日本標準商品分類番号 872655 2009年1月(新様式第1版) 医薬品インタビューフォーム 日本病院薬剤師会のIF記載要領(1998年9月)に準拠して作成 抗真菌剤 (日局 ミコナゾール硝酸塩・クリーム剤) 剤 形 クリーム剤 規 格 ・ 含 量 1g中、日局 ミコナゾール硝酸塩 10mg 一 和 名:ミコナゾール硝酸塩(JAN) 洋 名:miconazole nitrate(JAN、USAN) 般 名 製造販売承認年月日 薬価基準収載・ 発 売 年 月 日 製造販売承認年月日 :2006年 8 月 9 日 薬価基準収載年月日 :2006年12月 8 日 発 売 年 月 日 :1981年 1 月10日(旧販売名) 開発・製造販売・ 提携・販売会社名 製造販売元:持田製薬株式会社 提 携:ヤンセンファーマスーティカ(ベルセ ベルギー) 担当者の連絡先・ 電 話 番 号 ・ F A X 番 号 本IFは2006年12月作成の添付文書の記載に基づき作成した。 IF利用の手引きの概要 −日本病院薬剤師会− 1. 医薬品インタビューフォーム作成の経緯 当該医薬品について製薬企業の医薬情報担当者(以下、MRと略す)等にインタビューし、当該 医薬品の評価を行うのに必要な医薬品情報源として使われていたインタビューフォームを、昭和 63年日本病院薬剤師会(以下、日病薬と略す)学術第2小委員会が「医薬品インタビューフォーム」 (以下、IFと略す)として位置付けを明確化し、その記載様式を策定した。そして、平成10年日 病薬学術第3小委員会によって新たな位置付けとIF記載要領が策定された。 2. IFとは IFは「医療用医薬品添付文書等の情報を補完し、薬剤師等の医療従事者にとって日常業務に必 要な医薬品の適正使用や評価のための情報あるいは薬剤情報提供の裏付けとなる情報等が集約 された総合的な医薬品解説書として、日病薬が記載要領を策定し、薬剤師等のために当該医薬品 の製薬企業に作成及び提供を依頼している学術資料」と位置付けられる。 しかし、薬事法の規制や製薬企業の機密等に関わる情報、製薬企業の製剤意図に反した情報及 び薬剤師自らが評価・判断・提供すべき事項等はIFの記載事項とはならない。 3. IFの様式・作成・発行 規格はA4判、横書きとし、原則として9ポイント以上の字体で記載し、印刷は一色刷りとする。 表紙の記載項目は統一し、原則として製剤の投与経路別に作成する。IFは日病薬が策定した 「IF記載要領」に従って記載するが、本IF記載要領は、平成11年1月以降に承認された新医薬品か ら適用となり、既発売品については「IF記載要領」による作成・提供が強制されるものではない。 また、再審査及び再評価(臨床試験実施による)がなされた時点ならびに適応症の拡大等がなさ れ、記載内容が大きく異なる場合にはIFが改訂・発行される。 4. IFの利用にあたって IF策定の原点を踏まえ、MRへのインタビュー、自己調査のデータを加えてIFの内容を充実さ せ、IFの利用性を高めておく必要がある。 MRへのインタビューで調査・補足する項目として、開発の経緯、製剤的特徴、薬理作用、臨 床成績、非臨床試験等の項目が挙げられる。また、随時改訂される使用上の注意等に関する事項 に関しては、当該医薬品の製薬企業の協力のもと、医療用医薬品添付文書、お知らせ文書、緊急 安全性情報、Drug Safety Update(医薬品安全対策情報)等により薬剤師等自らが加筆、整備する。 そのための参考として、表紙の下段にIF作成の基となった添付文書の作成又は改訂年月を記載し ている。なお適正使用や安全確保の点から記載されている「臨床成績」や「主な外国での発売状況」 に関する項目等には承認外の用法・用量、効能・効果が記載されている場合があり、その取扱い には慎重を要する。 − 目 次 − Ⅰ.概要に関する項目 3.用時溶解して使用する製剤の調製法 4 1.開発の経緯 1 4.懸濁剤、乳剤の分散性に対する注意 4 2.製品の特徴及び有用性 1 5.製剤の各種条件下における安定性 4 6.溶解後の安定性 5 7.他剤との配合変化(物理化学的変化) 5 Ⅱ.名称に関する項目 2 8.混入する可能性のある夾雑物 5 ⑴和 名 2 9.溶出試験 5 ⑵洋 名 2 10.生物学的試験法 5 ⑶名称の由来 2 11.製剤中の有効成分の確認試験法 5 2 12.