦東地区に迫る勢い
いており、賃料も高騰していることから長期
府は不動産
(特に住宅マーケット)の安定供
さえ感じられる。
安定的な収益を狙う海外投資の注目を集め
給を図るために、マクロコントロール政策を
一方、これまで住宅開発を主体としていた国
ている。今後、
景気の波によるリスクはあるも
とっている。2006 年に入っても5月末と9月
内の主要デベロッパーは、住宅から商業施設
のの、長期的な安定成長の中国不動産への
初めに相次いで土地供給規制の条例を発表
やオフィスビルなど商用不動産へ転向する
投資熱は人民元の切り上げとの相乗効果で
し、長期的な不動産価格の安定推移への取
動きを見せ始めている。また、政府の規制
益々高くなっていく傾向が予想される。
組みを強化する強い姿勢を見せた。中低所
政策は不動産市場の安定化に貢献している
これらの変化は、設計業界において、中国へ
得層向けの住宅問題、不動産価格の透明性、
ことが海外マーケットで評価され、海外から
のデザインや技術の輸出のみならず、
リプラス
市場への監督強化を狙った一連の処置は国
の外資投資が急ピッチで増え続けている。
のような不動産投資物件に関する評価・リス
内のデベロッパーの加熱する土地投資への
今回の物件もその一例だが、海外ファンドが
ク分析、建設コンサルなど多分野にわたり、業
抑制に直ちに効果をみせ、一般向けの住宅
中国の大手デベロッパーと手を結び、上海、
務範囲がさらに拡大するに違いない。
価格の伸び率は縮小しつつある。
北京の中心部の優良物件を次々と購入し、
陸 鐘驍(日建設計)
CCP におけるマネジメントの成果
Managerial achievements at China Central Place
安全対策
スケジュールモニタリング
機能拡張
Safety measures
Schedule monitoring
Enhancing functions
現場定例会議への参加
テナント用非常用発電機 /
空調機の増設スペースの追加
ガラスの自爆対策
Countermeasures to avoid self-destruction of
window panes
Participating in regular work site meetings
Adding emergency generator for tenants and
space for air conditioning equipment
駐車場出入り口の車路の拡幅
工事進行の定期確認
設備スペースのテナント対策
Enlarging the driveway of the parking entrance
Regularly confirming construction schedule
Equipment-space measures for tenants
回転扉の安全対策
Safety device for pivoted door
発注 / 変更工事の進行確認
Verifying progress in construction-related
ordering and modification procedures
メンテナンスの利便性向上
Convenience of maintenance work
屋上排水量、排水管の仕様変更
工程の予測と注意喚起
室内環境 / 仕様の確保
Specification changes concerning
drainage and rooftop drainage volume
Estimating process flow and providing
reminders
Securing interior specifications and
environment
防水関連工事の確認・試験検査
ヘビーデューティの明確化
Confirmation and testing of
waterproofing measures
Clarifying "heavy duty" items
振動 / 騒音対策の確認
ユニバーサルデザインの導入
Confirmation of oscillation and noise
control measures
Introducing universal design
室内照度の確認 / 器具の追加
セキュリティシステムの強化
Confirmation of interior lighting intensity
and additional fixtures
Reinforcing the security system
窓際空調方式の補強
Enhancing air conditioning system
長期的資産価値の基本確保
Securing fundamental conditions for
long-term asset value
30
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
正常なキャッシュフローや
プロジェクト運営の保障
付加価値の拡大
テナント誘致対応
Guaranteeing accuracy concerning cash
flow and project operations
Increasing additional value and
attracting tenants
上海浦東地区 View of Pudong New Area
Fueled by a multitude of factors, the Chinese real estate market continues its remarkable ascent, growing at a rate that is
similar to that in Japan during the bubble
economy. The Chinese government has
reacted by announcing a series of macrocontrol policies from 2005 to steady the
supply of real estate (especially in the
residential sector), demonstrating a strong
commitment to long-term price stability.
These government actions were taken to
resolve housing issues facing low- and
middle-income wage earners, to clarify
real estate prices, and to intensify market
monitoring.
The recent government measures have
had the immediate effect of cooling down
the real estate investment fever among
domestic developers, leading to a decline
in the growth rate of housing prices for the
general public. It may seem that the real
estate markets in Shanghai and Beijing
have slowed down, but strong growth is
still underway in cities like in Dalian,
Shenzhen, Wuhan, and Chengdu. Of particular note is Tianjin’s Binhai New Area,
which has become part of China's national
development strategy. Tianjin is now the
focus of intense international interest and
the momentum there is close to that previously felt in Shanghai’s Pudong New Area.
Meanwhile, major domestic developers
have shifted from residential to commercial real estate, and there is increasing
involvement with commercial spaces and
office buildings. In addition, overseas investors have been cheered by government
moves in the real estate sector, and this
has led to accelerating inflows of foreign
investment capital. There are many examples similar to that of China Central Place,
in which foreign investors purchase valuable properties in conjunction with major
Chinese developers. The investment craze
has now spilled over to buildings that are
under construction.
There are still too few high-performance
intelligent buildings in the central business districts of Shanghai and Beijing,
and rents are thus skyrocketing. Because
of this, the market has drawn the attention
of foreign investors seeking stable profits
on a long-term basis. Although there may
be risks stemming from the economy, the
Chinese real estate market is now enjoying stable long-term growth, and investor
enthusiasm is expected to continue to
rise in the years ahead. Without a doubt,
this trend will fuel design and technology export to China from the international
architectural industry. It will also have a
strongly positive impact on business areas
such as risk analysis, construction consultation, and evaluation related to real estate
property investment, examples of which
are provided by the case of the China Central Place project.
Ron Tzuonshow(NIKKEN SEKKEI)
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
31
街区単位のエネルギーマネジメントで CO2 22%削減
晴海アイランド トリトンスクエア
京都議定書による温室効果ガス削減の第一約束期間
(2008年~ 2012年)
が迫る中、建築物からの CO2排出量の大幅な削減が求められています。
その一方で、都心部を中心にいくつもの大規模プロジェクトが進行し、床
面積の増加に伴う環境負荷の増加が懸念されています。こうした背景か
ら、大規模プロジェクトを中心に、より一層の環境負荷 CO2削減が求めら
れています。ここでは、街区ぐるみのマネジメントによって 22%も環境負
荷(CO2)
を削減した事例として、晴海アイランド トリトンスクエア(2001
年竣工)
を紹介します。
街ぐるみの運用を見越したエネルギーマネジメント
Harumi Island Triton Square:
Achieving 22% CO2 reduction with skillful energy
management
プロジェクトタイプ タウンエネルギーマネジメント
キーワード
コミッショニング BEMS 導入 街区管理運営会社の設立 環境マネジメント検討会
Harumi Island Triton Square provides an excellent example of the
way that community-wide energy management can achieve concrete, measurable results that serve broad-based environmental
needs. Today, large-scale projects in Japan are facing increasingly
urgent requirements to aggressively diminish the burdens they
place on the environment. Stringent Kyoto Protocol greenhouse
gas emission reduction targets will come into force in 2008, while
additional concerns are mounting over the environmental impact
of numerous new large-scale urban projects. Harumi Island Triton
Square, completed in 2001, rose admirably to these challenges,
achieving CO2 reduction of 22%.
このプロジェクトでは、
計画段階から地権者を中心に、
環境負荷削減とラン
Energy management involving the community
ニングコスト削減を重要課題として取り組みました。1988 年には、将来の
The reduction of environmental burdens and achievement of low
running costs assumed central importance in this project. To efficiently handle community-related management issues, the "Harumi
Corporation" was established with investment from landowners.
Use of a District Heating and Cooling (DHC) system and installation
of a high-capacity heat accumulation tank resulted in a compact
and highly efficient heat source energy system. Detailed estimations regarding energy, water, and waste were drawn up with an
eye towards the post-completion building management, and a
Building Energy Management System (BEMS) was applied.
To reduce costs, targets were set for energy-saving measures designed to lower fuel, light, and water expenses. The DHC lowered
heating costs, while an agreement to fix maintenance charges during the equipment procurement stage kept management operation
fees down. Necessary costs for greenery and environmental management based on the community’s afforestation plans are appropriated from the funds of the community.