製剤中の有効成分の定量法 5 ⑴和 名(命名法) 2 13.力 価 5 1.販売名 2.一般名 ⑵洋 名(命名法) 2 14.容器の材質 5 3.構造式又は示性式 2 15.刺激性 5 4.分子式及び分子量 2 16.その他 5 5.化学名(命名法) 2 6.慣用名、別名、略号、記号番号 2 7.CAS登録番号 2 Ⅲ.有効成分に関する項目 Ⅴ.治療に関する項目 1.効能又は効果 6 2.用法及び用量 6 3.臨床成績 6 1.有効成分の規制区分 3 ⑴臨床効果 6 2.物理化学的性質 3 ⑵臨床薬理試験:忍容性試験 6 ⑴外観・性状 3 ⑶探索的試験:用量反応探索試験 6 ⑵溶解性 3 ⑷検証的試験 6 ⑶吸湿性 3 1無作為化並行用量反応試験 6 ⑷融点(分解点)、沸点、凝固点 3 2比較試験 6 ⑸酸塩基解離定数 3 3安全性試験 6 ⑹分配係数 3 4患者・病態別試験 6 ⑺その他の主な示性値 3 3.有効成分の各種条件下における安定性 3 4.有効成分の確認試験法 3 5.有効成分の定量法 3 Ⅳ.製剤に関する項目 1.剤 形 4 ⑸治療的使用 6 Ⅵ.薬効薬理に関する項目 1.薬理学的に関連ある化合物又は化合物群 7 2.薬理作用 7 ⑴作用部位・作用機序 7 ⑵薬効を裏付ける試験成績 7 ⑴投与経路 4 ⑵剤形の区別、規格及び性状 4 ⑶製剤の物性 4 1.血中濃度の推移・測定法 8 ⑷識別コード 4 ⑴治療上有効な血中濃度 8 ⑸無菌の有無 4 ⑵最高血中濃度到達時間 8 ⑹酸価、ヨウ素価等 4 ⑶通常用量での血中濃度 8 ⑷中毒症状を発現する血中濃度 8 2.製剤の組成 4 Ⅶ.薬物動態に関する項目 ⑴有効成分(活性成分)の含量 4 2.薬物速度論的パラメータ ⑵添加物 4 ⑴吸収速度定数 8 ⑶添付溶解液の組成及び容量 4 ⑵バイオアベイラビリティ 8 8 ⑶消失速度定数 8 ⑷クリアランス 8 ⑸分布容積 8 15.その他の注意 12 ⑹血漿蛋白結合率 8 16.その他 12 3.吸 収 8 4.分 布 8 14.適用上及び薬剤交付時の注意 (患者等に留意すべき必須事項等) 12 Ⅸ.非臨床試験に関する項目 ⑴血液-脳関門通過性 8 1.一般薬理 13 ⑵胎児への移行性 8 2.毒 性 13 ⑶乳汁中への移行性 8 ⑴単回投与毒性試験 13 ⑷髄液への移行性 9 ⑵反復投与毒性試験 13 ⑸その他の組織への移行性 9 ⑶生殖発生毒性試験 13 9 ⑷その他の特殊毒性 14 5.代 謝 ⑴代謝部位及び代謝経路 9 ⑵代謝に関与する酵素(CYP450等)の分子種 9 ⑶初回通過効果の有無及びその割合 9 1.有効期間又は使用期限 15 ⑷代謝物の活性の有無及び比率 9 2.貯法・保存条件 15 ⑸活性代謝物の速度論的パラメータ 9 3.薬剤取扱い上の注意点 15 9 4.承認条件 15 ⑴排泄部位 9 5.包 装 15 ⑵排泄率 9 6.同一成分・同効薬 15 ⑶排泄速度 9 7.国際誕生年月日 15 6.排 泄 7.透析等による除去率 Ⅹ.取扱い上の注意等に関する項目 9 8.製造販売承認年月日及び承認番号 15 ⑴腹膜透析 9 9.薬価基準収載年月日 15 ⑵血液透析 9 10.効能・効果追加、用法・用量変更追加等の ⑶直接血液灌流 9 年月日及びその内容 15 11.再審査結果、再評価結果公表年月日及び Ⅷ.安全性(使用上の注意等)に関する項目 その内容 15 1.警告内容とその理由 10 12.再審査期間 15 2.禁忌内容とその理由 10 13.長期投与の可否 15 3.効能・効果に関連する使用上の注意とその理由 10 14.厚生労働省薬価基準収載医薬品コード 15 4.用法・用量に関連する使用上の注意とその理由 10 15.保険給付上の注意 15 5.慎重投与内容とその理由 10 6.重要な基本的注意とその理由及び処置方法 10 7.相互作用 10 1.引用文献 16 ⑴併用禁忌とその理由 10 2.その他の参考文献 16 ⑵併用注意とその理由 10 8.副作用 ⑴副作用の概要 10 10 ⑵項目別副作用発現頻度及び臨床検査値 異常一覧 11 ⑶基礎疾患、合併症、重症度及び手術の Ⅻ.参考資料 主な外国での発売状況 12 ⑷薬物アレルギーに対する注意及び試験法 12 12 10.妊婦、産婦、授乳婦等への投与 12 11.小児等への投与 12 12.臨床検査結果に及ぼす影響 12 13.過量投与 12 17 .備 考 その他の関連資料 有無等背景別の副作用発現頻度 9.高齢者への投与 Ⅺ.文 献 18 Ⅰ 概要に関する項目 1.開発の経緯 本剤の有効成分であるミコナゾール硝酸塩はベルギーのJanssen社で開 発されたPhenethyl−imidazole系の抗真菌剤で、本邦では1975年8月より臨 床試験が開始されその有用性が認められフロリードDクリーム1%(旧販売 名:フロリードD)の名称で1980年10月に製造承認され1981年1月に発売し た。 28,201例の使用成績調査を実施し、再審査申請を行った結果、1987年9 月薬事法第14条第2項各号(承認拒否事由)のいずれにも該当しないとの再 審査結果を得た。 なお、2006年「フロリードD」は、医療事故防止を目的として、現販売名 「フロリードDクリーム1%」と名称変更を行った。 2.製品の特徴及び有用性 ・ミコナゾール硝酸塩の真菌に対する作用として白癬の起因菌である白癬 菌属、小胞子菌属、表皮菌属やカンジダ症の起因菌であるカンジダ属を はじめ、アスペルギルス属、クリプトコックス・ネオフォルマンス等の 諸菌種に対しても強い抗真菌作用を有する。また細菌に対する作用とし てはグラム陽性菌に対するMICは球菌、桿菌とも2.5~10μg/mLであり、 特に嫌気性菌に対しては0.32~0.63μg/mLであるが、グラム陰性菌に対 しては感受性は認められない。 ・臨床成績は真菌学的効果として真菌の消失率が77%(爪囲炎)~100%(外 陰カンジダ症、皮膚カンジダ症)臨床効果としての改善率が80%(爪囲炎) ~100%(外陰カンジダ症、皮膚カンジダ症)、総合効果としての有効率 が77%(爪囲炎)~100%(外陰カンジダ症、皮膚カンジダ症)であった。 ・副作用発現率は以下のとおりである。 総症例28,803例中、231例(0.80%)に副作用が認められている。その 主なものは発赤・紅斑(0.35%)、瘙痒感(0.21%)、接触性皮膚炎(0.13%) 、 びらん(0.08%)、刺激感(0.07%)、小水疱(0.07%)等の皮膚炎症状であっ た。 〔再審査終了時〕 −1− Ⅱ 名称に関する項目 1.販売名 ⑴和 名 フロリードDクリーム1% ⑵洋 名 −D Cream 1% FLORID® ⑶名称の由来 菌相(bacterial flora)のFLOとふた(ふさぐ)LIDより合成。なおDは皮膚 (dermat−)を意味する。 2.一般名 ⑴和 名(命名法) ミコナゾール硝酸塩(JAN) ⑵洋 名(命名法) miconazole nitrate(JAN、USAN) 3.構造式又は示性式 Cl Cl O H Cl ・HNO3 N Cl N 4.分子式及び分子量 及び鏡像異性体 分子式:C18H14Cl4N2O・HNO3 分子量:479.14 5.化学名(命名法) 1−[ (2 RS ) −2− (2,4−dichlorobenzyloxy) −2−(2,4−dichlorophenyl) ethyl] −1 H −imidazole mononitrate 6.慣用名、別名、略号、 略 号:MCZ 記号番号 記号番号:R14 889 7.CAS登録番号 22832−87−7 −2− Ⅲ 有効成分に関する項目 1.有効成分の規制区分 劇薬、指定医薬品 2.物理化学的性質 ⑴外観・性状 白色の結晶性の粉末である。 ⑵溶解性 N,N −ジメチルホルムアミドに溶けやすく、メタノールにやや溶けにく く、エタノール(95)、アセトン又は酢酸(100)に溶けにくく、水又はジエ チルエーテルに極めて溶けにくい。 ⑶吸湿性 認められない ⑷融点(分解点)、沸点、 融点:約180℃(分解) 凝固点 ⑸酸塩基解離定数 該当資料なし ⑹分配係数 該当資料なし ⑺その他の主な示性値 紫外吸収スペクトル:メタノール溶液の極大吸収は265、272及び280nmに示す。 3.有効成分の各種条件下に おける安定性 保存条件 保存期間 試験結果 25℃、室内散乱光下、60%RH 3年 性状、定量値、TLCにほとんど 変化が認められない。 25℃、遮光、80%RH 3年 性状、定量値、TLCにほとんど 変化が認められない。 37℃、遮光、60%RH 3年 性状、定量値、TLCにほとんど 変化が認められない。 4.有効成分の確認試験法 日局 ミコナゾール硝酸塩の確認試験法による。 