街区管理を見据えた運営会社として、地権者の出資により
「株式会社晴海
コーポレーション」が設立されました。1996 年には地域冷暖房(DHC)を
採用することを決定し、DHC 事業者と連携して街区内に大容量蓄熱槽を
設置するなど、高効率でコンパクトな熱源エネルギーシステムをつくり上げ
ました。また竣工後の管理への活用を視野に、エネルギー・水・ゴミの綿
密な計量計測計画を立て、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)
を導入しました。
ランニングコスト削減の面では、
省エネルギーによる光熱水費の削減、高効
率でコンパクトな DHC による熱料金の削減、機器発注段階におけるメン
テナンス費取り決めなどで安価な管理運営費をめざしました。
その一方で、
街区の緑化計画に基づく植栽管理費や環境マネジメント運営費など、環境
管理に必要な費用についても街区管理費の中から捻出しています。
晴海アイランド トリトンスクエア
建築主:晴海一丁目地区市街地再開発組合・都市基盤整備公団東京支社
所在地:東京都中央区
建物種別:事務所・展示場・商業・一般店舗・ホール
構造:鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造
階数:地上45階、塔屋 2階、
地下4 階
延べ面積:435,606.31㎡(西地区1-1街区および X 棟・ホール棟)
竣工:2001年9月
敷地面積4.8ha のエリアでエネルギーマネジメントに取り組んでいる。 Energy management for extensive site as large as 4.8 ha
晴海アイランド トリトンスクエア
CO2排出量実績
Harumi Triton CO2 emissions
Harumi Island Triton Square
Client: Harumi 1-chome Area Redevelopment Association, Urban
Development Corporation (Currently: Urban Renaissance Agency)
Location: Tokyo, Japan
Major functions: office, shop, residential, multi-purpose space
Structure: S, SRC, RC
Number of floors: + 45, Penthouse 2, - 4
Total floor area: 435,606.31㎡
Completion: Sep. 2001
2,000 •
AKIRA OKAGAKI
Born: Oct. 1956
Joined: Apr. 1982
Chief Mechanical Engineer
M&E Engineering Deparment, NIKKEN SEKKEI
Executive Officer & Principal Consultant, Nikken
Sekkei Research Institute
延床面積(百万m2)
• 80
1,000 •
• 60
• 40
500 •
空調/換気
冷水
熱源
Heat source
Ventilation
Cold water
温水
Hot water
搬送ポンプ
Transport pump
建物全体
Building
動力
Power
オフィス階 搬送ファン、換気ファン
Office floor transport fan, ventilation fan
その他階 搬送ファン、排水ポンプ
Transport fan, drainage pump for other floors
0•
40 •
1990
2002
2010
•0
延床面積 (2010年は予測)
オフィス階 照明
Total floor area (forecast for 2010)
CO2排出量原単位(2010年は目標)
CO2 emission units (target for 2010)
電灯
Lighting
Lighting for office floors
照明
Lighting
その他階 照明
Lighting for other floors
20 •
0•
Triton
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
1,500 •
• 20
トリトンスクエア
(2005年度実績)
32
Total floor area (million m2 )
CO2排出量原単位(kg-CO2/m2年)
60 •
Energy
• 120
• 100
22%削減
reduction
CO2 emission units (kg-CO2/m2 yearly)
日建 設 計設備部 門エネル
ギー計画室 室長、日建設計
総合研究所 執行役員上席研
究員
エネルギー
Source: Kyoto Protocol Target Achievement Plan (Apr. 2005)
CO2排出量原単位(kg-CO2/m2年)
1956 年10月生まれ
1982年 4月入社
Plan for measuring energy consumption (office building)
CO2 emission units (kg-CO2/m2 yearly)
岡垣
晃[おかがき・あきら]
エネルギーの計量計測計画 (オフィス棟)
Changes in Japanese office floor
area and CO2 emissions
出典:京都議定書目標達成計画(2005年4月)
100 •
80 •
執筆者プロフィール Author
日本の業務ビル床面積とCO2排出量の推移
標準オフィス
Regular
office
このプロジェクトでは、床面積あたりの CO2排
出量を一般のオフィスビルに比べ 22% 削減す
ることができました。(2005年度実績 )
At Harumi Triton, CO2 emission per unit of floor
space was reduced 22% compared with regular
office buildings. (2005 actual results)
コンセント
Outlet
オフィス階 コンセント
Office floor outlets
昇降機
Elevators
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
33
街区単位のエネルギーマネジメントで CO2 22%削減
晴海アイランド トリトンスクエア
Harumi Island Triton Square:
Achieving 22% CO2 reduction with skillful energy
management
一次エネルギー消費量(オフィス棟平均)
建物完成後も削減効果を毎年確認
Primary energy consumption (average of office towers)
建物完成後、各棟の管理者が集まって定期的に環境マネジメント検討会を
開催し、BEMS で収集した運転実績データに基づいた運転改善の検討や
GJ/年 Year
2,500 •
22%削減
reduction
関係機関への定期報告の対応などを協議しています。また毎年の環境負
荷
(エネルギー・水・ゴミ)
削減効果を、パフォーマンスレポートとして公表
しています。DHC では、竣工後3年間綿密なコミッショニングを行い、運転
性能の確認と、より一層の効率化を図りました。
エレベーターその他
Elevators, etc.
2,000 •
コンセント
Outlets
照明
1,500 •
Lighting
空調・換気
エネルギー管理でランニングコスト削減
Air conditioning/ventilation
1,000 •
街区ぐるみの環境負荷削減には、1 都市排熱の有効利用など、都市スケー
ルでの高効率なエネルギーシステムづくり(ハード)、 2 運用段階のエネル
空調ポンプ
Air conditioning pump
500 •
冷熱・温熱
ギー管理による環境負荷とランニングコスト削減の仕組みづくり(ソフト)
といった、
ハード・ソフト両面からのアプローチが必要です。
Cold/hot energy
0•
2001
建物の運用段階における問題として、設計時点での予測性能を発揮して
2002
2003
2004
2005
標準
オフィス
熱源の削減効果
が大きい
Regular
office
いない建物がたくさんあるという事実が次第に明らかになり、エネルギー
Project Type Community-wide energy management
Keywords
Building commissioning, Application of BEMS, Establishing a company for community-related management
Environmental management review meeting
Performance reports verify reductions
Since the completion of the project, administrators from each
building have held regular meetings to review operational and environmental management issues. Data from BEMS are used for operation improvement and to prepare reports that are regularly presented to governmental offices, while yearly performance reports
document Harumi Island Triton Square's continued environmental
improvements. Building commissioning carried out in the three
years after project completion has confirmed DHC performance
and promoted further efficiency.
Running costs reduced by energy management
Effective environmental management involves both "hardware"
and "software" approaches, so to speak. A "hardware" initiative
might concern the structuring of a highly efficient community-wide
energy system, for example, while a "software" endeavor might
explore new ways of using this physical system to further cut costs
and reduce environmental burdens. In general society, projects
exhibiting truly first-class environmental and energy management
remain quite rare, and the importance of energy management is
being recognized. With its implementation, deviations from designed performance can be reduced, which lowers running costs.
In addition to the above, one goal for the future is to widen the
scope of energy management, going beyond a focus on individual
projects to encompass entire communities. Relevant timeframes
should also expand, with long-term "lifecycle management" providing a shared vision for particular buildings and the towns and
cities that surround them.
Akira Okagaki
Major
reduction of
heat source
管理の必要性が認識されつつあります。エネルギー管理を正確に行うこ
とで、設計性能との乖離をなくし、ランニングコストを削減することが可能
だからです。しかし運用段階でエネルギー管理を実際に行っている建物
はまだまだ少ないのが現状です。今後は、個々の建物でのエネルギーマネ
ジメントから、大規模プロジェクトを中心とした街ぐるみのタウンエネル
晴海トリトンでは、床面積あたりCO2排出量が一般のオフィスビ
ルに比べ22%削減することができました。(2005年度実績)
At Harumi
Triton,
CO2 emission per unit of floor
水使用量
(オフィス棟平均)
space was reduced 22% compared with regular office
Water
(average of office
buildings.
(2005 consumption
actual results)
m3/年 Year
雨水
ギーマネジメントへと空間的に拡大すること、また建物と街の生涯にわた
るライフサイクルマネジメントへと時間的に拡大することが期待されてい
ます。
岡垣 晃
towers)
Rainwater
400,000 •
リサイクル率
45%
recycling
rate
空調ドレン水
Air conditioning drainage water
冷却塔ブロー水
Cooling tower blow water
中水処理水
300,000 •
Treated water
上水使用量
Potable water consumption
200,000 •
100,000 •
0•
2005
ゴミ排出量
Waste discharge
kg/年 Year
2,000 •
廃油
Oil waste
乾電池
Dry batteries
晴海アイランド トリトンスクエア BEMS
[ パフォーマンスレポート2006]
Harumi Island Triton Square BEMS
Performance Report 2006
リサイクル率
57%
recycling
rate
1,500 •
ペットボトル
Plastic bottles
発砲スチロール
Styrofoam
カン
Cans
段ボール
トリトンスクエアでは、街区および DHC による継続的なエネル
ギー管理を行った結果、竣工以来エネルギー、水、ゴミの大幅な削
減を実現しています。エネルギー消費量の内訳を見ると、熱源エ
ネルギーの削減量が最も大きいことが分かります。これは、計画
段階から街区スケールでの大容量蓄熱槽の構築を検討し、熱源の
高い一次エネルギー消費効率を実現した効果によります。
With continuous efforts to manage energy using DHC
and involving the wider community, Harumi Triton has
made drastic improvements concerning energy, water,
and waste since its completion. The highest reductions
have been achieved for heat source energy, resulting from
a highly efficient consumption rate of primary energy
achieved with a large-scale high-capacity heat storage
system.
34
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
Cardboard
ミックスペーパー
1,000 •
Mixed paper
OA紙
Copier paper
雑誌
Magazines
新聞
500 •
Newspapers
不燃ゴミ
Non-burnable waste
「花のテラス」と「水のテラス」。低層部に施された多くの植栽は、この区域の特徴でもあり、安らぎをもたらしている。
The "flower terrace" and "water terrace" are pictured here. The abundant greenery planted in the lower tier area gives the community a distinctive character and provides
a comforting atmosphere.
可燃ゴミ
Burnable waste
生ゴミ
Food scraps
0•
2005
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
35
プロジェクトマネジメントガイド
A Guide to Project Management
プロジェクトマネジメント全体像
Project management in broad brushstrokes
建設プロジェクトは非常に複雑で曖昧なプロジェクトであり、複雑性を
Every construction project involves more than meets the eye at
first glance, with new levels of complexity emerging at each step.