5.有効成分の定量法 日局 ミコナゾール硝酸塩の定量法による。 −3− Ⅳ 製剤に関する項目 1.剤 形 ⑴投与経路 経皮 ⑵剤形の区別、規格及び 白色の均一なクリーム剤でわずかに特異なにおいがある。 性状 ⑶製剤の物性 該当資料なし ⑷識別コード MO 258(チューブ表面) ⑸無菌の有無 なし ⑹酸価、ヨウ素価等 該当しない 2.製剤の組成 ⑴有効成分 (活性成分) の 1g中に日局 ミコナゾール硝酸塩を10mg含有する。 含量 ⑵添加物 添加物としてポリオキシエチレンセチルエーテル、自己乳化型モノステ アリン酸グリセリン、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸 メチル、ミリスチン酸イソプロピル、軽質流動パラフィン、セタノールを 含有する。 ⑶添付溶解液の組成及び 該当しない 容量 3.用時溶解して使用する 該当しない 製剤の調製法 4.懸濁剤、乳剤の分散性に 該当しない 対する注意 5.製剤の各種条件下に おける安定性 保存条件 保存期間 保存形態 試験結果 なりゆき室温 5年 チューブ入り 性状、定量値にほとんど変化が 認められず、規格に適合した。 37℃、遮光 3 ヵ月 チューブ入り 性状、定量値にほとんど変化が 認められず、規格に適合した。 −4− 6.溶解後の安定性 該当しない 7.他剤との配合変化 該当資料なし (物理化学的変化) 8.混入する可能性のある 混在が予想される類縁物質の許容量はミコナゾール硝酸塩として0.25%以 夾雑物 下である。 9.溶出試験 該当資料なし 10.生物学的試験法 該当しない 11.製剤中の有効成分の 薄層クロマトグラフ法 確認試験法 12.製剤中の有効成分の 非水滴定法 定量法 13.力 価 該当しない 14.容器の材質 チューブ:アルミニウム キャップ:ポリプロピレン 15.刺激性 ヒトによる貼付試験を実施した結果、刺激反応は認められなかった。 16.その他 特になし −5− Ⅴ 治療に関する項目 1.効能又は効果 下記の皮膚真菌症の治療 ●白 癬:体部白癬(斑状小水疱性白癬、頑癬)、股部白癬(頑癬)、 足部白癬(汗疱状白癬) ●カンジダ症:指間びらん症、間擦疹、乳児寄生菌性紅斑、爪囲炎、外陰 カンジダ症、皮膚カンジダ症 ●癜 風 2.用法及び用量 1日2~3回、患部に塗布する。 3.臨床成績 ⑴臨床効果 二重盲検試験を含む臨床成績(29施設、560例)の概要は次のとおりであ る1~12)。 真菌学的効果 <真菌消失率> 疾 患 名 臨床効果* <改善率> 総合効果* <有効率> 白 癬 体 部 白 癬 89%(70/79) 98%(49/50) 88%(44/50) 股 部 白 癬 93%(63/68) 97%(37/38) 92%(35/38) 足 部 白 癬 82%(54/66) カンジダ症 75%(76/101) 92%(61/66) 指 間 び ら ん 症 96%(51/53) 100%(34/34) 97%(33/34) 間 95%(72/76) 95%(73/77) 91%(70/77) 擦 疹 乳児寄生菌性紅斑 96%(53/55) 96%(53/55) 95%(52/55) 爪 77%(23/30) 80%(24/30) 77%(23/30) 囲 炎 外陰カンジダ症 100%(20/20) 100%(20/20) 100%(20/20) 皮膚カンジダ症 100%(28/28) 100%(28/28) 100%(28/28) 89%(42/47) 96%(22/23) 96%(22/23) 癜 風 *二重盲検試験ではアナログスケールにより評価したため、集計から除外 ⑵臨床薬理試験: 健康男子6例の左前膊・上膊の屈側にミコナゾール硝酸塩1%又は2%ク 忍容性試験 リームを1回0.5g塗布、また健康男子6例に1回0.5g、1日2回14日間連続塗布 した結果、一般臨床検査値への影響は認められず、また副作用及び薬剤塗 布部位の刺激作用は認められなかった。 ⑶探索的試験: 該当資料なし 用量反応探索試験 ⑷検証的試験 ₁無作為化並行用量反応試験 該当資料なし ₂比較試験 クロトリマゾールクリームを対照薬として二重盲検試験を実施した結 果、有効性・安全性を含めた有用性が認められた。 ₃安全性試験 該当資料なし ₄患者・病態別試験 該当資料なし ⑸治療的使用 該当資料なし −6− Ⅵ 薬効薬理に関する項目 1.薬理学的に関連ある フェネチル・イミダゾール誘導体 化合物又は化合物群 2.薬理作用 ⑴作用部位・作用機序 1. 抗菌作用( in vitro ) ⑴真菌に対する作用 ミコナゾール硝酸塩は白癬の起因菌である白癬菌属、小胞子菌属、 表皮菌属やカンジダ症の起因菌であるカンジダ属をはじめ、アスペル ギルス属、クリプトコックス・ネオフォルマンス等の諸菌種に対して も強い抗真菌作用を有する 13~15)。 ⑵細菌に対する作用 Heart infusion agar及びBrain−heart infusion agarを用いた実験では、 グラム陽性菌に対するミコナゾール硝酸塩のMICは球菌、桿菌とも2.5 ~10μg/mLであり、特に嫌気性菌に対しては0.32~0.63μg/mLである が、グラム陰性菌に対しては感受性は認められない13)。 2. 感染治療実験 モルモットの T.mentagrophytes 感染に対しミコナゾール硝酸塩の1% クリームを1日1回連日塗布すると、投与6日目から症状の消退が認めら れ、2週間後には組織内の菌は陰性化した16)。 3. 作用機序 ミコナゾール硝酸塩の抗菌作用13~15)、生化学的作用17, 18)及び超微形態 学的作用19)を検討した結果、ミコナゾール硝酸塩は低濃度では主として 膜系(細胞膜並びに細胞壁)に作用して、細胞の膜透過性を変化させる ことにより抗菌作用を示す。また、高濃度では細胞の壊死性変化をもた らし、殺菌的に作用する17~21)。 ⑵薬効を裏付ける 各種真菌に対する最小発育阻止濃度 (MIC) は下表のとおりであった13)。 試験成績 菌 種 MIC(μg/mL) Trichophyton mentagrophytes 0.16~0.63 Trichophyton rubrum 0.32 Trichophyton violaceum 0.08 Microsporum audouinii 1.25 Microsporum gypseum 0.63 Candida albicans 0.08~5 Aspergillus fumigatus 0.63~1.25 Cryptococcus neoformans 0.16~0.63 培地:Bacto−Yeast Morphology agar −7− Ⅶ 薬物動態に関する項目 1.血中濃度の推移・測定法 ⑴治療上有効な血中濃度 該当資料なし ⑵最高血中濃度到達時間 参考:3H−MCZをラットに経口投与後の血中濃度は1時間後に最高となり、 以後漸減。72時間後にはほぼ消失した。 経皮投与後の血中濃度は8~24時間後に最高となったが、極めて低 値であり、以後も速やかに血中より消失した。 ⑶通常用量での血中濃度 健康男子12例を対象に0.5gを1回塗布、又は1回0.5gを1日2回14日間塗布 し血中濃度を測定した。その結果測定限界値0.05μg/mL以下であり皮膚か らほとんど吸収されないものと思われた。 ⑷中毒症状を発現する 該当資料なし 血中濃度 2.薬物速度論的パラメータ 該当資料なし ⑴吸収速度定数 ⑵バイオアベイラビリティ ⑶消失速度定数 ⑷クリアランス ⑸分布容積 ⑹血漿蛋白結合率 3.吸 収 ミコナゾール硝酸塩は経皮投与では殆ど吸収されない。 健常人の正常皮膚に本剤を14日間連日塗布した結果並びに足部白癬患者 の障害皮膚に7日間連日塗布した結果、皮膚からの吸収はほとんど認めら れていない。 4.分 布 参考:3H−MCZを静脈内投与したラットの臓器濃度は副腎、肝、肺、腎な どにおいて高値を示したが、72時間後には著しく低下していた。経 皮、膣内投与ではいずれも低値であった。 ⑴血液-脳関門通過性 該当資料なし ⑵胎児への移行性 参考:妊娠雌ラットに 3H−MCZを1mg/kg、静脈内投与したときの胎仔中 の濃度は極めて低く、投与されたMCZが直接胎仔へ移行すること はほとんどないものと思われる。 ⑶乳汁中への移行性 参考:出産1週間目の雌ラットに3H−MCZ 10mg/kgを経口投与したところ 母乳を経由して新生仔ラットへ移行するが、母ラットの最高血中濃 度の約1/2であった。 −8− ⑷髄液への移行性 該当資料なし ⑸その他の組織への 該当資料なし 移行性 5.代 謝 ミコナゾールの糞中からの代謝物はA1~5であるが、尿中ではA5だけだった。 