Ambiguities constantly present themselves, and the challenges
faced a given stage rapidly give way to different issues as the
project advances. To cut through the confusion, Nikken Sekkei
first begins by examining the scope of a project—the factor that
determines the basic direction of the entire endeavor. Once scope
has been delineated, Nikken Sekkei looks at the project from
nine perspectives of scope (or goal), quality, schedule, cost, communication, risk, human resources, procurement and integrated
management. The following material explains how project scope
is initially set and explores some specific ways in which Nikken
Sekkei manages quality, schedule, and cost.
整理するために、スコープ(目標)、品質、日程、コスト、コミュニケーショ
ン、リスク、人的資源、調達、統合管理の 9 つの観点でマネジメントを行っ
ています。
中心にあるスコープはプロジェクトの目標であり、全てのマネジメント領
域の方向性を決定する基準となります。
ここでは、プロジェクトの初期段階におけるスコープの設定について説明
した上で、
事例を通し
1
品質(Quality)2 日程(Schedule)3 費用(Cost)
それぞれにおける日建設計のマネジメント手法の一例を紹介します。
Quality / Schedule / Cost とのバランスを図った目標の設定
スコープ
Scope
[現状把握・目標レベル
(スコープ)
設定]
Establishing targets that balance quality, schedule, and cost
プロジェクトを成功させるためには、まずはじめに漠然としがちなプロ
ジェクトの目的と範囲を明確にすることが重要です。適切な目標レベル
(スコープ)
を設定し、ステークホルダー間で目標の達成をゴールとして、そ
のイメージを共有することで、プロジェクトメンバーが一体となり、スムーズ
なプロジェクト遂行が可能となります。
目標レベル設定のためには、課題を明確にし、クリティカルポイント(プロ
ジェクトの方向を左右する要件)を見つけ出す必要があります。このとき
重要となるのは、3 つのマネジメント領域 Quality/Schedule/Cost との
関連です。
プロジェクトマネジメントを支える 9つの観点
The nine perspectives of project management
建設プロジェクトにおいて重要な領域である Quality/Schedule/Cost は、
相互に大きく影響
(相反)する関係を持ちます。そのため、クリティカルポ
イントに対する3領域の影響を把握し、それぞれが適切なレベルを達成で
A successful project begins with the identification of an overall target
and the clarification of the undertaking’s scope. By making sure that
all stakeholders share a common grasp of the goal, a unified vision
is achieved, setting the foundation for the rest of the project. At this
stage, any critical paths that may affect the project’s direction need
to be identified.
Of particular importance at this stage are the three crucial management perspectives of quality, schedule, and cost. These three will
influence each other, either positively or negatively, and they must be
considered in terms of their mutual interactions, rather than in isolation. Moreover, they will impact other aspects of the project—a fact
that underscores their centrality. It is vital to examine the effects that
critical paths have on quality, schedule, and cost when setting appropriate targets that can be achieved.
きる目標の設定が求められるのです。
統合管理
Integration
ン
ショ n
ー catio
ケ ni
品質 / 日程 / 費用
Quality/Schedule/Cost
目標の設定から具体的手法の検討へ[マネジメント手法の検討と実行]
Formulating goals and studying specific methods
コミ
Co ュニ
mm
u
ク
sk
リ
Ri ス
Quality/Schedule/Cost を考慮した目標レベル(スコープ)を設定後、達成
日程
Schedule
費用
Cost
のための具体的な手段を検討します。マネジメント手法はプロジェクトの
特性によって個々に立案・実行されます。
After the scope has been defined with an eye to quality, schedule,
and cost, the next step involves focusing on specific methods to
achieve the target, individually tailored to the particulars of the
project in question.
源
資 sou
e
t
達 men
e
品質
Quality
Pro 調
cu
r
s
r ce
スコープ
Scope
マネジメントを支える技術
Skills that support management
全体をコントロールする領域[プロジェクト全体のマネジメント]
Areas of central importance for the entire project
コミュニケーション
リスク
人的資源
調達(購買・発注・契約)
関係者が多いプロジェクトでは情報の
リスク対策には、潜在的なリスクを分
プロジェクト達 成のためには、目標・
プロジェクトには、多数の購買・発注
"共有 " と円滑な "伝達 " が鍵となりま
析し、
不測の事態に対応するためのバッ
特性に応じて、求められる専門技術者
プロセスが生じます。このとき、プロ
す。そこでは意志決定権限や組織体制
ファーの確保が考えられます。リスク
を適切に登用する必要があります。必
ジェクトに適した購買・発注戦略を明
を明確化し、会議の設定・決定機関へ
対応の想定を広く行うために、リスク
要なスキルとサービスを定義し、社内
確にし、発注先を選定することが必要
の説明機構の構築等により決定プロセ
の識別・対応策の策定・監視コントロー
外を問わず専門家と協働し、個々に対
になります。また、その際の契約管理
スを整理することが重要となります。
ルは不可欠です。
応した柔軟なチーム編成が有効となり
も重要な要素となります。
Hu 人
m
an 的
r
ます。
建設マネジメントでは、スコープを達成するための領域である 3 つのマネジメ
ント Quality/Schedule/Cost が重要です。
それと同時に、全体マネジメント項目として、コミュニケーション、リスク、人
的資源、調達があげられます。
Quality, schedule, and cost are central factors relating to the scope
of a construction project. Communication, risk, human resources,
and procurement are also important in overall project management.
(引用:
『Microsoft Project でマスターするプロジェクトマネジメントの極意』)
36
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
Communication
Risk
Human resources
Procurement
The key to a project involving many
people is the sharing of information
and the facilitation of smooth communication. It is necessary to determine decision-making authority and
organizational structure, setting forth
specific procedures for conducting
meetings, distributing information
among decision makers, and the like.
It is extremely important to analyze
potential risks and secure buffers
in case unexpected situations arise.
Failure to do so can have significant
and serious consequences. To expand
the scope of anticipated risk, project
management must classify risks, create countermeasures, and implement
supervisory control.
In order for a project to succeed, expert engineers in specific fields must
be able to achieve important targets
and meet focused requirements.
After defining the skills and services
necessary for the project, it is beneficial to form a team of flexible, adaptive, and highly skilled internal and
external experts.
A ll projec t s involve a variet y of
purchasing and ordering processes,
which entail reaching reasonable
agreements. It is imperative to carry
out adequate purchasing, to specify
an appropriate ordering strategy, to
select sources that fit specific criteria,
and to carefully manage all contractual arrangements.
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
37
Quality Management
クオリティの設定に関するクライアントニーズは不明確なことが多く、特
にプロジェクト初期段階では曖昧なものや、潜在的なものもあります。明
確ではないが重要なニーズを顕在化させないでプロジェクトを進めてし
まうと、プロジェクト全体に大きな影響を与えます。したがって、ニーズ
の本質を読み取り、より具体的な要求品質として置き換えていくことが
重要です。
また、建物品質は、常にスケジュールやコストの制約を受けています。
それぞれの、相互(相反)関係の中で生じる問題点を見い出し、優先順位
や絶対条件の中でそのバランスをとることが求められます。
Quality requirements are often difficult for clients to gauge at first. At
the beginning of a project, in particular, the entire topic appears very
hard to approach in a concrete manner. However, although qualityrelated factors often seem vague and difficult to pin down, moving
forward without settling such matters can lead to major obstructions
at later phases. In addition, building quality is always subject to restrictions of schedule and cost. Achieving a balance between limitations
and expectations is important. Nikken Sekkei works carefully with clients to accurately determine absolute requirements, prioritize project
goals, and set stringent quality standards from the outset.
統一したブランドイメージを建物品質に反映させるためのマニュアル策定
Forging unity with the use of a manual
あるスポーツクラブの既存の施設買収による全国展開においては、同時
One Nikken Sekkei project involving the purchase of multiple athletic
facilities to form a nationwide chain posed the challenge of achieving a
unified and sophisticated brand image through high-quality simultaneous renovation. Due to the use of numerous different designers and
constructors, it was assumed that it would be difficult to transmit information accurately and acquire a consistent level of quality. To achieve
this formidable goal, Nikken Sekkei first created a manual that strictly
stipulated required quality and design standards. The text was written
with an eye to fostering a cohesive overall vision for the project and
the use of this manual resulted in a shortened schedule. Whenever the
manual was updated, the "Plan Do Check Act" (PDCA) cycle proved
beneficial in ensuring quality control.