N CI N CH2 CHOH HOOCCHOCH2 Cl Cl Cl A1 A2 NH2 CH2 CHOCH2 CI Cl Cl O CH NH C O CI OH NH Cl CH2 CHOCH2 Cl A3 Cl Cl Cl A4 Cl CH2 NH O C HC O CI OH NH CH2 CHOCH2 Cl Cl A5 ⑴代謝部位及び代謝経路 該当資料なし ⑵代 謝 に 関 与 す る 酵 素 該当資料なし Cl (CYP450等)の分子種 ⑶初回通過効果の有無 該当資料なし 及びその割合 ⑷代謝物の活性の有無 該当資料なし 及び比率 ⑸活性代謝物の速度論的 該当資料なし パラメータ 6.排 泄 参考:ラット、ウサギ及びイヌにおける3H−MCZの排泄は速やかで、静脈 ⑴排泄部位 内投与後72時間までに尿中へ4~28%、糞中へ53~77%が排出され ⑵排泄率 た。ラットの胆汁排泄率は24時間で投与放射能の67.8%に達した。 ⑶排泄速度 7.透析等による除去率 該当資料なし ⑴腹膜透析 ⑵血液透析 ⑶直接血液灌流 −9− Ⅷ 安全性(使用上の注意等)に関する項目 1.警告内容とその理由 該当記載事項なし 2.禁忌内容とその理由 禁忌(次の患者には使用しないこと) 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 3.効能・効果に関連する 該当記載事項なし 使用上の注意とその理由 4.用法・用量に関連する 該当記載事項なし 使用上の注意とその理由 5.慎重投与内容とその理由 該当記載事項なし 6.重要な基本的注意と 該当記載事項なし その理由及び処置方法 7.相互作用 該当記載事項なし ⑴併用禁忌とその理由 ⑵併用注意とその理由 8.副作用 ⑴副作用の概要 総症例28,803例中、231例(0.80%)に副作用が認められている。その主 なものは発赤・紅斑(0.35%)、瘙痒感(0.21%)、接触性皮膚炎(0.13%)、 びらん(0.08%)、刺激感(0.07%)、小水疱(0.07%)等の皮膚炎症状であった。 (再審査終了時) 副作用 以下のような副作用があらわれた場合には、症状に応じて適切な処置 を行うこと。 0.1∼5%未満 皮 膚 0.1%未満 発赤・紅斑、瘙痒感、 びらん、刺激感、小水疱、乾燥・亀裂、 接触性皮膚炎 丘疹、落屑、腫脹等 −10− ⑵項目別副作用発現頻度 及び臨床検査値異常一 国内における副作用発現状況(開発段階+使用成績調査) 覧 承認時迄の 治 験 成 績 使用成績調査 S55.10.25〜S61.10.24 計 数 602 28,201 28,803 副作用発現症例数 10 221 231 時 期 症 例 副作用発現件数 13 362 375 副作用発現症例率 1.66% 0.78% 0.80% ●副作用の種類別発現症例(件数)率 副作用の種類 皮膚付属器官障害 承認時迄の 治 験 成 績 10例 (1.66) ( )内:% 使用成績調査 S55.10.25〜S61.10.24 計 221例 (0.78) 231例 (0.80) 102 (0.35) 発赤・紅斑・潮紅 7 (1.16) 95 (0.34) 瘙痒(感) ・かゆみ 2 (0.33) 58 (0.21) 60 (0.21) 接触性皮膚炎 38 (0.13) 38 (0.13) 皮膚炎 10 (0.04) 10 (0.03) 2 (0.01) 2 (0.01) 自家感作性皮膚炎 剥離性皮膚炎 1 (0.004) 1 (0.003) びらん 24 (0.09) 24 (0.08) 刺激(感) 21 (0.07) 21 (0.07) 水疱・小水疱 20 (0.07) 20 (0.07) 落 屑 10 (0.04) 10 (0.03) 10 (0.04) 11 (0.04) 丘 疹 1 (0.17) 皮 疹 4 (0.01) 4 (0.01) 発 疹 2 (0.01) 2 (0.01) 湿 疹 1 (0.004) 亀 裂 腫 脹 皮膚乾燥 2 (0.33) 湿 潤 1 (0.003) 10 (0.04) 10 (0.03) 10 (0.04) 10 (0.03) 8 (0.03) 10 (0.03) 6 (0.02) 6 (0.02) 浸 軟 4 (0.01) 4 (0.01) 浸 潤 2 (0.01) 2 (0.01) 