期に複数の店舗を改修することと、統一したブランドイメージを建物品質
に反映させることが求められました。しかしこういったケースでは、各地
域で設計者や施工者がそれぞれ異なり、情報の正確な伝達や施工品質の
管理が難しいと判断しました。
そこで、このプロジェクトでは、各店舗の改修設計を進める前に、要求
品質やデザインコードをマニュアルとして作成しました。これにより、異
なる設計者や施工者でも同一のブランドイメージをもった要求品質を共
有することを可能にしました。
クオリティマネジメントのフロー
改修マニュアルの副次的な効果として、マニュアルを使用することで企
Quality management flow chart
画から竣工までのスケジュールが短縮できました。そして、マニュアル是
企画
設計
Planning
正更新による PDCA サイクルを店舗展開に導入できたことは、その後の
施工
Design
Construction
展開における品質管理上の大きなメリットとなりました。
クライアントニーズ
Client needs
明確化・顕在化
Clarify & expose
Drawings
要求品質のアジャスト
要求品質
目標水準の設定
Building
quality
施工品質(個々)
Construction quality
(individual)
Adjusting required quality
Required quality
Setting target level
改修マニュアル Renovation manual
建物品質
図面
1. 基本コンセプト
1. 基本理念
2. 基本理念に基づく具体策
2. 計画・建設のフロー
1. 組織体制と意思決定のルール
2. 条件整理
3. 事前調査・監督官庁との協議
4. 工事区分
5. 各工事毎の施工上の重点管理事項
6. 施工管理チェックリスト
7. 検査要領
マニュアルなどの策定
Creating a manual
スケジュールとコストとのアジャストメント
Schedule and cost adjustment
施工品質の確保
3. 施設計画
1. 配置計画
2. 建物の構成
3. 構造計画
4. 外装・外構計画
5. 内装計画
6. 電気設備計画
7. 空調設備計画
8. 衛生設備計画
9. 各室の標準仕様
4. 標準設計図
(参考図)
Securing construction quality
クライアントニーズの本質を見極めた目標水準の策定
海外案件における施工品質の確保に対するリスク管理
Sidestepping international risk with finesse
ある企業の全国的な投資用建物群のリノベーション展開においては、従
近年増加している海外案件においては、施工品質を確保する際、日本で
来の同一内容・同一水準による改修から、個々の建物ごとに事業収支に
競合ビルとの比較検討表
は通常リスクではない事項でも大きなリスクとなることが多いため、品
見合う改修への転換が求められました。
Comparison with competing buildings
質管理上の手法をいかに多段的に設定するかが重要となります。
During overseas projects, the quality control process must take place
in multiple stages, since what may not be regarded as risky in Japan
could turn out to be a major hazard elsewhere. During a recent project
in China, completed jointly with local designers and builders, the first
stage involved the stipulation of rigorous quality requirements in the
contract. Next, the design drawings went through a confirmation process to ensure that they satisfied performance requirements. In the following stage, quality was monitored and enforced when procuring materials. In later stages as the project unfolded, Nikken Sekkei stationed
employees at the site, allowing communication with the contractor not
only in words but also with the use of drawings and sketches.
そこで、このプロジェクトではまず各地域における不動産マーケット状況
建物名
●ビル
◆ビル
■ビル
賃料やスペックを把握した上で、積極/消極の改修戦略の決定を行いま
想定賃料(円/坪)
15,000
12,000
した。
立地
と周辺のビルスペックなどの地域特性を分析し、その地域で求められる
中国で行なったプロジェクトでは、現地の設計者・施工者と協働してプロ
当該建物
改修前
改修後
ジェクトを進めるにあたって、通常の手法にとらわれない管理体制を構
10,000
9,000
13,000
築することで施工品質の確保を実現しました。まず契約を締結する際に
A
B
A
B
B
性能品質まで規定し、さらにその性能基準を満たした設計図となってい
マーケット環境に合わせた戦略決定と、それに沿った改修工事内容・スペッ
賃貸形状
A
B
B
B
B
るかを確認するといった 2段階のチェックを実施しました。加えて、各資
クの決定により、同一水準による水平展開を行うよりも高い事業収支を
天井高さ
A
B
C
C
A
材を調達する段階における確認の徹底や、現地に駐在しながら施工者と
外観
B
A
C
B
B
言葉だけではなく図面やスケッチ等を駆使して意思疎通を図るなどの対
共用部
B
C
B
C
B
応を行いました。
駐車場
A
C
B
C
B
空調
A
B
B
C
B
情報通信
A
B
C
C
A
照明
B
B
C
B
B
A
B
B
C
B
確保しました。
Detailed market knowledge for larger profitability
and client satisfaction
In one notable project, Nikken Sekkei renovated an array of buildings
across Japan, each with its own structural and cost prerequisites. Ordinarily, such endeavors permit uniform changes in all locations, but this
project was different. Also, because the plan called for the buildings
to be renewed for investment purposes, it was paramount to achieve
operational profitability in every location. Nikken Sekkei used local real
estate market characteristics to specify each structure as the target
of an "active" or a "passive" approach. By renovating the buildings
with specifications customized to individual markets, profitability was
reached with an ease that would have been impossible with traditional
methods of identical renovation.
建物グレード
設備グレード
総合評価
中国と日本 品質管理の比較 Quality control comparison of Chinese and Japanese projects
実施設計
標準仕様書
SOなどによる
基準
日本における通常の品質管理
プロジェクト
中国で行ったプロジェクトの品質管理
性能品質
実施設計
施工段階
資材調達
コミュニケーション
38
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
39
Schedule Management
スケジュール短縮のための手法
Methods of shortening schedule
収益不動産のプロジェクトにおいては、スケジュールの短縮が常に求め
The following examples demonstrate how innovative administration
can lead to shorter construction schedules—always necessary with
real estate acquired for the purpose of generating profits.
られます。以下に各々のプロジェクトの状況を踏まえた、スケジュール短
縮のための管理手法を紹介します。
Schedule management begins with the analysis and understanding
of tasks and the creation of a master schedule. In particular, it is necessary to identify the critical paths that could create bottlenecks or
impact the course of the entire project. Appropriate risk management,
schedule control, and monitoring of the overall project take place at
each stage, with the project manager setting suitable time spans and
ensuring that each task follows the established plan for smooth and
reliable progress.
スケジュールマネジメントはまず、プロジェクト初期段階にタスクの把握・
分析からクリティカルパスを見い出し、全体のスケジュール(マスタース
ケジュール)
を設定することからはじまります。また、各段階に応じたリス
ク管理やスケジュールコントロール、プロジェクト全般にわたるモニタリ
ングなどを行います。適正なタイムスパンの設定とタスクの管理による的
確なスケジューリングが、プロジェクトを円滑に進める鍵となります。
手法 1 Method 1
分割によるスケジュールコントロール―マルチトラック―
マルチトラックのプロセス
ある大規模開発プロジェクトでは、十分な事業・仕様検討期間の確保と
The "multi-track" process
タイトなスケジュール達成の両立を図りました。このプロジェクトでは、
通常1回の設計・確認申請→施工フェーズを、数回に分割し実施しました
(マルチトラック)
。着工可能にする暫定設計で、申請を行うとともに、検
討を踏まえた設計変更を並行して行うことを数回くり返しました。そう
することにより、竣工スケジュール遅延の回避を図りました。一方、マル
スケジュールマネジメントの流れ
チトラックはスケジュールの複雑化をもたらすため、各々の項目に対し、
Schedule management flow chart
竣工予定
当初の
スケジュ
ール
不確定要素による遅延工事
変更時の
プロセス
(通常)
設計
不確定要素の調整
許認可
工事
徹底したリスク管理を行うことで、クオリティやコストとスケジュールの
企画
設計
Planning
施工
Design
整合を取ることができました。
Construction
Division of stages with the "multi-track" process
リスクの分析
Analyzing risks
リスク管理
クリティカルパス
Risk management
Critical path
短縮化
マスタースケジュールの設定
Shortening schedule
Setting a master schedule
モニタリング
Monitoring
Project
タイムとタスクを先読みする―マスタースケジュールの設定―
Looking ahead with foresight
ある大規模再開発プロジェクトでは、既存施設の空調更新という比較的
Among the necessary duties that take place during a large-scale redevelopment project, renewing the air ventilation system appears at
first glance to be a relatively minor task. But in one particular Nikken
Sekkei project that called for renovation of an existing building, it became the critical path and set parameters determining how the overall
endeavor would be scheduled. In this project, because renovation was
taking place without the interruption of the use of the building, the air
ventilation systems had to be renewed in an efficient manner without
interference to ongoing commercial activities. By accurately grasping
and analyzing the work and risks involved during the initial stage and
by setting an adequate schedule, Nikken Sekkei avoided a major risk
that could have delayed the schedule by a year or two.
小さな工事がクリティカルパスとなり、スケジュール全体が決定しました。
このプロジェクトでは既存施設の営業継続のため、一部商業施設の営業
を停止することなく空調機器更新を行う必要がありました。この際、空
調更新可能時期(中間期)がクリティカルパスとなり、それを中心に他の
工程を組むこととなりました。
大規模再開発において、既存部分の空調機器更新という項目は些細な事
のようですが、年単位のスケジュール遅延を引き起こすリスクにもなりか
ねません。初期段階に先行的にタスクとリスクを把握・分析することによ
るスケジューリングが、大きなリスク回避を可能にしました。
One recent project provides an excellent illustration of Nikken Sekkei’s
ability to secure a substantial period of time for review of operations and specifications amidst tight scheduling requirements. In this
case, the goal was achieved with the so-called "multi-track" process,
which divides the overall process into several phases. A temporary
design was used to acquire a building permit while at the same time
reviews of the design were carried out and necessary changes were
continuously implemented. Using this process, an early start was
made possible and construction delays were prevented. The "multitrack" process entails additional complexity, but by enforcing risk
management at each step, realization of targets for quality, cost, and
schedule becomes possible.
マルチ
トラックに
よる
変更時の
プロセス
設計
調整1
調整2
工事
許認可
工事
許認可
工事
マルチトラック効果
許認可
竣工予定
手法 2 Method 2
タスクのオーバーラップによるスケジュールコントロール― DD 発注―
通常の設計プロセスでは、基本設計→実施設計→発注という流れを踏み
DD発注のプロセス
"Design development ordering" process
ます。しかしこの建替えプロジェクトでは、基本設計段階でコストイン
パクトの大きい事項やクオリティ等の重要要素を盛り込み、実施設計前
設計
に発注図書を作成し発注を行いました(DD 発注)。解体→埋蔵文化財調
査作業と実施設計を同時並行で進めることで、当初想定よりも短い期間
でプロジェクトを進行することができました。
基本設計
実施設計
発注
通常の
プロセス
DD 発注の採用では、リスク事項やコストインパクトの大きい要素の見
解体
施工
極めと、発注図書への的確な盛り込みが重要となります。
工事
埋蔵文化財調査
Saving time by overlapping tasks
マスタースケジュールの設定
Creating a master schedule
タイムとタスクの分析
マスタースケジュールの設定
The regular design process proceeds in the order of schematic design,
design development, and ordering. But in this rebuilding project,
important concerns such as expensive items and quality issues were
resolved at the schematic design stage—a vital time-saving method.
Drawings and documents were drafted, and actual orders were
implemented before the design development stage. This process is
known as " design development ordering." While simultaneously
engaging in dismantlement and allowing studies concerning buried
cultural artifacts to take place, the project was completed earlier than
initially estimated.
設計
基本設計
実施設計
発注図書作成
DD発注
施工
解体
工事
DD発注効果
埋蔵文化財調査
クリティカルパスの発見
40
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
41
Cost Management
近年、プロジェクトコストの最小化と透明化の重要性が増しています。こう
した状況を踏まえた上でのコストマネジメントのキーポイントは、3点あり
ます。 1 プロジェクト早期において、建物グレードなどのクオリティを踏ま
えた目標コストの設定とその適切な配分を行うこと。 2 発注段階におい
て、状況に応じた様々な発注方法を戦略的に駆使することによるコスト管
理。 3 施工段階における追加・変更工事コストのトラッキングおよびその
支払い管理などのトレーシングです。
In recent years, the importance of minimizing and elucidating project
costs has increased, and this trend shows no signs of slowing down.
Effective cost management requires that cost targets appropriate to
the scale and quality necessary for a given site be identified at an early
stage. Strategic management of costs should utilize various ordering
methods, while additions and modifications regarding construction
costs must be tracked and payment methods should be carefully recorded.
状況に応じた柔軟な対応が可能な発注戦略
An ordering strategy for every situation
発注戦略は、目指すべきクオリティが確定した後、最もコストインパクト
After specific criteria relating to quality have been spelled out, decisions concerning ordering strategy usually constitute the next aspect
to be tackled. These matters must be settled early on because they
greatly impact the cost of a given project. Split ordering, ordering in
bulk, utilization of competition, and designation of specific firms are
among the possible choices, and selection must take place in light
of schedule limitations and quality requirements. In one particular
renovation project, the client first wanted to use a single firm for the
entire process, but when the cost proposal did not meet the client’s
target, the ordering method was switched to a competitive "cost-on
method," allowing the desired cost to be achieved. By preparing proactively for the possibility of such a change and applying construction
management engineering methods, Nikken Sekkei avoided schedule
delays and undue complexity during the undertaking.
の大きい戦略決定となります。
「競争⇔特命」、
「一括⇔分離」などのいく
つかの組み合わせを選択し、スケジュール・クオリティなどの制約下で、
最も有効な戦略をプロジェクトごとに導き出す必要があります。
ある改修プロジェクトにおいては、クライアントの要請により当初、特命
による一括方式を想定していましたが、その後、コスト条件との不整合
により競争コストオン方式による発注方式へ変更を行い、コスト条件の
達成を可能にしました。
一方、発注の変更やコストオン方式の採用は、スケジュールの遅延やク
オリティマネジメントの複雑化をもたらします。このプロジェクトでは、
コストマネジメントの流れ
発注方式の変更の可能性を先読みした事前準備と施工管理へのコンスト
Cost management flow chart
ラクションマネジメントの適用により、これらのリスク管理を行いました。
企画
設計
Planning
施工
Design
Construction
某プロジェクトにおける発注戦略とその効果
Ordering strategy and effects for a specific project
目標コストの設定・概算コストの検討
Setting target cost and reviewing roughly estimated overall cost
一括特命方式
コスト配分
Cost allocation
クオリティとのアジャストメント
発注戦略
Adjustment with quality
1
Ordering strategy
交渉・契約
Negotiations, contract
追加・変更コストのモニタリング
発注方式の変更
(約20%コストダウン)
コ
ス
ト
Monitoring additions and changes to cost
支払い管理
競争
コストオン方式
Managing payments
3
2
Project
マネジメントによる、
リスクの低減
スケジュール/クオリティリスク
初期段階における、明確な目標設定とコストの把握
Early pinpointing of goals and costs
発注時の契約条件管理と追加・変更工事のトレーシング
Attention to documentation, agreements, and changes
日建設計では、プロジェクト初期段階にクオリティに即したぶれの少ない
In order to determine accurate target costs that meet stringent quality standards, Nikken Sekkei undertakes comprehensive briefings and
utilizes specialized tools for rough initial estimates. A special type of
spec sheet provides a visual comparison of the cost- and value-related
aspects of a project by indicating specifications and quality in images
and rough cost estimates in stages. This allows the comparison of
quality and cost, and rationalizes the process of adjusting these two
factors in relation to each other. To approximately calculate overall
costs, a highly precise estimation tool connected with a database is
used, employing extensive data accumulated over a long period of
time regarding cost estimations for various types of buildings and construction projects.
施工者等とのコスト交渉において、コストインパクトを大きくする要因と
When negotiating cost issues with constructors, factors surrounding
designs, documents, or contract conditions are frequently the cause of
significantly increased costs. In addition, inaccuracies occurring with
respect to these factors can make for very difficult situations that can
result in disputes or other undesirable circumstances even after construction has been completed. The management of such matters must
be handled prudently. By implementing strict controlling policies regarding design documents and contracts and proposing a fair project
operation policy, it becomes possible to achieve considerable reductions in risk and cost. In addition, during the construction stage, it is
important to create a cost record for all additions and modifications
and evaluate their relevance. This enables reductions in additional
changes and serves to secure accountability.
います。
クオリティとコストとの比較・調整ツールとしては、コストとグレードが視
覚的に判断できる「スペックシート」を使用しています。これは、要所とな
る箇所別に仕様やグレードをイメージ別に示し、コストの目安を併記した
もので、コストとクオリティのバランスを視覚的・定量的に判断することが
できます。
また、概算コストに関しては、建物種別やグレード別での想定コストを長年
培ってきた多種多様なノウハウと最新の建設費動向を踏まえたデータベー
スを基に、精度の高い想定コスト概算ツールを使って算出しています。
スペックシート Spec sheet
目標コストを把握するため、ブリーフィングや概算コストツールを導入して
ཎ ࣉ
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して、見積図書の状況や契約条件があげられます。不明確な設計図書や
契約条件は、契約後あるいは竣工後のトラブルの原因となるとともに、
見積側のコンティジェンシー(予備費等)
の増加をもたらします。
発注時の図書管理や契約条件管理を厳密に行い、公正なプロジェクト運
営方針を示すことにより、コンティジェンシーの排除によるコスト低下と
将来のリスク低減が可能となります。
また、同様に工事段階においても、追加変更工事に対して、その内容・
経緯を把握するとともにコストの妥当性を判断し、トラックレコードを作
成することは、追加変更コストの低減とアカウンタビリティの確保の上で
重要です。
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42
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
43
日建設計グループ マネジメント活用事例
コンバージョンにより最短で希望施設を生み出す
KVH 東京データセンター
Examples of Project Management in Action
KVH Co., Ltd., Tokyo Data Center
Creating a facility in the shortest construction period possible with conversion
通信事業者 KVH の東京データセン
居ながらの改修工事で、工期中約2年の賃貸収入を維持
Nagoya Itochu Building (ORIX JREIT Inc.)
名古屋伊藤忠ビル(オリックス不動産投資法人)
ターは、
短期間での完成が必要とされ
ていたため、新築ではなく、既存ビル
Renewing a building in use and retaining valuable rent and business
を用途変換するコンバージョンという
手法が取られました。ビルは法的お
よび機能上必要な部分を残し、地盤
改良・構造補強・専用設備・大容量シャ
築 23 年、延べ面 積17,800 ㎡のこの
テナントビルは、REIT の保有資産で
あり、運用安定のためにバリューアッ
ブ改修を行いました。
「将来にわたり
安定的な収益が期待できる資産とし
て、REIT のコアとなるビルとする」を、
改修前外観
Exterior before renovation
プロジェクトのゴールとし、空調の個
別化、天井高の拡張、共用部のアメ
ニティの向上、20年前の外観デザイン
改修後外観 Exterior after renovation
の刷新、という 4 つの改修方針を基
に計画しました。外装工事は既存 PC
板とサッシを残して、その上にカーテ
ンウォールを張るという方式を採用
し、除却費の最小化を図りました。
内装工事では、空室を上層階の 1フ
ロアに集約させ、空きフロアを改修
改修前エントランス
Entrance before renovation
改修後エントランス Entrance after renovation
しては、テナント(合計33 社)に下階
から上階へと順次移動していただく、
居ながら工事とし、約2年の工期中の
賃貸収入が途絶えないようにしまし
た。また、工事を適切に分け、自由
競争による価格の透明化を図り、工
事費の最小化に努めました。完了後
改修前オフィス
Office before renovation
改修後オフィス Office after renovation
は、新築と同じグレードのオフィスビ
ルに生まれ変わり、当初定めたゴー
This 23-year-old building with a
floor space of 17,800m2 was an REITowned asset that was refurbished in
order to increase its value so as to
achieve stable asset management. In
order to keep removal costs at a minimum, a method that involved placing new curtain walls over existing
precast concrete panels and sashes
was used for the exterior. The vacant
rooms were consolidated in an upper floor, which was then renovated
first. The 33 tenant companies were
asked to move from the lower floors
to the finished upper floors as work
progressed. In this way, the building
was able to undergo a facelift even
while remaining occupied, enabling
the owner to continue to collect
rent during the two-year construction process. Construction fees were
reduced and the process was made
transparent by leveraging the power
of competition and rationally apportioning construction processes. Upon
completion, the newly renovated
building was favorably compared to
those built from scratch.