疼 痛 症状悪化 1 (0.17) 膿 疱 6 (0.02) 6 (0.02) 3 (0.01) 4 (0.01) 3 (0.01) 3 (0.01) 浮腫(感) 2 (0.01) 2 (0.01) 眼瞼浮腫 1 (0.004) 1 (0.003) 紅斑(浮腫性) 1 (0.004) 1 (0.003) 紫 斑 1 (0.004) 1 (0.003) 過敏症状 2 (0.01) 2 (0.01) 熱 感 2 (0.01) 2 (0.01) 鱗 屑 2 (0.01) 2 (0.01) 皮膚肥厚 1 (0.004) 1 (0.003) 痂 皮 1 (0.004) 1 (0.003) 出 血 1 (0.004) 1 (0.003) −11− ⑶基礎疾患、 合併症、 重症 該当記載事項なし 度及び手術の有無等背 景別の副作用発現頻度 ⑷薬物アレルギーに 該当記載事項なし 対する注意及び試験法 9.高齢者への投与 該当記載事項なし 10.妊婦、産婦、授乳婦等 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦(3カ月以内) 又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回る への投与 と判断される場合にのみ使用すること。 11.小児等への投与 該当記載事項なし 12.臨床検査結果に及ぼす なし 影響 13.過量投与 該当記載事項なし 14.適用上及び薬剤交付時の ⑴使用部位 注意(患者等に留意すべき 必須事項等) 眼科用として、角膜、結膜には使用しないこと。 ⑵そ の 他 本剤の基剤として使用されている油脂性成分は、コンドーム等の避妊 用ラテックスゴム製品の品質を劣化・破損する可能性があるため、これ らとの接触を避けさせること。 15.その他の注意 該当記載事項なし 16.その他 なし −12− Ⅸ 非臨床試験に関する項目 1.一般薬理 本来の薬理作用である抗真菌作用以外は弱い。 2.毒 性 LD50(mg/kg) ⑴単回投与毒性試験 動 物 マウス ラット ⑵反復投与毒性試験 性 経 口 腹腔内 皮 下 ♂ 2,560 662 5,000以上 ♀ 2,160 480 5,000以上 ♂ 920 1,185 5,000以上 ♀ 1,200 1,060 5,000以上 亜急性毒性 ラットにミコナゾール硝酸塩の10%クリームを1日0.5g、30日間連日 経皮投与しても一般状態、血液学的所見、病理組織学的所見等に異常は 認められていない。 慢性毒性 182日間経口投与した時の最大無作用量はラットで3mg/kg/day、イヌ で10mg/kg/dayであった。 ⑶生殖発生毒性試験 催奇形性試験22) 1. 妊娠前及び妊娠初期 ミコナゾール硝酸塩100mg/kg/dayを経口投与した雌雄ラットの生殖 能、着床数、生胎仔数及び生胎仔体重などへの影響はなく、また催奇形 作用は認められなかった。 2. 胎仔の器官形成期 ラット及びウサギにミコナゾール硝酸塩100mg/kg/dayを経口投与し ても、胎仔発育は障害されず、外表奇形、内臓異常、骨格奇形は認めら れなかった。 3. 周産期及び授乳期 ラットにミコナゾール硝酸塩を30mg/kg/day以上経口投与した群で死 産仔数の増加が、100mg/kg/day群で出産時の母獣死が観察されたが母 獣の体重、一般状態、分娩率、新生仔数、生胎仔体重には影響なく、催 奇形作用も認められなかった。 突然変異性 キイロショウジョウバエを用いて伴性劣性致死変異性、マウスを用い て優性致死変異性等について検討したが、いずれの方法においてもミコ ナゾール硝酸塩による突然変異性は検出されない。 −13− ⑷その他の特殊毒性 刺激試験 皮膚に対する刺激 ミコナゾール硝酸塩2及び5%含有軟膏をウサギ及びラットの背部に 塗布しても皮膚の異常は認められず刺激作用も認められなかった。 過敏性 モルモットを用いた遅延型アレルギー試験、光毒性試験及び光アレ ルギー試験はいずれも陰性であった。 −14− Ⅹ 取扱い上の注意等に関する項目 1.有効期間又は使用期限 使用期限:5年(直接容器及び外箱に表示) 2.貯法・保存条件 室温保存 3.薬剤取扱い上の注意点 該当記載事項なし 4.承認条件 なし 5.包 装 10g入:20本、100本 6.