ルに到達できました。
坂原祐樹・長谷川久乃
Yuuki Sakahara
Hisano Hasegawa
(Nikken Sekkei Construction Management)
(日建設計コンストラクション・マネジメント)
フト等の必要な機能が付加されまし
た。さらに、時間を要する機器・資材
について先行発注を行うことで、新築
よりも早く必要機能を備えた建物が
完成しました。
外観 Exterior Copyright ©2007 by KVH CO. LTD All Rights Reserved
白水敏矢(日建設計)
半沢正一
(日建設計コンストラクション・マネジメント)
Copyright ©2007 by KVH CO. LTD All Rights Reserved
設計性能を十分に発揮できるかを事前に検証
Merrill Lynch Japan Securities Co., Ltd., Head Office
メリルリンチ日本証券本社(日本橋一丁目ビル)
Conducting prior verification of design performance
通常、新築建物の設計性能が十分に
In most cases, the design performance
of a building is not verified beforehand, presenting a great deal of risk to
clients. To ensure that systems such as
air conditioning and electricity would
perform according to expectations,
Nikken Sekkei was asked as a third
party to carry out a process known as
“building commissioning” for a building designed by a different firm. Examinations and tests were conducted
in essential areas of the building such
as trading rooms under a variety of
hypothetical conditions. These ranged
from the operations of an ordinary day
to rare events such as blackouts.
発揮されるかどうかは事前に検証さ
れておらず、使用者はリスクを伴いか
ねません。これを回避するため、空調・
移転の基本ステップ Basic plan for the moving process
能が発揮され、運転保守が可能な状
3 ヶ月で 1 フロアを 1 クールとして上階から順番に改修→移転を行う。
態であるか検証することをコミッショニ
ングといいます。ここでは他社設計の
建物に対し、
第三者の立場から引渡し
前の段階に、ディーリングルームなど重
要エリアを対象に、運用時や停電時な
ど想定され得る状況を擬似的に試験
し、設計内容の性能を検証しました。
改修フロア工事準備
凡例
改修フロア工事中
改修フロア工事完成
既存内装のまま
営業中
高柳慎太郎(日建設計)
長谷川巌
(ビルディング・パフォーマンス・コンサルティング)
内装改修工事中
ドライヤーを使い、オフィス稼動時と同様の電気負荷と、室温
の上昇を再現し、性能を検証する実験風景。
移転
Shoichi Hanzawa
Server Room
各テナントへヒアリングを実施し、移転・仮移転、
事務所拡張、縮小等の要望事項を整理。
移転ステップ図を作成して最適な移転フローを決定。
凡例
(NIKKEN SEKKEI)
通信機械室
テナント移転ステップ図 Plan for relocating tenants
● Toshiya Shirouzu
(Nikken Sekkei Construction Management)
電気等の各システムに対して、設計性
● Speed was of the essence in establishing the new Tokyo data center of
telecommunications carrier KVH.
Therefore, conversion of an existing
structure rather than construction
of a new building was the logical
choice. Necessary functions and legal
requirements were maintained while
foundation improvement, structure
reinforcement, and the addition of
special equipment and high-capacity
shafts took place. By pre-ordering
equipment and materials that usually
take a long time to procure, a highquality building that satisfied all requirements was completed faster than
constructing a new building.
Shintaro Takayanagi
(NIKKEN SEKKEI)
Iwao Hasegawa
(Building Performance Consulting)
A design performance test used dr yers to produce
electricity load and increases in temperature equivalent
to those taking place during office use.
移転後仮営業中
新事務所完成
新事務所で営業
改修フロアへ下階から移転引越し
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FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
改修フロアへ下階から移転引越し
改修フロアへ下階から移転引越し
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
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売止期間3.5ヶ月、コストミニマムのホテル改修
Mitsui Urban Hotel Nagoya
三井アーバンホテル名古屋(旧名古屋金谷ホテル)
Realizing hotel renovation at minimal cost in only three and a half months
このプロジェクトは、築25年、延べ面
積 9,400 ㎡(客室数 270)の旧名古屋
金谷ホテルの再生プロジェクトです。
外装(低層部)・内装バリューアップ
改修を、ホテル営業売止期間と設定さ
れた 3.5ヶ月という短期間で行いまし
改修前エントランス
Entrance before renovation
た。コンストラクションマネジメントを導入
し、専門工事を分割し(コストオン)、
改修後エントランス Entrance after renovation
適切なチーム編成により、耐震補強、
海外調達など多岐にわたる工事発注
において厳密なスケジュール管理を
実行し、
大幅なコストダウンを実現しま
した。この工事によりイメージが一新
され、
客単価、
稼働率ともアップできま
改修前ロビー
Lobby before renovation
した。
改修後ロビー Lobby after renovation
坂原祐樹・前川智之
This renovation project involved a
25-year-old structure formerly known
as the Nagoya Kanaya Hotel with a
floor space of 9,400m2 and 270 guest
rooms. The renovation of lower-floor
external walls and overall interior
improvements were completed in only
three and a half months. Construction
management, the “cost-on split ordering” method, and overseas procurement allowed for a dramatic reduction
of expenses. Specialized teams were
created for rigorous schedule management of order placement concerning
various aspects of the project, such
as seismic work. The renovation has
brought a new image to the building,
promoting an increase in both sales
per guest and room utilization ratios.
(日建設計コンストラクション・マネジメント)
Yuuki Sakahara
Tomoyuki Maekawa
3つの事業者が共同して街並みを創る
さいたま新都心 4 街区
Fourth zone in Saitama New Urban Center
Forging agreement among interests to create a community
敷地面積約1.2ha のこの 4街区は JR
さいたま新都心駅前に位置してい
ます。街区内の歩行者デッキと交通
広場を、隣接する 3つの建物(明治安
田生命 LA タワー他)事業者により、
共同で整備しました。駅、隣接街区、
周辺道路・首都高速道路(地下)等
の基盤整備が並行して行われる中
で、多くの関係者との調整を行いま
した。その中でテーマに応じて設
けた大小の会議体が有効に機能し
ました。各建物の資産価値を保全す
るために、整備・所有区分をはじめ
維持管理区分にも留意し、目標スケ
ジュールに沿って事業を推進しま
した。
明治安田生命ランドアクシスタワー。
他の建物とつながる1・2階を中心に計画を調整。
(日建設計)
降簱哲人
The plan involved connectivity of
the 1st and 2nd floors with other buildings
The fourth zone in Saitama New Urban Center, with an area of 1.2ha, was
jointly developed by the owners of the
three buildings (Meiji Yasuda-Seimei
Bldg., LA Tower, etc.) located in the
zone. During infrastructure development involving a train station, neighboring zones, roads, and underground
areas beneath highways, coordination
efforts for reaching an understanding
among the numerous parties involved
were also implemented. Meetings with
various themes and of different sizes
were utilized effectively. In order to
secure the asset value of each building, construction closely followed the
target schedule, keeping in mind the
ownership and maintenance needs in
each area.
Tetsuto Furuhata
(NIKKEN SEKKEI)
(Nikken Sekkei Construction Management)
改修前客室
Guest room before renovation
JR 東日本
(ホテル)
ドコモさいたまビル
(オフィス)
改修後客室 Guest room after renovation
歩行者デッキ
約120店舗のテナントを調整し、
建物品質を確保
Northport Mall
( ノースポート・モール )
(店舗)
(オフィス)
Northport Mall
Coordinating 120 tenants and securing building quality
自由通路に面した店舗を設け、賑わいを演出。
不動産流動化で投資対象となった建
物には、将来的にも安定した配当を続
ける、あるいは資産価値向上のための
プロジェクトの構成と役割
Project structure and roles
投資家(SPC)
アンカーテナント出店者
確かな品質の確保が求められます。
ショッピングセンター建設は、一般的
アンカーテナント
リーシング
プロジェクトです。横浜市のこのショッ
ピングセンター(延べ面積約141,000
テナント
リーシング
事業者(SPC)
委託契約
に本体工事と多数のテナント工事との
調整が複雑で、品質の確保が難しい
出店者(約120店舗)
売買契約
PMチーム
PM
委託契約
委託契約
SUB -PM
ビルメンテナンス
請負契約
委託契約
マネジメント業務
㎡)
では、コンストラクションマネジメント
請負契約 請負契約 委託契約
CM
日建設計コンストラク
ション・マネジメント
請負契約
を導入し、大小を含め約120店舗の入
居する建物を、1年 8ヶ月の短期間で
完成させました。その上で投資家から
も満足のいく品質を確保し、2007年
外装デザイン
請負者
内装環境デザイン
管理業務
デザイナー
本体工事
テナント工事
4月にグランドオープンとなりました。
請負契約
矢部昭・鶴巻真一
(日建設計コンストラクション・マネジメント)
内装監理
請負契約
テナント設計者・施工者
請負契約
A building acquired for investment
purposes must either continuously
produce stable dividends or secure
quality in order to increase its asset
value.
When constructing a shopping center,
the coordination of primary construction and construction work undertaken
by tenants is quite complex, and it
is often difficult to secure necessary
quality. During a shopping center
project in Yokohama, involving about
141,000m2 in floor space and 120
tenants of varying sizes, Nikken Sekkei was able to complete construction
in the extremely short period of 20
months. A high level of quality that
completely satisfied investors was also
achieved.
Akira Yabe
Shinichi Tsurumaki
Street shops provide a vivacious feel.
2階平面。一体的に見えるデッキも資産は敷地ごとに区分。
2nd floor: Deck area ownership was clarified.
ドコモさいたまビル
(オフィス)
JR 東日本
(ホテル)
明治安田生命 LAタワー
(オフィス・店舗)
さいたま新都心駅から自由通路を見る。
View of the pedestrian deck
1階平面。半屋内の交通広場では照明や換気設備も 3建物で統一。
1st floor: Uniform lighting and ventilation equipment were used for
a partially indoor traffic square shared by three buildings.
(Nikken Sekkei Construction Management)
地下交通広場。グレーチングの間が敷地境界となる。
Underground ownership is clearly defined.
46
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
47
ここ 10 年余りの間に、不動産私募ファンド・REIT など不動産の保有形態の変化や、
DCF 法といった不動産評価手法・投資評価手法の変化など、不動産を取り巻く環境
は大きく変わりました。それとともに、建築プロジェクトへの要求も、コストミニ
マネジメントのこれから
マムや投資回収期間の最短化、アカウンタビリティの確保など、より厳しいものと
なっています。
これらの社会情勢下、建築プロジェクトの新しい管理手法として、プロジェクトマ
ネジメント方式を採用する企業が増加し、当社でも「+M(プラスエム)」のキーワー
ドのもと、マネジメント領域を担当する組織の拡充や再編を行っています。
一方で、プロジェクトマネジメントは、日本においては新しい概念であり、手法・
技術の確立などにおいて未だ黎明期にあるといえます。
ここでは我々がとらえている現在のプロジェクトマネジメントにおける課題とこれ
からについてご説明します。
プロジェクトマネジメント技術の確立と展開
The world of real estate has changed dramatically during the past
decade, with the rapid proliferation of new investment vehicles
such as REITs and evaluation procedures such as DCF. At the same
time, standards for construction projects have become more and
more stringent, as clients increasingly require lower costs, faster
returns on investment, and greater accountability.
Under such conditions, the value of rigorous project management
is becoming increasingly recognized by many companies. Nikken
Sekkei is also realigning its organization to expand departments
that handle project management using the corporate keyword
"+M." Nevertheless, the very concept of project management itself
is still relatively new, with methods and techniques often in their
formative stages.
Below are a few of the project management trends and issues that
Nikken Sekkei believes will be significant as the future unfolds.
Before the project
In many cases, even when construction proceeds smoothly and
accomplishes requirements, a finished project will fail to receive
meaningful acclaim. Such lukewarm reception of the final result
often arises from a failure to properly establish the scope of the undertaking—a fatal flaw in project management. To avoid this kind
of error, Nikken Sekkei is nurturing experts within the organization
who have in-depth knowledge of various operations and business
structures. At the same time, it makes ample use of specialists possessing deep skills via a network of outside consultants. As time
goes on, this approach will only become more vital in connecting
management with construction.
Realizing a beautiful city landscape
Today, progressively accurate and detailed valuation methods are
providing fine-grained depictions of the financial outcome of the
建設プロジェクトの失敗事例は、結果的にはコスト・スケジュールのオーバーラン
などとして現れますが、より本質的な失敗原因はチーム内部のコミュニケーション
の不足やプロジェクトの組織体制の構築ミスであることが多いといえます。
プロジェクトマネジメントにおいては、クオリティ・スケジュール・コストの 3 つ
の領域をコアなマネジメント領域と位置づけ、それを支える技術として人的リソー
スの調達、購買・発注戦略、コミュニケーションマネジメント、リスクマネジメン
トの 4 つを位置づけています。
従来の設計監理技術においては、後者の 4 つの技術領域は前者のコアとなる 3 領域
と比べ副次的な位置づけとなっており、そのためこの領域の技術的蓄積も浅いもの
となっていました。プロジェクトマネジメントの立場においても、これらの領域、
特にコミュニケーションスキルやリスクマネジメントスキルなどは経験に基づいた
The Future of Project Management
直感的な判断にて行われることが多いのが実情です。しかしながら今後はますます、
この領域の技術確立と実践的な展開が重要性を増していくと考えられます。
プロジェクトの前に
建設プロジェクトにおいては、プロジェクトの執行(制約条件のクリア)には成功
したが、プロジェクトそのものの評価は高くない。つまりプロジェクトスコープの
設定が間違っていた事例も多く見られます。
設計だけでなくプロジェクト全体に関与するプロジェクトマネジメント業務におい
ては、この「スコープの設定」におけるミスジャッジは、最も大きな過誤となります。
このミスジャッジを避けるために、当社では建物の事業用途別に、事業構造・事業
背景に深い知識を持った専門家を社内にて育成するとともに、社外のコンサルタン
トとのネットワークを積極的に構築してきました。
これらの動きは今後ともその傾向を増し、経営と建設をつなぐ立場としてより専門
分野ごとに深化していくと考えられます。
広い緑地を残すことで、美しい街並みを実現した東京ミッドタウン。 Tokyo Midtown realized a beautiful city landscape by keeping intact a vast area of greenery.
そして美しい街並みへ
建設プロジェクトにおいては、かつての普請道楽的なプロジェクトは姿を消す一方、
プロジェクトの経済的な評価手法が一般化し、ますます経済効果の側面ばかりがク
Establishing and developing project management techniques
ローズアップされるようになってきています。
When a construction project is unsuccessful, the results mostly appear in the form of an overrun in cost or schedule. Frequently, however, failure results from a lack of communication within the team or
an inadequate organizational structure.
Quality, schedule, and cost are usually considered to be the core
areas in project management, supported by procurement and purchasing, ordering strategy, communication administration, and risk
management. Traditionally, the latter factors have been given less
emphasis than the first three, which has led to insufficient accumulation of engineering know-how. Even now, the implementation of
project management decisions relating to these issues is often performed in an intuitive manner based on experience. This is especially
notable in matters relating to communications and risk. The future
should see a greater focus placed on these areas.
一方、建物建設の際の、街並みとしての美しさや緑化による環境貢献などは、必ず
しも現在においてプロジェクトの評価ファクターとして広く認知されているわけで
はありません。建築家の世界と経済の世界での共通言語が存在しない中で、建築や
そのデザインの持つ力が経済の世界で適切に評価されない状況といえます。
これからのプロジェクトマネジメントにおいては、「不動産経営」と「設計・デザイ
ンの領域」をつなぐ領域として、これらの建築の持つ社会的側面を適切に評価し、
投資評価の中に組み入れていく努力と手法の確立が重要であると考えています。
我々は、個々のクライアントの利益の最大化と社会全体の利益の最大化の両立を目
指して努力していきたいと考えています。
中谷憲一郎(日建設計)
48
FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
project, creating an increased focus on its economic effects. However, contributions such as the creation of attractive surroundings,
beautiful landscapes, and other environmental benefits are not
widely recognized as factors in most valuation processes. Because
design and economics do not yet share a completely common
language, the powerful contributions of aesthetics, ecology, and
architecture to overall value are not fully appreciated. In the project
management of the future, it will be essential to adequately assess the social dimensions of architecture and design. It will also be
imperative to create an investment evaluation process that incorporates such information in order to connect real estate management
to the field of design.
Nikken Sekkei endeavors to achieve maximum profit for the client
and to benefit the social environment.