同一成分・同効薬 同 効 薬:クロトリマゾール ケトコナゾール イソコナゾール硝酸塩 オキシコナゾール硝酸塩 スルコナゾール硝酸塩 ミコナゾール 7.国際誕生年月日 1971年 8 月 8.製造販売承認年月日及び 製造販売承認年月日:2006年 8 月 9 日 承認番号 9.薬価基準収載年月日 10.効能・効果追加、用法・ 承 認 番 号:21800AMX10717000 2006年12月 8 日 該当しない 用量変更追加等の年月日 及びその内容 11.再審査結果、再評価結果 公表年月日及びその内容 再審査結果:1987年 9 月14日 薬事法第14条第2項各号のいずれにも該当しないとの再審査結果を得た。 12.再審査期間 1980年12月25日~1986年10月24日 13.長期投与の可否 本剤は厚生労働大臣の定める「投薬期間に上限が設けられている医薬品」 に該当しない。 14.厚生労働省薬価基準収載 2655702N1060 医薬品コード 15.保険給付上の注意 特になし −15− Ⅺ 文 献 1.引用文献 1) 福代良一 他:皮膚 21 (3) , 325~339(1979) 2) 斉藤文雄:基礎と臨床 13 (4) , 317~321(1979) 3) 渡辺靖:基礎と臨床 13 (4) , 327~334(1979) 4) 山田実 他:基礎と臨床 13 (4) , 323~326(1979) 5) 藤田恵一 他:基礎と臨床 13 (4) , 335~340(1979) 6) 山本一哉 他:基礎と臨床 13 (4) , 345~348(1979) 7) 富沢尊儀:基礎と臨床 13 (4) , 341~344(1979) 8) 亀田洋 他:西日本皮膚科 41 (5) , 986~987(1979) 9) 田中道雄 他:西日本皮膚科 41 (5) , 988~989(1979) 10) 岡島晶子:基礎と臨床 13 (4) , 349~351(1979) 11) 真崎治行 他:西日本皮膚科 41 (5) , 984~985(1979) 12) 古沢嘉衛:基礎と臨床 13 (10) , 348~350(1979) 13) 江川朝生,岩田和夫 他:真菌と真菌症 18 (1) , 65~72(1977) 14) Van Cutsem, J. M. et al.:Chemotherapy 17, 392~404(1972) 15) 青河寛次 他:産婦人科の世界 29 (2) , 67~71(1977) 16) 江川朝生,岩田和夫:真菌と真菌症 20 (1) , 10~19(1979) 17)Van den Bossche, H. et al.:Biochemical Pharmacology 23, 887~899 (1974) 18) Sreedhara Swamy, K. H. et al.:Antimicrobial Agents Chemotherapy 5 (4) , 420~425(1974) 19) De Nollin, S. et al.:Sabouraudia 12, 341~351(1974) 20) De Nollin, S. et al.:Antimicrobial Agents Chemotherapy ( 7 5) , 704~711 (1975) 21) Van den Bossche, H. et al.:Sabouraudia 13, 63~73 (1975) 22) 伊藤千尋 他:医薬品研究 ( 7 4) , 535~547(1976) 2.その他の参考文献 なし −16− Ⅻ 参考資料 主な外国での発売状況 Daktarin (ベルギー、オランダ、スイス、オーストリア、 イギリス、フランス、イタリア等) Micatin (アメリカ、カナダ) Epi−Monistat・Daktar(ドイツ) Daktar (スウェーデン、ノルウェー) Daktarin Derm (スペイン) Brentan (デンマーク) −17− 備 考 その他の関連資料 なし −18− <文献請求先> 持田製薬株式会社 学術 〒160−8515 東京都新宿区四谷1丁目7番地 7 0120−189−522 TEL 03(5229)3906 FAX 03(5229)3955 4844−11(N18Ⓓ 2010年4月)500Ⓗ
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