Kenichiro Nakatani (NIKKEN SEKKEI)
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
SEKKEI
49
用語集 Glossary
本号のテーマをわかりやすく、ご理解いただけるように、
不動産・建築業界でよく使う言葉も収録、解説しています。
アセットマネジメント
スコープ
ブリーフィング
投資家から資産運用を委託され経済的価値の向上
プロジェクトの成果物やサービスの品質・特徴な
プロジェクトを始める前に発注者の意図を明確に
を目指す業務。新規取得、処分、投資資金の調達
どの目標。
し、設計者や施工者に伝えるための条件書を作成
なども業務に含まれることが多い。扱う資 産は、
不動産・金融など多岐にわたる。
するプロセス。どのような目的で、どのような建物
DCF 法
を作るのか、制約条件や要求事項を整理する。
将来の予測キャッシュフローを割引率(ディスカウ
エネルギーマネジメント
ントレート)で割り引くことで、現在価値を求める
プロパティマネジメント
省エネルギー対策に関する開発やシステム構築に
方法。
投資家、建物保有者、アセットマネージャーなど
関わるマネジメント。
クライシスマネジメント
からの委託を受け、現場において総合的な建物管
トラックレコード
理を行う。業務範囲は契約により様々だが、一般
工事の変更や金額の変更などの履歴。
には建物の日常管理・運営業務、リーシングを含
自然災害や人災の物理的危機から人・物の安全を
むテナント対応業務を行う。
確保するための具体的な危機管理・施策を講じる
BEMS
こと。手順としては第一に現状把握、次に危機項
Building Energy Management System
分離発注方式
目の抽出、発生確率・影響の分析、優先順位付け、
室内環境とエネルギー性能の最適化を図るための
発注者が元請、専門工事業者から直接見積りを取
対策の立案・実行となる。
ビル管理システム。ビルにおける空調・衛生設備、
り、個別に契約する方式。コスト、品質など全て
電 気・照明設備、防災設備、セキュリティ設備等
発注者側からコントロールする。
クリティカルパス
を対象とし、各種センサー、メーターにより室内
プロジェクトの開始から終了までをつなぐ時間的
環境や設備の状 況をモニタリングし、運転管理、
マルチトラック
余裕のない一連の作業経路のこと。クリティカル
自動制御を行う。
本来の意味の幅を広げて、目的の異なる複数の設
パス上の作業が遅延すると全体の納期を遅らせて
計作業を同時進行で進めるという意味で使ってい
しまうことになり、逆に短縮できるとプロジェクト
BCM
期間も短縮できるため、プロジェクト管理におい
Business Continuity Management ては特に重要な管理対象となる。
(事業継続管理)
る。
ライフサイクルマネジメント
火災・テロなど局所的な災害、または地震・感染
建物の企画から廃棄までの生涯にわたるライフサ
クリティカルポイント
症など広域的な災害といった不測の事態が発生し
イクルコストの最適化を目的とするマネジメント。
プロジェクトの方向を左右する要件。
た場合にも、企業活動・サービスを継続もしくは
ストックの有効活用・長寿命化、持続可能な社会、
早 期回復するために必要な事 業 継 続 計画を 策 定
環境保全、ユーザーサービスの充実などもマネジ
コストオン
し、実践・管理する手法。中長期的に顧客の信頼
メントの重要な課題である。
発注者、元請、下請の三者間で下請の工事請負金
を獲得するという戦略的発想に基づくマネジメント
額と元請の管理経費を決めた上で、契約を結ぶ方
である。
式。一種の「コスト+フィー方式」であり、従来の
REIT リート
Real Estate Investment Trust
総額請負方式において曖昧であった元請の利益を
PDCA サイクル
省き、実費や手数料を明確にした上で契約を結ぶ。
Plan-do-check-action cycle
投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設
計画 (plan)、実行 (do)、評価 (check)、改善 (act)
などの不動産を購入し、その賃貸収入や売却益を
のプロセスを順に実施していくこと。この一連の
投資家に配当として支払う投資信託のこと。
コミッショニング
建物やその設備の性能検証のこと。要求性能実現
プロセスを次の計画に反映させ、品質の維持・向
のために設計者や工事施工者などに対する助言・査
上および継続的な業務改善活動を推進するマネジ
閲・確認をし 、 文書化を行い 、 機能性能試験を実施
メント手法。
して 、 受け渡されるシステムの適正な運転保守が
(不動産投資信託)
リスクマネジメント
損失に変えてしまう恐れのある不確実性 ( リスク )
を分析、発見、評価し、回避、低減を図るプロセス。
可能な状態であることを検証する。
不動産の証券化
不測の損害を最小の費用で効果的に処理するため
また、運用段階でも設備の運転状況やエネルギー
不動産を取得・保有するための器(SPC)を利用し、
の経営管理手法である。
の使用状況を確認し、最適な設定と運転方法に対
その不動産を裏づけに投資家から資金調達を行う
する助言を行う。
仕組みを「流動化」と言い、証券を発行する場合を
「証券化」と言う。不動産投資信託・私募ファンド
コンストラクションマネジメント
Many of the following technical and management-related terms that appear
throughout the text are used within the real estate and construction industries,
yet may be unfamiliar to many general readers.
用語解説を作成しました。マネジメント用語以外にも、
などが代表的。
特定の建設プロジェクトにおける企画・設計・発注・
ロードマップ
進行表。工程表。デザインや設計、専門技術の検討、
行政との調整や手続きなど各工程の進行手順を定
めたもの。
工事の各段階において、発注者の代理人として、技
不動産のデューデリジェンス
術的中立性を保ちつつ、品質・工程・コストのコント
不動産取引の交渉力、取得後のリスクマネジメン
ロールを行う。特にプロジェクトリスクのコントロー
トの一環として、その収益性に影響を与える事項
ルとアカウンタビリティが強く求められる。
を精査すること。物的状況調査、法的調査、経済
的状況調査が含まれ、各専門家による第三者意見
コンティジェンシー
が聴取される。物的状況調査に関わる専門家意見
不確定性。不測の事態。主には、予備費的な意味
として「エンジニアリングレポート」が作成される。
参考文献:
『IT 情報マネジメント用語事典』
、
『現代用語の
基礎知識』
、
『空気調和・衛生工学会』
、
『CM ガイドブック』
、
『最新5 年間の FM キーワード』
『
、プロジェクトマネジメント』
東洋経済新聞社
Asset management
Activities relating to the professional supervision
and organization of property, capital, or any other type of asset. Examples include procurement
of funds for investment and transactions relating
to various types of holdings.
BCM
(Business Continuity Management)
The creation, implementation, and management
of measures that allow business operations to
continue or resume rapidly after interruption in
the event of an unexpected disaster. Carefully
planned BCM can help to establish client trust.
BEMS
(Building Energy Management System)
A scheme for realizing optimal energy efficiency
and quality of interior environment through a
comprehensive building management system.
Technologically advanced forms of monitoring
ensure that all aspects of a given structure (such
as air conditioning, lighting, and security systems)
function correctly at every stage.
Briefing
A process for clarifying, documenting, and communicating project requirements and customer
goals prior to the commencement of a project.
Major topics treated include overall purpose,
baseline necessities, structural characteristics, and
essential restrictions.
Building commissioning
A verification process used to ensure that a completed structure and equipment systems are able
to meet performance requirements. Interviews
with designers and constructors, recommendations, testing, documentation, and ongoing assessments are all used to ensure optimal levels of
performance and efficiency.
Construction management
The administration of various aspects of quality,
process, and cost conducted by a client-appointed agent during a construction project. Such
supervision takes place throughout the entire
project, with control relating to risk and accountability being a central concern.
Cost-on method
A procedure whereby three parties (client, principal contractor, and subcontractor) work together
to determine in writing the subcontractor’s
construction fees and the principal contractor’s
management fees. This method clarifies costs
and eliminates ambiguities.
Cost record
A form of documentation that tracks the history
of construction changes and costs.
Crisis management
A collective term for specific risk management
methods used to ensure safety in the event of
a disaster. These include crisis identification and
analysis, determination of priorities and responses, and actual execution of measures to resolve
the predicament at hand.
Critical path
The sequence of activities that determines the
overall schedule of the project. Delays to such
an activity or replacement thereof with another
activity of shorter duration can increase or reduce
the length of the overall project, respectively,
thus making the critical path a crucial item for
control in project management.
Discounted cash flow method
An approach used for calculating the future value
of money that involves estimating projected cash
flow using an appropriate discount rate.
Due diligence
Investigation and verification of factors that may
affect profits, generally used here in reference to
negotiation and risk-management activities related to the acquisition of real estate. During such
activities, opinions concerning economic conditions, legal issues, and other relevant circumstances are gathered from third-party specialists.
Energy management
Management regarding the development and
implementation of energy-saving measures and
systems.
Life cycle management
A form of management used to realize optimum
costs associated with a building from planning
to demolition. Such management requires taking
into account important financial, social, and ecological issues.
Living national treasure
A title awarded in Japan to certain masters of traditional crafts and performance traditions, with
the aim of preserving skills and techniques that
are in danger of being lost. Similar to the way
in which special places or items of great cultural
value are designated as national treasures, such
individuals are considered to be "living treasures"
eligible for special protection and support.
Multi-track
A descriptive term used in situations in which
multiple work processes (such as those relating
to design, for example) are carried out simultaneously.
PDCA cycle
A term standing for "Plan, Do, Check, Act"
that indicates the order in which such processes
should be undertaken as part of a quality control
strategy. An approach based on the PDCA cycle
is often used in management to continuously
maintain and improve business operations and
quality levels.
Property management
Total building management carried out on consignment from investors, building owners, or
asset managers. The scope of relevant activities
varies among projects but usually includes daily
building management and operation, leasing,
and tenant relations.
REIT
(Real Estate Investment Trust)
An investment vehicle that allows the purchase
of real estate using funds collected from investors. Investors hope to receive dividends generated from lease income or profits from eventual
sale.
Risk management
The process of identifying, analyzing, assessing,
averting, and reducing any contingent risks that
may have a negative impact on a project. Effective implementation of risk management allows
risks to be avoided without undue expense.
Road map
A basic plan delineating the overall nature and
progression of a project. It takes into account a
variety of processes, such as studies for design
and engineering, negotiations with public authorities, and the acquisition of necessary forms
of approval.
Securitization of real estate
The use of real estate acquired via a SPC (special
purpose company) as collateral to borrow money
from investors via issuance of securities. The process is typically employed by real estate investment funds and private offering funds.
Split ordering method
A special method whereby the client directly
receives quotations from both the principle contractor and the subcontractor. This allows the client to conclude separate agreements with both
such parties and thus to retain increased control
over factors such as cost and quality.
合いで使用される。
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FACT NIKKEN SEKKEI プロジェクトマネジメントの現場 日建設計
プロジェクトマネジメントの現場 日建設計 FACT NIKKEN
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